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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172858
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】車両用バッテリの温調機構
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/06 20060101AFI20241205BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20241205BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20241205BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20241205BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20241205BHJP
   H01M 10/6566 20140101ALI20241205BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20241205BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20241205BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20241205BHJP
   B60L 58/18 20190101ALI20241205BHJP
   B60L 58/26 20190101ALI20241205BHJP
【FI】
B60K11/06
B60K1/04 Z
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/633
H01M10/6566
H01M10/651
H01M10/6563
B60L50/60
B60L58/18
B60L58/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090862
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川邉 舞耶
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
5H031
5H125
【Fターム(参考)】
3D038AA09
3D038AB01
3D038AC04
3D038AC22
3D235AA02
3D235BB18
3D235BB19
3D235BB36
3D235BB45
3D235CC15
3D235DD35
3D235EE63
3D235FF12
3D235HH07
5H031AA09
5H031HH06
5H031KK08
5H125AA01
5H125AC12
5H125BC19
5H125CD07
5H125EE25
5H125FF04
5H125FF22
(57)【要約】
【課題】バッテリモジュールの温度上昇による劣化を防ぐことでバッテリ寿命を延ばすと共に、複数のバッテリモジュール間での温度のばらつきを抑制して出力制限を回避し、バッテリの使い切りを可能とする車両用バッテリの温調機構を提供する。
【解決手段】車両用バッテリの温度を調節する温調機構は、車両前後方向に沿って複数のバッテリモジュールが配列されたバッテリ集合部と、外気が吹き込まれる吹込口と、バッテリモジュールに併設され、吹込口を介して吹き込まれた外気がバッテリモジュールに当たる開状態とバッテリモジュールに向かう外気の流れを遮断する閉状態とに変化可能な複数のシャッタと、シャッタの開閉制御を行う制御部とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用バッテリの温度を調節する温調機構であって、
車両前後方向に沿って複数のバッテリモジュールが配列されたバッテリ集合部と、
外気が吹き込まれる吹込口と、
前記バッテリモジュールに併設され、前記吹込口を介して吹き込まれた外気が前記バッテリモジュールに当たる開状態と前記バッテリモジュールに向かう外気の流れを遮断する閉状態とに変化可能な複数のシャッタと、
前記シャッタの開閉制御を行う制御部と、を備える
ことを特徴とする車両用バッテリの温調機構。
【請求項2】
前記吹込口には、外気として走行風が吹き込まれ、
前記複数のシャッタは、それぞれ、前記吹込口を介して吹き込まれた走行風が前記バッテリモジュールに当たる開状態と、併設する前記バッテリモジュールに向かう走行風の流れを遮断する閉状態とに変化可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用バッテリの温調機構。
【請求項3】
前記バッテリ集合部は、バッテリパック内に収容され、
前記吹込口と前記バッテリパックとの間、又は、前記バッテリパック内における車両前後方向の最も前方側に位置する前記バッテリモジュールよりも前側に送風機を設け、
前記吹込口を介して吹き込まれた外気が前記送風機を通過することで得られる強制風が前記バッテリパック内を流れ、
前記複数のシャッタは、それぞれ、前記バッテリパック内を流れる強制風が併設する前記バッテリモジュールに当たる開状態と、併設する前記バッテリモジュールに向かう強制風の流れを遮断する閉状態とに変化可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用バッテリの温調機構。
【請求項4】
前記バッテリモジュールが有するバッテリセルの温度を検知するバッテリ温度センサを備え、
前記制御部は、前記バッテリ温度センサにより検知される温度に基づいて、前記シャッタの開閉制御を行う
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の車両用バッテリの温調機構。
【請求項5】
前記制御部は、前記バッテリ温度センサにより検知される温度に基づいて前記シャッタの開度レベルを決定し、前記シャッタの開放時、決定した前記開度レベルに応じた大きさで前記シャッタを開放させる制御を行う
ことを特徴とする請求項4に記載の車両用バッテリの温調機構。
【請求項6】
前記複数のシャッタは、前記バッテリモジュール毎に併設されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項の車両用バッテリの温調機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用バッテリの温調機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電源として高電圧バッテリを搭載した車両では、充放電時のバッテリモジュールの温度上昇が比較的顕著であるため、通常、温度上昇による劣化を回避するための冷却手段を設けている(例えば、下記特許文献1参照)。バッテリの中でも比較的熱に強い全固体電池は、水冷方式のような比較的強い冷却能力に頼らずとも、軽量化、コスト低減の面でも効果的な外気(走行風を含む)による空冷を行うことが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5494584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような従来の外気(走行風等)による空冷では、多くの場合、前方のバッテリモジュールは外気が直接当たることから冷却され易いが、後方のバッテリモジュールはそれよりも前方のバッテリモジュールにより温められた風が当たることから冷却され難い。これにより、冷却され難いバッテリモジュールは劣化し易くバッテリ寿命が短くなる。また、複数個のバッテリモジュール間で温度のばらつきが生じることで、出力制限によりバッテリの使い切りができなくなる。
【0005】
本発明は、このような事情に対処するために提案されたものであり、バッテリモジュールの温度上昇による劣化を防ぐことでバッテリ寿命を延ばすと共に、複数のバッテリモジュール間での温度のばらつきを抑制して出力制限を回避し、バッテリの使い切りを可能とする車両用バッテリの温調機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両用バッテリの温度を調節する温調機構であって、車両前後方向に沿って複数のバッテリモジュールが配列されたバッテリ集合部と、外気が吹き込まれる吹込口と、前記バッテリモジュールに併設され、前記吹込口を介して吹き込まれた外気が前記バッテリモジュールに当たる開状態と前記バッテリモジュールに向かう外気の流れを遮断する閉状態とに変化可能な複数のシャッタと、前記シャッタの開閉制御を行う制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、バッテリモジュールの温度上昇による劣化を防ぐことでバッテリ寿命を延ばすと共に、複数のバッテリモジュール間での温度のばらつきを抑制して出力制限を回避し、バッテリの使い切りを可能とする車両用バッテリの温調機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態のバッテリ温調機構を搭載した車両を示す模式側面図である。
図2】第1実施形態のバッテリ温調機構におけるバッテリパックの例の模式側面図である。
図3】第1実施形態のバッテリ温調機構におけるバッテリパックの例の模式上面図である。
図4】第1実施形態のバッテリ温調機構におけるシャッタ開閉制御の制御機構を示す模式図である。
図5】第1実施形態のバッテリ温調機構における車両走行時のシャッタ開閉制御処理を説明するためのフロー図である。
図6】第1実施形態のバッテリ温調機構における車両停車時のシャッタ開閉制御処理を説明するためのフロー図である。
図7】第2実施形態のバッテリ温調機構におけるバッテリパックの一例の模式側面図である。
図8】第2実施形態のバッテリ温調機構におけるバッテリパックの一例の模式上面図である。
図9】第2実施形態のバッテリ温調機構におけるバッテリパックの別例の模式側面図である。
図10】第2実施形態のバッテリ温調機構におけるバッテリパックの別例の模式上面図である。
図11】第2実施形態のバッテリ温調機構における車両走行時のシャッタ開閉制御処理を説明するためのフロー図である。
図12】第3実施形態のバッテリ温調機構を搭載した車両を示す模式側面図である。
図13】第4実施形態のバッテリ温調機構を搭載した車両を示す模式側面図である。
図14】第4実施形態のバッテリ温調機構におけるバッテリパックの一例の模式側面図である。
図15】第4実施形態のバッテリ温調機構におけるバッテリパックの一例の模式上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図において、同一の構成については、説明を省略する。
【0010】
各図において、矢印Xで示す方向(以下「X方向」ともいう)は、車両Aの車両前後方向における前方方向(車両進行方向)であり、矢印Yで示す方向(以下「Y方向」ともいう)は、車両Aの車幅方向(左右方向)における右方向であり、矢印Zで示す方向(以下「Z方向」ともいう)は、車両Aの上下方向(高さ方向)における上方向である。X方向の反対方向は、車両Aの車両前後方向における後方方向(車両後退方向)であり、Y方向の反対方向は、車両Aの車幅方向における左方向であり、Z方向の反対方向は、車両Aの上下方向(高さ方向)における下方向である。
【0011】
各図において、前方側は、X方向により寄った側(より前方方向側)であり、後方側は、X方向の反対方向により寄った側(より後方方向側)である。右側は、Y方向により寄った側(より右方向側)であり、左側は、Y方向の反対方向により寄った側(より左方向側)である。上側は、Z方向により寄った側(より上方向側)であり、下側は、Z方向の反対方向により寄った側(より下方向側)である。また、前後、左右、上下は、車両Aの車両前後方向の前後、車両Aの車幅方向の左右、車両Aの上下方向(高さ方向)の上下をいう。また、車両Aの車両前後方向の前方を単に「前方」ともいい、車両Aの車両前後方向の後方を単に「後方」ともいう。
【0012】
<第1実施形態>
先ず、本発明の第1実施形態における車両用バッテリの温調機構(バッテリ温調機構)1について説明する。図1に、第1実施形態のバッテリ温調機構1を搭載した車両Aを示す。車両Aは、バッテリを電源とする車両の一例として電気自動車(EV:Electric Vehicle)である。なお、車両Aは、これに限定されず、ハイブリッド車、燃料電池車等の電源としてバッテリを有する他の何れの車両であってもよい。
【0013】
図1に示すように、車両Aの車体2内には、フロアパネル3上に、運転席を含む座席4が設けられ、それよりも前側に運転用のハンドル5等が設けられている。また、車体2の前方部6内には、図示しないエンジン、モータ、熱交換器(ラジエータ)、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)(後述の制御部20)等が設けられている。
【0014】
第1実施形態のバッテリ温調機構1は、車体2の最前部に位置するフロントグリル開口部(吹込口)7と、フロアパネル3の下方(すなわち床下)であって底部(アンダーカバー)8上に設けられたバッテリパック(バッテリ収容部)9とを備えると共に、後述の制御部20、シャッタ駆動部22、バッテリ温度センサ21、外気温センサ23(図4参照)を備える。バッテリパック9の筐体(ケース)90は、例えば、底部8に図示しないボルト等によって固定されている。
【0015】
図1及び図2の実線矢印に示すように、バッテリ温調機構1は、車両前後方向の前側のフロントグリル開口部(吹込口)7から外気(走行風を含む)を取り入れ、車両前後方向の後側からその外気を排気する。
【0016】
バッテリパック9の筐体90は、その前後方向の長さが左右方向の長さよりも長い箱状に形成されている。筐体90の前側面には前開口部91が形成され、筐体90の後側面には後開口部92が形成されている。バッテリパック9は、この筐体(ケース)90内に、バッテリ集合部として、互いに略同一構成の複数のバッテリモジュール11を収容している。この複数のバッテリモジュール11(バッテリ集合部)は、筐体90内において、車両前後方向に沿って配列してなる。図1及び図2の例では、筐体90内において、互いに略同一構成の3つのバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)が車両前後方向に沿って配列されている。なお、図1では簡略表示のため、代表してバッテリモジュール111のみに符号11を付している。各図中の他の該当箇所についても同様の簡略表示を行っている。
【0017】
また、バッテリパック9の筐体90内においては、互いに略同一構成のシャッタ12(シャッタ121、122、123)が、バッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)に併設されている。シャッタ12は、後述するように、フロントグリル開口部(吹込口)7を介して吹き込まれた外気(走行風を含む)がバッテリモジュール11に当たる開状態とバッテリモジュール11に向かう外気の流れを遮断する閉状態とに変化可能である。
【0018】
例えば車両Aの走行中、フロントグリル開口部(吹込口)7から車体2の前方部6内に吹き込まれた走行中の外気(走行風)は、車両後退方向へと流れ、バッテリパック9の前開口部91から筐体90内に流入し、開放中のシャッタ12があれば、そのシャッタ12に併設されるバッテリモジュール11に当たりながら車両後退方向に流れた後、後開口部92から筐体90外へ流出して車両Aの外部へと排出される。なお、「走行中」とは、車両Aがその前方方向(車両進行方向、X方向)へと走行している最中であることをいう。なお、車両停車中の外気であっても、車両Aのフロントグリル開口部7を介して車体2の前方部6内に流入した場合には、走行風と同様の方向に流れて車両Aの外部へと排出される。
【0019】
図2図4に示すように、バッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)は、バッテリケース11-1(バッテリケース111-1、112-1、113-1)内にバッテリセル11-2(バッテリセル111-2、112-2、113-2)を5個収容してなる。バッテリケース11-1は、内外に通気可能な構造となっている。このバッテリケース11-1内において、バッテリセル11-2は、その上面、底面、前後左右の側面が、バッテリケース11-1との間に隙間を有した状態で収容されている。なお、バッテリケース11-1は、バッテリセル11-2の底面とバッテリケース11-1との間に隙間を形成する状態でバッテリセル11-2を収容可能な構造(図示せず)を有している。バッテリケース11-1内の5個のバッテリセル11-2は、互いに間隔を隔てて、走行風の流れに対して略直交する方向(すなわち左右方向)に並列されている。
【0020】
バッテリセル11-2は、一例として、全固体電池セル(全固体バッテリセル)である。全固体電池セルは、正極と負極それぞれの活物質の粉体と固体電解質の粉体を混ぜて固めてなるものであり、走行風の温度範囲で温度調節が可能なバッテリである。なお、バッテリセル11-2は、これに限定されず、他のバッテリのセルであってもよく、例えばリチウムイオンバッテリセルであってもよい。
【0021】
図2に示すように、バッテリパック9の筐体90内には、車両前後方向に沿って互いに間隔を隔ててこのような3個のバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)と、バッテリモジュール11のそれぞれに併設されるシャッタ12(シャッタ121、122、123)が配列されている。このように、バッテリパック9には、15個のバッテリセル11-2が、互いに間隔を隔てて配置されている。
【0022】
なお、バッテリモジュール11において左右方向に配列されるバッテリセル11-2の個数はこれに限定されず、単数又は複数の何れの数であってもよい。また、車両前後方向におけるバッテリモジュール11の配列数(すなわち、バッテリモジュールに併設されるシャッタ12の配列数)はこれに限定されず、複数であれば何れの数であってもよい。
【0023】
ここで、シャッタ12の具体的な構成について説明する。バッテリ温調機構1では、バッテリパック9内において、車両前後方向に沿って配列された3つのバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)のそれぞれに併設するシャッタ12(シャッタ121、122、123)を設ける。
【0024】
シャッタ12(シャッタ121、122、123)は、バッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)の前方に配置される前側部12-1(前側部121-1、122-1、123-1)と、バッテリモジュール11の上方に配置される上部12-2(上部121-2、122-2、123-2)とを備える。このシャッタ12は、前側部12-1の上端と上部12-2の前端とが繋がったL字型の形状を有する。
【0025】
シャッタ12は、前側部12-1及び上部12-2に、複数の開口部12-3と、開口部12-3のそれぞれに設けられた可動シャッタ部12-4とを備える。すなわち、シャッタ121は、複数の開口部121-3と、その開口部121-3のそれぞれに設けられた可動シャッタ部121-4とを有し、シャッタ122は、複数の開口部122-3と、その開口部122-3のそれぞれに設けられた可動シャッタ部122-4とを有し、シャッタ123は、複数の開口部123-3と、その開口部123-3のそれぞれに設けられた可動シャッタ部123-4とを有する。
【0026】
可動シャッタ部12-4は、その短手方向の一端が開口部12-3の短手方向の一端に対し、回転軸(図示せず)を中心に回転可能な状態で接続されている。シャッタ12は、可動シャッタ部12-4が回転して開口部12-3の開口面に対する傾斜角度(開角度)を変化させることで、開口部12-3の開口状態を変化させる。
【0027】
図2及び図3に示す例では、バッテリパック9において、バッテリモジュール111、112に併設するシャッタ121、122は、全ての可動シャッタ部121-4、122-4が開口部121-3、122-3を閉鎖している(全閉)。そのため、前方からの走行風が、シャッタ121の前側部121-1、シャッタ122の前側部122-1に当たるように、またシャッタ121の上部121-2、シャッタ122の上部122-2に沿って流れても、その走行風が開口部121-3、122-3を通過しないため、バッテリモジュール111、112には当たらない又は極めて当たり難い。
【0028】
一方、この例のバッテリパック9において、バッテリモジュール113に併設するシャッタ123は、全ての可動シャッタ部123-4が開口部123-3の開口面に対して最大の開角度で配置されている。これにより、全ての開口部123-3が最大に開放された状態(全開)となっている。そのため、前方からの走行風が、シャッタ123の前側部123-1に当たるように、またシャッタ123の上部123-2に沿って流れると、その走行風が開口部123-3を通過してバッテリモジュール113に当たる。
【0029】
バッテリ温調機構1では、バッテリパック9内において、バッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)に併設するように設けられたシャッタ12(シャッタ121、122、123)の開閉制御を行う。これにより、バッテリ温調機構1では、バッテリモジュール11に向かう走行風の流れを制御し、バッテリモジュール11の温度調節(温調)を行うようにしている。
【0030】
ここで、第1実施形態のバッテリ温調機構1におけるシャッタ12の開閉制御機構について図4を用いて説明する。この図4には、バッテリケース111-1内に5つのバッテリセル111-2を備えたバッテリモジュール111と、バッテリケース112-1内に5つのバッテリセル112-2を備えたバッテリモジュール112と、バッテリケース113-1内に5つのバッテリセル113-2を備えたバッテリモジュール113とが示されている。
【0031】
また、この図4には、5つのバッテリ温度センサ211、5つのバッテリ温度センサ212、5つのバッテリ温度センサ213が示されている。バッテリモジュール111が備える5つのバッテリセル111-2の各温度は、各バッテリセル111-2に設置されたバッテリ温度センサ211によって検知される。バッテリモジュール112が備える5つのバッテリセル112-2の各温度は、各バッテリセル112-2に設置されたバッテリ温度センサ212によって検知される。バッテリモジュール113が備える5つのバッテリセル113-2の各温度は、各バッテリセル113-2に設置されたバッテリ温度センサ213によって検知される。
【0032】
バッテリ温調機構1において、制御部20は、バッテリモジュール111に設置された5つのバッテリ温度センサ211と、またバッテリモジュール112に設置された5つのバッテリ温度センサ212と、またバッテリモジュール113に設置された5つのバッテリ温度センサ213と、それぞれバスを介して接続されている。また、制御部20には、外気温を検知する外気温センサ23がバスを介して接続されている。また、制御部20には、アクチュエータ等を有するシャッタ駆動部22(シャッタ駆動部221、222、223)が接続されている。シャッタ駆動部221は、シャッタ121における複数の可動シャッタ部121-4を回転駆動させ、シャッタ駆動部222は、シャッタ122における複数の可動シャッタ部122-4を回転駆動させ、シャッタ駆動部223は、シャッタ123における複数の可動シャッタ部123-4を回転駆動させる。
【0033】
制御部20は、1つのバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)の5つのバッテリセル11-2のそれぞれに設置されたバッテリ温度センサ21から、各バッテリセル11-2の温度データが供給されると、その温度データが示す温度の内、最も高い温度をそのバッテリモジュール11の「バッテリ最高温度tmax」として特定する。また、制御部20は、その供給された各バッテリセル11-2の温度データが示す温度の内、最も低い温度をそのバッテリモジュール11の「バッテリ最低温度tmin」として特定する。すなわち、制御部20は、バッテリ温度センサ211からの温度データに基づいてバッテリモジュール111(バッテリセル111-2)のバッテリ最高温度tmaxとバッテリ最低温度tminとを特定し、バッテリ温度センサ212からの温度データに基づいてバッテリモジュール112(バッテリセル112-2)のバッテリ最高温度tmaxとバッテリ最低温度tminとを特定し、バッテリ温度センサ213からの温度データに基づいてバッテリモジュール113(バッテリセル113-2)のバッテリ最高温度tmaxとバッテリ最低温度tminとを特定する。
【0034】
なお、1つのバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)のバッテリ最高温度tmax及びバッテリ最低温度tminは、このように特定される例に限定されない。例えば、1つのバッテリモジュール11は、バッテリ最高温度tmaxが予想される最高温度予想点P1と、バッテリ最低温度tminが予想される最低温度予想点P2を有していてもよい。
【0035】
この場合、バッテリ温度センサ21は、1つのバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)において、最高温度予想点P1の温度を検知すると共に、最低温度予想点P2の温度を検知し、これらの温度データを制御部20に供給する。制御部20は、バッテリ温度センサ21から供給された1つのバッテリモジュール11の最高温度予想点P1の温度データが示す温度をそのバッテリモジュール11のバッテリ最高温度tmaxとして特定する。また、制御部20は、バッテリ温度センサ21から供給された1つのバッテリモジュール11の最低温度予想点P2の温度データが示す温度をそのバッテリモジュール11のバッテリ最低温度tminとして特定する。
【0036】
制御部20は、1つのバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)について特定されたバッテリ最高温度tmax、バッテリ最低温度tmin等の値を用いて、そのバッテリモジュール11に併設されるシャッタ12(シャッタ121、122、123)を全開、全閉の何れとするかを判断し、その判断結果に基づいて、シャッタ12(121、122、123)を全開又は全閉にする制御を行う。
【0037】
この際、制御部20は、シャッタ12(シャッタ121、122、123)のそれぞれを全開、全閉の何れとするかの判断結果のデータを対応するシャッタ駆動部22(シャッタ駆動部221、222、223)に供給する。シャッタ駆動部22は、この判断結果に基づいて、必要であれば対応する可動シャッタ部12-4(可動シャッタ部121-4、122-4、123-4)を回転駆動させ、開口部12-3(開口部121-3、122-3、123-3)を全開にするか、又は全閉にする。
【0038】
次に、図5を用いて、車両走行時においてバッテリモジュール11の温度調節(温調)を行うためのシャッタ開閉制御処理について説明する。なお、図5に示す一連の処理を行うにあたり、車両AにおいてIG(イグニッション)電源がオン(ON)とされた直後では、シャッタ12は全閉の状態である。
【0039】
ステップS1において、制御部20は、車両Aが現在走行中であるかを判断するために、車両Aの現在の車速v(km/h)が規定車速VR(km/h)以上であるか否かを判断する。ここで「規定車速VR」とは、走行風をバッテリモジュール11の温調制御に利用することが可能な予め定められた車速であり、任意の値であってよいが、例えば30km/hとすることができる。
【0040】
制御部20は、車両Aの現在の車速vが規定車速VR以上であると判断すると(ステップS1でYES)、車両Aにおいて走行中でのシャッタ開閉制御処理を行うために、ステップS2の処理に進む。一方、制御部20は、車両Aの現在の車速vが規定車速VR以上でない(規定車速VR未満である)と判断すると(ステップS1でNO)、図6に示す車両停車中におけるシャッタ開閉制御処理(これをステップS15とする)に処理を移す。
【0041】
ステップS2において、制御部20は、バッテリパック9中のバッテリモジュール11を冷却する必要があるかを判断するために、バッテリパック9が備える全てのバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)のバッテリ最高温度tmaxが高温側閾値THよりも低いか否かを判断する。ここで「高温側閾値TH」とは、出力制限を掛けずにバッテリモジュール11を利用可能なバッテリモジュール11の温度の上限値である。なお、バッテリモジュール11に対して出力制限を掛ける場合、制御部20は、バッテリモジュール11の出力電力を予め設定された出力電力の上限値以下に制限する。この高温側閾値THは、任意の値であってよいが、例えば60℃とすることができる。
【0042】
制御部20は、バッテリパック9が備える全てのバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)のバッテリ最高温度tmaxが高温側閾値THよりも低いと判断することでバッテリパック9中のバッテリモジュール11を冷却する必要がないと判断すると(ステップS2でYES)、バッテリパック9中のバッテリモジュール11を加温する必要があるかを判断するために、ステップS6の処理に進む。一方、制御部20は、バッテリパック9が備える少なくとも何れかのバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)のバッテリ最高温度tmaxが高温側閾値THよりも低くない(高温側閾値TH以上である)と判断することでバッテリパック9中のバッテリモジュール11を冷却する必要があると判断すると(ステップS2でNO)、バッテリパック9中の何れのバッテリモジュール11を冷却するかを判断するために、ステップS3の処理に進む。
【0043】
ステップS3において、制御部20は、バッテリパック9が備える全てのバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)のバッテリ最高温度tmaxが高温側閾値TH以上であるか否かを判断する。制御部20は、バッテリパック9が備える全てのバッテリモジュール11のバッテリ最高温度tmaxが高温側閾値TH以上であると判断すると(ステップS3でYES)、バッテリパック9が備える全てのバッテリモジュール11を冷却するためにステップS4に進む。
【0044】
一方、制御部20は、バッテリパック9が備える全てでなく少なくとも1つのバッテリモジュール11のバッテリ最高温度tmaxのみが高温側閾値TH以上であると判断すると(ステップS3でNO)、バッテリ最高温度tmaxが高温側閾値TH以上であるバッテリモジュール11を冷却するためにステップS5に進む。
【0045】
ステップS4において、制御部20は、バッテリパック9が備える全てのバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)を走行風によって冷却するために、そのバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)のそれぞれに併設されたシャッタ12(シャッタ121、122、123)を全開とするようにシャッタ駆動部22(シャッタ駆動部221、222、223)を制御する。制御部20は、このステップS4の処理後、ステップS2の処理に戻る。このような全てのシャッタ12が全開とされる状態は、全てのバッテリモジュール11におけるバッテリ最高温度Tmaxが高温側閾値THよりも低くなるまで続く。
【0046】
ステップS5において、制御部20は、バッテリパック9が備えるバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)の内、バッテリ最高温度tmaxが高温側閾値TH以上であるバッテリモジュール11のみを走行風によって冷却するために、そのバッテリ最高温度tmaxが高温側閾値TH以上のバッテリモジュール11に併設されたシャッタ12のみを全開とするように、対応するシャッタ駆動部22を制御する。制御部20は、このステップS5の処理後、ステップS2の処理に戻る。このような対応するシャッタ12が全開とされる状態は、全てのバッテリモジュール11におけるバッテリ最高温度Tmaxが高温側閾値THよりも低くなるまで続く。
【0047】
ステップS2後のステップS6において、制御部20は、バッテリパック9中のバッテリモジュール11を加温する必要があるかを判断するために、バッテリパック9が備える全てのバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)のバッテリ最低温度tminが低温側閾値TLよりも高いか否かを判断する。ここで「低温側閾値TL」とは、出力制限を掛けずにバッテリモジュール11を利用可能なバッテリモジュール11の温度の下限値である。この低温側閾値TLは、任意の値であってよいが、例えば10℃とすることができる。
【0048】
制御部20は、バッテリパック9が備える全てのバッテリモジュール11のバッテリ最低温度tminが低温側閾値TLよりも高いと判断すると(ステップS6でYES)、ステップS10の処理に進む。このステップS6でYESの場合、バッテリパック9中の全てのバッテリモジュール11は、その温度が低温側閾値TLよりも高く高温側閾値THよりも低い許容温度範囲内にある。そのため、制御部20は、バッテリパック9中のバッテリモジュール11の温度のばらつきを低減するための温度調節(冷却又は加温)をする必要があるかを判断するために、ステップS10に処理を進める。
【0049】
一方、制御部20は、バッテリパック9が備える少なくとも何れかのバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)のバッテリ最低温度tminが低温側閾値TLよりも高くない(低温側閾値TL以下である)と判断すると(ステップS6でNO)、全てのバッテリモジュール11を加温するために、ステップS7の処理に進む。
【0050】
ステップS7において、制御部20は、走行風によってバッテリモジュール11を加温できるかを判断するために、外気温センサ23にて検知される外気温TAが、低温側閾値TLよりも高いか否かを判断する。制御部20は、外気温センサ23にて検知される外気温TAが、低温側閾値TLよりも高いと判断することで、走行風によってバッテリモジュール11を加温できると判断すると(ステップS7でYES)、ステップS8に進む。
【0051】
ステップS8において、制御部20は、バッテリパック9が備える全てのバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)のそれぞれに併設されたシャッタ12(シャッタ121、122、123)を全開とするようにシャッタ駆動部22(シャッタ駆動部221、222、223)を制御する。制御部20は、このステップS8の処理後、ステップS6の処理に戻る。これにより、全てのバッテリモジュール11は、そのバッテリ最低温度tminが低温側閾値TLよりも高くなるまで、シャッタ12(シャッタ121、122、123)の開口部(開口部121-3、122-3、123-3)を介して導入される走行風によって加温される。
【0052】
ステップS7において、制御部20は、外気温センサ23にて検知される外気温TAが、低温側閾値TLよりも高くない(低温側閾値TL以下である)と判断することで、走行風によってバッテリモジュール11を加温できないと判断すると(ステップS7でNO)、ステップS9に処理を進める。
【0053】
ステップS9において、制御部20は、全てのシャッタ12(シャッタ121、122、123)が全閉となるようにシャッタ駆動部22(シャッタ駆動部221、222、223)を制御する。制御部20は、このステップS9の処理後、ステップS6の処理に戻る。このようにして、全てのバッテリモジュール11は、対応するシャッタ12が全閉とされることで、バッテリパック9内の空気或いはバッテリの駆動電流による自己発熱により自然に加温される。このような全てのシャッタ12が全閉とされる状態は、全てのバッテリモジュール11におけるバッテリ最低温度tminが低温側閾値TLよりも高くなるまで続く。
【0054】
ステップS6後のステップS10において、制御部20は、バッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)間の温度のばらつきを低減する必要があるかを判断するために、バッテリパック9が備えるバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)間において、バッテリモジュール11の最大温度差ΔTが温度差上限値ULよりも小さいか否かを判断する。
【0055】
ここで、「最大温度差ΔT」とは、バッテリパック9中の各バッテリモジュール11におけるバッテリ最高温度tmaxの内の最も高いバッテリ最高温度tmaxと、バッテリパック9中の各バッテリモジュール11におけるバッテリ最低温度tminの内の最も低いバッテリ最低温度tminとの差である。また、「温度差上限値UL」とは、バッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)間において許容される温度差(許容温度差)の上限値である。この温度差上限値ULは、任意の値であってよいが、例えば5℃とすることができる。
【0056】
制御部20は、バッテリパック9が備えるバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)間において、バッテリモジュール11の最大温度差ΔTが温度差上限値ULよりも小さくない(温度差上限値UL以上である)と判断すると(ステップS10でNO)、バッテリパック9中のバッテリモジュール11の温度のばらつきを低減するための温度調節(冷却又は加温)をする必要があることから、ステップS11に進む。
【0057】
ステップS11において、制御部20は、走行風での冷却、走行風での加温の何れによってバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)間の温度のばらつきを低減するかを判断するために、外気温センサ23にて検知される外気温TAが、バッテリパック9が備える全てのバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)におけるバッテリ最低温度tminの内、最も低いバッテリ最低温度tminよりも低いか否かを判断する。
【0058】
制御部20は、外気温センサ23にて検知される外気温TAが、バッテリパック9が備える全てのバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)におけるバッテリ最低温度tminの内、最も低いバッテリ最低温度tminよりも低いと判断すると(ステップS11でYES)、走行風での冷却によりバッテリモジュール11間の温度のばらつきを低減するために、ステップS12に進む。
【0059】
一方、制御部20は、外気温センサ23にて検知される外気温TAが、バッテリパック9が備える全てのバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)におけるバッテリ最低温度tminの内、最も低いバッテリ最低温度tminよりも低くない(最も低いバッテリ最低温度tmin以上である)と判断すると(ステップS11でNO)、走行風での加温によりバッテリモジュール11間の温度のばらつきを低減するために、ステップS13に進む。
【0060】
ステップS12において、制御部20は、バッテリパック9が備える全てのバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)の内、バッテリ最高温度tmaxが最も高いバッテリモジュール11に併設するシャッタ12のみを全開とするように、対応するシャッタ駆動部22を制御する。これにより、バッテリ最高温度tmaxが最も高いバッテリモジュール11のみが走行風で冷却される。制御部20は、このステップS12の処理後、ステップS10の処理に戻る。このようにして、バッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)間において、バッテリモジュール11の最大温度差ΔTが温度差上限値ULよりも小さくなるまで、バッテリ最高温度tmaxが最も高いバッテリモジュール11が走行風で冷却される。これにより、バッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)間の温度のばらつきが低減される。
【0061】
ステップS13において、制御部20は、バッテリパック9が備える全てのバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)の内、バッテリ最低温度tminが最も低いバッテリモジュール11に併設するシャッタ12のみを全開とするように、対応するシャッタ駆動部22を制御する。これにより、バッテリ最低温度tminが最も低いバッテリモジュール11のみが走行風で加温される。制御部20は、このステップS13の処理後、ステップS10の処理に戻る。このようにして、バッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)間において、バッテリモジュール11の最大温度差ΔTが温度差上限値ULよりも小さくなるまで、バッテリ最低温度tminが最も低いバッテリモジュール11が走行風で加温される。これにより、バッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)間の温度のばらつきが低減される。
【0062】
制御部20は、バッテリパック9が備えるバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)間において、バッテリモジュール11の最大温度差ΔTが温度差上限値ULよりも小さいと判断すると(ステップS10でYES)、走行風によりバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)間の温度のばらつきを低減する必要がないため、ステップS14に進む。
【0063】
ステップS14において、制御部20は、全てのシャッタ12(シャッタ121、122、123)を全閉とする。すなわち、制御部20は、このステップS14において、開放中(全開)のシャッタ12があれば、そのシャッタ12を全閉とするように、シャッタ駆動部22を制御する。制御部20は、このステップS14の処理後、図5の一連の処理を終了する。なお、制御部20は、図5の一連の処理を終了すると、車速v(km/h)を計測する所定のタイミングで図5の一連の処理を開始する。なお、図5に示す一連の処理の途中で、車両AにおいてIG(イグニッション)電源がオフ(OFF)となった場合に、その時点で開放中のシャッタ12があるときには、制御部20は、そのシャッタ12を全閉とするように制御する。
【0064】
次に、図6を用いて、車両停車時におけるバッテリモジュール11の温調を行うためのシャッタ開閉制御処理(図5に示すステップS15)について説明する。図6に示すステップS21において、制御部20は、車両Aが現在停車中であるかを判断するために、車両Aの車速v(km/h)が規定車速VR(km/h)よりも小さい時間が規定時間Dt以上継続しているか否かを判断する。ここで、「規定時間Dt」は、例えば信号待ち時等の比較的短い時間ではなく、駐車時等の比較的長い時間であり、任意の値であってよいが、例えば5分とすることができる。
【0065】
制御部20は、車両Aの車速v(km/h)が規定車速VR(km/h)よりも小さい状態となっている時間が規定時間Dt以上継続していると判断すると(ステップS21でYES)、車両Aにおいて停車中でのシャッタ開閉制御処理を行うために、ステップS22の処理に進む。一方、制御部20は、車両Aの車速v(km/h)が規定車速VR(km/h)よりも小さい状態となっている時間が規定時間Dt以上継続していない(規定時間Dt未満である)と判断すると(ステップS21でNO)、図5に示す車両走行中におけるシャッタ開閉制御処理(これをステップS29とする)に処理を移す。
【0066】
ステップS22において、制御部20は、バッテリパック9中のバッテリモジュール11を冷却する必要があるかを判断するために、バッテリパック9が備える全てのバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)のバッテリ最高温度tmaxが高温側閾値THよりも低いか否かを判断する。
【0067】
制御部20は、バッテリパック9が備える全てのバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)のバッテリ最高温度tmaxが高温側閾値THよりも低いと判断することでバッテリパック9中のバッテリモジュール11を冷却する必要がないと判断すると(ステップS22でYES)、バッテリパック9中のバッテリモジュール11を加温する必要があるかを判断するために、ステップS24の処理に進む。一方、制御部20は、バッテリパック9が備える少なくとも何れかのバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)のバッテリ最高温度tmaxが高温側閾値THよりも低くない(高温側閾値TH以上である)と判断することでバッテリパック9中のバッテリモジュール11を冷却する必要があると判断すると(ステップS22でNO)、バッテリパック9中の全てのバッテリモジュール11を冷却するために、ステップS23の処理に進む。
【0068】
ステップS23において、制御部20は、バッテリパック9が備える全てのバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)のそれぞれに併設されたシャッタ12(シャッタ121、122、123)を全開とするようにシャッタ駆動部22(シャッタ駆動部221、222、223)を制御する。制御部20は、このステップS23の処理後、ステップS22の処理に戻る。このようにして、バッテリパック9内の全てのバッテリモジュール11は、併設するシャッタ12が全開とされることで、外気によって冷却される。このような全てのシャッタ12が全開とされる状態は、全てのバッテリモジュール11におけるバッテリ最高温度Tmaxが高温側閾値THよりも低くなるまで続く。
【0069】
ステップS22後のステップS24において、制御部20は、バッテリパック9中のバッテリモジュール11を加温する必要があるかを判断するために、バッテリパック9が備える全てのバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)のバッテリ最低温度tminが低温側閾値TLよりも高いか否かを判断する。
【0070】
制御部20は、バッテリパック9が備える全てのバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)のバッテリ最低温度tminが低温側閾値TLよりも高いと判断することで、バッテリパック9中のバッテリモジュール11を加温する必要がないと判断すると(ステップS24でYES)、ステップS28の処理に進む。
【0071】
一方、制御部20は、バッテリパック9が備える少なくとも何れかのバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)のバッテリ最低温度tminが低温側閾値TLよりも高くない(低温側閾値TL以下である)と判断すると(ステップS24でNO)、全てのバッテリモジュール11を加温するために、ステップS25の処理に進む。
【0072】
ステップS25において、制御部20は、外気によってバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)を加温できるかを判断するために、外気温センサ23にて検知される外気温TAが、バッテリパック9が備える全てのバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)におけるバッテリ最低温度tminの内、最も低いバッテリ最低温度tminよりも低いか否かを判断する。
【0073】
制御部20は、外気温センサ23にて検知される外気温TAが、この最も低いバッテリ最低温度tminよりも低いと判断することで、外気によってバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)を加温できないと判断すると(ステップS25でYES)、ステップS26に処理を進める。一方、制御部20は、外気温センサ23にて検知される外気温TAが、この最も低いバッテリ最低温度tminよりも低くない(バッテリ最低温度tmin以上である)と判断することで、外気によってバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)を加温できると判断すると(ステップS25でNO)、ステップS27に処理を進める。
【0074】
ステップS26において、制御部20は、バッテリパック9が備える全てのシャッタ12(シャッタ121、122、123)が全閉の状態となるようにシャッタ駆動部22(シャッタ駆動部221、222、223)を制御する。制御部20は、このステップS26の処理後、ステップS24の処理に戻る。このようにして、バッテリパック9内の全てのバッテリモジュール11は、併設するシャッタ12が全閉とされることで、バッテリパック9内の空気或いはバッテリの駆動電流による自己発熱により自然に加温される。このような全てのシャッタ12が全閉とされる状態は、全てのバッテリモジュール11におけるバッテリ最低温度tminが低温側閾値TLよりも高くなるまで続く。
【0075】
ステップS27において、制御部20は、バッテリパック9が備える全てのシャッタ12(シャッタ121、122、123)を全開とするようにシャッタ駆動部22(シャッタ駆動部221、222、223)を制御する。制御部20は、このステップS27の処理後、ステップS24の処理に戻る。このようにして、バッテリパック9内の全てのバッテリモジュール11は、併設するシャッタ12が全開とされることで、外気によって加温される。このような全てのシャッタ12が全開とされる状態は、全てのバッテリモジュール11におけるバッテリ最低温度tminが低温側閾値TLよりも高くなるまで続く。
【0076】
ステップS24後のステップS28において、制御部20は、全てのシャッタ12(シャッタ121、122、123)を全閉とする。すなわち、制御部20は、このステップS28において、開放中(全開)のシャッタ12があれば、そのシャッタ12を全閉とするように、シャッタ駆動部22を制御する。制御部20は、このステップS28の処理後、図6の一連の処理を終了する。なお、制御部20は、図6の一連の処理を終了すると、車速v(km/h)を計測する所定のタイミングで図5の一連の処理(ステップS29)を開始する。
【0077】
このように、第1実施形態のバッテリ温調機構1によれば、複雑な冷却機構を設けることなく、シャッタ12といった簡易な構成を設けるだけで、バッテリモジュール11の温度上昇による劣化を防ぎ、これによりバッテリ寿命を延ばすことができる。また、複数のバッテリモジュール11間での温度のばらつきを抑制して出力制限を回避し、バッテリの使い切りを可能とすることができる。このようなバッテリ温調機構1は、外気(走行風を含む)の温度範囲で温度調節が可能な全固体電池セルをバッテリセル11-2とした場合に、特に有用である。
【0078】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、第1実施形態と同様にバッテリ温調機構1を備えるが、そのシャッタ12の開閉制御処理が異なる。第2実施形態における第1実施形態と同一構成、同一制御内容については適宜説明を省略する。
【0079】
上述の第1実施形態では、シャッタ12(シャッタ121、122、123)の開放時、その開放させるシャッタ12を全開の状態で開放させた。これに対し、第2実施形態では、シャッタ12の開放時、その開放させるシャッタ12に対し、可動シャッタ部121-4、122-4、123-4の開き具合の指標となる開度レベルを決定し、その開度レベルに応じた大きさ(可動シャッタ部121-4、122-4、123-4の開角度)で、シャッタ12を開放させる。
【0080】
より具体的には、制御部20は、バッテリ最高温度tmax、バッテリ最低温度tmin等の値に基づいて、外気(走行風を含む)により温調する必要があるバッテリモジュール11に対して順に外気(走行風を含む)による冷却又は加温の優先順位を設定する。そして、制御部20は、優先順位の高いバッテリモジュール11ほど、併設するシャッタ12の開度レベルが大きくなるように、その併設するシャッタ12に対し、開度レベル(「大(全開)レベル」、「中レベル」、「小レベル」)を決定する。
【0081】
そして、制御部20は、決定した開度レベルのデータを、対応するシャッタ駆動部22に供給する。シャッタ駆動部22は、その開度レベルに応じた傾斜角度(開角度)になるように可動シャッタ部12-4を回転させて、開口部12-3をその開角度に応じた大きさの開口状態となるように開放する。
【0082】
また、制御部20は、バッテリ最高温度tmax、バッテリ最低温度tmin等の値に基づいて、外気(走行風を含む)による温調を行う必要がないバッテリモジュール11に対しては、併設するシャッタ12を全閉とする判断結果のデータを、対応するシャッタ駆動部22に供給する。そのシャッタ駆動部22は、この判断結果に基づいて、必要に応じてシャッタ12の可動シャッタ部12-4を回転駆動させ、シャッタ12の開口部12-3を全閉にする。
【0083】
例えば図7及び図8に示すように、バッテリパック9において、車両前後方向の最も前方に位置するバッテリモジュール111に併設されるシャッタ121は、全ての可動シャッタ部121-4が開口部121-3を閉鎖している(全閉)。これにより、バッテリモジュール111は、前方から外気(走行風を含む)が流れ込んでも、シャッタ12の開口部12-3を通過しないため、外気(走行風を含む)が当たらない又は極めて当たり難い。
【0084】
また、この図7及び図8に示すように、バッテリパック9において、車両前後方向の略中央に位置するバッテリモジュール112に併設されるシャッタ122は、開度レベルとして「小レベル」が決定されており、全ての可動シャッタ部122-4が開口部122-3の開口面に対し、決定された「小レベル」に応じた開角度で配置されることで、全ての開口部122-3が最小に開放された状態(開口状態「小」)となっている。
【0085】
また、この図7及び図8に示すように、バッテリパック9において、車両前後方向の最も後方に位置するシャッタ123は、開度レベルとして「大(全開)レベル」が決定されており、全ての可動シャッタ部123-4が開口部123-3の開口面に対し、決定された「大レベル」に応じた開角度で配置されることで、全ての開口部123-3が最大に開放された状態(開口状態「大(全開)」)となっている。
【0086】
また、別の例として、図9及び図10に示すように、バッテリパック9において、車両前後方向の最も前方に位置するバッテリモジュール111に併設されるシャッタ121は、開度レベル「小レベル」に応じて全ての開口部121-3が開口状態「小」で開放されている。また、車両前後方向の最も後方に位置するバッテリモジュール113に併設されるシャッタ123は、開度レベル「大レベル」に応じて全ての開口部123-3が開口状態「大(全開)」で開放されている。
【0087】
そして、この図9及び図10に示すバッテリパック9において、車両前後方向の略中央に位置するバッテリモジュール112に併設されるシャッタ122は、開度レベルとして「中レベル」が決定されており、全ての可動シャッタ部122-4が開口部122-3の開口面に対し、決定された「中レベル」に応じた開角度で配置されることで、全ての開口部122-3が中程度に開放された状態(開口状態「中」)となっている。
【0088】
これら図7図10の例に示すように、開口部12-3の開口状態が「小」、「中」、「大」と大きくなるにつれて、前方からバッテリパック9内に流れ込んだ外気(走行風を含む)は、シャッタ12の開口部12-3を通過し易くなる(開口部12-3を通過する風量が増える)ため、併設するバッテリモジュール11に外気(走行風を含む)がより当たるようになる。
【0089】
次に、図11を用いて、第2実施形態での車両走行時においてバッテリモジュール11の温調を行うためのシャッタ開閉制御処理について説明する。この図11に示すように、制御部20は、ステップS31~ステップS34において図5のステップS1~ステップS4と同一の処理を行う。
【0090】
制御部20は、ステップS31において、YESではステップS32に進み、NOでは図6に示す車両停車中におけるシャッタ開閉制御処理(これをステップS49とする)に処理を進める。また、制御部20は、ステップS32において、YESではステップS37に進み、NOではステップS33に進む。また、制御部20は、ステップS33において、YESではステップS34に進み、NOではステップS35に進む。また、制御部20は、ステップS34の処理後、ステップS32に戻る。
【0091】
ステップS35において、制御部20は、バッテリパック9が備えるバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)の内、バッテリ最高温度tmaxが高温側閾値TH以上であるバッテリモジュール11のみを冷却するために、バッテリ最高温度tmaxが高温側閾値TH以上であるバッテリモジュール11に対し、バッテリ最高温度tmaxが高いものから順に走行風による冷却の優先順位を設定する。そして、制御部20は、このバッテリ最高温度tmaxが高温側閾値TH以上であるバッテリモジュール11において、優先順位の高い(すなわちバッテリ最高温度tmaxが高い)バッテリモジュール11ほど、走行風によってより冷却させるため、併設するシャッタ12の開度レベルが大きくなるように、その併設するシャッタ12に対し、開度レベル(「大(全開)レベル」、「中レベル」、又は「小レベル」)を決定する。
【0092】
例えばバッテリモジュール111、112、113のバッテリ最高温度tmaxがこの順に高くなり(すなわちバッテリモジュール113のバッテリ最高温度tmaxが最も高くなり)、バッテリモジュール112、113のバッテリ最高温度tmaxが高温側閾値TH以上であるとする。この場合、制御部20は、ステップS35において、バッテリモジュール113、112の順に走行風による冷却の優先順位を設定する。そして、制御部20は、例えば、シャッタ123の開度レベルを「大レベル」に、シャッタ122の開度レベルを「中レベル」に決定する。なお、開度レベルはこれに限定されず、例えばシャッタ123の開度レベルを「大レベル」に、シャッタ122の開度レベルを「小レベル」に決定してもよい。
【0093】
ステップS36において、制御部20は、バッテリ最高温度tmaxが高温側閾値TH以上のバッテリモジュール11に併設するシャッタ12用のシャッタ駆動部22にステップS35で決定した開度レベルのデータを供給することで、シャッタ駆動部22を制御する。すなわち、この開度レベルのデータが供給されたシャッタ駆動部22は、開度レベルに応じた傾斜角度(開角度)になるように可動シャッタ部12-4を回転させて、開口部12-3をその開角度に応じた大きさの開口状態となるように開放し、走行風によるバッテリモジュール11の冷却を行う。制御部20は、このステップS36の処理後、ステップS32に戻る。
【0094】
また、この図11に示すように、制御部20は、ステップS37において図5のステップS6と同一の処理を行い、ステップS38においてステップS7と同一の処理を行い、ステップS41においてステップS9と同一の処理を行う。制御部20は、ステップS37において、YESではステップS42に進み、NOではステップS38に進む。また、制御部20は、ステップS38において、YESではステップS39に進み、NOではステップS41に進む。また、制御部20は、ステップS41の処理後、ステップS37に戻る。
【0095】
ステップS39において、制御部20は、バッテリパック9が備えるバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)の内、バッテリ最低温度tminが低温側閾値TL以下であるバッテリモジュール11のみを加温するために、バッテリ最低温度tminが低温側閾値TL以下であるバッテリモジュール11に対し、バッテリ最低温度tminが低いものから順に走行風による加温の優先順位を設定する。そして、制御部20は、このバッテリ最低温度tminが低温側閾値TL以下であるバッテリモジュール11において、優先順位の高い(すなわちバッテリ最低温度tminが低い)バッテリモジュール11ほど、走行風によってより加温させるため、併設するシャッタ12の開度レベルが大きくなるように、その併設するシャッタ12に対し、開度レベル(「大(全開)レベル」、「中レベル」、又は「小レベル」)を決定する。
【0096】
例えばバッテリモジュール113、112、111のバッテリ最低温度tminがこの順に低くなり(すなわちバッテリモジュール111のバッテリ最低温度tminが最も低くなり)、バッテリモジュール111、112のバッテリ最低温度tminが低温側閾値TL以下であるとする。この場合、制御部20は、ステップS39において、バッテリモジュール111、112の順に走行風による加温の優先順位を設定する。そして、制御部20は、例えば、シャッタ121の開度レベルを「大レベル」に、シャッタ122の開度レベルを「中レベル」に決定する。なお、開度レベルはこれに限定されず、例えばシャッタ121の開度レベルを「大レベル」に、シャッタ122の開度レベルを「小レベル」に決定してもよい。
【0097】
ステップS40において、制御部20は、バッテリ最低温度tminが低温側閾値TL以下のバッテリモジュール11に併設するシャッタ12用のシャッタ駆動部22にステップS39で決定した開度レベルのデータを供給することで、シャッタ駆動部22を制御する。すなわち、この開度レベルのデータが供給されたシャッタ駆動部22は、開度レベルに応じた傾斜角度(開角度)になるように可動シャッタ部12-4を回転させて、開口部12-3をその開角度に応じた大きさの開口状態となるように開放し、走行風によるバッテリモジュール11の加温を行う。制御部20は、このステップS40の処理後、ステップS37に戻る。
【0098】
また、この図11に示すように、制御部20は、ステップS42において図5のステップS10と同一の処理を行い、ステップS43においてステップS11と同一の処理を行い、ステップS48においてステップS14と同一の処理を行う。制御部20は、ステップS42において、YESではステップS48に進み、NOではステップS43に進む。また、制御部20は、ステップS43において、YESではステップS44に進み、NOではステップS46に進む。また、制御部20は、ステップS48の処理後、図11における一連の処理を終了する。なお、制御部20は、図11の一連の処理を終了すると、車速v(km/h)を計測する所定のタイミングで図11の一連の処理を開始する。
【0099】
ステップS44において、制御部20は、バッテリパック9が備えるバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)において、バッテリ最高温度tmaxが高いものから順に走行風による冷却の優先順位を設定する。そして、制御部20は、優先順位の高い(すなわちバッテリ最高温度tmaxが高い)バッテリモジュール11ほど、走行風によってより冷却させるため、併設するシャッタ12の開度レベルが大きくなるように、その併設するシャッタ12に対し、開度レベル(「大(全開)レベル」、「中レベル」、又は「小レベル」)を決定する。
【0100】
例えばバッテリモジュール111、112、113のバッテリ最高温度tmaxがこの順に高くなる(すなわちバッテリモジュール113のバッテリ最高温度tmaxが最も高くなる)とする。この場合、制御部20は、ステップS44において、バッテリモジュール113、112、111の順に優先順位を設定する。そして、制御部20は、例えば、シャッタ123の開度レベルを「大レベル」に、シャッタ122の開度レベルを「中レベル」に、シャッタ121の開度レベルを「小レベル」に決定する。
【0101】
ステップS45において、制御部20は、バッテリモジュール11に併設するシャッタ12用のシャッタ駆動部22にステップS44で決定した開度レベルのデータを供給することで、シャッタ駆動部22を制御する。すなわち、この開度レベルのデータが供給されたシャッタ駆動部22は、開度レベルに応じた傾斜角度(開角度)になるように可動シャッタ部12-4を回転させて、開口部12-3をその開角度に応じた大きさの開口状態となるように開放する。制御部20は、このステップS45の処理後、ステップS42に戻る。
【0102】
このようにして、バッテリパック9が備えるバッテリモジュール11は、最大温度差ΔTが温度差上限値UL未満となるまで、各バッテリモジュール11の優先順位に応じた風量の走行風で冷却される。これにより、バッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)間の温度のばらつきが低減される。
【0103】
ステップS46において、制御部20は、バッテリパック9が備えるバッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)において、バッテリ最低温度tminが低いものから順に走行風による加温の優先順位を設定する。そして、制御部20は、優先順位の高い(すなわちバッテリ最低温度tminが低い)バッテリモジュール11ほど、走行風によってより加温させるため、併設するシャッタ12の開度レベルが大きくなるように、その併設するシャッタ12に対し、開度レベル(「大レベル」、「中レベル」、又は「小レベル」)を決定する。
【0104】
ステップS47において、制御部20は、バッテリモジュール11に併設するシャッタ12用のシャッタ駆動部22にステップS46で決定した開度レベルのデータを供給することで、シャッタ駆動部22を制御する。すなわち、この開度レベルのデータが供給されたシャッタ駆動部22は、開度レベルに応じた傾斜角度(開角度)になるように可動シャッタ部12-4を回転させて、開口部12-3をその開角度に応じた大きさの開口状態となるように開放する。制御部20は、このステップS47の処理後、ステップS42に戻る。
【0105】
このようにして、バッテリパック9が備えるバッテリモジュール11は、最大温度差ΔTが温度差上限値UL未満となるまで、各バッテリモジュールの優先順位に応じた風量の走行風で加温される。これにより、バッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)間の温度のばらつきが低減される。
【0106】
このような第2実施形態によれば、上述の第1実施形態と同様の効果を得ることができる。そして、第2実施形態によれば、各バッテリモジュール11の温度に基づいて決定された開度レベルの大きさで対応するシャッタ12を開放させることから、バッテリモジュール11に向けて流れる走行風の風量をより高精度に制御することができる。そのため、第2実施形態によれば、バッテリモジュール11の温調をより高精度に行うことができる。
【0107】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図12に示すように、第3実施形態では、車両Aは、上述のバッテリ温調機構1に代えて、送風機13を備えたバッテリ温調機構1Aを搭載する。第3実施形態における第1、第2実施形態と同一構成、同一制御内容については適宜説明を省略する。
【0108】
第3実施形態のバッテリ温調機構1Aでは、第1、第2実施形態の走行風に代えて、外気が送風機13を通過することで得られた強制風を用いて温調を行うようにする。バッテリ温調機構1Aは、フロントグリル開口部(吹込口)7とバッテリパック9との間、すなわち、フロアパネル3の下方(床下)且つ底部(アンダーカバー)8上であって、バッテリパック(バッテリ収容部)9よりも前方に、送風機13を設ける。送風機13は、その筐体13a内に、ファン13bと、ファン13bを駆動させるモータ(図示せず)とを有する。このバッテリ温調機構1Aでは、フロントグリル開口部7を介して吹き込まれた外気が送風機13を通過することで得られた強制風がバッテリパック9内に吹き込まれ、バッテリパック9内を流れる強制風によってバッテリパック9内の複数のバッテリモジュール11を冷却又は加温する。
【0109】
このような第3実施形態のバッテリ温調機構1Aにおいても、シャッタ12(121、122、123)は、バッテリパック9内を流れる強制風が併設するバッテリモジュール11に当たる開状態と、併設するバッテリモジュール11に向かう強制風の流れを遮断する閉状態とに変化可能である。
【0110】
このような第3実施形態のバッテリ温調機構1Aでは、制御部20は、走行風に変えて強制風を用い、例えば第1実施形態の図5のフロー図に示す走行時のシャッタ開閉制御処理と略同様のシャッタ開閉制御処理を行うようにしてよい。但しこの場合、制御部20は、図5に示すS1、S15の処理を行わず、S2~S14の処理を行うようにする(このため、図6に示す処理は行わない)。
【0111】
或いは、第3実施形態のバッテリ温調機構1Aにおいて、制御部20は、走行風に変えて強制風を用い、第2実施形態の図11のフロー図に示す走行時のシャッタ開閉制御処理と略同様のシャッタ開閉制御処理を行うようにしてもよい。但しこの場合、制御部20は、図11に示すS31、S49の処理を行わず、S32~S48の処理を行うようにする(このため、図6に示す処理は行わない)。
【0112】
或いは、第3実施形態のバッテリ温調機構1Aは、図12に示す構成に代えて、バッテリパック9内における車両前後方向の最も前方側に位置するバッテリモジュール111よりも前側に送風機13を設け、制御部20により、この第3実施形態でのシャッタ開閉制御処理を行うようにしてもよい。
【0113】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。図13に示すように、第4実施形態では、車両Aは、上述のバッテリ温調機構1に代えてバッテリ温調機構1Bを搭載する。第4実施形態における第1、第2実施形態と同一構成、同一制御内容については適宜説明を省略する。
【0114】
第4実施形態のバッテリ温調機構1Bは、底部(アンダーカバー)8Aとバッテリパック9Aの筐体(ケース)90Aの底面とにおける、バッテリモジュール11(バッテリモジュール111、112、113)のそれぞれの直下の位置において、開口(吹込口)を形成し、その開口(吹込口)自体に、開閉可能なシャッタ12A(シャッタ121A、122A、123A)を設けている。このバッテリ温調機構1Bは、図13図14の実線矢印に示すように、車両Aの下側を流れる外気(走行風を含む)を取り入れてバッテリモジュール11の温調を行うものであり、開放中のシャッタ12Aがあるときには、車両Aの下方からその開放中のシャッタ12Aを介して流入した外気(走行風を含む)が、そのシャッタ12Aに併設するバッテリモジュール11に当たるようになる。
【0115】
なお、第4実施形態では、フロントグリル開口部7から流入する外気(走行風を含む)は、前方部6内の機器等に当たるが、バッテリパック9A内には流入せず、バッテリ温調機構1Bに用いられないようになっている。
【0116】
図14及び図15に示すように、シャッタ12A(シャッタ121A、122A、123A)は、複数の開口部12A-3(開口部121A-3、122A-3、123A-3)と、開口部12A-3のそれぞれに設けられた可動シャッタ部12A-4(可動シャッタ部121A-4、122A-4、123A-4)とを備える。
【0117】
この図14図15に示す例では、バッテリパック9Aにおいて、バッテリモジュール111、112に併設するシャッタ121A、122Aは、全ての可動シャッタ部121A-4、122A-4が開口部121A-3、122A-3を閉鎖している(全閉)。そのため、車両Aの下方を流れる外気(走行風)は、バッテリパック9A内に流入せず、バッテリモジュール111、112には当たらない。
【0118】
一方、この例のバッテリパック9Aにおいて、バッテリモジュール113に併設するシャッタ123Aは、全ての可動シャッタ部123A-4が開口部123A-3の開口面に対して最大の開角度で配置されている。これにより、全ての開口部121A-3が最大に開放された状態(全開)となっている。そのため、車両Aの下方を流れる外気(走行風)は、バッテリパック9A内に流入し、バッテリモジュール113に当たる。
【0119】
このような第4実施形態のバッテリ温調機構1Bにおいても、制御部20が、上述の第1実施形態又は第2実施形態と同様のシャッタ開閉制御処理(図5及び図6、又は、図11及び図6)を行うことで、バッテリモジュール11を温調する。
【0120】
このような第4実施形態によれば、車両Aの底部8Aに設けた吹込口自体にシャッタ12A(シャッタ121A、122A、123A)を設けることで、バッテリパック9A内においてシャッタ用のスペースを確保せずに済む。すなわち、第4実施形態によれば、バッテリパック9Aの小型化を図りながら、上述の第1実施形態又は第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0121】
<他の例>
本発明の実施形態は、上述の第1~第4実施形態に限定されない。上述の第1~第4実施形態において、制御部20は、バッテリモジュール11を加温する制御を行う際、外気(走行風を含む)、或いは、外気が送風機13を通過することで得られる強制風を用いてバッテリモジュール11を加温するようにした。しかしながら、これに代えて、制御部20は、バッテリモジュール11を加温する制御を行う際、例えば、フロントグリル開口部(吹込口)7で取り込んだ外気が、前方部6内のエンジン、モータ、熱交換器(ラジエータ)等(何れも図示せず)を通過することで得られる温められた空気を用いて、バッテリモジュール11を加温するようにしてもよい。
【0122】
また、シャッタ12(又はシャッタ12A)の設定位置、形状等は、上述の第1~第4実施形態で述べた例に限定されず、バッテリモジュール11の温調に必要な風路の設計の範疇で変更することが可能である。また、1つのバッテリモジュール11に併設されるシャッタ12(又はシャッタ12A)の数は、上述のように1つでなく、複数であってもよく、或いは、複数のバッテリモジュール11の中には、シャッタ12(又はシャッタ12A)を併設しないバッテリモジュール11が存在してもよい。
【符号の説明】
【0123】
1,1A:バッテリ温調機構、2:車体、3:フロアパネル、4:座席、5:ハンドル、6:前方部、7:フロントグリル開口部(吹込口)、8,8A:底部(アンダーカバー)、9,9A:バッテリパック(バッテリ収容部)、11,111,112,113:バッテリモジュール、11-1,111-1,112-1,113-1:バッテリケース、11-2,111-2,112-2,113-2:バッテリセル、12,121,122,123,12A,121A,122A,123A:シャッタ、12-1,121-1,122-1,123-1:前側部、12-2,121-2,122-2,123-2:上部、12-3,121-3,122-3,123-3,12A-3,121A-3,122A-3,123A-3:開口部、12-4,121-4,122-4,123-4,12A-4,121A-4,122A-4,123A-4:可動シャッタ部、20:制御部、21,211,212,213:バッテリ温度センサ、22,221,222,223:シャッタ駆動部、23:外気温センサ、90,90A:筐体(ケース)、91:前開口部、92:後開口部、13:送風機、13a:筐体、13b:ファン
図1
図2
図3
図4
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図10
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