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特開2024-172918処理装置、処理方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172918
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】処理装置、処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 11/36 20060101AFI20241205BHJP
   G05B 13/04 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G05B11/36 K
G05B13/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090977
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】藤井 章
(72)【発明者】
【氏名】竹島 将太
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直暉
【テーマコード(参考)】
5H004
【Fターム(参考)】
5H004GA06
5H004GB01
5H004GB20
5H004HA01
5H004HB01
5H004KA42
5H004KA43
5H004KA52
5H004KC27
(57)【要約】
【課題】 制御対象を制御する際に操作量が急激に変動することを抑制する。
【解決手段】 処理装置100は、中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(t)に対してバンド幅BWを設定し、設定したバンド幅BWに炉団温度Tr(t)の予測値が入るための投入熱量Qinの範囲である操作範囲ORを設定し、設定した操作範囲OR内から、燃焼室3に投入する投入熱量Qin(tc+1)を決定する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象に与える操作量を制御量の予測値と目標値とに基づいて決定する処理装置であって、
前記制御量の目標値に対する許容誤差範囲であるバンド幅を設定するバンド幅設定部と、
前記制御量の予測値が前記バンド幅に入るための前記操作量の範囲である操作範囲を設定する操作範囲設定部と、
前記操作範囲内から、前記制御対象に与える前記操作量を決定する操作量決定部と、
を備える処理装置。
【請求項2】
前記操作量決定部は、前記制御量の予測値が目標値に対応する値になるときの前記操作量の予測値を用いて、前記操作量を決定する、請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記操作量決定部は、前記制御量の予測値を算出する予測モデルと、前記制御量の予測値と目標値との差を少なくとも評価する評価関数と、を用いたモデル予測制御を行うことにより、前記制御量の予測値が目標値に対応する値になるときの前記操作量の予測値を算出する、請求項2に記載の処理装置。
【請求項4】
前記操作量決定部は、前記操作範囲内の複数の値と、前記操作量に対する当該複数の値の相対的な重要度を示す重み係数と、に基づいて、前記操作量を決定する、請求項1~3のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項5】
前記複数の値は、前記制御量の予測値が前記バンド幅の上限値になるときの前記操作量の予測値と、前記制御量の予測値が前記バンド幅の下限値に対応する値になるときの前記操作量の予測値に基づく値と、前記制御量の予測値が目標値に対応する値になるときの前記操作量の予測値と、を用いて定められる値を含む、請求項4に記載の処理装置。
【請求項6】
前記操作量決定部は、前記操作量の実績値を用いて表される前記操作量の時間変化に基づいて、前記操作量を決定する、請求項1~3のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項7】
前記バンド幅設定部は、前記操作量に対する前記制御量の時間応答と、前記制御量の予測精度と、前記制御量の目標値と、前記制御対象の操業実績と、のうちの少なくともいずれか一つに基づいて前記バンド幅を設定する、請求項1~3のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項8】
前記操作範囲設定部は、前記制御量の予測値が前記バンド幅の上限値に対応する値であるバンド幅上限値になるときの前記操作量の予測値を前記操作範囲の上限値として設定することと、前記制御量の予測値が前記バンド幅の下限値に対応する値であるバンド幅下限値になるときの前記操作量の予測値を前記操作範囲の下限値として設定することと、のうち、少なくとも一方を行う、請求項1~3のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項9】
前記操作範囲設定部は、前記制御量の予測値を算出する予測モデルと、前記制御量の予測値と前記バンド幅の上限値との差を少なくとも評価する評価関数と、を用いたモデル予測制御を行うことにより、前記制御量の予測値が前記バンド幅上限値になるときの前記操作量の予測値を算出することと、前記制御量の予測値を算出する予測モデルと、前記制御量の予測値と前記バンド幅の下限値との差を少なくとも評価する評価関数と、を用いたモデル予測制御を行うことにより、前記制御量の予測値が前記バンド幅下限値になるときの前記操作量の予測値を算出することと、のうち、少なくとも一方を行う、請求項8に記載の処理装置。
【請求項10】
前記制御対象は、相前後して加熱される加熱対象に対し連続的に加熱制御を行うことが可能な工業炉を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項11】
前記制御対象は、非定常操業時において加熱制御が行われることがある工業炉を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項12】
制御対象に与える操作量を制御量の予測値と目標値とに基づいて決定する処理方法であって、
前記制御量の目標値に対する許容誤差範囲であるバンド幅を設定するバンド幅設定工程と、
前記制御量の予測値が前記バンド幅に入るための前記操作量の範囲である操作範囲を設定する操作範囲設定工程と、
前記操作範囲内から、前記制御対象に与える前記操作量を決定する操作量決定工程と、
を備える処理方法。
【請求項13】
請求項1~3のいずれか1項に記載の処理装置の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理装置、処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
制御対象に与える操作量を制御量の予測値と目標値とに基づいて決定する技術として特許文献1に記載の技術がある。特許文献1には、制御量の予測値が許容範囲を超えて、現在の操作対象の操作量の上限まで操作しても制御量が目標値に達しないような場合、新たな操作対象を検索し、検索した新たな操作対象に関してモデル予測制御を行って最適操作量を探索することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-172273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、検索した操作対象の最適操作量を探索する際に、制御量の予測値が目標値に近いほど評価が高くなる評価関数の値が最小または最大になる操作量を最適操作量として検索する。したがって、例えば、プロセスの状態変化を予測する予測モデルによる予測誤差が大きい場合、当該大きい予測誤差を打ち消すために急激に変動する操作量が最適操作量として算出され得る。このような最適操作量で操作した場合、操作量がハンチングする虞がある。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、制御対象を制御する際に操作量が急激に変動することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の処理装置は、制御対象に与える操作量を制御量の予測値と目標値とに基づいて決定する処理装置であって、前記制御量の目標値に対する許容誤差範囲であるバンド幅を設定するバンド幅設定部と、前記制御量の予測値が前記バンド幅に入るための前記操作量の範囲である操作範囲を設定する操作範囲設定部と、前記操作範囲内から、前記制御対象に与える前記操作量を決定する操作量決定部と、を備える。
【0007】
本発明の処理方法は、制御対象に与える操作量を制御量の予測値と目標値とに基づいて決定する処理方法であって、前記制御量の目標値に対する許容誤差範囲であるバンド幅を設定するバンド幅設定工程と、前記制御量の予測値が前記バンド幅に入るための前記操作量の範囲である操作範囲を設定する操作範囲設定工程と、前記操作範囲内から、前記制御対象に与える前記操作量を決定する操作量決定工程と、を備える。
【0008】
本発明のプログラムは、前記処理装置の各部としてコンピュータを機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、制御量の目標値に対する許容誤差範囲であるバンド幅を制御量の目標値に対して設定し、設定したバンド幅に制御量の予測値が入るための操作量の範囲である操作範囲を設定し、設定した操作範囲内から、制御対象に与える操作量を決定する。したがって、制御対象に与える操作量を決定する際に、バンド幅の範囲内であれば制御量が目標値からずれることを許容することが出来る。よって、制御量が過度に目標値に近づく(または一致する)ように操作量が決定されることを抑制することが出来る。これにより、操作量が急激に変動することを抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】処理装置の機能的な構成の一例を示す図である。
図2】コークス製造プロセスの一例を示す図である。
図3A】炉団温度の一例を説明する図である。
図3B】コークスが炭化室から押し出されている様子の一例を示す図である。
図4】コークス温度、炉団温度、投入熱量、および乾留時間と時間との関係の一例を示す図である。
図5】中心目標炉温軌道の一例を示す図である。
図6】バンド幅の一例を示す図である。
図7】操作範囲および操作量の一例を説明する図である。
図8】燃焼室に投入する投入熱量の算出方法の一例を説明する図である。
図9】処理方法の一例を説明するフローチャートである。
図10】炉団温度および投入熱量の時間変化の第1の計算結果(k=0の場合の計算結果)を示す図である。
図11】炉団温度および投入熱量の時間変化の第2の計算結果(k=1の場合の計算結果)を示す図である。
図12】炉団温度および投入熱量の時間変化の第3の計算結果(k=0.8の場合の計算結果)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。なお、長さ、位置、大きさ、間隔等、比較対象が同じであることは、厳密に同じである場合の他、発明の主旨を逸脱しない範囲で異なるもの(例えば、設計時に定められる公差の範囲内で異なるもの)も含むものとする。
【0012】
図1は、処理装置100の機能的な構成の一例を示す図である。処理装置100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等、一またはそれ以上の数のハードウェアプロセッサと、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等、一またはそれ以上の数のメモリと、をハードウェアとして有し、メモリに格納される一またはそれ以上の数のプログラムを一またはそれ以上の数のハードウェアプロセッサにより実行することで各種の演算を実行する。さらに、処理装置100は、入力装置および出力装置をハードウェアとして有する。
【0013】
処理装置100は、制御対象に対する操作量を制御量の予測値と目標値とに基づいて決定するための処理を行う。制御対象は限定されないが、本実施形態では、制御対象がコークス炉を含むコークス製造プロセスである場合を例示する(制御対象の変形例については<変形例>の欄で後述する)。
【0014】
そこで、まず、図2図3A、および図3Bを参照して、コークス製造プロセスの一例の概要を説明する。図2は、コークス炉を含むコークス製造プロセスの一例を示す図である。図3Aは、炉団温度の一例を説明する図である。図3Bは、コークスが炭化室から押し出されている様子の一例を示す図である。なお、図3Aおよび図3Bでは、内部を透視した様子を示す。
【0015】
図2および図3Aに示すように、コークス炉1では、炭化室(窯)2と燃焼室3とが炉壁4を介して交互に配置されている。炭化室2は、装炭された石炭を乾留してコークスを得る。燃焼室3は、燃料ガスを燃焼させることにより、炭化室2を高温に保つ。
【0016】
コークス炉1によるコークス製造プロセスにおいて、窯出し装炭作業には、所謂ブロック窯出し法が採用される。窯出し装炭作業は、図3Bに示すような押出ラム7により炭化室2からコークスを押し出し、引き続きその炭化室2に石炭を供給する作業である。ブロック窯出し法では、全ての炭化室2をDa個(Daは2以上の整数)の通りに分割し、分割した通りの単位で窯出し装炭作業が実行される。炭化室2の並び順でDa個置きの複数の炭化室2が同一の通りに属するように各炭化室2がいずれかの通りに割り当てられる。例えば、Daが5である場合、1の通りに炭化室No.1、6、11、16、・・・の炭化室2が割り当てられ、2の通りに炭化室No.2、7、12、17、・・・の炭化室2が割り当てられ、3の通りに炭化室No.3、8、13、18、・・・の炭化室2が割り当てられ、4の通りに炭化室No.4、9、14、19、・・・の炭化室2が割り当てられ、5の通りに炭化室No.5、10、15、20、・・・の炭化室2が割り当てられる。通り単位で、若番の炭化室2から順に窯出し装炭作業が実行される。例えば、1の通りに割り当てられた炭化室2の窯出し装炭作業は、炭化室No.1の炭化室2、炭化室No.6の炭化室2、炭化室No.11の炭化室2、炭化室No.16の炭化室2、・・・の順に実行される。また、窯出し装炭順序は、急激な温度低下を防止するために、例えば1の通り、3の通り、5の通り、2の通り、4の通りの順とする。或る通りで窯出し装炭作業を終了したタイミングから、次の通りで窯出し装炭作業を終了するタイミングまでの時間を通り時間と称する。通り時間は、一般的に3~6時間程度になる。なお、本実施形態は、ブロック窯出し法に限定されない。例えば、以下の説明において、通り(ブロック)を個々の炭化室2として扱えば、1つの炭化室2の単位で窯出し装炭作業を実行する場合についても適用することができる。
【0017】
また、コークス炉製造プロセスにおいては、全燃焼室3の投入熱量を一括で調整し、各通りの平均的な乾留状態を制御する炉団制御が実行される。すなわち、コークス炉1への投入熱量は、全燃焼室3に対して設置された1個の調整弁5を操作することにより制御される。調整弁5は、燃料ガスおよび燃焼用空気の混合気体の流量を調整するための弁である。また、調整弁5は、処理装置100の制御下で、不図示のアクチュエータを介して操作される。全燃焼室3の温度の代表値は、炉団温度と称される。例えば、図3Aに示すように全燃焼室3のうちの複数の燃焼室3に、燃焼室3の雰囲気温度を測定する温度計6を設置し、温度計6が設置された燃焼室3の平均温度を炉団温度とする。本実施形態では、コークス炉1の燃焼室3における温度である炉温が炉団温度である場合を例示する。なお、本実施形態の手法は、全燃焼室3の投入熱量を一括で調整する場合に限定されない。例えば、1つの炭化室2の単位で窯出し装炭作業を実行する場合、各燃焼室3に調整弁およびアクチュエータを設置し、炭化室2ごとに乾留状態(投入熱量)を制御しても良い。
【0018】
コークス製造プロセスにおいては、投入熱量が炉団温度に反映されるまでの時間遅れが長い。このため、燃焼室3における燃焼制御として、将来のプロセスの状態変化を予測モデルで予測しながら投入熱量を最適化するモデル予測制御を行うことが好ましい。そこで本実施形態では、処理装置100がモデル予測制御を行うことにより投入熱量を操作量として決定する場合を例示する。
【0019】
ここで、コークス炉1の定常操業時においては、窯出し装炭作業(装炭作業および押出作業)は、ほぼ一定の周期で繰り返される。一方、設備のメンテンナンス等により窯出し装炭作業を一時的に休止する場合、非定常操業が行われる。コークス炉1では、非定常操業時においても燃焼制御が行われる。非定常操業は頻繁に行われるものではない。したがって、予測モデルの学習用に長期間の実績データを得ることが容易ではない。よって、モデル予測制御を行う場合、予測モデルによる予測誤差が大きくなり易い。このように予測誤差が大きい予測モデルを用いると、当該大きい予測誤差を打つ消すために急激に変動する投入熱量が算出される虞がある。このようにして算出された投入熱量を燃焼室3に対する操作量とすると、投入熱量がハンチングする虞がある。投入熱量がハンチングすると、燃料ガスの流量の急激な変動により燃料コストが上がるとともにCO2ガスの排出量が大きくなる虞がある。また、投入熱量のハンチングにより炉壁4の温度が急激に変化するため、炉壁4を構成する耐火物の劣化の進行が早まる虞がある。また、燃焼用空気の高温燃焼によりNOx(窒化酸化物)ガスの排出量が大きくなる虞がある。また、燃料ガスおよび燃焼用空気の流量のバランスが不安定になることで不完全燃焼による黒煙の排出量が大きくなる虞がある。
【0020】
本実施形態では、これらの課題を解決するため、処理装置100が非定常操業時における投入熱量を操作量として決定する場合を例示する。そこで、以下に、コークス炉1における非定常操業の一例を説明する。
前述したように定常操業においては、窯出し装炭作業が、通り時間に対応するほぼ一定の周期で繰り返し実行される。これに対し、非定常操業においては、設備のメンテンナンス等により窯出し装炭作業を一時的に休止する。そこで、非定常操業時においては、例えば、炉団温度を一時的に低下させて設備のメンテンナンス等を実施した後、炉団温度を上昇させる。非定常操業は、窯出し装炭作業を一時的に休止している期間と、当該期間に続く少なくとも1回の窯出し装炭作業(装炭および押出)が実行されている期間と、を含む期間における操業である。本実施形態では、非定常操業は、窯出し装炭作業を一時的に休止している期間と、当該期間に続く少なくとも1つの通りにおける窯出し装炭作業が実行されている期間と、を含む期間における操業とする。
【0021】
また、本実施形態では、非定常操業の開始時および終了時は、窯出し装炭作業(コークスの押出(窯出し)作業)の終了時であるものとする。コークスの押出作業の終了時は、炭化室2内の全てのコークスが当該炭化室2から押し出された(排出された)タイミング以降のタイミングである。コークスの押出作業の終了時は、例えば、炭化室2から全てのコークスが排出されたタイミングであっても良いし、その後、炭化室2の扉を閉めたタイミングであっても良いし、炭化室2から排出されたコークスの温度が測定されるタイミングであっても良いし、炭化室2から押し出されたコークスが下工程に運搬されることを開始したタイミングであっても良い。また、コークス工場の操業マニュアルにおいて、コークスの押出作業が終了するとされているタイミングでも良い。以下の説明では、窯出し装炭作業を一時的に休止している期間を、休止期間とも称する。なお、操業異常が生じた場合には、非定常操業の開始時を、操業異常を検出したタイミングとしても良い。
【0022】
図4は、コークス温度、炉団温度、投入熱量、および乾留時間と時間との関係の一例を示す図である。
コークス温度は、炭化室2から排出されたコークスの温度であり、例えば、図3Bに示す温度計8による測定値により算出される。押出ラム7により炭化室2からコークスを押し出しているときに、炭化室2から順次排出されるコークスの温度を、温度計8で測定し、測定した各時刻および各位置における温度の代表値を、当該炭化室2で製造されたコークスの温度とする。代表値として、算術平均値(測定した各時刻および各位置における温度の和を、温度の測定数で割った値)、中央値、最頻値、および最小値のいずれかが例示される。そして、1つの通りに属する炭化室2で製造されたコークスの温度の代表値を、コークス温度とする。
【0023】
乾留時間は、Da(=5)個の全ての通りにおける窯出し装炭作業が1回ずつ実行されるのに要する時間に等しい。
以上のように本実施形態では、コークス温度および乾留時間が、通り毎の代表値で表される場合を例示する。したがって、コークス温度および乾留時間は、1つの通りにおける窯出し装炭作業が実行されると得られる。すなわち、コークス温度および乾留時間は、通り時間の周期で得られる。図4に示すコークス温度および乾留時間のグラフ(一番上のグラフと一番下のグラフ)において、時間軸方向で隣り合う2個のプロット(●)の、時間軸方向における間隔が通り時間ttになる。図4では、時刻teにおける通り時間tt(te)を例示する。なお、通り時間ttは、概ね一定の時間であるが、異なる時間になる場合もある。
【0024】
Da=5である場合、乾留時間は、Da(=5)個の全ての通りにおける窯出し装炭作業が1回ずつ実行されるのに要する時間に等しい。したがって、図4に示すコークス温度および乾留時間のグラフにおいて、時間軸方向で隣り合う6個のプロット(●)の両端のプロットの、時間軸方向における間隔が乾留時間になる。図4では、時刻teにおける乾留時間tk(te)を例示する。
【0025】
また、休止期間においては窯出し装炭作業が実行されないため、コークス温度および乾留時間は得られない(図4において、休止期間においてはコークス温度および乾留時間のグラフにプロット(●)が付されていないことを参照)。
【0026】
一方、炉団温度および投入熱量は、窯出し装炭作業とは無関係に得られる(図4において、休止期間においても炉団温度および投入熱量のグラフにプロット(●)が付されていることを参照)。本実施形態では、コークス炉1の制御周期(操作量決定部150における制御信号の出力周期)で炉団温度および投入熱量の予測値および実績値が得られ、通り時間の周期でコークス温度の予測値および実績値が得られ、通り時間の周期で乾留時間のスケジュール値および実績値が得られる場合を例示する。また、本実施形態では、コークス炉1の制御周期が1時間(hr)である場合を例示する。しかしながら、コークス炉1の制御周期は、1時間に限定されず、1時間より長い周期でも短い周期でも良い。
【0027】
図4において、時刻tsは非定常操業の開始時刻の一例であり、時刻teは非定常操業の終了時刻の一例である。
具体的に本実施形態では、窯出し装炭作業(炭化室2への装炭と押出)の休止が開始される時よりもDb通り(Dbは1以上の整数)前の通りにおけるコークスの押出作業の終了時刻を非定常操業の開始時刻tsとする場合を例示する。例えば、Dbが2である場合、図4において、休止期間が開始される時よりも2通り前の通りにおけるコークスの押出作業の終了時刻(休止期間の開始時刻から過去に向かって数えて2つ目のコークス温度のプロットの時刻)が、非定常操業の開始時刻tsである。設備のメンテナンスが実行される場合のように休止期間が事前に把握されている場合には、Dbは1であっても2以上の整数であっても良い。一方、操業異常が生じた場合のように休止期間が事前に把握されないような場合には、Dbは1であるのが好ましい。なお、図4では、表記の都合上、コークス温度および乾留時間のグラフにおいて、休止期間と重なっているプロットがあるが、当該プロットは、休止期間の直前、直後における通り単位での窯出し装炭作業により得られるものである。
【0028】
また、本実施形態では、窯出し装炭作業(炭化室2への装炭と押出)の休止が終了してからDa+1通り目の通りにおけるコークスの押出作業の終了時刻が、非定常操業の終了時刻teである場合を例示する。なお、通りにおけるコークスの押出作業の開始とは、当該通りに属する炭化室2のうち、最初にコークスの押出作業が実行される炭化室2内のコークスの押出作業の開始を指し、通りにおけるコークスの押出作業の終了とは、当該通りに属する炭化室2のうち、最後にコークスの押出作業が実行される炭化室2内のコークスの押出作業の終了を指す。Daが5である場合、図4において、休止期間が終了してから6通り目の通りにおけるコークスの押出作業の終了時刻(休止期間の終了時刻から未来に向かって数えて6つ目のコークス温度のプロットの時刻)が、非定常操業の終了時刻teである。休止期間が終了してから1通り目からDa通り(5通り)目までの通りにおいては、休止期間の間に炭化室2に存在している石炭からコークスが製造される。
【0029】
一方、休止期間が終了してからDa+1通り(6通り)目の通りにおいては、休止期間が終了した後に炭化室2に石炭が装入される。休止期間が終了した後に炭化室2に装入されたコークスの乾留状態が可及的に早く定常状態における乾留状態に近づくようにするのが好ましい。そこで、本実施形態では、窯出し装炭作業(炭化室2への装炭と押出)の休止が終了してからDa+1通り(6通り)目の通りにおけるコークスの押出作業の終了時刻を、非定常操業の終了時刻teとする。すなわち、非定常操業の終了時刻teは、休止期間が終了した後に最初に窯出し装炭作業を実行する通りにおけるコークスの押出作業の終了時刻である。ただし、非定常操業の終了時刻は、窯出し装炭作業(炭化室2への装炭と押出)の休止が終了してからDa+1通り目の通りにおけるコークスの押出作業の終了時刻に限定されない。例えば、窯出し装炭作業(炭化室2への装炭と押出)の休止が終了してからDa+x通り目の通りにおけるコークスの押出作業の終了時を、非定常操業の終了時刻とし、xの値を1以上の整数の中から選択しても良い。xやDbの値は、例えば、後述するように、目標炉温軌道に対する炉団温度の実績値の偏差に応じた投入熱量の制御を実際に実行した結果、所望の品質のコークスが得られるように適宜調整すれば良い。
以上のように非定常操業となる期間(非定常操業時)は時刻ts~teの期間になる。
【0030】
[処理装置100の各部の構成]
本実施形態では、制御対象が以上のようなコークス炉1を含むコークス製造プロセスであり、操作量が投入熱量であり、制御量が炉団温度である場合を例示し、処理装置100が、炉団温度の予測値および目標値に基づいて投入熱量を決定する場合を例示する。また、前述したように本実施形態では、処理装置100が、非定常操業時(時刻ts~teの期間)における投入熱量を操作量として決定する場合を例示する。ただし、処理装置100は、非定常操業時に加えてまたは代えて定常操業時における投入熱量を操作量として決定しても良い。
【0031】
図1において、処理装置100は、データ取得部110と、目標軌道取得部120と、バンド幅設定部130と、操作範囲設定部140と、操作量決定部150と、制御部160と、を備える。
【0032】
<データ取得部110>
データ取得部110は、処理装置100で使用する各種のデータを取得する。データ取得部110が取得するデータには、現在から過去の操業の実績値と、将来の操業のスケジュール値と、操業の目標値と、処理装置100における計算に使用する各種の設定値と、が含まれる。データの取得形態として、オペレータによる入力装置に対する操作、外部装置からの受信、および可搬型記憶媒体からの読み出しのうちの少なくとも1つが例示される。なお、個々のデータは、任意のタイミングで処理装置100に入力されデータ取得部110に取得される。したがって、個々のデータは、必ずしも同じタイミングで処理装置100に入力されデータ取得部110で取得される必要はない。
【0033】
<目標軌道取得部120>
目標軌道取得部120は、制御量の目標値の時間変化である目標軌道を取得する。目標軌道取得部120が目標軌道を取得する形態は限定されない。例えば、非定常操業時の操業スケジュールに目標軌道が含まれている場合、目標軌道取得部120は、当該目標軌道を取得しても良い。例えば、目標軌道取得部120は、コークス製造プロセスの操業を管理する上位コンピュータから送信された目標軌道を示すデータを受信することにより目標軌道を示すデータを取得しても良いし、オペレータが処理装置100を操作することにより処理装置100に入力した各時刻における制御量の目標値を、目標軌道を示すデータとして取得しても良い。この場合、目標軌道取得部120は、データ取得部110が有する機能のうち、目標軌道を示すデータを取得する機能を目標軌道取得部120が有していても良い。ただし、本実施形態では、非定常操業時における目標軌道として高精度の目標軌道を取得するために、目標軌道取得部120が、特開2023-39669号公報と同様の手法で目標軌道を算出する場合を例示する。このように本実施形態の目標軌道取得部120は、特開2023-39669号公報に記載の技術で実現することが出来る。したがって、以下では、目標軌道取得部120が有する各部の一例を概説するに留め、その詳細な説明を省略する。
【0034】
前述したように本実施形態では、処理装置100が、非定常操業時における投入熱量を操作量として決定する場合を例示する。したがって、本実施形態では、目標軌道取得部120が、非定常操業時における目標炉温の時間変化である目標炉温軌道Tr_ref(t)を取得する場合を例示する(なお、tは、時刻を表す)。また、本実施形態では、目標軌道取得部120は、予測値算出部121と、目標軌道決定部122と、を有する。または、予測値算出部121は、操作量予測部121aと、状態予測部121bと、を有する。
【0035】
状態予測部121bは、操作量予測部121aから出力された投入熱量Qin(t+1)の予測値と、投入熱量を用いて表される変数を説明変数として含み、炉団温度を用いて表される変数を目的変数として含む重回帰式(線形時系列モデル)と、に基づいて、少なくとも、時刻t~t+mにおける1時間ごとの炉団温度Tr(t+1)の予測値を算出する。mは、2以上の正の整数であり、時刻tよりもどの程度先の時刻における炉団温度の予測誤差を算出対象とするのかに応じて適宜設定される。mは、例えば、投入熱量が炉団温度に反映されるまでの時間遅れ(操作量が制御量に反映されるまでの時間遅れ)に相当する時間である。
【0036】
操作量予測部121aは、時刻t+mにおける炉団温度の予測誤差Tr_errを用いて、非定常操業時における投入熱量Qin(t+1)の予測値を更新して状態予測部121bに出力することを、時刻t+mにおける炉団温度の予測誤差Tr_errが所定値以下になるまで繰り返す計算を行う。炉団温度の予測誤差Tr_errは、目標軌道決定部122から出力された目標炉温軌道Tr_ref(t+m)の候補と、状態予測部121bにより算出された炉団温度Tr(t+m)の予測値と、の差(Tr_err=Tr_ref(t+m)-Tr(t+m))で表される。また、更新後の投入熱量Qin(t+1)の予測値は、例えば、更新前の投入熱量Qin(t+1)の予測値に、炉団温度の予測誤差Tr_errと所定のゲインとの積を加算した値で表される。なお、特開2023-39669号公報に記載されているように、操作量予測部121aは、例えば、PID制御をコンピュータシミュレーションする制御シミュレータを用いて、投入熱量の予測値を算出しても良い。
【0037】
操作量予測部121aは、時刻t+mにおける炉団温度の予測誤差Tr_errが所定値以下である場合、当該時刻t+mにおける炉団温度の予測誤差Tr_errを用いて更新された時刻t+1における投入熱量Qin(t+1)の予測値を、時刻t+1における投入熱量Qin(t+1)の予測値として確定する。状態予測部121bは、当該時刻t+1における投入熱量Qin(t+1)の予測値を用いて時刻t+1における炉団温度Tr(t+1)の予測値を算出し、算出した予測値を、時刻t+1における炉団温度Tr(t+1)の予測値として確定する。
【0038】
予測値算出部121(操作量予測部121aおよび状態予測部121b)は、時刻tを時刻ts+1から時刻te-1まで1時間ごとに後ろにずらして前述したようにして投入熱量Qin(t+1)の予測値および炉団温度Tr(t+1)の予測値を算出することを繰り返す。これにより、時刻ts+1から時刻teまで1時間ごとの各時刻における、投入熱量Qin(t+1)および炉団温度Tr(t+1)の予測値が算出される。非定常操業の終了時刻teにおける炉団温度Tr(te)の予測値を算出すると、状態予測部121bは、炉団温度Tr(t)の予測値と、炉団温度を用いて表される説明変数を含む重回帰式と、に基づいて、非定常操業の終了時刻teにおけるコークス温度Tc(te)の予測値を算出する。
【0039】
目標軌道決定部122は、予測値算出部121に出力した目標炉温軌道Tr_ref(t)の候補と、当該目標炉温軌道Tr_ref(t)の候補に対して予測値算出部121により算出(確定)された、投入熱量Qin(t)の予測値、炉団温度Tr(t)の予測値、およびコークス温度Tc(te)の予測値と、に基づいて、組合せ最適化問題等の最適化問題(より具体的には遺伝的アルゴリズム等のメタヒューリスティクス手法)を解くことにより、目標炉温軌道Tr_ref(t)を決定する。
【0040】
目標炉温軌道Tr_ref(t)を決定するための組合せ最適化問題を解く際の評価関数(適合度関数)は、例えば、目標炉温軌道Tr_ref(t)の候補と炉団温度Tr(t)の予測値との差を評価する評価指標と、コークス温度Tc(te)の予測値と目標値との差を評価する評価指標と、投入熱量Qin(t)の総量を評価する評価指標と、を含む。なお、かかる評価関数は、目標炉温軌道Tr_ref(t)の候補と炉団温度Tr(t)の予測値との差を評価する評価指標を含んでいれば、その他の評価指標を含んでいてもいなくても良い。
【0041】
予測値算出部121は、目標炉温軌道Tr_ref(t)の候補を用いて、前述したようにして、投入熱量Qin(t)の予測値、炉団温度Tr(t)の予測値、およびコークス温度Tc(te)の予測値を算出(確定)する。
【0042】
目標軌道決定部122は、目標炉温軌道Tr_ref(t)の候補解群に含まれる個々の候補解についての評価関数の値の算出結果に基づいて、収束条件を満足するか否かを判定する。
【0043】
目標軌道決定部122は、収束条件を満足しない場合、目標炉温軌道Tr_ref(t)の候補解群を再生成して更新して予測値算出部121に出力する。そして、目標軌道決定部122は、収束条件を満足するまで、前述したようにして評価関数の値の算出と、収束条件を満足するか否かの判定と、目標炉温軌道Tr_ref(t)の候補解群の再生成および出力と、を繰り返し実行する。
【0044】
目標軌道決定部122は、収束条件を満足したときに算出した複数の目標炉温軌道Tr_refの候補に対する評価関数の値のうち、評価関数の値が最適値(最小値または最大値)となるときの設計変数により定まる目標炉温軌道Tr_ref(t)を、目標炉温軌道Tr_ref(t)の最適解として決定する。
【0045】
以下の説明では、目標軌道決定部122により最適解として決定された目標炉温軌道Tr_ref(t)を、必要に応じて中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(t)と称する。図5は、中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(t)の一例を示す図である。ここで、現在時刻をtcとする。現在時刻tcは、後述する操作量決定部150で投入熱量を決定する時刻である。前述したように本実施形態では、コークス炉1の制御周期が1時間(hr)である場合を例示する。したがって、本実施形態では、1時間おきに投入熱量の操作が行われる場合(すなわち、現在時刻tcが1時間おきに到来する時刻である場合)を例示する。この場合、現在時刻tcにおいて決定された投入熱量は、現在時刻tcの1時間後の時刻tc+1までに燃焼室3に投入(操作)される。なお、図5において黒丸のプロット(●)は、実績値であることを示す。
【0046】
<バンド幅設定部130>
バンド幅設定部130は、制御量の目標値に対する許容誤差範囲であるバンド幅を設定する。本実施形態では、バンド幅設定部130が、中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(t)に対する許容誤差範囲であるバンド幅を設定する場合を例示する。バンド幅が小さ過ぎると操作量がハンチングし易くなる。一方、バンド幅が大き過ぎると、制御量が目標値から乖離し易くなる。したがって、許容誤差範囲は、例えば、制御量の目標値に対する誤差が制御対象(制御プロセス)において許容される誤差内になり、且つ、操作量のハンチングが制御対象(制御プロセス)において許容される誤差内になるように設定される。例えば、制御の結果として得られる物や状態(本実施形態では例えばコークスの温度)が、制御対象において許容される範囲内であることは、炉温が、中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(t)に対する許容誤差範囲内であることの必要条件である。このように制御の結果として得られる物や状態(本実施形態では例えばコークスの温度)が、制御対象において許容される範囲内であっても、前述した燃料コストや外部環境への影響が、制御対象において許容される範囲内でない場合、炉温は適切であるとは言い難い。したがって、例えば、制制御量の目標値に対する誤差が制御対象(制御プロセス)において許容される誤差内であることと、操作量のハンチングが制御対象(制御プロセス)において許容される誤差内であることと、の双方が可及的に満足されるようにバンド幅は設定される。
【0047】
図6は、バンド幅BWの一例を示す図である。以下の説明では、各時刻tにおける中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(t)の値を、必要に応じて中心目標炉温と称する。また、以下の説明では、中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(t)に対して設定されたバンド幅BWの上限の時間変化を、必要に応じて上限目標炉温軌道と称し、各時刻tにおける上限目標炉温軌道の値を、必要に応じて上限目標炉温と称する。また、以下の説明では、中心目標炉温軌道に対して設定されたバンド幅BWの下限の時間変化を、必要に応じて下限目標炉温軌道と称し、各時刻tにおける下限目標炉温軌道の値を、必要に応じて下限目標炉温と称する。
【0048】
なお、本実施形態では、中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(t)に対するバンド幅BWの設定が、上限目標炉温軌道Tr_ref_max(t)および下限目標炉温軌道Tr_ref_min(t)を記憶装置(記憶媒体)に記憶することにより実現される場合を例示する。記憶装置は、不揮発性記憶装置であっても揮発性記憶装置であっても良い。
【0049】
また、本実施形態では図6に示すように、バンド幅BWが時刻tによって変わらない場合を例示する。しかしながら、バンド幅BWは時刻tの経過に伴い変更されても良い。
【0050】
また、本実施形態では図6に示すように、中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(t)よりも大きい部分の許容誤差範囲の広さと、中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(t)よりも小さい部分の許容誤差範囲の広さと、が同じである場合を例示する。すなわち、本実施形態では、当該許容誤差範囲の広さがそれぞれバンド幅BWの1/2である場合を例示する。しかしながら、中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(t)よりも大きい部分の許容誤差範囲の広さと、中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(t)よりも小さい部分の許容誤差範囲の広さと、は同じでなくても良い。例えば、中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(t)よりも大きい部分の許容誤差範囲の広さと、中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(t)よりも小さい部分の許容誤差範囲の広さと、の差は、中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(t)の時間変化(単位時間当たりの変化量)に応じて異なるようにしても良い。なお、中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(t)よりも大きい部分の許容誤差範囲の広さは、例えば、中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(t)と上限目標炉温軌道Tr_ref_max(t)との差の絶対値で表される。また、中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(t)よりも小さい部分の許容誤差範囲の広さは、例えば、中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(t)と下限目標炉温軌道Tr_ref_min(t)との差の絶対値で表される。
【0051】
また、本実施形態では、バンド幅設定部130が、バンド幅BWをオフラインで予め設定する場合を例示する。この場合、バンド幅BWは、例えば、投入熱量が炉団温度に反映されるまでの時間遅れと、制御量である炉団温度の予測値を算出する予測モデルの予測誤差の精度と、のうちの少なくともいずれか一方に基づいて定められても良い。例えば、投入熱量が炉団温度に反映されるまでの時間遅れが大きいほど、バンド幅BWを大きくしても良い。なお、投入熱量が炉団温度に反映されるまでの時間遅れは、その時間遅れの程度を表す時間情報であれば良く、例えば、時定数で表されても、遅れ時間で表されても、整定時間で表されても、ピーク時間で表されても、その他の時間(例えば、炉団温度がTr_ref_mid(tc+1)になるまでの時間や、炉団温度がTr(tc)+(Tr_ref_mid(tc+1)-Tr(tc))×0.1になってから、Tr(tc)+(Tr_ref_mid(tc+1)-Tr(tc))×0.9になるまでの時間)で表されても良い。また、炉団温度の予測値を算出する予測モデルの予測誤差の精度が低いほど、バンド幅BWを大きくしても良い。
【0052】
また、本実施形態では、バンド幅BWを特定するためのデータがデータ取得部110で取得される場合を例示する。バンド幅BWを特定するためのデータは、例えば、中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(t)よりも大きい部分の許容誤差範囲と、中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(t)よりも小さい部分の許容誤差範囲と、の各時刻における値を含む。
【0053】
また、バンド幅設定部130は、データ取得部110で取得されたデータに基づくバンド幅BWを変更しても良い。例えば、バンド幅設定部130は、中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(t)の時間変化(単位時間当たりの変化量)に基づいてバンド幅BWを変更しても良い。また、バンド幅設定部130は、例えば、投入熱量Qin(t)の実績値の時間変化(単位時間当たりの変化量)と、炉団温度Tr(t)の実績値の時間変化(単位時間当たりの変化量)と、コークス温度Tc(t)の実績値と、のうちの少なくともいずれか一つに基づいて、バンド幅BWをオンラインで変更しても良い。
【0054】
また、バンド幅設定部130は、バンド幅BWをオフラインで設定せずにオンラインで設定しても良い。例えば、バンド幅設定部130は、制御周期ごとにバンド幅BWを設定しても良い。このようにする場合、バンド幅設定部130は、例えば、投入熱量Qin(t)の実績値の時間変化(単位時間当たりの変化量)と、炉団温度Tr(t)の実績値の時間変化(単位時間当たりの変化量)と、コークス温度Tc(t)の実績値と、のうちの少なくともいずれか一つに基づいて、バンド幅BWをオンラインで設定しても良い。
【0055】
以上のようにバンド幅設定部130は、例えば、投入熱量Qin(t)に対する炉団温度Tr(t)の時間応答と、炉団温度Tr(t)の予測精度と、中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(t)と、コークス炉1の操業実績と、のうちの少なくともいずれか一つに基づいてバンド幅BWを設定しても良い。この際、バンド幅BWは、例えば、炉団温度Tr(t)の目標値に対する誤差が、コークスの品質を確保するうえで許容されている誤差内になり、且つ、投入熱量Qin(t)の時間変動が前述した燃料コストや外部環境への影響などの観点から許容される範囲内になるように設定される。なお、投入熱量Qin(t)に対する炉団温度Tr(t)の時間応答は、投入熱量Qin(t)が変わった場合の炉団温度Tr(t)の挙動(時間変化)を示す少なくとも一つの情報を含む。本実施形態では、前述の投入熱量が炉団温度に反映されるまでの時間遅れが、投入熱量Qin(t)に対する炉団温度Tr(t)の時間応答に含まれる場合を例示する。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、投入熱量Qin(t)に対する炉団温度Tr(t)の時間応答には、前述した時定数や遅れ時間などの時間情報に加えてまたは代えて時間情報以外の情報(例えば、炉団温度の変化速度(時間応答の傾き)や最大行き過ぎ量)が含まれていても良い。
【0056】
<操作範囲設定部140>
操作範囲設定部140は、制御量の予測値がバンド幅設定部130で設定されたバンド幅BWに入るための操作量の範囲を設定する。以下の説明では、制御量の予測値がバンド幅設定部130で設定されたバンド幅BWに入るための操作量の範囲を、必要に応じて、操作範囲と称する。制御量の予測値がバンド幅の上限値および下限値に対応する値になるときの操作量の予測値を算出すれば、当該操作量の予測値を用いて、操作範囲の上限値および下限値を定めることが出来る。そこで、本実施形態では、操作範囲設定部140が、制御量の予測値がバンド幅の上限値および下限値に対応する値になるときの操作量の予測値を算出する場合を例示する。
【0057】
ここで、制御量の予測値がバンド幅の上限値および下限値に対応する値であるとは、制御量の予測値がバンド幅の上限値および下限値に一致することに加え、例えば、制御量の予測値とバンド幅の上限値および下限値との差を評価する評価指標の値が所定の条件を満たすことや、制御量の予測値とバンド幅の上限値および下限値との差の絶対値が0(零)を上回る所定値以下であること等、制御量の予測値がバンド幅の上限値および下限値であると見なせる所定の条件を満たすことを含むものとする。
【0058】
本実施形態では、制御量の予測値がバンド幅の上限値および下限値に対応する値であることが、制御量の予測値とバンド幅の上限値および下限値との差を評価する評価指標の値が所定の条件を満たすことである場合を例示する。具体的に操作範囲設定部140は、制御量の予測値を算出する予測モデルと、制御量の予測値とバンド幅の上限値との差を少なくとも評価する第1評価関数と、を用いたモデル予測制御を行うことにより、第1評価関数の値が最適値になるときの操作量の値を、制御量の予測値がバンド幅の上限値に対応する値になるときの操作量の予測値として算出する。また、操作範囲設定部140は、制御量の予測値を算出する予測モデルと、制御量の予測値とバンド幅の下限値との差を少なくとも評価する第2評価関数と、を用いたモデル予測制御を行うことにより、第2評価関数の値が最適値になるときの操作量の値を、制御量の予測値がバンド幅の下限値に対応する値になるときの操作量の予測値として算出する。なお、値が小さいほど高い評価であることを示す評価指標を含む評価関数においては、最適値は最小値になり、値が大きいほど高い評価であることを示す評価指標を含む評価関数においては、最適値は最大値になる。
【0059】
以下に、本実施形態の操作範囲設定部140が有する機能の具体例を説明する。
本実施形態では、制御量が炉団温度であり、時刻tc+mにおける中心目標炉温Tr_ref_mid(tc+m)(時刻tc+mにおける炉団温度の目標値)が制御量の目標値であり、操作量が、時刻tc+1における投入熱量Qin(tc+1)である場合を例示する。したがって、本実施形態では、操作範囲は、時刻tc+1における投入熱量Qin(tc+1)の許容範囲になる。
【0060】
そこで、本実施形態では、操作範囲設定部140が、時刻tc+mにおける炉団温度Tr(tc+m)の予測値が時刻tc+mにおける上限目標炉温Tr_ref_max(tc+m)に対応する値になるときの時刻tc+1における投入熱量Qin_max(tc+1)と、時刻tc+mにおける炉団温度Tr(tc+m)の予測値が時刻tc+mにおける下限目標炉温Tr_ref_min(tc+m)に対応する値になるときの時刻tc+1における投入熱量Qin_min(tc+1)と、を算出する場合を例示する。
【0061】
以下の説明では、時刻tc+mにおける炉団温度Tr(tc+m)の予測値が時刻tc+mにおける上限目標炉温Tr_ref_max(tc+m)に対応する値になるときの時刻tc+1における投入熱量Qin_max(tc+1)を、必要に応じて、上限投入熱量Qin_max(tc+1)と称する。また、時刻tc+mにおける炉団温度Tr(tc+m)の予測値が時刻tc+mにおける下限目標炉温Tr_ref_min(tc+m)に対応する値になるときの時刻tc+1における投入熱量Qin_min(t+1)を、必要に応じて、下限投入熱量Qin_min(tc+1)と称する。
【0062】
本実施形態では、操作範囲設定部140が、投入熱量Qin(t)を用いて炉団温度Tr(t)を予測する予測モデルを用いたモデル予測制御を行うことにより、上限投入熱量Qin_max(tc+1)および下限投入熱量Qin_min(tc+1)の最適解をそれぞれ算出する場合を例示する。また、本実施形態では、操作範囲設定部140が、上限投入熱量Qin_max(tc+1)および下限投入熱量Qin_min(tc+1)の最適解を、組合せ最適化問題等の最適化問題を解くことにより算出する場合を例示する。
【0063】
そこで、操作範囲設定部140は、上限投入熱量Qin_max(tc+1)の候補解を用いて前述した予測モデルにより炉団温度Tr(tc+m)の予測値を算出し、算出した予測値と上限目標炉温Tr_ref_max(tc+m)との差を少なくとも評価する第1評価関数の値を算出することを、上限投入熱量Qin_max(tc+1)の候補解を変更して繰り返すことにより、第1評価関数の値が最適値になる上限投入熱量Qin_max(tc+1)の候補解を最適解として探索する。同様に、操作範囲設定部140は、下限投入熱量Qin_min(tc+1)の候補解を用いて前述した予測モデルにより炉団温度Tr(tc+m)の予測値を算出し、算出した予測値と下限目標炉温Tr_ref_in(tc+m)との差を少なくとも評価する第2評価関数の値を算出することを、下限投入熱量Qin_in(tc+1)の候補解を変更して繰り返すことにより、第2評価関数の値が最適値になる下限投入熱量Qin_min(tc+1)の候補解を最適解として探索する。なお、前述したように、値が小さいほど高い評価であることを示す評価指標を含む評価関数においては、最適値は最小値になり、値が大きいほど高い評価であることを示す評価指標を含む評価関数においては、最適値は最大値になる。
【0064】
図7は、操作範囲および操作量の一例を説明する図である。なお、操作量の一例については<操作量決定部150>の項で説明する。また、図7において黒丸のプロット(●)は、実績値であることを示し、白丸のプロット(〇)は、予測値であることを示す。
【0065】
図7(b)に示す上限投入熱量Qin_max(tc+1)の候補解を用いた場合に、第1評価関数の値が最適値になり、図7(a)に示すように、時刻tc+mにおける炉団温度Tr(tc+m)の予測値が、時刻tc+mにおける上限目標炉温軌道Tr_ref_max(t)の値に一致した(または最も近い値になった)とする。この場合、操作範囲設定部140は、図7(b)に示す上限投入熱量Qin_max(tc+1)を最適解とする。同様に、図7(b)に示す下限投入熱量Qin_min(tc+1)の候補解を用いた場合に、第2評価関数の値が最適値になり、図7(a)に示すように、時刻tc+mにおける炉団温度Tr(tc+m)の予測値が、時刻tc+mにおける下限目標炉温軌道Tr_ref_min(t)の値に一致した(または最も近い値になった)とする。この場合、操作範囲設定部140は、図7(b)に示す下限投入熱量Qin_min(tc+1)を最適解とする。
【0066】
操作範囲設定部140は、以上のような上限投入熱量Qin_max(tc+1)の最適解および下限投入熱量Qin_min(tc+1)の最適解を算出すると、当該上限投入熱量Qin_max(tc+1)の最適解を、操作範囲ORの上限値として設定すると共に、当該下限投入熱量Qin_min(tc+1)の最適解を、操作範囲ORの下限値として設定する。なお、本実施形態では、操作範囲ORの設定が、操作範囲ORの上限値および下限値を記憶装置(記憶媒体)に記憶することにより実現される場合を例示する。記憶装置は、不揮発性記憶装置であっても揮発性記憶装置であっても良い。
【0067】
以下に、操作範囲設定部140が有する機能の一例を詳細に説明する。図1に示すように本実施形態では、操作範囲設定部140は、上限操作量決定部141aと、上限制御量予測部142aと、下限操作量決定部141bと、下限制御量予測部142bと、を有する。
【0068】
上限操作量決定部141aは、バンド幅BWの上限値(バンド幅上限値)に対応する操作量を決定する。上限制御量予測部142aは、バンド幅BWの上限値に対応する操作量で操作された場合の制御量の予測値を算出する。例えば、上限操作量決定部141aは、バンド幅BWの上限値(バンド幅上限値)に対応する操作量の候補を上限制御量予測部142aに出力する。上限制御量予測部142aは、上限操作量決定部141aから出力された操作量の候補で操作された場合の制御量の予測値を算出して上限操作量決定部141aに出力する。上限操作量決定部141aは、上限制御量予測部142aから出力された制御量の予測値に基づいて、バンド幅BWの上限値に対応する操作量を決定する。本実施形態では、上限操作量決定部141aおよび上限制御量予測部142aにより、バンド幅BWの上限値に対応する操作量の一例として上限投入熱量Qin_max(tc+1)の最適解を算出する場合を例示する。上限投入熱量Qin_max(tc+1)の最適解を算出する際に用いる第1評価関数J1は、例えば、2つ後の段落に示す(1)式である。
【0069】
下限操作量決定部141bは、バンド幅BWの下限値(バンド幅下限値)に対応する操作量を決定する。下限制御量予測部142bは、バンド幅BWの下限値に対応する操作量で操作された場合の制御量の予測値を算出する。例えば、下限操作量決定部141bは、バンド幅BWの下限値(バンド幅下限値)に対応する操作量の候補を下限操作量決定部141bに出力する。下限制御量予測部142bは、下限操作量決定部141bから出力された操作量の候補で操作された場合の制御量の予測値を算出して下限操作量決定部141bに出力する。下限操作量決定部141bは、下限制御量予測部142bから出力された制御量の予測値に基づいて、バンド幅BWの下限値に対応する操作量を決定する。本実施形態では、下限操作量決定部141bおよび下限制御量予測部142bにより、バンド幅BWの下限値に対応する操作量の一例として下限投入熱量Qin_min(tc+1)の最適解を算出する場合を例示する。下限投入熱量Qin_min(tc+1)の最適解を算出する際に用いる第2評価関数J2は、例えば、以下の(2)式である。
【0070】
【数1】
【0071】
(1)式の右辺第1項は、時刻tc+mにおける上限目標炉温Tr_ref_max(tc+m)と、時刻tc+mにおける炉団温度Tr(tc+m)の予測値と、の差を評価する評価指標の一例であり、小さい値であるほど評価が高いことを示す。(1)式の右辺第2項は、上限投入熱量Qin_max(tc+1)を評価する評価指標の一例であり、小さい値であるほど評価が高いことを示す。
【0072】
w1、w2は、それぞれの評価指標(評価項目)をどの程度重視するかによって設定されるものであり、各評価指標間の評価のバランスを表す重み係数である(なお、重み係数はコスト係数等とも称される)。本実施形態では、重み係数w1、w2は、正の値とする。この場合、重要な評価指標に対する重み係数を相対的に大きい値とする。また、(1)式に示す例では、右辺の各項の値が小さいほど、それぞれの評価指標による評価が高いことを示す。したがって、第1評価関数J1の値は0に近ければ近いほど好ましい。
【0073】
なお、第1評価関数J1は(1)式に示すものに限定されない。
例えば、時刻tc+mだけでなく、時刻tc+mよりも前の1または複数の時刻においても、上限目標炉温Tr_ref_max(t)と、炉団温度Tr(t)の予測値と、の差をさらに評価しても良い。このようにする場合、例えば、第1評価関数J1は、時刻tc+m、tc+m-1、tc+m-2の各時刻における上限目標炉温Tr_ref_max(t)および炉団温度Tr(t)の差の絶対値の平均値または積算値を評価指標として含んでいても良い。
【0074】
また、例えば、時刻t+1だけでなく、時刻t+1よりも後の1または複数の時刻における上限投入熱量Qin_max(t)をさらに評価しても良い。このようにする場合、例えば、第1評価関数J1は、時刻t+1、t+2、t+3の各時刻における上限投入熱量Qin_max(t)の平均値または積算値を評価指標として含んでいても良い。
また、第1評価関数J1は、上限投入熱量Qin_max(t)を評価する評価指標を含んでいなくても良い
【0075】
(2)式に示す第2評価関数J2の説明は、前述した第1評価関数J1の説明において、第1評価関数J1を第2評価関数J2に、上限目標炉温Tr_ref_max(tc+m)を下限目標炉温Tr_ref_min(tc+m)に、上限目標炉温Tr_ref_max(t)を下限目標炉温Tr_ref_min(t)に、上限投入熱量Qin_max(t)を下限投入熱量Qin_min(t)に、重み係数w1、w2をw3、w4に、それぞれ置き換えたものとなる。したがって、ここでは、第2評価関数J2の詳細な説明を省略する。
【0076】
また、本実施形態では、投入熱量Qin(t)を用いて炉団温度Tr(t)を予測する予測モデルが、以下の(3)式~(5)式に示す重回帰式(線形時系列モデル)である場合を例示する。なお、以下の(3)式~(5)式は、特開2023-39669号公報に記載されている予測モデルと同じであり、状態予測部121bが炉団温度Tr(t+1)の予測値を算出するための用いる予測モデルと同じである。
【0077】
【数2】
【0078】
ここで、Trは、炉団温度(℃)である。Qinは、投入熱量(GJ/hr)である。ΔTr(t+1)、ΔTr(t)、ΔTr(t-1)は、それぞれ、時刻t+1、t、t-1における炉団温度Tr(t+1)、Tr(t)、Tr(t-1)の、時刻t、t-1、t-2における炉団温度Tr(t)、Tr(t-1)、Tr(t-2)に対する変化量(℃)である。すなわち、ΔTr(t+1)=Tr(t+1)-Tr(t)、ΔTr(t)=Tr(t)-Tr(t-1)、ΔTr(t-1)=Tr(t-1)-Tr(t-2)の関係が成り立つ。ΔQin(t+1)は、時刻t+1における投入熱量Qin(t+1)の、時刻tにおける投入熱量に対する変化量(GJ/hr)である。すなわち、ΔQ(t+1)=Qin(t+1)-Qin(t)の関係が成り立つ。なお、t+1、t-1、t-2は、それぞれ、時刻tの1時間後、1時間前、2時間前の時刻である。
【0079】
係数a1、a2、b1は、それぞれ、ΔTr(t)、ΔTr(t-1)、ΔQin(t+1)に対する回帰係数である。回帰係数a1、a2、b1として、コークス炉1の過去の操業結果に(3)式の形が最も合うときの係数が別途求められる。
【0080】
なお、投入熱量Qin(t)を用いて炉団温度Tr(t)を予測する予測モデルは、(3)式~(5)式に限定されない。
例えば、(3)式の右辺第3項において、説明変数ΔQin(t+1)をΣΔQin(t+d)または(ΣΔQin(t+d))÷dとしても良い。ΣΔQin(t+d)の積算はdについて行われ、積算されるdの範囲は、1からDまでであり、Dは2以上m以下の整数である。なお、ΔQin(t+d)は、時刻t+dにおける投入熱量Qin(t+d)の、時刻t+d-1における投入熱量に対する変化量(GJ/hr)である。
【0081】
また、例えば、(3)式の右辺において、ΔTr(t-h)と当該ΔTr(t-h)に対する回帰係数との積で表される項がさらに加算されても良い。hは2以上の整数であり、ΔTr(t-h)は、時刻t-hにおける炉団温度Tr(t―h)の、時刻t-h-1における炉団温度Tr(t-h-1)に対する変化量(℃)である。
【0082】
<<上限操作量決定部141a、上限制御量予測部142aの処理>>
以下に上限操作量決定部141aおよび上限制御量予測部142aが、(1)式に示す第1評価関数J1および(3)~(5)式に示す予測モデルを用いて、上限投入熱量Qin_max(tc+1)の最適解を算出して、上限投入熱量Qin_max(tc+1)を設定する処理の具体例を説明する。
【0083】
まず、上限操作量決定部141aは、時刻tc+1における上限投入熱量Qin_max(tc+1)の候補解群(複数の候補解)を生成して、上限制御量予測部142aに出力する。本実施形態では、遺伝的アルゴリズム等のメタヒューリスティクス手法を用いて上限投入熱量Qin_max(t)の最適解を算出する場合を例示する。したがって、上限投入熱量Qin_max(t)の候補解群に含まれる個々の候補解は、遺伝的アルゴリズム等のメタヒューリスティクス手法で用いられる手法に従って生成される。遺伝的アルゴリズム等のメタヒューリスティクス手法自体は公知の技術で実現されるので、その詳細な説明を省略する。
【0084】
上限制御量予測部142aは、上限操作量決定部141aから出力された上限投入熱量Qin_max(t)の候補解群に含まれる一つの候補解(時刻tc+1における上限投入熱量Qin_max(tc+1))を用いて、(3)式~(5)式により、時刻tc+mにおける炉団温度Tr(tc+m)の予測値を算出する。例えば、上限制御量予測部142aは、(5)式によるΔQin(tc+1)の算出と、(3)式によるΔTr(tc+1)の算出と、(4)式によるTr(tc+1)の算出と、をこの順で行う。
【0085】
なお、上限制御量予測部142aは、上限投入熱量Qin_max(tc+1)の候補解が制約条件を満たさない場合、当該候補解を用いた時刻tc+mにおける炉団温度Tr(tc+m)の予測値の算出((3)式~(5)式の計算)を行わなくても良い。制約条件は、例えば、上限投入熱量Qin_max(tc+1)の候補解(において示される投入熱量の値)が許容範囲内であるという条件と、上限投入熱量Qin_max(tc+1)の候補解(において示される投入熱量)の、投入熱量Qin(tc)の実績値に対する変化量の絶対値が許容範囲内であるという条件と、のうちの少なくとも一方を含む。前者の制約条件は、過大な熱量がコークス炉1に投入されないようにするためのものである。後者の制約条件は、投入熱量が急激に変動しないようにするためのものである。
【0086】
また、(3)式~(5)式の計算の際に、時刻tcにおける投入熱量Qin(tc)として、(上限投入熱量Qin_max(tc)ではなく)時刻tcにおける投入熱量Qin(tc)の実績値が用いられても良い。また、時刻tc、tc-1、tc-2における炉団温度Tr(tc)、Tr(tc-1)、Tr(tc-2)として、実績値が用いられても良い。
【0087】
上限制御量予測部142aは、(3)式~(5)式の時刻tを時刻tc+1から時刻tc+m-1まで1時間ごとに後ろにずらして(5)式によるΔQin(t+1)の算出と、(3)式によるΔTr(t+1)の算出と、(4)式によるTr(t+1)の算出と、を繰り返す。これにより、時刻tc+1から時刻tc+mまでの1時間ごとの各時刻における炉団温度Tr(tc+1)~Tr(tc+m)の予測値が算出される。
【0088】
上限制御量予測部142aは、以上のようにして時刻tc+1から時刻tc+mまでの1時間ごとの各時刻における炉団温度Tr(tc+1)~Tr(tc+m)の予測値を算出することを、上限操作量決定部141aから出力された上限投入熱量Qin_max(tc+1)の候補解群に含まれる候補解のそれぞれに対して行い、時刻tc+mにおける炉団温度Tr(tc+m)の予測値を上限操作量決定部141aに出力する。
【0089】
なお、上限制御量予測部142aから上限操作量決定部141aに出力される炉団温度Tr(tc+m)の予測値の数は、上限操作量決定部141aから出力された上限投入熱量Qin_max(tc+1)の候補解群に含まれる候補解のうち、前述した制約条件を満たす候補解の数と同数である。
【0090】
上限操作量決定部141aは、炉団温度Tr(tc+m)の予測値と、当該予測値を算出する際に用いられた上限投入熱量Qin_max(tc+1)の候補解と、を用いて、(1)式の第1評価関数J1の値を算出することを、上限制御量予測部142aに出力した上限投入熱量Qin_max(tc+1)の候補解群に含まれる候補解のそれぞれについて行う。
【0091】
上限操作量決定部141aは、上限投入熱量Qin_max(tc+1)の候補解群に含まれる個々の候補解についての第1評価関数J1の値の算出結果に基づいて、収束条件を満足するか否かを判定する。収束条件は、遺伝的アルゴリズム等のメタヒューリスティクス手法で用いられる収束条件であれば、どのような条件であっても良い。収束条件は、例えば、上限投入熱量Qin_max(tc+1)の候補解群に含まれる個々の候補解について算出した第1評価関数J1の値のうちの最小値が所定値以下であるという条件であっても、第1評価関数J1の値の算出回数(繰り返し処理の回数)が所定値であるという条件であっても良い。
【0092】
上限操作量決定部141aは、収束条件を満足しない場合、上限投入熱量Qin_max(tc+1)の候補解群を再生成して更新して上限制御量予測部142aに出力する。そして、上限操作量決定部141aは、収束条件を満足するまで、前述したようにして第1評価関数J1の値の算出と、収束条件を満足するか否かの判定と、上限投入熱量Qin_max(tc+1)の候補解群の再生成および出力と、を繰り返し実行する。
【0093】
上限操作量決定部141aは、収束条件を満足した時点で算出されている第1評価関数J1の値のうち、最小値となる値を算出した際に用いた上限投入熱量Qin_max(tc+1)の候補解を、時刻tc+1における上限投入熱量Qin_max(tc+1)の最適解として確定する。
【0094】
なお、本実施形態では、組合せ最適化問題が最小化問題(第1評価関数J1の最小値を算出する問題)である場合を例示した。しかしながら、組合せ最適化問題は最小化問題に限定されず、最大化問題であっても良い。この場合、例えば、(1)式の右辺の各項を(-1)を乗算したものを第1評価関数J1として用いれば良い。
【0095】
<<下限操作量決定部141b、下限制御量予測部142bの処理>>
下限操作量決定部141bおよび下限制御量予測部142bの処理の説明は、前述した<<上限操作量決定部141a、上限制御量予測部142aの処理>>の欄の説明において、上限操作量決定部141aを下限操作量決定部141bに、上限制御量予測部142bを下限制御量予測部142bに、上限投入熱量Qin_max(t)、Qin_max(tc+1)を下限投入熱量Qin_min(t)、Qin_min(tc+1)に、第1評価関数J1を第2評価関数J2に、(1)式を(2)式に、それぞれ置き換えたものとなる。したがって、ここでは、下限操作量決定部141bおよび下限制御量予測部142bの詳細な説明を省略する。
【0096】
<操作量決定部150>
操作量決定部150は、操作範囲設定部140により設定された操作範囲OR(の上限値および下限値)内から、制御対象に与える操作量を決定する。操作範囲OR内であれば操作量をどのように決定しても良いが、制御量が目標値に近いほど制御の高精度化を図ることが出来る。そこで、本実施形態では、操作範囲設定部140が、制御量の予測値が目標値に対応する値になるときの操作量の予測値を用いて、制御対象に与える操作量を決定する場合を例示する。ここで、制御量の予測値が目標値に対応する値であるとは、制御量の予測値が目標値に一致することに加え、例えば、制御量の予測値と目標値との差を評価する評価指標の値が所定の条件を満たすことや、制御量の予測値と目標値との差の絶対値が所定値以下であること等、制御量の予測値が目標値に一致すると見なせる所定の条件を満たすことを含むものとする。
【0097】
本実施形態では、制御量の予測値が目標値に対応する値であることが、制御量の予測値と目標値との差を評価する評価指標の値が所定の条件を満たすことである場合を例示する。具体的に操作量決定部150は、制御量の予測値を算出する予測モデルと、制御量の予測値と目標値との差を少なくとも評価する第3評価関数と、を用いたモデル予測制御を行うことにより、第3評価関数の値が最適値になるときの操作量の値を、制御量の予測値が目標値に対応する値になるときの操作量の予測値として算出する。
【0098】
制御の高精度化を図る観点からは、制御量の予測値が目標値に対応する値になるときの操作量の予測値を用いて制御対象に与える操作量を決定するが好ましい。しかしながら、例えば、制御の高精度化よりも優先すべき操業要求がある場合には、制御量の予測値が目標値に対応する値になるときの操作量の予測値を用いて制御対象に与える操作量を決定しなくても良い。例えば、操作量の変動を小さくして操業の安定性を重視する場合や、操作量を小さくしてエネルギーの消費を少なくすることを重視する場合や、今後の操業を見越して操作量を大きくする場合等、各種の操業要求が存在する。これら様々な操業要求のいずれか一つを満足するように、操作量を決定しても良い。
【0099】
また、これらの操業要求の一つのみに特化するのではなく複数の操業要求を考慮して操作量を決定しても良い。複数の操業要求を考慮して操作量を決定する場合、操作範囲内の複数の値と、操作量に対する当該複数の値の相対的な重要度を示す重み係数と、に基づいて、操作量を決定しても良い。例えば、操作範囲内の複数の値の重み係数として、操作量に対する相対的な重要度が高い値であるほど大きい正の重み係数を用いても良い。操作範囲内の複数の値と、当該値に対する重み係数の乗算値を、当該複数の値について積算した値を操作量としても良い。複数の値に乗算される重み係数の総和は、例えば、1である。
【0100】
操作範囲内の複数の値には、例えば、制御量の予測値がバンド幅BWの上限値に対応する値になるときの操作量の予測値(上限投入熱量Qin_max(tc+1)の最適解)と、制御量の予測値がバンド幅BWの下限値に対応する値になるときの操作量の予測値(下限投入熱量Qin_min(tc+1)の最適解)と、制御量の予測値が目標値に対応する値になるときの操作量の予測値と、を用いて定められる値が含まれる。例えば、制御量の予測値がバンド幅BWの上限値、下限値に対応する値になるときの操作量の予測値(上限投入熱量Qin_max(tc+1)の最適解、下限投入熱量Qin_min(tc+1)の最適解)の上限値および下限値の算術平均値、または、直近の操作量の実績値に一致する値(または近い値)を制御対象に与える操作量とすれば、操業の安定化を図ることが出来る。一方、制御量の予測値が目標値に対応する値になるときの操作量の予測値を制御対象に与える操作量とすれば、制御の高精度化を図ることが出来る。したがって、例えば、制御量の予測値がバンド幅BWの上限値および下限値に対応する値になるときの操作量の予測値の算術平均値と、制御量の予測値が目標値に対応する値になるときの操作量の予測値と、それらに対する重み係数と、を用いれば、当該重み係数を調整することで、制御の高精度化と操業の安定化との双方を考慮しつつ、いずれか一方を他方よりも優先するような操作量を決定することが出来る。そこで、本実施形態では、操作範囲設定部140が、制御量の予測値がバンド幅BWの上限値および下限値に対応する値になるときの操作量の予測値の算術平均値と、制御量の予測値が目標値に対応する値になるときの操作量の予測値と、それらに対する重み係数と、を用いて操作量を決定する場合を例示する。なお、制御量の予測値がバンド幅BWの上限値および下限値に対応する値になるときの操作量の予測値の算術平均値(相加平均値)に代えて、例えば、相乗平均値または調和平均値を用いても良い。なお、操業要求がこれら以外にも存在することは前述した通りであり、操作範囲内の複数の値としてどのような値を用いるのかは、操業要求に応じて定めれば良い。例えば、制御量の予測値がバンド幅BWの上限値および下限値に対応する値になるときの操作量の予測値そのものが操作範囲内の複数の値に含まれても良い。
【0101】
<操作範囲設定部140>の項で説明したように本実施形態では、制御量が炉団温度であり、時刻tc+mにおける中心目標炉温Tr_ref_mid(tc+m)が制御量の目標値であり、操作量が時刻tc+1における投入熱量Qin(tc+1)である場合を例示する。
【0102】
そこで、本実施形態では、操作量決定部150が、炉団温度Tr(tc+m)の予測値が中心目標炉温Tr_ref_mid(tc+m)に対応する値になるときの投入熱量Qin_mid(tc+1)を算出する場合を例示する。
【0103】
以下の説明では、炉団温度Tr(tc+m)の予測値が中心目標炉温Tr_ref_mid(tc+m)に対応する値になるときの投入熱量Qin_mid(tc+1)を、必要に応じて中心投入熱量Qin_mid(tc+1)と称する。
【0104】
本実施形態では、操作量決定部150が、操作範囲設定部140において上限投入熱量Qin_max(tc+1)および下限投入熱量Qin_min(tc+1)の最適解を算出する手法と同様の手法で中心投入熱量Qin_mid(tc+1)の最適解を算出する場合を例示する。すなわち、操作量決定部150は、中心投入熱量Qin_mid(tc+1)の候補解を用いて前述した予測モデルにより時刻tc+mにおける炉団温度Tr(tc+m)の予測値を算出し、算出した予測値と中心目標炉温Tr_ref_mid(tc+m)との差を少なくとも評価する第3評価関数の値を算出することを、中心投入熱量Qin_mid(tc+1)の候補解を変更して繰り返すことにより、第3評価関数の値が最適値になる中心投入熱量Qin_mid(tc+1)の候補解を最適解として探索する。
【0105】
図7(b)に示す中心投入熱量Qin_mid(tc+1)の候補解を用いた場合に、第3評価関数の値が最適値になり、図7(a)に示すように、時刻tc+mにおける炉団温度Tr(tc+m)の予測値が、時刻tc+mにおける中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(t)の値に一致した(または最も近い値になった)とする。この場合、操作量決定部150は、図7(b)に示す中心投入熱量Qin_mid(tc+1)の候補解を最適解とする。図7(b)に示すように、中心投入熱量Qin_mid(tc+1)の最適解は、上限投入熱量Qin_max(tc+1)の最適解および下限投入熱量Qin_min(tc+1)の最適解の中間の値(算術平均値)になるとは限らない。
【0106】
また、炉団温度Tr(tc+m)の予測値が中心目標炉温Tr_ref_mid(tc+m)に近いほど制御の高精度化を図ることができる。したがって、中心投入熱量Qin_mid(tc+1)の最適解を時刻tc+1までに燃焼室3に投入する投入熱量Qin(tc+1)とすれば、制御の高精度化を図ることが出来る。
【0107】
一方、上限投入熱量Qin_max(tc+1)の最適解および下限投入熱量Qin_min(tc+1)の最適解の算術平均値を、時刻tc+1までに燃焼室3に投入する投入熱量Qin(tc+1)とすれば、操業の安定化(投入熱量Qin(t)の変動の抑制)を図ることが出来る。以下の説明では、上限投入熱量Qin_max(tc+1)の最適解および下限投入熱量Qin_min(tc+1)の最適解の算術平均値を、必要に応じて上下限投入熱量の最適解の算術平均値と称する。
【0108】
そこで、本実施形態では、制御の高精度化および操業の安定化の双方を考慮して時刻tc+1までに燃焼室3に投入する投入熱量Qin(tc+1)を決定するために、操作量決定部150は、中心投入熱量Qin_mid(tc+1)の最適解と、上下限投入熱量の最適解の算術平均値と、それらに対応する重み係数と、を用いて、時刻tc+1までに燃焼室3に投入する投入熱量Qin(tc+1)を算出する。
【0109】
以下に、操作量決定部150が有する機能の一例を詳細に説明する。図1に示すように本実施形態では、操作量決定部150は、中心操作量決定部151と、中心制御量予測部152と、操作量算出部153と、を有する。
【0110】
<<中心操作量決定部151、中心制御量予測部152>>
中心操作量決定部151は、制御量の目標値に対応する操作量を決定する。中心制御量予測部152は、制御量の目標値に対応する操作量で操作された場合の制御量の予測値を算出する。例えば、中心操作量決定部151は、制御量の目標値に対応する操作量の候補を中心制御量予測部152に出力する。中心制御量予測部152は、中心操作量決定部151から出力された操作量の候補で操作された場合の制御量の予測値を算出して中心操作量決定部151に出力する。中心操作量決定部151は、中心制御量予測部152から出力された制御量の予測値に基づいて、制御量の目標値に対応する操作量を決定する。本実施形態では、中心操作量決定部151および中心制御量予測部152により、制御量の目標値に対応する操作量の一例として中心投入熱量Qin_mid(tc+1)の最適解を算出する場合を例示する。中心操作量決定部151および中心制御量予測部152の処理の説明は、前述した<<上限操作量決定部141a、上限制御量予測部142aの処理>>の欄の説明において、上限操作量決定部141aを中心操作量決定部151に、上限制御量予測部142bを中心制御量予測部152に、上限投入熱量Qin_max(t)、Qin_max(tc+1)を中心投入熱量Qin_mid(t)、Qin_mid(tc+1)に、第1評価関数J1を第3評価関数J3に、(1)式を以下の(6)式に、それぞれ置き換えたものとなる。したがって、ここでは、中心操作量決定部151、中心制御量予測部152の詳細な説明を省略する。
【0111】
【数3】
【0112】
(6)式に示す第3評価関数J3の説明は、前述した第1評価関数J1の説明において、第1評価関数J1を第3評価関数J3に、上限目標炉温Tr_ref_max(tc+m)を中心目標炉温Tr_ref_mid(tc+m)に、上限目標炉温Tr_ref_max(t)を中心目標炉温Tr_ref_mid(t)に、上限投入熱量Qin_max(t)を中心投入熱量Qin_mid(t)に、重み係数w1、w2をw5、w6に、それぞれ置き換えたものとなる。したがって、ここでは、第3評価関数J3の詳細な説明を省略する。
【0113】
<<操作量算出部153>>
操作量算出部153は、操作範囲OR(の上限値および下限値)内の値を操作量として算出する。図8は、時刻tc+1までに燃焼室3に投入する投入熱量Qin(tc+1)の算出方法の一例を説明する図である。なお、図8においても図7と同様に、黒丸のプロット(●)は、実績値であることを示し、白丸のプロット(〇)は、予測値であることを示す。
【0114】
前述したように本実施形態では、操作量算出部153が、中心投入熱量Qin_mid(tc+1)の最適解と、上下限投入熱量の最適解の算術平均値と、それらに対する重み係数と、を用いて、時刻tc+1における投入熱量Qin(tc+1)を算出する場合を例示する。例えば、操作量算出部153は、以下の(7)式~(15)式により時刻tc+1における投入熱量Qin(tc+1)を算出する。
【0115】
【数4】
【0116】
(7)式および(14)式に示すQin_ave(tc+1)は、上下限投入熱量の最適解の算術平均値である。
また、(8)式、(10)式、および(12)式において、投入熱量の許容増加量ΔQin_maxは、一回の操作で増加可能な投入熱量の限界値であり、正の値を有する。ΔQin_maxは、コークス炉1の設備制約(例えば、一回の操作で変更可能な調整弁5の開度の最大値)等に応じて予め定められる。
【0117】
また、(8)式、(10)式、および(12)式において、Min(A,B)は、AおよびBのうち小さい方の値を求める記号である。例えば(8)式においては、Qin(tc)+ΔQin_maxと、Qin_max(tc+1)と、のうち小さい方の値が、最終上限投入熱量Q~in_max(tc+1)として算出される。なお、Q~in_max(tc+1)は、(8)式、(9)式、および(14)式において、Qin_max(tc+1)のQの上に~が付されている記号を示す。
【0118】
(8)式は、例えば、図8(a)に例示するように、操作範囲設定部140で設定された上限投入熱量Qin_max(tc+1)の最適解が投入熱量のQ(tc)の実績値以上である場合(Qin_max(tc+1)≧Q(tc)の場合)に用いられる。(8)式の計算により、上限投入熱量Qin_max(tc+1)の最適解が、投入熱量Qin(tc)の実績値に投入熱量の許容増加量ΔQin_maxを加算した値以上になる場合には、後者(Qin(tc)+ΔQin_max)が最終上限投入熱量Q~in_max(tc+1)として採用され、そうでない場合には、前者(Qin_max(tc+1))が最終上限投入熱量Q~in_max(tc+1)として採用される。このようにすることにより、コークス炉1の設備制約等によって許容することが出来ないほど上限投入熱量Qin_max(tc+1)の最適解が大きい場合に、当該上限投入熱量Qin_max(tc+1)の最適解を用いて燃焼室3に投入する投入熱量Qin(tc+1)が算出されることを抑制することが出来る。
【0119】
(10)式は、例えば、図8(a)に例示するように、中心操作量決定部151で決定された中心投入熱量Qin_mid(tc+1)の最適解が、時刻tcにおける投入熱量のQ(tc)の実績値以上である場合(Qin_mid(tc+1)≧Q(tc)の場合)に用いられる。(10)式の意味の説明は、前述した(8)式の説明において上限投入熱量Qin_max(tc+1)を中心投入熱量Qin_mid(tc+1)に置き換えた説明になるので、その詳細な説明を省略する。
【0120】
(12)式は、例えば、図8(a)に例示するように、操作範囲設定部140で設定された下限投入熱量Qin_min(tc+1)の最適解が、時刻tcにおける投入熱量Qin(tc)の実績値以上である場合(Qin_min(tc+1)≧Q(tc)の場合)に用いられる。(12)式の意味の説明は、前述した(8)式の説明において上限投入熱量Qin_max(tc+1)を下限投入熱量Qin_min(tc+1)に置き換えた説明になるので、その詳細な説明を省略する。
【0121】
また、(9)式、(11)式、および(13)式において、投入熱量の許容減少量ΔQin_minは、一回の操作で減少可能な投入熱量の限界値であり、負の値を有する。ΔQin_minは、コークス炉1の設備制約等に応じて予め定められる。なお、ΔQin_maxの絶対値と、ΔQin_minの絶対値は同じ値でも異なる値でも良い。
【0122】
また、(9)式、(11)式、および(13)式において、Max(A,B)は、AおよびBのうち大きい方の値を求める記号である。例えば(9)式においては、Qin(tc)+ΔQin_minと、Qin_max(tc+1)と、のうち大きい方の値が、最終上限投入熱量Q~in_max(tc+1)として算出される。
【0123】
(9)式は、例えば、図8(b)に例示するように、操作範囲設定部140で設定された上限投入熱量Qin_max(tc+1)の最適解が投入熱量のQ(tc)の実績値未満である場合(Qin_max(tc+1)<Q(tc)の場合)に用いられる。(9)式の計算により、上限投入熱量Qin_max(tc+1)の最適解が、投入熱量Qin(tc)の実績値に投入熱量の許容減少量ΔQin_minを加算した値未満になる場合には、後者(Qin(tc)+ΔQin_min)が最終上限投入熱量Q~in_max(tc+1)として採用され、そうでない場合には、前者(Qin_max(tc+1))が最終上限投入熱量Q~in_max(tc+1)として採用される。このようにすることにより、コークス炉1の設備制約等によって許容することが出来ないほど上限投入熱量Qin_max(tc+1)の最適解が小さい場合に、当該上限投入熱量Qin_max(tc+1)の最適解を用いて燃焼室3に投入する投入熱量Qin(tc+1)が算出されることを抑制することが出来る。
【0124】
(11)式は、例えば、図8(b)に例示するように、中心操作量決定部151で決定された中心投入熱量Qin_mid(tc+1)の最適解が、時刻tcにおける投入熱量のQ(tc)の実績値未満である場合(Qin_mid(tc+1)<Q(tc)の場合)に用いられる。なお、Q~in_mid(tc+1)は、(7)式、(10)式、および(11)式において、Qin_mid(tc+1)のQの上に~が付されている記号を示す。(11)式の意味の説明は、前述した(9)式の説明において上限投入熱量Qin_max(tc+1)を中心投入熱量Qin_mid(tc+1)に置き換えた説明になるので、その詳細な説明を省略する。
【0125】
(13)式は、例えば、図8(b)に例示するように、操作範囲設定部140で設定された下限投入熱量Qin_min(tc+1)の最適解が、時刻tcにおける投入熱量のQ(tc)の実績値以上である場合(Qin_min(tc+1)<Q(tc)の場合)に用いられる。なお、Q~in_min(tc+1)は、(12)式、(13)式、および(14)式において、Qin_min(tc+1)のQの上に~が付されている記号を示す。(13)式の意味の説明は、前述した(9)式の説明において上限投入熱量Qin_max(tc+1)を下限投入熱量Qin_min(tc+1)に置き換えた説明になるので、その詳細な説明を省略する。
【0126】
(15)式において、kは、上下限投入熱量の最適解の算術平均値Qin_ave(tc+1)に対する重み係数の一例である。1-kは、最終中心投入熱量Q~in_mid(tc+1)に対する重み係数の一例である。制御の高精度化を操業の安定化よりも重要視する場合にはkの値を小さくし(0(零)に近い値にし)、操業の安定化を制御の高精度化よりも重要視する場合にはkの値を大きくする(1に近い値にする)。重み係数kは、このような観点から、オフラインで予め定められても良い。また、(15)式に代えて、例えば、0<k<1、0<k≦1、または、0≦k<1を用いても良い。
【0127】
また、オンラインで係数kを定めても良い。例えば、制御周期ごとに係数kを定めても良い。このようにする場合、例えば、制御量の一例である炉団温度Tr(t)の時間変化に基づいて、係数kの値を定めても良い。例えば、時刻tcにおける中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(tc)の値と、時刻tc+1における中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(tc+1)の値と、の差の絶対値が大きいほど操業の安定化を重要視し、係数kの値を大きくしても良い。換言すると、時刻tc+1における中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(tc+1)の値と、の差の絶対値が小さいほど制御の高精度化を重要視し、係数kの値を小さくしても良い。また、時刻tcにおける炉団温度Tr(tc)の実績値と、時刻tc+1における炉団温度Tr(tc+1)の予測値と、の差の絶対値が大きいほど操業の安定化を重要視し、係数kの値を大きくしても良い。換言すると、時刻tcにおける炉団温度Tr(tc)の実績値と、時刻tc+1における炉団温度Tr(tc+1)の予測値と、の差の絶対値が小さいほど制御の高精度化を重要視し、係数kの値を小さくしても良い。この場合、炉団温度Tr(tc+1)の予測値として、例えば、中心操作量決定部151により決定した中心投入熱量Qin_mid(tc+1)の最適解を用いて中心制御量予測部152により算出された炉団温度Tr(tc+1)の予測値が用いられる。
【0128】
また、操作量の一例である投入熱量Qin(t)の時間変化に基づいて、係数kの値を定めても良い。例えば、時刻tcにおける投入熱量Qin(tc)の実績値と、時刻tc+1における中心投入熱量Qin_mid(tc+1)の最適解と、の差の絶対値が大きいほど操業の安定化を重要視し、係数kの値を大きくしても良い。換言すると、時刻tcにおける投入熱量Qin(tc)の実績値と、時刻tc+1における中心投入熱量Qin_mid(tc+1)の最適解と、の差の絶対値が小さいほど制御の高精度化を重要視し、係数kの値を小さくしても良い。
【0129】
本実施形態では、操作量決定部150が、以上のようにして操作量算出部153により算出された時刻tc+1における投入熱量Qin(tc+1)を、時刻tc+1までに燃焼室3に投入する投入熱量Qin(tc+1)として決定する場合を例示する。
【0130】
<制御部160>
制御部160は、操作量決定部150により時刻tc+1までに燃焼室3に投入すると決定された投入熱量Qin(tc+1)が燃焼室3に投入されるようにするための制御信号を生成して出力する。制御信号は、例えば、操作量決定部150により決定された時刻tc+1における投入熱量Qin(tc+1)と、時刻tcにおける中心目標炉温Tr_ref_mid(tc)または時刻tcにおける炉団温度Tr(tc)の実績値と、差を示す信号である。制御信号の出力先として、調整弁5を操作するアクチュエータの制御装置が例示される。制御装置は、制御信号に従う開度になるように調整弁5を操作することを当該アクチュエータに指示する。これにより、操作量決定部150により決定された投入熱量Qin(tc+1)が時刻tc+1までに燃焼室3に投入されるように調整弁5の開度が調整される。
【0131】
[フローチャート]
次に、図9のフローチャートを参照しながら、本実施形態の処理装置100を用いて行われる処理方法の一例を説明する。なお、ここでは、図9のフローチャートの処理が開始する前に処理装置100が取得しておく必要があるデータは、データ取得部110で取得されているものとする。例えば、バンド幅BW、重み係数w1~w6、回帰係数a1、a2、b1、係数k、投入熱量の許容増加量ΔQin_max、および投入熱量の許容減少量ΔQin_minに関するデータは、図9のフローチャートの処理が開始する前に処理装置100が取得しておいても良い。
【0132】
まず、ステップS901において、目標軌道取得部120は、中心目標炉温軌道Tr_ref(t)を取得する。前述したように本実施形態では、目標軌道取得部120が、特開2023-39669号公報に記載の手法で中心目標炉温軌道Tr_ref(t)の最適解を算出する場合を例示する。
【0133】
次に、ステップS902において、バンド幅設定部130は、中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(t)に対してバンド幅BWを設定する。前述したように本実施形態では、バンド幅設定部130が、上限目標炉温軌道Tr_ref_max(t)および下限目標炉温軌道Tr_ref_min(t)を算出して設定することにより、中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(t)に対してバンド幅BWを設定する場合を例示する。
図9のフローチャートでは、ステップS901、S902の処理が終了した後に、コークス炉1の制御周期(本実施形態では1時間)ごとの繰り返し処理が行われる場合を例示する。
【0134】
ステップS903において、操作範囲設定部140(上限操作量決定部141a、上限制御量予測部142a、下限操作量決定部141b、下限制御量予測部142b)は、モデル予測制御を行うことにより、上限投入熱量Qin_max(tc+1)および下限投入熱量Qin_min(tc+1)の最適解をそれぞれ算出する。モデル予測制御で使用する予測モデルは、例えば、(3)式~(5)式である。また、本ステップS903で行うモデル予測制御において最適化問題を解く際に用いる評価関数は、例えば、(1)式に示す第1評価関数J1と、(2)式に示す第2評価関数J2である。第1評価関数J1は、上限投入熱量Qin_max(tc+1)の最適解を算出する際に用いる評価関数であり、第2評価関数J2は、下限投入熱量Qin_min(tc+1)の最適解を算出する際に用いる評価関数である。
【0135】
次に、ステップS904において、操作量決定部150(中心操作量決定部151、中心制御量予測部152)は、モデル予測制御を行うことにより、中心投入熱量Qin_mid(tc+1)の最適解を算出する。前述したようにモデル予測制御で使用する予測モデルは、例えば、(3)式~(5)式である。また、本ステップS904で行うモデル予測制御において最適化問題を解く際(中心投入熱量Qin_mid(tc+1)の最適解を算出する際)に用いる評価関数は、例えば、(3)式に示す第3評価関数J3である。
【0136】
次に、ステップS905において、操作量決定部150(操作量算出部153)は、ステップS903で算出された上限投入熱量Qin_max(tc+1)の最適解を上限値とし、ステップS903で算出された下限投入熱量Qin_min(tc+1)の最適解を下限値とする操作範囲OR内から、時刻tc+1までに燃焼室3に投入する投入熱量Qin(tc+1)を決定する。本実施形態では、操作量決定部150(操作量算出部153)が、(7)式~(15)式により時刻tc+1における投入熱量Qin(tc+1)を算出し、算出した投入熱量Qin(tc+1)を、時刻tc+1までに燃焼室3に投入する投入熱量Qin(tc+1)として決定する場合を例示する。
【0137】
次に、ステップS906において、制御部160は、ステップS905で決定された投入熱量Qin(tc+1)が燃焼室3に投入されるようにするための制御信号を生成して出力する。
【0138】
次に、ステップS907において、制御部160は、コークス炉1の制御を終了するか否かを判定する。コークス炉1の制御を終了するか否かの判定は、制御部160は、処理装置100に対するオペレータの入力操作によって制御終了の指示がなされた場合に、コークス炉1の制御を終了すると判定しても良い。また、制御部160は、例えば、時刻tc+1が時刻teである場合に、コークス炉1の制御を終了すると判定しても良い。
【0139】
ステップS907の判定の結果、コークス炉1の制御を終了しない場合(ステップS907でNOの場合)、ステップS903の処理が再び行われる。そして、次の制御周期に対する処理としてステップS903~S907の処理が行われる。一方、ステップS907の判定の結果、コークス炉1の制御を終了する場合(ステップS907でYESの場合)、図9のフローチャートによる処理は終了する。
【0140】
[計算例]
次に、計算例を説明する。本計算例では、係数kの値以外の条件を同じにして、本実施形態で説明したようにして時刻tc+1における投入熱量Qin(tc+1)を順次決定(算出)するコンピュータシミュレーションを行った。なお、時刻tc+1における投入熱量Qin(tc+1)の算出には(7)式~(15)式を用いた。
【0141】
図10は、係数kが0(零)である場合の炉団温度Tr(t)および投入熱量Qin(t)の時間変化の計算結果を示す図である。図11は、係数kが1.0である場合の炉団温度Tr(t)および投入熱量Qin(t)の時間変化の計算結果を示す図である。図12は、係数kが0.8である場合の炉団温度Tr(t)および投入熱量Qin(t)の時間変化の計算結果を示す図である。
【0142】
係数kが0(零)である場合には、(7)式に示すように投入熱量Qin(tc+1)は、(10)式または(11)式により算出される最終中心投入熱量Q~in_mid(tc+1)になる。この場合、投入熱量Qin(tc+1)は、時刻tc+mにおける炉団温度Tr(tc+m)の予測値が時刻tc+mにおける中心目標炉温Tr_ref_mid(tc+m)に対応する値(第3評価関数J3の値が最小)になるときの投入熱量(中心投入熱量Qin_mid(tc+1))になる。したがって、図10(a)に示すように炉団温度Tr(t)の時間変化は、中心目標炉温Tr_ref_mid(t)に高精度に追従するが、投入熱量Qin(t)の時間変化が急峻になり易くなる。すなわち、炉団温度の制御性能は高まるが、操業が不安定になる虞がある。
【0143】
また、係数kが1.0である場合には、(7)式に示すように投入熱量Qin(tc+1)は、(14)式により算出される上下限投入熱量の最適解の算術平均値Qin_ave(tc+1)になる。したがって、投入熱量Qin(tc+1)の算出の際に炉団温度Tr(tc+m)の予測値と中心目標炉温Tr_ref_mid(tc+m)との差は考慮されず、投入熱量Qin(tc+1)は、上限投入熱量Qin_max(tc+1)の最適解および下限投入熱量Qin_min(tc+1)の最適解の時間変化に応じて時間変化する。したがって、図11(a)に示すように炉団温度Tr(t)の時間変化は図10(a)に比べると中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(t)に対し上下に変動しながら追従するが、図11(b)に示すように投入熱量Qin(t)は図10(b)に比べると緩やかに時間変化する。すなわち、炉団温度の制御性能は低くなるが、操業は安定する。
【0144】
また、係数kが0.8である(係数kが0でも1でもない)場合には、(7)式に示すように重み係数kに応じて、最終中心投入熱量Q~in_mid(tc+1)と、上下限投入熱量の最適解の算術平均値Qin_ave(tc+1)と、が加算された投入熱量Qin(tc+1)が算出される。したがって、図12(a)に示すように、炉団温度Tr(t)の時間変化は図10(a)に比べると中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(t)に対し上下に変動しながら追従するが、図11(a)に比べれば中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(t)に高精度に追従する。また、図12(b)に示すように投入熱量Qin(t)は、図11(b)に比べれば急峻に変動するが、図10(b)と比べると緩やかに変動する。すなわち、炉団温度の制御の高精度化と、操業の安定化と、の双方を考慮することが出来る。
【0145】
[まとめ]
以上のように本実施形態では、処理装置100は、中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(t)に対してバンド幅BWを設定し、設定したバンド幅BWに炉団温度Tr(t)の予測値が入るための投入熱量Qinの範囲である操作範囲ORを設定し、設定した操作範囲OR内から、燃焼室3に投入する投入熱量Qin(tc+1)を決定する。したがって、燃焼室3に投入する投入熱量Qin(tc+1)を決定する際に、バンド幅BWの範囲内であれば炉団温度Tr(t)が中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(t)からずれることを許容することが出来る。よって、炉団温度Tr(t)が中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(t)に過度に近づく(または一致する)ように燃焼室3に投入する投入熱量Qin(tc+1)が決定されることを抑制することが出来る。これにより、燃焼室3に投入する投入熱量Qin(tc+1)が急激に変動することを抑制することが出来る。
【0146】
また、本実施形態では、処理装置100は、炉団温度Tr(tc+m)の予測値が中心目標炉温Tr_ref_mid(tc+m)に対応する値になるときの中心投入熱量Qin_mid(tc+1)を用いて、燃焼室3に投入する投入熱量Qin(tc+1)を決定する。したがって、燃焼室3に投入する投入熱量Qin(tc+1)を決定するための指標として、中心投入熱量Qin_mid(tc+1)を用いることが出来る。よって、例えば、炉団温度Tr(tc+m)の予測値が中心目標炉温Tr_ref_mid(tc+m)から大きく異ならないように燃焼室3に投入する投入熱量Qin(tc+1)を決定することが出来る。
【0147】
また、本実施形態では、処理装置100は、炉団温度Tr(tc+1)の予測値を算出する予測モデルと、炉団温度Tr(tc+m)の予測値と中心目標炉温Tr_ref_mid(tc+m)との差を少なくとも評価する第3評価関数J3と、を用いたモデル予測制御を行うことにより、炉団温度Tr(tc+m)の予測値が中心目標炉温Tr_ref_mid(tc+m)に対応する値になるときの中心投入熱量Qin_mid(tc+1)を算出する。したがって、投入熱量が炉団温度に反映されるまでの時間遅れが長い場合であっても、モデル予測制御によって、燃焼室3に投入する投入熱量Qin(tc+1)を高精度に決定することが出来る。
【0148】
また、本実施形態では、処理装置100は、操作範囲OR内の複数の投入熱量の値と、当該複数の投入熱量の値の重み係数と、に基づいて、燃焼室3に投入する投入熱量Qin(tc+1)を決定する。したがって、複数の操業要求を考慮して、燃焼室3に投入する投入熱量Qin(tc+1)を決定することが出来る。この場合、複数の投入熱量の値は、上限投入熱量Qin_max(tc+1)の最適解および下限投入熱量Qin_min(tc+1)の最適解と、中心投入熱量Qin_mid(tc+1)の最適解と、を用いて定められても良い。このようにすれば、制御の高精度化と、操業の安定化と、の双方を考慮して、燃焼室3に投入する投入熱量Qin(tc+1)を決定することが出来る。
【0149】
また、本実施形態では、処理装置100は、時刻tcにおける投入熱量Qin(tc)の実績値に対する、時刻tc+1における中心投入熱量Qin_mid(tc+1)の最適解の時間変化(具体的には時刻tcにおける炉団温度Tr(tc)の実績値と、時刻tc+1における炉団温度Tr(tc+1)の予測値と、の差の絶対値)に基づいて、燃焼室3に投入する投入熱量Qin(tc+1)を決定する。したがって、例えば、燃焼室3に対する投入熱量Qin(tc+1)として、時間変化が極端に大きくなるような投入熱量が決定されることを抑制することが出来る。
【0150】
また、本実施形態では、処理装置100は、投入熱量Qin(t)に対する炉団温度Tr(t)の時間応答と、炉団温度Tr(t)の予測値を算出する予測モデルの予測精度と、中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(t)と、コークス炉1の操業実績と、のうちの少なくともいずれか一つに基づいてバンド幅BWを設定する。したがって、コークス炉1および処理装置100の実情に応じてバンド幅BWを設定することが出来る。
【0151】
また、本実施形態では、処理装置100は、炉団温度Tr(tc+m)の予測値が上限目標炉温Tr_ref_max(tc+m)に対応する値になるときの投入熱量Qin_max(tc+1)である上限投入熱量Qin_max(tc+1)を操作範囲ORの上限値として設定する。また、処理装置100は、炉団温度Tr(tc+m)の予測値が下限目標炉温Tr_ref_min(tc+m)に対応する値になるときの投入熱量Qin_min(t+1)である下限投入熱量Qin_min(tc+1)を操作範囲ORの下限値として設定する。したがって、操作範囲ORの上下限を、炉団温度Tr(tc+m)の上下限に対応させることが出来る。よって、炉団温度Tr(tc+m)が炉団温度Tr(tc+m)の上下限(上限投入熱量Qin_max(tc+1)および下限投入熱量Qin_min(tc+1)から外れるような投入熱量が、燃焼室3に投入する投入熱量Qin(tc+1)として決定されることを抑制することが出来る。
【0152】
また、本実施形態では、処理装置100は、炉団温度Tr(tc+1)の予測値を算出する予測モデルと、炉団温度Tr(tc+m)の予測値と上限目標炉温Tr_ref_max(tc+m)との差を少なくとも評価する第1評価関数J1と、を用いたモデル予測制御を行うことにより、炉団温度Tr(tc+m)の予測値が上限目標炉温Tr_ref_max(tc+m)に対応する値になるときの上限投入熱量Qin_max(tc+1)を算出する。また、処理装置100は、炉団温度Tr(tc+1)の予測値を算出する予測モデルと、炉団温度Tr(tc+m)の予測値と下限投入熱量Qin_min(tc+1)との差を少なくとも評価する第2評価関数J2と、を用いたモデル予測制御を行うことにより、炉団温度Tr(tc+m)の予測値が下限投入熱量Qin_min(tc+1)に対応する値になるときの下限投入熱量Qin_min(tc+1)を算出する。したがって、投入熱量が炉団温度に反映されるまでの時間遅れが長い場合であっても、燃焼室3に投入する投入熱量Qin(tc+1)を高精度に決定することが出来る。
【0153】
<変形例>
本実施形態では、(3)式~(5)式に例示するように、上限投入熱量Qin_max(tc+1)の最適解および下限投入熱量Qin_min(tc+1)の最適解と、中心投入熱量Qin_mid(tc+1)の最適解と、を用いて、燃焼室3に投入する投入熱量Qin(tc+1)を算出(決定)する場合を例示した。しかしながら、必ずしもこのようにして燃焼室3に投入する投入熱量Qin(tc+1)を算出(決定)する必要はない。例えば、投入熱量Qin(t)の時間変化のみに基づいて、操作範囲OR内から、燃焼室3に投入する投入熱量Qin(tc+1)を算出(決定)しても良い。このようにする場合、例えば、投入熱量Qin(t)の実績値の時間変化に基づいて、操作範囲OR内から投入熱量Qin(tc+1)を算出(決定)しても良い。具体的には、例えば、時刻tc+1よりも前の複数の時刻における投入熱量Qin(t)の実績値から、投入熱量Qin(t)の時間変化を示す近似関数を算出し、当該近似関数を用いて時刻tc+1における投入熱量Qin(tc+1)を算出(外挿)しても良い。このように投入熱量Qin(t)の実績値を用いて表される投入熱量Qin(t)の時間変化を用いていれば、本実施形態で説明したように、必ずしも投入熱量Qin(t)の予測値(例えば、時刻tc+1における中心投入熱量Qin_mid(tc+1)の最適解)を用いて、投入熱量Qin(t)の時間変化を算出しなくても良い。なお、当該近似関数は線形関数であっても非線形関数であっても良い。
【0154】
また、本実施形態では、上限目標炉温Tr_ref_max(t)と、下限目標炉温Tr_ref_min(t)と、の双方を設定する場合を例示した。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、バンド幅BWの上限を、目標軌道決定部122により最適解として決定された目標炉温軌道Tr_ref(t)(中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(t))に一致させても良い。この場合、上限目標炉温Tr_ref_max(tc+m)の設定は行われなくてもよい。したがって、上限投入熱量Qin_max(tc+1)の設定は行わなくても良い。また、バンド幅BWの下限を、目標軌道決定部122により最適解として決定された目標炉温軌道Tr_ref(t)(中心目標炉温軌道Tr_ref_mid(t))に一致させても良い。この場合、下限目標炉温Tr_ref_min(tc+m)の設定は行われなくてもよい。したがって、下限投入熱量Qin_min(tc+1)の設定は行わなくても良い。以上のように、上限目標炉温Tr_ref_max(tc+m)と、下限目標炉温Tr_ref_min(tc+m)と、のうち、少なくとも一方が設定されていれば良い。また、上限投入熱量Qin_max(tc+1)と、下限投入熱量Qin_min(tc+1)と、のうち、少なくとも一方が設定されていれば良い。
【0155】
また、本実施形態では、制御対象がコークス炉1を含むコークス製造プロセスである場合を例示した。しかしながら、制御対象はコークス炉1を含むコークス製造プロセスに限定されず、制御量の目標値が存在する制御対象であれば、制御対象は限定されない。
【0156】
例えば、制御対象は、相前後して加熱される加熱対象に対し連続的に加熱制御を行うことが可能な工業炉を含む、コークス製造プロセス以外の製造プロセスであっても良い。加熱対象は、固体であっても液体であっても気体であっても良い。このような工業炉の具体例として、高炉、転炉、熱風炉、および連続焼鈍炉がある。このような工業炉では、操作量が制御量に反映されるまでの時間遅れが長い場合がある。この場合、本実施形態で説明したように、例えば、将来のプロセスの状態変化を予測モデルで予測しながら操作量を最適化するモデル予測制御を行うことが好ましいところ、予測モデルの予測誤差が大きい場合に操作量がハンチングし易くなる。よって、このような工業炉は、本実施形態の手法を適用するのが好ましい制御対象の一例となる。
【0157】
また、例えば、コークス炉のように非定常操業時において加熱制御が行われることがある工業炉では、予測モデルの学習用の実績データを多量に収集するのが容易ではなく、予測モデルの予測誤差が大きくなり易い。したがって、このような工業炉の非定常操業時における加熱制御の際に本実施形態の手法を適用するのが好ましい。なお、非定常操業とは、日常的に行われる操業(定常操業)とは異なる操業を指す。非定常操業は、例えば、制御対象を構成する要素の検査時の操業、修理時の操業、操業異常時の操業、および予め定められている操業スケジュールとは異なる操業(例えば、一時的な増産および減産のための操業)のうち、少なくとも一つを含んでいても良く、また、加熱対象を加熱する操業であっても、加熱対象を加熱しない操業であっても良い。また、非定常操業は、例えば、実施頻度が最も高い操業以外の操業でも良い。
【0158】
(その他の実施形態)
なお、以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び前記プログラム等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。また、本発明の実施形態は、PLC(Programmable Logic Controller)により実現されてもよいし、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用のハードウェアにより実現されてもよい。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0159】
なお、以上の実施形態の開示は、例えば以下のようになる。
(開示1)
制御対象に与える操作量を制御量の予測値と目標値とに基づいて決定する処理装置であって、
前記制御量の目標値に対する許容誤差範囲であるバンド幅を設定するバンド幅設定部と、
前記制御量の予測値が前記バンド幅に入るための前記操作量の範囲である操作範囲を設定する操作範囲設定部と、
前記操作範囲内から、前記制御対象に与える前記操作量を決定する操作量決定部と、
を備える処理装置。
(開示2)
前記操作量決定部は、前記制御量の予測値が目標値に対応する値になるときの前記操作量の予測値を用いて、前記操作量を決定する、開示1に記載の処理装置。
(開示3)
前記操作量決定部は、前記制御量の予測値を算出する予測モデルと、前記制御量の予測値と目標値との差を少なくとも評価する評価関数と、を用いたモデル予測制御を行うことにより、前記制御量の予測値が目標値に対応する値になるときの前記操作量の予測値を算出する、開示2に記載の処理装置。
(開示4)
前記操作量決定部は、前記操作範囲内の複数の値と、前記制御対象に与える前記操作量に対する当該複数の値の相対的な重要度を示す重み係数と、に基づいて、前記操作量を決定する、開示1~3のいずれか一つに記載の処理装置。
(開示5)
前記複数の値は、前記制御量の予測値が前記バンド幅の上限値および下限値に対応する値になるときの前記操作量の予測値に基づく値と、前記制御量の予測値が目標値に対応する値になるときの前記操作量の予測値と、を含む、開示4に記載の処理装置。
(開示6)
前記操作量決定部は、前記操作量の実績値を用いて表される前記操作量の時間変化に基づいて、前記操作量を決定する、開示1~5のいずれか一つに記載の処理装置。
(開示7)
前記バンド幅設定部は、前記操作量に対する前記制御量の時間応答と、前記制御量の予測精度と、前記制御量の目標値と、前記制御対象の操業実績と、のうちの少なくともいずれか一つに基づいて前記バンド幅を設定する、開示1~6のいずれか一つに記載の処理装置。
(開示8)
前記操作範囲設定部は、前記制御量の予測値が前記バンド幅の上限値に対応する値であるバンド幅上限値になるときの前記操作量の予測値を前記操作範囲の上限値として設定することと、前記制御量の予測値が前記バンド幅の下限値に対応する値であるバンド幅下限値になるときの前記操作量の予測値を前記操作範囲の下限値として設定することと、のうち、少なくとも一方を行う、開示1~7のいずれか一つに記載の処理装置。
(開示9)
前記操作範囲設定部は、前記制御量の予測値を算出する予測モデルと、前記制御量の予測値と前記バンド幅の上限値との差を少なくとも評価する評価関数と、を用いたモデル予測制御を行うことにより、前記制御量の予測値が前記バンド幅上限値になるときの前記操作量の予測値を算出することと、前記制御量の予測値を算出する予測モデルと、前記制御量の予測値と前記バンド幅の下限値との差を少なくとも評価する評価関数と、を用いたモデル予測制御を行うことにより、前記制御量の予測値が前記バンド幅下限値になるときの前記操作量の予測値を算出することと、のうち、少なくとも一方を行う、開示8に記載の処理装置。
(開示10)
前記制御対象は、相前後して加熱される加熱対象に対し連続的に加熱制御を行うことが可能な工業炉を含む、開示1~9のいずれか一つに記載の処理装置。
(開示11)
前記制御対象は、非定常操業時において加熱制御が行われることがある工業炉を含む、開示1~10のいずれか一つに記載の処理装置。
(開示12)
制御対象に与える操作量を制御量の予測値と目標値とに基づいて決定する処理方法であって、
前記制御量の目標値に対する許容誤差範囲であるバンド幅を設定するバンド幅設定工程と、
前記制御量の予測値が前記バンド幅に入るための前記操作量の範囲である操作範囲を設定する操作範囲設定工程と、
前記操作範囲内から、前記制御対象に与える前記操作量を決定する操作量決定工程と、
を備える処理方法。
(開示13)
開示1~11のいずれか一つに記載の処理装置の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0160】
1 コークス炉
2 炭化室
3 燃焼室
4 炉壁
5 調整弁
6 温度計
7 押出ラム
8 温度計
9 ガイド車
100 処理装置
110 データ取得部
120 目標軌道取得部
121 予測値算出部
121a 操作量予測部
121b 状態予測部
122 目標軌道決定部
130 バンド幅設定部
140 操作範囲設定部
141a 上限操作量決定部
141b 下限操作量決定部
142a 上限制御量予測部
142b 下限制御量予測部
150 操作量決定部
151 中心操作量決定部
152 中心制御量予測部
153 操作量算出部
160 制御部
c 現在時刻
s 非定常操業の開始時刻
e 非定常操業の終了時刻
BW バンド幅
OR 操作範囲
Qin(t) 投入熱量
Qin_max(tc+1) 上限投入熱量
Qin_mid(tc+1) 中心投入熱量
Qin_min(tc+1) 下限投入熱量
Tr(t) 炉団温度
Tr_ref_max(t) 上限目標炉温軌道
Tr_ref_mid(t) 中心目標炉温軌道
Tr_ref_min(t) 下限目標炉温軌道
ΔQin_max 投入熱量の許容増加量
ΔQin_min 投入熱量の許容減少量
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12