(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172859
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】バルブの耐圧漏れ検査方法およびバルブの耐圧漏れ検査装置
(51)【国際特許分類】
G01M 3/20 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
G01M3/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090864
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】390002381
【氏名又は名称】株式会社キッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 涼
(72)【発明者】
【氏名】今井 郁帆
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 平
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA08
2G067CC04
2G067CC18
2G067DD17
(57)【要約】
【課題】自動化の設備コストを抑えつつ、高精度の漏れ検査を行うことができるバルブの耐圧漏れ検査方法およびバルブの耐圧漏れ検査装置を提供すること。
【解決手段】バルブの耐圧漏れ検査装置1は、検査用ガスG1の水素濃度、かつ、品質要求上の供給流量で校正ガスG2が供給されたチャンバ10内の水素の雰囲気と略等しくするように水素濃度を検査用ガスG1の水素濃度よりも低くし、かつ、品質要求上の供給流量よりも多くしてチャンバ10内に校正ガスG2を供給する校正ガス供給部40と、チャンバ10内に供給した校正ガスG2のガスセンサ30による水素の時間経過に伴う検出データに基づいて漏れ検査の合否判定処理を行う漏れ検査合否判定処理部51aと、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ内に収容したバルブ本体に水素を含む検査用ガスを供給し、前記チャンバ内の水素をガスセンサによって検出して漏れ検査をするバルブの耐圧漏れ検査方法において、
前記検査用ガスの水素濃度、かつ、品質要求上の供給流量で校正ガスが供給された前記チャンバ内の水素の雰囲気と略等しくするように、前記校正ガスの水素濃度を前記検査用ガスの水素濃度よりも低くし、かつ、前記品質要求上の供給流量よりも多くして前記チャンバ内に供給した前記校正ガスの前記ガスセンサによる水素の時間経過に伴う検出データに基づいて漏れ検査の合否判定を行うことを特徴とするバルブの耐圧漏れ検査方法。
【請求項2】
前記校正ガスは、
前記検査用ガスの水素濃度と前記品質要求上の供給流量との積の値に基づいて、水素濃度および供給流量を定めた請求項1に記載のバルブの耐圧漏れ検査方法。
【請求項3】
前記校正ガスの供給流量は、0.1ml/min以上である請求項1又は2に記載のバルブの耐圧漏れ検査方法。
【請求項4】
前記検出データは、前記チャンバ内に前記校正ガスを供給した時間経過に伴って前記ガスセンサが水素濃度に応じて出力した電圧値のデータであり、
前記検出データの所定の時間に対応して定められた電圧値を閾値として漏れ検査の合否判定を行う請求項1又は2に記載のバルブの耐圧漏れ検査方法。
【請求項5】
チャンバ内に収容したバルブ本体に水素を含む検査用ガスを供給し、前記チャンバ内の水素をガスセンサによって検出して漏れ検査をするバルブの耐圧漏れ検査装置において、
前記検査用ガスの水素濃度、かつ、品質要求上の供給流量で校正ガスが供給されたチャンバ内の水素の雰囲気と略等しくするように水素濃度を検査用ガスの水素濃度よりも低くし、かつ、品質要求上の供給流量よりも多くして前記チャンバ内に校正ガスを供給する校正ガス供給部と、
前記チャンバ内に供給した前記校正ガスの前記ガスセンサによる水素の時間経過に伴う検出データに基づいて漏れ検査の合否判定処理を行う漏れ検査合否判定処理部と、を有することを特徴とするバルブの耐圧漏れ検査装置。
【請求項6】
前記校正ガスは、
前記検査用ガスの水素濃度と前記品質要求上の供給流量との積の値に基づいて、水素濃度および供給流量を定めた請求項5に記載のバルブの耐圧漏れ検査装置。
【請求項7】
前記ガスセンサは、前記チャンバ内の上部領域の水素を検出可能に前記チャンバに配置された請求項5又は6に記載のバルブの耐圧漏れ検査装置。
【請求項8】
前記校正ガスの供給流量は、0.1ml/min以上である請求項5又は6に記載のバルブの耐圧漏れ検査装置。
【請求項9】
前記検出データは、前記チャンバ内に前記校正ガスを供給した時間経過に伴って前記ガスセンサが水素濃度に応じて出力した電圧値のデータであり、
前記漏れ検査合否判定処理部は、前記検出データの所定の時間に対応して定められた電圧値を閾値として漏れ検査の合否判定を行う請求項5又は6に記載のバルブの耐圧漏れ検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブの耐圧漏れ検査方法およびバルブの耐圧漏れ検査装置に関し、特に、チャンバ内に収容したバルブから漏れ出た水素をガスセンサによって検出して漏れ検査をするバルブの耐圧漏れ検査方法およびバルブの耐圧漏れ検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バルブは高い耐圧性が要求されるため、その製造時には耐圧部分の強度および漏れの有無を確認するための耐圧検査が行われる。
この耐圧検査の方法としては、例えば、水没法、スニッファー法、真空チャンバ法が挙げられる。
水没法は、内部を気体で加圧した検査対象物を水中に浸漬させ、検査対象物の内部から流出した泡を目視等で確認することによって漏れを検出する方法である。
また、スニッファー法は、検査対象物内にサーチガスを充填し、検査対象物の内部から流出したガスにプローブを近接させてこのプローブで漏れを検出する方法である。
そして、真空チャンバ法は、検査対象物を真空容器内に収納し、検査対象物の内部にサーチガスを充填し、検査対象物から真空容器へ流出したガスをセンサで検知する方法である。
【0003】
真空チャンバ法は、センサで検知し易い拡散性のあるガスをサーチガスとして用い、このサーチガスの一つとして、ヘリウムガスが多く用いられていたが、ヘリウムガスの需要増加による市場における供給不足の影響から、水素ガスが多く用いられるようになってきている。
【0004】
例えば、特許文献1には、供試弁を非密封状態で収容したカバーと、このカバー内に供試弁から漏れ出た水素を含むサーチガスを検出するセンサとを備え、カバー内において気体の流れを許容し、かつ、供試弁から漏れ出たサーチガスが検査時間内にセンサに到達するように構成したバルブ用耐圧検査装置が記載されている。
【0005】
このような、真空チャンバ法を用いるバルブの耐圧漏れ検査装置には、検査用ガスの水素を検知する水素ガス検知センサの点検のためチャンバ内に供給する校正ガスを一定流量の基準リークとして作り出すフロースタンダードと称される機器が設けられている。
【0006】
ところで、昨今、バルブの耐圧検査の検査基準に関して、より微少なリークを検出可能にするための高い基準が定められるようになってきている。例えば、工業用バルブに関して言えば、0.1ml/minよりも少ないリーク量が要求されるようになってきている。
【0007】
そして、真空チャンバ法を用いた耐圧検査は、バルブ製造ラインの自動化の要求に応じて、自動生産ラインの一つの工程として組み込まれるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、フロースタンダードは、微少リークを作り出すものほど、入手し難く高価であるため、複数の生産ラインのそれぞれのバルブの耐圧漏れ検査装置に、品質要求上例えば、0.1ml/minよりも少ない微小なリークを作り出す供給流量のフロースタンダードを設けた場合には、設備コストが増加してしまう問題があった。
すなわち、自動化により高精度な漏れ検査を行うためには設備コストが増大してしまう問題があった。
【0010】
本発明は、従来の課題を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、自動化の設備コストを抑えつつ、高精度の漏れ検査を行うことができるバルブの耐圧漏れ検査方法およびバルブの耐圧漏れ検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、チャンバ内に収容したバルブ本体に水素を含む検査用ガスを供給し、チャンバ内の水素をガスセンサによって検出して漏れ検査をするバルブの耐圧漏れ検査方法において、検査用ガスの水素濃度、かつ、品質要求上の供給流量で校正ガスが供給されたチャンバ内の水素の雰囲気と略等しくするように、校正ガスの水素濃度を検査用ガスの水素濃度よりも低くし、かつ、品質要求上の供給流量よりも多くしてチャンバ内に供給した校正ガスのガスセンサによる水素の時間経過に伴う検出データに基づいて漏れ検査の合否判定を行うバルブの耐圧漏れ検査方法である。
【0012】
請求項2に係る発明は、校正ガスが、検査用ガスの水素濃度と品質要求上の供給流量との積の値に基づいて、水素濃度および供給流量を定めたバルブの耐圧漏れ検査方法である。
【0013】
請求項3に係る発明は、校正ガスの供給流量が、0.1ml/min以上であるバルブの耐圧漏れ検査方法である。
【0014】
請求項4に係る発明は、検出データが、チャンバ内に校正ガスを供給した時間経過に伴ってガスセンサが水素濃度に応じて出力した電圧値のデータであり、検出データの所定の時間に対応して定められた電圧値を閾値として漏れ検査の合否判定を行うバルブの耐圧漏れ検査方法である。
【0015】
請求項5に係る発明は、チャンバ内に収容したバルブ本体に水素を含む検査用ガスを供給し、チャンバ内の水素をガスセンサによって検出して漏れ検査をするバルブの耐圧漏れ検査装置において、検査用ガスの水素濃度、かつ、品質要求上の供給流量で校正ガスが供給されたチャンバ内の水素の雰囲気と略等しくするように水素濃度を検査用ガスの水素濃度よりも低くし、かつ、品質要求上の供給流量よりも多くしてチャンバ内に校正ガスを供給する校正ガス供給部と、チャンバ内に供給した校正ガスの前記ガスセンサによる水素の時間経過に伴う検出データに基づいて漏れ検査の合否判定処理を行う漏れ検査合否判定処理部と、を有するバルブの耐圧漏れ検査装置である。
【0016】
請求項6に係る発明は、校正ガスが、検査用ガスの水素濃度と品質要求上の供給流量との積の値に基づいて、水素濃度および供給流量を定めたバルブの耐圧漏れ検査装置である。
【0017】
請求項7に係る発明は、ガスセンサが、チャンバ内の上部領域の水素を検出可能にチャンバに配置されたバルブの耐圧漏れ検査装置である。
【0018】
請求項8に係る発明は、校正ガスの供給流量が、0.1ml/min以上であるバルブの耐圧漏れ検査装置である。
【0019】
請求項9に係る発明は、検出データは、チャンバ内に校正ガスを供給した時間経過に伴って前記ガスセンサが水素濃度に応じて出力した電圧値のデータであり、漏れ検査合否判定処理部が、検出データの所定の時間に対応して定められた電圧値を閾値として漏れ検査の合否判定を行うバルブの耐圧漏れ検査装置である。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に係る発明によると、チャンバ内に収容したバルブ本体に水素を含む検査用ガスを供給し、チャンバ内の水素をガスセンサによって検出して漏れ検査をするバルブの耐圧漏れ検査方法において、検査用ガスの水素濃度、かつ、品質要求上の供給流量で校正ガスが供給されたチャンバ内の水素の雰囲気と略等しくするように、校正ガスの水素濃度を検査用ガスの水素濃度よりも低くし、かつ、品質要求上の供給流量よりも多くしてチャンバ内に供給した校正ガスのガスセンサによる水素の時間経過に伴う検出データに基づいて漏れ検査の合否判定を行う。
これにより、本件発明者らの実験によって見出された事項である、校正ガスの水素濃度を検査用ガスの水素濃度よりも低くし、かつ、品質要求上の供給流量よりも多くして校正ガスをチャンバ内に供給することによって、校正ガスを検査用ガスの水素濃度で、かつ、品質要求上の供給流量でチャンバ内に供給したときのチャンバ内の水素の雰囲気に近づけることができること、これを利用して、品質要求上求められる供給流量のフロースタンダードよりも多い供給流量のフロースタンダードを用いて、校正ガスをチャンバ内に供給して求めた検出データに基づいて精度の高い漏れ検査を行うことができ、結果的に、自動化の設備コストを抑えつつ、高精度の漏れ検査を行うことができる。
【0021】
請求項2に係る発明によると、校正ガスは、検査用ガスの水素濃度と品質要求上の供給流量との積の値に基づいて、水素ガスの濃度および供給流量を定められている。
これにより、水素濃度とチャンバ内への供給流量との単純な積の値に基づいて、検査用ガスの水素濃度で、かつ、品質要求上の供給流量でチャンバ内に校正ガスを供給したときのチャンバ内の水素の雰囲気に略等しくすることができる。
【0022】
請求項3に係る発明によると、校正ガスの供給流量は、0.1ml/min以上であることにより、より厳しい品質要求上の供給流量に比べて多い供給流量でガスセンサの点検を行うことができると共に、その多い供給流量で定められた検出データに基づいて漏れ検査を行うことができ、結果として、比較的供給流量の多い汎用のリーク基準器を用いてガスセンサの点検およびバルブの漏れ検査を行うことができる。
【0023】
請求項4に係る発明によると、検出データは、チャンバ内に校正ガスを供給した時間経過に伴ってガスセンサが水素濃度に応じて出力した電圧値のデータであり、検出データの所定の時間に対応して定められた電圧値を閾値として漏れ検査の合否判定を行う。
このため、ガスセンサが検出した電圧値によって、精度の高い漏れ検査を行うことができる。
【0024】
請求項5に係る発明によると、チャンバ内に収容したバルブ本体に水素を含む検査用ガスを供給し、チャンバ内の水素をガスセンサによって検出して漏れ検査をするバルブの耐圧漏れ検査装置において、検査用ガスの水素濃度、かつ、品質要求上の供給流量で校正ガスが供給されたチャンバ内の水素の雰囲気と略等しくするように水素濃度を検査用ガスの水素濃度よりも低くし、かつ、品質要求上の供給流量よりも多くしてチャンバ内に校正ガスを供給する校正ガス供給部と、チャンバ内に供給した校正ガスのガスセンサによる水素の時間経過に伴う検出データに基づいて漏れ検査の合否判定を行う漏れ検査合否判定処理部と、を有する。
これにより、本件発明者らの実験によって見出された事項である、水素濃度を検査用ガスの水素濃度よりも低くし、かつ、品質要求上の供給流量よりも多くして校正ガスをチャンバ内に供給することによって、校正ガスを検査用ガスの水素濃度で、かつ、品質要求上の供給流量でチャンバ内に供給したときのチャンバ内の水素の雰囲気に近づけることができること、これを利用して、品質要求上求められる、供給流量のフロースタンダードよりも多い供給流量のフロースタンダードを用いて、校正ガスをチャンバ内に供給して求めた検出データに基づいて精度の高い漏れ検査を行うことができ、結果的に、自動化の設備コストを抑えつつ、高精度の漏れ検査を行うことができる。
【0025】
請求項6に係る発明によると、校正ガスは、検査用ガスの水素濃度と品質要求上の供給流量との積の値に基づいて、水素濃度および供給流量を定められている。
これにより、水素濃度とチャンバ内への供給流量との単純な積の値に基づいて、検査用ガスの水素濃度で、かつ、品質要求上の供給流量でチャンバ内に校正ガスを供給したときのチャンバ内の水素の雰囲気に略等しくすることができ、このチャンバ内の水素の検出データに基づいて漏れ検査の合否判定を行うことができる。
【0026】
請求項7に係る発明によると、ガスセンサが、チャンバ内の上部領域の水素を検出可能にチャンバに配置されたことにより、検査対象バルブから漏れ出てチャンバ内の上部領域に上昇した検査用ガスの水素をガスセンサによって効率的に検出することができ、結果的に、検査対象バルブの各所から漏れ出た水素をガスセンサの設置数を抑えて効率的に検出することができる。
【0027】
請求項8に係る発明によると、校正ガスの供給流量は、0.1ml/min以上であることにより、より厳しい品質要求上の供給流量に比べて多い供給流量でガスセンサの点検を行うことができると共に、その多い供給流量で定められた検出データに基づいて漏れ検査を行うことができ、結果として、比較的供給流量の多い汎用のリーク基準器を用いてより厳しい漏れ検査に対応したガスセンサの点検およびバルブの漏れ検査を行うことができる。
【0028】
請求項9に係る発明によると、検出データが、チャンバ内に校正ガスを供給した時間経過に伴ってガスセンサが水素濃度に応じて出力した電圧値のデータであり、漏れ検査合否判定処理部が、検出データの所定の時間に対応して定められた電圧値を閾値として漏れ検査の合否判定を行う。
このため、ガスセンサが検出した電圧値によって、精度の高い漏れ検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施形態に係るバルブの耐圧漏れ検査装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示したバルブの耐圧漏れ検査装置の機能ブロック図である。
【
図3】バルブの耐圧漏れ検査装置のチャンバ周辺を示す斜視図である。
【
図4】
図3に示したバルブの耐圧漏れ検査装置の断面図である。
【
図6】
図5に示した実験装置を用いて取得したガスセンサが出力した電圧値の時間変化を示すグラフである。
【
図7】バルブの耐圧漏れ検査装置の制御装置が行うバルブの漏れ検査合否判定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】バルブの耐圧漏れ検査装置の制御装置が行うガスセンサ点検処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明に係るバルブの耐圧漏れ検査方法およびバルブの耐圧漏れ検査装置1の実施形態を
図1~
図6に基づいて詳細に説明する。
なお、以下に示す実施形態により本開示が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。さらに、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
図1は、本発明の実施形態に係るバルブの耐圧漏れ検査装置1の概略構成を示すブロック図である。
図2は、
図1に示したバルブの耐圧漏れ検査装置1の機能ブロック図である。
図3は、バルブの耐圧漏れ検査装置1のチャンバ10周辺を示す斜視図である。
図4は、
図3に示したバルブの耐圧漏れ検査装置1の断面図である。
図5は、実験装置100を簡略化して示した図である。
図6は、
図5に示した実験装置100を用いて取得したガスセンサ120が出力した電圧値の時間変化を示すグラフである。
【0031】
本発明の実施形態に係るバルブの耐圧漏れ検査装置1は、バルブの耐圧部分の強度および漏れの有無を確認してバルブの耐圧性を検査するものである。
このバルブの耐圧漏れ検査装置1は、バルブの製造ラインごとにラインの一部に組み込まれ、出荷前のバルブの耐圧性を自動で検査する。なお、バルブの耐圧漏れ検査装置1は、製造ラインとは独立して設けても構わない。
【0032】
バルブの耐圧漏れ検査装置1は、検査対象バルブMを収容するチャンバ10と、チャンバ10に収容された検査対象バルブM内に所定濃度の水素を含む検査ガスを供給する検査用ガス供給部20と、チャンバ10内の水素を検出するようにチャンバ10に設けた6つのガスセンサ30と、ガスセンサ30の点検のために用いる校正ガスG2を4カ所からチャンバ10内に供給する校正ガス供給部40と、バルブの耐圧漏れ検査装置1の各部の動作を制御する制御装置50と、装置情報を表示すると共に操作者による操作を受け付ける表示・操作装置60と、を有する。
【0033】
<チャンバ10について>
チャンバ10は、内部に収容した検査対象バルブMから漏れ出た検査用ガスG1が拡散可能な広さの内部空間10aを有している。
なお、本実施形態では、チャンバ10が略円筒状をなすものを例示したが、チャンバ10の形状はこれに限らず、その他の形状であっても構わない。例えば、チャンバ10が立方体状であっても構わない。
また、チャンバ10は、検査対象バルブMから漏れ出た検査用ガスG1をガスセンサ30によって検知可能であれば、内部空間10aが半密閉状態に設けられても構わない。
【0034】
<検査用ガス供給部20について>
検査用ガス供給部20は、水素と窒素の比率を5:95とした濃度5%の水素を含む混合ガスが高圧の検査用ガスG1として収容された検査用ガスボンベ21と、検査用ガスボンベ21との間に配管を介して不図示の圧力調整用レギュレータ、減圧弁、圧力計等を間に設けて接続された電磁弁22とを備えて構成されている。
なお、検査用ガスボンベ21に収容された高圧の検査用ガスG1は、水素濃度が5%であるため、安全に使用できる。
【0035】
<ガスセンサ30について>
ガスセンサ30は、例えば、0~5Vの電圧値が出力可能な市販の熱線型半導体式水素センサを用いている。
このガスセンサ30は、酸化第二スズ(SnO2)などの金属酸化物半導体表面での水素の吸着による電気伝導度の変化を利用するセンサであり、水素が低濃度でも高感度の出力が可能になることから、耐圧検査装置に適したものである。
本実施形態で用いられる6つのガスセンサ30は、市販の不図示のデジタルポテンショメータにチャンネル毎に接続され、抵抗値を調整することによって基準電圧を調整できるようになっている。
【0036】
6つのガスセンサ30は、
図4に示すように、チャンバ10の内部空間10aの上部領域に配置されている。具体的には、6つのガスセンサ30は、チャンバ10の内部空間10aの上部領域に、3つずつ上下2段に分けてチャンバ10の外周方向に沿って配置され、かつ、上下2段に分けたガスセンサ30を上面視した状態で、6つのガスセンサ30が外周方向に略等間隔に分散配置されている。
このため、バルブの耐圧漏れ検査装置1は、検査対象バルブMから漏れ出して上昇した水素をチャンバ10の内部空間10aの上部領域で各ガスセンサ30によって効率的に検出することができるようになっている。
【0037】
そして、後述の実験結果から、ガスセンサ30をチャンバ10の内部空間10aの上部領域に設けることによって、微細なリークを検出するために用いる供給流量に対して、校正ガスG2の供給流量を多くしたことによるチャンバ10内での水素の拡散速度に対する影響を小さくできる効果も考えられる。
つまり、検査用ガスG1の水素濃度(例えば、5%)、かつ、品質要求上の供給流量(例えば、0.05ml/min)で校正ガスG2が供給されたチャンバ10内の水素の雰囲気でガスセンサ30によって水素を検出する状態により近づけることができる。
【0038】
<品質要求上の供給流量について>
本実施形態において、品質要求上の供給流量とは、バルブの耐圧検査のより厳しい検査基準の要求からバルブのより微小なリーク量を検出可能にするため、その微小なリーク量に対応してチャンバ10内に供給される校正ガスG2の供給流量のことをいう。
例えば、バルブの耐圧試験のより厳しい検査基準が、0.05ml/minのリーク量を検出するものである場合、この微小なリーク量である0.05ml/minに等しくしてチャンバ10内に供給される校正ガスG2の供給流量である。
このようなことから、例えば、チャンバ10内に供給される校正ガスG2の供給流量を0.1ml/minとした場合、この校正ガスG2の供給流量は品質要求上の供給流量よりも多いことになる。
【0039】
<校正ガス供給部40について>
校正ガス供給部40は、検査用ガスG1の水素濃度、かつ、品質要求上の供給流量で校正ガスG2が供給されたチャンバ10内の水素の雰囲気と略等しくするように水素濃度を検査用ガスG1の水素濃度(例えば、5%)よりも低くし、かつ、品質要求上の供給流量(例えば、0.05ml/min)よりも多くしてチャンバ10内に校正ガスG2を供給するものである。
なお、本実施形態では、校正ガス供給部40は、水素濃度2.5%の校正ガスG2を流量1.0ml/minでチャンバ10内に供給する。
この校正ガス供給部40は、水素と窒素の比率を2.5:97.5とした濃度2.5%の水素を含む混合ガスが高圧の校正ガスG2として収容された校正ガスボンベ41と、校正ガスボンベ41との間に配管を介して不図示の減圧弁、電磁弁等を間に設けて接続されたリーク基準器(以下、「フロースタンダード」という。)42と、フロースタンダード42に対して配管を介して縦列に接続して4カ所からチャンバ10内に校正ガスG2を供給可能に設けた4つの電磁弁43と、を備えている。
なお、校正ガスボンベ41に収容された高圧の校正ガスG2は、水素濃度が2.5%であるため、検査用ガスG1よりもさらに安全に使用できる。
【0040】
<校正ガス供給部40のフロースタンダード42について>
フロースタンダード42は、市販の供給流量0.1ml/minのものを用いている。このフロースタンダード42は、比較して供給流量が少ない例えば供給流量0.05ml/minのものより、調達し易く、価格も安価である。
【0041】
<校正ガス供給部40の4つの電磁弁43について>
4つの電磁弁43は、3方弁であり、ノーマルオープンとなっている部分を他の電磁弁43に接続することによって互いに直列接続されている。
各電磁弁43は、
図4に示すように、チャンバ10の内部空間10aの下部領域と上部領域の2段に分けてチャンバ10の外周方向に沿って配置され、かつ、上下2段に分けて配置した電磁弁43を上面視した状態で、4つの電磁弁43が外周方向に略等間隔に分散配置されている。
なお、校正ガス供給部40は、フロースタンダード42の供給流量で複数箇所からチャンバ10内に点検用ガスG2を供給することができれば、その他の構成であっても構わない。
【0042】
<制御装置50について>
制御装置50は、例えば、PLC(Programmable Logic Controller)によって実現され、
図2に示すように、バルブの耐圧漏れ検査装置1の各部に電気的に接続されている。
この制御装置50は、CPU(control processing unit)からなる演算部51と、ROM(read only memory)やRAM(random access memory)等のメモリからなる記憶部52と、を有している。
なお、制御装置50には、各ガスセンサ30から出力された信号を演算部51に入力する不図示の入力回路、及び、演算部51から各電磁弁22に信号を出力する不図示の出力回路が設けられ、これらを通して制御装置50とこの制御装置50に接続される各部との間で信号の入出力が行われるようになっている。
【0043】
演算部51は、検査対象バルブMの漏れ検査の合否判定を行う漏れ検査合否判定処理部51aと、ガスセンサ30の点検処理を行うガスセンサ点検処理部51bとを有する。
なお、本実施形態では、制御装置としてPLCを用いるものを例示したが、制御装置としては、演算部51および記憶部52を備えてバルブの耐圧漏れ検査装置1の各部を制御することができるものであれば、PLC以外のマイクロコントローラ等であっても構わない。
【0044】
<制御装置50の漏れ検査合否判定処理部51aについて>
漏れ検査合否判定処理部51aは、検査用ガスG1の水素濃度、かつ、品質要求上の供給流量で校正ガスG2が供給されたチャンバ10内の水素の雰囲気と略等しくするように、水素濃度を検査用ガスG1よりも低くし、かつ、品質要求上の供給流量よりも多くしてチャンバ10内に供給した校正ガスG2のガスセンサ30による水素の時間経過に伴う検出データに基づいて漏れ検査の合否判定処理を行うものである。
なお、本実施形態では、品質要求上の供給流量として、0.1ml/minよりも少ない0.05ml/minを一例として説明するが、これに限らずその他の供給流量を品質要求上の供給流量としてもよい。
【0045】
検出データは、チャンバ10内に校正ガスG2を供給した時間経過に伴ってガスセンサ30が水素濃度に応じて出力した電圧値のデータである。
漏れ検査合否判定処理部51aは、検出データの所定の時間に対応して定められた電圧値を閾値として漏れ検査の合否判定を行う。
【0046】
この漏れ検査合否判定処理部51aによる漏れ検査の合否判定基準となる閾値は、後述の実験によって見出された事項に基づいて定めたものである。
具体的には、バルブの耐圧漏れ検査装置1のチャンバ10内に校正ガス供給部40から水素濃度2.5%の校正ガスG2を供給流量0.1ml/minで供給し、後述の実験と同様に各ガスセンサ30のそれぞれの電圧値の時間変化グラフを取得し、そのグラフにおける所定時間での電圧値、より具体的には、初期電圧値からの増加分の電圧値を閾値として設定している。
このようにして設定した閾値は、合否判定基準データ52aとして記憶部52に予め記憶される。
例えば、
図6に示したグラフをバルブの耐圧漏れ検査装置1によって取得されたデータと仮定してより具体的に説明すると、校正ガスG2がチャンバ10内に供給開始されてから所定時間経過後、例えば、40秒後の電圧値を閾値として設定する。
なお、閾値を設定するための所定の時間については、40秒に限らず、チャンバ10の仕様等に応じて適宜調整するとよい。
ここで、各ガスセンサ30によって40秒後の電圧値が異なるため、例えば、最も小さい電圧値の増加分である0.1Vを閾値として設定する。
【0047】
この校正ガスG2の水素濃度および供給流量は、後述の実験結果から発明者らが見出した、水素濃度と供給流量の積の値の関係、すなわち、検査用ガスG1の水素濃度とチャンバ10内への校正ガスG2の品質要求上の供給流量との積の値に基づいて定められている。
より具体的には、校正ガスG2は、昨今の厳しいバルブの耐圧検査の検査基準に対応した水素濃度5%および供給流量0.05ml/minの校正ガスG2と水素濃度と供給流量の積の値が等しくなるように、水素濃度を2.5%にし、供給流量を0.1ml/minにしている。
【0048】
なお、校正ガスG2は、水素濃度を検査用ガスG1の水素濃度よりも低くし、かつ、品質要求上の供給流量よりも多くしてチャンバ10内に供給して、検査用ガスG1の水素濃度、かつ、品質要求上の供給流量で校正ガスG2が供給されたチャンバ10内の水素の雰囲気と略等しくすることができる水素濃度および供給流量に設定することができればよい。
このため、水素濃度と供給流量の積の値に補正処理を施して品質要求上の供給流量で校正ガスG2が供給されたチャンバ10内の水素の雰囲気により近づけるようにしてもよい。
【0049】
<制御装置50のガスセンサ点検処理部51bについて>
ガスセンサ点検処理部51bは、水素濃度を検査用ガスG1の水素濃度よりも低くし、かつ、品質要求上の供給流量よりも多くしてチャンバ10内に供給した校正ガスG2のガスセンサ30による水素の時間経過に伴う検出データに基づいてガスセンサ30の点検処理を行うものである。
【0050】
検出データは、チャンバ10内に校正ガスG2を供給した時間経過に伴ってガスセンサ30が水素濃度に応じて出力した電圧値のデータである。
ガスセンサ点検処理部51bは、検出データの所定の時間に対応して定められた電圧値を閾値としてガスセンサの合否判定を行う。
なお、本実施形態では、ガスセンサ点検処理部51bがガスセンサ30の合否判定に用いる閾値は漏れ検査合否判定処理部51aのそれと同じに設定しているが、異なる電圧値を閾値として設定しても構わない。
【0051】
記憶部52は、バルブの耐圧漏れ検査装置1の制御プログラムに加えて、バルブの漏れ検査処理およびガスセンサの点検処理に関する各種情報が記憶されている。
すなわち、記憶部52は、バルブの漏れ検査処理における検査対象バルブの合否判定、および、ガスセンサの点検処理におけるガスセンサの合否判定の基準となる合否判定基準データが記憶されている。
この合否判定基準データ52aは、上述した閾値となる電圧値である。
【0052】
<表示・操作装置60について>
表示・操作装置60は、例えば、プログラマブル表示器によって実現され、例えば、タッチパネル上に検査対象バルブMの合否判定結果、点検対象のガスセンサ30の情報、点検対象のガスセンサ30の合否判定結果が表示される。
また、表示・操作装置60は、タッチパネルによって、操作者によるバルブの耐圧漏れ検査装置1の操作が行われるようになっている。
なお、表示・操作装置60は、タッチパネルに限らず、表示機能と操作機能とが独立したものであっても構わない。例えば、表示機能のみの液晶モニターと操作機能のみのキーボードをそれぞれ独立して制御装置に接続するようにしてもよい。
【0053】
ここで、記憶部52に記憶される合否判定基準データ52aの根拠となる実験について以下に説明する。
<漏れ検査およびガスセンサの合否判定基準を導出した実験について>
ここで、漏れ検査およびガスセンサの合否判定基準の根拠となる、本件発明者らによって行われた実験について説明する。
本件発明者らは、この実験によって、校正ガスG2の水素濃度を検査用ガスG1の水素濃度よりも低くし、かつ、品質要求上の供給流量よりも多くしてチャンバ10内に供給することによって、校正ガスG2を検査用ガスG1の水素濃度で、かつ、品質要求上の供給流量でチャンバ10内に供給したときのチャンバ10内の水素の雰囲気に近づけることができることを見出し、これに基づいて漏れ検査およびガスセンサの合否判定基準を設定した。
【0054】
<実験装置100について>
実験装置100は、
図5に示すように、仮想のチャンバとして作製した直方体の試験箱110の4面の各面に2つずつ、合計8つのガスセンサ120を設け、そして、一面に混合ガスのガス供給配管130を接続して水素濃度および供給流量を各種変化させた混合ガスが供給されるようになっている。
【0055】
実験装置100の各部構成および仕様を以下に示す。
試験箱110の材質:プラスチックダンボール
試験箱110の寸法:150×150×150(mm)
ガスセンサ120:NISSHAエフアイエス株式会社製 SB-42A-11
ガス供給配管130:ガスボンベ、フィルタレギュレータ、フロースタンダード、電磁弁等を配管に設けて構成
制御基板(不図示):8つのガスセンサ120に電気的に接続
【0056】
<実験装置方法について>
制御基板によって実行される制御プログラムによって各ガスセンサ120を例えば2Vの初期電圧値に調整し、電磁弁を制御して試験箱110内に所定濃度の水素を含む混合ガスを供給する。
そして、試験箱110内に混合ガスを供給開始してから約60秒間、ガスセンサ120によって検出された水素を電圧値として出力する。
【0057】
試験箱110内に供給する混合ガスは、水素濃度と供給流量の組み合わせを各種変化させ、例えば、水素濃度5%および供給流量0.1ml/min、または、水素濃度5%および供給流量0.05ml/min、あるいは、水素濃度2.5%および供給流量0.1ml/minとする。
ここで、水素濃度5%および供給流量0.1ml/minの混合ガスは、比較的安価で入手し易いフロースタンダードを用いたバルブの耐圧検査の検査基準のリークに対応したものである。
また、水素濃度5%および供給流量0.05ml/minの混合ガスは、本実施例における耐圧検査の基準として示すリークに対応したものである。
そして、水素濃度2.5%および供給流量0.1ml/minの混合ガスは、水素濃度5%および供給流量0.05ml/minの混合ガスと水素ガス濃度と供給流量の積の値が等しくなるように水素濃度および供給流量を設定したものである。
なお、この実験では、混合ガスとしてさらに多くの水素濃度と供給流量の組み合わせで実験を行っているが、それらの実験結果については省略する。
【0058】
<実験装置結果について>
図6に示すような、混合ガスの供給時間経過に伴う電圧値の変化がグラフとして得られた。
なお、上段の(a)のグラフは、
図5に示したように、試験箱110の上面に配置したガスセンサ120Aによって試験箱110内の水素濃度に応じて出力された電圧値の時間変化を示すものである。
また、中段の(b)のグラフは、
図5に示したように、試験箱110の側面に配置したガスセンサ120Cによって試験箱110内の水素濃度に応じて出力された電圧値の時間変化を示すものである。
そして、下段の(c)のグラフは、
図5に示したように、試験箱110の側面に配置したガスセンサ120Eによって試験箱110内の水素濃度に応じて出力された電圧値の時間変化を示すものである。
【0059】
(a)~(c)のグラフを見て分かる通り、水素濃度2.5%および供給流量0.1ml/minの混合ガスの電圧値の時間変化グラフは、水素濃度5%および供給流量0.05ml/minの混合ガスの電圧値の時間変化グラフに略等しい。
つまり、水素濃度2.5%および供給流量0.1ml/minの混合ガスが供給された試験箱110内の水素の雰囲気は、水素濃度5%および供給流量0.05ml/minの混合ガスが供給された試験箱110内の水素の雰囲気と略等しいといえる。
【0060】
さら換言すると、水素濃度と供給流量の積の値が等しくなるように水素濃度および供給流量を設定すると、厳しいバルブの耐圧検査の検査基準に対応した、例えば、水素濃度5%および供給流量0.05ml/minの混合ガスが供給された試験箱110内の水素の雰囲気と略等しくすることができる。
【0061】
このことから、本件発明者らは、校正ガスG2の供給流量を一例として用いた0.05ml/minより多い例えば0.1ml/minとし、一方で、この供給流量と水素濃度の積の値が等しくなるように、水素濃度を5%よりも少ない2.5%とすることで厳しいバルブの耐圧検査の検査基準に対応した水素の雰囲気をチャンバ内に作ることできることを見出した。
そして、校正ガスG2の供給流量を厳しい検査基準に対応した微小なものにせずとも、水素濃度を低くすることによってその厳しい検査基準と同等の検査が行えることを見出した。
【0062】
また、本件発明者らは、この実験結果を解析し、特に、(b)および(c)のグラフ、すなわち、ガスセンサ120Cおよびガスセンサ120Eのグラフについては、水素濃度2.5%および供給流量0.1ml/minの混合ガスの電圧値、より具体的には、初期電圧値からの増加分の電圧値の時間変化グラフが、水素濃度5%および供給流量0.05ml/minの混合ガスの電圧値の時間変化グラフに比べて立ち上がりが早いことに着目した。
これは、供給流量0.1ml/minの混合ガスが、供給流量0.05ml/minの混合ガスより供給流量が多く、試験箱110内における水素の拡散速度が速くなったことが影響していると考えられる。
一方、(a)のグラフについては、水素が上昇して試験箱110内の上部領域に集まり易いことから、試験箱110の上面に設けたガスセンサ120Aが試験箱110内の上部領域の水素を検出することによって供給流量の大きさの影響を少なくするように作用していることに着目した。
【0063】
このことから、本件発明者らは、この実験によって、ガスセンサ30をチャンバ10内の上部領域の水素を検出可能にチャンバ10に配置することにより検査対象バルブMから漏れ出た検査用ガスG1のチャンバ10内の上部領域に上昇された水素をガスセンサ30によって効率的に検出することができ、結果的に、検査対象バルブMの各所から漏れ出た水素をガスセンサ30の数を抑えて効率的に検出することができ、しかも、校正ガスG2の供給流量の違いから生じるチャンバ10内の水素の拡散速度の違いを小さくできることについても見出した。
【0064】
<バルブの漏れ検査処理の流れについて>
次に、
図7を用いて、漏れ検査合否判定処理部50aを含む制御装置50が行うバルブの漏れ検査処理の流れを説明する。
図7は、漏れ検査合否判定処理部50aを含む制御装置50が行うバルブの漏れ検査処理の流れを示すフローチャートである。
ここで、バルブの耐圧漏れ検査装置1は、
図4に示すように、検査対象バルブMがチャンバ10内の所定位置にセット完了され、装置電源が起動された待機状態である。
検査対象バルブMは、バルブの耐圧漏れ検査装置1のプレート11上に載置され、昇降治具12とプレート11との間に挟持されてチャンバ10内に保持されている。
【0065】
まず、制御装置50は、検査開始ボタンが押されたか否かを判断し(ステップS101)、検査開始ボタンが押されたと判断した場合(ステップS101:Yes)、ステップS102に処理を移行する。
ここで、制御装置50は、表示・操作装置60から検査開始を指示する旨の信号を受け取るまでこの判断処理を繰り返し、表示・操作装置60のタッチパネル上で操作者によって検査開始ボタンが押された場合、表示・操作装置60から検査開始を指示する旨の信号を受け取る。
【0066】
ステップS102において、制御装置50は、チャンバ10内の換気を行う。
ここで、不図示の換気機構によってチャンバ内の換気が行われる。
具体的には、制御装置50は、チャンバ10の上部に設けた排気ファンを動作させると共に、チャンバ10内から排気流路に繋がる排気弁を開き、チャンバ10の下部に繋がる吸気弁を開いてバルブ内にエアーを吹き込むことによってチャンバ内を換気する。
【0067】
次に、制御装置50は、各ガスセンサ30を初期電圧値に調整する(ステップ103)。
ここで、制御装置50は、各ガスセンサ30がチャンネル毎に接続された不図示のデジタルポテンショメータを用いて各ガスセンサ30に対応した抵抗値を自動で調整することによって各ガスセンサ30の初期電圧値を調整している。
【0068】
次に、制御装置50は、検査用ガスボンベ21に接続した電磁弁22を開放する(ステップ104)。
これにより、検査用ガスボンベ21に収容されていた水素濃度5%の検査用ガスG1がプレート11に形成された通気路11aを通して検査対象バルブ内に供給される。
【0069】
そして、制御装置50は、各ガスセンサ30による水素の検出を開始する(ステップS105)。
ここで、制御装置50は、各ガスセンサ30による水素の検出を開始すると同時に時間の計測を開始する。
【0070】
次に、制御装置50は、所定時間が経過したか否かを判断する(ステップS106)。
制御装置50は、所定時間が経過するまでこの判断処理を繰り返し、所定時間経過したと判断した場合(ステップS106:Yes)、ステップ107に処理を移行する。
【0071】
ステップ107において、制御装置50は、設定された閾値以上の電圧値を返すガスセンサ30があるか否かを判断する。
ここで、制御装置50は、各ガスセンサ30による水素の検出を開始してから例えば40秒後の電圧値を取得し、初期電圧値から増加分の電圧値が記憶部52に合否判定基準データ52aとして予め記憶された閾値(例えば、0.1V)と比較して大きいか否かを判断する。
【0072】
制御装置50は、設定された閾値以上の電圧値を返すガスセンサ30があると判断した場合(ステップS107:Yes)、検査対象バルブMが不合格である旨を表示・操作装置60のタッチパネル上に表示し、このバルブの漏れ検査処理を終了する。
ここで、操作者は、タッチパネル上に表示された検査結果によって、検査対象バルブMが不合格であることを確認し、その検査対象バルブMを装置から取り出して不合格品置き場等、製造ラインから離れた所定の場所に移動する。
【0073】
一方、制御装置50は、設定された閾値以上の電圧値を返すガスセンサ30がないと判断した場合(ステップS107:Nо)、検査対象バルブMが合格である旨を表示・操作装置60のタッチパネル上に表示し、このバルブの漏れ検査処理を終了する。
【0074】
<ガスセンサ30の点検処理の流れについて>
次に、
図8を用いて、ガスセンサ点検処理部51bを含む制御装置50が行うガスセンサ30の点検処理の流れを説明する。
図8は、ガスセンサ点検処理部51bを含む制御装置50が行うガスセンサ30の点検処理の流れを示すフローチャートである。
ここで、バルブの耐圧漏れ検査装置1は、チャンバ10内には検査対象バルブMをセットせず、装置電源が起動された待機状態である。
【0075】
まず、制御装置50は、点検開始ボタンが押されたか否かを判断し(ステップS201)、点検開始ボタンが押されたと判断した場合(ステップS201:Yes)、ステップS202に処理を移行する。
ここで、制御装置50は、表示・操作装置60から点検開始を指示する旨の信号を受け取るまでこの判断処理を繰り返し、表示・操作装置60のタッチパネル上で操作者によって点検開始ボタンが押された場合、表示・操作装置60から点検開始を指示する旨の信号を受け取る。
【0076】
ステップS202において、制御装置50は、チャンバ10内の換気を行う。
ここで、不図示の換気機構によって上述のバルブの漏れ検査処理と同様にしてチャンバ内の換気が行われる。
【0077】
次に、制御装置50は、各ガスセンサ30を初期電圧値に調整する(ステップS203)。
ここで、制御装置50は、上述のバルブの漏れ検査処理と同様にして各ガスセンサ30の初期電圧値を調整する。
【0078】
次に、制御装置50は、点検対象のガスセンサ30を表示する(ステップS204)。
本実施形態では6つのガスセンサ30について、順次点検していくため、ガスセンサ30の点検の順番が1又は複数単位で予め設定されている
このため、各ガスセンサ30については固体を識別するための情報が付与されている。例えば、各ガスセンサ30には、ガスセンサ1、ガスセンサ2、・・・、ガスセンサ6というように番号等の固体識別情報が付与されている。
よって、この処理では、点検対象のガスセンサ30が、表示・操作装置60のタッチパネル上に例えば、「ガスセンサ1」あるいは、「ガスセンサ1およびガスセンサ3」というように表示される。
これによって、操作者は、複数のガスセンサ30うち現在どのガスセンサ30が点検されているかを確認することができる。
【0079】
次に、制御装置50は、点検対象のガスセンサ30に対応した電磁弁43を開放する(ステップS205)。
ここで、各ガスセンサ30には、各所に配置された4つの電磁弁43のうちの所定の電磁弁43が割り当てられている。つまり、1つの電磁弁43を開放してチャンバ内に点検用ガスG2を供給した場合、その1つの電磁弁43の周辺にある2つのガスセンサ30によって水素を検知するようになっている。
例えば、ガスセンサ1およびガスセンサ3の周辺にある1つの電磁弁から校正ガスG2をチャンバ10内に供給した場合、ガスセンサ1およびガスセンサ3によって水素を検出する。一方、ガスセンサ2およびガスセンサ4の周辺にある1つの電磁弁から校正ガスG2をチャンバ10内に供給した場合、ガスセンサ2およびガスセンサ4によって水素を検知する。
つまり、複数の電磁弁43ごとに対応するガスセンサ30を分けてガスセンサ30の点検を行うようにしている。
このようにして、点検対象のガスセンサ30に対応した電磁弁43が開放されることによって、校正ガスボンベ41に収容されていた水素濃度2.5%の校正ガスが対応する電磁弁43の位置から供給流量0.1ml/minでチャンバ10内に供給される。
【0080】
そして、制御装置50は、点検対象のガスセンサ30による水素の検出を開始する(ステップS206)。
ここで、ガスセンサ点検処理部51bは、各ガスセンサ30による水素の検出を開始すると同時に時間の計測を開始する。
【0081】
次に、制御装置50は、所定時間が経過したか否かを判断する(ステップS207)。
制御装置50は、所定時間が経過するまでこの判断処理を繰り返し、所定時間経過したと判断した場合(ステップS207:Yes)、ステップ208に処理を移行する。
【0082】
ステップS208において、制御装置50は、点検対象のガスセンサ30が返した電圧値が設定された閾値以上であるか否かを判断する。
ここで、制御装置50は、ガスセンサ30による水素の検出を開始してから例えば40秒後の電圧値を取得し、初期電圧値(2V)から増加した分の電圧値を算出し、その増加した分の電圧値が記憶部52に合否判定基準データ52aとして予め記憶された閾値(例えば、0.1V)よりも大きいか否かを判断する。
なお、この実施形態では、この判断処理は、上述したように1つの電磁弁43に対して2つのガスセンサ30を割り当てているため、制御装置50は、対象となる2つのガスセンサ30について同時に判定を行ってもよいし、1つのガスセンサ30ごとに分けて判定を行うようにしてもよい。
また、ガスセンサ30の合否判定に用いる閾値については、全てのガスセンサ30に共通の一つの閾値に設定してもよいし、ガスセンサ30毎に個別の閾値値を設定してもよい。
【0083】
制御装置50は、点検対象のガスセンサ30が返した電圧値が設定された閾値以上であると判断した場合(ステップS208:Yes)、点検対象のガスセンサ30が合格である旨を記憶部52に記憶し(ステップS209)、全てのガスセンサ30が合格したか否かを判断する(ステップS210)。
【0084】
ステップS210において、制御装置50は、全てのガスセンサ30が合格したと判断した場合(ステップS210:Yes)、全てのガスセンサ30が合格した旨を表示する(ステップS211)。
ここで、制御装置50は、表示・操作装置60のタッチパネル上に例えば、「全てのガスセンサ合格」というように表示し、このガスセンサ30の点検処理を終了する。
。
これにより、操作者は、全てのガスセンサ30が問題なく点検完了したことを確認することができる。
【0085】
また、ステップS210において、制御装置50は、全てのガスセンサ30が合格していないと判断した場合(ステップS210:Nо)、処理をステップS202に戻して、上述の処理を繰り返す。
【0086】
一方、ステップS208において、制御装置50は、点検対象のガスセンサ30が出力した電圧値が設定された閾値よりも小さいと判断した場合(ステップS208:Nо)、点検対象のガスセンサ30が不合格である旨を表示する(ステップS212)。
この処理では、不合格と判定されたガスセンサ30が、表示・操作装置60のタッチパネル上に例えば、「ガスセンサ1不合格」というように表示される。
これにより、操作者は、不合格のガスセンサ30があるため、ガスセンサ30の交換の必要があることを確認することができる。
【0087】
その後、制御装置50は、点検終了ボタンが押されるまで点検終了ボタンが押されたか否かを判断し、点検終了ボタンが押された場合(ステップS213:Yes)、このガスセンサの点検処理を終了する。
ここで、操作者は、不合格のガスセンサ30を交換するため、点検処理を終了する。
なお、ここで説明したガスセンサ30の点検処理では、1つにガスセンサ30が不合格となった場合に点検処理を終了するようにしていたが、全てのガスセンサ30の合否を判定した後に点検処理を終了するようにしても構わない。
【0088】
<実施形態の効果>
以上のように、本発明の実施形態に係るバルブの耐圧漏れ検査方法によると、検査用ガスの水素濃度、かつ、品質要求上の供給流量で校正ガスG2が供給されたチャンバ10内の水素の雰囲気と略等しくするように、校正ガスの水素濃度を検査用ガスG1の水素濃度よりも低くし、かつ、品質要求上の供給流量よりも多くしてチャンバ10内に供給した校正ガスG2のガスセンサ30による水素の時間経過に伴う検出データに基づいて漏れ検査の合否判定を行う。
これにより、本件発明者らの実験によって見出された事項である、校正ガスGの水素濃度を検査用ガスG1の水素濃度よりも低くし、かつ、品質要求上の供給流量よりも多くして校正ガスG2をチャンバ10内に供給することによって、校正ガスG2を検査用ガスG1の水素濃度で、かつ、品質要求上の供給流量でチャンバ10内に供給したときのチャンバ10内の水素の雰囲気に近づけることができること、これを利用して、品質要求上求められる、例えば、0.05ml/minの供給流量のフロースタンダードよりも多い0.1ml/minの供給流量のフロースタンダード42を用いて、校正ガスG2をチャンバ10内に供給して求めた検出データに基づいて精度の高い漏れ検査を行うことができ、結果的に、自動化の設備コストを抑えつつ、高精度の漏れ検査を行うことができる。
【0089】
また、本発明の実施形態に係るバルブの耐圧漏れ検査方法によると、校正ガスG2は、検査用ガスG1の水素濃度と品質要求上の供給流量との積の値に基づいて、水素ガスの濃度および供給流量を定められている。
これにより、水素濃度とチャンバ10内への供給流量との単純な積の値に基づいて、検査用ガスG1の水素濃度で、かつ、品質要求上の供給流量でチャンバ内に校正ガスG2を供給したときのチャンバ10内の水素の雰囲気に略等しくすることができ、このチャンバ10内の水素の検出データに基づいて漏れ検査の合否判定を行うことができる。
【0090】
また、本発明の実施形態に係るバルブの耐圧漏れ検査方法によると、校正ガスG2の供給流量は、0.1ml/min以上であることにより、より厳しいの品質要求上の供給流量に比べて多い供給流量でガスセンサ30の点検を行うことができると共に、0.1ml/min以上の供給流量で定められた検出データに基づいて漏れ検査を行うことができ、結果として、比較的供給流量の多い汎用のフロースタンダード42を用いてガスセンサ30の点検およびバルブの漏れ検査を行うことができる。
【0091】
また、本発明の実施形態に係るバルブの耐圧漏れ検査方法によると、検出データは、チャンバ10内に校正ガスG2を供給した時間経過に伴ってガスセンサ30が水素濃度に応じて出力した電圧値のデータであり、検出データの所定の時間に対応して定められた電圧値を閾値として漏れ検査の合否判定を行う。
このため、ガスセンサ30が検出した電圧値によって、精度の高い漏れ検査を行うことができる。
【0092】
また、本発明の実施形態に係るバルブの耐圧漏れ検査装置1によると、検査用ガスG1の水素濃度、かつ、品質要求上の供給流量で校正ガスG2が供給されたチャンバ10内の水素の雰囲気と略等しくするように水素濃度を検査用ガスG1の水素濃度よりも低くし、かつ、品質要求上の供給流量よりも多くしてチャンバ10内に校正ガスG2を供給する校正ガス供給部40と、チャンバ10内に供給した校正ガスG2のガスセンサ30による水素の時間経過に伴う検出データに基づいて漏れ検査の合否判定を行う漏れ検査合否判定処理部51aと、を有する。
これにより、本件発明者らの実験によって見出された事項である、水素濃度を検査用ガスG1の水素濃度よりも低くし、かつ、品質要求上の供給流量よりも多くしてチャンバ10内に校正ガスG2を供給することによって、校正ガスG2を検査用ガスG1の水素濃度で、かつ、品質要求上の供給流量でチャンバ10内に供給したときのチャンバ10内の水素の雰囲気に近づけることができること、これを利用して、品質要求上求められる、例えば、0.05ml/minの供給流量のフロースタンダードよりも多い0.1ml/minの供給流量のフロースタンダード42を用いて、チャンバ10内に校正ガスG2を供給して求めた検出データに基づいて精度の高い漏れ検査を行うことができ、結果的に、自動化の設備コストを抑えつつ、高精度の漏れ検査を行うことができる。
【0093】
また、本発明の実施形態に係るバルブの耐圧漏れ検査装置1によると、校正ガスG2は、検査用ガスG1の水素濃度とチャンバ10内への校正ガスG2の品質要求上の供給流量との積の値と、に基づいて、水素濃度および供給流量が定められている。
これにより、水素濃度とチャンバ10内への供給流量との単純な積の値に基づいて、検査用ガスG1の水素濃度で、かつ、品質要求上の供給流量でチャンバ10内に校正ガスG2を供給したときのチャンバ10内の水素の雰囲気に略等しくすることができ、このチャンバ10内の水素の検出データに基づいて漏れ検査の合否判定を行うことができる。
【0094】
また、本発明の実施形態に係るバルブの耐圧漏れ検査装置1によると、ガスセンサ30が、チャンバ10内の上部領域の水素を検出可能にチャンバ10に配置されたことにより、検査対象バルブMから漏れ出てチャンバ10内の上部領域に上昇した検査用ガスG1の水素をガスセンサ30によって効率的に検出することができ、結果的に、検査対象バルブMの各所から漏れ出た水素をガスセンサ30の設置数を抑えて効率的に検出することができる。
【0095】
また、本発明の実施形態に係るバルブの耐圧漏れ検査装置1によると、校正ガスG2の供給流量が、校正ガスG2の供給流量は、0.1ml/min以上であることにより、より厳しいの品質要求上の供給流量に比べて多い供給流量でガスセンサ30の点検を行うことができると共に、0.1ml/min以上の供給流量で定められた検出データに基づいて漏れ検査を行うことができ、結果として、比較的供給流量の多い汎用のリーク基準器を用いてガスセンサ30の点検およびバルブの漏れ検査を行うことができる。
【0096】
また、本発明の実施形態に係るバルブの耐圧漏れ検査装置1によると、検出データが、チャンバ10内に校正ガスG2を供給した時間経過に伴ってガスセンサ30が水素濃度に応じて出力した電圧値のデータであり、漏れ検査合否判定処理部51aが、検出データの所定の時間に対応して定められた電圧値を閾値として漏れ検査の合否判定を行う。
このため、ガスセンサ30が検出した電圧値によって、精度の高い漏れ検査を行うことができる。
【0097】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0098】
例えば、上記の実施形態では、ガスセンサ30によって水素濃度に応じて出力された電圧値のデータを用いて検査対象バルブMおよびガスセンサ30の合否を判定するようにしていたが、これに限らず、ガスセンサ30によって電圧値以外のデータを出力して合否を判断するようにしても構わない。例えば、ガスセンサ30によって水素濃度に応じて出力された電流値を用いて検査対象バルブMおよびガスセンサ30の合否を判定するようにしてもよい。
【0099】
また、例えば、上記の実施形態では、校正ガスG2として濃度2.5%の水素を含む混合ガスを用いていたが、校正ガスG2の水素濃度は、供給流量に応じた濃度にするとよい。より具体的には、検査用ガスG1の水素濃度、かつ、品質要求上の供給流量で校正ガスG2が供給されたチャンバ10内の水素の雰囲気と略等しくするように、水素濃度と供給流量を適宜設定すればよい。
例えば、検査用ガスG1の水素濃度を5%とし、品質上要求されるフロースタンダードの供給流量を0.006ml/minとした場合、検査用ガスG1の水素濃度と品質上要求されるフロースタンダードの供給流量との積の値と、校正ガスG2の水素濃度とチャンバ10内への校正ガスG2の供給流量との積の値との関係に基づいて、校正ガスG2の水素濃度を0.3%とし、供給流量を0.1ml/minとするとよい。
【0100】
今回開示された各実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形体で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0101】
1 バルブの耐圧漏れ検査装置
10 チャンバ
10a 内部空間
11 プレート
11a 通気路
12 昇降治具
13 カバー
20 検査用ガス供給部
21 検査用ガスボンベ
22 電磁弁
30 ガスセンサ
40 校正ガス供給部
41 校正ガスボンベ
42 フロースタンダード(リーク基準器)
43 電磁弁
50 制御装置
51 演算部
51a 漏れ検査合否判定処理部
51b ガスセンサ点検処理部
52 記憶部
52a 合否判定基準データ
60 表示・操作装置
100 実験装置
110 試験箱
120、120A、120C、120E ガスセンサ
130 ガス供給配管
G1 検査用ガス
G2 点検用ガス
M 検査対象バルブ