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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172914
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】缶内面膜の検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/20 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
G01N27/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090973
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新畠 数洋
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 智也
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA06
2G060AA10
2G060AE03
2G060AG03
2G060AG11
2G060EA04
2G060EA07
2G060EB05
2G060HC15
2G060KA12
2G060KA14
(57)【要約】
【課題】優れた缶の内面膜の検査装置を提供する。
【解決手段】缶の内面膜の検査装置は、被検査缶90の内部に検査液を供給するように構成された給水機10と、被検査缶90の内部の検査液に浸されるように構成された第1電極21と被検査缶90の缶体に接続されるように構成された第2電極22とを有し、被検査缶90の内部の検査液に浸された第1電極21と被検査缶90の缶体に接続された第2電極22との間に電圧を印加したときに流れる電流に関する値を測定するように構成された検査機20と、電流に関する値を測定した後の被検査缶90から検査液を吸い出すように構成された排水機30と、被検査缶90が給水機10、検査機20、排水機30で順に処理されるように、被検査缶90を給水機10、検査機20、排水機30の順に搬送するように構成された搬送機とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査缶の内部に検査液を供給するように構成された給水機と、
前記被検査缶の内部の前記検査液に浸されるように構成された第1電極と前記被検査缶の缶体に接続されるように構成された第2電極とを有し、前記被検査缶の内部の前記検査液に浸された前記第1電極と前記被検査缶の缶体に接続された前記第2電極との間に電圧を印加したときに流れる電流に関する値を測定するように構成された検査機と、
前記電流に関する値を測定した後の前記被検査缶から前記検査液を吸い出すように構成された排水機と、
前記被検査缶が前記給水機、前記検査機、前記排水機で順に処理されるように、前記被検査缶を前記給水機、前記検査機、前記排水機の順に搬送するように構成された搬送機と
を備える、缶の内面膜の検査装置。
【請求項2】
前記検査機は、
前記被検査缶の内部の前記検査液の液面を検出するように構成された液面センサと、
前記第1電極を前記被検査缶の内部に挿入及び前記内部から抜去するように移動させる電極移動機構と、
前記液面センサの出力に基づいて前記第1電極の体積によって上がる前記検査液の液面が所定位置になったと判定されるまで、前記電極移動機構に前記第1電極を前記検査液の中に沈めさせる制御装置と
を備える、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記排水機は、
前記被検査缶を傾けるように構成された傾斜機構と、
先端に吸水口を有して前記被検査缶の内部に挿入されて前記検査液を吸い出すように構成された第1ノズルと、
前記傾斜機構によって傾けられた前記被検査缶の底部まで前記第1ノズルの前記先端を移動させるノズル移動機構と、
前記第1ノズルを介して前記検査液を吸い出すように構成された吸い出し装置と
を備える、請求項1に記載の検査装置。
【請求項4】
前記第1ノズルは、鉛直方向に伸びる細長い形状を有しており、
前記ノズル移動機構は、前記第1ノズルを鉛直方向に移動させる、
請求項3に記載の検査装置。
【請求項5】
前記排水機は、
前記第1ノズルよりも太い内径を有する第2ノズルをさらに備え、
前記ノズル移動機構は、前記第1ノズルの吸水口よりも前記第2ノズルの吸水口の方が高い位置となるように、前記第1ノズルと共に前記第2ノズルを移動させるように構成されており、
前記吸い出し装置は、前記第2ノズルの吸水口が前記検査液に浸かっている間は少なくとも前記第2ノズルを介して前記検査液を吸い出すように構成されており、前記検査液の液面が前記第2ノズルの吸水口よりも低くなったときには前記第1ノズルを介して前記検査液を吸い出すように構成されている、
請求項3又は4に記載の検査装置。
【請求項6】
前記給水機は、
前記検査液を出す吐出口を有し、前記被検査缶の内部に挿入されるように構成されたノズルと、
前記吐出口が前記検査液に浸かるまでは第1流量で前記検査液を前記ノズルに供給して前記吐出口が前記検査液に浸かった後は前記第1流量よりも大きい第2流量で前記検査液を前記ノズルに供給するように構成された検査液供給部と
を備える、請求項1乃至4の何れかに記載の検査装置。
【請求項7】
前記搬送機は、
前記被検査缶が載置される載置面であって、当該載置面に沿って移動するように構成された載置面と、
前記載置面に前記被検査缶を設置する搬入ターレットであって、前記被検査缶の側面を吸着するように構成されており回転によって吸着された前記被検査缶を搬送するように構成された吸着部と、前記吸着部よりも大きな径を有して回転によって前記吸着部から解放された前記被検査缶の側面を押して前記被検査缶を前記載置面の所定の位置まで押し出すように構成された押出部とを有する搬入ターレットと
を備える、請求項1乃至4の何れかに記載の検査装置。
【請求項8】
前記給水機と、前記検査機と、前記排水機とは、並列に動作する、請求項1乃至4の何れかに記載の検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶内面膜の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、食品や飲料等を内容物とする缶の内面は、樹脂フィルムや塗料等で被覆されている。缶の製造工程においては、このような内面膜の欠陥の有無が検査されている。このような検査として、エナメルレーター値(Enamel Rater Value;ERV)検査などが知られている。この方法では、缶体に接触させた電極と缶内に充填された導電性の検査液に浸けた電極との間の電気的導通に基づいて、内面膜の欠陥の有無が検査される。例えば特許文献1には、ERV検査の改良として、純水にガスを溶解させて比抵抗値を調整した検査液を用いることに関して開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-14679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、優れた缶の内面膜の検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、缶の内面膜の検査装置は、被検査缶の内部に検査液を供給するように構成された給水機と、前記被検査缶の内部の前記検査液に浸されるように構成された第1電極と前記被検査缶の缶体に接続されるように構成された第2電極とを有し、前記被検査缶の内部の前記検査液に浸された前記第1電極と前記被検査缶の缶体に接続された前記第2電極との間に電圧を印加したときに流れる電流に関する値を測定するように構成された検査機と、前記電流に関する値を測定した後の前記被検査缶から前記検査液を吸い出すように構成された排水機と、前記被検査缶が前記給水機、前記検査機、前記排水機で順に処理されるように、前記被検査缶を前記給水機、前記検査機、前記排水機の順に搬送するように構成された搬送機とを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、優れた缶の内面膜の検査装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態に係る検査装置の構成例の概略を模式的に示す正面図である。
図2図2は、一実施形態に係る検査装置の動作例の概略を示すフローチャートである。
図3図3は、一実施形態に係る搬入ターレット部分を上から見た概略を模式的に示す図である。
図4A図4Aは、一実施形態に係る搬入ターレットによる被検査缶の搬送と位置決めについて説明するための図である。
図4B図4Bは、一実施形態に係る搬入ターレットによる被検査缶の搬送と位置決めについて説明するための図である。
図4C図4Cは、一実施形態に係る搬入ターレットによる被検査缶の搬送と位置決めについて説明するための図である。
図4D図4Dは、一実施形態に係る搬入ターレットによる被検査缶の搬送と位置決めについて説明するための図である。
図5図5は、一実施形態に係る検査装置の給水機を模式的に示す図であり、ノズルが被検査缶の内部に挿入された状態を模式的に示す図である。
図6図6は、一実施形態に係る検査装置の給水機の動作例の概略を示すフローチャートである。
図7図7は、一実施形態に係る検査装置の検査機を模式的に示す図であり、第1電極が被検査缶の検査液に浸かり、第2電極が被検査缶の缶体に接触している状態を模式的に示す図である。
図8図8は、一実施形態に係る検査装置の検査機の動作例の概略を示すフローチャートである。
図9図9は、一実施形態に係る検査装置の排水機を模式的に示す図であり、検査液の吸引のために第1ノズル及び第2ノズルが被検査缶の内部に挿入されている状態を模式的に示す図である。
図10図10は、一実施形態に係る検査装置の排水機の動作例の概略を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態は、製缶工程において製造した缶の内面膜についての異常の有無を検査するための検査装置に関する。内面膜は、例えば、塗膜であったり、樹脂フィルムであったりする。この検査装置は、被検査缶のエナメルレーター値(Enamel Rater Value;ERV)として知られている値など、被検査缶に充填された検査液に浸された電極と被検査缶の缶体に接続された電極との間に電圧を印加したときに流れる電流に関する値を測定するように構成されている。例えばERVは、被検査缶の内部に1%程度の食塩水といった電解液を入れ、一方の電極を当該電解液内に浸け、他方の電極を缶体に接触させ、両電極間に6V程度の電位差を与えて数秒後に測定される電流値として得られる。例えば、内面膜に穴が開いていると、測定される電流値は正常な場合よりも大きくなる。本実施形態の検査装置は、このような電流に関する値を取得して、得られた値に基づいて、被検査缶の内面膜の異常の有無などを判定する。この検査装置では、このような電流に関する値を、作業者の手を介さずに自動で測定する。
【0009】
[検査装置の概要]
〈検査装置の構成の概要〉
図1は、本実施形態に係る検査装置1の構成例の概略を模式的に示す正面図である。検査装置1は、搬送機50によって搬送される被検査缶90についてERV等の電流に関する値を測定して検査を行う装置である。検査装置1は、搬送機50による被検査缶90の搬送経路に沿って、上流から順に、給水機10と、検査機20と、排水機30とを備える。すなわち、搬送機50は、被検査缶90が給水機10、検査機20、排水機30で順に処理されるように、被検査缶90を給水機10、検査機20、排水機30の順に搬送するように構成された、例えばベルトコンベアである、検査コンベア53を有する。
【0010】
給水機10は、被検査缶90の内部に、電解液といった検査液を供給するように構成されている。給水機10は、検査液を供給するノズル12を備える。検査液を供給するとき、ノズル12が被検査缶90の内部に挿入される。被検査缶90が搬送されるとき、ノズル12は、被検査缶90の上方に移動する。図1には、ノズル12が被検査缶90の上方に位置する状態が模式的に示されている。
【0011】
検査機20は、給水機10で検査液が供給された被検査缶90について、電流に関する値を測定するように構成されている。すなわち、検査機20は、被検査缶90の内部の検査液に浸されるように構成された第1電極21と、被検査缶90の缶体に接触することで電気的に接続されるように構成された第2電極22と、測定回路26とを有する。測定回路26の電圧源261は、被検査缶90の内部の検査液に浸された第1電極21と被検査缶90の缶体に接続された第2電極22との間に電圧を印加し、測定回路26の電流計262は、このときに、第1電極21と第2電極22との間を流れる電流に関する値を測定するように構成されている。
【0012】
測定時には、第1電極21及び第2電極22は、検査液及び被検査缶90に接触するように下方に移動し、被検査缶90が搬送されるとき、第1電極21及び第2電極22は、被検査缶90の上方に移動する。図1には、第1電極21及び第2電極22が被検査缶90の上方に位置する状態が模式的に示されている。
【0013】
排水機30は、検査機20が電流に関する値を測定した後の被検査缶90から検査液を吸い出すように構成されている。本実施形態では、排水機30は、検査液を吸い出すために第1ノズル32及び第2ノズル33の2つのノズルを備える。検査液を排水するとき、第1ノズル32及び第2ノズル33が被検査缶90の内部に挿入される。被検査缶90が搬送されるとき、第1ノズル32及び第2ノズル33は、被検査缶90の上方に移動する。図1には、第1ノズル32及び第2ノズル33が被検査缶90の上方に位置する状態が模式的に示されている。
【0014】
検査装置1の排水機30の下流には、排斥機60が設けられている。排斥機60は、検査機20による検査で異常と判定された被検査缶90を排斥路に排斥する。排斥機60は、検査機20による検査で正常と判定された被検査缶90は排斥しない。その結果、正常な被検査缶90は、検査コンベア53の搬送方向に搬送される。
【0015】
検査装置1は、検査装置1の各部を制御する制御装置70を備える。制御装置70は、各種集積回路等を有するコンピュータである。制御装置70は、操作盤等の各種入力装置、検査装置1の設定及び状態等を表示する表示装置等を有する。検査装置1の各部は、制御装置70の制御下で連携して動作する。図1には、検査装置1の各部の動作を制御する、給水機制御部18、検査機制御部28、排水機制御部38、搬送機制御部58及び排斥機制御部68が示されている。これら各制御部に対応したそれぞれ独立した装置が用意されてもよいし、制御装置70が各制御部の機能を担ってもよい。
【0016】
〈検査装置の動作の概要〉
検査装置1は、制御装置70の制御下で、次のように動作する。すなわち、搬送機50の検査コンベア53は、被検査缶90を給水機10、検査機20、排水機30、排斥機60の順に搬送する。ここで、検査コンベア53の載置面531には、搬送方向に沿って、一定間隔で被検査缶90が配置される。この間隔は、給水機10、検査機20、排水機30及び排斥機60の設置間隔に対応する。この間隔は、例えば100mm程度であってもよい。検査コンベア53は、この間隔を一単位として被検査缶90を間歇的に搬送する。搬送機50の搬入ターレット52が、停止している検査コンベア53の載置面531の所定位置に被検査缶90を配置することで、被検査缶90は所定間隔で搬送されることになる。
【0017】
図2は、検査装置1の動作の概略を示すフローチャートである。ステップS1において、検査コンベア53は、給水機10、検査機20及び排水機30のそれぞれの真下に被検査缶90がそれぞれ配置されるように、被検査缶90を一単位分だけ位置送りして停止する。
【0018】
この状態で、搬入ターレット52、給水機10、検査機20、排水機30及び排斥機60がそれぞれ並列に動作する。すなわち、ステップS2において、搬送機50の搬入ターレット52は、被検査缶90を検査コンベア53の載置面531の所定の位置に設置する。ステップS3において、給水機10は、被検査缶90の内部に検査液を供給する。ステップS4において、検査機20は、被検査缶90の電流に関する値の測定を含む検査を行う。ステップS5において、排水機30は、被検査缶90の内部の検査液を排出する。ステップS6において、排斥機60は、検査機20による検査で異常と判定された被検査缶90が排斥機60のところまで搬送されたときには当該被検査缶90を排斥し、その他の場合には何も行わない。
【0019】
搬入ターレット52、給水機10、検査機20、排水機30及び排斥機60の全ての動作が完了したら、処理はステップS7に進む。ステップS7において、制御装置70は、停止指示や装置の異常検出等があって停止するか否かを判定する。停止すると判定されたとき、制御装置70は、検査装置1の動作を停止させて処理を終了する。停止しないと判定されたとき、処理はステップS1に戻り、検査コンベア53は、再び一単位分だけ位置送りし、各被検査缶90を一つ下流の機械まで搬送する。
【0020】
すなわち、給水機10、検査機20、排水機30のそれぞれの真下に被検査缶90がそれぞれ配置された状態で、給水機10は真下に配置された被検査缶90に検査液を供給し、検査機20は真下に配置された被検査缶90の検査を行い、排水機30は真下に配置された被検査缶90の検査液を排水する。続いて、被検査缶90が一つ下流の機械まで搬送されたら、給水機10は真下に配置された新たな被検査缶90に検査液を供給し、検査機20は真下に配置された給水機10で検査液が供給された被検査缶90の検査を行い、排水機30は真下に配置された検査機20での検査が終了した被検査缶90の検査液を排水する。なお、給水機10、検査機20、排水機30のいずれかの真下に被検査缶90が配置されない場合は、被検査缶90が配置されている装置のみ動作を行う。
【0021】
以下、検査装置1の各部についてさらに説明する。
【0022】
[搬送機]
〈搬送機の構成〉
搬送機50について説明する。搬送機50は、入口コンベア51と、搬入ターレット52と、検査コンベア53と、搬送機制御部58とを備える。入口コンベア51は、被検査缶90を他の部分から検査装置1内へと搬入する搬送装置である。入口コンベア51は、例えば、ベルトコンベアである。搬入ターレット52は、所定の時間間隔で、被検査缶90を、入口コンベア51から受け取って、検査コンベア53の所定の位置に設置する。搬入ターレット52による検査コンベア53への搬送よりも入口コンベア51による搬入が多い場合に、入口コンベア51に被検査缶90が溜まり得る。入口コンベア51は、このような場合に被検査缶90を排斥する機構を備えていてもよい。
【0023】
検査コンベア53は、被検査缶90を給水機10、検査機20及び排水機30で処理されるように順に搬送する搬送装置である。検査コンベア53は、例えば、ベルトコンベアである。検査コンベア53は、コンベアを挟んで対向して水平に設けられた側面ガイド532を備える。側面ガイド532は、例えば、被検査缶90の中程の高さに設けられる。被検査缶90は、進行方向に対して両脇に設けられた側面ガイド532によって側方がガイドされて搬送される。給水機10、検査機20及び排水機30は、等間隔で配置されており、検査コンベア53は、搬入ターレット52によって位置決めされた被検査缶90を、上記の間隔に相当する距離だけ移動させることを、給水機10、検査機20及び排水機30による処理時間ごとに間歇的に行うように構成されている。
【0024】
搬送機制御部58は、制御装置70の制御下で、入口コンベア51、搬入ターレット52及び検査コンベア53の動作を制御するように構成されている。
【0025】
搬入ターレット52について、図1及び図3を参照してさらに説明する。図3は、上から見た搬入ターレット52部分の概略を模式的に示す図である。搬入ターレット52は、略円筒形状のターレット521を備える。ターレット521の中心軸は鉛直に設けられており、搬送機制御部58の制御下で駆動部526によってこの中心軸周りに回転するように構成されている。
【0026】
ターレット521の円周部の一部には、被検査缶90が嵌るように切り欠かれた形状を有する吸着部522が設けられている。この部分の側面には、吸引口523が設けられている。吸引口523には吸引機527が接続されている。吸引機527が吸引口523から吸引することで、搬入ターレット52は、吸着部522に嵌った被検査缶90の側面を吸引し、吸着部522で被検査缶90を保持することができる。
【0027】
ターレット521の円周部には、吸着部522に隣接して、半径が徐々に大きくなっており、滑らかな曲面を有する押出部524が設けられている。押出部524は、一定の半径を有する定径部525へと連なっている。押出部524は、吸引口523からの吸引を止めることで吸着部522から放された被検査缶90を、ターレット521の回転によってターレット521の半径方向外側に押し出す機能を有する。定径部525の半径は、被検査缶90を配置する位置に対応している。
【0028】
〈搬送機の動作〉
搬送機50の動作について説明する。入口コンベア51は、一定速度でその載置面に載せられた被検査缶90を搬送方向に搬送し続ける。入口コンベア51の幅方向については、被検査缶90の側面が当たるように設けられたガイド512によって規制される。搬入ターレット52のターレット521の定径部525が入口コンベア51の方を向いているとき、被検査缶90は、ターレット521によって塞き止められる。ターレット521の吸着部522が入口コンベア51の方を向いたとき、被検査缶90は、吸着部522に嵌り、搬入ターレット52へと受け渡される。
【0029】
図4A乃至図4Dは、搬入ターレット52による被検査缶90の搬送と位置決めについて説明するための図である。搬入ターレット52によって検査コンベア53の載置面531上の所定位置に被検査缶90が載置されるまで、検査コンベア53は停止している。
【0030】
図4Aに示すように、入口コンベア51によって両側のガイド512の間を搬送された被検査缶90は、ターレット521の吸着部522に導入される。この状態で、吸引機527を用いて吸引することで、被検査缶90は、ターレット521の吸着部522に吸着されて保持される。ターレット521は、被検査缶90を保持した状態で、駆動部526によってその中心軸周りに約180度回転する。
【0031】
図4Bに示すように、被検査缶90が、ベルトコンベアである検査コンベア53の載置面531の幅方向の所定位置に達したとき、吸引機527による吸引が止められ、被検査缶90はターレット521から解放される。被検査缶90がターレット521から放された後、ターレット521は、ゆっくりとさらに回転する。このとき、図4Cに示すように、被検査缶90は、ターレット521の押出部524によって、ターレット521の中心から離れる方向に押し出される。このとき、ターレット521の回転方向前側に設けられた第1ガイド528によって、被検査缶90は、載置面531の幅方向についてガイドされる。
【0032】
図4Dは、ターレット521がさらに回転して被検査缶90が定径部525と接触するようになった状態を示す図である。ここに至るまでに、押出部524と、第1ガイド528と、第1ガイド528に対向して設けられた第2ガイド529とによって、被検査缶90は、検査コンベア53の載置面531の所定位置に配置される。その後、ターレット521は、吸着部522が次の被検査缶90を受け取れる図4Aに示す位置まで回転する。この回転は、押出部524で被検査缶90を押し出すときよりも速くてもよい。
【0033】
上述の通り、搬入ターレット52によって、検査コンベア53の載置面531の所定位置に被検査缶90が配置された後に、検査コンベア53は、動作して被検査缶90を搬送方向に一単位分搬送して給水機10の下へと配置する。検査コンベア53が所定位置まで移動して停止したら、搬入ターレット52は、次の被検査缶90を検査コンベア53の載置面531に設置する。
【0034】
[給水機]
〈給水機の構成〉
給水機10について、図1及び図5を参照して説明する。図5は、ノズル12が被検査缶90の内部に挿入されて、検査液が被検査缶90に供給された状態の給水機10を模式的に示す図である。給水機10は、ノズル12の他に、液面センサ13と、給水機移動機構14と、検査液供給部16と、給水機制御部18と、シャッター19とを備える。
【0035】
ノズル12は、細長い形状を有するノズル本体121を有する。ノズル本体121の先端には、検査液を吐出する開口である吐出口122が設けられている。本実施形態では、吐出口122には、多孔質体123が設けられている。多孔質体123は、これに限らないが例えば、穴径が0.2mm程度の樹脂焼結多孔質体である。本実施形態では、検査液に界面活性剤が添加されていてもよく、多孔質体123が設けられることで、界面活性剤が添加された場合に検査液の表面張力が低下しても、吐出口122からの液垂れが防がれ得る。なお、検査液に界面活性剤が添加されることで、検査において、仮に内面膜に存在する欠陥が微小である場合にも、低下した表面張力によって当該微小な欠陥にも検査液が入り込むことができ、検査精度が向上することが期待される。
【0036】
液面センサ13は、ノズル12を介して供給された検査液が所定の量になったことを検出するためのセンサである。液面センサ13は、第1センサ電極131と、第2センサ電極132と、第1センサ電極131及び第2センサ電極132を保持する液面センサブラケット133とを有する。液面センサブラケット133に保持された第1センサ電極131及び第2センサ電極132は、検査液の供給時に、その先端が検査液を検出すべき位置となるように、被検査缶90の内部の上方の口近くに配置される。液面センサ13は、検査液が供給されて第1センサ電極131及び第2センサ電極132の両方が検査液に浸かったときに、検査液を介してこれら電極が電気的に導通することで、検査液が所定の高さまで供給されたことを検出できる。
【0037】
給水機移動機構14は、ノズル12及び液面センサ13を上下に移動させる。給水機移動機構14は、被検査缶90が搬送されるとき、ノズル12及び液面センサ13を被検査缶90の上方に位置させ、検査液を供給するとき、ノズル12及び液面センサ13を被検査缶90の内部に挿入するように下方に位置させる。ノズル12及び液面センサ13が上方に位置するとき、ノズル12等に付着した検査液が検査コンベア53に垂れることを防止するため、ノズル12等の直下にシャッター19が挿入される。シャッター19は、トレー状の形状を有している。シャッター19は、ノズル12等から垂れる検査液を受け止めて、周囲が検査液で汚染されることを防止する。シャッター19は、上方に位置するノズル12等の下に出された状態と、ノズル12等が被検査缶90の内部に挿入され得るように引き込まれた状態との間で、例えば水平に移動することができる。
【0038】
検査液供給部16は、ノズル12を介して被検査缶90内に注入される検査液を供給する。検査液供給部16は、タンク161とポンプ162と弁163とを有する。検査液は、タンク161に蓄えられている。検査液は、ポンプ162によってノズル12に供給される。本実施形態では、ポンプ162は、流量を変更できる。ポンプ162とノズル12との間には、弁163が設けられている。弁163は、これに限らないが例えば、エアオペレートバルブである。
【0039】
給水機制御部18は、制御装置70の制御下で、給水機10の各部の動作を制御するように構成されている。
【0040】
〈給水機の動作〉
給水機10の動作について説明する。給水機10の動作は、給水機制御部18の制御下で行われる。初期位置において、ノズル12及び液面センサ13は上方に位置しており、シャッター19がノズル12等の下に出た状態となっている。検査コンベア53によって被検査缶90が給水機10の下に配置されたときに行われる動作について、図6を参照して説明する。図6は、給水機10の動作例の概略を示すフローチャートである。
【0041】
ステップS101において、給水機制御部18は、シャッター19を移動させる。シャッター19は引き込まれて、ノズル12等の下が開けられる。ステップS102において、給水機制御部18は、給水機移動機構14を用いてノズル12及び液面センサ13を所定位置まで下降させる。液面センサ13の下降は、図5に示すように液面センサブラケット133が被検査缶90の上端91に接触して又は接触する直前に停止する。これにより、液面センサブラケット133に固定された第1センサ電極131及び第2センサ電極132の先端の位置が被検査缶90の上端91から所定距離下側の被検査缶90の内部の位置に固定される。この位置は、検査液の供給されるべき量に対応する位置である。ノズル12は、さらに下降し、図5に示すように、ノズル12の先端の吐出口122が、被検査缶90の底には当たらないが底に近い位置である所定の位置に達したときに停止する。
【0042】
ステップS103において、給水機制御部18は、検査液供給部16に、ノズル12を介して検査液を被検査缶90内に供給させる。すなわち、弁163が開き、ポンプ162が検査液をノズル12に送り出す。ここで、単位時間当たりの検査液の流量は、比較的小さい第1流量に設定される。
【0043】
ステップS104において、給水機制御部18は、ノズル12の先端の吐出口122が十分に検査液に浸かったか否かを判定する。吐出口122が検査液に浸かったか否かは、検査液の供給時間に基づいて判定されてもよいし、検査液の供給量に基づいて判定されてもよいし、ノズル本体121やその他の場所に各種センサを設けてその検出結果に基づいて判定されてもよい。吐出口122が検査液に浸かるまで、ステップS103の処理が繰り返され、第1流量で検査液が供給される。吐出口122が十分に検査液に浸かったと判定されたとき、処理はステップS105に進む。
【0044】
ステップS105において、給水機制御部18は、検査液供給部16に単位時間当たりの検査液の流量を、第1流量よりも大きい第2流量に変更させる。検査液供給部16は、第2流量で検査液を被検査缶90に供給する。
【0045】
ノズル12の吐出口122が検査液に浸かっていない状態で、比較的大きい時間当たり流量で検査液を供給すると、検査液が泡立つおそれがある。特に、検査液に界面活性剤が含まれているときは、この泡立ちが顕著となり得る。これに対して、吐出口122が検査液に浸かるまでは単位時間当たり流量が比較的小さい第1流量で検査液を供給することで、検査液が泡立つことを防止できる。また、ノズル12の吐出口122が検査液に浸かった状態では、上述の検査液の泡立ちが生じにくい。ノズル12の吐出口122が検査液に浸かったら検査液の単位時間たり流量が比較的大きい第2流量とすることで、検査液の供給に必要な時間を短くすることができる。
【0046】
ステップS106において、給水機制御部18は、液面センサ13が液面98を検出したか否かを判定する。検査液の供給により被検査缶90の内部の検査液の液面98が上昇していくと、やがて、液面センサ13の第1センサ電極131及び第2センサ電極132に達する。第1センサ電極131及び第2センサ電極132が共に検査液に浸かると、両電極間が電気的に導通する。両電極間の通電が確認できたとき、検査液の供給量が所定量に達したと判定される。液面98が検出されるまで、ステップS105の処理が繰り返され、第2流量で検査液が供給される。液面98が検出されたと判定されたとき、処理はステップS107に進む。ステップS107において、給水機制御部18は、検査液供給部16に検査液の供給を停止させる。すなわち、ポンプ162は検査液の送り出しを停止し、弁163が閉じる。なお、給水機10は、液面センサ13による液面98の検出がない場合にも、第2流量で検査液を供給している時間があらかじめ設定された所定時間が経過したときには検査液の供給が停止されるように構成されていてもよい。このように構成されていることで、液面センサ13が誤作動で反応しない場合にも、検査液が溢れることを防止することができる。
【0047】
ステップS108において、給水機制御部18は、給水機移動機構14を用いてノズル12及び液面センサ13を初期位置まで上昇させる。ステップS109において、給水機制御部18は、シャッター19を移動させる。シャッター19はノズル12等の下に配置される。シャッター19は、ノズル12等から垂れる検査液を受け止める。
【0048】
以上で、給水機10による検査液の供給に係る動作は終了する。以上のようにして、給水機10の下に配置された被検査缶90には、所定量の検査液が供給される。
【0049】
[検査機]
〈検査機の構成〉
検査機20について、図1及び図7を参照して説明する。図7は、第1電極21が被検査缶90の検査液に浸かり、第2電極22が被検査缶90の缶体に接触している、検査時の状態の検査機20を模式的に示す図である。検査機20は、第1電極21、第2電極22、及び測定回路26の他に、液面センサ23と、検査機移動機構24と、検査機制御部28と、シャッター29とを備える。
【0050】
第1電極21は、後に説明する理由で、比較的太くて大きな体積を有する。第1電極21の体積は、少なくとも給水機10のノズル12の体積よりも大きい。第2電極22は、第2電極支持部221に支持されている。第2電極22は、いくつ設けられていてもよい。第2電極22は、例えば、円周方向に均等に3個設けられていてもよい。
【0051】
液面センサ23は、検査時の検査液の液面が被検査缶90内の所定の高さになっていることを確認するためのセンサである。液面センサ23は、第1センサ電極231と、第2センサ電極232と、第1センサ電極231及び第2センサ電極232を保持する液面センサブラケット233とを有する。液面センサブラケット233に保持された第1センサ電極231及び第2センサ電極232は、その先端が検査液を検出すべき位置となるように、被検査缶90の内部の上方の口近くに配置される。液面センサ23は、第1センサ電極231及び第2センサ電極232の両方が検査液に浸かったときに、検査液を介してこれら電極が電気的に導通することで、検査液の液面が所定の高さ以上であることを検出できる。
【0052】
検査機移動機構24は、第1電極21、第2電極22及び液面センサ23を上下に移動させる。検査機移動機構24は、被検査缶90が搬送されるとき、第1電極21、第2電極22及び液面センサ23を被検査缶90の上方に位置させ、検査を実行するとき、第1電極21、第2電極22及び液面センサ23を下方に位置させる。このように、検査機移動機構24は、第1電極21を被検査缶90の内部に挿入及び内部から抜去するように移動させる電極移動機構として機能する。
【0053】
第1電極21、第2電極22及び液面センサ23が上方に位置するとき、第1電極21等に付着した検査液が検査コンベア53に垂れることを防止するため、第1電極21等の直下にシャッター29が挿入される。シャッター29は、トレー状の形状を有している。シャッター29は、第1電極21等から垂れる検査液を受け止めて、周囲が検査液で汚染されることを防止する。シャッター29は、上方に位置する第1電極21等の下に出された状態と、第1電極21が被検査缶90の内部に挿入されるなど、第1電極21、第2電極22及び液面センサ23が下方に位置できるように引き込まれた状態との間で、例えば水平に移動することができる。
【0054】
測定回路26は、上述の通り、電圧源261及び電流計262を有する。電圧源261は、被検査缶90の内部の検査液に浸された第1電極21と被検査缶90の缶体に接続された第2電極22との間に電圧を印加し、電流計262は、このときに、第1電極21と第2電極22との間を流れる電流に関する値を測定するように構成されている。
【0055】
検査機制御部28は、制御装置70の制御下で、検査機20の各部の動作を制御するように構成されている。
【0056】
〈検査機の動作〉
検査機20の動作について説明する。検査機20の動作は、検査機制御部28の制御下で行われる。初期位置において、第1電極21、第2電極22及び液面センサ23は上方に位置しており、シャッター29が第1電極21等の下に出た状態となっている。検査コンベア53によって被検査缶90が検査機20の下に配置されたときに行われる動作について図8を参照して説明する。図8は、検査機20の動作例の概略を示すフローチャートである。
【0057】
ステップS201において、検査機制御部28は、シャッター29を移動させる。シャッター29は引き込まれて、第1電極21等の下が開けられる。ステップS202において、検査機制御部28は、検査機移動機構24を用いて第1電極21、第2電極22、及び液面センサ23を下降させる。ステップS203において、検査機制御部28は、第2電極22及び液面センサ23の下降を所定位置で停止させる。まず、液面センサ23の下降は、図7に示すように液面センサブラケット233が被検査缶90の上端91に接触して又は接触する直前に停止する。これにより、液面センサブラケット233に固定された第1センサ電極231及び第2センサ電極232の先端の位置が被検査缶90の上端91から所定距離下側の被検査缶90の内部の位置に固定される。続いて、第2電極22の下降は、図7に示すように第2電極22が被検査缶90の上端91に接触して停止する。このとき第2電極22は、被検査缶90の上端91のトリム断面の金属露出部に接触する。これにより、第2電極22と被検査缶90の缶体とは電気的に接続される。ここで、液面センサ23の第1センサ電極231及び第2センサ電極232の先端の位置は、検査時の検査液の液面98に対応する位置である。この位置は、これに限らないが例えば、被検査缶90の上端91からの距離が5mm未満であるような位置である。この位置は、給水機10によって供給された後に搬送されるときの検査液の液面の位置よりも高い位置である。
【0058】
第1電極21が引き続き下降している状態で、ステップS204において、検査機制御部28は、液面センサ23が液面98を検出したか否かを判定する。液面98が検出されるまで、第1電極21の下降が継続される。第1電極21が下がって検査液内に沈んでいき浸かっている部分の体積が増すに従って、検査液の液面98は上昇する。検査液の液面98は、やがて液面センサ13の第1センサ電極131及び第2センサ電極132に達する。第1センサ電極131及び第2センサ電極132が共に検査液に浸かると、両電極間が電気的に導通し、液面98が検出されたと判定される。液面98が検出されたと判定されたとき、処理はステップS205に進む。ステップS205において、検査機制御部28は、第1電極21の下降を停止させる。
【0059】
ステップS206において、検査機制御部28は、第1電極21と第2電極22との間に電圧を印加し、第1電極21と第2電極22との間を流れる電流に関する値を測定する。ステップS206において、検査機制御部28は、測定された電流に関する値に基づいて、被検査缶90の内面膜の状態について判定する。例えば、内面膜に穴が開いているなどの異常の有無を判定する。検査機制御部28は、測定された電流に関する値、被検査缶90の内面膜の状態についての判定結果等の情報を、制御装置70に送信する。制御装置70は、取得した情報を記録する。また、制御装置70は、内面膜に異常があると判定された被検査缶90の情報を排斥機60の排斥機制御部68に送信する。なお、検査機制御部28は測定された電流に関する値を制御装置70に送信し、検査機制御部28の代わりに制御装置70が被検査缶90の内面膜の状態について判定してもよい。
【0060】
この検査では、原理的に、被検査缶90の内部の検査液に浸かっている範囲のみ検査が可能である。第1センサ電極131及び第2センサ電極132の先端を被検査缶90の上端91に十分に近い位置に配置することで、検査時の検査液の液面98を、被検査缶90内の十分高い位置に設定することができる。仮に、給水機10によって、被検査缶90の上端91近くまで検査液を満たしてしまうと、その後の検査機20への被検査缶90の搬送時などに液面98が揺れて、検査液が被検査缶90から零れるおそれがある。これに対して、本実施形態では、給水機10は、搬送時などにも検査液が被検査缶90から溢れない程度に液面98が被検査缶90の上端91よりも十分に低い位置となるように検査液を供給する。そして、検査機20の下まで被検査缶90が搬送されて検査をする際に、比較的大きな体積を有する第1電極21を検査液に沈めることで、検査液の液面98を十分高い位置まで上昇させる。このようにして、検査機20は、検査液が零れることなく、被検査缶90内の十分に高い位置まで、検査を行うことができる。また、給水機10での検査液の供給量がばらついた場合でも、検査機20は、検査範囲を安定させることができる。
【0061】
ステップS208において、検査機制御部28は、検査機移動機構24を用いて第1電極21、第2電極22及び液面センサ23を初期位置まで上昇させる。ステップS209において、検査機制御部28は、シャッター29を移動させる。シャッター29は第1電極21等の下に配置される。シャッター29は、第1電極21等から垂れる検査液を受け止める。
【0062】
以上で、検査機20による検査に係る動作は終了する。以上のようにして、検査機20は、その下に配置された被検査缶90に係る検査を実行する。
【0063】
[排水機]
〈排水機の構成〉
排水機30について、図1及び図9を参照して説明する。図9は、検査液の吸引のために第1ノズル32及び第2ノズル33が被検査缶90の内部に挿入されて、被検査缶90内の検査液が排出された状態の排水機30を模式的に示す図である。図9は、排斥機60側から搬送方向と反対方向に排水機30を見たときを示す模式図である。排水機30は、第1ノズル32及び第2ノズル33の他に、傾斜機構31と、排水機移動機構34と、吸出し装置36と、排水機制御部38と、シャッター39とを備える。
【0064】
第1ノズル32は、その先端に吸水口321を有し、比較的小さい内径を有して鉛直方向に伸びる細長い形状を有する。被検査缶90内に検査液ができるだけ残らないように検査液を吸引するために、第1ノズル32の吸水口321は、被検査缶90の最も低い位置である接地部92に挿入される。被検査缶90は、鉛直に立っている被検査缶90の接地部92に鉛直に伸びる第1ノズル32を到達させようとすると被検査缶90の上端91部に第1ノズル32が接触してしまう形状を有する。そこで、本実施形態では、後述するように被検査缶90を傾ける傾斜機構31を備える。第1ノズル32は、傾いた被検査缶90に挿入される。
【0065】
第2ノズル33は、その先端付近に吸水口331を有し、比較的大きい内径を有して鉛直方向に伸びる細長い形状を有する。第2ノズル33の吸水口331の位置は、第1ノズル32の吸水口321よりも高い位置に固定される。
【0066】
傾斜機構31は、検査液の吸引時に鉛直に伸びる第1ノズル32が被検査缶90の接地部92に到達できるように、図9に示すように被検査缶90を傾ける。このため、傾斜機構31は、検査コンベア53を挟んで対向して設けられた第1押込部311と第2押込部312とを有する。第1押込部311は、例えばエアシリンダ等有するアクチュエータを備え、被検査缶90の下部を押し込むように構成されている。被検査缶90の上部又は中央部は、検査コンベア53を挟んで対向して設けられた側面ガイド532によって支持されている。したがって、第1押込部311が被検査缶90の下部を押し込むと、被検査缶90は傾く。被検査缶90が傾いたら、第1ノズル32及び第2ノズル33は、被検査缶90内に挿入される。
【0067】
第1押込部311と対向する第2押込部312は、例えば、エアシリンダ等有するアクチュエータを備え、被検査缶90の下部を押し込むように構成されている。検査液の排水が終わり、第1ノズル32及び第2ノズル33が上昇して被検査缶90から抜き取られた後、第1押込部311が引っ込み、第2押込部312が被検査缶90の下部を押し込むことで、被検査缶90は再び鉛直に立つ。
【0068】
排水機移動機構34は、第1ノズル32及び第2ノズル33を上下に移動させる。排水機移動機構34は、被検査缶90が搬送されるとき、第1ノズル32及び第2ノズル33を被検査缶90の上方に位置させ、検査液を吸引するとき、第1ノズル32及び第2ノズル33を下方に位置させる。このように、排水機移動機構34は、傾斜機構31によって傾けられた被検査缶90の底部まで第1ノズル32の先端を鉛直方向に移動させるノズル移動機構として機能する。
【0069】
第1ノズル32及び第2ノズル33が上方に位置するとき、第1ノズル32及び第2ノズル33に付着した検査液が検査コンベア53に垂れることを防止するため、第1ノズル32及び第2ノズル33の直下にシャッター39が挿入される。シャッター39は、トレー状の形状を有している。シャッター39は、第1ノズル32及び第2ノズル33から垂れる検査液を受け止めて、周囲が検査液で汚染されることを防止する。シャッター39は、上方に位置する第1ノズル32及び第2ノズル33の下に出された状態と、第1ノズル32及び第2ノズル33が被検査缶90の内部に挿入されるときの引き込まれた状態との間で、例えば水平に移動することができる。
【0070】
吸出し装置36は、第1ノズル32及び第2ノズル33を介して検査液を吸引するための装置である。吸出し装置36は、切替部361とタンク362と吸引機363とを備える。第1ノズル32と第2ノズル33とは、それぞれ切替部361を介して、タンク362に接続されている。タンク362には、ポンプ、エジェクタ等の吸引機363が接続されており、吸引機363による吸引により、第1ノズル32及び第2ノズル33を介して吸引された検査液がタンク362に溜まるように、吸出し装置36は構成されている。切替部361には、例えば、第2ノズル33への流路を開閉するエアオペレートバルブ等の弁3611が設けられている。吸引時に、この弁3611を開くと第1ノズル32及び第2ノズル33を介して検査液が吸引され、この弁3611を閉じると第1ノズル32のみを介して検査液が吸引される。
【0071】
排水機制御部38は、制御装置70の制御下で、排水機30の各部の動作を制御するように構成されている。
【0072】
〈排水機の動作〉
排水機30の動作について説明する。排水機30の動作は、排水機制御部38の制御下で行われる。初期位置において、第1ノズル32及び第2ノズル33は上方に位置しており、シャッター39が第1ノズル32及び第2ノズル33の下に出た状態となっている。検査コンベア53によって被検査缶90が排水機30の下に配置されたときに行われる動作について図10を参照して説明する。図10は、排水機30の動作例の概略を示すフローチャートである。
【0073】
ステップS301において、排水機制御部38は、シャッター39を移動させる。シャッター39は引き込まれて、第1ノズル32及び第2ノズル33の下が開けられる。
【0074】
ステップS302において、排水機制御部38は、傾斜機構31に被検査缶90を傾けさせる。すなわち、傾斜機構31の第1押込部311は、被検査缶90の下部を押し込む。
【0075】
ステップS303において、排水機制御部38は、排水機移動機構34を用いて第1ノズル32及び第2ノズル33を所定位置まで下降させる。ここで、第1ノズル32は、その先端の吸水口321が被検査缶90の最も低い位置である接地部92に位置するように調整される。第2ノズル33は、その先端の吸水口331が第1ノズル32の先端よりも高い場所に位置するように調整される。
【0076】
ステップS304において、排水機制御部38は、吸出し装置36に検査液を吸引させる。このとき、吸出し装置36の切替部361は、第2ノズル33につながる配管の弁3611を開き、第1ノズル32及び第2ノズル33の両方をタンク362に接続する。したがって、第1ノズル32及び第2ノズル33の両方から検査液が吸引されて被検査缶90から排出される。なお、検査液の吸引は、第1ノズル32及び第2ノズル33の下降中から開始されてもよい。
【0077】
ステップS305において、排水機制御部38は、検査液の液面が第2ノズル33の吸水口331よりもわずかに高い所定の位置まで下がったか否かを判定する。検査液の液面が所定の位置まで下がったか否かは、検査液の吸引時間に基づいて判定されてもよいし、検査液の排出量に基づいて判定されてもよいし、第2ノズル33やその他の場所に各種センサを設けてその検出結果に基づいて判定されてもよい。検査液の液面が所定の位置まで下がるまで、ステップS304の処理が繰り返され、第1ノズル32及び第2ノズル33から検査液が排出される。検査液の液面が所定の位置まで下がったと判定されたとき、処理はステップS306に進む。
【0078】
ステップS306において、排水機制御部38は、吸出し装置36の切替部361に、第2ノズル33につながる配管の弁3611を閉じさせ、第1ノズル32のみをタンク362に接続させる。したがって、第1ノズル32のみから検査液が吸引されて被検査缶90から排出される。この流路の切り替えは、第2ノズル33の吸水口331が検査液に浸かっていない状態で第2ノズル33をからも吸引すると、空気を吸い込み検査液を吸引できないために行われる。このように、検査液の液面が低くなったら被検査缶90の接地部92まで届くように外径が小さい第1ノズル32が用いられる。一方、検査液の液面が高い間は、内径が大きい第2ノズル33も用いられる。このようにして、検査液の排出に要する時間を短くすることができる。
【0079】
ステップS307において、排水機制御部38は、検査液の液面が第1ノズル32の吸水口321の位置まで下がって排水が完了したか否かを判定する。排水が完了したか否かは、検査液の吸引時間に基づいて判定されてもよいし、検査液の排出量に基づいて判定されてもよいし、第1ノズル32等に設けられたセンサの検出結果に基づいて判定されてもよい。排水が完了するまで、ステップS306の処理が繰り返され、第1ノズル32から検査液が排出される。排水が完了したと判定されたとき、処理はステップS308に進む。
【0080】
ステップS308において、排水機制御部38は、排水機移動機構34を用いて第1ノズル32及び第2ノズル33を初期位置まで上昇させる。ステップS309において、排水機制御部38は、シャッター39を移動させる。シャッター39は第1ノズル32及び第2ノズル33の下に配置される。シャッター39は、第1ノズル32及び第2ノズル33から垂れる検査液を受け止める。
【0081】
ステップS310において、排水機制御部38は、傾斜機構31に被検査缶90の傾きを戻させる。すなわち、傾斜機構31の第1押込部311は引き戻され、第2押込部312は押し出されて被検査缶90が鉛直に立つまで被検査缶90の下部を押し込み、その後、第2押込部312は引き戻される。
【0082】
以上で、排水機30による検査液の排出に係る動作は終了する。以上のようにして、排水機30の下に配置された被検査缶90は、その内部の検査液が排出される。
【0083】
被検査缶90から排出されてタンク362に溜まった検査液は、給水機10の検査液供給部16のタンク161に戻されて、再利用され得る。
【0084】
[排斥機]
〈排斥機の構成〉
図1に示すように、排斥機60は、検査コンベア53の側方に設けられた排斥部61と、検査コンベア53を挟んで排斥部61と反対側に設けられた排斥路を構成するシュート62と、排斥部61の動作を制御する排斥機制御部68とを有する。排斥部61は、例えば空気の吹き出し口を有する。排斥部61は、排斥機制御部68の制御下で、排斥部61の前に配置された被検査缶90に対して空気を吹き付けることができるように構成されている。
【0085】
〈排斥機の動作〉
排斥機60の排斥機制御部68は、制御装置70から上述の検査機20による検査結果に関する情報を取得する。排斥機制御部68は、取得した情報に基づいて、排斥機60の位置に配置された被検査缶90が異常を有しているか否かを判定する。この被検査缶90が異常を有しているとき、排斥機制御部68は、排斥部61に被検査缶90に対して空気を吹き付けさせる。排斥部61によって空気が吹き付けられると、被検査缶90は、シュート62の方向に飛ばされて、この被検査缶90は、シュート62を通って排斥される。排斥機60の位置に配置された被検査缶90が異常を有していないと判定されたとき、排斥機制御部68は、排斥部61を動作させない。その結果、この被検査缶90は、検査コンベア53によって引き続き搬送される。すなわち、正常であると判定された被検査缶90と異常が検出された被検査缶90とが分離される。
【0086】
なお、排斥部61は、空気を吹き付けることによって被検査缶90を操作する例を示したがこれに限らない。排斥部61は、アクチュエータを有しており、被検査缶90を押し出したり、掴み上げたり等を行うように構成されていてもよい。
【0087】
[検査装置について]
本実施形態に係る検査装置1によれば、機械によって全ての処理が行われるので、作業者に負担が掛からない。このため、高頻度で検査を行うことができる。例えば、1分間に2個の被検査缶90の検査が行われ得る。したがって、缶の製造工程において不良が発生した場合に、速やかに不良缶を発見し、対処することができる。
【0088】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0089】
1:検査装置
10:給水機、12:ノズル、121:ノズル本体、122:吐出口、123:多孔質体、13:液面センサ、131:第1センサ電極、132:第2センサ電極、133:液面センサブラケット、14:給水機移動機構、16:検査液供給部、161:タンク、162:ポンプ、163:弁、18:給水機制御部、19:シャッター
20:検査機、21:第1電極、22:第2電極、221:第2電極支持部、23:液面センサ、231:第1センサ電極、232:第2センサ電極、233:液面センサブラケット、24:検査機移動機構、26:測定回路、261:電圧源、262:電流計、28:検査機制御部、29:シャッター
30:排水機、31:傾斜機構、311:第1押込部、312:第2押込部、32:第1ノズル、321:吸水口、33:第2ノズル、331:吸水口、34:排水機移動機構、36:吸出し装置、361:切替部、362:タンク、363:吸引機、38:排水機制御部、39:シャッター
50:搬送機、51:入口コンベア、512:ガイド、52:搬入ターレット、521:ターレット、522:吸着部、523:吸引口、524:押出部、525:定径部、526:駆動部、527:吸引機、528:第1ガイド、529:第2ガイド、53:検査コンベア、531:載置面、532:側面ガイド、58:搬送機制御部
60:排斥機、61:排斥部、62:シュート、68:排斥機制御部
70:制御装置
90:被検査缶、91:上端、92:接地部

図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8
図9
図10