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特開2024-172872熱硬化性絶縁樹脂フィルム及び配線基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172872
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】熱硬化性絶縁樹脂フィルム及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20241205BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20241205BHJP
   H01L 23/14 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H05K3/46 T
H01L23/12 N
H01L23/14 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090894
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 明宏
【テーマコード(参考)】
5E316
【Fターム(参考)】
5E316AA12
5E316AA38
5E316AA43
5E316CC08
5E316CC09
5E316CC10
5E316CC13
5E316CC14
5E316DD17
5E316DD23
5E316DD24
5E316EE01
5E316FF01
5E316GG15
5E316GG17
5E316GG28
5E316HH06
5E316HH33
5E316JJ02
(57)【要約】
【課題】熱硬化性樹脂からなる絶縁層の酸素含有雰囲気中での硬化を可能とする技術を提供する。
【解決手段】熱硬化性絶縁樹脂フィルム100Aは、未硬化の熱硬化性樹脂を含んだ絶縁層1と、その上に設けられたガスバリアフィルム2とを備えている。配線基板の製造方法は、基板と、上記の熱硬化性絶縁樹脂フィルムとを、ガスバリアフィルムが絶縁層を間に挟んで基板と向き合うように貼り合わせることと、基板に貼り合わせた熱硬化性絶縁樹脂フィルムを、酸素を含んだ雰囲気中で加熱して、熱硬化性樹脂を少なくとも部分的に硬化させることと、その後、絶縁層からガスバリアフィルムを剥離することとを含んでいる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
未硬化の熱硬化性樹脂を含んだ絶縁層と、その上に設けられたガスバリアフィルムとを備えた熱硬化性絶縁樹脂フィルム。
【請求項2】
前記ガスバリアフィルムは、温度30℃、相対湿度70%の雰囲気下における酸素透過度が10cc/m/day/atm以下である請求項1に記載の熱硬化性絶縁樹脂フィルム。
【請求項3】
前記ガスバリアフィルムは、第1支持体層と、その上に設けられたガスバリア層とを含んだ請求項1に記載の熱硬化性絶縁樹脂フィルム。
【請求項4】
前記第1支持体層は、融点又は軟化点が150℃以上の材料からなる請求項3に記載の熱硬化性絶縁樹脂フィルム。
【請求項5】
前記ガスバリアフィルムは、前記ガスバリア層を間に挟んで前記第1支持体層と向き合った第2支持体層を更に含んだ請求項3に記載の熱硬化性絶縁樹脂フィルム。
【請求項6】
前記第1支持体層及び前記第2支持体層の各々は、融点又は軟化点が150℃以上の材料からなる請求項5に記載の熱硬化性絶縁樹脂フィルム。
【請求項7】
前記絶縁層を間に挟んで前記ガスバリアフィルムと向き合うように、前記絶縁層上に剥離可能に設けられた保護フィルムを更に備えた請求項1に記載の熱硬化性絶縁樹脂フィルム。
【請求項8】
基板と、請求項1乃至6の何れか1項に記載の熱硬化性絶縁樹脂フィルムとを、前記ガスバリアフィルムが前記絶縁層を間に挟んで前記基板と向き合うように貼り合わせることと、
前記基板に貼り合わせた前記熱硬化性絶縁樹脂フィルムを、酸素を含んだ雰囲気中で加熱して、前記熱硬化性樹脂を少なくとも部分的に硬化させることと、
その後、前記絶縁層から前記ガスバリアフィルムを剥離することと
を含んだ配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、第5世代移動通信システムが普及し始めており、2030年を目処に第6世代移動通信システムが導入されようとしている。これに代表されるように、近年、高速通信及び高速信号処理への要求が高まっている。
【0003】
上記の要求の高まりに伴い、電子デバイス及び配線基板内を流れる電気信号の周波数が高くなっている。このような高周波信号での誘電損失を小さくするために、誘電正接が小さく且つ誘電率の小さな低誘電特性絶縁樹脂が求められている。
【0004】
従来から、上記の用途には、エポキシ基を含んだ硬化性樹脂を使用していた。しかしながら、この樹脂は、硬化反応に伴って2級水酸基が発生する。2級水酸基は、誘電特性を悪化させる。
【0005】
これを回避するために、様々な樹脂の使用が検討されている。例えば、熱ラジカル重合によって硬化する樹脂は、硬化反応によって2級水酸基が発生することがない。
【0006】
しかしながら、硬化反応によって2級水酸基を発生しない樹脂には、酸素含有雰囲気中で硬化させた場合に、硬化阻害が発生するものがある。それ故、そのような樹脂の硬化は、酸素濃度を極端に下げた雰囲気中で実施する必要がある。例えば、特許文献1では、酸素濃度が100ppm以下の窒素雰囲気中で熱硬化を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-353160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、熱硬化性樹脂からなる絶縁層の酸素含有雰囲気中での硬化を可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によると、未硬化の熱硬化性樹脂を含んだ絶縁層と、その上に設けられたガスバリアフィルムとを備えた熱硬化性絶縁樹脂フィルムが提供される。
【0010】
本発明の他の側面によると、前記ガスバリアフィルムは、温度30℃、相対湿度70%の雰囲気下における酸素透過度が10cc/m/day/atm以下である上記側面に係る熱硬化性絶縁樹脂フィルムが提供される。
【0011】
本発明の更に他の側面によると、前記ガスバリアフィルムは、第1支持体層と、その上に設けられたガスバリア層とを含んだ上記側面の何れかに係る熱硬化性絶縁樹脂フィルムが提供される。
【0012】
本発明の更に他の側面によると、前記第1支持体層は、融点又は軟化点が150℃以上の材料からなる上記側面に係る熱硬化性絶縁樹脂フィルムが提供される。
【0013】
本発明の更に他の側面によると、前記ガスバリアフィルムは、前記ガスバリア層を間に挟んで前記第1支持体層と向き合った第2支持体層を更に含んだ上記側面の何れかに係る熱硬化性絶縁樹脂フィルムが提供される。
【0014】
本発明の更に他の側面によると、前記第1支持体層及び前記第2支持体層の各々は、融点又は軟化点が150℃以上の材料からなる上記側面に係る熱硬化性絶縁樹脂フィルムが提供される。
【0015】
本発明の更に他の側面によると、前記絶縁層を間に挟んで前記ガスバリアフィルムと向き合うように、前記絶縁層上に剥離可能に設けられた保護フィルムを更に備えた上記側面の何れかに係る熱硬化性絶縁樹脂フィルムが提供される。
請求項1に記載の熱硬化性絶縁樹脂フィルム。
【0016】
本発明の更に他の側面によると、基板と、上記側面の何れかに係る熱硬化性絶縁樹脂フィルムとを、前記ガスバリアフィルムが前記絶縁層を間に挟んで前記基板と向き合うように貼り合わせることと、前記基板に貼り合わせた前記熱硬化性絶縁樹脂フィルムを、酸素を含んだ雰囲気中で加熱して、前記熱硬化性樹脂を少なくとも部分的に硬化させることと、その後、前記絶縁層から前記ガスバリアフィルムを剥離することとを含んだ配線基板の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、熱硬化性樹脂からなる絶縁層の酸素含有雰囲気中での硬化を可能とする技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る熱硬化性絶縁樹脂フィルムの断面図である。
図2図2は、第1変形例に係る熱硬化性絶縁樹脂フィルムの断面図である。
図3図3は、第2変形例に係る熱硬化性絶縁樹脂フィルムの断面図である。
図4図4は、第3変形例に係る熱硬化性絶縁樹脂フィルムの断面図である。
図5図5は、第4変形例に係る熱硬化性絶縁樹脂フィルムの断面図である。
図6図6は、本発明の一実施形態に係る配線基板の製造方法における一工程を示す断面図である。
図7図7は、本発明の一実施形態に係る配線基板の製造方法における他の工程を示す断面図である。
図8図8は、本発明の一実施形態に係る配線基板の製造方法における更に他の工程を示す断面図である。
図9図9は、本発明の一実施形態に係る配線基板の製造方法における更に他の工程を示す断面図である。
図10図10は、本発明の一実施形態に係る配線基板の製造方法における更に他の工程を示す断面図である。
図11図11は、本発明の一実施形態に係る配線基板の製造方法における更に他の工程を示す断面図である。
図12図12は、本発明の一実施形態に係る配線基板の製造方法における更に他の工程を示す断面図である。
図13図13は、本発明の一実施形態に係る配線基板の製造方法における更に他の工程を示す断面図である。
図14図14は、本発明の一実施形態に係る配線基板の製造方法における更に他の工程を示す断面図である。
図15図15は、本発明の一実施形態に係る配線基板の製造方法における更に他の工程を示す断面図である。
図16図16は、本発明の一実施形態に係る配線基板の製造方法における更に他の工程を示す断面図である。
図17図17は、本発明の一実施形態に係る配線基板の製造方法における更に他の工程を示す断面図である。
図18図18は、本発明の一実施形態に係る配線基板の製造方法における更に他の工程を示す断面図である。
図19図19は、本発明の一実施形態に係る配線基板の製造方法における更に他の工程を示す断面図である。
図20図20は、図19の配線基板を含んだパッケージ化デバイスの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、上記態様の何れかをより具体化したものである。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化した例を示すものであって、本発明の技術的思想を、以下に記載する構成要素の材質、形状、構造、及び配置等に限定するものではない。本発明の技術的思想には、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0020】
以下の説明において参照する図面では、同様又は類似した機能を有する構成要素に、同一の参照符号を付している。ここで、図面は模式的なものであり、厚さ方向の寸法と厚さ方向に垂直な方向、即ち面内方向の寸法との関係や、複数の層の厚さ方向における寸法の関係等は、現実のものとは異なり得ることに留意すべきである。従って、具体的な寸法は、以下の説明を参酌して判断すべきである。また、2以上の構成要素の寸法の関係が、複数の図面の間で異なっている可能性があることにも留意すべきである。
【0021】
<1>熱硬化性絶縁樹脂フィルム
図1は、本発明の一実施形態に係る熱硬化性絶縁樹脂フィルムの断面図である。図1に示す熱硬化性絶縁樹脂フィルム100Aは、未硬化の熱硬化性樹脂からなる絶縁層1と、その上に設けられたガスバリアフィルム2とを含んでいる。熱硬化性絶縁樹脂フィルム100Aにおいて、絶縁層1及びガスバリアフィルム2の各々は単層構造を有している。
【0022】
熱硬化性絶縁樹脂フィルム100Aには、様々な変形が可能である。例えば、ガスバリアフィルム2は、以下に例示するように、多層構造を有していてもよい。
【0023】
図2は、第1変形例に係る熱硬化性絶縁樹脂フィルムの断面図である。図2に示す熱硬化性絶縁樹脂フィルム100Bは、ガスバリアフィルム2がガスバリア層3と支持体層4とを含んでいること以外は、熱硬化性絶縁樹脂フィルム100Aと同様である。熱硬化性絶縁樹脂フィルム100Bにおいて、ガスバリア層3は、絶縁層1と支持体層4との間に介在している。
【0024】
図3は、第2変形例に係る熱硬化性絶縁樹脂フィルムの断面図である。図3に示す熱硬化性絶縁樹脂フィルム100Cは、支持体層4が絶縁層1とガスバリア層3との間に介在していること以外は、熱硬化性絶縁樹脂フィルム100Bと同様である。
【0025】
図4は、第3変形例に係る熱硬化性絶縁樹脂フィルムの断面図である。図4に示す熱硬化性絶縁樹脂フィルム100Dは、支持体層4を第1支持体層として含み、支持体層4’を第2支持体層として更に含んでいること以外は、熱硬化性絶縁樹脂フィルム100Bと同様である。熱硬化性絶縁樹脂フィルム100Dにおいて、支持体層4’は、絶縁層1とガスバリア層3との間に介在している。
【0026】
熱硬化性絶縁樹脂フィルム100A乃至100Dは、絶縁層1及びガスバリアフィルム2以外の1以上の層を更に含んでいてもよい。
【0027】
例えば、熱硬化性絶縁樹脂フィルム100A乃至100Dの各々は、絶縁層1とガスバリアフィルム2との間に離型層を更に含んでいてもよい。離型層は、例えば、シリコーン樹脂又はフッ素樹脂を含んだ層である。
【0028】
また、熱硬化性絶縁樹脂フィルム100A乃至100Dの各々は、以下に例示するように、保護フィルムを更に含んでいてもよい。
【0029】
図5は、第4変形例に係る熱硬化性絶縁樹脂フィルムの断面図である。図5に示す熱硬化性絶縁樹脂フィルム100Eは、保護フィルム5を更に含んでいること以外は、熱硬化性絶縁樹脂フィルム100Aと同様である。保護フィルム5は、絶縁層1を間に挟んでガスバリアフィルム2と向き合うように、絶縁層1上に剥離可能に設けられている。
【0030】
以下に、熱硬化性絶縁樹脂フィルム100A乃至100Eが含む層について、より詳細に説明する。
【0031】
(絶縁層)
絶縁層1は、未硬化の熱硬化性樹脂を含んでいる。絶縁層1は、未硬化の感光性絶縁樹脂を更に含むことができる。未硬化樹脂の合計が絶縁層1に占める割合は、5質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。一例によれば、絶縁層1が含む樹脂は熱硬化性樹脂である。絶縁層1が含む樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、マレイミド樹脂、液晶ポリマー、フッ素樹脂、又はこれらの2つ以上の組み合わせである。
【0032】
絶縁層1は、無機フィラー及び有機フィラーの少なくとも一方を更に含有していてもよい。無機フィラーは、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ジルコン酸カルシウム、酸化チタン、及びチタン酸バリウムなどからそれぞれがなるフィラーの1以上である。有機フィラーは、例えば、フッ素系、ゴム、ポリアミド、及びシリコーンからそれぞれがなるフィラーの1以上である。絶縁層1にフィラーを含有させる場合、絶縁層1におけるフィラーの量は、絶縁層1が含む樹脂材料中の不揮発成分を100質量部とした場合、50乃至95質量部の範囲内にあることが好ましく、60乃至85質量部の範囲内にあることがより好ましい。
【0033】
(ガスバリアフィルム)
ガスバリアフィルム2は、酸素バリア性を有しているフィルムである。前記ガスバリアフィルムは、温度30℃、相対湿度70%の雰囲気下における酸素透過度が10cc/m/day/atm以下であることが好ましく、この雰囲気下における酸素透過度が1cc/m/day/atm以下であることがより好ましい。この酸素透過度は、0cc/m/day/atmであることが理想的である。一例によれば、この酸素透過度は、0.4cc/m/day/atm以上である。なお、酸素透過度は、JIS K7126-2に規定された方法に準拠して測定することによって得られる値である。
【0034】
ガスバリアフィルム2は、ガスバリア性の単層フィルムである場合、例えば、ナイロン(Ny)、ポリアミド(PA)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレンビニルアルコール共重合(EVOH)、若しくはポリ塩化ビニリデン(PVDC)などの材料からなるフィルムであるか、又は、アルミニウム箔である。
【0035】
(ガスバリア層)
ガスバリアフィルム2は、ガスバリア性の多層フィルムである場合、支持体層4又は4’によって支持されたガスバリア層3を含む。
ガスバリア層3は、例えば、アルミニウム蒸着層、アルミナ蒸着層、及びシリカ蒸着層等の無機蒸着層;ナイロン(Ny)、ポリアミド(PA)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレンビニルアルコール共重合(EVOH)、若しくはポリ塩化ビニリデン(PVDC)を含んだ層;アルミニウム箔;又はこれらの2種以上の組み合わせである。
【0036】
(支持体層)
支持体層4及び4’は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール(PVA)、及びナイロン(Ny)などの材料からなる。
【0037】
支持体層4及び4’の各々は、融点又は軟化点が150℃以上の材料からなることが好ましく、融点又は軟化点が200℃以上の材料からなることがより好ましい。支持体層4及び4’に使用可能な材料の融点又は軟化点は、一例によれば、260℃以下である。
【0038】
(保護フィルム)
保護フィルム5は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール(PVA)、及びナイロン(Ny)などの材料からなる。保護フィルム5は、絶縁層1と接する面に、例えばシリコーン樹脂又はフッ素樹脂を含んだ離型層を有していてもよい。
【0039】
<2>配線基板
上記の熱硬化性絶縁樹脂フィルムは、以下に説明するように、配線基板の製造に利用することができる。
【0040】
図6乃至図19は、本発明の一実施形態に係る配線基板の製造方法を示す断面図である。なお、ここで製造する配線基板200では、図19に示すように、コア基板10に貫通孔が設けられており、これら貫通孔内には、それらの側壁を被覆した貫通電極18が設けられている。図6乃至図18では、簡略化のため、これら貫通孔及び貫通電極18は省略している。また、ここで製造する配線基板200では、図19に示すように、コア基板10の両面に絶縁層1A及び導体層11等を設けている。図6乃至図18では、簡略化のため、コア基板10の片面側の構造のみを描いている。
【0041】
この方法では、先ず、図6に示すように、コア基板10と熱硬化性絶縁樹脂フィルム100とを準備する。
【0042】
コア基板10は、図19に示すように貫通孔が設けられた絶縁基板である。これら貫通孔内には、それらの側壁を被覆した貫通電極18が設けられている。
【0043】
コア基板10の各主面上には、導体層11が形成されている。導体層11の各々は、ランド部と配線部とを含んだ導体パターンである。また、導体層11の各々は、シード層11aとめっき層11bとを含んでいる。シード層11a及びめっき層11bは、後述する方法によって形成することができる。
【0044】
熱硬化性絶縁樹脂フィルム100は、熱硬化性絶縁樹脂フィルム100A乃至100Dの何れかである。熱硬化性絶縁樹脂フィルム100Eを使用する場合、保護フィルム5は、絶縁層1から除去しておく。
【0045】
次に、図7に示すように、コア基板10及び導体層11等を含んだ基板と、熱硬化性絶縁樹脂フィルム100とを、ガスバリアフィルム2が絶縁層1を間に挟んで上記基板と向き合うように貼り合わせる。例えば、上記基板の両面に、熱硬化性絶縁樹脂フィルム100を貼り合わせる。この貼り合わせには、例えば、真空ラミネータを使用する。
【0046】
次に、基板に貼り合わせた熱硬化性絶縁樹脂フィルム100を、酸素を含んだ雰囲気中で加熱して、絶縁層1が含む熱硬化性樹脂を少なくとも部分的に硬化させる。酸素を含んだ雰囲気は、例えば、大気雰囲気である。この加熱には、例えば、オーブンを使用する。
【0047】
この加熱のとき、ガスバリアフィルム2は、雰囲気中の酸素が絶縁層1へ侵入するのを妨げる。それ故、酸素含有雰囲気中での加熱であっても、酸素による硬化阻害は生じない。このようにして、図8に示すように、熱硬化性樹脂を少なくとも部分的に硬化した絶縁層1Aを得る。
【0048】
この加熱は、熱硬化性樹脂を完全に硬化させるものであってもよく、熱硬化性樹脂を半硬化させるものであってもよい。
【0049】
絶縁層1へ酸素が侵入する条件下で加熱を行った場合、熱硬化性樹脂の硬化が十分に進行しないか又はこの硬化物からなる絶縁層が脆くなる。それ故、この樹脂からなる絶縁層とその上に形成する層との間で高い密着性を達成できないなどの問題を生じ得る。ガスバリアフィルム2による酸素遮断条件下で熱硬化性樹脂を全硬化させた場合は勿論のこと、この樹脂を半硬化させた場合であっても、上記の密着性の問題を回避できる。また、熱硬化性樹脂を半硬化させた場合、熱硬化性樹脂を完全硬化させた場合と比較して、レーザービーム照射による貫通孔形成及びデスミア処理が容易になる。
【0050】
熱硬化性樹脂の硬化の程度は、例えば、加熱温度及び加熱時間で調節可能である。この加熱は、150乃至200℃の範囲内の温度で行うことが好ましい。また、この加熱は、30乃至60分間に亘って行うことが好ましい。なお、熱硬化性絶縁樹脂フィルム100の耐熱性が低い場合は、この熱硬化は、低い温度で長時間行えばよい。
【0051】
次に、図9に示すように、絶縁層1Aからガスバリアフィルム2を除去する。次いで、絶縁層1Aのうち、これが被覆している導体層11のランド部に対応した領域へ、レーザービームを照射する。これにより、図10に示すように、絶縁層1Aに貫通孔THを形成する。レーザービーム照射による貫通孔THの形成は、絶縁層1Aからガスバリアフィルム2を除去する前に行ってもよい。
【0052】
次に、図11に示すように、絶縁層1Aの上面、貫通孔THの側壁、及び導体層11の上面のうち貫通孔TH内の空間に露出した領域を被覆したシード層11aを形成する。シード層11aは、例えば、無電解めっき又はスパッタリングにより形成する。
【0053】
次に、シード層11a上にレジストを塗布するか又はドライレジストをラミネートし、このレジスト層を露光及び現像する。これにより、図12に示すように、ビア部、ランド部及び配線部に対応した形状に開口したレジストパターン13を得る。
【0054】
続いて、シード層11aを給電層として用いた電解めっきを行う。これにより、図13に示すように、レジストパターン13の開口部の位置で金属を析出させてなるめっき層11bを得る。
【0055】
次に、図14に示すように、レジストパターン13を除去する。続いて、図5に示すように、シード層11aのうちめっき層11bによって覆われていない部分を、エッチングによって除去する。なお、図8を参照しながら説明した熱処理によって熱硬化性樹脂を半硬化させた場合、この熱硬化性樹脂は、シード層11aのエッチング後に完全硬化させてもよい。
【0056】
次に、必要に応じて、シード層11aとめっき層11bとからなる導体層11の表面へ粗化処理又は密着性向上処理を施す。
【0057】
その後、絶縁層1Aとその上の導体層11とを形成した基板に対して、図7乃至図15を参照しながら説明したプロセスから各々がなるサイクルを繰り返す。これにより、図16に示す多層構造体を得る。
【0058】
次に、上記多層構造体の表面にソルダーレジストを塗布するか又はラミネートし、このレジスト層を露光及び現像する。これにより、図17に示すように、最上層のランド部(パッド部)の位置に貫通孔を有する絶縁層14を得る。
【0059】
次に、絶縁層14の貫通孔の位置に、はんだペーストをスクリーン印刷するか又ははんだボールを搭載し、その後、リフローを行うことで、図18に示すはんだバンプ15を形成する。なお、導体層11のうち絶縁層14の貫通孔内の空間に露出した部分とはんだバンプ15との間には、表面処理層を設けてもよい。
【0060】
以上のようにして、図19に示す配線基板200を得る。この配線基板200は、例えば、半導体チップなどの機能デバイスと、マザーボード又はフリップチップボールグリッドアレイ(Flip Chip-Ball Grid Array)用配線基板、即ち、FC-BGA基板との接合を媒介するインターポーザとして利用可能である。
【0061】
<3>パッケージ化デバイス
図20は、図19の配線基板を含んだパッケージ化デバイスの一例を示す断面図である。
【0062】
図20に示すパッケージ化デバイス300は、配線基板200と、機能デバイス16と、封止樹脂層17とを含んでいる。
【0063】
機能デバイス16は、電力及び電気信号の少なくとも一方が供給されることにより動作するデバイス、外部からの刺激により電力及び電気信号の少なくとも一方を出力するデバイス、又は、電力及び電気信号の少なくとも一方が供給されることにより動作し且つ外部からの刺激により電力及び電気信号の少なくとも一方を出力するデバイスである。機能デバイス16は、例えば、半導体チップや、ガラス基板などの半導体以外の材料からなる基板上に回路や素子が形成されたチップのように、チップの形態にある。機能デバイス16は、例えば、大規模集積回路(LSI)、メモリ、撮像素子、発光素子、及びMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の1以上を含むことができる。MEMSは、例えば、圧力センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、傾斜センサ、マイクロフォン、及び音響センサの1以上である。一例によれば、機能デバイス16は、LSIを含んだ半導体チップである。
【0064】
機能デバイス16は、はんだバンプ15を介して、配線基板200へ接合されている。ここでは、機能デバイス16は、フリップチップボンディングによって、配線基板200へ接合されている。
【0065】
封止樹脂層17は、機能デバイス16と配線基板200との間に介在した部分と、機能デバイス16の側面を少なくとも部分的に被覆した部分とを含んでいる。封止樹脂層17は、機能デバイス16を配線基板200へ固定している。封止樹脂層17は、例えば、エポキシ系樹脂等のアンダーフィル樹脂の硬化物である。
【0066】
なお、配線基板200は、機能デバイス16が設けられた面とは反対側の面にもはんだバンプ15を有している。これらはんだバンプ15は、配線基板200への機能デバイス16の実装後に、配線基板200に設ける。そして、機能デバイス16を実装した配線基板200は、これらはんだバンプ15を介して、他の配線基板、例えば、マザーボード又はFC-BGA基板へ実装する。
【0067】
<4>効果
酸素による硬化阻害を受ける樹脂を硬化させる場合、その硬化処理に使用する装置内を窒素雰囲気で満たして、雰囲気中の酸素濃度を大幅に下げる必要がある。それ故、そのような樹脂を使用した場合、開放型のコンベアオーブンなどでの連続キュアが困難である。従って、そのような樹脂を使用する場合、その硬化に密閉式のBOX型オーブン等を使用するとともに、一定枚数を処理する毎に炉内を窒素で置換する必要がある。バッチ式は連続式と比較して生産性に劣るのに加え、炉内の窒素置換にも長時間を要する。これらの理由により、酸素による硬化阻害を受ける樹脂を使用した場合、十分に短いタクトタイムを実現することはできなかった。
【0068】
これに対し、熱硬化性絶縁樹脂フィルムを使用した上記方法によると、酸素含有雰囲気中であっても、硬化阻害を生じることなしに熱硬化性樹脂を硬化させることができる。それ故、雰囲気の窒素置換は不要であり、また、この硬化のための熱処理を連続式で行うことができる。従って、十分に短いタクトタイムを実現することが可能になる。
【実施例0069】
以下に、本発明に関連して行った試験について記載する。
【0070】
<例1>
本例では、先ず、図3に示す熱硬化性絶縁樹脂フィルム100Cを準備した。具体的には、ポリエチレンテレフタレートからなる厚さが15μmの支持体層4の一方の面に、ガスバリア層3として厚さが50nmのアルミニウム蒸着層を形成したガスバリアフィルム2を準備した。次に、このガスバリアフィルム2に、ポリエチレンテレフタレートフィルムとその上に形成したアクリル変性絶縁樹脂層とからなる積層体を、アクリル変性絶縁樹脂層が支持体層4と接触するようにラミネートした。その後、絶縁層1としてのアクリル変性絶縁樹脂層からポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離することにより、図3に示す熱硬化性絶縁樹脂フィルム100Cを得た。
【0071】
次に、銅張積層板の銅層から防錆剤を除去し、銅層の表面を粗化処理した。この銅張積層板に上記の熱硬化性絶縁樹脂フィルム100Cを、絶縁層1が銅層と接触するようにラミネートした。
【0072】
次いで、銅張積層板と熱硬化性絶縁樹脂フィルム100Cとからなる積層体を、炉内を大気雰囲気としたオーブンを使用して、200℃で1時間に亘って加熱した。これにより、熱硬化性樹脂を硬化させた。
【0073】
その後、熱可塑性樹脂の硬化物からなる絶縁層1Aからガスバリアフィルム2を剥離した。次いで、ウェットデスミア、無電解銅めっき、及び電解銅めっきを順次実施して、絶縁層1A上に厚さが30μmの銅層を形成した。
【0074】
以上のようにして得られた積層体から、幅が1cmの短冊形状を有している試験片を切り出した。この試験片の端部で絶縁層1Aからその上に形成した銅層を剥離し、剥離部をジグに把持させて、25mm/minの条件下で90°ピール試験を行った。その結果、約0.6kgf/cmのピール強度が得られた。
【0075】
<比較例1>
本例では、先ず、ポリエチレンテレフタレートフィルムとその上に形成したアクリル変性絶縁樹脂層とからなる多層フィルムを準備した。この多層フィルムが含んでいるアクリル変性絶縁樹脂層は、例1において製造した熱硬化性絶縁樹脂フィルム100Cが含んでいる絶縁層1と同様である。
【0076】
次に、銅張積層板の銅層から防錆剤を除去し、銅層の表面を粗化処理した。この銅張積層板に上記の多層フィルムを、アクリル変性絶縁樹脂層が銅層と接触するようにラミネートした。
【0077】
次いで、銅張積層板と多層フィルムとからなる積層体を、炉内を窒素で充填して酸素濃度が20ppm以下の雰囲気としたオーブンを使用して、200℃で1時間に亘って加熱した。これにより、熱硬化性樹脂を硬化させた。
【0078】
その後、熱可塑性樹脂の硬化物からなる絶縁層からポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離した。次いで、例1と同様の方法により、絶縁層上に厚さが30μmの銅層を形成した。
【0079】
以上のようにして得られた積層体から、幅が1cmの短冊形状を有している試験片を切り出した。この試験片を使用したこと以外は例1と同様の方法により、90°ピール試験を行った。その結果、約0.6kgf/cmのピール強度が得られた。
【0080】
<比較例2>
オーブンによる加熱を、炉内を窒素で充填して行う代わりに、炉内を大気雰囲気として行ったこと以外は、比較例1と同様の方法により積層体を製造した。
【0081】
以上のようにして得られた積層体から、幅が1cmの短冊形状を有している試験片を切り出した。この試験片を使用したこと以外は例1と同様の方法により、90°ピール試験を行った。その結果、約0.1kgf/cm未満のピール強度が得られた。本例では、酸素含有雰囲気中で熱処理したことに起因して絶縁層が脆くなり、高いピール強度を実現できなかった。
【符号の説明】
【0082】
1…絶縁層、1A…絶縁層、2…ガスバリアフィルム、3…ガスバリア層、4…支持体層、4’…支持体層、5…保護フィルム、10…コア基板、11…導体層、11a…シード層、11b…めっき層、13…レジストパターン、14…絶縁層、15…はんだバンプ、16…機能デバイス、17…封止樹脂層、18…貫通電極、100…熱硬化性絶縁樹脂フィルム、100A…熱硬化性絶縁樹脂フィルム、100B…熱硬化性絶縁樹脂フィルム、100C…熱硬化性絶縁樹脂フィルム、100D…熱硬化性絶縁樹脂フィルム、100E…熱硬化性絶縁樹脂フィルム、200…配線基板、300…パッケージ化デバイス、TH…貫通孔。
図1
図2
図3
図4
図5
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図20