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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172907
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】バックアップリング
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
F16J15/10 T
F16J15/10 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090958
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000229564
【氏名又は名称】株式会社バルカー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南 暢
(72)【発明者】
【氏名】上田 彰
【テーマコード(参考)】
3J040
【Fターム(参考)】
3J040AA02
3J040AA11
3J040AA17
3J040BA02
3J040BA04
3J040CA04
3J040EA16
3J040FA06
3J040FA07
3J040HA05
(57)【要約】
【課題】バックアップリングとシール溝との間に隙間を生じさせない構成を備えるバックアップリングを提供する。
【解決手段】このバックアップリング20は、バックアップリング20の外径となる、径方向における外側垂直面20bの間の外径寸法L21は、円筒状溝の内径寸法より大きくなる第1公差設定で設けられ、バックアップリング20の内径となる、径方向における内側垂直面20cの間の内径寸法L22は、シール溝の底面の外径寸法より小さくなる第2公差設定で設けられている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状溝に収容されるシャフトにおいて、高圧側と低圧側とを仕切るため前記シャフトに設けられるシール溝内に収容され、高圧側に配置されるシール材とともに用いられ、低圧側に配置される環状の形態を有するバックアップリングであって、
当該バックアップリングの縦断面で見た断面形状は、
第1面と、
前記第1面の半径方向の外側の端部から垂直方向に立ち上がる外側垂直面と、
前記第1面の半径方向の内側の端部から垂直方向に立ち上がる内側垂直面と、
前記外側垂直面から半径方向の内側に向かって徐々に傾斜する外側傾斜面と、
前記内側垂直面から半径方向の外側に向かって徐々に傾斜する内側傾斜面と、
前記第1面に対向し、前記外側傾斜面と前記内側傾斜面とを連結する第2面と、
を有し、
当該バックアップリングの外径となる、径方向における前記外側垂直面の間の外径寸法は、前記円筒状溝の内径寸法より大きくなる第1公差設定で設けられ、
当該バックアップリングの内径となる、径方向における前記内側垂直面の間の内径寸法は、前記シール溝の底面の外径寸法より小さくなる第2公差設定で設けられている、
バックアップリング。
【請求項2】
円筒状溝に収容されるシャフトにおいて、高圧側と低圧側とを仕切るため前記円筒状溝に設けられるシール溝内に収容され、高圧側に配置されるシール材とともに用いられ、低圧側に配置される環状の形態を有するバックアップリングであって、
当該バックアップリングの縦断面で見た断面形状は、
第1面と、
前記第1面の半径方向の外側の端部から垂直方向に立ち上がる外側垂直面と、
前記第1面の半径方向の内側の端部から垂直方向に立ち上がる内側垂直面と、
前記外側垂直面から半径方向の内側に向かって徐々に傾斜する外側傾斜面と、
前記内側垂直面から半径方向の外側に向かって徐々に傾斜する内側傾斜面と、
前記第1面に対向し、前記外側傾斜面と前記内側傾斜面とを連結する第2面と、
を有し、
当該バックアップリングの外径となる、径方向における前記外側垂直面の間の外径寸法は、前記シール溝の底面の内径寸法より大きくなる第1公差設定で設けられ、
当該バックアップリングの内径となる、径方向における前記内側垂直面の間の内径寸法は、前記シャフトの外径寸法より小さくなる第2公差設定で設けられている、
バックアップリング。
【請求項3】
前記第1公差設定は、0mm~+0.15mmの間の寸法誤差であり、
前記第2公差設定は、-0.15mm~0mmの間の寸法誤差である、
請求項1または請求項2に記載のバックアップリング。
【請求項4】
前記外側傾斜面と前記第2面との交差する領域には、外側曲面が設けられている、
請求項1または請求項2に記載のバックアップリング。
【請求項5】
前記内側傾斜面と前記第2面との交差する領域には、内側曲面が設けられている、
請求項1または請求項2に記載のバックアップリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バックアップリングの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
密閉構造の一例として、ガス(高圧水素等)用のシール構造を開示する技術として、国際公開番号WO2004/061353号公報(特許文献1)、特許第4636281号公報(特許文献2)、特許第4949492号公報(特許文献3)、および、特許第5126462号公報(特許文献4)などに開示される技術が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開番号WO2004/061353号公報
【特許文献2】特許第4636281号公報
【特許文献3】特許第4949492号公報
【特許文献4】特許第5126462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バックアップリングのシャフトに設けられたシール溝への装着を確実なものとするために、JISなどの規格では、バックアップリングの寸法公差が規定されている。たとえば、JIS規格の寸法公差によれば、バックアップリングの外径は、シャフト内径よりも小さくなるような公差設定(例:0/-0.15)となっている。他方、バックアップリング内径はシール溝の外径よりも大きくなるような公差設定(例:+0.15/0)となっている。
【0005】
図10は、上記公差設定に基づき設計されたバックアップリング20Xの一例である。図11に上記バックアップリング20Xを用いた場合のシール構造が採用された密閉構造1000Xを示す。図11に示す断面図では、変形していない状態で、Oリング10およびバックアップリング20を図示している。
【0006】
この密閉構造1000Xは、ガス(高圧水素等)用のシール構造が採用された構造であり、ハウジング2を有する。ハウジング2には、円筒形状のシャフト1Aが収容されている。シャフト1Aの中心部には、ガスが送り込まれる貫通孔1hが設けられている。
【0007】
ハウジング2には、シャフト1Aが収容される有底の円筒状溝2Aが設けられている。シャフト1Aの外周面が一方材側に設けられる第1シール面1aを構成する。円筒状溝2Aの内周面が他方材側に設けられる第2シール面2aを構成する。シャフト1Aの貫通孔1hから円筒状溝2A内にガスが送り込まれることで、円筒状溝2A内が高圧状態となる。
【0008】
シャフト1Aの外周面には、第1シール面1aから内方に向かって凹む、環状のシール溝1Gが設けられている。シール溝1G内の高圧側には、Oリング10が配置されている。シール溝1G内の低圧側には、バックアップリング20が配置されている。バックアップリング20は、環状の形態を有し、カット面C1が設けられている。
【0009】
Oリング10の断面形状は一般的な円形形状である。シール溝1Gの断面形状は、シャフト1Aの軸方向を縦方向とした場合に、軸を含む平面で切断した縦断面で見た場合には、略長方形の溝の断面形状である。バックアップリング20X断面形状は、図10に示した矩形形状である。
【0010】
図12に、高圧側のOリング10に圧力が負荷され、バックアップリング20X側に変形した状態の断面を示す。図10で示したように、バックアップリング20Xの寸法公差は、その外径は、シャフト1Aの内径よりも小さくなるような公差設定(例:0/-0.15)であり、バックアップリング20Xの内径はシール溝1Gの外径よりも大きくなるような公差設定(例:+0.15/0)である。その結果、バックアップリング20Xとシール溝1Gとの間に隙間が生じる寸法関係となる。たとえば、現行の規格品の場合に、シャフト1Aの内径がφ20の場合には、径方向の寸法で、0.2mm~0.3mm程度の隙間が生じることとなる。
【0011】
図12のXIIで囲む領域に示すように、高圧側のOリング10に圧力が負荷された場合には、Oリング10には、バックアップリング20Xとシール溝1Gとの間に生じる隙間にはみ出すはみ出し領域10xが形成される。そのため、バックアップリング20XやOリング10が破損する可能性が懸念され、バックアップリング20Xの信頼性を低下させると共にシール機構としての信頼性も低下する恐れがある。
【0012】
この発明の目的は、上記課題を解決するためになされたものであり、バックアップリングとシール溝との間に隙間を生じさせない構成を備えるバックアップリングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
[1]:この開示のバックアップリングの一の局面においては、円筒状溝に収容されるシャフトにおいて、高圧側と低圧側とを仕切るため前記シャフトに設けられるシール溝内に収容され、高圧側に配置されるシール材とともに用いられ、低圧側に配置される環状の形態を有するバックアップリングであって、当該バックアップリングの縦断面で見た断面形状は、第1面と、前記第1面の半径方向の外側の端部から垂直方向に立ち上がる外側垂直面と、前記第1面の半径方向の内側の端部から垂直方向に立ち上がる内側垂直面と、前記外側垂直面から半径方向の内側に向かって徐々に傾斜する外側傾斜面と、前記内側垂直面から半径方向の外側に向かって徐々に傾斜する内側傾斜面と、前記第1面に対向し、前記外側傾斜面と前記内側傾斜面とを連結する第2面と、を有している。
【0014】
当該バックアップリングの外径となる、径方向における前記外側垂直面の間の外径寸法は、前記円筒状溝の内径寸法より大きくなる第1公差設定で設けられ、当該バックアップリングの内径となる、径方向における前記内側垂直面の間の内径寸法は、前記シール溝の底面の外径寸法より小さくなる第2公差設定で設けられている。
【0015】
[2]:この開示のバックアップリングの他の局面においては、円筒状溝に収容されるシャフトにおいて、高圧側と低圧側とを仕切るため前記円筒状溝に設けられるシール溝内に収容され、高圧側に配置されるシール材とともに用いられ、低圧側に配置される環状の形態を有するバックアップリングであって、当該バックアップリングの縦断面で見た断面形状は、第1面と、前記第1面の半径方向の外側の端部から垂直方向に立ち上がる外側垂直面と、前記第1面の半径方向の内側の端部から垂直方向に立ち上がる内側垂直面と、前記外側垂直面から半径方向の内側に向かって徐々に傾斜する外側傾斜面と、前記内側垂直面から半径方向の外側に向かって徐々に傾斜する内側傾斜面と、前記第1面に対向し、前記外側傾斜面と前記内側傾斜面とを連結する第2面と、を有している。
【0016】
当該バックアップリングの外径となる、径方向における前記外側垂直面の間の外径寸法は、前記シール溝の底面の内径寸法より大きくなる第1公差設定で設けられ、当該バックアップリングの内径となる、径方向における前記内側垂直面の間の内径寸法は、前記シャフトの外径寸法より小さくなる第2公差設定で設けられている。
【0017】
[3]:上述のいずれかに記載のバックアップリングであって、前記第1公差設定は、0mm~+0.15mmの間の寸法誤差であり、前記第2公差設定は、-0.15mm~0mmの間の寸法誤差である。
【0018】
[4]:上述のいずれかに記載のバックアップリングであって、前記外側傾斜面と前記第2面との交差する領域には、外側曲面が設けられている。
【0019】
[5]:上述のいずれかに記載のバックアップリングであって、前記内側傾斜面と前記第2面との交差する領域には、内側曲面が設けられている。
【発明の効果】
【0020】
このバックアップリングによれば、バックアップリングとシール溝との間に隙間を生じさせない構成を備えるバックアップリングの提供を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施の形態の密閉構造を示す断面図である。
図2】実施の形態のシール構造を示す部分拡大断面図である。
図3図2中のIIIで囲まれた領域の部分拡大断面図である。
図4】実施の形態のバックアップリングの平面図である。
図5図4中のV-V線矢視断面図である。
図6図4中のVI-VI線矢視断面図である。
図7】実施の形態のバックアップリングの寸法公差を示す断面図である。
図8】バックアップリングの変形例を示す拡大断面図である。
図9】他のシール構造を示す部分拡大断面図である。
図10】従来技術のバックアップリングの断面図である。
図11】従来技術の密閉構造を示す断面図である。
図12図11中のXIIで囲まれた領域の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示における実施の形態におけるバックアップリングについて、以下、図を参照しながら説明する。以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。以下の説明においては、説明の便宜上、上下の文言を用いて位置関係を明示しているが、上下の配置が天地逆になる構成、および、左右に配置される構成を排除するものではない。
【0023】
図1から図7を参照して、本実施の形態のシール構造およびバックアップリング20について説明する。図1は、密閉構造1000を示す断面図、図2は、シール構造100を示す部分拡大断面図、図3は、図2中のIIIで囲まれた領域の部分拡大断面図、図4は、バックアップリング20の平面図、図5は、図4中のV-V線矢視断面図、図6図4中のVI-VI線矢視断面図、図7は、バックアップリング20の寸法公差を示す断面図である。
【0024】
(密閉構造1000)
図1を参照して本実施の形態の密閉構造1000は、ガス(高圧水素等)用のシール構造が採用された構造であり、ヘッダ1とハウジング2とを有する。ヘッダ1には、ハウジング2側に延びる円筒形状のシャフト1Aが設けられている。シャフト1Aの中心部には、ガスが送り込まれる貫通孔1hが設けられている。
【0025】
ハウジング2には、シャフト1Aが収容される有底の円筒状溝2Aが設けられている。シャフト1Aの外周面が一方材側に設けられる第1シール面1aを構成する。円筒状溝2Aの内周面が他方材側に設けられる第2シール面2aを構成する。シャフト1Aの貫通孔1hから円筒状溝2A内にガスが送り込まれることで、円筒状溝2A内が高圧状態となる。
【0026】
ヘッダ1とハウジング2とは、Oリング30を介在してボルト3により締結されている。これにより、以下に示すシール構造100の気密性が保たれている。
【0027】
(シール構造100)
図2および図3を参照して、シール構造100の詳細について説明する。シャフト1Aの外周面には、第1シール面1aから内方に向かって凹む、環状のシール溝1Gが設けられている。シール溝1G内の高圧側には、シール材としてシールリングが配置され、本実施の形態では、Oリング10が配置されている。シール溝1G内の低圧側には、バックアップ材としてバックアップリング20が配置されている。図2に示す断面図では、変形していない状態で、Oリング10およびバックアップリング20を図示し、図3に示す断面図では、変形後の状態で、Oリング10およびバックアップリング20を図示している。
【0028】
Oリング10の断面形状は一般的な円形形状であり、市販のOリングを用いることができる。シールリングとして、市販のOリングに代わり、Uパッキンなどの固定用途のシール材を用いてもよい。
【0029】
バックアップリング20の材質は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、POM(ポリオキシメチレン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などOリング10の材質よりも硬く、シャフト1Aの材質よりも柔らかい材質を用いるとよい。バックアップリング20の断面形状の詳細およびシール構造100の機能については、後述する。
【0030】
(バックアップリング20の形状)
図4から図7を参照して、バックアップリング20の全体形状および断面形状について説明する。バックアップリング20は環状形状を有する。バックアップリング20は円筒状のシャフト1Aのシール溝1Gに装着するためにカット面C1が設けられている。
【0031】
図5に示すように、バックアップリング20の縦断面形状は略矩形形状であり、高圧側(Oリング10に対向する側)に位置する第1面20aと、第1面20aの半径方向の外側の端部から垂直方向に立ち上がる外側垂直面20bと、第1面20aの半径方向の内側の端部から垂直方向に立ち上がる内側垂直面20cと、外側垂直面20bから半径方向の内側に向かって徐々に傾斜する外側傾斜面20dと、内側垂直面20cから半径方向の外側に向かって徐々に傾斜する内側傾斜面20eと、第1面20aに対向し、外側傾斜面20dと内側傾斜面20eとを連結する第2面20fと、を有している。第2面20fが低圧側(Oリング10に対向しない側)に位置する。
【0032】
さらに、外側傾斜面20dと第2面20fとの交差する領域には、外側曲面20r1が設けられている。同様に、内側傾斜面20eと第2面20fとの交差する領域には、内側曲面20r2が設けられている。
【0033】
バックアップリング20をシール溝1Gに装着した場合、外側垂直面20bは、円筒状溝2Aの第2シール面2aと接することでシール面を構成する。内側垂直面20cは、シール溝1Gの底面1Gsと接する。外側傾斜面20dおよび内側傾斜面20eは、徐々に傾斜していることから、バックアップリング20をシール溝1Gに装着する際の装着性を容易にする。外側曲面20r1および内側曲面20r2は、バックアップリング20の方向性示す目印となり、外側曲面20r1および内側曲面20r2が位置する側が、低圧側(Oリング10に対向しない側)となる。
【0034】
図6を参照して、バックアップリング20の設計上の寸法公差は、バックアップリング20の外径となる、径方向における外側垂直面20bの間の外径寸法L21は、円筒状溝2Aの内径寸法L11(図2参照)より大きくなる第1公差設定で設けられている。たとえば、第1公差設定としては、0mm~+0.15mmの間の寸法設計である。
【0035】
さらに、バックアップリング20の内径となる、径方向における内側垂直面20cの間の内径寸法L22は、シール溝1Gの底面1Gsの外径寸法L12(図2参照)より大きくなる第2公差設定で設けられている。たとえば、第2公差設定としては、-0.15mm~0mmの間の寸法設計である。
【0036】
つまり、図7示すように、バックアップリング20の寸法設計においては、ミニマム(MIN)寸法をクリアランス「ゼロ」となる設計からスタートして、そこからノミナル寸法、および、マキシマム(MAX)寸法となるように公差の設定を行なう(例:外径公差(0mm~+0.15m)、内径公差(-0.15mm~0mm)、幅公差(0mm~+0.10m))。
【0037】
なお、バックアップリング20の設計上の外径寸法L21、内径寸法L22は、種々選択されるが、たとえば一例として、外径寸法L21は、ミニマム(MIN)寸法で14.6mm、内径寸法L22は、ミニマム(MIN)寸法で11.2mmである。外側垂直面20bおよび内側垂直面20cの寸法tは、約0.2mm程度である。外側曲面20r1および内側曲面20r2の半径は、約0.2mm程度である。カット面C1の傾斜角度αは、22°程度である。
【0038】
このように、クリアランス「ゼロ」となる設計からスタートすることで、バックアップリング20とシール溝1Gとの間には隙間が生じないことから、高圧側のOリング10に圧力が負荷されOリング10がバックアップリング20側に変形した場合であっても、従来のようなはみ出し領域が形成されることを抑制することが可能となる。これにより、バックアップリング20やOリング10の破損を防止することが可能となる。
【0039】
(バックアップリングの変形例)
図8を参照して、バックアップリングの変形例として、バックアップリング20Aの断面形状について説明する。図8は、バックアップリングの変形例を示す拡大断面図であり、図4中のV-V線矢視断面に相当する図である。
【0040】
上記バックアップリング20においては、外側曲面20r1および内側曲面20r2は、バックアップリング20の方向性示す目印として設けられている。よって、必ずしも外側および内側の両側に設ける必要はなく、バックアップリング20Aに示すように、内側曲面20r2のみを設けるようにしてもよい。図視はしていないが、外側曲面20r1のみを設けるようにしてもよい。また、方向性示す目印が不要である場合には、外側曲面20r1および内側曲面20r2は設けなくてもよい。
【0041】
(他のシール構造100A)
図9を参照して、他のシール構造100Aの場合について説明する。図9は、他のシール構造100Aを示す部分拡大断面図である。
【0042】
上述したシール構造100は、シャフト1Aに環状のシール溝1Gが設けられていたが、図9に示すシール構造100Aでは、ハウジング2側に、環状のシール溝2Gが設けられている場合を示す。このシール構造100Aの場合においても、バックアップリング20の設計上の寸法公差は、バックアップリング20の外径となる、径方向における外側垂直面20bの間の外径寸法L21は、シール溝2Gの底面2Gsの内径寸法L31より大きくなる第1公差設定で設けられているとよい。第1公差設定は、シール構造100と同様である。
【0043】
さらに、バックアップリング20の内径となる、径方向における内側垂直面20cの間の内径寸法L22は、シャフト1Aの外径寸法L32より小さくなる第2公差設定で設けられているとよい。第2公差設定は、シール構造100と同様である。
【0044】
このシール構造100Aにおいても、シール構造100の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0045】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0046】
1 ヘッダ、1A シャフト、1G,2G シール溝、1Gs,2Gs 底面、1a 第1シール面、1h 貫通孔、2 ハウジング、2A 円筒状溝、2a 第2シール面、3 ボルト、10,30 Oリング、10x はみ出し領域、20,20X バックアップリング、20a 第1面、20b 外側垂直面、20c 内側垂直面、20d 外側傾斜面、20e 内側傾斜面、20f 第2面、20r2 内側曲面、20r1 外側曲面、100,100A シール構造、1000,1000X 密閉構造。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12