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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172943
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/38 20060101AFI20241205BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241205BHJP
   B41J 29/393 20060101ALI20241205BHJP
   B41J 29/46 20060101ALI20241205BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B41J29/38 301
B41J2/01 207
B41J2/01 401
B41J29/393 105
B41J29/46 Z
B41J2/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091023
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】南川 俊輔
【テーマコード(参考)】
2C056
2C061
【Fターム(参考)】
2C056EB27
2C056EB40
2C056EC26
2C056FA10
2C056HA58
2C061AP07
2C061AQ05
2C061AR01
2C061AS01
2C061BB08
2C061BB10
2C061BB11
2C061CM05
2C061CM17
2C061CQ04
2C061CQ24
2C061CQ41
2C061EE04
2C061EE09
2C061HH03
2C061HJ01
2C061HJ10
2C061HK11
2C061HV02
2C061HV33
2C061HV34
2C061KK04
2C061KK13
2C061KK14
2C061KK18
2C061KK22
2C061KK26
2C061KK34
2C061KK35
(57)【要約】
【課題】ノズルの液体の吐出状態を検査する吐出検査部が検査を正常に実行可能か否かを精度よく判断する。
【解決手段】液体吐出装置は、ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドを有する記録部と、ノズルの液体の吐出状態を検査するための第1吐出検査部と、ノズルの液体の吐出状態を検査するための第2吐出検査部と、制御部と、を備える。制御部は、第1吐出検査部を制御して、ノズルの液体の吐出状態を検査する第1吐出検査処理と、第2吐出検査部を制御して、ノズルの液体の吐出状態を検査する第2吐出検査処理と、第1吐出検査処理及び第2吐出検査処理それぞれの検査結果に基づいて、第1吐出検査部及び第2吐出検査部のうちの何れか一方である判断対象の吐出検査部が、検査を正常に実行可能か否かを判断する判断処理と、を実行可能である。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドを有する記録部と、
前記ノズルの液体の吐出状態を検査するための第1吐出検査部と、
前記ノズルの液体の吐出状態を検査するための第2吐出検査部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1吐出検査部を制御して、前記ノズルの液体の吐出状態を検査する第1吐出検査処理と、
前記第2吐出検査部を制御して、前記ノズルの液体の吐出状態を検査する第2吐出検査処理と、
前記第1吐出検査処理及び前記第2吐出検査処理それぞれの検査結果に基づいて、前記第1吐出検査部及び前記第2吐出検査部のうちの何れか一方である判断対象の吐出検査部が、前記検査を正常に実行可能か否かを判断する判断処理と、
を実行可能であることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
報知部をさらに備え、
前記制御部は、
前記判断処理により前記判断対象の吐出検査部が前記検査を正常に実行できないと判断した場合に、その旨を前記報知部にて報知する報知処理をさらに実行可能であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記報知部は、表示機能を有する表示部であり、
前記制御部は、
前記報知処理においては、前記判断処理により前記判断対象の吐出検査部が前記検査を正常に実行できないと判断した場合に、その旨を示す検査部異常オブジェクトを前記表示部に表示することを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記検査部異常オブジェクトは、前記判断対象の吐出検査部の、故障、破損、エラー、検査不能、検査能力の低下、及び検査異常の少なくとも何れかを示すオブジェクトであることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記検査部異常オブジェクトは、前記判断対象の吐出検査部の機能停止、または前記判断対象の吐出検査部の交換を促すオブジェクトであることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記液体吐出ヘッドは、前記ノズルとして、第1の色の液体を吐出する第1ノズルと、第2の色の液体を吐出する第2ノズルとを有しており、
前記制御部は、
前記判断処理においては、前記第1吐出検査処理及び前記第2吐出検査処理それぞれの前記第1ノズルについての検査及び前記第2ノズルについての検査の検査結果に基づいて、前記判断対象の吐出検査部が前記第1ノズルについての検査及び前記第2ノズルについての検査それぞれについて正常に実行可能か否かを判断することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記第1吐出検査処理及び前記第2吐出検査処理のうちのいずれか一方の吐出検査処理の実行条件を満たした場合に、
前記第1吐出検査処理、前記第2吐出検査処理、及び前記判断処理を実行する請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記第1吐出検査処理及び前記第2吐出検査処理のうちのいずれか一方の吐出検査処理の実行条件を満たした場合に、
前記第1吐出検査処理及び前記第2吐出検査処理のうちの前記実行条件を満たした吐出検査処理、及び前記判断処理を実行し、
前記判断処理では、前記第1吐出検査処理及び前記第2吐出検査処理のうちの前記実行条件を満たしていない吐出検査処理の過去の検査結果と、前記実行条件を満たした吐出検査処理の、前記検査指示を受けた後の検査結果とに基づいて、前記判断対象の吐出検査部が、前記検査を正常に実行可能か否かを判断することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記判断対象の吐出検査部が前記検査を正常に実行可能かの確認を行うユーザ指示を受けた場合に、
前記第1吐出検査処理、前記第2吐出検査処理、前記判断処理、及び前記表示処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記液体吐出ヘッドは、複数の前記ノズルを有しており、
前記第1吐出検査部及び前記第2吐出検査部それぞれは、前記複数のノズル各々の液体の吐出状態を検査することが可能であり、
前記制御部は、
前記判断対象の吐出検査部の検査結果が、液体を正常に吐出することができない前記ノズルである異常ノズルの数が所定数以上であることを示す場合に、
前記第1吐出検査処理、前記第2吐出検査処理、及び前記判断処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
表示部をさらに備え、
前記液体吐出ヘッドは、複数の前記ノズルを有しており、
前記第1吐出検査部及び前記第2吐出検査部それぞれは、前記複数のノズル各々の液体の吐出状態を検査することが可能であり、
前記制御部は、
前記判断対象の吐出検査部の検査結果が、液体を正常に吐出することができない前記ノズルである異常ノズルの数が所定数以上であることを示す場合に、
前記判断対象の吐出検査部が前記検査を正常に実行可能かの確認を行うか否かを、ユーザに選択させるための選択オブジェクトを前記表示部に表示し、前記選択オブジェクトに対するユーザの選択入力を受け付け、
前記選択入力が、前記判断対象の吐出検査部が前記検査を正常に実行可能かの確認を行うことを示す入力であった場合に、
前記第1吐出検査処理、前記第2吐出検査処理、及び前記判断処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記制御部は、
前記判断処理においては、前記第1吐出検査処理及び前記第2吐出検査処理それぞれの検査結果に基づいて、前記液体吐出ヘッドが異常であるか否かの判断も行うことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項13】
報知部をさらに備え、
前記制御部は、
前記判断処理により前記液体吐出ヘッドが異常であると判断した場合に、その旨を前記報知部にて報知することを特徴とする請求項12に記載の液体吐出装置。
【請求項14】
前記報知部は、表示機能を有する表示部であり、
前記制御部は、
前記判断処理により前記液体吐出ヘッドが異常であると判断した場合に、その旨を示すヘッド異常オブジェクトを前記表示部に表示して報知することを特徴とする請求項13に記載の液体吐出装置。
【請求項15】
前記ヘッド異常オブジェクトは、前記液体吐出ヘッドの、故障、破損、エラー、吐出不能、吐出能力の低下、及び吐出異常の少なくとも何れかを示すオブジェクトであることを特徴とする請求項13に記載の液体吐出装置。
【請求項16】
前記ヘッド異常オブジェクトは、前記液体吐出ヘッドの機能停止、または前記液体吐出ヘッドの交換を促すオブジェクトであることを特徴とする請求項13に記載の液体吐出装置。
【請求項17】
前記液体吐出ヘッドは、複数の前記ノズルを有しており、
前記第1吐出検査部及び前記第2吐出検査部それぞれは、前記複数のノズル各々の液体の吐出状態を検査することが可能であり、
前記制御部は、
前記判断処理においては、前記複数のノズルにおける、前記第1吐出検査処理と前記第2吐出検査処理とで検査結果が異なっているノズルの合計数が、所定の閾値以上の場合に前記判断対象の吐出検査部が前記検査を正常に実行できないと判断し、前記閾値未満の場合に前記判断対象の吐出検査部が前記検査を正常に実行できると判断することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項18】
前記制御部は、
前記複数のノズルにおける、前記第1吐出検査処理と前記第2吐出検査処理とで検査結果が異なっているノズルの合計数が、前記閾値未満であり、且つ前記判断対象の吐出検査部の検査結果が、液体を正常に吐出することができない前記ノズルである異常ノズルの数が所定数以上であることを示す場合に、前記液体吐出ヘッドが異常であると判断することを特徴とする請求項17に記載の液体吐出装置。
【請求項19】
前記第1吐出検査部、及び前記第2吐出検査部のうちの何れか一方の吐出検査部は、
電極を有しており、前記ノズルから前記電極へ液体が吐出されるように前記液体吐出ヘッドが駆動した際に、当該駆動に応じて前記電極から出力される電圧信号に基づいて、前記ノズルの液体の吐出状態を検査することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項20】
前記液体吐出ヘッドは、前記ノズルから液体を吐出させるために変形される圧電素子を有するアクチュエータを有し、
前記第1吐出検査部、及び前記第2吐出検査部のうちの何れか一方の吐出検査部は、
前記ノズルから液体が吐出されるように前記アクチュエータが駆動した際の、前記圧電素子の残留振動に基づいて、前記ノズルの液体の吐出状態を検査することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項21】
光を発光する発光素子と、前記発光素子から発光された光を受ける受光素子とを有する光学センサを更に備え、
前記第1吐出検査部、及び前記第2吐出検査部のうちの何れか一方の吐出検査部は、
前記ノズルから吐出された液体が、前記発光素子と前記受光素子との間の光路上を通過するように、前記液体吐出ヘッドが駆動した際の、前記光学センサの検知結果に基づいて、前記ノズルの液体の吐出状態を検査することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項22】
記録媒体に記録された画像を読み取る読取部を備え、
前記制御部は、
前記記録部を制御して、前記ノズルの液体の吐出状態を確認するためのノズルチェックパターンを記録媒体に記録するパターン記録処理と、
記録媒体に記録された前記ノズルチェックパターンを前記読取部に読み取らせる読取処理と、
をさらに実行可能であり、
前記第1吐出検査部、及び前記第2吐出検査部のうちの、前記判断対象とは異なる吐出検査部は、
前記読取処理に読み取らせた前記ノズルチェックパターンの読取結果に基づいて、前記ノズルの液体の吐出状態を検査することを特徴とする請求項1~21のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項23】
前記読取部は、スキャナであることを特徴とする請求項22に記載の液体吐出装置。
【請求項24】
前記記録部により画像が記録された記録媒体を搬送路に沿って搬送する搬送機構をさらに備え、
前記読取部は、前記搬送路上を搬送されている記録媒体に光を照射して、その反射光を受けて記録媒体に記録された画像を読み取る光学センサであることを特徴とする請求項22に記載の液体吐出装置。
【請求項25】
前記制御部は、
前記第1吐出検査部及び前記第2吐出検査部のうちの、前記検査の検査結果の信頼度が低い方を前記判断対象の吐出検査部に設定し、前記検査の検査結果の信頼度が高い方を前記判断対象とは異なる吐出検査部に設定することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項26】
ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドを有する記録部と、前記ノズル各々の液体の吐出状態を検査するための第1吐出検査部と、前記ノズルの液体の吐出状態を検査するための第2吐出検査部と、を備えた液体吐出装置と、通信可能に接続された外部装置であって、
制御部を備え、
前記制御部は、
前記第1吐出検査部及び前記第2吐出検査部それぞれの前記検査の検査結果を、前記液体吐出装置から受信する受信処理と、
前記第1吐出検査部及び前記第2吐出検査部それぞれの前記検査の検査結果に基づいて、前記第1吐出検査部及び前記第2吐出検査部のうちの何れか一方である判断対象の吐出検査部が、前記検査を正常に実行可能か否かを判断する判断処理と、
を実行可能であることを特徴とする外部装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インクジェット式記録ヘッドのノズルからインクを吐出して画像を記録するインクジェット式記録装置が開示されている。特許文献1のインクジェット式記録装置は、ノズルから電極部材に向けてインクが吐出されるようにインジェット式記録ヘッドを駆動させ、電圧検査回路から出力される電気的な変化に応じた出力信号に基づいて、ノズルのインクの吐出状態を検査している。
【0003】
また、特許文献1のインクジェット式記録装置は、インク滴が電極部材に着弾しないようにされているにも拘わらず、電圧検出回路が吐出駆動信号等のノイズによってインク滴が電極部材に着弾したと誤検知した場合に、液体噴射ヘッド検査装置が故障していると判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-274553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1のインクジェット式記録装置では、インク滴が電極部材に着弾しないようにされているにも拘わらず、電圧検出回路が吐出駆動信号等のノイズによってインク滴が電極部材に着弾したと誤検知した場合に検査装置が故障していると判断する。このため、特許文献1のインクジェット式記録装置では、検査装置の故障が、出力信号を正常に出力できない異常等である場合には、検査装置の故障を正確に検査することができない虞がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、ノズルの液体の吐出状態を検査する吐出検査部が検査を正常に実行可能か否かを、精度よく判断可能な液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の液体吐出装置は、ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドを有する記録部と、前記ノズルの液体の吐出状態を検査するための第1吐出検査部と、前記ノズルの液体の吐出状態を検査するための第2吐出検査部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1吐出検査部を制御して、前記ノズルの液体の吐出状態を検査する第1吐出検査処理と、前記第2吐出検査部を制御して、前記ノズルの液体の吐出状態を検査する第2吐出検査処理と、前記第1吐出検査処理及び前記第2吐出検査処理それぞれの検査結果に基づいて、前記第1吐出検査部及び前記第2吐出検査部のうちの何れか一方である判断対象の吐出検査部が、前記検査を正常に実行可能か否かを判断する判断処理と、を実行可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、第1吐出検査部及び第2吐出検査部それぞれの検査結果を比べることで、判断対象の吐出検査部が検査を正常に実行可能か否かを、精度よく判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係るインクジェットプリンタの概略斜視図である。
図2】記録機構の概略平面図である。
図3】(a)はヘッドの平面図であり、(b)は(a)のA部拡大図であり、(c)は(b)のB-B線断面図である。
図4】インクジェットプリンタの電気的構成を概略的に示すブロック図である。
図5】(a)はノズルが正常ノズルである場合に信号出力回路から出力される信号を説明するための図であり、(b)はノズルが異常ノズルである場合に信号出力回路から出力される信号を説明するための図である。
図6】ノズルチェックパターンについて説明する図である。
図7】タッチパネルに表示される画面について説明する図である。
図8】異常判断実行指示を受け付けたときの一連の処理について説明するフロー図である。
図9】パターン記録式検査処理の実行指示を受け付けたときの一連の処理について説明するフロー図である。
図10】電極式検査処理の実行条件を満たしたときの一連の処理について説明するフロー図である。
図11】第1変形例に係る、インクジェットプリンタの電気的構成を概略的に示すブロック図である。
図12】第1変形例に係る、残留振動式検査処理の実行条件を満たしたときの一連の処理について説明するフロー図である。
図13】第2変形例に係る外部装置及びインクジェットプリンタの、異常判断処理に関する一連のシーケンスについて説明するシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好適な実施形態に係るインクジェットプリンタ1(「液体吐出装置」に相当)の概略構成について説明する。本実施形態に係るプリンタ1は、用紙S(「記録媒体」に相当)に対する画像の記録のほか、用紙Sに記録された画像の読み取りなども行うことが可能な、いわゆる複合機である。プリンタ1は、図1に示すように、記録機構2(図2参照)、給送機構3、排出機構4、スキャナ5、操作ボタン6、タッチパネル7などを備えている。また、プリンタ1の動作は、制御装置100(図4参照)によって制御されている。
【0011】
記録機構2は、プリンタ1の内部に設けられており、用紙Sに対する画像の記録を行う。尚、記録機構2については、後程詳細に説明する。給送機構3は、記録機構2に用紙Sを給送する機構である。排出機構4は、記録機構2により画像の記録が行われた用紙Sを排出する機構である。スキャナ5(「読取部」に相当)は、用紙Sに記録された画像を読み取る装置である。操作ボタン6は、ユーザによる各種入力を受け付ける。タッチパネル7(「報知部」及び「表示部」に相当)は、ユーザによる各種入力を受け付ける機能と、各種の設定画面や動作状態等をユーザに対して表示する表示機能を有する。尚、以下では、図1に示す上下方向、前後方向及び左右方向を、プリンタ1の「上下方向」、「前後方向」及び「左右方向」と定義する。以下、上下、前後、左右の各方向語を適宜使用して説明する。
【0012】
図2に示すように、記録機構2は、搬送機構11、プラテン12、キャリッジ13、ホルダ14、ヘッドユニット15、メンテナンス機構16、電極式検査装置17(図4参照)、及びメディアセンサ18(図4参照)などを備えている。
【0013】
搬送機構11は、前後方向に並んで配置された2つの搬送ローラ11a,11bを有する。2つの搬送ローラ11a,11bは、搬送モータ21(図4参照)によって同期して駆動する。そして、搬送モータ21により2つの搬送ローラ11a,11bを駆動することにより、給送機構3から給送された用紙Sを搬送路に沿って前方に搬送する。
【0014】
プラテン12は、2つの搬送ローラ11a,11bに前後方向に挟まれて配置されている。プラテン12は、搬送機構11により搬送される用紙Sを下方から支持する。プラテン12の上方には、左右方向(走査方向)に平行に延びる2本のガイドレール22,23が設けられる。
【0015】
キャリッジ13は、2本のガイドレール22,23に取り付けられ、2本のガイドレール22,23に沿って走査方向に移動可能である。また、キャリッジ13には、駆動ベルト24が取り付けられている。駆動ベルト24は、2つのプーリ25,26に巻き掛けられた無端状のベルトである。一方のプーリ25はキャリッジ駆動モータ27(図4参照)に連結されている。キャリッジ駆動モータ27によってプーリ25が回転駆動されることで駆動ベルト24が走行し、これにより、キャリッジ13が走査方向に往復移動する。また、このとき、キャリッジ13上に搭載されたヘッドユニット15は、このキャリッジ13とともに走査方向に往復移動することになる。
【0016】
ホルダ14は、キャリッジ13よりも前方、且つ、プラテン12よりも右側に配置されている。ホルダ14には、4つのインクカートリッジ28が着脱可能に装着される。4つのインクカートリッジ28には、それぞれ、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが貯留されている。
【0017】
ヘッドユニット15は、プラテン12との間に隙間を有する状態でキャリッジ13に搭載されており、キャリッジ13とともに走査方向に往復移動する。ヘッドユニット15は、インクジェットヘッド30(「液体吐出ヘッド」に相当。以下、単にヘッド30と称す。)と、ヘッド30の上面に設けられ、ヘッド30に供給するインクを一時的に貯留するためのバッファタンク35とを有する。バッファタンク35には、可撓性を有する4本のインク供給チューブ36それぞれの一端が着脱可能に接続されている。4本のインク供給チューブ36それぞれの他端は、ホルダ14に接続されている。ホルダ14に装着された4つのインクカートリッジ28内のインクは、この4本のインク供給チューブ36を介して、バッファタンク35にそれぞれ供給される。
【0018】
ヘッド30は、図3(a)に示すように、複数のノズル10及び複数のノズル10にそれぞれ連通する複数の圧力室83が形成された流路ユニット31と、流路ユニット31の上面に配置されたアクチュエータ32とを備えている。流路ユニット31は、金属材料からなり、グランドに接続されている。
【0019】
また、図3(c)に示すように、流路ユニット31は4枚のプレートが積層された構造を有する。この流路ユニット31の下面は複数のノズル10が開口したノズル面30aである。ノズル面30aは水平面と平行である。図3(a)に示すように、複数のノズル10は前後方向(用紙Sの搬送方向)に配列されており、4色のインクにそれぞれ対応した、4列のノズル列9を構成している。4列のノズル列9からは、走査方向の右側に位置するノズル列9から順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。複数の圧力室83は、複数のノズル10と同様に4列に配列されている。
【0020】
さらに、図3(a),(b)に示すように、流路ユニット31には、それぞれ前後方向に延在する4本のマニホールド84が形成されている。4本のマニホールド84は、4列の圧力室列に、4色のインクをそれぞれ供給する。また、4本のマニホールド84は、流路ユニット31の上面に形成された4つのインク供給口85に接続されている。4つのインク供給口85には、バッファタンク35から4色のインクがそれぞれ供給される。以上の構成より、流路ユニット31内には、各マニホールド84から分岐して、圧力室83を経てノズル10に至る個別流路が複数形成されている。
【0021】
図3(c)に示すように、アクチュエータ32は、複数の圧力室83を覆う振動板87と、この振動板87の上面に配置された圧電層88(「圧電素子」に相当)と、複数の圧力室83に対応した複数の個別電極89とを備えている。圧電層88の上面に位置する複数の個別電極89は、アクチュエータ32を駆動するドライバIC90とそれぞれ電気的に接続されている。
【0022】
圧電層88の下面に位置する振動板87は金属材料で形成されており、圧電層88を挟んで複数の個別電極89と対向する共通電極の役割を果たす。尚、この振動板87はドライバIC90のグランド線に接続されて常にグランド電位に保持される。
【0023】
以上の構成において、ドライバIC90から個別電極89に対して所定の駆動波形を有する駆動信号が入力されることにより、これに対応する圧電層88の容積が変形して圧力室83内のインクに圧力(吐出エネルギー)が付与され、ノズル10からインクが吐出される。
【0024】
以上のように、本実施形態では、ノズル10からインクを吐出させる吐出エネルギーをインクに付与するアクチュエータは、ノズル10に連通する圧力室83の容積を変化させてインクに吐出エネルギーを付与するアクチュエータであったが、これに限定されるものではない。例えば、加熱により圧力室内に気泡を発生させてインクに吐出エネルギーを付与するヒータであってもよい。
【0025】
なお、ヘッドユニット15は、プリンタ1本体に対して着脱可能に構成されている。従って、ヘッド30等が故障等した場合には、ユーザは新しいヘッドユニット15に交換することができる。
【0026】
図2に示すように、メンテナンス機構16は、ヘッド30のノズル10の吐出機能の維持、回復のためのメンテナンス動作を行うためのものであり、キャップ40、吸引ポンプ41、廃液タンク42等を備えている。
【0027】
キャップ40は、プラテン12よりも右側の位置に配置されている。キャリッジ13がプラテン12よりも右側に移動して待機位置に位置付けられたときには、ヘッド30の複数のノズル10と、キャップ40とが上下に対向する。また、キャップ40は、キャップ駆動モータ43(図4参照)により駆動されて、上下方向に昇降可能である。そして、キャリッジ13を上記待機位置に位置させることによって複数のノズル10とキャップ40とを対向させた状態で、キャップ駆動モータ43によりキャップ40を上昇させると、キャップ40の上端部がノズル面30aに密着し、複数のノズル10がキャップ40に覆われたキャップ状態となる。また、キャップ駆動モータ43によりキャップ40を降下させた状態では、複数のノズル10がキャップ40で覆われていないアンキャップ状態となる。なお、キャップ40はノズル面30aに密着することで複数のノズル10を覆うものであることには限られない。キャップ40は、例えば、ヘッド30のノズル面30aの周囲に配置される図示しないフレーム等に密着することで、複数のノズル10を覆うものであってもよい。
【0028】
吸引ポンプ41はチューブポンプなどであり、キャップ40および廃液タンク42と接続されている。そして、メンテナンス機構16では、上記キャップ状態で吸引ポンプ41を駆動させると、複数のノズル10からヘッド30内のインクを排出させる、いわゆる吸引パージを行うことができる。吸引パージによって排出されたインクは廃液タンク42に貯留される。
【0029】
なお、ここでは、便宜上、キャップ40が全てのノズル10をまとめて覆い、吸引パージにおいて、全てのノズル10からヘッド30内のインクを排出させるものとして説明を行ったが、これには限られない。例えば、キャップ40が、ブラックインクを吐出する最も右側のノズル列9を構成する複数のノズル10を覆う部分と、カラーインク、つまり、イエロー、シアン、マゼンタのインクを吐出する左側3列のノズル列9を構成する複数のノズル10を覆う部分とを別々に備えており、吸引パージにおいて、ヘッド30内のブラックインクおよびカラーインクのいずれかを選択的に排出させることができるようになっていてもよい。あるいは、例えば、キャップ40が、ノズル列9毎に個別に設けられ、吸引パージにおいて、ノズル列9毎に個別に、ノズル10からインクを排出させることができるようになっていてもよい。
【0030】
電極式検査装置17は、ノズル10のインクの吐出状態を検査するための装置であり、図4に示すように、電極51、高圧電源回路52、及び信号出力回路53を備えている。
【0031】
電極51は、平板状の電極であり、キャップ40内に配置されている(図2参照)。キャリッジ13が待機位置に位置付けられた際には、電極51は、上下方向を対向方向として4列のノズル列9と間隔をあけて対向する。そして、キャリッジ13が待機位置に位置付けられた状態で、ノズル10からインクを吐出させると、電極51にインクが着弾する。
【0032】
電極51は、抵抗Rを介して高圧電源回路52に接続されている。高圧電源回路52は、制御装置100による制御の下、電極51を所定の正電位にすることが可能である。その結果、グランドに接続されたヘッド30と、電極51との間に所定の電位差が発生する。
【0033】
信号出力回路53は、電極51と接続されている。信号出力回路53は、微分回路などを含み、電極51の電気変化に応じた電圧信号を制御装置100に出力する。
【0034】
上記キャップ状態としたうえで、高圧電源回路52により電極51に所定電圧を印加させ、かつ、後述する吐出駆動を行わせていない状態では、信号出力回路53から出力される信号の電圧は、図5(a)、(b)に示す電圧V0となる。
【0035】
また、本実施形態では、上記キャップ状態としたうえで、高圧電源回路52により電極51に電圧を印加させた状態で、ヘッド30に、ノズル10から電極51に向けてインクを吐出させるための吐出駆動を行わせることができる。
【0036】
吐出駆動によってノズル10からインクが吐出された場合、電極51とヘッド30との電位差により、吐出されたインクは帯電している。そのため、帯電したインクが電極51に近づき、電極51にインクが着弾するまで、電極51の電位が変化する。そして、帯電したインクが電極51に着弾した後、電極51の電位が減衰しながらインクの吐出前の電位に戻る。
【0037】
これにより、吐出駆動によってノズル10からインクが正常に吐出された場合には、信号出力回路53から出力される信号は、図5(a)に示すように、電圧V0から、電圧V0よりも高い電圧V1以上の電圧まで上昇し、その後、電圧V0よりも低い電圧V2以下の電圧まで低下し、その後、減衰しながら上昇と低下とを繰り返して電圧V0に戻る。
【0038】
一方、ノズル10に異常があり、吐出駆動によってノズル10から吐出されるインク量が正常時よりも少ない場合には、図5(b)に示すように、ノズル10から正常にインクが吐出されたときよりも信号出力回路53から出力される信号の変化が小さい。ここで、ノズル10から正常にインクが吐出されたときよりもインクの吐出量が少ないことは、インクが吐出されないことも含む。吐出駆動によってノズル10からインクが吐出されない場合には信号出力回路53から出力される信号は電圧V0からほとんど変化しない。
【0039】
このように、本実施形態では、吐出駆動を行わせたときにノズル10から正常にインクが吐出されたか否かによって、信号出力回路53から出力される信号が異なる。すなわち、信号出力回路53から出力される信号は、ノズル10においてインクの吐出に異常があるか否かに応じた信号である。そして、本実施形態では、このことを利用して、ノズル10が、インクの吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを検査することができる。
【0040】
なお、電極式検査装置17は、ユニット化されており、プリンタ1本体に対して着脱可能に構成されている。従って、電極式検査装置17が故障等した場合には、ユーザは新しい装置に交換することができる。
【0041】
メディアセンサ18は、搬送機構11の搬送路上の、キャリッジ13よりも搬送方向の下流側を検知位置として、当該検知位置に用紙Sが存在するか否かを検知するための光学センサである。具体的には、メディアセンサ18は、プラテン12の、キャリッジ13よりも搬送方向の下流側に位置する部分と対向している。メディアセンサ18は、検知位置に向けて光を照射する発光素子と、発光素子から照射された光がプラテン12またはプラテン12上の用紙Sに反射して戻ってきた反射光を受ける、複数の受光素子とを有する。メディアセンサ18は、複数の受光素子それぞれの受光光量に関する信号を制御装置100に送信する。ここで、プラテン12の上面は黒色である。このため、検知位置上に用紙Sが存在する状態では、発光素子から照射された光が用紙Sで反射して反射光が受光素子で受光されるが、検知位置上に用紙Sが存在しない状態では、発光素子から照射された光はプラテン12で殆ど反射されず反射光が受光素子で受光されない。これにより、制御装置100は、メディアセンサ18から出力される信号に基づいて、検知位置上に用紙Sが存在するか否かを判断することができる。なお、複数の受光素子は、走査方向に直線上に配置されている。このため、制御装置100は、走査方向の複数の位置で、用紙Sが存在するか否かを判断することができる。制御装置100は、メディアセンサ18から出力される信号に基づいて、用紙詰りや用紙Sの幅の長さなどを判断する。
【0042】
図4に示すように、制御装置100(「制御部」に相当)は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、フラッシュメモリ104、ASIC(application specific integrated circuit)105等を含む。ROM102には、CPU101が実行するプログラム、各種固定データ等が記憶されている。RAM103には、プログラム実行時に必要なデータや画像データが一時的に記憶される。フラッシュメモリ104には、各種テーブルなどのデータが記憶される。ASIC105には、スキャナ5、タッチパネル7、電極式検査装置17、ヘッド30、通信インターフェース110等、プリンタ1の様々な装置あるいは駆動部と接続されている。
【0043】
通信インターフェース110は、パソコン、スマートフォン、タブレットなどの外部装置200と通信を行うためのインターフェースである。外部装置200は、外部装置200全体の動作を司る制御装置201や、各種情報をユーザに対して表示するディスプレイ202等を備えている。
【0044】
制御装置100は、CPU101のみが各種処理を行うものであってもよいし、ASIC105のみが各種処理を行うものであってもよいし、CPU101とASIC105とが協働して各種処理を行うものであってもよい。また、制御装置100は、1つのCPU101が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のCPU101が処理を分担して行うものであってもよい。また、制御装置100は、1つのASIC105が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のASIC105が処理を分担して行うものであってもよい。
【0045】
制御装置100は、ROM102に格納されたプログラムに従い、CPU101及びASIC105により各種処理を実行する。例えば、制御装置100は、通信インターフェース110を介して外部装置200から画像記録指示を受信すると、吐出処理と搬送処理とを交互に行う画像記録処理を実行する。吐出処理は、キャリッジ13の走査方向への1回の移動(パス)の間に、RAM103に記憶された画像データに基づいてノズル10からインクを吐出させる処理である。搬送処理は、搬送機構11により用紙Sを前方に所定量だけ搬送させる処理である。このように、本実施形態のプリンタ1は、シリアル式のインクジェットプリンタである。本実施形態においては、搬送機構11、搬送モータ21、キャリッジ駆動モータ27、ヘッド30等を合わせた、用紙Sに画像を記録可能な構成が「記録部」に相当する。
【0046】
ところで、ヘッド30のノズル10は大気に臨んでいるため、ノズル10内のインクは、その水分が蒸発等することで増粘しやすい。このようにノズル10内のインクが増粘すると、ノズル10のインクの吐出状態が悪化し、ノズル10から正常にインクを吐出することができなくなり、その結果として、画像記録処理において用紙Sに記録される画像の品質が劣化する。そこで、プリンタ1は、ノズル10のインクの吐出状態を検査し、その検査した吐出状態に応じて吸引パージ等のノズル10のインクの吐出状態の維持または回復のための処理を行う。
【0047】
本実施形態において、ノズル10のインクの吐出状態を検査する処理方法としては、電極式検査処理と、パターン記録式検査処理の2通りの処理方法がある。
【0048】
電極式検査処理は、電極式検査装置17を用いてノズル10のインクの吐出状態の検査を行う方法である。電極式検査処理では、制御装置100は、上記キャップ状態にするとともに、電極51に電圧を印加させてヘッド30と電極51との間に電位差を生じさせた印加状態にする。そして、制御装置100は、ノズル10の各々から電極51に向けてインクを吐出させるための吐出駆動をヘッド30に行わせ、このときの電極51の電圧の変化に応じて電極式検査装置17から出力される電圧信号に基づいて、ノズル10の各々が、インクを正常に吐出させることができる正常ノズルであるか、インクを正常に吐出させることができない異常ノズルであるか検査する。
【0049】
パターン記録式検査処理は、複数のノズル10各々の吐出状態を確認するためのノズルチェックパターンPを用紙Sに記録して、ノズル10のインクの吐出状態の検査を行う方法である。パターン記録式検査処理では、制御装置100は、まず、吐出処理と搬送処理とを交互に行うことで、用紙SにノズルチェックパターンPを記録するパターン記録処理を実行する。
【0050】
ノズルチェックパターンPは、図6(a)に示すように、個々のノズル10から吐出されるインクで所定形状(例えば、矩形)のブロックBを所定間隔で用紙Sに記録することにより形成されるパターンである。複数のブロックBそれぞれは、複数のノズル10のうちのいずれかに一対一に対応している。即ち、1つのノズルチェックパターンPを構成するブロックBの数は、当該ノズルチェックパターンPによる吐出状態の検査対象となるノズル10の数と同じである。各ブロックBは、対応するノズル10から吐出されるインクにより形成される複数のドットからなる。
【0051】
図6(a)に示すように、検査対象となるノズル10の全てが正常である場合(即ち、異常ノズルが存在しない場合)には、記録されるべき全てのブロックBが記録されたノズルチェックパターンPが得られる。一方で、図6(b)に示すように、検査対象となるノズル10のなかに、異常ノズルが存在する場合には、当該異常ノズルに対応するブロックBが欠けた状態(記録されない状態)のノズルチェックパターンPが得られる。以上のように、ノズル10のインクの吐出状態は、対応するブロックBの記録状態から判断することが可能となる。
【0052】
制御装置100は、ノズルチェックパターンPが記録された用紙Sをスキャナ5にユーザにセットしてもらった後に、当該ノズルチェックパターンPをスキャナ5で読み取り、その読取結果に基づいて、ノズル10の各々が、正常ノズルであるか、異常ノズルであるか検査する。なお、本実施形態では、ヘッド30は、4色のインクをそれぞれ吐出可能に構成されているので、1色のインクに対して1つのノズルチェックパターンPを用紙Sに記録する。つまり、各色のノズルチェックパターンPが、それぞれ、各色のインクを吐出するノズル10により記録される。
【0053】
以上説明したように、本実施形態では、2通りの処理方法でノズル10のインクの吐出状態を検査することができる。本実施形態において、電極式検査装置17、及び制御装置100における、信号出力回路53から出力される電圧信号の電圧値と閾値とを比較することで複数のノズル10各々のインクの吐出状態を検査する機能部が、「第1吐出検査部」及び「第2吐出検査部」のうちの一方に相当する。また、制御装置100における、スキャナ5に読み取らせたノズルチェックパターンPの読取結果に基づいて、複数のノズル10各々のインクの吐出状態を検査する機能部が「第1吐出検査部」及び「第2吐出検査部」のうちの他方に相当する。また、電極式検査処理が「第1吐出検査処理」及び「第2吐出検査処理」のうちの一方に相当し、パターン記録式検査処理が「第1吐出検査処理」及び「第2吐出検査処理」のうちの他方に相当する。
【0054】
ここで、パターン記録式検査処理では、ノズルチェックパターンPが記録された用紙Sをユーザにスキャナ5にセットしてもらう必要があるため、ユーザに負担がかかる。加えて、ノズルチェックパターンPを用紙Sに記録する必要があるため、用紙Sが消費される。このため、本実施形態では、パターン記録式検査処理は、タッチパネル7等を介してユーザからパターン記録式検査処理の実行指示を受け付けたときに実行する。即ち、パターン記録式検査処理の実行条件は、ユーザからパターン記録式検査処理の実行指示を受け付けたときに満たす。
【0055】
これに対して、電極式検査処理は、ユーザの負担がなく、また、用紙Sが消費されることもない。このため、本実施形態では、電極式検査処理については、ユーザから実行指示を得ていない場合にも実行する。電極式検査処理の実行タイミングについては、特に限定されるものではないが、本実施形態では、電源投入時、画像記録指示を受信したとき、画像記録処理中における所定ページ数を記録する毎などのタイミングである。即ち、電極式検査処理の実行条件は、電源を投入したとき、画像記録指示を受信したとき、画像記録処理中において所定ページ数を記録したときにそれぞれ満たす。また、電極式検査処理の実行条件は、所定時間毎、所定時刻であってもよい。画像記録指示を受信したときであって画像記録処理前でもよく、画像記録指示を受信したときであって画像記録処理後でもよい。
【0056】
ところで、電極式検査処理で使用される電極式検査装置17は、種々の要因により異常が生じて、検査を正常に実行できなくなる場合がある。例えば、電極式検査処理では、電極51に向けてインクが吐出されるため電極51上にインクが堆積されうる。この電極51上に堆積されたインクにより、インクが電極51に近づき着弾する際に生じる、電極51の電圧の変化が小さくなる可能性がある。その結果として、ノズル10からインクが正常に吐出されているにもかかわらず、信号出力回路53から出力される電圧信号の電圧変動幅が小さいことで、制御装置100は、当該ノズル10が異常ノズルであると誤って判断する虞がある。また、信号出力回路53から出力される電圧信号などはノイズの影響を受け易い。その結果として、制御装置100は、ノズル10からインクが正常に吐出されているにもかかわらず当該ノズル10が異常ノズルであると誤って判断したり、ノズル10からインクが吐出されていないにもかかわらず当該ノズル10が正常ノズルであると誤って判断したりする虞がある。このように、電極式検査装置17が正常に検査を実行できないと、電極式検査装置17の検査結果だけでは、ノズル10のインクの吐出状態に異常があるのか、電極式検査装置17に異常があるのかをユーザは正確に把握することができない。
【0057】
そこで、制御装置100は、電極式検査装置17が正常に検査を実行できるか否かを判断する異常判断処理(「判断処理」に相当)を行う。ここで、パターン記録式検査処理では、ノズル10から実際に吐出されて用紙Sに着弾したインクにより形成されたノズルチェックパターンPに基づいて、ノズル10のインクの吐出状態が検査される。このため、パターン記録式検査処理の方が、電極式検査処理と比べて、検査の精度が高く、また検査の信頼度も高い。そこで、異常判断処理では、制御装置100は、電極式検査処理の検査結果を、パターン記録式検査処理の検査結果と比べることで、電極式検査装置17が正常に検査を実行できるか否かを判断する。
【0058】
具体的には、制御装置100は、電極式検査処理と、パターン記録式検査処理とで検査結果が相違するノズル10の合計数を、ノズル列9毎(即ち、吐出するインクの色毎)に求める。より詳細には、制御装置100は、パターン記録式検査処理では正常ノズルと判定しているが、電極式検査処理では異常ノズルと判定しているノズル10と、パターン記録式検査処理では異常ノズルと判定しているが、電極式検査処理では正常ノズルと判定しているノズル10の合計数(以下、「相違合計数」と称す)を、ノズル列9毎に求める。そして、制御装置100は、ノズル列9毎に、相違合計数が所定の閾値以上か否かを判断する。本実施形態では、閾値は、ノズル列9のノズル10の合計数の1/4の値に予め設定されているが、これには限られず、「100」などの具体的な数値が設定されていてもよい。また、本実施形態では、閾値は、プリンタ1の工場出荷時に予め設定されているが、タッチパネル7を介してユーザ等により閾値が設定されるように構成されていてもよい。
【0059】
制御装置100は、相違合計数が上記閾値未満のノズル列9については、電極式検査処理とパターン記録式検査処理とで検査結果に大きな違いがないため、電極式検査装置17は、当該ノズル列9に属するノズル10についての、インクの吐出状態の検査を正常に実行できると判断する。
【0060】
一方で、制御装置100は、相違合計数が上記閾値以上のノズル列9については、電極式検査処理とパターン記録式検査処理とで検査結果に大きな違いがあるため、電極式検査装置17は、当該ノズル列9に属するノズル10についての、インクの吐出状態の検査を正常に実行できないと判断する。そして、制御装置100は、その旨を示す検査異常オブジェクト(「検査部異常オブジェクト」に相当)をタッチパネル7に表示する。これにより、電極式検査装置17がどのノズル列9(どの色のインクを吐出するノズル10)についての検査を正常に実行できないかをユーザが把握することができる。
【0061】
本実施形態では、検査異常オブジェクトは、図7(a)に示すように、電極式検査装置17の検査異常を示すオブジェクトと、電極式検査装置17の交換を促すオブジェクトとを含むオブジェクトであるが、これには限られない。検査異常オブジェクトは、電極式検査装置17の、故障、破損、エラー、検査不能、検査能力の低下、及び検査異常の少なくとも何れかを示すオブジェクトであってもよく、電極式検査装置17の機能停止を示すオブジェクトであってもよい。検査異常オブジェクトは、各ノズル列9についての相違合計数を示すオブジェクトであってもよい。また、交換を促すオブジェクトは、電極式検査装置17全体の交換を促すものであってもよく、電極式検査装置17の一部の交換を促すものであってもよい。ここで、オブジェクトとはメッセージなどの文字であってもよく、ユーザが認識しやすいよう図形や絵などであってもよく、アニメーションなどの動画であってもよい。また、これらの組合せであってもよい。
【0062】
以上のように、制御装置100は、ノズル列9毎に、当該ノズル列9に属するノズル10についての、インクの吐出状態の検査を正常に実行可能か否かを判断することができる。4列のノズル列9のうちの或るノズル列9に属するノズル10が「第1ノズル」に相当し、或るノズル列9以外のノズル列9に属するノズル10が「第2ノズル」に相当する。電極式検査装置17が行う「第1ノズル」のインクの吐出状態の検査が「第1検査」に相当し、「第2ノズル」のインクの吐出状態の検査が「第2検査」に相当する。
【0063】
異常判断処理の実行タイミングについては、特に限定されるものではないが、本実施形態では、異常判断処理の実行を指示する異常判断実行指示(電極式検査装置17が検査を正常に実行可能かの確認を行うことを指示する確認指示)をユーザからタッチパネル7を介して受け付けたタイミング、パターン記録式検査処理の実行条件を満たしたタイミング、電極式検査処理の検査結果が異常ノズルの数が所定数以上であることを示す結果であったタイミングである。以下、それぞれのタイミングで行われる異常判断処理に関する一連の処理について説明する。
【0064】
まず、図8を参照して、ユーザからタッチパネル7を介して異常判断実行指示を受け付けたときの、制御装置100の処理について説明する。
【0065】
図8に示すように、電極式検査装置17の異常判断実行指示を、タッチパネル7を介してユーザから受け付けると(S1)、制御装置100は、搬送モータ21、キャリッジ駆動モータ27、及びヘッド30等を制御して、インクの各色に対応する4つのノズルチェックパターンPを用紙Sに記録するパターン記録処理を実行する(S2)。この後、制御装置100は、ヘッド30、及び電極式検査装置17を制御して、電極式検査処理を実行する(S3)。
【0066】
次に、制御装置100は、ノズルチェックパターンPが記録された用紙Sを、ユーザにスキャナ5にセットしてもらうための案内画面をタッチパネル7に表示する(S4)。この案内画面を見たユーザは、ノズルチェックパターンPが記録された用紙Sをスキャナ5にセットした後に、タッチパネル7を介して読取指示をする。
【0067】
制御装置100は、タッチパネル7を介してユーザから読取指示を受け付けたか否かを判断する(S5)。読取指示を受け付けていないと判断した場合(S5:NO)には、制御装置100は、読取指示を受け付けるまで待機する。一方で、読取指示を受け付けたと判断した場合(S5:YES)には、制御装置100は、用紙Sに記録されたノズルチェックパターンPをスキャナ5に読み取らせる(S6)。そして、制御装置100は、ノズルチェックパターンPの読取結果に基づいて、各ノズル10のインクの吐出状態を検査する(S7)。次に、制御装置100は、S3の検査処理と、S7の検査処理とで検査結果が異なるノズル10の相違合計数を、ノズル列9毎に求める(S8)。次に、制御装置100は、4列のノズル列9のうち、S8の処理で求めた相違合計数が閾値以上となるノズル列9があるか否かを判断する(S9)。4列のノズル列9の何れも相違合計数が閾値未満であると判断した場合(S9:NO)には、制御装置100は、電極式検査装置17が全てのノズル列9について正常に検査を実行できると判断し、その旨を示す検査正常オブジェクト(図7(b)参照)をタッチパネル7に表示する(S10)。このS10の処理が終了すると、本処理を終了する。
【0068】
S9の処理において、4列のノズル列9のうちのいずれかのノズル列9の相違合計数が閾値以上であると判断した場合(S9:NO)には、制御装置100は、電極式検査装置17が、相違合計数が閾値以上のノズル列9についての検査を正常に実行できないと判断し、その旨を示す検査異常オブジェクト(図7(a)参照)をタッチパネル7に表示して(S11:「報知処理」に相当)、本処理を終了する。
【0069】
以上説明したフローでは、電極式検査処理は、パターン記録処理の実行後(S2の処理の後)であり、且つノズルチェックパターンPをスキャナ5に読み取る前(S6の処理の前)に行っているが、これには限られず、異常判断実行指示を受け付けた後(S1の処理の後)、ノズル列9毎にノズル10の相違合計数を求める前(S8の処理の前)であれば、電極式検査処理はいつのタイミングで行ってもよい。即ち、電極式検査処理を、例えば、パターン記録処理の実行前に行ってもよく、ノズルチェックパターンPの読取結果に基づいて各ノズル10のインクの吐出状態を検査した後に行ってもよく、ノズルチェックパターンPをスキャナ5で読み取っている最中に行ってもよい。
【0070】
次に、図9を参照して、パターン記録式検査処理の実行指示をユーザからタッチパネル7を介して受け付けたときの、制御装置100の処理について説明する。
【0071】
制御装置100は、パターン記録式検査処理の実行指示をユーザからタッチパネル7を介して受け付けると(A1)、上述のS2~S7の処理と同様なA2~A7の処理を実行する。次に、制御装置100は、A7の処理でノズル10のインクの吐出状態を検査した検査結果に基づいて、異常ノズルの数が所定数以上であるか否かを判断する(A8)。異常ノズルの数が所定数未満であると判断した場合(A8:NO)には、A12の処理に移る。一方で、異常ノズルの数が所定数以上であると判断した場合(A8:YES)には、制御装置100は、ノズル10のインクの吐出状態を回復すべく、吸引ポンプ41等を制御して吸引パージを実行し(A9)、パターン記録式検査処理を再度実行するか否かをユーザに確認するための画面をタッチパネル7に表示する(A10)。パターン記録式検査処理の再度の実行指示をユーザからタッチパネル7を介して受け付けた場合(A11:YES)には、A2の処理に戻る。一方で、再度の実行指示を受け付けなかった場合(A11:NO)には、A12の処理に移る。
【0072】
A12の処理では、制御装置100は、直近(最後)に行ったA3の検査処理と、直近に行ったA7の検査処理とで検査結果が異なるノズル10の相違合計数を、ノズル列9毎に求める。次に、制御装置100は、4列のノズル列9のうち、A12の処理で求めた相違合計数が閾値以上のノズル列9があるか否かを判断する(A13)。4列のノズル列9のうちのいずれかのノズル列9の相違合計数が閾値以上であると判断した場合(A13:YES)には、制御装置100は、電極式検査装置17が、相違合計数が閾値以上のノズル列9についての検査を正常に実行できないと判断し、その旨を示す検査異常オブジェクトをタッチパネル7に表示して(A14)、本処理を終了する。
【0073】
A13の処理で、4列のノズル列9の何れも相違合計数が閾値未満であると判断した場合(A13:NO)には、制御装置100は、電極式検査装置17が全てのノズル列9について正常に検査を実行できると判断し(A15)、直近に行ったA7の検査処理に基づいて、異常ノズルの数が所定数以上であるか否かを判断する(A16)。異常ノズルの数が所定数未満であると判断した場合(A16:NO)には、制御装置100は、ヘッド30が正常であると判断し、その旨を示すヘッド正常オブジェクトをタッチパネル7に表示して(A17)、本処理を終了する。一方で、異常ノズルの数が所定数以上であると判断した場合(A16:YES)には、制御装置100は、ヘッド30が異常であると判断し、その旨を示すヘッド異常オブジェクト(図7(c)参照)をタッチパネル7に表示して(A18)、本処理を終了する。
【0074】
本実施形態では、ヘッド異常オブジェクトは、図7(c)に示すように、ヘッド30の異常を示すオブジェクトと、ヘッド30の交換を促すオブジェクトとを含むオブジェクトであるが、これには限られない。ヘッド異常オブジェクトは、ヘッド30の、故障、破損、エラー、吐出不能、吐出能力の低下、及び吐出異常の少なくとも何れかを示すオブジェクトであってもよく、ヘッド30の機能停止を示すオブジェクトであってもよい。また、ヘッド異常オブジェクトは、各ノズル列9の異常ノズルの数を示すオブジェクトであってもよい。
【0075】
以上のように、パターン記録式検査処理の実行条件を満たしたときに、異常判断処理が行われるため、パターン記録式検査処理の検査結果を有効活用して、制御装置100は、電極式検査装置17が検査を正常に実行可能か否かを判断することができる。また、パターン記録式検査処理の実行条件を満たしたときに、パターン記録式検査処理だけでなく、電極式検査処理も実行される。このため、電極式検査処理及びパターン記録式検査処理の現在の状態に基づいて、制御装置100は、電極式検査装置17が検査を正常に実行可能か否かを判断することができるため、その判断精度を高めることができる。
【0076】
以上説明したフローでは、電極式検査処理は、パターン記録処理の実行後(A2の処理の後)であり、且つノズルチェックパターンPをスキャナ5に読み取る前(A6の処理の前)に行っているが、これには限られず、パターン記録式検査処理の実行指示を受け付けた後(A1の処理の後)、ノズル列9毎にノズル10の相違合計数を求める前(A12の処理の前)であれば、電極式検査処理はいつのタイミングで行ってもよい。例えば、以上説明したフローでは、A11の処理でパターン記録式検査処理の再度の実行指示を受け付けて(A11:YES)、A2の処理に戻る際には、電極式検査処理も再度実行されることになるため、電極式検査処理が複数回実行される可能性がある。従って、電極式検査処理の実行回数を1回に抑えるために、A11の処理でパターン記録式検査処理の再度の実行指示を受け付けなかった場合(A11:NO)にA12の処理に移る直前、又は、A8の処理で異常ノズルの数が所定数未満であると判断した場合(A8:NO)にA12の処理に移る直前に、電極式検査処理を実行するように構成されていてもよい。この場合、A12の処理の実行タイミングが遅くなるものの、電極式検査処理の実行回数を1回に抑えることができるため、インクの消費量等を少なくすることができる。なお、吸引パージを実行する(A9の処理を実行する)場合には、吸引パージの前後で、ノズル10のインクの吐出状態が変わる可能性がある。このため、ノズルチェックパターンPを用紙Sに記録するパターン記録処理を吸引パージの実行前に行ったのであれば電極式検査処理も吸引パージの実行前に行うことが好ましく、パターン記録処理を吸引パージの実行後に行ったのであれば電極式検査処理も吸引パージの実行後に行うことが好ましい。
【0077】
次に、図10を参照して、電極式検査処理の実行条件を満たしたときの制御装置100の一連の処理について説明する。
【0078】
制御装置100は、電極式検査処理の実行条件を満たしたか否かを判断する(B1)。電極式検査処理の実行条件を満たしていないと判断した場合(B1:NO)には、制御装置100は、実行条件を満たすまで待機する。一方で、電極式検査処理の実行条件を満たしたと判断した場合(B1:YES)には、制御装置100は、変数Nを零にセットする(B2)。変数Nは、電極式検査処理の実行条件を満たした後に実行された吸引パージの実行回数を示している。
【0079】
次に、制御装置100は、電極式検査処理を実行する(B3)。この後、制御装置100は、B3の検査処理の検査結果は異常ノズルの数が所定数以上であることを示すか否かを判断する(B4)。B3の検査処理の検査結果が異常ノズルの数が所定数未満であることを示すと判断した場合(B4:NO)には、本処理を終了する。
【0080】
一方で、B3の検査処理の検査結果が異常ノズルの数が所定数以上であることを示すと判断した場合(B4:YES)には、制御装置100は、変数Nが2であるか否かを判断する(B5)。即ち、制御装置100は、電極式検査処理の実行条件を満たした後に吸引パージを既に2回実行しているか否かを判断する。変数Nが2ではないと判断した場合(B5:NO)には、制御装置100は、吸引ポンプ41等を制御して吸引パージを実行し(B6)、変数Nを[N+1]に更新して(B7)、電極式検査処理を再度実行すべくB3の処理に戻る。
【0081】
B5の処理において、変数Nが2であると判断した場合(B5:YES)には、制御装置100は、電極式検査装置17が検査を正常に実行できない可能性がある旨を示すオブジェクトをタッチパネル7に表示するとともに、異常判断処理を実行するか否かをユーザに選択させるための選択オブジェクトをタッチパネル7に表示する(B8)。選択オブジェクトに対して、タッチパネル7を介してユーザから入力された選択入力が、異常判断処理を実行しないことを示す入力であった場合(B9:NO)には、本処理を終了する。一方で、選択入力が、異常判断処理の実行を示す入力であった場合(B9:YES)には、制御装置100は、上述のS2と同様のパターン記録処理を実行する(B10)。この後、制御装置100は、上述のS4~S9の処理と同様のB11~B16の処理を実行する。なお、B15の処理では、制御装置100は、直近(最後)に行ったB3の検査処理と、B14の検査処理とで検査結果が異なるノズル10の相違合計数を、ノズル列9毎に求める。
【0082】
B16の処理において、4列のノズル列9の何れも相違合計数が閾値未満であると判断した場合(B16:NO)には、制御装置100は、電極式検査装置17が全てのノズル列9について正常に検査を実行できると判断する(B17)。また、制御装置100は、吸引パージを行なったにもかかわらず、異常ノズルの数が所定数以上であるため、ヘッド30が異常であると判断し、その旨を示すヘッド異常オブジェクト(図7(c)参照)をタッチパネル7に表示する。この処理が終了すると、本処理を終了する。
【0083】
一方で、B16の処理において、4列のノズル列9のうちのいずれかのノズル列9の相違合計数が閾値以上であると判断した場合(B16:YES)には、制御装置100は、電極式検査装置17が、相違合計数が閾値以上のノズル列9についての検査を正常に実行できないと判断し、その旨を示す検査異常オブジェクトをタッチパネル7に表示して(B18)、本処理を終了する。
【0084】
ここで、電極式検査処理の検査結果が、異常ノズルの数が所定数以上であることを示す検査結果である場合、電極51上に堆積されたインクやノイズの影響を受けている可能性があり、異常ノズルの数が所定数未満であることを示す検査結果である場合と比べて、電極式検査装置17が検査を正常に実行できない可能性が高い。そこで、上述のように、異常ノズルの数が所定数以上であることを示す検査結果の場合に、電極式検査装置17が検査を正常に実行可能かの確認を行うか否かをユーザに選択させる。そして、ユーザから上記確認を行う選択入力があった場合には、異常判断処理を行うことで、電極式検査装置17が検査を正常に実行できないことを早期に判断することができる。変形例として、異常ノズルの数が所定数以上であることを示す検査結果の場合には、電極式検査装置17が検査を正常に実行可能かの確認を行うか否かの選択をユーザにさせずに、異常判断処理を一律に行うように構成されていてもよい。即ち、図10が示すフローにおいてB8及びB9の処理を行わなくてもよい。
【0085】
また、以上説明したフローでは、電極式検査処理の検査結果が、異常ノズルの数が所定数以上であることを示す検査結果である場合、B8の処理に移る前に、最大2回まで吸引パージを実行するように構成されているが、これには限られない。例えば、B4の処理において、電極式検査処理の検査結果が、異常ノズルの数が所定数以上であることを示す検査結果であった場合(B4:YES)、吸引パージを行なわずに、B8の処理に移ってもよい。異常ノズルの数が所定数以下であった場合にも検査を行ってもよい。
【0086】
以上、本実施形態によると、制御装置100は、電極式検査処理の検査結果を、パターン記録式検査処理の検査結果と比べることで、電極式検査装置17が検査を正常に実行可能か否かを精度よく判断することができる。また、制御装置100が、電極式検査装置17が検査を正常に実行できないと判断した場合には、その旨を示す検査異常オブジェクトがタッチパネル7に表示される。これにより電極式検査装置17が検査を正常に実行できないことをユーザが把握することができる。
【0087】
また、本実施形態によると、制御装置100は、異なる色のインクを吐出するノズル列9毎に電極式検査装置17が検査を正常に実行可能か否かを判断することができる。そして、制御装置100が、何れかのノズル列9について正常に検査をできないと判断した場合には、その旨を示す検査部異常オブジェクトがタッチパネル7に表示されるため、ユーザがその旨を把握することができる。
【0088】
また、本実施形態によると、制御装置100が、異常判断処理において、電極式検査装置17が正常に検査を実行できると判断した場合には、電極式検査処理及びパターン記録式検査処理の検査結果に基づいて、ヘッド30が異常か否かの判断も行うことができる。そして、制御装置100が、ヘッド30が異常であると判断した場合には、ヘッド異常オブジェクトがタッチパネル7に表示されるため、その旨をユーザが把握することができる。
【0089】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態には限られず、特許請求の範囲に記載の限りにおいて様々な変更が可能である。以下、変形例について説明するが、上述した実施形態と同一の箇所については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0090】
ノズル10のインクの吐出状態を検査する吐出検査部は、上述の実施形態のものには限られない。第1変形例のプリンタ1は、図11に示すように、電極式検査装置17を備えておらず、代わりに、残留振動式検査装置310、及び、光学式検査装置320を備えている。残留振動式検査装置310は、特開2004-284189号公報、特開2011-240563号公報に記載されているものと同様に、残留振動を利用してノズル10のインクの吐出状態を検査する残留振動式検査処理に使用される。ここで、アクチュエータ32を駆動させインク流路に圧力を与えてインクをノズル10から吐出する吐出駆動を行った際に、ノズル10のインクの吐出状態に応じてインク流路内のインクの圧力の変動が違うことが分かっている。より詳細には、インクを正常にノズル10から吐出できる場合とできない場合とでは、インク流路内に圧力を与えた後の圧力の減衰(圧電層88の残留振動)に違いがある。この性質を利用し、残留振動式検査装置310は、吐出駆動を行った際のインク流路内の圧力の変化(圧電層88の残留振動)に応じた電圧信号を取得し、その取得した電圧信号により各ノズル10のインクの吐出状態を検査する。そして、残留振動式検査装置310は、その検査結果を制御装置100に出力する。
【0091】
光学式検査装置320は、ノズル10のインクの吐出状態を検査する光学式検査処理に使用される検査装置である。光学式検査装置320は、光学センサ321と、判定回路325とを備えている。光学センサ321は、光を発光する発光素子322と、発光素子322から発光された光を受ける受光素子323とを有している。発光素子322と受光素子323は、ノズル10から吐出されたインクが、発光素子322と受光素子323との間の光路上を通過するように配置されている。従って、ノズル10から正常にインクが吐出されたときには、発光素子322から発光された光がインクにより遮断されることになる。判定回路325は、ノズル10から吐出されたインクが、発光素子322と受光素子323との間の光路上を通過するように、ヘッド30のアクチュエータ32を駆動した際の、受光素子323の受光結果に基づいて、各ノズル10のインクの吐出状態を判定し、その判定結果を制御装置100に出力する。第1変形例において、残留振動式検査装置310が「第1吐出検査部」及び「第2吐出検査部」のうちの一方に相当し、光学式検査装置320が「第1吐出検査部」及び「第2吐出検査部」のうちの他方に相当する。
【0092】
また、上述の実施形態では、異常判断処理の判断対象となる検査装置は、電極式検査装置17に固定されていたが、第1変形例では、残留振動式検査装置310及び光学式検査装置320それぞれの検査の信頼度に応じて、これら検査装置のうちの何れかを判断対象の検査装置に設定する。
【0093】
具体的には、制御装置100は、残留振動式検査処理及び光学式検査処理それぞれを実行する毎に、その検査結果をフラッシュメモリ104に記憶する。そして、制御装置100は、異常判断処理を実行する際には、フラッシュメモリ104に記憶されている残留振動式検査処理及び光学式検査処理それぞれの検査結果の履歴を参照して、残留振動式検査処理及び光学式検査処理それぞれの検査の信頼度を導出する。検査の信頼度の導出方法は特に限定されないが、例えば、直近に行った検査処理の検査結果が示す異常ノズルの数と、それ以前に行った過去の複数回の検査処理の検査結果が示す異常ノズルの数の平均値との差が小さいほど、信頼度を高くする。あるいは、残留振動式検査処理及び光学式検査処理それぞれの検査処理について、所定時間前(例えば1週間前)の検査結果と、直近の検査結果とを比較して、異常ノズルの数の差が少ない方の検査処理の信頼度を高くしてもよい。
【0094】
制御装置100は、残留振動式検査装置310及び光学式検査装置320のうち、信頼度が低い検査処理に使用される検査装置を異常判断処理の判断対象の検査装置に設定し、信頼度が高い検査処理に使用される検査装置を異常判断処理の判断対象とは異なる検査装置に設定する。なお、残留振動式検査装置310及び光学式検査装置320は、それぞれユニット化されており、プリンタ1本体に対して着脱可能に構成されている。従って、これらの検査装置が故障等した場合には、ユーザは新しい装置に交換することができる。ここで、残留振動式検査装置310がヘッドと一体である場合には、ヘッドごと交換してもよい。
【0095】
また、第1変形例では、異常判断処理は、残留振動式検査処理及び光学式検査処理の何れかの検査処理の実行条件を満たしたときに実行される。残留振動式検査処理及び光学式検査処理の実行条件は、電極式検査処理の実行条件と同様に、電源を投入したとき、画像記録指示を受信したとき、画像記録処理中において所定ページ数を記録したとき等に満たす。なお、残留振動式検査処理及び光学式検査処理の実行条件は互いに異なっている。
【0096】
以下、図12を参照して、異常判断処理に関する処理の一例として、残留振動式検査処理の実行条件を満たしたときの制御装置100の一連の処理について説明する。なお、光学式検査処理の実行条件を満たしたときの制御装置100の一連の処理は、図12が示すフローにおいて、残留振動式検査処理の処理内容と光学式検査処理の処理内容とを入れ替えるだけで、その内容は略同じであるため説明を省略する。
【0097】
まず、制御装置100は、残留振動式検査処理の実行条件を満たしたか否かを判断する(C1)。残留振動式検査処理の実行条件を満たしていないと判断した場合(C1:NO)には、制御装置100は、実行条件を満たすまで待機する。一方で、残留振動式検査処理の実行条件を満たしたと判断した場合(C1:YES)には、制御装置100は、ヘッド30のアクチュエータ32、及び残留振動式検査装置310を制御して残留振動式検査処理を実行し(C2)、その検査結果をフラッシュメモリ104に記憶する(C3)。
【0098】
次に、制御装置100は、フラッシュメモリ104に記憶されている残留振動式検査処理及び光学式検査処理それぞれの検査結果の履歴を参照して、残留振動式検査処理及び光学式検査処理それぞれの検査の信頼度を導出する(C4)。そして、制御装置100は、残留振動式検査装置310及び光学式検査装置320のうちの、信頼度が低い方の検査処理に使用される検査装置を判断対象の検査装置に設定する(C5)。
【0099】
次に、制御装置100は、フラッシュメモリ104から直近に行った光学式検査処理の検査結果を抽出する(C6)。そして、制御装置100は、C2の残留振動式検査処理の検査結果と、C6の処理で抽出した光学式検査処理の検査結果とで検査結果が異なるノズル10の相違合計数を、ノズル列9毎に求める(C7)。次に、制御装置100は、4列のノズル列9のうち、C7の処理で求めた相違合計数が閾値以上となるノズル列9があるか否かを判断する(C8)。4列のノズル列9の何れも相違合計数が閾値未満であると判断した場合(C8:NO)には、制御装置100は、判断対象の検査装置が全てのノズル列9について正常に検査を実行できると判断し、その旨を示す検査正常オブジェクトをタッチパネル7に表示する(C9)。このC9の処理が終了すると、本処理を終了する。
【0100】
C8の処理において、4列のノズル列9のうちのいずれかのノズル列9の相違合計数が閾値以上であると判断した場合(C8:YES)には、制御装置100は、判断対象の検査装置が、相違合計数が閾値以上のノズル列9についての検査を正常に実行できないと判断し、その旨を示す検査異常オブジェクトをタッチパネル7に表示して(C10)、本処理を終了する。
【0101】
以上、第1変形例によると、残留振動式検査装置310及び光学式検査装置320のうちの検査の信頼度が高い方を判断対象とは異なる検査装置に設定することで、判断対象の検査装置が検査を正常に実行可能か否かの判断精度を高めることができる。
【0102】
また、残留振動式検査処理及び光学式検査処理のうちの何れかの検査処理の実行条件を満たしたときに、異常判断処理が行われるため、実行条件を満たした検査処理の検査結果を有効活用して、制御装置100は、判断対象の検査装置が検査を正常に実行可能か否かを判断することができる。また、実行条件を満たしていない検査処理については、過去の検査結果が使用されるため、実行条件を満たしていない検査処理を実行しない分だけ、判断対象の検査装置が検査を正常に実行可能か否かを早期に判断することができる。
【0103】
次に、図13を参照して第2変形例について説明する。上述の実施形態では、異常判断処理は、プリンタ1の制御装置100が行っていたが、第2変形例では、外部装置200の制御装置201が行う。以下、図13を参照して、外部装置及びインクジェットプリンタの、異常判断処理に関する一連のシーケンスの一例について説明する。
【0104】
外部装置200の制御装置201は、プリンタ1に対して、2つの検査処理の検査結果の送信を要求する検査結果送信要求を送信する(D1)。プリンタ1の制御装置100は、検査結果送信要求を受信して(D2)、上述のS2~S7の処理と同様のD3~D8の処理を実行する。この後、制御装置100は、D4の電極式検査処理の検査結果と、D8のパターン記録式検査処理の検査結果を、外部装置200に送信する(D9)。外部装置200の制御装置201は、2つの検査処理の検査結果を受信し(D10)、受信した2つの検査処理の検査結果に基づいて、検査結果が異なるノズル10の相違合計数を、ノズル列9毎に求める(D11)。次に、制御装置201は、4列のノズル列9のうち、D11の処理で求めた相違合計数が閾値以上のノズル列9があるか否かを判断する(D12)。4列のノズル列9の何れも相違合計数が閾値未満であると判断した場合(D12:NO)には、制御装置201は、電極式検査装置17が全てのノズル列9について正常に検査を実行できると判断し、その旨を示す検査正常オブジェクトをディスプレイ202に表示して(D13)、本処理を終了する。
【0105】
D12の処理において、4列のノズル列9のうちのいずれかのノズル列9の相違合計数が閾値以上であると判断した場合(D12:YES)には、制御装置201は、電極式検査装置17が、相違合計数が閾値以上のノズル列9についての検査を正常に実行できないと判断し、その旨を示す検査異常オブジェクトをディスプレイ202に表示して(D14)、本処理を終了する。
【0106】
以上、第2変形例においては、外部装置200の制御装置201は、プリンタ1から送信された2つの検査処理の検査結果に基づいて、電極式検査装置17が検査を正常に実行可能か否かを精度よく判断することができる。
【0107】
なお、第2変形例では、検査正常オブジェクトや検査異常オブジェクトの表示を外部装置200のディスプレイ202で行っているが、これには限られない。外部装置200の制御装置201が異常判断処理の判断結果を、プリンタ1に対して送信し、プリンタ1のタッチパネル7等で検査正常オブジェクトや検査異常オブジェクトの表示を行ってもよい。
【0108】
以下、その他の変形例について説明する。
【0109】
電極式検査装置17は、4列のノズル列9に同時に対向可能な1つの電極51のみ有していたが、これには限られず、例えば、ノズル列9毎に個別に対向可能な、複数の電極を有していてもよい。このように電極式検査装置17が複数の電極を有する場合、制御装置100は、異常判断処理において、電極毎に、当該電極を使用して行うノズルの吐出状態の検査を正常に実行可能か否かを判断してもよい。上述の実施形態では、制御装置100は、異常判断処理において、4列のノズル列9全てについて、電極式検査装置17が正常に検査を実行可能か否かを判断していたが、これには限られず、例えば、4列のノズル列9の中から数列のノズル列9を選択して、選択したノズル列9について電極式検査装置17が正常に検査を実行可能か否かを判断してもよい。
【0110】
ノズル10のインクの吐出状態を検査する吐出検査部の数は2つには限定されず、3つ以上であってもよい。即ち、ノズル10のインクの吐出状態を検査する処理方法として、3通り以上の処理方法があってもよい。この場合、3つ以上の吐出検査部のうちの1つを判断対象の吐出検査部とし、この判断対象の吐出検査部の検査結果と、残り2つ以上の吐出検査部の検査結果とを比較して、判断対象の吐出検査部が正常に検査を実行できるか否かを判断してもよい。また、判断対象となる吐出検査部を、タッチパネル7等を介してユーザが指定できるように構成されていてもよい。
【0111】
上述の実施形態では、制御装置100は、異常判断処理において、4列のノズル列9のうちの1列でも相違合計数が閾値以上であると判断した場合には、電極式検査装置17の交換を促すオブジェクトをタッチパネル7に表示するように構成されていたが、これには限られず、例えば、4列のノズル列9全てが相違合計数が閾値以上であると判断した場合のみ電極式検査装置17の交換を促すオブジェクトを表示するように構成されていてもよい。即ち、4列のノズル列9のうち3列以下のノズル列9について相違合計数が閾値以上であると判断した場合には、当該相違合計数が閾値以上のノズル列9の検査を正常にできない旨を示すオブジェクトをタッチパネル7に表示し、4列のノズル列9全てが相違合計数が閾値以上であると判断した場合に電極式検査装置17の交換を促すオブジェクトを表示するように構成されていてもよい。
【0112】
上述の実施形態では、異常判断実行指示は、タッチパネル7を介してユーザから入力されるが、これには限られない。例えば、異常判断実行指示は、外部装置200から通信インターフェース110を介して入力されるように構成されていてもよい。
【0113】
上述の実施形態では、パターン記録式検査処理において、用紙Sに記録されたノズルチェックパターンPの読み取りをスキャナ5に行わせていたが、これには限られない。用紙Sに記録されたノズルチェックパターンPの読み取りを、キャリッジ13よりも搬送方向下流側に配置されたメディアセンサ18により行ってもよい。発光素子から照射された光が、用紙S上においてインクが着弾してドットが形成されている位置で反射する場合と、インクが着弾しておらずドットが形成されていない位置で反射する場合とでは、受光素子で受光する受光量が異なる。従って、制御装置100は、メディアセンサ18から出力される信号に基づいて、ノズル10のインクの吐出状態を検査することができる。また、キャリッジ13にメディアセンサを搭載し、このメディアセンサにより用紙Sに記録されたノズルチェックパターンPを読み取るように構成されていてもよい。これらの場合、メディアセンサが「読取部」に相当する。
【0114】
上述の実施形態では、制御装置100が、異常判断処理において、判断対象の検査装置が検査を正常に実行できないと判断した場合には、その旨を示す検査異常オブジェクトをタッチパネル7に表示して報知していたが、これには限られない。例えば、判断対象の検査装置が検査を正常に実行できないと判断した場合には、その旨を音声で報知したり、LEDの点滅や点灯により報知したりしてもよい。同様に、制御装置100は、ヘッド30が異常であると判断した場合には、その旨を示すヘッド異常オブジェクトをタッチパネル7に表示する代わりに、その旨を音声で報知したり、LEDの点滅や点灯により報知したりしてもよい。また、制御装置100が、判断対象の検査装置が検査を正常に実行できないと判断した場合には、その旨を示す情報を外部装置200に送信し、外部装置200のディスプレイ202等で報知するように構成されていてもよい。また、制御装置100が、判断対象の検査装置が検査を正常に実行できないと判断した場合に、その旨をユーザに報知しなくてもよい。例えば、制御装置100は、判断対象の検査装置が検査を正常に実行できないと判断した場合には、それ以降、当該検査装置を使用しないように制御内容を変更するように構成されていてもよい。
【0115】
上述の実施形態では、制御装置100は、電極式検査処理と、パターン記録式検査処理とで検査結果が相違するノズル10の合計数が閾値以上か否かに基づいて、電極式検査装置17が検査を正常に実行可能か否かを判断していたが、これには限られない。例えば、制御装置100は、電極式検査処理の検査結果が示す異常ノズルの数と、パターン記録式検査処理の検査結果が示す異常ノズルの数との差異数が所定の閾値以上の場合に電極式検査装置17が検査を正常に実行できないと判断し、差異数が閾値未満の場合に電極式検査装置17が検査を正常に実行できると判断してもよい。
【0116】
また、本発明は、ヘッドを固定した状態で、搬送機構により搬送される用紙に画像を記録する、所謂ライン式のインクジェットプリンタにも適用されうる。また、ノズルからインクを吐出して用紙に画像を記録するプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。用紙S以外の記録媒体に対して液体を吐出する液体吐出装置に適用することも可能である。例えば、特開2017-144726号公報に記載されているように、記録媒体が載置されたステージを搬送方向に移動可能となっており、キャリッジとともにヘッドを走査方向に移動させつつノズルからインクを吐出させる動作と、ステージの移動とを交互に繰り返すことによって記録媒体に記録を行う液体吐出装置に本発明を適用することも可能である。このようなプリンタにおける記録媒体としては、例えば、Tシャツ、屋外用広告用のシート等が挙げられる。また、配線基板に対して、配線パターンの材料等のインク以外の液体を吐出して記録を行う液体吐出装置に適用することも可能である。また、スマートフォン等の携帯端末のケース、段ボール、樹脂等に対してインクを吐出して記録する液体吐出装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0117】
1 インクジェットプリンタ
10 ノズル
17 電極式検査装置
30 インクジェットヘッド
100 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13