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特開2024-172873車両制御装置、車両制御方法及び車両制御用コンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172873
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両制御方法及び車両制御用コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/14 20200101AFI20241205BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20241205BHJP
【FI】
B60W50/14
B60W60/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090900
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】根本 広海
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA57
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC11
3D241CE05
3D241DA12Z
3D241DA39Z
(57)【要約】
【課題】ドライバがハンズオン要求を無視することを抑制可能な車両制御装置を提供する。
【解決手段】車両制御装置は、ドライバがステアリングを保持することなく車両10の運転制御が実行されている場合において、所定の警告条件が満たされると、ドライバに対してステアリングを保持することを要求する保持要求を、通知機器5を介してドライバに通知するとともに、ドライバがステアリングを保持していないことに対する警告を、通知機器5を介して通知する保持要求部32と、ドライバがステアリングを保持したか否かを、ドライバの行動を検知する車内センサ(3、4)からの車内センサ信号に応じて判定する保持判定部33と、保持要求が通知された後において、所定の警告条件が満たされなくなってもドライバがステアリングを保持したと判定されるまで警告を継続する警告制御部34とを有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドライバがステアリングを保持することなく前記車両の運転制御が実行されている場合において、前記車両の周囲の状況または前記ドライバの状況が所定の警告条件を満たすか否か判定する判定部と、
前記所定の警告条件が満たされると、ドライバに対してステアリングを保持することを要求する保持要求を、通知機器を介してドライバに通知するとともに、ドライバがステアリングを保持していないことに対する警告を、前記通知機器を介して通知する保持要求部と、
ドライバがステアリングを保持したか否かを、ドライバの行動を検知する車内センサからの車内センサ信号に応じて判定する保持判定部と、
前記保持要求が通知された後において、前記所定の警告条件が満たされなくなってもドライバがステアリングを保持したと判定されるまで前記警告を継続する警告制御部と、
を有する車両制御装置。
【請求項2】
前記保持要求部は、前記保持要求が通知されてからの経過時間が長くなるほど、前記警告の強度を高くし、前記警告制御部は、前記警告の強度が第1の強度である間に前記所定の警告条件が満たされなくなるとドライバがステアリングを保持していなくても前記警告を停止し、一方、前記警告の強度が前記第1の強度よりも強い第2の強度である間に前記所定の警告条件が満たされなくなってもドライバがステアリングを保持したと判定されるまで前記警告を継続する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記警告の強度が前記第2の強度に変更されてから所定の猶予期間を経過するまでにドライバがステアリングを保持しない場合、前記車両を停車させるよう前記車両を制御する車両制御部をさらに有する、請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
車両のドライバがステアリングを保持することなく前記車両の運転制御が実行されている場合において、前記車両の周囲の状況またはドライバの状況が所定の警告条件を満たすか否か判定し、
前記所定の警告条件が満たされると、ドライバに対してステアリングを保持することを要求する保持要求を、通知機器を介してドライバに通知するとともに、ドライバがステアリングを保持していないことに対する警告を、前記通知機器を介して通知し、
ドライバがステアリングを保持したか否かを、ドライバの行動を検知する車内センサからの車内センサ信号に応じて判定し、
前記保持要求が通知された後において、前記所定の警告条件が満たされなくなってもドライバがステアリングを保持したと判定されるまで前記警告を継続する、
ことを含む車両制御方法。
【請求項5】
車両のドライバがステアリングを保持することなく前記車両の運転制御が実行されている場合において、前記車両の周囲の状況またはドライバの状況が所定の警告条件を満たすか否か判定し、
前記所定の警告条件が満たされると、ドライバに対してステアリングを保持することを要求する保持要求を、通知機器を介してドライバに通知するとともに、ドライバがステアリングを保持していないことに対する警告を、前記通知機器を介して通知し、
ドライバがステアリングを保持したか否かを、ドライバの行動を検知する車内センサからの車内センサ信号に応じて判定し、
前記保持要求が通知された後において、前記所定の警告条件が満たされなくなってもドライバがステアリングを保持したと判定されるまで前記警告を継続する、
ことを含む車両制御用コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置、車両制御方法及び車両制御用コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に適用される自動運転制御のレベルによっては、車両の自動運転制御中においてドライバがステアリングから手を離すことが許容される。このようなレベルの自動運転制御が車両に適用されているときに、状況に応じて、ドライバにステアリングの保持を要求する技術が提案されている(特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に開示された運転支援装置は、ドライバが車両の周辺監視に不適切な状態と判定した場合、通知機器を介してドライバに警告するとともに、ステアリングを把持する要求を、通知機器を介してドライバに通知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-17112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
場合によっては、ステアリングの保持を求める要求(以下、ハンズオン要求あるいは保持要求と呼ぶことがある)がなされてから、ドライバがステアリングを保持する前に、ハンズオン要求を通知するに至った要因が解消することがある。このような場合に、ドライバがステアリングを保持しなくても、車両制御装置がハンズオン要求を取り下げ、かつ、手放し警告を解除すると、ドライバは、ステアリングを保持しなくても勝手に手放し警告が解除されることを学習してハンズオン要求に従わなくなるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、ドライバがハンズオン要求を無視することを抑制可能な車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの実施形態によれば、車両制御装置が提供される。この車両制御装置は、車両のドライバがステアリングを保持することなく車両の運転制御が実行されている場合において、車両の周囲の状況またはドライバの状況が所定の警告条件を満たすか否か判定する判定部と、所定の警告条件が満たされると、ドライバに対してステアリングを保持することを要求する保持要求を、通知機器を介してドライバに通知するとともに、ドライバがステアリングを保持していないことに対する警告を、通知機器を介して通知する保持要求部と、ドライバがステアリングを保持したか否かをドライバの行動を検知する車内センサからの車内センサ信号に応じて判定する保持判定部と、保持要求が通知された後において、所定の警告条件が満たされなくなってもドライバがステアリングを保持したと判定されるまで警告を継続する警告制御部とを有する。
【0008】
この車両制御装置において、保持要求部は、保持要求が通知されてからの経過時間が長くなるほど、警告の強度を高くし、警告制御部は、警告の強度が第1の強度である間に所定の警告条件が満たされなくなるとドライバがステアリングを保持していなくても警告を停止し、一方、警告の強度が第1の強度よりも強い第2の強度である間に所定の警告条件が満たされなくなってもドライバがステアリングを保持したと判定されるまで警告を継続することが好ましい。
【0009】
また、この車両制御装置は、警告の強度が第2の強度に変更されてから所定の猶予期間を経過するまでにドライバがステアリングを保持しない場合、車両を停車させるよう車両を制御する車両制御部をさらに有することが好ましい。
【0010】
他の実施形態によれば、車両制御方法が提供される。この車両制御方法は、車両のドライバがステアリングを保持することなく車両の運転制御が実行されている場合において、車両の周囲の状況またはドライバの状況が所定の警告条件を満たすか否か判定し、所定の警告条件が満たされると、ドライバに対してステアリングを保持することを要求する保持要求を、通知機器を介してドライバに通知するとともに、ドライバがステアリングを保持していないことに対する警告を、通知機器を介して通知し、ドライバがステアリングを保持したか否かをドライバの行動を検知する車内センサからの車内センサ信号に応じて判定し、保持要求が通知された後において、所定の警告条件が満たされなくなってもドライバがステアリングを保持したと判定されるまで警告を継続する、ことを含む。
【0011】
さらに他の実施形態によれば、車両制御用コンピュータプログラムが提供される。車両制御用コンピュータプログラムは、車両のドライバがステアリングを保持することなく車両の運転制御が実行されている場合において、車両の周囲の状況またはドライバの状況が所定の警告条件を満たすか否か判定し、所定の警告条件が満たされると、ドライバに対してステアリングを保持することを要求する保持要求を、通知機器を介してドライバに通知するとともに、ドライバがステアリングを保持していないことに対する警告を、通知機器を介して通知し、ドライバがステアリングを保持したか否かをドライバの行動を検知する車内センサからの車内センサ信号に応じて判定し、保持要求が通知された後において、所定の警告条件が満たされなくなってもドライバがステアリングを保持したと判定されるまで警告を継続する、ことを車両に搭載されたプロセッサに実行させるための命令を含む。
【発明の効果】
【0012】
本開示に係る車両制御装置は、ドライバがハンズオン要求を無視することを抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】車両制御装置が実装される車両制御システムの概略構成図である。
図2】電子制御装置のハードウェア構成図である。
図3】車両制御処理に関する電子制御装置のプロセッサの機能ブロック図である。
図4】(a)~(c)は、それぞれ手放し警告の通知の遷移を説明する図である。
図5】車両制御処理の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図を参照しつつ、車両制御装置及び車両制御装置上で実行される車両制御方法ならびに車両制御用コンピュータプログラムについて説明する。この車両制御装置は、ハンズオン要求をドライバに対して通知した後に、ハンズオン要求を通知する原因が解消されても、ドライバがステアリングを実際に保持するまで、ドライバがステアリングを保持していないことに対する警告(以下、手放し警告と呼ぶ)の通知を継続する。
【0015】
図1は、車両制御装置が実装される車両制御システムの概略構成図である。また図2は、車両制御装置の一つの実施形態である電子制御装置のハードウェア構成図である。本実施形態では、車両10に搭載され、かつ、車両10を制御する車両制御システム1は、カメラ2と、ドライバモニタカメラ3と、タッチセンサ4と、通知機器5と、車両制御装置の一例である電子制御装置(ECU)6とを有する。なお、車両制御システム1は、LiDARあるいはレーダといった、車両10の周囲に存在する物体までの距離を測定する測距センサ(図示せず)をさらに有していてもよい。また、車両制御システム1は、GPS受信機といった衛星測位装置(図示せず)をさらに有していてもよい。
【0016】
カメラ2は、車外センサの一例であり、例えば、車両10の前方を向くように、例えば、車両10の車室内に取り付けられる。カメラ2は、所定の撮影周期ごとに、車両10の周囲の所定領域を撮影することでその所定領域が写った画像を生成し、生成した画像をECU6へ出力する。
【0017】
ドライバモニタカメラ3は、ドライバの行動を検知する車内センサの一例であり、車両10のドライバシートに着座したドライバの頭部がその撮影対象領域に含まれるように、例えば、インストルメントパネルまたはその近傍にドライバへ向けて取り付けられる。そしてドライバモニタカメラ3は、所定の撮影周期ごとに、ドライバを撮影することでドライバが写った画像(以下、ドライバ画像と呼ぶ)を生成し、生成したドライバ画像をECU6へ出力する。ドライバ画像は、車内センサ信号の一例である。
【0018】
タッチセンサ4は、車内センサの他の一例であり、ステアリングに取り付けられ、ドライバがステアリングを保持したことを検知するとそのことを表す検知信号をECU6へ出力する。検知信号は、車内センサ信号の他の一例である。
【0019】
通知機器5は、車両10の車室内に設けられ、ドライバに対して、光、音声、振動、文字表示あるいは画像表示にて所定の通知を行う機器である。そのために、通知機器5は、例えば、スピーカ、光源、振動子あるいは表示装置の少なくとも何れかを有する。そして通知機器5は、ドライバへのハンズオン要求といった所定の警告を表す通知信号をECU6から受け取ると、スピーカからの音声、光源の発光または点滅、振動子の振動、あるいは、表示装置へのメッセージの表示により、ドライバへその警告を通知する。なお、その通知は、通知機器5が2種類以上の機器のそれぞれを介して行われてもよい。
【0020】
ECU6は、車両10を自動運転制御し、あるいは、ドライバによる車両10の運転を支援する。さらに、ECU6は、ドライバがステアリングを保持していない状態で車両10の自動運転制御を実行しているときに、所定の警告条件が満たされると、通知機器5を介してドライバにハンズオン要求を通知する。
【0021】
図2に示されるように、ECU6は、通信インターフェース21と、メモリ22と、プロセッサ23とを有する。通信インターフェース21、メモリ22及びプロセッサ23は、それぞれ、別個の回路として構成されてもよく、あるいは、一つの集積回路として一体的に構成されてもよい。
【0022】
通信インターフェース21は、ECU6を他の機器に接続するためのインターフェース回路を有する。そして通信インターフェース21は、カメラ2、ドライバモニタカメラ3、タッチセンサ4から受け取った画像、ドライバ画像または検知信号などをプロセッサ23へわたす。また、通信インターフェース21は、プロセッサ23から受け取った通知信号を、通知機器5へ出力する。
【0023】
メモリ22は、記憶部の一例であり、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。そしてメモリ22は、プロセッサ23により実行される車両制御処理において使用される各種のデータを記憶する。さらに、メモリ22は、車両制御処理の途中で生成される各種のデータを一時的に記憶する。
【0024】
プロセッサ23は、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ23は、論理演算ユニット、数値演算ユニットあるいはグラフィック処理ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。そしてプロセッサ23は、所定の周期ごとに、車両10に対する車両制御処理を実行する。
【0025】
図3は、車両制御処理に関する、プロセッサ23の機能ブロック図である。プロセッサ23は、判定部31と、保持要求部32と、保持判定部33と、警告制御部34と、車両制御部35とを有する。プロセッサ23が有するこれらの各部は、例えば、プロセッサ23上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、これらの各部は、プロセッサ23に設けられる、専用の演算回路であってもよい。
【0026】
判定部31は、ドライバがステアリングを保持することなく車両10の運転制御が実行されている場合に、ドライバがステアリングを保持せずに、ECU6が車両10の運転制御を継続することが不適切となり得る所定の警告条件が満たされるか否か判定する。なお、ドライバによるステアリングの保持は、後述する保持判定部33により判定される。
【0027】
例えば、判定部31は、車両10の周囲の状況が所定の警告条件を満たすか否か判定する。一例として、判定部31は、車両10が走行中の自車線を区画する車線区画線と車両10間の距離が所定距離未満になると、所定の警告条件が満たされると判定する。
【0028】
判定部31は、カメラ2により得られた画像を識別器に入力することで、画像に表された自車線を区画する左右の車線区画線を検出する。そして判定部31は、画像の最も下端に近い位置での左右それぞれの車線区画線が表された画素の参照位置と、カメラ2の焦点距離、撮影方向及び設置高さ等のパラメータに基づいて、左右それぞれの車線区画線について、カメラ2を基準とする、画像上の参照位置に対応する車線区画線の位置を推定する。そして判定部31は、その推定結果、及び、カメラ2の取り付け位置に基づいて、車両10から左右それぞれの車線区画線までの距離をもとめる。
【0029】
なお、判定部31は、車線区画線を画像から検出するように予め学習された識別器に画像を入力することで、車線区画線を検出すればよい。判定部31は、そのような識別器として、Single Shot MultiBox Detectorといった、コンボリューショナルニューラルネットワーク(CNN)型のアーキテクチャを持つディープニューラルネットワーク(DNN)を用いることができる。あるいは、判定部31は、そのような識別器として、AdaBoost識別器といった、他の機械学習手法に基づく識別器を用いてもよい。このような識別器は、画像から検出対象となる車線区画線を検出するように、車線区画線が表された多数の教師画像を用いて誤差逆伝搬法といった所定の学習手法に従って予め学習される。
【0030】
また、判定部31は、車両10の周囲を走行する周辺車両と車両10間の距離が所定距離未満となった場合に、警告条件が満たされると判定してもよい。この場合、判定部31は、画像を識別機に入力することで周辺車両を検出し、画像上で周辺車両が表された領域の下端の位置とカメラ2のパラメータとに基づいて、車両10と周辺車両間の距離を推定すればよい。あるいは、車両10に測距センサ(図示せず)が搭載されている場合、判定部31は、周辺車両が表された領域の重心に相当する方位について、測距センサにより測定された距離を、車両10と周辺車両間の距離として推定すればよい。
【0031】
さらに、判定部31は、ドライバの状況が所定の警告条件を満たすか否か判定してもよい。一例として、判定部31は、ドライバの顔の向きが車両10の進行方向と異なる方向を向いていると、警告条件が満たされると判定する。
【0032】
判定部31は、ドライバ画像を、画像からドライバの顔を検出するように予め学習された識別器に入力することで、そのドライバ画像上でドライバの顔が写っている領域(以下、顔領域と呼ぶ)を検出するとともに、目尻、目頭、鼻尖点、口角点等のドライバの顔の複数の特徴点を検出する。その際、判定部31は、画像に表された顔領域及び顔の特徴点を検出するように予め学習された識別器にドライバ画像を入力することで、顔領域及び顔の特徴点を検出する。そのような識別器として、判定部31は、例えば、CNN型のアーキテクチャを持つDNN、サポートベクトルマシンまたはAdaBoost識別器を用いることができる。なお、判定部31は、テンプレートマッチングといった、顔領域及び顔の特徴点を検出する他の手法に従って、ドライバ画像から顔領域及び顔の特徴点を検出してもよい。
【0033】
判定部31は、検出した顔の個々の特徴点を、顔の3次元形状を表す3次元顔モデルにフィッティングする。そして判定部31は、各特徴点が3次元顔モデルに最もフィッティングする際の3次元顔モデルの顔の向きを、ドライバの顔の向きとして検出する。なお、判定部31は、画像に表された顔の向きを判定する他の手法に従って、ドライバ画像に基づいてドライバの顔の向きを検出してもよい。
【0034】
判定部31は、検出したドライバの顔の向きが、車両10の進行方向を中心とする所定の許容範囲から外れている場合、ドライバは車両10の進行方向と異なる方向を向いていると判定する。なお、判定部31は、ドライバ画像から顔領域を検出できない場合も、ドライバは車両10の進行方向と異なる方向を向いていると判定してもよい。判定部31は、ドライバ画像を取得する度に、上記のようにドライバの顔の向きを検出すればよい。そして判定部31は、ドライバが車両10の進行方向と異なる方向を向いている継続期間が所定の時間閾値以上になると、警告条件が満たされたと判定する。
【0035】
さらに、判定部31は、時系列に得られた複数のドライバ画像に基づいてドライバの覚醒度をもとめ、その覚醒度が所定の閾値未満である場合、警告条件が満たされると判定してもよい。この場合、判定部31は、時系列に得られた複数のドライバ画像から覚醒度を求める公知の手法にしたがってドライバの覚醒度をもとめればよい。
【0036】
判定部31は、所定の警告条件が満たされるか否かの判定結果を、保持要求部32及び警告制御部34へ通知する。
【0037】
保持要求部32は、判定部31から、所定の警告条件が満たされたとの判定結果を受け取ると、通知機器5を介してドライバにハンズオン要求を通知する。そして保持要求部32は、ハンズオン要求の通知を開始したことを警告制御部34及び車両制御部35に通知する。さらに、保持要求部32は、ハンズオン要求の通知開始と同時、あるいは通知開始から所定時間を経過すると、手放し警告を、通知機器5を介してドライバに通知する。
【0038】
さらに、保持要求部32は、手放し警告の通知を開始してからの経過時間が長くなるほど、手放し警告の強度を強くする。例えば、保持要求部32は、その経過時間が所定の切り替え時間に達するまでは第1の強度で手放し警告を通知し、一方、その経過時間が所定の切り替え時間に達した以降、第1の強度よりも強い第2の強度で手放し警告を通知する。あるいは、保持要求部32は、手放し警告の通知を開始してからの経過時間に応じて、警告の強度を3段階以上切り替えてもよい。
【0039】
保持要求部32は、警告制御部34から手放し警告の通知を停止する停止指示を受け取るまで、手放し警告の通知を継続し、その停止指示を受け取ると、手放し警告の通知を停止する。また、保持要求部32は、ハンズオン要求の通知後、解除指示を受け取るまで、ハンズオン要求の通知を継続し、その解除指示を受け取ると、ハンズオン要求の通知を停止する。さらに、保持要求部32は、手放し警告の強度が第2の強度に変更されてから所定の猶予期間を過ぎても停止指示が通知されない場合、車両10を緊急停車させる緊急停車警告を、通知機器5を介してドライバに通知する。
【0040】
保持要求部32は、手放し警告の強度が強くなるほど、例えば、通知機器5が有するスピーカからの警告音声の音量を大きくする。あるいは、保持要求部32は、手放し警告の強度が強くなるほど、通知機器5が有する表示装置または光源による警告表示の輝度を大きくする。あるいはまた、保持要求部32は、手放し警告の強度が強くなるほど、通知機器5が有する表示装置または光源による警告表示の点滅間隔を短くしてもよい。さらに、保持要求部32は、手放し警告の強度が強くなるほど、通知機器5が有する振動子の振動を強くしてもよい。さらにまた、通知機器5が複数の機器を有する場合、保持要求部32は、手放し警告の強度が強くなるほど、その警告を行う機器の数を増加させてもよい。
【0041】
保持判定部33は、ドライバがステアリングを保持したか否かを判定する。例えば、タッチセンサ4から検知信号を受信すると、保持判定部33は、ドライバがステアリングを保持したと判定する。あるいは、保持判定部33は、ドライバ画像に基づいて、ドライバがステアリングを保持したか否かを判定してもよい。この場合、保持判定部33は、ドライバ画像からドライバの手及びステアリングを検出するように予め学習された識別器にドライバ画像を入力することで、ドライバの手及びステアリングを検出する。そして保持判定部33は、検出されたドライバの手の位置が、検出されたステアリングの位置と重なっている場合、ドライバがステアリングを保持したと判定する。なお、保持判定部33は、ドライバの手及びステアリングを検出するための識別器として、判定部31が顔領域の検出に使用する識別器と同様の識別器を使用することができる。
【0042】
なお、保持判定部33は、タッチセンサ4から検知信号を所定期間以上継続して受信すると、ドライバがステアリングを保持したと判定してもよい。あるいは、保持判定部33は、直近の所定期間内に得られた複数のドライバ画像のそれぞれについて、検出されたドライバの手の位置が、検出されたステアリングの位置と重なっている場合、ドライバがステアリングを保持したと判定してもよい。
【0043】
保持判定部33は、ドライバがステアリングを保持したと判定すると、その判定結果を警告制御部34及び車両制御部35へ通知する。
【0044】
警告制御部34は、手放し警告の通知を継続するか否かについての制御を実行する。具体的に、警告制御部34は、保持判定部33からドライバがステアリングを保持したとの判定結果を受け取ると、停止指示及び解除指示を保持要求部32へ通知する。これにより、手放し警告及びハンズオン要求の通知が停止される。また、警告制御部34は、ハンズオン要求が通知された後において、判定部31から警告条件が満たされなくなったとの判定結果を受け取ると、解除指示を保持要求部32へ通知する。
【0045】
さらに、手放し警告の強度が第1の強度のときに警告条件が満たされなくなったとの判定結果が通知されると、警告制御部34は、ドライバがステアリングを保持したとの判定結果を受け取っていなくても、停止指示を保持要求部32へ通知する。
【0046】
一方、手放し警告の強度が第1の強度よりも強い第2の強度以上になっている場合に警告条件が満たされなくなったとの判定結果が判定部31から通知されても、警告制御部34は、保持判定部33からドライバがステアリングを保持したとの判定結果を受け取るまで、保持要求部32に対して停止指示を通知しない。警告制御部34は、解除指示についても、ドライバがステアリングを保持したとの判定結果を受け取るまで通知しないようにしてもよい。したがって、手放し警告の強度が第2の強度以上になると、ドライバがステアリングを保持するまで、手放し警告の通知は停止されない。このように、警告の強度に応じて、警告を停止するためにドライバがステアリングを保持することが必須となるか否かが切り替えられるので、警告制御部34は、ドライバの利便性を損ねることなく、ドライバがハンズオン要求を無視することを防止することができる。
【0047】
車両制御部35は、車両10に対して適用される自動運転制御のレベルに応じて車両10を自動運転制御する。車両10に適用される自動運転制御のレベルは、Society of Automotive Engineers(SAE)の定義によるレベル2といった、手放し運転が可能なレベルとすることができる。また、車両制御部35は、手放し警告の強度が第2の強度に変更されてから所定の猶予期間を経過しても、ドライバがステアリングを保持したとの判定結果が保持判定部33から通知されない場合、Emergency Driving Stop System(EDSS)機能を動作させる。すなわち、車両制御部35は、車両10を所定の徐行速度まで減速し、その後、車両10を停車させるよう制御する。そのために、車両制御部35は、予め設定される減速度となるようにアクセル開度またはブレーキ量を設定する。そして車両制御部35は、設定されたアクセル開度に従って、エンジンまたはモータといった車両10の動力機構を制御する。さらに、車両制御部35は、設定されたブレーキ量に応じた制御信号を車両10のブレーキへ出力する。そして車両制御部35は、車両10が停車すると、車両10が停車した状態を維持するよう、車両10の各部を制御する。すなわち、車両制御部35は、車両10が動かないブレーキ量となるようにブレーキを制御する。さらに、車両制御部35は、シフトポジションがパーキングポジションとなるようにシフト制御機構を制御してもよく、パーキングブレーキを作動させてもよい。
【0048】
このように、手放し警告の強度が第2の強度に変更されてから所定の猶予期間が経過してもドライバがステアリングを保持しない場合に車両制御部35が車両10を緊急停車させることで、プロセッサ23は、ハンズオン要求を無視することが不利益になることをドライバに学習させることができる。そのため、プロセッサ23は、ドライバがハンズオン要求を無視することをより効果的に防止することができる。
【0049】
なお、一旦EDSS機能が動作すると、プロセッサ23は、イグニッションスイッチがオフにされるまで、車両10に適用可能な自動運転制御のレベルを、ドライバがステアリングを保持することが要求されるレベルに制限してもよい。
【0050】
図4(a)~図4(c)は、それぞれ、手放し警告の通知の遷移を説明する図である。図4(a)~図4(c)において、横軸は経過時間を表す。さらに、チャート401~404は、それぞれ、警告条件の充足状況、ステアリング保持に関するドライバの状態、ハンズオン要求の通知状態、及び、警告の通知状態を表す。図4(a)の例では、ハンズオン要求の通知開始後において警告条件が満たされたまま、ドライバがステアリングを保持しない状態が継続する。チャート401及び403に示されるように、時刻t0において、警告条件が満たされ、ハンズオン要求の通知が開始される。その後、チャート404に示されるように、手放し警告の通知が第1の強度(弱警告)で開始される。そして時刻t1にて、手放し警告の強度が第1の強度から第2の強度(強警告)に変更される。チャート402に示されるように、その後もドライバがステアリングを保持しないため、時刻t1から猶予期間が経過する時刻t2になると、通知される警告が手放し警告から緊急停車警告に切り替わり、その後、車両10が緊急停車される。
【0051】
図4(b)の例では、手放し警告の強度が第1の強度(弱警告)のうちに警告条件が解消される。この例でも、チャート401及び403に示されるように、時刻t0においてハンズオン要求の通知が開始される。さらに、チャート404に示されるように、手放し警告の通知が第1の強度で開始される。そしてチャート402に示されるように、ドライバはステアリングから手を離した状態が継続する。ただし、この例では、チャート401に示されるように、切り替え時間が経過する前の時刻taにおいて、警告条件が解消される。その結果、時刻ta以降、ハンズオン要求及び手放し警告の通知が停止される。
【0052】
図4(c)の例では、手放し警告の強度が第2の強度(強警告)に変更されてから警告条件が解消される。この例でも、チャート401及び403に示されるように、時刻t0においてハンズオン要求の通知が開始される。また、チャート404に示されるように、手放し警告の通知が第1の強度で開始される。さらに、時刻t1にて、手放し警告の強度が第1の強度から第2の強度に変更される。その後、時刻tbにおいて、警告条件が解消される。しかし時刻t1以降では、チャート402及び404に示されるように、警告条件が解消されても、ドライバがステアリングを保持しない限り、手放し警告の通知は継続される。そしてドライバがステアリングを保持しないまま時刻t2になると、通知される警告が手放し警告から緊急停車警告に切り替わり、その後、車両10が緊急停車される。
【0053】
図5は、車両制御処理の動作フローチャートである。プロセッサ23は、下記の動作フローチャートにしたがって車両制御処理を実行すればよい。
【0054】
判定部31は、警告条件が満たされるか否か判定する(ステップS101)。警告条件が満たされない場合(ステップS101-No)、車両制御部35は、車両10に適用される自動運転制御のレベルに従って車両10の制御を継続する。一方、警告条件が満たされる場合(ステップS101-Yes)、保持要求部32は、通知機器5を介してハンズオン要求をドライバに通知する(ステップS102)。さらに、保持要求部32は、ハンズオン要求の通知開始から所定時間を経過すると、通知機器5を介して手放し警告を第1の強度にてドライバに通知する(ステップS103)。
【0055】
その後、保持判定部33は、ドライバがステアリングを保持したことを検出したか否か判定する(ステップS104)。ドライバがステアリングを保持したことが検知されると(ステップS104-Yes)、警告制御部34は、保持要求部32に対して手放し警告及びハンズオン要求の通知を停止させる(ステップS105)。その後、車両制御部35は、車両10に適用される自動運転制御のレベルに従って車両10の制御を継続する。
【0056】
一方、ドライバがステアリングを保持したことが検知されない場合(ステップS104-No)、保持要求部32は、手放し警告の通知開始から切り替え時間が経過したか否か判定する(ステップS106)。切り替え時間が経過していれば(ステップS106-Yes)、保持要求部32は、手放し警告の強度を第1の強度から第2の強度に変更する(ステップS107)。さらに、プロセッサ23は、手放し警告の強度が第2の強度に変更されてから猶予期間が経過したか否か判定する(ステップS108)。猶予期間が経過していない場合(ステップS108-No)、プロセッサ23は、ステップS104以降の処理を繰り返す。
【0057】
猶予期間が経過していれば(ステップS108-Yes)、保持要求部32は、通知機器5を介して緊急停車警告をドライバに通知する(ステップS109)。その後、車両制御部35は、車両10を停車させるよう、車両10を制御する(ステップS110)。
【0058】
また、ステップS106において、切り替え時間が経過していなければ(ステップS106-No)、判定部31は、警告条件が解消したか否か判定する(ステップS111)。警告条件が解消していれば(ステップS111-Yes)、プロセッサ23は、ステップS105の処理を実行する。一方、警告条件が解消していなければ(ステップS111-No)、プロセッサ23は、ステップS104以降の処理を実行する。
【0059】
以上に説明してきたように、この車両制御装置は、ドライバがハンズオン要求を無視することを防止することができる。
【0060】
変形例によれば、警告制御部34は、手放し警告の強度が第1の強度のうちに警告条件が満たされなくなり、ドライバがステアリングを保持せずに手放し警告が解除された自動解除回数をカウントしてもよい。そして、自動解除回数が一定以上になると、保持要求部32は、手放し警告の強度を最初から第2の強度に設定してもよい。したがって、この場合、手放し警告の通知開始直後から、ドライバがステアリングを保持しない限り、手放し警告の通知は継続される。
【0061】
変形例によれば、保持要求部32は、手放し警告の通知開始からの経過時間によらず、手放し警告の強度を一定に設定してもよい。この場合、ハンズオン要求が通知された後において、警告制御部34は、保持判定部33からドライバがステアリングを保持したとの判定結果を受け取らない限り、ハンズオン要求を通知するための警告条件が満たされなくなっても、手放し警告を停止する指示を通知しないようにしてもよい。したがって、この場合、上記の実施形態における、手放し警告の強度が第2の強度である場合と同様に、ハンズオン要求の通知後に警告条件が満たされなくなっても、ドライバがステアリングを保持するまで手放し警告の通知が継続される。
【0062】
上記の実施形態または変形例による、ECU6のプロセッサ23の機能を実現するコンピュータプログラムは、半導体メモリ、磁気記録媒体または光記録媒体といった、コンピュータ読取可能な可搬性の記録媒体に記録された形で提供されてもよい。
【0063】
以上のように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0064】
1 車両制御システム
10 車両
2 カメラ
3 ドライバモニタカメラ
4 タッチセンサ
5 通知機器
6 電子制御装置(ECU)
21 通信インターフェース
22 メモリ
23 プロセッサ
31 判定部
32 保持要求部
33 保持判定部
34 警告制御部
35 車両制御部
図1
図2
図3
図4
図5