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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172830
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】固形状組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20241205BHJP
   A23F 5/28 20060101ALI20241205BHJP
   A23L 3/3562 20060101ALI20241205BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20241205BHJP
【FI】
A23L33/105
A23F5/28
A23L3/3562
A23L5/00 A
A23L5/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090828
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成田 康行
【テーマコード(参考)】
4B018
4B021
4B027
4B035
【Fターム(参考)】
4B018LE01
4B018MD08
4B018MD10
4B018MD57
4B018ME04
4B018ME06
4B018MF01
4B018MF06
4B018MF08
4B018MF14
4B021LA44
4B021LW10
4B021MC10
4B021MK28
4B021MP01
4B027FB21
4B027FC05
4B027FE01
4B027FK01
4B027FK03
4B027FK04
4B027FQ06
4B027FQ14
4B035LC05
4B035LE01
4B035LE05
4B035LG01
4B035LG07
4B035LG19
4B035LG26
4B035LG33
4B035LP01
4B035LP21
4B035LP22
4B035LP36
(57)【要約】
【課題】保存時の色調変化が抑制されたコーヒー豆抽出物含有固形状組成物を提供すること。
【解決手段】次の成分(A)~(C);
(A)コーヒー豆抽出物
(B)ステアリン酸塩 1~9質量%、及び
(C)セルロース誘導体
を含み、成分(B)と成分(C)との質量比[(C)/(B)]が0.03~11である、固形状組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(C);
(A)コーヒー豆抽出物
(B)ステアリン酸塩 1~9質量%、及び
(C)セルロース誘導体
を含み、
成分(B)と成分(C)との質量比[(C)/(B)]が0.03~11である、
固形状組成物。
【請求項2】
成分(A)が、生コーヒー豆抽出物及び浅焙煎コーヒー豆抽出物から選択される1以上である、請求項1記載の固形状組成物。
【請求項3】
成分(A)の含有量は、固形状組成物中の(A)クロロゲン酸類の含有量が3~35質量%となる量である、請求項1又は2記載の固形状組成物。
【請求項4】
成分(C)が、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及びアルキルセルロースから選択される1以上を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の固形状組成物。
【請求項5】
成分(D)として、賦形剤を更に含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の固形状組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形状組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康増進等を目的として植物由来の機能性成分が注目されている。例えば、ポリフェノールの一種であるクロロゲン酸類は、抗酸化作用や血圧降下作用等の生理作用を有することが報告されており、クロロゲン酸類を多く含む素材としてコーヒー豆が知られている。クロロゲン酸類の生理機能を享受するには、クロロゲン酸類を長期間継続して摂取することが有効であり、手軽に無理なく摂取可能な形態の一つとして、コーヒー豆抽出物を含有する固形状組成物がある。しかし、植物抽出物を含有する固形状組成物は、一般に保存時の吸湿等により色調が変化しやすく、その色調変化は、植物抽出物を高含有させると、より一層顕著になる。
【0003】
従来、植物抽出物等を含有する固形状組成物の色調変化を抑制すべく様々な検討がなされている。例えば、オンジ抽出物を含有する内服組成物に、ステアリン酸塩をオンジ抽出物に対して一定の量比で含有させることで、経時的な変色を抑制できることが報告されている(特許文献1)。また、清肺湯エキス末を含む錠剤に、ステアリン酸マグネシウム、並びに二酸化ケイ素及び/又はケイ酸塩を含有させることで、吸湿による清肺湯エキス末の変色を抑制できるとの報告もある(特許文献2)。更に、紅麹及び/又はその加工物を含む固形製剤に、ステアリン酸カルシウムを配合することで、当該固形製剤の変色を抑制できることも報告されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-75141号公報
【特許文献2】特開2019-6749号公報
【特許文献3】特開2022-93587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、本願出願前において、ステアリン酸塩は植物抽出物等を含有する固形状組成物の色調変化の抑制に有効であることが知られていたところ、本発明者の検討により、コーヒー豆抽出物をステアリン酸塩と共存させると、意外なことに、保存時の色調変化が促進されるという、上記した従来技術とは相反する作用を示すことが新たに判明した。そして、その色調変化は、ステアリン酸塩の増量に伴い増強することが本発明者の検討により確認された。
本発明の課題は、保存時の色調変化が抑制されたコーヒー豆抽出物含有固形状組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題に鑑み検討した結果、コーヒー豆抽出物とステアリン酸塩を含有する固形状組成物に、セルロース誘導体をステアリン酸塩に対して特定の量比で含有させることで、保存時の色調変化を抑制できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔5〕を提供するものである。
〔1〕次の成分(A)~(C);
(A)コーヒー豆抽出物
(B)ステアリン酸塩 1~9質量%、及び
(C)セルロース誘導体
を含み、
成分(B)と成分(C)との質量比[(C)/(B)]が0.03~11である、
固形状組成物。
〔2〕成分(A)が、生コーヒー豆抽出物及び浅焙煎コーヒー豆抽出物から選択される1以上である、前記〔1〕記載の固形状組成物。
〔3〕成分(A)の含有量は、固形状組成物中の(A)クロロゲン酸類の含有量が3~35質量%となる量である、前記〔1〕又は〔2〕記載の固形状組成物。
〔4〕成分(C)が、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及びアルキルセルロースから選択される1以上を含む、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一に記載の固形状組成物。
〔5〕成分(D)として、賦形剤を更に含有する、前記〔1〕~〔4〕のいずれか一に記載の固形状組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、保存時の色調変化が抑制されたコーヒー豆抽出物含有固形状組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<固体状組成物>
(コーヒー豆抽出物)
本発明の固形状組成物は、成分(A)としてコーヒー豆抽出物を含有する。
コーヒー豆抽出物は、生コーヒー豆抽出物でも、焙煎コーヒー豆抽出物でもよい。
焙煎コーヒー豆抽出物は、クロロゲン酸類含量の観点から、浅焙煎コーヒー豆抽出物が好ましい。ここで、本明細書において「浅焙煎コーヒー豆」とは、L値が30以上60以下の焙煎コーヒー豆をいい、「L値」とは、黒をL値0とし、白をL値100として、焙煎コーヒー豆の明度を色差計で測定したものである。色差計として、例えば、スペクトロフォトメーター SE2000((株)日本電色株式会社製)を用いることができる。また、本明細書において「クロロゲン酸類」とは、3-カフェオイルキナ酸、4-カフェオイルキナ酸及び5-カフェオイルキナ酸のモノカフェオイルキナ酸と、3-フェルラキナ酸、4-フェルラキナ酸及び5-フェルラキナ酸のモノフェルラキナ酸を併せての総称である。本発明においては、上記6種のクロロゲン酸類のうち少なくとも1種を含有すればよい。なお、クロロゲン酸類は、塩や水和物の形態であってもよい。塩としては生理学的に許容されるものであれば特に限定されないが、例えば、アルカリ金属塩を挙げることができる。
【0010】
浅焙煎コーヒー豆のL値は、クロロゲン酸類含量の観点から、33以上が好ましく、36以上がより好ましく、40以上が更に好ましく、また風味の観点から、58以下が好ましく、56以下が更に好ましい。浅焙煎コーヒー豆のL値は、好ましくは33~60であり、より好ましくは36~58であり、更に好ましくは40~56である。
なお、成分(A)は、単独で用いても、2以上を併用してもよい。また、コーヒー豆の豆種及び産地は特に限定されず、豆種や産地の異なるコーヒー豆を1又は2以上使用してもよい。
【0011】
中でも、成分(A)としては、本発明の効果を享受しやすい点から、生コーヒー豆抽出物及び浅焙煎コーヒー豆抽出物から選択される1以上が好ましく、生コーヒー豆抽出物及び、L値が33~60である焙煎コーヒー豆の抽出物から選択される1以上がより好ましく、生コーヒー豆抽出物が更に好ましい。
【0012】
コーヒー豆抽出物の抽出方法及び抽出条件は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。また、コーヒー豆抽出物は、濃縮又は乾燥してもよく、クロロゲン酸類の純度を高めるために精製しても構わない。濃縮、乾燥及び精製の各方法は、公知の方法を採用すればよい。
【0013】
成分(A)の含有量は、生理機能物質であるクロロゲン酸類の含有量を指標とすることができる。成分(A)の含有量は、生理効果の観点から、本発明の固形状組成物中の(A)クロロゲン酸類の含有量が次に示す量となることが好ましい。即ち、本発明の固形状組成物中の(A)クロロゲン酸類の含有量は、生理効果強化の観点から、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、7質量%以上が更に好ましく、9質量%以上がより更に好ましく、また保存時の色調変化抑制の観点、風味の観点から、35質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下が更に好ましい。かかる(A)クロロゲン酸類の含有量は、本発明の固形状組成物中に、好ましくは3~35質量%であり、より好ましくは5~30質量%であり、更に好ましくは7~25質量%、より更に好ましくは9~25質量%である。ここで、本明細書において、(A)クロロゲン酸類の含有量は上記6種の合計量に基づいて定義される。なお、(A)クロロゲン酸類が塩又は水和物の形態である場合、(A)クロロゲン酸類の含有量は、遊離酸であるクロロゲン酸類に換算した値とする。(A)クロロゲン酸類の含有量は、通常知られている測定法のうち測定試料の状況に適した分析法により測定することが可能であり、例えば、液体クロマトグラフィで分析することができる。具体的には、後掲の実施例に記載の方法が挙げられる。なお、測定の際には装置の検出域に適合させるため、試料を凍結乾燥したり、装置の分離能に適合させるため試料中の夾雑物を除去したりする等、必要に応じて適宜処理を施してもよい。
【0014】
本発明の固体状組成物は、成分(B)としてステアリン酸塩を含有する。成分(B)は、単独で用いても、2以上を併用してもよい。
成分(B)としては生理学的に許容されるものであれば特に限定されないが、例えば、ステアリン酸の金属塩を挙げることができる。金属塩としては、例えば、1価金属の塩、2価金属の塩が挙げられる。具体的には、例えば、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛を挙げることができる。
中でも、成分(B)としては、本発明の効果を享受しやすい点から、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸カルシウムから選択される1以上が好ましく、ステアリン酸カルシウムが更に好ましい。
【0015】
成分(B)の含有量は、本発明の固体状組成物中に、1~9質量%であるが、保存時の色調変化抑制の観点から、成分(B)の含有量の上限値は、8.5質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、7.3質量%以下が更に好ましい。また、成分(B)の含有量は、本発明の固形状組成物中に、好ましくは1~8.5質量%であり、より好ましくは1~8質量%であり、更に好ましくは1~7.5質量%である。なお、成分(B)の含有量の下限値は、製造性の観点から1.1質量%以上でも、1.3質量%以上でもよく、1.5質量%以上であっても構わない。
【0016】
本発明の固体状組成物は、成分(C)としてセルロース誘導体を含有する。ここで、本明細書において「セルロース誘導体」とは、置換基を有するセルロースをいい、置換基を有しないセルロース自体は含まれない。セルロース誘導体は、モノマー単位(グルコース)中の全ての水酸基の水素原子が置換基で置換される必要はなく、一部の水酸基の水素原子が置換基で置換されていればよい。モノマー単位中の置換基の個数は、通常1~5個であり、好ましくは1~3個であり、更に好ましくは1個又は2個である。
【0017】
成分(C)としては、例えば、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、カルボキシセルロース、アルキルセルロース又はそれらの塩を挙げることができる。成分(C)は、単独で用いても、2以上を併用してもよい。
【0018】
塩としては、例えば、金属塩、酸付加塩、塩基との塩を挙げることができる。金属塩としては、例えば、1価金属(例えば、ナトリウム、カリウム)との塩、2価金属(例えば、カルシウム、マグネシウム)との塩が挙げられる。酸付加塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩化水素、臭化水素、硫酸、リン酸)との塩、有機酸(例えば、酢酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、モノメチル硫酸)との塩を挙げることができる。塩基との塩としては、例えば、無機塩基(例えば、アンモニア)との塩、有機塩基(例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、エタノールアミン、モノアルキルエタノールアミン、ジアルキルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン)との塩が挙げられる。塩としては、金属塩が好ましい。
【0019】
ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース及びアルキルセルロースにおけるアルキルは、鎖状でも、分岐鎖状でもよく、炭素数は1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~4が更に好ましい。なお、アルキルを2以上有する場合、同一であっても、異なっていてもよい。
【0020】
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースは、ヒドロキシアルキル及びアルキルの双方を有するセルロースであり、例えば、ヒドロキシメチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシブチルメチルセルロースが挙げられる。
【0021】
ヒドロキシアルキルセルロースとしては、例えば、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、ヒドロキシブチルセルロース、ヒドロキシペンチルセルロース、ヒドロキシヘキシルセルロースが挙げられる。
【0022】
カルボキシアルキルセルロースとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、カルボキシブチルセルロース、カルボキシペンチルセルロース、カルボキシヘキシルセルロースが挙げられる。
【0023】
アルキルセルロースとしては、例えば、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、プロピルセルロース、ブチルセルロース、ペンチルセルロース、ヘキシルセルロースが挙げられる。
【0024】
中でも、成分(C)としては、保存時の色調変化抑制の観点から、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及びアルキルセルロースから選択される1以上が好ましく、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースが更に好ましい。ヒドロキシアルキルアルキルセルロースとしては、ヒドロキシメチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシブチルメチルセルロースから選択される1以上が好ましい。また、アルキルセルロースとしては、メチルセルロース、エチルセルロース及びプロピルセルロースから選択される1以上が好ましい。
【0025】
成分(B)と成分(C)との質量比[(C)/(B)]は、0.03~11であるが、保存時の色調変化抑制の観点から、0.04以上が好ましく、0.05以上が更に好ましく、そして10.5以下が好ましく、9.5以下がより好ましく、9.0以下がさらに好ましく、8.5以下がより更に好ましい。かかる質量比[(C)/(B)]は、好ましくは0.04~10.5であり、より好ましくは0.05~9.5であり、更に好ましくは0.05~9.0であり、より更に好ましくは0.05~8.5である。
【0026】
また、成分(B)と成分(C)との合計含有量[(C)+(B)]は、保存時の色調変化抑制の観点から、本発明の固形状組成物中に、20質量%以下が好ましく、18質量%以下がより好ましく、17質量%以下が更に好ましく、16.5質量%以下がより更に好ましい。なお、かかる合計含有量[(C)+(B)]の下限値は、製造性の観点から1.1質量%以上が好ましく、1.3質量%以上がより好ましく、1.5質量%以上が更に好ましい。また、かかる合計含有量[(C)+(B)]は、本発明の固形状組成物中に、好ましくは1.1~20質量%であり、より好ましくは1.3~18質量%であり、更に好ましくは1.5~17質量%であり、より更に好ましくは1.5~16.5質量%である。
【0027】
なお、成分(C)の含有量は、上記した質量比[(C)/(B)]を満たせば特に限定されないが、保存時の色調変化抑制の観点から、本発明の固形状組成物中に、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上が更に好ましく、そして製造性の観点から12.5質量%以下が好ましく、11質量%以下がより好ましく、9.5質量%以下が更に好ましく、9質量%以下がより更に好ましい。また、成分(C)の含有量は、本発明の固形状組成物中に、好ましくは0.1~12.5質量%であり、より好ましくは0.3~11質量%であり、更に好ましくは0.5~9.5質量%であり、より更に好ましくは0.5~9質量%である。
【0028】
本発明の固形状組成物は、固形状とするために、成分(D)として賦形剤を含有することができる。成分(D)は、単独で用いても、2以上を併用してもよい。
成分(D)としては、例えば、有機系賦形剤、無機系賦形剤を挙げることができる。
有機系賦形剤としては、例えば、乳糖、でんぷん、糖アルコールを挙げることができる。
無機系賦形剤としては、例えば、塩化ナトリウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウムを挙げることができる。
中でも、成分(D)としては、本発明の効果を享受しやすい点で、有機系賦形剤が好ましく、糖アルコール及びでんぷんから選択される1以上を含むことが好ましく、糖アルコールを含むことが好ましい。
【0029】
糖アルコールとしては、例えば、単糖のアルコール、二糖のアルコール、三糖以上のアルコールを挙げることができる。糖アルコールは、単独で用いても、2以上を併用してもよい。
単糖のアルコールとしては、例えば、エリスリトール、キシリトール等のペンチトール、ソルビトール、マンニトール等のヘキシトールを挙げることができる。また、二糖のアルコールとしては、例えば、還元麦芽糖(マルチトール)、ラクチトール(還元乳糖)、還元パラチノース(イソマルト)、トレハロース、パラチノースが挙げられる。三糖以上のアルコールとしては、例えば、マルトトリイトール、イソマルトトリイトール、パニトールを挙げることができる。
中でも、糖アルコールとしては、本発明の効果をより一層享受しやすい点で、単糖のアルコール及び二糖のアルコールから選ばれる1以上が好ましく、二糖のアルコールがより好ましく、還元麦芽糖(マルチトール)が更に好ましい。
【0030】
でんぷんとしては、植物から採取したでんぷん、又はそれを加工したもの(以下、「加工でんぷん」とも称する)であって、食用に供されるものであれば特に限定されない。でんぷんは、単独で用いても、2以上を併用してもよい。
植物から採取したでんぷんとしては、例えば、コーンスターチ、小麦でんぷん、米でんぷん、馬鈴薯でんぷん、甘藷でんぷん、タピオカでんぷんを挙げることができる。なお、植物から採取したでんぷんは、必要により公知の方法を用いて精製しても構わない。
【0031】
加工でんぷんとしては、原料でんぷんを、例えば、加水分解処理、エステル化又はエーテル化等の架橋処理の他、酸化処理、α化処理、加熱処理、湿熱処理、漂白処理、殺菌処理、酸処理、アルカリ処理、酵素処理等したものを挙げることができる。加工でんぷんの具体例として、例えば、デキストリンを挙げることができる。ここで、本明細書において「デキストリン」とは、原料でんぷんを酵素や酸で分解したものをいう。原料でんぷんの分解の程度を把握する指標としてデキストロース当量(DE値)が一般に用いられているが、本発明で使用するデキストリンのDE値は、本発明の効果を享受しやすい点から、2~30が好ましく、2~13がより好ましく、2~5が更に好ましい。なお、DE値は通常知られているデキストロースの測定法により分析することが可能であるが、例えば、ウイルシュテッターシューデル法を挙げることができる。また、デキストリンは、糖がグリコシド結合によって重合した分子構造を有しているが、グリコシド結合は、鎖状に結合していても、環状に結合していても、これらの混合物であっても構わない。糖の結合方式としては、α-1,4結合、α-1,6結合、β-1,2結合、β-1,3結合、β-1,4結合、β-1,6結合等が挙げられ、単一の結合方式のみでも、2種以上の結合方式でも構わない。
【0032】
中でも、でんぷんとしては、本発明の効果を享受しやすい点で、デキストリンが好ましい。
【0033】
成分(D)の含有量は、通常、本発明の固形状組成物の総量から成分(A)、成分(B)及び成分(C)、並びに他の成分の合計含有量を除いた残部である。例えば、成分(D)の含有量は、本発明の効果を享受しやすい点で、本発明の固形状組成物中に、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましく、そして85質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、75質量%以下が更に好ましい。また、成分(D)の含有量は、本発明の固形状組成物中に、20~85質量%であり、より好ましくは25~80質量%であり、更に好ましくは30~75質量%である。
【0034】
本発明の固形状組成物は、嗜好性を高めるために、他の成分を含有することができる。他の成分としては、飲食品や医薬品などの最終的な製品において許容される成分であって、経口摂取可能な成分であれば特に限定されないが、例えば、甘味料、酸味料といった矯味剤や、ビタミン類、ミネラル類、抗酸化剤、滑沢剤、着香剤を挙げることができる。また、粉体混合物の流動性の改善を目的に、タルク、二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムといった流動化剤を含有させることもできる。他の成分は、単独で用いても、2以上を併用してもよい。他の成分の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲内で適宜設定することができる。
【0035】
本発明の固体状組成物は、常温(20℃±15℃)において固体であり、その形態は特に限定されず、粉末状、顆粒状、錠状、棒状、板状、ブロック状等の適宜の形態を採り得る。ここで、本明細書において「顆粒状」とは、メジアン径が0.5~2.0mmである固体をいい、「粉末状」とは、顆粒状よりもメジアン径が小さな固体をいう。また、「メジアン径」とは、体積基準の積算分布において頻度50%に相当する粒子径(D50)である。なお、粒度分布は、レーザ回折/ 散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定することができる。
【0036】
本発明の固体状組成物の水分含量は、保存時の色調変化抑制の観点から、6質量%以下が好ましく、4質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましい。なお、固体状組成物の水分含量の下限値は特に限定されず、0質量%であっても構わない。ここで、本明細書において「水分含有量」とは、試料5gを赤外線水分計で105℃にて15分乾燥し、質量減少量から算出した値をいう。赤外線水分計としては、例えば、株式会社ケット科学研究所製のFD-660を使用することができる
【0037】
本発明の固形状組成物は、飲食品として提供されてもよいし、経口投与用の医薬品として提供されてもよいが、好ましくは飲食品である。製品形態としては、例えば、サプリメント、散剤、錠剤、顆粒剤を挙げることができる。中でも、本発明の効果を享受しやすい点で、散剤、錠剤、顆粒剤が好ましく、錠剤が更に好ましい。
【0038】
本発明の固形状組成物は、容器や袋に収容してもよく、例えば、紙、プラスチック、ガラス、金属製の容器や袋等に収容する態様が挙げられる。また、1回の経口摂取量ごとに小分け包装してもよい。中でも、1回の経口摂取量ごとに小分け包装された形態(スティック包装、分包包装等)が好ましい。包材としては、通常、食品や医薬品に使用されているものであれば限定されないが、例えば、アルミ箔、合成樹脂(ポリエチレンテレフタレート等)、ラミネート紙等を組み合わせたものを挙げることができる。容器内及び包材内は、品質維持の観点から、窒素ガスを充填してもよい。
【0039】
本発明の固形状組成物は、保存時の色調変化が抑制されている。具体的には、例えば、本発明の固形状組成物を低密度ポリエチレン製袋に入れ、40℃、相対湿度75%の雰囲気下にて9時間保存したときに、保存後の固形状組成物のL値、a値及びb値と、保存前(例えば、製造直後)の固形状組成物のL値、a値及びb値とから、下記式(I)により求められる値(ΔE ab)を、好ましくは7未満、より好ましくは6以下、更に好ましくは5以下とすることができる。
【0040】
ΔE ab=[(ΔL+(Δa+(Δb1/2 (I)
〔式中、ΔL、Δa及びΔbは、下記式により算出される値である。
ΔL=(保存後の固形状組成物のL値)-(保存前の固形状組成物のL値)
Δa=(保存後の固形状組成物のa値)-(保存前の固形状組成物のa値)
ΔL=(保存後の固形状組成物のb値)-(保存前の固形状組成物のb値)〕
【0041】
<固形状組成物の製造方法>
本発明の固形状組成物は、その形態に応じて適宜の方法により製造することが可能である。以下、好適な一実施形態である錠剤の製造方法について説明する。
錠剤の製造方法は、例えば、造粒物とステアリン酸塩とを含む混合物を打錠成型すればよい。
造粒物は、公知の方法に製造することができるが、湿式造粒法が好ましい。湿式造粒法としては、保存時の色調変化抑制、打錠性向上の観点から、流動層造粒法が好ましい。
流動層造粒法は、流動層造粒装置内に熱風を送り込み、粉体原料を空中に巻き上げることによって流動状態にした粉体原料に結合液を噴霧し、凝集又は被覆により粒状物に成長させる造粒法である。したがって、流動層造粒においては、流動層造粒装置内の造粒層の下方から熱風を送り込み、粉体原料を空中に巻き上げて流動状態とし、そこにスプレーノズルより結合液を噴霧する。
【0042】
流動層造粒装置としては、流動層造粒に通常使用されているものであれば特に限定されないが、例えば、被処理物を収容、造粒及び乾燥するための造粒槽と、被処理物を流動させる熱風を供給する熱風供給装置と、被処理物に液体を噴霧するためのスプレーノズルとを備える装置が挙げられる。このような流動層造粒装置として、例えば、フローコーター(フロイント産業株式会社製)、GPCG-CTシリーズ、WST/WSGシリーズ、BFシリーズ、パルス流動層造粒乾燥装置、MPシリーズ(以上、株式会社パウレック製)を挙げることができる。
【0043】
粉体原料は、少なくともコーヒー豆抽出物及び賦形剤を含む。粉体原料は、流動層造粒装置に個別に投入しても、混合して投入してもよい。混合方法は、原料を均一に混合できれば特に限定されず、手混合でも、混合機を用いても構わない。混合機としては、例えば、コンテナミキサー、V型混合機、リボン型混合機、高速攪拌混合機(ハイスピードミキサー)を挙げることができる。混合温度は特に限定はされないが、通常10~35℃であり、好ましくは15~25℃である。また、混合時間も特に限定されないが、通常0.5~10分間であり、好ましくは1~5分間である。
【0044】
結合液は、通常水性媒体を含む。水性媒体としては、例えば、水、エタノール、水とエタノールとの混合液(エタノール水溶液)を挙げることができる。また、エタノール水溶液を用いる場合、水とエタノールとの混合割合は特に限定されず、適宜選択することができる。また、エタノール水溶液は、市販のエタノール製剤のほか、酒精を用いてもよい。酒精としては、食用として供されるものであれば特に限定はされない。例えば、でんぷん質や糖類を含有する天然原料から酵母の酒精発酵作用で生成したもの、又はこれらの成分を含むものがあり、清酒、焼酎、ワイン、ウイスキー、ブランデー等の酒類、みりん等の発酵調味料等のように、エタノールを含有する液を用いることもできる。
【0045】
また、結合液には、セルロース誘導体の全量又は一部を含有させてもよい。中でも、保存時の色調変化のより一層の抑制の観点から、結合液にセルロース誘導体を全量含有させることが好ましい。なお、結合液にセルロース誘導体の一部を含有させる場合、その含有量は適宜選択することが可能であり、また残部は粉体原料に含有させればよい。
【0046】
結合液中のセルロース誘導体濃度は適宜選択可能であるが、通常1~25質量%であり、好ましくは1.5~20質量%であり、更に好ましくは2~15質量%である。
【0047】
粉体原料を流動化するために吹き込む熱風としては、空気を使用できるが、窒素、二酸化炭素等の不活性ガスや、不活性ガスを含む混合ガスを用いてもよい。熱風として、不活性ガスや混合ガスを用いると、酸化による変質を防止することができる。
【0048】
熱風温度は、適宜選択可能であるが、保存時の色調変化抑制、打錠性向上の観点から、通常60~95℃であり、好ましくは65~90℃であり、更に好ましくは70~95℃である。
【0049】
噴霧速度は、適宜選択可能であるが、保存時の色調変化抑制、打錠性向上の観点から、通常2~8mL/minであり、好ましくは3~7mL/minであり、更に好ましくは4~5mL/minである。
また、噴霧圧は、適宜選択可能であるが、保存時の色調変化抑制、打錠性向上の観点から、通常0.1~0.3MPaであり、好ましくは0.13~0.2MPaである。
【0050】
流動層造粒後、造粒物を乾燥し、必要に応じて整粒してもよい。乾燥は、造粒と同時に行ってもよい。造粒物の乾燥は、通常の乾燥方法により行うことができる。乾燥機としては、例えば、恒温乾燥機、通風乾燥機、流動層乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機を挙げることができる。乾燥条件は、適宜設定することが可能である。また、整粒は、篩を用いて造粒物を篩選別し、所望の粒子径に制御すればよい。
【0051】
次に、造粒物とステアリン酸塩とを含む混合物を打錠成型する。
打錠成形は、公知の方法を採用することが可能であるが、例えば、内部滑沢法、外部滑沢法を挙げることができる。中でも、本発明の効果を享受しやすい点で、内部滑沢法が好ましい。
打錠成形には、公知の打錠機を使用することが可能であり、例えば、単発打錠機、ロータリー式打錠機、高速回転式打錠機を挙げることができる。
【0052】
錠剤1錠当りの質量は、成分(A)の有効性の観点から、通常0.05~3gである。
【0053】
このようにして錠剤を製造することができるが、好適な錠剤の製造方法としては、次の方法を挙げることができる。
次の工程(a)及び(b);
(a)流動層造粒装置内に熱風を送り込み、流動状態にした粉体原料に結合剤を噴霧して造粒物を得る造粒工程、及び
(b)造粒物及びステアリン酸塩を含む混合物を打錠成型する打錠工程
を備え、
粉体原料がコーヒー豆抽出物及び賦形剤を含み、結合剤がセルロース誘導体及び水性媒体を含む、錠剤の製造方法。
【実施例0054】
以下、実施例及び比較例によって本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
【0055】
1.クロロゲン酸類の分析
試料溶液をフィルター(0.45μm)で濾過し、高速液体クロマトグラフ(型式LC-20 Prominence,島津製作所製)を用い、カラム〔Cadenza CD-C18(3μm,4.6mmφ×150mm,Imtakt)〕を装着し、カラム温度35℃にてグラディエント法により行った。移動相A液は酢酸を0.05mol/L、酢酸ナトリウムを0.01mol/L、及びHEDPOを0.1mmol/L含有する5%アセトニトリル溶液、B液はアセトニトリル溶液とし、流速は1mL/分、試料注入量は10μL、UV検出器波長は325nmの条件で行った。なお、グラディエントの条件は、以下のとおりである。
【0056】
濃度勾配条件
時間(分) A液濃度(体積%) B液濃度(体積%)
0 100% 0%
10 100% 0%
15 95% 5%
20 95% 5%
22 92% 8%
50 92% 8%
52 10% 90%
60 10% 90%
60.1 100% 0%
70 100% 0%
【0057】
・3-カフェオイルキナ酸 : 5.3min
・5-カフェオイルキナ酸 : 8.8min
・4-カフェオイルキナ酸 :11.6min
・3-フェルラキナ酸 :13.0min
・5-フェルラキナ酸 :19.9min
・4-フェルラキナ酸 :21.0min
ここで求めたarea%から5-カフェオイルキナ酸(東京化成工業株式会社製)を標準物質とし、クロロゲン酸類の含有量(質量%)を求めた。
【0058】
2.ステアリン酸塩の分析
ステアリン酸塩の分析は第十八改正日本薬局方記載の次に示す方法にしたがって行う。以下の手順にて分析用試料溶液を調製する。
試料1.0gを還流冷却器を付けた小さなコニカルフラスコにとる。三フッ化ホウ素・メタノール試液5.0mLを加えて振り混ぜ、完全に溶けるまで約10分間加熱攪拌する。次いで、ヘプタン4mLを還流冷却器上部から加え、10分間加熱攪拌した後に冷却する。冷却後、塩化ナトリウム飽和溶液20mLを加えて振り混ぜ、放置して液を二層に分離させる。分離した二層のうちヘプタン層(上層)を、あらかじめヘプタンで洗っておいた約0.1gの無水硫酸ナトリウムを通して別のフラスコにとる。この液1.0mLを10mLのメスフラスコにとり、ヘプタンを加えて10mLとし、分析用試料溶液とし、次の条件でガスクロマトグラフィーにより試験を行う。
【0059】
分析機器の装置構成は次の通りである。
・検出器:水素炎イオン化検出器
・カラム:内径0.32mm、長さ30mのフューズドシリカ管の内面に厚さ0.5μmでガスクロマトグラフィー用ポリエチレングリコール15000-ジエポキシドを被覆したもの
【0060】
分析条件は次の通りである。
・カラム温度:注入後2分間70℃に保ち、その後、毎分5℃で240℃まで昇温し、240℃を5分間保持
・注入口温度:220℃付近の一定温度
・検出器温度:260℃付近の一定温度
・キャリヤーガス:ヘリウム
・流量:毎分2.4mL
・注入量:1μL
・スプリットレス
【0061】
3.セルロース誘導体の分析
セルロース誘導体の分析は、HPLC(高速液体クロマトグラフィ)法により、次に示す方法にしたがって行った。
分析機器の装置構成は次の通りである。
・検出器 :Shodex RI
・カラム :Shodex OHpac SB-806M HQ(8.0mm I.D.×300mm)×2(株式会社レゾナック製)
【0062】
分析条件は次の通りである。
・カラム温度:40℃
・移動相 :0.1M NaClaq.
・流量 :1mL/min
・試料注入量:20μL
【0063】
4.糖アルコールの分析
糖アルコールの分析は、HPLC(高速液体クロマトグラフィ)法により、次に示す方法にしたがって行った。
分析機器の装置構成は次の通りである。
・検出器 :示差屈折計 RID-10A(株式会社島津製作所製)
・カラム :Shodex Asahipak NH2P-50 4E、φ4.6mm×250mm(株式会社レゾナック製)
【0064】
分析条件は次の通りである。
・カラム温度:室温
・移動相 :アセトニトリル及び水の混液(81:19 体積比)
・流量 :1mL/min
・試料注入量:20μL
【0065】
以下の手順にて分析用試料溶液を調製した。
試料を3g量りとり、これに水10mLを加えて溶解し中和した溶液を、超音波洗浄器を用いて超音波抽出を30分間行った。その溶液に水を加えて20mLに定容した。その溶液をメンブレンフィルターでろ過し、分析用試料溶液とした。その分析用試料溶液を高速液体クロマトグラフィ分析に供した。
【0066】
5.色調変化抑制効果の評価
錠剤を低密度ポリエチレン製袋(ユニパックA-4、株式会社生産日本社製)に入れ、40℃、相対湿度75%の雰囲気下にて9時間保存した。製造直後と保存9時間後の錠剤について、分光色彩計(CM-5、コニカミノルタ株式会社製)を用いて、SCE方式にてL値、a値及びb値を測定した。そして、下記式(II)にしたがって各錠剤の保存前後における色差(ΔE ab)を求めた。
【0067】
ΔE ab=[(ΔL+(Δa+(Δb1/2 (II)
〔式中、ΔL、Δa及びΔbは、下記式により算出される値である。
ΔL=(保存後の錠剤のL値)-(保存前の錠剤のL値)
Δa=(保存後の錠剤のa値)-(保存前の錠剤のa値)
Δb=(保存後の錠剤のb値)-(保存前の錠剤のb値)〕
【0068】
6.原料
本実施例において使用した原料を以下に示す。
(1)ステアリン酸カルシウム
ステアリン酸カルシウム 植物性(太平化学産業株式会社製)
(2)セルロース誘導体
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC):メトローズSE-03(信越化学工業株式会社製)
メチルセルロース(MC):メトローズMCE-4(信越化学工業株式会社製)
(3)マルチトール
レシス微粉(三菱商事ライフサイエンス株式会社製)
(4)二酸化ケイ素
カープレックスFPS-500(エボニックジャパン株式会社製)
【0069】
製造例1
生コーヒー豆抽出物
L値50のロブスタ種の未粉砕生コーヒー豆45gを、容積208cm3のカラムに充填した。次に、カラム下方の供給バルブからカラムに通液速度2[hr-1]にて80℃の熱水を3質量部供給した。次に、カラム下方の供給バルブを閉じた後、上方のシャワーノズルから80℃の熱水を、通液速度2[hr―1] 、通液倍数12(w/w)の条件にて供給すると同時に、カラム下方の排出バルブを開放して抽出液を得た。抽出液をエバポレーター(東京理科器械社製、N-1100V)にて減圧濃縮し、濃縮物を得た。次に、濃縮物をイオン交換水により希釈し、固形分濃度が1.7質量%の希釈液を得た。次に、希釈液を10.4gの活性炭(クラレケミカル社製、クラレコールGW)の充填されたカラムに、通液速度7[hr-1]にてアップフローで25℃を保ちながら通液し、活性炭処理液を得た。得られた活性炭処理液を、スプレードライヤー(ヤマト科学株式会社製、DL-41)を用いて吸気温度180℃、流量0.9m/min、噴霧圧0.1MPa、送液流量23g/minで乾燥し、粉末の生コーヒー豆抽出物を得た。生コーヒー豆抽出物は、固形分中のクロロゲン酸類の含有量が43.6質量%であった。
【0070】
調製例1
(1)結合液(i)の調製
表1に示す量のヒドロキシプロピルメチルセルロースを水に溶解し、表1に示すヒドロキシプロピルメチルセルロース濃度の結合液(i)を調製した。
(2)造粒物(i)の調製
表1に示す量の生コーヒー豆抽出物及びマルチトールを流動層造粒機(FLOW COATER FL-LABO、フロイント産業株式会社製)に投入した。次に、吸気温度80℃、吸気風量0.3m/min、パルス圧0.36MPaで装置内に送風し、生コーヒー豆抽出物及びマルチトールを流動化させ、スプレー速度4.5mL/min、スプレー圧0.18MPa、スプレー流量30NL/minの条件で表1に示す量の結合液(i)を噴霧し、造粒した。そして、吸気温度80℃、吸気風量0.3m/min、パルス圧0.36MPaで装置内に送風した状態にて10分間乾燥を行った後、篩目30メッシュの篩にて篩過し、造粒物(i)を得た。
【0071】
調製例2~4
(1)結合液(ii)~(iv)の調製
表1に示す量のヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いたこと以外は、調製例1と同様の操作により、表1に示すヒドロキシプロピルメチルセルロース濃度の結合液(ii)~(iv)を調製した。
(2)造粒物(ii)~(iv)の調製
表1に示す量の生コーヒー豆抽出物及びマルチトールを用い、表1に示す量の結合液(ii)~(iv)を噴霧したこと以外は、調製例1と同様の操作により、造粒物(ii)~(iv)を得た。
【0072】
調製例5
(1)結合液(v)の調製
ヒドロキシプロピルメチルセルロースに替えて、表1に示す量のメチルセルロースを用いたこと以外は、調製例1と同様の操作により、表1に示すメチルセルロース濃度の結合液(v)を調製した。
(2)造粒物(v)調製
表1に示す量の生コーヒー豆抽出物及びマルチトールを用い、表1に示す量の結合液(v)を噴霧したこと以外は、調製例1と同様の操作により、造粒物(v)を得た。
【0073】
比較調製例1
(1)結合液(vi)の調製
水を結合液(vi)として使用した。
(2)造粒物の調製
表1に示す量の生コーヒー豆抽出物及びマルチトールを用い、表1に示す量の結合液(vi)を噴霧したこと以外は、実施例1と同様の操作により、造粒物(vi)を得た。
【0074】
【表1】
【0075】
実施例1
造粒物(i)89.3質量部を、ポリエチレン袋(ユニパックI-4、株式会社生産日本社製)に入れ、これに二酸化ケイ素0.9質量部を添加し、更にステアリン酸カルシウム及びマルチトールを最終的に表2に示す組成となるように計9.8質量部添加した後、手混合して混合物を調製した。次いで、得られた混合物を用いて下記の条件で打錠し、表2に示す組成の錠剤を製造した。得られた錠剤について分析、評価を行った。その結果を表2に示す。
【0076】
打錠条件
・打錠機:ミニプレスキットCDM-5M(理研機器株式会社製)
・錠剤重量:400mg
・杵直径、形状:φ10、R13
・打錠圧:10MPa
【0077】
実施例2~3及び比較例1
造粒物の種類及びセルロース誘導体の配合量を表2にしたがって変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により混合物を調製した。次いで、この混合物を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作により、表2に示す組成の錠剤を製造した。得られた錠剤について分析、評価を行った。その結果を表2に示す。
【表2】
【0078】
実施例4~9及び比較例2~4
造粒物の種類、並びにステアリン酸塩及びセルロース誘導体の配合量を表3にしたがって変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により混合物を調製した。次いで、この混合物を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作により、表3に示す組成の錠剤を製造した。得られた錠剤について分析、評価を行った。その結果を表3に示す。
【0079】
【表3】
【0080】
実施例10~12及び比較例5
造粒物及びセルロース誘導体の種類、並びに、並びにステアリン酸塩及びセルロース誘導体の配合量を表4にしたがって変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により混合物を調製した。次いで、この混合物を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作により、表4に示す組成の錠剤を製造した。得られた錠剤について分析、評価を行った。その結果を表4に示す。
【0081】
【表4】
【0082】
実施例13~16
造粒物の種類、並びに生コーヒー抽出物、並びにステアリン酸塩及びセルロース誘導体の配合量を表5にしたがって変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により混合物を調製した。次いで、この混合物を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作により、表5に示す組成の錠剤を製造した。得られた錠剤について分析、評価を行った。その結果を表5に示す。
【0083】
【表5】
【0084】
実施例17~19
造粒物の種類、並びにステアリン酸塩及びセルロース誘導体の配合量を表6にしたがって変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により混合物を調製した。次いで、この混合物を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作により、表6に示す組成の錠剤を製造した。得られた錠剤について分析、評価を行った。その結果を表6に示す。
【0085】
【表6】
【0086】
表1~6から、コーヒー豆抽出物とステアリン酸塩を含有する固形状組成物に、セルロース誘導体をステアリン酸塩に対して特定の量比で含有させることで、保存時の色調変化を抑制できることがわかる。