(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172976
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】車両用ベントダクト
(51)【国際特許分類】
B60H 1/26 20060101AFI20241205BHJP
B62D 25/04 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B60H1/26 611A
B62D25/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091065
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡野 昌之
【テーマコード(参考)】
3D203
3L211
【Fターム(参考)】
3D203CB24
3D203DA18
3D203DA22
3L211BA12
3L211DA17
(57)【要約】
【課題】換気性能を維持しつつ、車室内への騒音の進入を抑制できる車両用ベントダクトを得る。
【解決手段】車両用ベントダクト10は、車体に取付けられると共に、車室内と車室外とを連通する開口部23と、該開口部23の上縁に設けられた係止爪部30とを含んで構成されたダクト本体20と、ダクト本体20における係止爪部30に揺動可能な状態で係止されて開口部23を覆う弁体22と、を有し、ダクト本体20には、開口部23の下縁から車両外側かつ車両上方側へ延在する遮音壁部34が形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取付けられると共に、車室内と車室外とを連通する開口部と、該開口部の上縁に設けられた係止爪部とを含んで構成されたダクト本体と、
前記ダクト本体における前記係止爪部に揺動可能な状態で係止されて前記開口部を覆う弁体と、
を有し、
前記ダクト本体には、前記開口部の下縁から車両外側かつ車両上方側へ延在する遮音壁部が形成されている、車両用ベントダクト。
【請求項2】
前記開口部の下縁には、前記弁体を車両内側から支持するストッパが設けられている請求項1に記載の車両用ベントダクト。
【請求項3】
前記遮音壁部は、前記弁体が揺動する際における前記弁体の下端の軌道と対応する形状に湾曲している請求項1に記載の車両用ベントダクト。
【請求項4】
前記遮音壁部と分岐して前記開口部の下縁から車両外側へ延在する分岐壁部を備えている請求項1に記載の車両用ベントダクト。
【請求項5】
前記弁体及び前記遮音壁部は、上下方向に複数配置されており、
上方に位置する前記遮音壁部よりも下方に位置する前記遮音壁部の方が長く形成されている請求項1~4の何れか1項に記載の車両用ベントダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ベントダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ダクト本体と弁体とを備えたベントダクトが開示されている。特許文献1に記載のベントダクトでは、ダクト本体に形成された取付ピンに弁体の挿通孔が揺動可能に挿通されている。また、弁体の挿通孔の形状を工夫することで、弁体を車室外側へ大きく揺動させることが可能な構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたベントダクトでは、車両の走行時における気流の影響や車両の振動などによって弁体がばたつくことで車室内に騒音が進入する可能性がある。一方、弁体の質量を大きくすれば、弁体のばたつきを抑制できる反面、ベントダクトの本来の機能である換気性能が低下する可能性がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、換気性能を維持しつつ、車室内への騒音の進入を抑制できる車両用ベントダクトを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明に係る車両用ベントダクトは、車体に取付けられると共に、車室内と車室外とを連通する開口部と、該開口部の上縁に設けられた係止爪部とを含んで構成されたダクト本体と、前記ダクト本体における前記係止爪部に揺動可能な状態で係止されて前記開口部を覆う弁体と、を有し、前記ダクト本体には、前記開口部の下縁から車両外側かつ車両上方側へ延在する遮音壁部が形成されている。
【0007】
請求項1に記載の本発明に係る車両用ベントダクトでは、車体に取付けられるダクト本体を備えており、ダクト本体には車室内と車室外とを連通する開口部が形成されている。また、ダクト本体における開口部の上縁には係止爪部が設けられており、この係止爪部に弁体が揺動可能な状態で係止される。そして、弁体によって開口部が覆われている。これにより、無負荷状態では弁体によって開口部が覆われることで車外からの騒音が車室内へ進入するのを抑制できる。また、車室内と車室外との気圧差が生じた際には、弁体が揺動して開口部が一時的に開放されることで、車室内の空気を排気できる。
【0008】
また、ダクト本体には、開口部の下縁から車両外側かつ車両上方側へ延在する遮音壁部が形成されている。これにより、車外からダクト本体へ向かう音の一部を遮音壁部で遮ることができ、車内へ音が進入するのを抑制できる。
【0009】
請求項2に記載の本発明に係る車両用ベントダクトは、請求項1において、前記開口部の下縁には、前記弁体を車両内側から支持するストッパが設けられている。
【0010】
請求項2に記載の本発明に係る車両用ベントダクトでは、ストッパによって弁体を車両内側から支持することで、弁体が開口部内に入り込むのを抑制できる。
【0011】
請求項3に記載の本発明に係る車両用ベントダクトは、請求項1において、前記遮音壁部は、前記弁体が揺動する際における前記弁体の下端の軌道と対応する形状に湾曲している。
【0012】
請求項3に記載の本発明に係る車両用ベントダクトでは、遮音壁部が弁体の下端の軌道と対応する形状に湾曲しているため、弁体が揺動した際に、弁体と遮音壁部との間の隙間を一定に保つことができる。
【0013】
請求項4に記載の本発明に係る車両用ベントダクトは、請求項1において、遮音壁部と分岐して前記開口部の下縁から車両外側へ延在する分岐壁部を備えている。
【0014】
請求項4に記載の本発明に係る車両用ベントダクトでは、分岐壁部を備えたことにより、遮音壁部のみで遮音する構造と比較して、より遮音効果を高めることができる。
【0015】
請求項5に記載の本発明に係る車両用ベントダクトは、請求項1~4の何れか1項において、前記弁体及び前記遮音壁は、上下方向に複数配置されており、上方に位置する前記遮音壁部よりも下方に位置する前記遮音壁部の方が長く形成されている。
【0016】
請求項5に記載の本発明に係る車両用ベントダクトでは、上方に位置する遮音壁部よりも下方に位置する遮音壁部の方が長く形成されている。これにより、車室内へ進入する騒音のうち、ロードノイズなどの下方からの騒音が車室内へ進入するのを効果的に抑制できる。また、上方に位置する遮音壁部を比較的短く形成することで、換気性能を維持できる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明に係る車両用ベントダクトによれば、換気性能を維持しつつ、車室内への騒音の進入を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態に係る車両用ベントダクトが適用された車両を後方側から見た斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る車両用ベントダクトの斜視図であり、弁体が取付けられていない状態を示す図である。
【
図3】
図2の3-3線で切断した状態を拡大して示す断面図である。
【
図4】(A)は第1実施形態に係る車両用ベントダクトの要部を拡大した要部拡大断面図であり、(B)は比較例に係る車両用ベントダクトの要部を拡大した要部拡大断面図である。
【
図5】(A)は第1変形例に係る車両用ベントダクトの要部を拡大した要部拡大断面図であり、(B)は第2変形例に係る車両用ベントダクトの要部を拡大した要部拡大断面図である。
【
図6】第2実施形態に係る車両用ベントダクトの要部を拡大した要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
以下、図面を参照して、第1実施形態に係る車両用ベントダクト10について説明する。なお、各図に適宜示される矢印UPは車両上方側を示しており、矢印FRは車両前方側を示しており、矢印LHは車両幅方向(左右方向)の左側を示している。また、以下の説明で特記なく前後、上下、左右の方向を用いる場合は、車両前後方向の前後、車両上下方向の上下、進行方向を向いた場合の左右を示すものとする。
【0020】
図1は、実施形態に係る車両用ベントダクト10が適用された車両12を後方側から見た斜視図である。
図1に示されるように、本実施形態の車両用ベントダクト10(以下、適宜「ベントダクト10」と称する。)は、車両(車体)12の後側部に設けられたクウォータベントダクトとされている。具体的には、ベントダクト10は、車両12の車体外板の一部を構成すると共に車室内と車室外とを隔てるクウォータパネル14に設けられている。
【0021】
ベントダクト10は、リヤバンパカバー16の車両幅方向外側の部位16Aに覆われているが、
図1では説明の便宜上、ベントダクト10を車両外側から見える状態で図示している。ここで、例えば、図示しない空調装置を作動させた場合、及びサイドドア18が閉止された場合など、車室内の圧力が車室外の圧力よりも高くなった際に、ベントダクト10を通じて車室内の空気が車室外へ排出されるように構成されている。なお、本実施形態では、車両12の左側にベントダクト10が設けられているが、これに限らず、車両12の右側にベントダクト10を設けてもよく、車両12の左右両側にベントダクト10を設けてもよい。また、車両12の他の部位にベントダクト10を設けてもよい。
【0022】
図2は、実施形態に係るベントダクト10の斜視図であり、説明の便宜上、弁体22が取付けられていない状態が図示されている。
図2に示されるように、ベントダクト10は、ダクト本体20を含んで構成されている。ダクト本体20は、樹脂部品によって形成されており、車両上下方向を長手方向とする枠体24を備えている。
【0023】
枠体24は、上部に位置して車両前後方向(紙面左右方向)に延在された上壁部24Aと、下部に位置して車両前後方向に延在された下壁部24Bと、上壁部24Aと下壁部24Bの端部同士を接続する一対の側壁部24Cと、を含んで構成されている。ここで、
図3に示されるように、枠体24の内側には開口部23が形成されており、この開口部23によって車室内と車室外とが連通されている。また、開口部23は、弁体22によって車室外側から塞がれている。
【0024】
図3は、
図2の3-3線で切断した状態を拡大して示す要部拡大断面図である。
図2及び
図3に示されるように、ダクト本体20には、枠体24における一対の側壁部24Cを繋ぐ横連結部26が設けられている。横連結部26は、ダクト本体20の上下方向に等間隔に設けられており、本実施形態では一例として、4つの横連結部26が設けられている。このため、開口部23は、上壁部24A、下壁部24B及び4つの横連結部26によって、5つに区画されており、それぞれの開口部23を5つの弁体22が覆う構造となっている。
【0025】
また、ダクト本体20には、枠体24における上壁部24Aと下壁部24Bとを繋ぐ複数のリブ28が設けられている。本実施形態では、3つのリブ28が設けられており、リブ28によって横連結部26が上下に連結されている。リブ28はそれぞれ、上方から下方へ向かうにつれて車両左側(車両幅方向外側)へ傾斜しており、リブ28によって弁体22の裏面が支持されている。
【0026】
図3に示されるように、ダクト本体20には、複数の係止爪部30が設けられており、これらの係止爪部30に弁体22が係止される。本実施形態では一例として、5つに区画されたそれぞれの開口部23の上縁に3つの係止爪部30が設けられており、3つの係止爪部30によって弁体22がダクト本体20に係止されている。
【0027】
図4(A)は、ベントダクト10の要部を拡大した要部拡大断面図である。
図4に示されるように、弁体22は、可撓性を有する材質でシート状に形成されており、本実施形態では一例として、弁体22がゴムシートによって形成されている。弁体22の上部には、厚さ方向に貫通した取付孔22Aが形成されており、取付孔22Aの大きさは、ダクト本体20における係止爪部30の基端部と略同じ大きさに形成されている。
【0028】
係止爪部30の先端側から取付孔22Aを差し込むことで、弁体22をダクト本体20に取付けることができるように構成されている。また、弁体22は、係止爪部30に揺動可能な状態で係止されて開口部23を覆っている。なお、図示はしないが、係止爪部30の先端を基端よりも肉厚に形成することで弁体22が抜け出るのを抑制する構成としてもよい。
【0029】
ここで、ダクト本体20には、開口部23の下縁から車両左側(車両外側)かつ車両上方側へ延在する遮音壁部32が形成されている。具体的には、遮音壁部32は、車両外側かつ車両下方側に膨出するように湾曲した略円弧状に形成されており、遮音壁部32の基端側が横連結部26の前端に接続されている。
【0030】
また、本実施形態では、遮音壁部32は、弁体22が揺動する際における弁体22の下端の軌道と対応する形状に湾曲している。このため、弁体22が揺動する際に弁体22と遮音壁部32との隙間が一定に維持される。
【0031】
さらに、開口部23の下縁には、弁体22を車両内側から支持するストッパ34が設けられている。ストッパ34は、横連結部26と遮音壁部32との境界部分から上方へ突出するように形成されている。また、本実施形態では一例として、ストッパ34は一方の側壁部24Cから他方の側壁部24Cまで連続して延在されている。
【0032】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0033】
本実施形態に係るベントダクト10では、ダクト本体20に車室内と車室外とを連通する開口部23が形成されており、開口部23の上縁には係止爪部30が設けられ、係止爪部30に弁体22が揺動可能な状態で係止される。また、弁体22は、可撓性を有する材質で形成されており、弁体22によって開口部23が覆われている。これにより、無負荷状態では弁体22によって開口部23が覆われることで車外からの騒音が車室内へ進入するのを抑制できる。また、車室内と車室外との気圧差が生じた際には、弁体22が揺動して開口部23が一時的に開放されることで、車室内の空気を排気できる。
【0034】
また、ダクト本体20には、開口部23の下縁から車両外側かつ車両上方側へ延在する遮音壁部32が形成されている。これにより、車外からダクト本体20へ向かう音の一部を遮音壁部32で遮ることができ、車内へ音が進入するのを抑制できる。
【0035】
特に、本実施形態では、遮音壁部32が弁体22の下端の軌道と対応する形状に湾曲しているため、弁体22が揺動した際に、弁体22と遮音壁部32との間の隙間を一定に保つことができる。これにより、弁体22を安定して揺動させることができる。
【0036】
上記効果について、比較例と対比して説明する。
図4(B)は、比較例に係る車両用ベントダクト100の要部を拡大した要部拡大断面図である。
図4(B)に示されるように、比較例に係る車両用ベントダクト100では、遮音壁部32及びストッパ34が設けられていない点で実施形態のベントダクト10と異なっている。
【0037】
比較例の車両用ベントダクト100は、遮音壁部32を備えていないため、弁体22の下端が横連結部26によって支持される構造である。ここで、弁体22が揺動して開口部23が開放されると、弁体22と横連結部26との隙間から車室内へ車外の音が進入する。特に、ロードノイズなどの下方で発生した音は、弁体22及びダクト本体20に遮られることなく開口部23を通じて車室内に進入する。
【0038】
これに対して、本実施形態では、遮音壁部32によって特に車両下方側からの音を遮蔽することができるため、車室内への騒音の進入を抑制できる。
【0039】
また、本実施形態では、ストッパ34によって弁体22を車両内側から支持することで、弁体22が開口部内に入り込むのを抑制できる。すなわち、リブ28のみで弁体22を支持する構造の場合、ベントダクト10の車室内側と車室外側との圧力差が生じた際に肉薄で可撓性の弁体22の一部が変形して開口部23内に入り込むことが考えられる。本実施形態では、一方の側壁部24Cから他方の側壁部24Cまでストッパ34が延在されているため、弁体22の下端部の全域を支持することができ、弁体22が変形して開口部23内に入り込むのを効果的に抑制できる。
【0040】
なお、ベントダクト10は、
図2~4に図示する構成に限定されず、他の構成を採用してもよい。例えば、
図5(A)及び
図5(B)に示される変形例の構成を採用してもよい。
【0041】
(第1変形例)
図5(A)は第1変形例に係る車両用ベントダクトの要部を拡大した要部拡大断面図である。
図5(A)に示されるように、本変形例では、遮音壁部32の下方に分岐壁部36を備えている。分岐壁部36は、遮音壁部32と分岐して開口部23の下縁から車両外側へ延在している。
【0042】
本実施形態では一例として、分岐壁部36は、横連結部26の前端から車両左側(車両外側)へ延在されることで形成されており、分岐壁部36と遮音壁部32との間に空間が形成されている。
【0043】
本変形例によれば、分岐壁部36を備えたことにより、遮音壁部32のみで遮音する構造と比較して、より遮音効果を高めることができる。具体的には、分岐壁部36と遮音壁部32との間の空間に入り込んだ音と、分岐壁部36を回折した音とが干渉することで開口部23への音の進入を抑制できる効果が期待される。また、分岐壁部36と遮音壁部32との間の空間に入り込んだ音が分岐壁部36及び遮音壁部32に交互に反射しながら奥へ進むことで、減衰する効果が期待される。
【0044】
(第2変形例)
図5(B)は第2変形例に係る車両用ベントダクトの要部を拡大した要部拡大断面図である。
図5(B)に示されるように、本変形例では、係止爪部30の先端から車両左側(車両外側)へデフレクタ38が延出されている。
【0045】
デフレクタ38は、例えば、遮音壁部32の先端よりもやや車両右側(車両内側)まで延在されており、係止爪部30と一体的に形成されている。なお、デフレクタ38を別に用意して係止爪部30に取付けてもよい。
【0046】
本変形例によれば、走行風などの風が遮音壁部32に弾かれて巻き込むように流れる場合に、デフレクタ38によって巻き込みを低減することができ、巻き込んだ風によって弁体22がばたつくのを抑制できる。また、デフレクタ38によって開口部23へ進入する音の進入経路が狭くなるため、騒音の進入を抑制できる。
【0047】
<第2実施形態>
次に、
図6を参照して第2実施形態に係る車両用ベントダクト50(以下、適宜「ベントダクト50」と称する。)について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
【0048】
図6は、第2実施形態に係るベントダクト50の要部を拡大した要部拡大断面図である。この
図6に示されるように、本実施形態のベントダクト50を構成するダクト本体52は、遮音壁部54、56、58を除いて第1実施形態のダクト本体20と同様の構造とされている。
【0049】
遮音壁部54は、上部に位置しており、開口部23の下縁から車両左側(車両外側)かつ車両上方側へ延在している。また、遮音壁部56は、遮音壁部54よりも下方に位置しており、開口部23の下縁から車両左側(車両外側)かつ車両上方側へ延在している。さらに、遮音壁部58は、遮音壁部56よりも下方に位置しており、開口部23の下縁から車両左側(車両外側)かつ車両上方側へ延在している。
【0050】
ここで、上部の遮音壁部54よりも中央部の遮音壁部56の方が長く形成されており、遮音壁部56よりも下部の遮音壁部58の方が長く形成されている。すなわち、本実施形態のベントダクト50は、弁体22及び遮音壁が上下方向に複数配置されており、上方に位置する遮音壁部よりも下方に位置する遮音壁部の方が長く形成されている。
【0051】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0052】
本実施形態に係るベントダクト50では、上方に位置する遮音壁部54よりも下方に位置する遮音壁部56、58の方が長く形成されている。これにより、車室内へ進入する騒音のうち、ロードノイズなどの下方からの騒音が車室内へ進入するのを効果的に抑制できる。また逆に、上方に位置する遮音壁部を比較的短く形成することで、換気性能を維持できる。この外の作用については第1実施形態と同様である。
【0053】
以上、実施形態及び変形例に係るベントダクト10、50について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。上記実施形態では、ダクト本体20を樹脂部品によって形成し、弁体22をゴムシートによって形成したが、これに限定されず、他の材質によって形成してもよい。例えば、ダクト本体20及び弁体22の少なく一方について吸音材を含む材質で形成してもよい。また、例えば、弁体22を樹脂板などの材質で形成してもよい。
【0054】
さらに、上記実施形態では、
図3に示されるように、弁体22が上下に5つ配列されていたが、これに限定されない。例えば、上下に配列する弁体22の数を4つ以下にしてもよく、6つ以上にしてもよい。また、車両前後方向(紙面左右方向)に複数の弁体22を配列してもよい。
【0055】
さらにまた、上記実施形態では、遮音壁部32、54、56、58が横連結部26(ダクト本体20)と一体的に形成されているが、これに限定されず、遮音壁部32、54、56、58を別体で用意して横連結部26に取付けた構造としてもよい。この場合、遮音壁部32、54、56、58をダクト本体20とは別の材料、例えば、吸音材として用いられる繊維系の材料を含んで形成すれば、ダクト本体20の周囲の音の一部を吸音して騒音が車内に進入するのを効果的に抑制できる。
【0056】
また、上記実施形態では、遮音壁部32、54、56、58を略円弧状に形成したが、これに限定されない。例えば、遮音壁部32、54、56、58を車両前後方向から見て直線状に形成してもよい。
【0057】
さらに、上記実施形態では、ストッパ34を設けたが、これに限定されず、リブ28によって弁体22を安定して支持可能であれば、ストッパ34を設けなくてもよい。また、リブ28の形状や長さについても特に限定されない。
【0058】
さらにまた、上記実施形態では、係止爪部30の基端部と先端部とを同じ厚みで図示しているが、これに限定されず、種々の形状を採用し得る。例えば、係止爪部30の先端部を肉厚にして弁体22の抜け出しを抑制した構造を採用してもよい。
【0059】
上記実施形態に関して、以下の付記を開示する。
(付記1)
車体に取付けられると共に、車室内と車室外とを連通する開口部と、該開口部の上縁に設けられた係止爪部とを含んで構成されたダクト本体と、
前記ダクト本体における前記係止爪部に揺動可能な状態で係止されて前記開口部を覆う弁体と、
を有し、
前記ダクト本体には、前記開口部の下縁から車両外側かつ車両上方側へ延在する遮音壁部が形成されている、車両用ベントダクト。
(付記2)
前記開口部の下縁には、前記弁体を車両内側から支持するストッパが設けられている付記1に記載の車両用ベントダクト。
(付記3)
前記遮音壁部は、前記弁体が揺動する際における前記弁体の下端の軌道と対応する形状に湾曲している付記1又は付記2に記載の車両用ベントダクト。
(付記4)
前記遮音壁部と分岐して前記開口部の下縁から車両外側へ延在する分岐壁部を備えている付記1~付記3の何れか1に記載の車両用ベントダクト。
(付記5)
前記弁体及び前記遮音壁は、上下方向に複数配置されており、
上方に位置する前記遮音壁部よりも下方に位置する前記遮音壁部の方が長く形成されている付記1~付記4の何れか1に記載の車両用ベントダクト。
【符号の説明】
【0060】
10 車両用ベントダクト
20 ダクト本体
22 弁体
23 開口部
30 係止爪部
32 遮音壁部
34 ストッパ
36 分岐壁部
50 車両用ベントダクト
52 ダクト本体
54 遮音壁部
56 遮音壁部
58 遮音壁部