(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172875
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】経路計画生成装置及び経路計画生成装置の経路計画補正方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
G08G1/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090903
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100187311
【弁理士】
【氏名又は名称】小飛山 悟史
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】川島 渉
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB20
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC24
5H181FF04
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
5H181LL15
(57)【要約】
【課題】白線の認識結果を用いた経路計画の補正による経路計画の精度低下を抑制する。
【解決手段】車載カメラの撮像画像から第一の深層学習モデルを用いて自車両の経路計画を生成し、車載カメラの撮像画像から自車両の走行車線を形成する左右の白線を認識し、経路計画を白線の認識結果を用いて補正する経路計画生成装置であって、左右の白線が予め設定された平行条件を満たしているか否かを判定し、左右の白線が平行条件を満たしていないと判定された場合には、白線の認識結果を用いた前記経路計画の補正を行わない。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載カメラの撮像画像から第一の深層学習モデルを用いて自車両の経路計画を生成し、前記車載カメラの撮像画像から自車両の走行車線を形成する左右の白線を認識し、前記経路計画を前記白線の認識結果を用いて補正する経路計画生成装置であって、
前記左右の白線が予め設定された平行条件を満たしているか否かを判定し、
前記左右の白線が前記平行条件を満たしていないと判定された場合には、前記白線の認識結果を用いた前記経路計画の補正を行わない、経路計画生成装置。
【請求項2】
前記車載カメラの撮像画像から第二の深層学習モデルを用いて前記左右の白線を認識し、前記第二の深層学習モデルは前記第一の深層学習モデルと異なる深層学習モデルである、請求項1に記載の経路計画生成装置。
【請求項3】
前記走行車線が直線路である場合において、前記左右の白線の成す角度が許容角度閾値以上であるとき、前記左右の白線が前記平行条件を満たしていないと判定する、請求項1又は2に記載の経路計画生成装置。
【請求項4】
前記白線の認識結果が更新される度に前記白線の認識結果に基づいて前記走行車線の車線幅を算出し、更新前の前記車線幅と更新後の前記車線幅との差分である車線幅差分を演算し、前記車線幅差分が許容差分閾値以上である場合に前記左右の白線が前記平行条件を満たしていないと判定する、請求項1又は2に記載の経路計画生成装置。
【請求項5】
車載カメラの撮像画像から第一の深層学習モデルを用いて自車両の経路計画を生成し、前記車載カメラの撮像画像から自車両の走行車線を形成する左右の白線を認識し、前記経路計画を前記白線の認識結果を用いて補正する経路計画生成装置の経路計画補正方法であって、
前記左右の白線が予め設定された平行条件を満たしているか否かを判定し、
前記左右の白線が前記平行条件を満たしていないと判定された場合には、前記白線の認識結果を用いた前記経路計画の補正を行わない、経路計画生成装置の経路計画補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路計画生成装置及び経路計画生成装置の経路計画補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の走行する経路計画に関する技術文献として、特開2018―116370号公報が知られている。この公報には、車載カメラの撮像画像から車両の走路の白線を認識する技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両のカメラによる白線認識の結果を用いて車両の経路計画を生成することが考えられている。しかしながら、分岐路や交差点、車線数が増減する箇所など車両の走行車線の左右の白線の関係が変化する箇所では白線認識の結果を用いた補正が経路計画の精度低下を招くおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、車載カメラの撮像画像から第一の深層学習モデルを用いて自車両の経路計画を生成し、車載カメラの撮像画像から自車両の走行車線を形成する左右の白線を認識し、経路計画を白線の認識結果を用いて補正する経路計画生成装置であって、左右の白線が予め設定された平行条件を満たしているか否かを判定し、左右の白線が平行条件を満たしていないと判定された場合には、白線の認識結果を用いた経路計画の補正を行わない。
【0006】
本発明の一態様に係る経路計画生成装置によれば、分岐路や交差点、車線数が増減する箇所など左右の白線の関係が変化する箇所においては、白線の認識結果を用いた経路計画の補正を行うことで経路計画の精度が低下することがあるため、左右の白線が平行条件を満たさない場合には、白線の認識結果を用いた経路計画の補正を行わないことで、補正による経路計画の精度低下を抑制することができる。
【0007】
本発明の一態様に係る経路計画生成装置において、車載カメラの撮像画像から第二の深層学習モデルを用いて左右の白線を認識し、第二の深層学習モデルは第一の深層学習モデルと異なる深層学習モデルであってもよい。
この経路計画生成装置によれば、車載カメラの撮像画像から第一の深層学習モデルと異なる第二の深層学習モデルを用いて左右の白線を認識することで、第一の深層学習モデルに起因する経路計画の生成ミスが存在したとしても第二の深層学習モデルを用いて認識された左右の白線により補正することで、経路計画の精度低下を抑制することができる。
【0008】
本発明の一態様に係る経路計画生成装置において、走行車線が直線路である場合において、左右の白線の成す角度が許容角度閾値以上であるとき、左右の白線が平行条件を満たしていないと判定してもよい。
この経路計画生成装置によれば、分岐路や交差点、車線数が増減する箇所など左右の白線の関係が変化する箇所では左右の白線の成す角度が大きくなることから、左右の白線の成す角度が許容角度閾値以上であるとき、左右の白線が平行条件を満たしていないと判定することで、白線の認識結果を用いた補正による経路計画の精度低下を抑制することができる。
【0009】
本発明の一態様に係る経路計画生成装置において、白線の認識結果が更新される度に白線の認識結果に基づいて走行車線の車線幅を算出し、更新前の車線幅と更新後の車線幅との差分である車線幅差分を演算し、車線幅差分が許容差分閾値以上である場合に左右の白線が平行条件を満たしていないと判定してもよい。
この経路計画生成装置によれば、分岐路や交差点、車線数が増減する箇所など左右の白線の関係が変化する箇所では、更新前の車線幅と更新後の車線幅との車線幅差分が大きくなることから、車線幅差分が許容差分閾値以上であるとき、左右の白線が平行条件を満たしていないと判定することで、白線の認識結果を用いた補正による経路計画の精度低下を抑制することができる。
【0010】
本発明の他の態様は、車載カメラの撮像画像から第一の深層学習モデルを用いて自車両の経路計画を生成し、車載カメラの撮像画像から自車両の走行車線を形成する左右の白線を認識し、経路計画を白線の認識結果を用いて補正する経路計画生成装置の経路計画補正方法であって、左右の白線が予め設定された平行条件を満たしているか否かを判定し、左右の白線が平行条件を満たしていないと判定された場合には、白線の認識結果を用いた経路計画の補正を行わない。
【0011】
本発明の他の態様に係る経路計画生成装置の経路計画補正方法によれば、分岐路や交差点、車線数が増減する箇所など左右の白線の関係が変化する箇所においては、白線の認識結果を用いた経路計画の補正を行うことで経路計画の精度が低下することがあるため、左右の白線が平行条件を満たさない場合には、白線の認識結果を用いた経路計画の補正を行わないことで、補正による経路計画の精度低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の各態様によれば、白線の認識結果を用いた経路計画の補正による経路計画の精度低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係る経路計画生成装置を示すブロック図である。
【
図2】左右の白線が平行条件を満たさない状況を説明するための平面図である。
【
図3】経路計画生成装置の経路計画補正方法の一例を示すフローチャートである。
【
図4】(a)平行条件判定処理の一例を示すフローチャートである。(b)平行条件判定処理の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る経路計画生成装置100を示すブロック図である。
図1に示す経路計画生成装置100は、車載カメラ1の撮像画像に基づいて、自車両の経路計画を生成する装置である。経路計画生成装置100は、自車両に搭載されていてもよく、機能の一部が自車両と通信可能なサーバで実行される態様であってもよい。経路計画生成装置100は、生成した経路計画を自動運転装置や運転支援装置などに出力する。経路計画生成装置100は、自動運転装置又は運転支援装置の一部であってもよい。
【0016】
経路計画とは、自車両の走行する経路に関する計画である。経路計画は、例えば自車両の自動運転又は運転支援において利用される。経路計画は、地図上で連続する座標データであってもよく、走行車線の目標縦位置(走行車線の延在方向における制御目標の位置)に対する目標横位置(走行車線の幅方向における制御目標の位置)を含むデータであってもよく、走行車線の目標縦位置に対する目標操舵角を含むデータであってもよい。経路計画は、車線に対する目標横位置の時系列データや目標操舵角の時系列データであってもよい。目標操舵角に代えて目標操舵トルクを用いてもよい。
【0017】
[経路計画生成装置の構成]
以下、本実施形態に係る経路計画生成装置100の構成について説明する。
図1に示すように、経路計画生成装置100は、装置を統括的に管理するECU[Electronic Control Unit]10を備えている。ECU10は、CPU[CentralProcessing Unit]とROM[Read Only Memory]又はRAM[Random Access Memory]などの記憶部を有する電子制御ユニットである。ECU10では、例えば、記憶部に記憶されているプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。ECU10は、複数の電子ユニットから構成されていてもよい。
【0018】
ECU10は、車載カメラ1、レーダセンサ2、GNSS受信部3、地図データベース4と接続されている。
【0019】
車載カメラ1は、自車両の外部状況を撮像する撮像機器である。車載カメラ1は、例えば自車両のフロントガラスの裏側に設けられ、自車両の前方を撮像する。車載カメラ1は、車両の後方や側方を撮像する複数のカメラを含んで構成されていてもよい。車載カメラ1は、自車両の外部の撮像画像をECU10へ送信する。
【0020】
レーダセンサ2は、電波(例えばミリ波)又は光を利用して自車両の周囲の物体を検出する検出機器である。レーダセンサ2には、例えば、ミリ波レーダ又はライダー[LIDAR:Light Detection and Ranging]が含まれる。レーダセンサ2は、電波又は光を自車両の周囲に送信し、物体で反射された電波又は光を受信することで物体を検出する。レーダセンサ2は、物体検出に関する物体検出情報をECU10へ送信する。物体には、道路の白線が含まれていてもよい。
【0021】
GNSS受信部3は、測位衛星から信号を受信することにより、自車両の位置(例えば自車両の緯度及び経度)を測定する。GNSS受信部3は、測定した自車両の位置情報をECU10へ送信する。
【0022】
地図データベース4は、地図情報を記憶するデータベースである。地図データベース4は、例えば、自車両に搭載されたHDD[Hard Disk Drive]などの記憶装置内に形成されている。地図情報には、道路の位置情報、道路形状の情報(例えばカーブ、直線路の種別、カーブの曲率等)、車線幅の情報、交差点及び分岐点の位置情報、及び構造物の位置情報などが含まれる。なお、地図データベース4は、自車両と通信可能なサーバに形成されていてもよい。
【0023】
次に、ECU10の機能的構成について説明する。
図1に示すように、ECU10は、経路計画生成部11、白線認識部12、及び経路計画補正部13を有している。なお、以下に説明するECU10の機能の一部は、自車両と通信可能なサーバにおいて実行される態様であってもよい。
【0024】
経路計画生成部11は、車載カメラ1の撮像画像に基づいて、自車両の経路計画を生成する。経路計画生成部11は、車載カメラ1の撮像画像の他、レーダセンサ2の物体検出情報を経路計画の生成に用いてもよい。経路計画生成部11は、GNSS受信部3の測定した自車両の位置情報及び地図データベース4の地図情報を経路計画の生成に用いてもよい。
【0025】
経路計画生成部11は、第一の深層学習モデル11aを用いて経路計画の生成を行う。第一の深層学習モデル11aは、例えば車載カメラ1の撮像画像から経路計画を出力するようにディープラーニングによる学習が行われた機械学習モデルである。第一の深層学習モデル11aを構成するニューラルネットワークは、例えば複数の畳込み層及びプーリング層を含む複数の層を含む畳込みニューラルネットワーク[CNN : Convolutional neural network]である。ニューラルネットワークは、更に再帰型ニューラルネットワーク[RNN : Recurrent neural network]として構成されていてもよい。
【0026】
なお、第一の深層学習モデル11aの入力となる撮像画像には前処理が施されてもよい。前処理には、例えばデータの正規化やデータ欠損の補完、ノイズの除去などが含まれる。前処理には、撮像画像から特徴量を抽出する処理が含まれてもよい。特徴量としては、例えば車線の白線、車線幅、車線の曲率、撮像画像に含まれる障害物、道路標識、路面表示、信号機の点灯状態などのうち少なくとも一つが含まれる。障害物には、他車両などの移動体、ガードレールや壁、電柱、駐車車両などの静止物のうち少なくとも一つが含まれる。経路計画生成部11は、撮像画像と共に上記の特徴量を第一の深層学習モデル11aに入力する態様であってもよい。
【0027】
経路計画生成部11は、車載カメラ1の撮像画像を第一の深層学習モデル11aに入力することで第一の深層学習モデル11aから出力された経路計画を取得(生成)する。経路計画生成部11は、一定時間における撮像画像の時系列データを入力してもよい。経路計画生成部11は、レーダセンサ2の物体検出情報や自車両の周囲の地図情報を第一の深層学習モデル11aに追加入力してもよい。自車両の周囲の地図情報は、自車両の走行道路に関する地図情報であってもよい。
【0028】
白線認識部12は、車載カメラ1の撮像画像に基づいて、自車両の走行車線を形成する左右の白線を認識する。白線認識部12は、経路計画生成部11とは独立して白線認識を実行する。具体的に、白線認識部12は、第二の深層学習モデル12aを用いた白線認識を行う。
【0029】
第二の深層学習モデル12aは、車載カメラ1の撮像画像から白線の認識結果を出力するようにディープラーニングによる学習が行われた機械学習モデルである。第二の深層学習モデル12aを構成するニューラルネットワークは、畳込みニューラルネットワークであってもよく、再帰型ニューラルネットワークであってもよい。第二の深層学習モデル12aを構成するニューラルネットワークは、第一の深層学習モデル11aと同じ種類であってもよく、第一の深層学習モデル11aとは異なる種類のニューラルネットワークであってもよい。
【0030】
白線認識部12は、車載カメラ1の撮像画像を第二の深層学習モデル12aに入力することで第二の深層学習モデル12aから出力された白線の認識結果を取得する。白線認識部12は、一定時間における撮像画像の時系列データを入力してもよい。白線認識部12は、レーダセンサ2の物体検出情報を第二の深層学習モデル12aに追加入力してもよい。白線認識部12は、レーダセンサ2の物体検出情報のうち、白線に関連する特徴を抽出するためのフィルタを通過した情報のみを追加入力する態様であってもよい。
【0031】
白線認識部12は、必ずしも白線認識に第二の深層学習モデル12aを用いる必要はない。白線認識部12は、撮像画像中における輝度の勾配などを用いた白線認識アルゴリズムにより走行車線の白線を認識してもよい。白線認識部12は、エッジ検出、フィルタ平滑化、色空間変換、二値化、ハフ変換、及びパターンマッチングなどのうち少なくとも一つを含む周知の画像処理手法により、走行車線の白線を認識してもよい。この場合、白線認識部12は第二の深層学習モデル12aを有しなくてもよい。
【0032】
経路計画補正部13は、白線認識部12による白線の認識結果を用いて経路計画生成部11の生成した経路計画を補正する。経路計画補正部13は、例えば経路計画における車両の経路(進路)と左右の白線の間の中央位置との車線幅方向の距離が一定距離以上である場合、車両の経路が中央位置に近づくように経路計画を補正する。経路計画の補正方法は、上記の内容に限定されず、周知の補正方法を採用することができる。
【0033】
経路計画補正部13は、白線認識部12の認識した走行車線の左右の白線が平行条件を満たしているか否かを判定する。平行条件とは、左右の白線が略平行関係を有するか否かを判定するために予め設定された条件である。経路計画補正部13は、左右の白線が平行条件を満たしていない場合には、白線認識部12による白線の認識結果を用いた経路計画の補正を行わない。経路計画補正部13は、左右の白線が平行条件を満たしている場合に、白線の認識結果を用いた経路計画の補正を行う。経路計画補正部13は、例えば走行車線の延在方向の一定間隔で白線の平行条件を判定する。走行車線の延在方向に代えて車両の前後方向を用いてもよい。
【0034】
具体的に、経路計画補正部13は、自車両の走行車線が直線路である場合において、白線認識部12の認識した左右の白線の成す角度が許容角度閾値以上であるとき、左右の白線が平行条件を満たしていないと判定する。許容角度閾値は白線の平行条件を判定するために設定される閾値である。許容角度閾値は5°であってもよく、3°であってもよく、1°であってもよい。許容角度閾値は白線認識部12における白線の認識精度に起因する角度算出の誤差量より大きい値とすることができる。
【0035】
経路計画補正部13は、例えばGNSS受信部3の測定した自車両の位置情報及び地図データベース4の地図情報に基づいて、自車両の走行車線が直線路であるか否かを判定する。経路計画補正部13は、経路計画生成部11の生成した経路計画における経路の曲率から自車両の走行車線が直線路であるか否かを判定してもよい。経路計画補正部13は、白線認識部12の認識した左右の白線の曲率の平均値から自車両の走行車線が直線路であるか否かを判定してもよい。
【0036】
経路計画補正部13は、自車両の走行車線が直線路であると判定した場合に、左右の白線の成す角度を算出する。経路計画補正部13は、白線認識部12による白線の認識結果に基づいて、周知の画像処理手法により、一定間隔における左右それぞれの白線の延在方向を認識する。経路計画補正部13は、それぞれの白線を延長させて交差したときの角度を左右の白線の角度として算出する。経路計画補正部13は、左右の白線の成す角度が許容角度閾値以上であるとき、左右の白線が平行条件を満たしていないと判定する。
【0037】
また、経路計画補正部13は、車線幅を用いて平行条件を判定してもよい。経路計画補正部13は、白線認識部12により白線の認識結果が更新される度に白線の認識結果に基づいて走行車線の車線幅を算出する。車線幅は、走行車線の幅方向における左右の白線の間隔に相当する。なお、走行車線の幅方向に代えて車両の幅方向を用いてもよい。
【0038】
経路計画補正部13は、更新前の車線幅と更新後の車線幅との車線幅差分を演算する。車線幅差分は絶対値である。車線幅差分は、更新前の車線幅に対する更新後の車線幅の拡大に応じて増加する指標であればよい。経路計画補正部13は、車線幅差分が許容差分閾値以上である場合に、走行車線の左右の白線が平行条件を満たしていないと判定する。許容差分閾値は白線の平行条件を判定するために設定される閾値である。許容差分閾値は白線認識部12における白線の認識精度に起因する車線幅差分の誤差量より大きい値とすることができる。経路計画補正部13は、左右の白線が平行条件を満たしていない場合には、白線の認識結果を用いた経路計画の補正を行わない。
【0039】
ここで、
図2は左右の白線が平行条件を満たさない状況を説明するための平面図である。
図2は、自車両が道路の分岐点に進入する状況を示している。
図2に、自車両M、自車両Mの経路計画における経路C、走行車線L1、分岐車線L2、白線W1~W3を示す。経路計画における経路Cは、経路計画生成部11により生成された経路計画に対応する経路である。走行車線L1は、自車両Mが走行中の車線である。分岐車線L2は、走行車線L1から分岐して走行車線L1とは異なる方向に向かう車線である。
【0040】
図2に示す白線W1は、分岐するまで走行車線L1の左側の白線を形成する。白線W1は、分岐後の分岐車線L2の左側の白線となる。白線W1が走行車線L1の延在方向に対して傾斜して分岐車線L2が形成される範囲を分岐範囲Esとして示す。白線W2は走行車線L1の右側の白線である。白線W3は、走行車線L1と分岐車線L2を分ける破線である。
【0041】
図2に示す状況において、経路計画補正部13は、分岐範囲Esでは白線W1と白線W2の平行条件が満たされないため、白線認識部12による白線W1及び白線W2の認識結果を用いた経路計画の補正を行わない。分岐範囲Esでは、白線W1が走行車線L1に対して斜め方向に延びており、白線W1と白線W2との成す角度が許容角度閾値以上であるため平行条件が満たされないものとする。分岐範囲Esでは、白線W1が白線W2から離れる方向に傾斜しているため車線幅差分も許容差分閾値以上である。このため、分岐範囲Esの白線認識結果を用いて経路計画を補正すると矢印Caとして示すような不適切な補正となるおそれがある。
【0042】
経路計画補正部13は、白線W1と白線W2の平行条件が満たされない場合に、白線認識部12による白線W1及び白線W2の認識結果を用いた経路計画の補正を行わないことで、経路計画に対して不適切な補正を行うことを避けることができる。経路計画補正部13は、経路計画の補正を行った場合、又は、経路計画の補正を行わない場合、経路計画を自動運転装置や運転支援装置などに出力する。
【0043】
[経路計画生成装置の経路計画補正方法]
次に、本実施形態に係る経路計画生成装置100の経路計画補正方法を図面を参照して説明する。
図3は、経路計画生成装置100の経路計画補正方法の一例を示すフローチャートである。経路計画補正方法は、例えば経路計画を利用する運転支援制御又は自動運転制御が行なわれる場合に実行される。
【0044】
図3に示すように、経路計画生成装置100のECU10は、S1として、車載カメラ1の撮像画像の取得を行う。ECU10は、車載カメラ1の撮像した自車両Mの前方を含む車両外部の画像を取得する。その後、ECU10はS2に移行する。
【0045】
S2として、ECU10は、経路計画生成部11により第一の深層学習モデル11aを用いた経路計画の生成を行う。経路計画生成部11は、車載カメラ1の撮像画像を第一の深層学習モデル11aに入力することで経路計画を生成する。その後、ECU10はS3に移行する。
【0046】
S3において、ECU10は、白線認識部12により第二の深層学習モデル12aを用いた白線認識を行う。白線認識部12は、車載カメラ1の撮像画像を第二の深層学習モデル12aに入力することで走行車線の左右の白線を認識する。なお、白線認識部12は、必ずしも白線認識に第二の深層学習モデル12aを用いる必要はない。その後、ECU10はS4に移行する。
【0047】
S4において、ECU10は、経路計画補正部13により走行車線の左右の白線が平行条件を満たすか否かを判定する。平行条件の判定のフローについて詳しくは後述する。ECU10は、走行車線の左右の白線が平行条件を満たすと判定された場合(S4:YES)、S5に移行する。ECU10は、走行車線の左右の白線が平行条件を満たすと判定されなかった場合(S4:NO)、S6に移行する。
【0048】
S5において、ECU10は、白線認識部12による白線の認識結果を用いて経路計画生成部11の生成した経路計画を補正する。補正方法は特に限定されない。その後、ECU10はS6に移行する。
【0049】
S6において、ECU10は、経路計画を自動運転装置や運転支援装置などに出力する。その後、ECU10は経路計画補正方法を完了する。なお、
図3のS2とS3は順番が逆であってもよく、同時に実行されてもよい。
【0050】
図4(a)は、平行条件判定処理の一例を示すフローチャートである。平行条件判定処理は、
図3のフローチャートのS4に対応する。
【0051】
図4(a)に示すように、ECU10は、S10として、経路計画補正部13により自車両の走行車線が直線路であるか否かを判定する。経路計画補正部13は、例えばGNSS受信部3の測定した自車両の位置情報及び地図データベース4の地図情報に基づいて、自車両の走行車線が直線路であるか否かを判定する。ECU10は、走行車線が直線路であると判定した場合(S10:YES)、S11に移行する。ECU10は、走行車線が直線路であると判定しなかった場合(S10:NO)、平行条件判定処理を終了する。
【0052】
S11において、ECU10は、経路計画補正部13により左右の白線の成す角度が許容角度閾値以上であるか否かを判定する。ECU10は、左右の白線の成す角度が許容角度閾値以上であると判定した場合(S11:YES)、S12に移行する。ECU10は、左右の白線の成す角度が許容角度閾値以上であると判定しなかった場合(S11:NO)、平行条件判定処理を終了する。
【0053】
S12において、ECU10は、経路計画補正部13により走行車線の左右の白線が平行条件を満たしていないと判定する。その後、ECU10は平行条件判定処理を終了する。
【0054】
図4(b)は、平行条件判定処理の他の例を示すフローチャートである。
図4(b)に示すように、ECU10は、S20として、経路計画補正部13により走行車線の車線幅の算出を行う。走行車線の車線幅の算出は、平行条件判定処理が白線認識部12により白線の認識結果が更新される度に実行されてもよい。その後、ECU10はS21に移行する。
【0055】
S21において、経路計画補正部13により更新前の車線幅と更新後の車線幅との車線幅差分が許容差分閾値以上であるか否かを判定する。ECU10は、車線幅差分が許容差分閾値以上であると判定した場合(S21:YES)、S22に移行する。ECU10は、車線幅差分が許容差分閾値以上であると判定しなかった場合(S21:NO)、平行条件判定処理を終了する。
【0056】
S22において、ECU10は、経路計画補正部13により走行車線の左右の白線が平行条件を満たしていないと判定する。その後、ECU10は平行条件判定処理を終了する。
【0057】
ECU10は、何れの平行条件判定処理においても平行条件を満たしていないと判定されなかった場合、走行車線の左右の白線が平行条件を満たすと判定する。なお、
図4(a)及び
図4(b)に示す平行条件判定処理は両方とも実行される態様であってもよく、片方のみ実行される態様であってもよい。その他の方法で平行条件判定処理が実行されてもよい。
【0058】
以上説明した本実施形態に係る経路計画生成装置100によれば、分岐路や交差点、車線数が増減する箇所など左右の白線の関係が変化する箇所においては、白線の認識結果を用いた経路計画の補正を行うことで経路計画の精度が低下することがあるため、左右の白線が平行条件を満たさない場合には、白線の認識結果を用いた経路計画の補正を行わないことで、補正による経路計画の精度低下を抑制することができる。
【0059】
また、経路計画生成装置100では、車載カメラの撮像画像から第一の深層学習モデルと異なる第二の深層学習モデルを用いて左右の白線を認識することで、第一の深層学習モデルに起因する経路計画の生成ミスが存在したとしても第二の深層学習モデルを用いて認識された左右の白線により補正することで、経路計画の精度低下を抑制することができる。
【0060】
また、経路計画生成装置100では、分岐路や交差点、車線数が増減する箇所など左右の白線の関係が変化する箇所では左右の白線の成す角度が大きくなることから、左右の白線の成す角度が許容角度閾値以上であるとき、左右の白線が平行条件を満たしていないと判定することで、白線の認識結果を用いた補正による経路計画の精度低下を抑制することができる。
【0061】
或いは、経路計画生成装置100では、分岐路や交差点、車線数が増減する箇所など左右の白線の関係が変化する箇所では、更新前の車線幅と更新後の車線幅との車線幅差分が大きくなることから、車線幅差分が許容差分閾値以上であるとき、左右の白線が平行条件を満たしていないと判定することで、白線の認識結果を用いた補正による経路計画の精度低下を抑制することができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。
【0063】
なお、経路計画生成装置100は、必ずしもレーダセンサ2、GNSS受信部3、及び地図データベース4を用いる必要はない。経路計画生成装置100は、車載カメラ1の撮像画像のみを用いて経路生成及び補正を行う態様であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…車載カメラ、2…レーダセンサ、3…GNSS受信部、4…地図データベース、10…ECU、11…経路計画生成部、12…白線認識部、13…経路計画補正部、11a…第一の深層学習モデル、12a…第二の深層学習モデル、100…経路計画生成装置。