(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172945
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】円描画器具
(51)【国際特許分類】
B43L 9/00 20060101AFI20241205BHJP
B25H 7/04 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B43L9/00 A
B25H7/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091025
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000157197
【氏名又は名称】丸井産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 和樹
(57)【要約】
【課題】描く円の半径の選択の自由度を高める。
【解決手段】円描画器具は、少なくとも2つの筆記具挿入孔111・112が所定の中心間距離で設けられた帯状の本体部110と、描画対象部材に位置決め可能に設けられた中心軸部材120と、を備え、本体部110は、中心軸部材120を中心として筆記具挿入孔111・112が円を描くように回動可能にされるとともに、中心軸部材120を複数の段階的な位置にスライドさせ得るように構成され、複数の段階的な位置は、何れかの筆記具挿入孔111・112からの距離が所定の距離になるように設定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの筆記具挿入孔が所定の中心間距離で設けられた帯状の本体部と、
描画対象部材に位置決め可能に設けられた中心軸部材と、
を備え、
上記本体部は、上記中心軸部材を中心として上記筆記具挿入孔が円を描くように回動可能にされるとともに、上記中心軸部材を複数の段階的な位置にスライドさせ得るように構成され、
上記複数の段階的な位置は、何れかの上記筆記具挿入孔からの距離が所定の距離になるように設定されていることを特徴とする円描画器具。
【請求項2】
請求項1の円描画器具であって、
上記少なくとも2つの筆記具挿入孔は、互いに直径が異なることを特徴とする円描画器具。
【請求項3】
請求項2の円描画器具であって、
上記本体部における上記筆記具挿入孔の周囲は、円描画器具を描画対象部材に当接させる際に描画対象部材との間に隙間が空くように段差が設けられていることを特徴とする円描画器具。
【請求項4】
請求項2の円描画器具であって、
上記中心軸部材は、描画対象部材に位置決めする際に上記描画対象部材に当接する摩擦部材、描画対象部材に差し込まれる針部材、および描画対象部材に打ち込む釘を挿通させる釘孔の少なくとも1つを有することを特徴とする円描画器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円を描くために用いられる円描画器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
円を描くことが可能な定規として、定規の端部付近に軸体が設けられ、上記軸体から所定の距離の位置に設けられた複数の貫通孔のうちの何れかにペンを差し込み、上記軸体を中心として定規とともにペンを回転させることにより円を描く円描画器具が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように複数の貫通孔から選択した貫通孔にペンを差し込むことによって、半径が種々の段階の円を描くことができる。
【0005】
しかしながら、上記のように複数の貫通孔からペンを差し込む貫通孔を選択できるようにする場合、選択できる半径の段階の細かさは貫通孔の大きさ、すなわち用いられるペンのペン先の太さに制約される。具体的には、例えばペン先の直径よりも細かい段階の半径を選択することはできない。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、描く円の半径の選択の自由度を高めることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、
本発明は、
円描画器具であって、
少なくとも2つの筆記具挿入孔が所定の中心間距離で設けられた帯状の本体部と、
描画対象部材に位置決め可能に設けられた中心軸部材と、
を備え、
上記本体部は、上記中心軸部材を中心として上記筆記具挿入孔が円を描くように回動可能にされるとともに、上記中心軸部材を複数の段階的な位置にスライドさせ得るように構成され、
上記複数の段階的な位置は、何れかの上記筆記具挿入孔からの距離が所定の距離になるように設定されていることを特徴とする。
【0008】
これにより、複数の段階的な位置を、何れかの筆記具挿入孔からの距離が所定の距離になるように設定することによって、描く円の半径が近い場合でも中心軸部材の位置をずらすように設定することができるので、描く円の半径の選択の自由度を高めることが容易にできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、描く円の半径の選択の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態として、例えば建築現場においてスラブ型枠用の墨出しやダウンライトを取り付けるための墨出しに用いられる円描画器具の例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の各実施形態において、他の実施形態と同様の機能を有する構成要素については同一または対応する符号を付して説明を省略する。
【0012】
(実施形態1)
円描画器具100は、
図1~
図3に示すように、本体部110に中心軸部材120が複数の段階的な位置にスライド可能に設けられて構成されている。
【0013】
本体部110には、例えばペン先の直径が9.5mmの油性マーカー、またはペン先の直径が2.5mmの建築用シャープペンが挿入される筆記具挿入孔111・112が、例えば9.5mmの中心間距離で設けられている。また、本体部110の長手方向に沿ってスライド溝113が設けられている。スライド溝113の内周側には、複数の凹部113aが設けられ、後述するように中心軸部材120を所定の段階的な位置に位置決めし得るようになっている。本体部110の下面側には、上記スライド溝113を囲む範囲に、中心軸部材120の大径部121aが嵌まり込む下面凹部114が設けられている。また、本体部110の下面側の少なくとも筆記具挿入孔111・112の近傍には、凸部115が設けられ、筆記具挿入孔111・112の周囲が、円描画器具100を描画対象部材に当接させる際に描画対象部材との間に隙間が空くように、段差が設けられている。
【0014】
中心軸部材120は、スライド位置決部材121と、ワッシャ122と、頭部123と、コイルバネ124とが組み立てられて成っている。
【0015】
スライド位置決部材121は、上記本体部110の下面凹部114に嵌まり込む大径部121aと、スライド溝113の凹部113aに嵌まり込む中間径部121bと、スライド溝113の最小幅よりも小径の小径部121cとを有している。大径部121aの下面にはゴムパッド125が設けられている。また、スライド位置決部材121の中心には、描画対象部材に打ち込む釘を挿通させる釘孔121dが設けられている。
【0016】
スライド位置決部材121の小径部121cには、本体部110の上面側と頭部123との間に、ワッシャ122、およびコイルバネ124が嵌挿され、スライド位置決部材121が上方に引き上げられるようになっている。そこで、中心軸部材120の頭部123が下方に押し込まれると、小径部121cはスライド溝113の最小幅よりも小径であることにより、中心軸部材120は本体部110の長手方向にスライド可能になる。また、中心軸部材120がコイルバネ124の付勢力によって引き上げられると、中間径部121bがスライド溝113の凹部113aに嵌まり込んで、中心軸部材120が所定の段階的な位置に位置決めされるようになっている。
【0017】
上記円描画器具100では、例えば建築現場において、(表1)に示すようなボイドの外径に相当する円をペン先の直径が9.5mmの油性マーカーによって描く場合には、50A~300Aと表示される目盛位置の凹部113aに中心軸部材120を位置させて頭部123を描画対象部材に向けて押し付け、筆記具挿入孔111に上記油性マーカのペン先を挿入して円を描くことができる。また、同様に、天井に(表1)に示すようなダウンライト用の穴を空けるための円をペン先の直径が2.5mmの建築用シャープペンによって描く場合には、φ50~φ250と表示される目盛位置の凹部113aに中心軸部材120を位置させて頭部123を天井に向けて押し付け、筆記具挿入孔112に上記建築用シャープペンの芯を挿入して円を描くことができる。
【0018】
ここで、上記のようなボイドの外径やダウンライト用の穴の直径は、呼びの数字が同じでも、実際に描く円の直径や半径は、互いに近い寸法ではあるが、必ずしも等しくない。このため、仮に筆記具挿入孔111・112の位置を同じ位置に設定したとすると、中心軸部材120の位置決めが困難な場合が生じ得る。ところが、上記の例では、筆記具挿入孔111・112の位置を9.5mmの中心間距離で配置することによって、(表1)に併せて示すように、中心軸部材120から筆記具挿入孔112までの距離を略等間隔に設定することができる。それゆえ、筆記具挿入孔の位置を適切に設定することによって、2種類以上の呼びで規定される半径の円などを描けるようにすることが容易にできる。
【0019】
また、上記のように筆記具挿入孔112を固定的に設け、中心軸部材120の位置をスライドさせて半径を設定できるようにすることにより、設定する半径の段階を筆記具挿入孔112の直径よりも細かく設定することも容易にできる。
【0020】
【0021】
(実施形態2)
描く円の中心を設定するためには、上記中心軸部材120のように描画対象部材に押し付けたり釘を打ち込んだりするのに限らず、針部材を設けて描画対象部材に差し込めるようにしてもよい。
【0022】
具体的には、実施形態2の中心軸部材130は、例えば
図4に示すように、実施形態1のスライド位置決部材121に相当する部材がスライド位置決部材131と針軸132とによって構成されている。より詳しくは、スライド位置決部材131には、大径部131aと中間径部131bと小径部131cとが形成されるとともに、中心部に針軸挿入孔131dが形成されている。針軸挿入孔131dには、針部材133が取り付けられた針軸132の針軸大径部132aおよび針軸小径部132bが進退可能に嵌挿されている。スライド位置決部材131の小径部131cには、中心軸部材120と同様にワッシャ122とコイルバネ124が嵌め込まれている。針軸132の上部には、頭部123が取り付けられている。
【0023】
このような中心軸部材130が用いられる場合でも、やはり、描く円の半径の段階を設定する自由度を高くすることが容易にできる。
【符号の説明】
【0024】
100 円描画器具
110 本体部
111 筆記具挿入孔
112 筆記具挿入孔
113 スライド溝
113a 凹部
114 下面凹部
115 凸部
120 中心軸部材
121 スライド位置決部材
121a 大径部
121b 中間径部
121c 小径部
121d 釘孔
122 ワッシャ
123 頭部
124 コイルバネ
125 ゴムパッド
130 中心軸部材
131 スライド位置決部材
131a 大径部
131b 中間径部
131c 小径部
131d 針軸挿入孔
132 針軸
132a 針軸大径部
132b 針軸小径部
133 針部材