(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172940
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ステータおよび回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 3/18 20060101AFI20241205BHJP
H02K 3/28 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H02K3/18 P
H02K3/28 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091019
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】廣田 憲泰
【テーマコード(参考)】
5H603
【Fターム(参考)】
5H603BB01
5H603CA01
5H603CB02
5H603CC03
5H603CC11
5H603CD02
5H603CD04
(57)【要約】
【課題】回転電機の出力性能の向上を図る。
【解決手段】回転電機のステータ20は、ステータコア21およびステータコイル22を有する。ステータコア21は、筒状の基部26と、周方向に並ぶ態様で基部26から径方向に突出する複数のティース27を備える。ステータコイル22は、ティース27に巻回される。ステータコイル22は、内コイル54および外コイル55を有する。内コイル54および外コイル55は、並列に巻回される態様でティース27に設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の基部、および、周方向に並ぶ態様で前記基部から径方向に突出する複数のティースを備えるステータコアと、前記ティースに巻回されたステータコイルと、を有する回転電機のステータにおいて、
前記ステータコイルは、並列に巻回された複数のコイルを含んで構成される、ステータ。
【請求項2】
前記複数のティースの各々は、前記ステータコアの軸線方向および前記周方向の少なくとも一方において分割されてなる複数のティース部を有するとともに、前記複数のコイルが、個々の当該コイルの巻回範囲が前記径方向において重複する態様で巻回されてなり、
前記複数のコイルに含まれる第1コイルは、前記複数のティース部の全体に巻回されてなり、
前記複数のコイルのうちの前記第1コイルと異なる第2コイルは、前記複数のティース部の一部にのみ巻回されてなる、
請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
前記複数のコイルは、並列に巻回された2つのコイルであり、
前記複数のティースの各々は、前記周方向に並ぶ態様で分割されてなる3つのティース部を有するとともに、前記2つのコイルが、個々の当該コイルの巻回範囲が前記径方向において重複する態様で巻回されてなり、
前記2つのコイルの一方である第1コイルは、前記3つのティース部の全体に巻回されてなり、
前記2つのコイルの他方である第2コイルは、前記3つのティース部のうちの前記周方向における中央に配置される中央ティース部のみに巻回されてなる、
請求項1に記載のステータ。
【請求項4】
前記中央ティース部は、前記3つのティース部のうちの前記中央ティース部を除く2つの前記ティース部と比較して、前記ステータコアの軸線方向における長さが短くなっている、
請求項3に記載のステータ。
【請求項5】
筒状の基部、および、周方向に並ぶ態様で前記基部から径方向に突出する複数のティースを備えるステータコアと、前記ティースに巻回されたステータコイルと、を有するステータを備える回転電機において、
前記ステータコイルは、並列に巻回された複数のコイルを含んで構成されており、
前記回転電機は、低回転時には前記複数のコイルの全てに通電されるものであり、且つ、高回転時には前記複数のコイルのうちの一部のみに通電されるものである、回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータおよび回転電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転電機はステータを有する(特許文献1参照)。特許文献1に記載の回転電機のステータは、鉄心であるステータコアと、同ステータコアに設けられたステータコイルとを有する。ステータコアは、円筒状の基部(いわゆるバックヨーク)と、周方向に並ぶ態様で同基部から径方向内側に突出する複数のティースとを有する。ステータコイルは、ティースに巻回される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記回転電機において、最大出力を大きくするためには、ステータコイルの巻数を多くすることが考えられる。ただし、単にステータコイルの巻数を多くすると、回転電機の最大出力を大きくすることが可能になるものの、同回転電機の逆起電圧が高くなってしまう。そして、回転電機の逆起電圧が高くなると、これが回転電機の出力性能を低下させる一因になる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのステータは、筒状の基部、および、周方向に並ぶ態様で前記基部から径方向に突出する複数のティースを備えるステータコアと、前記ティースに巻回されたステータコイルと、を有する回転電機のステータにおいて、前記ステータコイルは、並列に巻回された複数のコイルを含んで構成される。
【0006】
前記課題を解決するための回転電機は、筒状の基部、および、周方向に並ぶ態様で前記基部から径方向に突出する複数のティースを備えるステータコアと、前記ティースに巻回されたステータコイルと、を有するステータを備える回転電機において、前記ステータコイルは、並列に巻回された複数のコイルを含んで構成されており、前記回転電機は、低回転時には前記複数のコイルの全てに通電されるものであり、且つ、高回転時には前記複数のコイルのうちの一部のみに通電されるものである。
【0007】
回転電機の低回転時には、比較的大きいトルクが必要になる一方、同回転電機の回転速度に比例して高くなる逆起電力が問題になりにくい。上記構成によれば、そうした回転電機の低回転時においては、並列に巻回された複数のコイルの全てに通電することで、通電状態のコイルの総巻数を多くして、大きいトルクの出力を得ることができる。しかも、このときには、回転電機の高回転時と比較して同回転電機の逆起電圧が低いため、逆起電圧が回転電機の出力性能に与える影響は抑えられる。このように、回転電機の低回転時においては、逆起電圧に起因する回転電機の出力性能の低下を抑えつつ、大きいトルクの出力を得ることができる。
【0008】
回転電機の高回転時においては、大きいトルクが必要でなくなる一方、同回転電機の逆起電力が問題になりやすい。上記構成によれば、そうした回転電機の高回転時においては、並列に巻回された複数のコイルのうちの一部のみに通電することで、複数のコイルの全てに通電する場合と比較して通電状態のコイルの総巻数を少なくすることができる。これにより、回転電機の逆起電圧を低くすることができるため、その分だけ出力性能の向上を図ることができる。しかも、回転電機の高回転時には、大きいトルクが必要ではないため、通電状態のコイルの総巻数が少なくなるとはいえ、十分なトルクの出力を得ることができる。このように、回転電機の高回転時においては、十分なトルクを得つつ、逆起電圧に起因する出力性能の低下を抑えることができる。
【0009】
したがって上記構成によれば、回転電機の出力性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】第1実施形態のステータのティースおよびその周辺を拡大して示す側面図である。
【
図4】第1実施形態のステータの
図3の4-4線に沿った断面図である。
【
図5】第2実施形態のステータのティースおよびその周辺を拡大して示す側断面図である。
【
図6】第2実施形態のティースおよびその周辺の
図5の6-6線に沿った断面図である。
【
図7】他の実施形態のステータのティースおよびその周辺の断面図である。
【
図8】その他の実施形態のステータのティースおよびその周辺を拡大して示す側断面図である。
【
図9】その他の実施形態のティースおよびその周辺の
図8の9-9線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、ステータおよび回転電機の第1実施形態について、
図1~
図4を参照して説明する。
【0012】
図1に示すように、回転電機10は永久磁石界磁式の同期モータである。回転電機10は、ステータ20と、ロータ30と、それらステータ20およびロータ30を収容するケース40とを有する。
【0013】
ステータ20は、ステータコア21とステータコイル22とを有する。ステータコア21は鉄心である。ステータコア21は、軸線Cを中心軸とする略円筒形状をなす。ステータコア21は、ケース40の内部に固定される。ステータコイル22は、巻線である。ステータコイル22は、上記ステータコア21における中心孔23の周囲に巻回されている。ステータ20の詳細については後述する。
【0014】
ロータ30は、ロータコア31とロータシャフト32とを有する。ロータコア31は鉄心である。ロータコア31は軸線Cを中心軸とする略円筒状をなす。ロータシャフト32は回転軸である。ロータシャフト32はロータコア31の中心孔33に挿通された状態で同ロータコア31と一体になっている。ケース40は、同ケース40の内外を連通する支持孔41と円筒状の支持筒部43とを有する。これら支持孔41および支持筒部43は、ロータシャフト32を回転可能に支持する軸受けとして機能する。本実施形態では、ロータシャフト32の一端が上記支持孔41に挿入されるとともに他端が上記支持筒部43に挿入された状態で、同ロータシャフト32がケース40に支持されている。
【0015】
<ステータ>
以下、ステータ20の具体構造について説明する。
図2に示すように、ステータコア21は、中心孔を有する円板状の金属板24が複数枚(例えば数百枚)積層された積層構造をなす。金属板24は電磁鋼板(詳しくは、無方向性ケイ素鋼板)によって形成される。
【0016】
ステータコア21は、複数(本実施形態では12個)のスリット25を有する。複数のスリット25は、ステータコア21の周方向において等間隔で並ぶように配置される。各スリット25は、断面略扇形状で軸線Cの延びる方向(以下、軸線C方向)にステータコア21を貫通する形状をなす。各スリット25は、ステータコア21の内周面において開口するとともに同ステータコア21の径方向に延びる形状をなす。
【0017】
ステータ20では、外周側において略筒状をなす部分が基部26(いわゆるバックヨーク)を構成する。またステータ20では、隣り合うスリット25に挟まれた部分がティース27を構成する。ステータ20は、周方向において等間隔で並ぶ態様で設けられた複数(本実施形態では12個)のティース27を有する。各ティース27は、上記基部26から径方向内側に突出した形状をなす。
【0018】
<ティース>
図2~
図4に示すように、本実施形態では、複数のティース27の各々は、周方向に並ぶ態様で分割されてなる3つのティース部50,51,52を有する。詳しくは、複数のティース27の各々は、2つのスリット部53を有する。各スリット部53は、ティース27の内周面を始点に外周側に延びる。各スリット部53は、径方向および軸線C方向に延在する。2つのスリット部53は、周方向に間隔を置いて設けられる。2つのスリット部53により、複数のティース27の各々は3つのティース部50~52に分割される。
【0019】
3つのティース部50~52は、周方向において端ティース部50、中央ティース部51、端ティース部52の順に並ぶ態様で配置される。中央ティース部51は、ティース27における3つのティース部50~52の並び方向の中央に配置される。また、中央ティース部51は、端ティース部50,52と比較して、軸線C方向における長さが短くなっている。具体的には、中央ティース部51の軸線C方向における両端が、端ティース部50,52の軸線C方向における両端に対して、中央ティース部51に巻回されるステータコイル22の厚さの分だけティース27の内方側に後退した位置になっている。こうした構成は、中央ティース部51を構成する金属板24(
図4)の枚数を、端ティース部50,52を構成する金属板24の枚数よりも少なくすることにより実現されている。なお本実施形態では、端ティース部50,52が、3つのティース部のうちの中央ティース部を除く2つのティース部に相当する。
【0020】
<ステータコイル>
ステータコイル22は集中巻のものである。ステータコイル22は、ティース27に巻回されたコイル状をなす。ステータコイル22は、内コイル54と外コイル55とを有する。内コイル54および外コイル55は、互いに接続されていない独立したコイルである。内コイル54および外コイル55は、個々のコイル54,55の巻回範囲が径方向において重複する態様で、複数のティース27の各々に対して巻回される。本実施形態では、内コイル54および外コイル55を軸線C方向から見た場合に、内コイル54の巻回範囲と外コイル55の巻回範囲とが重複している。内コイル54および外コイル55は、複数のティース27の各々に対して、並列に巻回される。
【0021】
<内コイル>
内コイル54は、3つのティース部50~52のうちの周方向における中央に配置される中央ティース部51のみに巻回される。具体的には、内コイル54を構成するコイル線は、中央ティース部51の周囲で環状をなすように同中央ティース部51に複数回にわたって巻回される。内コイル54は、同内コイル54を径方向内側から見た場合(
図4参照)にコイル線の配設範囲の外形断面が略長方形状になるように、中央ティース部51に巻回される。
【0022】
本実施形態では、中央ティース部51の軸線C方向における両端が、端ティース部50,52の軸線C方向における両端に対して、中央ティース部51に巻回されるステータコイル22の厚さの分だけティース27の内方側に後退した位置になっている。そのため、中央ティース部51に内コイル54が巻回された状態では、内コイル54の外周面と端ティース部50,52の軸線C方向の両端面とが略面一になる。なお本実施形態では、内コイル54が第2コイルに相当する。
【0023】
<外コイル>
外コイル55は、3つのティース部50~52の全体に巻回される。具体的には、外コイル55を構成するコイル線は、端ティース部50、中央ティース部51、端ティース部52を有する1つのティース27の周囲で環状をなすように、同ティース27に複数回にわたって巻回される。外コイル55は、同外コイル55を径方向内側から見た場合(
図4参照)にコイル線の配設範囲の外形断面が略長方形状になるように、1つのティース27の全体に巻回される。なお本実施形態では、外コイル55が第1コイルに相当する。
【0024】
本実施形態では、外コイル55は、中央ティース部51に巻回された内コイル54の外周を覆う態様で、同中央ティース部51を含む1つのティース27の全体に巻回される。本実施形態では、中央ティース部51には内コイル54と外コイル55とが重なる状態で配置されるのに対し、端ティース部50,52には、内コイル54と外コイル55とが重ならない状態で、外コイル55のみが配置される。
【0025】
<回転電機の運転制御>
本実施形態では、回転電機10の周辺機器として、電子制御装置(図示略)を備えている。この電子制御装置により、回転電機10の運転制御が実行される。
【0026】
回転電機10の運転制御は、内コイル54および外コイル55の両方に通電する第1制御態様と、内コイル54のみに通電する第2制御態様とを切り替えつつ実行される。詳しくは、回転電機10の回転速度が低い低回転時においては、内コイル54および外コイル55の両方に通電する第1制御態様で、回転電機10の運転制御が実行される。一方、回転電機10の回転速度が比較的高い高回転時においては、内コイル54のみに通電する第2制御態様で、回転電機10の運転制御が実行される。
【0027】
<作用>
以下、本実施形態のステータ20および回転電機10による作用について説明する。
回転電機10の低回転時には、比較的大きいトルクが必要になる一方、同回転電機10の回転速度に比例して高くなる逆起電力は問題になりにくい。
【0028】
本実施形態では、回転電機10の低回転時においては、ティース27に対して並列に巻回された内コイル54および外コイル55の両方に通電される。これにより、通電状態のコイルの総巻数、具体的には内コイル54の巻数W1と外コイル55の巻数W2とを加算した値である総巻数(=W1+W2)が多くなるため、大きいトルクの出力が得られる。しかも、このときには、回転電機10の高回転時と比較して同回転電機10の逆起電圧が低いため、逆起電圧が回転電機10の出力性能に与える影響は抑えられる。このように、回転電機10の低回転時においては、逆起電圧に起因する回転電機10の出力性能の低下を抑えつつ、大きいトルクの出力が得られる。
【0029】
回転電機10の高回転時においては、大きいトルクが必要でなくなる一方、同回転電機10の逆起電力が問題になりやすい。
本実施形態では、回転電機10の高回転時においては、内コイル54のみに通電される。そのため、内コイル54および外コイル55の両方に通電する場合と比較して、通電状態のコイルの総巻数(具体的には、内コイル54の巻数W1)を少なくすることができる。これにより、コイルの巻数に比例して高くなる回転電機10の逆起電圧を低くすることができるため、その分だけ回転電機10の出力性能の向上を図ることができる。しかも、回転電機10の高回転時には、大きいトルクが必要ではないため、通電状態のコイルの総巻数が少なくなるとはいえ、十分なトルクの出力を得ることができる。このように、回転電機10の高回転時においては、十分なトルクの出力を得つつ、逆起電圧に起因する出力性能の低下を抑えることができる。
【0030】
<効果>
本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られる。
(1-1)1つのティース27に対して、内コイル54および外コイル55が、並列に巻回される態様で設けられている。そのため、回転電機10の低回転時においては、逆起電圧に起因する回転電機10の出力性能の低下を抑えつつ、大きいトルクの出力を得ることができる。また回転電機10の高回転時においては、十分なトルクの出力を得つつ、逆起電圧に起因する出力性能の低下を抑えることができる。したがって本実施形態によれば、回転電機10の出力性能の向上を図ることができる。
【0031】
(1-2)本実施形態では、内コイル54および外コイル55は、個々のコイル54,55の巻回範囲が径方向において重複する態様で、複数のティース27の各々に対して巻回される。そのため、巻回範囲が重複しないように径方向に並ぶ態様で内コイル54および外コイル55がティース27に巻回される場合と比較して、ティース27の径方向の長さを短くすることができる。したがって、ステータ20の径方向におけるサイズを小さくすることができる。
【0032】
本実施形態では、外コイル55は3つのティース部50~52の全体に巻回される。内コイル54は、3つのティース部50~52のうちの周方向における中央に配置される中央ティース部51のみに巻回される。同構成によれば、ティース27における内コイル54が巻回される部分(具体的には、中央ティース部51)の形状と外コイル55が巻回される部分(具体的には、3つのティース部50~52の全体)の形状とを、高い自由度で各別に設定することができる。これにより、回転電機10の低回転時における出力性能と高回転時における出力性能との関係を、高い自由度で調整および設定することができる。
【0033】
本実施形態では、中央ティース部51が、ティース27における3つのティース部50~52の並び方向の中央に配置される。これにより、中央ティース部51に巻回される内コイル54の中心軸と、ティース27の全体に巻回される外コイル55の中心軸とが一致している。そのため、ティース27において磁束が生じる位置を、内コイル54のみに通電する第1制御態様と内コイル54および外コイル55の両方に通電する第2制御態様とで一致させることができる。したがって、回転電機10の運転制御における第1制御態様と第2制御態様との切り替えを、出力段差の発生を抑えつつスムーズに行うことができる。
【0034】
(1-3)中央ティース部51は、端ティース部50,52と比較して、軸線C方向における長さが短くなっている。これにより、中央ティース部51に内コイル54を巻回することで、内コイル54の外周面と端ティース部50,52の軸線C方向の両端面とを略面一にすることができる。そのため、外コイル55を、中央ティース部51に巻回された内コイル54の外周を覆う態様で同中央ティース部51を含む1つのティース27の全体に巻回することで、コイル線の配設範囲の外形断面が略長方形状になる態様で配置することができる。したがって本実施形態によれば、ティース27に対して内コイル54および外コイル55が重なる状態で配置される重複部分と重ならない状態で配置される非重複部分とが混在するとはいえ、重複部分が非重複部分よりも太くなることを抑えることができる。
【0035】
(第2実施形態)
以下、ステータおよび回転電機の第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に、
図5および
図6を参照して説明する。
【0036】
本実施形態と先の第1実施形態とは、ティースおよびステータコイルの構造のみが異なる。以下、本実施形態のティースおよびステータコイルの構造について説明する。なお以下では、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付して示し、その詳細な説明は割愛する。
【0037】
<ティース>
図5および
図6に示すように、ステータコア71は、複数のティース77を有する。なお
図5および
図6には、複数のティース77のうちの1つのみを示している。本実施形態のステータコア71では、隣り合うスリット25に挟まれた部分がティース77を構成する。各ティース77は、上記基部26から径方向内側(
図5の下側)に突出した形状をなす。本実施形態では、ティース77におけるステータコイル72が巻回される部分には、径方向および軸線C方向に延在するスリットは設けられていない。本実施形態では、ティース77におけるステータコイル72が巻回される部分は、略直方体状をなす。
【0038】
<ステータコイル>
ステータコイル72は、内周コイル84と、外周コイル85とを有する。内周コイル84および外周コイル85は、互いに接続されていない独立したコイルである。内周コイル84および外周コイル85は、個々のコイル84,85の巻回範囲が重複しないように径方向に並ぶ態様で、複数のティース77の各々に対して巻回される。本実施形態では、内周コイル84および外周コイル85を軸線C方向から見た場合に、内周コイル84の巻回範囲と外周コイル85の巻回範囲とが重複しない。詳しくは、内周コイル84を構成するコイル線は、ティース77の内周側(
図5の下側)の部分に複数回にわたって巻回される。また、外周コイル85を構成するコイル線は、ティース77の外周側(
図5の上側)の部分に複数回にわたって巻回される。内周コイル84および外周コイル85は、複数のティース77の各々に対して、並列に巻回される。
【0039】
<回転電機の運転制御>
本実施形態の回転電機60の運転制御は、内周コイル84および外周コイル85の両方に通電する第3制御態様と、内周コイル84のみに通電する第4制御態様とを切り替えつつ実行される。詳しくは、回転電機60の回転速度が低い低回転時においては、内周コイル84および外周コイル85の両方に通電する第3制御態様で、回転電機60の運転制御が実行される。一方、回転電機60の回転速度が比較的高い高回転時においては、内周コイル84のみに通電する第4制御態様で、回転電機60の運転制御が実行される。
【0040】
<作用>
以下、本実施形態のステータ70および回転電機60による作用について説明する。
本実施形態では、回転電機60の低回転時においては、並列に巻回された内周コイル84および外周コイル85の両方に通電される。これにより、通電状態のコイルの総巻数、具体的には内周コイル84の巻数W3と外周コイル85の巻数W4とを加算した値である総巻数(=W3+W4)が多くなるため、大きいトルクの出力が得られる。しかも、このときには、回転電機60の高回転時と比較して同回転電機60の逆起電圧が低いため、逆起電圧が回転電機60の出力性能に与える影響は抑えられる。このように、回転電機60の低回転時においては、逆起電圧に起因する回転電機60の出力性能の低下を抑えつつ、大きいトルクの出力が得られる。
【0041】
本実施形態では、回転電機60の高回転時においては、内周コイル84のみに通電される。そのため、内周コイル84および外周コイル85の両方に通電する場合と比較して、通電状態のコイルの総巻数(具体的には、内周コイル84の巻数W3)を少なくすることができる。これにより、コイルの巻数に比例して高くなる回転電機60の逆起電圧を低くすることができるため、その分だけ回転電機60の出力性能の向上を図ることができる。しかも、回転電機60の高回転時には、大きいトルクが必要ではないため、通電状態のコイルの総巻数が少なくなるとはいえ、十分なトルクの出力を得ることができる。このように、回転電機60の高回転時においては、十分なトルクの出力を得つつ、逆起電圧に起因する出力性能の低下を抑えることができる。
【0042】
<効果>
本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られる。
(2-1)1つのティース77に対して、内周コイル84および外周コイル85が、並列に巻回される態様で設けられている。そのため、回転電機60の低回転時においては、逆起電圧に起因する回転電機60の出力性能の低下を抑えつつ、大きいトルクの出力を得ることができる。また回転電機60の高回転時においては、十分なトルクの出力を得つつ、逆起電圧に起因する出力性能の低下を抑えることができる。したがって本実施形態によれば、回転電機60の出力性能の向上を図ることができる。
【0043】
(2-2)本実施形態では、内周コイル84および外周コイル85は、個々のコイル84,85の巻回範囲が重複しないように径方向に並ぶ態様で、複数のティース77の各々に巻回される。
【0044】
そのため、巻回範囲が径方向において重複する態様で内周コイル84および外周コイル85がティース77に巻回される場合と比較して、ティース77に巻回されたコイル(具体的には、内周コイル84および外周コイル85)の外形を小さくすることができる。したがって、ステータ70の軸線C方向におけるサイズを小さくすることができる。
【0045】
<変更例>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0046】
・第1実施形態において、回転電機10の高回転時に、内コイル54のみに通電することに代えて、外コイル55のみに通電するようにしてもよい。
・第1実施形態において、中央ティース部51の軸線C方向における長さと、端ティース部50,52の軸線C方向における長さとを同一にしてもよい。具体的には、
図7に一例を示すように、中央ティース部51の軸線C方向における端面と端ティース部50,52の軸線C方向における端面とが面一になるように、3つのティース部50~52の形状を設定することができる。
【0047】
・第1実施形態において、各ティース27に複数のティース部を設定するために、各ティース27を周方向に分割することに代えて、各ティース27を軸線C方向に分割してもよい。
【0048】
図8および
図9は、そうしたティースの一例を示す。
図8および
図9に示すように、ティース100は、軸線C方向に並ぶように3つのティース部90~92に分割される。詳しくは、複数のティース100の各々は、2つのスリット部93を有する。各スリット部93は、ティース100の内周面を始点に外周側に延びる。各スリット部93は、軸線Cに直交する面に沿って延びる。2つのスリット部93は、軸線C方向に間隔を置いて設けられる。2つのスリット部93により、複数のティース100の各々は3つのティース部90~92に分割される。
【0049】
そして、内コイル94は、3つのティース部90~92の並び方向の中央に配置される中央ティース91に巻回される。外コイル95はティース100の全体に巻回される。また、内コイル94および外コイル95は、個々のコイル94,95の巻回範囲が径方向において重複する態様で、複数のティース100の各々に対して巻回される。同構成によれば、上記(1-1)および(1-2)に記載の効果に準じた効果が得られる。
【0050】
また
図8および
図9に示す例では、中央ティース部91は、端ティース部90,92と比較して、周方向における長さが短くなっている。具体的には、中央ティース部91の周方向における両端が、端ティース部90,92の周方向における両端に対して、中央ティース部91に巻回される内コイル94の厚さの分だけティース100の内方側に後退した位置になっている。
【0051】
同構成によれば、中央ティース部91に内コイル94を巻回することで、内コイル94の外周面と端ティース部90,92の周方向の両端面とを略面一にすることができる。そのため、外コイル95を、中央ティース部91に巻回された内コイル94の外周を覆う態様で同中央ティース部91を含む1つのティース100の全体に巻回することで、コイル線の配設範囲の外形断面が略長方形状になる態様で配置することができる。したがって上記構成によれば、ティース100に対して内コイル94および外コイル95が重なる状態で配置される重複部分と重ならない状態で配置される非重複部分とが混在するとはいえ、重複部分が非重複部分よりも太くなることを抑えることができる。
【0052】
・第1実施形態において、各ティース27に複数のティース部を設定するために、各ティース27を周方向に分割することに加えて、各ティース27を軸線C方向に分割してもよい。この場合、例えば内コイル54を、複数のティース部のうちの径方向の中央に位置するティース部であって、且つ軸線C方向の中央に位置するティース部に巻回することができる。また、外コイル55を、1つのティースの全体に巻回することができる。
【0053】
・第2実施形態において、内周コイル84および外周コイル85を、個々のコイル84,85の巻回範囲の少なくとも一部が径方向において重複する態様でティース77に巻回してもよい。
【0054】
・各実施形態において、一つのティース27,77,100に対して、並列に巻回される態様で、3つ以上のコイルを設けることができる。こうした構成によれば、回転電機10,60の回転速度に応じて通電するコイルの数を変更することにより、高い自由度で回転電機10,60の運転制御を実行することができる。例えば、一つのティース27,77,100に対して3つのコイルが設けられる場合には、回転電機10,60の低回転時には1つのコイルのみに通電し、中回転時には2つのコイルに通電し、高回転時には3つのコイルに通電することができる。
【0055】
・上記各実施形態にかかるステータおよび回転電機は、集中巻のステータコイルを有するステータおよび回転電機に限らず、分布巻のステータコイルを有するステータおよび回転電機にも適用することができる。この場合には、ステータコイルを構成する複数のコイルを並列に巻回される態様で設ければよい。また、回転電機の低回転時には複数のコイルの全てに通電し、同回転電機の高回転時には複数のコイルのうちの一部のみに通電すればよい。
【0056】
・上記各実施形態にかかるステータおよび回転電機は、インナーロータ型の回転電機および同回転電機のステータの他、アウターロータ型の回転電機および同回転電機のステータにも適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
10…回転電機
20…ステータ
21…ステータコア
22…ステータコイル
23…中心孔
24…金属板
25…スリット
26…基部
27…ティース
30…ロータ
31…ロータコア
32…ロータシャフト
33…中心孔
40…ケース
41…支持孔
43…支持筒部
50…端ティース部
51…中央ティース部
52…端ティース部
53…スリット部
54…内コイル
55…外コイル
60…回転電機
70…ステータ
71…ステータコア
72…ステータコイル
77…ティース
84…内周コイル
85…外周コイル
90…端ティース
91…中央ティース
92…端ティース
93…スリット部
94…内コイル
95…外コイル
100…ティース