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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172910
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20241205BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01L21/302 101H
H01L21/31 B
H01L21/302 104H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090964
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】中野 佑太
(72)【発明者】
【氏名】屋敷 啓之
(72)【発明者】
【氏名】田鎖 学
(72)【発明者】
【氏名】谷川 紘太
【テーマコード(参考)】
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
5F004AA15
5F004BA19
5F004BB18
5F004BB25
5F004BB26
5F004BB29
5F004BC03
5F004CA01
5F004DA27
5F004EA34
5F045AA06
5F045BB14
5F045DP03
5F045EE04
5F045EG01
5F045EG07
5F045EJ02
5F045EK07
(57)【要約】
【課題】基板の金属汚染および排出管の有機物汚染を抑制する技術を提供する。
【解決手段】基板処理装置は、チャンバ10と、供給管50と、排出管60とを備える。チャンバ10は、基板Wを処理する処理室を形成する。供給管50は、チャンバ10に接続された下流端を有している。供給管50には、酸素ガスおよびオゾンガスの少なくともいずれか一方がチャンバ10に向かって流れる。排出管60は、チャンバ10に接続された上流端を有している。排出管60には、チャンバ10からのガスが流れる。排出管60の内壁の少なくとも一部は、マンガンを含む合金によって形成される。供給管50の内壁の少なくとも一部におけるマンガンの含有比率は、排出管60の内壁の少なくとも一部におけるマンガンの含有比率よりも低い。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理装置であって、
基板を処理する処理室を形成するチャンバと、
前記チャンバに接続された下流端を有しており、酸素ガスおよびオゾンガスの少なくともいずれか一方が前記チャンバに向かって流れる供給管と、
前記チャンバに接続された上流端を有しており、前記チャンバからのガスが流れる排出管と
を備え、
前記排出管の内壁の少なくとも一部は、マンガンを含む合金によって形成され、
前記供給管の内壁の少なくとも一部におけるマンガンの含有比率は、前記排出管の前記内壁の前記少なくとも一部におけるマンガンの含有比率よりも低い、基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記供給管の前記内壁の前記少なくとも一部は、ステンレス合金によって形成される、基板処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記供給管の前記内壁の前記少なくとも一部は、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金または石英によって形成される、基板処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の基板処理装置であって、
前記チャンバの内壁のうち、前記基板よりも上流側の上流部分の少なくとも一部におけるマンガンの含有比率は、前記排出管の前記内壁の前記少なくとも一部におけるマンガンの含有比率よりも低い、基板処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の基板処理装置であって、
前記基板を加熱するヒータをさらに備える、基板処理装置。
【請求項6】
基板処理装置であって、
基板を処理する処理室を形成するチャンバと、
前記チャンバに接続された下流端を有しており、酸素ガスおよびオゾンガスの少なくともいずれか一方が前記チャンバに向かって流れる供給管と、
前記チャンバに接続された上流端を有しており、前記チャンバからのガスが流れる排出管と、
前記基板を加熱するヒータと
を備え、
前記排出管の内壁の少なくとも一部は、マンガンを含有する合金によって形成され、
前記チャンバの内壁のうちの少なくとも一部におけるマンガンの含有比率は、前記排出管の前記内壁の前記少なくとも一部におけるマンガンの含有比率よりも低い、基板処理装置。
【請求項7】
請求項1から請求項3、請求項6のいずれか一つに記載の基板処理装置であって、
前記チャンバの内部において前記供給管の前記下流端と前記基板との間に設けられた整流板と、
前記整流板を前記チャンバに固定する第1固定部材と
を備え、
前記チャンバ内に露出した前記整流板の表面および前記第1固定部材の表面におけるマンガンの含有比率は、前記排出管の前記内壁の前記少なくとも一部におけるマンガンの含有比率よりも低い、基板処理装置。
【請求項8】
請求項1から請求項3、請求項6のいずれか一つに記載の基板処理装置であって、
前記チャンバの内部において前記基板を載置する載置面に設けられ、前記基板の平面視の位置を決める位置決め用のピンと、
前記ピンを前記載置面に固定する第2固定部材と
をさらに備え、
前記チャンバ内に露出した前記ピンの表面および前記第2固定部材の表面におけるマンガンの含有比率は、前記排出管の前記内壁の前記少なくとも一部におけるマンガンの含有比率よりも低い、基板処理装置。
【請求項9】
請求項1から請求項3、請求項6のいずれか一つに記載の基板処理装置であって、
前記チャンバの前記内壁のうち、前記基板よりも下流側の下流部分の少なくとも一部は、マンガンを含む合金によって形成され、
前記下流部分の前記少なくとも一部におけるマンガンの含有比率は、前記排出管の前記内壁の前記少なくとも一部におけるマンガンの含有比率よりも低い、基板処理装置。
【請求項10】
請求項1から請求項3、請求項6のいずれか一つに記載の基板処理装置であって、
前記チャンバの前記内壁のうち、前記基板よりも下流側の下流部分の少なくとも一部は、マンガンを含む合金によって形成され、
前記下流部分の前記少なくとも一部におけるマンガンの含有比率は、前記供給管の前記内壁の前記少なくとも一部におけるマンガンの含有比率よりも高い、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、オゾンガスを用いて基板を処理する基板処理装置が提案されている(例えば特許文献1)。特許文献1では、基板処理装置は、熱処理チャンバと、オゾンガスを熱処理チャンバに供給するためのオゾンガス供給ラインと、熱処理チャンバからのガスを外部に排出するための排気ラインとを含んでいる。熱処理チャンバ内には基板が搬入され、基板が水平姿勢で載置される。オゾンガスはオゾンガス供給ラインを通じて熱処理チャンバ内に供給され、基板の主面に作用する。オゾンガスは例えば基板の主面上の有機膜を酸化分解することができる。オゾンガスは熱処理チャンバから排気ラインを通じて外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-187165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
供給ライン(つまり、供給管)の内壁を構成する材料には、例えば、ステンレス合金(ステンレス鋼とも呼ばれる)を適用することができる。ステンレス合金には主成分としての鉄が含まれ、また、炭素、シリコン、マンガン、リン、硫黄、ニッケル、クロム、モリブデン、銅および窒素等の種々の化学成分が副成分として含まれる。ステンレス合金の表面には、主としてクロム酸化物を含む不働態膜が形成される。マンガンの拡散速度はクロムの2倍程度と高いので、ステンレス合金におけるマンガンの比率が高い場合には、不働態膜において、マンガン酸化物がクロム酸化物の上層に形成され得る(例えばBin Hua, Yonghong Kong, Wenying Zhang, Jian Pu, Bo Chi, Li Jian, ”The effect of Mn on the oxidation behavior and electrical conductivity of Fe-17Cr alloys in solid oxide fuel cell cathode atmosphere”, 196, Journal of Power Sources, 2011, p7627-7638:以下、文献1と呼ぶ)。
【0005】
この供給管の内壁におけるマンガン酸化物が、供給管内を流れるオゾンガスと反応すると、マンガンが内壁から供給管内に流出する。具体的には、マンガンが蒸発し得る。このマンガンが供給管を通じてチャンバ内に流入すると、チャンバ内の基板に付着するおそれがある。つまり、基板に金属汚染が生じるおそれがある。近年では、このような金属汚染は厳しく制限される。
【0006】
また、供給管の内壁におけるマンガンの量が低減しても、ステンレス合金内のマンガンが拡散して再び内壁に移動し得る。このため、供給管にオゾンガスを流し続けても、基板に対する金属汚染のおそれはあまり低減されない。
【0007】
一方、チャンバ内においてオゾンガスが基板上の有機物を酸化分解することにより、有機物ガスが生成される。この有機物ガスはオゾンガスとともに、ガス排気ライン(つまり、排出管)を通じて外部に排出される。有機物ガスが排出管の内壁に固体として付着すると、排出管が有機物によって汚染される。つまり、排出管に有機物汚染が生じる。
【0008】
そこで、本開示は、基板の金属汚染および排出管の有機物汚染を抑制することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様は、基板処理装置であって、基板を処理する処理室を形成するチャンバと、前記チャンバに接続された下流端を有しており、酸素ガスおよびオゾンガスの少なくともいずれか一方が前記チャンバに向かって流れる供給管と、前記チャンバに接続された上流端を有しており、前記チャンバからのガスが流れる排出管とを備え、前記排出管の内壁の少なくとも一部は、マンガンを含む合金によって形成され、前記供給管の内壁の少なくとも一部におけるマンガンの含有比率は、前記排出管の前記内壁の前記少なくとも一部におけるマンガンの含有比率よりも低い。
【0010】
第2の態様は、第1の態様にかかる基板処理装置であって、前記供給管の前記内壁の前記少なくとも一部は、ステンレス合金によって形成される。
【0011】
第3の態様は、第1の態様にかかる基板処理装置であって、前記供給管の前記内壁の前記少なくとも一部は、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金または石英によって形成される。
【0012】
第4の態様は、第1から第3のいずれか一つの態様にかかる基板処理装置であって、前記チャンバの内壁のうち、前記基板よりも上流側の上流部分の少なくとも一部におけるマンガンの含有比率は、前記排出管の前記内壁の前記少なくとも一部におけるマンガンの含有比率よりも低い。
【0013】
第5の態様は、第1から第4のいずれか一つの態様にかかる基板処理装置であって、前記基板を加熱するヒータをさらに備える。
【0014】
第6の態様は、基板処理装置であって、基板を処理する処理室を形成するチャンバと、前記チャンバに接続された下流端を有しており、酸素ガスおよびオゾンガスの少なくともいずれか一方が前記チャンバに向かって流れる供給管と、前記チャンバに接続された上流端を有しており、前記チャンバからのガスが流れる排出管と、前記基板を加熱するヒータとを備え、前記排出管の内壁の少なくとも一部は、マンガンを含有する合金によって形成され、前記チャンバの内壁のうちの少なくとも一部におけるマンガンの含有比率は、前記排出管の前記内壁の前記少なくとも一部におけるマンガンの含有比率よりも低い。
【0015】
第7の態様は、第1から第6のいずれか一つの態様にかかる基板処理装置であって、前記チャンバの内部において前記供給管の前記下流端と前記基板との間に設けられた整流板と、前記整流板を前記チャンバに固定する第1固定部材とを備え、前記チャンバ内に露出した前記整流板の表面および前記第1固定部材の表面におけるマンガンの含有比率は、前記排出管の前記内壁の前記少なくとも一部におけるマンガンの含有比率よりも低い。
【0016】
第8の態様は、第1から第7のいずれか一つの態様にかかる基板処理装置であって、前記チャンバの内部において前記基板を載置する載置面に設けられ、前記基板の平面視の位置を決める位置決め用のピンと、前記ピンを前記載置面に固定する第2固定部材とをさらに備え、前記チャンバ内に露出した前記ピンの表面および前記第2固定部材の表面におけるマンガンの含有比率は、前記排出管の前記内壁の前記少なくとも一部におけるマンガンの含有比率よりも低い。
【0017】
第9の態様は、第1から第8のいずれか一つの態様にかかる基板処理装置であって、前記チャンバの前記内壁のうち、前記基板よりも下流側の下流部分の少なくとも一部は、マンガンを含む合金によって形成され、前記下流部分の前記少なくとも一部におけるマンガンの含有比率は、前記排出管の前記内壁の前記少なくとも一部におけるマンガンの含有比率よりも低い。
【0018】
第10の態様は、第1から第8のいずれか一つの態様にかかる基板処理装置であって、前記チャンバの前記内壁のうち、前記基板よりも下流側の下流部分の少なくとも一部は、マンガンを含む合金によって形成され、前記下流部分の前記少なくとも一部におけるマンガンの含有比率は、前記供給管の前記内壁の前記少なくとも一部におけるマンガンの含有比率よりも高い。
【発明の効果】
【0019】
第1の態様によれば、供給管の内壁におけるマンガンの含有比率が低いので、酸素ガスおよびオゾンガスの少なくともいずれか一方が供給管を流れても、マンガンが供給管の内壁から管内に流出する可能性を低減させることができる。このため、マンガンによる基板に対する金属汚染を抑制することができる。
【0020】
排出管の内壁は、マンガンの含有比率が高い合金によって形成されるので、排出管の内壁には、マンガン酸化物を含む不働態膜が形成される。マンガン酸化物を含む不働態膜は、基板上の有機物の酸化分解により生じた有機物ガスを分解する触媒として機能することができる。このため、排出管に対する有機物汚染を抑制することができる。
【0021】
第2の態様によれば、基板処理装置として信頼性の高い供給管を実現できる。
【0022】
第3の態様によれば、供給管の内壁にマンガンがほとんど含有されないので、マンガンによる基板の金属汚染をさらに低減させることができる。
【0023】
第4の態様によれば、基板に対する金属汚染をさらに抑制することができる。
【0024】
第5の態様によれば、基板の主面上の有機物の酸化分解に適した温度に基板を加熱することができる。
【0025】
第6の態様によれば、ヒータによって基板が加熱されるので、チャンバ内の温度も上昇する。このため、温度環境という観点では、オゾンガスの作用により、チャンバの内壁からマンガンが流出しやすい。このような環境下でも、チャンバの内壁におけるマンガンの含有比率は低いので、チャンバからのマンガンの流出量を低減させることができる。したがって、基板に対する金属汚染を抑制することができる。
【0026】
一方、排出管の内壁は、マンガンの含有比率が高い合金によって形成されるので、排出管の内壁には、マンガン酸化物を含む不働態膜が形成される。マンガン酸化物を含む不働態膜は、基板上の有機物の酸化分解により生じた有機物ガスを分解する触媒として機能することができる。このため、排出管に対する有機物汚染を抑制することができる。
【0027】
第7から第9の態様によれば、基板に対する金属汚染をさらに抑制することができる。
【0028】
第10の態様によれば、チャンバのうちの下流部分に対する有機物汚染を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】基板処理装置の構成の一例を概略的に示す平面図である。
図2】有機物除去ユニット、および、その周囲の配管構造の一例を模式的に示す図である。
図3】合金のSEM(走査電子顕微鏡)による断面図を示す図である。
図4】各合金のSEM(走査電子顕微鏡)による断面図を示す図である。
図5】マンガン-クロム混合酸化物によるトルエンの分解メカニズムを示す図である。
図6】有機物除去ユニットに接続される配管構造のより詳細な一例を概略的に示す図である。
図7】有機物除去ユニットの構成のより詳細な一例を概略的に示す図である。
図8】ピンの構成の一例を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しつつ実施の形態について詳細に説明する。なお図面においては、理解容易の目的で、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。また同様な構成及び機能を有する部分については同じ符号が付されており、下記説明では重複説明が省略される。
【0031】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0032】
また、以下に記載される説明において、「第1」または「第2」などの序数が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、これらの序数によって生じ得る順序に限定されるものではない。
【0033】
相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば「一方向に」「一方向に沿って」「平行」「直交」「中心」「同心」「同軸」など)が用いられる場合、該表現は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。等しい状態であることを示す表現(例えば「同一」「等しい」「均質」など)が用いられる場合、該表現は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。形状を示す表現(例えば、「四角形状」または「円筒形状」など)が用いられる場合、該表現は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲で、例えば凹凸や面取りなどを有する形状も表すものとする。一の構成要素を「備える」「具える」「具備する」「含む」または「有する」という表現が用いられる場合、該表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。「A,BおよびCの少なくともいずれか一つ」という表現が用いられる場合、該表現は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A,BおよびCのうち任意の2つ、ならびに、A,BおよびCの全てを含む。
【0034】
<基板処理装置の全体構成>
図1は、基板処理装置100の構成の一例を概略的に示す平面図である。基板処理装置100は、基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の処理装置である。
【0035】
基板Wは、例えば、半導体ウエハ、液晶ディスプレイ用基板、有機EL(Electroluminescence)用基板、FPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスプレイ用基板、磁気ディスク用基板、光ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、太陽電池用基板である。基板Wは、薄い平板形状を有する。以下では、基板Wが半導体ウエハであるものとする。基板Wは例えば円板形状を有している。基板Wの直径は例えば300mm程度であり、基板Wの膜厚は例えば0.5mm程度以上かつ3mm程度以下である。
【0036】
図1の例では、基板処理装置100は、インデクサブロック110と、処理ブロック120と、制御部90とを含んでいる。処理ブロック120は、主として基板Wの処理を行う部分であり、インデクサブロック110は、主として、基板処理装置100の外部と処理ブロック120との間での基板Wの搬送を行う部分である。
【0037】
インデクサブロック110は、ロードポート111と、第1搬送部112とを含む。ロードポート111には、外部から搬入された基板収容器(以下、キャリアと呼ぶ)Cが載置される。キャリアCには、複数の基板Wが、例えば鉛直方向において互いに間隔を空けて並んだ状態で、収容される。図1の例では、複数のロードポート111が配列される。
【0038】
第1搬送部112は搬送ロボットであって、各ロードポート111に載置されたキャリアCから未処理の基板Wを取り出すことができる。第1搬送部112はインデクサロボットとも呼ばれ得る。第1搬送部112は、キャリアCから取り出した未処理の基板Wを処理ブロック120に搬送する。処理ブロック120は該未処理の基板Wに処理を行うことができる。また、第1搬送部112は、処理済みの基板Wを処理ブロック120から受け取り、処理済みの基板Wをロードポート111のキャリアCに搬送することができる。
【0039】
図1の例では、処理ブロック120は、複数の処理ユニット121と、第2搬送部122と、第3搬送部123とを含んでいる。第2搬送部122はシャトル搬送ユニットであって、第1搬送部112と第3搬送部123との間で基板Wを搬送する。第3搬送部123は搬送ロボットであって、第2搬送部122と複数の処理ユニット121との間で基板Wを搬送する。
【0040】
図1の例では、複数(例えば4つ)の処理ユニット121は平面視において第3搬送部123の周りを囲むように設けられている。この第3搬送部123はセンターロボットとも呼ばれ得る。平面視上の各位置において、複数の処理ユニット121が鉛直方向に積層されていてもよい。つまり、鉛直方向に積層された複数の処理ユニット121によって構成されるタワーTWの複数(図では4つ)が、第3搬送部123を囲むように設けられてもよい。
【0041】
図1の例では、複数の処理ユニット121には、ウェット処理ユニット121Wと、ドライ処理ユニット121Dとが含まれている。
【0042】
ウェット処理ユニット121Wは基板Wに対して種々のウェット処理を行う。例えば、ウェット処理ユニット121Wは、薬液を基板Wの主面に供給する薬液処理と、リンス液を基板Wの主面に供給するリンス処理とをこの順に行う。薬液処理としては、例えば、洗浄処理およびエッチング処理を適用することができる。また、ウェット処理ユニット121Wはリンス処理の後に、基板を乾燥させる乾燥処理も行う。
【0043】
ウェット処理ユニット121Wに搬入される直前の基板Wの主面にパターンが形成されている場合がある。この場合、ウェット処理ユニット121Wは、リンス処理と乾燥処理との間で、疎水処理およびリンス処理をこの順に行ってもよい。疎水処理は、シリル化液等の疎水化液を基板Wの主面に供給して基板Wの主面に疎水化膜を形成する処理である。疎水処理の後のリンス処理は、疎水化液をリンス液で押し流す処理である。基板Wに疎水化膜が形成されることにより、リンス液の表面張力を低減させることができる。このため、次の乾燥処理でのパターンの倒壊を抑制することができる。
【0044】
あるいは、ウェット処理ユニット121Wに搬入される直前の基板Wの主面に、硬化層を含むレジスト膜が形成されている場合がある。この場合、ウェット処理ユニット121Wは、薬液処理として、レジスト膜の硬化層を除去する除去処理を行ってもよい。この場合には、薬液として、例えば、硫酸および過酸化水素水の混合液(SPM)を適用することができる。
【0045】
ウェット処理ユニット121Wによる処理後の基板Wの主面には、レジスト膜および疎水化膜等の有機膜が形成されている。
【0046】
ドライ処理ユニット121Dは有機物除去ユニット1を含んでいる。有機物除去ユニット1は、基板Wの主面に例えばオゾンガスを供給して、基板Wの主面上の有機物を除去する処理ユニットである。有機物は、例えば、上述の有機膜(例えばレジスト膜または疎水化膜)である。有機物除去ユニット1は、酸化性ガスにより基板Wの主面上の有機物を酸化分解することから、ドライ酸化処理ユニットであるともいえる。
【0047】
有機物除去ユニット1の構成の一例については後述するものの、有機物除去ユニット1は、基板Wを加熱する加熱機能を有してもよい。この場合、図1に示されるように、ドライ処理ユニット121Dは、基板Wを冷却する冷却ユニット124と、冷却ユニット124と有機物除去ユニット1との間で基板Wを搬送するローカル搬送部125とを含んでいてもよい。図1の例では、第3搬送部123が基板Wを冷却ユニット124に搬送し、ローカル搬送部125が基板Wを冷却ユニット124と有機物除去ユニット1との間で搬送する。冷却ユニット124は、有機物除去ユニット1から搬送された処理済みの高温の基板Wを冷却する。
【0048】
制御部90は、基板処理装置100を統括的に制御する。より具体的には、制御部90は第1搬送部112、第2搬送部122、第3搬送部123および処理ユニット121を制御する。制御部90は電子回路であって、例えばデータ処理部および記憶部を有する。データ処理部と記憶部とはバスを介して相互に接続され得る。データ処理部は例えばCPU(Central Processor Unit)などの演算処理装置であってもよい。記憶部は非一時的な記憶部(例えばROM(Read Only Memory))および一時的な記憶部(例えばRAM(Random Access Memory))を有していてもよい。非一時的な記憶部には、例えば制御部90が実行する処理を規定するプログラムが記憶されていてもよい。データ処理部がこのプログラムを実行することにより、制御部90が、プログラムに規定された処理を実行することができる。もちろん、制御部90が実行する処理の一部または全部が専用の論理回路などのハードウェアによって実行されてもよい。
【0049】
<有機物除去ユニットの概要>
図2は、有機物除去ユニット1、および、その周囲の配管構造の一例を模式的に示す図である。図2に示されるように、有機物除去ユニット1はチャンバ10を含んでいる。チャンバ10は内部空間10sを形成する。内部空間10sは、基板Wを処理する処理室に相当する。なお、図2では、チャンバ10の形状を模式的に示している。
【0050】
チャンバ10は、基板Wの搬出入のための開閉構造を有する。チャンバ10は基板Wの搬出入時において開状態となり、基板Wの処理時において閉状態となる。開状態とは、内部空間10sを、ローカル搬送部125が存在する外部空間と連通させた状態であり、閉状態とは、内部空間10sを当該外部空間から遮断させた状態である。ローカル搬送部125は、チャンバ10が開状態であるときに、チャンバ10の内部空間10sに基板Wを搬入したり、内部空間10sから基板Wを搬出したりすることができる。有機物除去ユニット1は、チャンバ10が閉状態であるときに、オゾンガスを用いて基板Wを処理することができる。
【0051】
図2の例では、チャンバ10は下部材20と上部材30とを含んでいる。下部材20および上部材30は鉛直方向において向かい合っている。上部材30は下部材20よりも鉛直上方に位置しており、開閉駆動部40によって変位可能に設けられる。開閉駆動部40は制御部90によって制御され、上部材30を、次に説明する開位置と閉位置との間で昇降させる。開位置は、上部材30が下部材20から離れた位置である。図2の例では、開位置に位置する上部材30が示されている。上部材30が開位置に位置することにより、チャンバ10が開状態となる。一方、閉位置は、上部材30が下部材20と密着し、下部材20および上部材30によって内部空間10sを密閉させる位置である。上部材30が閉位置に位置することにより、チャンバ10は閉状態となる。開閉駆動部40は例えばエアシリンダまたはリニアモータ等の直動機構を含んでいてもよい。あるいは、開閉駆動部40は、モータと、モータの回転を直線移動に変換する動力伝達部(例えばラックピニオン機構またはボールねじ機構)とを含んでいてもよい。
【0052】
基板Wはチャンバ10内において例えば水平姿勢で保持または載置される。ここでいう水平姿勢とは、基板Wの厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢である。具体的な一例として、基板Wはチャンバ10の底部によって支持されてもよい(後に説明する図9も参照)。この場合、チャンバ10の底部が基板Wを支持する載置台として機能する。
【0053】
有機物除去ユニット1は、チャンバ10内の基板Wを加熱するヒータ(後に説明する図9のヒータ44も参照)を含んでいてもよい。ヒータ44は例えば制御部90によって制御される。ヒータ44は、基板Wの主面上の有機物の酸化分解に適した温度まで、基板Wを加熱することができる。当該温度は例えば摂氏100度以上である。
【0054】
図2に示されるように、チャンバ10には供給管50の下流端が接続されている。図2の例では、チャンバ10のうち天井部に供給管50の下流端が接続されている。供給管50の上流端はオゾン発生器70に接続されている。オゾン発生器70はオゾンガスを発生させる。オゾン発生器70によるオゾン発生方式は特に制限されないものの、例えば、無声放電方式、電気分解方式および紫外線ランプ方式の少なくともいずれか一つを適用できる。オゾン発生器70はオゾンガスを供給管50の上流端に供給する。
【0055】
供給管50には供給弁52aが介挿されている。供給弁52aは供給管50の流路の開閉を切り換える。供給弁52aが開くと、オゾン発生器70からのオゾンガスは供給管50の内部をチャンバ10に向かって流れ、チャンバ10の内部空間10sに流入する。供給弁52aが閉じると、チャンバ10へのオゾンガスの供給が停止する。図2の例では、供給管50には、流量調整弁の一例であるマスフローコントローラ53aも介挿されている。マスフローコントローラ53aは、供給管50を流れるオゾンガスの流量を調整する。供給弁52aおよびマスフローコントローラ53aは制御部90によって制御される。
【0056】
図2に示されるように、チャンバ10には排出管60の上流端も接続されている。図2の例では、排出管60の上流端はチャンバ10の底部に接続され、排出管60の下流端は外部の排気部71に接続される。排気部71は工場ユーティリティであってもよい。排出管60には排出弁62aが介挿されている。排出弁62aは制御部90によって制御され、排出管60の流路の開閉を切り換える。
【0057】
供給管50を通じてチャンバ10内に供給されたオゾンガスは、基板Wの主面と反応して、基板Wの主面上の有機物を酸化分解する。酸化分解により生じた有機物ガスおよび水蒸気等の反応物はオゾンガスとともに、排出管60を通じてチャンバ10の外部の排気部71に排出される。
【0058】
<供給管および排出管の材料>
このオゾンガスの流路において、チャンバ10よりも上流側の供給管50の内壁の少なくとも一部におけるマンガンの含有比率は、チャンバ10よりも下流側の排出管60の内壁の少なくとも一部におけるマンガンの含有比率よりも低い。ここでいうマンガンの含有比率とは、例えば、マンガンの重量パーセント濃度である。
【0059】
例えば、供給管50の内壁のうち長手方向の少なくとも一部はステンレス合金(ステンレス鋼とも呼ばれる)によって形成される。供給管50のステンレス合金におけるマンガンの含有比率は例えば0.5質量パーセント濃度未満である。より具体的な一例として、供給管50のステンレス合金はフェライト系ステンレス合金であってもよい。あるいは、供給管50のステンレス合金は、オーステナイト系のダブルメルト材によって構成されてもよい。ステンレス合金の表面には、クロム酸化物(例えばCr)を含む不働態膜が形成される。また、マンガンが含有される場合には、不働態膜にはマンガン酸化物(MnO)およびクロム酸マンガン(例えばMnCr)も含まれ得る。このような不働態膜によって、ステンレス合金の内部を外部から保護することができる。
【0060】
供給管50のうちの長手方向の他の一部は、フレキシブル配管によって構成されてもよい。例えば、供給管50のうちの下流端から長手方向の所定範囲内の下流部分が、フレキシブル配管によって構成されてもよい。当該フレキシブル配管には、例えば、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂によって構成されてもよい。当該フレキシブル配管におけるマンガンの含有比率も0.5質量パーセント濃度未満である。供給管50のうちの長手方向の一部がフレキシブル配管であれば、上部材30が移動したときに供給管50に生じる応力を低減させることができる。
【0061】
供給管50の内壁のうち、マンガンの含有比率の小さな材料(例えば上述のステンレス合金またはフッ素系樹脂)によって構成された部分は、供給管50の長手方向の全部のうちの8割以上であってもよく、9割以上であってもよく、10割であってもよい。
【0062】
一方、排出管60の内壁のうち長手方向の少なくとも一部は、マンガンを含む合金によって形成される。当該合金は例えばステンレス合金である。排出管60のステンレス合金におけるマンガンの含有比率(つまり、組成比)は例えば0.5質量パーセント濃度以上である。排出管60のステンレス合金は、マンガンの含有比率の高いステンレス合金、例えば、オーステナイト系ステンレス合金であってもよい。より具体的な一例として、JIS(Japanese Industrial Standards)で規定されたSUS316LあるいはAISI(American Iron and Steel Institute)で規定された316Lを適用することができる。排出管60のステンレス合金の表面には、マンガン酸化物(MnO)、クロム酸化物(Cr)およびクロム酸マンガン(MnCr)等の酸化物を含む不働態膜が形成される。これにより、ステンレス合金の内部を保護することができる。
【0063】
排出管60の内壁のうち、マンガンの含有比率の大きなステンレス合金によって構成された部分は、排出管60の長手方向の全部のうちの8割以上であってもよく、9割以上であってもよく、10割であってもよい。
【0064】
以上のように、本実施の形態では、供給管50の内壁に存在するマンガンの含有比率は低い。このため、供給管50の内部をオゾンガスが通過しても、供給管50の内壁から管内へのマンガンの流出量は小さい。具体的には、オゾンガスの作用によるマンガンの流出量は小さい。したがって、チャンバ10内に流入するマンガンの量を低減させることができ、基板Wの主面に対する金属汚染を抑制することができる。
【0065】
ところで、文献1には、合金の不働態膜の組成と合金におけるマンガンの含有比率との関係についての検討結果が記載されている。文献1では、合金におけるマンガンの含有比率がそれぞれ0.0,0.5,1.0,3.0重量パーセント濃度のFe-Cr基合金が記載されている。図3および図4は、各合金のSEM(走査電子顕微鏡)による断面図を示す図である。図3(a)は0.0重量パーセント濃度に対する結果を示し、図3(b)は0.5重量パーセント濃度に対する結果を示し、図4(a)は1.0重量パーセント濃度に対する結果を示し、図4(b)は3.0重量パーセント濃度に対する結果を示している。文献1によれば、長期酸化時において、マンガンの含有比率が0.0重量パーセント濃度である合金における酸化物(不働態膜)に含まれる相はCrのみである。また、マンガンの含有比率が0.5重量パーセント濃度における酸化物では、Crおよび(Mn,Cr)が含まれ、マンガンの含有比率が1.0重量パーセント濃度である合金およびマンガンの含有比率が3.0重量パーセント濃度である合金の各々における酸化物では、Crおよび(Mn,Cr)の他に、Mn2が多く含まれる。
【0066】
このため、供給管50のステンレス合金におけるマンガンの含有比率は上述のように、0.5重量パーセント濃度未満であるとよい。これにより、供給管50の内壁(不働態膜)におけるマンガンの量を好適に低減させることができ、基板Wに対する金属汚染を抑制することができる。より好ましくは、供給管50のステンレス合金におけるマンガンの含有比率は0.03重量パーセント濃度以下であり、例えば0.01重量パーセント濃度以上かつ0.02重量パーセント濃度以下に設定され得る。これにより、基板Wの金属汚染をより確実に抑制することができる。
【0067】
また、供給管50の材料としてステンレス合金を適用すれば、オゾンガスに対して高い信頼性で供給管50を実現することができる。
【0068】
さて、供給管50からチャンバ10内に流入したオゾンガスは基板Wの主面上の有機物と反応する。これにより、有機物が酸化分解される。酸化分解により生成された有機物ガスおよび水蒸気等のガスはオゾンガスとともに、排出管60を通じて外部の排気部71に排出される。このため、排出管60の内壁は炭素環境(つまり有機物環境)に曝される。本実施の形態では、排出管60のステンレス合金におけるマンガンの含有比率は高いので、不働態膜におけるマンガン酸化物の含有比率も高く、同様に、マンガン-クロム混合酸化物の含有比率も高い。マンガン酸化物およびマンガン-クロム混合酸化物は、有機物ガスを分解する触媒として機能することができる(例えば、Xi Chen, Xi Chen, Songcai Cai, Enqi Yu, Jing Chen, Hongpeng Jia, ”MnOx/Cr2O3 composites prepared by pyrolysis of Cr-MOF precursors containing in situ assembly of MnOx as high stable catalyst for toluene oxidation”, 475, Applied Surface Science, 2019, pp312-324)。図5は、マンガン-クロム混合酸化物によるトルエンの分解メカニズムを示す図である。図5から理解できるように、トルエン等の有機物ガスが二酸化炭素および水に分解される。このため、排出管60の内壁が炭素環境に曝されても、排出管60の内壁に有機物が堆積する可能性を低減させることができる。つまり、排出管60に対する有機物汚染を抑制することができる。
【0069】
また、クロム酸マンガンはクロム酸化物に比べて耐浸炭性に優れている(例えば、Hao Li, Weixing Chen, ”Stability of MnCr2O4 spinel and Cr2O3 in high temperature carbonaceous environments with varied oxygen partial pressures”, 52, Corrosion Science, 2010, pp2481-2488)。このため、排出管60の内壁が炭素環境に曝されても、排出管60の内壁に対する浸炭を抑制することができる。
【0070】
なお、オゾンガスも排出管60の内部を流れるので、排出管60の内壁からマンガンが流出し得る。しかしながら、マンガンはガスの流れに沿って排気部71側に向かって排出管60の内部を流れる。このため、マンガンは排出管60よりも上流側に位置する基板Wには付着しにくく、基板Wに対する金属汚染をほとんど招かない。
【0071】
また、排出管60の材料にマンガンの含有比率の高いステンレス合金、例えば、SUS316Lおよび316L等のオーステナイト系ステンレス合金を適用すれば、製造コストを低減させることができる。
【0072】
供給管50および排出管60の両方においてステンレス合金を適用すれば、オゾンガスに対して高い信頼性で供給管50および排出管60を実現することができる。つまり、供給管50および排出管60において互いに同種類のステンレス合金を用いつつも、ステンレス合金の組成を供給管50および排出管60で異ならせることにより、金属汚染および有機物汚染の両方を抑制しつつ、高い信頼性で供給管50および排出管60を実現することができる。
【0073】
なお、供給管50は必ずしもステンレス合金によって形成される必要はない。例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、ニッケル合金、石英または樹脂(例えばフッ素系樹脂)を供給管50の材料に適用することができる。これらの材料において、マンガンの含有比率は例えば0.5重量パーセントよりも十分に小さく、マンガンはほとんど含まれていない。このため、基板Wに対する金属汚染をさらに抑制することができる。
【0074】
また、供給管50の内壁は、マンガンの含有比率が低いコーティング材料によってコーティングされてもよい。つまり、供給管50は、筒状部材と、筒状部材の内壁に形成されたコーティン材とを含んでいてもよい。コーティング材料には、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金または石英を適用することができる。
【0075】
<配管構造のより詳細な一例>
次に、有機物除去ユニット1に接続される配管構造のより詳細な一例を説明する。図6は、有機物除去ユニット1に接続される配管構造のより詳細な一例を概略的に示す図である。
【0076】
<不活性ガス供給>
図6の例では、チャンバ10に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給管51b(以下、単に供給管51bと呼ぶ)が設けられている。図6の例では、供給管51bの下流端は供給管50の途中に接続されている。以下では、供給管50のうち、供給管50の下流端と供給管51bの下流端との間の部分を共通管51とよび、共通管51よりも上流側の部分をオゾン供給管51aと呼ぶ。供給管51bの上流端は不活性ガス供給源に接続されている。不活性ガス供給源は、不活性ガスを貯留する貯留部を有し、供給管51bの上流端に不活性ガスを供給する。不活性ガスは例えば窒素ガスおよび希ガスの少なくともいずれか一つを含む。希ガスは例えばアルゴンガスを含む。
【0077】
図6の例では、供給管51bには、供給弁52b、流量調整弁53b、フィルタ54bおよび逆止弁55bが介挿されている。供給弁52bは供給管51bの流路の開閉を切り替える。流量調整弁53bは、供給管51bを流れる不活性ガスの流量を調整する。供給弁52bおよび流量調整弁53bは例えば制御部90によって制御される。フィルタ54bは、不活性ガスに含まれる異物を補足する。これにより、より清浄な不活性ガスをチャンバ10に供給することができる。逆止弁55bは、不活性ガス供給源からチャンバ10に向かって流れる不活性ガスを通過させ、チャンバ10から不活性ガス供給源へ向かって流れる不活性ガスを阻止する。
【0078】
制御部90はオゾンガスによる基板Wの処理後に供給弁52bを開く。これにより、不活性ガス供給源からの不活性ガスが供給管51bおよび共通管51を通じてチャンバ10内に供給される。このため、不活性ガスでチャンバ10内のオゾンガスを排出管60側に押し出すことができる。そして、制御部90はオゾンガスが十分に排出された後に、開閉駆動部40を制御して上部材30を上位置に上昇させる。これにより、チャンバ10の外部へのオゾンガスの流出を抑制することができる。
【0079】
供給管51bの材料は適宜に選定され得る。例えば、供給管51bの材料は供給管50と同じであってもよく、排出管60と同じであってもよい。
【0080】
<オゾンガス供給>
図6の例では、オゾン供給管51a(以下、単に供給管51aと呼ぶ)のうち供給弁52aよりも上流側の部分に供給弁55aが介挿されている。供給弁55aも供給管51aの流路の開閉を切り換える。また、供給管51aのうちの供給弁52aと供給弁55aの間の部分には、配管56aの上流端が接続されている。配管56aの下流端は排出管69に接続されている。排出管69の下流端は排気部71(図2)に接続される。配管56aには、圧力調整弁の一例であるオートプレッシャコントローラ57aが介挿されている。供給弁55aおよびオートプレッシャコントローラ57aは例えば制御部90によって制御される。供給管51a内の一部のオゾンガスが、オートプレッシャコントローラ57aによって制御された流量で、配管56aを流れることにより、供給管51a内の圧力を所定範囲内に調整することができる。
【0081】
配管56aの材料は適宜に選定され得る。例えば、配管56aの材料は供給管50と同じであってもよく、排出管60と同じであってもよい。排出管69は後の説明から理解できるように、排出管60の一部であるので、排出管69の材料は例えば排出管60と同じである。
【0082】
図6の例では、供給管51aにはフィルタ54aが介挿されている。図6の例では、フィルタ54aは供給弁52aおよびマスフローコントローラ53aの両方よりも下流側に設けられている。フィルタ54aは、オゾンガスに含まれる異物(例えば金属)を補足する。これにより、より清浄なオゾンガスをチャンバ10内に供給することができる。
【0083】
図6の例では、フィルタ54aに補足された異物を、排出管69に排出させる配管系統が設けられている。具体的には、供給管51aのうちフィルタ54aの直前の部分には、排出管56bの上流端が接続されている。排出管56bには排出弁57bが介挿されている。排出弁57bは例えば制御部90によって制御され、排出管56bの流路の開閉を切り換える。排出管56bの下流端はエジェクタ59bの吸引口に接続されている。エジェクタ59bの流入口は不図示のガス供給源に接続されており、エジェクタ59bの流出口は排出管58bの上流端に接続されている。排出管58bの下流端は排出管69に接続される。
【0084】
制御部90はオゾンガスによる基板Wの処理後に排出弁57bを開く。より具体的な一例として、制御部90は上部材30の上位置への移動と並行して、排出弁57bを開いてもよい。排出弁57bが開いた状態でガス供給源から高圧のガス(例えば空気)がエジェクタ59bを通じて排出管58bを流れると、当該ガスの流れによって排出管56b内の圧力が負圧となる。これにより、チャンバ10内のガスが、共通管51、供給管51aの一部および排出管56bを通じてエジェクタ59bに吸引され、排出管58bを通じて排出管69に排出される。このガスの流れによってフィルタ54a内の異物の一部が押し流されるので、フィルタ54a内の異物の量を低減させることができる。
【0085】
排出管56bおよび排出管58bの材料は例えば排出管60と同じであってもよい。これにより、チャンバ10内に有機物ガスが残留していても、有機物ガスによる排出管56bおよび排出管58bに対する有機物汚染を抑制することができる。
【0086】
なお、フィルタ54aが設けられない場合には、排出管56b、排出弁57b、エジェクタ59bおよび排出管58bも設けられない。
【0087】
<排出>
図6の例では、排出管60の第1例として、排出管61a、排出管64aおよび排出管65aが示されている。図6の例では、排出管61aの上流端はチャンバ10の底部に接続されている。排出管61aには排出弁62aが介挿されている。排出弁62aは例えば制御部90によって制御され、排出管61aの流路の開閉を切り換える。排出管61aの下流端はエジェクタ63aの吸引口に接続されている。エジェクタ63aの流出口は排出管64aの上流端に接続されている。排出管64aの下流端は排出管69に接続されている。エジェクタ63aの流入口は不図示のガス供給源に接続される。ガス供給源は高圧のガス(例えば空気)をエジェクタ63aの流入口に供給する。
【0088】
図6の例では、排出管61aの途中部分には排出管65aの上流端が接続されている。図6の例では、当該途中部分は、排出管61aのうちのチャンバ10と排出弁62aとの間の部分である。排出管65aの下流端は排出管69に接続されている。排出管65aには排出弁66aが介挿されている。排出弁66aは例えば制御部90によって制御され、排出管65aの流路の開閉を切り換える。
【0089】
制御部90はオゾンガスによる基板Wの処理後に排出弁62aを開き、排出弁66aを閉じる。この状態で、エジェクタ63aに高圧のガスが供給されると、チャンバ10内のガスは排出管61aおよび排出管64aを通じて比較的に大きな流量で排出される。オゾンガスの処理後には、チャンバ10には不活性ガスが供給されるので、初期的にはチャンバ10からのオゾンガスおよび不活性ガスが排出される。これらのガスは大きな流量で排出されるので、チャンバ10内のオゾンガスをより短時間で排出することができる。
【0090】
オゾンガスが十分に排出されると、制御部90は排出弁62aを閉じ、排出弁66aを開く。この状態では、チャンバ10内のガスは排出管61aの一部および排出管65aを通じて、比較的に小さな流量で排出される。チャンバ10には不活性ガスが供給されるので、チャンバ10内の圧力が陽圧となり、開閉駆動部40は上部材30を容易に上昇させることができる。
【0091】
図6の例では、排出管60の第2例として、排出管61b、排出管64bおよび排出管65bが示されている。図6の例では、排出管61bの上流端は、チャンバ10の下部材20の側壁の上面に連通している。排出管61bには排出弁62bが介挿されている。排出弁62bは例えば制御部90によって制御され、排出管61bの流路の開閉を切り換える。排出管61bの下流端はエジェクタ63bの吸引口に接続されている。エジェクタ63bの流出口は排出管64bの上流端に接続されている。排出管64bの下流端は排出管69に接続されている。エジェクタ63bの流入口は不図示のガス供給源に接続される。ガス供給源は高圧のガス(例えば空気)をエジェクタ63bの流入口に供給する。
【0092】
図6の例では、排出管61bの途中部分には排出管65bの上流端が接続されている。図6の例では、当該途中部分は、排出管61bのうちのチャンバ10と排出弁62bとの間の部分である。排出管65bの下流端は排出管69に接続されている。排出管65bには排出弁66bが介挿されている。排出弁66bは例えば制御部90によって制御され、排出管65bの流路の開閉を切り換える。
【0093】
排出弁62bが開き、かつ、排出弁66bが閉じた状態で、エジェクタ63bに高圧のガスが供給されると、チャンバ10内のガスは排出管61bおよび排出管64bを通じて比較的に大きな流量で排出される。これにより、上部材30の側壁の下面が下部材20の側壁の上面に向かって押圧される。一方で、排出弁62bが閉じ、かつ、排出弁66bが開いた状態では、チャンバ10内のガスは排出管61bおよび排出管65bを通じて、比較的に小さな流量で排出される。これにより、開閉駆動部40は上部材30をより容易に上昇させることができる。
【0094】
排出管61a、排出管64a、排出管65a、排出管61b、排出管64bおよび排出管65bは排出管60の一例である。よって、これらの配管の内壁におけるマンガンの含有比率は、供給管50の内壁におけるマンガンの含有比率よりも高く設定され得る。
【0095】
<チャンバ10>
次にチャンバ10の構成の一例について詳述する。
【0096】
<チャンバ10の材料の第1例>
チャンバ10の内壁の少なくとも一部におけるマンガンの含有比率は排出管60の内壁におけるマンガンの含有比率よりも低くても良い。チャンバ10の内壁は、例えば、ステンレス合金によって形成されてもよく、アルミニウムまたはアルミニウム合金によって形成されてもよく、チタンまたはチタン合金によって形成されてもよく、石英によって形成されてもよい。これらによれば、チャンバ10内のオゾンガスがチャンバ10の内壁と反応したとしても、マンガンの蒸発はあまり生じない。このため、基板Wに対する金属汚染をさらに抑制することができる。
【0097】
<有機物除去ユニット1の詳細>
図7は、有機物除去ユニット1の構成のより詳細な一例を概略的に示す図である。図7の例では、有機物除去ユニット1はチャンバ10とヒータ44とを含んでいる。
【0098】
チャンバ10は下部材20と上部材30とを含んでいる。図7では、下部材20は、中央部21と、内側環状部22と、環状板部23と、外側環状部24と、複数の筒状部25と、複数のベローズ26と、支持部27とを含んでいる。
【0099】
図7の例では、中央部21は板状の形状を有しており、その厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢で設けられている。図7の例では、中央部21の上面21aには基板Wが載置される。つまり、上面21aは、基板Wが載置される載置面として機能する。言い換えれば、中央部21は、基板Wが載置される載置台として機能する。中央部21は平面視において例えば基板Wと同心状の円形状を有する。
【0100】
図7の例では、中央部21は板状部211および複数の位置決め用のピン212を含んでいる。板状部211は板状の形状を有し、その厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢で設けられる。板状部211は平面視において、例えば基板Wと同心状の円形状を有する。複数のピン212は板状部211の上面に設けられ、板状部211の上面から鉛直上方に突出する。複数のピン212は基板Wの周縁に沿って等間隔で設けられ得る。ピン212は基板Wの周縁と当接して基板Wの平面視の位置を決める。
【0101】
図7の例では、板状部211には、リフトピン28が貫通される複数のピン用の貫通穴21bが形成されている。複数の貫通穴21bは平面視において、例えば、基板Wと同心状の仮想円に沿って等間隔に配列されてもよい。貫通穴21bは鉛直方向において板状部211を貫通する。
【0102】
板状部211のうち各貫通穴21bを形成する周縁部は、筒状部25の上端に接続されている。筒状部25は筒状の形状を有し、その中心軸が鉛直方向に沿う姿勢で設けられている。各筒状部25の内部空間は貫通穴21bにつながっている。リフトピン28は筒状部25の内部空間に位置している。
【0103】
各筒状部25の下端にはベローズ26の上端が接続されている。ベローズ26は筒状の形状を有し、その中心軸が鉛直方向に沿う姿勢で設けられている。ベローズ26は蛇腹状に構成されており、鉛直方向のサイズが可変となるように変形可能である。互いに接続された筒状部25およびベローズ26は、リフトピン28を収容する収容空間を形成する。
【0104】
ベローズ26の下端には支持部27が接続されている。図7の例では、支持部27は板状の形状を有しており、その厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢で設けられている。
【0105】
各リフトピン28は、鉛直方向に長い棒状の形状を有しており、対応する筒状部25およびベローズ26内の収容空間に収容される。各リフトピン28の下端は支持部27に固定されている。
【0106】
各リフトピン28は、ピン昇降駆動部29によって、上位置と下位置との間で昇降可能である。上位置は、リフトピン28の先端が中央部21の上面21aよりも鉛直上方となる位置であり、下位置は、リフトピン28の先端が中央部21の上面21aよりも鉛直下方となる位置である。図7の例では、ピン昇降駆動部29は支持部27を昇降させる。これにより、支持部27に固定されたリフトピン28が昇降する。ピン昇降駆動部29は例えばエアシリンダまたはリニアモータを有する直動機構を含んでいてもよく、あるいは、モータと、モータの回転を直線移動に変換する動力伝達部とを含んでいてもよい。ピン昇降駆動部29は例えば制御部90によって制御される。
【0107】
内側環状部22は中央部21の周縁から鉛直下方に沿って延びている。内側環状部22は、例えば基板Wと同心状の筒状形状を有する。外側環状部24は、例えば内側環状部22と同心状の筒状形状を有している。外側環状部24は内側環状部22よりも径方向外側に位置しており、内側環状部22と間隔を空けて径方向において向かい合っている。つまり、外側環状部24の内径は内側環状部22の外径よりも大きい。環状板部23は板状の円環形状を有しており、その厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢で設けられている。環状板部23の内周縁は内側環状部22の下端に接続されており、環状板部23の外周縁は外側環状部24の下端に接続されている。このような構造において、外側環状部24は下部材20の側壁であるともいえる。
【0108】
環状板部23には1つ以上の排気口23aが形成されている。図7の例では、複数の排気口23aが形成されている。複数の排気口23aは例えば環状板部23の周方向において等間隔に形成され得る。各排気口23aには排出管61aの上流端が接続される。つまり、図7の例では、複数の排出管61aが設けられている。複数の排出管62は合流してエジェクタ63aの吸引口に接続され得る。
【0109】
チャンバ10の内部空間10sのうち、内側環状部22、環状板部23および外側環状部24によって囲まれた空間を、排出空間10s2とも呼ぶ。排出空間10s2は基板Wと同心状の円筒形状を有する。
【0110】
ヒータ44は下部材20の中央部21の下面21cに取り付けられている。ヒータ44は中央部21を加熱し、中央部21を通じて基板Wに加熱させる。ヒータ44は例えば熱源441と伝熱部材442とを含む。伝熱部材442は板状の形状を有しており、その厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢で設けられる。伝熱部材442の上面は中央部21の下面21cに密着してもよい。伝熱部材442は、筒状部25によって貫通される貫通穴を有している。伝熱部材442は平面視において例えば基板Wと同心状の円形状を有し、例えばその直径は基板Wの直径よりも大きい。熱源441は例えば電熱線であり、伝熱部材442の内部に設けられている。熱源441によって生じた熱は伝熱部材442および中央部21を通じて基板Wに伝達され、基板Wが加熱される。伝熱部材442は熱伝導率の高い材料(例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金)によって形成され得る。
【0111】
上部材30は板状部31と側壁32とを含んでいる。板状部31は板状の形状を有しており、その厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢で設けられている。板状部31は中央部21と鉛直方向において向かい合っている。板状部31は中央部21よりも鉛直上方に位置している。板状部31は平面視において例えば基板Wと同心状の円形状を有する。側壁32は板状部31の周縁から鉛直下方に沿って延びている。側壁32は平面視において例えば基板Wと同心状の筒状形状を有する。側壁32は、下部材20の側壁である外側環状部24と鉛直方向において向かい合っている。
【0112】
図7の例では、外側環状部24の上面(つまり、下部材20の側壁の上面)にはシール部材80が設けられている。シール部材80は外側環状部24の上面の全周にわたって設けられており、平面視において例えば基板Wと同心状の円環形状を有している。シール部材80はオーリングであってもよい。図7の例では、2つのシール部材80が設けられている。一方のシール部材80は他方のシール部材80に対して径方向内側に設けられている。
【0113】
上部材30が開位置に位置する状態において、上部材30の側壁32の下面は下部材20の外側環状部24上のシール部材80と離れている。上部材30が閉位置に位置する状態において、上部材30の側壁32の下面はシール部材80と接する。シール部材80は閉状態において、下部材20と上部材30との間を封止する。これにより、チャンバ10の内部空間10sが外部からより確実に遮断される。
【0114】
図7の例では、外側環状部24の上面のうち、一対のシール部材80の間の部分において、排出管61bの上流端に連通する吸引口が形成されている。チャンバ10が閉状態となるときに、排出管61bからガスが吸引されることにより、上部材30の側壁32を下部材20の側壁(つまり外側環状部24)に押圧することができる。
【0115】
板状部31には給気口31aが形成されている。図7の例では、給気口31aは板状部31の中央部に形成されている。給気口31aが供給管50の下流口とつながるように、供給管50の下流端が板状部31に接続される。
【0116】
図7の例では、チャンバ10の内部空間10sには、整流板42が設けられている。整流板42は板状の形状を有し、その厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢で設けられる。整流板42は鉛直方向において給気口31aと離れた状態で設けられる。また、整流板42は基板Wと鉛直方向において離れた状態で設けられており、基板Wと向かい合う。つまり、整流板42はチャンバ10の内部空間10sにおいて供給管50の下流端と基板Wとの間に設けられる。整流板42は平面視において例えば基板Wと同心状の形状を有しており、その直径は基板Wの直径よりも大きい。整流板42には複数の貫通穴42aが形成されている。複数の貫通穴42aは平面視において二次元的に配列され、例えば、マトリックス状に配列される。複数の貫通穴42aは整流板42を鉛直方向において貫通する。
【0117】
整流板42は上部材30に取り付けられている。図7の例では、整流板42は第1固定部材43によって上部材30に取り付けられている。第1固定部材43は例えば締結部材であり、より具体的な一例として、ネジである。この場合、整流板42にはネジ用の貫通穴42bが形成され、上部材30の板状部31の下面にはネジ穴31bが形成される。そして、第1固定部材43が整流板42の貫通穴42bを貫通しつつ、第1固定部材43の先端部がネジ穴31bにネジ作用により結合される。複数の第1固定部材43が整流板42の周縁部に沿って等間隔に設けられてもよい。
【0118】
供給管50の下流端からチャンバ10の内部空間10sに流入したガスは、整流板42の複数の貫通穴42aを通過する。ガスが複数の貫通穴42aを通過することにより、ガスが整流され、より均一にガスが基板Wの上面に供給される。ガスは基板Wよりも径方向外側の排出空間10s2を通じて排出管61aの上流端に流入する。
【0119】
このような有機物除去ユニット1において、チャンバ10の内壁のうち、内部空間10sに露出する部材の露出表面の少なくとも一部におけるマンガンの含有比率は、排出管60の内壁におけるマンガンの含有比率よりも低くてもよい。例えば、上部材30の内面(つまり板状部31の下面および側壁32の内面)は内部空間10sに露出するので、上部材30の内面におけるマンガンの含有比率は、排出管60の内壁におけるマンガンの含有比率よりも低くてもよい。例えば、上部材30の板状部31および側壁32は、マンガンの含有比率が低い低マンガン材料(例えば、マンガンの含有比率の低いステンレス合金、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金または石英)によって形成され得る。より具体的な一例として、上部材30の板状部31および側壁32はアルミニウムまたはアルミニウム合金によって形成される。
【0120】
整流板42もチャンバ10の内部空間10sにおいて露出するので、整流板42の露出表面も低マンガン材料によって形成されてもよい。具体的な一例として、整流板42はアルミニウムまたはアルミニウム合金によって形成される。第1固定部材43の一部(例えばネジ頭)もチャンバ10の内部空間10sにおいて露出するので、第1固定部材43の露出表面(少なくともネジ頭の表面)も低マンガン材料によって形成されてもよい。具体的な一例として、第1固定部材43は、フェライト系ステンレス合金またはオーステナイト系のダブルメルト材によって形成される。
【0121】
位置決め用のピン212もチャンバ10の内部空間10sにおいて露出するので、ピン212の露出表面も低マンガン材料によって形成されてもよい。具体的な一例として、ピン212はステンレス合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金によって形成される。また、ピン212をチャンバ10の載置面(上面21a)に固定する固定部材がチャンバ10の内部空間10sで露出する場合もある。図8は、ピン212の構成の一例を概略的に示す断面図である。図8の例では、ピン212は第2固定部材213によって下部材20の上面21a(載置面)に固定される。図8の例では、第2固定部材213は締結部材であり、より具体的な一例として、ネジである。図8の例では、ピン212は凹形状を有しており、その凹形状の底部において貫通穴212aが形成されている。貫通穴212aはピン212を鉛直方向において貫通する。板状部211にはネジ穴21dが形成されている。第2固定部材213はピン212の貫通穴212aを貫通しつつ、第2固定部材213の先端部がネジ穴21dにネジ作用により結合される。図8に示されるように、第2固定部材213の一部(ネジ頭)がチャンバ10の内部空間10sに露出するので、第2固定部材213の露出表面(少なくともネジ頭の表面)も低マンガン材料によって形成されてもよい。具体的な一例として、第2固定部材213は、フェライト系ステンレス合金またはオーステナイト系のダブルメルト材によって形成される。
【0122】
下部材20の内面もチャンバ10の内部空間10sにおいて露出するので、下部材20も低マンガン材料によって形成されてもよい。例えば、中央部21、内側環状部22、環状板部23、外側環状部24、筒状部25、ベローズ26および支持部27は低マンガン材料によって形成されてもよく、具体的な一例として、アルミニウムまたはアルミニウム合金によって形成されてもよい。
【0123】
リフトピン28もチャンバ10の内部空間10sにおいて露出するので、リフトピン28も低マンガン材料によって形成されてもよい。具体的な一例として、リフトピン28はフェライト系ステンレス合金またはオーステナイト系のダブルメルト材によって形成され得る。
【0124】
図7の例では、ヒータ44が基板Wを加熱するので、チャンバ10の内部空間10sの温度も上昇する。このため、オゾンガスおよびチャンバ10の温度も上昇する。したがって、温度という観点では、オゾンガスの作用によってチャンバ10の内壁からマンガンが流出しやすい。しかるに、チャンバ10の内壁のうちの基板Wよりも上流側の部分(例えば上部材30)におけるマンガンの含有比率は、排出管60におけるマンガンの含有比率よりも低い。したがって、マンガンが流出しやすい温度環境であっても、上部材30の内壁からのマンガンの流出量を低減させることができ、基板Wに対する金属汚染を適切に抑制することができる。
【0125】
また、上述の例では、チャンバ10の内部空間10sにおいて基板Wよりも上流側に位置する整流板42および第1固定部材43も、低マンガン材料によって形成される。このため、オゾンガスが整流板42および第1固定部材43に作用しても、マンガンの流出量は小さい。したがって、マンガンが流出しやすい温度環境であっても、整流板42および第1固定部材43からのマンガンの流出量を低減させることができ、基板Wに対する金属汚染を適切に抑制することができる。
【0126】
また、上述の例では、チャンバ10の内部空間10sにおいて基板Wの周縁に接するピン212も、低マンガン材料によって形成される。また、ピン212を固定する第2固定部材213も低マンガン材料によって形成される。このため、オゾンガスがピン212および第2固定部材213に作用しても、マンガンの流出量は小さい。したがって、マンガンが流出しやすい温度環境であっても、ピン212および第2固定部材213からのマンガンの流出量を低減させることができ、基板Wに対する金属汚染を適切に抑制することができる。
【0127】
また、上述の例では、チャンバ10の内壁のうちの基板Wよりも下流側の部分(例えば下部材20)におけるマンガンの含有比率は、排出管60におけるマンガンの含有比率よりも低い。このため、基板Wよりも下流側の部分においてオゾンガスがチャンバ10の内壁に作用しても、マンガンの流出量は小さい。このため、例えば排出空間10s2内のガスのわずかな一部が基板W側に戻ったとしても、基板Wに対する金属汚染をより確実に抑制することができる。
【0128】
なお、チャンバ10の内部空間10sに露出する各部材の全体が低マンガン材料によって形成される必要はない。当該部材の露出表面の少なくとも一部(好ましくは露出表面の大部分、例えば9割以上)が低マンガン材料によって形成されていればよい。
【0129】
<チャンバ10の材料の第2例>
上述のように、チャンバ10の内壁の全体が低マンガン材料によって形成されてもよいものの、チャンバ10の内壁のうち、基板Wよりも上流側の上流部分の少なくとも一部が低マンガン材料によって形成され、基板Wよりも下流側の下流部分の少なくとも一部が、高い含有比率でマンガンを含む合金によって形成されてもよい。ここで、上流部分とは、例えば、チャンバ10内で載置された基板Wの上面と同じ平面を境界としてチャンバ10を分割して得られた2つの部分のうち、供給管50側の部分である。同様に、下流部分とは、例えば、チャンバ10内で載置された基板Wの上面と同じ平面を境界としてチャンバ10を分割して得られた2つの部分のうち、排出管60側の部分である。
【0130】
上部材30は基板Wよりも上流側に位置するので、上部材30の内面は低マンガン材料によって形成されてもよい。整流板42および第1固定部材43も鉛直方向において基板Wよりも上流側に位置するので、これらの表面も低マンガン材料によって形成されてもよい。
【0131】
一方、下部材20は基板Wよりも下流側に位置するので、下部材20の内面の一部が、マンガンを高い含有比率で含む合金によって形成されてもよい。例えば、内側環状部22の外周面、環状板部23の上面および外側環状部24の内周面のうち少なくとも一部は高マンガンのステンレス合金によって形成されてもよい。これにより、排出空間10s2に露出する表面の当該一部には、マンガン酸化物を含む不働態膜、より具体的には、マンガン-クロム混合酸化物を含む不働態膜が形成される。このため、当該一部が有機物ガスを分解する触媒として機能することができる。したがって、当該一部に対する有機物汚染を抑制することができる。また、有機物汚染の原因となる有機物ガスの一部を分解させた状態で、ガスを排出管61aに流すことができる。
【0132】
図7の例では、中央部21の上面21aには基板Wが載置されるので、その大部分は基板Wによって覆われる。したがって、オゾンガスおよび有機物ガスは中央部21の上面21aにはあまり作用しない。つまり、中央部21の上面21aからマンガンは流出しにくく、上面21aに対する有機物汚染は生じにくい。そのため、中央部21の材料は任意に選定されてもよい。図7の例では、中央部21はヒータ44からの熱を基板Wに伝達させる機能も有する。このため、中央部21は、熱伝導率が高いアルミニウムまたはアルミニウム合金によって形成されてもよい。
【0133】
図7の例では、中央部21、内側環状部22および環状板部23は同一材料で一体に形成され、外側環状部24はこれらと別体で形成される。このため、中央部21、内側環状部22および環状板部23は、熱伝導率にも鑑みて、アルミニウムまたはアルミニウム合金によって形成され得る。一方、外側環状部24は、有機物汚染に鑑みて、マンガンを高い含有比率で含む合金によって形成され得る。
【0134】
また、図7の例では、基板Wが中央部21の上面に載置された状態で、中央部21の貫通穴21bは基板Wによって覆われる。このため、筒状部25の内面、ベローズ26の内面、支持部27の上面およびリフトピン28の表面には、オゾンガスおよび有機物ガスがあまり流れない。つまり、これらからマンガンは流出しにくく、また、これらに対する有機物汚染は生じにくい。このため、これらの材料は任意に選定されてもよい。
【0135】
なお、上述の例では、チャンバ10の内部空間10sにオゾンガスが供給されているものの、酸素ガスおよびオゾンガスの少なくともいずれか一方がチャンバ10の内部空間10sに供給されてもよい。
【0136】
以上のように、基板処理装置100は詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において例示であって、この開示がそれに限定されるものではない。また、上述した各種変形例は、相互に矛盾しない限り組み合わせて適用可能である。そして、例示されていない多数の変形例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【0137】
上述の例では、開閉駆動部40は上部材30を昇降させるものの、下部材20を昇降させてもよい。また、上述の例では、チャンバ10の底部(例えば中央部21)が、基板Wを載置する載置台として機能するものの、チャンバ10の内部にチャンバ10とは別体の載置台が設けられてもよい。あるいは、チャンバ10の内部において、基板Wを保持する保持部が設けられてもよい。要するに、有機物除去ユニット1は、チャンバ10の内部空間10sにおいて基板Wが配置されて、基板Wを保持または載置する基板被配置部を含んでいればよい。
【符号の説明】
【0138】
10 チャンバ
100 基板処理装置
212 ピン
213 第2固定部材
42 整流板
43 第1固定部材
44 ヒータ
50 供給管
60 排出管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8