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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172915
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
G01N35/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090974
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蔵野 智昭
(72)【発明者】
【氏名】金原 健
(72)【発明者】
【氏名】大森 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】藤原 貴文
(72)【発明者】
【氏名】山形 佳史
(72)【発明者】
【氏名】小島 秀仁
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CB04
2G058CD04
2G058CE08
2G058GE10
(57)【要約】
【課題】自動分析装置の不具合の解析処理の効率を向上させること。
【解決手段】本実施形態に係る自動分析装置は、分析部と、収集部と、特定部と、記憶制御部とを備える。分析部は、試料の分析を行なう。収集部は、分析部が動作している間、分析部から試料の分析に係る動作状態及び試料の分析結果を示す情報を含むデータを収集する。記憶制御部は、分析部に異常が発生したことが検知されると、収集部が収集したデータから、異常検知のタイミング以前に収集された所定期間分のデータを第1記憶部に記憶する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の分析を行なう分析部と、
前記分析部が動作している間、前記分析部から前記試料の分析に係る動作状態及び前記試料の分析結果を示す情報を含むデータを収集する収集部と、
前記分析部に異常が発生したことが検知されると、前記収集部が収集した前記データから、異常検知のタイミング以前に収集された所定期間分のデータを第1記憶部に記憶する記憶制御部と、
を備える自動分析装置。
【請求項2】
前記収集部は、収集した前記データを揮発性の第2記憶部に一時記憶し、
前記記憶制御部は、異常検知のタイミング以前に収集された所定期間分のデータを前記第2記憶部から読み出して、不揮発性の前記第1記憶部に記憶する。
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記収集部は、収集した前記データを前記第2記憶部の所定の記憶領域に記憶し、当該記憶領域の終端まで前記データを記憶した場合、当該記憶領域の先頭に戻って前記データを既に記憶されているデータの上に上書き記憶する、
請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記収集部は、同一のタイミングで収集した複数の前記データを所定時間単位で前記第2記憶部に一時記憶する、
請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記収集部は、前記分析部に異常が発生したことが検知された後も前記データの収集を継続し、
前記記憶制御部は、前記分析部に異常が発生したことが検知されると、異常検知のタイミング以前に収集された所定期間分のデータとともに、異常検知のタイミング以後に収集された所定期間分のデータを第1記憶部に記憶する、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記収集部は、前記試料と試薬とを反応させる反応管毎の前記試料の測定結果の履歴を含む前記データを収集する、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記収集部は、測定項目毎の測定結果の履歴を含む前記データを収集する、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記収集部は、試薬毎の測定結果の履歴を含む前記データを収集する、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項9】
前記記憶制御部は、前記所定期間をユーザの指示に従って設定する、
請求項1乃至8の何れか1項に記載の自動分析装置。
【請求項10】
異常の要因毎に、前記第1記憶部に記憶する1又は複数の前記データを設定する設定部を更に備える、
請求項1乃至8の何れか1項に記載の自動分析装置。
【請求項11】
前記データに基づき、前記分析部の不具合の原因の候補を提示する提示部を更に備える、
請求項1乃至8の何れか1項に記載の自動分析装置。
【請求項12】
前記分析部に異常が発生したことを検知する検知部を更に備え、
前記記憶制御部は、前記検知部が前記分析部に異常が発生したことを検知した場合、前記収集部が収集した前記データから、前記検知部が前記分析部に異常が発生したことを検知した異常検知のタイミング以前に収集された所定期間分のデータを第1記憶部に記憶する、
請求項1乃至8の何れか1項に記載の自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体試料(例えば、血液や尿等)について、各種検査項目(例えば、電解質、酵素、蛋白質等)の分析を行う自動分析装置が知られている。このような自動分析装置に不具合が生じた場合、自動分析装置の動作履歴データを解析して不具合の原因を調査することが行われている。従来、不具合を解析する技術として、動作の履歴を記録した動作履歴データを、異常発生時又は定期的にサーバに送り、動作履歴データに付加した動作命令ごとのタグを頼りに不具合の調査を行う技術が提案されている。
【0003】
ところで、一般的に、不具合の解析は、様々な内部データから総合的に判断することが求められる。また、不具合の真の原因が表面的な挙動とリンクしていない場合があることが経験的に知られている。このため、従来技術では、膨大な動作履歴データを検索することになる可能性がある。つまり、不具合の解析処理の効率化については改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-63948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、自動分析装置の不具合の解析処理の効率を向上させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決される課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る自動分析装置は、分析部と、収集部と、特定部と、記憶制御部とを備える。分析部は、試料の分析を行なう。収集部は、分析部が動作している間、分析部から試料の分析に係る動作状態及び試料の分析結果を示す情報を含むデータを収集する。記憶制御部は、分析部に異常が発生したことが検知されると、収集部が収集したデータから、異常検知のタイミング以前に収集された所定期間分のデータを第1記憶部に記憶する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る自動分析装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、実施形態に係る自動分析装置の分析装置の構成の一例を示す斜視図である。
図3図3は、実施形態に係るセンシングデータの記憶処理の一例を説明する図である。
図4図4は、実施形態に係る測定結果データの記憶処理の一例を説明する図である。
図5図5は、実施形態に係る反応管の水ブランク値の推移の一例を説明する図である。
図6図6は、実施形態に係る反応管の水ブランク値の推移の一例を説明する図である。
図7図7は、実施形態に係る異常発生時に不揮発性の記憶媒体に記憶するデータの設定処理の一例を説明する図である。
図8図8は、実施形態に係る自動分析装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、実施形態に係る自動分析装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、実施形態に係る自動分析装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図11図11は、実施形態に係る自動分析装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図12図12は、実施形態に係る自動分析装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、自動分析装置の実施形態について詳細に説明する。なお、実施形態は、以下の実施形態に限られるものではない。
【0009】
図1は、本実施形態に係る自動分析装置100の構成の一例を示すブロック図である。図1に示す自動分析装置100は、分析装置70と、駆動装置80と、処理装置90とを備えている。
【0010】
分析装置70は、各検査項目の標準試料や被検体から採取された被検試料(血液や尿などの生体試料)と、各検査項目の分析に用いる試薬との混合液を測定して、標準データや被検データを生成する。分析装置70は、分析部の一例である。また、分析装置70は、試料の分注、試薬の分注等を行う複数のユニットを備える。
【0011】
駆動装置80は、分析装置70の各ユニットを駆動する。
【0012】
処理装置90は、駆動装置80を制御して分析装置70の各ユニットを作動させる。
【0013】
処理装置90は、入力装置50と、出力装置40と、処理回路30と、記憶回路60とを有する。
【0014】
入力装置50は、キーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネルなどの入力デバイスを備え、各検査項目の分析パラメータを設定するための入力、被検試料の被検識別情報及び検査項目を設定するための入力等を行う。
【0015】
出力装置40は、プリンタと、ディスプレイとを備えている。プリンタは、処理回路30で生成されたデータの印刷を行う。ディスプレイは、CRT(Cathode Ray Tube)や液晶パネルなどのモニタであり、処理回路30で生成されたデータの表示を行う。
【0016】
記憶回路60は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、又は、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置などである。
【0017】
処理回路30は、システム全体を制御する。例えば、処理回路30は、図1に示すように、分析制御機能31、データ処理機能32、収集機能33、検知機能34、記憶制御機能35、及び設定機能36を実行する。
【0018】
ここで、分析制御機能31及びデータ処理機能32は、分析部の一例である。また、収集機能33は、収集部の一例である。また、検知機能34は、検知部の一例である。また、記憶制御機能35は、記憶制御部の一例である。
【0019】
分析制御機能31は、駆動装置80を制御して分析装置70の各ユニットを作動させる。
【0020】
データ処理機能32は、分析装置70で生成された標準データや被検データを処理して各検査項目の検量データや分析データを生成する。
【0021】
例えば、分析装置70により生成される標準データは、物質の量や濃度を判定するためのデータ(検量線あるいは標準曲線)を表し、分析装置70により生成される被検データは、被検試料を測定した結果のデータを表す。
【0022】
また、処理回路30から出力される検量データは、被検データと標準データとから導かれる物質の量や濃度などの測定結果を表すデータを表し、処理回路30から出力される分析データは、陽性又は陰性の判定結果を表すデータを表す。すなわち、検量データは、陽性又は陰性の判定結果を表す分析データを導くためのデータである。
【0023】
分析制御機能31及びデータ処理機能32は、協働して試料の分析処理を実行する。
【0024】
収集機能33は、分析装置70が動作している間、分析装置70から試料の分析に係る動作状態及び試料の分析結果を示す情報を含むデータを収集する。また、収集機能33は、分析装置70に異常が発生したことが検知された場合でも、所定期間データの収集を継続してもよい。収集機能33の動作については後述する。
【0025】
検知機能34は、分析装置70に異常が発生したことを検知する。例えば、検知機能34は、収集機能33が収集したデータが所定の条件を満たした場合に分析装置70に異常が発生したことを検知する。
【0026】
一例として、検知機能34は、収集機能33が収集した吸光度データが所定の上限値を超える場合(又は所定の下限値を下回る場合)に分析装置70に異常が発生したことを検知する。
【0027】
記憶制御機能35は、分析装置70に異常が発生したことが検知されると、収集機能33が収集したデータから、異常検知のタイミング以前に収集された所定期間分のデータを記憶回路60に含まれる不揮発性の記憶装置に記憶する。
【0028】
また、記憶制御機能35は、異常検知のタイミング以前に収集された所定期間分のデータともに、異常検知のタイミング以後に収集された所定期間分のデータを記憶回路60に含まれる不揮発性の記憶装置に記憶してもよい。
【0029】
例えば、記憶制御機能35は、所定期間分の後述する各種センサのセンシングデータや測定結果データ等を記憶回路60に含まれるHDDに記憶する。記憶制御機能35の動作については後述する。
【0030】
設定機能36は、分析装置70に異常が発生した時に不揮発性の記憶媒体に記憶するデータ(データの種別)を、エラー事象毎に設定する。例えば、設定機能36は、ユーザの設定指示に従い、分析装置70の異常発生時にHDDに記憶するデータの種別を、エラー事象毎に設定する。異常発生時に不揮発性の記憶媒体に記憶するデータの設定処理については後述する。
【0031】
ここで、例えば、処理回路30の構成要素が実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路60に記録されている。処理回路30は、各プログラムを記憶回路60から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路30は、図1の処理回路30内に示された各機能を有することとなる。
【0032】
なお、図1においては、単一の処理回路30にて、以下に説明する各処理機能が実現されるものとして説明するが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。
【0033】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。
【0034】
プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路60に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、記憶回路60にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込まれる。
【0035】
なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0036】
次いで、分析装置70の構成について説明する。図2は、図1の自動分析装置100の分析装置70の構成の一例を示す斜視図である。
【0037】
分析装置70は、複数の試料容器11を保持するサンプルディスク5を備えている。試料容器11は、各検査項目の標準試料や被検試料等の試料を収容する。
【0038】
分析装置70は、更に、複数の試薬容器6と、複数の試薬容器6の各々を格納する試薬庫1と、複数の試薬容器7と、複数の試薬容器7の各々を格納する試薬庫2とを備えている。試薬容器6、7は、試料に含まれる各検査項目の成分と反応する成分を含有する試薬を収容する。
【0039】
試薬庫1は、各検査項目の試薬容器6を回転可能に保持するターンテーブルである試薬ラック1aを備えている。試薬庫2は、各検査項目の試薬容器7を回転可能に保持するターンテーブルである試薬ラック2aを備えている。
【0040】
分析装置70は、更に、円周上に配置された複数の反応管3と、複数の反応管3の各々を回転可能に保持する反応ディスク4とを備えている。なお、図2に示す例では、3個の反応管3を収納する反応管ユニット3aが周方向に複数配列されている。ここで、反応管ユニット3aに収納される反応管3の数は、3個に限定されない。
【0041】
分析装置70は、更に、試料分注プローブ16と、試料分注アーム10と、試料分注ポンプ16aと、試料検出器16bと、洗浄槽16cとを備えている。試料分注プローブ16は、試料の分注を行う。
【0042】
具体的には、試料分注プローブ16は、サンプルディスク5に保持された試料容器11内の試料を検査項目毎に吸引して、当該検査項目の分析パラメータとして設定された量の試料を反応管3内へ吐出する。試料分注アーム10は、試料分注プローブ16を回転及び上下移動可能に支持する。
【0043】
試料分注ポンプ16aは、試料分注プローブ16に試料の吸引及び吐出を行わせる。試料検出器16bは、サンプルディスク5に保持された試料容器11内の試料の液面に、当該液面の上方から下降した試料分注プローブ16の先端部が接触したときに、試料容器11内の試料を検出したと判定する。
【0044】
具体的には、試料検出器16bは、試料分注プローブ16と電気的に接続され、試料分注プローブ16の先端部が試料容器11内の試料と接触したときの静電容量の変化により、試料容器11内の試料の液面を検出する。試料容器11内の試料の液面が検出されると、試料分注ポンプ16aは、試料分注プローブ16に試料の吸引及び吐出を行わせる。洗浄槽16cは、試料分注プローブ16を試料の分注終了毎に洗浄する。
【0045】
分析装置70は、更に、試薬分注プローブ14と、試薬分注アーム8と、試薬分注ポンプ14aと、試薬検出器14bと、洗浄槽14cと、撹拌子17と、撹拌アーム18と、洗浄槽17aとを備えている。試薬分注プローブ14は、試薬容器6内の試薬の分注を行う。
【0046】
具体的には、試薬分注プローブ14は、試薬ラック1aに保持された各検査項目の試薬容器6内の試薬を吸引して、当該検査項目の分析パラメータとして設定された量の試薬を、試料が分注された反応管3内に吐出する。試薬分注アーム8は、試薬分注プローブ14を回転及び上下移動可能に支持する。試薬分注ポンプ14aは、試薬分注プローブ14に試薬の吸引及び吐出を行わせる。
【0047】
洗浄槽14cは、試薬分注プローブ14を試薬の分注毎に洗浄する。撹拌子17は、反応管3内に分注された試料と試薬との混合液を撹拌する。撹拌アーム18は、撹拌子17を回転及び上下移動可能に支持する。洗浄槽17aは、撹拌子17を混合液の撹拌毎に洗浄する。
【0048】
分析装置70は、更に、試薬分注プローブ15と、試薬分注アーム9と、試薬分注ポンプ15aと、試薬検出器15bと、洗浄槽15cと、撹拌子19と、撹拌アーム20と、洗浄槽19aとを備えている。試薬分注プローブ15は、試薬容器7内の試薬の分注を行う。
【0049】
ここで、試薬分注プローブ15、試薬分注アーム9、試薬分注ポンプ15a、試薬検出器15b、洗浄槽15c、撹拌子19、撹拌アーム20、洗浄槽19aの機能は、それぞれ、試薬分注プローブ14、試薬分注アーム8、試薬分注ポンプ14a、試薬検出器14b、洗浄槽14c、撹拌子17、撹拌アーム18、洗浄槽17aの機能と同じであるため、説明を省略する。
【0050】
分析装置70は、更に、測定部13と、反応管洗浄ユニット12とを備えている。測定部13は、撹拌子17に撹拌された混合液を収容する反応管3や、撹拌子19に撹拌された混合液を収容する反応管3に、光を照射して混合液を測定する。
【0051】
具体的には、測定部13は、回転している測定位置の反応管3に光を照射し、この照射により反応管3内の試料及び試薬の混合液を透過した光を検出する。そして、測定部13は、検出した信号を処理してデジタル信号で表される標準データや被検データを生成して処理装置90の処理回路30に出力する。反応管洗浄ユニット12は、測定部13による測定が終了した反応管3内を洗浄する。
【0052】
駆動装置80は、分析装置70の各ユニットを駆動する。
【0053】
駆動装置80は、分析装置70のサンプルディスク5を駆動する機構を備え、サンプルディスク5を回転させることにより各試料容器11を回転させる。また、駆動装置80は、試薬庫1の試薬ラック1aを駆動する機構を備え、試薬ラック1aを回転させることにより各試薬容器6を回転させる。また、駆動装置80は、試薬庫2の試薬ラック2aを駆動する機構を備え、試薬ラック2aを回転させることにより各試薬容器7を回転させる。また、駆動装置80は、反応ディスク4を駆動する機構を備え、反応ディスク4を回転させることにより各反応管3を回転させる。
【0054】
また、駆動装置80は、試料分注アーム10を回転及び上下移動させる機構を備え、試料分注プローブ16を試料容器11と反応管3との間で移動させる。また、駆動装置80は、試料分注ポンプ16aを駆動する機構を備え、試料分注プローブ16に試料を分注させる。すなわち、試料分注プローブ16に試料容器11の試料を吸引させ、当該試料を反応管3に吐出させる。
【0055】
また、駆動装置80は、試薬分注アーム8、9を回転及び上下移動させる機構を備え、試薬分注プローブ14、15をそれぞれ試薬容器6、7と反応管3との間で移動させる。また、駆動装置80は、試薬分注ポンプ14a、15aを駆動する機構を備え、試薬分注プローブ14、15に試薬を分注させる。
【0056】
すなわち、試薬分注プローブ14、15に試薬容器6、7の試薬を吸引させ、当該試薬を反応管3に吐出させる。また、駆動装置80は、撹拌アーム18、20を駆動する機構を備え、撹拌子17、19を反応管3内に移動させる。そして、駆動装置80は、撹拌子17、19を駆動する機構を備え、反応管3内の試料及び試薬の撹拌を行わせる。
【0057】
処理装置90の分析制御機能31は、駆動装置80を制御して分析装置70の各ユニットを作動させる。
【0058】
次に、図3乃至図7を用いて、処理回路30の各機能の動作について説明する。まず、センシングデータの記憶処理について説明する。図3は、センシングデータの記憶処理の一例を説明する図である。
【0059】
図3の例では、RAM1、RAM2、RAM3、RAMnについては別々の記憶装置で構成されるものとするが、1つの記憶装置で構成してもよい。この場合、例えば、記憶装置の記憶領域をRAM1、RAM2、RAM3、RAMnに分割する。また、図3のRAM1、RAM2、RAM3、RAMn、HDD1は、記憶回路60に含まれるものとする。
【0060】
また、RAM1、RAM2、RAM3、RAMnは、例えば、揮発性のリードライト可能な記憶装置である。RAM1、RAM2、RAM3、RAMnは、第2記憶部の一例である。また、本実施形態では、RAMnは、エラー発生時にHDD1に記憶する所定期間分の複数のセンシングデータを保持することができる記憶容量を少なくとも有している。
【0061】
また、HDD1は、例えば、不揮発性のリードライト可能な記憶装置である。HDD1は、第1記憶部の一例である。また、HDD1は、RAM1、RAM2、RAM3、RAMnと比較して大きな記憶容量を有している。
【0062】
また、ライトポインタWP1は、RAM1におけるデータの記録位置を規定するものである。同様に、ライトポインタWP2は、RAM2におけるデータの記録位置を、ライトポインタWP3は、RAM3におけるデータの記録位置を、ライトポインタWPnは、RAMnにおけるデータの記録位置を規定するものである。
【0063】
図3の例では、収集機能33は、分析装置70が動作している間、センサ1のセンシングデータSD1、センサ2のセンシングデータSD2、画像データID1等のデータを収集する。センサとしては、試料の液面を検知する液面検知センサや光の散乱、吸収、偏向、蛍光等を計測する光センサ等が挙げられる。
【0064】
また、画像データとしては、試料分注プローブ16の分注位置付近に設置され、サンプル液面状態を監視したり、分注位置を調整したりするために設置された光学カメラ等の撮像機による撮像データ等が挙げられる。なお、図3では、3つのデータを図示しているが、収集するデータの数は3つに限定されるものではない。
【0065】
また、図3の例では、収集機能33は、センサ1のデータSD1を1秒一区切りとしてRAM1のライトポインタWP1が存在する記録領域に、データSD1-1として一時的に記録する制御を行う。また、収集機能33は、データSD1-1の記録が終了した場合、ライトポインタWP1を次の記録領域を表す位置へ移動させる処理を行う。そして、収集機能33は、データSD1の次の1秒間のデータを、データSD1-2としてRAM1に記録する制御を行う。
【0066】
なお、一区切りとする期間は1秒に限定されない。例えば、0.5秒一区切りとしてセンサのデータをRAMに一時的に記録してもよいし、2秒一区切りとしてセンサのデータをRAMに一時的に記録してもよい。
【0067】
また、収集機能33は、データSD1をRAM1へループ記録する。具体的には、収集機能33は、データSD1の記録処理を継続した結果、ライトポインタWP1がRAM1の記録領域の終端まで到達し、当該終端部分へのデータSD1の記録が終了した場合、ライトポインタWP1をRAM1記録領域の先頭に戻して旧データの上に、一区切りしたデータSD1をデータSD1-1として上書き記録する。
【0068】
上記と同様に、収集機能33は、センサ2のデータSD2を1秒一区切りとしてRAM2にループ記録し、画像データID1を1秒一区切りとしてRAM3にループ記録する。
【0069】
また、収集機能33は、複数の1秒単位のデータ(センシングデータSD1、センシングデータSD2、画像データID1等)について、同時刻のもの同士を1組としてパック化する。そして、収集機能33は、パック化したパックデータPD1をRAMnに記録する。RAMnは、パックデータを記録するためのRAMである。
【0070】
収集機能33は、RAMnについても、上述のRAM1と同様にパックデータのループ記録を行う。これにより、RAMnには、ループ記録可能な個数に対応する時間分のパックデータPD1-1~PD1-nが記録される。
【0071】
ここで、図3の例では、パックデータPD1-1は、RAMnの記録領域のうちの先頭部分に記録されたパックデータを表している。また、パックデータPD1-2は、RAMnの記録領域のうちの先頭から数えて2番目の部分に記録されたパックデータを表している。また、パックデータPD1-nは、RAMnの記録領域のうちの終端部分に記録されたパックデータを表している。
【0072】
また、分析装置70に異常が発生した場合、検知機能34は、分析装置70に異常が発生したことを検知する。検知機能34により分析装置70に異常が発生したことが検知されると、収集機能33は、RAMnへのパックデータPDの記録を、検知機能34により異常が検知された異常発生時点APから1分間継続する。収集機能33が異常発生時点APから1分間分のパックデータPD1を記録すると、記憶制御機能35は、RAMnに一時記録された異常発生時点1分前から異常発生時点までの1間分のデータB1MD、及び異常発生時点から異常発生時点の一分後までの1分間のデータA1MDを読み出し、HDD1にファイルF1として記憶する。
【0073】
このように、記憶制御機能35は、検知機能34による分析装置70の異常発生の検知に応じて、異常発生が検知された異常発生時点APを基点とする所定期間分の動作履歴を抽出したファイルF1を、不揮発性のHDD1に記憶する。なお、このとき、記憶制御機能35は、後述する測定結果データRD1も合わせてファイルF1として記憶してもよい。
【0074】
ところで、本実施形態では、上述したようにRAMnではループ記録が行われる。このため、異常発生時点APタイミングを基点とする所定期間分の動作履歴を表すパックデータPD1が、RAMnの先頭部分と末尾部分に分かれて記録されていることがある。この場合、記憶制御機能35は、パックデータPD1を時系列順に並び替えてHDD1にファイルF1として記憶する。
【0075】
また、ファイルF1の記憶後に、検知機能34により分析装置70の異常が検知された場合、記憶制御機能35は、上記と同様の処理を行ってファイルF2をHDD1に記憶する。更に、ファイルF2の記憶後に、検知機能34により分析装置70の異常が検知された場合、記憶制御機能35は、上記と同様の処理を行ってファイルF3をHDD1に記憶する。
【0076】
このように、記憶制御機能35は、検知機能34により分析装置70の異常が検知される毎に1つの所定期間分の動作履歴を抽出したファイルをHDD1に記憶する処理を行う。
【0077】
なお、図3の例では、記憶制御機能35は、異常発生時点の前後1分間分のデータをHDD1に記憶しているが、データを記憶する対象期間はこれに限定されない。例えば、記憶制御機能35は、異常発生時点の1分前から異常発生時点までのデータのみをHDD1に記憶してもよい。また、記憶制御機能35は、ユーザの入力操作に従い、データを記憶する対象期間を任意に設定できるようにしてもよい。
【0078】
次に、測定結果データの記憶処理について説明する。図4は、測定結果データの記憶処理の一例を説明する図である。
【0079】
図4のRAMmは、測定結果データを記録するための記憶装置である。なお、RAMmは、他のデータを記憶する記憶装置とは別の記憶装置として構成してもよいし、他のデータを記憶する記憶する記憶装置と同一の記憶装置であってもよい。
【0080】
図4の例では、RAMmは、ブロックB1~B5の5ブロック分のデータの記憶容量を有している。収集機能33は、1ブロックに全ての反応管3の測定結果データRD1の履歴を記録する。例えば、分析装置70が500個の反応管3を備える場合、収集機能33は、No.1~500までの反応管3の測定結果データRD1を1ブロックに記録する。
【0081】
なお、図4では、測定結果データRD1には、例えば、直前に測定された項目名、測定値、水ブランク測定結果、キャリオーバ回避洗浄の有無が含まれる。なお、測定結果データRD1には、これら以外のデータが含まれてもよいし、これらのデータのうちの一部が含まれていなくてもよい。
【0082】
図4の例では、ブロックB1~B5の各ブロックには夫々、反応管3毎の測定結果データを記録するためのデータ領域が予め設けられている。また、収集機能33は、測定結果データの記録位置を指示するライトポインタWPmが存在するデータ領域に測定結果データを一時的に記録する。また、収集機能33は、ライトポインタWPmが存在するデータ領域に測定結果データを記録した場合、ライトポインタWPmを次のデータ領域へ進める処理を行う。つまり、図4の例では、収集機能33は、反応管3単位でライトポインタWPmが存在するデータ領域に順次測定結果データの記録を行う。
【0083】
例えば、ブロックB3の反応管No.2の水ブランク測定が終了した場合、収集機能33は、ライトポインタWPmが存在する反応管No.2の位置に測定結果データを記録する。記録終了後、収集機能33は、反応管No.3の位置へライトポインタWPmを進める。
【0084】
なお、収集機能33は、反応管3の水ブランク測定が終了したタイミングで当該反応管3の測定結果データをRAMmに記録するため、反応管3の水ブランク測定を実行する目的で行われる反応ディスク4(図2参照)の回転動作と連動してライトポインタWPmを、水ブランク測定の対象となる反応管3に対応するデータ領域へ移動させてもよい。
【0085】
そして、ブロックB3のライトポインタWPmが最終反応管であるNo.500まで到達した場合、収集機能33は、ライトポインタWPmをブロックB4の反応管No.1の位置に進める。
【0086】
また、ライトポインタWPmがブロックB5の反応管No.500の位置に到達した場合、収集機能33は、ライトポインタWPmをブロックB1の反応管No.1の位置に戻し、ループ記録を継続する。
【0087】
また、検知機能34により分析装置70の異常の発生が検知されると、記憶制御機能35は、ブロックB1~B5に記録された全ての測定結果データRD1を、不揮発性のHDD1のファイルF1内に記憶する。具体的には、記憶制御機能35は、異常発生時点APの時点でブロックB1~B5に記録されている全ての測定結果データを測定結果データRD1としてHDD1のファイルF1内に記憶する。
【0088】
なお、記憶制御機能35は、ブロックB1~B5に記録された全ての測定結果データを時系列順に並び替えて測定データRD1としてHDD1のファイルF1内に記憶してもよい。また、図4の例では、記憶制御機能35は、測定結果データRD1をHDD1のファイルF1内に記憶するが、測定結果データRD1の記録先はファイルF1に限定されない。例えば、記憶制御機能35は、センシングデータを記憶するファイルとは別のファイル内に測定データRD1を記憶してもよい。
【0089】
ところで、上記では実際の異常が発生した後の測定結果データの保存方法について説明したが、RAMmに記憶される測定結果データは、異常発生の予測に使用することも可能である。ここで、図4のRAMmでは、ブロックB1~B5の同一反応管のデータ、または同一項目のデータを時系列的にさかのぼって確認することが可能である。
【0090】
したがって、ブロックB1~B5の同一反応管のデータ、または同一項目のデータをトレースすることで、例えば、同一反応管で水ブランク値の低下が複数回発生時(反応管3の不良)、同一反応管の水ブランク値が連続して低下する(ランプ出力低下のエラーの事前告知)、同一試薬で測定結果異常が連続して発生(試薬の劣化)、同一項目測定後の反応管水ブランク値が低下や測定結果異常(反応管洗浄機能の異常、アルカリ洗剤の希釈が不十分等)、キャリオーバ回避洗浄後の測定結果が異常(キャリオーバ回避洗剤の劣化、配置間違い)等の分析装置70の異常の種別を検出することができる。
【0091】
また、分析制御機能31は、検出された分析装置70の異常の種別をエラーの要因の候補としてユーザに報知したり、故障事前予測として報知したりすることもできる。この場合の分析制御機能31は、提示部の一例である。
【0092】
ここで、図5は、反応管の水ブランク値の推移の一例を説明する図である。図5は、図4の反応管No.1の水ブランク値の推移を表している。また、図5の縦軸は、水ブランク値、横軸は、反応管No.1の水ブランク値が記録されたブロックを表している。水ブランク値は、例えば、反応管3に水のみを入れた状態で測定部13により測定された吸光度である。
【0093】
なお、横軸のブロックは、数字が若い順に並べたとしても時系列順にならない場合があるので、時系列順に並び替えられるものとする。つまり、図5の例では、ブロック1~5の順に時間が推移することを表している。
【0094】
例えば、図5のグラフで、ブロック単位で水ブランク値の推移をトレースすると、ブロック3で水ブランク値が平均値から±1000を外れ、ブロック4で平均値から±1000内に戻り、ブロック5で再び平均値から±1000を外れていることがわかる。このように、水ブランク値の平均値から±1000を外れるものがある場合、分析制御機能31は、故障原因の候補として、反応管3の異常が疑われることをユーザに通知する。
【0095】
また、図6は、反応管の水ブランク値の推移の一例を説明する図である。図6は、図4の反応管No.2の水ブランク値の推移を表している。図6図5と同様に、縦軸は、水ブランク値、横軸は、反応管No.2の水ブランク値が記録されたブロックを表している。
【0096】
例えば、図6のグラフで、ブロック単位で水ブランク値の推移をトレースすると、水ブランク値がブロック1~ブロック5にかけて連続的に低下していることがわかる。このように、水ブランク値の推移が連続して低下する場合、分析制御機能31は、故障原因の候補としてランプ出力の低下が疑われることをユーザに通知する。
【0097】
なお、図4では、記憶制御機能35は、異常発生時点APにおいてブロックB1~B5に記録された全ての測定結果データを測定結果データRD1としてファイルF1内に記憶しているが、測定結果データRD1としてファイルF1内に記録する対象はこれに限定されない。例えば、記憶制御機能35は、図3と同様に、異常発生時点APの前後1分間分の測定結果データを測定結果データRD1としてファイルF1内に記憶してもよい。
【0098】
また、図4では反応管3毎に測定結果データの履歴を記録する場合について記載したが、収集機能33は、試薬毎のデータや、項目毎のデータについて同様の方法で測定結果データの履歴を記録してもよい。
【0099】
次に、異常発生時に不揮発性記憶委媒体に記憶するデータの設定処理について説明する。図7は、異常発生時に不揮発性記憶媒体に記憶するデータ種別の設定方法の一例を説明する図である。図7は、分析装置70の異常発生時にHDD1に記憶するデータのデータ種別をエラー事象毎にユーザが設定するための設定画面の一例である。
【0100】
例えば、ユーザは、図7の設定画面の「エラー事象」に対応付けられた「記憶するデータの種別」について、削除、追加、変更等の入力を行うことで分析装置70の異常発生時にHDD1に記憶するデータのデータ種別をエラー事象毎に任意に設定することが可能である。
【0101】
図7の例では、設定機能36は、ユーザの設定指示に従い、ハードウェアエラー(HWErr)の場合、サンプル液面画像、プロセシングモジュール(PM)センサデータ、液面検知データ、水ブランク値、光路付近画像、前回交換日時・・・等のデータをHDD1に記憶する旨を設定している。
【0102】
また、設定機能36は、同様に、サンプル吸引エラーの場合、サンプル液面画像、PMセンサデータ、液面検知データを記録する旨を設定している。また、設定機能36は、同様に、吸光度エラーの場合、水ブランク値、光路付近画像、前回交換日時を記録する旨を設定している。また、設定機能36は、同様に、ランプエラーの場合、光路付近画像、前回交換日時をHDD1に記憶する旨を設定している。
【0103】
また、図7の例では、ハードウェアエラーが最上位の階層に位置し、サンプル吸引エラー及び吸光度エラーはハードウェアエラーと関連する3番目の階層に位置し、ランプエラーはハードウェアエラー及び吸光度エラーと関連する4番目の階層に位置することを表している。
【0104】
例えば、ユーザは、図7の設定画面上で各「エラー事象」同士の配置を変更したり、「エラー事象」同士を関連付けたりする入力を行うことで、「エラー事象」同士の関連付けを設定する。これにより、設定機能36は、ユーザの設定指示に従い、エラー事象同士を階層的に関連付けることができる。
【0105】
また、設定機能36によりHDD1に記憶するエラー種別が設定されている場合、記憶制御機能35は、分析装置70の異常発生時は、RAMn一時的に記録された、異常発生時点に対応する所定期間のパックデータPD1の中から、設定機能36が設定したエラー種別に対応するデータ種別を抽出してHDD1に記憶する。
【0106】
一例として、検知機能34により、分析装置70に「サンプル吸引エラー」が発生したと検知された場合について説明する。この場合、例えば、記憶制御機能35は、RAMn記録された、異常発生時点の前後1分間のパックデータPD1から、図7の設定画面上で「サンプル吸引エラー」に対応付けられた「サンプル液面画像」、「PMセンサデータ」、「液面検知データ」を抽出し、抽出したデータをHDD1のファイルF1内に記憶する。
【0107】
なお、設定機能36は、ユーザが特定のデータについて必要/不要になったと判断した場合、ユーザの指示に従い、後から記憶するデータの追加/削除を行うことが可能である。これにより、記憶制御機能35は、ユーザが経験的に得た知見を反映したデータの記憶を行うことができる。
【0108】
次に、自動分析装置100が実行する処理について説明する。まず、センシングデータの一時的な記録処理について説明する。図8は、自動分析装置100が実行する処理の一例を示すフローチャートである。前提として分析装置70は動作中であり、収集機能33は、各種データを収集し続けているものとする。
【0109】
まず、収集機能33は、分析装置70が備える各種センサの1秒間のセンシングデータを夫々対応するRAMのライトポインタWPが存在する記録領域に記録する(ステップS101)。なお、図8では、各種センサのセンシングデータを記録する例について記載しているが、収集機能33は、測定結果データを除くセンシングデータ以外のデータについても同様の処理を実行するものとする。
【0110】
次いで、収集機能33は、各RAMに対応するライトポインタWPを1つ進める処理を実行する(ステップS102)。例えば、RAM1のライトポインタWP1がRAM1のポイント1に位置している場合、収集機能33は、ライトポインタWP1をRAM1のポイント2に進める処理を実行する。
【0111】
次いで、収集機能33は、ライトポインタWPがRAMの終端位置にあるか否かを判定する(ステップS103)。ライトポインタWPが終端位置にない場合(ステップS103:No)、ステップS101の処理に戻る。
【0112】
一方、ライトポインタWPが終端位置にある場合(ステップS103:Yes)、収集機能33は、ライトポインタWPの位置を0に戻す処理を実行し(ステップS104)、ステップS101の処理に戻る。
【0113】
次に、パックデータの一時的な記録処理について説明する。図9は、自動分析装置100が実行する処理の一例を示すフローチャートである。前提として、図9に示すパックデータの記録処理は、図8に示したセンシングデータの記録処理のバックグラウンドで実行される処理であるものとする。
【0114】
まず、収集機能33は、複数のデータを一組としてパックデータを生成する(ステップS105)。例えば、収集機能33は、図8のステップS101で記憶されたセンシングデータを一組とすることで1秒間分のパックデータを生成する。
【0115】
次いで、収集機能33は、生成したパックデータを対応するRAMのライトポインタWPが存在する記録領域に記録する(ステップS106)。次いで、収集機能33は、ライトポインタWPを1つ進める処理を実行する(ステップS107)。例えば、生成したパックデータを対応するRAMがRAMnである場合、収集機能33は、RAMnに対応するライトポインタWPnを1つ進める処理を実行する。
【0116】
次いで、収集機能33は、ライトポインタWPがRAMの終端位置にあるか否かを判定する(ステップS108)。ライトポインタWPが終端位置にない場合(ステップS108:No)、ステップS105の処理に戻る。
【0117】
一方、ライトポインタWPが終端位置にある場合(ステップS108:Yes)、収集機能33は、ライトポインタWPの位置を0に戻す処理を実行し(ステップS109)、ステップS105の処理に戻る。
【0118】
次に、パックデータをHDDに記憶する処理について説明する。図10は、自動分析装置100が実行する処理の一例を示すフローチャートである。前提として、図10に示すパックデータをHDDに記憶する処理は、図8に示したセンシングデータの一時的な記録処理、及び図9に示したパックデータの一時的な記録処理のバックグラウンドで実行される処理であるものとする。
【0119】
まず、検知機能34は、分析装置70の異常を検知したか否かを判定する(ステップS110)。異常を検知していない場合(ステップS110:No)、ステップS110の処理に戻る。
【0120】
一方、異常を検知していた場合(ステップS110:Yes)、記憶制御機能35は、RAMに記憶されたパックデータからHDDに記憶するデータを抽出する(ステップS111)。
【0121】
例えば、記憶制御機能35は、パックデータを記録するRAMnのリードポインタを異常発生時点の1分前にセットする。そして、記憶制御機能35は、RAMnから異常発生時点の1分前から異常発生時点の1分間後までのパックデータを読み出す。
【0122】
なお、設定機能36により分析装置70の異常発生時にHDD1に記憶するデータ種別が設定されている場合、記憶制御機能35は、検知機能34で検知された分析装置70のエラー事象に対応するデータ種別のみを抽出してもよい。また、検知機能34が分析装置70の異常を検知した場合でも、収集機能33は、異常発生時点から1分後まではデータの収集を継続するものとする。
【0123】
次いで、記憶制御機能35は、ステップS111で抽出したデータをHDDに記憶し(ステップS112)、本処理を終了する。例えば、記憶制御機能35は、読み出した異常発生時点の1分前から異常発生時点の1分間後までのパックデータをHDD1のファイル内に記憶する。
【0124】
これにより、異常発生時点を基点とする過去所定期間分の動作履歴を含むパックデータが、不揮発性のHDD1に記憶される。
【0125】
次に、測定結果データの一時的な記録処理について説明する。図11は、自動分析装置100が実行する処理の一例を示すフローチャートである。前提として分析装置70は動作中であり、収集機能33は、測定結果データを収集し続けているものとする。
【0126】
まず、分析制御機能31は、分析装置70を制御して、試料の測定に使用する反応管3の水ブランクの測定処理を実行する(ステップS201)。
【0127】
次いで、収集機能33は、ライトポインタWPが存在するステップS201で水ブランクを測定した反応管の測定結果データを対応するRAMに記録する(ステップS202)。例えば、収集機能33は、直前に測定された項目名、測定値、水ブランク測定結果、キャリオーバ回避洗浄の有無等を対応するRAMに測定結果データとして記録する。
【0128】
次いで、収集機能33は、ライトポインタWPを1つ進める処理を実行する(ステップS203)。例えば、測定結果データを記録するRAMがRAMmであり、RAMmに対応するライトポインタWPmがRAMmのブロックB1の反応管No.1に位置している場合、収集機能33は、ライトポインタWPmをRAMmのブロックB1の反応管No.2に進める処理を実行する。
【0129】
次いで、収集機能33は、ライトポインタWPがRAMのブロックの終端位置にあるか否かを判定する(ステップS204)。ライトポインタWPがブロックの終端位置にない場合(ステップS204:No)、ステップS201の処理に戻る。
【0130】
一方、ライトポインタWPが終端位置にある場合(ステップS204:Yes)、収集機能33は、現在の書き込みブロックがブロックB5であるか否かを判定する(ステップS205)。
【0131】
書き込みブロックがブロックB5である場合(ステップS205:Yes)、収集機能33は、書き込みブロックをブロックB1に設定する処理を実行する(ステップS206)。
【0132】
一方、書き込みブロックがブロックB5でない場合(ステップS205:No)、収集機能33は、書き込みブロックを1進める処理を実行する(ステップS207)。例えば、書き込みブロックがブロックB1である場合、収集機能33は、書き込みブロックをブロックB2に設定する処理を実行する。
【0133】
次に、測定結果データをHDDへ記憶する処理について説明する。図12は、自動分析装置100が実行する処理の一例を示すフローチャートである。前提として、図12に示す測定結果データをHDDへ記憶する処理は、図11に示した測定結果データの一時的な記録処理のバックグラウンドで実行される処理であるものとする。
【0134】
まず、検知機能34は、分析装置70の異常を検知したか否かを判定する(ステップS208)。異常を検知していない場合(ステップS208:No)、再びステップS208の処理に戻る。
【0135】
一方、異常を検知していた場合(ステップS208:Yes)、記憶制御機能35は、RAMに記憶された測定結果データからHDDに記憶するデータを抽出する(ステップS209)。例えば、記憶制御機能35は、検知機能34により分析装置70の異常が検知された場合、測定結果データのRAMmのリードポインタをブロックB1の先頭位置にセットする。そして、記憶制御機能35は、ブロックB1の先頭位置からブロックB5の終端位置までの測定結果データを読み出す。
【0136】
次いで、記憶制御機能35は、ステップS209で抽出したデータをHDDに記憶し(ステップS210)、本処理を終了する。例えば、記憶制御機能35は、RAMmから読み出したブロックB1の先頭位置からブロックB5の終端位置までの測定結果データをHDD1のファイル内に記憶する。
【0137】
これにより、異常発生時点を基点とする過去所定期間分の測定結果データが、不揮発性のHDD1に記憶される。
【0138】
以上に述べた実施形態に係る自動分析装置100は、分析装置70が動作している間、試料の分析に係る動作状態及び試料の分析結果を示す情報を含むデータを収集し、分析装置70に異常が発生したことが検知されると、異常検知のタイミング以前に収集された所定期間分のデータを記憶回路60のHDDに記憶する。
【0139】
これにより、異常検知のタイミング以前に収集された所定期間分のデータが記憶されるため、例えば、自動分析装置100の不具合の解析を行う場合、ユーザは蓄積された膨大なデータの中から不具合に関係のありそうなデータを探索することなく、容易に不具合の原因の調査を行うことができる。つまり、本実施形態に係る自動分析装置100によれば、自動分析装置の不具合の解析処理の効率を向上させることができる。
【0140】
また、本実施形態に係る自動分析装置100は、複数のデータを夫々に対応する専用のRAMに記憶する。
【0141】
これにより、例えば、ユーザは分析装置70が備える複数のセンサのうち、特定のセンサのセンシングデータのみを確認するような場合に、容易にデータの確認を行うことができる。
【0142】
また、本実施形態に係る自動分析装置100は、収集したデータを記憶回路60のRAMの所定の記録領域に記憶し、当該記録領域の終端までデータを記憶した場合、当該記録領域の先頭に戻ってデータを既に記憶されているデータの上に上書き記録する。
【0143】
これにより、所定の記憶容量を超えるデータが蓄積されることがなくなるため、データの記憶に用いられる記憶回路60のRAMの記憶容量を節約することができる。
【0144】
また、本実施形態に係る自動分析装置100は、分析装置70に異常が発生した場合にHDDへ記憶するデータの対象期間をユーザの指示に従って設定する。
【0145】
これにより、例えば、ユーザが必要と判断した期間分のデータを確認しやすい状態でHDDに残しておくことができる。したがって、ユーザは効率的に分析装置70の不具合の原因探索を行うことができる。
【0146】
また、本実施形態に係る自動分析装置100は、異常の要因毎に、HDDに記憶するデータを設定する。
【0147】
これにより、例えば、ユーザは経験的に必要だと判断したデータのみを確認しやすい状態でHDDに残しておくことができる。したがって、ユーザは効率的に分析装置70の不具合の原因探索を行うことができる。
【0148】
また、本実施形態に係る自動分析装置100は、記憶したデータに基づき、分析装置70の不具合の原因の候補を提示する。
【0149】
これにより、例えば、ユーザはデータの確認を行う前に、分析装置70の不具合の原因の候補を知ることができる。したがって、ユーザは確認すべきデータを把握しやすくなり、効率的に分析装置70の不具合の原因探索を行うことができる。
【0150】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、自動分析装置の不具合の解析処理の効率を向上させることができる。
【0151】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0152】
100 自動分析装置
30 処理回路
31 分析制御機能
32 データ処理機能
33 収集機能
34 検知機能
35 記憶制御機能
36 設定機能
40 出力装置
50 入力装置
60 記憶回路
70 分析装置
80 駆動装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12