(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172883
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】架橋性ゴム組成物及びゴム緩衝材
(51)【国際特許分類】
C08L 9/02 20060101AFI20241205BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20241205BHJP
【FI】
C08L9/02
C08K3/013
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090921
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】高津 知道
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 真佐之
(72)【発明者】
【氏名】小澤 太基
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC071
4J002BK002
4J002CC032
4J002CE002
4J002DA036
4J002DA047
4J002DE146
4J002DJ016
4J002FD016
4J002FD147
4J002GM00
(57)【要約】
【課題】低温環境下においても耐久性に優れるゴム緩衝材を得られる架橋性ゴム組成物、及びこれを架橋してなるゴム緩衝材を提供する。
【解決手段】本発明によれば、アクリロニトリルブタジエン系ゴムを含むゴム成分100質量部と、粒子状無機化合物50~300質量部と、粘着付与剤樹脂1~50質量部と、架橋剤0.1~10質量部と、を含有する、架橋性ゴム組成物が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリロニトリルブタジエン系ゴムを含むゴム成分100質量部と、
粒子状無機化合物50~300質量部と、
粘着付与剤樹脂1~50質量部と、
架橋剤0.1~10質量部と、
を含有する、架橋性ゴム組成物。
【請求項2】
前記アクリロニトリルブタジエン系ゴムのアクリロニトリル含有量が16~30質量%である、請求項1に記載の架橋性ゴム組成物。
【請求項3】
前記アクリロニトリルブタジエン系ゴムは、アクリロニトリルブタジエンゴム及び/又は水素添加アクリロニトリルブタジエンゴムを含む、請求項1に記載の架橋性ゴム組成物。
【請求項4】
前記粒子状無機化合物が、カーボンブラック及び/又はシリカを含む、請求項1に記載の架橋性ゴム組成物。
【請求項5】
前記粘着付与剤樹脂が、芳香族骨格を有する樹脂を含む、請求項1に記載の架橋性ゴム組成物。
【請求項6】
衝撃を吸収するためのゴム緩衝材に使用される、請求項1~請求項5の何れか1つに記載の架橋性ゴム組成物。
【請求項7】
釘打ち機のピストンによる衝撃を吸収するためのゴム緩衝材に使用される、請求項1~請求項5の何れか1つに記載の架橋性ゴム組成物。
【請求項8】
請求項1~請求項5の何れか1つに記載の架橋性ゴム組成物の架橋物であるゴム緩衝材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋性ゴム組成物に関し、より詳しくは、低温環境下における繰り返しの衝撃に対する耐久性(耐衝撃性)に優れたアクリロニトリルブタジエン系ゴムを含む組成物に関する。また本発明は、当該架橋性ゴム組成物を用いたゴム緩衝材に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム製の緩衝材(以下、ゴム緩衝材)は、装置や工具に組み込まれる部材であって、稼働する他の部材による衝撃の吸収を担う。そのような装置又は工具としては、例えば、空気圧によってシリンダ内のピストンを駆動させ、釘、針、ネジ等を打ち込む釘打ち機である。釘打ち機は、繰り返しのピストン運動による衝撃を吸収するためのバンパと呼ばれる円筒状のゴム緩衝材を備えている。
【0003】
また、ゴム緩衝材は、ピストン部位のエアーが漏れないようにパッキングする部品でもあり、ゴム緩衝材が破損してしまうとエアー漏れによりピストンが戻らなくなってしまったり、釘打ち機自体が破損してしまったりする。このようなエアー漏れや破損を防ぐためゴム緩衝材を適切に交換する必要があるが、交換の手間やコストを低減するために繰り返しの衝撃に対する耐久性(耐衝撃性)に優れることが求められる。
【0004】
ゴム緩衝材の耐衝撃性を向上させる手段として、ゴム緩衝材の大型化が考えられるが、用いられる装置や工具等も同時に大型化及び重量化してしまう。釘打ち機の小型化の観点からはゴム緩衝材の大型化は望ましくない。
【0005】
特許文献1及び2では、ゴム緩衝材の形状の側面から耐衝撃性の向上が試みられている。
【0006】
また、特許文献3では、アクリロニトリルブタジエンゴムを含むゴム成分と、特定の架橋促進剤、架橋遅延剤を含有する、緩衝材用架橋性ゴム組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-049441号公報
【特許文献2】特開2002-103246号公報
【特許文献3】特開2014-159506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、低温環境(例えば5℃以下)においての作業では、ゴム緩衝材自体が硬くなってしまい、耐久性に課題がある場合があった。
【0009】
本発明の目的は、低温環境下においても耐久性に優れるゴム緩衝材を得られる架橋性ゴム組成物、及びこれを架橋してなるゴム緩衝材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、特定の配合の組成物を用いることにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]アクリロニトリルブタジエン系ゴムを含むゴム成分100質量部と、粒子状無機化合物50~300質量部と、粘着付与剤樹脂1~50質量部と、架橋剤0.1~10質量部と、を含有する、架橋性ゴム組成物。
[2]前記アクリロニトリルブタジエン系ゴムのアクリロニトリル含有量が16~30質量%である、[1]に記載の架橋性ゴム組成物。
[3]前記アクリロニトリルブタジエン系ゴムは、アクリロニトリルブタジエンゴム及び/又は水素添加アクリロニトリルブタジエンゴムを含む、[1]又は[2]に記載の架橋性ゴム組成物。
[4]前記粒子状無機化合物が、カーボンブラック及び/又はシリカを含む、[1]~[3]の何れか1つに記載の架橋性ゴム組成物。
[5]前記粘着付与剤樹脂が、芳香族骨格を有する樹脂を含む、[1]~[4]の何れか1つに記載の架橋性ゴム組成物。
[6]衝撃を吸収するためのゴム緩衝材に使用される、[1]~[5]の何れか1つに記載の架橋性ゴム組成物。
[7]釘打ち機のピストンによる衝撃を吸収するためのゴム緩衝材に使用される、[1]~[6]の何れか1つに記載の架橋性ゴム組成物。
[8][1]~[7]の何れか1つに記載の架橋性ゴム組成物の架橋物であるゴム緩衝材。
【発明の効果】
【0012】
本発明の架橋性ゴム組成物によれば、低温環境下においても耐久性に優れるゴム緩衝材を得られる架橋性ゴム組成物、及びこれを架橋してなるゴム緩衝材を提供することができる。
【0013】
本発明に係る架橋性ゴム組成物を架橋することによる得られる架橋物は、ゴム緩衝材として種々の用途に用いることができるが、特に釘打ち機用の緩衝材として好適に用いることができる。また、当該ゴム緩衝材は、その他の装置や工具における繰り返しの衝撃が生じる箇所に設置するための緩衝材として好適に用いることができる。また、当該ゴム緩衝材は、アクリロニトリルブタジエン系ゴムが耐油性に優れることから、油圧シリンダによる装置や工具等における緩衝材としても有効である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】可撓性試験用接合体の作成方法を説明する図である。
【
図2】可撓性試験用接合体の折り曲げ方向と、角度θを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<架橋性ゴム組成物>
本発明の架橋性ゴム組成物は、アクリロニトリルブタジエンゴム、粒子状無機化合物、粘着付与樹脂、架橋剤、を含有する緩衝材用の架橋性ゴム組成物である。以下、本発明の架橋性ゴム組成物が含有する各成分及び任意で含有される成分について詳細に説明する。
【0016】
<ゴム成分>
ゴム成分は、アクリロニトリルブタジエン系ゴムを含む。アクリロニトリルブタジエン系ゴムは、アクリロニトリルブタジエンゴム(以下、「NRB」とも称する)及び/又は水素添加アクリロニトリルブタジエンゴム(以下、「水素添加NBR」とも称する)を含む。アクリロニトリルブタジエンゴムや水素添加アクリロニトリルブタジエンゴムを用いることにより、ウレタンを用いる場合に比べて安価に架橋性ゴム組成物を作製することができる。
【0017】
アクリロニトリルブタジエン系ゴムにおけるアクリロニトリル由来の構成単位の含有率は、好ましくは16~34質量%であり、より好ましくは17~24質量%である。アクリロニトリル由来の構成単位の含有率は、具体的には例えば、16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。アクリロニトリル由来の構成単位の含有率がこの範囲内であることにより、低温での可撓性が良くなり、低温環境下での耐久性に優れる架橋性ゴム組成物を得ることができる。なお、アクリロニトリルブタジエン系ゴムが、複数のアクリロニトリルブタジエン系ゴムを含む(例えば、2種のNBR、或いはNRB及び水素添加NBRをともに含む等)場合には、これらに含まれるアクリロニトリル由来の構成単位の合計の含有率である。
【0018】
NBRは、アクリロニトリル及びブタジエンを含むモノマー原料を共重合して得られる重合体であって、アクリロニトリルに由来する構成単位及びブタジエンに由来する構成単位を有する。NBRは、モノマー由来の構成単位としてアクリロニトリルに由来する構成単位及びブタジエンに由来する構成単位のみを有していてもよいが、これら以外の他のモノマーに由来する構成単位を含むこともできる。他のモノマーの具体例は、例えば、(メタ)アクリル酸等のエチレン性不飽和カルボン酸;エチレン性不飽和カルボン酸のエステル(例えばアルキルエステル);イソプレンを含む。他のモノマーを共重合させることにより、ゴム組成物の架橋特性や、得られる緩衝材の耐衝撃性、引張強度、硬度等のさらなる改善を図ることができる場合がある。他のモノマーは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
NBRにおける上記他のモノマー由来の構成単位の含有率は、例えば20質量%以下であり、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは8質量%以下である。また、NBRにおける上記他のモノマー由来の構成単位の含有率は、具体的には例えば、0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。水素添加NBRは、上述のNBRにおいてブタジエン由来の構成単位の一部が水素添加されたゴムである。水素添加量はヨウ素価として表せられ、好ましくはヨウ素価8~57mg/100mgの範囲である。なお、上記他のモノマー由来の構成単位の含有率は、アクリロニトリルブタジエン系ゴムが、複数のアクリロニトリルブタジエン系ゴムを含む(例えば、2種のNBR、或いはNRB及び水素添加NBRをともに含む等)場合には、これらに含まれる上記他のモノマー由来の構成単位の合計の含有率である。
【0020】
ゴム成分は、アクリロニトリルブタジエン系ゴム以外の他のゴム成分を含むことができる。他のゴム成分の具体例は、例えば、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、ウレタンゴム、ブチルゴム(IIR)、フッ素ゴム(FKM)、シリコーンゴム(Q)を含む。他のゴム成分は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
ゴム成分は、アクリロニトリルブタジエン系ゴムを、好ましくは70~100質量%含み、より好ましくは85~100質量%含み、さらに好ましくは95~100質量%含む。ゴム成分におけるアクリロニトリルブタジエン系ゴムの含有量は、具体的には例えば、70,75,80,85,90,91,92,93,94,95,96,97,98,99,100質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。また、他のゴム成分の含有率は、本発明の趣旨又は本発明が奏する効果を阻害しない範囲内であることが好ましい。具体的には、ゴム成分中における他のゴム成分の含有率は、30質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%であることが特に好ましい。
【0022】
<粒子状無機化合物>
粒子状無機化合物の形状は、例えば、球状、楕円球状、立方体状、直方体状、ランダム形状などが挙げられ、中空であっても中実であってもよい。粒子状無機化合物の平均粒子径は、例えば10nm~1000μmであり、30nm~500μmが好ましく、40nm~300μmがさらに好ましく、50nm~100μmがさらに好ましい。「平均粒子径」は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
粒子状無機化合物としては、例えば、アルミナ、シリカ、アルミノシリケート、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類等の金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の含水無機物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩;硫酸カルシウム、けい酸カルシウム等のカルシウム塩;ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化けい素、カーボンブラック、グラファイト、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化けい素、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、フライアッシュ、無機中空フィラー、パーライト、黒曜岩、真珠岩、松脂岩、珪藻土、脱水汚泥、ホウ素、四ホウ酸ナトリウム水和物(ホウ砂)、リン酸系化合物、スメクタイト、ベントナイト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト系粘土鉱物;絹雲母(セリサイト)、イライト、海緑石(グローコナイト)、緑泥石(クロライト)、滑石(タルク)、粉剤ガラス等が挙げられる。なお、これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
なかでも、本発明の架橋性ゴム組成物は、カーボンブラック及び/又はシリカを含有することが好ましい。
【0025】
粒子状無機化合物の含有量は、ゴム成分100重量部に対して50~300質量部であって、60~260質量部が好ましく、70~210質量部がさらに好ましい。粒子状無機化合物の含有量が50質量部未満だと、硬度が低くなる場合があり、粒子状無機化合物の含有量が250質量部を超えると、硬くなり過ぎてしまい可撓性が悪くなる場合がある。粒子状無機化合物の含有量は、ゴム成分100重量部に対して、具体的には例えば、50,60,70,80,90,100,110,120,130,140,150,160,170,180,190,200,210,220,230,240,250,260,270,280,290,300質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0026】
<粘着付与剤樹脂>
粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン系樹脂、水素化ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、水素化テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、フェノール樹脂、スチレン系樹脂、クマロン樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、アスファルト、石油ナフサの熱分解で生成するペンテン、イソプレン、ピペリン、1,3-ペンタジエン等のC5留分を共重合して得られるC5系石油樹脂(脂肪族系炭化樹脂)、石油ナフサの熱分解で生成するインデン、ビニルトルエン等のC9留分を共重合して得られるC9系石油樹脂(芳香族系炭化水素樹脂)、C5/C9系石油樹脂(脂環族炭化水素樹脂)、及びこれらの石油樹脂を水素化した水素化石油樹脂や脂環族飽和炭化水素樹脂等が挙げられる。なお、これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
なかでも、本発明の架橋性ゴム組成物は、クマロン樹脂、フェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、C9系石油樹脂(芳香族系樹脂)、C5/C9系石油樹脂(脂環族炭化水素樹脂)などの、芳香族骨格を有する樹脂を含有することが好ましい。
【0028】
粘着付与剤樹脂の含有量は、ゴム成分100重量部に対して1~50質量部であって、3~40質量部が好ましく、6~25質量部がさらに好ましい。粘着付与剤樹脂の含有量が1質量部未満だと、低温での可撓性が悪くなる場合があり、粘着付与剤樹脂の含有量が50質量部を超えると、硬度や耐変形性の低下、及びベタツキが発生してしまい常温での耐用回数が悪くなる場合がある。粘着付与剤樹脂の含有量は、ゴム成分100重量部に対して、具体的には例えば、1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,15,20,25,30,35,40,45,50であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0029】
<架橋剤>
本発明の架橋性ゴム組成物は、架橋剤を含む。架橋剤としては、硫黄系架橋剤、有機過酸化物架橋剤等を用いることができる。架橋剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
硫黄系架橋剤としては、例えば、粉末硫黄、硫黄華、沈降性硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄等の硫黄;塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、高分子多硫化物等の硫黄化合物が挙げられる。硫黄系架橋剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
有機過酸化物架橋剤としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルジクミルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α'-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、パラクロルベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーベンゾエート、3,3,5-トリメチルヘキサノンパーオキサイド、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン等を挙げることができる。有機過酸化物架橋剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
架橋剤の含有量は、ゴム成分100重量部に対して0.1~10質量部であって、0.7~8質量部が好ましく、1.3~5質量部がさらに好ましい。架橋剤の含有量が0.1質量部未満だと、硬度や耐変形性が悪くなる場合があり、架橋剤の含有量が10質量部を超えると、硬くなり過ぎてしまい可撓性が悪くなる場合がある。架橋剤の含有量は、ゴム成分100重量部に対して具体的には例えば、0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0033】
<その他の含有成分>
本発明の架橋性ゴム組成物は、必要に応じて、上述の成分以外の他の成分を含有することができる。他の含有成分としては、例えば、繊維状化合物、架橋促進剤、架橋遅延剤、共架橋剤、老化防止剤、酸化防止剤、加工助剤(ステアリン酸、酸化亜鉛等)、安定剤、粘着付与剤、シランカップリング剤、可塑剤、難燃剤、離型剤、ワックス類、滑剤等の添加剤を挙げることができる。添加剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
繊維状化合物は、形状が繊維状であればよく、繊維状化合物の断面形状としては、例えば、円形、楕円形、多角形などが挙げられる。繊維状化合物の長さLと直径Dの比L/Dは、例えば、10超であり、50以上が好ましく、100以上がさらに好ましい。L/Dの上限は、特に規定されないが、例えば、10000である。繊維状化合物の直径Dは、例えば、1~100μmであり、2~50μmが好ましく、5~20μmがさらに好ましい。繊維状化合物の長さLは、例えば、0.05~10mmであり、0.1~8mmが好ましく、0.2~5mmがさらに好ましい。繊維状化合物には、無機繊維状化合物と有機繊維状化合物の2つがある。繊維状化合物は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
無機繊維化合物としては、例えば、ガラス繊維(Eガラス繊維、Cガラス繊維、Sガラス繊維、Dガラス繊維)、岩綿、セラミック繊維(シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維)、ジルコニア繊維、カーボン繊維、バルクアルカリアースシリケート繊維、石膏繊維、炭素繊維、金属繊維、スラグ繊維、バサルト繊維等を挙げることができる。
【0036】
有機繊維化合物としてはメタ系アラミド繊維、パラ系アラミド繊維、アミド系繊維、パルプ繊維、セルロース繊維、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維、ポリアリレート繊維等を挙げることができる。
【0037】
架橋促進剤の具体例としては、例えば、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド及びテトラアルキルチウラムジスルフィド等を上げることができる。架橋促進剤は、添加しないか極少量の添加(例えば、ゴム成分100重量部に対して1質量部未満)に留めることも可能であるが、一態様においては架橋促進剤の含有量は、架橋速度の調整を目的として、ゴム成分100重量部に対して0.05~10質量部であってもよく、0.1~8質量部がより好ましく、0.2~5質量部がさらに好ましい場合もある。
【0038】
架橋遅延剤の具体例としては、例えば、N-(シクロヘキシルチオ)フタルイミド、N-(2-エチルヘキシルチオ)フタルイミド、N-(シクロヘキシルチオ)マレイミド、N-(4-t-ブチルフェニルチオ)スクシンイミド等のチオイミド誘導体;安息香酸、サリチル酸等の芳香族モノカルボン酸;N-イソプロピルチオ-N-シクロヘキシル-ベンゾチアジル-2-スルホンアミド、N-シクロヘキシル-N-トリクロロメチルチオ-ベンジル-2-スルホンアミド、N-フェニル-N-トリクロロメチルチオベンゼンスルホンアミド等のアミド誘導体;オルトフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物等を挙げることができる。架橋遅延剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
共架橋剤の具体例としては、例えば、キノンジオキシム、エチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,2-ポリブタジエン、メタクリル酸金属塩、アクリル酸金属塩等を挙げることができる。共架橋剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
老化防止剤の具体例としては、例えば、フェノール誘導体、芳香族アミン誘導体、アミン-ケトン縮合物、ベンズイミダゾール誘導体、ジチオカルバミン酸誘導体、チオウレア誘導体等を挙げることができる。老化防止剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
本発明の架橋性ゴム組成物は、上述の含有成分を均一に混練りすることにより調製できる。混練り機としては、例えば、ミキシングロール、加圧ニーダー、インターナルミキサー(バンバリーミキサー)等の従来公知のものを用いることができる。この際、各配合成分のうち、架橋反応に寄与する成分(架橋促進剤、架橋遅延剤、架橋剤等)を除く成分を先に均一に混練しておき、その後、架橋反応に寄与する成分を混練するようにしてもよい。
【0042】
<ゴム緩衝材>
本発明のゴム緩衝材は、上述の本発明に係る架橋性ゴム組成物の架橋物からなる成形体である。ゴム緩衝材は、架橋性ゴム組成物を架橋(加硫)・成形することにより作製することができる。ゴム緩衝材の架橋・成形方法としては、インジェクション成形、圧縮成形、移送成形等の従来公知の方法を採用することができる。
【0043】
成形時における加熱温度(架橋温度)は、例えば100~200℃程度であり、加熱時間(架橋時間)は、例えば0.5~120分程度である。
【0044】
本発明に係る架橋性ゴム組成物を架橋することによる得られる架橋物は、ゴム緩衝材として種々の用途に用いることができるが、特に釘打ち機用の緩衝材として好適に用いることができる。また、当該ゴム緩衝材は、その他の装置や工具における繰り返しの衝撃が生じる箇所に設置するための緩衝材として好適に用いることができる。また、当該ゴム緩衝材は、アクリロニトリルブタジエン系ゴムが耐油性に優れることから、油圧シリンダによる装置や工具等における緩衝材としても有効である。
【実施例0045】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
<架橋性ゴム組成物の調製及びゴム緩衝材の作製>
架橋性ゴム組成物を調製し、調整した架橋性ゴム組成物を用いてゴム緩衝材を作製した。まず、表1~表6に示される配合組成に従って(表における配合量の単位は質量部である)、ゴム成分(NBR/水素添加NBR)、粒子状無機化合物、粘着付与剤樹脂の所定量を加圧ニーダーにより混練した。この際、加圧ニーダーの回転速度は30rpm、混練時間は混練物の最大温度が120℃に到達するまでの時間とした。冷却後、得られた混練物に、架橋剤を投入し、ミキシングロールにより混練を行って、架橋性ゴム組成物を調製した。
【0047】
次に、得られた架橋性ゴム組成物を160~180℃の温度でコンプレッション(直圧)成形機を用いて成形及び架橋を行って、ゴム緩衝材(試験体)を得た。
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
実施例及び比較例で用いた各成分の詳細は次のとおりである。
<ゴム成分>
・NBR15:JSR株式会社製「N260S」、アクリロニトリル量15質量%
・NBR16:「N260N」68質量部と「Nipol DN401」32質量部を混ぜ合わせてたもの:アクリロニトリル量16質量%
・NBR17:「N260N」34質量部と「Nipol DN401」66質量部を混ぜ合わせたもの:アクリロニトリル量17質量%
・NBR18:NBR:日本ゼオン株式会社製「Nipol DN401」、アクリロニトリル18質量%
・NBR19.5:JSR株式会社製「N250S」、アクリロニトリル量19.5質量%
・NBR21:「Nipol DN401」57質量部と「N240S」43質量部を混ぜ合わせたもの:アクリロニトリル量21質量%
・NBR22:「Nipol DN401」43質量部と「N240S」57質量部を混ぜ合わせたもの:アクリロニトリル量22質量%
・NBR23:「Nipol DN401」28質量部と「N240S」72質量部を混ぜ合わせたもの:アクリロニトリル量23質量%
・NBR24:「Nipol DN401」15質量部と「N240S」85質量部を混ぜ合わせたもの:アクリロニトリル量24質量%
・NBR25:JSR株式会社製「N240S」、アクリロニトリル量25質量%
・NBR26:JSR株式会社製「N640」、アクリロニトリル量26質量%
・NBR28:日本ゼオン株式会社製「Nipol DN2850」、アクリロニトリル28質量%
・NBR29:JSR株式会社製「N241」、アクリロニトリル量29質量%
・NBR33.5:日本ゼオン株式会社製「Nipol 1042」、アクリロニトリル33.5質量%
・NBR35:日本ゼオン株式会社製「Nipol DN1201」、アクリロニトリル35質量%
・水素添加NBR(HNBR18.6):日本ゼオン株式会社製「Zetpol 4310」、アクリルニトリル量18.6質量%、ヨウ素価15mg/100mg
・水素添加NBR(HNBR23.6):日本ゼオン株式会社製「Zetpol 3310」、アクリルニトリル量23.6質量%、ヨウ素価15mg/100mg
・水素添加NBR(HNBR29):「Zetpol 4310」41質量部と「Zetpol 2030L」59質量部を混ぜ合わせたもの:アクリロニトリル量29質量%
※Zetpol 2030Lのアクリロニトリル量は36.2質量%、ヨウ素価56.6mg/100mg
<粒子状無機化合物>
・カーボンブラック:旭カーボン株式会社製「旭カーボン#15」、平均粒子径122nm
・シリカ:東ソー・シリカ株式会社製「Nipsil VN3」、平均粒子径18μm
・水酸化アルミニウム:住友化学株式会社製「C-301N」、平均粒子径1.5μm
<粘着付与剤樹脂>
・クマロン樹脂:日塗化学株式会社製「クマロンG-90」、軟化点90℃
・フェノール樹脂:昭和電工マテリアルズ株式会社製「PR1501」、軟化点85~100℃
・テルペンフェノール樹脂:ヤスハラケミカル株式会社製「YSポリスターT80」、軟化点80℃
・脂肪族系炭化水素樹脂(C5):日本ゼオン株式会社製「Quintone M100」、軟化点95℃
<架橋剤>
・硫黄:細井化学工業株式会社製
【0055】
<ゴム緩衝材の評価>
得られたゴム緩衝材(試験体)について、下記の項目を測定、評価した。結果を表1~表6に併せて示す。
【0056】
<A硬度>
21℃の環境下にて、2mmの厚さに作製したシート状試験体を3枚重ね合わせ、JIS K6253-3に従い、タイプAデューロメータ硬さ試験機にて硬度を測定した。
◎:75以上
〇:70以上75未満、
△:65以上70未満
×:65未満
【0057】
<常温可撓性>
図1に示すように、厚さ1mm、幅25mm、長さ100mmのSUS板に両面テープを貼ったものを2枚用意し、長さ方向に3mmの間隔をあけて横並びにする。そこに厚さ2mm、幅10mm、長さ100mmのシート状試験体を貼った。そして、
図2に示すように貼り合わせた接合体を、21℃での環境下にて、試料体を貼った面とは逆方向に折り曲げ、試験体に亀裂が入った時点での角度θを測定し、以下の基準で可撓性を判定した。なお、亀裂が入ったときの角度が大きいほど、可撓性が良好であることを示す。
◎:180度の角度でも亀裂なし(表中の亀裂発生角度の行には「>180」と記載)
○:160度以上180度未満の角度で亀裂が発生
△:140度以上160度未満の角度で亀裂が発生
×:140度未満の角度で亀裂が発生
【0058】
<低温可撓性>
図1に示すように、厚さ1mm、幅25mm、長さ100mmのSUS板に両面テープを貼ったものを2枚用意し、長さ方向に3mmの間隔をあけて横並びにする。そこに厚さ2mm、幅10mm、長さ100mmのシート状試験体を貼った。そして、
図2に示すように貼り合わせた接合体を、0℃での環境下にて、試料体を貼った面とは逆方向に折り曲げ、試験体に亀裂が入った時点での角度θを測定し、以下の基準で可撓性を判定した。なお、亀裂が入ったときの角度が大きいほど、可撓性が良好であることを示す。
◎:180度の角度でも亀裂なし(表中の亀裂発生角度の行には「>180」と記載)
○:160度以上180度未満の角度で亀裂が発生
△:140度以上160度未満の角度で亀裂が発生
×:140度未満の角度で亀裂が発生
【0059】
<耐変形性>
厚さ2mm、幅10mm、長さ150mmのシート状試験体に、標線間の長さ(もとの標線間長さ)50mmの標線を引いた。それを100mmのチャック間で挟み、21℃の環境下にて500mm/分の速度で、標線間が100mmになるまで引張り、そのままの状態で1分間放置。その後試験体を取り外し、平らな場所に10分間放置した。放置後の試験体の標線間の長さ(最終的な標線間の長さ)を測定し、下記式により耐変形性を算出した。
(最終的な標線間の長さ-もとの標線間長さ50mm)÷(もとの標線間長さ50mm)×100
◎:20%未満 ※(60-50)÷50×100=20%
〇:20%以上30%未満 ※(65-50)÷50×100=30%
△:30%以上40%未満 ※(70-50)÷50×100=40%
×:40%以上
【0060】
<常温耐用回数>
所定の円筒形状に成形した緩衝材試験体を市販の釘打ち機〔仕様供給圧力0.3~0.8MPaの一般的な釘打ち機〕に装着し、21℃の環境下にて、供給空気圧力0.7MPa、ピストン速度約1.2秒/サイクルの条件で作動試験を行い、ピストンが正常に作動しなくなるまでのピストン作動サイクル数を測定し、これを常温での耐用回数とした。なお、比較例4(※1)では、べたつき発生が発生した。
◎:400万回以上
〇:350万回以上、400万回未満
△:300万回以上、350万回未満
×:300万回未満
【0061】
<低温耐用回数>
所定の円筒形状に成形した緩衝材試験体を市販の釘打ち機〔仕様供給圧力0.3~0.8MPaの一般的な釘打ち機〕に装着し、0℃の環境下にて、供給空気圧力0.7MPa、ピストン速度約1.2秒/サイクルの条件で作動試験を行い、ピストンが正常に作動しなくなるまでのピストン作動サイクル数を測定し、これを低温での耐用回数とした。
◎:300万回以上
〇:250万回以上、300万回未満
△:200万回以上、250万回未満
×:200万回未満
【0062】
ピストンが正常に作動しなくなったか否かは、ゴム緩衝材破損片のピストンシール部への噛み込みや、緩衝材摩耗粉発生による潤滑剤の潤滑効果低下、エアー漏れ等によって、ピストンの正常な作動が阻害されたかに基づいて判断した。ピストン作動の繰り返しの衝撃によってゴム緩衝材は劣化又は損傷し、その程度がある限度を超えると、ピストン動作の阻害要因が発生する。