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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172960
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】駐車支援装置および駐車支援方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/06 20060101AFI20241205BHJP
   B60W 50/10 20120101ALI20241205BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B60W30/06
B60W50/10
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091045
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 竜太郎
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA22
3D241BA60
3D241CE04
3D241CE05
3D241DA52Z
3D241DB02Z
3D241DB32Z
3D241DC35Z
5H181AA01
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC24
5H181FF24
5H181FF25
5H181FF27
5H181FF33
5H181FF39
5H181KK01
5H181KK08
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL17
(57)【要約】
【課題】短い時間でスムーズに自動駐車を行うことが可能な駐車支援装置および駐車支援方法を提供する。
【解決手段】駐車支援装置は、乗員が駐車位置の指定を示す所定の操作を行ったことを検出することで、乗員の駐車指示を受け付ける指示検出部と、指示検出部が駐車指示を受け付けた時点の車両位置から進行方向に予め設定された距離離れた位置に基づく範囲の左右のエリアの少なくとも一方を、乗員の駐車指示に対応する指定駐車枠として記憶する指定駐車枠記憶部と、車両の周辺を示す周辺画像に基づいて、指定駐車枠記憶部に記憶された指定駐車枠に該当する駐車枠を検知する駐車枠検知部と、駐車枠検知部が該当する駐車枠を検知したときに、該当する駐車枠の情報に基づいて車両の自動駐車を行う車両制御部と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が駐車位置の指定を示す所定の操作を行ったことを検出することで、前記乗員の駐車指示を受け付ける指示検出部と、
前記指示検出部が前記駐車指示を受け付けた時点の車両位置から進行方向に予め設定された距離離れた位置に基づく範囲の左右のエリアの少なくとも一方を、前記乗員の駐車指示に対応する指定駐車枠として記憶する指定駐車枠記憶部と、
車両の周辺を示す周辺画像に基づいて、前記指定駐車枠記憶部に記憶された前記指定駐車枠に該当する駐車枠を検知する駐車枠検知部と、
前記駐車枠検知部が前記該当する駐車枠を検知したときに、前記該当する駐車枠の情報に基づいて前記車両の自動駐車を行う車両制御部と、
を備える、
駐車支援装置。
【請求項2】
前記周辺画像に係る表示画像を生成する表示画像生成部をさらに備え、
前記表示画像生成部は、前記乗員が駐車を所望する駐車枠の位置を指定する目安とするための駐車枠ラインを前記表示画像に重畳する、
請求項1に記載の駐車支援装置。
【請求項3】
前記乗員が駐車を所望する駐車枠の位置を指定する目安とするための駐車枠ラインの表示を前記車両の前方の路面に投影する投影部をさらに備える、
請求項1に記載の駐車支援装置。
【請求項4】
前記車両の速度に応じて前記駐車枠ラインの位置を補正する補正部をさらに備える、
請求項2または請求項3に記載の駐車支援装置。
【請求項5】
前記車両の前後方向の傾斜を検出する車両傾斜検出部と、
前記車両傾斜検出部により検出された傾斜に応じて前記駐車枠ラインの位置を補正する補正部と、
をさらに備える、
請求項2または請求項3に記載の駐車支援装置。
【請求項6】
前記車両の速度に応じて前記駐車枠ラインの表示/非表示を切り替える切替部をさらに備える、
請求項2または請求項3に記載の駐車支援装置。
【請求項7】
前記指示検出部は、前記車両の速度によって前記乗員による駐車枠の位置の指定の受け付け可否を判定する、
請求項1に記載の駐車支援装置。
【請求項8】
前記指示検出部は、前記乗員による、駐車支援の開始操作に基づいて指示検出の動作を開始する、
請求項1に記載の駐車支援装置。
【請求項9】
前記指示検出部は、指示検出の動作を開始してから、前記乗員による駐車枠の位置の指定を受け付けた回数に応じて、前記指示検出の動作を終了する、
請求項1に記載の駐車支援装置。
【請求項10】
前記指示検出部は、指示検出の動作を開始してからの前記車両の走行距離に応じて、前記指示検出の動作を終了する、
請求項1に記載の駐車支援装置。
【請求項11】
前記指示検出部は、指示検出の動作を開始してからの経過時間に応じて、前記指示検出の動作を終了する、
請求項1に記載の駐車支援装置。
【請求項12】
前記所定の操作は、前記乗員による方向指示器の操作である、
請求項1に記載の駐車支援装置。
【請求項13】
前記指示検出部は、前記方向指示器の操作が、前記駐車指示を示す操作および、前記車両の右左折にともなう操作の何れかであるかを判定する、
請求項12に記載の駐車支援装置。
【請求項14】
車両の自動駐車に関する駐車支援方法であって、
乗員が駐車位置の指定を示す所定の操作を行ったことを検出することで、前記乗員の駐車指示を受け付けるステップと、
前記駐車指示を受け付けた時点の車両位置から進行方向に予め設定された距離離れた位置に基づく範囲の左右のエリアの少なくとも一方を、前記乗員の駐車指示に対応する指定駐車枠として記憶するステップと、
車両の周辺を示す周辺画像に基づいて、記憶した前記指定駐車枠に該当する駐車枠を検知するステップと、
前記該当する駐車枠を検出したときに、検知した駐車枠の情報に基づいて前記車両の自動駐車を行うステップと、
を有する、
駐車支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、駐車支援装置および駐車支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駐車枠の周辺の所定の位置で車両を転舵させて、所定角転向した位置から後退走行することで車両を駐車枠に自動駐車させることが可能な駐車支援装置が知られている。例えば、特許文献1には、駐車枠に車両を横付けして駐車支援装置を起動し、駐車枠における車両の駐車位置を一意に決める構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-69161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術の構成では、駐車支援装置を起動した後で、駐車枠の検知を行い、駐車に際して車両が通過する領域の安全確認を求める必要があるので、通路上で車両が滞留する時間が長くなる。その結果、全体として駐車に要する時間が長くなり、駐車支援装置を操作している間に、後続車からクラクションを鳴らされることもある。
【0005】
本開示の目的は、短い時間でスムーズに自動駐車を行うことが可能な駐車支援装置および駐車支援方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る駐車支援装置は、
乗員が駐車位置の指定を示す所定の操作を行ったことを検出することで、前記乗員の駐車指示を受け付ける指示検出部と、
前記指示検出部が前記駐車指示を受け付けた時点の車両位置から進行方向に予め設定された距離離れた位置に基づく範囲の左右のエリアの少なくとも一方を、前記乗員の駐車指示に対応する指定駐車枠として記憶する指定駐車枠記憶部と、
車両の周辺を示す周辺画像に基づいて、前記指定駐車枠記憶部に記憶された前記指定駐車枠に該当する駐車枠を検知する駐車枠検知部と、
前記駐車枠検知部が前記該当する駐車枠を検知したときに、前記該当する駐車枠の情報に基づいて前記車両の自動駐車を行う車両制御部と、
を備える。
【0007】
本開示に係る駐車支援方法は、
車両の自動駐車に関する駐車支援方法であって、
乗員が駐車位置の指定を示す所定の操作を行ったことを検出することで、前記乗員の駐車指示を受け付けるステップと、
前記駐車指示を受け付けた時点の車両位置から進行方向に予め設定された距離離れた位置に基づく範囲の左右のエリアの少なくとも一方を、前記乗員の駐車指示に対応する指定駐車枠として記憶するステップと、
車両の周辺を示す周辺画像に基づいて、記憶した前記指定駐車枠に該当する駐車枠を検知するステップと、
前記該当する駐車枠を検知したときに、前記該当する駐車枠の情報に基づいて前記車両の自動駐車を行うステップと、
を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、短い時間でスムーズに自動駐車を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態に係る駐車支援装置を適用可能な車両を示す図である。
図2】駐車支援装置が適用されるシステムのネットワーク上の構成を示す図である。
図3】駐車支援装置の機能を実装したハードウェアを示すブロック図である。
図4】駐車支援装置を示すブロック図である。
図5】駐車支援装置における駐車支援制御の動作例を示すフローチャートである。
図6】駐車支援制御中のHMI装置の表示例を示す図である。
図7】駐車支援制御中のHMI装置の表示例を示す図である。
図8】駐車支援制御中のHMI装置の表示例を示す図である。
図9】駐車支援制御中のHMI装置の表示例を示す図である。
図10】駐車支援制御中のHMI装置の表示例を示す図である。
図11】駐車支援制御中のHMI装置の表示例を示す図である。
図12】駐車支援制御中のHMI装置の表示例を示す図である。
図13】駐車支援制御中のHMI装置の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態)
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本実施の形態に係る駐車支援装置100を適用可能な車両1を示す図である。
【0011】
図1に示すように、車両1は、車両1の周辺を示す周辺画像を用いて自動駐車に関する制御を行うための駐車支援機能を有する。駐車支援機能は、例えば、乗員から駐車位置の指定を車両1が受け付けた後、乗員が指定した位置に該当する駐車枠を車両1が検知し、その後、該当する駐車枠の情報に基づいて経路を生成して自動駐車を行う機能である。
【0012】
車両1の車体の前後左右の4箇所には、周辺画像を撮像可能なカメラ2が設けられている。各カメラ2は、魚眼レンズを備えており、水平方向に180度以上の視野範囲(破線参照)をもつ。各カメラ2は、路面をとらえるために俯角を付けて装着されているので、路面が映る範囲を水平方向の視野に換算すると、240度程度の範囲の路面が1つのカメラ2に映る。例えば、車体の左右に設けられるサイドカメラ2Aの撮影画像には、前輪と後輪と、車体の側面とが映りこむ。
【0013】
また、図2に示すように、車両1は、4つのカメラ2の他、操作装置10と、HMI(ヒューマンマシンインターフェース)装置20と、車両制御装置30と、駐車支援装置100とを備える。操作装置10は、運転者(乗員)が手動で操作するためのものであり、運転席のパネル上の物理的なスイッチ、タッチパネル上に表示されたソフト的なスイッチの他、ステアリング、ペダル、ギヤのような運転操作のためのものを含む。HMI装置20は、例えば、車両1に設けられるナビゲーション装置40に付属するタッチパネル等、乗員が駐車支援装置100へ操作入力するためのHMIとして利用される。タッチパネルは、操作装置10に含まれても良いし、運転席に接地された各種のスイッチ類も操作装置10に含まれても良いので、操作装置10およびHMI装置20は、重複したものであっても良い。
【0014】
車両制御装置30は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)および入出力回路を備えている。乗員が、ステアリングやペダル等の操作装置10を操作すると、車両制御装置30は、操作を受け付ける。通常の運転モードでは、操作の情報に応じて、車両制御装置30がモーター(不図示)を駆動することにより、舵角や車速を制御すると同時に、操作の情報と舵角や車速等の車両情報をLAN(Local Area Network:車内LAN等)に出力する。駐車支援モードになると、車両制御装置30は、LAN経由で速度や舵角の指令を駐車支援装置100から受け、指令に応じて速度や舵角を制御する。
【0015】
駐車支援装置100は、車両制御装置30が操作装置10の動作を監視していることから、操作装置10の操作情報をLAN経由で取得する。乗員は、HMI装置20を介して、駐車支援装置100を操作可能である。駐車支援装置100は、ナビゲーション装置40が出力する車両1の位置情報をLAN経由で受信しても良いし、ナビゲーション装置40から直接、取得しても良い。カメラ2は、撮影画像を駐車支援装置100に常時出力しており、駐車支援をしない時も、駐車支援装置100は、撮影画像から車両周辺を示す表示画像を生成して出力する。また、上記のタッチパネルは、駐車支援装置100が生成した表示画像を出力するディスプレイとしても機能するので、駐車支援装置100とHMI装置20とは直結している。駐車支援装置100は、タッチパネルに行われた操作の情報を直接受信しても良いし、LAN経由で受信するようにしても良い。また、駐車支援装置100は、ナビゲーション装置40が出力する車両1の位置情報をLAN経由で受信することができる。
【0016】
また、駐車支援装置100の機能は、図3に示すハードウェアに実装されても良い。駐車支援装置100は、CPU101、ROM102、RAM103、I/O(入出力インターフェース)104およびIMP(Image Processor)105を備える。駐車支援装置100は、各要素をバスで接続するコンピュータでも良い。また、複数の要素が一つのチップに収容されていても良いし、一つの要素が複数のチップで構成されていても良い。バスは、単独ではなく、複数の種類のバスが組み合わされたものでも良い。例えば、一つのチップに収容されたCPU101、ROM102、RAM103およびIMP105がパラレルバスで接続され、複数のチップで構成されたI/O104が、CPU101等を収容したチップとシリアルバスで接続されるようにしても良い。
【0017】
CPU101は、駐車支援装置100全体を制御する。ROM102は、電気的に書き換え可能なメモリであり、CPU101が実行するプログラムを記憶するとともに、不揮発なデータ保存領域としても機能し、駐車支援装置100の電源が切られてもデータ等を保持する。RAM103は、CPU101の作業領域として一時記憶に用いられる。例えば、最新の周辺画像のように、一時的に記憶できれば良いデータは、RAM103に記憶される。RAM103は、周辺画像を複数枚、記憶可能な容量を持つ。IMP105は、画像処理に特化して処理性能を上げたプロセッサであり、図4に示す画像取得部150、駐車枠検知部160、表示画像生成部190の処理を実行する。
【0018】
上述のカメラ2は、撮影したカメラ画像を駐車支援装置100に常時、出力している。駐車支援装置100は、駐車支援をしない時もカメラ画像から車両1周辺を示す表示画像を生成して出力する。図4に示すように、駐車支援装置100は、操作受付部110と、指示検出部120と、指定駐車枠記憶部130と、状態管理部140と、画像取得部150と、駐車枠検知部160と、経路計算部170と、駐車枠ライン計算部180と、表示画像生成部190と、走行制御部200と、記憶部210と、を有する。
【0019】
操作受付部110は、運転操作を含む乗員の操作を示す操作情報を受け付ける。乗員の操作は、運転者の操作に限定されず、例えば、運転者以外の同乗者によるボタン操作等も含んでいても良い。
【0020】
指示検出部120は、乗員により、駐車支援制御の開始を示す開始操作が行われたことを検出する。開始操作は、例えば、操作装置10における駐車支援開始のスイッチの操作であっても良い。また、開始操作は、例えば、画面操作、音声指示等、操作装置10を介して駐車支援制御を開始させる操作である限り、どのような操作でも良い。指示検出部120は、例えば、駐車支援開始のスイッチ操作を検出した時に、駐車支援開始の指示と判定する。つまり、指示検出部120は、乗員による、駐車支援の開始操作に基づいて、指示検出の動作を開始する。
【0021】
なお、駐車支援装置100は、乗員の操作ではなく、自律的に駐車支援制御を開始するようにしても良い。例えば、駐車支援装置100は、車両1の周囲環境(例えば、車両の列、駐車枠の列等)や車両1の状態(車速が所定速度(例えば、10km/h以下)等)によって駐車支援開始の判定を行うようにしても良い。また、乗員の開始操作と、駐車支援装置100による自律的な駐車支援開始の判定とが組み合わされても良い。
【0022】
また、指示検出部120は、乗員の駐車エリアの指定(駐車指示)を示す所定の操作が行われたことを検出する。駐車エリアの指定を示す所定の操作は、方向指示器(ウインカーレバー)の操作であっても良い。指示検出部120は、乗員の方向指示器の操作を検出することで、駐車指示を受け付ける。
【0023】
なお、所定の操作は、方向指示器の操作に限定されない。例えば、所定の操作は、ハザードスイッチ操作、専用のスイッチ操作、画面操作、音声指示、ステアリング操作、ペダル操作等であっても良い。また、所定の操作は、これらの操作の複数を組み合わせた操作(例えば、乗員がブレーキペダルを操作しながら方向指示器を操作する等)であっても良い。
【0024】
指定駐車枠記憶部130は、乗員によって指定されるエリアの位置を記憶する。具体的には、指定駐車枠記憶部130は、指示検出部120が駐車指示を受け付けた時点の車両位置から、車両1の進行方向に所定距離離れた位置(例えば、後述する駐車枠ライン)に基づくエリアを指定駐車枠として記憶する。指定駐車枠は、乗員が期待する駐車枠を検知すべき範囲を示しており、指定駐車枠の中で検知した駐車枠を、指定駐車枠に該当する駐車枠と呼ぶ事があるが、指定駐車枠は、必ずしも一つの駐車枠を指すものではなく、一つ以上の駐車枠が検知される事を乗員が期待する範囲を指す。また、指定駐車枠は一つの位置(例えば、車両の進行方向の特定の距離にある点)と、その位置を起点とする方向(例えば、進行方向に対する左右)で指定され、一つの駐車枠を指す様に指定されても良い。
【0025】
車両位置から所定距離離れた位置に基づく範囲に対応するエリアは、例えば、車両1から所定距離離れた位置における、車両1の前方の通路部分の左右方向の両側のうちの少なくとも一方のスペース(駐車枠の範囲)であっても良い。具体的には、車両1の前方の通路Rにおける、後述する駐車枠ラインLの部分の左右両側の駐車枠Sのうちの少なくとも一方の範囲であっても良い(図6等参照)。
【0026】
所定距離は、予め設定された距離であり、適宜設定可能である。所定距離は、例えば、車両1のフロントガラスを介して、車両1の前方にある駐車枠線の端部を乗員が視認できる程度の距離(例えば、10m等)であっても良い。また、所定距離は、上記の駐車枠線の端部が見えている駐車枠に車両1が自動駐車するための駐車経路を駐車支援装置100が直ちに計算可能な程度に車両1から近い距離であっても良いし、駐車支援装置100が駐車経路を計算不能な程度に車両1から離れた距離であっても良い。
【0027】
状態管理部140は、操作情報や、車両の状態に応じて、駐車支援の状態(ステート)を管理する。また、状態管理部140は、駐車支援に関する状態(モード)を管理する。駐車支援制御開始後の状態(モード)は、例えば、待機モード、駐車枠検知モード、自動駐車モードを含む。
【0028】
待機モードは、駐車支援制御が開始されてから乗員からの駐車指示を受け付ける前の状態である。駐車指示は、乗員が駐車を所望する駐車枠の位置の指示または、駐車位置の範囲の指示を含むので、駐車枠指定とも呼ぶ。待機モードでは、後述する駐車枠ラインが表示され、乗員からの駐車指示を指示検出部120が受け付けたら、駐車枠検知モードに、状態が遷移される。また、待機モード時に、乗員による駐車支援制御のキャンセル操作がされた場合、駐車支援制御が終了しても良い。
【0029】
駐車枠検知モードは、乗員から指定されたエリアにある駐車枠の検知を、駐車支援装置100が実行している状態である。駐車枠検知モードでは、乗員により、車両1の走行操作がされた状態で、駐車支援装置100が駐車枠の検知を行い、駐車枠が検知されたら、HMI装置20に駐車枠が表示され、状態が自動駐車モードに遷移される。また、駐車枠検知モード時に、乗員から指定されたエリアで駐車枠が検知されなかった場合、状態が待機モードに遷移する。また、駐車枠検知モード時に、乗員による駐車支援制御のキャンセル操作がされた場合、駐車支援制御が終了しても良い。
【0030】
なお、駐車枠検知モードでは、自動走行状態で、駐車支援装置100による駐車枠の検知が行われても良い。
【0031】
自動駐車モードは、駐車支援装置100が検知した駐車枠の位置情報に基づいて、駐車経路を生成して、生成した駐車経路に従って自動駐車が実行される状態である。自動駐車が正常に完了したら、駐車支援制御が終了する。また、自動駐車モード時に、乗員による駐車支援制御のキャンセル操作がされた場合、駐車支援制御が終了しても良い。
【0032】
画像取得部150は、カメラ画像を取得して、車両1周辺を示す周辺画像を生成する。周辺画像は、カメラ画像を路面に投影した俯瞰画像であっても良いし、別の形式の画像であっても良いし、カメラ画像のままでも良い。
【0033】
駐車枠検知部160は、周辺画像の中に、駐車枠を検知する駐車枠検知領域を設定し、駐車枠検知領域内の周辺画像から、白線を抽出する。駐車枠検知領域は、周辺画像全体の領域であっても良いが、周辺画像における、駐車枠を期待する領域、つまり、乗員から指定されたエリアに対応する領域であっても良い。駐車枠検知領域が駐車枠を期待する領域に限定されることで、検知に要する処理時間を短くすることができる。
【0034】
駐車枠検知部160は、さらに、抽出した白線の対を生成し、白線の対のうち、駐車枠の条件に合うものを探索する。例えば、駐車枠検知部160は、周辺画像から白線の対を検出した時に、2本の白線が路面上で平行であること、2本の白線が車長より長いこと、2本の白線の間隔が車幅より大きいこと、の三つの条件が成立する場合、2本の白線で挟まれた領域が、車両1を駐車可能な領域(すなわち駐車枠)である、と判定する。駐車枠を検知した場合、駐車枠を構成する白線は、駐車枠線であると言える。駐車枠内に駐車車両がある場合、一つのカメラに対して、少なくとも一方の駐車枠線は駐車車両によって部分的に遮蔽されるので、車長より長い白線の対は検出されない。すなわち、検知された駐車枠は、駐車車両がない駐車可能な駐車枠であると言える。駐車枠検知部160は、2本の駐車枠線の端点、つまり、駐車枠の4隅の座標を出力する。この座標は、自車両を基準とする相対座標である。
【0035】
また、駐車枠検知部160は、指定駐車枠記憶部130で記憶されたエリアを検知範囲としても良い。つまり、駐車枠検知部160は、車両1の周辺画像に基づいて、指定駐車枠記憶部130に記憶されたエリアの中で駐車枠検知を行う。これを、指定駐車枠に該当する駐車枠を検知する、と言い換えても良い。
【0036】
経路計算部170は、駐車枠検知部160が出力した駐車可能な領域の四隅の座標の中央に、車体の中央が収まるよう目標駐車位置を設定し、かつ、駐車可能な領域の長辺と平行になるように、目標駐車角(目標駐車位置に駐車した時の車体の向き)を設定して、目標駐車位置までの駐車経路を計算する。駐車経路計算は、提案されている公知の方法を適用すれば良い。
【0037】
駐車枠ライン計算部180は、乗員が駐車を所望する駐車位置を指定する目安とするための駐車枠ラインの位置(HMI装置20における表示位置)を計算する。駐車枠ラインは、HMI装置20において、車両位置から所定距離離れた位置における、車両1の前方の通路部分に対応する位置に表示されるラインである。
【0038】
なお、駐車枠ラインの表示位置は、常に車両1に対する距離が同じになるような位置(予め設定された所定距離に対応する位置)で設定されても良いが、例えば、車両1の速度に応じて、異なるように設定されても良い。つまり、駐車枠ライン計算部180(補正部)は、車両1の速度に応じて、駐車枠ラインの位置を補正しても良い。例えば、車両1の速度が所定速度より速い場合、駐車枠ラインの表示位置が所定距離よりも遠くなるように設定されても良いし、車両1の速度が所定速度より遅い場合、駐車枠ラインの表示位置が所定距離より近くなるように設定されても良い。また、車両1の速度に応じた駐車枠ラインの表示位置は、乗員の好みに応じて、変更(切替)可能であっても良い。
【0039】
駐車枠ラインの幅(車両1の進行方向における長さ)は、予め設定された幅(所定幅)であっても良いし、車両1の速度に応じて異なるようにしても良い。例えば、駐車枠ラインの幅は、車両1の速度が所定速度より速い場合、所定幅より長くなるように設定されても良いし、車両1の速度が所定速度より遅い場合、所定幅より短くなるように設定されても良い。また、車両1の速度に応じた駐車枠ラインの幅は、乗員の好みに応じて、変更(切替)可能であっても良い。
【0040】
また、所定幅は、1台の車両が駐車可能な駐車枠に対応する幅であっても良い。つまり、乗員が駐車を所望する駐車枠の位置を、一か所だけに特定できる様にしても良い。
【0041】
また、駐車枠ラインは、特定の位置を通る線で表示されても良い。この場合、駐車枠ラインを基準として、予め設定された距離分の範囲が、駐車指示の範囲であっても良い。例えば、駐車支援装置100は、駐車枠ラインから、3m遠方の位置までを、駐車指示の範囲としても良い。また、駐車支援装置100は、駐車枠ラインの前後2mの範囲を、駐車指示の範囲としても良い。
【0042】
表示画像生成部190は、カメラ画像または周辺画像に基づいて表示画像を生成する。表示画像は、車両1の周辺を上方から俯瞰する俯瞰画像であっても良い。つまり、表示画像生成部190は、周辺画像を表示画像として出力しても良い。
【0043】
表示画像生成部190は、状態管理部140の要求に応じて、表示画像にメッセージや図形を重畳して表示する。例えば、表示画像生成部190は、自動運転制御を開始する際には、駐車枠検知部160が検知した駐車枠の位置を、俯瞰画像上に半透過の四角形(長方形や平行四辺形等)を重畳して表示し、経路計算部170が算出した車両1から目標駐車位置に向かう経路を点線で表示させても良い。
【0044】
また、表示画像生成部190は、メッセージを画像上に表示するだけでなく、音声で読み上げても良いし、音声だけでメッセージを出力しても良い。具体的には、状態管理部140は、予め設定されたテキストの一つを選択して出力するように表示画像生成部190に指令する。これに応じて表示画像生成部190は、選択されたテキストに対応する文字列の画像を生成して、これを表示画像に重畳してHMI装置20に出力すると同時に、テキストとともに保存されていた音声データを表示画像と併せてHMI装置20に出力する。これにより、乗員は、HMI装置20を見ていなくても、メッセージを認識することができる。
【0045】
表示画像生成部190は、状態管理部140の要求に応じて、乗員が駐車を所望する駐車位置を指定するときに目安とする駐車枠ラインを表示画像に重畳して表示する。
【0046】
駐車枠ラインを重畳して表示する画像は、カメラ画像、周辺画像に基づいた表示画像でも良いし、俯瞰画像でも良い。駐車枠ラインの形状は、長方形、台形、2本の線等でも良い。また、表示画像生成部190は、駐車枠ラインに対応する左右のそれぞれの駐車枠にマーク等を重畳して表示しても良い。
【0047】
走行制御部200は、算出された駐車経路に沿って車両1が走行するように、舵角および車速を制御する。より具体的には、走行制御部200は、舵角および車速の目標値に従った、舵角および車速の指示値を車両制御装置30に出力する。走行制御部200は、車両制御装置30が出力するデータに基づいて舵角および車速の実測値を算出する。例えば、車速の実測値は、車輪の回転数のデータと、車輪の外周長のデータと、から算出される。舵角の実測値は、操舵装置から得られたデータであっても良いし、車輪の回転数の差から算出された内輪差から算出されても良い。走行制御部200は、目標値と実測値との差がある時に、舵角および車速の実測値が、舵角および車速の目標値と同じになるように、舵角および車速の指示値を補正する。
【0048】
走行制御部200は、算出した舵角および車速の実測値に基づいて、走行中の車両1の位置および向きを追跡する。つまり、走行制御部200は、自動走行中または手動走行中に、車両1の走行軌跡を算出する。走行軌跡は、単位時間毎に、移動距離と移動方向と車体の角度とを、時刻に加えた移動情報の形式で算出されても良い。移動情報の形式は、これに限定されず、例えば、座標情報を用いた形式でも良い。
【0049】
走行制御部200は、自動走行中、経路計算部170が算出した駐車経路と、移動情報で表される走行軌跡とを比較して、走行軌跡が駐車経路を辿るように舵角を補正する。例えば、車両1が、舵角を付けて旋回しながら走行する際に、旋回の中心点から見て、走行軌跡が駐車経路よりも外側を通っている時に、走行制御部200は、舵角を増やして回転半径を小さくする。これにより、車両1の走行軌跡が駐車経路の方に引き戻される。
【0050】
記憶部210は、操作受付部110が取得した操作情報、走行制御部200が計算した移動情報、画像取得部150が生成した周辺画像、駐車枠検知部160が検出した駐車枠線や駐車枠の位置情報等を時系列的に、時刻に紐付けて、履歴情報領域に記憶する。車両1は、乗員の操作に応じて移動するので、移動情報と操作情報のうち一方が記憶部210に記憶されなくても良いが、本実施の形態では、移動情報および操作情報の両方が記憶部210に記憶される。
【0051】
記憶部210は、例えば、情報の追記を単位時間毎に行い、1回の追記に割り当てる記憶領域の大きさ(メモリブロックサイズ)を固定しても良い。そうすると、履歴情報領域はメモリブロックに分割され、情報の先頭番地が単位時間毎に単調増加するので、情報を記憶する番地に時刻が紐付けされる。または、記憶部210は、メモリサイズを固定せずに、先頭番地を時刻に紐付ける先頭番地テーブルを別に設け、情報を追記する毎に先頭番地テーブルを更新するようにしても良い。
【0052】
何れかの方法で、時刻を特定すれば、その時点で最新だった情報にアクセスすることができる。また、その時点までの移動情報を積算すれば、その時点での位置の、現在位置に対する相対的な位置関係を特定することもできる。逆に、位置情報を時系列的に追記して履歴情報としておき、その時点での位置情報と現在位置の差分から、現在位置に対する相対的な位置関係を特定しても良い。つまり、履歴情報から位置情報を算出することができる。
【0053】
また、周辺画像のようにサイズが大きいデータは、先頭番地だけを履歴情報領域に記憶すれば良い。
【0054】
履歴情報は、所定の時間だけ遡って参照できれば良いので、必要がなくなった古い履歴情報は記憶部210から消去しても良い。例えば、履歴情報領域を先頭番地と最終番地で挟まれる固定の領域として記憶部210に設定し、情報を記憶する番地が最終番地に達したら、先頭番地に記憶を続けるループメモリにすると良い。そうすれば、ループを1周遡った過去の履歴情報が上書きされて消去されるので、消去の処理が必要なくなる。
【0055】
また、記憶部210は、経路計算部170が計算した駐車経路を記憶し、走行制御部200が駐車経路を参照できるようにする。
【0056】
次に、本実施の形態に係る駐車支援制御の詳細について説明する。図5は、駐車支援装置100における駐車支援制御の動作例を示すフローチャートである。
【0057】
まず、車両1が駐車場内を走行中において、乗員が駐車支援開始のスイッチ操作をしたとする。この場合、駐車支援装置100は、駐車支援制御開始の操作を検出する(ステップS101)。そうすると、駐車支援装置100は、HMI装置20における表示画像に、駐車枠ラインを表示する(ステップS102)。
【0058】
例えば、図6に示すように、Y方向に延びる通路Rの両側に、複数の駐車枠Sが並ぶ駐車場があったとする。各駐車枠Sは、通路Rの、Y方向に垂直なX方向の両側に位置したスペースである。図6等では、X方向の+側または-側に向かうにつれY方向の+側に位置するように傾斜する方向に沿って車両1を駐車可能なスペースが駐車枠Sとして例示されている。また、図6等には、HMI装置20の表示画像が例示されている。具体的には、HMI装置20には、俯瞰画像(図6の左側の画像)とともに、車両1の前方を示す車両周辺画像(図6の右側の画像)が表示されていても良い。
【0059】
この駐車場において、車両1が通路RをY方向の+側に向けて走行しているときに,乗員が、駐車支援開始のスイッチ操作をすると、状態管理部140に管理される状態が、待機モードとなり、HMI装置20の表示画像に駐車枠ラインLが重畳表示される。駐車枠ラインLは、車両1のY方向の-側(前方)から3つの駐車枠Sに相当する距離離れた位置に表示されている。
【0060】
車両1が進行すると、駐車枠ラインLは移動しないが、車両の前進に応じて車両周辺画像は移動するので、駐車枠ラインLは車両周辺画像に対して相対的に移動する。乗員は、駐車枠ラインLがHUDで投影された像と駐車を所望する駐車枠Sの位置関係をフロントガラス越しに視認するか、または、HMI装置20に表示された車両周辺画像に重畳された駐車枠ラインLと、駐車を所望する駐車枠Sとの位置関係を視認するか、しながら車両1を走行させる。
【0061】
そして、乗員は、HMI装置20において、所望する駐車枠S(駐車車両がない駐車枠)のY方向の位置と駐車枠ラインLのY方向の位置とが重なった時に、乗員は、方向指示器を操作して、駐車指示を行う。この場合、駐車指示は一つの駐車枠を指定しているので、駐車指示操作をする事を、駐車枠を指定する、と言い換えても良い。図6の例において、例えば、通路RのX方向の-側における、駐車車両がない駐車枠を乗員が指定する場合、方向指示器は、車両1のX方向の-側に向けて車両1が旋回する方向に操作されても良い。
【0062】
ステップS102の後、駐車支援装置100は、駐車枠の指定があったか否かについて判定し(ステップS103)、上記のように、乗員から駐車指示の操作があった場合、駐車枠指定があったと判定する(ステップS103、YES)。また、乗員から駐車指示の操作がない場合、駐車支援装置100は、駐車枠指定がないと判定し(ステップS103、NO)、ステップS103の処理が繰り返されても良い。
【0063】
なお、待機モードの際に、HMI装置20では、車両1を徐行させる案内、駐車枠ラインLと駐車枠Sとを重ねる旨の案内、駐車枠を指定する操作(方向指示器の操作等)を促す旨の案内が、表示または音声出力されても良い。図7には、「駐車枠を指定してください」と、駐車枠を指定する操作を促す旨の案内がされている例が示されている。このとき、HMI装置20の表示画像に駐車枠ラインLが重畳表示される。駐車枠ラインLはHUDでフロントガラスに投影しても良い。車両1が進行すると、駐車枠ラインLは移動しないが、車両前方を映した画像、または、車両前方の実像が移動し、それに応じて駐車枠ラインLとの相対位置が変わる。乗員は、所望の位置に駐車枠ラインLが重なった時に駐車指示を行う事により、所望の位置を駐車位置に指定できる。
【0064】
そして、駐車枠の指定があったと判定された場合(ステップS103、YES)、駐車支援装置100は、指定された駐車枠の位置、つまり、駐車指示があった時に駐車枠ラインLが示していた位置を、指定駐車枠として指定駐車枠記憶部130に記憶する(ステップS104)。この場合、指定駐車枠は一つの地点の位置(駐車指示があった時の駐車枠ラインLまでの距離)と、その位置を起点とする方向(左右)の情報として記憶しても良い。その後、状態管理部140に管理される状態が、待機モードから駐車枠検知モードに移行し、駐車支援装置100は、指定駐車枠に該当する駐車枠を検知したか否かについて判定する(ステップS105)。このとき、HMI装置20の表示画像に駐車支援装置100が記憶した指定駐車枠の位置を示す指定駐車枠ラインL2が重畳表示される。指定駐車枠ラインL2は、車両1が進行すると、それに応じて表示画像において移動する。この駐車枠ラインL2を確認することで、乗員は、所望の位置に指定できたか否かを確認する。
【0065】
乗員は、駐車指示の操作をした後、車両1を走行させる操作を継続させて、指定駐車枠に車両1を近づける。その間、駐車支援装置100は、カメラ2の画像情報に基づいて指定駐車枠に該当する範囲において駐車枠の検知を行う。
【0066】
なお、駐車枠検知モードの際に、HMI装置20では、車両1の走行速度を一定速度以下(駐車枠検知が可能な速度等)にするように促す旨の案内、乗員が左側と右側のどちらの駐車枠を指定したかを通知する旨(例えば、左側の駐車枠が指定された等)の案内が、表示または音声出力されても良い。図8には、「徐行してください」と、車両1の走行速度を一定速度以下にする旨の案内がされている例が示されている。
【0067】
駐車枠を検知可能な範囲まで、車両1が到達すると、駐車枠検知部160により、駐車枠が検知され、HMI装置20に表示される。ここで、駐車支援装置100は、指定駐車枠に該当する駐車枠を検知したと判定する(ステップS105、YES)。このとき、経路計算部170により、検知した駐車枠に対する駐車経路を計算し、有効な駐車経路がない場合には、駐車支援装置100は、その駐車枠の検知を無効とし、HMI装置20に検知した旨を表示しない。
【0068】
なお、該当する駐車枠が検知された際に、HMI装置20では、該当する駐車枠(駐車の目標とする駐車枠)がどの駐車枠であるかを乗員が把握できるような表示がされても良い。図9には、左側の俯瞰図において、該当する駐車枠、つまり、これから駐車する駐車枠の色を、他の駐車枠の色と異なるようにした例が示されている。
【0069】
また、駐車枠を検知可能な範囲まで車両1が到達しても、駐車枠検知部160が指定駐車枠に該当する駐車枠を検知しない場合(ステップS105、NO)、駐車支援装置100は、駐車枠検知モードから待機モードに移行するようにしても良い。つまり、ステップS105でNOと判定した後、処理がステップS102の処理に戻っても良い。また、この場合、HMI装置20では、指定駐車枠に駐車できない旨の案内、再度、駐車指示するよう乗員を促す旨の案内が、表示または音声出力されても良い。図10には、「もう一度,駐車枠を指定してください」と、乗員に対して、再度、駐車枠を指定するように促す旨の案内がされている例が示されている。指定駐車枠ラインL2を遠方に表示する場合は、駐車枠が見えない事があるので、駐車位置を指定する様に促しても良い。
【0070】
なお、駐車枠検知部160により、駐車枠を検知可能な範囲まで車両1が到達するまでは、駐車支援装置100は、指定駐車枠に該当する駐車枠を検知していないと判定しつつ、ステップS105の処理が繰り返されても良い。
【0071】
そして、状態管理部140により管理される状態が、駐車枠検知モードから、自動駐車モードに移行し、駐車支援装置100は、経路計算部170により、駐車経路を計算し(ステップS106)、自動駐車を開始する(ステップS107)。
【0072】
なお、自動駐車を開始する際に、HMI装置20では、自動駐車を開始する旨の案内、車両周辺の安全確認をする旨の案内、ハンドル操作等をやめることを促す旨の案内が、表示または音声出力されても良い。図11には、「車両周辺の安全を確認してください」と、車両周辺の安全確認をする旨の案内がされている例が示されている。
【0073】
自動駐車が完了後、本制御は終了する。
【0074】
なお、例えば、該当する駐車枠(駐車する駐車枠)の範囲内に、障害物がある、指定駐車枠の隣接駐車枠の駐車車両がはみ出している等、車両1の駐車に支障を来す場合があるので、駐車支援制御中に、乗員が自動駐車をキャンセルできるようにしても良い。つまり、駐車枠検知モードおよび自動駐車モードにおいて、乗員から指定した駐車枠をキャンセルする操作があった場合、駐車支援装置100は、本制御を終了しても良い。図12には、HMI装置20に駐車支援制御をキャンセルするための操作ボタン21が表示された例が示されている。
【0075】
また、この場合、HMI装置20では、指定された駐車枠がキャンセルされた旨の案内、再度駐車枠を指定するよう促す旨の案内が、表示または音声出力されても良い。図12には、「駐車枠の指定をキャンセルしました」と、指定した駐車枠がキャンセルされた旨の案内がされている例が示されている。この場合の指定された駐車枠は、指定された位置に該当する駐車枠を指す。
【0076】
また、キャンセル操作があった後、駐車支援装置100は、指定駐車枠記憶部130に記憶された指定駐車枠を消去して、状態管理部140が管理する状態を待機モードにしても良い。また、自動駐車モードにおいて、キャンセル操作がされた場合、自動制御により、自動駐車を開始した時点の位置に車両1を戻し、その後、状態管理部140が管理する状態が待機モードに移行しても良い。
【0077】
以上のように構成された本実施の形態によれば、車両1の走行中に乗員が駐車を所望する駐車枠に対して、特定の距離(所定距離)だけ手前の地点で、乗員の駐車指示(駐車枠指定)を検出し、その後、それに該当する駐車枠を検知する。
【0078】
これにより、従来技術のように、乗員が駐車したい駐車枠に車両を横付け(停車)した後に、実施していた駐車指示等の処理を、本実施の形態では、車両1の走行中に実施することができる。その結果、乗員の操作による走行から自動駐車による走行にスムーズに遷移させることができる。
【0079】
また、乗員が駐車を所望する駐車枠に向けて車両1が走行しているときに、駐車支援装置100が予め駐車枠の位置を認識した上で、自動駐車を開始させることができる。その結果、駐車枠の近傍に車両1が到達する時点で、駐車指示操作、駐車枠の認識が完了しているので、乗員による停車操作、駐車指示操作の後に、駐車枠の認識、自動駐車が行われる従来技術と比較して、車両1が駐車枠の前に到達してから駐車を完了するまでの時間を大幅に短縮させることができる。つまり、本実施の形態では、短い時間でスムーズに自動駐車を行うことができる。
【0080】
また、駐車指示を受け付けた時点の車両位置から予め設定された距離離れた位置に基づく範囲に対応するエリアを、駐車枠検知の範囲とするので、駐車枠検知の範囲をそのエリアに絞ることができる。その結果、処理時間を短縮することができる。
【0081】
また、HMI装置20を介して駐車枠ラインを表示することで、上記のエリアを乗員に視認させることができる。その結果、乗員による駐車枠指定のし易さを向上させることができる。
【0082】
また、方向指示器の操作により、駐車枠指定を行うことができるので、専用の操作装置を設ける必要がない。その結果、構成を簡素化することができる。
【0083】
なお、上記実施の形態では、乗員から指定された位置で駐車枠を検知しなかった場合、待機モードに戻って、駐車枠指定をやり直す制御であったが、本開示はこれに限定されない。
【0084】
例えば、状態管理部140が、図5に示すフローチャートのステップS105の判定でNOと判定された場合、指示検出の動作を開始してから駐車指示を受け付けた回数に応じて、駐車支援制御を終了するか否かについて判定しても良い。具体的には、状態管理部140は、駐車指示を受け付けた回数が所定回数(例えば、1回等、予め設定された回数)を超過した場合、駐車支援制御を終了すると判定しても良い。
【0085】
その結果、駐車支援制御において、駐車指示の受け付けた回数を制限することができる。例えば、方向指示器を用いて駐車指定する構成の場合、駐車枠を検知しない事が続くと、何度も方向指示器が操作される可能性がある。方向指示器は、右左折をする際にも操作されるため、駐車指示に基づく操作と右左折をする際の操作とが混同する可能性がある。それに対し、駐車指示の受け付けた回数を制限することにより、上記の混同が生じることを抑制することができる。
【0086】
また、例えば、状態管理部140が、指示検出の動作を開始してからの車両1の走行距離に応じて、駐車支援制御を終了するか否かについて判定しても良い。具体的には、状態管理部140は、駐車支援制御開始後の車両1の走行距離が所定距離(例えば、30m等、予め設定された走行距離)を超えた場合、駐車支援制御を終了すると判定しても良い。
【0087】
その結果、駐車支援制御における走行距離を制限することができる。例えば、方向指示器を用いて駐車指示する構成の場合、上記したように、駐車指示に基づく操作と右左折をする際の操作とが混同する可能性がある。それに対し、駐車支援制御における走行距離を制限することにより、上記の混同が生じることを抑制することができる。
【0088】
また、例えば、状態管理部140が、指示検出の動作を開始してからの経過時間に応じて、駐車支援制御を終了するか否かについて判定しても良い。具体的には、状態管理部140は、駐車支援制御開始後の経過時間が所定時間(予め設定された時間)を超えた場合、駐車支援制御を終了すると判定しても良い。
【0089】
その結果、駐車支援制御における動作時間を制限することができる。例えば、方向指示器を用いて駐車指示する構成の場合、上記したように、駐車指示に基づく操作と右左折をする際の操作とが混同する可能性がある。それに対し、駐車支援制御の動作時間を制限することにより、上記の混同が生じることを抑制することができる。
【0090】
また、状態管理部140は、駐車指示の受け付けた回数と、駐車支援制御開始後の車両1の走行距離と、駐車支援制御の経過時間との何れかに応じて、駐車支援制御を終了するか否かについて判定しても良い。
【0091】
また、上記実施の形態では、駐車枠ラインの幅が1つの駐車枠に対応する幅であったが、本開示はこれに限定されず、例えば、複数の駐車枠に対応する幅であっても良い。
【0092】
ところで、駐車枠ラインが複数の駐車枠に対応する幅であると、図13に示すように、Y方向で隣り合う2つ以上の駐車枠と、駐車枠ラインとが重ねられる場合がある。この場合において、例えば、乗員は、奥側の駐車枠への駐車を所望したが、駐車枠検知部160は手前側の駐車枠を先に検知し、駐車の目標とする駐車枠として認識する場合がある。図13には、左側の俯瞰図において、検知した手前側の駐車枠の色を、他の駐車枠の色と異なるようにした例が示されている。
【0093】
この際に、表示画像生成部190は、検知した駐車枠を乗員にスキップさせるか否かについて選択画面をHMI装置20に表示しても良い。
【0094】
図13には、HMI装置20に、検知した駐車枠への自動駐車をスキップするための操作ボタン22が表示された例が示されている。
【0095】
乗員が、操作ボタン22を押下すると、駐車支援装置100は、検知した駐車枠を消去して、指定された範囲(駐車枠ラインLを基準とする範囲)の中で検知した他の駐車枠を、駐車の目標とする駐車枠として設定する。
【0096】
このようにすることで、乗員が所望する駐車枠に車両1を駐車させることができる。また、駐車枠ラインの範囲を広げることで、乗員が駐車指示をするための操作時間に余裕を持たせることができる。
【0097】
また、上記実施の形態では、駐車枠ラインがHMI装置20の表示画像に重畳表示されていたが、本開示はこれに限定されず、駐車枠ラインが表示画像に重畳表示されなくても良い。この場合、乗員は、自身の感覚で駐車指示を行うことになる。駐車支援装置100は、駐車指示時の車両位置から所定距離前方に離れた範囲を駐車枠の検知対象として動作する。
【0098】
また、上記実施の形態では、HMI装置20の表示画面に表示画像が表示されていたが、本開示はこれに限定されない。例えば、ディスプレイオーディオ、メータパネル内のディスプレイ、ヘッドアップディスプレイに表示画像が表示されても良い。
【0099】
また、上記実施の形態では、HMI装置20のような表示部に駐車枠ラインが表示されていたが、本開示はこれに限定されない。例えば、車両1の前方の路面に駐車枠ラインの表示が投影されても良い。つまり、駐車支援装置100は、駐車枠ラインの表示を前記車両の前方の路面に投影する投影部を備えていても良い。投影部は、例えば、カーテシーランプのような車両1に設けられる照明装置であっても良い。
【0100】
このようにすることで、乗員は、表示部の表示画面を見ずに、車両1の前方の路面を見ながら駐車指示をすることができる。
【0101】
また、上記実施の形態では、駐車支援制御を開始して、駐車枠指定が行われるまで駐車枠ラインが表示されていたが、所定の条件(例えば、車両1の速度が一定速度以下等)を満たしていない場合、駐車支援装置100は、安全機構として、駐車枠ラインを表示せず、駐車指示を受け付けないようにしても良い。つまり、駐車支援装置100は、車両1の速度に応じて駐車枠ラインの表示/非表示を切り替える切替部を備えていても良い。
【0102】
また、上記実施の形態では、方向指示器により、通路Rの左右の何れかの駐車枠を指定していたが、本開示はこれに限定されない。例えば、通路Rの左右の何れかの駐車枠にするか否かが予め設定されていても良い。例えば、表示画面において、左右選択ボタンが表示され,乗員が予め左右の何れかを選択することで、左右の何れかの駐車枠にするか設定されていても良い。また、左右選択スイッチが、車両1に設けられ、乗員が予め左右の何れかのスイッチを押下することで、左右の何れかの駐車枠にするか設定されていても良い。また、左右選択スイッチは、左用/右用に分かれたスイッチ、一つのスイッチで左/中(左右の指定なし)/右に倒すスイッチ、ダイヤル式スイッチ等であっても良い。
【0103】
また、駐車支援装置100が自律的に左右の何れかの駐車枠を選択しても良い。自律的に選択する例としては、例えば、左右の駐車枠のうち、検知した方の駐車枠が選択されても良い。また、車両の位置で、左右の駐車枠の何れかが選択されても良い。例えば、左右の駐車枠のうち、車両1から近い側の駐車枠を選択しても良い。
【0104】
また、上記実施の形態では、指定駐車枠の位置(駐車枠ライン)に対応する駐車枠を複数検知した場合については、特に言及されていなかったが、例えば、予め設定された優先度に従った駐車枠が選択されても良い。また、上記の図13に示す形態のように、ユーザ操作によって、駐車支援装置100が選択した駐車枠をスキップ可能な構成であっても良い。
【0105】
また、上記実施の形態では、方向指示器による、駐車指示に基づく操作と右左折をする際の操作とが区別されていなかったが、本開示はこれに限定されず、駐車支援装置100が、これらの操作を区別するようにしても良い。つまり、指示検出部120は、方向指示器の操作が、駐車指示を示す操作および、車両の右左折をする際の操作の何れかであるかを判定するようにしても良い。
【0106】
車両の右左折をする際の操作であると判定される場合は、例えば、方向指示器の操作とともにステアリング操作が検出された場合であっても良い。この際、ステアリングの変動量に応じて、車両の右左折をする際の操作であると判定されても良いし、車両1の向きの変動量に応じて、車両の右左折をする際の操作であると判定されても良い。
【0107】
また、上記実施の形態では、車両1が走行する通路の傾斜については特に言及されていなかった。通路の傾斜状況によっては、カメラによる画像の、駐車枠の位置が変動するので、通路の傾斜状況を考慮した駐車枠ラインを表示させる必要がある。つまり、駐車支援装置100は、通路の傾斜状況に応じて駐車枠ラインの位置を補正する補正部を備えていても良い。
【0108】
この構成では、例えば、車両1の前後方向の路面の傾斜を検出する車両傾斜検出部が設けられていると良い。
【0109】
また、上記実施の形態では、駐車枠検知モードにおいては、乗員の操作により車両1が走行していたが、本開示はこれに限定されず、駐車枠検知モードにおいて、車両1が自動で走行しても良い。
【0110】
また、図6~13においては、表示画像の白線、駐車枠ライン等が直線状で示されていたが、本開示はこれに限定されず、表示画像の白線、駐車枠ライン等が湾曲していても良い。魚眼レンズを使用するカメラを用いると、直線状のものが、カメラ映像では曲線状に見えるので、そのようなカメラ映像に起因した湾曲を考慮した駐車枠ライン等が表示画像として表示されても良い。
【0111】
また、図6~13において図示された内容は、画像の一例を示す図である。カメラの位置によって画像の見え方が変わるため、図6~13の内容は、車両によって変わっても良い。
【0112】
その他、上記実施の形態は、何れも本開示を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本開示はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本開示の装置は、短い時間でスムーズに自動駐車を行うことが可能な駐車支援装置および駐車支援方法として有用である。
【符号の説明】
【0114】
1 車両
2 カメラ
10 操作装置
20 HMI装置
30 車両制御装置
40 ナビゲーション装置
100 駐車支援装置
101 CPU
102 ROM
103 RAM
104 I/O
105 IMP
110 操作受付部
120 指示検出部
130 指定駐車枠記憶部
140 状態管理部
150 画像取得部
160 駐車枠検知部
170 経路計算部
180 駐車枠ライン計算部
190 表示画像生成部
200 走行制御部
210 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13