(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172913
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】慣性センサ、および共振器の位置調整方法
(51)【国際特許分類】
G01C 19/5691 20120101AFI20241205BHJP
【FI】
G01C19/5691
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090968
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 啓太郎
(72)【発明者】
【氏名】原田 翔太
(72)【発明者】
【氏名】後藤 勝昭
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 優輝
(72)【発明者】
【氏名】西川 英昭
(72)【発明者】
【氏名】吉田 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】川合 祐輔
【テーマコード(参考)】
2F105
【Fターム(参考)】
2F105AA02
2F105BB07
2F105BB09
2F105BB15
2F105CC04
2F105CD03
2F105CD05
2F105CD06
2F105CD07
(57)【要約】
【課題】共振器と実装基板との接合後に、共振器と実装基板の複数の電極とのギャップの変動を低減可能な慣性センサおよびその調整方法を提供する。
【解決手段】共振器2は、環状の三次元曲面を有する曲面部21と、曲面部21から延設される接続部22とを備える。実装基板3は、互いに距離を隔てて共振器2を囲む複数の電極部53と、接続部22の直下領域に配置されるアクチュエータ52とを備える。実装基板3のなす平面における一方向およびこれに直交する方向をx方向、y方向として、アクチュエータ52は、少なくともx方向およびy方向の二方向に変位可能であり、共振器2を移動させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
慣性センサであって、
環状の三次元曲面を有する曲面部(21)と、前記曲面部から前記曲面部のなす半球形状の中心に向かって延設される接続部(22)とを有する共振器(2)と、
互いに距離を隔てるとともに、距離を隔てて前記共振器を囲む複数の電極部(53)を有する実装基板(3)と、
前記実装基板のなす平面における一方向をx方向とし、前記平面において前記一方向に直交する他方向をy方向として、前記実装基板のうち前記共振器の前記接続部が接続される部分の直下に位置する領域に配置され、少なくとも前記x方向および前記y方向の二方向に変位可能なアクチュエータ(52)と、を備え、
前記共振器は、共振モードにおいて、第一駆動モードと、前記第一駆動モードとは異なる方向に沿った第二駆動モードとを有し、
前記アクチュエータは、前記二方向に変位することで、前記実装基板に対する前記アクチュエータの位置を変更する、慣性センサ。
【請求項2】
前記アクチュエータは、前記二方向に変位する部分を第一変位部(521)とし、前記平面に対して直交する方向をz方向として、前記z方向に変位する複数の第二変位部(522)をさらに備える、請求項1に記載の慣性センサ。
【請求項3】
前記アクチュエータは、前記二方向に変位する部分を変位した位置に固定可能な固定部(55)をさらに備える、請求項1または2に記載の慣性センサ。
【請求項4】
環状の三次元曲面を有する曲面部(21)と、前記曲面部から前記曲面部のなす半球形状の中心に向かって延設される接続部(22)とを有する共振器(2)が実装基板(3)に搭載されてなる慣性センサにおける前記共振器の位置調整方法であって、
前記実装基板のうち前記共振器の前記接続部が接続される部分の直下に位置する領域に配置されるアクチュエータ(52)を駆動させ、前記実装基板に対する前記共振器の位置を変更すること、を含み、
前記共振器の位置を変更することにおいては、前記実装基板のなす平面に対する法線方向から見たときの前記共振器の中心を通り、前記法線方向に沿った仮想直線を軸とする径方向を基板径方向(DA)とし、前記実装基板のうち搭載された前記共振器を囲む複数の電極部(53)と前記共振器との前記基板径方向における距離を電極間距離(D1、D2)として、前記電極間距離の最大値と最小値との差を最小となるように、前記アクチュエータを駆動する、位置調整方法。
【請求項5】
前記共振器の位置を変更することにおいては、複数の前記電極部のうち前記共振器を共振モードで振動させたときの第一駆動モードに沿った方向に位置する前記電極部を第一検出電極(53A)とし、前記第一駆動モードとは異なる方向の振動モードである第二駆動モードに沿った方向に位置する前記電極部を第二検出電極(53B)として、前記共振器と前記第一検出電極との前記電極間距離と、前記共振器と前記第二検出電極との前記電極間距離とが等しくなるように、前記アクチュエータを駆動する、請求項4に記載の位置調整方法。
【請求項6】
環状の三次元曲面を有する曲面部(21)と、前記曲面部から前記曲面部のなす半球形状の中心に向かって延設される接続部(22)とを有する共振器(2)が実装基板(3)に搭載されてなる慣性センサにおける前記共振器の位置調整方法であって、
前記実装基板のうち前記共振器の前記接続部が接続される部分の直下に位置する領域に配置されるアクチュエータ(52)を駆動させ、前記実装基板に対する前記共振器の位置を変更すること、を含み、
前記共振器の位置を変更することにおいては、前記共振器を囲む前記実装基板の複数の電極部(53)のうち1つの前記電極部と前記共振器のうち前記1つの前記電極部と対向する部分との間における静電容量の最大値と最小値との差が最小となるように、前記アクチュエータを駆動する、位置調整方法。
【請求項7】
前記共振器の位置を変更することにおいては、複数の前記電極部のうち前記共振器を共振モードで振動させたときの第一駆動モードに沿った方向に位置する前記電極部を第一検出電極(53A)とし、前記第一駆動モードとは異なる方向の振動モードである第二駆動モードに沿った方向に位置する前記電極部を第二検出電極(53B)として、前記共振器と前記第一検出電極との静電容量と、前記共振器と前記第二検出電極との静電容量とが等しくなるように、前記アクチュエータを駆動する、請求項6に記載の位置調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元曲面形状を有する共振器を備える慣性センサ、および共振器を実装基板に接合した後における共振器の位置の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の自動運転のシステム開発が進められており、この種のシステムでは、高精度の自己位置の推定技術が必要である。例えば、いわゆるレベル3の自動運転向けに、GNSSとIMUとを備える自己位置推定システムの開発が進められている。GNSSとは、Global Navigation Satellite Systemの略称である。IMUは、Inertial Measurement Unitの略称であり、例えば、3軸のジャイロセンサと3軸の加速度センサから構成される6軸の慣性力センサである。将来的に、いわゆるレベル4以上の自動運転を実現するためには、現状よりもさらに高精度のIMUが求められる。
【0003】
このような高精度のIMUを実現するためのジャイロセンサとしては、BRGが有力視されており、ワイングラスモードで振動する略半球形状の三次元曲面を有する共振器が実装基板に搭載されてなる。BRGとは、Bird-bath Resonator Gyroscopeの略称である。この共振器は、振動の状態を表すQ値が106以上に達するため、従来よりも高精度が見込まれる。この種の共振器を実装基板に搭載してなる慣性センサの製造方法としては、例えば特許文献1に記載のものが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の慣性センサは、三次元曲面を有する共振器を実装基板に搭載した後、共振器とこれに対向する複数の対向電極との間にこれらを一時的に繋ぐ犠牲層を設け、犠牲層の一部をエッチングして分離する工程を経て得られる。このため、この慣性センサは、共振器と複数の対向電極とのギャップが均一となり、これらの間における静電容量のバラツキが低減され、センサ精度が向上する。しかしながら、この慣性センサは、製造時点においては共振器と複数の対向電極とのギャップが均一であるものの、その後の応力や温度変化、経年変化により当該ギャップに変化が生じた場合には対応することができない。
【0006】
本開示は、上記の点に鑑み、三次元曲面を有する共振器が実装基板に接合されてなり、共振器と実装基板との接合後に、共振器と実装基板の複数の電極とのギャップの変動を低減可能な慣性センサ、および共振器の位置調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1つの観点による慣性センサは、環状の三次元曲面を有する曲面部(21)と、曲面部から曲面部のなす半球形状の中心に向かって延設される接続部(22)とを有する共振器(2)と、互いに距離を隔てるとともに、距離を隔てて共振器を囲む複数の電極部(53)を有する実装基板(3)と、実装基板のなす平面における一方向をx方向とし、平面において一方向に直交する他方向をy方向として、実装基板のうち共振器の接続部が接続される部分の直下に位置する領域に配置され、少なくともx方向およびy方向の二方向に変位可能なアクチュエータ(52)と、を備え、共振器は、共振モードにおいて、第一駆動モードと、第一駆動モードとは異なる方向に沿った第二駆動モードとを有し、アクチュエータは、二方向に変位することで、実装基板に対するアクチュエータの位置を変更する。
【0008】
この慣性センサは、三次元曲面形状の振動子である共振器が実装基板に接合されてなり、実装基板のうち共振器の接続部が接続される部分の直下に位置する領域にアクチュエータが配置されている。アクチュエータは、実装基板のなす平面におけるx方向およびy方向の少なくとも二方向に変位し、共振器の位置を変更する。このため、共振器と実装基板との接合後に、共振器と実装基板の複数の電極とのギャップの変動を低減可能な慣性センサとなる。
【0009】
本開示の1つの観点による位置調整方法は、環状の三次元曲面を有する曲面部(21)と、曲面部から曲面部のなす半球形状の中心に向かって延設される接続部(22)とを有する共振器(2)が実装基板(3)に搭載されてなる慣性センサにおける共振器の位置調整方法であって、実装基板のうち共振器の接続部が接続される部分の直下に位置する領域に配置されるアクチュエータ(52)を駆動させ、実装基板に対する共振器の位置を変更すること、を含み、共振器の位置を変更することにおいては、実装基板のなす平面に対する法線方向から見たときの共振器の中心を通り、法線方向に沿った仮想直線を軸とする径方向を基板径方向(D1)とし、実装基板のうち搭載された共振器を囲む複数の電極部(53)と共振器との基板径方向における距離を電極間距離(D1、D2)として、電極間距離の最大値と最小値との差を最小となるように、アクチュエータを駆動する。
【0010】
この位置調整方法は、三次元曲面形状の振動子である共振器が実装基板に接合された慣性センサにおいて、実装基板のうち共振器の接続部が接続される部分の直下に位置する領域に配置されたアクチュエータを駆動させ、共振器の位置を変更することを含む。実装基板のうち搭載された共振器を囲む複数の電極部の1つと共振器との距離である電極間距離の最大値と最小値との差を最小となるように、アクチュエータを駆動する。これにより、共振器と実装基板との接合後に、共振器と実装基板の複数の電極とのギャップの変動を低減することが可能な共振器の位置調整方法となる。
【0011】
本開示の別の1つの観点による位置調整方法は、環状の三次元曲面を有する曲面部(21)と、曲面部から曲面部のなす半球形状の中心に向かって延設される接続部(22)とを有する共振器(2)が実装基板(3)に搭載されてなる慣性センサにおける共振器の位置調整方法であって、実装基板のうち共振器の接続部が接続される部分の直下に位置する領域に配置されるアクチュエータ(52)を駆動させ、実装基板に対する共振器の位置を変更すること、を含み、共振器の位置を変更することにおいては、複数の電極部のうち1つの電極部と共振器のうち1つの電極部と対向する部分との間における静電容量の最大値と最小値との差が最小となるように、アクチュエータを駆動する。
【0012】
この位置調整方法は、三次元曲面形状の振動子である共振器が実装基板に接合された慣性センサにおいて、実装基板のうち共振器の接続部が接続される部分の直下に位置する領域に配置されたアクチュエータを駆動させ、共振器の位置を変更することを含む。実装基板のうち搭載された共振器を囲む複数の電極部の1つと共振器との間の静電容量の最大値と最小値との差を最小となるように、アクチュエータを駆動する。これにより、共振器と実装基板との接合後に、共振器と実装基板の複数の電極とのギャップの変動を低減することが可能な共振器の位置調整方法となる。
【0013】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態の慣性センサを示す断面図である。
【
図2】
図1の慣性センサのうちパッケージに収納される部分を示す斜視断面図である。
【
図3】
図1の慣性センサに搭載される共振器の一例を示す断面図である。
【
図4】
図1の慣性センサにおける共振器の振動モードおよび当該振動モードにおける2つの駆動モード、並びに検出電極の一例を示す図である。
【
図5】アクチュエータの駆動による共振器の位置調整の第1の説明図である。
【
図6】アクチュエータの駆動による共振器の位置調整の第2の説明図である。
【
図7】第2実施形態の慣性センサを示す断面図である。
【
図8】第2実施形態に係るアクチュエータを示す上面図である。
【
図10】第2実施形態の慣性センサの変形例を示す断面図である。
【
図11】第3実施形態の慣性センサに係るアクチュエータおよび固定部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0016】
(第1実施形態)
第1実施形態の慣性センサ1について、
図1~
図6を参照して説明する。
【0017】
図1では、慣性センサ1の構成を分かり易くするため、別断面に位置する後述の第1電極部53および電極膜531の外郭を破線で示している。
図2では、慣性センサ1の構成を分かり易くするため、慣性センサ1のうち後述する下部基板4、上部基板5および共振器2の一部を省略しつつ、共振器2の断面構成を部分的に示している。
【0018】
以下、説明の便宜上、
図2に示すように、実装基板3のなす平面方向の一方向を「x方向」と、同平面上において当該一方向に直交する他方向を「y方向」と、xy平面に対する法線方向を「z方向」と、それぞれ称する。
図2以外の図中のx、y、z方向は、
図2のx、y、z方向にそれぞれ対応するものである。また、本明細書における「上」とは、図中のz方向に沿った方向であって、矢印側を意味し、「下」とは上の反対側を意味する。さらに、本明細書では、z方向上側から慣性センサ1、共振器2あるいは実装基板3を見た状態を「上面視」と称することがある。
【0019】
〔基本構成〕
本実施形態の慣性センサ1の基本構成について説明する。慣性センサ1は、例えば
図1に示すように、共振器2と、実装基板3と、アクチュエータ52と、筐体6と、蓋材7とを備え、共振器2、実装基板3、アクチュエータ52が筐体6に収納され、蓋材7に覆われててなる。慣性センサ1は、例えば、後述する第一駆動モードおよび第二駆動モードで振動可能な薄肉の共振器2の一部と実装基板3のうち複数の第1電極部53との間における静電容量の変化に基づいて、慣性センサ1に印加された角速度の検出が可能となっている。
【0020】
共振器2は、本実施形態では、例えば
図3に示すように、略半球形状の三次元曲面の外形を含む曲面部21と、曲面部21のなす仮想半球の頂点側から当該半球の中心側に向かうように延設された接続部22とを備える三次元対称構造の微小振動体である。共振器2は、例えば、曲面部21が椀状の三次元曲面を有し、その振動のQ値が10
5以上となっている。
【0021】
共振器2は、本実施形態では、例えば、曲面部21および接続部22を有する基部が、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスなどの添加物含有のガラス、金属ガラス、シリコン等によりなる熱可塑性を有するリフロー材料で構成される。なお、共振器2の基部は、三次元曲面形状とされた曲面部21および接続部22を形成でき、ワイングラスモードでの振動が可能なリフロー材料で構成されていればよく、前述の材料例に限定されない。共振器2は、例えば、後述する形成工程により、上記した材料で構成された薄肉基材を加工して形成されることで、曲面部21および接続部22の厚みが10μm~100μmといった具合のマイクロメートルオーダーの薄肉部材とされる。共振器2は、例えば、実装基板3の厚み方向に沿った方向を高さ方向として、高さ方向の寸法が2.5mm、後述するリム211の表面2a側の外径が5mmといったミリサイズのバードバス形状である。
【0022】
共振器2は、例えば、厚み100μm以下の石英板を、凹部と凹部の中心にて石英板の加熱軟化時にその一部を支える支柱部とを備える図示しない型にセットし、火炎等の加熱手段により軟化させつつ、凹部内を真空引きすることで曲面部21が形成される。例えば、この工程により、石英板のうち図示しない型の支柱部に支えられた部分が曲面部21に対して有底筒状に凹んだ形状の接続部22となり、凹部から外側にはみ出した部分については加工されずに残るが、後工程で除去される。そして、例えば、図示しない型の凹部を常圧に戻して、略半球形の曲面部21が形成された石英板を型から取り外し、任意の硬化性樹脂材料によりなる封止材で石英板を封止する。その後、例えば、封止材ごとを加工後の石英板のうち不要な部分を研磨およびCMPにより除去した後、加熱や薬液等の任意の方法により封止材をすべて除去し、石英板を取り出す。なお、CMPとは、Chemical Mechanical Polishingの略称である。共振器2の基部は、例えば、上記のような製造プロセスにより製造されるが、この製法例に限定されるものではなく、他の公知の方法を採用されても構わない。例えば、共振器2の基部は、曲面部21および接続部22が形成された石英板を封止せずに、曲面部21よりも外側の不要部分をレーザ加工により除去されて形成されてもよい。その後、共振器2の基部に任意の成膜法によって表面電極23を成膜することで、共振器2を製造することができる。
【0023】
曲面部21のうち接続部22とは反対側の端部をリム211として、リム211は、例えば、略円筒形状とされる。なお、ここでいう略円筒形状とは、リム211の外側面および内側面の上端から下端までの径が同一の円筒形状だけでなく、当該上端から下端までの径が変動する筒形状も含む。言い換えると、曲面部21は、環状曲面形状の環状部とされたリム211を有する構成となっている。共振器2は、外径が大きいほうの面を表面2aとし、その反対面を裏面2bとして、実装基板3に搭載された際に、リム211が、表面2a側が実装基板3のうち複数の第1電極部53と距離を隔てて向き合っている。共振器2は、リム211と複数の第1電極部53との間隔が等間隔となるように搭載される。共振器2は、実装基板3への実装時において、リム211を含む曲面部21が他の部材とは接触しない中空状態になる部位である。共振器2は、本実施形態では、実装基板3に搭載されたとき、中空状態のリム211がワイングラスモードで振動可能な構造であり、振動子とも称されうる。
【0024】
接続部22は、実装基板3等の他の部材との接続に用いられる部位であり、例えば、有底筒状の凹部となっているが、これに限定されず、略柱状であってもよい。接続部22は、有底筒状の凹部とされる場合、表面2a側の凹部底面22aが、例えば、共振器2を実装基板3に搭載する際の吸着搬送に用いられる吸着面とされうる。接続部22のうち凹部底面22aとは反対側、すなわち裏面2b側の面は、実装基板3と向き合う実装面22bとなっている。
【0025】
表面電極23は、例えば、限定するものではないが、下地側からクロムあるいはチタンで形成される密着層と、金や白金等の任意の導電性材料で形成される導電層との積層膜で構成される。表面電極23は、例えば、スパッタリング、蒸着、CVDやALD等の任意の成膜法により共振器2の表面2aおよび裏面2bに成膜される。CVDとは、Chemical Vapor Depositionの略称である。ALDとは、Atomic Layer Depositionの略称である。表面電極23は、例えば、少なくとも実装面22bおよびリム211の表面2aに成膜され、これらの部位が電気的に接続される構成となっている。表面電極23は、共振器2の表裏面の全域を覆うベタ形状であってもよいし、フォトリソグラフィーエッチング法などによりパターニングされ、表裏面の一部を覆うパターン形状であってもよい。共振器2は、例えば、表面電極23のうち接続部22の実装面22bを覆う部分が、図示しない導電性材料によりなる接合材を用いた接合、あるいは金属接合などにより実装基板3のアクチュエータ52に接続されている。
【0026】
実装基板3は、例えば
図1に示すように、下部基板4と、上部基板5とを備え、これらが接合された構成となっている。例えば、実装基板3は、絶縁材料のホウケイ酸ガラスにより構成された下部基板4にエッチング加工および配線成膜を施した後、半導体材料のシリコンにより構成された上部基板5を下部基板4に陽極接合し、パターニングを行うことで得られる。実装基板3は、例えば、上部基板5の側に、複数の内枠部51と、内枠部51を囲むように互いに離れて配置された複数の第1電極部53と、複数の第1電極部53から離れてこれらを囲む第2電極部54とを備える。また、実装基板3は、例えば、下部基板4側に、例えば、内枠部51と複数の第1電極部53とを隔てつつ、複数の内枠部51を囲む円環形状の溝41と、溝41の内側と外側とを跨ぐ複数の配線42とを備える。
【0027】
溝41は、例えば、
図2に示すように、内枠部51と複数の第1電極部53との間に設けられる溝であり、ウェットエッチングにより形成される。溝41は、共振器2のリム211の外径に対応する寸法とされ、共振器2を実装基板3に実装したときに、リム211を実装基板3に接触させないために設けられる。
【0028】
配線42は、例えばアルミニウム等の導電性材料により構成されるとともに、複数の第1電極部53の間を通過する配置とされ、複数の第1電極部53とは電気的に独立している。配線42は、例えば、複数設けられるとともに、下部基板4において溝41を跨ぎつつ、一端側が内枠部51に、他端が第2電極部54にそれぞれ接続されており、これらを電気的に接続している。これにより、実装基板3は、第2電極部54、配線42および内枠部51を介して、共振器2の表面電極23に電圧印加が可能となっている。
【0029】
内枠部51は、例えば、下部基板4に陽極接合された上部基板5にDRIEなどのドライエッチングを行うことで、複数の第1電極部53、第2電極部54とともに形成される。DRIEとは、Deep Reactive Ion Etchingの略称である。内枠部51は、例えば、上面視にて円環形状とされ、その囲まれた領域内に共振器2の接続部22を挿入が可能な構成とされる。言い換えると、内枠部51は、実装基板3のうち共振器2の実装面22bの直下に位置する領域を直下領域として、直下領域を囲む枠体形状となっている。内枠部51に囲まれた領域には、アクチュエータ52が配置されている。
【0030】
アクチュエータ52は、本実施形態では、共振器2が接続されるとともに、共振器2が接続される部分がx方向およびy方向の二方向に変位する駆動装置である。アクチュエータ52は、例えば、圧電型、静電型あるいは電磁型の公知の構成とされる。アクチュエータ52は、例えば、実装基板3のうち内枠部51に囲まれた領域内に、公知のアクチュエータの製造方法により、内枠部51の内径より小さい直径サイズで直接製造される。アクチュエータ52は、例えば、実装基板3に設けられた図示しない配線などに接続され、外部電源からの電圧印加によりx方向もしくはy方向あるいはこの二方向に変位することが可能となっている。アクチュエータ52は、共振器2が接合される際または接合後の経時変化により、共振器2と実装基板3との位置ズレが生じた場合に、共振器2の位置を変更し、共振器2と複数の第1電極部53との電極間距離を修正する役割を果たす。アクチュエータ52を用いた共振器2の位置調整方法については後述する。
【0031】
なお、アクチュエータ52は、例えば、限定するものではないが、実装基板3の平面サイズが5cm角以上などの所定以上の大きさである場合には、実装基板3とは別体として製造された後、図示しない導電性接着剤などにより実装基板3に接着されてもよい。また、アクチュエータ52は、例えば、共振器2が接合される部位に、xy平面における変位機構に用いられる電極などとは電気的に独立した図示しない配線が形成されており、共振器2の表面電極23に所定の電位を印加することが可能な構成となっている。
【0032】
複数の第1電極部53は、互いに離れて配置されるとともに、例えば
図1に示すように、それぞれ上面に電極膜531が形成されている。複数の第1電極部53は、例えば、電極膜531に図示しないワイヤが接続され、図示しない外部の回路基板等と電気的に接続されることで、その電位の制御が可能となっている。複数の第1電極部53は、例えば、上面視にて、共振器2のリム211を囲みつつ、xy平面上において1つの環を描くように等間隔で互いに離れて配置される。複数の第1電極部53は、いずれも、共振器2が搭載されたとき、共振器2のリム211と所定の距離を隔てた状態となり、それぞれが共振器2とキャパシタを形成する。つまり、実装基板3は、複数の第1電極部53を介して、共振器2との間の静電容量を検出することが可能となっている。複数の第1電極部53は、一部が静電容量を検出する検出電極とされ、共振器2の第一駆動モードに対応する方向に位置するものが第一検出電極、第二駆動モードに対応する方向に位置するものが第二検出電極とされる。
【0033】
第2電極部54は、例えば、上面視にて、内枠部51およびこの周囲に配置された複数の第1電極部53を囲む1つの枠体形状とされる。第2電極部54は、例えば、上面にアルミニウム等によりなる電極膜541を少なくとも1つ備え、電極膜541に図示しないワイヤが接続される。第2電極部54は、少なくとも配線42を介して共振器2の表面電極23に接続され、電圧を印加可能な構成であればよく、枠体形状以外の形状とされてもよいし、複数配置されてもよく、その形状や配置などについては適宜変更されうる。
【0034】
筐体6は、例えば、基部がセラミックなどの絶縁性材料によりなり、少なくとも共振器2および実装基板3が収納されるパッケージ部材である。筐体6は、例えば、図示しない電極パッドや内部配線や外部端子を有し、実装基板3の第1電極部53、第2電極部54およびアクチュエータ52とワイヤあるいは配線などにより接続され、これらと外部電源とを電気的に繋ぐことが可能な構造となっている。
【0035】
蓋材7は、図示しない接着材により筐体6に取り付けられ、筐体6のうち共振器2および実装基板3の収納空間の開口部を覆う部材である。蓋材7は、例えば、筐体6と同じ絶縁性材料で構成されてもよいし、筐体6と異なる絶縁性材料で構成されてもよい。蓋材7は、本実施形態では、筐体6とともに、慣性センサ1のうち共振器2および実装基板3を内包するパッケージ材を構成している。
【0036】
以上が、慣性センサ1の基本的な構成である。なお、慣性センサ1は、上記の構成に限定されるものではなく、共振器2や実装基板3の一部の構成が変更されてもよい。例えば、共振器2は、リム211のうちz方向に面する下面と接続部22の実装面22bとが同一平面上に位置するものだけでなく、リム211が実装面22bよりも突き出す、あるいは実装面22bがリム211よりも突き出す構成であってもよい。例えば、共振器2がリム211よりも実装面22bのほうが突き出た構成である場合、実装基板3は、溝41を有しない構成であってもよい。
【0037】
〔共振器の位置調整〕
まず、共振器2の振動モードおよび検出電極の割り当ての一例について、
図4を参照して説明する。
【0038】
図4では、見易くするため、後述する共振モードにおける共振器2のリム211の外郭であって、第一駆動モードのものを一点鎖線、第二駆動モードのものを二点鎖線、これらの中間の状態のものを破線で示している。また、
図4では、後述する第1検出電極53Aおよび第2検出電極53Bを分かり易くするため、断面を示すものではないが、検出電極53A、53Bにハッチングを施している。これは、後述の
図6についても同様である。
【0039】
共振器2は、例えば、複数の第1電極部53の一部から静電気力が加えられることで、リム211がxy平面方向に振動する。そして、共振器2は、所定の共振周波数で振動させられると、例えば
図4に示すように、上面視にて、リム211の外郭の振動振幅における腹と節とが同じn(n:2以上の整数)となる振動モードとなる。
【0040】
なお、
図4に示す共振器2の振動モードは、n=2となる共振モードであり、本明細書では「n=2モード」と称することがある。以下、共振器2が慣性センサ1の動作時にn=2モードとされる場合を代表例として説明するが、共振器2は、n=3以上の高次の共振モードとされてもよい。
【0041】
共振器2は、例えばn=2モードでは、
図4に示すように、実線の矢印で示す方向の第一駆動モードと、破線の矢印で示す方向の第二駆動モードとの2つの異なる振動モードが生じ、これらの振動モードが交互に繰り返される。第二駆動モードは、上面視にて、第一駆動モードの方向に対して所定角度で傾いた方向に生じる。例えば、第二駆動モードは、n=2モードの場合には45°、n=3モードの場合には30°、n=4モードの場合には22.5°といった具合に、第一駆動モードに対して共振モードに応じた所定角度で傾いた方向に生じる。このとき、共振器2を共振モードにした際に、複数の第1電極部53のうち第一駆動モードの方向に位置するものを第1検出電極53Aとして割り当て、第二駆動モードの方向に位置するものを第2検出電極53Bとして割り当てる。これにより、慣性センサ1に外部からの回転が印加されたとき、検出電極53A、53Bと共振器2との静電容量の変化に基づいて、角速度や回転角度の検出が可能となる。
【0042】
続いて、アクチュエータ52を用いた共振器2の位置調整について、
図5および
図6を参照して説明する。
【0043】
図5、
図6では、複数の第1電極部53および共振器2を上面視したものを示すとともに、共振器2の位置を分かり易くするため、共振器2のうちリム211の外郭のみを実線および破線で示している。また、
図5、
図6では、アクチュエータ52による位置調整前のリム211の外郭を破線で、共振器2の位置ズレが生じていない状態または位置調整後のリム211の外郭を実線で示している。
【0044】
共振器2は、例えば
図5に実線で示すように、上面視にて、複数の第1電極部53とリム211を覆う表面電極23との距離、すなわち電極間距離が均等になるように配置されることが好ましい。この場合、共振器2のリム211と第1電極部53との間の静電容量の方位誤差がなく、慣性センサ1のセンサ精度が向上する。しかしながら、共振器2は、例えば
図5に破線で示すように、実装基板3に接合される際、あるいは実装基板3に接合された後の経時変化により、実装基板3に対する相対位置がずれることがある。このとき、例えば、共振器2は、電極間距離が均等になる位置に配置される中心をC0として、中心C1が中心C0とは異なる位置となる。
【0045】
以下、説明の簡便化のため、実装基板3に対する共振器2の相対位置のズレであって、実装基板3への接合時や実装基板3への接合後の経時変化に起因するものを単に「共振器2の相対位置ズレ」と称する。
【0046】
共振器2の相対位置ズレが生じると、複数の第1電極部53と共振器2との距離が非対称な状態、すなわちバラツキが生じた状態となり、ひいては静電容量の方位誤差が生じるため、慣性センサ1のセンサ精度が低下してしまう。そこで、慣性センサ1は、共振器2が接続されたアクチュエータ52を駆動させ、例えば、xy平面方向に変位させ、中心C1を中心C0の位置に移動させることで第1電極部53と共振器2のリム211との距離を補正することが可能な構成となっている。共振器2は、例えば、次に説明する第1ないし第4の位置調整方法により実装基板3に対する位置の補正がなされる。
【0047】
第1の位置調整方法は、アクチュエータ52の駆動により共振器2を移動させ、共振器2と第1電極部53との電極間距離の最大値と最小値との差を最小とする方法である。
【0048】
以下、説明の便宜上、
図6に示すように、上面視したときの共振器2の中心C0を通り、実装基板3の厚み方向であるz方向に沿った仮想直線を軸とする径方向を「基板径方向D
A」と称する。
図6では、見易くするため、基板径方向D
Aのうち1つのみを示しているが、紙面平面において中心C0を起点として放射状に広がる360°の全方向が基板径方向D
Aに相当する。調整前の共振器2の中心C1および調整後の共振器2の中心C0は、上面視したときの凹部底面22aまたは実装面22bの中心位置に相当する。
【0049】
ここで、電極間距離とは、第1電極部53とリム211のうち当該第1電極部53と対向する部分を覆う表面電極23との基板径方向D
Aにおける距離である。電極間距離は、例えば、図示しないカメラなどの撮像装置により得られる画像を公知の画像認証技術で解析する方法や静電容量から距離を逆算するなどの方法により得られる。まず、共振器2を実装基板3に接合した直後、あるいは接合後に所定期間が経過した場合に、電極間距離を算出し、電極間距離にバラツキが生じているとき、アクチュエータ52を駆動させて共振器2の位置調整を行う。例えば
図6に示すように、各第1電極部53のうち電極間距離が最大のものを最大距離D
maxとし、最小のものを最小距離D
minとして、アクチュエータ52は、最大距離D
maxと最小距離D
minとの差が最小になるように、共振器2を移動させる。これにより、共振器2と複数の第1電極部53との電極間距離のバラツキが低減され、慣性センサ1のセンサ精度を高く保つことが可能となる。
【0050】
共振器2は、第2の位置調整方法によって位置調整が行われてもよい。第2の位置調整方法は、共振器2と第1電極部53との電極間距離が第一軸と第二軸で等しくなるように調整する方法である。ここでいう第一軸、および第二軸とは、それぞれ、共振モードにおける第一駆動モードに沿った方向、および第二駆動モードに沿った方向を意味する。つまり、第2の位置調整方法では、共振器2と第1検出電極53Aとの電極間距離を距離D1とし、共振器2と第2検出電極53Bとの電極間距離を距離D2として、アクチュエータ52を駆動させ、距離D1、D2が等しくなるように共振器2を移動させる。これにより、共振器2と複数の第1電極部53のうち少なくとも検出電極53A、53Bとの電極間距離のバラツキが低減され、慣性センサ1のセンサ精度を高く保つことが可能となる。
【0051】
共振器2は、第3の位置調整方法によって位置調整が行われてもよい。第3の位置調整方法は、共振器2と複数の第1電極部53との静電容量の値の最大値と最小値との差が最小となるように調整する方法である。これにより、共振器2と複数の第1電極部53との間における静電容量のバラツキ、すなわち電極間距離のバラツキが低減され、慣性センサ1のセンサ精度を高く保つことが可能となる。
【0052】
共振器2は、第4の位置調整方法によって位置調整が行われてもよい。第4の位置調整方法は、共振器2と第1電極部53との静電容量が第一軸と第二軸で等しくなるように調整する方法である。これにより、共振器2と複数の第1電極部53のうち少なくとも検出電極53A、53Bとの静電容量におけるバラツキが低減され、慣性センサ1のセンサ精度を高く保つことが可能となる。
【0053】
本実施形態によれば、共振器2が実装基板3のアクチュエータ52に接合され、アクチュエータ52を駆動することにより、共振器2の位置を実装基板3との接合後に調整可能な慣性センサ1となる。このため、慣性センサ1は、共振器2の相対位置ズレが生じた場合であっても、上記した第1ないし第4の位置調整方法のいずれかにより、複数の第1電極部53における静電容量の方位誤差が低減され、センサ精度を向上させることが可能となる。
【0054】
(第2実施形態)
第2実施形態の慣性センサ1について、
図7を参照して説明する。
【0055】
本実施形態の慣性センサ1は、例えば
図7に示すように、アクチュエータ52の構成が一部変更されている点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0056】
アクチュエータ52は、本実施形態では、例えば
図7に示すように、xy平面において変位する部位である第一変位部521と、z方向に変位する複数の第二変位部522とを備える。アクチュエータ52は、第一変位部521によりxy平面上における共振器2の位置を変更可能であるとともに、第二変位部522により共振器2の傾きの制御が可能となっている。
【0057】
アクチュエータ52は、例えば
図8に示すように、3つの第二変位部522を有する。第二変位部522は、例えば、上面視にて、四角形の柱状とされるが、これに限定されるものではなく、その形状や寸法などについては適宜変更されうる。アクチュエータ52は、例えば
図9に示すように、第一変位部521上に3つの第二変位部522が形成され、略等間隔で3つの第二変位部522が配置された構成とされる。アクチュエータ52は、3つの第二変位部522上に共振器2の接続部22が接合されており、3つの第二変位部522を個別にz方向に変位させることで、共振器2の傾き調整に用いられる。第二変位部522は、第一変位部521の変位に伴ってxy平面方向に移動するとともに、z方向に変位する部位である。第二変位部522は、例えば、先端面にz方向における変位に用いられる電極とは独立した図示しない電極が形成されており、共振器2の表面電極23の電位調整が可能となる構成とされる。
【0058】
なお、
図7などでは、アクチュエータ52が第二変位部522を3つ有する構成を示しているが、これに限定されるものではなく、第二変位部522の数や配置などについては適宜変更されてもよい。例えば、アクチュエータ52は、2つの第二変位部522と、第二変位部522と同様の突起状であるが、変位しない1つの支持部とを有する構成であってもよいし、4つ以上の第二変位部522を有する構成であってもよい。
【0059】
本実施形態によれば、上記第1実施形態の効果に加えて、共振器2の傾き調整も可能な慣性センサ1となる。
【0060】
(第2実施形態の変形例)
慣性センサ1は、例えば
図10に示すように、複数の第1電極部53がリム211と基板径方向D
Aに沿って対向する位置でなく、リム211とz方向において対向する位置に形成された構成であってもよい。この場合、慣性センサ1は、z方向におけるリム211の振動モードを生じさせ、その振動振幅を検出可能な構成となる。
【0061】
本変形例によっても、上記第2実施形態と同様の効果が得られる慣性センサ1となる。
【0062】
(第3実施形態)
第3実施形態の慣性センサ1について、
図11を参照して説明する。
図11では、見易くするため、慣性センサ1のうちアクチュエータ52の一部および後述する固定部55を含む領域を拡大して示すとともに、他の領域の部分については省略している。
【0063】
本実施形態の慣性センサ1は、例えば
図11に示すように、アクチュエータ52が変位した状態で固定する固定部55を実装基板3がさらに有する構成である点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0064】
慣性センサ1は、本実施形態では、例えば
図11に示すように、アクチュエータ52がxy平面方向に変位したとき、アクチュエータ52の一部と嵌合し、アクチュエータ52を変位させた状態で固定する固定部55をさらに有してなる。
【0065】
アクチュエータ52は、本実施形態では、例えば
図11に示すように、x方向あるいはy方向に変位する部分の一部に固定部55と嵌合する嵌合部523が形成されている。嵌合部523は、例えば、三角形状の突起が繰り返し形成された鋸状や櫛歯状とされる。嵌合部523は、例えば、アクチュエータ52が変位する際には固定部55と嵌合せず、アクチュエータ52がオフ状態とされ、変位させられた方向とは逆方向に戻ろうとしたときに固定部55と嵌合する形状とされる。言い換えると、嵌合部523は、固定部55と対をなすとともに、固定部55とラチェット機構を構成する。
【0066】
固定部55は、アクチュエータ52の変位部分から独立するとともに、実装基板3に固定されて変位しない部位である。固定部55は、例えば、第1電極部53の基部と同様にシリコンなどの半導体材料、あるいは金属材料などの任意の材料で構成される。固定部55は、例えば、アクチュエータ52と同様に、実装基板3上に直接形成される。固定部55は、例えば、突起部551を有し、アクチュエータ52の変位部分と対向して配置され、突起部551がアクチュエータ52の嵌合部523と接触している。固定部55は、例えば、嵌合部523が複数の略直角三角形状の突起が連続して繰り返し配列されてなる構成である場合、突起部551が略直角三角形状とされる。この場合、固定部55は、例えば、突起部551の傾斜面551aが嵌合部523の傾斜面523aと対向し、傾斜面551aが傾斜面523aと略平行に配置される。また、突起部551の傾斜面551aおよび嵌合部523の傾斜面523aは、アクチュエータ52をオン状態にしたときの変位方向に対して傾いている。これにより、固定部55は、アクチュエータ52を変位させる場合には、嵌合部523と嵌合せず、アクチュエータ52の変位の妨げとはならない。
【0067】
一方、突起部551のうち傾斜面551aに隣接する隣接面551bは、例えば、アクチュエータ52の変位方向に対して直交する方向に延設されている。また、嵌合部523の傾斜面523aに隣接する隣接面523bは、隣接面551bと同様に、アクチュエータ52の変位方向に対して直交する方向に延設され、隣接面551bと対向している。これにより、固定部55は、突起部551の隣接面551bと嵌合部523の隣接面523bと嵌合し、アクチュエータ52が変位方向とは逆方向に移動することを防ぐ役割を果たす。このため、固定部55は、アクチュエータ52を駆動させた後にオフ状態にした場合おいても、アクチュエータ52を変位後の位置で固定し、共振器2が変位前の元の位置に戻ることを抑制するラチェット機構の一部を構成する。固定部55の数や配置などについては、嵌合部523の形態に応じて適宜変更されうる。
【0068】
本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果に加えて、固定部55および嵌合部523を有することで、共振器2をアクチュエータ52による調整後の位置に固定することが可能な効果も得られる慣性センサ1となる。
【0069】
(他の実施形態)
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらの一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0070】
なお、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0071】
2…共振器、21…曲面部、22…接続部、3…実装基板、52…アクチュエータ
521…第1変位部、522…第2変位部、53…第1電極部、53A…第1検出電極
53B…第2検出電極、55…固定部、DA…基板径方向