(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172923
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ボビン処理装置
(51)【国際特許分類】
B65H 67/06 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
B65H67/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090990
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮
【テーマコード(参考)】
3F112
【Fターム(参考)】
3F112AA06
3F112FA07
3F112FB01
3F112GA02
3F112GC01
(57)【要約】
【課題】任意形状の給糸ボビンの姿勢を高速に安定させる。
【解決手段】ボビン処理装置100は、ボビン方向揃え装置1と、第1供給部3と、第2供給部5と、を備える。ボビン方向揃え装置1は、給糸ボビンBに対して所定の処理を実行する。第1供給部3は、給糸ボビンBを載置する載置部材31を有し、載置部材31からボビン方向揃え装置1に給糸ボビンBを供給する。第2供給部5は、給糸ボビンBを載置部材31に落下させる。載置部材31は、給糸ボビンBを支持する一対の凸部31bを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給糸ボビンに対して所定の処理を実行する処理装置と、
前記給糸ボビンを載置する載置部材を有し、前記載置部材から前記処理装置に前記給糸ボビンを供給する第1供給部と、
前記給糸ボビンを前記載置部材に落下させる第2供給部と、
を備え、
前記載置部材は、前記給糸ボビンを支持する一対の凸部を有する、
ボビン処理装置。
【請求項2】
前記給糸ボビンを前記第2供給部まで搬送する搬送コンベアをさらに備え、
前記一対の凸部は、前記搬送コンベアの搬送方向に沿って所定の間隔を空けて配置される、請求項1に記載のボビン処理装置。
【請求項3】
前記給糸ボビンを前記第2供給部まで搬送する搬送コンベアをさらに備え、
前記一対の凸部は、前記搬送コンベアの搬送方向に直交する方向に延びている、請求項1又は2に記載のボビン処理装置。
【請求項4】
前記載置部材は、前記一対の凸部を配置した板状部材を有する、請求項1~3のいずれかに記載のボビン処理装置。
【請求項5】
前記一対の凸部は、前記板状部材を折り曲げることで形成される、請求項4に記載のボビン処理装置。
【請求項6】
前記第1供給部は、前記載置部材を水平方向に移動させることで、前記給糸ボビンを前記処理装置に落下させる駆動部を有する、請求項1~5のいずれかに記載のボビン処理装置。
【請求項7】
前記駆動部は、エアシリンダにより前記載置部材を移動させる、請求項6に記載のボビン処理装置。
【請求項8】
前記処理装置は、機械的な構造で前記給糸ボビンの向きを決定する装置である、請求項1~7のいずれかに記載のボビン処理装置。
【請求項9】
前記給糸ボビンは、第1端部と、前記第1端部よりも大きい第2端部と、を有し、
前記処理装置は、
前記給糸ボビンの前記第1端部を支持する端部支持部と、
前記載置部材から供給された前記給糸ボビンの移動を制限する端部移動制限部と、
前記端部移動制限部に対して近接するか離間する方向に移動可能である移動部と、を有し、
前記移動部が前記端部移動制限部に近接することにより、前記移動部と前記端部移動制限部との間で前記第1端部よりも大きくかつ前記第2端部よりも小さい隙間が形成され、前記載置部材から供給された前記給糸ボビンの前記第1端部が前記隙間を通過して前記端部支持部に支持される一方、前記第2端部が前記移動部と前記端部移動制限部により移動を制限され、
その後、前記移動部が前記端部移動制限部から離間することにより、前記給糸ボビンが前記第2端部を下に向けた状態で落下する、請求項8に記載のボビン処理装置。
【請求項10】
前記第2供給部は、前記給糸ボビンを前記載置部材の方向に押し出して落下させる、請求項1~9のいずれかに記載のボビン処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給糸ボビンに対して所定の処理を実行する装置と、当該装置に給糸ボビンを供給する装置と、を備えるボビン処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、給糸ボビンの方向を揃えるなどの所定の処理を行う装置が知られている。例えば、給糸ボビンの糸を巻き取ってパッケージを形成する自動ワインダに対して給糸ボビンを供給するボビン供給システムにおいて、給糸ボビンを一定の向きに向けて(例えば、給糸ボビンの芯管の径が大きい方の端部を下に向けて)自動ワインダに供給する装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
給糸ボビンに対して所定の処理を行う処理装置においては、外部(例えば、パーツフィーダ)から供給された給糸ボビンを、その姿勢を安定させた状態で処理装置に供給することが好ましいことがある。このため、上記の処理装置において、外部から供給された給糸ボビンを所定の載置部材に落下させて載置し、載置部材において給糸ボビンの姿勢を安定させた後に、載置部材に載置された給糸ボビンを処理装置に供給することを検討している。
【0005】
上記の構成では、給糸ボビンを載置部材に落下させて高速に給糸ボビンを供給できる一方で、以下のような問題があることが判明した。すなわち、載置部材を単純な板状部材とした場合、給糸ボビンを載置部材に落下させたときに、載置部材全体で給糸ボビンの落下エネルギーを受けて給糸ボビンが載置部材上で跳ねるなどして、給糸ボビンの姿勢が安定するまでに時間がかかることが判明した。そのため、載置部材を板状部材とした場合には、給糸ボビンを処理装置に高速に供給することができなかった。また、給糸ボビンを高速に供給するために、姿勢が安定する前に給糸ボビンを処理装置に供給した場合には、給糸ボビンを処理装置に適切な状態で供給することが難しかった。
【0006】
また、載置部材を単純な板状部材とした場合、例えば、芯管の一方の端部に偏って糸が巻かれているなど状態が不適切な給糸ボビンを載置部材に載置したときに、給糸ボビンが載置部材において1点のみで支持された状態となって、載置部材上で給糸ボビンの姿勢が安定しにくくなることがあった。
【0007】
本発明の目的は、給糸ボビンに所定の処理を行うボビン処理装置に姿勢を安定させた給糸ボビンを供給する場合において、任意形状の給糸ボビンの姿勢を高速に安定させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明のボビン処理装置は、処理装置と、第1供給部と、第2供給部と、を備える。処理装置は、給糸ボビンに対して所定の処理を実行する。第1供給部は、給糸ボビンを載置する載置部材を有し、載置部材から処理装置に給糸ボビンを供給する。第2供給部は、給糸ボビンを載置部材に落下させる。このボビン処理装置において、載置部材は、給糸ボビンを支持する一対の凸部を有する。
【0009】
上記のボビン処理装置では、載置部材が、給糸ボビンを支持する一対の凸部を有している。これにより、第2供給部から落下した給糸ボビンは、第1供給部において載置部材の一対の凸部によって二点で支持される。落下した給糸ボビンを点で支持することで、給糸ボビンの落下エネルギーを早急に減衰させることができる。このため、第2供給部から落下した給糸ボビンは、載置部材において短時間で跳ねることを止め、早急にその姿勢が安定する。この結果、姿勢が安定した給糸ボビンを処理装置に高速に供給できるので、ボビン処理装置の処理能力を向上できる。
【0010】
また、給糸ボビンを一対の凸部によって支持することにより、いかなる形状の給糸ボビンであっても二点で支持できる。これにより、給糸ボビンの形状にかかわらず早急に姿勢を安定させることができる。この結果、任意形状の給糸ボビンを、その姿勢を安定させた状態で、高速に処理装置に供給できる。
【0011】
上記のボビン処理装置は、搬送コンベアをさらに備えてもよい。搬送コンベアは、給糸ボビンを第2供給部まで搬送する。この場合、一対の凸部は、搬送コンベアの搬送方向に沿って所定の間隔を空けて配置されてもよい。これにより、載置部材において、任意形状の給糸ボビンを離れた二点で支持できるので、任意形状の給糸ボビンを安定して支持できる。
【0012】
上記のボビン処理装置において、一対の凸部は、前記搬送コンベアの搬送方向に直交する方向に延びていてもよい。これにより、載置部材の任意の位置において給糸ボビンを二点で支持できる。
【0013】
上記のボビン処理装置において、載置部材は、一対の凸部を配置した板状部材を有してもよい。これにより、載置部材を安定させることができるので、一対の凸部によってより安定して給糸ボビンを支持できる。
【0014】
上記のボビン処理装置において、一対の凸部は、板状部材を折り曲げることで形成されてもよい。これにより、一対の凸部を低コストで容易に形成できる。
【0015】
上記のボビン処理装置において、第1供給部は、載置部材を水平方向に移動させることで、給糸ボビンを処理装置に落下させる駆動部を有してもよい。これにより、載置部材から処理装置へ給糸ボビンを供給する際の衝撃を少なくできるので、姿勢が安定した状態の給糸ボビンを処理装置に供給できる。
【0016】
上記のボビン処理装置において、駆動部は、エアシリンダにより載置部材を移動させてもよい。これにより、載置部材を移動する際の衝撃を少なくして、載置部材から処理装置へ給糸ボビンを供給する際の衝撃を少なくできる。
【0017】
上記のボビン処理装置において、処理装置は、機械的な方法で給糸ボビンの向きを決定する装置であってもよい。機械的な構造で給糸ボビンの向きを決定する処理装置において、処理装置に供給される際の給糸ボビンの姿勢が安定することで、処理装置において給糸ボビンの向きの決定に失敗する確率が減少する。
【0018】
上記のボビン処理装置において、給糸ボビンは、第1端部と、第1端部よりも大きい第2端部と、を有してもよい。また、処理装置は、端部支持部と、端部移動制限部と、移動部と、を有してもよい。端部支持部は、給糸ボビンの第1端部を支持する。端部移動制限部は、載置部材から供給された給糸ボビンの移動を制限する。移動部は、端部移動制限部に対して近接するか離間する方向に移動可能である。
【0019】
上記のボビン処理装置において、移動部が端部移動制限部に近接することにより、移動部と端部移動制限部との間で前記第1端部よりも大きくかつ第2端部よりも小さい隙間が形成され、載置部材から供給された給糸ボビンの第1端部が隙間を通過して端部支持部に支持される一方、第2端部が移動部と端部移動制限部により移動を制限される。その後、移動部が端部移動制限部から離間することにより、給糸ボビンが第2端部を下に向けた状態で落下する。これにより、機械的な構成により、給糸ボビンの供給方向を決定できる。
【0020】
上記のボビン処理装置において、第2供給部は、給糸ボビンを載置部材の方向に押し出して落下させてもよい。これにより、給糸ボビンを載置部材に高速に供給できる。
【発明の効果】
【0021】
上記のボビン処理装置では、処理装置に給糸ボビンを供給する第1供給部の載置部材が、一対の凸部によって給糸ボビンを二点で支持するので、任意形状の給糸ボビンの姿勢を高速に安定させることができる。この結果、姿勢が安定した給糸ボビンを処理装置に高速に供給できるので、ボビン処理装置の処理能力を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図5】給糸ボビンが一対の凸部により支持された状態の一例を示す図。
【
図6】任意形状の給糸ボビンが一対の凸部により支持された状態の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.第1実施形態
(1)ボビン処理装置の概略
以下、第1実施形態に係るボビン処理装置100を説明する。第1実施形態に係るボビン処理装置100は、外部から供給された給糸ボビンBを、自動ワインダに供給する装置である。自動ワインダは、複数台のワインダユニットを備える、ワインダユニットは、給糸ボビンBから解舒された糸を巻き取ってパッケージを形成する装置である。ボビン処理装置100は、給糸ボビンBを一定の向きに向けて自動ワインダに供給する。
【0024】
図1に示すように、給糸ボビンBは、糸が巻かれた芯管B1を有する。芯管B1は、細長い円筒状の部材であって、一方の端部B11から他方の端部B12に向かって径が直線的に増加するように形成されている。すなわち、芯管B1の端部B12の径は、端部B11の径より大きくなっている。ボビン処理装置100は、給糸ボビンBの径が大きい端部B12を下に向けた状態で、給糸ボビンBを自動ワインダに供給する。
図1は、給糸ボビンBを示す図である。
【0025】
(2)ボビン処理装置の構成
図2及び
図3を用いて、ボビン処理装置100の構成を説明する。
図2は、ボビン処理装置100の断面図である。
図3は、ボビン処理装置100の上面図である。
図2及び
図3では、
図3の紙面横方向(搬送コンベア51の延長方向、搬送コンベア51による給糸ボビンBの搬送方向)をX方向とし、水平方向においてX方向に対して垂直な方向をY方向とする。X方向、Y方向に垂直な高さ方向をZ方向とする。
【0026】
ボビン処理装置100は、ボビン方向揃え装置1(処理装置の一例)と、第1供給部3と、第2供給部5と、を備える。
【0027】
(2-1)ボビン方向揃え装置
ボビン方向揃え装置1は、ボビン処理装置100の筐体CHの下部、すなわち、第1供給部3の下部に配置される。後述するように、第1供給部3は、載置部材に載置された給糸ボビンBを落下させることで、給糸ボビンBをボビン方向揃え装置1に供給する。
【0028】
ボビン方向揃え装置1は、第1供給部3から供給された給糸ボビンBの向きを決定する。具体的には、ボビン方向揃え装置1は、給糸ボビンBの端部B12を下に向けた状態で、給糸ボビンBを自動ワインダに供給する。ボビン方向揃え装置1は、端部支持部11と、端部移動制限部13と、移動部15と、を有する。
【0029】
端部支持部11は、筐体CHの下端側に配置される。端部支持部11は、X方向に沿って所定の間隔(芯管B1の長さ程度の間隔)を空けて一対設けられる。端部支持部11は、上部にV字溝11aを有する。V字溝11aは、給糸ボビンBの端部B11を支持可能となっている。
【0030】
端部移動制限部13は、端部支持部11の上部に配置される。端部移動制限部13は、X方向に所定の間隔(芯管B1の長さ程度の間隔)を空けて一対設けられる。端部移動制限部13は、Y方向に突出する突出部13aを有する。
【0031】
移動部15は、Y方向において端部移動制限部13に隣接し、端部移動制限部13の突出部13aと対向するよう設けられる。移動部15は、X方向に所定の間隔(芯管B1の長さ程度の間隔)を空けて一対設けられる。移動部15は、X方向の軸(X軸)周りに回動可能となっており、突出部13aに対して近接するか離間する方向(Y方向)に移動可能となっている。
【0032】
移動部15には、ガイド部15aが設けられる。ガイド部15aは、移動部15の回動に従ってX軸周りに回動し、端部支持部11に近接するか離間する方向に移動可能となっている。ガイド部15aが端部支持部11に近接しているときに、給糸ボビンBを端部支持部11にガイドする。
【0033】
図2に示すように、移動部15が突出部13aに近接し、ガイド部15aが端部支持部11に近接しているときには、突出部13aと移動部15との間には、隙間Gが形成されている。隙間Gは、給糸ボビンBの端部B11の直径よりも大きく、かつ、端部B12の直径よりも小さい。すなわち、給糸ボビンBの端部B11は隙間Gを通過可能である一方、端部B12は隙間Gを通過できない。
【0034】
上記の構成を有するボビン方向揃え装置1では、
図2に示すように移動部15が突出部13aに近接し、ガイド部15aが端部支持部11に近接した状態のときに、第1供給部3から給糸ボビンBが落下すると、当該給糸ボビンBの端部B11は、隙間Gを通過し、ガイド部15aによって端部支持部11にガイドされ、端部支持部11のV字溝11aに支持される。その一方、端部B11よりも大きい径を有する端部B12は、端部移動制限部13の突出部13aと移動部15とにより移動が制限され隙間Gを通過できず、突出部13aと移動部15とによりに支持された状態となる。
【0035】
この状態で、移動部15を突出部13aから離間する方向に移動させると、それとともにガイド部15aが端部支持部11から離間し、突出部13aと移動部15により支持されていた端部B12のみが落下を開始する。この結果、給糸ボビンBは、大きな径を有する端部B12を下に向けた状態で落下を開始する。
【0036】
給糸ボビンBの落下が進むと、端部支持部11のV字溝11aによる端部B11の支持も解除され、給糸ボビンB全体が、端部B12を下に向けた状態で落下する。このようにして、ボビン方向揃え装置1は、端部B12を下に向けた状態の給糸ボビンBを自動ワインダに供給できる。
【0037】
上記のように、ボビン方向揃え装置1では、同じ構造を有する端部支持部11、端部移動制限部13、及び、移動部15が、X方向に所定の間隔を空けて一対設けられている。これにより、ボビン方向揃え装置1は、供給される給糸ボビンBの長手方向の向き、すなわち、供給される給糸ボビンBの端部B12がX方向の右側にあるか左側にあるかによらず、端部B12を下に向けた状態の給糸ボビンBを自動ワインダに供給できる。
【0038】
このように、本実施形態のボビン方向揃え装置1は、給糸ボビンBの径を検出するセンサを用いることなく、機械的な構造で自動ワインダに供給する給糸ボビンBの向きを決定することができる。
【0039】
(2-2)第1供給部
第1供給部3は、ボビン方向揃え装置1の上部に配置され、第2供給部5から供給された給糸ボビンBをボビン方向揃え装置1に供給する。第1供給部3は、載置部材31と、第1駆動部33と、を有する。
【0040】
載置部材31は、Y方向において第2供給部5に隣接して配置される。載置部材31には、第2供給部5から供給された給糸ボビンBが載置される。載置部材31は、
図4に示すように、板状部材31aと、一対の凸部31bと、駆動接続部31cと、を有する。
図4は、載置部材31の斜視図である。板状部材31aは、X-Y平面と平行な板状の部材である。
【0041】
一対の凸部31bは、板状部材31aのX方向の端部に配置され、板状部材31aから上方向に突出した部分である。一対の凸部31bが板状部材31aから上方向に突出しているので、第2供給部5から落下して供給された給糸ボビンBは、一対の凸部31bにより支持される。載置部材31において、一対の凸部31bを板状部材31aに配置することにより、載置部材31を安定させることができる。この結果、一対の凸部31bによってより安定して給糸ボビンBを支持できる。
【0042】
本実施形態において、一対の凸部31bは、板状部材31aのX方向の両端部を折り曲げることにより形成される。一対の凸部31bを、板状部材31aのX方向の両端部を折り曲げることにより形成することで、一対の凸部31bを低コストで容易に形成できる。
【0043】
上記のように、一対の凸部31bは、板状部材31aのX方向の両端部を折り曲げて形成されている。このため、一対の凸部31bは、X方向(搬送コンベア51の搬送方向)において、板状部材31aのX方向の幅に相当する距離だけ間隔を空けて配置されている。これにより、一対の凸部31bは、給糸ボビンBの端部に近い位置の二点で給糸ボビンBを支持できるので、給糸ボビンBを安定して支持できる。この結果、給糸ボビンBの姿勢をより安定化できる。
【0044】
なお、載置部材31に載置されたときに、給糸ボビンBは、X方向と平行又はX方向からY方向に若干傾斜した状態となる。すなわち、載置部材31に載置された給糸ボビンBの長手方向は、X方向と平行又はX方向からY方向に若干傾斜している。
【0045】
また、一対の凸部31bは、Y方向に延びている。具体的には、一対の凸部31bは、Y方向において、板状部材31aのY方向の長さと同程度の長さを有している。これにより、一対の凸部31bは、載置部材31のY方向の任意の位置において給糸ボビンBを支持できる。例えば、第2供給部5から落下した給糸ボビンBがY方向に転がって移動したとしても、一対の凸部31bは、移動後の位置においても給糸ボビンBを支持できる。
【0046】
駆動接続部31cは、板状部材31aのY方向の端部に配置され、板状部材31aから下方向に突出した部分である。後述するように、駆動接続部31cには、第1駆動部33が接続される。
【0047】
第1駆動部33は、軸部33aをY方向に進退させる駆動機構である。軸部33aの先端は、載置部材31の駆動接続部31cに固定されている。これにより、第1駆動部33は、載置部材31をY方向に移動させることができる。第1駆動部33は、例えば、空気の圧力によって軸部33aを進退させるエアシリンダである。
【0048】
載置部材31がY方向に第2供給部5から離間する方向に移動すると、載置部材31の一対の凸部31bに載置されている給糸ボビンBが、ボビン方向揃え装置1に向けて落下する。すなわち、載置部材31からボビン方向揃え装置1に給糸ボビンBが供給される。このように、載置部材31を水平方向(Y方向)に移動させて、一対の凸部31bに載置されている給糸ボビンBをボビン方向揃え装置1に向けて落下させることにより、載置部材31を下方向に回動させて落下させる場合と比較して、載置部材31からボビン方向揃え装置1へ給糸ボビンBを供給する際の衝撃を少なくできる。この結果、姿勢が安定した状態の給糸ボビンBをボビン方向揃え装置1に供給できる。
【0049】
また、載置部材31を水平方向に移動させる第1駆動部33をエアシリンダとすることにより、機械的な駆動機構と比較して、載置部材31を移動する際の衝撃を少なくして、載置部材31からボビン方向揃え装置1へ給糸ボビンBを供給する際の衝撃を少なくできる。
【0050】
(2-3)第2供給部
第2供給部5は、第1供給部3に対してY方向に隣接して配置される。第2供給部5は、外部(例えば、パーツフィーダ)から供給された給糸ボビンBを第1供給部3に押し出して供給する。第2供給部5は、搬送コンベア51と、押出部53と、を有する。
【0051】
搬送コンベア51は、パーツフィーダなどから供給された給糸ボビンBを、押出部53まで搬送する。搬送コンベア51は、無端の搬送ベルトのコンベアであり、X方向に並んで配置された一対のプーリに渡されている。一対のプーリのうちの1つは、モータ51aにより回転可能となっている。モータ51aによりプーリを回転させることで、搬送コンベア51搬送ベルトの搬送面は、X方向に移動する。
【0052】
外部から供給された給糸ボビンBは、搬送コンベア51に載置され、搬送コンベア51の搬送ベルトの搬送面がX方向に移動することで、それに従ってX方向に移動する。なお、給糸ボビンBは、搬送コンベア51に載置される際には、パーツフィーダなどによって長手方向がX方向に向くように搬送コンベア51に供給される。
【0053】
押出部53は、搬送コンベア51の搬送ベルトの搬送面により搬送されてきた給糸ボビンBを、第1供給部3の載置部材31に向けて押し出す。給糸ボビンBは、載置部材31に向けて押し出されることで、載置部材31に供給される。
【0054】
押出部53は、一対の押出部材53aと、第2駆動部53bと、ボビン移動部53cと、を有する。一対の押出部材53aは、X方向に所定の間隔を空けて配置される。一対の押出部材53aは、取付部材53dに固定されている。取付部材53dには、X方向に延びる開口OPが設けられている。一対の押出部材53aは、開口OPを貫通するネジ53eにより取付部材53dに固定される。
【0055】
また、開口OPはX方向に延びているので、ネジ53eによる各押出部材53aの固定を緩めることにより、各押出部材53aは、X方向に移動可能となる。押出部材53aをX方向に移動させることで、一対の押出部材53aのX方向における配置位置を調整できる。また、取付部材53dの開口OPの近傍には目盛53fが設けられている。これにより、各押出部材53aの配置位置、及び、一対の押出部材53aの間隔を視覚的に確認できる。
【0056】
第2駆動部53bは、軸部531をY方向に進退させる駆動機構である。軸部531の先端は、取付部材53dに固定されている。これにより、第2駆動部53bは、取付部材53dをY方向に移動させて、取付部材53dに固定されている一対の押出部材53aをY方向に移動できる。第2駆動部53bは、例えば、空気の圧力によって軸部531を進退させるエアシリンダである。
【0057】
第2駆動部53bは、一対の押出部材53aを第1供給部3に向けて移動させることで、一対の押出部材53aの位置まで搬送されてきた給糸ボビンBを、第1供給部3(載置部材31)に向けて押し出すことができる。
【0058】
ボビン移動部53cは、一対の押出部材53aと第1供給部3の載置部材31との間、かつ、搬送コンベア51の下部に配置される板状部材である。一対の押出部材53aにより第1供給部3に向けて押し出された給糸ボビンBは、ボビン移動部53cを移動し、ボビン移動部53cの先端から載置部材31へと落下する。
【0059】
ボビン移動部53cは、載置部材31よりも高い位置に配置されている。これにより、載置部材31に落下し飛び跳ねた給糸ボビンBが、ボビン移動部53c及び一つの押出部材53aまで戻ってしまうことを防止できる。
【0060】
(3)ボビン処理装置の動作
以下、ボビン処理装置100の動作を説明する。まず、パーツフィーダなどにより、給糸ボビンBが搬送コンベア51に供給される。次に、搬送コンベア51が、給糸ボビンBをX方向に移動させて、給糸ボビンBを一対の押出部材53aの位置まで移動させる。
【0061】
給糸ボビンBが一対の押出部材53aの位置に到達すると、第2駆動部53bにより一対の押出部材53aを第1供給部3に向けて移動させる。これにより、給糸ボビンBが、一対の押出部材53aにより第1供給部3に向けて押し出され、ボビン移動部53cの先端から、第1供給部3の載置部材31に落下する。
【0062】
載置部材31には一対の凸部31bが設けられているので、給糸ボビンBは、ボビン移動部53cの先端から落下した後、一対の凸部31b上に着地する。一対の凸部31bはY方向に延びる細長い形状を有しているので、ボビン移動部53cの先端から落下した給糸ボビンBは、
図5に示すように、一対の凸部31bによって、給糸ボビンBの端部の近傍の二点で支持される。
図5は、給糸ボビンBが一対の凸部31bにより支持された状態の一例を示す図である。
【0063】
落下した給糸ボビンBを点で支持することで給糸ボビンBの落下エネルギーを早急に減衰させることができるので、ボビン移動部53cから落下した給糸ボビンBは、載置部材31において短時間で跳ねることを止め、短時間でその姿勢が安定する。
【0064】
また、給糸ボビンBを二点で支持することで、一対の凸部31bは、いかなる形状の給糸ボビンBであっても二点で支持できる。例えば、
図6に示すように、端部B12側に偏って糸が巻かれた給糸ボビンBであっても、一対の凸部31bは、給糸ボビンBを端部の近傍の二点で支持できる。このように、任意形状の給糸ボビンBを二点で支持できることにより、任意形状の給糸ボビンBの姿勢を早急に安定させることができる。この結果、任意形状の給糸ボビンを、その姿勢を安定させた状態で、高速にボビン方向揃え装置1に供給できる。
図6は、任意形状の給糸ボビンBが一対の凸部31bにより支持された状態の一例を示す図である。
【0065】
載置部材31において給糸ボビンBの姿勢が安定した後、第1駆動部33により載置部材31を第2供給部5から離間する方向に移動させる。これにより、載置部材31に載置された給糸ボビンBが、下方向に落下し、ボビン方向揃え装置1に供給される。ボビン方向揃え装置1に供給された給糸ボビンBは、上記にて説明した原理により、給糸ボビンBの端部B12を下に向けた状態で落下し、自動ワインダに供給される。
【0066】
ボビン方向揃え装置1において、確実に、給糸ボビンBの端部B11を端部支持部11に支持させ、端部B12を端部支持部11に支持させないようにするためには、ボビン方向揃え装置1に対して、姿勢を安定させた状態の給糸ボビンBを供給することが好ましい。本実施形態の第1供給部3においては、載置部材31に一対の凸部31bを配置し、一対の凸部31bによって二点で給糸ボビンBを支持することにより、載置部材31において給糸ボビンBの姿勢を早急に安定させることができる。
【0067】
載置部材31において給糸ボビンBの姿勢を早急に安定させることができれば、第2供給部5から第1供給部3に給糸ボビンBを供給してから、第1供給部3からボビン方向揃え装置1に給糸ボビンを供給するまでの時間を短くできるので、姿勢が安定した給糸ボビンBをボビン方向揃え装置1に高速に供給できる。この結果、ボビン処理装置100の処理能力(単位時間あたりに自動ワインダに供給できる給糸ボビンBの数)を向上できる。
【0068】
2.他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
(A)第1供給部3及び第2供給部5は、ボビン方向揃え装置1に給糸ボビンBを供給する目的だけでなく、供給時に給糸ボビンBの姿勢を安定させる必要がある他の処理を実行するための装置に供給する目的にも適用できる。
【0069】
(B)ボビン方向揃え装置1において、端部移動制限部13の突出部13aの突出量(長さ)は、調整可能となっていてもよい。これにより、突出部13aと移動部15との間の隙間Gを調整できる。この結果、ボビン方向揃え装置1を、長さの異なる種々の軸芯に糸が巻かれた給糸ボビンBに対応できる。
【0070】
(C)板状部材31aと一対の凸部31bとを個別の部材として形成し、一対の凸部31bを板状部材31a上に固定することにより、載置部材31を形成してもよい。
【0071】
3.実施形態の特徴
上記実施形態は、下記のようにも説明できる。
(1)ボビン処理装置(例えば、ボビン処理装置100)は、処理装置(例えば、ボビン方向揃え装置1)と、第1供給部(例えば、第1供給部3)と、第2供給部(例えば、第2供給部5)と、を備える。処理装置は、給糸ボビン(例えば、給糸ボビンB)に対して所定の処理を実行する。第1供給部は、給糸ボビンを載置する載置部材(例えば、載置部材31)を有し、載置部材から処理装置に給糸ボビンを供給する。第2供給部は、給糸ボビンを載置部材に落下させる。このボビン処理装置において、載置部材は、給糸ボビンを支持する一対の凸部(例えば、一対の凸部31b)を有する。
【0072】
上記のボビン処理装置では、載置部材が、給糸ボビンを支持する一対の凸部を有している。これにより、第2供給部から落下した給糸ボビンは、第1供給部において載置部材の一対の凸部によって二点で支持される。落下した給糸ボビンを点で支持することで、給糸ボビンの落下エネルギーを早急に減衰させることができる。このため、第2供給部から落下した給糸ボビンは、載置部材において短時間で跳ねることを止め、早急にその姿勢が安定する。この結果、姿勢が安定した給糸ボビンを処理装置に高速に供給できるので、ボビン処理装置の処理能力を向上できる。
【0073】
また、給糸ボビンを一対の凸部によって支持することにより、いかなる形状の給糸ボビンであっても二点で支持できる。これにより、給糸ボビンの形状にかかわらず早急に姿勢を安定させることができる。この結果、任意形状の給糸ボビンを、その姿勢を安定させた状態で、高速に処理装置に供給できる。
【0074】
(2)上記(1)のボビン処理装置は、搬送コンベア(例えば、搬送コンベア51)をさらに備えてもよい。搬送コンベアは、給糸ボビンを第2供給部まで搬送する。この場合、一対の凸部は、搬送コンベアの搬送方向(例えば、X方向)に沿って所定の間隔を空けて配置されてもよい。これにより、載置部材において、任意形状の給糸ボビンを離れた二点で支持できるので、任意形状の給糸ボビンを安定して支持できる。
【0075】
(3)上記(1)又は(2)のボビン処理装置において、一対の凸部は、搬送コンベアの搬送方向に直交する方向(例えば、Y方向)に延びていてもよい。これにより、載置部材の任意の位置において給糸ボビンを二点で支持できる。
【0076】
(4)上記(1)~(3)のいずれかのボビン処理装置において、載置部材は、一対の凸部を配置した板状部材(例えば、板状部材31a)を有してもよい。これにより、載置部材を安定させることができるので、一対の凸部によってより安定して給糸ボビンを支持できる。
【0077】
(5)上記(4)のボビン処理装置において、一対の凸部は、板状部材を折り曲げることで形成されてもよい。これにより、一対の凸部を低コストで容易に形成できる。
【0078】
(6)上記(1)~(5)のいずれかのボビン処理装置において、第1供給部は、載置部材を水平方向に移動させることで、給糸ボビンを処理装置に落下させる駆動部(例えば、第1駆動部33)を有してもよい。これにより、載置部材から処理装置へ給糸ボビンを供給する際の衝撃を少なくできるので、姿勢が安定した状態の給糸ボビンを処理装置に供給できる。
【0079】
(7)上記(6)のボビン処理装置において、駆動部は、エアシリンダにより載置部材を移動させてもよい。これにより、載置部材を移動する際の衝撃を少なくして、載置部材から処理装置へ給糸ボビンを供給する際の衝撃を少なくできる。
【0080】
(8)上記(1)~(7)のいずれかのボビン処理装置において、処理装置は、機械的な構造で給糸ボビンの向きを決定する装置であってもよい。機械的な構造で給糸ボビンの向きを決定する処理装置において、処理装置に供給される際の給糸ボビンの姿勢が安定することで、処理装置において給糸ボビンの向きの決定に失敗する確率が減少する。
【0081】
(9)上記(8)のボビン処理装置において、給糸ボビンは、第1端部(例えば、端部B11)と、第1端部よりも大きい第2端部(例えば、端部B12)と、を有してもよい。また、処理装置は、端部支持部(例えば、端部支持部11)と、端部移動制限部(例えば、端部移動制限部13)と、移動部(例えば、移動部15)と、を有してもよい。端部支持部は、給糸ボビンの第1端部を支持する。端部移動制限部は、載置部材から供給された給糸ボビンの移動を制限する。移動部は、端部移動制限部に対して近接するか離間する方向に移動可能である。
【0082】
上記のボビン処理装置において、移動部が端部移動制限部に近接することにより、移動部と端部移動制限部との間で第1端部よりも大きくかつ第2端部よりも小さい隙間(例えば、隙間G)が形成され、載置部材から供給された給糸ボビンの第1端部が隙間を通過して端部支持部に支持される一方、第2端部が移動部と端部移動制限部により移動を制限される。その後、移動部が端部移動制限部から離間することにより、給糸ボビンが第2端部を下に向けた状態で落下する。これにより、機械的な構成により、給糸ボビンの供給方向を決定できる。
【0083】
(10)上記(1)~(9)のいずれかのボビン処理装置において、第2供給部は、給糸ボビンを載置部材の方向に押し出して落下させてもよい。これにより、給糸ボビンを載置部材に高速に供給できる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、給糸ボビンに対して所定の処理を実行するボビン処理装置に広く適用できる。
【符号の説明】
【0085】
100 :ボビン処理装置
1 :ボビン方向揃え装置
11 :端部支持部
11a :V字溝
13 :端部移動制限部
13a :突出部
15 :移動部
15a :ガイド部
CH :筐体
3 :第1供給部
31 :載置部材
31a :板状部材
31b :凸部
31c :駆動接続部
33 :第1駆動部
33a :軸部
5 :第2供給部
51 :搬送コンベア
51a :モータ
53 :押出部
53a :押出部材
53b :第2駆動部
531 :軸部
53c :ボビン移動部
53d :取付部材
OP :開口
53e :ネジ
53f :目盛
B :給糸ボビン
B1 :芯管
B11、B12 :端部