(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172911
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】監視装置、駆動システム、電力変換装置、監視方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20241205BHJP
H02P 29/024 20160101ALI20241205BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02P29/024
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090966
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】益子 大輝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 以久也
【テーマコード(参考)】
5H501
5H770
【Fターム(参考)】
5H501BB06
5H501BB08
5H501CC05
5H501HA05
5H501HA08
5H501HA09
5H501HB08
5H501JJ03
5H501KK05
5H501LL22
5H501LL23
5H501LL52
5H501MM02
5H501MM09
5H770AA05
5H770BA01
5H770CA02
5H770DA03
5H770DA10
5H770DA41
5H770EA01
5H770GA17
5H770HA02Y
5H770HA03Z
5H770JA10X
5H770JA17W
5H770JA17Y
5H770JA17Z
5H770LB05
5H770LB09
(57)【要約】
【課題】駆動装置と交流電動機との間の開閉装置のアークの発生に対して適切に対処することが可能な技術を提供する。
【解決手段】本開示の一実施形態に係る監視装置350は、開閉装置500が設けられる出力経路OLを通じて交流電動機100と接続される電力変換装置300から出力される電流、及びその周波数に基づき、開閉装置500におけるアークの発生の有無を監視し、開閉装置500におけるアークの発生があると判定すると、アークの発生に関する信号を出力する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の開閉装置が設けられる第1の電力経路を通じて交流電動機と接続される駆動装置から出力される電流、及びその周波数に基づき、前記第1の開閉装置におけるアークの発生の有無を監視し、前記アークの発生があると判定すると、前記アークの発生に関する信号を出力する、
監視装置。
【請求項2】
前記駆動装置から出力される電流及びその周波数に基づき、前記交流電動機の電圧を推定する推定部と、
前記推定部により推定される前記交流電動機の電圧と、前記駆動装置から出力される電圧との比較により、前記アークの発生の有無を判定する判定部と、を備える、
請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記推定部により推定される、前記交流電動機の電圧の推定値の振幅と、前記駆動装置から出力される電圧の振幅との差が第1の基準に対して相対的に大きい場合、前記アークの発生があると判定する、
請求項2に記載の監視装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記推定部により推定される、前記交流電動機の電圧の推定値の振幅と、前記駆動装置から出力される電圧の振幅との差が前記第1の基準に対して相対的に大きい状態が継続し、且つ、その継続時間が第2の基準に対して相対的に長い場合、前記アークの発生があると判定する、
請求項3に記載の監視装置。
【請求項5】
前記第2の基準は、前記駆動装置から出力される電流の制御系の応答速度に基づき規定される、
請求項4に記載の監視装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記推定部により推定される前記交流電動機の電圧の振幅と、前記駆動装置から出力される電圧の振幅との差が第1の基準に対して相対的に大きく、且つ、前記駆動装置から出力される電流をフィードバック制御する電流制御器の比例項及び積分項のうちの前記比例項の出力値がゼロである場合、前記アークの発生があると判定する、
請求項3に記載の監視装置。
【請求項7】
前記駆動装置から出力される電流及びその周波数に基づき、前記交流電動機の電圧を推定する推定部と、
前記交流電動機から出力される電流をフィードバック制御する電流制御器の比例項及び積分項のうちの前記積分項の出力値と、前記推定部により推定される、前記交流電動機の電圧の推定値との比較により、前記アークの発生を判定する判定部とを備える、
請求項1に記載の監視装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記積分項の出力値に対応する電圧の振幅と、前記推定部により推定される、前記交流電動機の電圧の推定値の振幅との差が第1の基準に対して相対的に大きく、且つ、前記比例項の出力値がゼロである場合、前記アークの発生があると判定する、
請求項7に記載の監視装置。
【請求項9】
前記第1の基準は、前記アークの発生時の前記第1の開閉装置の接点間の電圧降下の分よりも大きい値に設定される、
請求項4乃至6、及び8の何れか一項に記載の監視装置。
【請求項10】
前記アークの発生に関する信号の出力に応じて、前記交流電動機への電力供給を停止させる停止制御部を備える、
請求項1乃至8の何れか一項に記載の監視装置。
【請求項11】
前記停止制御部は、前記駆動装置を稼働停止させること、及び所定の電源と前記駆動装置との間の第2の電力経路に設けられる第2の開閉装置を閉状態から開状態に切り換えることの少なくとも一方を行うことにより、前記交流電動機への電力供給を停止させる、
請求項10に記載の監視装置。
【請求項12】
前記アークの発生に関する信号の出力に応じて、前記アークの発生をユーザに通知する通知部を備える、
請求項1乃至8の何れか一項に記載の監視装置。
【請求項13】
第1の開閉装置が設けられる第1の電力経路を通じて交流電動機と接続される駆動装置を用いて、前記交流電動機の駆動制御を行う制御装置と、
前記駆動装置から出力される電流、及びその周波数に基づき、前記第1の開閉装置におけるアークの発生の有無を監視し、前記アークの発生があると判定すると、前記アークの発生に関する信号を出力する監視装置と、を備える、
駆動システム。
【請求項14】
第1の開閉装置が設けられる第1の電力経路を通じて交流電動機と接続される駆動部と、
前記駆動部を用いて、前記交流電動機の駆動制御を行う制御部と、
前記駆動部から出力される電流、及びその周波数に基づき、前記第1の開閉装置におけるアークの発生の有無を監視し、前記アークの発生があると判定すると、前記アークの発生に関する信号を出力する監視部と、を備える、
電力変換装置。
【請求項15】
監視装置が、第1の開閉装置が設けられる第1の電力経路を通じて交流電動機と接続される駆動装置から出力される電流、及びその周波数に基づき、前記第1の開閉装置におけるアークの発生の有無を監視し、前記アークの発生があると判定すると、前記アークの発生に関する信号を出力する、
監視方法。
【請求項16】
情報処理装置に、
第1の開閉装置が設けられる第1の電力経路を通じて交流電動機と接続される駆動装置から出力される電流、及びその周波数に基づき、前記第1の開閉装置におけるアークの発生の有無を監視させ、前記アークの発生があると判定すると、前記アークの発生に関する信号を出力させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、監視装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、インバータ装置等の駆動装置と交流電動機との間に開閉装置が設けられる駆動システムが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、駆動装置から交流電動機に駆動電力が出力されている状態で、誤動作等によって開閉装置が閉状態から開状態に移行されると、開閉装置の電極間にアークが発生し、アークが発生する限り、駆動装置と交流電動機との間に電流が流れる。そのため、例えば、交流電動機が直流励磁の運転状態や比較的周波数の低い交流励磁の運転状態にある場合、アークの継続時間が長くなり、その結果、開閉装置の寿命が短くなったり、アークによる発熱で開閉装置の温度が上昇し開閉装置が故障に至ったりする可能性がある。
【0005】
そこで、上記課題に鑑み、駆動装置と交流電動機との間の開閉装置のアークの発生に対して適切に対処することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の一実施形態では、
第1の開閉装置が設けられる第1の電力経路を通じて交流電動機と接続される駆動装置から出力される電流、及びその周波数に基づき、前記第1の開閉装置におけるアークの発生の有無を監視し、前記アークの発生があると判定すると、前記アークの発生に関する信号を出力する、
監視装置が提供される。
【0007】
また、本開示の他の実施形態では、
第1の開閉装置が設けられる第1の電力経路を通じて交流電動機と接続される駆動装置を用いて、前記交流電動機の駆動制御を行う制御装置と、
前記駆動装置から出力される電流、及びその周波数に基づき、前記第1の開閉装置におけるアークの発生の有無を監視し、前記アークの発生があると判定すると、前記アークの発生に関する信号を出力する監視装置と、を備える、
駆動システムが提供される。
【0008】
また、本開示の更に他の実施形態では、
第1の開閉装置が設けられる第1の電力経路を通じて交流電動機と接続される駆動部と、
前記駆動部を用いて、前記交流電動機の駆動制御を行う制御部と、
前記駆動部から出力される電流、及びその周波数に基づき、前記第1の開閉装置におけるアークの発生の有無を監視し、前記アークの発生があると判定すると、前記アークの発生に関する信号を出力する監視部と、を備える、
電力変換装置が提供される。
【0009】
また、本開示の更に他の実施形態では、
監視装置が、第1の開閉装置が設けられる第1の電力経路を通じて交流電動機と接続される駆動装置から出力される電流、及びその周波数に基づき、前記第1の開閉装置におけるアークの発生の有無を監視し、前記アークの発生があると判定すると、前記アークの発生に関する信号を出力する、
監視方法が提供される。
【0010】
また、本開示の更に他の実施形態では、
情報処理装置に、
第1の開閉装置が設けられる第1の電力経路を通じて交流電動機と接続される駆動装置から出力される電流、及びその周波数に基づき、前記第1の開閉装置におけるアークの発生の有無を監視させ、前記アークの発生があると判定すると、前記アークの発生に関する信号を出力させる、
プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
上述の実施形態によれば、駆動装置と交流電動機との間の開閉装置のアークの発生に対して適切に対処することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】制御回路の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図3】電流調節器の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図4】交流電動機の直流励磁の運転状態において、開閉装置が閉状態から開状態に移行した際の交流電動機の印加電圧、並びに電力変換装置の出力電圧及び出力電流の時間変化の一例を示す図である。
【
図5】交流電動機の交流励磁の運転状態において、開閉装置が閉状態から開状態に移行した際の交流電動機の印加電圧、並びに電力変換装置の出力電圧及び出力電流の時間変化の一例を示す図である。
【
図6】交流電動機の交流励磁の運転状態において、開閉装置が閉状態から開状態に移行した際の交流電動機の印加電圧、並びに電力変換装置の出力電圧及び出力電流の時間変化の他の例を示す図である。
【
図7】監視装置の機能構成の第1例を示す機能ブロック図である。
【
図8】監視装置による処理の第1例を概略的に示すフローチャートである。
【
図9】監視装置による処理の第2例を概略的に示すフローチャートである。
【
図10】監視装置の機能構成の第3例を示す機能ブロック図である。
【
図11】監視装置による処理の第3例を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
【0014】
[駆動システムの概要]
図1を参照して、本実施形態に係る駆動システム1の概要について説明する。
【0015】
【0016】
図1に示すように、駆動システム1は、交流電動機100と、交流電源200と、電力変換装置300と、開閉装置400と、開閉装置500とを含む。
【0017】
駆動システム1は、交流電源200から供給される交流電力を用いて、電力変換装置300から交流電動機100の駆動電力を出力し、交流電動機100を駆動する。
【0018】
交流電動機100は、駆動システム1の駆動対象の機器である。交流電動機100は、例えば、同期電動機や誘導電動機である。
【0019】
交流電源200は、入力経路ILを通じて、電力変換装置300と接続され、電力変換装置300に交流電力を供給する。例えば、入力経路ILは、R相の入力経路IL1と、S相の入力経路IL2と、T相の入力経路IL3とを含み、交流電源200は、入力経路IL1~IL3を通じて、R相、S相、及びT相の三相交流電力を電力変換装置300に供給する。
【0020】
電力変換装置300は、交流電源200から供給される交流電力を交流電動機100の駆動電力に変換し出力する。電力変換装置300は、主回路302と、電流センサ304と、制御回路340と、監視装置350とを含む。
【0021】
主回路302は、整流回路310と、平滑回路320と、インバータ回路330とを含む。
【0022】
整流回路310は、交流電源200から入力される三相交流電力を整流し、直流電力を出力可能に構成される。整流回路310は、正側及び負側の出力端のそれぞれが正ライン及び負ラインの一端に接続され、正ライン及び負ラインを通じて、直流電力を平滑回路320に出力することができる。例えば、整流回路310は、6つの半導体ダイオードを含み、上下アームを構成する2つの半導体ダイオードの直列接続体が3組並列接続されるブリッジ型全波整流回路である。この場合、R相、S相、及びT相の入力線(入力経路IL1~IL3)は、それぞれ、3組の上下アームの中間点に接続される。
【0023】
平滑回路320は、整流回路310から出力される直流電力やインバータ回路330から回生される直流電力の脈動を抑制し、平滑化する。
【0024】
例えば、
図1に示すように、平滑回路320は、平滑コンデンサを含む。
【0025】
平滑コンデンサは、整流回路310やインバータ回路330と並列に、正ライン及び負ラインを繋ぐ経路に設けられてよい。
【0026】
平滑コンデンサは、適宜、充放電を繰り返しながら、整流回路310から出力される直流電力やインバータ回路330から出力(回生)される直流電力を平滑化する。
【0027】
平滑コンデンサは、1つであってよい。また、平滑コンデンサは、複数配置されてもよく、複数の平滑コンデンサが正ライン及び負ラインの間に並列接続されてもよいし、直列接続されてもよい。また、複数の平滑コンデンサは、2以上の平滑コンデンサの直列接続体が正ライン及び負ラインの間に複数並列接続される形で構成されてもよい。
【0028】
また、平滑回路320は、リアクトルを含んでもよい。
【0029】
リアクトルは、整流回路310と平滑コンデンサとの間の正ラインに設けられてよい。
【0030】
リアクトルは、適宜、電流の変化を妨げるように電圧を発生させながら、整流回路310から出力される直流電力やインバータ回路330から出力(回生)される直流電力を平滑化する。
【0031】
インバータ回路330は、平滑回路320から入力される直流電力を、所望の電圧や周波数のU相、V相、及びW相の三相交流の電力に変換し、出力経路OLを通じて、交流電動機100に出力する。
【0032】
インバータ回路330は、半導体スイッチと、還流ダイオードとを含む。半導体スイッチは、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)やHEMT(High Electron Mobility Transistor)等である。また、半導体スイッチは、例えば、ケイ素(シリコン:Si)を主材料として構成される。また、半導体スイッチは、ワイドバンドギャップ半導体材料を主材料として構成されてもよい。ワイドバンドギャップ半導体材料は、例えば、炭化ケイ素(シリコンカーバイド:SiC)、窒化ガリウム(ガリウムナイトライド:GaN)、酸化ガリウム(ガリウムオキサイド:Ga2O3)、炭素(ダイヤモンド:C)等である。具体的には、上下アームに相当する2つの半導体スイッチの直列接続体(スイッチレグ)が3組設けられ、3組のスイッチレグが正ライン及び負ラインの間に並列接続される。そして、3組のスイッチレグの上下アームの中間点からU相、V相、及びW相の端子が引き出され、交流電動機100のU相、V相、及びW相の端子に繋がる出力経路OLに接続される。出力経路OLは、U相の出力経路OL1と、V相の出力経路OL2と、W相の出力経路OL3とを含む。還流ダイオードは、順方向が負ライン側から正ライン側に向かう形で、それぞれの半導体スイッチに並列接続される。
【0033】
電流センサ304は、電力変換装置300のインバータ回路330から出力経路OLに出力される電流に関する情報を取得する。電流センサ304の出力は、制御回路340に取り込まれる。電流センサ304は、電流センサ304u,304wを含む。
【0034】
電流センサ304uは、インバータ回路330から出力経路OL1に出力される、U相の電流に関する情報を取得する電流センサ304uと、インバータ回路330から出力経路OL3に出力される、W相の電流に関する情報を取得する電流センサ304wとを含む。
【0035】
制御回路340は、インバータ回路330を用いて、交流電動機100を駆動制御する。具体的には、制御回路340は、インバータ回路330の半導体スイッチに制御指令を出力することにより、インバータ回路330から所望の電圧及び周波数を有する駆動電力を出力させ、交流電動機100を駆動制御する。
【0036】
制御回路340の機能は、任意のハードウェアや任意のハードウェア及びソフトウェアの組み合わせ等により実現される。例えば、制御回路340は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ装置、補助記憶装置、及びインタフェース装置を含むコンピュータや半導体スイッチのゲート端子を駆動する駆動回路等によって構成される。メモリ装置は、例えば、SRAM(Static Random Access Memory)やDRAM(Dynamic Random Access Memory)等を含む。補助記憶装置は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)やフラッシュメモリ等を含む。インタフェース装置は、例えば、外部の記録媒体と接続する外部インタフェースや他の機器と通信を行うための通信インタフェース等を含む。制御回路340は、補助記憶装置にインストールされるプログラムをメモリ装置にロードしCPU上で実行することにより各種機能を実現することができる。また、制御回路340は、外部インタフェースを通じて、記録媒体からプログラムを取り込みインストールしたり、通信インタフェースを通じて、他の機器からプログラムを取り込みインストールしたりすることができる。
【0037】
監視装置350は、開閉装置500の異常の有無を監視する。監視対象の異常は、例えば、電力変換装置300から出力経路OLに電力が出力されている状態で、開閉装置500が誤作動や誤操作等によって閉状態から開状態に移行した場合に開放された電極間に生じるアークである。
【0038】
監視装置350の機能は、任意のハードウェア或いは任意のハードウェア及びソフトウェアの組み合わせにより実現される。例えば、監視装置350は、CPU、メモリ装置、補助記憶装置、及びインタフェース装置を含むコンピュータを中心に構成される。メモリ装置は、例えば、SRAMやDRAM等を含む。補助記憶装置は、例えば、EEPROMやフラッシュメモリ等を含む。インタフェース装置は、例えば、外部の記録媒体と接続する外部インタフェースや他の機器と通信を行うための通信インタフェース等を含む。監視装置350は、補助記憶装置にインストールされるプログラムをメモリ装置にロードしCPU上で実行することにより各種機能を実現することができる。また、監視装置350は、外部インタフェースを通じて、記録媒体からプログラムを取り込みインストールしたり、通信インタフェースを通じて、他の機器からプログラムを取り込みインストールしたりすることができる。
【0039】
開閉装置400は、交流電源200と電力変換装置300との間の入力経路ILに設けられる。
【0040】
開閉装置400は、入力経路ILが電気的に繋がる閉状態と入力経路ILが遮断される開状態とを切り換える。開閉装置400は、例えば、電磁接触器(コンタクタ)や電磁開閉器である。開閉装置400は、入力経路IL1~IL3のそれぞれの開閉状態を切り換える開閉装置410,420,430を含み、開閉装置410,420,430は、連動して開状態及び閉状態が切り換えられる。
【0041】
開閉装置500は、電力変換装置300と交流電動機100との間の出力経路OLに設けられる。
【0042】
開閉装置500は、出力経路OLが電気的に繋がる閉状態と出力経路OLが遮断される開状態とを切り換える。開閉装置500は、例えば、電磁接触器や電磁開閉器である。開閉装置500は、出力経路OL1~OL3のそれぞれの開閉状態を切り換える開閉装置510,520,530を含み、開閉装置510,520,530は、連動して閉状態及び開状態が切り換えられる。
【0043】
[制御回路の機能構成]
次に、
図2、
図3を参照して、制御回路340の機能構成について説明する。
【0044】
図2は、制御回路340の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
図3は、電流調節器345の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0045】
図2に示すように、制御回路340は、機能部として、速度調節器341と、滑り周波数演算部342と、位相角演算部343と、ベクトル変換器344と、電流調節器345と、ベクトル逆変換器346とを含む。
【0046】
速度調節器341は、交流電動機100の回転速度の指令値ωrefと、検出値ωdetとの偏差Δω(=ωref-ωdet)に基づき、その偏差をゼロに近づけるための交流電動機100のd軸電流及びq軸電流に関する制御指令(以下、「電流指令値」)Id
*,Iq
*を出力する。検出値ωdetは、例えば、交流電動機100の回転状態を表す信号を出力する回転状態センサの出力に基づき取得される。回転状態センサは、例えば、エンコーダである。速度調節器341は、例えば、PI(Proportional Integral)制御器である。
【0047】
尚、例えば、センサレス制御が採用される場合、交流電動機100の回転速度の検出値ωdetに代えて、交流電動機100の回転速度の推定値ωestが用いられる。また、速度制御が採用されない場合、速度調節器341は省略される。例えば、トルク制御や電流制御が採用される場合、速度調節器341は省略される。この場合、電流指令値Id
*,Iq
*は、トルク制御におけるトルク指令値に基づき生成されたり、電流制御におけるU相、V相、及びW相の電流指令値に基づき生成されたりする。
【0048】
滑り周波数演算部342は、交流電動機100の滑り周波数ωsを演算し出力する。
【0049】
位相角演算部343は、交流電動機100の電気位相角θを演算し出力する。具体的には、位相角演算部343は、交流電動機100の回転速度の検出値ωdet及び滑り周波数ωsに基づき、交流電動機100の1次角周波数ω1を算出する。そして、位相角演算部343は、1次角周波数ω1を時間積分することによって、電気位相角θを算出する。
【0050】
ベクトル変換器344は、交流電動機100の電気位相角θ、及び磁極位置の情報等に基づき、交流電動機100の相電流の検出値Im(U相、V相、及びW相の相電流の検出値Iu,Iv,Iw)を、dq座標系の電流検出値Id,Iqに変換し出力する。U相、V相、及びW相の相電流の検出値Iu,Iv,Iwは、電流センサ304u,304wの出力に基づき取得される。
【0051】
電流調節器345は、電流指令値Id
*,Iq
*と、電流検出値Id,Iqとの偏差ΔId(=Id
*-Id),ΔIq(=Iq
*-Iq)に基づき、偏差ΔId,ΔIqをゼロに近づけるための交流電動機100のd軸電圧及びq軸電圧に関する制御指令(以下、「電圧指令値」)Vd
*,Vq
*を出力する。
【0052】
例えば、
図3に示すように、電流調節器345は、例えば、PI制御器である。具体的には、電流調節器345は、比例項345aと、積分項345bとを含む。
【0053】
比例項345aは、偏差ΔId,ΔIqに比例ゲインKc_pを乗じた電圧指令値Vd_p
*(=Kc_p・ΔId),Vq_p
*(=Kc_p・ΔIq)を出力する。積分項345bは、偏差ΔId,ΔIqの積分に積分ゲインKc_iを乗じた電圧指令値Vd_i
*(=Kc_i・∫ΔId・dt),Vq_i
*(=Kc_i・∫ΔIq・dt)を出力する。電流調節器345は、比例項345aから出力される電圧指令値Vd_p
*,Vq_p
*と、積分項345bから出力される電圧指令値Vd_i
*,Vq_i
*の和を電圧指令値Vd
*(=Vd_p
*+Vd_i
*),Vq
*(=Vq_p
*+Vq_i
*)として出力する。
【0054】
ベクトル逆変換器346は、交流電動機100の電気位相角θ、及び磁極位置の情報等に基づき、電圧指令値Vd
*,Vq
*を、U相、V相、及びW相の電圧指令値Vm(U相、V相、及びW相の電圧指令値Vu,Vv,Vw)に変換し出力する。
【0055】
PWM信号出力部347は、インバータ回路330の制御指令、即ち、PWM(Pulse Width Modulation)信号を生成しインバータ回路330に出力する。例えば、PWM信号出力部347は、U相、V相、及びW相のそれぞれに対応するコンパレータを含み、コンパレータが、電圧指令値Vu,Vv,Vwのそれぞれとキャリア波と比較することによって、U相、V相、及びW相のPWM信号を出力する。これにより、制御回路340は、PWM信号をインバータ回路330に出力することにより、交流電動機100を駆動制御することができる。
【0056】
[開閉装置のアーク発生時の交流電動機及び電力変換装置の状態]
次に、
図4~
図6を参照して、開閉装置500のアーク発生時の交流電動機100及び電力変換装置300の状態の具体例について説明する。
【0057】
<交流電動機の直流励磁の運転状態の一例>
図4は、交流電動機100の直流励磁の運転状態において、開閉装置500が閉状態から開状態に移行した際の交流電動機100の印加電圧、並びに電力変換装置300の出力電圧及び出力電流の時間変化の一例を示す図である。
図4は、
図4A~4Eを含む。
【0058】
図4Aは、開閉装置500の開閉状態の時間変化を示す。
図4Bは、交流電動機100のU相、V相、及びW相の電流の時間変化を示す。
図4Cは、交流電動機100のd軸電圧の指令値(電圧指令値V
d
*)及び実際値(印加電圧値V
d)の時間変化を示す。
図4Dは、交流電動機100のq軸電圧の指令値(電圧指令値V
q
*)及び実際値(印加電圧値V
q)の時間変化を示す。
図4Eは、交流電動機100の印加電圧、及び電力変換装置300の出力電圧の時間変化を示す。
【0059】
本例では、交流電動機100のU相、V相、及びW相のうちのU相及びW相を循環する直流電流が流れている直流励磁の状態で、開閉装置500が閉状態から開状態に切り替えられている。
【0060】
尚、交流電動機100の直流励磁は、例えば、交流電動機100の停止状態からの応答性向上のために実施される場合がある。
【0061】
開閉装置500が閉状態から開状態に移行すると、U相及びW相の開閉装置510,530の開放された電極間にアークが発生する。開閉装置510,530にアークが発生すると、アークによる電圧降下(以下、「アーク電圧」)が生じ、交流電動機100のU相及びW相に印加される電圧が低下する。その結果、
図4B,4Eに示すように、開閉装置500の開状態から閉状態への移行の直後、交流電動機100のU相及びW相の電流が低下し、交流電動機100の印加電圧の振幅が上昇する。
【0062】
この際、電力変換装置300は、上述の如く、制御回路340の制御下で、電流指令値I
d
*,I
q
*に応じた電流を維持しようとする。そのため、電力変換装置300は、アーク電圧の分だけ出力電圧を上昇させようとする。その結果、
図4Cに示すように、開閉装置500の閉状態から開状態への移行の直後、電圧指令値V
d
*が上昇し、その結果、U相及びW相の出力電圧が上昇する。よって、
図4Bに示すように、交流電動機100のU相及びW相の電流は、低下から上昇に転じ、開閉装置500の閉状態から開状態への移行の前の状態に戻る。同様に、
図4Eに示すように、交流電動機100の印加電圧の振幅は、上昇から低下に転じ、開閉装置500の閉状態から開状態への移行の前の状態に戻る。
【0063】
図4Eに示すように、開閉装置500のアーク電圧に応じた電流補償のため、電力変換装置300の出力電圧は、開閉装置500の閉状態から開状態への移行の前の状態よりもアーク電圧に応じた分だけ高い状態に維持される。そのため、開閉装置500の閉状態から開状態への移行に伴いアークが発生すると、電力変換装置300の出力電圧と交流電動機100の印加電圧との間には、開閉装置500のアーク電圧に応じた分の差が生じる。また、直流励磁の運転状態では、U相及びW相に電流が流れる状態が継続することから、電力変換装置300の出力電圧と交流電動機100の印加電圧との間に開閉装置500のアーク電圧に応じた分の差が生じた状態が継続する。
【0064】
このように、本例では、開閉装置500の開状態から閉状態の移行後も、U相、V相、及びW相のうちの2相(U相及びW相)に直流電流が流れる状態が継続し、開閉装置500のうちの2相(開閉装置510,530)にアークが発生する状態が継続する。交流電動機100の直流励磁の運転状態では、3相のうちの2相に直流電流が流れる状態が継続することから、アークの継続時間が比較的長くなる可能性がある。そのため、開閉装置500の寿命が短くなったり、アークによる発熱で開閉装置500の温度が上昇し開閉装置500が故障に至ったりする可能性がある。
【0065】
<交流電動機の交流励磁の運転状態での一例>
図5は、交流電動機100の交流励磁の運転状態において、開閉装置500が閉状態から開状態に移行した際の交流電動機100の印加電圧、並びに電力変換装置300の出力電圧及び出力電流の時間変化の一例を示す図である。
図5は、
図5A~5Eを含む。
【0066】
図5Aは、開閉装置500の開閉状態の時間変化を示す。
図5Bは、交流電動機100のU相、V相、及びW相の電流の時間変化を示す。
図5Cは、交流電動機100のd軸電圧の指令値(電圧指令値V
d
*)及び実際値(印加電圧値V
d)の時間変化を示す。
図5Dは、交流電動機100のq軸電圧の指令値(電圧指令値V
q
*)及び実際値(印加電圧値V
q)の時間変化を示す。
図5Eは、交流電動機100の印加電圧、及び電力変換装置300の出力電圧の時間変化を示す。
【0067】
図5に示すように、本例では、比較的低い周波数(0.1Hz)での交流電動機100の交流励磁の運転状態において、開閉装置500が閉状態から開状態に切り替えられている。
【0068】
開閉装置500が閉状態から開状態に移行すると、U相、V相、及びW相の開閉装置510,520,530の開放された電極間にアークが発生する。開閉装置510,520,530にアークが発生すると、アーク電圧が生じ、交流電動機100のU相、V相、及びW相に印加される電圧が低下する。その結果、
図5B,5Eに示すように、開閉装置500の開状態から閉状態への移行の直後、交流電動機100のU相、V相、及びW相の電流が低下し、交流電動機100の印加電圧の振幅が上昇する。
【0069】
この際、電力変換装置300は、上述の如く、制御回路340の制御下で、電流指令値I
d
*,I
q
*に応じた電流を維持しようとする。そのため、電力変換装置300は、アーク電圧の分だけ出力電圧を上昇させようとする。その結果、
図5Cに示すように、開閉装置500の閉状態から開状態への移行の直後、電圧指令値V
d
*が上昇し、その結果、U相、V相、及びW相の出力電圧が上昇する。よって、
図5Bに示すように、交流電動機100のU相、V相、及びW相の電流は、低下から上昇に転じ、開閉装置500の閉状態から開状態への移行の前の交流波形の状態に戻る。同様に、
図5Eに示すように、交流電動機100の印加電圧の振幅は、上昇から低下に転じ、開閉装置500の閉状態から開状態への移行の前と略同じ状態に戻る。
【0070】
図5Eに示すように、開閉装置500のアーク電圧に応じた電流補償のため、電力変換装置300の出力電圧は、開閉装置500の閉状態から開状態への移行の前の状態よりもアーク電圧に応じた分だけ高い状態に維持される。そのため、開閉装置500の閉状態から開状態への移行に伴いアークが発生すると、電力変換装置300の出力電圧と交流電動機100の印加電圧との間には、開閉装置500のアーク電圧に応じた分の差が生じる。また、比較的低い周波数での交流励磁の運転状態では、U相、V相、及びW相の電流波形がゼロクロスするまで要する時間が比較的長くなる可能性がある。そのため、電力変換装置300の出力電圧と交流電動機100の印加電圧との間に開閉装置500のアーク電圧に応じた分の差が生じた状態が比較的長い時間で継続する可能性がある。
【0071】
このように、本例では、開閉装置500の開状態から閉状態の移行後も、U相、V相、及びW相の3相に交流電流が流れる状態が継続し、開閉装置510,520,530にアークが発生する状態が継続する。特に、比較的低い周波数での交流電動機100の交流励磁の運転状態では、アークの継続時間が比較的長くなる可能性がある。そのため、開閉装置500の寿命が短くなったり、アークによる発熱で開閉装置500の温度が上昇し開閉装置500が故障に至ったりする可能性がある。
【0072】
<交流電動機の交流励磁の運転状態の他の例>
図6は、交流電動機100の交流励磁の運転状態において、開閉装置500が閉状態から開状態に移行した際の交流電動機100の印加電圧、並びに電力変換装置300の出力電圧及び出力電流の時間変化の他の例を示す図である。
図6は、
図6A~6Eを含む。
【0073】
図6Aは、開閉装置500の開閉状態の時間変化を示す。
図6Bは、交流電動機100のU相、V相、及びW相の電流の時間変化を示す。
図6Cは、交流電動機100のd軸電圧の指令値(電圧指令値V
d
*)及び実際値(印加電圧値V
d)の時間変化を示す。
図6Dは、交流電動機100のq軸電圧の指令値(電圧指令値V
q
*)及び実際値(印加電圧値V
q)の時間変化を示す。
図6Eは、交流電動機100の印加電圧、及び電力変換装置300の出力電圧の時間変化を示す。
【0074】
図6に示すように、本例では、上述の一例(
図5)の場合と同様、比較的低い周波数(0.1Hz)での交流電動機100の交流励磁の運転状態において、開閉装置500が閉状態から開状態に切り替えられている。
【0075】
開閉装置500が閉状態から開状態に移行すると、U相、V相、及びW相の開閉装置510,520,530の開放された電極間にアークが発生する。開閉装置510,520,530にアークが発生すると、アーク電圧が生じ、交流電動機100のU相、V相、及びW相に印加される電圧が低下する。その結果、
図6B,6Eに示すように、開閉装置500の開状態から閉状態への移行の直後、交流電動機100のU相、V相、及びW相の電流が低下し、交流電動機100の印加電圧の振幅が上昇する。本例では、交流電動機100のW相の電流は、ゼロまで低下し、W相の開閉装置530のアークは、消弧する。
【0076】
この際、電力変換装置300は、上述の如く、制御回路340の制御下で、電流指令値I
d
*,I
q
*に応じた電流を維持しようとする。そのため、電力変換装置300は、アーク電圧の分だけ出力電圧を上昇させようとする。その結果、
図6Cに示すように、開閉装置500の閉状態から開状態への移行の直後、電圧指令値V
d
*,V
q
*が上昇し、その結果、U相及びV相の出力電圧が上昇する。よって、
図6Bに示すように、交流電動機100のU相及びV相の電流は、低下から上昇に転じ、交流電動機100のU相及びV相の2相が短絡した状態で電流が流れる状態が継続する。同様に、
図6Eに示すように、交流電動機100の印加電圧の振幅は、上昇から低下に転じ、開閉装置500の閉状態から開状態への移行の前と略同じ状態に戻る。
【0077】
図6Eに示すように、開閉装置500のアーク電圧に応じた電流補償のため、電力変換装置300の出力電圧は、開閉装置500の閉状態から開状態への移行の前の状態よりもアーク電圧に応じた分だけ高い状態に維持される。更に、
図6に示すように、2相(本例では、U相及びV相)が短絡した状態となっている場合、交流電動機100の回転速度の検出値ω
detが指令値ω
refに追従しないことから、速度調節器341に偏差Δωが継続して入力され、その結果、電力変換装置300の出力電圧は、アーク電圧を大きく超える場合がある。よって、開閉装置500の閉状態から開状態への移行に伴いアークが発生すると、電力変換装置300の出力電圧と交流電動機100の印加電圧との間には、開閉装置500のアーク電圧に応じた分の差、或いは、アーク電圧を上回る差が生じる。また、比較的低い周波数での交流励磁の運転状態では、U相及びV相の電流波形がゼロクロスするまで要する時間が比較的長くなる可能性がある。また、本例では、
図6Bに示すように、交流電動機100のW相が遮断され、U相及びV相が短絡した状態で電流が流れることから、正常な交流波形とはならず、U相及びV相の電流波形がゼロクロスするまで要する時間が更に長くなる可能性がある。そのため、電力変換装置300の出力電圧と交流電動機100の印加電圧との間に開閉装置500のアーク電圧に応じた分の差、或いは、アーク電圧を上回る差が生じた状態が比較的長い時間で継続する可能性がある。
【0078】
このように、本例では、開閉装置500の開状態から閉状態の移行後も、U相、V相、及びW相の3相のうちの2相が短絡して電流が流れる状態が継続し、開閉装置500のうちの2相にアークが発生する状態が継続する。特に、比較的低い周波数での交流電動機100の交流励磁の運転状態では、アークの継続時間が比較的長くなる可能性がある。そのため、開閉装置500の寿命が短くなったり、アークによる発熱で開閉装置500の温度が上昇し開閉装置500が故障に至ったりする可能性がある。
【0079】
[監視装置の第1例]
次に、
図7、
図8を参照して、本実施形態に係る監視装置350の第1例について説明する。
【0080】
<機能構成>
図7は、監視装置350の機能構成の第1例を示す機能ブロック図である。
【0081】
監視装置350は、機能構成として、印加電圧推定部351と、出力電圧取得部352と、アーク判定部353と、信号出力部354とを含む。
【0082】
印加電圧推定部351は、交流電動機100の印加電圧を推定する。具体的には、印加電圧推定部351は、交流電動機100のd軸の印加電圧Vmd、及びq軸の印加電圧Vmqを推定する。
【0083】
例えば、交流電動機100が誘導電動機の場合、交流電動機100の印加電圧Vmd,Vmqは、T型等価回路から以下の式(1),(2)で表される。
【0084】
【0085】
式(1)~(3)について、1次抵抗R1、1次自己インダクタンスL11、2次自己インダクタンスL22、励磁インダクタンスM、及び2次磁束Ψ2のパラメータが予め同定されている。これにより、印加電圧推定部351は、電力変換装置300から出力されるd軸及びq軸の電流検出値Id,Iq、及び1次角周波数ω1に基づき、式(1),(2)を用いて、交流電動機100の印加電圧Vmd,Vmqを推定することができる。
【0086】
出力電圧取得部352は、電力変換装置300の出力電圧を取得する。
【0087】
例えば、出力電圧取得部352は、電力変換装置300のd軸及びq軸の出力電圧Voutd,Voutqとして、電圧指令値Vd
*,Vq
*を取得する。
【0088】
アーク判定部353は、開閉装置500におけるアークの発生の有無を判定する。具体的には、アーク判定部353は、印加電圧推定部351により推定される交流電動機100の印加電圧と、出力電圧取得部352により取得される、電力変換装置300の出力電圧との比較により、開閉装置500におけるアークの発生の有無を判定する。
図4~
図6に示した通り、開閉装置500にアークが発生すると、電力変換装置300の出力電圧と、交流電動機100の印加電圧との間に、アーク電圧に応じた差、或いは、アーク電圧を上回る差が生じるからである。
【0089】
例えば、アーク判定部353は、交流電動機100の印加電圧の振幅VAmと、電力変換装置300の出力電圧の振幅VAoutとの比較により、開閉装置500におけるアークの発生の有無を判定する。これにより、交流電動機100の高負荷時にトルク電流(q軸電流)が比較的大きくなり、電力変換装置300のd軸の出力電圧が負になるよう場合でも、交流電動機100の印加電圧と、電力変換装置300の出力電圧との差異を適切に判別できる。
【0090】
交流電動機100の印加電圧の振幅VAm、及び電力変換装置300の出力電圧の振幅VAoutは、以下の式(4),(5)を用いて表される。
【0091】
【0092】
例えば、アーク判定部353は、交流電動機100の印加電圧の振幅VAmと、電力変換装置300の出力電圧の振幅VAoutとの差が閾値VAthに対して相対的に大きい場合に、開閉装置500におけるアークの発生ありと判定する。上記の差が閾値VAthに対して相対的に大きいとは、上記の差が閾値VAth以上であることであってもよいし、閾値VAthを超えることであってもよい。閾値VAthは、実験やコンピュータシミュレーション等を通じて、開閉装置500に発生するアーク電圧よりも大きい値に設定される。例えば、閾値VAthは、開閉装置500に想定されるアーク電圧に対して所定の余裕分を追加した値に設定される。
【0093】
信号出力部354は、アーク判定部353により、交流電動機100の開閉装置500のアークの発生があると判定されると、開閉装置500のアークの発生を表す信号を出力する。開閉装置500のアークの発生を表す信号は、単にアークの発生の事実を表す信号であってもよいし、アークの発生に伴う送信先への指示を含む信号であってもよい。
【0094】
例えば、信号出力部354は、電力変換装置300(主回路302)の稼働停止を指示する停止信号を制御回路340に出力する。制御回路340は、停止信号の入力に応じて、電力変換装置300(主回路302)を稼働停止させる。これにより、監視装置350は、制御回路340を通じて、電力変換装置300(主回路302)を稼働停止させ、電力変換装置300(主回路302)から交流電動機100への電力供給を停止させることができる。そのため、監視装置350は、自動的に、開閉装置500のアークを消弧させることができる。よって、監視装置350は、アークの継続による開閉装置500の寿命の低下やアーク継続による発熱に起因する開閉装置500の故障の発生を抑制することができる。
【0095】
また、信号出力部354は、停止信号の出力に代えて、或いは、加えて、開閉装置400に交流電源200から電力変換装置300への電力供給の遮断、即ち、閉状態から開状態への移行を指示する遮断信号を出力してもよい。開閉装置400は、遮断信号の入力に応じて、閉状態から開状態に移行する。これにより、監視装置350は、開閉装置400を通じて、交流電源200から電力変換装置300への電力供給を遮断し、その結果、電力変換装置300から交流電動機100への電力供給を停止させることができる。そのため、監視装置350は、自動的に、開閉装置500のアークを消弧させることができる。よって、監視装置350は、アークの継続による開閉装置500の寿命の低下やアーク継続による発熱に起因する開閉装置500の故障の発生を抑制することができる。
【0096】
<処理フロー>
図8は、監視装置350の処理の第1例を概略的に示すフローチャートである。
【0097】
本フローチャートは、例えば、電力変換装置300の稼働時に繰り返し実行される。以下、
図9、
図11のフローチャートについても同様であってよい。
【0098】
図8に示すように、ステップS102にて、印加電圧推定部351は、交流電動機100の印加電圧Vm
d,Vm
qを推定する。
【0099】
ステップS102の処理が完了すると、監視装置350は、ステップS104に進む。
【0100】
ステップS104にて、出力電圧取得部352は、電力変換装置300の出力電圧Voutd,Voutqを取得する。
【0101】
ステップS104の処理が完了すると、監視装置350は、ステップS106に進む。
【0102】
尚、ステップS102,S104は、処理順序が逆であってもよいし、並行に処理されてもよい。
【0103】
ステップS106にて、アーク判定部353は、ステップS102の処理の結果に基づき、交流電動機100の印加電圧の振幅VAmを演算する。
【0104】
ステップS106の処理が完了すると、監視装置350は、ステップS108に進む。
【0105】
ステップS108にて、アーク判定部353は、ステップS104の処理の結果に基づき、電力変換装置300の出力電圧の振幅VAoutを演算する。
【0106】
ステップS108の処理が完了すると、監視装置350は、ステップS110に進む。
【0107】
尚、ステップS106,S108の処理は、処理順序が逆であってもよいし、並行に処理されてもよい。
【0108】
ステップS110にて、アーク判定部353は、電力変換装置300の出力電圧の振幅VAoutから交流電動機100の印加電圧の振幅VAmを減じた値が閾値VAth以上であるか否かを判定する。アーク判定部353は、電力変換装置300の出力電圧の振幅VAoutから交流電動機100の印加電圧の振幅VAmを減じた値が閾値VAth以上である場合、開閉装置500におけるアークの発生ありと判断し、ステップS112に進む。一方、アーク判定部353は、それ以外の場合、開閉装置500におけるアークの発生なしと判断し、今回のフローチャートを終了する。
【0109】
ステップS112にて、信号出力部354は、停止信号を制御回路340に出力する。また、信号出力部354は、制御回路340への停止信号の出力に加えて、開閉装置400への遮断信号の出力を行ってもよい。
【0110】
ステップS112の処理が完了すると、監視装置350は、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0111】
このように、本例では、監視装置350は、開閉装置500のアークの発生がある場合、電力変換装置300から交流電動機100への電力供給を停止させることができる。そのため、開閉装置500の寿命の低下や開閉装置500の故障の発生を抑制することができる。
【0112】
[監視装置の第2例]
次に、
図9を参照して、本実施形態に係る監視装置350の第2例について説明する。
【0113】
以下、本例では、上述の第1例と同じ或いは対応する構成には同一の符号を付し、上述の第1例と異なる部分を中心に説明すると共に、上述の第1例と同じ或いは対応する内容の説明を省略する場合がある。
【0114】
<機能構成>
本例では、監視装置350の機能構成は、上述の第1例と同様に表される。そのため、本例に係る監視装置350の機能構成(監視装置350の機能構成の第2例)の図示を省略する。
【0115】
本例に係る監視装置350は、開閉装置500におけるアークの発生の有無の判定方法の点で上述の第1例と異なり、他の点で上述の第1例と同じであってよい。
【0116】
監視装置350は、上述の第1例と同様、印加電圧推定部351と、出力電圧取得部352と、アーク判定部353と、信号出力部354とを含む。
【0117】
本例では、アーク判定部353は、交流電動機100の印加電圧の振幅VAmと電力変換装置300の出力電圧の振幅VAoutとの差が閾値VAthに対して相対的に大きい状態が継続する時間を考慮して、開閉装置500におけるアークの発生の有無を判定する。
【0118】
例えば、アーク判定部353は、交流電動機100の印加電圧の振幅VAmと電力変換装置300の出力電圧の振幅VAoutとの差が閾値VAthに対して相対的に大きい状態が継続し且つ継続時間Tが閾値Tthに対して相対的に長い場合、開閉装置500のアークが発生していると判定する。継続時間Tが閾値Tthに対して相対的に長いとは、継続時間Tが閾値Tth以上であることであってもよいし、継続時間Tが閾値Tthを超えることであってもよい。閾値Tthは、例えば、電力変換装置300の出力電流の制御系の応答速度を考慮して予め規定される。例えば、電力変換装置300の出力電流の制御系の応答速度とは、時定数であり、閾値Tthは、その時定数よりも十分に長い値に設定される。これにより、アーク判定部353は、電力変換装置300の電圧が大きく変化し、交流電動機100の印加電圧の推定値に基づく振幅VAmが遅れて追従する過渡応答時と、開閉装置500におけるアーク発生時とを区別することができる。そのため、アーク判定部353は、開閉装置500におけるアーク発生をより適切に判定することができる。
【0119】
<処理フロー>
図9は、監視装置350の処理の第2例を概略的に示すフローチャートである。
【0120】
図9に示すように、ステップS202,S204,S206,S208,S210は、
図8のステップS102,S104,S106,S108,S110の処理と同じであるため、説明を省略する。
【0121】
ステップS210にて、アーク判定部353は、電力変換装置300の出力電圧の振幅VAoutから交流電動機100の印加電圧の振幅VAmを減じた値が閾値VAth以上である場合、ステップS212に進み、それ以外の場合、今回のフローチャートを終了する。
【0122】
ステップS212にて、アーク判定部353は、ステップS210の状態の継続時間Tが閾値Tth以上であるか否かを判定する。アーク判定部353は、継続時間Tが閾値Tth以上である場合、開閉装置500におけるアークの発生ありと判断し、ステップS214に進む。一方、アーク判定部353は、それ以外の場合、開閉装置500におけるアークの発生なしと判断し、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0123】
ステップS214は、
図8のステップS112の処理と同じであるため、説明を省略する。
【0124】
このように、本例では、監視装置350は、電力変換装置300の出力電圧の振幅VAoutから交流電動機100の印加電圧の振幅VAmを減じた値が閾値VAth以上であり、且つ、その継続時間Tが閾値Tth以上である場合に、開閉装置500におけるアークの発生ありと判定することができる。
【0125】
[監視装置の第3例]
次に、
図10、
図11を参照して、本実施形態に係る監視装置350の第3例について説明する。
【0126】
以下、本例では、上述の第1例、第2例と同じ或いは対応する構成には同一の符号を付し、上述の第1例、第2例と異なる部分を中心に説明すると共に、上述の第1例、第2例と同じ或いは対応する内容の説明を省略する場合がある。
【0127】
<機能構成>
図10は、監視装置350の機能構成の第3例を示す機能ブロック図である。
【0128】
本例に係る監視装置350は、開閉装置500におけるアークの発生の有無の判定方法の点で上述の第1例、第2例と異なり、他の点で上述の第1例、第2例と同じであってよい。
【0129】
監視装置350は、上述の第1例、第2例と同様、印加電圧推定部351と、出力電圧取得部352と、アーク判定部353と、信号出力部354とを含む。
【0130】
出力電圧取得部352は、電力変換装置300の出力電圧Voutd,Voutqとして、電流調節器345の積分項345bから出力される電圧指令値Vd_i
*,Vq_i
*を取得する。交流電動機100が定常状態にある場合、比例項345aの出力(電圧指令値Vd_p
*,Vq_p
*)がゼロとなり、電圧指令値Vd
*,Vq
*と電圧指令値Vd_i
*,Vq_i
*とは同じになるからである。
【0131】
アーク判定部353は、交流電動機100の印加電圧の振幅VAmと電力変換装置300の出力電圧の振幅VAoutとの差が閾値VAthに対して相対的に大きい状態にあり、且つ、比例項345aの出力がゼロである場合、開閉装置500におけるアークの発生ありと判定する。換言すれば、アーク判定部353は、電圧指令値Vd_i
*,Vq_i
*に対応する電圧の振幅が閾値VAthに対して相対的に大きく、且つ、電圧指令値Vd_p
*,Vq_p
*がゼロである場合に、開閉装置500におけるアークの発生ありと判定する。これにより、アーク判定部353は、電圧指令値Vd_p
*,Vq_p
*がゼロである状態、即ち、交流電動機100の定常状態に限定して、開閉装置500におけるアークの発生ありの判定を行うことができる。そのため、アーク判定部353は、開閉装置500におけるアーク発生をより適切に判定することができる。
【0132】
<処理フロー>
図11は、監視装置350の処理の第3例を概略的に示すフローチャートである。
【0133】
図11に示すように、ステップS302は、
図8のステップS102の処理と同じであるため、説明を省略する。
【0134】
ステップS302の処理が完了すると、監視装置350は、ステップS304に進む。
【0135】
ステップS304にて、出力電圧取得部352は、出力電圧Voutd,Voutqとして、電流調節器345の積分項345bから出力される電圧指令値Vd_i
*,Vq_i
*を取得する。
【0136】
ステップS304の処理が完了すると、監視装置350は、ステップS306に進む。
【0137】
ステップS306,S308,S310は、
図8のステップS106,S108,S110の処理と同じであるため、説明を省略する。
【0138】
ステップS310にて、アーク判定部353は、電力変換装置300の出力電圧の振幅VAoutから交流電動機100の印加電圧の振幅VAmを減じた値が閾値VAth以上である場合、ステップS312に進み、それ以外の場合、今回のフローチャートを終了する。
【0139】
ステップS312にて、アーク判定部353は、電流調節器345の比例項345aの出力、即ち、電圧指令値Vd_p
*,Vq_p
*がゼロであるか否かを判定する。アーク判定部353は、電圧指令値Vd_p
*,Vq_p
*がゼロである場合、開閉装置500におけるアークの発生ありと判断し、ステップS314に進む。一方、アーク判定部353は、それ以外の場合、開閉装置500におけるアークの発生なしと判断し、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0140】
ステップS314は、
図8のステップS112の処理と同じであるため、説明を省略する。
【0141】
このように、本例では、監視装置350は、電流調節器345の積分項345bの出力に対応する電圧の振幅VAoutから交流電動機100の印加電圧の振幅VAmを減じた値が閾値VAth以上であり、且つ、電流調節器345の比例項345aの出力がゼロである場合に、開閉装置500におけるアークの発生ありと判定することができる。
【0142】
[監視装置の他の例]
次に、本実施形態に係る監視装置350の他の例について説明する。
【0143】
上述の監視装置350の第1例~第3例は、適宜組み合わせられてもよい。
【0144】
例えば、
図9において、ステップS212が
図11のステップS312の処理に置換されてもよいし、これに代えて、ステップS206が
図11のステップS306の処理に置換されてもよい。
【0145】
[他の実施形態]
次に、他の実施形態について説明する。
【0146】
上述の実施形態には、適宜変形や変更が加えられてもよい。
【0147】
例えば、上述の実施形態では、信号出力部354は、制御回路340への停止信号や開閉装置400への遮断信号に代えて、駆動システム1のユーザに対するアークの発生を通知するための通知信号を出力してもよい。駆動システム1のユーザは、例えば、駆動システム1が設置される工場の作業員、駆動システム1の保守員、駆動システムの管理者等である。これにより、監視装置350は、ユーザに開閉装置500のアークの発生を認識させて、電力変換装置300から交流電動機100への電力供給の遮断の操作を促すことができる。そのため、監視装置350は、ユーザの手を借りて、開閉装置500のアークを手動で消弧させることができる。
【0148】
例えば、通知信号は、電力変換装置300に搭載されるインジケータランプやモニタ等に出力され、インジケータランプやモニタ等を通じて、ユーザに開閉装置500でのアークの発生が通知される。この際、通知信号は、インジケータランプやモニタ等に直接出力されてもよいし、他の機器(例えば、制御回路340)を介して間接的にインジケータランプやモニタ等に出力されてもよい。また、通知信号は、電力変換装置300に搭載される通信装置に出力され、通信装置から外部のユーザ端末に送信されることによって、外部のユーザ端末を通じて、ユーザに開閉装置500でのアークの発生が通知されてもよい。この際、通知信号は、通信装置に直接出力されてもよいし、他の機器(例えば、制御回路340)を介して間接的に通信装置に出力されてもよい。
【0149】
また、上述の実施形態やその変形・変更の例では、電力変換装置300の出力電圧(例えば、出力経路OL1~OL3の相電圧)に関する情報を取得する電圧センサが設けられてもよい。この場合、出力電圧取得部352は、この電圧センサの出力に基づき、電力変換装置300の出力電圧Voutd,Voutqを取得してもよい。
【0150】
また、上述の実施形態やその変形・変更の例では、制御回路340の機能の一部又は全部は、電力変換装置300の外部に設けられてもよい。例えば、制御回路340の機能の一部又は全部は、交流電動機100で駆動される機械設備や生産設備が設置される工場の内部や同じ敷地内に設置される端末装置、PLC(Programmable Logic Controller)、エッジコントローラ、エッジサーバ等に設けられる。また、制御回路340の機能の一部又は全部は、交流電動機100で駆動される機械設備や生産設備が設置される工場の遠隔に設置されるオンプレミスサーバやクラウドサーバに設けられてもよい。
【0151】
また、上述の実施形態やその変形・変更の例では、制御回路340の機能は、複数の制御装置により分散して実現されてもよい。
【0152】
また、上述の実施形態やその変形・変更の例では、監視装置350の機能の一部又は全部は、電力変換装置300の外部に設けられてもよい。例えば、監視装置350の機能の一部又は全部は、交流電動機100で駆動される機械設備や生産設備が設置される工場の内部や同じ敷地内に設置される端末装置、PLC、エッジコントローラ、エッジサーバ等に設けられる。また、監視装置350の機能の一部又は全部は、交流電動機100で駆動される機械設備や生産設備が設置される工場の遠隔に設置されるオンプレミスサーバやクラウドサーバに設けられてもよい。
【0153】
また、上述の実施形態やその変形・変更の例では、監視装置350の機能は、複数の監視装置により分散して実現されてもよい。
【0154】
また、上述の実施形態やその変形・変更の例では、監視装置350の機能の一部又は全部は、制御回路340に統合されてもよい。
【0155】
また、上述の実施形態やその変形・変更の例では、電力変換装置300は、交流電源200に代えて、或いは、加えて、直流電源から入力される直流電力に基づき、交流電動機100の駆動電力を生成し出力することが可能に構成されてもよい。この場合、直流電源からの正側の入力線及び負側の入力線は、それぞれ、整流回路310とインバータ回路330との間の直流リンク部の正ライン及び負ラインに接続される。また、この場合、整流回路310が省略されることによって、交流電源からの給電を省略してもよい。
【0156】
[作用]
次に、本実施形態に係る監視装置、駆動システム、電力変換装置、監視方法、及びプログラムの作用について説明する。
【0157】
本実施形態では、監視装置は、第1の開閉装置が設けられる第1の電力経路を通じて交流電動機と接続される駆動装置から出力される電流、及びその周波数に基づき、第1の開閉装置におけるアークの発生の有無を監視してよい。監視装置は、例えば、上述の監視装置350である。第1の開閉装置は、例えば、上述の開閉装置500である。第1の電力経路は、例えば、上述の出力経路OLである。交流電動機は、例えば、上述の交流電動機100である。駆動装置は、例えば、上述の電力変換装置300である。そして、監視装置は、第1の開閉装置におけるアークの発生があると判定すると、アークの発生に関する信号を出力してもよい。
【0158】
また、本実施形態では、監視システムは、制御装置と、監視装置と、を備えてもよい。具体的には、制御装置は、第1の開閉装置が設けられる第1の電力経路を通じて交流電動機と接続される駆動装置を用いて、交流電動機の駆動制御を行ってもよい。また、監視装置は、駆動装置から出力される電流、及びその周波数に基づき、第1の開閉装置におけるアークの発生の有無を監視してもよい。そして、監視装置は、第1の開閉装置におけるアークの発生があると判定すると、アークの発生に関する信号を出力してもよい。
【0159】
また、本実施形態では、電力変換装置は、駆動部と、制御部と、監視部とを備えてもよい。駆動部は、例えば、上述の主回路302である。制御部は、例えば、上述の制御回路340である。監視部は、例えば、上述の監視装置350である。具体的には、駆動部は、第1の開閉装置が設けられる第1の電力経路を通じて交流電動機と接続される。また、制御部は、駆動部を用いて、交流電動機の駆動制御を行う。また、監視部は、駆動部から出力される電流、及びその周波数に基づき、第1の開閉装置におけるアークの発生の有無を監視してもよい。そして、監視部は、第1の開閉装置におけるアークの発生があると判定すると、アークの発生に関する信号を出力してもよい。
【0160】
また、本実施形態では、監視装置は、監視方法を実行してもよい。具体的には、監視方法では、監視装置が、第1の開閉装置が設けられる第1の電力経路を通じて交流電動機と接続される駆動装置から出力される電流、及びその周波数に基づき、第1の開閉装置におけるアークの発生の有無を監視してもよい。そして、監視方法では、監視装置が、第1の開閉装置におけるアークの発生があると判定すると、アークの発生に関する信号を出力してもよい。
【0161】
また、本実施形態では、情報処理装置にプログラムを実行させてもよい。情報処理装置は、例えば、上述の監視装置350である。具体的には、プログラムは、情報処理装置に、第1の開閉装置が設けられる第1の電力経路を通じて交流電動機と接続される駆動装置から出力される電流、及びその周波数に基づき、第1の開閉装置におけるアークの発生の有無を監視させてもよい。そして、プログラムは、情報処理装置に、第1の開閉装置におけるアークの発生があると判定すると、アークの発生に関する信号を出力させてもよい。
【0162】
これにより、監視装置や監視システムや情報処理装置等(以下、便宜的に「監視装置等」)は、駆動装置から出力される電流、及びその周波数から交流電動機に対する電圧の印加状態を把握することができる。そして、監視装置等は、例えば、交流電動機に対する電圧の印加状態と駆動装置の電圧の出力状態とから、第1の開閉装置におけるアークの発生を認識し、アークの発生に関する信号を出力することができる。そのため、監視装置等は、例えば、その信号に応じて、駆動装置から交流電動機への電力の供給を自動で停止させることができる。また、監視装置等は、例えば、その信号に応じて、ユーザにアークの発生が通知されることによって、ユーザが駆動装置から交流電動機への電力の供給を手動で停止させることができる。その結果、監視装置等は、第1の開閉装置におけるアークを消弧させることができる。よって、監視装置等は、駆動装置と交流電動機との間の第1の開閉装置におけるアークの発生に対して適切に対処することができる。また、監視装置等は、駆動装置から出力される電流、及びその周波数から交流電動機に対する電圧の印加状態を把握できることから、駆動装置から直流が出力されているか交流が出力されているかに依らず、第1の開閉装置におけるアークの発生の有無を判定することができる。
【0163】
また、本実施形態では、監視装置等は、推定部と、判定部と、を備えてもよい。推定部は、例えば、上述の印加電圧推定部351である。具体的には、推定部は、駆動装置から出力される電流及びその周波数に基づき、交流電動機の電圧を推定してよい。そして、判定部は、推定部により推定される交流電動機の電圧と、駆動装置から出力される電圧との比較により、第1の開閉装置におけるアークの発生の有無を判定してよい。
【0164】
これにより、監視装置等は、交流電動機の印加電圧と、駆動装置の出力電圧との比較により、第1の開閉装置におけるアークの発生の有無を判定することができる。
【0165】
また、本実施形態では、判定部は、推定部により推定される、交流電動機の電圧の推定値の振幅と、駆動装置から出力される電圧の振幅との差が第1の基準に対して相対的に大きい場合、第1の開閉装置におけるアークの発生があると判定してもよい。第1の基準は、例えば、上述の閾値VAthである。
【0166】
これにより、監視装置等は、第1の開閉装置におけるアークの発生の有無を判定することができる。
【0167】
また、本実施形態では、監視装置等は、判定部は、推定部により推定される、交流電動機の電圧の推定値の振幅と、駆動装置から出力される電圧の振幅との差が第1の基準に対して相対的に大きい状態が継続し、且つ、その継続時間が第2の基準に対して相対的に長い場合、アークの発生があると判定してもよい。第2の基準は、例えば、上述の閾値Tthである。
【0168】
これにより、監視装置等は、駆動装置の出力電圧の過渡変化時と、第1の駆動装置におけるアーク発生時とを判別することができる。そのため、監視装置等は、第1の開閉装置におけるアークの発生の有無をより適切に判定することができる。
【0169】
また、本実施形態では、第2の基準は、駆動装置から出力される電流の制御系の応答速度に基づき規定されてもよい。
【0170】
これにより、監視装置等は、駆動装置から出力される電流の制御系の応答速度を考慮して、第1の開閉装置におけるアークの発生の有無をより適切に判定することができる。
【0171】
また、本実施形態では、判定部は、推定部により推定される交流電動機の電圧の振幅と、駆動装置から出力される電圧の振幅との差が第1の基準に対して相対的に大きく、且つ、駆動装置から出力される電流をフィードバック制御する電流制御器の比例項及び積分項のうちの比例項の出力値がゼロである場合、アークの発生があると判定してもよい。電流制御器は、例えば、上述の電流調節器345である。比例項及び積分項は、例えば、上述の比例項345a及び積分項345bである。
【0172】
これにより、監視装置等は、電流制御器の比例項の出力値がゼロであることによって、駆動装置から出力される電流が定常状態にあると判断することができる。そのため、監視装置等は、第1の開閉装置におけるアークの発生の有無をより適切に判定することができる。
【0173】
また、本実施形態では、監視装置等は、推定部と、判定部とを備えてもよい。推定部は、例えば、上述の印加電圧推定部351である。判定部は、例えば、上述のアーク判定部353である。具体的には、推定部は、駆動装置から出力される電流及びその周波数に基づき、交流電動機の電圧を推定してよい。そして、判定部は、交流電動機から出力される電流をフィードバック制御する電流制御器の比例項及び積分項のうちの積分項の出力値と、推定部により推定される、交流電動機の電圧の推定値との比較により、アークの発生を判定してよい。
【0174】
これにより、監視装置等は、交流電動機の印加電圧と、定常状態での駆動装置の出力電圧に対応する電流制御器の積分項の出力値との比較により、第1の開閉装置におけるアークの発生の有無を判定することができる。
【0175】
また、本実施形態では、判定部は、積分項の値に対応する電圧の振幅と、推定部により推定される、交流電動機の電圧の推定値の振幅との差が第1の基準に対して相対的に大きく、且つ、比例項の出力値がゼロである場合、アークの発生があると判定してもよい。
【0176】
これにより、監視装置等は、電流制御器の比例項の出力値がゼロであることによって、駆動装置から出力される電流が定常状態にあると判断することができる。そのため、監視装置等は、第1の開閉装置におけるアークの発生の有無をより適切に判定することができる。
【0177】
また、本実施形態では、監視装置等は、第1の基準は、アークの発生時の第1の開閉装置の接点間の電圧降下の分よりも大きい値に設定されてもよい。
【0178】
これにより、監視装置等は、第1の開閉装置におけるアークの発生の有無を適切に判定することができる。
【0179】
また、本実施形態では、監視装置等は、停止制御部を備えてもよい。停止制御部は、例えば、上述の信号出力部354である。具体的には、停止制御部は、アークの発生に関する信号の出力に応じて、交流電動機への電力供給を停止させてもよい。
【0180】
これにより、監視装置等は、第1の開閉装置におけるアークの発生に応じて、交流電動機への電力供給を自動で停止させることができる。
【0181】
また、本実施形態では、停止制御部は、駆動装置を稼働停止させること、及び所定の電源と駆動装置との間の第2の電力経路に設けられる第2の開閉装置を閉状態から開状態に切り換えることの少なくとも一方を行うことにより、交流電動機への電力供給を停止させてもよい。所定の電源は、例えば、上述の交流電源200である。第2の電力経路は、例えば、上述の入力経路ILである。第2の開閉装置は、例えば、上述の開閉装置400である。
【0182】
これにより、監視装置等は、駆動装置を稼働停止させたり、駆動装置への電力供給の経路(第2の電力経路)を遮断させたりすることで、交流電動機への電力供給を停止させることができる。
【0183】
また、本実施形態では、アークの発生に関する信号の出力に応じて、アークの発生をユーザに通知する通知部を備えてもよい。通知部は、例えば、上述の信号出力部354である。
【0184】
これにより、監視装置等は、第1の開閉装置におけるアークの発生をユーザに通知することにより、駆動装置から交流電動機への電力供給の停止するようにユーザを促すことができる。そのため、監視装置等は、交流電動機への電力供給をユーザによる手動で停止させることができる。
【0185】
以上、実施形態について詳述したが、本開示はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0186】
1 駆動システム
100 交流電動機
200 交流電源
300 電力変換装置
302 主回路
304,304u,304w 電流センサ
310 整流回路
320 平滑回路
330 インバータ回路
340 制御回路
341 速度調節器
342 周波数演算部
343 位相角演算部
344 ベクトル変換器
345 電流調節器
345a 比例項
345b 積分項
346 ベクトル逆変換器
347 PWM信号出力部
350 監視装置
351 印加電圧推定部
352 出力電圧取得部
353 アーク判定部
354 信号出力部
400 開閉装置
410,420,430 開閉装置
500 開閉装置
510,520,530 開閉装置
IL,IL1~IL3 入力経路
OL 出力経路
OL1~OL3 出力経路