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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172959
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】水中調査装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 15/89 20060101AFI20241205BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20241205BHJP
   G01S 19/43 20100101ALI20241205BHJP
   G01S 19/53 20100101ALI20241205BHJP
【FI】
G01S15/89 B
E01D22/00 A
G01S19/43
G01S19/53
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091043
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】519429989
【氏名又は名称】株式会社テクノコンサルタント
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】小石 明
【テーマコード(参考)】
2D059
5J062
5J083
【Fターム(参考)】
2D059AA01
2D059AA03
2D059GG39
5J062AA11
5J062BB07
5J062CC07
5J083AB08
5J083AC17
5J083AD01
5J083AD17
5J083AE06
5J083AF17
5J083AF19
5J083AG09
5J083BD02
5J083BD07
5J083CA01
5J083DC05
5J083EA14
(57)【要約】
【課題】簡易な機構でありながら、水中に設置された構造物周辺の地形状況を正確に、かつ、効率よく調査することが可能な水中調査装置を提供する。
【解決手段】本発明を適用した水中調査装置の一例である水中調査装置Aは、制御機構1と、本体装置部2と、テザーケーブル3を備えている。また、本体装置部2は、移動装置本体20と、イメージングソナー21と、ジンバル装置22を有している。ジンバル装置22は、第1アーム222と、第2アーム223を有する。第1アーム222は、イメージングソナー21の向きを垂直下方に向けた初期状態で、X軸方向と平行な向きの回転軸を中心に、イメージングソナー21の向きを回転させる部材である。また、第2アーム223は、Y軸方向と平行な向きの回転軸を中心に、イメージングソナー21の向きを回転させる部材である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のソナーを用いて水中の地形状況を調査するための水中調査装置であって、
水上に設置され、前記所定のソナーを制御する第1の制御部と、
水面に配置される本体と、
前記本体に取り付けられ、同本体を水面に浮かべる浮力体と、
前記浮力体に取り付けられ、水面に浮かべた前記本体を移動または定点保持させる駆動力を生じる駆動力発生部と、
前記本体に取り付けられると共に、前記所定のソナーの計測情報を受信し、かつ、前記第1の制御部との間で情報を送受信可能に構成された第2の制御部と、
前記本体または前記第2の制御部に取り付けられ、前記所定のソナーを支持すると共に、前記所定のソナーの向きを調節する角度調節部と、
前記本体または前記所定のソナーの水面上での位置情報及び方位角情報を取得する位置情報取得部とを備える
水中調査装置。
【請求項2】
前記角度調節部は、
任意の平面上にそれぞれ位置する、X軸及び前記X軸と角度をなすY軸に対して、
前記X軸を回転軸として前記所定のソナーの向きを調整するX軸回転部と、
前記Y軸を回転軸として前記所定のソナーの向きを調整するY軸回転部を有する
請求項1に記載の水中調査装置。
【請求項3】
前記任意の平面は水平面に平行であり、前記所定のソナーの向きを垂直下方に向けた初期状態では、前記X軸と前記Y軸が直交した関係にある
請求項2に記載の水中調査装置。
【請求項4】
前記位置情報取得部は、
複数の測位衛星から衛星信号を受信するための2つのアンテナと、
所定の基準局が前記複数の測位衛星から受信した衛生信号に基づいて生成した補正データを受信するための通信機と、
前記2つのアンテナで受信された衛星信号と前記通信機で受信された補正データに基づいて、前記2つのアンテナのうち少なくとも1つのアンテナの位置座標及び前記本体の方位角を演算する受信機とを有する
請求項1または請求項2に記載の水中調査装置。
【請求項5】
前記第1の制御部と前記第2の制御部がケーブルで接続された
請求項1または請求項2に記載の水中調査装置。
【請求項6】
前記所定のソナーは、扇状の超音波を発するイメージングソナーである
請求項1または請求項2に記載の水中調査装置。
【請求項7】
前記第2の制御部は、前記本体の傾きを検知する角度センサを有する
請求項1または請求項2に記載の水中調査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水中調査装置に関する。詳しくは、簡易な機構でありながら、水中に設置された構造物周辺の地形状況を正確に、かつ、効率よく調査することが可能な水中調査装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
近年、豪雨災害により、河川等に設けられた橋梁の橋脚に対して、河床の土砂が洗い流される洗堀と呼ばれる現象が生じ、橋梁が使用不能になる事案が発生している。
【0003】
例えば、令和4年9月台風第14号の大雨に伴う一級河川球磨川における増水の際には、熊本県が管理する県道覚井一武線の「球磨大橋」の損傷被災が発生し、橋梁が通行止めになる状態となった。
【0004】
また、上記の球磨大橋を調査した結果、橋脚の基礎部は、設計通りの施工がなされており、洗堀で沈下した以外に橋梁の不具合は見受けられなかった。
【0005】
こうした豪雨災害による被災に伴い、仮に橋梁を架け替えなければならなくなった場合、数十億円もの建設費用が発生することになる。
【0006】
このような豪雨災害に伴う洗堀の発生については、事前に橋梁の橋脚周辺の洗堀状況を調査し、被害が顕在化する前に対策を講じることで、被災を避けることができる可能性がある。
【0007】
従って、橋梁を新たに架け替えることなく、長期間、安全に使用するために、橋脚周りの定期的な洗堀調査を行うことが必要となる。
【0008】
こうしたなか、橋梁の洗堀調査の方法として、例えば、水中ドローンを用いた橋梁点検技術(非特許文献1参照)が提案されている。
【0009】
ここで、非特許文献1に記載された水中ドローンを用いた橋梁点検技術では、水中ドローンに、ソナーを水平方向と垂直方向に取り付け、橋脚周辺の測定対象となる箇所をソナーにより形状を計測することが行われる。
【0010】
また、非特許文献1に記載された水中ドローンを用いた橋梁点検技術では、水中ドローンを、一定間隔で水平移動または垂直移動させ、各位置で取得したソナーの2次元の映像から、測定対象の計測データが取得される。
【0011】
また、非特許文献1に記載された水中ドローンを用いた橋梁点検技術では、水中ドローンの水中での位置の把握に、基準点からの相対的な距離や角度を音波で測定するSBL(Short Base Line)やUSBL(Ultra Short Base Line)等の音響測位方式が採用されている。また、水中ドローンの方向は、マグネットコンパスとジャイロセンサーを組み合わせた姿勢方位基準装置(AHRS)により取得される。
【0012】
また、橋梁の洗堀調査の方法として、例えば、水中3Dスキャナーによる水中構造物の形状把握システム(非特許文献2参照)が提案されている。
【0013】
この非特許文献2に記載された水中3Dスキャナーによる水中構造物の形状把握システムでは、橋脚から3~10m程度離れたところに、水中3Dスキャナーを垂下し、音波発信部を回転させながら、橋脚及び河床形状を3Dの点群データとして計測する。
【0014】
また、非特許文献2に記載された水中3Dスキャナーによる水中構造物の形状把握システムでは、橋脚1本に対して、これを囲むように、6箇所程度で計測を行う。そして、3D点群データのノイズを処理し、複数の計測データを統合して、橋脚および周辺河床の3Dモデルを作成し、橋脚の3Dモデルを設計図面に重ね合わせて、洗堀の規模を算出する。
【0015】
また、非特許文献2に記載された水中3Dスキャナーによる水中構造物の形状把握システムでは、橋脚の水上部を3Dレーザースキャナーにより計測して、公共座標系の位置情報を持つ3D点群データを取得し、水中部の点群データと統合することにより、3DSの極座標を公共座標に転換することも行われる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】"国土交通省 点検支援技術性能カタログ(橋梁・トンネル) 令和5年3月 計測・モニタリング技術(橋梁)(1/9) BR030045-V0123 水中ドローン(DiveUnit300)を用いた橋梁点検支援技術(洗掘) 株式会社FullDepth"、[online]、[令和5年4月18日検索]、インターネット<URL: https://www.mlit.go.jp/road/sisaku/inspection-support/pdf/c/BR030045.pdf >
【非特許文献2】"NETIS 新技術提供システム NETIS登録番号KT-180031-A水中3Dスキャナーによる水中構造物の形状把握システム「i-UVS(Intelligent-Underwater Visualization System)」"、[online]、[令和5年4月18日検索]、インターネット<URL: https://www.netis.mlit.go.jp/netis/pubsearch/details?regNo=KT-180031%20>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ここで、非特許文献1に記載された水中ドローンを用いた橋梁点検技術では、USBLやSBL等の手法で水中ドローンの位置情報を取得する際、数パーセントの誤差が発生してしまう。
【0018】
この結果、実際の水中ドローンの位置と、取得した位置情報における位置とが数十センチ以上ずれてしまい、正確な測定結果が得られない問題があった。
【0019】
また、非特許文献1に記載された水中ドローンを用いた橋梁点検技術では、AHRSによる方位の情報取得において、マグネットコンパスが周囲の磁気に影響を受け、水中ドローンの向き(方向)の情報が正確に取得できない不具合があった。
【0020】
このように、非特許文献1に記載された水中ドローンを用いた橋梁点検技術では、本来求められるセンチメートルオーダーの精度での、位置情報及び方向の情報の取得が困難であり、より高精度、かつ、正確な調査を行うことができなかった。
【0021】
また、非特許文献2に記載された水中3Dスキャナーによる水中構造物の形状把握システムでは、水中3Dスキャナーを水中に設置する必要があり、かつ、複数の箇所に設置することになるため、1つの橋梁の測定に多大な手間や時間を要していた。
【0022】
また、非特許文献2に記載された水中3Dスキャナーによる水中構造物の形状把握システムでは、測定対象となる橋脚の3Dモデルを作成する際に、水中の3Dスキャナーのデータと、水上の3Dレーザースキャナーのデータについて、水面の上下でデータを合成する作業があり、このデータの合成にも手間がかかる不都合があった。
【0023】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、簡易な機構でありながら、水中に設置された構造物周辺の地形状況を正確に、かつ、効率よく調査することが可能な水中調査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記の目的を達成するために、本発明の水中調査装置は、所定のソナーを用いて水中の地形状況を調査するための水中調査装置であって、水上に設置され、前記所定のソナーを制御する第1の制御部と、水面に配置される本体と、前記本体に取り付けられ、同本体を水面に浮かべる浮力体と、前記浮力体に取り付けられ、水面に浮かべた前記本体を移動または定点保持させる駆動力を生じる駆動力発生部と、前記本体に取り付けられると共に、前記所定のソナーの計測情報を受信し、かつ、前記第1の制御部との間で情報を送受信可能に構成された第2の制御部と、前記本体または前記第2の制御部に取り付けられ、前記所定のソナーを支持すると共に、前記所定のソナーの向きを調節する角度調節部と、前記本体または前記所定のソナーの水面上での位置情報及び方位角情報を取得する位置情報取得部とを備える。
【0025】
ここで、水上に設置され、所定のソナーを制御する第1の制御部によって、所定のソナーによる超音波の発振や検出、計測を制御することができる。また、水上に設置されるため、例えば、水面より上方にある橋梁や、河岸等の装置から離れた橋や陸地の位置から、所定のソナーの計測を制御可能となる。
【0026】
また、水面に配置される本体と、本体に取り付けられ、本体を水面に浮かべる浮力体によって、水中調査装置の本体を水面上に浮かべて配置可能となる。
【0027】
また、駆動力発生部が、浮力体に取り付けられ、水面に浮かべた本体を移動または定点保持させる駆動力を生じることによって、水中調査装置の本体を、水面上の所望の位置へ移動させたり、水面上の所望の位置で定点保持をさせたりすることができる。
【0028】
また、第2の制御部が、本体に取り付けられると共に、所定のソナーの計測情報を受信し、かつ、第1の制御部との間で情報を送受信可能に構成されたことによって、水上にある第1の制御部からの制御信号等に基づき、第2の制御部で、所定のソナーの計測を制御することができる。また、所定のソナーの計測結果の情報を、第1の制御部に送信して、第1の制御部側での計測結果の解析や計測データの可視化が可能となる。
【0029】
また、位置情報取得部が、本体または所定のソナーの水面上での位置情報及び方位角情報を取得することによって、所定のソナーの計測結果と、本体または所定のソナーの水面上での位置情報と、本体または所定のソナーの方位角情報を組み合わせて、水中の地形または構造物の形状の情報を取得することが可能となる。即ち、水中の橋脚と、その周辺の河底の地形の形状を示し、洗堀の有無を把握しうる情報を取得することができる。
【0030】
また、角度調節部が、本体または第2の制御部に取り付けられ、所定のソナーを支持すると共に、所定のソナーの向きを調節することによって、所定のソナーから発振する超音波の角度を調整可能となる。即ち、例えば、位置情報取得部の上方に、橋梁が位置しないぎりぎりの位置で、所定のソナーの向きを調整して、位置情報取得部における位置情報の取得を担保しうる位置で、所定のソナーの計測結果を得ることが可能となる。このことによれば、位置情報取得部により、より正確な位置情報を取得しやすくなる。また、ソナーの計測結果を、正確な位置情報と組み合わせることができ、水中での、より正確な地形の情報を取得しやすくなる。
【0031】
また、角度調節部が、任意の平面上にそれぞれ位置する、X軸及びX軸と角度をなすY軸に対して、X軸を回転軸として所定のソナーの向きを調整するX軸回転部と、Y軸を回転軸として所定のソナーの向きを調整するY軸回転部を有する場合には、X軸とY軸の2つの軸のそれぞれを、回転中心となる軸として、所定のソナーの向きを調整できる。この結果、所定のソナーから発振する超音波の角度を、より自由度高く調整することが可能となり、橋梁や橋脚の形状、または、河川や河床の地形の形状の違いに、幅広く対応しやすくなる。
【0032】
また、任意の平面は水平面に平行であり、所定のソナーの向きを垂直下方に向けた初期状態では、X軸とY軸が直交した関係にある場合には、水平面と平行なX軸と、そのX軸と90度角度が異なるY軸のそれぞれを、回転中心となる軸として、所定のソナーの向きを調整できる。即ち、例えば、枠状の本体の一部を、X軸またはY軸と平行に形成することで、水上から本体を見て、所定のソナーをどちら側に回転させるかが把握しやすくなり、操作性やソナーによる測定の効率を高めることができる。
【0033】
また、位置情報取得部が、複数の測位衛星から衛星信号を受信するための2つのアンテナと、所定の基準局が複数の測位衛星から受信した衛生信号に基づいて生成した補正データを受信するための通信機と、2つのアンテナで受信された衛星信号と通信機で受信された補正データに基づいて、2つのアンテナのうち少なくとも1つのアンテナの位置座標及び本体の方位角を演算する受信機とを有する場合には、所謂、Moving Base方式RTK(Real Time Kinematic)-GNSS(Global Navigation Satellite System)測位に基づき、センチメートルオーダーの精度での、本体または所定のソナーの位置情報と、本体または所定のソナーの方位の情報を正確に取得することが可能となる。これにより、河床の洗堀箇所の正確な位置情報を調査することができる。この位置情報取得部の測位方式では,位置座標が既知の点(既知点)に設置した所定の基準局(GNSS基準局)から、補正データを無線送信し、その補正データを本体側の無線機で受信し、本体側の受信機(GNSS受信機)で、所定の基準局からの相対位置を算出し,既知点の座標と合わせて、本体または所定のソナーの座標を高精度に求めるものである。また、本体側の受信機では、アンテナの位置座標の情報から、本体または所定のソナーの方位角を高精度に計測することが可能となる。このように、位置情報取得部が、Moving Base方式RTK-GNSS測位を採用することで、水中調査装置の本体または所定のソナーの正確な位置情報と、方位の情報を計測して、所定のソナーの計測情報と組み合わせることが可能となる。なお、ここでいう「所定の基準局が複数の測位衛星から受信した衛生信号に基づいて生成した補正データ」とは、インターネット経由の、Ntrip(Networked Transport of RTCM via Internet Protocol)方式で得られる補正データや、地理座標系における座標位置が基地である基準局を設けて、その基準局が複数の測位衛星から受信した衛星信号に基づいて生成した補正データを含むものを意味する。
【0034】
また、第1の制御部と第2の制御部がケーブルで接続された場合には、第1の制御部と、第2の制御部との間で、ケーブルを介して、より安定した情報の送受信が可能となる。また、ケーブルにより本体を吊り下げることができ、橋梁や河岸等から水面側に本体を配置する際に、ケーブルを使って手作業で水上の任意の位置に本体を配置しやすくなる。また、本体を水面側から回収する際に、ケーブルで本体を引っ張り上げることができ、回収作業が容易に行えるものとなる。
【0035】
また、所定のソナーが、扇状の超音波を発するイメージングソナーである場合には、ソナーによる計測処理が、他の種類のソナーに比べて比較的早く、ソナーが多少動いても正確な計測データを得ることができる。また、イメージングソナーを垂直下方や、水平方向に向けることで、水中における垂直断面の形状や、水中を平面視した水平方向の断面(広がり)の形状の情報を取得することができる。
【0036】
また、第2の制御部が、本体の傾きを検知する角度センサを有する場合には、水の流れや風の影響により、水上で本体が動揺しても、角度センサの計測情報に基づき、駆動力発生部を制御して、本体の向きが一定の方向を向くように、本体の向きを維持しやすくすることができる。この結果、本体または所定のソナーの位置情報及び方位角情報をより正確に得られやすくなる。
【発明の効果】
【0037】
本発明に係る水中調査装置は、簡易な機構でありながら、水中に設置された構造物周辺の地形状況を正確に、かつ、効率よく調査することが可能なものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明を適用した水中調査装置の一例である水中調査装置Aの全体構造を示す概略ブロック図である。
図2】水中調査装置Aの移動装置本体と周辺構造を示す概略斜視図である。
図3】(a)は、移動装置本体と周辺構造の概略正面図であり、(b)は、移動装置本体と周辺構造の概略側面図である。
図4】移動装置本体の底面側のジンバル装置及びイメージングソナーと周辺構造を示す概略斜視図である。
図5】スラスタを介した本体の動きの一例を示す概略底面図である。
図6】ジンバル装置及びイメージングソナーを示す概略側面図である。
図7】(a)は、第2アームを介したイメージングソナーの回転の動きを示す概略側面図であり、(b)は、第1アームを介したイメージングソナーの回転の動きを示す概略正面図である。
図8】水中調査装置Aを用いた橋脚及び河床の形状の計測を示す概略イメージ図である。
図9】水中調査装置Aを用いた水中での計測の一例における水槽と測定対象となるブロックの位置関係を示す概略図である。
図10】水中のブロック長さの計測を行う際のソナーの計測範囲とブロックの位置を示す概略断面図である。
図11図10に示す計測でのイメージングソナーでの計測結果を示すイメージ図である。
図12】水中のブロック高さの計測を行う際のソナーの計測範囲とブロックの位置を示す概略断面図である。
図13図12に示す計測でのイメージングソナーでの計測結果を示すイメージ図である。
図14】水中調査装置Aを用いた河川での計測の一例の様子を示す写真図である。
図15】イメージングソナーを垂直下方に向けて超音波を発振した計測結果を示すイメージ図である。
図16】第2アームでイメージングソナーを30°傾けて超音波を発振した計測結果を示すイメージ図である。
図17】第1アームでイメージングソナーを90°傾けて水平方向に超音波を発振した計測結果を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
なお、以下に示す内容は本発明を適用した検査方法の一例及び検査機構の一例であり、本発明の内容はこれに限定されるものではなく、適宜設定変更することが可能である。
【0040】
なお、以下の説明においては、図3(b)を基準に、図中の左側を「前または前方」と称し、図中の右側を「後ろまたは後方」と称する。また、図3(b)を基準に、図中の上側を「上または上方」と称し、図中の下側を「下または下方」と称する。
【0041】
また、図3(b)を基準に、紙面の左右方向を繋ぐ方向を「前後方向またはX軸方向」と称し、紙面の手前側と奥側を繋ぐ方向を「左右方向またはY軸方向」と称する。また、図3(b)を基準に、紙面の上下方向を繋ぐ方向を「上下方向または鉛直方向」と称する。
【0042】
また、図8を基準に、水面より上の範囲を「水上」と称し、水面より下の範囲を「水中」と称する。
【0043】
本発明を適用した水中調査装置の一例である水中調査装置Aは、河川等において、水中の橋脚の形状や河床の地形の形状をソナーで計測し、洗堀状況等を調査するための装置である。
【0044】
図1に示すように、水中調査装置Aは、制御機構1と、本体装置部2と、テザーケーブル3を備えている。
【0045】
ここで、制御機構1は、本体装置部2による計測または駆動等を制御する部分であり、橋梁の上または川岸等の地上Gに配置される部分である。即ち、作業者は、制御機構1を介して、本体装置部2での計測や移動の操作、計測結果の解析等が可能となる。
【0046】
また、本体装置部2は、河川等の水面に配置され、水面上を移動して、各位置でソナーを介して、水中の地形等の形状を計測する部分である。
【0047】
また、テザーケーブル3は、制御機構1と本体装置部2を繋ぎ、情報の送受信を可能にする通信用の接続部材である。なお、ここでいうテザーケーブル3が、本願請求項におけるケーブルに相当する部材である。
【0048】
また、図1に示すように、制御機構1は、計測制御装置10と、通信装置11と、インターネットルーター12を有している。
【0049】
また、計測制御装置10は、本体装置部2による計測または駆動等の制御を担う装置である。なお、ここでいう計測制御装置10が、本願請求項における第1の制御部に相当する。
【0050】
この計測制御装置10を介して、後述するジンバル装置22によるイメージングソナー21の方向の制御、移動装置本体20の移動の制御、ソナーの計測データの画像表示、計測データの記録及びイメージングソナー21の位置情報の記録等が行われる。
【0051】
また、通信装置11は、テザーケーブル3を介して、計測制御装置10と、後述する本体側制御装置25との情報の送受信を可能にする装置である。
【0052】
また、インターネットルーター12は、計測制御装置10及び本体側制御装置25をインターネット回線に接続する部材である。
【0053】
また、インターネットルーター12は、後述する位置情報取得機構によるMoving Base方式RTK-GNSS測位において、インターネット経由のNtrip(Networked Transport of RTCM via Internet Protocol)方式で、GNSSの補正データ(RTK補正信号)を取得するための通信手段である。なお、ここでいうGNSSの補正データ(RTK補正信号)が、本願請求項における所定の基準局が複数の測位衛星から受信した衛生信号に基づいて生成した補正データに相当する。
【0054】
ここで、必ずしも、制御機構1と本体装置部2を繋ぐテザーケーブル3が設けられる必要はなく、無線通信で制御機構1と本体装置部2を接続した態様とすることもできる。但し、安定した情報の送受信が可能となると共に、本体装置部2を水面に配置する作業や、水面から引き上げる作業が容易になることから、制御機構1と本体装置部2を繋ぐテザーケーブル3が設けられることが好ましい。
【0055】
図1に示すように、本体装置部2は、移動装置本体20と、イメージングソナー21と、ジンバル装置22を有している。
【0056】
また、移動装置本体20は、位置情報取得機構23と、移動機構24と、本体側制御装置25を有している。
【0057】
また、イメージングソナー21は、水中で扇状の超音波を発振し、反射した超音波を受信して、水中の構造物や地形の形状を計測する機器である。イメージングソナー21を用いて、対象物の方向と距離及び寸法の計測を行うことができる。
【0058】
また、ジンバル装置22は、イメージングソナー21の向きを調整する装置部材である。即ち、ジンバル装置22は、イメージングソナー21が発振する超音波の方向を調整する部材である。なお、ここでいうジンバル装置22が、本願請求項における角度調節部に相当する。
【0059】
また、位置情報取得機構23は、イメージングソナー21の位置情報及び方位角情報を取得する部分である。なお、ここでいう位置情報取得機構23が、本願請求項における位置情報取得部に相当する。
【0060】
ここで、位置情報取得機構23は、移動装置本体20の位置情報及び方位角情報を取得し、この情報に基づき、イメージングソナー21の位置情報及び方位角情報を算出する態様とすることも可能である。
【0061】
また、移動機構24は、移動装置本体20の水面上での移動または水面上の任意の位置での定点保持を担う部分である。
【0062】
[位置情報取得機構]
図1に示すように、位置情報取得機構23は、GNSSアンテナ230と、GNSSアンテナ231と、GNSSレシーバ232と、GNSSレシーバ233と、コントローラ234と、通信装置235を有している。
【0063】
この位置情報取得機構23は、Moving Base方式RTK-GNSS測位により、イメージングソナー21の位置情報及び方位角情報を測定する機構である。水中調査装置Aでは、位置情報取得機構23が測定したイメージングソナー21の位置情報及び方位角情報を、イメージングソナー21の測定結果と組み合わせることで、ソナーで測定した地形等の正確な位置を把握することができる。なお、ここで、RTKはReal Time Kinematicの略称であり、GNSSはGlobal Navigation Satellite Systemの略称である。
【0064】
また、2つのGNSSアンテナ230及びGNSSアンテナ231は、複数の測位衛星(GNSS衛星)から衛星信号を受信するためのアンテナである。なお、ここでいうGNSSアンテナ230及びGNSSアンテナ231が、本願請求項における2つのアンテナに相当する。
【0065】
また、通信装置235は、テザーケーブル3を介して、通信装置11との間で情報の送受信を可能にする装置である。また、通信装置235は、インターネットルーター12を介して、Ntrip方式でGNSS補正データ(RTK補正信号)を受信する装置である。なお、ここでいう通信装置235が、本願請求項における通信機に相当する。
【0066】
また、GNSSレシーバ232及びGNSSレシーバ233は、2つのGNSSアンテナ230及びGNSSアンテナ231で受信された衛星信号と、通信装置235の無線機で受信されたGNSS補正データ(RTK補正信号)とに基づいて、2つのGNSSアンテナ230及びGNSSアンテナ231の地理座標系(グローバル座標系)における位置座標と、イメージングソナー21の方位角とを演算する受信機である。なお、ここでいうGNSSレシーバ232及びGNSSレシーバ233が、本願請求項における受信機に相当する
【0067】
また、GNSSレシーバ232及びGNSSレシーバ233は、2つのGNSSアンテナ230及びGNSSアンテナ231の地理座標系における位置座標に基づき、イメージングソナー21の地理座標系における位置座標を演算する部分でもある。このイメージングソナー21の地理座標系における位置座標が、イメージングソナー21の位置情報となる。
【0068】
また、GNSSレシーバ232及びGNSSレシーバ233は、後述する本体200の前方に取り付けたGNSSアンテナ230の位置座標と、本体200の後方に取り付けたGNSSアンテナ231の位置座標とを結ぶ線から、イメージングソナー21の方位角情報を算出するように構成されている。
【0069】
また、コントローラ234は、計測制御装置10からの制御信号に基づき、以下の点を制御する部材である。即ち、コントローラ234は、ジンバル装置22によるイメージングソナー21の角度調整、GNSSレシーバ232及びGNSSレシーバ233による演算処理、移動機構24を構成するESC(Electric Speed Controller)241を制御する部材である。
【0070】
ここで、必ずしも、位置情報取得機構23において、GNSSレシーバ232及びGNSSレシーバ233が2か所に設けられる必要はなく、GNSSレシーバ232及びGNSSレシーバ233が一体化した構造を採用することも可能である。
【0071】
[移動装置本体の構造]
図2に示すように、移動装置本体20は、枠状の本体200と、浮力体201を有している。また、本体200には、本体制御装置25と、移動機構24を構成する複数のスラスタ241が取り付けられている。
【0072】
また、本体200は、移動装置本体20を構成する各部材を取り付けるための枠状の基台である。なお、ここでいう本体200が、本願請求項における本体に相当する。
【0073】
また、浮力体201は、内部に空気を収容した容器体であり、本体200を水面上に浮かべるための浮力を付与する部材である。本体200には、2つの浮力体201が取り付けられている(図2及び図3(a)参照)。なお、ここでいう浮力体201が、本願請求項における浮力体に相当する。
【0074】
また、本体側制御装置25は、GNSSレシーバ232及びGNSSレシーバ233、コントローラ234、通信装置235及びESC241で構成されている(図1参照)。また、本体側制御装置25には、テザーケーブル3が接続されている(図2参照)。なお、ここでいう本体側制御装置25が、本願請求項における第2の制御部に相当する。
【0075】
また、本体側制御装置25は、上下方向において、本体200の浮力体201が取り付けられた位置より上方に取り付けられており、水面より上方に位置するように設けられている(図3(a)及び図3(b)参照)。
【0076】
また、本体200の前方側の上部には、GNSSアンテナ230が取り付けられている。また、本体200の後方側の上部には、GNSSアンテナ231が取り付けられている(図2及び図3(b)参照)。
【0077】
また、本体200の底部側には、本体側制御装置25を介して、ジンバル装置22及びイメージングソナー21が取り付けられている(図3(a)、図3(b)及び図4参照)。
【0078】
ここで、本体200の形状は特に限定されるものではなく、浮力体201、本体側制御装置25、ジンバル装置22及びイメージングソナー21を取り付け可能であり、かつ、浮力体201により水面上に浮かべることが可能であれば、形状は適宜設計することが可能である。
【0079】
また、必ずしも、本体200の前方側の上部にGNSSアンテナ230が取り付けられ、本体200の後方側の上部にGNSSアンテナ231が取り付けられる必要はない。2つのGNSSアンテナは、本体200のいずれかの箇所に、互いに距離を設けて配置されれば充分である。但し、イメージングソナー21から見て、その前後方向で2つのGNSSアンテナを配置することで、各GNSSアンテナの位置座標を結んだ線が、イメージングソナー21の方位角を示す情報となり、2つのGNSSアンテナの位置座標が取得できれば、容易に方位角情報を算出することが可能となる。また、例えば、イメージングソナー21から見て、その左右方向で、2つのGNSSアンテナを配置した際には、左右のそれぞれのGSNNアンテナの位置座標を結ぶ線と直行する線が、イメージングソナー21の方位角を示す情報となる。
【0080】
[移動機構]
図1に示すように、移動機構24は、複数のスラスタ240と、各スラスタに対応したESC241を有している。
【0081】
また、スラスタ240は、水面上で移動装置本体20を移動させるための駆動力を生じる推進機である。ESC241は、計測制御装置10及びコントローラ234からの制御信号に基づき、スラスタ240の出力及びスラスタ240を構成するプロペラの回転方向及び回転速度を制御する部材である。
【0082】
より詳細には、図4及び図5に示すように、本体200の底面側における浮力体201より更に下方に、4つのスラスタ240が取り付けられている。また、スラスタ240は、Y軸方向と平行な軸に対して45°傾けた向きで、本体200に固定されている。
【0083】
また、各スラスタ240は図示しないモーターを駆動源としてプロペラを正方向または逆方向に回転させて、水中での駆動力を生じる。また、1つのESC241が1つのスラスタ240を制御するよう構成されている。
【0084】
4つのESC241は、制御信号に基づき、制御下にあるスラスタ240の出力と、そのプロペラの回転方向を制御し、4つのスラスタ240の出力ベクトルの合力となる推力ベクトルの方向を変化させることで、本体200を所望の方向に移動させることが可能となる。
【0085】
例えば、図5に示す例では、図中の左側2つのスラスタ240は、符合F1で示す矢印の方向に出力ベクトルを生じさせ、図中の右側2つのスラスタ240は、符合F2で示す矢印の方向に出力ベクトルを生じさせることで、4つの出力ベクトルの合力は、符合F3で示す矢印の向きに生じ、本体200は図中の右側(符号F3の矢印の方向)に移動することになる。
【0086】
ここで、必ずしも、移動機構24が、本体200に固定されたスラスタ240と、スラスタ240を制御するESC241で構成される必要はない。例えば、本体200にスラスタを回転可能に取り付けて、スラスタの回転の向き及び出力を制御する態様とすることも可能である。但し、より簡易な構造で本体を所望の方向に移動させることができる点から、移動機構24が、本体200に固定されたスラスタ240と、スラスタ240を制御するESC241で構成されることが好ましい。
【0087】
[ジンバル装置]
図3及び図4に示すように、ジンバル装置22は本体側制御装置25の下部に取り付けられている。また、ジンバル装置22は、イメージングソナー21を支持している。
【0088】
このジンバル装置22は、取付フランジ220と、アーム基部221と、第1アーム222と、第2アーム223を有している(図6参照)。
【0089】
また、取付フランジ220は、ジンバル装置22を本体側制御装置25の下部に取り付けるための部材である。アーム基部221は、その上端が取付フランジに固定され、第2アーム223を回転可能に軸支する部分である。
【0090】
また、第1アーム222は、イメージングソナー21を取り付ける部材であり、その両端が第2アーム223に回転可能に軸支されている。第2アーム223は、第1アーム222とアーム基部221を接続する部材である。
【0091】
また、第1アーム222は、イメージングソナー21の向きを垂直下方に向けた初期状態で、X軸方向と平行な向きの回転軸を中心に、イメージングソナー21の向きを回転させる部材である。
【0092】
この第1アーム222の端部は、水中サーボ224に取り付けられ(図6及び図7(a)参照)、第2アーム223に軸支されて回動して、イメージングソナー21の向きを調整可能となっている。
【0093】
この第1アーム222を介したイメージングソナー21の回動では、図7(b)における、イメージングソナー21の先端(超音波の発振部)が垂直下方に向く方向(0度)から、図7(b)における左側を向いた方向、または、図7(b)における右側を向いた方向へと、90度の範囲内で傾きを調整することができる。
【0094】
また、第2アーム223は、Y軸方向と平行な向きの回転軸を中心に、イメージングソナー21の向きを回転させる部材である。また、イメージングソナー21を垂直下方に向けた状態(初期状態)では、第1アーム222の回転軸と、第2アーム223の回転軸は、水平面に略平行な面上に位置し、互いに直行する位置関係にある。
【0095】
この第2アーム223の端部は、水中サーボ225に取り付けられ(図7(b)参照)、アーム基部221に軸支されて回動して、第1アーム222に取り付けられたイメージングソナー21の向きを調整可能となっている。
【0096】
この第2アーム223を介したイメージングソナー21の回動では、図7(a)における、イメージングソナー21の先端(超音波の発振部)が垂直下方に向く方向から、図7(a)における時計回りの方向に回転して、イメージングソナー21の傾きを調整することができる。
【0097】
また、第2アーム223を介した回動の範囲は、第2アーム223の長手方向とX軸方向が平行な向きを0度として、この0度から、X軸方向と第2アーム223の長手方向とがなす角度が30度となる範囲で、回動可能に構成されている。
【0098】
また、水中サーボ224及び水中サーボ225による、第1アーム222及び第2アーム223の回転角度は、計測制御装置10からの制御信号に基づき、コントローラ234を介して制御可能に構成されている。
【0099】
また、図6に示すように、第1アーム222及び第2アーム223のそれぞれを傾けて、イメージングソナー21の向きを調整することも可能である。
【0100】
ここで、必ずしも、ジンバル装置22が、取付フランジ220と、アーム基部221と、第1アーム222と、第2アーム223を有して構成される必要はなく、イメージングソナー21の先端の向きが調整可能であれば、角度調整機構の構造は適宜設定することができる。
【0101】
また、必ずしも、ジンバル装置22が、第1アーム222の回転軸と、第2アーム223の回転軸の、2つの回転軸で角度が調整可能な構造となる必要はない。例えば、イメージングソナー21の向きを調整する回転軸が1つの態様や、回転軸が3つ以上設けられる態様であってもよい。
【0102】
また、必ずしも、イメージングソナー21を垂直下方に向けた状態(初期状態)で、第1アーム222の回転軸と、第2アーム223の回転軸は、水平面に略平行な面上に位置し、互いに直行する位置関係にある必要はない。例えば、各回転軸が、水平面と略平行な面上に位置しない態様や、回転軸同士が直行せず、90度とは異なる角度をなす位置関係にあってもよい。但し、本体200の一部を、X軸またはY軸と平行に形成することで、水上から本体200を見て、イメージングソナー21をどちら側に回転させるかが把握しやすくなり、操作性やソナーによる測定の効率を高めることができる点から、イメージングソナー21を垂直下方に向けた状態(初期状態)で、第1アーム222の回転軸と、第2アーム223の回転軸は、水平面に略平行な面上に位置し、互いに直行する位置関係にあることが好ましい。
【0103】
また、必ずしも、第1アーム222を介したイメージングソナー21の回動範囲が、垂直下方(0度)から左方向または右方向の90度の範囲内に限定されるものではない。例えば、左右方向の90度を超えて、イメージングソナー21の先端が斜め上方に傾くような角度に調整できる態様とすることも可能である。
【0104】
また、必ずしも、第2アーム223を介したイメージングソナー21の回動範囲が、第2アーム223の長手方向とX軸方向が平行な向きを0度として、この0度から、X軸方向と第2アーム223の長手方向とがなす角度が30度となる範囲内に限定されるものではない。例えば、0度からX軸方向と第2アーム223の長手方向とがなす角度が90度となる範囲内で角度を調整できる態様とすることも可能である。
【0105】
[イメージングソナー]
イメージングソナー21は、扇状の超音波を発振可能なソナーであり、スワス角が70度以上かつ130度の範囲内であり、ビーム幅が12度以上かつ20度以内の範囲内で調整可能に構成されている。また、イメージングソナー21は、超音波の最大レンジが40m以上かつ120m以内の範囲内で設定可能である。
【0106】
図7(a)では、イメージングソナー21の先端を垂直下方に向けた状態で、スワス角を130度に設定した際の超音波の照射範囲を示している。また、図7(b)では、イメージングソナー21の先端を垂直下方に向けた状態で、ビーム幅を20度に設定した際の超音波の照射範囲を示している。
【0107】
ここで、必ずしも、水中調査装置Aのソナー部材として、イメージングソナー21が採用される必要はない。例えば、マルチビームソナーを採用することも可能である。但し、マルチ―ビームソナーと比較して低価格でありながら、スキャン速度が比較的速く、測定結果に、測定時の動揺の影響が及びにくいことから、イメージングソナー21が採用されることが好ましい。
【0108】
また、イメージングソナー21のスワス角、ビーム幅及び超音波の最大レンジは特に点綴されるものではなく、適宜選択することが可能である。
【0109】
また、本発明を適用した水中調査装置では、ソナーの計測結果の画像を、AIで識別して、洗堀の有無を自動で判定する態様とすることもできる。これにより、作業者の主観によらず、客観的な評価に基づき、河川等での洗堀の有無を確認することが可能となる。
【0110】
また、本発明を適用した水中調査装置では、ターゲットをレーザー光で照射し、反射光を分析して、対象物までの距離や形状を測定するLiDAR(Light Detection and Ranging)センサも併用して、位置情報を補完する態様が採用しうる。
【0111】
この場合、移動装置本体20にLiDARセンサを搭載して、その測定画像を用いることで、例えば、移動装置本体20と調査対象の橋脚との位置関係が明らかになり、より正確な測定結果を取得することが可能となる。
【0112】
本発明を適用した水中調査装置の一例である水中調査装置Aでは、河川に設置された橋梁における水中の橋脚部分や、橋脚の周辺の河床の地形の形状を、河川の所望の位置で、イメージングソナー21で計測することができる。また、位置情報取得機構23で測定したイメージングソナー21の正確な位置情報及び方位角情報と、ソナーの計測結果を組み合わせることで、計測箇所の正確な位置を取得できる。この結果、各測定位置での計測結果の解析や、複数の計測結果をまとめて地形の2次元データを生成する等して、河床の洗堀状況を正確に調査することが可能となる。
【0113】
例えば、図8に調査のイメージ図を示すが、河川の水面Wに浮かべた移動装置本体20を移動させながら、所望の位置で移動装置本体20を定点保持させ、イメージングソナー21で測定を行う。
【0114】
また、イメージングソナー21は、先端を垂直下方に向けて測定を行うと、垂直断面の形状の情報が取得でき、先端を水平方向に向けて測定を行うと、水面を平面視した水平断面の形状の情報が取得できる。
【0115】
また、図8に示すように、橋梁Bが張り出した構造に対して、ジンバル装置22でイメージングソナー21の傾きを調整することで、移動装置本体20の上方が、橋梁Bで覆われない位置でソナーによる計測をすることができる。
【0116】
即ち、位置情報取得機構23では、複数の測位衛星(GNSS衛星)からの衛星信号を利用するため、GNSSアンテナ230及びGNSSアンテナ231の上方に橋梁等の構造物が存在すると、衛星信号の取得精度に影響が及び、正確な位置座標の演算等ができなくなってしまう。
【0117】
ここで、水中調査装置Aでは、ジンバル装置22でイメージングソナー21の向きを調節して、ソナーが発振する超音波の向きを調整できるため、GNSSアンテナ230及びGNSSアンテナ231の上方が構造物で覆われない位置で、イメージングソナー21による計測が可能となる。この結果、イメージングソナー21の位置情報を正確に取得して、ソナーの計測結果に反映させることができる。
【0118】
図8の事例では、イメージングソナー21の向きを調整しながら、複数の位置で計測をした結果、橋脚のP1部分に対応する垂直断面形状Z1や、橋脚のP2部分に対応する垂直断面形状Z2を、ソナーの計測結果と位置情報から確認することができる。また、同様に、河床の平坦な部分R1の形状や、橋脚の平坦な部分R3の形状、そして、橋脚のP2部分の周辺で、河床の洗堀R2が生じた形状を確認することができる。
【0119】
このように、水中調査装置Aは、簡易な構造でありながら、イメージングソナー21の正確な位置情報と組み合わせて、イメージングソナー21の測定結果を得ることができ、正確な洗堀状況の調査を行うことが可能となっている。
【0120】
また、水中調査装置Aは、移動機構23を介して、河川の所望の位置に移動したり、定点保持したりすることができ、効率よくイメージングソナー21による測定を行うことができる。
【0121】
以上のように、本発明の水中調査装置は、簡易な機構でありながら、水中に設置された構造物周辺の地形状況を正確に、かつ、効率よく調査することが可能なものとなっている。
【0122】
[実施例]
以下、上述した水中調査装置Aを用いた調査の例を説明する。
【0123】
[テスト水槽での測定]
図9に示すテスト水槽100の水底に沈めたブロック101の形状を、水中調査装置Aを用いて計測した。また、テスト水槽100は、外壁部102を有している。また、テスト水槽100は収容空間103を有しており、この収容空間103に水を貯めて、ブロック101を沈めている。
【0124】
また、ブロック101は、長さ390mm、幅190mm、高さ150mmの寸法を有している。なお、図9中では、収容空間103に貯めた水の表示は省略している。
【0125】
本測定では、まず、図10に示す計測状況で、水中調査装置Aをテスト水槽100の水面Wに配置し、ブロック101の直上から、イメージングソナー21で垂直方向の断面形状を測定した。また、イメージングソナー21のスワス角は130度に設定した。図10では、イメージングソナー21の計測範囲を符合Rで示し、水中調査装置Aの記載は省略している。
【0126】
図11において、図10に示す計測状況で測定したイメージングソナー21の計測結果のイメージ図を示す。
【0127】
図11に示すように、イメージ図中では、テスト水槽100の水底にあるブロック101の形状が確認された。また、ブロック101の長さ390mm(0.39m)の寸法が計測できた。また、図11には、テスト水槽100の外壁102の形状も確認された。
【0128】
また、本測定では、図12に示す計測状況で、水中調査装置Aをテスト水槽100の水面Wに配置し、ブロック101の直上から、イメージングソナー21で垂直方向の断面形状を測定した。また、イメージングソナー21のスワス角は130度に設定した。図12も、イメージングソナー21の計測範囲を符合Rで示し、水中調査装置Aの記載は省略している。
【0129】
図13において、図12に示す計測状況で測定したイメージングソナー21の計測結果のイメージ図を示す。
【0130】
図13に示すように、イメージ図中では、テスト水槽100の水底にあるブロック101の形状が確認された。また、ブロック101の高さ150mm(0.15m)の寸法が計測できた。
【0131】
[河川での橋脚周辺の測定]
続いて、河川において水中調査装置Aを用いて、水中の橋脚周辺の構造を調査した事例を示す。
【0132】
図14に示すように、河川の水面に移動装置本体20を浮かべて、橋脚Pの周辺を測定した。なお、図14の符合Lで示す箇所は、水底の形状イメージを示している。また、図15図17に、イメージングソナー21の各測定結果のイメージ図を示す。
【0133】
まず、図15では、水中調査装置Aでイメージングソナー21を垂直下方に向けて測定した測定結果のイメージ図を示している。この測定では、水底Rの形状を示す線のみが確認され、橋脚Pは確認されていない。なお、図15及び図16のイメージ図では、移動装置本体20側から図14に示す符合L側を見た視点の図であり、図14における橋脚Pの位置(図中の左側)と、図15図16における橋脚Pの位置(図中の右側に位置に位置することになる)は、左右反対に位置する構図となる。
【0134】
そこで、ジンバル装置22の第1アーム222を介して、イメージングソナー21の向きを、垂直下方から水平方向に向けて30度傾けて、測定を行った。この測定結果を図16に示す。
【0135】
第1アーム222を介して、イメージングソナー21の向きを傾けたことで、超音波が発振される角度が変わり、図16に示すように、測定結果のイメージ図で、水底Rの形状を示す線に加えて、橋脚Pの形状を示す線を確認することができた。
【0136】
また、図17では、イメージングソナー21を水平方向に向けて計測した結果を示している。図17に示すように、水平方向の断面形状において、
【符号の説明】
【0137】
A 水中調査装置
1 制御機構
10 計測制御装置
11 通信装置
12 インターネットルーター
2 本体装置部
20 移動装置本体
200 本体
201 浮力体
21 イメージングソナー
22 ジンバル装置
220 取付フランジ
221 アーム基部
222 第1アーム
223 第2アーム
224 水中サーボ
225 水中サーボ
23 位置情報取得機構
230 GNSSアンテナ
231 GNSSアンテナ
232 GNSSレシーバ
233 GNSSレシーバ
234 コントローラ
235 通信装置
24 移動機構
240 スラスタ
241 ESC
25 本体側制御装置
3 テザーケーブル
100 テスト水槽
101 ブロック
102 外壁部
103 収容空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17