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特開2024-172874温度制御装置及び温度制御装置を備える画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172874
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】温度制御装置及び温度制御装置を備える画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/20 20060101AFI20241205BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G03G21/20
G03G15/20 555
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090901
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 毅
【テーマコード(参考)】
2H033
2H270
【Fターム(参考)】
2H033AA18
2H033BA25
2H033BA30
2H033BB17
2H033CA02
2H033CA23
2H033CA27
2H270KA35
2H270LA24
2H270LA25
2H270LA98
2H270LA99
2H270LD05
2H270LD09
2H270MA33
2H270MA35
2H270RB09
2H270ZC03
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】温度推定値とセンサ温度との相関関係から障害の有無を判断し、定着器の温度上昇を防止する適正な目標温度に補正する温度制御を行う温度制御装置及び温度制御装置を備える画像形成装置を提供する。
【解決手段】温度制御装置は、定着器のヒータから熱が伝播する温度制御対象が予め設定された目標温度になるように経時に推定された温度推定値に基づき、前記ヒータに供給される電力を制御する装置であって、温度センサと第1記憶回路と第2記憶回路と温度差検出回路と目標温度補正回路とを備える。温度センサは、ヒータの温度を検出し、第1記憶回路は温度推定値を記憶し、第2記憶回路は、センサ温度を記憶する。温度差検出回路は、第1記憶回路から読み出された温度推定値と、第2記憶回路から読み出されたヒータの温度との温度差から実温度上昇分を算出し、温度補正回路は、実温度上昇分に応じて目標温度を下げる制御を行う。
【選択図】 図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着器のヒータから熱が伝播する温度制御対象が予め設定された目標温度になるように経時に推定された温度推定値に基づき前記ヒータに供給される電力を制御する温度制御装置であって、
前記ヒータの温度を検出する温度センサと、
任意時間に取得された前記温度推定値を記憶する第1記憶回路と、
前記温度センサが検出したセンサ温度を記憶する第2記憶回路と、
前記第1記憶回路から読み出された前記温度推定値と、前記第2記憶回路から読み出された前記ヒータの温度との温度差から実温度上昇分を算出する温度差検出回路と、
前記実温度上昇分に応じて、目標温度を下げる制御を行う目標温度補正回路と、を具備する温度制御装置。
【請求項2】
前記目標温度補正回路は、前記ヒータの温度上昇時の正常な温度制御対象の温度と現在の温度制御対象の実温度との差分からなる前記実温度上昇分に相関付けられた複数の制御補正温度を有し、現在設定される目標温度から前記実温度上昇分に応じた前記制御補正温度を減算して補正された補正目標温度を生成する、請求項1に記載の温度制御装置。
【請求項3】
前記温度差検出回路は、前記温度推定値と前記センサ温度との差分からなる第1温度上昇分と、前記実温度上昇分とが相関付けられた温度特性を有し、取得した前記温度推定値と前記センサ温度に基づき、前記温度特性から前記実温度上昇分を推定する、請求項1に記載の温度制御装置。
【請求項4】
前記温度制御装置は、さらに、
前記ヒータへの通電に基づき、前記ヒータの熱容量及び、前記定着器の熱抵抗から前記温度制御対象の前記温度推定値を推定する温度推定回路を具備する、請求項1に記載の温度制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の前記温度制御装置を具備する画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4の何れかに記載の温度制御装置の各回路による処理をプロセッサに実行させるプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、温度制御装置及び温度制御装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークプレイス等に置かれる画像形成装置は、トナー像が転写された記録媒体に熱及び、圧力を与えることにより、記録媒体にトナー像を定着させる定着器を備える。この定着器は、ヒートローラ(定着部材)の表面の温度を検出する温度センサを有している。定着器は、温度センサの検出信号に基づいて、熱部材(ランプまたはIHヒータ等)に供給する電力量を増減させることにより、ヒートローラの表面温度が目標値となるように制御する。
【0003】
定着器は、温度センサとヒートローラの間に異物の挟み込み又は、温度センサにトナーの汚れが付着した場合、温度センサ自体は正常であっても、正確な温度が検知できない事態が生じる。温度センサが正確な温度を検知できない場合、ヒートローラの温度と温度センサが検出する温度に差が生じ、不適切な目標値が設定されて温度が制御される。その結果、定着器の温度が上昇することで高温オフセット及びサービスコールの発生を招き、一時的に画像形成装置が稼働できない状態が生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-142349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、算出した温度推定値とセンサ温度との相関関係から検出温度の障害を判断し、定着器の温度上昇を防止するように適正な目標温度に補正する温度制御を行う温度制御装置及び温度制御装置を備える画像形成装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る温度制御装置は、定着器のヒータから熱が伝播する温度制御対象が予め設定された目標温度になるように経時に推定された温度推定値に基づき、前記ヒータに供給される電力を制御する温度制御装置であって、前記ヒータの温度を検出する温度センサと、任意時間に取得された前記温度推定値を記憶する第1記憶回路と、前記温度センサが検出したセンサ温度を記憶する第2記憶回路と、前記第1記憶回路から読み出された前記温度推定値と、前記第2記憶回路から読み出された前記ヒータの温度との温度差から実温度上昇分を算出する温度差検出回路と、前記実温度上昇分に応じて目標温度を下げる制御を行う温度補正回路と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態に係る画像形成装置の全体的な構成例を概念的に示す図である。
図2図2は、温度制御装置の構成例を示すブロック図である。
図3図3は、定着器におけるヒータユニットの構成例を示す図である。
図4図4は、WAE制御を説明するためのフローチャートである。
図5図5は、センタに隙間を空けた場合の実測の温度と温度推定値の温度を示す図である。
図6図6は、サイドに隙間を空けた場合の実測の温度と温度推定値の温度を示す図である。
図7図7は、センタの温度推定値WAE、ヒートローラの実温度及び、センサ温度の温度特性を示す図である。
図8図8は、サイドの温度推定値WAE、ヒートローラの実温度及び、センサ温度の温度特性を示す図である。
図9図9は、センタの温度特性に基づく温度上昇分の相関関係を示す図である。
図10図10は、サイドの温度特性に基づく温度上昇分の相関関係を示す図である。
図11図11は、ヒートローラの実温度上昇分に対する制御補正温度の設定を示す図である。
図12図12は、ヒートローラの実温度上昇分と、第1温度上昇分センタと制御補正温度との相関関係を示す図である。
図13図13は、ヒートローラの実温度上昇分と、第1温度上昇分サイドと制御補正温度との相関関係を示す図である。
図14図14は、定着器の温度制御について説明するためのフローチャートである。
図15図15は、定着器の第2の構成例を示す図である。
図16図16は、第2の構成例の定着器におけるヒータユニットの構成例を示す図である。
図17図17は、定着器の第3の構成例を示す図である。
図18図18は、第3の構成例の定着器におけるヒータユニットの構成例を示す図である。
図19図19は、定着器の第4の構成例を示す図である。
図20図20は、第4の構成例定着器におけるヒータユニットの構成例を示す図である。
図21図21は、定着器の第5の構成例を示す図である。
図22図22は、第5の構成例の定着器におけるヒータユニットの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態に係る温度制御装置及び、画像形成装置について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る画像形成装置の全体的な構成例を概念的に示す図、図2は、温度制御装置の構成例を示すブロック図である。
【0009】
一実施形態の温度制御装置101は、ヒータ通電制御回路14と温度制御回路25と協働して画像形成装置1に搭載される定着器21の温度制御を、温度センサ74が検出した定着器21の検出温度(センサ温度)とWAE(Weighted Average control with Estimate temperature)制御で求めた温度推定値WAEとの差を用いるWAE制御による温度制御(第1温度制御)又は、温度センサ74が検出したセンサ温度に対して相関を持つ補正値により補正した目標値による制御温度(第2温度制御)の何れかを選択して、定着器21の温度制御を行う。
【0010】
WAE制御は、後述するように、熱CR回路として温度制御対象の部材温度をシミュレーションする技術であり、加熱対象のヒートローラの熱容量(C)や定着器の熱抵抗(R)、定着器への投入エネルギ-等から温度制御対象となるヒートローラの表面温度を推定(計算)した定着器の温度推定値WAEを用いた温度制御である。
【0011】
図1に示す画像形成装置1は、ワークプレイス等に配置される、例えば、印刷用紙等の記録媒体を搬送しながら画像形成等の各種処理を行うマルチファンクションプリンタ(MFP)である。または、画像形成装置1は、記録媒体を搬送しながら画像形成等の各種処理を行う、LEDアレイを走査する固体走査方式のプリンタ(例えばLEDプリンタ)である。これらの画像形成装置1は、例えば、トナーカートリッジからトナーを受け取り、受け取ったトナーにより記録媒体に画像を形成する構成を備えている。トナーは、単色のトナーであってもよいし、シアン、マゼンダ、イエロー及び、ブラック等の複数色のカラートナーであってもよい。また、トナーは、印刷後に熱が加えられた場合、消色する消色トナーであってもよい。
【0012】
図1に示すように、画像形成装置1は、筐体11、通信インタフェース12、システムコントローラ13、ヒータ通電制御回路14、表示部15、操作インタフェース16、複数の用紙トレイ17、排紙トレイ18、搬送部19、画像形成部20、定着器21、主電源スイッチ24及び、温度制御回路25を備える。
【0013】
筐体11は、画像形成装置1の本体である。筐体11は、通信インタフェース12、システムコントローラ13、表示部15、操作インタフェース16、複数の用紙トレイ17、排紙トレイ18、搬送部19、画像形成部20、定着器21、ヒータ通電制御回路14及び、温度制御回路25を収容する。後述する温度制御装置101は、ヒータ通電制御回路14、温度制御回路25及び、定着器21の温度センサ74を用いて構成される。
【0014】
まず、画像形成装置1の制御系の構成について説明する。
通信インタフェース12は、外部の周辺機器(上位装置等)との通信を可能にする接続機器である。通信インタフェース12は、例えば、LANコネクタ等による有線接続のためのネットワーク接続用端子を備える。さらに、通信インタフェース12は、Bluetooth(登録商標)又は、Wi-fi(登録商標)等の規格に従って他の機器と無線通信を行う機能を有してもよい。
【0015】
システムコントローラ13は、画像形成装置1の制御を行う。システムコントローラ13は、例えば、プロセッサ22及び、メモリ23を備える。
メモリ23は、ROM(Read Only Memory)等の読み出し専用の不揮発性メモリ、または、フラッシュROM、SSD(Solid State Drive)及び、HDD(Hard Disk Drive)等の随時書き込み及び、読み出しが可能な不揮発性メモリと、RAM(Random Access Memory)等の随時書き込み及び、読み出しが可能な揮発性メモリとが適用でき、これらのうちで適宜、組み合わせて用いる。メモリ23は、プログラム及び、プログラムで用いられるデータ等を記憶する。また、メモリ23は、ワーキングメモリとしても機能する。即ち、メモリ23は、プロセッサ22の処理中のデータ及び、プロセッサ22が実行するプログラム等を一時的に格納する。
【0016】
プロセッサ22は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算素子を含む演算回路である。プロセッサ22は、メモリ23に格納されているプログラムを実行することにより、種々の動作を実行させる制御部として機能する。また、プロセッサ22は、メモリ23に記憶されているデータを用いて種々の演算処理及び、判断に関わる処理を実行する。
【0017】
さらに、例えば、プロセッサ22は、通信インタフェース12を介して外部機器から取得した画像に基づいて、印刷ジョブを生成する。プロセッサ22は、生成した印刷ジョブを、メモリ23に格納する。この印刷ジョブは、記録媒体Pに形成する画像を示す画像データを含む。画像データは、1枚の記録媒体Pに画像を形成するためのデータであってもよいし、複数枚の記録媒体Pに画像を形成するためのデータであってもよい。さらに、印刷ジョブは、カラー印刷かモノクロ印刷かを示す情報を含む。またさらに、印刷ジョブは、印刷部数(ページセット数)、1部当たりの印刷枚数(ページ数)等の情報を含んでいてもよい。
【0018】
また、プロセッサ22は、生成した印刷ジョブに基づいて、搬送部19、画像形成部20及び、定着器21の動作を制御するための印刷制御情報を生成する。印刷制御情報は、通紙のタイミングを示す情報を含む。プロセッサ22は、印刷制御情報をヒータ通電制御回路14に送信する。
【0019】
さらに、プロセッサ22は、メモリ23に記憶されているプログラムを実行することにより、搬送部19及び、画像形成部20の動作を制御するコントローラ(エンジンコントローラ)として機能する。即ち、プロセッサ22は、搬送部19による記録媒体Pの搬送の制御及び、画像形成部20による記録媒体Pへの画像の形成の制御等を制御する。さらにプロセッサ22は、ヒータ通電制御回路14及び、温度制御回路25に代わって、ヒータ通電制御回路14及び、温度制御回路25による制御動作と同等の機能をプログラム処理により実行して、定着器21の温度制御を行うことも可能である。
【0020】
なお、画像形成装置1は、エンジンコントローラとシステムコントローラ13とを個別に備えてもよい。この場合、エンジンコントローラが、搬送部19による記録媒体Pの搬送の制御及び、画像形成部20による記録媒体Pへの画像の形成の制御等を行う。また、この場合、システムコントローラ13は、エンジンコントローラに対して、制御動作するために必要な情報を供給する。
【0021】
また、画像形成装置1は、交流電源ACの交流電圧を用いて、画像形成装置1内の各構成部に直流電圧を供給するための電力変換回路を含んでいる。この電力変換回路は、プロセッサ22及び、メモリ23の動作に必要な直流電圧をシステムコントローラ13に供給する。また、電力変換回路は、画像形成に必要な直流電圧を画像形成部20に供給する。また、電力変換回路は、記録媒体の搬送に必要な直流電圧を搬送部19に供給する。また、電力変換回路は、定着器21のヒータ73の駆動用の直流電圧をヒータ通電制御回路14に供給する。ヒータ73は、発熱体であり、例えば、ランプヒータ等が適用される。
【0022】
ヒータ通電制御回路14は、電力PCを生成し、定着器21のヒータ73に供給する。このヒータ通電制御回路14は、本実施形態の温度制御装置101の構成要素に含まれる。ヒータ通電制御回路14の詳細な説明については後述する。
また、温度制御回路25は、後述するヒータ通電制御回路14に対して、定着器21の目標温度を補正する制御を行う。
【0023】
表示部15は、システムコントローラ13から入力される映像信号に応じて画面を表示するディスプレイを備える。また、システムコントローラ13に代わって、グラフィックコントローラ等を用いてもよい。例えば、表示部15のディスプレイには、画像形成装置1の種々の設定のための画面が表示される。
主電源スイッチ24は、ON/OFF操作により、画像形成装置1を駆動するための電力の供給/遮断を行うスイッチである。主電源スイッチ24のON操作により、画像形成装置1が起動し、OFF操作により画像形成装置1が駆動を停止する。また、この主電源スイッチ24のON/OFF操作により、定着器21も起動/停止する。
【0024】
操作インタフェース16は、以下に記載する操作部材に接続されている。操作インタフェース16は、操作部材の操作に応じた操作信号をシステムコントローラ13に供給する。操作部材は、例えば、タッチセンサ、テンキー、用紙フィードキー、種々のファンクションキー又は、キーボード等である。タッチセンサは、ある領域内において指定された位置を示す情報を取得する。タッチセンサは、表示部15と一体にタッチパネルとして構成されることにより、表示部15に表示された画面上のタッチされた位置を示す信号をシステムコントローラ13に入力する。
【0025】
複数の用紙トレイ17は、筐体11に着脱可能に装着され、それぞれのカセット単位で同一サイズ又は、異なるサイズの記録媒体Pを収容するカセットである。用紙トレイ17は、記録媒体Pを搬送部19に供給する。また、排紙トレイ18は、画像形成装置1から排出された記録媒体Pを支持するトレイである。
【0026】
次に、画像形成装置1の定着器21におけるヒータユニットについて説明する。
図3は、定着器21におけるヒータユニットの構成例を示す図である。
このヒータユニットにおけるヒータ73は、ヒータ制御回路14から供給された電力によって熱を発する複数の熱源としての発熱体で構成する。図1及び図3に示す第1の構成例の定着器21におけるヒータ73は、2つの熱源(発熱体)としてのセンタヒータ73aとサイドヒータ73bとを有する。センタヒータ73a及びサイドヒータ73bは、例えば、ハロゲンヒータ、ランプヒータ、IHヒータ及び、抵抗加熱ヒータ等を用いることができる。
【0027】
この定着器21におけるヒータ73は、センタヒータ73aとサイドヒータ73bとの2つのヒータで構成する。センタヒータ73aは、ヒートローラ71における回転軸方向の中央部(センタ領域C)を加熱する。サイドヒータ73bは、ヒートローラ71における回転軸方向の中央部以外の周辺部(サイド領域S)を加熱する。印刷媒体Pは、図3に示す搬送方向Fへ搬送される。例えば、センタ領域Cとサイド領域の長さとは、印刷媒体Pとして使用する媒体のサイズに応じて設定しても良い。
【0028】
センタヒータ73a及びサイドヒータ73bは、それぞれシステムコントローラ13の制御によって供給される電力によって発熱する。センタヒータ73a及びサイドヒータ73bの消費電力は、例えば、600Wである。
【0029】
システムコントローラ13は、ヒートローラ71の回転軸方向(印刷媒体Pの搬送方向F)に幅の狭い印刷媒体Pに対して定着処理を実行する場合、ヒートローラ71のセンタ領域Cを加熱する。システムコントローラ13は、ヒートローラ71のセンタ領域Cを加熱する場合、ヒータ制御回路14によるセンタヒータ73aへの電源供給を行い、サイドヒータ73bへの電源供給を停止する。
【0030】
また、システムコントローラ13は、ヒートローラ71の回転軸方向(印刷媒体Pの搬送方向F)に幅が広い印刷媒体Pに対して定着処理を実行する場合、ヒートローラ71の全体(センタ領域Cとサイド領域Sとの両方)を加熱する。システムコントローラ13は、ヒートローラ71の全体を加熱する場合、ヒータ制御回路14によりセンタヒータ73aとサイドヒータ73bとの両方を作動させる。
【0031】
温度センサ74a及び温度センサ74bは、ヒートローラ71の表面に接触する接触部(検知部)を有し、接触部が接触する部位の温度を検出する。温度センサ74a及び温度センサ74bは、例えば、サーミスタである。温度センサ74a及び温度センサ74bは、ヒートローラ71の回転軸と平行に配列される。図3に示す第1の構成例において、温度センサ74aは、ヒートローラ71の回転軸方向におけるセンタ領域(回転軸方向に3分割した場合の中央部分)Cの温度を検知する。温度センサ74bは、ヒートローラ71の回転軸方向におけるサイド領域(回転軸方向に3分割した場合の何れかのサイド部分)Sの温度を検知する。
【0032】
各温度センサ74a、74bは、それぞれヒートローラ71の表面に接触する接触部(検知部)を有する。温度センサ74aは、検知部がヒートローラ71のセンタ領域Cの表面に接触することによりヒートローラ71のセンタ領域Cの温度を検知する。温度センサ74bは、検知部がヒートローラ71のサイド領域Sの表面に接触することにより、ヒートローラ71のサイド領域Sの温度を検知する。
【0033】
各温度センサ74a、74bは、温度検出結果を示す温度検出結果信号を温度制御回路25及びヒータ通電制御回路14に供給する。ヒータ通電制御回路14は、ヒートローラ71のセンタ領域Cを加熱する場合、温度センサ74aが検知する温度に基づいてセンタヒータ73aを作動させる。システムコントローラ13は、ヒートローラ71全体を加熱する場合、温度センサ74a、74bが検知する温度に基づいてセンタヒータ73aとサイドヒータ73bとを作動させる。
【0034】
次に、画像形成装置1の記録媒体Pを搬送する構成について説明する。
搬送部19は、画像形成装置1内で記録媒体Pを搬送する機構である。図1に示すように、搬送部19は、複数の搬送路を備える。例えば、搬送部19は、給紙搬送路31及び、排紙搬送路32を備える。
【0035】
給紙搬送路31及び、排紙搬送路32は、それぞれ複数のモータ、複数のローラ及び、複数のガイドにより構成される。複数のモータは、システムコントローラ13の制御に基づいて、軸を回転させることにより、軸の回転に従動するローラを回転させる。複数のローラは、回転することにより記録媒体Pを移動させる。複数のガイドは、搬送時の記録媒体Pの斜行等を防止する。
【0036】
給紙搬送路31は、各用紙トレイ17からピックアップローラ33により記録媒体Pを取り込み、取り込んだそれぞれの記録媒体Pを画像形成部20に供給する。
排紙搬送路32は、画像が形成された記録媒体Pを、筐体11から排出する搬送路である。排紙搬送路32によって排出された記録媒体Pは、排紙トレイ18に収容される。
【0037】
次に、画像形成部20について説明する。
画像形成部20は、プロセッサ22により生成された印刷ジョブに基づいて、記録媒体Pに画像を形成する。画像形成部20は、複数のプロセスユニット41、複数の露光器42及び、転写機構43を備える。画像形成部20は、プロセスユニット41毎に、露光器42を備える。なお、複数のプロセスユニット41及び複数の露光器42は、それぞれ同じ構成である。
【0038】
まず、プロセスユニット41について説明する。
プロセスユニット41は、異なる色のトナーを供給するトナーカートリッジが接続され、トナー像を形成する。複数のプロセスユニット41は、トナーの色ごとに設けられ、例えば、シアン、マゼンダ、イエロー及び、ブラック等のカラートナーにそれぞれ対応する。トナーカートリッジは、トナー収容容器及び、トナー送出機構を備える。トナー収容容器は、収容するトナーを供給する容器である。トナー送出機構は、トナー収容容器内のトナーを送り出すスクリュー等により構成される機構である。
【0039】
以下、1組のプロセスユニット41及び、露光器42を代表例として説明する。
プロセスユニット41は、感光ドラム51、帯電チャージャ52及び、現像器53を備える。
感光ドラム51は、円筒状のドラムと、ドラムの外周面に形成された感光層とで構成される感光体である。感光ドラム51は、ギヤ及びベルト等を用いて構成される駆動機構によって一定の速度で回転する。
【0040】
帯電チャージャ52は、感光ドラム51の表面を一様に帯電させる。例えば、帯電チャージャ52は、帯電ローラを用いて、感光ドラム51に電圧(現像バイアス電圧)を印加することにより、感光ドラム51を一様な負極性の電位(コントラスト電位)に帯電させる。帯電ローラは、感光ドラム51に対して所定の圧力を加えた状態で、感光ドラム51の回転に従動して回転する。
【0041】
現像器53は、トナーを感光ドラム51に付着させる装置である。現像器53は、現像剤容器、撹拌機構、現像ローラ、ドクターブレード及び、オートトナーコントロール(ATC)センサ等を備える。現像剤容器は、トナーカートリッジから送り出されたトナーを受け取り、収容する容器である。現像剤容器内には、予めキャリアが収容されている。トナーカートリッジから送り出されたトナーは、撹拌機構によってキャリアと撹拌されることにより、トナーとキャリアとが混合された現像剤を構成する。キャリアは、現像器53の製造時に現像剤容器内に収容される。
【0042】
これらのうち、現像ローラは、現像剤容器内で回転し、表面に現像剤を付着させる。ドクターブレードは、現像ローラの表面と所定の間隔を隔てて配置された部材である。ドクターブレードは、回転する現像ローラの表面に付着した現像剤の頂部側を部分的に除去する。これにより、現像ローラの表面に、ドクターブレードと現像ローラの表面との間隔に応じた一定の厚さの現像剤の層が形成される。
【0043】
ATCセンサは、例えば、コイルを有し、コイルに生じた電圧値を検出する磁束センサである。ATCセンサの検出電圧は、現像剤容器内のトナーからの磁束の密度により変化する。即ち、システムコントローラ13は、ATCセンサの検出電圧に基づき、現像剤容器に残っているトナーのキャリアに対する濃度比(トナー濃度比)を判断する。システムコントローラ13は、トナー濃度比に基づいて、トナーカートリッジの送出機構を駆動するモータを動作させ、トナーカートリッジから現像器53の現像剤容器にトナーを送り出させる。
【0044】
次に、露光器42について説明する。
露光器42は、複数の発光素子を備える。露光器42は、発光素子から光を、帯電した感光ドラム51に照射することにより、感光ドラム51上に潜像を形成する。発光素子は、例えば発光ダイオード(LED)等である。1つの発光素子は、感光ドラム51上の1点に光を照射するように構成されている。複数の発光素子は、感光ドラム51の回転軸と平行な方向である主走査方向に配列されている。
【0045】
露光器42は、主走査方向に配列された複数の発光素子により感光ドラム51上に光を照射することにより、感光ドラム51上に1ライン分の潜像を形成する。さらに、露光器42は、回転する感光ドラム51に連続して光を照射することにより、複数ラインの潜像を形成する。
【0046】
上述した構成のプロセスユニット41は、帯電チャージャ52により帯電された感光ドラム51の表面に、露光器42から光が照射されると、静電潜像が形成される。さらに、現像ローラの表面に形成された現像剤の層が、感光ドラム51の表面に近接すると、現像剤に含まれるトナーが、感光ドラム51の表面に形成された潜像に付着する。これにより、感光ドラム51の表面にトナー像が形成される。
【0047】
次に、転写機構43について説明する。
転写機構43は、感光ドラム51の表面に形成されたトナー像を、記録媒体Pに転写する。転写機構43は、例えば、1次転写ベルト61、2次転写対向ローラ62、複数の1次転写ローラ63及び、2次転写ローラ64を備える。
【0048】
1次転写ベルト61は、2次転写対向ローラ62及び、複数の巻付ローラに巻き付けられた無端ベルトである。1次転写ベルト61は、内側の面(内周面)が2次転写対向ローラ62及び、複数の巻付ローラに接触し、外側の面(外周面)がプロセスユニット41の感光ドラム51と対向する。
【0049】
2次転写対向ローラ62は、駆動源としてモータを用いて回転される。2次転写対向ローラ62は、回転することにより、1次転写ベルト61を所定の搬送方向に搬送する。複数の巻付ローラは、自由に回転可能に構成されている。複数の巻付ローラは、2次転写対向ローラ62による1次転写ベルト61の移動に従って回転する。
【0050】
複数の1次転写ローラ63は、それぞれがプロセスユニット41の感光ドラム51に1次転写ベルト61を接触させる。具体的には、複数の1次転写ローラ63は、それぞれ対応するプロセスユニット41の感光ドラム51と、1次転写ベルト61を挟んで対向する位置に設けられている。1次転写ローラ63は、1次転写ベルト61の内周面側に接触し、1次転写ベルト61を感光ドラム51側に変位させる。これにより、1次転写ローラ63は、1次転写ベルト61の外周面を感光ドラム51に接触させる。
【0051】
2次転写ローラ64は、1次転写ベルト61を挟んで2次転写対向ローラ62と対向する位置に設けられる。2次転写ローラ64は、1次転写ベルト61の外周面に接触し、且つ圧力を加える。これにより、2次転写ローラ64と1次転写ベルト61の外周面とが密着する転写ニップが形成される。2次転写ローラ64は、記録媒体Pが通過する際に、転写ニップを通過する記録媒体Pを1次転写ベルト61の外周面に押し当てる。
【0052】
2次転写ローラ64及び、2次転写対向ローラ62は、回転することにより、給紙搬送路31から供給された記録媒体Pを挟んだ状態で搬送する。これにより、記録媒体Pが転写ニップを通過する。
【0053】
前述した構成の転写機構43は、1次転写ベルト61の外周面が感光ドラム51に接触すると、感光ドラムの表面に形成されたトナー像が1次転写ベルト61の外周面に転移する。画像形成部20が複数のプロセスユニット41を備える場合、1次転写ベルト61は、複数のプロセスユニット41の感光ドラム51から外周面にトナー像が転写される。その転写されたトナー像は、1次転写ベルト61によって、2次転写ローラ64と1次転写ベルト61の外周面とが密着した転写ニップまで搬送される。転写ニップに記録媒体Pが存在する場合、1次転写ベルト61の外周面に転写されたトナー像は、転写ニップにおいて、記録媒体Pに転写される。
【0054】
定着器21は、トナー像が転写された記録媒体Pに、トナー像を定着させる。定着器21は、システムコントローラ13と温度制御装置101の制御に基づいて動作する。定着器21は、前述したように、温度センサ74、ヒートローラ71、加圧ローラ72、ヒータユニット76等を有する。ヒートローラ71は、モータ等の駆動源により回転される。ヒータ73は、ヒータ通電制御回路14から供給された電力PCによって発熱する。温度センサ74(74a,74b)は、ヒートローラ71の回転軸と平行に複数配列され、ヒートローラ71の表面の温度を検出する。温度センサ74は、例えば、接触タイプのサーミスタ等のセンサ素子であり、勿論、他の温度センサであってもよい。本実施形態では、温度センサ74から出力された検出信号の設定時間(又は、単位時間)あたりの平均値を1つの検出信号として用いている。
【0055】
次に、図1及び図2を参照して温度制御装置101について説明する。
温度制御装置101は、ヒータ通電制御回路14と、温度制御回路25と、温度センサ74とで構成される。尚、この例において、温度制御回路25は、演算処理回路として独立して設けた例を示しているが、特に限定されるものではなく、画像形成装置1のシステムコントローラ13のプロセッサ22内に設けてもよいし、又は、その他の制御回路内に設けてもよい。ヒータ通電制御回路14には、温度センサ74により検出されたセンサ温度Tdが入力される。
【0056】
ヒータ通電制御回路14は、電力PCを生成し、定着器21のヒータ73に供給する。ヒータ73は、電力PCの電力量に応じて発熱量が調整され、ヒートローラ71の温度を制御する。このヒータ通電制御回路14は、センサ温度Tdと、温度の推定履歴PREVと、通電パルスPsと、に基づいて、定着器21のヒータ73への電力量を調整する。このような制御を、WAE(Weighted Average control with Estimate temperature)制御と称している。ヒータ通電制御回路14は、温度推定回路81、推定履歴保持回路82、高周波成分抽出回路83、係数加算回路84、目標温度出力回路85、差分比較回路86、制御信号生成回路87及び、電源回路88を含む。尚、ヒータ通電制御回路14の温度推定回路81、推定履歴保持回路82、高周波成分抽出回路83、係数加算回路84、目標温度出力回路85、差分比較回路86及び、制御信号生成回路87は、それぞれ電気回路により構成されていてもよいし、ソフトウエア(プログラム)により構成され、コンピュータにより実行させてもよい。
【0057】
温度推定回路81は、ヒートローラ71の表面の温度を推定する温度推定処理を行う。温度推定回路81は、センサ温度Td、推定履歴PREV及び、通電パルスPsに基づいて、温度推定結果ESTを生成する。この温度推定結果ESTは、高周波成分抽出回路83へ出力される。
【0058】
推定履歴保持回路82は、温度推定結果ESTの履歴を保持する。推定履歴保持回路82は、温度推定結果ESTの履歴(過去の温度推定結果EST)である推定履歴PREVを温度推定回路81に出力する。
高周波成分抽出回路83は、温度推定結果ESTの高周波成分を抽出するハイパスフィルタ処理を行う。高周波成分抽出回路83は、抽出した高周波成分を示す信号である高周波成分HPFを係数加算回路84に出力する。
【0059】
係数加算回路84は、温度センサ74からのセンサ温度Tdに対して、補正である係数加算処理を行う。係数加算回路84には、センサ温度Tdと、高周波成分抽出回路83から高周波成分HPFとが入力される。係数加算回路84は、高周波成分HPFに基づいてセンサ温度Tdを補正する。具体的には、係数加算回路84は、高周波成分HPFと予め設定された係数とを乗算して、センサ温度Tdに加算し、温度推定値WAEを算出する。係数加算回路84は、温度推定値WAEを差分比較回路86へ出力する。
【0060】
目標温度出力回路85は、予め設定された目標温度TGTを差分比較回路86に出力する。
差分比較回路86は、差分計算処理を行う。差分比較回路86は、目標温度出力回路85からの目標温度TGTと、係数加算回路84からの推定値WAEとの差分DIFを算出し、制御信号生成回路87に出力する。また、差分比較回路86は、後述する温度制御回路25の目標温度補正回路94からの制御切替信号SWを受けたとき、目標温度TGTと推定値WAEとの差分に代えて、温度センサ74からのセンサ温度Tdと目標温度TGTとの差分DIFを算出し、制御信号生成回路87に出力する。
【0061】
制御信号生成回路87は、差分DIFに基づいて、ヒータ73への通電を制御するためのパルス信号である通電パルスPsを生成する。制御信号生成回路87は、通電パルスPsを電源回路88及び、温度推定回路81に出力する。
【0062】
電源回路88は、通電パルスPsに基づいて、ヒータ73に電力PCを供給する。電源回路88は、供給される直流電圧を用いて、定着器21のヒータ73への通電を行う。電源回路88は、例えば、通電パルスPsに基づき、直流電圧がヒータ73に供給される状態と供給されない状態とを切り替えることにより、ヒータ73に電力PCを供給する。即ち、電源回路88は、通電パルスPsに応じて、定着器21のヒータ73への通電時間を可変する。
【0063】
なお、電源回路88は、定着器21と一体に構成されていてもよい。即ち、ヒータ通電制御回路14は、電力PCをヒータ73に供給するのではなく、通電パルスPsを定着器21のヒータ73の電源回路に供給する構成であってもよい。
【0064】
次に、温度制御回路25は、第1記憶回路91と、第2記憶回路92と、温度差検出回路93と、目標温度補正回路94とで構成される。尚、温度制御回路25を構成する各回路による演算処理は、これらの演算を行うプログラムに置き換えることが可能である。これらのプログラムは、システムコントローラ13が搭載するプロセッサ22によって処理されて、後述する温度制御回路25の各構成部と同等の処理(温度制御及び目標温度補正)を行うことができる。
【0065】
これらの構成において、第1記憶回路91は、後述するWAE制御における係数加算回路84から出力される温度推定値WAEを記憶する。第2記憶回路92は、温度センサ74から検出されたセンサ温度Tdを記憶する。温度差検出回路93は、第1記憶回路91から読み出された温度推定値WAEと、第2記憶回路92から読み出されたヒータ73のセンサ温度Tdとの温度差から実際の温度上昇分を推定する。
【0066】
目標温度補正回路94は、温度上昇分から後述する相関関係に基づき、差分比較回路86に制御切替信号SWを出力すると共に、制御補正温度を推定し、現在の目標温度を降温した補正目標温度Tadを目標温度出力回路85へ出力する。具体的には、目標温度補正回路94は、ヒータ73の温度上昇時の正常な温度制御対象の温度と、制御対象となる現在の温度制御対象の実温度との差分からなる実温度上昇分に相関付けられた図11に示すような複数の制御補正温度を設定する。そして、現在設定されている目標温度から実温度上昇分に応じた制御補正温度(-5℃~)を減算して補正された補正目標温度Tadを生成する。目標温度出力回路85は、補正目標温度Tadからなる目標温度TGTを差分比較回路86に出力する。
【0067】
[WAE制御]
次に、図4に示すフローチャートを参照して、WAE制御について詳細に説明する。
ヒータ通電制御回路14は、種々の初期値の設定を行う(ACT1)。例えば、ヒータ通電制御回路14は、システムコントローラ13からの信号に基づいて、係数加算回路84における係数及び、目標温度出力回路85の目標温度TGT等を設定する。
【0068】
ヒータ通電制御回路14の温度推定回路81は、温度センサ74からのセンサ温度Td、推定履歴保持回路82から推定履歴PREV及び、制御信号生成回路87から通電パルスPsをそれぞれ取得する(ACT2)。尚、温度センサ74は、自身の熱容量や感温素材の特性の影響により、温度変化の応答性が遅い場合があると、センサ温度Tdがローラ温度推定値に対して遅延した状態で検出される又は、平滑化された状態で検出される。
【0069】
次に、温度推定回路81は、温度推定処理を行う(ACT3)。即ち、温度推定回路81は、センサ温度Td、推定履歴PREV及び、通電パルスPsに基づいて、温度推定結果ESTを生成する。温度推定回路81は、温度推定結果ESTを高周波成分抽出回路83及び、推定履歴保持回路82に出力する。
【0070】
一般に、熱の移動は、電気回路のCR時定数で等価に表現することができる。熱容量は、コンデンサCに置き換えられる。熱伝達の抵抗は、抵抗Rに置き換えられる。また、熱源は、直流電圧源に置き換えられる。温度推定回路81は、ヒータ73への通電量とヒートローラ71の熱容量等を、予め各素子の値が設定されたCR回路に適用して、ヒートローラ71に与えられた熱量を推定する。温度推定回路81は、ヒートローラ71に与えられた熱量と、センサ温度Tdと、推定履歴PREVとに基づいて、ヒートローラ71の表面温度を推定し、温度推定結果ESTを出力する。
【0071】
温度推定回路81は、通電パルスPsに基づいて、直流電圧源からの通電/遮断が繰り返され、その入力電圧パルスに応じてCR回路が動作し、出力電圧が発生する。これにより温度制御対象であるヒートローラ71の表面に伝播した熱を推定することができる。即ち、温度推定回路81が出力する温度推定結果ESTは、加熱部材の熱容量(C)や定着器の熱抵抗(R)、定着器への投入エネルギ-等から実際の加熱部材表面温度を推定している。このため、投入エネルギー(供給電力)の増加によりヒートローラ71の表面温度が加熱されて温度が上昇すると、温度推定結果ESTも大きくなる。尚、ヒートローラ71の熱は、定着器21内の空間(ヒートローラ71の外回路)を介して、外部環境に流出している。このため、温度推定回路81は、ヒートローラ71から外部環境への熱の流出を推定するためのCR回路をさらに備える。また、温度推定回路81は、ヒートローラ71から定着器21内の空間に流れる熱量を推定するためのCR回路をさらに備えていてもよい。
【0072】
高周波成分抽出回路83は、温度推定結果ESTの高周波成分を抽出するハイパスフィルタ処理を行う(ACT4)。温度推定結果ESTの高周波成分を示す信号である高周波成分HPFは、実際のヒートローラ71の表面温度の変化を追従する。
次に、係数加算回路84は、センサ温度Tdに対して補正である係数加算処理を行う(ACT5)。この係数加算回路84は、高周波成分HPFと予め設定された係数とを乗算し、係数が乗算された高周波成分HPFをセンサ温度Tdに加算し、温度推定値WAEを算出する。例えば、係数が1である場合、係数加算回路84は、センサ温度Tdに高周波成分HPFをダイレクトに加算する。また、例えば、係数が0.1である場合、係数加算回路84は、高周波成分HPFの10分の1の値をセンサ温度Tdに加算する。この場合、高周波成分HPFの効果は、ほとんど無くなり、センサ温度Tdに近くなる。また、例えば、係数が1以上である場合、高周波成分HPFの効果をより強く表現することができる。係数加算回路84において設定される係数は、あまり極端な値ではなく、1近傍の値が良いという実験結果が出ている。
【0073】
WAE制御では、センサ温度Tdと温度推定結果ESTの高周波成分HPFとに基づき、ヒートローラ71の表面温度の細かな温度の変化を推定する。温度推定値WAEは、ヒートローラ71の表面温度を適切に追従した値となる。
差分比較回路86は、目標温度出力回路85からの制御補正温度Tadを含む目標温度TGTと、係数加算回路84からの温度推定値WAEとの差分DIFを算出し、制御信号生成回路87に出力する(ACT6)。
【0074】
制御信号生成回路87は、差分DIFに基づいて、通電パルスPsを生成する。制御信号生成回路87は、通電パルスPsを電源回路88及び、温度推定回路81に出力する(ACT7)。電源回路88は、通電パルスPsに基づいて、ヒータ73に電力PCを供給する。
【0075】
上述した差分DIFは、目標温度TGTと、温度推定値WAEとの関係を示している。例えば、この関係が温度推定値WAE>目標温度TGTである場合、通電パルスPsの幅を狭める又は、頻度を少なくする等の制御を施すことにより、ヒータ73への通電量が減少し、ヒートローラ表面温度が下がる。また、この関係が温度推定値WAE<目標温度TGTである場合、通電パルスPsの幅を広める又は、頻度を上げる等の制御を施すことにより、ヒータ73への通電量が増加し、ヒートローラ表面温度が上がる。
【0076】
尚、差分DIFは、温度推定値WAEと目標温度TGTとの上下関係だけでなく、どれだけ離れているかも把握できる。例えば、差分DIF(の絶対値)が大きい値である場合、温度推定値WAEと目標温度TGTとの乖離が大きいため、前述した制御を大きく変化させてもよい。また例えば、差分DIF(の絶対値)が小さい値である場合、温度推定値WAEと目標温度TGTとの乖離が小さいため、上記の制御を緩やかに行ってもよい。
【0077】
システムコントローラ13のプロセッサ22は、WAE制御を終了するか否か判断する(ACT8)。プロセッサ22は、ACT8において、WAE制御を終了せずに継続すると判断した場合(ACT8:NO)、前述したACT2の処理に移行する。一方、プロセッサ22は、主電源スイッチ24のOFF操作による装置の停止に従い、WAE制御を終了すると判断した場合(ACT8:YES)、処理ルーチンを終了する。
【0078】
このように、ヒータ通電制御回路14は、あるサイクル(当該サイクル)の処理を行う場合、1つ前のサイクルにおける値(通電パルスPs及び、温度推定結果EST:推定履歴PREV)と、当該サイクルにおけるセンサ温度Tdとに基づいて、WAE制御を行う。即ち、ヒータ通電制御回路14は、次のサイクルで値を継承する。ヒータ通電制御回路14は、温度推定計算を前回の計算の履歴をもとに再計算する。したがって、ヒータ通電制御回路14は、稼働中に常に計算を行っている。ヒータ通電制御回路14において、計算結果は、メモリ等に保持され、次のサイクルの計算で再利用される。
【0079】
[目標温度補正処理]
次に、本実施形態の温度制御装置による定着器の温度制御について説明する。
以下に記載する構成部位の仕様又は設計に関する数値、隙間距離、温度及び、温度推定値は、説明のために適宜に設定された一例であり、特に限定されたものではない。また、以下の説明において、「センタ」は、ヒートローラ71の中央部分及び、該中央部分に接している位置又は対向する位置を示すものとする。「サイド」は、ヒートローラ71の中央部分を挟んで両側の端部分、及び該両側の端部分に接している位置又は対向する位置を示すものとする。
【0080】
図5は、ヒートローラ71とセンタの温度センサ74aとの接触面の間に隙間を空けた場合のそれぞれの実測の温度と温度推定値の温度を示す表である。これらの隙間は、異物が挟まった状態又は、汚れの付着が生じた場合の隙間を想定している。図7は、図5に示した「温度推定値WAEセンタ」、「ヒートローラの実温度センタ」及び、「センサ温度センタ」の温度変化の推移をヒートローラ71とセンタの温度センサ74aとの温度特性として示している。
【0081】
図5における温度検出では、設定した隙間(第1隙間~第3隙間)毎に、目標温度(制御温度)を160℃に設定し、ウォーミングアップによるヒートローラ71の加熱が終了し、WAE制御が開始してから40秒の待機時間を経過後に、熱電対(ヒートローラ表面温度を実際に測定)による温度検出を20秒間計測して、その平均温度を検出値としている。この待機時間は、本実施形態における任意の設定時間であり、定着器の種類によって異なり、限定されたものではない。
【0082】
本実施形態で用いた一例となる定着器21の構成は、ヒートローラ(H/R)71の直径:Φ30mm(芯金肉厚:0.6mm)、加圧ローラ(P/R)72の直径:Φ30mm、P/R加圧:150N、制御温度(待機状態時)のヒートローラセンタ160℃/ヒートローラサイド155℃、周速:210mm/secの仕様及び特性を有し、記録媒体サイズA4、単位時間当たりの処理枚数を45枚/分とする。また、前述したように、ヒートローラ71内部には、ヒートローラ71の中央部を温めるセンタヒータ73aと、ヒートローラ71の両端側を温めるサイドヒータ73b,73cを備え、それぞれがヒートローラ71を加熱する。センタヒータ73aとサイドヒータ73b,73cは、個々に温度制御することも可能である。
【0083】
図5に示す表の各項目において、「温度センサ(センタ)とヒートローラとの距離」は、ヒートローラ71とセンタの温度センサ74aとの隙間距離「0mm」の第1隙間C1、隙間距離「0.21mm」の第2隙間C2及び、隙間距離「0.42mm」の第3隙間C3の3パターンを示している。これらの隙間は、第1隙間C1は接触状態、第2隙間C2は、異物と仮定するカプトンテープを3枚(0.07mm×3)及び、第3隙間C3は、カプトンテープを6枚(0.07mm×6)を重ねて挟み込むことで、それぞれの離間距離を作り出している。本実施形態では、異物としてカプトンテープを用いたが、これに限定されるものではなく、熱による変形や溶着が生じない物質であれば用いることができる。
【0084】
また、「ヒートローラの実温度センタ」は、外部の熱電対(サーミスタ)をヒートローラ71の中央部分に装着して実測した温度である。「センサ温度センタ」は、ヒートローラ71の中央部分に配置される温度センサ74aにより検出された温度である。「温度推定値WAEセンタ」は、前述の隙間を挟んで温度センサ74aにより検出されたセンサ温度Tdを用いて、ヒータ通電制御回路14内の係数加算回路84から出力されたWEA制御に用いる温度推定値である。「第1温度上昇分センタ」は、温度推定値WAEセンタ-センサ温度センタの差分である。「第2温度上昇分センタ」は、ヒートローラ71の実温度センタ-センサ温度センタの差分である。「実温度上昇分センタ」は、予め測定した正常なヒートローラの温度センタ-現在のヒートローラの実温度センタとの差分である。
【0085】
図5及び図7を参照して、ヒートローラ71と温度センサ74aに隙間が生じた際の温度特性について説明する。WAE制御において、その隙間が生じていた場合には、目標温度を160℃に設定しても、温度センサ74aが実際の温度より低く検知することにより温度推定値WAEを大きくして、現在の温度よりも昇温させようとセンタヒータ73aによる加熱が行われる。
【0086】
第1隙間C1(0mm)と第3隙間C3(0.42mm)を比較すると、「センサ温度センタ」は、162℃~163℃であり、ほぼ一定温度を示しているが、熱電対から得られた「ヒートローラの実温度センタ」は、170.2℃から189.6℃に上昇し、「推定値WAEセンタ」も、172.9℃から203.5℃に上昇している。従って、推定値WAEセンタとセンサ温度センタとの温度差に応じて、ヒートローラ71と温度センサ74aとの間に異物が挟まっている、又は、ヒートローラ71と温度センサ74aの何れか又は両方に汚れが付着している等の異常が発生しているものと判断することができる。
【0087】
次に、図6は、ヒートローラ71と両サイドの温度センサ74bとの接触面の間に隙間を空けた場合のそれぞれの実測の温度と温度推定値の温度を示す表である。図8は、図6に示した「温度推定値WAEサイド」、「ヒートローラの実温度サイド」及び、「センサ温度サイド」の温度変化の推移をヒートローラ71の両端側と温度センサ74bとの温度特性として示している。尚、図6における温度検出は、図5の例と同等であり、ヒートローラ71のウォーミングアップ終了後で、WAE制御を開始してから40秒の待機時間を経過後に、熱電対による温度検出を20秒間計測して、その平均温度を検出値としている。
【0088】
図6に示す表の各項目は、「センタ」と「サイド」が異なる以外、図5に示した項目と同一である。「温度センサ(サイド)とヒートローラとの距離」は、ヒートローラ71とサイドの温度センサ74bとの隙間距離「0mm」の第1隙間S1、隙間距離「0.21mm」の第2隙間S2及び、隙間距離「0.42mm」の第3隙間S3の3パターンである。これらの隙間は、上述したように、異物と仮定するカプトンテープを重ねて挟み込むことで作られている。
【0089】
図6及び図8を参照して、ヒートローラ71と温度センサ74bに隙間が生じた際の温度特性について説明する。WAE制御において、それらの隙間が生じていた場合には、目標温度を155℃に設定しても、温度センサ74bが実際の温度より低く検知するため、温度推定値WAEを大きくして、現在の温度よりも昇温させようとヒータ73による加熱が行われる。
【0090】
図6において、第1隙間S1(0mm)と第3隙間S3(0.42mm)を比較すると、「センサ温度サイド」は、157℃のほぼ一定温度を示しているが、熱電対から得られた「ヒートローラの実温度サイド」は、162℃から181.2℃に上昇し、温度推定値WAEサイドも、183.6℃から220.7℃に上昇している。従って、温度推定値WAEサイドとセンサ温度サイドとの温度差が予め任意に設定した閾値を超えることで、ヒートローラ71と温度センサ74bとの間に異物が挟まっている、又は、ヒートローラ71と温度センサ74bの何れか又は両方に汚れが付着している等の異常が発生しているものと判断することができる。
【0091】
次に、図9は、図5に示す温度特性に基づく温度上昇分の相関関係を示す図(相関図)である。図9において、横軸は、図5に示す「第1温度上昇分センタ」(であり、縦軸は、「実温度上昇分センタ」である。例えば、図9に示す相関から一次式の温度センサ74aにおける相関式(y=0.63x-6.49)を求めることもできる。温度差検出回路93は、温度推定値WAEとセンサ温度Tdとの差分からなる第1温度上昇分と、実温度上昇分と、が相関付けられた図9に示す温度上昇分の相関関係(傾きの温度特性)を有し、取得した温度推定値WAEとセンサ温度Tdに基づき、図9に示す相関関係から記実温度上昇分を推定することができる。
【0092】
また、同様に図10は、図6に示す温度特性に基づく温度上昇分の相関関係を示す図(相関図)である。図10において、横軸は、図6に示す「第1温度上昇分サイド」であり、縦軸は、「実温度上昇分サイド」である。例えば、図10に示す相関から一次式の温度センサ74aにおける相関式(y=0.50x-13.78)を求めることもできる。
【0093】
図9及び図10に示す相関関係から、例えば、温度推定値WAEと、センサ温度が分かれば、その差分から、ヒートローラ71の実温度及び、実温度上昇分を推定することができる。
また、図11は、ヒートローラ71の実温度上昇分に対する制御補正温度の設定を示す図である。本実施形態に用いた温度センサ74の検出値に対する温度ばらつきは、基準温度に対して、±5℃とする。勿論、この数値は、温度センサによって異なり、限定されるものではない。
【0094】
図11に示すように、図9及び図10からヒートローラ71の実温度上昇分として目標温度から0~±5℃が推定された場合には、上述の温度ばらつきに基づき、正常であると判断し、WAE制御を継続する。尚、実温度が-5℃に温度下降した場合など、温度上昇していない場合には、ヒートローラ71は適宜、加熱される。
【0095】
実温度上昇分が5℃を超えた時点から温度補正が実行される。即ち、WAE制御を中止して、温度センサ74のセンサ温度Tdに対して相関を持つ補正値により補正した目標値による温度制御に切り換えられる。さらに、実温度上昇分が5~10℃に推定された場合、制御補正温度を-5℃として、現在の目標温度から-5℃を降温させた目標温度に補正する。以下同様に、実温度上昇分が10~15℃の場合、制御補正温度を-10℃として、現在の目標温度から-10℃を降温させた目標温度に補正し、実温度差が15~20℃の場合、制御補正温度は、-15℃として、現在の目標温度から-15℃を降温させた目標温度に補正する。以降、実温度上昇分が5℃を変化する毎に、-5℃を降温させた目標温度に補正する。
【0096】
次に、図12及び図13は、制御補正温度を設定するための図である。ここでは、ヒートローラ71の実温度上昇分と、第1温度上昇分(温度推定値WAE-センサ温度としての差分)と制御補正温度とが相関付けられた相関関係を示している。図12は、ヒートローラ71の実温度上昇分と、第1温度上昇分センタと制御補正温度とが相関付けられた相関関係を示している。図13は、ヒートローラ71の実温度上昇分と、第1温度上昇分サイドと制御補正温度とが相関づけられた相関関係を示している。ここでは、WAE制御に代わって、検出されたセンサ温度に相関付けられた制御補正温度を用いて補正した目標温度による温度制御(第2温度制御)を行う。
【0097】
図12に示すヒートローラ71のセンタの制御補正温度の設定において、例えば、図9に示した実温度上昇分tbが5℃の場合には、第1温度上昇分センタが約18.1℃となる。以降、第1温度上昇分センタの温度は、実温度上昇分が10℃の場合は約25.9℃、実温度上昇分が15℃の場合は約33.8℃、実温度上昇分が20℃の場合は約41.7℃となる。
【0098】
図13に示すヒートローラ71のサイドの制御補正温度の設定において、例えば、図10に示した実温度上昇分tbが5℃の場合には、第1温度上昇分サイドが約37.4℃となる。以降、第1温度上昇分サイドの温度は、実温度上昇分が10℃の場合は約47.3℃、実温度上昇分が15℃の場合は約57.3℃、実温度上昇分が20℃の場合は約67.2℃となる。
【0099】
図12及び図13を参照することで、センタ又はサイドの温度は、共に第1温度上昇分taから実温度上昇分tbが何℃であるか推定でき、さらに、推定された実温度上昇分から制御補正温度を求めることができる。一例として、WAE制御で求めた温度推定値WAEセンタ-センサ温度センタの温度差である第1温度上昇分センタtaが25℃であった場合は、汚れの付着や異物の挟み込み等の異常により生じた実温度上昇分tbは、目標温度より昇温側へ5℃を超えて10℃以下(5<tb≦10)の間に昇温していると判断する。このように実温度上昇分tbが昇温した場合には、現在のWAE制御(第1温度制御)を停止し、検出されたセンサ温度に相関を持つ制御補正温度を用いて補正した目標温度による温度制御(第2温度制御)を行う。具体的に、この一例においては、現在の目標温度から制御補正温度-5℃を減算した補正目標温度を設定して温度制御を行う。
【0100】
また、図13において、温度推定値WAEサイド-センサ温度サイドの温度差である第1温度上昇分サイドtaが50℃であった場合は、温度センサ74bに汚れ付着して、実温度上昇分tbは、目標温度より昇温側へ10℃を超えて15℃以下(10<tb≦15)の間に昇温していると判断する。このように実温度上昇分tbが昇温した場合には、現在のWAE制御(第1温度制御)を停止し、現在の目標温度から制御補正温度-15℃減算した補正目標温度を設定して、温度センサ74を用いた温度制御(第2温度制御)に切り換える。このように相関関係から温度差の応じた正確な補正値を求めることができた。
【0101】
次に、図14に示すフローチャートを参照して、本実施形態の温度制御装置101による温度補正を含む温度制御について説明する。この例では、温度制御装置101は、画像形成装置1に搭載された構成例とする。
【0102】
まず、画像形成装置1は、主電源スイッチ24のオンにより装置が起動する(ACT11)。画像形成装置1のシステムコントローラ13は、印刷を実行するために、各構成部をイニシャル状態にする。この時、温度制御装置101のヒータ通電制御回路14は、ヒータ73に電力を供給してヒートローラ71を加熱して、印刷を開始するためのウォーミングアップが開始される。そのウォーミングアップが終了したと共に、WAE制御を開始し(ACT12)、待機時間のカウントを開始する。
【0103】
次に、システムコントローラ13は、温度センサ74(74a,74b)が検出したセンサ温度が40℃以下か否かを判断する(ACT13)。このACT13の判断で、センサ温度が40℃より高い場合には(NO)、温度センサ74に付着した汚れや異物の挟み込みの有無が正確に判断できないため、WAE制御による第1温度制御を継続し、第2温度制御による制御モードには切り換えないと判断する。尚、第2温度制御は、前述した図5乃至図13に示したように、検出されたセンサ温度に相関を持つ制御補正温度を用いて補正した目標温度による温度制御を行うものである。一方、ACT13の判断で、温度センサ74が検出したセンサ温度が40℃以下であった場合には(YES)、第2温度制御による制御モードに切り換えることが可能であると判断する。
【0104】
次に、記録媒体への印刷指示を受信したか否かを判断する(ACT14)。ACT14の判断で、印刷指示を受信した場合には(YES)、WAE制御を継続させる中で記録媒体に印刷を行う。一方、ACT14の判断で、印刷指示を受信していない場合には(NO)、WAE制御の開始時からカウントした待機時間が40秒を経過したか否かを判断する(ACT15)。
【0105】
このACT15の判断において、待機時間が40秒未満であれば(NO)、時間のカウントを継続し、待機時間が40秒を経過していれば(YES)、センタ及びサイドの温度推定値WAEセンタ及び温度推定値WAEサイドの第1記憶回路91への記憶を開始する。同時に、センタ及びサイドの温度センサ74a,74bが検出したセンサ温度Tdの上記温度推定値WAE(センタ、サイド)と同じタイミングでの第2記憶回路92への記憶を開始する(ACT16)。これらの記憶を開始すると共に、記憶時間のカウントを開始する。尚、これらの記憶におけるサンプリングのタイミングは、適宜設定する。
【0106】
次に、温度推定値WAEとセンサ温度Tdの記憶を開始してから20秒が経過したか否かを判断する(ACT17)。ACT17の判断で、20秒が経過していないならば(NO)、温度推定値WAEとセンサ温度Tdを記憶することを継続する。一方、ACT17の判断で、20秒が経過したならば(YES)、その20秒間における温度推定値WAEとセンサ温度Tdのそれぞれの平均値を算出して、第1記憶回路91及び第2記憶回路92に記憶させる(ACT18)。尚、温度推定値WAEとセンサ温度Tdの記憶中に印刷指示を受信した場合には、これらの記憶動作を中止して、記録媒体への印刷を実行し、その後、再度、待機時間のカウントを行う。
【0107】
次に、温度差検出回路93は、第1記憶回路91から温度推定値WAEセンタを読み出し、第2記憶回路92からセンサ温度センタを読み出して、第1温度上昇分センタ(温度推定値WAE-センサ温度の差分)taCを求める。この第1温度上昇分センタtaCが予め設定した閾値温度thCよりも高いか否かを判断する(ACT19)。ここでは、閾値温度thは、センタの閾値温度thCが「18.1℃」に設定され、後述するサイドの閾値温度thSが「37.4℃」に設定されている。勿論、これらの閾値温度は、適宜設定される温度であり、限定されるものではない。
【0108】
このACT19の判断において、第1温度上昇分センタtaCが予め設定した閾値温度thCである18.1℃以下であれば(NO)、定着器21のヒートローラ71と温度センサ74aは、正常であると判断して、WAE制御を継続する。一方、ACT19の判断において、第1温度上昇分センタtaCが予め設定した閾値温度18.1℃よりも高ければ(YES)、センタの温度センサ74aに汚れが付着している又は、ヒートローラ71との間に異物が挟まっている等の異常が発生しているものと判断して、センタのWAE制御(第1温度制御)を停止するべく、差分比較回路86へ制御切替信号SWを出力する(ACT20)。この制御切替信号SWを受けて、差分比較回路86は、係数加算回路84からの温度推定値WAEと目標温度出力回路85からの目標温度TGTとの差分DIFの算出を停止する。これにより、センタのWAE制御(第1温度制御)が停止する。
【0109】
センタのWAE制御(第1温度制御)を停止した後、前述した温度センサにより温度制御を行う第2温度制御に切り換えて、センタにおける目標温度を補正する制御温度補正(目標温度を降温する補正)を行う(ACT21)。例えば、目標温度補正回路94において、図11図12に示す温度の相関関係を利用して、算出された第1温度上昇分taが「20℃」(18.1<ta≦25.9)であった場合には、実温度上昇分として、5<tb≦10に該当し、制御補正温度は「-5℃」が得られる。よって、現在の目標温度から-5℃を減算した補正目標温度Tadを算出し、目標温度出力回路85に出力する。目標温度出力回路85は、補正目標温度Tadからなる目標温度TGTとして、差分比較回路86に出力する。差分比較回路86は、目標温度TGTとセンタにおけるセンサ温度Tdとの差分DIFを算出し、制御信号生成回路87に出力する。
【0110】
次に、ACT21において、目標温度を補正する制御温度補正が行われると、サービスマンに対して、定着器21の温度制御に異常が発生してことを通知する(ACT22)。その通知内容として、具体的に、ヒートローラ71と温度センサ74との間に不具合が生じていることを示唆してもよい。
【0111】
このACT22における通知後に、引き続き、温度推定値WAEサイドとセンサ温度サイドの差分から第1温度上昇分サイドtaSを求める。この第1温度上昇分サイドtaSが予め設定した閾値温度thSよりも高いか否かを判断する(ACT23)。ここでは、前述したように、サイドの閾値温度thSが「37.4℃」に設定されている。
【0112】
このACT23の判断において、第1温度上昇分サイドtaSが予め設定した閾値温度thSである37.4℃以下であれば(NO)、定着器21のヒートローラ71と温度センサ74bは、正常であると判断して、WAE制御を継続する。一方、ACT23の判断において、第1温度上昇分サイドtaが予め設定した閾値温度37.4℃よりも高ければ(YES)、サイドの温度センサ74bに汚れが付着している又は、ヒートローラ71との間に異物が挟まっている等の異常が発生しているものと判断して、サイドのWAE制御(第1温度制御)を停止するべく、差分比較回路86へ制御切替信号SWを出力する(ACT24)。この例では、温度センサ74bの何れか一方に異常が発生した場合であっても、両サイドの温度センサ74bの両方に異常があったものとして、一体的に扱っている。
【0113】
この制御切替信号SWを受けて、差分比較回路86は、係数加算回路84からの温度推定値WAEと目標温度出力回路85からの目標温度TFTとの差分の算出を停止することで、サイドのWAE制御(第1温度制御)を停止することになる。その後、前述した第2温度制御に切り換え、サイドにおける目標温度を補正する制御温度補正(目標温度を降温する補正)を行う(ACT25)。例えば、目標温度補正回路94において、図11図13に示す温度の相関関係を利用して、算出された第1温度上昇分taが「50℃」(47.3<ta≦57.3)であった場合には、実温度上昇分として、10<tb≦15に該当し、制御補正温度は「-10℃」が得られる。よって、現在の目標温度から-10℃を減算した補正目標温度Tadを算出し、目標温度出力回路85に出力する。目標温度出力回路85は、補正目標温度Tadからなる目標温度TGTとして、差分比較回路86に出力する。差分比較回路86は、この目標温度TGTとサイドにおけるセンサ温度Tdとの差分DIFを算出し、制御信号生成回路87に出力する。
【0114】
次に、ACT25において、目標温度を補正する制御温度補正が行われると、サービスマンに対して、定着器21の温度制御に異常が発生してことを通知する(ACT26)。その通知内容として、具体的に、ヒートローラ71と温度センサ74との間に不具合が生じていることを示唆してもよい。
【0115】
以上のように、本実施形態の温度制御装置によれば、サービスマンが対応するまで、温度センサによる目標温度の降温補正による温度制御は、継続して行われる。温度制御装置をこのように構成することにより、センタ、サイドの温度センサに生じる異常を検知して適正な温度制御を行うことで、定着器21に生じる高温オフセットやサービスコール等の緊急的に装置が停止する故障を未然に防止することができる。
【0116】
尚、図14に示すフローチャートにおいて、記録媒体を通紙させることにより、温度センサ74に付着していた汚れが落ちた場合又は、挟まっていた異物が外れ出た場合には、第1温度上昇分が正常と判断される規定温度以内になるため、制御補正温度による補正無し判断から、温度センサを利用した第2温度制御からWAE制御に復帰するステップを組み入れてもよい。
【0117】
また、本実施形態の画像形成装置は、インターネット等のネットワークを介して外部の機器、例えば、自宅や出先機関等のワークプレイスにあるパソコンと通信可能に接続され、パソコンの遠隔操作により種々の情報の印刷や保守管理の実施が可能である。そのパソコンに前述した保守管理結果のワーニング情報を表示させることもできる。
[定着器の第2の構成例]
次に、本実施形態に係る画像形成装置1に適用可能な定着器の第2の構成例について説明する。図15は、定着器の第2の構成例を示す図である。また、図16は、第2の構成例の定着器におけるヒータユニットの構成例を示す図である。
【0118】
定着器21は、温度センサ74、定着部材としての筒状フィルムからなるヒートローラ71、加圧ローラ72、ヒータ(ヒータ、例えば、ランプヒータ)73及び、ヒータ基板75等を有する。加圧ローラ72は、ヒートローラ71との間でニップを形成する。ヒートローラ71と加圧ローラ72は、ニップに進入した記録媒体Pを加圧しながら加熱する。温度センサ74は、サーミスタ等の接触式の温度検出素子が用いられ、センタ温度センサ74aと、2つのサイド温度センサ74b、74cとを備える。
【0119】
ヒータユニット76は、ヒータ73及びヒータ基板75等で構成される。ヒータ73は、例えば、ハロゲンヒータ、ランプヒータ、IHヒータ及び、抵抗加熱ヒータ等を用いることができる。ヒータ基板75は、金属材料又はセラミック材料等を用いて、長細い長方形の板状に形成される。ヒータ基板75は、ヒートローラ71の径方向の内側に配置される。ヒータ基板75の長方形の長辺は、ヒートローラ71の軸方向に沿った方向とする。
【0120】
本実施形態のヒータ73は、一例として、3分割されたセンタヒータ73a、サイドヒータ73b及び、サイドヒータ73cで構成される。これらのヒータ73a、73b、73cは、用紙搬送方向と直交する方向(ヒータ基板75の長手方向)に並べて配置される。センタヒータ73aの中央位置と、ニップを通過する記録媒体Pの幅方向(搬送方向に直交する方向)における中央位置とが一致するように、センタヒータ73aが配置される。2つのサイドヒータ73bとサイドヒータ73cは、センタヒータ73aの長手方向の両端に隣接するように配置される。
【0121】
ヒータ73のうちのセンタヒータ73aは、第1熱源とし、サイドヒータ73b及びサイドヒータ73cは、第2熱源とする。センタヒータ73aは、図15に示すように、矢印の用紙搬送方向と直交する方向において、センタ領域Cを中心に熱を供給する。但し、センタヒータ73aのみを発熱させた場合であっても、伝熱によりサイド領域Sの温度も上昇する。サイドヒータ73bとサイドヒータ73cは、図15に示すように、用紙搬送方向と直交する方向において、それぞれのサイド領域Sを中心に熱を供給する。
【0122】
また、温度センサ74aは、センタヒータ73aが加熱するセンタ領域Cの温度を主として検出する。また、温度センサ74b,74cは、サイドヒータ73b,73cが加熱するそれぞれのサイド領域Sの温度を主として検出する。このような定着器21は、上述したWAE制御により加熱を制御することが可能である。
【0123】
以上のように、図15及び図16に示す定着器21においても、上述したWAE制御が可能である。このため、図15及び図16に示す定着器21を備える画像形成装置1についても、上述したようなWAE推定値を用いた温度制御を実施することができる。
[定着器の第3の構成例]
次に、本実施形態に係る画像形成装置1に適用可能な定着器の第3の構成例について説明する。図17は、定着器の第3の構成例を示す図である。また、図18は、第3の構成例の定着器におけるヒータユニットの構成例を示す図である。
【0124】
図17に示すように、定着器121は、温度センサ74(74a、74b)、定着部材(定着回転体)としての筒状フィルム171、加圧ローラ172、ヒータ及びヒータ基板175等を有する。加圧ローラ172は、筒状フィルム171との間でニップを形成する。筒状フィルム171と加圧ローラ172は、ニップに進入した印刷媒体Pを加圧しながら加熱する。
【0125】
ヒータユニットは、ヒータ173及びヒータ基板175などを有する。ヒータ基板175は、金属材料又はセラミック材料などで形成される。ヒータ基板175は、長細い長方形の板状に形成される。ヒータ基板175は、筒状フィルム171の径方向の内側に配置される。ヒータ基板175は、筒状フィルム171の軸方向を長手方向とする。
【0126】
ヒータ173は、複数のヒータ173a、173b、173cを含む。ヒータ173は、ヒータ基板175に配置された状態で、筒状フィルム172の内面に接するように設けられる。これらのセンタヒータ173a、サイド173b、サイド173cの各々は、交流電源からの電力供給により発熱する抵抗体である。
【0127】
センタヒータ173aは、搬送方向に直交する方向における印刷媒体Pの幅(用紙幅)が最大の印刷媒体Pにトナーを定着するために用いる。センタヒータ173aは、最大の用紙幅に対応する幅を有する。センタヒータ173aは、ヒータ基板175において、印刷媒体Pの搬送方向の上流側と下流側とに配置される。
【0128】
センタヒータ173bは、印刷媒体Pの搬送方向に直交する方向において、センタヒータ173aよりも短いヒータである。ヒータ173cは、印刷媒体Pの搬送方向に直交する方向において、センタヒータ173bよりもさらに短いヒータである。センタヒータ173aがメインヒータであり、センタヒータ173b及び173cがサブヒータである。メインヒータとサブヒータとは、印刷媒体Pの用紙幅に応じてオンオフが制御される。
【0129】
以上のように、図17及び図18に示す定着器121についても、上述したWAE制御が可能である。このため、図17及び図18に示す定着器121を備える画像形成装置は、上述したようなWAE推定値を用いた温度制御が実施できる。
[定着器の第4の構成例]
次に、本実施形態に係る画像形成装置1に適用可能な定着器の第4の構成例について説明する。図19は、定着器の第4の構成例を示す図である。また、図20は、第4の構成例の定着器におけるヒータユニットの構成例を示す図である。
図19に示すように、定着器221は、温度センサ74(74a、74b)、定着部材(定着回転体)としての筒状フィルム271、加圧ローラ272、ヒータ273及びヒータ基板275などを有する。加圧ローラ272は、筒状フィルム271との間でニップを形成する。筒状フィルム271と加圧ローラ272は、ニップに進入した印刷媒体Pを加圧しながら加熱する。
【0130】
ヒータユニットは、ヒータ273(273a、273b)及びヒータ基板275などを有する。ヒータ基板275は、金属材料又はセラミック材料などで形成される。ヒータ基板275は、長細い長方形の板状に形成される。ヒータ基板275は、筒状フィルム271の径方向の内側に配置される。ヒータ基板275は、筒状フィルム271の軸方向を長手方向とする。
【0131】
ヒータ273は、複数のヒータ273a、273bを含む。ヒータ273は、ヒータ基板275に配置された状態で、筒状フィルム271の内面に接するように設ける。センタヒータ273a、サイド273bの各々は、例えば、交流電源からの電力供給により発熱する抵抗体である。
【0132】
センタヒータ273aは、搬送方向に直交する方向における印刷媒体Pの最大幅に対応する幅を有する。センタヒータ273aは、図20に示すように、搬送方向に直交する方向における中央部で搬送方向に対する幅が大きく、端部で搬送方向に対する幅が小さい。センタヒータ273aは、センタ領域Cを重点的に加熱するように構成されたメインヒータである。また、ヒータ273bは、搬送方向に直交する方向における中央部で搬送方向に対する幅が小さく、端部で搬送方向に対する幅が大きい。ヒータ273bは、サイド領域Sを重点的に加熱するように構成されたサブヒータである。メインヒータとサブヒータとは、印刷媒体Pの用紙幅に応じてオンオフが制御される。
【0133】
以上のように、図19及び図20に示す定着器221においても、上述したWAE制御が可能である。これにより、図19及び図20に示す定着器221を備える画像形成装置1は、上述したようなWAE推定値を用いた温度制御を実施することができる。
[定着器の第5の構成例]
次に、本実施形態に係る画像形成装置1に適用可能な定着器の第5の構成例について説明する。図21は、定着器の第5の構成例を示す図である。また、図22は、第5の構成例の定着器におけるヒータユニットの構成例を示す図である。
【0134】
図21に示すように、定着器321は、温度センサ74(74a、74b)、定着部材としてのヒートローラ371、加圧ローラ372、及び、誘導加熱コイル373等を有する。加圧ローラ372は、ヒートローラ371との間でニップを形成する。ヒートローラ371と加圧ローラ372とは、ニップに進入した印刷媒体Pを加圧しながら加熱する。
【0135】
誘導加熱コイル373は、定着部材としてのヒートローラ371を加熱する熱源の例である。誘導加熱コイル373は、中央コイル373aと端部コイル373bとで構成される。中央コイル373aと端部コイル373bとは、ヒートローラ371の内部に用紙の搬送方向と直交する方向(ヒートローラ371の回転軸方向)に並べて配置される。中央コイル373aは、ニップを通過する印刷媒体Pの幅方向(搬送方向に直交する方向)における中央位置が合うように配置される。端部コイル373bは、中央コイル373aの両脇に並べて配置される。
【0136】
中央コイル373aは、第1の熱源の例である。この中央コイル373aは、図22に示すように、用紙搬送方向と直交する方向において、ヒートローラ371のセンタ領域Cを加熱する。端部コイル373bは、第2の熱源の例である。端部コイル373bは、図22に示すように、用紙搬送方向と直交する方向において、ヒートローラ371のサイド領域Sを加熱する。
【0137】
温度センサ74a、74bは、前述した第1の構成例の定着器21と同様に、サーミスタなどの接触式の温度検知装置である。温度センサ74aは、ヒートローラ371のセンタ領域Cの温度を検知する。また、温度センサ74bは、ヒートローラ371のサイド領域Cの温度を検知する。
【0138】
以上のように、図21及び図22に示す定着器321についても、上述したWAE制御が可能である。このため、図21及び図22に示す定着器321を備える画像形成装置1では、上述したようなWAE推定値を用いた温度制御を実施することができる。
【0139】
その他、本発明の一態様は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この一態様は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この一態様やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0140】
1…画像形成装置、11…筐体、12…通信インタフェース、13…システムコントローラ、14…ヒータ通電制御回路、15…表示部、16…操作インタフェース、17…用紙トレイ、18…排紙トレイ、19…搬送部、20…画像形成部、21…定着器、22…プロセッサ、23…メモリ、24…主電源スイッチ、25…温度制御回路、31…給紙搬送路、32…排紙搬送路、33…ピックアップローラ、41…プロセスユニット、42…露光器、43…転写機構、51…感光ドラム、52…帯電チャージャ、53…現像器、61…1次転写ベルト、62…2次転写対向ローラ、63…1次転写ローラ、64…2次転写ローラ、71…ヒートローラ、72…加圧ローラ、73…ヒータ、73a…センタヒータ、73b…サイドヒータ、73c…サイドヒータ、74…温度センサ、74a,74b,74c…温度センサ、75…ヒータ基板、76…ヒータユニット、81…温度推定回路、82…推定履歴保持回路、83…高周波成分抽出回路、84…係数加算回路、85…目標温度出力回路、86…差分比較回路、87…制御信号生成回路、88…電源回路、91,92…記憶回路、93…温度差検出回路、94…目標温度補正回路、101…温度制御装置。

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