(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172912
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】慣性センサ
(51)【国際特許分類】
G01C 19/5677 20120101AFI20241205BHJP
【FI】
G01C19/5677
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090967
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 啓太郎
(72)【発明者】
【氏名】原田 翔太
(72)【発明者】
【氏名】後藤 勝昭
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 優輝
(72)【発明者】
【氏名】西川 英昭
(72)【発明者】
【氏名】吉田 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】川合 祐輔
【テーマコード(参考)】
2F105
【Fターム(参考)】
2F105AA02
2F105BB02
2F105CD03
(57)【要約】
【課題】ホールアングルモードでの動作時における角度検知の精度低下を抑制可能な慣性センサとする。
【解決手段】慣性センサ1は、第一駆動モードと第二駆動モードとを有する共振器2と、共振器2を囲む複数の電極部53を有する実装基板3と、共振器2を振動させるアクチュエータ6を備える。アクチュエータ6は、実装基板3のなす平面に対して直交する方向をz方向として、z方向に振動することで、共振器2をz方向に振動させて共振モードを生じさせる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
慣性センサであって、
第一駆動モードと第二駆動モードとを有する共振器(2)と、
互いに距離を隔てて配置され、前記共振器を囲む複数の電極部(53)を有する実装基板(3)と、
前記実装基板のなす平面に対して直交する方向をz方向として、前記z方向に振動するアクチュエータ(6)とを備え、
前記アクチュエータは、前記共振器を前記z方向に振動させることで共振モードを生じさせる、慣性センサ。
【請求項2】
前記アクチュエータは、前記第一駆動モードもしくは前記第二駆動モードを励起する共振周波数で前記共振器を振動させる、請求項1に記載の慣性センサ。
【請求項3】
前記アクチュエータは、前記実装基板のうち前記共振器と向き合う面とは反対面に配置されている、請求項2に記載の慣性センサ。
【請求項4】
前記アクチュエータは、前記共振器と前記実装基板との間に配置されている、請求項2に記載の慣性センサ。
【請求項5】
前記アクチュエータは、前記実装基板の一部として構成されている、請求項2に記載の慣性センサ。
【請求項6】
前記共振器および前記実装基板が収納される筐体(7)と、
前記筐体の開口部を塞ぐ蓋材(8)と、をさらに備え、
前記アクチュエータは、前記筐体および前記蓋材で構成されるパッケージの一部に接触する位置に配置されている、請求項2に記載の慣性センサ。
【請求項7】
前記共振器は、円形状または環状とされた二次元対称構造である、請求項1または2に記載の慣性センサ。
【請求項8】
前記共振器は、半球形状の三次元曲面を有する曲面部(21)と、前記曲面部から前記半球形状の中心に向かって延設された接続部(22)とを有する三次元対称構造である、請求項1または2に記載の慣性センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、慣性センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の自動運転のシステム開発が進められており、この種のシステムでは、高精度の自己位置の推定技術が必要である。例えば、いわゆるレベル3の自動運転向けに、GNSSとIMUとを備える自己位置推定システムの開発が進められている。GNSSとは、Global Navigation Satellite Systemの略称である。IMUは、Inertial Measurement Unitの略称であり、例えば、3軸のジャイロセンサと3軸の加速度センサから構成される6軸の慣性センサである。将来的に、いわゆるレベル4以上の自動運転を実現するためには、現状よりもさらに高精度のIMUが求められる。
【0003】
このような慣性センサとしては、例えば、特許文献1に記載のものが挙げられる。特許文献1に記載の慣性センサは、振動体である共振器と、共振器を中心とする周方向に沿って互いに離れて配置され、所定距離を隔てて共振器を囲む複数の電極とが形成された基板を備える。この慣性センサは、複数の電極の一部からの静電気力により、共振器を基板の平面方向において第1の振動モードおよび第2の振動モードで共振させ、共振器と複数の電極との間における静電容量の変化に基づいて、共振器に印加される回転の角度を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の慣性センサは、ホールアングルモードで動作させるため、共振器の振幅を一定にする制御、第1駆動軸と第2駆動軸との直交誤差をゼロにする制御、計測した角度をフィードバックする制御、および共振を維持する制御が必要となる。このホールアングルモードでの制御においては、振動定在波の向きを求める際の誤差、計算の時間遅延、第1駆動軸および第2駆動軸の駆動ゲイン差によるドリフトなどの影響により角度検知精度が低下しうる。
【0006】
本開示は、ホールアングルモードでの動作時における角度検知の精度低下を抑制可能な慣性センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1つの観点による慣性センサは、第一駆動モードと第二駆動モードとを有する共振器(2)と、互いに距離を隔てて配置され、共振器を囲む複数の電極部(53)を有する実装基板(3)と、実装基板のなす平面に対して直交する方向をz方向として、z方向に振動するアクチュエータ(6)とを備え、アクチュエータは、共振器をz方向に振動させることで共振モードを生じさせる。
【0008】
これによれば、第一駆動モードと第二駆動モードとを有する共振器と、これを囲む複数の電極部を有する実装基板と、共振器をz方向に励振させるアクチュエータとを備える慣性センサとなる。この慣性センサは、共振器を実装基板のなす平面方向、すなわちxy方向に沿った外力でなく、アクチュエータが当該平面方向に直交するz方向に振動することで共振器をz方向に振動させ、共振モードを生じさせる。このため、xy平面に沿った方向であって、共振器の駆動時における振動の回転方向を妨げることなく、アクチュエータが共振器に振動エネルギーを与えることが可能な構成の慣性センサとなっている。よって、この慣性センサは、ホールアングルモードでの動作時における角度検知の精度低下を抑制可能となる。
【0009】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態の慣性センサを示す断面図である。
【
図2】
図1の慣性センサのうちパッケージに収納される部分を示す斜視断面図である。
【
図3】
図1の慣性センサに搭載される共振器の一例を示す断面図である。
【
図4A】
図3の共振器の動作時の振動状態についての説明図である。
【
図4B】
図4Aの共振器の振動状態を上面視した模式図である。
【
図4C】共振器の振動状態における第一駆動モードおよび第二駆動モードについての説明図である。
【
図4D】
図1の慣性センサにおける共振器の振動モードおよび当該振動モードにおける2つの駆動モード、並びに検出電極の一例を示す図である。
【
図4E】
図4Bに相当する図であって、共振器の他の振動状態を上面視した模式図である。
【
図4F】
図4Cに相当する図であって、
図4Eの共振器の振動状態における2つのモードについての説明図である。
【
図5】第1実施形態の慣性センサを含むホールアングルモードの制御回路を示すブロック図である。
【
図7】比較例の慣性センサを含むホールアングルモードの制御回路を示すブロック図である。
【
図8】第2実施形態の慣性センサを示す断面図である。
【
図9】第3実施形態の慣性センサを示す断面図である。
【
図10】第4実施形態の慣性センサを示す断面図である。
【
図11】第5実施形態の慣性センサを示す断面図である。
【
図12】第6実施形態の慣性センサを示す断面図である。
【
図13】第7実施形態の慣性センサを示す断面図である。
【
図14】第8実施形態の慣性センサを示す断面図である。
【
図15】第9実施形態の慣性センサを示す断面図である。
【
図16】
図15の慣性センサにおける共振器の振動モードおよび当該振動モードにおける2つの駆動モード、並びに検出電極の一例を示す図である。
【
図17】第9実施形態の慣性センサの変形例における共振器の振動モードおよび当該振動モードにおける2つの駆動モード、並びに検出電極の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態の慣性センサ1について、
図1~
図5を参照して説明する。
【0013】
図1では、慣性センサ1の構成を分かり易くするため、別断面に位置する後述の第1電極部53および電極膜531の外郭を破線で示している。
図2では、慣性センサ1の構成を分かり易くするため、慣性センサ1のうち後述する下部基板4、上部基板5および共振器2の一部を省略しつつ、共振器2の断面構成を部分的に示している。
【0014】
以下、説明の便宜上、
図2に示すように、実装基板3のなす平面方向の一方向を「x方向」と、同平面上においてx方向に直交する方向を「y方向」と、xy平面に対する法線方向を「z方向」と、それぞれ称する。また、xy平面方向に沿った方向を「水平方向」と称することがある。
図2以外の図中のx、y、z方向は、
図2のx、y、z方向にそれぞれ対応するものである。また、本明細書における「上」とは、図中のz方向に沿った方向であって、矢印側を意味し、「下」とは上の反対側を意味する。さらに、本明細書では、z方向上側から慣性センサ1、共振器2あるいは実装基板3を見た状態を「上面視」と称することがある。
【0015】
〔基本構成〕
本実施形態の慣性センサ1の基本構成について説明する。慣性センサ1は、例えば
図1に示すように、共振器2と、実装基板3と、アクチュエータ6と、筐体7と、蓋材8とを備え、共振器2、実装基板3、アクチュエータ6が筐体7に収納され、蓋材8に覆われててなる。慣性センサ1は、後述する第一駆動モードおよび第二駆動モードで振動可能な薄肉の共振器2の一部と実装基板3のうち複数の第1電極部53との間における静電容量の変化に基づいて、慣性センサ1に印加された角速度や回転した角度の検出が可能である。本明細書では、慣性センサ1がホールアングルモードのジャイロセンサとして構成された場合を代表例として説明する。なお、ホールアングルモードは、積分ジャイロとも称されうるものであり、以下、「WA」と称することがある。
【0016】
共振器2は、本実施形態では、例えば
図3に示すように、略半球形状の三次元曲面の外形を含む曲面部21と、曲面部21のなす仮想半球の頂点側から当該半球の中心側に向かうように延設された接続部22とを備える三次元対称構造の微小振動体である。共振器2は、例えば、曲面部21が椀状の三次元曲面を有し、その振動のQ値が10
5以上となっている。
【0017】
共振器2は、本実施形態では、例えば、曲面部21および接続部22を有する基部が、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスなどの添加物含有のガラス、金属ガラス、シリコン等によりなるリフロー材料で構成される。なお、共振器2の基部は、三次元曲面形状とされた曲面部21および接続部22を形成でき、ワイングラスモードまたは後述するn=2モードでの振動が可能なリフロー材料で構成されていればよく、前述の材料例に限定されない。共振器2は、例えば、後述する形成工程により、上記した材料で構成された薄肉基材を加工して形成されることで、曲面部21および接続部22の厚みが10μm~100μmといった具合のマイクロメートルオーダーの薄肉部材となっている。共振器2は、例えば、実装基板3の厚み方向に沿った方向を高さ方向として、高さ方向の寸法が2.5mm、後述するリム211の表面2a側の外径が5mmといったミリサイズのバードバス形状となっている。
【0018】
共振器2は、例えば、厚み100μm以下の石英板を、凹部と凹部の中心にて石英板の加熱軟化時にその一部を支える支柱部とを備える図示しない型にセットし、火炎等の加熱手段により軟化させつつ、凹部内を真空引きすることで曲面部21が形成される。例えば、この工程により、石英板のうち図示しない型の支柱部に支えられた部分が曲面部21に対して有底筒状に凹んだ形状の接続部22となり、凹部から外側にはみ出した部分については加工されずに残るが、後工程で除去される。そして、例えば、図示しない型の凹部を常圧に戻して、略半球形の曲面部21が形成された石英板を型から取り外し、任意の硬化性樹脂材料によりなる封止材で石英板を封止する。その後、例えば、封止材ごとを加工後の石英板のうち不要な部分を研磨およびCMPにより除去した後、加熱や薬液等の任意の方法により封止材をすべて除去し、石英板を取り出す。CMPとは、Chemical Mechanical Polishingの略称である。共振器2の基部は、例えば、上記のような製造プロセスにより製造されるが、この製法例に限定されるものではなく、他の公知の方法を採用されても構わない。例えば、共振器2の基部は、曲面部21および接続部22が形成された石英板を封止せずに、曲面部21よりも外側の不要部分をレーザ加工により除去されて形成されてもよい。その後、共振器2の基部に任意の成膜法によって表面電極23を成膜することで、共振器2を製造することができる。
【0019】
曲面部21のうち接続部22とは反対側の端部をリム211として、リム211は、例えば、略円筒形状とされる。なお、ここでいう略円筒形状とは、リム211の外側面および内側面の上端から下端までの径が同一の円筒形状だけでなく、当該上端から下端までの径が変動する筒形状も含む。言い換えると、曲面部21は、環状曲面形状の環状部とされたリム211を有する構成となっている。共振器2は、外径が大きいほうの面を表面2aとし、その反対面を裏面2bとして、実装基板3に搭載された際に、リム211が、表面2a側が実装基板3のうち複数の第1電極部53と距離を隔てて向き合っている。共振器2は、リム211と複数の第1電極部53との間隔が等間隔となるように搭載される。共振器2は、実装基板3への実装時において、リム211を含む曲面部21が他の部材とは接触しない中空状態になる部位である。共振器2は、本実施形態では、実装基板3に搭載されたとき、中空状態のリム211がワイングラスモードで振動可能な構造であり、振動子とも称されうる。
【0020】
接続部22は、実装基板3等の他の部材と接続される接続部位であり、例えば、有底筒状の凹部とされるが、これに限定されず、略柱状であってもよい。接続部22は、有底筒状の凹部とされる場合、表面2a側の凹部底面22aが、例えば、共振器2を実装基板3に搭載する際の吸着搬送に用いられる吸着面とされうる。接続部22のうち凹部底面22aとは反対側、すなわち裏面2b側の面は、実装基板3と向き合う実装面22bとなっている。
【0021】
表面電極23は、例えば、限定するものではないが、下地側からクロムあるいはチタンで形成される密着層と、金や白金等の任意の導電性材料で形成される導電層との積層膜で構成される。表面電極23は、例えば、スパッタリング、蒸着、CVDやALD等の任意の成膜法により共振器2の表面2aおよび裏面2bに成膜される。CVDとは、Chemical Vapor Depositionの略称である。ALDとは、Atomic Layer Depositionの略称である。表面電極23は、例えば、少なくとも実装面22bおよびリム211の表面2aに成膜され、これらの部位が電気的に接続される構成となっている。表面電極23は、共振器2の表裏面の全域を覆うベタ形状であってもよいし、フォトリソグラフィーエッチング法などによりパターニングされ、表裏面の一部を覆うパターン形状であってもよい。共振器2は、例えば、表面電極23のうち接続部22の実装面22bを覆う部分が、導電性材料によりなる接合部材52を介して実装基板3に接続される。
【0022】
実装基板3は、例えば
図1に示すように、下部基板4と、上部基板5とを備え、これらが接合された構成となっている。例えば、実装基板3は、絶縁材料のホウケイ酸ガラスにより構成された下部基板4にエッチング加工および配線成膜を施した後、半導体材料のシリコンにより構成された上部基板5を下部基板4に陽極接合し、パターニングを行うことで得られる。実装基板3は、例えば、上部基板5の側に、複数の内枠部51と、内枠部51を囲むように互いに離れて配置された複数の第1電極部53と、複数の第1電極部53から離れてこれらを囲む第2電極部54とを備える。また、実装基板3は、例えば、下部基板4側に、例えば、内枠部51と複数の第1電極部53とを隔てつつ、複数の内枠部51を囲む円環形状の溝41と、溝41の内側と外側とを跨ぐ複数の配線42とを備える。
【0023】
溝41は、例えば、
図2に示すように、内枠部51と複数の第1電極部53との間に設けられる溝であり、ウェットエッチングにより形成される。溝41は、共振器2のリム211の外径に対応する寸法とされ、共振器2を実装基板3に実装したときに、リム211を実装基板3に接触させないために設けられる。
【0024】
配線42は、例えばアルミニウム等の導電性材料により構成されるとともに、複数の第1電極部53の間を通過する配置とされ、複数の第1電極部53とは電気的に独立している。配線42は、例えば、複数設けられるとともに、下部基板4において溝41を跨ぎつつ、一端側が内枠部51に、他端が第2電極部54にそれぞれ接続されており、これらを電気的に接続している。これにより、実装基板3は、第2電極部54、配線42および内枠部51を介して、共振器2の表面電極23に電圧印加が可能となっている。
【0025】
内枠部51は、例えば、下部基板4に陽極接合された上部基板5にDRIEなどのドライエッチングを行うことで、複数の第1電極部53、第2電極部54とともに形成される。DRIEとは、Deep Reactive Ion Etchingの略称である。内枠部51は、例えば、上面視にて円環形状とされ、その囲まれた領域内に共振器2の接続部22を挿入が可能な構成とされる。言い換えると、内枠部51は、実装基板3のうち共振器2の実装面22bの直下に位置する領域を接合領域として、接合領域を囲む枠体形状となっている。例えば、実装基板3のうち内枠部51に囲まれた領域に接合部材52を配置した後、接合部材52上に共振器2の接続部22をマウントして、加熱・固化することで、実装基板3に共振器2が搭載される。
【0026】
接合部材52は、例えば、焼結銀や金錫などの導電性材料によりなり、共振器2の接続部22を実装基板3に固定する。接合部材52は、接続部22の実装面22b、および実装面22bに隣接する側面22cの一部を覆った状態で共振器2を実装基板3に固定している。接合部材52は、共振器2や表面電極23と接合可能な導電性材料であればよく、上記以外の導電性材料が用いられてもよい。
【0027】
複数の第1電極部53は、互いに離れて配置されるとともに、例えば
図1に示すように、それぞれ上面に電極膜531が形成されている。複数の第1電極部53は、例えば、電極膜531に図示しないワイヤが接続され、図示しない外部の回路基板等と電気的に接続されることで、その電位の制御が可能となっている。複数の第1電極部53は、例えば、上面視にて、共振器2のリム211を囲みつつ、xy平面上において1つの環を描くように等間隔で互いに離れて配置される。複数の第1電極部53は、いずれも、共振器2が搭載されたとき、共振器2のリム211と所定の距離を隔てた状態となり、それぞれが共振器2とキャパシタを形成する。つまり、実装基板3は、複数の第1電極部53を介して、共振器2との間の静電容量を検出することが可能となっている。複数の第1電極部53は、一部が静電容量を検出する検出電極とされ、共振器2の第一駆動モードに対応する方向に位置するものが第一検出電極、第二駆動モードに対応する方向に位置するものが第二検出電極とされる。
【0028】
第2電極部54は、例えば、上面視にて、内枠部51およびこの周囲に配置された複数の第1電極部53を囲む1つの枠体形状とされる。第2電極部54は、例えば、上面にアルミニウム等によりなる電極膜541を少なくとも1つ備え、電極膜541に図示しないワイヤが接続される。第2電極部54は、少なくとも配線42を介して共振器2の表面電極23に接続され、電圧を印加可能な構成であればよく、枠体形状以外の形状とされてもよいし、複数配置されてもよく、その形状や配置などについては適宜変更されうる。
【0029】
アクチュエータ6は、共振器2をz軸方向に振動させる駆動装置であり、例えば、圧電型、静電型あるいは電磁型のz方向に振動可能な素子とされる。アクチュエータ6は、本実施形態では、例えば、実装基板3とは別体として公知のアクチュエータの製造方法により別途製造され、筐体7の内側底面に配置される。アクチュエータ6は、例えば、筐体7に設けられた図示しない配線などに接続され、外部電源からの電圧印加によりz方向に振動することが可能となっている。アクチュエータ6は、筐体7に向き合う面とは反対面に実装基板3が図示しない接着層により接着されており、実装基板3に接合された共振器2をz方向に振動させる。なお、アクチュエータ6は、例えば、実装基板3と略同一の平面サイズとされ、xy平面における外郭を揃えて実装基板3が接着されるが、これに限定されるものではなく、実装基板3よりも大きい平面サイズとされ、一部が実装基板3からはみ出してもよい。
【0030】
以下、説明の便宜上、共振器2を平面方向に沿って振動させたとき、上面視にて、リム211の振動振幅における腹と節の数がn(n:2以上の整数)で同じとなる振動モードを「平面共振モード」と称する。共振器2は、平面共振モード時においては、xy方向の平面方向に沿って振動するとともに、z方向にも振動する。そして、共振器2は、z方向に振動させることにより、xy平面方向への振動が励起される。アクチュエータ6は、z方向に共振器2を振動させることで、水平方向への振動を励起し、平面共振モードに応じた共振モードを生じさせる役割を果たす。以下、アクチュエータ6による共振器2のz方向への励振を「z軸励振」と称し、平面共振モードに応じた共振モードであって、z軸励振により共振器2に生じる共振モードを「z軸共振モード」と称する。アクチュエータ6による共振器2のz軸共振モードの詳細については後述する。
【0031】
筐体7は、例えば、基部がセラミックなどの絶縁性材料によりなり、少なくとも共振器2および実装基板3が収納されるパッケージ部材である。筐体7は、例えば、図示しない電極パッドや内部配線や外部端子を有し、実装基板3の第1電極部53、第2電極部54およびアクチュエータ6とワイヤ等により接続されるとともに、これらと外部電源とを電気的に繋ぐことが可能な構造となっている。
【0032】
蓋材8は、図示しない接着材により筐体7に取り付けられ、筐体7のうち共振器2および実装基板3の収納空間の開口部を覆う部材である。蓋材8は、例えば、筐体7と同じ絶縁性材料で構成されてもよいし、筐体7と異なる絶縁性材料で構成されてもよい。蓋材8は、本実施形態では、筐体7とともに、慣性センサ1のうち共振器2、実装基板3およびアクチュエータ6を内包するパッケージ材を構成している。
【0033】
以上が、慣性センサ1の基本的な構成である。
【0034】
〔共振器の励振〕
次に、アクチュエータ6による共振器2のz軸励振およびz軸振動モードについて
図4Aないし
図4Fを参照して説明する。
【0035】
図4A、4B、4D、4Eでは、見易くするため、共振器2のリム211を含む一部のみを簡略化して示すとともに、z軸振動モードにおける当該一部の外郭を破線、一点鎖線、二点鎖線のいずれかで示している。
図4Dでは、後述する第1検出電極53Aおよび第2検出電極53Bを分かり易くするため、断面を示すものではないが、検出電極53A、53Bにハッチングを施している。
【0036】
共振器2は、例えば、複数の第1電極部53の一部から静電気力が印加されることによって、xy平面方向すなわち水平方向に振動させ、平面共振モードとされることも可能である。しかしながら、慣性センサ1は、WA動作時において、第1電極部53からの静電気力などの水平方向に沿った外力でなく、z方向にアクチュエータ6を振動させることで、共振器2を平面共振モードに類するz軸共振モードとされる。
【0037】
具体的には、共振器2は、例えば
図4Aに示すように、アクチュエータ6によりz方向に振動させられ、リム211を含む曲面部21が上下方向に変位する。このとき、共振器2のリム211は、z方向に沿った上下の変位に伴い、例えば
図4Bに示すように、y方向を縦とし、x方向を横として、二点鎖線で示す横方向への変位と一点鎖線で示す縦方向の変位を交互に繰り返す振動状態となる。つまり、共振器2は、アクチュエータ6によりz方向の振動を与えられることで、リム211の水平方向への振動が励起される。
図4Bに示す共振器2のz軸共振モードは、上面視にて、リム211の振動振幅における腹と節とがn=2で同じの定在波振動パターンである。以下、
図4Bに示すz軸共振モードを「n=2モード」と称する。
【0038】
共振器2は、例えば、リム211の振幅における腹および節がn=2となる平面共振モードが生じる共振周波数により、z軸励振されることで、n=2モードの振動状態となる。共振器2は、n=2モードの定在波振動パターンでは、例えば
図4Cに示すように、上面視にて、実線の矢印で示す振動方向の第一駆動モードと、破線の矢印で示す振動方向の第二駆動モードとが生じる。n=2モードの場合、第二駆動モードは、第一駆動モードの方向に対して45°傾いた方向に生じる。n=2モードの場合、例えば
図4Dに示すように、複数の第1電極部53のうち第一駆動モードの方向に位置するものを第1検出電極53Aとし、第二駆動モードの方向に位置するものを第2検出電極53Bとすることで、WA動作時の回転角度が検出可能となる。
【0039】
なお、共振器2は、WA動作時におけるz軸共振モードについてはn=2に限定されるものではなく、例えば
図4Eに示すように、上面視にて、リム211の振幅における腹と節がn=3となる共振モードであってもよいし、より高次の共振モードであってもよい。n=3の共振モードの場合、例えば
図4Fに示すように、破線の矢印で示す振動方向の第二駆動モードは、実線の矢印で示す振動方向の第一駆動モードの方向に対して30°傾いた方向に生じる。
【0040】
慣性センサ1は、WA動作時において、アクチュエータ6を駆動させて共振器2をz軸励振モードとし、第一駆動モードと第二駆動モードを生じさせる。このとき、慣性センサ1に回転が加わらない状態であれば、第一駆動モードおよび第二駆動モードの振動方向は、例えば
図4Cに両矢印で示すように、直線振動のままその振動方向が変化しない。一方、共振器2がz軸励振モードの慣性センサ1に回転が加わると、共振器2の振動方向が回転する。このとき、慣性センサ1では、共振器2と検出電極53A、53Bとの間の静電容量の変化に応じた検出信号から、共振器2の振動振幅、直交誤差、振動方向および位相差φを演算することが可能となっている。そして、慣性センサ1は、例えば、次に説明する制御回路10により検知された位相差φに基づき、z軸励振モードの共振周波数の維持制御がなされる。
【0041】
〔WA動作の制御回路〕
次に、慣性センサ1におけるWA動作モードの処理に用いられる制御回路10の一例について、
図5を参照して説明する。
【0042】
制御回路10は、例えば
図5に示すように、WA動作モードにおける各種演算を実行するWA演算部11と、共振器2のz軸共振モードを維持するためのPLL12と、アクチュエータ6に駆動信号を入力する駆動回路152と、を備える。なお、PLLとは、Phase Locked Loopの略称であり、位相同期ループとも称されうる。PLL12は、アクチュエータ6への入力信号と振幅の出力信号との位相差を一定に保つものである。
【0043】
制御回路10は、例えば、PLL12からの信号に基づいて発振周波数の制御を実行する発振器153と、WA演算部11からの信号の補正を行うPID131、132と、発振器153やPID131、132からの信号を変調する変調部14とをさらに備える。PIDとは、Proportional Integral Differentialの略称である。PID131は、共振器2の振動振幅を一定にするための補正を行い、補正後の信号を変調部14に入力する。PID132は、共振器2のz軸共振モードにおける直交誤差をゼロにするための補正を行い、補正後の信号を変調部14に入力する。制御回路10は、例えば、変調部14からの出力されるデジタル信号をアナログ信号に変換するDAC151をさらに備え、駆動回路152がDAC151から入力されるアナログ信号に基づいて、アクチュエータ6に駆動信号を入力する。DACとは、Digital to Analog Converterの略称である。
【0044】
制御回路10は、例えば、共振器2と複数の第1電極部53のうち一部の検出電極との静電容量を検出する検出回路161、162と、検出回路161、162からのアナログ信号をデジタル信号に変換するADC171、172とをさらに備える。制御回路10は、例えば、ADC171、172からのデジタル信号や発振器153からの入力信号を復調する復調部181、182をさらに備え、共振器2からの検出信号が復調部181、182を介してWA演算部11に入力される。ADCとは、Analog to Digital Converterの略称である。
【0045】
WA演算部11は、例えば、エネルギー演算部111と、クアドラチャ演算部112と、角度演算部113と、位相演算部114とを備える。エネルギー演算部111は、共振器2の振動振幅を演算する。クアドラチャ演算部112は、共振器2のz軸共振モードにおける直交誤差をゼロにするための演算を行う。角度演算部113は、WA動作時において慣性センサ1に印加された回転の角度θを演算する。位相演算部114は、アクチュエータ6に入力する信号の位相および共振器2の振動振幅の位相を演算する。WA演算部11は、例えば、エネルギー演算部111の演算結果に応じた信号をPID131に、クアドラチャ演算部112の演算結果に応じた信号をPID132に、位相演算部114の演算結果に応じた信号をPLL12に、それぞれ出力する。
【0046】
共振器2の振動における振幅量をEとし、直交誤差をQとして、振幅量E、直交誤差Q、回転角度θ、位相差φは、例えば、それぞれ以下の数式1~4により算出される。
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【数4】
数式1~4におけるx
c、x
sとは、それぞれ、復調部181にて発振器の角周波数ωで復調された同相成分の振幅と90度位相成分の振幅である。数式1~4におけるy
c、y
sとは、それぞれ、復調部182にて発振器の角周波数ωで復調された同相成分の振幅と90度位相成分の振幅である。
【0051】
以上が、慣性センサ1の制御回路10の基本的な構成である。なお、制御回路10は、
図5に示す例に限定されるものではなく、可能な範囲内で適宜変更されてもよい。例えば、上記では、PLL12は、制御回路10のうちデジタル回路ブロックで構成されていたが、共振器2に接続されるアナログ回路ブロックで構成されていてもよい。また、共振器2が第一駆動モードもしくは第二駆動モードで振動する振動モードに励起できる構成となっていれば、慣性センサ1が原理上動作するため、アクチュエータ6は、必ずしも共振器2の固有振動数で振動させられなくてもよい。
【0052】
次に、比較例の慣性センサ100およびその制御回路110について、
図6、7を参照して説明するが、ここでは、慣性センサ1およびその制御回路10との相違点について主に説明する。
【0053】
比較例の慣性センサ100は、例えば
図6に示すように、アクチュエータ6を有さず、複数の第1電極部53の一部を駆動電極として用い、駆動電極から共振器2に静電気力を印加することで平面共振モードにする。つまり、比較例の慣性センサ100は、動作時において、xy平面方向、すなわち水平方向から外力を共振器2に印加し、共振器2を平面共振モードにする。しかしながら、比較例の慣性センサ100は、外部から回転が印加された場合、当該回転に起因する外力、および駆動電極とされた一部の第1電極部53からの静電気力の水平平面に沿った2つの力が共振器2に印加される。駆動電極による静電気力は、回転による外力と同じ水平方向に沿ったものであるため、共振器2の振動方向の回転にも影響を及ぼしてしまう。このため、比較例の慣性センサ100は、外部から回転が加わった場合、平面共振モードを維持するためには、回転による変位を加味した調整が必要となる。
【0054】
制御回路110は、WA動作モードに用いられるものであり、例えば
図7に示すように、PID131、132からの信号と、角度演算部113による回転角度θの演算結果に応じた信号とが入力される角度変換演算部19をさらに有する。角度変換演算部19は、共振器2の振幅量を一定にする制御および直交誤差をゼロにする制御における共振器2の振動定在波の角度に、角度演算部113で演算された回転角度θをフィードバックするために用いられる。角度変換演算部19は、変調部141、142に信号を入力する。制御回路110は、xy平面方向において二以上の異なる方向から共振器2に駆動電極から静電気力を印加するため、変調部141、DAC151、駆動回路152に加えて、変調部142、DAC154、駆動回路155をさらに有する。
【0055】
比較例の慣性センサ100は、上記したように回転角度θのフィードバックが必要であり、振動定在波の向きを求める際の誤差、計算の時間遅延、第一駆動軸および第二駆動軸の駆動ゲイン差によるドリフト、などの影響で回転角度の検知精度が低下してしまう。第一駆動軸および第二駆動軸とは、それぞれ、共振器2の第一駆動モードに対応する駆動電極および第二駆動モードに対応する駆動電極である。
【0056】
これに対して、慣性センサ1は、第1電極部53に代わって、アクチュエータ6を用いたz軸励振により共振器2をz軸励振モードとする構成となっている。つまり、慣性センサ1は、外部から水平方向に沿った回転の力が印加され、共振器2の振動方向が回転しても、z方向に振動するアクチュエータ6が振動の回転方向に影響を及ぼすことが抑制される。また、共振器2の駆動においては、アクチュエータ6のz軸励振による制御力が共振器2の現在の振動方向へ直接入力されるため、WA動作時における回転角度のフィードバックが不要となる。このため、慣性センサ1は、振動定在波の向きを求める際の誤差、計算の時間遅延、第一駆動軸および第二駆動軸の駆動ゲイン差によるドリフト、などの影響が低減され、回転角度の検出精度の向上が期待される。
【0057】
本実施形態によれば、ホールアングルモードでの動作時における角度検知の精度低下を抑制可能な慣性センサ1となる。
【0058】
(第2実施形態)
第2実施形態の慣性センサ1について、
図8を参照して説明する。
【0059】
本実施形態の慣性センサ1は、例えば
図8に示すように、アクチュエータ6の配置が変更されている点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0060】
アクチュエータ6は、本実施形態では、例えば
図8に示すように、実装基板3のうち共振器2の接続部22の直下に位置する部位に配置されている。アクチュエータ6は、例えば、実装基板3の形成工程とは別の公知の半導体プロセスによって実装基板3上に直接形成されるか、あるいは実装基板3とは別体として別途形成され、実装基板3に配置される。アクチュエータ6は、本実施形態では、例えば実装基板3に形成される図示しない配線に接続されており、外部の駆動回路からの駆動電圧が印加されることでz方向に振動し、共振器2のz軸励振を行う。アクチュエータ6は、例えば、実装基板3のうち内枠部51に囲まれる領域内に配置されるとともに、共振器2の接続部22が接合部材52により接続される。
【0061】
本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる慣性センサ1となる。
【0062】
(第3実施形態)
第3実施形態の慣性センサ1について、
図9を参照して説明する。
【0063】
本実施形態の慣性センサ1は、例えば
図9に示すように、アクチュエータ6が実装基板3の一部として構成されている点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0064】
アクチュエータ6は、本実施形態では、実装基板3と一体で形成されたMEMSアクチュエータとなっている。MEMSとは、Micro Electro Mechanical Systemsの略称である。アクチュエータ6は、本実施形態では、例えば、上部基板5に公知の半導体プロセスにより形成され、実装基板3に形成される図示しない配線等により外部の電源に接続されており、z方向に振動する。下部基板4は、本実施形態では、例えば
図9に示すように、アクチュエータ6の直下に位置する領域に、実装基板3の外部とアクチュエータ6の直下領域とを連通する貫通孔43が形成されている。アクチュエータ6は、例えば、内枠部51に囲まれた領域において、内枠部51と一体で形成されたダイヤフラム型の平行平板デバイスとされ、下部基板4に直接接触しない中空状態となっている。アクチュエータ6は、本実施形態では、共振器2が接合部材52により接合されており、z方向に振動してz軸励振を行う。
【0065】
本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる慣性センサ1となる。
【0066】
(第4実施形態)
第4実施形態の慣性センサ1について、
図10を参照して説明する。
【0067】
本実施形態の慣性センサ1は、例えば
図10に示すように、アクチュエータ6が実装基板3上に形成され、配置が変更されている点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0068】
アクチュエータ6は、本実施形態では、例えば
図10に示すように、実装基板3のうち第2電極部54よりも外側に形成されており、実装基板3と一体になっている。アクチュエータ6は、本実施形態では、例えば、主にシリコンで構成された公知の静電型のシリコンアクチュエータとされ、公知の半導体プロセスで形成される。アクチュエータ6は、例えば、上面視にて、共振器2を中心とする環状などの1つの対称な構造、あるいは複数形成され、共振器2を中心とする対称な配置とされる。
【0069】
本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる慣性センサ1となる。
【0070】
(第5実施形態)
第5実施形態の慣性センサ1について、
図11を参照して説明する。
【0071】
本実施形態の慣性センサ1は、例えば
図11を示すように、アクチュエータ6が共振器2および実装基板3とは接しない位置であって、パッケージの一部に取り付けられている点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0072】
アクチュエータ6は、本実施形態では、例えば
図11に示すように、蓋材8のうち筐体7の開口部と向き合う内側面に配置されている。アクチュエータ6は、例えば、図示しない接着層により蓋材8の内側面に貼り付けられるとともに、図示しない配線などが接続されており、外部の駆動回路からの駆動電圧が印加可能となっている。アクチュエータ6は、本実施形態では、例えば、蓋材8の内側面においてz方向に沿って振動し、パッケージ全体、ひいては共振器2のz軸励振を行う。あるいは、アクチュエータ6は、共振器2にz方向に沿った静電気力を印加するための駆動電極として機能し、共振器2のz軸励振を行う構成であってもよい。
【0073】
本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる慣性センサ1となる。
【0074】
(第6実施形態)
第6実施形態の慣性センサ1について、
図12を参照して説明する。
【0075】
本実施形態の慣性センサ1は、例えば
図12に示すように、アクチュエータ6がパッケージの外側面に取り付けられている点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0076】
アクチュエータ6は、本実施形態では、例えば
図12に示すように、パッケージのうち底面に相当する外表面に配置されている。アクチュエータ6は、例えば、筐体7の底面のうち実装基板3が搭載される面とは反対面に、図示しない接着層により貼り付けられている。アクチュエータ6は、本実施形態では、例えば、図示しない配線などが接続されており、外部の駆動回路からの駆動電圧が印加されることでz方向に沿って振動し、パッケージ全体、ひいては共振器2のz軸励振を行う。なお、アクチュエータ6は、筐体7の底面と同じ平面サイズに限定されるものではなく、当該底面よりも小さい平面サイズとされ、当該底面の一部に貼り付けられていてもよく、その寸法や配置などについては適宜変更されうる。
【0077】
本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる慣性センサ1となる。
【0078】
(第7実施形態)
第7実施形態の慣性センサ1について、
図13を参照して説明する。
【0079】
本実施形態の慣性センサ1は、例えば
図13に示すように、アクチュエータ6がパッケージの外側面に取り付けられている点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0080】
アクチュエータ6は、本実施形態では、例えば
図13に示すように、パッケージのうち側面に相当する外表面に配置されている。アクチュエータ6は、例えば、筐体7および蓋材8のうちz方向に沿った面に、これらの面を跨ぐように図示しない接着層により貼り付けられている。アクチュエータ6は、本実施形態では、例えば、図示しないワイヤなどが接続されており、外部の駆動回路からの駆動電圧が印加されることでz方向に沿って振動する構成となっている。アクチュエータ6は、パッケージ側面においてz方向に振動することでパッケージ全体、ひいては共振器2のz軸励振を行う。
【0081】
なお、アクチュエータ6は、共振器2のz軸励振が可能であればよく、筐体7および蓋材8からなるパッケージの側面と同じ平面サイズでなくてもよく、当該側面よりも小さい平面サイズであってもよく、その寸法や配置などについては適宜変更されうる。
【0082】
本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる慣性センサ1となる。
【0083】
(第8実施形態)
第8実施形態の慣性センサ1について、
図14を参照して説明する。
【0084】
本実施形態の慣性センサ1は、例えば
図14に示すように、アクチュエータ6がパッケージの外側面に取り付けられている点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0085】
アクチュエータ6は、本実施形態では、例えば
図14に示すように、パッケージのうち蓋材8の外表面に配置されている。アクチュエータ6は、蓋材8の外表面に図示しない接着層などにより接着されており、z方向に振動することでパッケージ全体、ひいては共振器2のz軸励振を行う。アクチュエータ6は、本実施形態では、例えば、図示しないワイヤなどが接続されており、外部の駆動回路からの駆動電圧が印加される。なお、アクチュエータ6は、共振器2のz軸励振が可能であればよく、蓋材8と同じ平面サイズでなくてもよく、上記第5実施形態と同様に、蓋材8よりも小さい平面サイズであってもよく、その寸法や配置などについては適宜変更されうる。
【0086】
本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる慣性センサ1となる。
【0087】
(第9実施形態)
第9実施形態の慣性センサ1について、
図15ないし
図17を参照して説明する。
【0088】
図16、
図17では、
図4Dと同様に、共振器2のうち複数の第1電極部53と向き合う外郭部分の第一駆動モードにおける軌道を一点鎖線で示し、当該外郭部分の第二駆動モードにおける軌道を二点鎖線で示している。また、
図16、
図17では、
図4Dと同様に、共振器2の第一駆動モードに対応する方向を実線の矢印で示し、共振器2の第二駆動モードに対応する方向を破線の矢印で示している。さらに、
図16、
図17では、分かり易くするため、断面を示すものではないが、複数の第1電極部53のうち後述する検出電極53A、53Bにハッチングを施すとともに、
図17では同様の理由により共振器2にハッチングを施している。
【0089】
本実施形態の慣性センサ1は、例えば
図15に示すように、共振器2が二次元対称構造である点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0090】
共振器2は、本実施形態では、例えば
図15や
図16に示すように、円盤形状の板状とされ、その中心部分が実装基板3に接続されている。共振器2は、実装基板3に接続されている部分を軸とする径方向外側の部分が溝41の上に位置しており、接続部分以外が中空状態となっている。実装基板3は、本実施形態では、溝41の上記した径方向における幅が、上記各実施形態に比べて大きくなっている。共振器2は、中空状態の部位がアクチュエータ6のz軸励振により振動し、
図16に示す第一駆動モードもしくは第二駆動モードの振動状態となる。複数の第1電極部53のうち共振器2の第一駆動モードの振動方向上に位置するものが第1検出電極53A、第二駆動モードの振動方向上に位置するものが第2検出電極53Bとされる。
【0091】
なお、共振器2は、例えば
図17に示すように、上面視にて、環状の二次元対称構造であってもよい。この場合、共振器2は、例えば、環状部分に接続され、環状部分よりも細い図示しない支持部を有し、支持部が環状部分の外側または内側に中空状態で延設され、支持部の端部が実装基板3に接続固定された構成とされる。共振器2は、環状部分が実装基板3とは距離を隔てた中空状態となっており、
図17に一点鎖線および二点鎖線で示すように、アクチュエータ6のz軸励振によりz軸共振モードとなる。このとき、複数の第1電極部53のうち共振器2の環状部分の第一駆動モードの振動方向上に位置するものが第1検出電極53A、第二駆動モードの振動方向上に位置するものが第2検出電極53Bとされる。また、アクチュエータ6は、
図15に示す例では、上記第1実施形態と同じ配置とされているが、これに限定されるものではなく、上記第2ないし第8実施形態のいずれか1つの同じ配置あるいは構成とされてもよい。
【0092】
本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる慣性センサ1となる。
【0093】
(他の実施形態)
(1)本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらの一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0094】
(2)本開示に記載の制御部(例えば制御回路10)及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0095】
(3)なお、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0096】
(本開示の観点)
上記した本開示については、例えば以下に示す観点として把握することができる。
[第1の観点]
慣性センサであって、
第一駆動モードと第二駆動モードとを有する共振器(2)と、
互いに距離を隔てて配置され、前記共振器を囲む複数の電極部(53)を有する実装基板(3)と、
前記実装基板のなす平面に対して直交する方向をz方向として、前記z方向に振動するアクチュエータ(6)とを備え、
前記アクチュエータは、前記共振器を前記z方向に振動させることで共振モードを生じさせる、慣性センサ。
[第2の観点]
前記アクチュエータは、前記第一駆動モードもしくは前記第二駆動モードを励起する共振周波数で前記共振器を振動させる、第1の観点に記載の慣性センサ。
[第3の観点]
前記アクチュエータは、前記実装基板のうち前記共振器と向き合う面とは反対面に配置されている、第1または第2の観点に記載の慣性センサ。
[第4の観点]
前記アクチュエータは、前記共振器と前記実装基板との間に配置されている、第1または第2の観点に記載の慣性センサ。
[第5の観点]
前記アクチュエータは、前記実装基板の一部として構成されている、第1または第2の観点に記載の慣性センサ。
[第6の観点]
前記共振器および前記実装基板が収納される筐体(7)と、
前記筐体の開口部を塞ぐ蓋材(8)と、をさらに備え、
前記アクチュエータは、前記筐体および前記蓋材で構成されるパッケージの一部に接触する位置に配置されている、第1または第2の観点に記載の慣性センサ。
[第7の観点]
前記共振器は、円形状または環状とされた二次元対称構造である、第1ないし第6の観点のいずれか1つに記載の慣性センサ。
[第8の観点]
前記共振器は、半球形状の三次元曲面を有する曲面部(21)と、前記曲面部から前記半球形状の中心に向かって延設された接続部(22)とを有する三次元対称構造である、第1ないし第6の観点のいずれか1つに記載の慣性センサ。
【符号の説明】
【0097】
2 共振器
21 曲面部
22 接続部
3 実装基板
53 第1電極部
6 アクチュエータ
7 筐体
8 蓋材