(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172833
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】電子制御装置、制御システム、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
G06F 11/34 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
G06F11/34 176
G06F11/34 133
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090834
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】下村 颯志
(72)【発明者】
【氏名】植松 裕
(72)【発明者】
【氏名】遠山 仁博
(72)【発明者】
【氏名】西野 公雄
【テーマコード(参考)】
5B042
【Fターム(参考)】
5B042MA08
5B042MC29
5B042MC40
(57)【要約】
【課題】プロセッサのピーク処理負荷を増加させずにログを収集する。
【解決手段】他の装置と通信する電子制御装置であって、ログ情報の読み出し信号を所定のタイミングで前記他の装置に出力する読み取り制御部と、制御周期で変化する処理負荷に応じて前記ログ情報の処理を決定する判断部と、前記ログ情報をメモリに保存する保存部とを備え、前記判断部は、前記電子制御装置の処理負荷が所定の閾値より高い場合、前記ログ情報をメモリに保存しないと決定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の装置と通信する電子制御装置であって、
ログ情報の読み出し信号を所定のタイミングで前記他の装置に出力する読み取り制御部と、
制御周期で変化する処理負荷に応じて前記ログ情報の処理を決定する判断部と、
前記ログ情報をメモリに保存する保存部とを備え、
前記判断部は、前記電子制御装置の処理負荷が所定の閾値より高い場合、前記ログ情報をメモリに保存しないと決定することを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子制御装置であって、
受信した前記ログ情報を一時的に格納する受信バッファ部と、
前記電子制御装置が受信するデータに関する受信データ情報を保持する情報保持部と、
前記受信データ情報から前記電子制御装置の処理負荷を予測する処理負荷予測部と、
前記予測された処理負荷に応じて、前記受信バッファ部から前記ログ情報を読み出すタイミングを制御する読み出し制御部とを備えることを特徴とする電子制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電子制御装置であって、
前記ログ情報にシーケンス情報を付与するシーケンス付与部を備えることを特徴とする電子制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電子制御装置であって、
前記電子制御装置の動作モード毎に前記電子制御装置が受信するデータに関する受信データ情報を保持する情報保持部と、
前記受信データ情報から前記電子制御装置の処理負荷を予測する処理負荷予測部と、
前記動作モードの変更を検知する動作モード検知部とを備え、
前記処理負荷予測部は、前記動作モード毎に前記受信データ情報から前記電子制御装置の処理負荷を予測することを特徴とする電子制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電子制御装置であって、
前記ログ情報を格納するバッファを決定するために、前記ログ情報を選択するフィルタ部を備えることを特徴とする電子制御装置。
【請求項6】
制御システムであって、
電子制御装置と、
前記電子制御装置と通信する通信装置と、
制御周期で変化する前記電子制御装置の処理負荷に応じてログ情報の処理を決定する判断部とを備え、
前記通信装置は、前記ログ情報を保存するログ情報保存部を有し、
前記電子制御装置は、
前記ログ情報の読み出し信号を所定のタイミングで前記通信装置に出力する読み取り制御部と、
前記ログ情報をメモリに保存する保存部とを有し、
前記判断部は、前記電子制御装置の処理負荷が所定の閾値より高い場合、前記ログ情報をメモリに保存しないと決定することを特徴とする制御システム。
【請求項7】
請求項6に記載の制御システムであって、
前記通信装置は、前記判断部を有し、
前記電子制御装置の処理負荷が高い時に前記ログ情報の一部又は全てを廃棄するデータ破棄部を有することを特徴とする制御システム。
【請求項8】
制御システムにおけるログ情報の制御方法であって、
前記制御システムは、ログ情報の読み出し信号を出力する読み取り制御部と、制御周期で変化する処理負荷に応じて前記ログ情報の処理を決定する判断部と、前記ログ情報をメモリに保存する保存部とを有し、
前記制御方法は、
前記読み取り制御部が、ログ情報の読み出し信号を所定のタイミングで前記他の装置に出力し、
前記判断部が、前記電子制御装置の処理負荷が所定の閾値より高い場合、前記ログ情報をメモリに保存しないと決定することを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ログを収集する電子制御装置と、制御システムのログを収集するための制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報システムの高度化に対応するために、システム内のネットワークの高度化が進んでいる。例えば、車載電子制御装置間の通信において、従来では単機能の電子制御装置(ECU)がローカルにCAN等のバス通信を介して接続して通信していたが、近年ではEthernet等を用いて車載システム全体でネットワークを形成して複数の電子制御装置が接続する複雑なネットワークが構築されている。
【0003】
このような車載ネットワークの複雑化に伴い、通信不具合が増加しており、特に再現不能な通信不具合の発生頻度が増加している。このような再現不能な不具合は要因分析が困難で、対応工数が多いため、対策を講じる必要がある。いつ発生するか分からない通信不具合の要因分析に備えるため、ネットワーク稼働中に通信ログを収集して、問題発生時にネットワーク内で発生した事象を記録しておくことが必要である。
【0004】
このような通信ログの収集方法は様々な方法が提案されており、例えば、特許文献1に記載された伝送装置は、主信号が順に通過する複数の信号処理部と、前記複数の信号処理部の各々からそれぞれ出力される警報の有無を示す警報情報を一定の第1周期ごとに取得して、前記警報情報の変化を検出する検出部と、時刻を計時する計時部と、前記検出部により前記警報情報の変化が検出された場合、前記計時部から前記時刻を取得し、前記警報情報を、前記時刻を示す時刻情報に対応付けて記録する記録部と、前記記録部により記録された前記警報情報及び前記時刻情報を、前記一定の第1周期より長い第2周期ごとに収集する収集部とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、車載システムの多機能化や高度化に伴って、プロセッサに要求される処理性能が増加している。しかしながら、車載電子制御装置のような組み込み機器ではコストの観点から高性能プロセッサの搭載が困難であり、周期的にシステムをロギングする際のプロセッサの処理負荷が問題となる。
【0007】
特許文献1では、短周期で通信パラメータを取得して一時的に保存し、プロセッサがそれより長い周期でデータを読み取り、保存することで、プロセッサの読み取り頻度を低減し、処理負荷を低減する方法が提案されている。しかし、システムの通常処理が高負荷な時間帯とログデータ処理時刻が重なる際には、プロセッサの処理負荷が更に高負荷になる可能性がある。
【0008】
本発明は、プロセッサの負荷によってログ収集方法を変更し、プロセッサのピーク処理負荷を増加させずにログを収集することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、他の装置と通信する電子制御装置であって、ログ情報の読み出し信号を所定のタイミングで前記他の装置に出力する読み取り制御部と、制御周期で変化する処理負荷に応じて前記ログ情報の処理を決定する判断部と、前記ログ情報をメモリに保存する保存部とを備え、前記判断部は、前記電子制御装置の処理負荷が所定の閾値より高い場合、前記ログ情報をメモリに保存しないと決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、プロセッサのピーク処理負荷を増加させずにログを収集できる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施例の制御システムの構成図である。
【
図2】第1の実施例の記憶部に保存されるデータの構成を示す図である。
【
図3】第2の実施例の制御システムの構成図である。
【
図4】従来のプロセッサの処理負荷の時系列変化を示す図である。
【
図5】第2の実施例の通信システムが受信する受信データに関する情報を示す図である。
【
図6】第2の実施例のバッファからのデータ読み出しタイミングを示すシーケンス図である。
【
図7】第2の実施例のプロセッサの処理負荷の時系列変化を示す図である。
【
図8】第3の実施例の制御システムの構成図である。
【
図9】第3の実施例のプロセッサの処理負荷の時系列変化を示す図である。
【
図10】第4の実施例の制御システムの構成図である。
【
図11】第5の実施例の制御システムの構成図である。
【
図12】第5の実施例の各動作モードでの受信データ情報の例を示す図である。
【
図13】第6の実施例の制御システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の記載及び図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0013】
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0014】
本発明の実施例では、システム全体の制御周期に合わせてプロセッサの処理負荷が変動することに着目し、処理負荷に応じてログデータの処理を適応的に変更する。パーソナルコンピュータのような情報システムの場合、実行されているアプリケーション、又はユーザのアクションなどによってプロセッサの処理負荷は動的に変動しており、処理負荷の予測は困難である。しかし、本発明の実施例が対象とする組み込み系システムでは、システムの制御周期に合わせてデータが周期的に送受信されるため、プロセッサの処理負荷は周期的に変動する。これによって、プロセッサの処理負荷が周期的に変化するため、この周期に合わせてログを収集する、プロセッサの処理負荷が高い時間帯にログ情報の処理を変更する。本発明の実施例では、この制御方法によって、プロセッサのピーク処理負荷を増加させずに通信ログ及びシステムログを収集できる。また、ログ収集のために高性能チップを採用せずに、一般的なプロセッサの機能で実現できるため、低コストにログを収集できる。
【0015】
以下の実施例では、制御装置1と通信装置2を有する車載制御システムをレイとして居説明するが、本発明は、他の情報機器分野全般に適用できる。
【0016】
<実施例1>
以下、
図1~
図2を参照して、本発明の第1の実施例の制御システムを説明する。
【0017】
図1は第1の実施例の制御システムの構成図である。制御装置1と通信装置2は通信可能に接続されており、システムの主目的に必要なデータ(例えば、車両制御のためのセンサデータ、制御データ)及びログデータを送受信する。
【0018】
制御装置1は、例えばプロセッサとメモリを有する制御装置であり、ログ情報読み取りコマンド制御部11と、受信バッファ部12と、処理判断部13と、保存制御部14、記憶部15とを有する。通信装置2は、例えばネットワーク機器であり、ログ情報保持部21を有する。
図1では、制御装置1が処理判断部13及び処理負荷判断部131を有するが、処理判断部13及び処理負荷判断部131は、制御装置1又は通信装置2のいずれかに設けられればよい。
【0019】
ログ情報読み取りコマンド制御部11は、データを読み取るための読み取り信号を、ログ情報保持部21に送信する。ログ情報保持部21は、受信した読み取り信号に対する応答としてログ情報を受信バッファ部12に送信する。受信バッファ部12は、システムの主目的に必要なデータとログデータを一時的に格納する。ログ情報は、通信装置2の状態レジスタ値やIC(Integrated Circuit)が提供するデータである。ICが提供するデータは、例えば車載システムにおいて、カメラが自身のレンズの状態や画像処理回路の状態を診断するために用いるためにカメラ内部に保存されたログ用撮像フレームである。
【0020】
次に、処理負荷判断部131は、制御装置1のプロセッサの処理負荷を予測又は監視する。処理判断部13は、現在のプロセッサの処理負荷に応じて、ログデータの処理方法を判断する。例えば、現在のプロセッサの処理負荷が所定の閾値より大きい期間は受信バッファ部12からのログ情報の読み出し動作を一時的に中止する。処理されたログデータは保存制御部14に送信される。保存制御部14は、ログの内容にタイムスタンプを付与して記憶部15に書き込む。タイムスタンプは、ログ情報の読み出し時刻や、当該ログに関連するイベントの発生時刻を用いるとよい。この時、保存制御部14は、ログ情報読み取りコマンド制御部11が読み取り信号を送信した回数等からタイムスタンプを計算してもよい。例えば、ログ情報読み取りコマンド制御部11が所定の時間間隔で読み取り信号を送信する場合、基準時刻と読み取り信号の送信回数からタイムスタンプを生成できる。また、読み取り信号の送信回数を相対的な時刻を表すタイムスタンプとして使用してもよい。
【0021】
記憶部15は、揮発性記憶デバイス及び不揮発性記憶デバイスで構成される。
図2は、記憶部15に保存されるデータの構成を示す図である。
図2に示すように、記憶部15は、イベント発生時刻、イベント種別、及びイベント内容を含む1又は複数のレコードを保存する。イベント発生時刻は、ログ情報保持部21からログ情報が読み出された時刻である。イベント種別は、車載電子制御装置では車両のDTC(診断トラブルコード)を使用してもよい。イベント内容、ログ情報が示すトラブルの内容である。記憶部15は、システムの動作中はDRAM(Dynamic Random Access Memory)のような揮発性記憶デバイスにログデータを保存する。記憶部15は、システム動作終了時に、揮発性記憶デバイスに格納されたデータをHDD(Hard Disk Drive)のような不揮発性記憶デバイスに書き込んでもよい。システムがインターネットに接続可能なコネクテッドシステムである場合、システム動作中に揮発性記憶デバイスにログデータを保存し、システム終了時にデータセンタなどの外部ストレージにデータを送信してもよい。
【0022】
第1の実施例における具体的なログデータの処理方法については、第2の実施例以降で詳細に述べる。
【0023】
<実施例2>
以下、
図3~
図7を参照して、本発明の第2の実施例の制御システムを説明する。
【0024】
以下の説明では、第1の実施例との相違点を主に説明する。第1の実施例と同じ構成要素には同じ符号を付し、特に説明しない点については第1の実施例と同じである。第2の実施例は、受信バッファのデータを読み出す読み出し制御部132を有する点で、第1の実施例と異なる。
【0025】
図3は、第2の実施例の制御システムの構成図である。制御装置1と通信装置2は通信可能に接続されており、システムの主目的に必要なデータ(例えば、車両制御のためのセンサデータ、制御データ)及びログデータを送受信する。
【0026】
制御装置1は、例えばプロセッサとメモリを有する制御装置であり、ログ情報読み取りコマンド制御部11と、受信バッファ部12と、処理判断部13と、保存制御部14、記憶部15と、シーケンス付与部16と、受信データ情報保持部17とを有する。受信バッファ部12は、システムの主目的に必要なデータを一時的に格納する第1受信バッファ部121と、ログデータを一時的に格納する第2受信バッファ部122とを有する。処理判断部13は、読み出し制御部132と、処理負荷予想部133とを有する。通信装置2は、例えばネットワーク機器であり、ログ情報保持部21と、データ送受信部22とを有する。処理判断部13は、制御装置1に設けられるが、通信装置2に設けられてもよい。
【0027】
シーケンス付与部16は、受信したログデータにシーケンス情報を付与して、ログデータ用の第2受信バッファ部122に保存する。受信データ情報保持部17は、設計時に予め定められる制御装置1が受信するデータの周期やデータ量等に関する情報を処理負荷予想部133に送信する。処理負荷予想部133は、この情報から処理負荷のピークとなる期間を予想して、予想結果を読み出し制御部132に送信する。読み出し制御部132は、処理負荷が所定の閾値より大きい期間は第2受信バッファ部122からの読み出し動作を一時的に中止する。
【0028】
図4は、従来のプロセッサの処理負荷の時系列変化を示す図であり、システムの主目的に必要なデータ処理によるプロセッサの処理負荷L1、ログデータのデータ処理によるプロセッサの処理負荷L2、最終的なプロセッサの処理負荷であるL3(L1+L2)を示す。特に、組み込み系システムでは、システム動作に必要なデータはシステムの制御周期に合わせて周期的に送受信される、結果としてL1のように処理負荷が周期的に増減する。
【0029】
次に処理負荷予想部133による、予想方法の具体例を述べる。
【0030】
図5は、通信システムが受信する受信データに関する情報を示す図である。例えば、自動運転システムでは、制御装置1が、カメラが外界を撮影したカメラデータと、レーダで外界を観測したレーダデータと、LiDARで外界を観測した点群を含むライダデータとを受信する。この例では、各データの受信周期の最小公倍数である300ms毎に処理負荷ピークが生じることが予想され、この予想情報を読み出し制御部132に伝達する。
【0031】
次に、読み出し制御部132による読み出し制御方法の具体例及びその効果について述べる。
【0032】
図6は、バッファからのデータ読み出しタイミングを示すシーケンス図であり、ログ情報読み取りコマンド制御部11、第2受信バッファ部122、読み出し制御部132の動作を示す。
【0033】
ログ情報読み取りコマンド制御部11は、ログ読み取りコマンドを所定のタイミング(例えば、所定の時間間隔)で送信し、第2受信バッファ部122は当該タイミングにログデータを受信する。一般的な読み出し制御では、SP(Strict Priority)方式や、RR(Round Robin)方式や、それらを組み合わせた読み出し方式で、受信バッファからデータを読み出すが、本実施例では前述の処理負荷ピークに応じたデータ読み出しの一時中止制御を実施する。例えば、前述の300ms毎に訪れる処理負荷ピークの前後5msは受信バッファ部12からのデータの読み出しの一時中止する制御である。これにより、プロセッサが高負荷になる期間には、ログデータは第2受信バッファ部122に格納された状態になる。データ読み出しの一時中止制御期間が終了すると、読み出し制御部132は、第2受信バッファ部122に格納されたデータの読み出し処理を開始する。
【0034】
図7は、第2の実施例のプロセッサの処理負荷の時系列変化を示す図であり、システムの主目的に必要なデータ処理によるプロセッサの処理負荷L4、ログデータのデータ処理によるプロセッサの処理負荷L5、最終的なプロセッサの処理負荷L6(L4+L5)を示す。前述の第2受信バッファ部122に格納されたデータの処理を中止する処理によって、プロセッサの高負荷期間において負荷が増加せず、最終的なプロセッサの処理負荷L6の最大値を低減できる。
【0035】
<実施例3>
以下、
図8~
図9を参照して、本発明の第3の実施例の制御システムを説明する。
【0036】
以下の説明では、第1の実施例との相違点を主に説明する。第1の実施例と同じ構成要素には同じ符号を付し、特に説明しない点については第1の実施例と同じである。第3の実施例は、データ廃棄部を有する点で、第1の実施例と異なる。
【0037】
図8は、第3の実施例の制御システムの構成図である。制御装置1と通信装置2は通信可能に接続されており、システムの主目的に必要なデータ(例えば、車両制御のためのセンサデータ、制御データ)及びログデータを送受信する。
【0038】
制御装置1は、例えばプロセッサとメモリを有する制御装置であり、ログ情報読み取りコマンド制御部11と、受信バッファ部12と、保存制御部14、記憶部15とを有する。通信装置2は、例えばネットワーク機器であり、ログ情報保持部21と、データ送受信部22と、シーケンス付与部23と、処理判断部24と、データ廃棄部25を有する。処理判断部24は、現在の処理負荷情報に基づいて、ログデータを送信するか決定する処理負荷判断部241を有する。
【0039】
ログ情報読み取りコマンド制御部11は、ログ読み取りコマンドを所定のタイミング(例えば、所定の時間間隔)で送信する。
【0040】
ログ情報保持部21は、当該タイミングでシーケンス付与部23にログデータを送信する。シーケンス付与部23は、ログデータにシーケンス情報を付与し、処理判断部24に送信する。処理判断部24は、処理負荷判断部241が判断する現在の処理負荷情報に基づいて、ログデータを送信するか決定する。処理判断部24は、ログデータを送信しないと決定した場合、データ廃棄部25にログデータを送信する。データ廃棄部25は、受信したログデータを廃棄する。一方、処理判断部24は、ログデータを送信すると決定した場合、制御装置1にログデータを送信する。
【0041】
次に、処理負荷判断部241の処理負荷判断方法の具体的を述べる。
【0042】
本発明は、制御装置1のプロセッサの処理負荷の低減を目的としており、処理負荷判断部241が、制御装置1の処理負荷を判断する。このため、処理負荷判断部241が、制御装置1からリアルタイムの処理負荷情報を取得する、又は、送信バッファの使用量情報を取得して、制御装置1の処理負荷を判断する。これは、特にEthernet通信を採用している場合に有効である。Ethernet通信はソフトウェアで通信機能を担う部分が多く、組み込み機器でEthernet通信を採用する場合、Ethernet通信処理がプロセッサの処理負荷の多くを占めることがある。よって、通信装置2がEthernetスイッチである場合などは、通信装置2の送信バッファの使用量の増減と制御装置1の処理負荷の増減のタイミングは概ね一致する。
【0043】
次に、処理判断部24による処理制御方法の具体例及びその効果について述べる。
【0044】
処理判断部24は、周期的な処理負荷ピーク期間において、一部又は全てのログデータの送信を中止し、廃棄する。単純な制御例としては、処理負荷判断部241が高負荷フラグレジスタを設定している間、処理判断部24が全てのログデータをデータ廃棄部25に転送し廃棄する制御方法がある。これによって、高負荷期間において制御装置1にログデータが転送されない。また、処理負荷判断部241が高負荷フラグレジスタを設定している間、処理判断部24が、エラーフラグが付されたログデータをログ情報保持部21に残し、エラーフラグが付されていないログデータをデータ廃棄部25に転送し廃棄する制御方法がある。これによって、高負荷期間において制御装置1に転送されるログデータが削減される。この時、シーケンス付与部23は、データ廃棄によってログデータの時系列情報が失われた場合、ログの正しい順番を確認するためにシーケンス情報を付与する。
【0045】
図9は、第3の実施例のプロセッサの処理負荷の時系列変化を示す図であり、システムの主目的に必要なデータ処理によるプロセッサの処理負荷L7、ログデータのデータ処理によるプロセッサの処理負荷L8、最終的なプロセッサの処理負荷であるL9(L7+L8)を示す。前述のログデータの送信量を削減する処理によって、プロセッサの高負荷期間における負荷を低減でき、最終的なプロセッサの処理負荷L9を低減できる。
【0046】
<実施例4>
以下、
図10を参照して、本発明の第4の実施例の制御システムを説明する。
【0047】
以下の説明では、第1の実施例との相違点を主に説明する。第1の実施例と同じ構成要素には同じ符号を付し、特に説明しない点については第1又は第2の実施例と同じである。第4の実施例は、ログ情報にシーケンス情報を付与するシーケンス付与部を有する点で、第1の実施例と異なる。
【0048】
図10は、第4の実施例の制御システムの構成図である。制御装置1と通信装置2は通信可能に接続されており、システムの主目的に必要なデータ(例えば、車両制御のためのセンサデータ、制御データ)及びログデータを送受信する。
【0049】
制御装置1は、例えばプロセッサとメモリを有する制御装置であり、ログ情報読み取りコマンド制御部11と、受信バッファ部12と、処理判断部13と、保存制御部14、記憶部15と、シーケンス付与部16と、受信データ情報保持部17とを有する。受信バッファ部12は、システムの主目的に必要なデータを一時的に格納する第1受信バッファ部121と、ログデータを一時的に格納する第2受信バッファ部122とを有する。処理判断部13は、読み出し制御部132と、処理負荷予想部133とを有する。通信装置2は、例えばネットワーク機器であり、ログ情報保持部21と、データ送受信部22とを有する。処理判断部13は、制御装置1に設けられるが、通信装置2に設けられてもよい。
【0050】
シーケンス付与部16は、ログ情報保持部21と受信バッファ部12との間に設けられる。シーケンス付与部16は、制御装置1に設けられるが、通信装置2に設けられてもよい。シーケンス付与部16は、ログ情報読み取りコマンド制御部11が読み取り信号を送信した回数に応じてカウントアップしたシーケンス情報をログ情報に付与して、受信バッファ部12に送信する。
【0051】
第4の実施例によれば、以下の作用、効果が得られる。処理判断部13が、ログデータの読み出し時刻が変更され又はログデータが廃棄された場合でも、シーケンス情報を用いてログデータが取得された正確な時刻を求められる。例えば、ログ情報読み取りコマンド制御部11が10ms周期で読み取り信号を送信し、シーケンス情報が2000である場合、保存制御部14は前後の信号の有無や受信時刻に関わらずにシステム動作開始から20秒後に取得されたログ情報であると判断できる。そのため、ログデータに対するタイムスタンプを正確に保存できる。
【0052】
<実施例5>
以下、
図11~
図12を参照して、本発明の第5の実施例の制御システムを説明する。
【0053】
以下の説明では、第1の実施例との相違点を主に説明する。第1の実施例と同じ構成要素には同じ符号を付し、特に説明しない点については第1又は第2の実施例と同じである。第5の実施例は、制御装置1の動作モードを検知する動作モード検知部18を有する点で、第1の実施例と異なる。
【0054】
図11は、第5の実施例の制御システムの構成図である。制御装置1と通信装置2は通信可能に接続されており、システムの主目的に必要なデータ(例えば、車両制御のためのセンサデータ、制御データ)及びログデータを送受信する。
【0055】
制御装置1は、例えばプロセッサとメモリを有する制御装置であり、ログ情報読み取りコマンド制御部11と、受信バッファ部12と、処理判断部13と、保存制御部14、記憶部15と、受信データ情報保持部17と、動作モード検知部18とを有する。受信バッファ部12は、システムの主目的に必要なデータを一時的に格納する第1受信バッファ部121と、ログデータを一時的に格納する第2受信バッファ部122とを有する。処理判断部13は、読み出し制御部132と、処理負荷予想部133とを有する。通信装置2は、例えばネットワーク機器であり、ログ情報保持部21と、データ送受信部22とを有する。処理判断部13は、制御装置1に設けられるが、通信装置2に設けられてもよい。
【0056】
動作モード検知部18は、制御装置1の動作モードを判断し、現在の動作モード情報を処理負荷予想部133に送信する。処理負荷予想部133は、動作モードに応じて処理負荷のピーク期間を再計算する。例えば、車載システムにおける街中走行モード、高速道路モード、自動駐車モードなどであり、制御装置1が受信するデータの量や周期が、動作モードによって変更されることを前提とする。受信データ情報保持部17は、動作モードによって変更される受信データに関する情報を保持する。
図12は、各動作モードでの受信データ情報の例を示す図であり、動作モードと、受信データ種別と、データ量と、周期が記録される。
【0057】
第5の実施例によれば、以下の作用、効果が得られる。処理負荷予想部133が動作モードに応じて処理負荷のピーク期間を再計算するので、例えば
図12に示す例において、街中走行モードから高速道路走行モードに移った場合、処理負荷ピークの周期が100msから150msに変更される。このため、複数の動作モードを持つシステムにおいても処理負荷のピークとなる期間を正確に予想できる。
【0058】
<実施例6>
以下、
図13を参照して、本発明の第6の実施例の制御システムを説明する。
【0059】
以下の説明では、第1の実施例との相違点を主に説明する。第1の実施例と同じ構成要素には同じ符号を付し、特に説明しない点については第1又は第2の実施例と同じである。第6の実施例は、ログを格納するバッファを選択するフィルタ部19を有する点で、第1の実施例と異なる。
【0060】
図13は、第6の実施例の制御システムの構成図である。制御装置1と通信装置2は通信可能に接続されており、システムの主目的に必要なデータ(例えば、車両制御のためのセンサデータ、制御データ)及びログデータを送受信する。
【0061】
ログ情報保持部21に格納されるログ情報には、ログの種別(すなわち、ログ情報が格納されるレジスタの位置)の情報が含まれる。フィルタ部19は、受信したログの内容に基づいて、当該ログを格納するバッファを選択する。例えば、即応性が必要なログと即応性が不要なログに分類する動作である。処理判断部13による読み出し制御は、即応性が不要なログに適用される。
【0062】
第6の実施例によれば、以下の作用、効果が得られる。フィルタ部19はシステムとして早急に対応が必要なログを選択し、読み出し制御部132は、選択されたログを早急に読み出す。そのため、安全に関する情報など即応性が必要なログのレイテンシを低減でき、車両を安全に制御できる。
【0063】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を有するものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をしてもよい。
【0064】
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
【0065】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
【0066】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0067】
1…制御装置
11…ログ情報読み取りコマンド制御部
12、121、122、123…受信バッファ部
13…処理判断部
131…処理負荷判断部
132…読み出し制御部
133…処理負荷予想部
14…保存制御部
15…記憶部
16…シーケンス付与部
17…受信データ情報保持部
18…動作モード検知部
19…フィルタ部
2…通信装置
21…ログ情報保持部
22…データ送受信部
23…シーケンス付与部
24…処理判断部
241…処理負荷判断部
25…データ廃棄部