(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172937
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 29/38 20060101AFI20241205BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241205BHJP
B41J 29/393 20060101ALI20241205BHJP
B41J 29/46 20060101ALI20241205BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B41J29/38 301
B41J2/01 207
B41J2/01 401
B41J29/393 105
B41J29/46 Z
B41J2/165 207
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091014
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】笠松 大祐
【テーマコード(参考)】
2C056
2C061
【Fターム(参考)】
2C056EB27
2C056EB40
2C056EC26
2C056FA10
2C056HA58
2C061AP07
2C061AQ05
2C061AR01
2C061AS01
2C061BB08
2C061BB10
2C061BB11
2C061CM05
2C061CM17
2C061CQ04
2C061CQ24
2C061CQ41
2C061EE04
2C061EE09
2C061HH03
2C061HJ01
2C061HJ10
2C061HK11
2C061HV02
2C061HV33
2C061HV34
2C061KK04
2C061KK13
2C061KK14
2C061KK18
2C061KK22
2C061KK26
2C061KK34
2C061KK35
(57)【要約】
【課題】液体吐出装置の吐出検査部から出力される信号に基づいて、吐出検査部が故障していることをユーザに報知する。
【解決手段】吐出検査処理を実行して、インクジェットヘッドの複数のノズルの各々について異常があるか否かの情報を記憶させる(S101)。記憶された情報が、インクジェットヘッドのすべてのノズルについて異常があることを示している場合に(S102:YES)、吐出検査部が故障していることを示す検査部故障信号を出力する(S103)。記憶された情報が、いずれかのノズルについて異常がなく(S102:NO)、異常のあるノズルの数がA個以上であることを示している場合に(S104:NO)、ノズルからインクを排出させる排出処理を実行する(S105)。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルを有し、前記複数のノズルから液体を吐出するヘッドと、
前記複数のノズルの各々について、前記ノズルに異常があるか否かを示す第1検査信号を出力する第1吐出検査部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記複数のノズルについての、前記第1検査信号が前記ノズルに異常があることを示しているか否かに関連する第1条件を満たしていることに基づいて、前記第1吐出検査部が故障していることに応じた第1故障信号を出力することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
報知部をさらに備え、
前記制御部は、
前記第1吐出検査部が故障していることを報知させるための前記第1故障信号を前記報知部へ出力することを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記第1条件は、すべての前記ノズルについての前記第1検査信号が、前記ノズルに異常があることを示している、という条件であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記複数のノズルは、
第1液体を吐出する複数の第1ノズルと、
前記第1液体とは異なる第2液体を吐出する第2ノズルと、を有し、
前記第1条件は、すべての前記第1ノズルについての前記第1検査信号、および、すべての前記第2ノズルについての前記第1検査信号の少なくとも一方が、前記ノズルに異常があることを示している、という条件であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記複数のノズルは、複数の第1ノズルと、複数の第2ノズルと、を有し、
前記第1吐出検査部は、
前記複数の第1ノズルの各々について前記第1検査信号を出力する第1部分と、
前記複数の第2ノズルの各々について前記第1検査信号を出力する第2部分と、を有し、
前記第1条件は、前記第1部分が出力するすべての前記第1ノズルについての前記第1検査信号、および、前記第2部分が出力するすべての前記第2ノズルについての前記第1検査信号の少なくとも一方が、前記ノズルに異常があることを示している、という条件であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記ノズルから液体を排出させる排出動作を行う液体排出部、を備え、
前記制御部は、
前記第1吐出検査部から出力される前記第1検査信号を取得した後に前記液体排出部に前記排出動作を行わせ、
前記第1条件は、いずれの前記ノズルについても、前記排出動作前に前記第1吐出検査部から出力された前記第1検査信号と、前記排出動作後に前記第1吐出検査部から出力された前記第1検査信号とで、前記ノズルに異常があることを示しているか否かに変化がない、という条件であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記制御部は、
いずれかの前記ノズルについて、前記排出動作前に前記第1吐出検査部から出力された前記第1検査信号と、前記排出動作後に前記第1吐出検査部から出力された前記第1検査信号とで、前記ノズルに異常があることを示しているかに変化があり、所定数以上の前記ノズルについての前記排出動作後に前記第1吐出検査部から出力された前記第1検査信号が、前記ノズルに異常があることを示している場合には、前記ヘッドが故障していることに応じた第2故障信号を出力することを特徴とする請求項6に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記ノズルから液体を排出させる排出動作を行う液体排出部、を備え、
前記制御部は、
前記複数のノズルについての前記第1検査信号が、第1所定数以上の前記ノズルに異常があることを示している場合に、前記液体排出部に前記排出動作を行わせ、
前記第1条件は、前記排出動作前に前記第1吐出検査部から出力された前記第1検査信号と、前記排出動作後に前記第1吐出検査部から出力された前記第1検査信号とで、異常があることを示しているか否かに変化のある前記ノズルの数が、前記第1所定数よりも小さい第2所定数以下である、という条件であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記ノズルから液体を排出させる排出動作を行う液体排出部、を備え、
前記制御部は、
前記第1吐出検査部から出力される前記第1検査信号を取得した後に前記液体排出部に前記排出動作を行わせ、
前記第1条件は、
いずれの前記ノズルについても、前記排出動作前に前記第1吐出検査部から出力された前記第1検査信号と、その後、前記排出動作が複数回行われた後に前記第1吐出検査部から出力された前記第1検査信号とで、前記ノズルに異常があることを示しているか否かに変化がない、という条件であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記ノズルから液体を排出させる排出動作を行う液体排出部、を備え、
前記第1条件は、
前記複数のノズルについての前記第1検査信号が、前記ノズルに異常があることを示しているか否かに基づいて前記液体排出部において前記排出動作が行われていない状態であるときに、ユーザによる前記排出動作を行うことを指示する排出指示信号を受信した、という条件であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記ノズルから液体を排出させる排出動作を行う液体排出部、を備え、
前記第1条件は、
前記複数のノズルについての前記第1検査信号が、前記ノズルに異常があることを示しているか否かに基づいて前記液体排出部において前記排出動作が行われていない状態であるときに、ユーザによる前記排出動作を行うことを指示する排出指示信号を受信した回数が所定回数に達した、という条件であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記複数のノズルの各々について、前記ノズルに異常があるか否かに応じた第2検査信号を出力する、前記第1吐出検査部とは別の第2吐出検査部、を備え、
前記制御部は、
前記第1条件を満たす場合に、前記第2吐出部検査部に、前記複数のノズルの各々についての前記第2検査信号を出力させ、
前記複数のノズルについての、前記第2検査信号が前記ノズルに異常があることを示しているか否かに関連する第2条件を満たす場合に、前記第1故障信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項13】
前記第2条件は、
所定数以上の前記ノズルについて、前記第1検査信号と前記第2検査信号とで、前記ノズルに異常があることを示しているか否かが異なる、という条件であることを特徴とする請求項12に記載の液体吐出装置。
【請求項14】
前記第1吐出検査部は、
電極と、
前記電極と前記ヘッドとの間に電位差を生じさせる電圧印加部と、を有し、
前記電極における電気的な変化に応じた前記第1検査信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項15】
前記電極と前記ヘッドとの間にリーク電流が流れたことを検出するリーク検出部、を備え、
前記制御部は、前記リーク検出部により前記リーク電流が流れたことが検出されたときに、前記リーク電流が流れていることに応じたリーク信号を送信することを特徴とする請求項14に記載の液体吐出装置。
【請求項16】
前記第1吐出検査部は、
前記ノズルから吐出される液体を検出する光学センサ、を有し、
前記光学センサの検出結果に応じた前記第1検査信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項17】
前記制御部は、前記ヘッドを制御して、被記録媒体に前記複数のノズルの各々について前記異常状態であるか否かに応じたノズルチェックパターンを記録させ、
前記第1吐出検査部として、記録された前記ノズルチェックパターンを読み取り、その結果に応じた前記第1検査信号を出力するスキャナ、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項18】
前記制御部は、前記ヘッドを制御して、被記録媒体に前記複数のノズルの各々について、前記ノズルに異常があるか否かを示すノズルチェックパターンを記録させ、
前記第2吐出検査部として、記録された前記ノズルチェックパターンを読み取り、その結果に応じた前記第2検査信号を出力するスキャナ、を備えていることを特徴とする請求項12に記載の液体吐出装置。
【請求項19】
複数のノズルを有し、前記複数のノズルから液体を吐出するヘッドと、
前記複数のノズルの各々について、前記ノズルに異常があるか否かを示す検査信号を出力する吐出検査部と、
前記ノズルから液体を排出させる排出動作を行う液体排出部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記ヘッドに前記複数のノズルから被吐出媒体へ液体を吐出させる吐出動作の後に、ユーザによる前記排出動作を行うことを指示する排出指示信号を受信していない状態で、その後所定時間以内に取得した前記複数のノズルについての前記検査信号が、所定数以上の前記ノズルに異常があることを示している場合に、前記吐出検査部が故障していることに応じた故障信号を出力することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項20】
複数のノズルを有し、前記複数のノズルから液体を吐出するヘッドと、
前記複数のノズルの各々について、前記ノズルに異常があるか否かを示す検査信号を出力する吐出検査部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記検査信号に応じて前記ノズルに異常があるか否かを判定するノズル判定処理と、
前記ノズル判定処理の結果が所定条件を満たす場合に前記吐出検査部が故障していると判定する故障判定処理と、を実行することを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルから液体を吐出する液体吐出装置の一例として、特許文献1には、ノズルからインクを吐出して記録を行うプリンタが記載されている。特許文献1に記載のプリンタは、ノズルにおいてインクの吐出に異常があるか否かを検査するための吐出検査部を備えている。この吐出検査部は、キャップ内に配置された電極、電極に高電圧を印加する高電圧電源、電極の電圧変化に応じた信号を出力する信号処理回路などを有する。そして、特許文献1に記載のプリンタでは、インクジェットヘッドにノズルから電極に向けてインクを吐出させるための検査用駆動を行わせ、このときに信号処理回路から出力される信号の値に基づいて、ノズルにおいてインクの吐出に異常があるか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1では、上記吐出検査部が故障している場合、信号処理回路から出力される信号が、ノズルにおけるインクの吐出に異常があるか否かの状態を正確に示さないことがある。そのため、信号処理回路から出力される信号に基づいて、ノズルにおけるインクの吐出に異常があるか否かを判断する特許文献1に記載の記録装置では、上記吐出検査部が故障しているか否かを把握することが求められる。
【0005】
本発明の目的は、吐出検査部から出力される信号に基づいて、吐出検査部が故障しているか否かに応じた信号を出力することが可能な液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体吐出装置は、複数のノズルを有し、前記複数のノズルから液体を吐出するヘッドと、前記複数のノズルの各々について、前記ノズルに異常があるか否かを示す第1検査信号を出力する第1吐出検査部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記複数のノズルについての、前記第1検査信号が前記ノズルに異常があることを示しているか否かに関連する第1条件を満たしていることに基づいて、前記第1吐出検査部が故障していることに応じた第1故障信号を出力する。
【0007】
また、本発明の液体吐出装置は、複数のノズルを有し、前記複数のノズルから液体を吐出するヘッドと、前記複数のノズルの各々について、前記ノズルに異常があるか否かを示す検査信号を出力する吐出検査部と、前記ノズルから液体を排出させる排出動作を行う液体排出部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記ヘッドに前記複数のノズルから被吐出媒体へ液体を吐出させる吐出動作の後に、ユーザによる前記排出動作を行うことを指示する排出指示信号を受信していない状態で、その後所定時間以内に取得した前記複数のノズルについての前記検査信号が、所定数以上の前記ノズルに異常があることを示している場合に、前記吐出検査部が故障していることに応じた故障信号を出力する。
【0008】
また、本発明の液体吐出装置は、複数のノズルを有し、前記複数のノズルから液体を吐出するヘッドと、前記複数のノズルの各々について、前記ノズルに異常があるか否かを示す検査信号を出力する吐出検査部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記検査信号に応じて前記ノズルに異常があるか否かを判定するノズル判定処理と、前記ノズル判定処理の結果が所定条件を満たす場合に前記吐出検査部が故障していると判定する故障判定処理と、を実行する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、複数のノズルについての、ノズルに異常があるか否かを示す第1吐出検査部がまたは吐出検査部が出力する信号を用いて、第1吐出検査部または吐出検査部が故障しているか否かを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態のプリンタの概略構成図である。
【
図2】キャップ内に配置された電極およびこの電極に電圧を印加するための構成を説明するための図である。
【
図3】(a)はノズルが正常である場合に信号処理回路から出力される信号を説明するための図であり、(b)はノズルに吐出量異常がある場合に信号処理回路から出力される信号を説明するための図である。
【
図4】プリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【
図5】信号処理回路から出力された信号がすべてのノズルに異常があることを示す場合に吐出検査部が故障していると判定する例において、ノズルに異常があるか否かの検査を行うときの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】(a)は信号処理回路から出力された信号がすべてのブラックノズルに異常があるか、すべてのカラーノズルに異常があることを示している場合に、吐出検査部が故障していると判定する例において、ノズルに異常があるか否かの検査を行うときの処理の流れを示すフローチャートであり、(b)は信号処理回路から出力された信号がいずれかのノズル列についてすべてのノズルに異常があることを示している場合に吐出検査部が故障していると判定する例において、ノズルに異常があるか否かの検査を行うときの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】ブラックノズルとカラーノズルとで個別にノズルに異常があるか否かを検査するための構成を備えている例を説明するための図である。
【
図8】すべてのノズルについて、排出動作前に取得された検査情報と排出動作後に取得された検査情報とで、異常があることを示しているか否かが変化しない場合に吐出検査部が故障していると判定する例においてノズルに異常があるか否かの検査を行うときの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】排出動作前に取得された検査情報と排出動作後に取得された検査情報とで、異常があることを示しているか否かが変化したノズルの数が少ない場合に吐出検査部が故障していると判定する例においてノズルに異常があるか否かの検査を行うときの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】すべてのノズルについて、排出動作前に取得された検査情報と、その後所定回排出動作が行われた後に取得された検査情報とで、異常があることを示しているか否かが変化しない場合に吐出検査部が故障していると判定する例においてノズルに異常があるか否かの検査を行うときの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】異常のあるノズルの数が少なく排出処理が実行されない状態でユーザにより排出動作の指示がされた場合に吐出検査部が故障していると判定する例においてノズルに異常があるか否かの検査を行うときの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図12】異常のあるノズルの数が少なく排出処理が実行されない状態でユーザにより排出動作の指示がされる状況が連続して続く場合に吐出検査部が故障していると判定する例においてノズルに異常があるか否かの検査を行うときの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図13】記録の直後にユーザの指示による排出動作が行われていない状態で、その後所定時間内に信号処理回路から出力される信号が、異常のあるノズルの数が所定数以上あることを示している場合に吐出検査部が故障していると判定する例においてノズルに異常があるか否かの検査を行うときの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図14】吐出検査部の故障とリークの発生とを報知する例においてノズルに異常があるか否かの検査を行うときの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図15】(a)は光学センサを用いてノズルに異常があるか否かを検出する吐出検査部を説明するための図であり、(b)は(a)のキャップ、発光素子および受光素子を上方から見た図である。
【
図16】スキャナを備えたプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【
図17】
図16のプリンタにおいてノズルチェックパターンの読み取り結果に基づいて吐出検査部が故障したか否かを判定するための処理の流れを示すフローチャートである。
【
図18】電極における電圧の変化に基づいてノズルに異常があるか否かを判定する吐出検査部とスキャナとを備えたプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【
図19】
図18のプリンタにおいて、ノズルに異常があるか否かの検査を行うときの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図20】画面を外部装置の表示部に表示させる例における、プリンタおよび外部装置の電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0012】
<プリンタの全体構成>
図1に示すように、本実施形態に係るプリンタ1は、キャリッジ2、インクジェットヘッド4、プラテン5、搬送ローラ6,7、メンテナンスユニット8などを備えている。なお、本実施形態では、インクジェットヘッド4が、本発明の「ヘッド」に相当する。
【0013】
キャリッジ2は、水平な走査方向に延びた2本のガイドレール11,12に支持されている。なお、以下では、
図1に示すように、走査方向の右側および左側を定義して説明を行う。キャリッジ2は、図示しないベルトなどを介して、
図4に示すキャリッジモータ86に接続されている。キャリッジモータ86を駆動させると、キャリッジ2がガイドレール11,12に沿って走査方向に移動する。
【0014】
インクジェットヘッド4は、キャリッジ2に搭載されている。インクジェットヘッド4は、その下面であるノズル面4aに形成された複数のノズル10からインクを吐出する。より詳細に説明すると、複数のノズル10は、搬送方向に配列されることによってノズル列9を形成しており、ノズル面4aにおいて、4列のノズル列9が走査方向に並んでいる。複数のノズル10からは、走査方向の右側のノズル列9を構成するものから順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。ここで、インクジェットヘッド4には、図示しないチューブなどを介して図示しない4つのインクカートリッジに接続されており、これら4つのインクカートリッジから上記4色のインクが供給される。
【0015】
プラテン5は、インクジェットヘッド4の下方に配置され、複数のノズル10と対向している。プラテン5は、走査方向に記録用紙Sの全長にわたって延び、記録用紙Sを下方から支持する。搬送ローラ6は、インクジェットヘッド4およびプラテン5よりも搬送方向の上流側に配置されている。搬送ローラ7は、インクジェットヘッド4およびプラテン5よりも搬送方向の下流側に配置されている。搬送ローラ6,7は、図示しないギヤなどを介して
図4に示す搬送モータ87に接続されている。搬送モータ87を駆動させると、搬送ローラ6,7が回転し、記録用紙Sが搬送方向に搬送される。
【0016】
メンテナンスユニット8は、キャップ71と、吸引ポンプ72と、廃液タンク73とを備えている。キャップ71は、プラテン5よりも走査方向の右側に配置されている。そして、キャリッジ2を、プラテン5よりも走査方向の右側のメンテナンス位置に位置させると、複数のノズル10がキャップ71と対向する。
【0017】
また、キャップ71は、
図4に示すキャップ昇降機構88に接続されている。キャップ昇降機構88を駆動させると、キャップ71が昇降する。キャリッジ2を上記メンテナンス位置に位置させることによって複数のノズル10とキャップ71とを対向させた状態で、キャップ昇降機構88によりキャップ71を上昇させると、キャップ71の上端部がノズル面4aに密着し、複数のノズル10がキャップ71に覆われるキャップ状態となる。キャップ71を降下させた状態では、複数のノズル10がキャップ71に覆われない。なお、キャップ71はノズル面4aに密着することで複数のノズル10を覆うものであることには限られない。キャップ71は、例えば、インクジェットヘッド4のノズル面4aの周囲に配置される図示しないフレーム等に密着することで、複数のノズル10を覆うものであってもよい。
【0018】
吸引ポンプ72はチューブポンプなどであり、キャップ71および廃液タンク73と接続されている。そして、メンテナンスユニット8では、上記キャップ状態で吸引ポンプ72を駆動させると、複数のノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させる、いわゆる吸引パージを行うことができる。吸引パージによって排出されたインクは廃液タンク73に貯留される。
【0019】
なお、ここでは、便宜上、キャップ71が全てのノズル10をまとめて覆い、吸引パージにおいて、全てのノズル10からインクジェットヘッド4内のインクを排出させるものとして説明を行ったが、これには限られない。例えば、キャップ71が、ブラックのインクを吐出する最も右側のノズル列9を構成する複数のノズル10を覆う部分と、カラーのインクを吐出する左側3列のノズル列9を構成する複数のノズル10を覆う部分とを別々に備えており、吸引パージにおいて、インクジェットヘッド4内のブラックのインクおよびカラーインクのいずれかを選択的に排出させることができるようになっていてもよい。ここで、カラーのインクとは、イエロー、シアン、マゼンタインクのことである。あるいは、例えば、キャップ71が、ノズル列9毎に個別に設けられ、吸引パージにおいて、ノズル列9毎に個別に、ノズル10からインクを排出させることができるようになっていてもよい。
【0020】
また、
図2に示すように、メンテナンスユニット8には、吐出検査部20が設けられている。吐出検査部20は、電極76と、高電圧電源回路77と、信号処理回路78と、抵抗79とを有する。なお、本実施形態では、吐出検査部20が、本発明の「第1吐出検査部」に相当し、高電圧電源回路77が、本発明の「電圧印加部」に相当する。
【0021】
電極76は矩形の平面形状を有し、キャップ71内に配置されている。電極76は、抵抗79を介して高電圧電源回路77に接続されている。そして、高電圧電源回路77は、電極76に例えば600V程度の所定電圧を印加する。一方で、インクジェットヘッド4は、グランド電位に保持されている。これにより、インクジェットヘッド4と電極76との間に電位差が生じる。信号処理回路78は電極76と接続されている。信号処理回路78は、微分回路などを含み、電極76の電圧に応じた検査信号を出力する。ただし、信号処理回路78から出力される信号は、電流の信号であってもよい。なお、本実施形態では、信号処理回路78から出力される検査信号が、本発明の「第1検査信号」および「検査信号」に相当する。
【0022】
また、本実施形態では、上記キャップ状態としたうえで、高電圧電源回路77により電極76に電圧を印加させた状態で、インクジェットヘッド4に、ノズル10から電極76に向けてインクを吐出させるための吐出駆動を行わせることができる。
【0023】
ここで、上記キャップ状態としたうえで、高電圧電源回路77により電極76に所定電圧を印加させ、かつ、吐出駆動を行わせていない状態では、信号処理回路78から出力される信号の電圧は、
図3(a)、(b)に示す電圧V0程度である。
【0024】
吐出駆動によってノズル10からインクが吐出された場合、電極76とインクジェットヘッド4との電位差により、吐出されたインクは帯電している。そのため、帯電したインクが電極76に近づき、電極76にインクが着弾するまで、電極76の電位が変化する。そして、帯電したインクが電極76に着弾した後、電極76の電位が減衰しながらインクの吐出前の電位に戻る。
【0025】
これにより、吐出駆動によってノズル10からインクが正常に吐出された場合には、信号処理回路78から出力される信号は、
図3(a)に示すように、電圧V0から、電圧V0よりも高い電圧V1以上の電圧まで上昇し、その後、電圧V0よりも低い電圧V2以下の電圧まで低下し、その後、減衰しながら上昇と低下とを繰り返して電圧V0に戻る。
【0026】
一方、ノズル10に異常があり、吐出駆動によってノズル10から吐出されるインク量が正常時よりも少ない場合には、
図3(b)に示すように、ノズル10から正常にインクが吐出されたときよりも信号処理回路78から出力される信号の変化が小さい。ここで、ノズル10から正常にインクが吐出されたときよりもインクの吐出量が少ないことは、インクが吐出されないことも含む。吐出駆動によってノズル10からインクが吐出されない場合には信号処理回路78から出力される信号は電圧V0からほとんど変化しない。
【0027】
このように、本実施形態では、吐出駆動を行わせたときにノズル10から正常にインクが吐出されたか否かによって、信号処理回路78から出力される信号が異なる。すなわち、信号処理回路78から出力される信号は、ノズル10に異常があるか否かを示す信号である。
【0028】
ここで、本実施形態では、電極76に所定電圧を印加し、インクジェットヘッド4をグランド電位に保持し、信号処理回路78が電極76の電圧に応じた信号を出力するように構成したが、これには限られない。電極76をグランド電位に保持し、インクジェットヘッド4に所定電圧を印加することによって、電極76とインクジェットヘッド4との間に電位差を生じさせ、信号処理回路78が、インクジェットヘッド4に接続され、インクジェットヘッド4の電圧に応じた信号を出力するように構成してもよい。
【0029】
<プリンタの電気的構成>
次に、プリンタ1の電気的構成について説明する。
図4に示すように、プリンタ1は、制御部80を備えている。制御部80は、CPU81、ROM82、RAM83、フラッシュメモリ84、ASIC85などからなる。なお、CPUはCentral Processing Unitの略語である。ROMはRead Only Memoryの略語である。RAMはRandom Access Memoryの略語である。ASICはApplication Specific Integrated Circuitの略語である。制御部80は、キャリッジモータ86、インクジェットヘッド4、搬送モータ87、キャップ昇降機構88、吸引ポンプ72、高電圧電源回路77、信号処理回路78などを制御する。
【0030】
また、プリンタ1は、以上に説明した構成のほかに、操作パネル69を備えている。操作パネル69は、例えば、プリンタ1の筐体に設けられたタッチパネルである。制御部80の制御により、操作パネル69には、操作画面、メッセージ等が表示される。また、ユーザが操作画面等に基づいて操作パネル69を操作すると、制御部80にユーザの操作に応じた信号が送信される。
【0031】
なお、制御部80は、CPU81のみが各種処理を行うものであってもよいし、ASIC85のみが各種処理を行うものであってもよいし、CPU81とASIC85とが協働して各種処理を行うものであってもよい。また、制御部80は、1つのCPU81が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のCPU81が処理を分担して行うものであってもよい。また、制御部80は、1つのASIC85が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のASIC85が処理を分担して行うものであってもよい。
【0032】
<記録時の制御>
プリンタ1においては、制御部80が、キャリッジモータ86を制御してキャリッジ2を走査方向に移動させつつ、インクジェットヘッド4を制御して複数のノズル10からインクを吐出させる記録パスと、搬送モータ87を制御して搬送ローラ6,7に記録用紙Sを搬送させる搬送動作とを繰り返し行わせることによって、記録用紙Sへの記録を行わせる。
【0033】
<ノズルの検査時の処理>
次に、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の各々について異常があるか否かを検出するための検査を行うときの制御部80の処理について説明する。
【0034】
制御部80は、上記検査を行うときに、
図5のフローチャートに沿って処理を行う。例えば、プリンタ1において所定時刻に上記検査を行うように設定される場合には、所定時刻になったときに、制御部80が、
図5のフローチャートに沿って処理を行う。あるいは、例えば、プリンタ1に記録用紙Sへの画像の記録を指示する記録指示を受信したときに、画像の記録を開始する前に、制御部80が、
図5のフローチャートに沿って処理を行う。
【0035】
図5のフローチャートについてより詳細に説明すると、制御部80は、まず、吐出検査処理を実行する(S101)。吐出検査処理において、制御部80は、キャリッジモータ86、キャップ昇降機構88等を制御して上記キャップ状態とし、高電圧電源回路77を制御して電極76に所定電圧を印加したうえで、インクジェットヘッド4に、複数のノズル10の各々について吐出駆動を行わせる。そして、制御部80は、各ノズル10について吐出駆動を行わせたときに信号処理回路78から出力される検査信号に基づいて、インクジェットヘッド4の複数のノズルの各々についてノズル10に異常があるか否かを示す検査情報をフラッシュメモリ84に記憶させる。なお、本実施形態では、吐出検査処理が、本発明の「ノズル判定処理」に相当する。
【0036】
続いて、制御部80は、S101の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、インクジェットヘッド4のすべてのノズル10に異常があることを示しているか否かを判断する(S102)。なお、本実施形態では、S102の判断の処理が本発明の「故障判定処理」に相当し、「フラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、インクジェットヘッド4のすべてのノズル10に異常があることを示している」という条件が、本発明の「第1条件」および「所定条件」に相当する。
【0037】
フラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、インクジェットヘッド4のすべてのノズル10に異常があることを示している場合には(S102:YES)、制御部80は、吐出検査部20が故障していることを報知させるための検査部故障信号を操作パネル69に出力し(S103)、処理が終了する。検査部故障信号を受信した操作パネル69には、吐出検査部20が故障していること、吐出検査部20を交換する必要があることなどをユーザに報知するための画面が表示される。なお、本実施形態では、検査部故障信号が、本発明の「第1故障信号」および「故障信号」に相当する。
【0038】
フラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、インクジェットヘッド4のいずれかのノズル10に異常がないことを示している場合には(S102:NO)、制御部80は、続いて、フラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、異常のあるノズル10の数がA個以上であることを示しているか否かを判断する(S104)。ここで、Aは、0よりも大きく、インクジェットヘッド4のノズル10の数よりも小さい数である。フラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、異常のあるノズル10の数がA個未満であることを示している場合には(S104:NO)、そのまま処理が終了する。
【0039】
フラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、異常のあるノズル10の数がA個以上であることを示している場合には(S104:YES)、制御部80は、排出処理を実行し(S105)、処理が終了する。
【0040】
排出処理において、制御部80は、キャリッジモータ86、キャップ昇降機構88、吸引ポンプ72等を制御して吸引パージを行わせる。あるいは、排出処理において、制御部80は、インクジェットヘッド4に異常のあるノズル10からキャップ71に向けてインクを排出させるフラッシングを行わせる。
【0041】
また、排出処理においては、異常のあるノズル10の数などの条件に応じて吸引パージおよびフラッシングのいずれかを選択的に行わせてもよい。あるいは、異常のあるノズル10の数などの条件によらず吸引パージを行わせてもよい。あるいは、異常のあるノズル10の数などの条件によらずフラッシングを行わせてもよい。
【0042】
また、制御部80は、例えば、記録指示を受信したことに応じて
図5のフローチャートに沿って処理を行った場合には、
図5のフローチャートに沿った処理が終了した後、記録用紙Sへの記録を行わせる。
【0043】
また、本実施形態では、S105において排出処理を実行したが、これには限られない。例えば、S101で実行した吐出検査処理が、所定時刻になったことにより実行された吐出検査処理である場合には、S105において排出処理を実行する代わりに、吸引パージまたはフラッシングが必要であることを示すフラグ情報をフラッシュメモリ84に記憶させてもよい。そして、この場合、例えば、上記フラグ情報の記憶よりも後の、画像の記録の直前などの適宜のタイミングで、上記フラグ情報に基づいて吸引パージまたはフラッシングを行わせてもよい。後述するS206,S305の排出処理についても同様である。
【0044】
<効果>
インクジェットヘッド4のすべてのノズル10に異常がある可能性は極めて低い。そこで、本実施形態では吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、インクジェットヘッド4のすべてのノズル10に異常があることを示している場合に、検査部故障信号を操作パネル69に出力する。これにより、操作パネル69に吐出検査部20が故障したことを報知するための画面が表示され、ユーザは、吐出検査部20が故障したことを把握することができる。
【0045】
また、本実施形態では、インクジェットヘッド4と電極76との間に電位差を生じさせた状態で、吐出駆動を行わせたときの電極76の電圧の変化に応じて信号処理回路78から出力される信号に基づいて、ノズル10に異常があるか否かを検査することができる。
【0046】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態には限られず、特許請求の範囲に記載の限りにおいて様々な変更が可能である。
【0047】
上述の実施形態では、フラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、インクジェットヘッド4のすべてのノズル10に異常があることを示している場合に、検査部故障信号を出力したが、これには限られない。
【0048】
変形例1では、制御部80は、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の各々について異常があるか否かを検出するための検査を行うときに、
図6(a)のフローチャートに沿って処理を行う。
【0049】
図6(a)のフローチャートについて詳細に説明すると、制御部80は、上述の実施形態のS101と同様の吐出検査処理を実行し(S201)、続いて、フラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、すべてのブラックノズルに異常があることを示しているか否か、および、すべてのカラーノズルに異常があることを示しているか否かを判断する(S203,S203)。ここで、ブラックノズルとは、インクジェットヘッド4の最も右側のノズル列9を構成するブラックのインクを吐出するノズル10のことである。また、カラーノズルとは、インクジェットヘッド4の左側3列のノズル列9を構成するカラーのインクを吐出するノズル10のことである。
【0050】
なお、変形例1では、ブラックのインクが本発明の「第1液体」に相当し、ブラックノズルが本発明の「第1ノズル」に相当する。また、変形例1では、カラーのインクが本発明の「第2液体」に相当し、カラーノズルが本発明の「第2ノズル」に相当する。また、変形例1では、S202,S203の判断の処理が本発明の「故障判定処理」に相当し、「フラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、すべてのブラックノズル、および、すべてのカラーノズルのうち少なくとも一方に異常があることを示している」という条件が、本発明の「第1条件」および「所定条件」に相当する。
【0051】
フラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、いずれかのブラックノズルに異常がないことを示し(S202:NO)、且つ、いずれかのカラーノズルに異常がないことを示している場合には(S203:NO)、制御部80は、上述の実施形態のS104,S105と同様のS205,S206の処理を実行し、処理が終了する。
【0052】
フラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、すべてのブラックノズルに異常があることを示している場合(S202:YES)、および、フラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、すべてのカラーノズルに異常があることを示している場合には(S203:YES)、制御部80は、検査部故障信号を操作パネル69に出力し(S204)、処理が終了する。
【0053】
インクジェットヘッド4において、すべてのブラックインクを吐出するノズル10に異常がある可能性は極めて低い。また、インクジェットヘッド4において、すべてのカラーノズルに異常がある可能性は極めて低い。そこで、変形例1では吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、すべてのブラックノズルに異常があることを示している場合、および、すべてのブラックノズルに異常があることを示している場合に、検査部故障信号を操作パネル69に出力する。これにより、操作パネル69に吐出検査部20が故障したことを報知するための画面が表示され、ユーザは、吐出検査部20が故障したことを把握することができる。
【0054】
変形例2では、制御部80は、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の各々についてノズル10に異常があるか否かを検出するための検査を行うときに、
図6(b)のフローチャートに沿って処理を行う。
【0055】
図6(b)のフローチャートについて詳細に説明すると、制御部80は、上述の実施形態のS101と同様の吐出検査処理を実行し(S301)、続いて、フラッシュメモリ84に記憶された検査情報に基づいて、いずれかノズル列9について、ノズル列9を構成するすべてのノズル10に異常があることを示しているか否かを判断する(S302)。
【0056】
なお、変形例2では、4列のノズル列9のうち任意の1列のノズル列9を構成するノズル10が本発明の「第1ノズル」に相当し、これらのノズル10から吐出されるインクが本発明の「第1液体」に相当する。また、変形例2では、4列のノズル列9のうち上記第1ノズル列以外の任意の1列のノズル列9を構成するノズル10が本発明の「第2ノズル」に相当し、これらのノズル10から吐出されるインクが本発明の「第2液体」に相当する。また、変形例2では、S302の判断の処理が本発明の「故障判定処理」に相当し、「フラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、いずれかのノズル列9について、ノズル列9を構成するすべてのノズル10に異常があることを示している」という条件が、本発明の「第1条件」および「所定条件」に相当する。
【0057】
フラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、すべてのノズル列9について、ノズル列9を構成するいずれかのノズル10に異常がないことを示している場合には(S302:NO)、制御部80は、上述の実施形態のS104,S105と同様のS304,S305の処理を実行し、処理が終了する。
【0058】
フラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、いずれかのノズル列9について、ノズル列9を構成するすべてのノズル10に異常があることを示している場合には(S302:YES)、制御部80は、検査部故障信号を操作パネル69に出力し(S303)、処理が終了する。
【0059】
インクジェットヘッド4において、ノズル列9を構成するすべてのノズル10に異常がある可能性は極めて低い。そこで、変形例1では吐出検査処理で信号処理回路78から出力される検査信号が、いずれかのノズル列9において、ノズル列9を構成するすべてのノズル10に異常があることを示している場合に、検査部故障信号を操作パネル69に出力する。これにより、操作パネル69に吐出検査部20が故障したことを報知するための画面が表示され、ユーザは、吐出検査部20が故障したことを把握することができる。
【0060】
変形例1では、ブラックノズルとカラーノズルとで、ノズル10に異常があるか否かを検査するための電極76、高電圧電源回路77、信号処理回路78および抵抗79が共通のものであったが、これには限られない。
【0061】
変形例3では、
図7に示すように、キャップ71が、走査方向に並ぶ第1キャップ部71aと第2キャップ部71bとに分かれており、上記キャップ状態で、複数のブラックノズルが第1キャップ部71aに覆われ、複数のカラーノズルが第2キャップ部71bに覆われる。また、第1キャップ部71aおよび第2キャップ部71bは、図示しない切換装置を介して吸引ポンプ72に接続されており、切換装置により、第1キャップ部71aおよび第2キャップ部71bのいずれかを選択的に吸引ポンプ72に接続することができるようになっている。
【0062】
そして、キャップ状態とされ、第1キャップ部71aが吸引ポンプ72と接続された状態で吸引ポンプ72を駆動させることにより、ブラックノズルからブラックのインクを排出させるブラックの吸引パージを行うことができる。また、キャップ状態とされ、第2キャップ部71bが吸引ポンプ72と接続された状態で吸引ポンプ72を駆動させることにより、カラーノズルからカラーのインクを排出させるカラーの吸引パージを行うことができる。
【0063】
これに対応して、変形例3では、第1キャップ部71aおよび第2キャップ部71bに、それぞれ、電極76a,76bが配置されている。電極76aは、抵抗79aを介して高電圧電源回路77aに接続され、高電圧電源回路77aによって所定電圧が印加される。また、電極76aは、信号処理回路78aに接続され、信号処理回路78aが、吐出駆動が行われたときの電極76aにおける電圧の変化に応じた信号を出力する。電極76bは、抵抗79bを介して高電圧電源回路77aに接続され、高電圧電源回路77bによって所定電圧が印加される。また、電極76bは、信号処理回路78bに接続され、信号処理回路78bが、吐出駆動が行われたときの電極76bにおける電圧の変化に応じた信号を出力する。
【0064】
なお、変形例3では、ブラックのインクが本発明の「第1液体」に相当し、ブラックノズルが本発明の「第1ノズル」に相当する。また、変形例3では、カラーのインクが本発明の「第2液体」に相当し、カラーノズルが本発明の「第2ノズル」に相当する。また、変形例3では、電極76aと高電圧電源回路77aと信号処理回路78aと抵抗79aとを合わせたものが、本発明の「第1部分」に相当し、電極76bと高電圧電源回路77bと信号処理回路78bと抵抗79bとを合わせたものが、本発明の「第2部分」に相当する。
【0065】
変形例3においても、変形例1と同様、制御部80は、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の各々について異常があるか否かを検出するための検査を行うときに、
図6(a)のフローチャートに沿って処理を行う。ただし、変形例3では、変形例1とは異なり、S201の吐出検査処理において、高電圧電源回路77aにより電極76aに所定電圧を印加し、高電圧電源回路77bにより電極76bに所定電圧を印加する。また、変形例3では、S201の吐出検査処理において、信号処理回路78aから出力される信号に基づいて、ブラックノズルについての検査情報をフラッシュメモリ84に記憶させ、信号処理回路78bから出力される信号に基づいて、カラーノズルについての検査情報をフラッシュメモリ84に記憶させる。
【0066】
インクジェットヘッド4において、電極76aに対応するすべてのノズル10、すなわち、すべてのブラックノズルに異常がある可能性は極めて低い。また、インクジェットヘッド4において、電極76bに対応するすべてのノズル10、すなわち、すべてのカラーノズルに異常がある可能性は極めて低い。そこで、変形例3では吐出検査部20から出力される検査信号が、電極76aに対応するすべてのノズル10に異常があることを示している場合、および、電極76bに対応するすべてのノズル10に異常があることを示している場合に、検査部故障信号を操作パネル69に出力する。これにより、操作パネル69に吐出検査部20が故障したことを報知するための画面が表示され、ユーザは、吐出検査部20が故障したことを把握することができる。
【0067】
また、変形例3では、電極、高電圧電源回路および信号処理回路が、それぞれ、ブラックノズルとカラーノズルとに対して別々に設けられているが、これには限られない。電極、高電圧電源回路および信号処理回路のうちの一部のみが、ブラックノズルとカラーノズルとに対して別々に設けられ、残りの構成については、ブラックノズルとカラーノズルとに対して共通のものであってもよい。なお、高電圧電源回路がブラックノズルとカラーノズルとに対して共通のものである場合には、抵抗もブラックノズルとカラーノズルとに対して共通のものである。
【0068】
また、図示は省略するが、変形例2において、キャップ71がノズル列9毎に4つのキャップ部に分かれており、各キャップ部内に電極が配置されていてもよい。この場合、高電圧電源回路および信号処理回路などが、これらの電極に個別のものであってもよいし、2つ以上の電極に共通のものであってもよい。
【0069】
変形例4では、制御部80は、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の各々について異常があるか否かを検出するための検査を行うときに、
図8のフローチャートに沿って処理を行う。
【0070】
図8のフローチャートについて説明すると、制御部80は、まず、上述の実施形態のS101と同様の吐出検査処理を実行する(S401)。続いて、制御部80は、S401の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、異常のあるノズル10の数がA個以上であることを示しているか否かを判定する(S402)。S401の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、異常のあるノズル10の数がA個数未満であることを示している場合には(S402:NO)、処理が終了する。
【0071】
S401の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、異常のあるノズル10の数がA個以上であることを示している場合には(S402:YES)、制御部80は、排出処理を実行する(S403)。
【0072】
なお、排出処理において吸引パージを行わせる場合には、吸引パージが本発明の「排出動作」に相当し、メンテナンスユニット8が本発明の「液体排出部」に相当する。また、排出処理においてフラッシングを行わせる場合には、フラッシングが本発明の「排出動作」に相当し、インクジェットヘッド4が本発明の「液体排出部」に相当する。
【0073】
続いて、制御部80は、再度、吐出検査処理を実行する(S404)。続いて、制御部80は、排出処理前のS401の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報と、排出処理後のS404の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報とで、いずれのノズル10についても異常があることを示しているか否かが変化していないか否かを判断する(S405)。
【0074】
S401の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報と、S404の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報とで、いずれかのノズル10について異常があることを示しているか否かが変化している場合には(S405:NO)、続いて、制御部80は、S404の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、異常のあるノズル10の数がB個以上であるかことを示している否かを判断する(S406)。なお、変形例4では、Bが本発明の「所定数」に相当する。
【0075】
S404の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、異常のあるノズル10の数がB個未満であることを示している場合には(S406:NO)、処理が終了する。S404の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、異常のあるノズル10の数がB個以上であることを示している場合には(S406:YES)、制御部80は、インクジェットヘッド4が故障していることを報知するためのヘッド故障信号を操作パネル69に出力し(S407)、処理が終了する。これにより、操作パネル69には、インクジェットヘッド4が故障したことを報知する画面などが表示される。
【0076】
一方、S401の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報と、S404の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報排出動作前に取得された検査情報とで、いずれのノズル10についても異常であることを示しているか否かが変化していない場合には(S405:YES)、制御部80は、検査部故障信号を操作パネル69に出力し(S408)、処理が終了する。なお、変形例4では、S405の判断の処理が本発明の「故障判定処理」に相当し、「S401の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報と、S404の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報とで、いずれのノズル10についても異常があることを示しているか否かが変化していない」という条件が、本発明の「第1条件」および「所定条件」に相当する。
【0077】
排出動作が行われると、通常は、ノズル10の異常が解消し、排出動作前に取得される検査情報と、排出動作後に取得される検査情報とで、いずれかのノズル10について、異常があることを示しているか否かが変化する。言い換えれば、排出動作前に取得される検査情報と、排出動作後に取得される検査情報とで、いずれのノズル10についても、異常があることを示しているか否かに変化がなければ、吐出検査部20が故障している可能性が高い。そこで、変形例4では、いずれのノズル10についても、排出動作前に取得される検査情報と、排出動作後に取得される検査情報とで、ノズル10に異常があることを示しているか否かに変化がない場合に、検査部故障信号を操作パネル69に出力する。これにより、操作パネル69に吐出検査部20が故障したことを報知するための画面が表示され、ユーザは、吐出検査部20が故障したことを把握することができる。
【0078】
また、排出動作が行われると、通常は、ノズル10の異常が解消し、排出動作後には異常状態のノズル10はほとんどない。そのため、いずれかのノズル10について、排出動作前に取得された検査情報と、排出動作後に取得された検査情報とで、ノズル10に異常があることを示しているか否かに変化がある場合において、排出動作後に取得された検査情報が、多数のノズル10に異常があることを示している場合には、吐出検査部20が故障している可能性は低いが、インクジェットヘッド4が故障している可能性が高い。
【0079】
そこで、変形例4では、いずれかのノズル10について、排出動作前に取得された検査情報と、排出動作後に取得された検査情報とで、ノズル10に異常があることを示しているかに変化があり、排出動作後に取得された検査情報が、B個以上のノズル10に異常があることを示している場合には、ヘッド故障信号を操作パネル69に出力する。これにより、操作パネル69にインクジェットヘッド4が故障したことを報知するための画面が表示され、ユーザは、インクジェットヘッド4が故障したことを把握することができる。
【0080】
変形例5では、制御部80は、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の各々についてノズル10に異常があるか否かを検出するための検査を行うときに、
図9のフローチャートに沿って処理を行う。
【0081】
図9のフローチャートについて説明すると、制御部80は、まず、S101と同様の吐出検査処理を実行する(S501)。続いて、制御部80は、S501の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、異常のあるノズル10の数がA個以上であることを示しているか否かを判定する(S502)。なお、変形例5では、Aが本発明の「第1所定数」に相当する。S501の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、異常のあるノズル10の数がA個数未満であることを示している場合には(S502:NO)、処理が終了する。
【0082】
S501の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、異常のあるノズル10の数がA個以上であることを示している場合には(S502:YES)、制御部80は、S403と同様の排出処理を実行する(S503)。続いて、制御部80は、再度、吐出検査処理を実行する(S504)。続いて、制御部80は、排出処理前のS501の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報と、排出処理後のS504の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報とに基づいて、異常があることを示しているか否かが変化したノズル10の数がC個未満であるか否かを判断する(S505)。ここで、Cは0よりも大きく、Aよりも小さい数である。なお、変形例5では、Cが本発明の「第2所定数」に相当する。
【0083】
S501の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報と、S504の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報とで、異常があることを示しているか否かが変化したノズル10の数がC個以上の場合には(S505:NO)、続いて、制御部80は、S504の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、異常のあるノズル10の数がB個以上であることを示しているか否かを判断する(S506)。
【0084】
S504の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、異常のあるノズル10の数がB個未満であることを示している場合には(S506:NO)、処理が終了する。S504の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、異常のあるノズル10の数がB個以上であることを示している場合には(S506:YES)、制御部80は、ヘッド故障信号を操作パネル69に出力し(S507)、処理が終了する。
【0085】
一方、S501の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報と、S504の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報とで、異常であることを示しているか否かが変化したノズル10の数がC個未満の場合には(S505:YES)、制御部80は、検査部故障信号を操作パネル69に出力し(S508)、処理が終了する。なお、変形例5では、S505の判断の処理が本発明の「故障判定処理」に相当し、「S501の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報と、S504の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報とで、異常があることを示しているか否かが変化したノズル10の数がC個未満である」という条件が、本発明の「第1条件」および「所定条件」に相当する。
【0086】
排出動作が行われると、通常は、ノズル10の異常が解消し、排出動作前に取得された検査情報と、排出動作後に取得された検査情報とで、異常のあったノズル10の多くについて、異常があることを示しているか否かが変化する。言い換えれば、排出動作前に取得された検査情報と、排出動作後に取得された検査情報とで、ノズル10に異常があることを示しているか否かが変化するノズル10の数が少なければ、吐出検査部20が故障している可能性が高い。そこで、変形例5では、排出動作前に取得された検査情報と、排出動作後に取得された検査情報とで、ノズル10に異常があることを示しているか否かに変化のあるノズル10の数がC個数以下である場合に、検査部故障信号を操作パネル69に出力する。これにより、操作パネル69に吐出検査部20が故障したことを報知するための画面が表示され、ユーザは、吐出検査部20が故障したことを把握することができる。
【0087】
変形例6では、制御部80は、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の各々についてノズル10に異常があるか否かを検出するための検査を行うときに、
図10のフローチャートに沿って処理を行う。
【0088】
図10のフローチャートについて説明すると、制御部80は、まず、S101と同様の吐出検査処理を実行する(S601)。続いて、制御部80は、S601の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、異常のあるノズル10の数がA個以上であることを示しているか否かを判定する(S602)。S601の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、異常のあるノズル10の数がA個未満であることを示している場合には(S602:NO)、処理が終了する。
【0089】
S601の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、異常のあるノズル10の数がA個以上であることを示している場合には(S602:YES)、制御部80は、変数Nを0にリセットしたうえで(S603)、排出処理を実行する(S604)。
【0090】
続いて、制御部80は、変数Nの値を1増加させ(S605)、再度、吐出検査処理を実行する(S606)。続いて、制御部80は、排出処理前のS601の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報と、排出処理後のS606の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報とで、インクジェットヘッド4のいずれのノズル10についても、異常があることを示しているか否かが変化していないか否かを判断する(S607)。
【0091】
S601の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報と、S606の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報とで、いずれかのノズル10について異常があることを示しているか否かが変化している場合には(S607:NO)、続いて、制御部80は、S606の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、異常のあるノズル10の数がB個以上であることを示しているか否かを判断する(S608)。
【0092】
S606の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、異常のあるノズル10の数がB個未満であることを示している場合には(S608:NO)、処理が終了する。S606の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、異常のあるノズル10の数がB個以上であることを示している場合には(S608:YES)、制御部80は、ヘッド故障信号を操作パネル69に出力し(S609)、処理が終了する。
【0093】
一方、S601の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報と、S606の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報とで、いずれのノズル10についても異常があることを示しているか否かが変化していない場合には(S607:YES)、制御部80は、変数Nの値が閾値Na以上であるか否かを判断する(S610)。閾値Naは2以上の値である。
【0094】
変数Nの値が閾値Na未満の場合には(S610:NO)、処理がS604に戻る。変数Nの値が閾値Na以上の場合には(S610:YES)、制御部80は、検査部故障信号を操作パネル69に出力し(S611)、処理が終了する。なお、変形例6では、S607,S610の判断の処理が本発明の「故障判定処理」に相当する。また、変形例6では、「いずれのノズル10についても、S601の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報と、S606の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報とで、ノズル10に異常があることを示しているか否かに変化がなく、且つ、変数Nの値が閾値Na以上である」という条件が本発明の「第1条件」および「所定条件」に相当する。すなわち、変形例6では、「いずれのノズル10についても、S601の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報と、その後、排出動作がNa回行われた後のS606の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報とで、ノズル10に異常があることを示しているか否かに変化がない」という条件が本発明の「第1条件」および「所定条件」に相当する。
【0095】
排出動作を1度行っただけではノズル10の異常が解消しないこともあるが、排出動作を繰り返せばノズル10の異常状態が解消する可能性が高い。言い換えれば、いずれのノズル10についても、排出動作前に取得された検査情報と、排出動作を繰り返した後に取得された検査情報とで、ノズル10に異常があることを示しているか否かに変化がない場合には、吐出検査部20が故障している可能性が高い。そこで、変形例6では、いずれのノズル10についても、排出動作前に取得された検査情報と、その後Na回の排出動作が行われた後に取得された検査情報とで、異常があることを示しているか否かに変化がない場合に、検査部故障信号を操作パネル69に出力する。これにより、操作パネル69に吐出検査部20が故障したことを報知するための画面が表示され、ユーザは、吐出検査部20が故障したことを把握することができる。
【0096】
また、変形例4~6では、排出処理後に取得された検査情報が、異常のあるノズル10の数がB個以上であることを示しているか否かの判断を行い、異常のあるノズル10の数がB個以上であることを示している場合に、ヘッド故障信号を出力するようにしたが、これには限られない。変形例4~6において、排出処理後に取得された検査情報が、異常のあるノズル10の数がB個以上であるか否かの判断を行わずに、処理を終了するようにしてもよい。
【0097】
変形例7では、例えば、ユーザが操作パネル69において排出動作を行うことを指示する操作を行うことにより、制御部80に排出動作を指示する排出指示信号を出力することができる。ここで、排出動作は、吸引パージまたはフラッシングのことである。また、変形例7では、制御部80は、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の各々についてノズル10に異常があるか否かを検出するための検査を行うときに、
図11のフローチャートに沿って処理を行う。
【0098】
図11のフローチャートについて説明すると、制御部80は、上述の実施形態のS101,S104と同様に、吐出検査処理を実行し(S701)、S701の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、異常のあるノズル10の数がA個以上であることを示しているか否かを判断する(S702)。フラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、異常のあるノズル10の数がA個以上であることを示している場合には(S702:YES)、制御部80は、S105と同様の排出処理を実行し(S703)、処理が終了する。
【0099】
フラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、異常のあるノズル10の数がA個未満であることを示している場合には(S702:NO)、その後、ユーザによる排出動作の指示の信号を受信することなく(S705:NO)、所定時間が経過した場合には(S704:YES)、処理が終了する。所定時間が経過するまでに(S704:NO)、ユーザによる排出指示信号を受信した場合には(S705:YES)、制御部80は、操作パネル69に検査部故障信号を出力し(S706)、処理が終了する。なお、変形例7では、S705の判断の処理が本発明の「故障判定処理」に相当し、「異常のあるノズル10の数がA個未満であり排出処理が実行されない状態で、ユーザによる排出指示信号を受信した」という条件が、本発明の「第1条件」および「所定条件」に相当する。すなわち、変形例7では、「複数のノズル10について吐出検査処理で信号処理回路78から出力される信号が、ノズル10に異常があることを示しているか否かに基づいて排出動作が行われていない状態であるときに、ユーザによる排出指示信号を受信した」という条件が本発明の「第1条件」および「所定条件」に相当する。
【0100】
検査情報に基づいて排出動作が行われるようにしている場合、通常は、異常のあるノズル10の数が多ければ排出動作が行われ、異常のあるノズル10の数が少なければ排出動作が行われない。一方で、ユーザは、異常のあるノズル10の数が多い場合に、記録用紙Sへの記録の結果に問題があると感じて排出動作の指示を行う可能性が高い。これらのことから、吐出検査部20が故障しているときには、検査情報が、異常のあるノズル10の数が少ないことを示していて、排出動作が行われていない状態で、ユーザが排出動作の指示を行うという状況が発生する可能性が高い。
【0101】
そこで、変形例7では、検査情報に基づいて排出動作が行われていない状態であるときに、ユーザによる排出指示信号を受信した場合に、検査部故障信号を操作パネル69に出力する。これにより、操作パネル69に吐出検査部20が故障したことを報知するための画面が表示され、ユーザは、吐出検査部20が故障したことを把握することができる。
【0102】
変形例8では、変形例7と同様、ユーザが操作パネル69において排出動作を行うことを指示する操作を行うことにより、制御部80に排出動作の指示の信号を出力することができる。また、変形例8では、フラッシュメモリ84に変数Mの値が記憶されている。変数Mの値は、例えば、プリンタ1の初回の使用開始の時点で0にリセットされている。
【0103】
そして、変形例8では、制御部80は、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の各々についてノズル10に異常があるか否かを検出するための検査を行うときに、
図12のフローチャートに沿って処理を行う。
【0104】
図12のフローチャートについて説明すると、制御部80は、変形例7のS701~S705と同様のS801~S805の処理を実行する。そして、変形例8では、制御部80が、S803の排出処理の後、変数Mの値を0にリセットし(S806)、処理が終了する。また、変形例8では、ユーザによる排出動作の指示の信号を受信することなく(S805:NO)、所定時間が経過したときに(S804:YES)、変数Mの値を0にリセットし(S806)、処理が終了する。
【0105】
所定時間が経過するまでに(S804:NO)、ユーザによる排出動作の指示の信号を受信したときに(S805:YES)、制御部80は、変数Mの値を1増加させ(S807)、変数Mの値が閾値Ma以上であるか否かを判断する(S808)。閾値Maは2以上の値である。
【0106】
変数Mの値が閾値Ma未満である場合には(S808:NO)、そのまま処理が終了する。変数Mの値が閾値Ma以上である場合には(S808:YES)、制御部80は、検査部故障信号を操作パネル69に出力し(S809)、処理が終了する。なお、変形例8では、S808の判断の処理が本発明の「故障判定処理」に相当し、「変数Mの値が閾値Ma以上である」という条件が、本発明の「第1条件」および「所定条件」に相当する。すなわち、変形例8では、「検査情報に基づいて排出動作が行われていない状態にあるときに、ユーザによる排出指示信号を受信した回数がMa回に達した」という条件が本発明の「第1条件」および「所定条件」に相当する。
【0107】
検査情報に基づいて排出動作が行われるようにしている場合、通常は、異常のあるノズル10の数が多ければ排出動作が行われ、異常のあるノズル10の数が少なければ排出動作が行われない。一方で、ユーザは、異常のあるノズル10の数が多い場合に、記録用紙Sへの記録の結果に問題があると感じて排出動作の指示を行う可能性が高い。これらのことから、吐出検査部20が故障しているときには、検査情報が、異常のあるノズル10の数が少ないことを示していて排出動作が行われていない状態で、ユーザが排出動作の指示を行うという状況が繰り返し発生する可能性が高い。
【0108】
そこで、変形例8では、変数Mの値が閾値Ma以上である場合、すなわち、検査情報に基づいて排出動作が行われていない状態でユーザによる排出指示信号を受信した回数がMa回に達した場合に、検査部故障信号を操作パネル69に出力する。これにより、操作パネル69に吐出検査部20が故障したことを報知するための画面が表示され、ユーザは、吐出検査部20が故障したことを把握することができる。
【0109】
変形例9では、変形例7,8と同様、ユーザが操作パネル69において排出動作を行うことを指示する操作を行うことにより、制御部80に排出動作の指示の信号を出力することができる。変形例9では、制御部80は、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の各々についてノズル10に異常があるか否かを検出するための検査を行うときに、
図13のフローチャートに沿って処理を行う。
【0110】
図13のフローチャートについて説明すると、制御部80は、上述の実施形態のS101,S104と同様に、吐出検査処理を実行し(S901)、S901の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、異常のあるノズル10の数がA個以上であることを示しているか否かを判断する(S902)。フラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、異常のあるノズル10の数がA個未満であることを示している場合には(S902:NO)、処理が終了する。
【0111】
フラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、異常のあるノズル10の数がA個以上であることを示している場合には(S902:YES)、S902の判断の前の所定時間内の記録用紙Sへの記録後に、ユーザによる排出動作の指示の信号を受信していたか否かを判断する(S903)。
【0112】
S902の判断の前の所定時間内の記録用紙Sへの記録後に、ユーザによる排出動作の指示の信号を受信していた場合には(S903:YES)、制御部80は、排出処理を実行し(S904)、処理が終了する。
【0113】
S902の判断の前の所定時間内の記録用紙Sへの記録後に、ユーザによる排出動作の指示の信号を受信していない場合には(S903:NO)、制御部80は、検査部故障信号を操作パネル69に出力し(S905)、処理が終了する。すなわち、変形例9では、記録用紙Sへの記録後に、ユーザによる排出指示信号を受信していない状態で、その後所定時間以内に取得した検査情報が、A個以上のノズル10に異常があることを示している場合に、制御部80が、検査部故障信号を出力する。なお、変形例9では、記録用紙Sへの記録が本発明の吐出動作に相当する。また、変形例9では、S902,S903の判断の処理が本発明の「故障判定処理」に相当する。
【0114】
ユーザは、異常のあるノズル10の数が多い場合に、記録用紙Sへの記録結果に問題があると感じて排出動作の指示を行う可能性が高い。そのため、検査情報が、異常のあるノズル10の数が多いことを示しているのに、ユーザが記録用紙Sへの記録後に排出動作の指示を行わない場合には、実際には異常のあるノズル10の数は少ないが、吐出検査部20が故障していることによって、検査情報が、異常のあるノズル10の数が多いことを示している可能性が高い。
【0115】
そこで、変形例9では、記録用紙Sへの記録後に、ユーザによる排出指示信号を受信していない状態で、その後所定時間以内に取得した検査情報が、A個以上のノズル10に異常があることを示している場合に、検査部故障信号を操作パネル69に出力する。これにより、操作パネル69に吐出検査部20が故障したことを報知するための画面が表示され、ユーザは、吐出検査部20が故障したことを把握することができる。
【0116】
変形例10では、制御部80は、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の各々についてノズル10に異常があるか否かを検出するための検査を行うときに、
図14のフローチャートに沿って処理を行う。
【0117】
図14のフローチャートについて詳細に説明すると、制御部80は、まず、リーク検査処理を実行する(S1001)。リーク検査処理において、制御部80は、キャリッジモータ86、キャップ昇降機構88等を制御して上記キャップ状態としたうえで、高電圧電源回路77を制御して電極76に所定電圧を印加する。このとき、電極76とインクジェットヘッド4との間にリークが発生していない場合には、上述の実施形態で説明したように、信号処理回路78から出力される電圧がV0程度になる。一方で、電極76とインクジェットヘッド4との間にリークが発生している場合には、信号処理回路78から出力される電圧がV0から大きく下がった電圧になる。ここで、例えば、吸引パージ後にキャップ71内に残ったインクを介して電極76とインクジェットヘッド4とが導通したときに、電極76とインクジェットヘッド4との間にリークが生じる。なお、変形例10では、吐出検査部20を構成する信号処理回路78が、本発明の「リーク検出部」としても動作する。
【0118】
続いて、制御部80は、リーク検査処理を実行したときに上記リークが発生したか否かを判断する(S1002)。上記リークが発生していない場合には(S1002:NO)、上述の実施形態同様、制御部80がS101~S103の処理を実行し、処理が終了する。
【0119】
上記リークが発生している場合には(S1002:YES)、制御部80は、高電圧電源回路77による電極76への電圧の印加を停止させ(S1003)、上記リークが発生していることを報知するためのリーク報知信号を操作パネル69に出力し(S1004)、処理が終了する。これにより、操作パネル69には、上記リークが発生していることを報知するための画面等が表示される。
【0120】
変形例10では、インクジェットヘッド4と電極76との間にリーク電流が流れたときに、そのことを検出することができる。そして、リーク電流が流れていないときに、検査情報に基づいて、ノズル10に異常があるか否か、および、吐出検査部20が故障しているか否かを判定することができる。
【0121】
また、変形例10では、吐出検査部20を構成する信号処理回路78が、リークを検出するリーク検出部としても動作したが、これには限られない。プリンタが、例えば、インクジェットヘッド4と電極76との間に流れる電流を検出する回路等、信号処理回路78とは別にリーク検出部を有していてもよい。
【0122】
また、変形例10では、上記リークが発生していない場合に、制御部80が、上述の実施形態同様のS101~S103の処理を実行したが、これには限られない。変形例10において、上記リークが発生していない場合に、制御部80が、変形例1と同様のS201~S204の処理、変形例2と同様のS301~S303の処理、変形例4と同様のS401~S411の処理、変形例5と同様のS501~S508の処理、変形例6と同様のS601~S611の処理、変形例7と同様のS701~S706の処理、変形例8と同様のS801~S809の処理、変形例9と同様のS901~S905の処理のいずれかを実行してもよい。
【0123】
また、以上の例では、プリンタ1が、パージとして、吸引パージを行ったが、これには限られない。例えば、インクカートリッジとインクジェットヘッド4との間の流路等にインクジェットヘッド4内のインクを加圧する加圧ポンプが設けられていてもよい。そして、複数のノズル10がキャップ71で覆われた状態で上記加圧ポンプを駆動させることによってインクジェットヘッド4内のインクを排出させる加圧パージを行ってもよい。また、吸引ポンプ72を駆動させることによる吸引パージと、上述の加圧ポンプを駆動させることによる加圧パージの両方行ってもよい。
【0124】
また、上述の実施形態では、吐出検査部20が、インクジェットヘッド4に吐出駆動を行わせたときの、ノズル10からキャップ71内に配置された電極76における電圧の変化に応じた信号を出力するものであったが、これには限られない。
【0125】
例えば、吐出検査部を、電極76の代わりに、鉛直方向に延びており、キャリッジ2がメンテナンス位置に位置している状態でノズル10の下方の空間と対向する電極を有するものとしてもよい。そして、信号処理回路78から、キャリッジ2をメンテナンス位置に位置させた状態で吐出駆動を行ったときの上記電極の電圧の変化に応じた信号を出力するものであってもよい。
【0126】
また、吐出検査部は、吐出駆動が行われたときの電極における電気的な変化に応じた信号を出力するものであることにも限られない。
【0127】
例えば、変形例11では、
図15(a)、(b)に示すように、吐出検査部100が、複数の発光素子101と複数の受光素子102とを有する光学センサである。なお、
図15(b)ではキャリッジ2がメンテナンス位置に位置している状態での複数のノズル10の位置を破線で示している。
【0128】
複数の発光素子101は、キャップ71の右側に配置されており、搬送方向に並んでいる。複数の発光素子101は、ノズル列9を構成する複数のノズル10に対して個別に設けられており、各発光素子101の搬送方向の位置は、対応するノズル10の搬送方向の位置と同じである。また、複数の発光素子101は、上下方向において、降下したキャップ71とインクジェットヘッド4との間に位置している。
【0129】
複数の受光素子102は、複数の発光素子101に対して個別に設けられている。複数の受光素子102は、キャップ71の左側に配置されており、搬送方向に並んでいる。また、複数の受光素子102の上下方向の位置は複数の発光素子101の上下方向の位置と同じである。また、各受光素子102の搬送方向の位置は、対応する発光素子101の搬送方向の位置と同じである。なお、上述したのとは逆に、キャップ71の左側に複数の発光素子101を配置し、キャップ71の右側に複数の受光素子102を配置してもよい。
【0130】
吐出検査部100においては、各発光素子101が制御部80の制御により対応する受光素子102に向けて光を照射し、受光素子102が受信した光の光量に応じた信号を制御部80に出力する。
【0131】
そして、変形例11では、吐出検査処理において、制御部80が、キャリッジモータ86制御してキャリッジ2をメンテナンス位置に位置させ、キャップ昇降機構88を制御してキャップ71を降下させ、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の各々について、ノズル10に対応する発光素子101に光を照射させた状態で、インクジェットヘッド4にこのノズル10からインクを吐出させるための吐出駆動を行わせる。
【0132】
吐出駆動によりノズル10から正常にインクが吐出された場合には、吐出されたインクによって発光素子101から照射された光が一時的に遮られ、対応する受光素子102が受信する光の光量が一時的に低下する。吐出駆動によるノズル10からインクの吐出量が正常時よりも少ない場合には、ノズル10から正常にインクが吐出された場合よりも、対応する受光素子102が受信する光の光量の低下が小さい。さらに、吐出駆動によってノズル10からインクが吐出されなかった場合には、対応する受光素子102が受信する光の光量がほとんど変化しない。したがって、吐出検査部100は、ノズル10から吐出されたインクを検出する光学センサであり、受光素子102から出力される信号がノズル10に異常があるか否かを示している。
【0133】
変形例11では、インクジェットヘッド4に吐出駆動を行わせたときに、発光素子101から照射され受光素子102で受信される光の光量に基づいて、ノズル10に異常があるか否かを検査することができる。
【0134】
あるいは、例えば、吐出検査部を、特許第4929699号公報に記載されているのと同様の、インクジェットヘッドのノズルが形成されたプレートに、ノズルからインクが吐出されたときの電圧の変化を検出する電圧検出回路を接続し、電圧検出回路に、キャリッジを検査位置に移動させた状態でノズルからインクを吐出させるための動作を行わせたときの電圧変化に応じた信号を出力するものとしてもよい。
【0135】
あるいは、例えば、吐出検査部を、特許第6231759号公報に記載されているのと同様の、インクジェットヘッドの基板を、温度検知素子を備えたものとしてもよい。そして、インクの吐出のために第1印加電圧を印加してヒータを駆動した後に、インクが吐出されないように第2印加電圧を印加してヒータを駆動し、第2印加電圧を印加してから、その後、所定時間が経過するまでの間の、温度検知素子で検知された温度の変化に応じた信号を出力させてもよい。
【0136】
また、プリンタが、吐出駆動が行われたときにノズル10に異常があるか否かを示す信号を出力する吐出検査部を備えていることにも限られない。
【0137】
変形例12では、
図16に示すように、プリンタ110が、スキャナ111を備えている。スキャナ111は、後述するノズルチェックパターンが記録された記録用紙S等の原稿を読み取り、読み取り結果に応じた信号を出力する。また、プリンタ110は、上述の実施形態のプリンタ1が備えていた吐出検査部20を備えていない。また、プリンタ1の上記以外の構成については、上述の実施形態のプリンタ1と同様である。なお、変形例10では、スキャナ111が、本発明の「第1吐出検査部」および「吐出検査部」に相当し、スキャナ111がノズルチェックパターンの読み取り結果に基づいて出力する信号が、本発明の「第1検査信号」および「検査信号」に相当する。
【0138】
変形例12では、例えば、ユーザにより操作パネル69においてノズル10の検査を行うことを指示する操作が行われたときに、制御部80が、
図17のフローチャートに沿って処理を行う。
【0139】
図17のフローチャートについて説明すると、制御部80は、まず、パターン記録処理を実行する(S1101)。パターン記録処理において、制御部80は、キャリッジモータ86、インクジェットヘッド4、搬送モータ87等を制御して記録パスと搬送動作とを繰り返し行わせることによって、記録用紙Sに各ノズル10についてノズル10に異常があるか否かを示すノズルチェックパターンを記録させる。ノズルチェックパターンは従来と同様のものであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0140】
続いて、制御部80は、操作パネル69に、ノズルチェックパターンが記録された記録用紙Sをスキャナ111にセットして、スキャナ111にノズルチェックパターンを読み取らせることを促すメッセージを表示させるための信号を出力する(S1102)。これにより、操作パネル69に上記メッセージを含む画面が表示される。その後、制御部80は、スキャナ111からノズルチェックパターンの読み取り結果に応じた信号を受信するまで待機する(S1103:NO)。
【0141】
スキャナ111からノズルチェックパターンの読み取り結果に応じた信号を受信したときに(S1103:YES)、制御部80は、受信した信号が、インクジェットヘッド4のすべてのノズル10に異常があることを示しているか否かを判断する(S1104)。
【0142】
受信した信号が、いずれかのノズル10に異常がないことを示している場合には(S1104:NO)、制御部80は、上述の実施形態のS104,S105と同様のS1105,S1106の処理を実行し、処理が終了する。受信した信号が、インクジェットヘッド4のすべてのノズル10に異常があることを示している場合には(S1104:YES)、制御部80は、検査部故障信号を操作パネル69に出力し(S1107)、処理が終了する。
【0143】
変形例12では、スキャナ111によるノズルチェックパターンの読み取り結果に基づいて、ノズル10に異常があるか否かを検査することができる。
【0144】
なお、変形例12では、ノズルチェックパターンの読み取り結果に応じた信号が、インクジェットヘッド4のすべてのノズル10に異常があることを示している場合に検査部故障信号を出力したが、これには限られない。例えば、ノズルチェックパターンの読み取り結果に応じた信号が、すべてのブラックノズルに異常があることを示している場合、および、すべてのカラーノズルに異常があることを示している場合に、検査部故障信号を出力してもよい。あるいは、例えば、ノズルチェックパターンの読み取り結果に応じた信号が、いずれかのノズル列9を構成するすべてのノズル10に異常があることを示している場合に、検査部故障信号を出力してもよい。
【0145】
また、吐出駆動が行われたときにインクの吐出に異常があるか否かを示す信号を出力する吐出検査部と、スキャナとを備えたプリンタにおいて、吐出検査部から出力される信号と、ノズルチェックパターンの記録結果とに基づいて、吐出検査部が故障しているか否かを判断することも可能である。
【0146】
例えば、変形例13では、
図18に示すようにプリンタ120が、上述の実施形態のプリンタ1と同様の構成に加えて、スキャナ121を備えている。スキャナ121は、変形例12のスキャナ111と同様のものである。なお、変形例13では、スキャナ121が、本発明の「第2吐出検査部」に相当し、スキャナ121がノズルチェックパターンの読み取り結果に基づいて出力する信号が、本発明の「第2検査信号」に相当する。
【0147】
そして、変形例13では、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の各々についてノズル10に異常があるか否かを検出するための検査を行うときに、
図19のフローチャートに沿って処理を行う。
【0148】
図19のフローチャートについて詳細に説明すると、制御部80は、まず、S101と同様の吐出検査処理を実行する(S1201)。続いて、制御部80は、S1201の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、インクジェットヘッド4のすべてのノズル1に異常があることを示しているか否かを判断する(S1202)。検査情報が、いずれかのノズル10に異常がないことを示している場合には(S1202:NO)、制御部80は、上述の実施形態のS104,S105と同様のS1203,S1204と同様の処理を実行し、処理が終了する。
【0149】
検査情報が、インクジェットヘッド4のすべてのノズル10に異常があることを示している場合には(S1202:YES)、制御部80は、変形例12のS1101と同様のパターン記録処理を実行する(S1205)。続いて、制御部80は、操作パネル69に、ノズルチェックパターンが記録された記録用紙Sをスキャナ121にセットして、スキャナ121にノズルチェックパターンを読み取らせることを促すメッセージを表示させるための信号を出力する(S1206)。その後、制御部80は、スキャナ121からノズルチェックパターンの読み取り結果に応じた信号を受信するまで待機する(S1207:NO)。
【0150】
スキャナ111からノズルチェックパターンの読み取り結果に応じた信号を受信したときに(S1207:YES)、制御部80は、S1201の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報と、ノズルチェックパターンの読み取り結果に応じた信号とで、異常があることを示しているか否かが異なるノズル10の数がD個以上であるか否かを判断する(S1208)。なお、変形例13では、「S1201の吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報と、ノズルチェックパターンの読み取り結果に応じた信号とで、異常があることを示しているか否かが異なるノズル10の数がD個以上である」という条件が、本発明の「第2条件」に相当する。
【0151】
検査情報と、ノズルチェックパターンの読み取り結果に応じた信号とで、異常があることを示しているか否かが異なるノズル10の数がD個未満の場合には(S1208:NO)、制御部80は排出処理を実行し(S1204)、処理が終了する。
【0152】
検査情報と、ノズルチェックパターンの読み取り結果に応じた信号とで、異常があることを示しているか否かが異なるノズル10の数がD個以上の場合には(S1208:YES)、制御部80は検査部故障信号を操作パネル69に出力し(S1209)、処理が終了する。
【0153】
変形例13では、複数のノズル10について吐出検査処理で信号処理回路78から出力される検査信号が、すべてのノズル10に異常があることを示している場合に、ノズルチェックパターンを記録させ、ノズルチェックパターンをスキャナ111で読み取ることによって複数のノズル10の各々について異常があるか否かの情報を取得する。このとき、吐出検査部20が故障している場合には、吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報と、ノズルチェックパターンの読み取り結果に応じた信号とで、ノズル10に異常があることを示しているか否かが異なるノズル10の数が多くなる可能性が高い。
【0154】
そこで、変形例13では、D個以上のノズル10について、吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報と、ノズルチェックパターンの読み取り結果に応じた信号とで、ノズル10に異常があることを示しているか否かが異なる場合に、検査部故障信号を操作パネル69に出力する。これにより、操作パネル69に吐出検査部20が故障したことを報知するための画面が表示され、ユーザは、吐出検査部20が故障したことを把握することができる。また、この場合には、吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報が、すべてのノズル10に異常があることを示している場合に、検査部故障信号を出力する場合と比較して、吐出検査部20が故障している可能性がより高いときに検査部故障信号を出力することができる。
【0155】
また、変形例13では、上述の実施形態と同様の、検査情報が、インクジェットヘッド4のすべてのノズル10に異常があることを示しているという第1条件を満たす場合に、S1203~S1207の処理を実行したが、これには限られない。例えば、変形例1,2,4~9のいずれかと同様の第1条件を満たす場合に、S1203~S1207の処理を実行してもよい。
【0156】
また、変形例13では、吐出検査処理でフラッシュメモリ84に記憶された検査情報と、ノズルチェックパターンの読み取り結果に応じた信号とで、異常があることを示しているか否かが異なるノズル10の数がD個以上である、という条件を第2条件としたが、これには限られない。第2条件を、ノズルチェックパターンの読み取り結果に応じた信号についての別の条件としてもよい。
【0157】
また、変形例13では、吐出検査部20が第1吐出検査部であり、ノズルチェックパターンを読み取るスキャナ121が第2吐出検査部であったが、これには限られない。第1吐出検査部は、吐出検査部20とは別の、ノズル10に異常があるか否かに応じた信号を出力するものであってもよい。第2吐出検査部は、スキャナ121とは別の、ノズル10に異常があるか否かに応じた信号を出力するものであってもよい。
【0158】
また、以上の例では、プリンタ1が操作パネル69を備え、ユーザが操作パネル69の各選択部が表示される部分に触れる操作を行うことによって選択部を選択することができるようになっていたが、これには限られない。例えば、プリンタが、液晶ディスプレイなどの表示部と、ボタンなどの操作部とを別々に備え、ユーザが、操作部を操作することによって、表示部に操作された各選択部を選択するようになっていてもよい。
【0159】
また、以上の例では、プリンタ1の表示部に故障報知画面などの画面を表示させたが、これには限られない。変形例14では、
図20に示すように、プリンタ130が、上述の実施形態のプリンタ1と同様の構成に加えて、通信部131を備えている。通信部131は、プリンタ130を外部装置140と通信可能に接続するための部分である。
【0160】
外部装置140は、例えばPC、スマートフォンなどであり、通信部141と、表示部142と、操作部143と、制御部144とを備えている。通信部141は、プリンタ130との接続を行うための部分である。プリンタ130の通信部131と外部装置140の通信部141とが、有線または無線で接続されることによって、プリンタ130と外部装置140とが通信可能に接続される。
【0161】
表示部142は、液晶ディスプレイなどである。操作部143は、例えば、外部装置140がPCである場合にはキーボード、マウスなどであり、外部装置140がスマートフォンである場合には表示部142に設けられたタッチパネルなどである。制御部144は、通信部141および表示部142の動作を制御する。また、制御部144に操作部143の操作に応じた信号が入力される。
【0162】
変形例14でも、プリンタ130の制御部80は、インクジェットヘッド4の複数のノズル10の各々についてノズルに異常があるか否かを検出するための検査を行うときに、例えば
図5のフローチャートに沿って処理を行う。ただし、変形例14では、S103の信号の出力を、外部装置140に向けて行う。
【0163】
また、上述の実施形態では、インクジェットヘッド4の全てのノズル10について、検査用駆動を行わせて、ノズルに異常があるか否かを判定したが、これには限られない。例えば、各ノズル列9における1つおきのノズル10等、インクジェットヘッド4の一部のノズル10についてのみ、検査用駆動を行わせてノズルに異常があるか否かを判定してもよい。そして、それ以外のノズル10については、上記一部のノズル10についての判定結果に基づいてノズルに異常があるか否かを推定してもよい。
【0164】
また、以上の例では、吐出検査部が、インクの吐出量が不足しているか否かを示す信号を出力するものであったが、これには限られない。吐出検査部は、インクの吐出状態が悪いか否かを示す信号を出力するものであってもよい。例えば、吐出検査部は、ノズル10内のインク粘度が高い状態か否か、インクが曲がって吐出される状態か否かなどの正常な記録が難しい状態であるか否かを示す信号を出力するものであってもよい。
【0165】
また、以上の例では、吐出検査部が故障していることを示すメッセージなどを表示させることによって報知を行うための検査部故障信号をプリンタや外部装置の表示部に出力したが、これには限られない。例えば、プリンタまたは外部装置が、表示ランプ、スピーカ等、表示部以外の報知部を備えており、吐出検査部が故障していることを報知させるための検査部故障信号をこれらの報知部に出力してもよい。
【0166】
さらには、検査部故障信号は、吐出検査部が故障したことを報知するための信号であることにも限られない。例えば、検査部故障信号は、吐出検査部が故障したことをフラッシュメモリ84に記憶させるための信号などであってもよい。
【0167】
また、以上では、キャリッジとともに走査方向に移動しつつ複数のノズルからインクを吐出する、いわゆるシリアルヘッドを備えたプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。例えば、走査方向に記録用紙の全長にわたって延びたいわゆるラインヘッドを備えたプリンタに本発明を適用することも可能である。
【0168】
また、以上では、ノズルからインクを吐出して記録用紙Sに記録を行うプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。Tシャツ、屋外広告用のシート、スマートフォン等の携帯端末のケース、段ボール、樹脂部材など、記録用紙以外の被記録媒体に画像を記録する記録装置にも適用され得る。また、インク滴以外の液体、例えば、液体状にした樹脂や金属の液体を吐出する液体吐出装置にも適用され得る。
【符号の説明】
【0169】
1:プリンタ
4:インクジェットヘッド
10:ノズル
20:吐出検査部
69:操作パネル
76:電極
77:高電圧電源回路
78:信号処理回路
79:抵抗
80:制御部
100:吐出検査部
101:発光素子
102:受光素子
110:プリンタ
111:スキャナ
120:プリンタ
121:スキャナ
130:プリンタ
140:外部装置
142:表示部