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特開2024-172966既設管更生工法におけるウィンチ支持装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172966
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】既設管更生工法におけるウィンチ支持装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/34 20060101AFI20241205BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20241205BHJP
   B66D 1/28 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B29C63/34
F16L1/00 J
B66D1/28 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091053
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 竜幸
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AG08
4F211AH43
4F211SA13
4F211SC03
4F211SD04
4F211SJ15
4F211SP12
(57)【要約】
【課題】樹脂製の更生管を牽引して既設管にライニングする既設管更生工法において、更生管の牽引に用いられるウィンチを運搬車両に積載した状態から更生施工現場に容易に設置できるようにする。
【解決手段】熱可塑性樹脂からなる更生管3を既設管1の内壁にライニングする既設管更生工法において、既設管1内に更生管3を引き込むためのウィンチ8をウィンチ支持装置10によって支持する。ウィンチ支持装置10は、運搬車両6の荷台6bに載せられたスライドフレーム22と、脚部30を備えている。スライドフレーム22は、荷台6b上の前進位置と、荷台6bから後方へ延び出た後方延出位置との間で前後へスライド可能である。ウィンチ8が、スライドフレーム22に載置されている。スライドフレーム22が後方延出位置のとき、スライドフレーム22の後端部を脚部30によって支持する。スライドフレーム22が前進位置のときは、脚部30がスライドフレーム22の後端部の下側から退避される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる更生管を既設管の一端に連なる発進人孔から前記既設管の内部へ挿入し、前記更生管の挿入方向の先端部に繋着した牽引ワイヤを前記既設管の他端に連なる到達人孔を通して地上のウィンチにて巻き取り、前記更生管を前記既設管の内壁にライニングする既設管更生工法における、前記ウィンチを支持するウィンチ支持装置であって、
運搬車両の荷台上の前進位置と前記荷台から後方へ延び出た後方延出位置との間で前後へスライド可能に設けられ、かつ前記ウィンチが載置されたスライドフレームと、
前記スライドフレームが前記後方延出位置のとき前記スライドフレームの後端部を支持し、前記スライドフレームが前記前進位置のとき前記スライドフレームの後端部の下側から退避される脚部と、
を備えたことを特徴とする既設管更生工法におけるウィンチ支持装置。
【請求項2】
前記脚部が、前記スライドフレームの後端部の支持高さを調節するジャッキ機構を含む請求項1に記載のウィンチ支持装置。
【請求項3】
前記脚部の下端部に転動体が設けられている請求項1に記載のウィンチ支持装置。
【請求項4】
前記脚部が、前記スライドフレームの後端部から上へ立ち上がる立上り位置と、前記スライドフレームから下へ延びる下支え位置との間で昇降可能な脚本体を含み、
前記スライドフレームが前記前進位置に在るときは前記脚本体が前記立上り位置に在り、
前記スライドフレームの後端部が前記荷台より後方へ延び出た状態のとき、前記脚本体の昇降が許容される請求項1に記載のウィンチ支持装置。
【請求項5】
前記脚本体の頂端部に吊り具を係着可能な被吊り部が設けられている請求項4に記載のウィンチ支持装置。
【請求項6】
前記荷台の後端部を支持する補助ジャッキ機構を更に備えた請求項1に記載のウィンチ支持装置。
【請求項7】
前記荷台には、前記スライドフレームをスライド可能に支持するベースフレームと、前記ベースフレームを回転させる回転機構とが設けられている請求項1~6の何れか1項に記載のウィンチ支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製の更生管を牽引して既設管にライニングする既設管更生工法における更生管の牽引用のワイヤを巻き取るウィンチの支持装置に関し、特に、運搬車両にて運搬したウィンチを更生施工現場に据え付けるためのウィンチ支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水道管等の地中に埋設された既設管の老朽化対策として、既設管の内壁に熱可塑性樹脂製の更生管をライニングする更生方法が知られている(例えば、特許文献1等参照)。更生管は、発進人孔から既設管内に挿し入れられる。更生管の先端部には牽引ワイヤが繋着される。牽引ワイヤは、既設管及び到達人孔を通して地上にウィンチに巻かれている。ウィンチにて牽引ワイヤを巻き取ることによって、更生管が既設管内を到達人孔へ向けて牽引される。
【0003】
例えば、ウィンチは、クレーン付きトラックからなる運搬車両の荷台に積載されて、更生施工現場まで運搬される。更生施工現場に到着後、ウィンチが、運搬車両に付属のクレーンで吊り揚げられて、到達人孔の地上出入口の近辺の地上に降ろされ、使用に供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-107289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の更生施工に用いるウィンチは、重量が重く、運搬車両に付属のクレーンの許容吊り荷重をウィンチの重量が上回っていることがある。特に、荷台の後方へ吊り降ろす場合の許容吊り荷重をウィンチの重量が上回っていることがある。
【0006】
詳しく説明すると、運搬車両に付属のクレーンは、運搬車両のキャビンと荷台との間に設けられているのが通例である。このため、吊り荷を荷台の後方へ吊り降ろすにはクレーンを伸長させる必要がある。クレーンを長くすればするほど、許容吊り荷重が小さくなる。したがって、吊り荷を荷台の後方へ吊り降ろす場合の許容吊り荷重は、吊り荷を荷台の側方へ吊り降ろす場合の許容吊り荷重より小さい。
【0007】
一般的なクレーン付き2tトラックにおいて、後方へ吊り降ろす場合の許容吊り荷重は500kg程度である。これに対し、この種のウィンチの重量は、例えば900kgである。このような場合、到達人孔の地上出入口が車両側方に位置するように、運搬車両を地上出入口に対して横付けして、付属のクレーンでウィンチを荷台の側方へ吊り降ろす必要がある。更生施工現場の道幅が狭い等の理由から、運搬車両を横付け出来ない場合には、運搬車両を更生施工現場から離れた場所に止めて、ウィンチを荷台の側方へ吊り降ろして手押し車に移し替え、複数人が人力でウィンチを更生施工現場まで運搬しなければならない。このため、ウィンチを更生施工現場に設置するのに、人員・時間・手間がかってしまうという課題があった。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑み、樹脂製の更生管を牽引して既設管にライニングする既設管更生工法において、更生管の牽引に用いられるウィンチを運搬車両に積載した状態から更生施工現場に容易に設置できるようにして、ウィンチを更生施工現場に設置するための人員・時間・手間を省くことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、熱可塑性樹脂からなる更生管を既設管の一端に連なる発進人孔から前記既設管の内部へ挿入し、前記更生管の挿入方向の先端部に繋着した牽引ワイヤを前記既設管の他端に連なる到達人孔を通して地上のウィンチにて巻き取り、前記更生管を前記既設管の内壁にライニングする既設管更生工法における、前記ウィンチを支持するウィンチ支持装置であって、
運搬車両の荷台上の前進位置と前記荷台から後方へ延び出た後方延出位置との間で前後へスライド可能に設けられ、かつ前記ウィンチが載置されたスライドフレームと、
前記スライドフレームが前記後方延出位置のとき前記スライドフレームの後端部を支持し、前記スライドフレームが前記前進位置のとき前記スライドフレームの後端部の下側から退避される脚部と、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
当該ウィンチ支持装置によれば、運搬車両の荷台に設置されたスライドフレームにウィンチが載置されて、更生施工現場まで運搬される。このとき、スライドフレームは荷台上の前進位置に在り、ウィンチの全荷重がスライドフレームを介して運搬車両の荷台に掛かっている。かつ脚部は、荷台と干渉しないよう退避されている。退避は、脚部を撤去することを含む。
更生施工現場においては、車両後方近くに到達人孔の地上出入口が位置されるように、運搬車両を地上出入口に対して後ろ向きに止める。横付けの必要が無いから幅狭の道路でも施工可能である。
続いて、スライドフレームを車両後方へ引き出して後方延出位置に位置させる。これに伴い、スライドフレーム上のウィンチが、スライドフレームと共に荷台から車両後方へ移行される。スライドフレームの前端部は荷台に支持されるとともに、スライドフレームの後端部は脚部によって支持される。これによって、車両後方へ移行されたウィンチを安定的に支持できる。
このようにして、ウィンチを更生施工現場に容易に設置できる。ウィンチを更生施工現場に設置するための人員・時間・手間を省くことができる。ウィンチを荷台から吊り降ろす必要が無いから、運搬車両にクレーンが付属されている必要も無い。
該ウィンチによって、更生管の牽引ワイヤが巻き取られる。
施工後は、スライドフレームを前方へスライドさせて、前進位置に戻す。これによって、ウィンチを荷台上に容易に戻すことができる。脚部は、荷台と干渉しないよう退避される。
【0011】
好ましくは、 前記脚部が、前記スライドフレームの後端部の支持高さを調節するジャッキ機構を含む。
これによって、後方延出位置のスライドフレームが水平になるよう調整できる。
【0012】
好ましくは、前記脚部の下端部に転動体が設けられている。
これによって、スライドフレーム及びそれに積載されたウィンチを前後スライドさせる際、転動体が着地して転動されることによって、脚部が、スライドフレーム及びウィンチの荷重の一部を支持しながら、スライドフレームと一緒に円滑に前後スライドできる。
【0013】
好ましくは、前記脚部が、前記スライドフレームの後端部から上へ立ち上がる立上り位置と、前記スライドフレームから下へ延びる下支え位置との間で昇降可能な脚本体を含み、
前記スライドフレームが前記前進位置に在るときは前記脚本体が前記立上り位置に在り、
前記スライドフレームの後端部が前記荷台より後方へ延び出た状態のとき、前記脚本体の昇降が許容される。
スライドフレームが荷台上の前進位置に在るときは、脚本体ひいては脚部を立上り位置にすることによって、脚部が荷台と干渉しないよう退避される。
更生施工現場では、脚本体が下降されて、後方延出位置のスライドフレームが下支え位置の脚本体ひいては脚部によって支持される。また、後方延出位置へ引き出したり前進位置へ戻したりするとき、脚本体ひいては脚部を下支え位置にして、スライドフレームの後端部を支持できる。
【0014】
好ましくは、前記脚部の頂端部に吊り具を係着可能な被吊り部が設けられている。
これによって、前記立上り位置の脚部をウィンチ支持装置の吊り揚げ用の吊り柱として兼用できる。
【0015】
好ましくは、前記ウィンチ支持装置が、前記荷台の後端部を支持する補助ジャッキ機構を更に備えている。
これによって、荷台の後端部に掛かるウィンチの荷重を補助ジャッキ機構で受けることができ、運搬車両の前側部が浮いたり運搬車両がバランスを崩したりするのを防止できる。
【0016】
好ましくは、前記荷台には、前記スライドフレームをスライド可能に支持するベースフレームと、前記ベースフレームを回転させる回転機構とが設けられている。
これによって、ウィンチの向きを回転機構によって調節できる。例えば、到達人孔の地上出入口が運搬車両の車幅方向の一方側に偏って配置されていたときでも、回転機構にてベースフレームを角度調節することによって、ウィンチが到達人孔の地上出入口の真上に配置されるようにできる。また、回転機構にてベースフレームを左右に動かすことによって、ウィンチのワイヤドラムを左右に動かして、ワイヤの乱巻きを防止できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、樹脂製の更生管を牽引して既設管にライニングする既設管更生工法において、更生管の牽引に用いられるウィンチを運搬車両に積載した状態から更生施工現場に容易に設置でき、ウィンチを更生施工現場に設置するための人員・時間・手間を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る既設管更生工法による下水道管(既設管)の更生施工現場を、更生管引き込み準備段階で、かつ所定位置に止められたウィンチ運搬車両の荷台上のウィンチ支持装置のフレームのスライドフレームを前進位置にして示す側面断面図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿う、前記ウィンチ運搬車両及びウィンチ支持装置の背面図である。
図3図3は、図1のIII-III線に沿う、前記ウィンチ運搬車両の荷台及びウィンチ支持装置の平面図である。
図4図4(a)は、前記フレームの後端部の脚部の脚本体を立上り位置で示す、図2のIVa-IVa線に沿う側面図である。図4(b)は、前記脚本体の固定を解除する様子を示す側面図である。図4(c)は、前記脚本体を下支え位置まで下降させた状態の側面図である。図4(d)は、前記脚本体に脚アタッチメントを付けて脚部を着地させた状態の側面図である。図4(e)は、前記スライドフレームを後方延出位置にした状態の前記フレームの後端部及び脚部を示す、図6のIVe-IVe線に沿う側面図である。
図5図5は、前記既設管更生工法において、前記スライドフレームを後方延出位置にして行なう更生管引き込み工程を示す、前記更生施工現場の到達側部分の側面断面図である。
図6図6は、図5のVI-VI線に沿う、前記ウィンチ運搬車両及びウィンチ支持装置の背面図である。
図7図7は、図5のVII-VII線に沿う、前記ウィンチ運搬車両の荷台及び前記後方延出位置のウィンチ支持装置の平面図である。
図8図8は、到達人孔の地上出入口が道路の端に偏っていた場合の既設更生工法を、前記スライドフレームが前進位置の状態で示す前記ウィンチ運搬車両の荷台及びウィンチ支持装置の平面図である。
図9図9は、到達人孔の地上出入口が道路の端に偏っていた場合の既設更生工法を、前記スライドフレームが後方延出位置の状態で示す前記ウィンチ運搬車両の荷台及びウィンチ支持装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1は、老朽化した既設管1を更生する既設管更生工法の様子を示したものである。更生対象の既設管1は、例えば地中に埋設された下水道管によって構成されているが、本発明は、これに限定されず、上水道管、農業用水管、ガス管、水力発電導水管、トンネルなどでもよい。既設管1の内壁に更生管3がライニングされることによって、既設管1が更生される。
【0020】
既設管1の一端の発進管口1eは発進人孔4に連なっている。既設管1の他端の到達管口1fは到達人孔4Bに連なっている。発進人孔4の地上出入口付近には、更生管用運搬車両6Aが配車されている。更生管用運搬車両6Aの荷台のドラム5から更生管3が繰り出される。図1の二点鎖線及び図5にて示すように、更生管3は、発進人孔4を通して発進管口1eから既設管1の内部へ挿入される。
【0021】
更生管3は、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂、その他の熱可塑性樹脂からなる円筒管である。なお、詳細な図示は省略するが、製造後、前記挿入までの更生管3は、周方向の一側部が凹まされた「凹」字状の断面形状になっている。
【0022】
図1の二点鎖線及び図5に示すように、更生管3の挿入方向の先端部3fには、牽引ワイヤ7が繋着される。牽引ワイヤ7は、到達管口1fから到達人孔4Bを通して地上のウィンチ8に連なっている。ウィンチ8は、牽引ワイヤ7を巻き取るワイヤドラム8aと、ワイヤドラム8aを回転駆動させるモータ8bを含む。詳細な図示は省略するが、ウィンチ8によって、更生管3が到達管口1fに達するまで既設管1内に引き込まれる。引き込み後の更生管3は、高温蒸気等で加熱されて円形断面に戻され、更に圧縮空気等で膨張されて既設管1の内壁に密着される。これによって、既設管1を更生できる。
【0023】
図1に示すように、更生管3の前記引き込みに際して、到達人孔4Bの地上出入口4Beの近くにはウィンチ8用の運搬車両6が配車される。運搬車両6の荷台6bには、ウィンチ支持装置10が設けられている。ウィンチ支持装置10にウィンチ8が支持されている。図2及び図3に示すように、ウィンチ支持装置10は、回転機構11と、フレーム20と、脚部30を備えている。
【0024】
図2に示すように、回転機構11は、台板12と、回転盤13を含む。台板12が荷台6bの上面に固定されている。台板12上に回転盤13が水平回転可能に重ねられている。
【0025】
図2に示すように、回転機構11を介してフレーム20が荷台6bに支持されている。図2及び図3に示すように、フレーム20は、ベースフレーム21と、スライドフレーム22を含む。ベースフレーム21は、ベース板21aと、一対のガイドレール23を有している。ベース板21aが、回転盤13上に載せられて、回転盤13に対して固定されている。したがって、図7において矢印φにて示すように、ベースフレーム21ひいてはフレーム20は、回転機構11によって回転可能ないしは角度調節可能である。ベース板21aの左右(図3において上下)の両縁には、それぞれガイドレール23が前後(図3において左右)へ延びるように設けられている。
【0026】
図2及び図3に示すように、スライドフレーム22は、架台22aと、左右一対のスライドレール24を有している。架台22aは、縦架材22b及び横架材22cを含み、ベース板21aの上方に水平に配置されている。架台22aの左右両縁には、それぞれスライドレール24が前後へ延びるように設けられている。各スライドレール24が、対応するガイドレール23にスライド可能に嵌合されている。これによって、スライドフレーム22が、ベースフレーム21にスライド可能に支持されている。
【0027】
詳しくは、図3及び図7に示すように、スライドフレーム22は、ベースフレーム21に沿って、前進位置と後方延出位置との間で前後(図3及び図7において左右)へスライド可能である。図3に示すように、前進位置におけるスライドフレーム22は、荷台6b上に配置されている。図7に示すように、後方延出位置におけるスライドフレームは、荷台6bから車両後方(図7において右方)へ延び出している。
【0028】
図3に示すように、スライドフレーム22上にウィンチ8のワイヤドラム8aとモータ8bが載置されている。ベースフレームにおけるスライドフレーム22の可動範囲より前方(図3において左方)の部分には、ウィンチ8の運転制御用の制御盤8cが設けられている。なお、制御盤8cについても、スライドフレーム22上に配置されていてもよい。制御盤8cが、直接、荷台6bに載置されていてもよい。
【0029】
図3に示すように、スライドフレーム22の四隅には、それぞれ筒状の吊り柱25が立設されている。図2に示すように、各吊り柱25の頂端部には円輪形の被吊り部26が設けられている。図2において二点鎖線にて示すように、被吊り部26に吊りワイヤ9を係着して、ウィンチ支持装置10を吊り上げることができる。
【0030】
図2及び図3に示すように、スライドフレーム22の後端部(図3において右端部)の2つの吊り柱25は、脚部30の脚本体31を兼ねている。詳述すると、図4(e)及び図6に示すように、脚部30は、脚本体31と、脚アタッチメント32を備えている。脚本体31は、長さ方向を上下へ向けた直立姿勢で、スライドフレーム22の後端部に立上り位置(図2)と下支え位置(図6)との間で昇降可能に設けられている。図2及び図3に示すように、スライドフレーム22が前進位置のときは、脚本体31が立上り位置に配置される。図2に示すように、立上り位置における脚本体31は、スライドフレーム22から立ち上がることで、吊り柱25として機能する。
【0031】
図4(a)~同図(e)に示すように、脚本体31における上端部及び下端部のそれぞれ側部には、ピン穴31b,31cが形成されている。スライドフレーム22の後端部の側部には、ピン穴22hが形成されている。図4(a)に示すように、脚本体31が立上り位置のとき、下側のピン穴31cとピン穴22hとが一致されて、これらピン穴31c,22hにピン33が通されている。これによって、脚本体31が立上り位置に保持されている。
【0032】
図4(b)~同図(e)に示すように、スライドフレーム22の後端部が荷台6bから延び出た状態(後方延出位置(図4(e))を含む)のとき、脚本体31の昇降が許容されることで、脚本体31が下支え位置に配置可能である。逆に言うと、スライドフレーム22が前進位置のとき、脚本体31が下支え位置から退避される(図4(a))。
【0033】
図4(c)に示すように、下支え位置における脚本体31は、スライドフレーム22から下方へ延びている。ひいては、図4(d)及び同図(e)に示すように、脚部30が、スライドフレーム22の下側に立設されるように配置されて、スライドフレーム22の後端部を支持する。
【0034】
図4(d)及び同図(e)に示すように、脚本体31が下支え位置のとき、上側のピン穴31bとピン穴22hとが一致されて、これらピン穴31b,22hにピン33が通されている。これによって、脚本体31ひいては脚部30が下支え位置に保持されている。
【0035】
図4(d)に示すように、脚本体31の下端部には、脚アタッチメント32が着脱可能である。脚アタッチメント32は、例えばスクリュー式のジャッキ機構34と、車輪35(転動体)を含む。図4(a)に示すように、脚アタッチメント32は、脚本体31が立上り位置のときは脚本体31から取り外されている。図4(d)に示すように、脚本体31が下支え位置のとき、ジャッキ機構34のシャフト34aが、筒状の脚本体31の下端開口から脚本体31内に抜き差し可能に挿し込まれている。ジャッキ機構34によって、下支え位置の脚本体31が昇降可能に支持され、ひいてはスライドフレーム22の後端部の支持高さが調節される。
【0036】
図4(d)に示すように、ジャッキ機構34の下端部には車輪35が設けられている。脚本体31ひいては脚部30が下支え位置のとき、車輪35が着地されている。スライドフレーム22のスライドに合わせて、車輪35が地上を転動される。これによって、脚部30が、スライドフレーム22を支持した状態で、スライドフレーム22と一体にスライド可能である。
【0037】
図5に示すように、更に、ウィンチ支持装置10は、補助ジャッキ機構40を備えている。補助ジャッキ機構40は、スライドフレーム22が後方延出位置にされるときに荷台6bの後端部の下側に設置されて、荷台6bの後端部を下から支持する。
【0038】
既設管1の内壁に更生管3をライニングする既設管更生工法において、ウィンチ支持装置10は次のようにして用いられる。
更生施工現場(図1)から離れたウィンチ積載場所(図示省略)において、ウィンチ支持装置10にウィンチ8を載せる。このとき、スライドフレーム22は前進位置に在る。図4(a)に示すように、脚部30の脚本体31は、立上り位置に在り、ピン33がピン穴31c,22hに挿し込まれている。脚アタッチメント32は脚本体31から取り外されている。続いて、四隅の吊り柱25の被吊り部26に吊りワイヤ9(図2の二点鎖線)が係着されることによって、ウィンチ8を載せたウィンチ支持装置10がクレーンで吊り上げられて、ウィンチ用運搬車両6の荷台6bに設置される。
ウィンチ支持装置10だけを荷台6bに設置した後、そのウィンチ支持装置10上にウィンチ8を載せてもよい。
【0039】
このようにして、ウィンチ8を、ウィンチ支持装置10に載せた状態で、運搬車両6によって更生施工現場(図1)へ運搬する。
図1に示すように、更生施工現場においては、運搬車両6を、到達人孔4Bの地上出入口4Beの直ぐ近くに、地上出入口4Beに対して後ろ向きに止める。運搬車両6を地上出入口4Beに対し横付けする必要は無い。したがって、更生施工現場の道路2の幅が狭くても、運搬車両6が入れる程度の道幅であれば、運搬車両6を到達人孔4Bの地上出入口4Beの近くまで乗り入れることができる。
図1図3に示すように、この時点まで、スライドフレーム22が前進位置に在ることで、ウィンチ8の全荷重がスライドフレーム22を介して運搬車両6の荷台6bに掛かっている。
【0040】
続いて、スライドフレーム22を荷台6bから車両後方へ引き出す。
スライドフレーム22の後端部が、荷台6bから少し後方へ突出された時点で、一旦、引き出しを停止して、脚本体31のピン穴31cからピン33を引き抜く(図4(b))。これによって、図4(b)~同図(c)に示すように、脚本体31が昇降可能になる。図4(d)に示すように、該脚本体31の下端部に脚アタッチメント32を取り付けるとともに、脚本体31を下支え位置まで下降させて、車輪35を着地させる。続いて、ピン33をピン穴31bに挿し込むことで、脚本体31を下支え位置に固定する。これによって、脚部30が、スライドフレーム22及びウィンチ8の荷重の一部Wを担うことができる。
【0041】
図4(d)~同図(e)に示すように、その後、スライドフレーム22の引き出しを再開する。これによって、スライドフレーム22上のウィンチ8が、スライドフレーム22と共に車両後方へ引き出される。脚部30は、下支え位置のまま、荷重Wを担いながらスライドフレーム22と一体に平行移動される。脚部30の下端の車輪35が地面上を転がることで、脚部30が低摩擦で円滑に平行移動される。引き出しに伴って、脚部30に掛かる荷重W(図5)が大きくなる。
【0042】
図5図7に示すように、スライドフレーム22が後方延出位置に達するまで引き出しを行なう。好ましくは、スライドフレーム22が後方延出位置に在るとき、2本の脚部30が到達人孔4Bの地上出入口4Beを跨ぎ、ウィンチ8のワイヤドラム8aのワイヤ出し入れ部8dが地上出入口4Beの直上に位置される。逆に言うと、後方延出位置のスライドフレーム22がそのように配置されるよう、運搬車両6を止めておく。
【0043】
図8に示すように、到達人孔4Bの地上出入口4Beが道路2の一方(図8において下側)の端2eに偏って配置されていたときは、運搬車両6を地上出入口4Beに寄せて後ろ向きに止めた後、回転機構11によってフレーム20を回し、フレーム20の後端部が平面投影視で地上出入口4Beを向くよう角度調節する。そして、スライドフレーム22を荷台6bから車両後方へ引き出す。これによって、図9に示すように、平面投影視で、スライドフレーム22が、道路2の端2eへ向かって斜めに引き出される。この結果、脚部30が到達人孔4Bの地上出入口4Beを跨ぐとともに、ウィンチ8のワイヤドラム8aのワイヤ出し入れ部8dが地上出入口4Beの直上に配置されるようにできる。
【0044】
後方延出位置におけるスライドフレーム22の前端部は荷台6bに支持されるとともに、スライドフレーム22の後端部は下支え位置の脚部30によって支持される。これによって、車両後方へ引き出されたスライドフレーム22及びウィンチ8が片持ち状態になるのを回避でき、引き出されたウィンチ8を安定的に支持できる。
【0045】
運搬車両6を止めた位置と、到達人孔4Bの地上出入口4Beの周辺との高低差等によって、スライドフレーム22が傾いているときは、ジャッキ機構34によって脚部30を上下に伸縮させて、スライドフレーム22の後端部の支持高さを調節する。これによって、スライドフレーム22を水平にすることができる。したがって、ウィンチ8のワイヤドラム8aの回転軸を水平に保持できる。
【0046】
さらに、荷台6bの後端部の下側に補助ジャッキ機構40(図5)を設置する。補助ジャッキ機構40によって、荷台6bの後端部を下から支持する。これによって、荷台6bの後端部に掛かるウィンチ8の荷重を補助ジャッキ機構40で受けることができ、運搬車両6の前側部が浮いたり運搬車両6がバランスを崩したりするのを防止できる。
【0047】
このようにして、ウィンチ8を更生施工現場の所定位置に容易に設置できる。
更生施工現場から離れた場所でウィンチ8を手押し台車に移し替えて、複数人が人力で運ぶ必要は無い。したがって、人員・時間・手間を省くことができる。
ウィンチ8の重量が、車両後方への許容吊り荷重を上回っていても何ら支障が無い。そもそもウィンチ8を荷台6bから吊り降ろす必要が無いから、クレーンは不要であり、運搬車両6にクレーンが付属されている必要は無い。
【0048】
その後、図5に示すように、ウィンチ8の駆動によって牽引ワイヤ7が巻き取られる。これによって、発進側管口1eから既設管1内に挿し入れられた更生管3が、牽引ワイヤ7によって到達側管口1fへ向けて引き込まれる。
このとき、例えば回転機構11によってフレーム20を一定角度範囲で左右に往復するよう動かしてもよい。これによって、ウィンチ8のワイヤドラム8aが左右に往復され、牽引ワイヤ7の乱巻きを防止できる。
【0049】
図示は省略するが、更生管3の先端部3fが到達管口1fまで達したら、ウィンチ8の駆動を停止して更生管3の引き込みを終了し、牽引ワイヤ7を更生管3の先端部3fから取り外す。その後、更生管3を加熱膨張させて既設管1の内壁に密着させる。
【0050】
一方、ウィンチ8及びウィンチ支持装置10については、設置時とは逆の手順で撤収作業を行なう。すなわち、スライドフレーム22を前方へ押し戻す。これによって、ウィンチ8が荷台6bへ向けてスライドされる。このとき、脚部30は、下支え位置のまま、荷重Wを担いながらスライドフレーム22と一緒に前方へ平行移動される。車輪35が地面上を転がることで、脚部30が低摩擦で円滑に前方へ平行移動される。
【0051】
スライドフレーム22の後端部が、荷台6bの後端部の直近まで達した時(図4(d)
)、一旦、前方スライドを停止して、2本の脚本体31のピン穴31bからピン33を引き抜く。これによって、脚本体31が昇降可能になる。該脚本体31の下端部から脚アタッチメント32を引き抜いて撤去するとともに、脚本体31を立上り位置まで上昇させて、ピン33をピン穴31cに挿し込むことで、脚本体31を立上り位置に固定する。
【0052】
続いて、スライドフレーム22を更に前方へ押して前進位置まで戻す。これによって、ウィンチ8を運搬車両6の荷台6b上に簡単に戻すことができる。
また、補助ジャッキ機構40を撤去する。
このようにして、ウィンチ8及びウィンチ支持装置10を更生施工現場からすみやかに撤収することができ、撤収のための人員・時間・手間を省くことができる。クレーンも不要である。
【0053】
本発明は、前記実施形態に限らず種々の改変をなすことができる。
例えば、脚部30の脚本体31を含む全体がフレーム20に着脱可能であってもよく、スライドフレーム22が前進位置のときは脚部が取り外され、スライドフレーム22が後方延出位置のとき、スライドフレーム22の後端部に脚部が取り付けられるようになっていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、例えば、老朽化した下水道管の更生技術に適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 既設管
1e 発進管口
1f 到達管口
2 道路
2e 端
3 更生管
3f 挿入方向の先端部
4 発進人孔
4B 到達人孔
4Be 地上出入口
6A 更生管用運搬車両
6 ウィンチ用運搬車両(運搬車両)
6b 荷台
7 牽引ワイヤ
8 ウィンチ
8a ワイヤドラム
8b モータ
8c 制御盤
10 ウィンチ支持装置
11 回転機構
13 回転盤
20 フレーム
21 ベースフレーム
22 スライドフレーム
23 ガイドレール
24 スライドレール
25 吊り柱
26 被吊り部
30 脚部
31 脚本体
32 脚アタッチメント
33 ピン
34 ジャッキ機構
34a シャフト
35 車輪(転動体)
40 補助ジャッキ機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9