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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172965
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】シェルター室内冷房装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/14 20060101AFI20241205BHJP
   E04H 9/12 20060101ALI20241205BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
E04H9/14 B
E04H9/12
E04H9/14 K
F24F5/00 101B
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091052
(22)【出願日】2023-06-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】517357826
【氏名又は名称】株式会社シェルタージャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196106
【弁理士】
【氏名又は名称】杉田 一直
(72)【発明者】
【氏名】矢野 昭彦
【テーマコード(参考)】
2E139
【Fターム(参考)】
2E139AA07
2E139AA15
2E139AA23
2E139AB24
2E139AC19
(57)【要約】
【課題】長時間にわたり安定的にシェルターの室内を冷房できるシェルター室内冷房装置を提供する。
【解決手段】シェルター室内冷房装置1は、貯留タンク10と、貯留タンク10に接続する熱交換装置30を備えている。貯留タンク10には、冷却水CWが貯留されている。熱交換装置30は、冷却水CWを取り込むとともに、取り込んだ冷却水CWを貯留タンク10に還流する。還流する過程で、冷却水CWとシェルター100の室内120の空気を熱交換する。これにより、シェルター100の室内120は冷房される。冷却水CWは、空冷式の冷却装置20によって冷却される。冷却装置20は、その動作が制御装置40によって制御されることで冷却水CWを所定状況下に維持する。冷却装置20によって熱交換された空気は、排出部55によって屋外111に排出される。同時に、外気導入部51によって、室内120に外気OAが導入される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却水を貯留する貯留タンクと、
前記冷却水を取り込むとともに、取り込んだ前記冷却水を前記貯留タンクに還流する熱交換装置と、を備え、
前記冷却水が前記熱交換装置を通過する過程で、前記冷却水とシェルターの室内の空気が前記熱交換装置によって熱交換されることで、シェルターの室内を冷房するシェルター室内冷房装置。
【請求項2】
前記冷却水を冷却する空冷式の冷却装置と、
前記冷却装置によって熱交換された空気を屋外に排出する排出部と、
前記室内に外気を導入する外気導入部と、を備える請求項1に記載のシェルター室内冷房装置。
【請求項3】
前記排出部は、前記冷却装置に接続する請求項2に記載のシェルター室内冷房装置。
【請求項4】
前記排出部は、地中を経由して前記屋外に接続する請求項2に記載のシェルター室内冷房装置。
【請求項5】
前記外気導入部は、前記冷却装置を介して前記排出部に接続する請求項2に記載のシェルター室内冷房装置。
【請求項6】
前記外気導入部は、地中を経由して前記屋外に接続する請求項2に記載のシェルター室内冷房装置。
【請求項7】
前記冷却装置の動作を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記貯留タンクの上層部に貯留される冷却水の温度を計測する温度センサと、前記温度センサの計測値に基づいて前記冷却装置の動作を制御するコントローラと、を有し、
前記温度センサで計測された温度が、前記冷却水が氷結する温度の近傍の温度である閾温度を超えると判断されたとき、前記コントローラは前記冷却装置を動作させ、
前記温度センサで計測された温度が、前記閾温度以下であると判断されたとき、前記コントローラは前記冷却装置の動作を停止させる請求項2に記載のシェルター室内冷房装置。
【請求項8】
前記熱交換装置は、熱交換器と、前記貯留タンクの下端部に接続する下端接続部と、前記貯留タンクの中間部に接続する中間接続部と、を有し、
前記冷却水は、前記下端接続部を経由して前記熱交換器に到達し、さらに前記中間接続部を経由して、前記貯留タンクに還流される請求項7に記載のシェルター室内冷房装置。
【請求項9】
前記熱交換器は、開口部が設けられた筐体と、前記開口部にはめ込まれた熱交換フィンと、前記筐体の内部を復圧するための送風ファンを有する請求項8に記載のシェルター室内冷房装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シェルターの室内を冷房するシェルター室内冷房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シェルターは、津波、火災などの自然災害や戦争災害に対してきわめて安全に避難できる施設である。特に核シェルターとしても利用可能なシェルターの場合、耐火性能は云うにおよばず、高い放射能遮蔽性能を満たす必要がある。そなため、堅牢であって気密性の高い構造物であることが求められる。
【0003】
発明者は、以前、耐火性能に優れたシェルターを種々提案してきた。
【0004】
特許文献1は、天井水タンクに貯水された水が蒸発するときの潜熱効果により、天井の温度上昇は抑制される。また、断熱空間に貯水された水が蒸発するときの潜熱効果等によって、断熱側壁の温度上昇は抑制される耐火シェルターである。
【0005】
特許文献2で提案されるシェルターは、本体、貯水タンク、貯水槽等を有しており、貯水タンクから水を供給することで、扉を水没状態して、水の潜熱効果により扉本体、および天井の温度上昇を抑制するものである。
【0006】
これらのシェルターは、堅牢であって火災に対して室内の温度上昇を一定程度抑制できるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6964919号公報
【特許文献2】特許第6583943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
シェルターは、居住を目的とするものではないことから、経済性、効率性等を勘案して、避難者の一人当たりの占有面積は、避難するために最小の面積しか確保していない施設となることが一般的である。このような状況下で、シェルターの気密性を高めると、避難する人々が発する熱によってシェルターの室内の温度が上昇して避難に適さない温度にまで上昇する可能性は否定できない。
【0009】
対策として、シェルターにエアコンを導入することも考えられるが、仮に、商用電源による電力が停電等で供給されない事態となったとき、エアコンを長期に渡って安定的に動作させることは困難である。また、室外機が破損した場合も冷房機能は維持できない。
【0010】
本発明は、これらの問題点に着目してなされたものであり、長時間にわたり安定的にシェルターの室内を冷房できるシェルター室内冷房装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための発明は、シェルター室内冷房装置であって、冷却水を貯留する貯留タンクと、冷却水を取り込むとともに、取り込んだ冷却水を貯留タンクに還流する熱交換装置と、を備え、冷却水が熱交換装置を通過する過程で、冷却水とシェルターの室内の空気が熱交換装置によって熱交換されることで、シェルターの室内を冷房する。
【0012】
この構成よれば、貯留タンクに貯留される冷却水を、熱交換装置を経由して貯留タンクに還流することのみでシェルターの室内を冷房できるので、冷房するときの排熱処理は不要である、また、大規模な電力源を必要としないことから、仮に災害時に停電して商用電源を用いることができなくともバッテリ駆動で効率よく冷房できる。
【0013】
好ましくは、冷却水を冷却する空冷式の冷却装置と、冷却装置によって熱交換された空気を屋外に排出する排出部と、室内に外気を導入する外気導入部と、を備える。
【0014】
この構成によれば、冷却装置によって熱交換された空気は排出部から屋外に排出されると同時に、外気導入部から外気を室内に導入するので、熱交換されて暖められた空気による室内温度の上昇を最小限度に抑制できる。
【0015】
好ましくは、排出部は、冷却装置に接続する。
【0016】
この構成によれば、排出部は、冷却装置に接続するので、熱交換されて暖められた空気が室内に漏れ出すことはない。
【0017】
好ましくは、排出部は、地中を経由して屋外に接続する。
【0018】
この構成によれば、排出部は、地中を経由して屋外に接続するので、仮に排出部が何らかの要因で破損したとしてシェルターの構造に影響を与えることはない。
【0019】
好ましくは、外気導入部は冷却装置を介して排出部に接続する。
【0020】
この構成によれば、外気導入部は冷却装置を介して排出部に接続するので、シェルターの室内は外気の影響を受けることはない。
【0021】
好ましくは、外気導入部は、地中を経由して屋外に接続する。
【0022】
この構成によれば、外気導入部は、地中を経由して屋外に接続するので、仮に外気導入部が何らかの要因で破損したとしてシェルターの構造に影響を与えることはない。
【0023】
好ましくは、冷却装置の動作を制御する制御装置を備え、制御装置は、貯留タンクの上層部に貯留される冷却水の温度を計測する温度センサと、温度センサの計測値に基づいて冷却装置の動作を制御するコントローラと、を有し、温度センサで計測された温度が、冷却水が氷結する温度の近傍の温度である閾温度を超えると判断されたときコントローラは冷却装置を動作させ、温度センサで計測された温度が、閾温度以下となると判断されたとき、コントローラは冷却装置の動作を停止させる。
【0024】
この構成によれば、冷却装置の動作を制御装置によって制御するので、貯留タンクに貯留される冷却水の温度を適正な状態に保つことができる。例えば、上層部に貯留される冷却水を凍った状態とするとともに、下層部に貯留される冷却水を最も密度の大きい温度(4℃)の状態を保ち得る。
【0025】
好ましくは、熱交換装置は、熱交換器と、貯留タンクの下端部に接続する接続部と、貯留タンクの中間部に接続する中間接続部と、を有し、冷却水は下端接続部を経由して熱交換器に到達し、さらに中間接続部を経由して、貯留タンクに還流される。
【0026】
冷却水の冷却が促進されると、貯留タンクの下端部に貯留される冷却水は最も密度が高い温度、すなわち水温が4℃の冷却水が貯留される。この構成によれば、貯留タンクに貯留される冷却水は下端接続部を経由し熱交換器に到達し、さらに中間接続部を経由して、貯留タンクに還流されることから、水温が4℃の冷却水を安定して熱交換器に送水することができる。
【0027】
好ましくは、熱交換装置は、開口部が設けられた筐体と、開口部にはめ込まれた熱交換器と、筐体の内部を復圧するためのファンを有する。
【0028】
この構成によれば、熱交換装置は、開口部が設けられた筐体と、開口部にはめ込まれた熱交換フィンと、筐体の内部を復圧するための送風ファンを有するので、筐体に取り込んだ室内の空気を熱交換フィンによって効率よく熱交換できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本実施形態におけるシェルター室内冷房装置の配置図である。
図2】冷却装置のブロック図である。
図3】熱交換装置の斜視図である。
図4】制御装置の構成図である。
図5】制御の処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図1~5を参照して本発明のシェルター室内冷房装置1の実施形態を詳述する。
【0031】
図1に示す通り、シェルター室内冷房装置1は、貯留タンク10、および貯留タンク10に接続する熱交換装置30を備えている。貯留タンク10には、冷却水CWが貯留されている。熱交換装置30は、冷却水CWを取り込むとともに、取り込んだ冷却水CWを貯留タンク10に還流する。還流する過程で、冷却水CWとシェルター100の室内120の空気を熱交換する。これにより、シェルター100の室内120は冷房される。なお、本実施形態におけるシェルター100は、一部または全部が地中110に埋設される地下シェルターであるが、これに限定されるわけではなく、例えば、建物内、地上あるいは山林部の中腹に設けられるシェルターであってもよい。
【0032】
冷却水CWは、空冷式の冷却装置20によって冷却される。冷却装置20は、制御装置40によってその動作が制御されることで、貯留タンク10に貯留される冷却水CWを所定状況下に維持する。
【0033】
空冷式の冷却装置20によって熱交換された空気は、排出部55によって屋外111に排出される。同時に、外気導入部51によって、室内120に外気OAが導入される。
【0034】
排出部55および外気導入部51は冷却装置20に接続している。また、地中110を経由して屋外111に接続している。屋外111に存する外気OAは、外気導入部51を経由して冷却装置20に取り込まれ、冷却装置20によって熱交換されて、室内120に滞留することなく再び屋外111に排出される。すなわち、冷却装置20と熱交換することで温まった外気OAは室内120に排出されることはない。なお、本実施形態において、外気導入部51は冷却装置20に接続しているが、これに限るものではない。例えば、外気導入部51は室内120に接続して、外気OAを室内120に直接導入してもよい。この場合、室内120に取り込む外気OAは汚染物質を除去できるフィルターを通過させたものであることが好ましい。
【0035】
熱交換装置30は、熱交換器31、下端接続部32、および中間接続部33を有している。下端接続部32の一端は貯留タンク10の下端部に接続するとともに、他端は熱交換器31に接続している。また、中間接続部33の一端は貯留タンク10の中間部に接続するとともに、他端は熱交換器31に接続している。下端接続部32には、冷却水CWを熱交換器31に送水するためのポンプPが装着されている。
【0036】
下端接続部32に装着されるポンプPを動作すると、貯留タンク10の下端部に貯留される冷却水CWは熱交換器31に送水されて、さらに中間接続部33を経由して貯留タンク10の中間部に還流される。冷却水CWが熱交換器31を通過する過程で、冷却水CWと室内120の空気が熱交換されて室内120は冷房される。
【0037】
貯留タンク10は、室内120に設けられており、内部に冷却水CWが貯留されている。貯留タンク10は、避難するために最小限必要となる室内120の空間が確保されたうえで、可能な限り大容量の冷却水CWを貯留できる大きさを確保することが好ましい。これにより、仮に冷却装置20が何らかの事情(例えば停電)で動作しなくなる事態となったとしても、貯留タンク10に貯留される大容量の冷却水CWによって、より長期にわたる室内120の冷房が可能となる。
【0038】
貯留タンク10は冷却水CWの水面に冷却水CWの水位を調節するためのフロートFを設けることが好ましい。また、断熱性能に優れたものであることが好ましい。これにより貯留量の多寡が確認でき、かつ冷却水CWの水温を長期に渡って所望の設定値に維持できる。また、水が不足する等の非常事態に備えて、貯留タンク10に貯留される冷却水CWを取り出すことができる取水口(図示略)を設けてもよい。
【0039】
図2に示す通り、冷却装置20は、コンデンサ23、冷却コイル21、膨張弁24、コンプレッサ22、空冷ファン25を有している。コンプレッサ22で圧縮された低温冷媒RGLは、冷媒温度が上昇して高温冷媒RGHとなってコンデンサ23に送られる。コンデンサ23に送りこまれた高温冷媒RGHは空冷ファン25から送風される外気OAによって冷却され、膨張弁24を通過することで急激に冷却されて低温冷媒RGLとなり冷却コイル21に送り込まれる。低温冷媒RGLが冷却コイル21を通過する過程で熱交換されて冷却水CWは冷却される。このサイクルを繰り返すことで冷却水CWは徐々に冷却される。
【0040】
一方、空冷ファン25により屋外111から導入されてコンデンサ23に送風される外気OAは、コンデンサ23と熱交換することで熱を奪って暖められ、この暖められた外気OAは排出部55から直接に屋外111に排出される。
【0041】
なお、本実施形態では、コンデンサ23、冷却コイル21、膨張弁24、コンプレッサ22等は室内120に配置されているが、これに限るものではない。例えば、これらを屋外111に配置してもよい。この場合、外気導入部51、および排出部55は、一定要件下、省略できる。
【0042】
図3に示す通り、熱交換器31は筐体35、送風ファン34、および熱交換フィン37を有している。筐体35は開口部35aが設けられており、この開口部35aに熱交換フィン37がはめ込まれている。送風ファン34は、筐体35の天井に取り付けられている。
【0043】
熱交換フィン37は下端接続部32、および中間接続部33の双方に接続しており、下端接続部32から送水された冷却水CWは熱交換フィン37を経由し、中間接続部33を経て貯留タンク10に還流される。
【0044】
一方、送風ファン34を動作すると筐体35内の空気は復圧されて、熱交換フィン37を経由して筐体35の外に排出される。筐体35の内部を復圧することで、室内120から取り込まれた筐体35の内部の空気は、熱交換フィン37に満遍なく接触して筐体35の外部に排出される。
【0045】
ポンプPを動作すると同時に送風ファン34を動作することで、室内120の空気は、熱交換フィン37に沿って流出するため、効率よく熱交換されて冷やされ、室内120を循環して冷房することができる。
【0046】
ポンプP、および送風ファン34は、動力源として、商用電源、およびバッテリの双方を利用できるものであることが好ましい。例えば、商用電源から電力の供給が可能なときは、動力源として、商用電源を使用し、停電で商用電源の使用ができないときはバッテリを動力源として使用することで効率的な運用が可能となる。
【0047】
冷却装置20の動作は、制御装置40によって制御される。図1に示す通り、制御装置40は温度センサ41、およびコントローラ42を有している。温度センサ41は、貯留タンク10の上層部に貯留される冷却水CWの温度を計測する。コントローラ42は、温度センサ41で計測された計測値に基づいて冷却装置20を動作するか、あるいは停止するかを決定して、冷却装置20に指令する。
【0048】
図4は、制御装置40の構成を表している。コントローラ42は、CPU、RAM、ROM、およびI/Oインターフェイス(いずれも図示略)などからなるマイクロコンピュータで構成されている。コントローラ42には、貯留タンク10の上層部に貯留される冷却水CWの温度を計測する温度センサ41が接続されており、それらの計測信号が逐次入力される。コントローラ42の出力側には冷却装置20が接続されている。
【0049】
図5は、本実施形態における制御を説明するフローチャートである。本処理はコントローラ42において、継続して繰り返して実行される。
【0050】
本処理では、ステップ1(「S1」と図示する。以下同じ。)において、温度センサ41で貯留タンク10の上層部に貯留される冷却水CWの温度を計測する。計測された計測温度Tがコントローラ42により閾温度TRを超えているかどうかを判断する。閾温度TRは冷却水が氷結する近傍の温度を意味し、冷却水CWが氷結する温度よりも若干高い温度(例えば、1~3℃高い温度)に設定されているが、これに限るものではない。また、冷却水CWが氷結する温度よりも若干低い温度(例えば、1~3℃低い温度)に設定されていてもよい。
【0051】
判定結果がYESで、計測温度Tが閾温度TRを超えていると判断されたとき、ステップ2に進む。判定結果がNOのときは、温度センサ41による温度計測を継続する。
【0052】
ステップ2では、冷却装置20を動作させて、貯留タンク10に貯留されている冷却水CWを冷却する。冷却水CWの冷却が促進されると、密度の高い温度となる冷却水CW(具体的には4℃の冷却水CW)が貯留タンク10の下端部に滞留する。一方、水温が4℃を超える冷却水CWは水温が4℃の冷却水CWの上部に滞留する。さらに冷却が促進されると水温が4℃の冷却水CWの上方に水温が4℃以下の冷却水CWが滞留し、水温が4℃の冷却水CWの上方に氷が出現する。
【0053】
ステップ3において、温度センサ41で貯留タンク10の上層部に貯留される冷却水CWの温度を計測する。計測された計測温度Tが閾温度TRを下回るかどうかを判断する。
【0054】
ステップ3の判定結果がYESで、計測温度Tが閾温度TRを下回ると判断されたとき、ステップ4に進む。判定結果がNOのときは、計測を継続する。
【0055】
ステップ4では、冷却装置20を停止させる。ステップ3の状態は、冷却水CWの冷却が促進されて、貯留タンク10の下層に滞留する冷却水CWは4℃となる。一方で、貯留タンク10の上層部に滞留する冷却水CWは氷の状態となって液体状態の冷却水CWの上に浮遊する。また、中間部に滞留する冷却水CWの水温は0~4℃となる。
【0056】
ステップ4の状態で、熱交換装置30を動作させると、貯留タンク10の下層に滞留する水温が4℃の冷却水CWは、熱交換器31に送水されて、さらに中間接続部33を経由して貯留タンク10の中間部に還流される。冷却水CWが熱交換器31を通過する過程で、冷却水CWと室内120の空気が熱交換されて室内120は冷房される。
【0057】
貯留タンク10の中間部に還流される冷却水CWは、室内120の空気と熱交換されることで水温は大きく上昇した状態(4℃を大きく上回る状態)となり、還流される冷却水CWの密度は、貯留タンク10の中間部に貯留される冷却水CWの密度に比べて小さくなる。この密度の差によって、還流される冷却水CWは貯留タンク10内で上昇し、上層部に滞留する氷と接触する。氷と接触することで、還流される冷却水CWは冷やされて密度は増加し、貯留タンク10に貯留された冷却水CWの中を下降する。一方、上層部に滞留する氷は、一部が解けて、液体となり貯留タンク10に貯留された冷却水CWの中を下降する。
【0058】
上述する冷却サイクル(ステップ1~4)を繰り返すことで、熱交換器31に水温が4℃となる冷却水CWを安定して供給できる。仮に、停電などに起因して、商用電源が使用できない事態が生じたとしても、少なくとも冷却装置20はバッテリで動作できる。また、貯留タンク10の上層部に浮遊する氷の融解潜熱によって、長時間にわたって貯留タンク10に貯留される冷却水CWの水温を4℃程度の温度に維持できる。
【0059】
本実施形態は例示であり、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で改変できることは勿論である。例えば、シェルター室内冷房装置1に代わって、本発明を室内冷房装置付きシェルターとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係るシェルター室内冷房装置は、貯留タンクに大容量の冷却水を貯留することから、災害時において、給水タンクとしての利用も可能となる。このように、災害時に必要な水の供給源としての利用も可能となることから産業用の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0061】
1 :シェルター室内冷房装置
10 :貯留タンク
20 :冷却装置
30 :熱交換装置
31 :熱交換器
32 :下端接続部
33 :中間接続部
34 :送風ファン
35 :筐体
35a :開口部
37 :熱交換フィン
40 :制御装置
41 :温度センサ
42 :コントローラ
51 :外気導入部
55 :排出部
100 :シェルター
110 :地中
111 :屋外
120 :室内
CW :冷却水
TR :閾温度
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-09-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却水を貯留する貯留タンクと、
前記冷却水を取り込むとともに、取り込んだ前記冷却水を前記貯留タンクに還流する熱交換装置と、
前記冷却水を冷却する空冷式の冷却装置と、
前記冷却装置によって熱交換された空気を屋外に排出する排出部と、
前記室内に外気を導入する外気導入部と、を備え、
前記冷却水が前記熱交換装置を通過する過程で、前記冷却水とシェルターの室内の空気が前記熱交換装置によって熱交換されることで、シェルターの室内を冷房し
前記排出部は、地中を経由して前記屋外に接続するシェルター室内冷房装置。
【請求項2】
冷却水を貯留する貯留タンクと、
前記冷却水を取り込むとともに、取り込んだ前記冷却水を前記貯留タンクに還流する熱交換装置と、
前記冷却水を冷却する空冷式の冷却装置と、
前記冷却装置によって熱交換された空気を屋外に排出する排出部と、
前記室内に外気を導入する外気導入部と、を備え、
前記冷却水が前記熱交換装置を通過する過程で、前記冷却水とシェルターの室内の空気が前記熱交換装置によって熱交換されることで、シェルターの室内を冷房し、
前記外気導入部は、前記冷却装置を介して前記排出部に接続するシェルター室内冷房装置。
【請求項3】
冷却水を貯留する貯留タンクと、
前記冷却水を取り込むとともに、取り込んだ前記冷却水を前記貯留タンクに還流する熱交換装置と、
前記冷却水を冷却する空冷式の冷却装置と、
前記冷却装置によって熱交換された空気を屋外に排出する排出部と、
前記室内に外気を導入する外気導入部と、を備え、
前記冷却水が前記熱交換装置を通過する過程で、前記冷却水とシェルターの室内の空気が前記熱交換装置によって熱交換されることで、シェルターの室内を冷房し、
前記外気導入部は、地中を経由して前記屋外に接続するシェルター室内冷房装置。
【請求項4】
冷却水を貯留する貯留タンクと、
前記冷却水を取り込むとともに、取り込んだ前記冷却水を前記貯留タンクに還流する熱交換装置と、
前記冷却水を冷却する空冷式の冷却装置と、
前記冷却装置によって熱交換された空気を屋外に排出する排出部と、
前記室内に外気を導入する外気導入部と、
前記冷却装置の動作を制御する制御装置、を備え、
前記冷却水が前記熱交換装置を通過する過程で、前記冷却水とシェルターの室内の空気が前記熱交換装置によって熱交換されることで、シェルターの室内を冷房し、
前記制御装置は、前記貯留タンクの上層部に貯留される冷却水の温度を計測する温度センサと、前記温度センサの計測値に基づいて前記冷却装置の動作を制御するコントローラ
と、を有し、
前記温度センサで計測された温度が、前記冷却水が氷結する温度の近傍の温度である閾温度を超えると判断されたとき、前記コントローラは前記冷却装置を動作させ、
前記温度センサで計測された温度が、前記閾温度以下であると判断されたとき、前記コントローラは前記冷却装置の動作を停止させるシェルター室内冷房装置。
【請求項5】
前記熱交換装置は、熱交換器と、前記貯留タンクの下端部に接続する下端接続部と、前記貯留タンクの中間部に接続する中間接続部と、を有し、
前記冷却水は、前記下端接続部を経由して前記熱交換器に到達し、さらに前記中間接続部を経由して、前記貯留タンクに還流される請求項に記載のシェルター室内冷房装置。
【請求項6】
前記熱交換器は、開口部が設けられた筐体と、前記開口部にはめ込まれた熱交換フィンと、前記筐体の内部を復圧するための送風ファンを有する請求項に記載のシェルター室内冷房装置。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却水を貯留する貯留タンクと、
前記冷却水を取り込むとともに、取り込んだ前記冷却水を前記貯留タンクに還流する熱交換装置と、
前記冷却水を冷却する空冷式の冷却装置と、
前記冷却装置によって熱交換された空気を屋外に排出する排出部と
内に外気を導入する外気導入部と、を備え、
前記冷却水が前記熱交換装置を通過する過程で、前記冷却水とシェルターの室内の空気が前記熱交換装置によって熱交換されることで、シェルターの室内を冷房し、
前記排出部は、地中を経由して前記屋外に接続するシェルター室内冷房装置。
【請求項2】
冷却水を貯留する貯留タンクと、
前記冷却水を取り込むとともに、取り込んだ前記冷却水を前記貯留タンクに還流する熱交換装置と、
前記冷却水を冷却する空冷式の冷却装置と、
前記冷却装置によって熱交換された空気を屋外に排出する排出部と
内に外気を導入する外気導入部と、を備え、
前記冷却水が前記熱交換装置を通過する過程で、前記冷却水とシェルターの室内の空気が前記熱交換装置によって熱交換されることで、シェルターの室内を冷房し、
前記外気導入部は、前記冷却装置を介して前記排出部に接続するシェルター室内冷房装置。
【請求項3】
冷却水を貯留する貯留タンクと、
前記冷却水を取り込むとともに、取り込んだ前記冷却水を前記貯留タンクに還流する熱交換装置と、
前記冷却水を冷却する空冷式の冷却装置と、
前記冷却装置によって熱交換された空気を屋外に排出する排出部と
内に外気を導入する外気導入部と、を備え、
前記冷却水が前記熱交換装置を通過する過程で、前記冷却水とシェルターの室内の空気が前記熱交換装置によって熱交換されることで、シェルターの室内を冷房し、
前記外気導入部は、地中を経由して前記屋外に接続するシェルター室内冷房装置。
【請求項4】
冷却水を貯留する貯留タンクと、
前記冷却水を取り込むとともに、取り込んだ前記冷却水を前記貯留タンクに還流する熱交換装置と、
前記冷却水を冷却する空冷式の冷却装置と、
前記冷却装置によって熱交換された空気を屋外に排出する排出部と
内に外気を導入する外気導入部と、
前記冷却装置の動作を制御する制御装置と、を備え、
前記冷却水が前記熱交換装置を通過する過程で、前記冷却水とシェルターの室内の空気が前記熱交換装置によって熱交換されることで、シェルターの室内を冷房し、
前記制御装置は、前記貯留タンクの上層部に貯留される冷却水の温度を計測する温度センサと、前記温度センサの計測値に基づいて前記冷却装置の動作を制御するコントローラ
と、を有し、
前記温度センサで計測された温度が、前記冷却水が氷結する温度の近傍の温度である閾温度を超えると判断されたとき、前記コントローラは前記冷却装置を動作させ、
前記温度センサで計測された温度が、前記閾温度以下であると判断されたとき、前記コントローラは前記冷却装置の動作を停止させるシェルター室内冷房装置。
【請求項5】
前記熱交換装置は、熱交換器と、前記貯留タンクの下端部に接続する下端接続部と、前記貯留タンクの中間部に接続する中間接続部と、を有し、
前記冷却水は、前記下端接続部を経由して前記熱交換器に到達し、さらに前記中間接続部を経由して、前記貯留タンクに還流される請求項4に記載のシェルター室内冷房装置。
【請求項6】
前記熱交換器は、開口部が設けられた筐体と、前記開口部にはめ込まれた熱交換フィンと、前記筐体の内部を復圧するための送風ファンを有する請求項5に記載のシェルター室内冷房装置。