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特開2024-172892木質バイオマス炭製造装置、及び、木質バイオマス炭製造装置を用いて製造した木質バイオマス炭
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  • 特開-木質バイオマス炭製造装置、及び、木質バイオマス炭製造装置を用いて製造した木質バイオマス炭 図1
  • 特開-木質バイオマス炭製造装置、及び、木質バイオマス炭製造装置を用いて製造した木質バイオマス炭 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172892
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】木質バイオマス炭製造装置、及び、木質バイオマス炭製造装置を用いて製造した木質バイオマス炭
(51)【国際特許分類】
   C10B 53/02 20060101AFI20241205BHJP
   C10L 5/44 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
C10B53/02
C10L5/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090931
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】523207814
【氏名又は名称】武田育苗株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100209129
【弁理士】
【氏名又は名称】山城 正機
(72)【発明者】
【氏名】武田 豊樹
【テーマコード(参考)】
4H012
4H015
【Fターム(参考)】
4H012JA01
4H015AA13
4H015AB01
4H015BA01
4H015BA08
4H015BB03
4H015CB01
(57)【要約】
【課題】発がん性物質であるベンゾピレンの発生を抑制しつつ木質バイオマスから炭化物を製造可能な木質バイオマス炭製造装置を提供する。
【解決手段】本発明の木質バイオマス炭製造装置1は、空気の流入を防ぎつつ原料である木質バイオマスを搬送する密閉性スクリューフィーダ10と、実質的に無酸素下で木質バイオマスの炭化を行う炭化炉20と、炭化炉で生成された木質バイオマス炭をリグニン熱分解温度未満に冷却する密閉性冷却コンベア40と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気の流入を防ぎつつ原料である木質バイオマスを搬送する密閉性スクリューフィーダと、
実質的に無酸素下で前記木質バイオマスの炭化を行う炭化炉と、
前記炭化炉で生成された木質バイオマス炭をリグニン熱分解温度未満に冷却する密閉性冷却コンベアと、
を備える木質バイオマス炭製造装置。
【請求項2】
前記密閉冷却コンベアで冷却された前記木質バイオマス炭を微粉砕する微粉砕機をさらに備える、
請求項1に記載の木質バイオマス炭製造装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の木質バイオマス炭製造装置を用いて製造した木質バイオマス炭であって、
自重の15~50倍の油脂分を吸着する木質バイオマス炭。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の木質バイオマス炭製造装置を用いて製造した木質バイオマス炭であって、
ベンゾピレンを実質的に含有しない木質バイオマス炭。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質バイオマス炭製造装置及び、木質バイオマス炭製造装置を用いて製造した木質バイオマス炭に関し、特に、発がん性物質であるベンゾピレンを実質的に含まない炭化物を製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
桐の木や竹、杉などの木材からなる木質バイオマスを炭化した炭化物はバイオ炭とも呼ばれ、様々なところで活用されている。バイオマスを炭化したバイオ炭は、揮発性物質を多く含んでおり燃焼効率が高く、固形燃料としての利用価値が高い。また、土壌肥沃度の強化や植物成長の改善にも使用できるため農業分野での利用も行われている。さらに、比表面積の大きな多孔性物質であり、細孔に様々な物質を吸着することができるため、脱臭剤や水の浄化にも使用される。また、近年においては、体内に摂取された油脂を吸着除去して腸内環境を整えるためのサプリメントとしても利用されている。
【0003】
このような、炭化物の製造装置として、特許文献1や特許文献2に記載されるような技術が開発されている(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6813249号公報
【特許文献2】特許第6675566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2に開示された技術によると、効率よく安定的に炭化物を製造することができ、製造された炭化物も大きな比表面積を有するものである。
【0006】
しかしながら、木質バイオマスを炭化して炭化物を製造する際に、その条件によっては、発がん性物質であるベンゾピレンが発生することがある。ベンゾピレンは主に木の成分であるリグニンが不完全燃焼することで生成されることが知られている。発がん性物質であるベンゾピレンを含む炭化物を使用すること、特に、サプリメント等で体内に摂取することは、健康上の問題を生じる恐れがあるため、ベンゾピレンを含まない炭化物を使用できることが望ましい。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、発がん性物質であるベンゾピレンの発生を抑制しつつ木質バイオマスから炭化物を製造可能な木質バイオマス炭製造装置、及び、それを用いて製造した木質バイオマス炭を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明の発明者らは、鋭意研究の結果、木質バイオマスを無酸素下で炭化させ、かつ、リグニン熱分解温度域を避けて空気中に取り出すことで、ベンゾピレンの発生を抑制しつつ木質バイオマス炭を製造することができることを見出し、本願発明に至った。
【0009】
本発明では、以下のような解決手段を提供する。
【0010】
第1の特徴に係る木質バイオマス炭製造装置は、空気の流入を防ぎつつ原料である木質バイオマスを搬送する密閉性スクリューフィーダと、実質的に無酸素下で木質バイオマスの炭化を行う炭化炉と、炭化炉で生成された木質バイオマス炭をリグニン熱分解温度未満に冷却する密閉性冷却コンベアと、を備える。
【0011】
第1の特徴に係る発明によれば、密閉性スクリューフィーダを用いることで、空気の流入を防ぎつつ原料である木質バイオマスを炭化炉に供給することができる。そのため、炭化炉に酸素が流入することを抑制しつつ原料を供給することができる。また、炭化炉における炭化処理もまた、実質的に無酸素下で行われるため、炭化炉におけるベンゾピレンの生成を抑制しつつ炭化を行うことができる。さらに、炭化炉で炭化された木質バイオマス炭は密閉冷却コンベアを用いて無酸素下でリグニン熱分解温度未満に冷却することができ、リグニンが熱分解される温度域を避けて木質バイオマス炭を取り出すことができる。
【0012】
第2の特徴に係る木質バイオマス炭製造装置は、第1の特徴に係る木質バイオマス炭製造装置であって、密閉冷却コンベアで冷却された木質バイオマス炭を微粉砕する微粉砕機をさらに備える。
【0013】
第2の特徴に係る発明によれば、微粉砕されるため、サプリメントなどへの応用が容易な粉末状の木質バイオマス炭を生成ができる。しかも、微粉砕しているため、粒状のものよりも大きな比表面積を有ることができ、自重の15倍もの油脂を吸着することが可能な木質バイオマス炭を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、発がん性物質であるベンゾピレンの発生を抑制しつつ木質バイオマスから炭化物を製造可能な木質バイオマス炭製造装置、及び、それを用いて製造した木質バイオマス炭を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本実施形態に係る木質バイオマス炭製造装置の全体構成を示す模式図である。
図2図2は、本実施形態に係る木質バイオマス炭製造装置を用いた木質バイオマス炭の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【0017】
[木質バイオマス炭製造装置1の全体構成]
図1を用いて、本実施形態に係る木質バイオマス炭製造装置1の全体構成を説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る木質バイオマス炭製造装置1は、密閉性スクリューフィーダである小口径スクリューフィーダ10と、実質的に無酸素下で木質バイオマスを炭化処理する炭化炉20と、気密を保持しつつ炭化炉20から炭化物を取り出す密閉室30と、密閉性を保持しつつ炭化物の冷却を行う密閉冷却コンベア40と、取り出された炭化物を微粉砕する微粉砕機50とを備える。
【0019】
小口径スクリューフィーダ10は、密閉性のスクリューフィーダであり、炭化炉20に原料となる木質バイオマスを圧縮しつつ供給するものである。その際、小口径のスクリューを用いて原料を圧縮しつつ供給する構造であるため、搬送の際の空気の流入を抑制することができる。本実施形態における小口径スクリューフィーダ10において、スクリュー軸から配管の内壁までの距離は2cm程度である。なお、小口径スクリューフィーダ10への原料の供給は、小口径スクリューフィーダの上方に設けられているホッパによって行われるが、必要に応じて二重ダンパが設けられ、ホッパから小口径スクリューフィーダ10に木質バイオマスが供給される際の空気の流入を抑制できるようになっている。
【0020】
炭化炉20は小口径スクリューフィーダ10によって供給された木質バイオマスを炭化処理する装置であり、実質的に無酸素下で炭化が行われる。炭化炉20の形式はキルン炉であっても他の形式の炭化炉であってもよく、また、炭化のための熱源も、熱ガスを用いたものでも電気を用いたものでも構わない。ただし、実質的に無酸素下で炭化が行われる必要があるため、空気など酸素を含む気体が供給されることは避けるべきである。
【0021】
密閉室30は、炭化炉20で炭化された木質バイオマス炭を炭化炉20から取り出し密閉冷却コンベア40に通じるための空間である。また、炭化炉20で発生した炭化ガス(熱分解ガス)は密閉室30を介して図示しない排ガス処理装置へと流通する。すなわち、密閉室30は炭化物と炭化ガスとを分離する機能をも有する。
【0022】
密閉冷却コンベア40は、密閉室30を介して炭化炉20から排出された木質バイオマス炭を搬送しつつ冷却するコンベアである。冷却の方式としては、冷却水ジャケットを用いた間接冷却方式などが採用されるが、その他の方式での冷却も可能である。木質バイオマス炭は密閉冷却コンベア40により、ベンゾピレン発生温度域である300~600℃を下回る温度域、例えば150℃程度にまで一気に冷却され、微粉砕機50に供給される。
【0023】
微粉砕機50は、密閉冷却コンベア40で冷却された木質バイオマス炭を0.1~0.5μm程度の粒径になるまで粉砕する。粉砕はボールミルやジェットミルなど周知の粉砕機によって行われ、乾式であっても湿式であっても構わない。
【0024】
[木質バイオマス炭製造装置1を用いた木質バイオマス炭の製造方法]
図2を用いて、本実施形態に係る木質バイオマス炭製造装置1を用いた木質バイオマス炭の製造方法について説明する。
【0025】
図2は本実施形態に係る木質バイオマス炭製造装置1を用いた木質バイオマス炭の製造方法について説明するフローチャートである。
【0026】
<ステップS1:木質バイオマスの搬送>
まず、ホッパから供給された原料となる木質バイオマスを小口径スクリューフィーダ10を用いて搬送する(ステップS1)。密閉性のスクリューフィーダである小口径スクリューフィーダ10を用いることにより、周囲からの空気の流入を防止しつつ木質バイオマスを搬送することができる。
【0027】
<ステップS2:木質バイオマスの炭化>
次に、炭化炉20を用いて木質バイオマスを炭化する(ステップS2)。炭化は実質的に無酸素下で行われるため、発がん性物質であるベンゾピレンの生成を抑制しつつ、木質バイオマスを炭化することができる。
【0028】
<ステップS3:木質バイオマス炭の冷却>
次に、炭化炉20で生成された木質バイオマス炭を冷却する(ステップS3)。冷却には密閉冷却コンベア40が用いられ、リグニンの熱分解温度域、つまりベンゾピレンの発生温度域である300~600℃を十分に下回る温度、例えば150℃にまで一気に冷却される。密閉性を有する密閉冷却コンベア40を用いることにより、空気の流入を抑制しつつ冷却を行うことができるため、冷却中におけるベンゾピレンの生成も抑制することができる。
【0029】
<ステップS4:木質バイオマス炭の粉砕>
そして、微粉砕機50を用いて木質バイオマス炭が0.1~0.5μm程度にまで微粉砕される(ステップS4)。
【0030】
このようにして、0.1~0.5μm程度の粒径を有する木質バイオマス炭が生成される。
【0031】
生成された0.1~0.5μm程度の粒径を有する木質バイオマス炭は、通常の木炭の50倍もの比表面積を有しており、同様に50倍もの吸着能を有する。また、0.1~0.5μmという微粉状であるため、腸壁の柔毛表面に密生する微絨毛(1.2~1.5μm)の微細な隙間に入り込むことができ、腸壁内の細かな箇所を掃除することができる。特に、腸内に入り込んだ油脂分を吸着するに際し、自重の15~50倍もの量の油脂を吸着することができるため、ダイエット用のサプリメントにも応用することができる。
【0032】
そして、木質バイオマス炭製造の過程において、ベンゾピレンの生成を抑制するための構成を有しているため、発がん性のあるベンゾピレンを実質的に含有せず、口に入れても安全な木質バイオマス炭を製造することができる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述したこれらの実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0034】
また、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
この発明の木質バイオマス炭製造装置は、桐や竹などの木質バイオマスだけでなく、稲わらやバガスやメガス、セルロースなどの他のバイオマスにも適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 木質バイオマス炭製造装置
10 小口径スクリューフィーダ
20 炭化炉
30 密閉室
40 密閉冷却コンベア
50 微粉砕機

図1
図2