(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172828
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】走行制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/14 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
B60W30/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090826
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】後藤 宏晃
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA01
3D241BB17
3D241BC01
3D241CD08
3D241DA49Z
3D241DA52Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DD13Z
(57)【要約】
【課題】先行車両を追従する制御を実行中に車線変更を開始する場合に、状況に応じて自車両を早期に加速させる走行制御装置を提供する。
【解決手段】走行制御装置は、先行車両に設けられたストップランプまたは方向指示器の点灯状態を検出した結果を取得する取得部と、先行車両を追従する制御を実行中において、自車両の方向指示器をオンにする検出結果を受けて自車両の減速を抑制または自車両を加速させる走行制御部と、を備える。走行制御部は、自車両の方向指示器をオンにする検出結果を受けて自車両の減速を抑制または自車両を加速させる場合に、先行車両のストップランプの点灯または自車両の車線変更の方向と同じ方向の先行車両の方向指示器の点灯を検出すると、自車両の加速または減速の抑制を停止する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の前方に位置する先行車両を追従する制御を実行可能な走行制御装置であって、
先行車両に設けられたストップランプまたは方向指示器の点灯状態を検出した結果を取得する取得部と、
先行車両を追従する制御を実行中に自車両の方向指示器をオンにする検出結果を受けると、自車両の減速を抑制または自車両を加速させる走行制御部と、を備え、
前記走行制御部は、自車両の方向指示器をオンにする検出結果を受けて自車両の減速を抑制または自車両を加速させる場合に、先行車両のストップランプの点灯または自車両の車線変更の方向と同じ方向の先行車両の方向指示器の点灯を検出すると、自車両の加速または減速の抑制を停止することを特徴とする走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の運転を支援する走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、先行車両を追従対象として設定し、自車両の走行状態をその先行車両の走行状態に追従させる走行制御装置が開示されている。この走行制御装置は、先行車両が交通流阻害車両であると判定された場合に、その先行車両を追従対象から外す条件を緩和し、先行車両が交通の流れを阻害する交通流阻害車両であると判定された場合に、自車両が先行車両を追い越すことが可能であるか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示するように、自車両が先行車両を追従する制御を実行しているときに、状況によっては先行車両への追従を解除して車線変更を先行車両を追い越すことがある。この車線変更を完了して前方に他車両がいないことをセンサで認識して、加速を開始すると、加速のタイミングが遅くなるおそれがある。一方、車線変更時に早めに加速を開始すると、状況によっては自車両が先行車両に接近しすぎるおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、先行車両を追従する制御を実行中に車線変更を開始する場合に、状況に応じて自車両を早期に加速させる走行制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、自車両の前方に位置する先行車両を追従する制御を実行可能な走行制御装置であって、先行車両に設けられたストップランプまたは方向指示器の点灯状態を検出した結果を取得する取得部と、先行車両を追従する制御を実行中において、自車両の方向指示器をオンにする検出結果を受けて自車両の減速を抑制または自車両を加速させる走行制御部と、を備える。走行制御部は、自車両の方向指示器をオンにする検出結果を受けて自車両の減速を抑制または自車両を加速させる場合に、先行車両のストップランプの点灯または自車両の車線変更の方向と同じ方向の先行車両の方向指示器の点灯を検出すると、自車両の加速または減速の抑制を停止する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、先行車両を追従する制御を実行中に車線変更を開始する場合に、状況に応じて自車両を早期に加速させる走行制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】比較技術の走行制御方法について説明するための図である。
【
図2】比較技術の別の走行制御方法について説明するための図である。
【
図3】運転支援システムの機能構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、比較技術の走行制御方法について説明するための図である。
図1(a)では、自車両10が自動運転制御によって先行車両12に追従している状態を示す。自車両10は、自律的に走行させる自動運転機能として、例えばクルーズコントロール、追従制御などを実行可能である。追従制御では、自車両10は先行車両12から所定間隔だけ離れて先行車両12を追従し、先行車両12の車速に合わせて走行する。クルーズコントロールでは、自車両10は設定された速度で自動で走行する。自車両10は、追従制御とクルーズコントロールとを切り替えることが可能である。自動運転制御において、自車両10は、自車両10と同一車線で所定間隔内に先行車両12が存在していなければ、クルーズコントロールで走行し、所定間隔内に先行車両12が存在していれば追従制御で走行する。
【0010】
図1(a)では、自車両10の右側の方向指示器20が点灯しており、先行車両12への追従制御を解除して、自車両10が第1車線16から右側の第2車線18に車線変更を企図としている状態を示す。自車両10が方向指示器20を出して隣接車線へ車線変更をする場合に、車線変更を完了して前方に他車両がいないことをセンサで認識して、加速を開始すると、加速のタイミングが遅くなるおそれがある。そこで、自車両10は、方向指示器20を点灯したことをトリガーとして加速を開始する。
【0011】
図1(b)では、追越車両14が後方から第2車線18を高速で走行して自車両10に接近してきたため、自車両10が車線変更を待機している状況を示す。また、先行車両12のストップランプ22が点灯しており、先行車両12がブレーキをかけたことを示す。このとき、自車両10はすでに加速を開始している。
【0012】
図1(c)では、自車両10が先行車両12に接近しすぎている状態を示す。このように、自車両10が方向指示器20を点灯したことをトリガーとして加速を開始すると、その後の状況によっては先行車両12に接近しすぎるおそれがある。
【0013】
図2は、比較技術の別の走行制御方法について説明するための図である。
図2(a)では、
図1(a)の続きの走行状況を示し、自車両10が自動運転制御によって先行車両12に追従している状態にて、右側に車線変更を企図している状態の続きである。
【0014】
図2(a)には、先行車両12が右側の方向指示器24を点灯しており、自車両10だけでなく、先行車両12も同じ方向に車線変更を企図している状態を示す。
【0015】
図2(b)には、自車両10および先行車両12がともに同じ第2車線18に車線変更を完了した状態を示す。自車両10は、方向指示器20を点灯するタイミングから加速しており、追従制御時での先行車両12に合わせた車速よりも速くなっているため、車線変更を完了したときに、自車両10が先行車両12に接近しすぎている。
【0016】
このように、
図1(c)に示す自車両10が車線変更を待機して先行車両12がブレーキした場合や、
図2(b)に示す自車両10が先行車両12と同じ方向に車線変更する場合において、自車両10が先行車両12に接近しすぎるおそれがある。そこで、自車両10は、先行車両12のストップランプ22および方向指示器24の点灯状態に応じて、車線変更時の加速を止めて、先行車両12の車速に合わせて走行する。これにより、車線変更時に加速させる自動運転制御を実行してもその後の状況に応じて加速を中止することで、自車両10が先行車両12に接近しすぎないようにできる。
【0017】
図3は、運転支援システム1の機能構成を示す図である。運転支援システム1の各機能は、ハードウェア的には、回路ブロック、メモリ、その他のLSIで構成することができ、ソフトウェア的には、メモリにロードされたシステムソフトウェアやアプリケーションプログラムなどによって実現される。したがって運転支援システム1の各機能はハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。
【0018】
運転支援システム1は、方向指示器20、走行制御装置26、車載カメラ28、車載センサ30および走行装置32を備える。運転支援システム1は、運転支援機能を実行し、とくに自動運転に関する運転支援機能を実行する。
【0019】
車載カメラ28は、自車両10の周辺を撮像して撮像画像を生成する。車載カメラ28は、とくに自車両10の前方を撮像して先行車両12を含む撮像画像を生成する。
【0020】
車載センサ30は、自車両10に搭載された複数のセンサを含む。車載センサ30は、自動運転の実行指示を示す操作を受け付ける入力センサ、方向指示器20の点灯状態を検出する点灯検出センサ、対象物検出センサおよび走行状態検出センサなどを含む。対象物検出センサは、ミリ波レーダ、光レーダおよび音波センサなどを含み、車両周辺に位置する対象物を検出する。なお、車載カメラ28も対象物検出センサとして機能する。走行状態検出センサは、走行状態検出センサは、車速センサ、舵角センサ、加速度センサ、ブレーキ圧センサなどを含み、車両の走行状態を検出する。対象物検出センサおよび走行状態検出センサの検出結果は、自動運転制御に用いられる。
【0021】
方向指示器20は、自車両10の四隅に設けられ、左右に分かれて配置される。走行装置32は、車輪に駆動力を付与し、車輪を回転させて車両を進行させる駆動手段と、車輪を転舵させる転舵手段と、車輪に制動力を付与する制動手段とを有する。駆動手段は、エンジン、モータ、またはそれらの組み合わせであってよい。走行装置32は、運転者の操作によって駆動されてよく、走行制御装置26によって駆動されてよい。
【0022】
走行制御装置26は、取得部34、認識処理部36、自動運転処理部38、点灯制御部40および走行制御部42を備える。取得部34は、車載カメラ28および車載センサ30から検出結果を取得する。車載カメラ28の検出結果には、先行車両12に設けられたストップランプ22または方向指示器24の点灯状態を検出した結果が含まれる。
【0023】
認識処理部36は、車載カメラ28の検出結果を受け取って、撮像画像を解析して先行車両12を認識する。また、認識処理部36は、認識した先行車両12を追跡して、先行車両12のランプの点灯状態を認識する。先行車両12のランプには、ストップランプ22および方向指示器24が含まれる。ランプの点灯状態には、点灯、消灯、点滅などが含まれる。
【0024】
自動運転処理部38は、自動運転制御に関する処理を実行し、車載センサ30の検出結果をもとに自車両10の車速、転舵角、制動量などの走行制御量を決定する。自動運転処理部38は、運転者の指示を受けて自動運転制御を開始する。
【0025】
走行制御部42は、自動運転処理部38の指示を受けて自動運転に関する走行制御機能を実行する。走行制御部42は、自動運転処理部38によって決定された走行制御量に応じて、走行装置32を制御するための指令値を生成し、走行装置32に送る。走行装置32は、受け取った指令値に応じて駆動する。これにより、運転支援システム1が自車両を自律的に走行させることができる。
【0026】
自動運転処理部38は、目標走行経路にしたがう場合や先行車両12を追い越す場合に、追従制御を実行中に先行車両12への追従を止めて車線変更を実行することがある。なお、運転者が音声等で車線変更や先行車両12の追い越しを指示し、自動運転処理部38は、運転者の指示を受けて車線変更を決定してよい。自動運転処理部38は、車線変更時に方向指示器20を点灯することを決定する。点灯制御部40は、自動運転処理部38の決定に応じて方向指示器20を点灯させるよう制御する。
【0027】
自動運転処理部38は、自車両10の方向指示器20の点灯を検出したことを契機として、自車両10を加速させることを決定する。車線変更時の加速度は、実験等によって設定され、例えば、車線変更後の目標車速に応じて設定される。これにより、自車両10が車線変更によって先行車両12を早く追い越すことができる。
【0028】
なお、自動運転処理部38は、自車両10の方向指示器20の点灯を検出したことを契機として、自車両10の減速を抑制することを決定してもよい。自車両10の減速を抑制するとは、自車両10の減速を禁止することであってよい。これにより、車線変更時に自車両10が減速することを禁止できる。つまり、自動運転処理部38は、先行車両12に追従する制御を実行中において、自車両10の方向指示器をオンにする検出結果を受けて自車両10の減速を抑制または自車両10を加速させる。
【0029】
自動運転処理部38は、車線変更時に加速すると、認識処理部36の認識結果をもとに先行車両12のランプの点灯状態を監視する。自動運転処理部38は、車線変更時の加速中に、先行車両12のストップランプ22の点灯または自車両10の車線変更と同じ方向の先行車両12の方向指示器の点灯を検出すると、自車両10の加速を停止し、先行車両12の車速に合わせた車速にすることを決定する。
【0030】
走行制御部42は、自動運転処理部38の決定を受けて、走行装置32を制御する。走行制御部42は、先行車両12に追従する制御を実行中において、自車両10の方向指示器20をオンにする検出結果を受けて自車両10の減速を抑制または自車両10を加速させる。走行制御部42は、自車両10の方向指示器をオンにする検出結果を受けて自車両10の減速を抑制または自車両10を加速させた場合に、先行車両12のストップランプ22の点灯または自車両10の車線変更と同じ方向の先行車両12の方向指示器の点灯を検出すると、自車両10の加速または減速の抑制を停止する。
【0031】
以上、本開示を実施例をもとに説明した。本開示は、上述の実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 運転支援システム、 10 自車両、 12 先行車両、 14 追越車両、 16 第1車線、 18 第2車線、 20 方向指示器、 22 ストップランプ、 24 方向指示器、 26 走行制御装置、 28 車載カメラ、 30 車載センサ、 32 走行装置、 34 取得部、 36 認識処理部、 38 自動運転処理部、 40 点灯制御部、 42 走行制御部。