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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172862
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】調理器
(51)【国際特許分類】
   A47J 43/046 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
A47J43/046
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090869
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小幡 享史
(72)【発明者】
【氏名】藤田 紗世
【テーマコード(参考)】
4B053
【Fターム(参考)】
4B053BA02
4B053BB02
4B053BE03
4B053BE13
4B053BE14
4B053BK33
4B053BL09
4B053BL20
(57)【要約】
【課題】本発明は、調理カップの蓋体の吸排気孔から調理物が漏出することを効果的に抑えることのできる調理器を提供する。
【解決手段】本発明に係る調理器10は、カップ40と、前記カップの上面開口を塞ぐ蓋体50と、を具える調理カップ30と、前記カップ内で回転し、調理物90を撹拌する調理具44と、を具える調理器であって、前記蓋体は、前記カップ内に露出する蓋板70に、前記調理具によって旋回する前記調理物の旋回方向の下流側に向けて下向きに傾斜するガイド面71が形成されており、前記ガイド面の下流側端縁76と前記蓋板との段差部77に、前記蓋板を貫通する吸排気孔72を形成している。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップと、前記カップの上面開口を塞ぐ蓋体と、を具える調理カップと、
前記カップ内で回転し、調理物を撹拌する調理具と、
を具える調理器であって、
前記蓋体は、前記カップ内に露出する蓋板に、前記調理具によって旋回する前記調理物の旋回方向の下流側に向けて下向きに傾斜するガイド面が形成されており、前記ガイド面の下流側端縁と前記蓋板との段差部に、前記蓋板を貫通する吸排気孔を形成している、
調理器。
【請求項2】
前記吸排気孔は、前記調理物の旋回方向とは対向しない向きに開口している、
請求項1に記載の調理器。
【請求項3】
前記吸排気孔は、前記段差部から上流側に向けて凹設された凹状部を有し、前記凹状部から上向きに吸排気口が形成される、
請求項2に記載の調理器。
【請求項4】
前記蓋板は、前記段差部の下流側に、前記段差部と周方向に対向する邪魔板が突設されている、
請求項3に記載の調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミキサーやジューサー、フードプロセッサーのように調理カップ内で回転する調理具を具えた調理器に関するものであり、より具体的には、調理カップの蓋体の吸排気孔から調理物が漏出することを防ぐことのできる調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ミキサーやジューサー、フードプロセッサーのような調理器では、調理カップ内で回転する調理具により、食材を粉砕、みじん切り、おろし、つぶし、刻み、或いは、撹拌などの調理を行なう。調理カップは、食材が投入されるカップとカップを塞ぐ蓋体から構成される。蓋体には、開閉をスムーズに行なうと共に、調理カップ内が加圧されて調理物の飛散等を防止するために、吸排気孔が貫通開設されている。この吸排気孔は蓋体の中央に設けられ、カップ側には調理物の漏出を防ぐために吸排気孔の周囲にリブを形成している(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6405813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
調理物の旋回速度によっては、調理物がリブを乗り越えて吸排気孔に侵入することがあり、調理物の漏出を完全には防ぐことはできない。
【0005】
近年、調理具の回転軸を、鉛直面内で回転させるのではなく、斜めに傾斜させて回転させるミキサー(傾斜型ミキサー)などの調理器が提案されている。調理具の回転軸が特許文献1のように鉛直方向の縦型ミキサーの場合、調理物は鉛直軸に略直交する略水平面内で旋回する(図18(c)の矢印R3参照)。従って、吸排気孔からの調理物の漏出は、調理物の旋回方向に対して垂直に立設されたリブで、ある程度抑えることができる。しかしながら、調理具の回転軸を傾斜させた傾斜型ミキサーでは、調理物の調理物は、鉛直軸に対して傾斜した傾斜面内、すなわち、垂直成分を含む方向に旋回する(図18(a)、(b)の矢印R1,R2参照)。
【0006】
このため、とくに調理具の回転軸を傾斜させた調理器においては、リブだけでは吸排気孔からの調理物の漏出を十分防ぐことはできない。
【0007】
本発明の目的は、調理カップの蓋体の吸排気孔から調理物が漏出することを効果的に抑えることのできる調理器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る調理器は、
カップと、前記カップの上面開口を塞ぐ蓋体と、を具える調理カップと、
前記カップ内で回転し、調理物を撹拌する調理具と、
を具える調理器であって、
前記蓋体は、前記カップ内に露出する蓋板に、前記調理具によって旋回する前記調理物の旋回方向の下流側に向けて下向きに傾斜するガイド面が形成されており、前記ガイド面の下流側端縁と前記蓋板との段差部に、前記蓋板を貫通する吸排気孔を形成している。
【0009】
前記吸排気孔は、前記調理物の旋回方向とは対向しない向きに開口している。
【0010】
前記吸排気孔は、前記段差部から上流側に向けて凹設された凹状部を有し、前記凹状部から上向きに吸排気口が形成される。
【0011】
前記蓋板は、前記段差部の下流側に、前記段差部と周方向に対向する邪魔板が突設されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の調理器によれば、ガイド面により調理物の旋回方向を下向きに誘導でき、また、ガイド面と蓋板との段差部には、旋回する調理物は回り込み難いから、段差部に開設された吸排気孔から調理物が漏出することを抑えることができる。とくに、調理具の回転軸が傾斜した調理器においては、調理物の旋回方向に垂直方向の成分が含まれるが、ガイド面によって調理物を下向きの流れとすることができ、吸排気孔からの漏出を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る調理器である傾斜型ミキサーの左側面図である。
図2図2は、調理カップを左斜め後方から見た斜視図である。
図3図3は、調理カップの左側面図である。
図4図4は、調理カップを図3の線A-Aに沿って切断し、矢印方向に見た断面図である。
図5図5は、調理カップを図3の線B-Bに沿って切断し、矢印方向に見た断面図である。
図6図6は、蓋体の表面側の斜視図である。
図7図7は、蓋体の裏面側の斜視図である。
図8図8は、蓋体の底面図である。
図9図9は、蓋体の平面図である。
図10図10は、蓋体を図9の線C-Cに沿って切断し、矢印方向に見た断面図である。
図11図11は、蓋体を図9の線D-Dに沿って切断し、矢印方向に見た断面図である。
図12図12は、蓋体カバーを取り外した蓋本体の平面図である。
図13図13は、蓋本体を図12の線E-Eに沿って切断し、矢印方向に見た断面図である。
図14図14は、蓋本体を図12の線F-Fに沿って切断し、矢印方向に見た断面図である。
図15図15は、図14の四角囲み部Gの拡大図である。
図16図16は、蓋本体の上面側の斜視図である。
図17図17は、図16とは異なる角度から見た蓋本体の上面側の斜視図である。
図18図18は、(a)調理カップ内に撹拌中に発生する調理物の旋回方向と空気層の説明図であり、(a)、(b)は傾斜型ミキサー、(c)は縦型ミキサーである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の調理器について図面を参照しながら説明を行なう。なお、本実施形態では、調理器としてミキサー10を例示して説明するが、調理具を回転させて食材の調理を行なう調理器であれば、ミキサー10に限らず、たとえばフードプロセッサー、ジューサー、ミル、ブレンダーなどであってもよい。
【0015】
本発明の一実施形態によるミキサー10の全体構成を図1に示す。また、図2は調理カップ30の斜視図、図3は調理カップ30の側面図である。ミキサー10は、図1に示すように、本体20と、本体20の上部に装着される調理カップ30を具える。本実施形態のミキサー10は、本体に対して鉛直方向に調理カップを装着するものではなく、図1中矢印Hに示すように、本体20に対して非鉛直方向(たとえば水平方向又は水平方向に対して75°以下の傾斜方向)の角度で接近、離間させることで本体20に着脱するものである。
【0016】
本体20は、設置面とほぼ平行に延びる水平部21と、水平部21の後部から調理カップ30とほぼ同じ高さまで上向きに延びる垂直部22とを具える。図示は省略するが、水平部21及び垂直部22には、調理カップ30の先端が嵌まり、ぐらつくことなく位置決めされる構成を有する。また、水平部21の内部には、図1に示すように、調理カップ30の調理具44が連繋される本体側カップリング23が配備されている。本体側カップリング23は、モーター24の出力軸25に連繋され、商用電源により駆動するモーター24により回転可能となっている。
【0017】
本体20には、適所に制御部(図示せず)が配備され、モーター24は、制御部に電気的に接続されたスイッチ26によりオン・オフ操作等が行なわれる。図示では、スイッチ26は、水平部21の前端に配置している。
【0018】
調理カップ30は、食材が投入されるカップ40と蓋体50を有し、カップ40の前方側に持ち手41が形成されている。カップ40は、略中央より上側が鉛直方向に延びる筒状体であって、下方が本体20の水平部21に向けて、後斜め下向きに屈曲した屈曲部42を有する。
【0019】
カップ40の屈曲部42は、図1に示すように、断面円形のカッターダイ43が装着される。カッターダイ43は、調理内容に合わせたブレードやカッターを有する調理具44を回転可能に配備したものである。調理具44は、カッターダイ43を回転自在に貫通する回転軸45と連結されており、回転軸45の基端には、調理具側カップリング46が配置されている。調理具側カップリング46は、調理カップ30を本体20に装着することで、上記した本体側カップリング23に係合し、一体回転可能となる。
【0020】
カップ40の上面は開口しており、図1乃至図5に示すように、蓋体50によって塞がれる。図4は、図3の線A-A矢視断面図、図5は、図3の線B-B矢視断面図である。蓋体50は、蓋本体60の下縁側の下筒部61をカップ40の上縁内面に挿入し、反時計方向に回転させることで、係合部65,67がカップ40の係合受部(後方側の係合受部を図4に符号47で示す)と係合してカップ40を塞ぐ。
【0021】
図6乃至図11は、カップ40から取り外された蓋体50を示している。本実施形態では、蓋体50は、蓋体50の下面側(カップ40側)を形成する蓋本体60と、蓋本体60の上面に被さる蓋カバー80から構成している。図12乃至図17は、蓋カバー80を取り外した蓋本体60を示している。
【0022】
蓋本体60は、具体的実施形態として、下筒部61と、下筒部61よりも大径の上筒部62、上筒部62の上端に形成された鍔部63を有し、下筒部61と上筒部62の繋ぎ目の内周側には、下筒部61を塞ぐ蓋板70が形成されている。蓋板70の詳細な構成については後述するが、蓋板70にはカップ40内と外部を連通する吸排気孔72が形成されている。
【0023】
下筒部61は、カップ40の上縁内面に嵌合する形状であり、カップ40の内面と気密性を保つために適宜パッキンゴムなどのシール部材が装着される。上筒部62は蓋体50をカップ40に装着したときに、下縁がカップ40の上縁と当接する。また、鍔部63には、前端側と後端側が夫々膨らんだ突出部64,66を有し、突出部64,66の下面には、下方に向けて係合部65,67が突設されている。
【0024】
蓋カバー80は、蓋本体60の上面と鍔部63の周面を覆う下向き凹形状の部材である。蓋カバー80の前端と後端は、蓋本体60の突出部64,66を覆う膨出部81,82が形成されている。この膨出部の内、前側の膨出部81は、蓋体50をカップ40に着脱する際に、ユーザーが蓋体50を回し操作する操作片を兼ねる。
【0025】
蓋体50は、蓋本体60に蓋カバー80を嵌合して一体化される。使用時には、蓋体50は、蓋本体60の下筒部61をカップ40に嵌め、蓋体50の操作片81を反時計回りに押し込み、図2に示すように、カップ40の持ち手41と重ねる。これにより、係合部65,67がカップ40の係合受部(例えば、図4の符号47)と係合し、蓋体50はカップ40に外れることなく装着される。また、操作片81を時計回りに押し込むと、係合部65,67がカップ40の係合受部から外れて、蓋体50を取外しできる。
【0026】
調理カップ30は、カップ40に食材を投入し、蓋体50を装着した状態で、図1に矢印Hで示す方向に押し込んで、本体20に装着される。調理カップ30を装着することで、本体20と調理カップ30のカップリング23,46が連結される。そして、スイッチ26を操作するとモーター24が駆動し、調理具44が回転(本実施形態では時計回り)して、食材が撹拌等の調理を受け、調理物が得られる。図18は、調理具44を回転させた状態における調理物90の旋回状態を示す模式図である。図に示すように、本発明では調理具44の回転軸45を鉛直方向に対して傾斜させているから、調理物90は、斜め面内で時計回りに旋回する。図18(a)の矢印R1は粘性の低い調理物90又は調理具44を低速回転させた場合の調理物90の旋回方向を示しており、図18(b)の矢印R2は粘性の高い調理物又は調理具44を高速回転させた場合の調理物90の旋回方向を示している。なお、図18(c)は、調理具44の回転軸45が鉛直方向のミキサー(「縦型ミキサー11」という)で発生する調理物90の旋回方向(矢印R3)を示しており、調理物90は略水平面内で旋回R3する。
【0027】
調理具44を回転させることで、調理物90の中央には、下端が調理具44の回転中心と略一致する渦状の空気層91が形成される。この空気層91は、図18(a)の場合にはやや斜めに傾いた形状であり、図18(b)の場合には傾斜が大きくなり、カップ40の前端側内面に届く程度となる。縦型ミキサー11では渦状の空気層91は略鉛直方向に発生する。
【0028】
本実施形態のミキサー10は、図18(a)、(b)に示すように、調理物90の旋回方向R1,R2が傾斜した傾斜型ミキサーであるため、調理物90が万遍なく、より効果的に撹拌され、調理を受けることができる。
【0029】
上記のとおり、蓋体50は、カップ40に気密に装着される。本実施形態では、蓋体50の下筒部61がカップ40の上縁内面に密着する。しかしながら、完全に気密であると、カップ40に蓋体50の取付け、取外しを行なう際に、カップ40内が負圧又は正圧となって、蓋体50が着脱できない。また、撹拌等の調理や調理物の温度変化により、カップ40内の空気圧が変化し、カップ40内が負圧になると蓋体50が取り外せず、カップ40内が正圧になると、蓋体50を開いたときに、調理物が飛散する虞れがある。そこで、蓋体50には、カップ40内の空気圧を調整する吸排気孔72が蓋体50に形成されている。
【0030】
この吸排気孔72について、傾斜型ミキサー10では、図18に示すとおり、調理物90の旋回方向R1,R2に垂直成分が含まれる。このため、本発明では、吸排気孔72からの調理物の流出を効果的に防ぐことができる構成としている。
【0031】
具体的には、吸排気孔72は、蓋体50の蓋板70に形成されるが、図7図8図9図11、或いは、蓋カバー80を取り外した蓋体50の上面側の図12乃至図17に示すように、蓋板70の一部には、調理物90の旋回方向R1、R2(図18参照:時計回り)の下流側に向けて傾斜するガイド面71を形成している。ガイド面71は、蓋板70の中心Oに対して、45~120°程度の中心角となるように形成することができる。より望ましくは、図8に示すように、蓋板70の中心Oからずれた中心を有する扇状の形態とすることができる。
【0032】
これにより、図18(a)、(b)に示すようにカップ40内に発生した調理物90の流れR1,R2は、一部が蓋体50に当たって、図7図8図10図15の矢印S、とくに図10図5に示すようにガイド面71を下り、蓋板70から離れる斜め下向きの流れとなる。
【0033】
そして、ガイド面71の下流側端縁76と蓋板70との段差部77に、吸排気孔72を形成している。吸排気孔72は、調理物90の旋回方向R1,R2とは対向しない向きに開口するように形成することが望ましい。図示では、吸排気孔72は、調理物90の旋回方向R1,R2とは対向しない向き、すなわち、上流側に向けて凹状部73を凹設し、当該凹状部73に上向きに吸排気口74を形成している。凹状部73及び吸排気口74は、図12図15図16に最もよく示されている。
【0034】
調理物の旋回方向は、図7図10図15に矢印Sで示すように、ガイド面71を下り、蓋板70から離れる方向の流れになるから、ガイド面71の下流側端縁76から上向きの位置にある段差部77には調理物は移動しがたい。従って、当該段差部77に吸排気孔72を形成することで、吸排気孔72に向かう調理物を可及的に低減できる。
【0035】
さらに、吸排気孔72を、図15に示すように、段差部77から上流側に向けて凹設された凹状部73と、凹状部73の上面に形成された吸排気口74としている。まず、調理物の流れは、ガイド面71により斜め下向きに調整されるから、段差部77から凹状部73に向かう調理物は殆んどない。さらに、凹状部73に調理物が侵入したとしても、自重により凹状部73の下側に流れ落ちるから、凹状部73の上面に設けられた吸排気口74には調理物は殆んど入らない。
【0036】
従って、調理物が調理中或いは調理後に吸排気孔72から調理物が漏出することを可及的に抑えることができる。一方で、図15に矢印Uで示すように、空気の流通は許容されるから、蓋体50の開閉はスムーズにおこなうことができる。また、調理中には吸排気孔72から空気が流通するから、調理カップ30内の空気圧も高くなることはなく、蓋体50を外したときに、調理物が飛び出すことも低減できる。
【0037】
回転軸45が傾斜した傾斜型ミキサー10では、上記及び図18(a)、(b)に示すように、カップ40で旋回する調理物90により形成される渦状の空気層91は、調理具44の斜め上方(本実施形態では上斜め前方)に向く。この空気層91には、調理物90は殆んど含まれないから、空気層91内に吸排気孔72が位置することで、吸排気孔72に入る調理物90を低減できる。従って、段差部77は、吸排気孔72が空気層91内となるように、回転軸45の斜め上方(本実施形態では上斜め前方)に形成することが望ましい。具体的には、図7に示すように、回転軸45を含む鉛直面上で、蓋板70の中心よりも持ち手41側(前方側)に形成する。より望ましくは、段差部77は、前方側の半径線と重なる位置に形成する。このような構成とすることで、吸排気孔72に侵入する調理物を低減できるだけでなく、撹拌時の調理物90は、ガイド面71に当たって斜め下向きの流れとなり、カップ40の後方側で下向きに落ち込む。カップ40の後方側は、傾斜して回転する調理具44が高い位置で通過するから、調理物90が斜め下向きに落ち込むことで、調理具44に調理物90を効率的に当てることができ、切削性能等の調理性を高めることができる。
【0038】
また、望ましくは、吸排気孔72は、蓋板70の中心O寄りに設ける。旋回する調理物は、カップ40の外周側の方が、内周側よりも旋回速度が速いため、吸排気孔72を旋回速度が比較的遅い中心側に設けることで、吸排気孔72に入る調理物を低減できる。
【0039】
さらに、図7図8図15に示すように、段差部77の下流側には、段差部77と周方向に対向する邪魔板78を蓋板70に突設することが望ましい。邪魔板78は、たとえば蓋板70の中心Oから見て、段差部77の下流側約20~60°の位置に、蓋板70の中心Oから下筒部61の外周に届く幅としている。これにより、調理物に逆流(図15の矢印T)などの乱流が発生しても、邪魔板78に調理物がぶつかることで、吸排気孔72に入る調理物を低減できる。
【0040】
なお、吸排気孔72は、図14に示すように、蓋体50と蓋カバー80で区画された蓋内空間51に連通している。また、図17に示すように、蓋本体60の突出部64の先端には、蓋カバー80の膨出部81(操作片)との間に開口する通気口79が形成されている。この構成により、カップ40内から吸排気孔72へ排出された空気は、蓋内空間51から通気口79を通じて外部に放出され、逆に、カップ40内に吸入される空気は、通気口79から蓋内空間51を通って吸排気孔72からカップ40内に送給される。
【0041】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【0042】
たとえば、本実施形態では、調理具44の回転軸45が傾斜した傾斜型ミキサー10について説明を行なったが、本発明は、調理具44の回転軸45が鉛直方向の縦型ミキサー11にも適用できる。
【符号の説明】
【0043】
10 調理器(ミキサー)
20 本体
30 調理カップ
40 カップ
45 調理具
50 蓋体
60 蓋本体
70 蓋板
71 ガイド面
72 吸排気孔
73 凹状部
74 吸排気口
78 邪魔板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18