(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172829
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】固形状組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20241205BHJP
A23F 5/28 20060101ALN20241205BHJP
【FI】
A23L5/00 D
A23L5/00 K
A23F5/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090827
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成田 康行
【テーマコード(参考)】
4B027
4B035
【Fターム(参考)】
4B027FB21
4B027FC05
4B027FE01
4B027FK03
4B027FK04
4B027FK10
4B027FQ06
4B027FQ14
4B035LC05
4B035LE01
4B035LG17
4B035LG19
4B035LG26
4B035LG33
4B035LG37
4B035LP22
4B035LP36
(57)【要約】
【課題】高湿度環境における粉末安定性、溶解性、及び打錠性に優れた固形状組成物を提供すること。
【解決手段】セルロース誘導体を0.2~9.5質量%含み、中間点ガラス転移温度(Tmg)が30~50℃であり、かつ当該ガラス転移温度における比熱容量差(ΔCp)が0.3~0.7である、固形状組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース誘導体を0.2~9.5質量%含み、
中間点ガラス転移温度(Tmg)が30~50℃であり、かつ
当該ガラス転移温度における比熱容量差(ΔCp)が0.3~0.7である、
固形状組成物。
【請求項2】
当該固形状組成物が、植物抽出物含有固形状組成物である、請求項1記載の固形状組成物。
【請求項3】
セルロース誘導体が、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及びアルキルセルロースから選択される1以上である、請求項1又は2記載の固形状組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形状組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、生理機能を有する様々な素材が提案され、こうした生理機能を手軽に無理なく長期間継続して摂取可能な形態の一つに固形状組成物がある。固形状組成物には、そのまま摂取する形態や、水に溶解してインスタント飲料として摂取する形態もある。しかし、固形状組成物は、高湿度環境下で物性が経時的に変化し、固結を生じて保存安定性が低下したり、水への溶解性が低下することが多い。とりわけ、植物抽出物を含有する粉末組成物は、高湿度環境における粉末安定性が低いため、固結や潮解を生じやすくなる。
【0003】
固形状組成物の保存安定性を向上させる技術として、例えば、固形状組成物を油脂コーティングすることが知られている(特許文献1)。また、固形状組成物にデキストリン類を含有させることで、保存安定性を向上できることも報告されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】S. Fongin et al.,Journal of Food Engineering,247(2019),p.95-103
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、固形状組成物を油脂コーティングすると、水への溶解性が大幅に低下してしまう。また、固形状組成物にデキストリン類を含有させると、打錠性が低下して打錠時や流通時に欠けを生ずることがある。このように、上記した従来技術により製造された固形状組成物は、高湿度環境下での安定性に優れるものの、水への溶解性や打錠性に劣るため、インスタント飲料や錠剤といった幅広い用途に適用することが困難である。
本発明の課題は、高湿度環境における安定性、水への溶解性及び打錠性に優れる固形状組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題に鑑み検討した結果、固形状組成物にセルロース誘導体を特定量含有させたうえで、固形状組成物の中間点ガラス転移温度(Tmg)及び当該ガラス転移温度における比熱容量差(ΔCp)を特定範囲内に制御することで、高湿度環境における安定性、水への溶解性及び打錠性に優れた固形状組成物が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔3〕を提供するものである。
〔1〕セルロース誘導体を0.2~9.5質量%含み、
中間点ガラス転移温度(Tmg)が30~50℃であり、かつ
当該ガラス転移温度における比熱容量差(ΔCp)が0.3~0.7J/(g・℃)である、
固形状組成物。
〔2〕当該固形状組成物が、植物抽出物含有固形状組成物である、前記〔1〕記載の固形状組成物。
〔3〕セルロース誘導体が、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及びアルキルセルロースから選択される1以上である、前記〔1〕又は〔2〕記載の固形状組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高湿度環境における安定性、水への溶解性及び打錠性に優れる固形状組成物を提供することができる。したがって、本発明の方法により製造された固形状組成物は、インスタント飲料や錠剤といった幅広い用途に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る中間点ガラス転移温度(Tmg)及び比熱容量差(ΔCp)について説明する図である。
【
図2】実施例1~8及び比較例2で得られた固形状組成物について、示差走査熱量測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<固体状組成物>
本発明の固体状組成物は、中間点ガラス転移温度(Tmg)が30~50℃であるが、高湿度環境における安定性のより一層の向上の観点から、33℃以上が好ましく、35℃以上がより好ましく、また打錠性のより一層の向上の観点から、49℃以下が好ましい。かかる中間点ガラス転移温度(Tmg)は、好ましくは33~50℃であり、より好ましくは35~50℃であり、更に好ましくは35~49℃である。ここで、本明細書において「中間点ガラス転移温度(Tmg)」とは、JIS K7121:2012に準拠した示差走査熱量測定(DSC)において、
図1に示されるように、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度を意味する。なお、中間点ガラス転移温度(Tmg)は、下記の条件にて同一試料について示差走査熱量測定を2回行い、2回目の示差走査熱量測定において計測された値を用いるものとする。また、中間点ガラス転移温度(Tmg)が、示差走査熱量計により自動計測される場合は、その値を用いることができる。示差走査熱量計として、例えば、DSC7000X(日立ハイテクサイエンス社製)を用いることができる。
【0012】
示差走査熱量測定の条件
・測定温度:-80℃ → 150℃(2回とも同じ)
・昇温速度:10℃/min
・雰囲気 :窒素雰囲気下
・測定容器:アルミニウム密封容器
【0013】
また、本発明の固体状組成物は、上記したガラス転移温度における比熱容量差(ΔCp)が0.3~0.7J/(g・℃)であるが、水への溶解性及び打錠性のより一層の向上の観点から、0.35J/(g・℃)以上が好ましく、0.4J/(g・℃)以上がより好ましく、0.5J/(g・℃)以上が更に好ましく、また高湿度環境における安定性のより一層の向上の観点から、0.65J/(g・℃)以下が好ましく、0.62J/(g・℃)以下がより好ましい。かかる比熱容量差(ΔCp)は、好ましくは0.35~0.7J/(g・℃)であり、より好ましくは0.4~0.65J/(g・℃)であり、更に好ましくは0.5~0.62J/(g・℃)である。ここで、本明細書において「比熱容量差(ΔCp)」とは、
図1に示されるように、ガラス転移領域(ガラス状態とラバー状態の境目の領域)における比熱容量の変化量を意味する。なお、比熱容量差(ΔCp)は、同一試料について示差走査熱量測定を2回行い、2回目の示差走査熱量測定において計測された値を用いるものとする。また、比熱容量差(ΔCp)が、示差走査熱量計により自動計測される場合は、その値を用いることができる。
【0014】
本発明の固体状組成物は、セルロース誘導体を含有する。ここで、本明細書において「セルロース誘導体」とは、置換基を有するセルロースをいい、置換基を有しないセルロース自体は含まれない。セルロース誘導体は、モノマー単位(グルコース)中の全ての水酸基の水素原子が置換基で置換される必要はなく、一部の水酸基の水素原子が置換基で置換されていればよい。モノマー単位中の置換基の個数は、通常1~5個であり、好ましくは1~3個であり、更に好ましくは1個又は2個である。
【0015】
セルロース誘導体としては、例えば、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、カルボキシセルロース、アルキルセルロース又はそれらの塩を挙げることができる。セルロース誘導体は、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0016】
塩としては、例えば、金属塩、酸付加塩、塩基との塩を挙げることができる。金属塩としては、例えば、一価の金属(例えば、ナトリウム、カリウム)との塩、2価の金属(例えば、カルシウム、マグネシウム)との塩が挙げられる。酸付加塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩化水素、臭化水素、硫酸、リン酸)との塩、有機酸(例えば、酢酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、モノメチル硫酸)との塩を挙げることができる。塩基との塩としては、例えば、無機塩基(例えば、アンモニア)との塩、有機塩基(例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、エタノールアミン、モノアルキルエタノールアミン、ジアルキルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン)との塩が挙げられる。塩としては、金属塩が好ましい。
【0017】
ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース及びアルキルセルロースにおけるアルキルは、鎖状でも、分岐鎖状でもよく、炭素数は1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~4が更に好ましい。なお、アルキルを2以上有する場合、同一であっても、異なっていてもよい。
【0018】
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースは、ヒドロキシアルキル及びアルキルの双方を有するセルロースであり、例えば、ヒドロキシメチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシブチルメチルセルロースが挙げられる。
【0019】
ヒドロキシアルキルセルロースとしては、例えば、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、ヒドロキシブチルセルロース、ヒドロキシペンチルセルロース、ヒドロキシヘキシルセルロースが挙げられる。
【0020】
カルボキシアルキルセルロースとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、カルボキシブチルセルロース、カルボキシペンチルセルロース、カルボキシヘキシルセルロースが挙げられる。
【0021】
アルキルセルロースとしては、例えば、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、プロピルセルロース、ブチルセルロース、ペンチルセルロース、ヘキシルセルロースが挙げられる。
【0022】
中でも、本発明の効果を享受しやすい点で、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及びアルキルセルロースから選択される1以上が好ましく、ヒドロキシメチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース及びプロピルセルロースから選択される1種以上がより好ましく、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びメチルセルロースから選択される1種以上が更に好ましい。
【0023】
セルロース誘導体の含有量は、本発明の固体状組成物中に、0.2~9.5質量%であるが、高湿度環境における安定性及び打錠性のより一層の向上の観点から、0.4質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、2.0質量%以上が更に好ましく、また水への溶解性のより一層の向上の観点から、9.0質量%以下が好ましく、8.0質量%以下がより好ましく、7.2質量%以下が更に好ましい。また、セルロース誘導の含有量は、本発明の固形状組成物中に、好ましくは0.4~9.0質量%であり、より好ましくは1.0~8.0質量%であり、更に好ましくは2.0~7.2質量%である。
【0024】
本発明の固形状組成物は、好ましくは植物抽出物含有固形状組成物である。ここで、本明細書において「植物抽出物含有固形状組成物」とは、植物抽出物を含有する固形状組成物を意味し、植物抽出物とは、植物の一部又は全部から抽出されたものをいう。抽出方法は特に限定されず、公知の抽出方法を採用することが可能であり、例えば、水、熱水、親水性有機溶媒又は水と親水性有機溶媒との混合液等の溶媒を用いた抽出法であっても、搾汁等のように非溶媒の抽出法であってもよい。植物から抽出された抽出物は、必要によりろ過、精製、乾燥等しても構わない。
【0025】
植物抽出物としては、食用に供される植物の抽出物であれば特に限定されないが、例えば、コーヒー豆、茶、シソ、アスパラガス、ウコン、ガジュツ、大豆、カカオ、ヒハツ、イチョウの葉等の抽出物を挙げることができる。また、植物抽出物は、既知の分解処理(熱や圧力による分解処理、酸やアルカリによる分解処理、酵素による分解処理等)を施したものも用いることもできる。植物抽出物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0026】
コーヒー豆は、焙煎コーヒー豆でも、生コーヒー豆でもよい。コーヒー豆は、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
茶としては、例えば、C.sinensis.var.sinensis(やぶきた種を含む)、C.sinensis.var.assamica及びそれらの雑種から選択される茶葉(Camellia sinensis)を挙げることができる。茶葉は、その加工方法により、不発酵茶、半発酵茶、発酵茶に分類することができる。茶葉は、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。なお、茶葉の茶品種及び採取時期は特に限定されず、また茶葉は火入れ加工が施されていてもよい。不発酵茶としては、例えば、煎茶、深蒸し煎茶、焙じ茶、番茶、玉露、かぶせ茶、碾茶、釜入り茶、茎茶、棒茶、芽茶等の緑茶葉を挙げることができる。また、半発酵茶としては、例えば、鉄観音、色種、黄金桂、武夷岩茶等のウーロン茶葉が挙げられる。更に、発酵茶としては、ダージリン、アッサム、スリランカ等の紅茶葉を挙げることができる。
シソとしては、例えば、シソ(Lamiaceae)科の植物が挙げられる。具体的には、アカジソ(Perilla frutescens Britton var.acuta Kudo)、アオジソ(Perilla frutescens var.crispa f.viridis.Makino)、ローズマリー(Rosmarinus officinalis)、レモンバーム(Melissa officinalis)、セージ(Salvia officinalis)、クミスクチン(Orthosiphon aristatus)を挙げることができる。シソは、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
中でも、本発明の効果を享受しやすい点で、コーヒー豆、茶及びシソから選択される1種以上の植物の抽出物が好ましく、コーヒー豆、茶、ローズマリー及びレモンバームから選択される1種以上の植物の抽出物が更に好ましい。
【0027】
植物抽出物の含有量は、本発明の固形状組成物中に、風味、生理効果の観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上が好ましく、15質量%以上が更に好ましく、また高湿度環境における安定性、水への溶解性及び打錠性の観点から、70質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましく、60質量%以下が更に好ましい。また、植物抽出物の含有量は、本発明の固形状組成物中に、好ましくは5~70質量%であり、より好ましくは10~65質量%であり、更に好ましくは15~60質量%である。
【0028】
なお、植物抽出物の固形分中の生理機能物質の含有量は、0.1~99.9質量%が好ましく、5~65質量%がより好ましく、15~50質量%が更に好ましい。ここで、本明細書において「固形分量」とは、試料を105℃の電気恒温乾燥機で3時間乾燥して揮発物質を除いた残分の質量をいう。
また、「植物抽出物の生理機能物質」とは、その植物に含まれる物質のうち生理活性を示す物質をいう。例えば、植物抽出物がコーヒー豆抽出物である場合、生理機能物質はクロロゲン酸類であり、茶抽出物である場合、生理機能物質は非重合体カテキン類である。シソ抽出物である場合、生理機能物質はロスマリン酸である。なお、「クロロゲン酸類」とは、3-カフェオイルキナ酸、4-カフェオイルキナ酸及び5-カフェオイルキナ酸のモノカフェオイルキナ酸と、3-フェルラキナ酸、4-フェルラキナ酸及び5-フェルラキナ酸のモノフェルラキナ酸を併せての総称であり、クロロゲン酸類の含有量は上記6種の合計量に基づいて定義される。また、「非重合体カテキン類」とは、カテキン、ガロカテキン、エピカテキン及びエピガロカテキン等の非ガレート体と、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレート等のガレート体を併せての総称であり、非重合体カテキン類の含有量は上記8種の合計量に基づいて定義される。
【0029】
また、植物抽出物の固形分中の生理機能物質以外の成分の含有量としては、0.1~99.9質量%が好ましく、35~95質量%がより好ましく、50~85質量%が更に好ましい。
ここで「植物抽出物の生理機能物質以外の成分」とは、植物の一部又は全部に対して抽出を行い、本発明の植物抽出物を得る際に不可避的に混入される成分を指し、例えば、植物を水、熱水、親水性有機溶媒又は水と親水性有機溶媒との混合液等の溶媒を用いた水系抽出にて抽出した際に抽出される成分である。より具体的には、例えば、コーヒー豆から水系抽出し得られるクロロゲン酸以外の成分や、シソから水系抽出し得られるロスマリン酸以外の成分である。植物抽出物の生理機能物質以外の成分の一例としては、ショ糖、タンパク質といった成分が挙げられる。
【0030】
本発明における植物抽出物の固形分中の、生理機能物質と生理機能物質以外の成分との質量比(生理機能物質/生理機能物質以外の成分)は、高湿度環境における安定性、水への溶解性及び打錠性の観点から、好ましくは0.1~2であり、より好ましくは0.2~1であり、更に好ましくは0.4~0.8である。なお、生理機能物質以外の成分の質量は、ショ糖及びタンパク質の総量とする。
【0031】
本発明の固形状組成物は、固形状とするために賦形剤を含有することができる。
賦形剤としては、例えば、有機系賦形剤、無機系賦形剤を挙げることができる。
有機系賦形剤としては、例えば、乳糖、でんぷん、糖アルコールを挙げることができる。
無機系賦形剤としては、例えば、塩化ナトリウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウムを挙げることができる。
中でも、高湿度環境における安定性、水への溶解性及び打錠性の向上の観点から、有機系賦形剤が好ましく、糖アルコール及びでんぷんから選択される1以上が更に好ましい。
【0032】
糖アルコールとしては、例えば、単糖のアルコール、二糖のアルコール、三糖以上のアルコールを挙げることができる。糖アルコールは、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
単糖のアルコールとしては、例えば、エリスリトール、キシリトール等のペンチトール、ソルビトール、マンニトール等のヘキシトール等が挙げられる。また、二糖のアルコールとしては、例えば、還元麦芽糖(マルチトール)、ラクチトール(還元乳糖)、還元パラチノース(イソマルト)、トレハロース、パラチノース等が挙げられる。三糖以上のアルコールとしては、例えば、マルトトリイトール、イソマルトトリイトール、パニトール等が挙げられる。
中でも、耐吸湿性、水への溶解性、ハンドリング性の観点から、単糖のアルコール及び二糖のアルコールから選ばれる1以上が好ましく、二糖のアルコールがより好ましく、還元麦芽糖(マルチトール)が更に好ましく、純度が99%以上である還元麦芽糖(マルチトール)がより更に好ましい。
【0033】
糖アルコールの含有量は、高湿度環境における安定性、水への溶解性及び打錠性の観点から、本発明の固形状組成物中に、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましく、そして90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。また、糖アルコールの含有量は、本発明の固形状組成物中に、好ましくは20~90質量%であり、より好ましくは25~85質量%であり、更に好ましくは30~80質量%である。
【0034】
でんぷんとしては、植物から採取したでんぷん、又はそれを加工したもの(以下、「加工でんぷん」とも称する)であって、食用に供されるものであれば特に限定されない。でんぷんは、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
植物から採取したでんぷんとしては、例えば、コーンスターチ、小麦でんぷん、米でんぷん、馬鈴薯でんぷん、甘藷でんぷん、タピオカでんぷんを挙げることができる。なお、植物から採取したでんぷんは、必要により公知の方法を用いて精製しても構わない。
【0035】
加工でんぷんとしては、原料でんぷんを、例えば、加水分解処理、エステル化又はエーテル化等の架橋処理の他、酸化処理、α化処理、加熱処理、湿熱処理、漂白処理、殺菌処理、酸処理、アルカリ処理、酵素処理等したものを挙げることができる。加工でんぷんの具体例として、例えば、デキストリンを挙げることができる。ここで、本明細書において「デキストリン」とは、原料でんぷんを酵素や酸で分解したものをいう。原料でんぷんの分解の程度を把握する指標としてデキストロース当量(DE値)が一般に用いられているが、本発明で使用するデキストリンのDE値は、本発明の効果を享受しやすい点から、2~30が好ましく、2~13がより好ましく、2~5が更に好ましい。なお、DE値は通常知られているデキストロースの測定法により分析することが可能であるが、例えば、ウイルシュテッターシューデル法を挙げることができる。また、デキストリンは、糖がグリコシド結合によって重合した分子構造を有しているが、グリコシド結合は、鎖状に結合していても、環状に結合していても、これらの混合物であっても構わない。糖の結合方式としては、α-1,4結合、α-1,6結合、β-1,2結合、β-1,3結合、β-1,4結合、β-1,6結合等が挙げられ、単一の結合方式のみでも、2種以上の結合方式でも構わない。
【0036】
でんぷんとしては、耐吸湿性、水への溶解性、ハンドリング性の観点から、デキストリンが好ましい。
【0037】
でんぷんの含有量が多すぎると、打錠性が低下しやすくなるため、でんぷんの含有量を抑えることが好ましい。より具体的には、でんぷんの含有量は、本発明の固形状組成物中に、15質量%以下が好ましく、12質量%以下がより好ましく、9質量%以下が更に好ましい。でんぷんの含有量の下限値は特に限定されず、0質量%であっても構わない。
【0038】
本発明の固形状組成物は、嗜好性を高めるために、他の成分を含有することができる。他の成分としては、飲食品や医薬品などの最終的な製品において許容される成分であって、経口摂取可能な成分であれば特に限定されないが、例えば、甘味料、酸味料といった矯味剤や、ビタミン類、ミネラル類、抗酸化剤、滑沢剤、着香剤を挙げることができる。他の成分は、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。他の成分の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲内で適宜設定することができる。
【0039】
甘味料としては、例えば、単糖(ブドウ糖、果糖、ガラクトース等)、二糖(麦芽糖、乳糖、ショ糖等)、オリゴ糖(マルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等)、異性化糖(ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖等)、高甘味度甘味料(アセスルファムK、アスパルテーム、ステビア、スクラロース、ソーマチン等)を挙げることができる。
酸味料としては、例えば、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、酢酸、乳酸、フマル酸、グルコン酸、フィチン酸、コハク酸、リン酸又はこれらの塩を挙げることができる。塩としては、金属塩が好ましく、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩を挙げることができる。
滑沢剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、タルク、硬化油、ポリエチレングリコール、二酸化ケイ素、微粒二酸化ケイ素を挙げることができる。
【0040】
本発明の固体状組成物は、常温(20℃±15℃)において固体であり、その形態は特に限定されず、粉末状、顆粒状、錠状、棒状、板状、ブロック状等の適宜の形態を採り得る。ここで、本明細書において「顆粒状」とは、メジアン径が0.5~2.0mmである固体をいい、「粉末状」とは、顆粒状よりもメジアン径が小さな固体をいう。また、「メジアン径」とは、体積基準の積算分布において頻度50%に相当する粒子径(D50)である。なお、粒度分布は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定することができる。
【0041】
本発明の固体状組成物の水分含量は、好ましくは8質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは3質量%以下である。なお、固体状組成物の水分含量の下限値は特に限定されず、0質量%であっても構わない。ここで、本明細書において「水分含有量」とは、試料5gを赤外線水分計で105℃15分乾燥し、質量減少量から算出した値をいう。赤外線水分計として、例えば、株式会社ケット科学研究所製のFD-660を使用することができる。
【0042】
本発明の固形状組成物は、飲食品として提供されてもよいし、経口投与用の医薬品として提供されてもよいが、好ましくは飲食品であり、例えば、サプリメント、散剤、錠剤、顆粒剤、インスタント飲料が好ましい。サプリメント、散剤、錠剤、顆粒剤等の固形状組成物は、直接経口摂取する形態である。インスタント飲料は、所定の用法にしたがい液体で希釈して還元飲料として経口摂取する形態である。液体は飲料に還元できれば特に限定されず、例えば、水、炭酸水、牛乳、豆乳等が挙げられ、液体の温度は問わない。なお、希釈倍率は、所定の用法にしたがえばよいが、通常20~600質量倍、好ましくは80~600質量倍である。
【0043】
本発明の固形状組成物は、容器や袋に収容してもよく、例えば、紙、プラスチック、ガラス、金属製の容器や袋等に収容する態様が挙げられる。また、1回の経口摂取量ごとに小分け包装してもよい。中でも、1回の経口摂取量ごとに小分け包装された形態(スティック包装、分包包装等)が好ましい。包材としては、通常、食品や医薬品に使用されているものであれば限定されないが、例えば、アルミ箔、合成樹脂(ポリエチレンテレフタレート等)、ラミネート紙等を組み合わせたものが使用できる。容器内及び包材内は、品質維持の観点から、窒素ガスを充填してもよい。
【0044】
また、インスタント飲料は、例えば、瓶等に容器詰し飲用する際にカップ1杯分をスプーン等で計量するもの、1杯分を収容したカップタイプ、カップ1杯分毎に小分け包装したスティックタイプ等とすることができる。なお、カップの容量は30~320mLであることが好ましく、また小分け包装の内容量はカップ容量に適合するように適宜設定することが可能である。小分け包装は、アルミ蒸着フィルム等を材質とする包装材料で包装することができる。なお、容器内及び包材内は窒素ガスを充填してもよく、また包材は酸素透過性の低いものが品質維持の点で好ましい。
【0045】
<固形状組成物の製造方法>
本発明の固形状組成物は、適宜の方法により製造することが可能であるが、例えば、湿式造粒法を挙げることができる。湿式造粒法としては、高湿度環境における安定性、水への溶解性及び打錠性に優れる固形状組成物の効率的製造の観点から、流動層造粒法が好ましい。以下、好適な一実施形態について説明する。
【0046】
流動層造粒法は、流動層造粒装置内に熱風を送り込み、粉体原料を空中に巻き上げることによって流動状態にした粉体原料に結合液を噴霧し、凝集又は被覆により粒状物に成長させる造粒法である。
【0047】
流動層造粒装置としては、流動層造粒に通常使用されているものであれば特に限定されないが、例えば、被処理物を収容、造粒及び乾燥するための造粒槽と、被処理物を流動させる熱風を供給する熱風供給装置と、被処理物に液体を噴霧するためのスプレーノズルとを備える装置が挙げられる。このような流動層造粒装置として、例えば、フローコーター(フロイント産業社製)、GPCG-CTシリーズ、WST/WSGシリーズ、BFシリーズ、パルス流動層造粒乾燥装置、MPシリーズ(以上、パウレック社製)等を挙げることができる。
【0048】
粉体原料は、少なくとも賦形剤、必要に応じて植物抽出物等の他の成分を含む。粉体原料は、流動層造粒装置に個別に投入しても、混合して投入してもよい。原料の混合方法としては、原料の各成分を均一に混合できる方法であれば、いかなる方法でもよい。混合機械としては、例えば、コンテナミキサー、V型混合機、リボン型混合機、高速攪拌混合機(ハイスピードミキサー)等が挙げられる。混合温度は特に限定はされないが、10~35℃が好ましく、15~25℃がより好ましい。また、混合時間も特に限定されないが、0.5~5分間が好ましく、1~3分間がより好ましい。
【0049】
結合液は、通常水性媒体を含む。水性媒体としては、例えば、水、エタノール、水とエタノールとの混合液(エタノール水溶液)を挙げることができる。また、エタノール水溶液を用いる場合、その混合割合は限定されず、適宜選択することができる。また、エタノール水溶液は、市販のエタノール製剤のほか、酒精を用いてもよい。酒精としては、食用として供されるものであれば特に限定はされない。例えば、でんぷん質や糖類を含有する天然原料から酵母の酒精発酵作用で生成したもの、又はこれらの成分を含むものがあり、清酒、焼酎、ワイン、ウイスキー、ブランデー等の酒類、みりん等の発酵調味料等のように、エタノールを含有する液を用いることができる。
【0050】
セルロース誘導体の全量又は一部を含有させてもよい。中でも、保存時の色調変化のより一層の抑制の観点から、結合液にセルロース誘導体を全量含有させることが好ましい。なお、結合液にセルロース誘導体の一部を含有させる場合、その含有量は適宜選択することが可能であり、また残部は粉体原料に含有させればよい。
【0051】
結合液中のセルロース誘導体濃度は適宜選択可能であるが、通常1~25質量%であり、好ましくは1.5~20質量%であり、更に好ましくは2~15質量%である。
【0052】
流動層造粒においては、造粒層の下方から熱風を送り込み、粉体原料を空中に巻き上げて流動状態とし、そこにスプレーノズルより結合液を噴霧する。
粉体原料を流動化するために吹き込む熱風としては、空気を使用できるが、窒素、二酸化炭素等の不活性ガスや、不活性ガスを含む混合ガスを用いてもよい。熱風として、不活性ガスや混合ガスを用いると、酸化による変質を防止することができる。
【0053】
熱風温度は、造粒物の高湿度環境における安定性、水への溶解性及び打錠性の向上の観点から、60~95℃が好ましく、65~90℃がより好ましく、70~95℃が更に好ましい。
【0054】
噴霧速度は、造粒物の高湿度環境における安定性、水への溶解性及び打錠性の向上の観点から、2~8mL/minが好ましく、3~7mL/minがより好ましく、4~5mL/minが更に好ましい。
また、噴霧圧は、造粒物の高湿度環境における安定性、水への溶解性及び打錠性の向上の観点から、0.1~0.3MPaが好ましく、0.13~0.20MPaが更に好ましい。
【0055】
流動層造粒後、造粒物を乾燥し、必要に応じて整粒してもよい。乾燥は、造粒と同時に行われてもよい。造粒物の乾燥は、通常の乾燥方法によって行うことができる。乾燥機としては、例えば、恒温乾燥機、通風乾燥機、流動層乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機等が挙げられる。乾燥条件は、適宜設定することが可能である。また、整粒は、篩を用いて篩選別し、所望の粒子径に制御すればよい。
【0056】
このようにして、本発明の固形状組成物を簡便な操作で製造することができる。また、固形状組成物を錠剤の形態とするために、圧縮成形することもできる。例えば、原料混合物を直接圧縮して成形(直接粉末圧縮法)しても、造粒してから圧縮して成形(顆粒圧縮法)してもよい。直接圧縮して成形して錠剤を製造する場合、打錠成形機としてロータリー式打錠機や単発式打錠機等を使用することができる。錠剤の1錠当りの質量は、0.05~3gとするのが簡便性及び有効性の点で好ましい。
【実施例0057】
以下、実施例及び比較例によって本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
【0058】
1.固体状組成物の示差走査熱量測定
下記の条件にて示差走査熱量測定を2回行い、2回目の示差走査熱量測定において、
図2に示されるように、示差走査熱量計により自動計測される、中間点ガラス転移温度(Tmg)及び当該ガラス転移領域における比熱容量差(ΔCp)値を用いた。
【0059】
示差走査熱量測定の条件
・測定機器:DSC7000X(日立ハイテクサイエンス社製)
・測定温度:-80℃ → 150℃(2回とも同じ)
・昇温速度:10℃/min
・雰囲気 :窒素雰囲気下
・測定容器:アルミニウム密封容器
【0060】
2.固形状組成物の水分含量の分析
試料5gを赤外線水分計(FD-660、株式会社ケット科学研究所製)で105℃15分乾燥し、質量減少量から算出した。
【0061】
3.セルロース誘導体の分析
セルロース誘導体の分析は、HPLC(高速液体クロマトグラフィ)法により、次に示す方法にしたがって行った。
分析機器の装置構成は次の通りである。
・検出器 :Shodex RI
・カラム :Shodex OHpac SB-806M HQ(8.0mm I.D.×300mm)×2
【0062】
分析条件は次の通りである。
・カラム温度:40℃
・移動相 :0.1M NaCl aq.
・流量 :1mL/min
・試料注入量:20μL
【0063】
4.植物抽出物の分析
クロロゲン酸類及びロスマリン酸の分析
試料溶液をフィルター(0.45μm)で濾過し、高速液体クロマトグラフ(型式LC-20 Prominence,島津製作所製)を用い、カラム〔Cadenza CD-C18(3μm,4.6mmφ×150mm,Imtakt)〕を装着し、カラム温度35℃にてグラディエント法により行った。移動相A液は酢酸を0.05mol/L、酢酸ナトリウムを0.01mol/L、及びHEDPOを0.1mmol/L含有する5%アセトニトリル溶液、B液はアセトニトリル溶液とし、流速は1mL/分、試料注入量は10μL、UV検出器波長は325nmの条件で行った。なお、グラディエントの条件は、以下のとおりである。
【0064】
濃度勾配条件
時間(分) A液濃度(体積%) B液濃度(体積%)
0 100% 0%
10 100% 0%
15 95% 5%
20 95% 5%
22 92% 8%
50 92% 8%
52 10% 90%
60 10% 90%
60.1 100% 0%
70 100% 0%
【0065】
5.糖アルコールの分析
糖アルコールの分析は、HPLC(高速液体クロマトグラフィ)法により、次に示す方法にしたがって行った。
分析機器の装置構成は次の通りである。
・検出器 :示差屈折計RID-10A(島津製作所社製)
・カラム :Shodex Asahipak NH2P-50 4E、φ4.6mm×250mm(昭和電工社製)
【0066】
分析条件は次の通りである。
・カラム温度:室温
・移動相 :アセトニトリル及び水の混液(81:19 体積比)
・流量 :1mL/min
・試料注入量:20μL
【0067】
以下の手順にて分析用試料を調製した。
試料を3g量りとり、これに水10mLを加えて溶解し中和した溶液を、超音波洗浄器を用いて超音波抽出を30分間行った。その溶液に水を加えて20mLに定容した。その溶液をメンブレンフィルターでろ過し、試料溶液とした。その試料溶液を高速液体クロマトグラフィ分析に供した。
【0068】
6.でんぷんの分析
試料、及び各濃度の標準溶液1.5mLに、1N-NaOH水溶液を250μLと0.5MのPMP(3-メチル-1-フェニル-5-ピラゾロン)-メタノール溶液を500μL加え、70℃で30分加熱する。得られた溶液に対し、1N-HCl水溶液を250μLにて中和し、5mLのクロロホルムを加え分配し、水層を測定試料とする。上記操作により得られた測定試料について、高速液体クロマトグラフ質量分析を用い、下記条件にて測定する。
【0069】
分析条件
・HPLC装置:型式ACQUITY UPLC、Waters製
・MS装置 :型式SYNAPT G2-S HDMS型、Waters製
・イオン化 :ESI
・質量範囲 :m/z 100-2500
・カラム :型式Unison UK-C18 UP(2.0×100mm,3μm)、インタクト社製
・移動相 :E液:ギ酸0.05%水溶液、F液:アセトニトリル(%F=15→90)
・流量 :0.6mL/min
・注入量 :1μL
【0070】
7.固形状組成物の評価
(1)固結の評価
GEA method A15 a(2005年9月改訂、GEA Niro研究所)と略同等の条件にて固結の評価を行った。即ち、容器に試料を約1.5g入れ、25℃RH60%の環境下にて2日間静置し、試料を吸湿させた。吸湿後の試料約1.5gを、70℃にて3時間減圧乾燥した後、篩目30meshの振動篩機(ミニふるい振とう機、MVS-1N、アズワン社製)にて2500rpmにて5分間振動した。その後、篩上の質量を測定し、下記式により固結率を算出した。なお、GEA method A15 aによれば、固結率が20%を超えた場合、少し凝集した状態と判断されることから、固結率が20%以下であれば、固結が生じていないと判断した。
【0071】
固結率(%)= 篩上質量/振動篩への試料投入量×100
【0072】
(2)水への溶解性の評価
試料1.0gにイオン交換水を添加して全量を100gとし、超音波処理を実施し、溶液の外観を目視で評価し、溶け残りがないかを判断した。なお、超音波処理時間は、植物抽出物として生コーヒー豆抽出物を用いた場合は1分間とし、ロスマリン酸製剤を用いた場合は2分間とした。
【0073】
(3)硬度の測定
試料95.0質量部と、甘味料1.0質量部と、二酸化ケイ素1.0質量部と、ステアリン酸カルシウム3.0質慮部を混合した後、下記の条件で打錠して錠剤を製造した。
【0074】
打錠条件
・打錠機:ミニプレスキットCDM-5M、理研機器社製
・粒重量:400mg
・杵直径:φ10、R13
・打錠圧:10MPa
【0075】
デジタル硬度計(KHT-20N、藤原製作所社製)を用いて、錠剤の硬度を測定した。なお、測定は、n=3とし、平均値を求めた。なお、摩損度試験器(TFT-1200、富山産業社製)を用いて錠剤16粒を25rpmにて100回転し、試験前後の質量差から、下記式により摩損度(%)を測定したところ、硬度が50N以上である場合、殆ど摩耗がないことから、製品流通時に欠けを生じ難いと判断した。
【0076】
摩損度(%)=(試験前の試料質量-試験後の試料質量)/試験前の試料質量×100
【0077】
8.原料
本実施例において使用した原料を以下に示す。
・セルロース誘導体:HPMC(信越化学株式会社製、品番メトローズSE-03)
MC(信越化学株式会社製、品番メトローズMCE-4)
・糖アルコール:
レシス微粉(三菱商事ライフサイエンス株式会社製、マルチトール純度99.5%)
アマルティMR100(三菱商事ライフサイエンス株式会社製、マルチトール純度93.5%)
・デキストリン:サンデック#30(三和澱粉工業株式会社製、DE=2~5)
【0078】
製造例1
生コーヒー豆抽出物
L値50のロブスタ種の未粉砕生コーヒー豆45gを、容積208cm3のカラムに充填した。次に、カラム下方の供給バルブからカラムに通液速度2[hr-1]にて80℃の熱水を3質量部供給した。次に、カラム下方の供給バルブを閉じた後、上方のシャワーノズルから80℃の熱水を、通液速度2[hr―1] 、通液倍数12(w/w)の条件にて供給すると同時に、カラム下方の排出バルブを開放して抽出液を得た。抽出液をエバポレーター(東京理科器械社製、N-1100V)にて減圧濃縮し、濃縮物を得た。次に、濃縮物をイオン交換水により希釈し、固形分濃度が1.7質量%の希釈液を得た。次に、希釈液を10.4gの活性炭(クラレケミカル社製、クラレコールGW)の充填されたカラムに、通液速度7[hr-1]にてアップフローで25℃を保ちながら通液し、活性炭処理液を得た。得られた活性炭処理液を、スプレードライヤー(ヤマト科学株式会社製、DL-41)を用いて吸気温度180℃、流量0.9m3/min、噴霧圧0.1MPa、送液流量23g/minで乾燥し、粉末の生コーヒー豆抽出物を得た。生コーヒー豆抽出物は、固形分中のクロロゲン酸類の含有量が43.6質量%であった。
【0079】
製造例2
ロスマリン酸製剤
粉末状のレモンバーム抽出物(ハイケム株式会社社製)を使用した。このレモンバーム抽出物は、固形分中のロスマリン酸の含有量が8.36質量%であった。
【0080】
実施例1~9及び比較例1~8
(1)結合液
表1に示す量のセルロース誘導体を水に溶解し、表1に示すセルロース誘導体濃度(2.0~15.0質量%)の結合液を調製した。
(2)造粒物
表1に示す量の生コーヒー豆抽出物及び賦形剤を流動層造粒機(FLOW COATER FL-LABO、フロイント産業株式会社製)に投入した。次に、吸気温度80℃、吸気風量0.3m3/min、パルス圧0.36MPaで装置内に送風し、生コーヒー豆抽出物及びマルチトールを流動化させ、スプレー速度4~4.5mL/min、スプレー圧0.18MPa、スプレー流量30NL/min、パルス圧0.36MPaでスプレー速度4.5mL/min、スプレー圧0.18MPa、スプレー流量30NL/minの条件で表1に示す量の結合液を噴霧し、造粒した。そして、吸気温度80℃、吸気風量0.3m3/min、パルス圧0.36MPaで装置内に送風した状態にて10分間乾燥を行った後、篩目30meshの篩にて篩過し、造粒物(固形状組成物)を得た。得られた固形状組成物について分析、評価を行った。それらの結果を表1に示す。
【0081】
【0082】
実施例10~13及び比較例9~10
生コーヒー豆抽出物に代えて、製造例2に示すロスマリン酸製剤を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作により造粒物(固形状組成物)を得た。そして、得られた固形状組成物について、実施例1と同様に分析、評価を行った。その結果を表2に示す。
【0083】
【0084】
表1、2から、固形状組成物にセルロース誘導体を特定量含有させたうえで、固形状組成物の中間点ガラス転移温度(Tmg)及び当該ガラス転移温度における比熱容量差(ΔCp)を特定範囲内に制御することで、高湿度環境における安定性、水への溶解性及び打錠性に優れた固形状組成物が得られることがわかる。