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特開2024-172978アクセスポイント装置及びステーション装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172978
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】アクセスポイント装置及びステーション装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/28 20090101AFI20241205BHJP
   H04W 72/0453 20230101ALI20241205BHJP
   H04W 72/54 20230101ALI20241205BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20241205BHJP
   H04W 72/0457 20230101ALI20241205BHJP
【FI】
H04W16/28
H04W72/0453
H04W72/54 110
H04W84/12
H04W72/0457 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091068
(22)【出願日】2023-06-01
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和5年度、総務省、電波資源拡大のための研究開発委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100129115
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133569
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 進
(74)【代理人】
【識別番号】100131473
【弁理士】
【氏名又は名称】覚田 功二
(72)【発明者】
【氏名】中村 理
(72)【発明者】
【氏名】山田 良太
(72)【発明者】
【氏名】難波 秀夫
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067KK02
5K067KK03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ミリ波帯またはテラヘルツ波帯を含む複数リンク接続時に、無線LANデバイス間で好適なビーム方向を探索するアクセスポイント装置及びステーション装置を提供する。
【解決手段】ステーション装置と通信するアクセスポイント装置であって、受信部は、第1の周波数帯を用いてセクタスイープ要求フレームを受信し、第2の周波数帯を用いて複数のセクタスイープ信号を受信し、送信部は、第1の周波数帯を用いて、セクタスイープ応答フレーム及び複数のセクタスイープ信号の1つを示すビームインデックスを送信し、制御部は、複数のセクタスイープ信号の受信後、ステーション装置が送信に用いるビームインデックスを決定してステーション装置に送信するように送信部を制御する。セクタスイープ要求フレームは、第2の周波数帯を示す情報を含み、セクタスイープ応答フレームは、セクタスイープ送信信号の送信タイミングを含む。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステーション装置と通信するアクセスポイント装置であって、
受信部と、送信部と、制御部と、を備え、
前記受信部は、第1の周波数帯を用いてセクタスイープ要求フレームを受信、及び第2の周波数帯を用いて複数のセクタスイープ信号を受信し、
前記送信部は、第1の周波数帯を用いて、セクタスイープ応答フレームおよび複数のセクタスイープ信号の1つを示すビームインデックスを送信し、
前記制御部は、前記複数のセクタスイープ信号の受信後に、前記ステーション装置が送信に用いる前記ビームインデックスを決定し、前記ステーション装置に送信するように前記送信部を制御し、
前記セクタスイープ要求フレームは、第2の周波数帯を示す情報を含み、
前記セクタスイープ応答フレームは、セクタスイープ送信信号の送信タイミングを含み、前記送信タイミングから複数のセクタスイープ信号を受信する、
アクセスポイント装置。
【請求項2】
前記送信部は、
前記ステーション装置が保持している送信機会で前記ビームインデックスに関する情報を送信する、
請求項1に記載のアクセスポイント装置。
【請求項3】
前記受信部は、第2の周波数帯において、キャリアセンスにより送信機会を獲得し、
前記送信機会の期間中に、前記複数のセクタスイープ信号の受信を行う、
請求項1に記載のアクセスポイント装置。
【請求項4】
アクセスポイント装置と通信するステーション装置であって、
送信部と、受信部と、制御部を備え、
前記受信部は、第1の周波数帯を用いて、セクタスイープ応答フレームおよび複数のセクタスイープ信号の1つを示すビームインデックスを受信し、
前記セクタスイープ応答フレームは、第2の周波数帯を示す情報、セクタスイープ信号の送信タイミングを含み、
前記送信部は、前記セクタスイープ応答フレームに含まれる前記第2の周波数帯及び前記送信タイミングで複数の前記セクタスイープ信号を送信し、
前記制御部は、前記ビームインデックスに関する情報に基づき、前記第2の周波数帯におけるビームフォーミングを制御する、
ステーション装置。
【請求項5】
前記制御部は、送信機会を獲得し、
前記送信部は、前記送信機会の期間中に、前記ビームインデックスに関する情報の受信を要求する情報を前記アクセスポイント装置に送信し、前記ビームインデックスに関する情報を前記アクセスポイント装置から受信する、
請求項4に記載のステーション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセスポイント装置及びステーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers Inc.)は、無線LAN(Local Area Network)通信の高速化、周波数利用効率化を実現するために無線LAN標準規格であるIEEE802.11の仕様更新に継続して取り組んでいる。無線LANは、国・地域からの許可(免許)を必要とせずに使用することが可能なアンライセンスバンドを用いて、無線通信を行うことができる。家庭などの個人向け用途では、インターネットなどへのWAN(Wide Area Network)回線に接続するための回線終端装置に無線LANアクセスポイント機能を含める、もしくは無線LANアクセスポイント装置を回線終端装置に接続するなどして、住居内からのインターネットアクセスが無線化されてきた。つまり、スマートフォンやパーソナルコンピュータなどの無線LANステーション装置は無線LANアクセスポイント装置に接続して、インターネットにアクセスできる。
【0003】
2021年にIEEE802.11axの仕様が策定され、既に仕様に準拠した無線LANデバイスや、前記無線LANデバイスを搭載したスマートフォンやパーソナルコンピュータなどの通信機器がWi-Fi6(登録商標、Wi-Fi Allianceの認証を受けたIEEE-802.11ax準拠品に対する呼称)対応製品として市場に登場している。そして、現在、IEEE802.11axの後継規格として、IEEE802.11beの標準化活動が開始されている。無線LANデバイスの急速な普及に伴い、IEEE802.11be標準化においては、無線LANデバイスの過密配置環境においてユーザあたりの更なるスループット向上の検討が行われている。
【0004】
従来のIEEE802.11ax以前に策定された仕様の無線LAN通信装置においては、通信に用いる異なる周波数バンド(2.4GHz帯、5GHz帯、6GHz帯など)を束ねて使用することはできなかった。また、周波数バンドを切り替えるためには、一度現在の周波数バンドの接続を切断し、別の周波数バンドに接続し直す必要があった。
【0005】
そこで、IEEE802.11be標準化においては、無線LAN通信装置が複数の周波数バンドを使用した、複数リンク接続を維持することを可能とする、複数リンク接続動作(Multi-Link Operation:MLO)に関する議論が行われている(非特許文献1参照)。また、IEEE802.11beの後継規格としてUHR(Ultra High Reliability)の議論が開始された。UHRでは、ミリ波(45GHz帯、60GHz帯など)も、Multi-Linkを構成する1つのリンクとして使用する議論がなされている(非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】IEEE 802.11-19/0773-08-00be、Nov.2019
【非特許文献2】IEEE 802.11-22/1884-00-0uhr、Nov.2022
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
内閣府よりソサイエティ5.0という、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会が、目指すべき未来社会の姿として提唱されている。ソサイエティ5.0の実現には、フィジカル空間の膨大な情報をサイバー空間に集積させる必要がある。例えばフィジカル空間の監視カメラの映像をサイバー空間にアップロードする必要がある。高精細映像の伝送には広い帯域が必要であるため、広帯域を確保できる高周波数帯の利用が期待される。しかしながら、ミリ波帯またはより高周波数帯のテラヘルツ波帯ではマイクロ波帯と比較してパスロスが著しく大きくなってしまい、パスロスを補償するためには送信機でのビームフォーミング、ならびに受信機でのビームフォーミングを行うことが望ましい。従来のIEEE802.11ax以前に策定された仕様ではビームフォーミングは1つの周波数帯を用いてビーム方向を探索することで、ビームフォーミングの効率を高める手法を用いていた。ミリ波帯またはより高周波数帯のテラヘルツ波帯を利用する場合、実装時にマイクロ波帯に比べコストがかかるという問題、端末のサイズが大きくなる問題、さらに通信距離と伝送速度を増加させるために必要な消費電力が増えるという問題がある。
【0008】
本発明はこのような事情を鑑みてなされたものであり、その目的はミリ波帯またはテラヘルツ波帯を含む複数リンク接続時に、無線LANデバイス間で好適なビーム方向を探索する通信装置及び通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための本発明に係る通信装置及び通信方法は、次の通りである。
【0010】
(1)すなわち、本発明の一態様に係るアクセスポイント装置は、ステーション装置と通信するアクセスポイント装置であって、受信部と、送信部と、制御部と、を備え、前記受信部は、第1の周波数帯を用いてセクタスイープ要求フレームを受信、及び第2の周波数帯を用いて複数のセクタスイープ信号を受信し、前記送信部は、第1の周波数帯を用いて、セクタスイープ応答フレームおよび複数のセクタスイープ信号の1つを示すビームインデックスを送信し、前記制御部は、前記複数のセクタスイープ信号の受信後に、前記ステーション装置が送信に用いる前記ビームインデックスを決定し、前記ステーション装置に送信するように前記送信部を制御し、前記セクタスイープ要求フレームは、第2の周波数帯を示す情報を含み、前記セクタスイープ応答フレームは、セクタスイープ送信信号の送信タイミングを含み、前記送信タイミングから複数のセクタスイープ信号を受信する。
【0011】
(2)また、本発明の一態様に係るアクセスポイント装置は、前記ステーション装置が保持している送信機会で前記ビームインデックスに関する情報を送信する。
【0012】
(3)また、本発明の一態様に係るアクセスポイント装置は、第2の周波数帯において、キャリアセンスにより送信機会を獲得し、前記送信機会の期間中に、前記複数のセクタスイープ信号の受信を行う。
【0013】
(4)また、本発明の一態様に係るステーション装置は、アクセスポイント装置と通信するステーション装置であって、送信部と、受信部と、制御部を備え、前記受信部は、第1の周波数帯を用いて、セクタスイープ応答フレームおよび複数のセクタスイープ信号の1つを示すビームインデックスを受信し、前記セクタスイープ応答フレームは、第2の周波数帯を示す情報、セクタスイープ信号の送信タイミングを含み、前記送信部は、前記セクタスイープ応答フレームに含まれる前記第2の周波数帯及び前記送信タイミングで複数の前記セクタスイープ信号を送信し、前記制御部は、前記ビームインデックスに関する情報に基づき、前記第2の周波数帯におけるビームフォーミングを制御する。
【0014】
(5)また、本発明の一態様に係るステーション装置は、送信機会を獲得し、前記送信部は、前記送信機会の期間中に、前記ビームインデックスに関する情報の受信を要求する情報を前記アクセスポイント装置に送信し、前記ビームインデックスに関する情報を前記アクセスポイント装置から受信する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ミリ波帯やテラヘルツ波帯を含む複数リンク同時接続時に、無線LANデバイス間で好適なビーム方向を探索することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一態様に係るフレーム構成の一例を示す図である。
図2】本発明の一態様に係るフレーム構成の一例を示す図である。
図3】本発明の一態様に係る通信の一例を示す図である。
図4】本発明の一態様に係る無線リソースの分割例を示す概要図である。
図5】本発明の一態様に係る通信システムの一構成例を示す図である。
図6】本発明の一態様に係る無線通信装置の一構成例を示すブロック図である。
図7】本発明の一態様に係る無線通信装置の一構成例を示すブロック図である。
図8】本発明の一態様に係る無線通信装置の一構成例を示すブロック図である。
図9】本発明の一態様に係るフレーム構成の一例を示す図である。
図10】本発明の一態様に係るフレーム送受信の一例を示す図である。
図11】本発明の一態様に係るビームサーチ応答を送信する一例を示す図である。
図12】本発明の一態様に係るビームサーチ応答のフローの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施形態における通信システムは、アクセスポイント装置(もしくは、基地局装置とも呼称)、及び複数のステーション装置(もしくは、端末装置とも呼称)を備える。また、アクセスポイント装置とステーション装置とで構成される通信システム、ネットワークを基本サービスセット(BSS: Basic service set、管理範囲)と呼ぶ。また、本実施形態に係るステーション装置は、アクセスポイント装置の機能を備えることができる。同様に、本実施形態に係るアクセスポイント装置は、ステーション装置の機能を備えることができる。そのため、以下では、単に通信装置または無線通信装置と述べた場合、該通信装置または無線通信装置は、ステーション装置とアクセスポイント装置の両方を示すことができる。
【0018】
BSS内の基地局装置及び端末装置は、それぞれCSMA/CA(Carrier sense multiple access with collision avoidance)に基づいて、通信を行なうものとする。本実施形態においては、基地局装置が複数の端末装置と通信を行なうインフラストラクチャモードを対象とするが、本実施形態の方法は、端末装置同士が通信を直接行なうアドホックモードでも実施可能である。アドホックモードでは、端末装置が、基地局装置の代わりとなりBSSを形成する。アドホックモードにおけるBSSを、IBSS(Independent Basic Service Set)とも呼称する。以下では、アドホックモードにおいてIBSSを形成する端末装置を、基地局装置とみなすこともできる。本実施形態の方法は、端末装置同士が通信を直接行なうWi-Fi Direct(登録商標)でも実施可能である。Wi-Fi Directでは、端末装置が、基地局装置の代わりとなりGroupを形成する。以下では、Wi-Fi DirectにおいてGroupを形成するGroup ownerの端末装置を、基地局装置とみなすこともできる。
【0019】
IEEE802.11システムでは、各装置は、共通のフレームフォーマットを持った複数のフレームタイプのフレーム(通信フレーム)を送信することが可能である。フレームは、物理(Physical:PHY)層、媒体アクセス制御(Medium access control:MAC)層、論理リンク制御(LLC: Logical Link Control)層でそれぞれ定義されている。
【0020】
PHY層のフレームは、物理プロトコルデータユニット(PPDU: PHY protocol data unit、物理層フレーム)と呼ばれる。PPDUは、物理層での信号処理を行なうためのヘッダ情報等が含まれる物理層ヘッダ(PHYヘッダ)と、物理層で処理されるデータユニットである物理サービスデータユニット(PSDU: PHY service data unit、MAC層フレーム)等から構成される。PSDUは無線区間における再送単位となるMACプロトコルデータユニット(MPDU: MAC protocol data unit)が複数集約された集約MPDU(A-MPDU: Aggregated MPDU)で構成されてもよい。
【0021】
PHYヘッダには、信号の検出・同期等に用いられるショートトレーニングフィールド(STF: Short training field)、データ復調のためのチャネル情報を取得するために用いられるロングトレーニングフィールド(LTF: Long training field)などの参照信号と、データ復調のための制御情報が含まれているシグナル(Signal:SIG)などの制御信号が含まれる。また、STFは、対応する規格に応じて、Legacy-STF(L-STF)や、High Throughput-STF(HT-STF)や、Very High Throughput-STF(VHT-STF)や、High Eficiency-STF(HE-STF)や、Extremely High Throughput-STF(EHT-STF)等に分類され、LTFやSIGも同様にL-LTF、HT-LTF、VHT-LTF、HE-LTF、L-SIG、HT-SIG、VHT-SIG、HE-SIG、EHT-SIGに分類される。VHT-SIGは更にVHT-SIG-A1とVHT-SIG-A2とVHT-SIG-Bに分類される。同様に、HE-SIGは、HE-SIG-A1~4と、HE-SIG-Bに分類される。また、同一規格における技術更新を想定し、追加の制御情報が含まれているUniversal SIGNAL(U-SIG)フィールドが含まれてもよい。
【0022】
さらに、PHYヘッダは当該フレームの送信元のBSSを識別する情報(以下、BSS識別情報とも呼称する)を含むことができる。BSSを識別する情報は、例えば、当該BSSのSSID(Service Set Identifier)や当該BSSの基地局装置のMACアドレスであることができる。また、BSSを識別する情報は、SSIDやMACアドレス以外の、BSSに固有な値(例えばBSS Color等)であることができる。
【0023】
PPDUは対応する規格に応じて変調される。例えば、IEEE802.11n規格であれば、直交周波数分割多重(OFDM: Orthogonal frequency division multiplexing)信号に変調される。
【0024】
MPDUはMAC層での信号処理を行なうためのヘッダ情報等が含まれるMACヘッダ(MAC header)と、MAC層で処理されるデータユニットであるMACサービスデータユニット(MSDU: MAC service data unit)若しくはフレームボディ、並びにフレームに誤りがないかをどうかをチェックするフレーム検査部(Frame check sequence:FCS)で構成されている(図9)。また、複数のMSDUは集約MSDU(A-MSDU: Aggregated MSDU)として集約されることも可能である。
【0025】
MAC層のフレームのフレームタイプは、装置間の接続状態などを管理するマネジメントフレーム、装置間の通信状態を管理するコントロールフレーム及び実際の送信データを含むデータフレームの3つに大きく分類され、それぞれは更に複数種類のサブフレームタイプに分類される。コントロールフレームには、受信完了通知(AckまたはACK: Acknowledge)フレーム、送信要求(RTS: Request to send)フレーム、受信準備完了(CTS: Clear to send)フレーム等が含まれる。マネジメントフレームには、ビーコン(Beacon)フレーム、プローブ要求(Probe request)フレーム、プローブ応答(Probe response)フレーム、認証(Authentication)フレーム、接続要求(Association request)フレーム、接続応答(Association response)フレーム等が含まれる。データフレームには、データ(Data)フレーム、ポーリング(CF-poll)フレーム等が含まれる。各装置は、MACヘッダに含まれるフレームコントロールフィールドの内容を読み取ることで、受信したフレームのフレームタイプ及びサブフレームタイプを把握することができる。
【0026】
なお、Ackには、Block Ack(BA:Block Acknowledgement)が含まれても良い。Block Ackは、複数のMPDUに対する受信完了通知を実施可能である。
【0027】
ビーコンフレームには、ビーコンが送信される周期(Beacon interval)やSSIDを記載するフィールド(Field)が含まれる。基地局装置は、ビーコンフレームを周期的にBSS内に報知することが可能であり、端末装置はビーコンフレームを受信することで、端末装置周辺の基地局装置を把握することが可能である。端末装置が基地局装置より報知されるビーコンフレームに基づいて基地局装置を把握することを受動的スキャニング(Passive scanning)と呼ぶ。一方、端末装置がプローブ要求フレームをBSS内に報知することで基地局装置を探索することを、能動的スキャニング(Active scanning)と呼ぶ。基地局装置は該プローブ要求フレームへの応答としてプローブ応答フレームを送信することが可能であり、該プローブ応答フレームの記載内容は、ビーコンフレームと同等である。
【0028】
端末装置は基地局装置を認識したあとに、該基地局装置に対して接続処理を行なう。接続処理は認証(Authentication)手続きと接続(Association)手続きに分類される。端末装置は接続を希望する基地局装置に対して、認証フレーム(認証要求)を送信する。基地局装置は、認証フレームを受信すると、該端末装置に対する認証の可否などを示すステータスコードを含んだ認証フレーム(認証応答)を該端末装置に送信する。端末装置は、該認証フレームに記載されたステータスコードを読み取ることで、自装置が該基地局装置に認証要求を許可されたか否かを判断することができる。なお、基地局装置と端末装置は認証フレームを複数回やり取りすることが可能である。
【0029】
端末装置は認証手続きに続いて、基地局装置に対して接続手続きを行なうために、接続要求フレーム(アソシエーション要求フレーム またはリアソシエーション要求フレーム)を送信する。基地局装置は接続要求フレームを受信すると、該端末装置の接続を許可するか否かを判断し、その旨を通知するために接続応答フレームを送信する。接続応答フレームには、接続処理の可否を示すステータスコードに加えて、端末装置を識別するためのアソシエーション識別番号(AID: Association identifier)が記載されている。基地局装置は接続許可を出した端末装置にそれぞれ異なるAIDを設定することで、複数の端末装置を管理することが可能となる。
【0030】
接続処理が行われたのち、基地局装置と端末装置は実際のデータ伝送を行なう。IEEE802.11システムでは、分散制御機構(DCF: Distributed Coordination Function)と集中制御機構(PCF: Point Coordination Function)、及びこれらが拡張された機構(拡張分散チャネルアクセス(EDCA: Enhanced distributed channel access)や、ハイブリッド制御機構(HCF: Hybrid coordination function)等)が定義されている。以下では、基地局装置が端末装置にDCFで信号を送信する場合を例にとって説明する。
【0031】
DCFでは、基地局装置及び端末装置は、通信に先立ち、自装置周辺の無線チャネルの使用状況を確認するキャリアセンス(CS: Carrier sense)を行なう。例えば、送信局である基地局装置は予め定められたクリアチャネル評価レベル(CCAレベル: Clear channel assessment level)よりも高い信号を該無線チャネルで受信した場合、該無線チャネルでのフレームの送信を延期する。以下では、該無線チャネルにおいて、CCAレベル以上の信号が検出される状態をビジー(Busy)状態、CCAレベル以上の信号が検出されない状態をアイドル(Idle)状態と呼ぶ。このように、各装置が実際に受信した信号の電力(受信電力レベル)に基づいて行なうCSを物理キャリアセンス(物理CS)と呼ぶ。なおCCAレベルをキャリアセンスレベル(CS level)、若しくはCCA閾値(CCA threshold:CCAT)とも呼ぶ。なお、基地局装置及び端末装置は、CCAレベル以上の信号を検出した場合は、少なくともPHY層の信号を復調する動作に入る。
【0032】
基地局装置は送信するフレームの種類に応じて設定されたフレーム間隔(IFS: Inter frame space)の期間だけキャリアセンスを行ない、無線チャネルがビジー状態かアイドル状態かを判断する。基地局装置がキャリアセンスする期間は、これから基地局装置が送信するフレームのフレームタイプ及びサブフレームタイプによって異なる。IEEE802.11システムでは、期間の異なる複数のIFSが定義されており、最も高い優先度が与えられたフレームに用いられる短フレーム間隔(SIFS: Short IFS)、優先度が比較的高いフレームに用いられるポーリング用フレーム間隔(PCF IFS: PIFS)、最も優先度の低いフレームに用いられる分散制御用フレーム間隔(DCF IFS: DIFS)などがある。DCFでデータフレームを送信する場合、基地局装置はDIFSを用いる。
【0033】
基地局装置はDIFS期間の待機を行った後で、フレームの衝突を防ぐためのランダムバックオフ時間さらに待機する。IEEE802.11システムにおいては、コンテンションウィンドウ(CW: Contention window)と呼ばれるランダムバックオフ時間が用いられる。CSMA/CAでは、ある送信局が送信したフレームは、他送信局からの干渉が無い状態で受信局に受信されることを前提としている。そのため、送信局同士が同じタイミングでフレームを送信してしまうと、フレーム同士が衝突してしまい、受信局は正しく受信することができない。そこで、各送信局が送信開始前に、ランダムに設定される時間待機することで、フレームの衝突が回避される。基地局装置はキャリアセンスによって無線チャネルがアイドル状態であると判断すると、CWのカウントダウンを開始し、CWが0となって初めて送信権を獲得し、端末装置にフレームを送信できる。なお、CWのカウントダウン中に基地局装置がキャリアセンスによって無線チャネルをビジー状態と判断した場合は、CWのカウントダウンを停止する。そして、再び無線チャネルがアイドル状態となった場合、基地局装置は、先のIFSと同じ期間の待機に続いて残留するCWのカウントダウンを再開する。
【0034】
次に、フレーム受信の詳細について説明する。受信局である端末装置は、フレームを受信し、該フレームのPHYヘッダを読み取り、受信したフレームを復調する。そして、端末装置は復調した信号のMACヘッダのDA(Destination Address)フィールドの値を読み取ることで、該フレームが自装置宛てのものか否かを認識することができる。なお、端末装置は、PHYヘッダに記載の情報(例えばVHT-SIG-Aに記載されるグループ識別番号(GID: Group identifier, Group ID))に基づいて、該フレームの宛先を判断することも可能である。
【0035】
端末装置は、受信したフレームが自装置宛てのものと判断し、そして誤りなく当該フレームを復調できた場合、当該フレームを正しく受信できたことを示すAckフレームを送信局である基地局装置に送信しなければならない。Ackフレームは、SIFS期間の待機だけで(ランダムバックオフ時間は取らずに)で送信される最も優先度の高いフレームの1つである。基地局装置は端末装置から送信されるAckフレームの受信をもって、一連の通信を終了する。なお、端末装置がフレームを正しく受信できなかった場合、端末装置はAckを送信しない。よって基地局装置は、フレーム送信後、一定期間(SIFS+Ackフレーム長)の間、受信局(端末装置)からのAckフレームを受信しなかった場合、通信は失敗したものとして通信を終了する。このように、IEEE802.11システムの1回の通信(バーストとも呼ぶ)の終了は、ビーコンフレームなどの報知信号の送信の場合や、送信データを分割するフラグメンテーションが用いられる場合などの特別な場合を除き、必ずAckフレームの受信の有無で判断されることになる。
【0036】
端末装置は、受信したフレームが自装置宛てのものではないと判断した場合、PHYヘッダ等に記載されている該フレームの長さ(Length)に基づいて、ネットワークアロケーションベクタ(NAV: Network allocation vector)を設定する。端末装置は、NAVに設定された期間は通信を試行しない。つまり、端末装置は、物理CSによって無線チャネルがビジー状態と判断した場合と同じ動作をNAVに設定された期間行なうことになるため、NAVによる通信制御は仮想キャリアセンス(仮想CS)とも呼ばれる。NAVは、PHYヘッダに記載の情報に基づいて設定される場合に加えて、隠れ端末問題を解消するために導入される送信要求(RTS: Request To Send)フレームや、受信準備完了(CTS: Clear To Send)フレームによっても設定される。
【0037】
各装置がキャリアセンスを行ない、自律的に送信権を獲得するDCFに対して、PCFは、ポイントコーディネータ(PC: Point coordinator)と呼ばれる制御局がBSS内の各装置の送信権を制御する。一般に基地局装置がPCとなり、BSS内の端末装置の送信権を獲得することになる。
【0038】
PCFによる通信期間には、非競合期間(CFP: Contention Free Period)と競合期間(CP: Contention Period)が含まれる。CPの間は、前述してきたDCFに基づいて通信が行われ、PCが送信権を制御するのはCFPの間となる。PCである基地局装置は、CFPの期間(CFP Max duration)などが記載されたビーコンフレームをPCFの通信に先立ちBSS内に報知する。なお、PCFの送信開始時に報知されるビーコンフレームの送信にはPIFSが用いられ、CWを待たずに送信される。該ビーコンフレームを受信した端末装置は、該ビーコンフレームに記載されたCFPの期間をNAVに設定する。以降、NAVが経過する、もしくはCFPの終了をBSS内に報知する信号(例えばCF-endを含んだデータフレーム)が受信されるまでは、PCより送信される送信権獲得をシグナリングする信号(例えばCF-pollを含んだデータフレーム)を受信した場合のみ、端末装置は送信権を獲得可能である。なお、CFPの期間内では、同一BSS内でのパケットの衝突は発生しないため、各端末装置はDCFで用いられるランダムバックオフ時間を取らない。
【0039】
無線媒体は複数のリソースユニット(RU:Resource Unit)に分割されることができる。図4は無線媒体の分割状態の一例を示す概要図である。例えば、リソース分割例1では、無線通信装置は無線媒体である周波数リソース(サブキャリア)を9個のRUに分割することができる。同様に、リソース分割例2では、無線通信装置は無線媒体であるサブキャリアを5個のRUに分割することができる。当然ながら、図4に示すリソース分割例はあくまで一例であり、例えば、複数のRUはそれぞれ異なるサブキャリア数によって構成されることも可能である。また、RUとして分割される無線媒体には、周波数リソースだけではなく空間リソースも含まれることができる。無線通信装置(例えばAP)は、各RUに異なる端末装置宛てのフレームを配置することで、複数の端末装置(例えば複数のSTA)に同時にフレームを送信することができる。APは、無線媒体の分割の状態を示す情報(Resource allocation information)を、共通制御情報として、自装置が送信するフレームのPHYヘッダに記載することができる。更に、APは、各STA宛てのフレームが配置されたRUを示す情報(resource unit assignment information)を、固有制御情報として、自装置が送信するフレームのPHYヘッダに記載することができる。
【0040】
また、複数の端末装置(例えば複数のSTA)は、それぞれ割り当てられたRUにフレームを配置して送信することで、同時にフレームを送信することができる。複数のSTAは、APから送信されるトリガ情報を含んだフレーム(Trigger frame:TF)を受信した後、所定の期間待機したのち、フレーム送信を行なうことができる。各STAは、該TFに記載の情報に基づいて自装置に割り当てられたRUを把握することができる。また、各STAは、該TFを基準としたランダムアクセスによりRUを獲得することができる。
【0041】
APは、1つのSTAに複数のRUを同時に割り当てることができる。該複数のRUは、連続するサブキャリアで構成されることもできるし、不連続のサブキャリアで構成されることもできる。APは、1つのSTAに割り当てた複数のRUを用いて、1つのフレームを送信することができるし、複数のフレームをそれぞれ異なるRUに割り当てて送信することができる。該複数のフレームの少なくとも1つは、Resource allocation informationを送信する、複数の端末装置に対する共通の制御情報を含むフレームであることができる。
【0042】
1つのSTAは、APより複数のRUを割り当てられることができる。STAは、割り当てられた複数のRUを用いて、1つのフレームを送信することができる。また、STAは割り当てられた複数のRUを用いて、複数のフレームをそれぞれ異なるRUに割り当てて送信することができる。該複数のフレームは、それぞれ異なるフレームタイプのフレームであることができる。
【0043】
APは、1つのSTAに複数のAIDを割り当てることができる。APは、1つのSTAに割り当てた複数のAIDに対して、それぞれRUを割り当てることができる。APは、1つのSTAに割り当てた複数のAIDに対して、それぞれ割り当てたRUを用いて、それぞれ異なるフレームを送信することができる。該異なるフレームは、それぞれ異なるフレームタイプのフレームであることができる。
【0044】
1つのSTAは、APより複数のAIDを割り当てられることができる。1つのSTAは、割り当てられた複数のAIDに対して、それぞれRUを割り当てられることができる。1つのSTAは、自装置に割り当てられた複数のAIDにそれぞれ割り当てられたRUが、全て自装置に割り当てられたRUと認識し、該割り当てられた複数のRUを用いて、1つのフレームを送信することができる。また、1つのSTAは、該割り当てられた複数のRUを用いて、複数のフレームを送信することができる。このとき、該STAは、該複数のフレームに、それぞれ割り当てられたRUに関連付けられたAIDを示す情報を記載して送信することができる。APは、1つのSTAに割り当てた複数のAIDに対して、それぞれ割り当てたRUを用いて、それぞれ異なるフレームを送信することができる。該異なるフレームは、異なるフレームタイプのフレームであることができる。
【0045】
以下では、基地局装置、端末装置を総称して、無線通信装置もしくは通信装置とも呼称する。また、ある無線通信装置が別の無線通信装置と通信を行う際にやりとりされる情報をデータ(data)とも呼称する。つまり、無線通信装置は、基地局装置及び端末装置を含む。
【0046】
無線通信装置は、PPDUを送信する機能と受信する機能のいずれか、または両方を備える。図1は、無線通信装置が送信するPPDU構成の一例を示した図である。IEEE802.11a/b/g規格に対応するPPDUはL-STF、L-LTF、L-SIG及びDataフレーム(MAC Frame、MACフレーム、ペイロード、データ部、データ、情報ビット等)を含んだ構成である。IEEE802.11n規格に対応するPPDUはL-STF、L-LTF、L-SIG、HT-SIG、HT-STF、HT-LTF及びDataフレームを含んだ構成である。IEEE802.11ac規格に対応するPPDUはL-STF、L-LTF、L-SIG、VHT-SIG-A、VHT-STF、VHT-LTF、VHT-SIG-B及びDataフレームの一部あるいは全てを含んだ構成である。IEEE802.11ax標準で検討されているPPDUは、L-STF、L-LTF、L-SIG、L-SIGが時間的に繰り返されたRL-SIG、HE-SIG-A、HE-STF、HE-LTF、HE-SIG-B及びDataフレームの一部あるいは全てを含んだ構成である。IEEE802.11be標準で検討されているPPDUは、L-STF、L-LTF、L-SIG、RL-SIG、U-SIG、EHT-SIG、EHT-STF、HET-LTF及びDataフレームの一部あるいは全てを含んだ構成である。
【0047】
図1中の点線で囲まれているL-STF、L-LTF及びL-SIGはIEEE802.11規格において共通に用いられる構成である(以下では、L-STF、L-LTF及びL-SIGをまとめてL-ヘッダとも呼称する)。例えばIEEE802.11a/b/g規格に対応する無線通信装置は、IEEE802.11n/ac規格に対応するPPDU内のL-ヘッダを適切に受信することが可能である。IEEE802.11a/b/g規格に対応する無線通信装置は、IEEE802.11n/ac規格に対応するPPDUを、IEEE802.11a/b/g規格に対応するPPDUとみなして受信することができる。
【0048】
ただし、IEEE802.11a/b/g規格に対応する無線通信装置はL-ヘッダの後に続く、IEEE802.11n/ac規格に対応するPPDUを復調することができないため、送信アドレス(TA:Transmitter Address)や受信アドレス(RA:Receiver Address)やNAVの設定に用いられるDuration/IDフィールドに関する情報を復調することができない。
【0049】
IEEE802.11a/b/g規格に対応する無線通信装置が適切にNAVを設定する(あるいは所定の期間受信動作を行う)ための方法として、IEEE802.11は、L-SIGにDuration情報を挿入する方法を規定している。L-SIG内の伝送速度に関する情報(RATE field、L-RATE field、L-RATE、L_DATARATE、L_DATARATE field)、伝送期間に関する情報(LENGTH field、L-LENGTH field、L_LENGTH)は、IEEE802.11a/b/g規格に対応する無線通信装置が適切にNAVを設定するために使用される。
【0050】
図2は、L-SIGに挿入されるDuration情報の方法の一例を示す図である。図2においては、一例としてIEEE802.11ac規格に対応するPPDU構成を示しているが、PPDU構成はこれに限定されない。IEEE802.11n規格に対応のPPDU構成またはIEEE802.11ax規格に対応するPPDU構成でも良い。TXTIMEは、PPDUの長さに関する情報を備え、aPreambleLengthは、プリアンブル(L-STF+L-LTF)の長さに関する情報を備え、aPLCPHeaderLengthは、PLCPヘッダ(L-SIG)の長さに関する情報を備える。L_LENGTHは、IEEE802.11規格の互換性をとるために設定される仮想的な期間であるSignal Extension、L_RATEに関連するNops、1シンボル(symbol、OFDM symbol等)の期間に関する情報であるaSymbolLength、PLCP Service fieldが含むビット数を示すaPLCPServiceLength及び畳み込み符号のテールビット数を示すaPLCPConvolutionalTailLengthに基づいて算出される。無線通信装置は、L_LENGTHを算出し、L-SIGに挿入することができる。また、無線通信装置は、L-SIG Durationを算出することができる。L-SIG Durationは、L_LENGTHを含むPPDUと、その応答として宛先の無線通信装置より送信されることが期待されるAckとSIFSの期間を合計した期間に関する情報を示す。
【0051】
図3は、L-SIG TXOP Protectionにおける、L-SIG Durationの一例を示した図である。DATA(フレーム、ペイロード、データ等)は、MACフレームとPHYヘッダの一部または両方から構成される。また、BAはBlock Ack、またはAckである。PPDUは、L-STF、L-LTF、L-SIGを含み、さらにDATA、BA、RTSあるいはCTSのいずれかまたはいずれか複数を含んで構成されることができる。図3に示す一例では、RTS/CTSを用いたL-SIG TXOP Protectionを示しているが、CTS-to-Selfを用いても良い。ここで、MAC Durationは、Duration/ID fieldの値によって示される期間である。また、InitiatorはL-SIG TXOP Protection期間の終了を通知するためにCF-Endフレームを送信することができる。
【0052】
続いて、無線通信装置が受信するフレームからBSSを識別する方法について説明する。無線通信装置が、受信するフレームからBSSを識別するためには、PPDUを送信する無線通信装置が当該PPDUにBSSを識別するための情報(BSS color、BSS識別情報、BSSに固有な値)を挿入することが好適である。BSS colorを示す情報は、HE-SIG-Aに記載されることが可能である。
【0053】
無線通信装置は、L-SIGを複数回送信する(L-SIG Repetition)ことができる。例えば、受信側の無線通信装置は、複数回送信されるL-SIGをMRC(Maximum Ratio Combining)を用いて受信することで、L-SIGの復調精度が向上する。さらに無線通信装置は、MRCによりL-SIGを正しく受信完了した場合に、当該L-SIGを含むPPDUがIEEE802.11ax規格に対応するPPDUであると解釈することができる。
【0054】
無線通信装置は、PPDUの受信動作中も当該PPDU以外のPPDUの一部(例えば、IEEE802.11により規定されるプリアンブル、L-STF、L-LTF、PHYヘッダ等)の受信動作を行うことができる(二重受信動作とも呼称する)。無線通信装置は、PPDUの受信動作中に当該PPDU以外のPPDUの一部を検出した場合に、宛先アドレス、送信元アドレス、PPDUあるいはDATA期間に関する情報の一部または全部を更新することができる。
【0055】
Ack及びBAは、応答(応答フレーム)とも呼称されることができる。また、プローブ応答や、認証応答、接続応答を応答と呼称することができる。
[実施形態]
【0056】
図5は、本実施形態に係る無線通信システムの一例を示した図である。無線通信システム3-1は、無線通信装置1-1及び無線通信装置2-1~2-3を備えている。なお、無線通信装置1-1を基地局装置1-1とも呼称し、無線通信装置2-1~2-3を端末装置2-1~3とも呼称する。また、無線通信装置2-1~2-3(端末装置2-1~2-3)を、無線通信装置1-1に接続されている装置として、無線通信装置2A(端末装置2A)とも呼称する。無線通信装置1-1及び無線通信装置2Aは、無線接続されており、お互いにPPDUの送受信を行うことができる状態にある。また、本実施形態に係る無線通信システムは、無線通信システム3-1の他に無線通信システム3-2を備えてもよい。無線通信システム3-2は、無線通信装置1-2及び無線通信装置2-4~6を備えている。なお、無線通信装置1-2を基地局装置1-2とも呼称し、無線通信装置2-4~6を端末装置2-4~6とも呼称する。また、また、無線通信装置2-4~6(端末装置2-4~6)を、無線通信装置1-2に接続されている装置として、無線通信装置2B(端末装置2B)とも呼称する。無線通信システム3-1、無線通信システム3-2は異なるBSSを形成するが、これはESS(Extended Service Set)が異なることを必ずしも意味していない。ESSは、LAN(Local Area Network)を形成するサービスセットを示している。つまり、同じESSに属する無線通信装置は、上位層から同一のネットワークに属しているとみなされることができる。また、BSSはDS(Distribution System)を介して結合されてESSを形成する。なお、無線通信システム3-1、3-2のそれぞれは、さらに複数の無線通信装置を備えることも可能である。
【0057】
マルチリンクデバイス(MLD:Multi-Link Device)は、マルチリンク通信可能であるデバイスであり、MLDに対応したアクセスポイント装置をMLDアクセスポイント装置、MLDに対応したステーション装置をMLDステーション装置と呼称することとする。また、MLDアクセスポイント装置とMLDステーション装置を総じてMLD無線通信装置とも呼称する。本実施形態においては、前述した無線通信装置1-1、1-2等がMLD無線通信装置であるとして説明するが、実際の運用では無線通信システム内の必ずしも全ての無線通信装置がMLDに対応していなくともよい。
【0058】
図6を用いて、MLDアクセスポイント装置20000-1及びMLDステーション装置30000-1について説明する。MLD無線通信装置は、マルチリンクを構成する各リンク(物理層リンクとも呼称する)の周波数バンド(もしくはチャネル、もしくはサブチャネル)に対応した複数のサブ無線通信装置から構成される。図6では、MLDアクセスポイント装置20000-1が3つのサブ無線通信装置、この場合は3つのサブアクセスポイント装置(20000-2、200000-3、20000-4)から構成されている例を示しているが、サブアクセスポイント装置の数は2以上の任意の数である。同様に、図6では、MLDステーション装置30000-1が3つのサブ無線通信装置、この場合は3つのサブステーション装置(30000-2、300000-3、30000-4)から構成されている例を示しているが、サブステーション装置の数は2以上の任意の数である。なお、サブ無線通信装置(サブアクセスポイント装置、サブステーション装置など)は無線通信装置内の一部の回路で構成されてもよく、サブ無線通信部(サブアクセスポイント部、サブステーション部)と呼称してもよい。
【0059】
図6では、複数のサブ無線通信装置が論理的に別々のブロックとして構成されている例を示しているが、物理的には1つの無線通信装置から構成されてもよい。あるいは、複数のサブ無線通信装置が物理的にも別々の装置として構成してもよく、この場合、各サブアクセスポイント装置は結線9-1や9-2により必要な情報を送受信し、各サブステーション装置は結線9-3や9-4により必要な情報を送受信する。本実施形態では、主に前者の場合、つまり物理的に1つの無線通信装置(10000-1)から構成されるとして、その構成は後述する。
【0060】
なお、1つのMLDアクセスポイント装置に含まれるサブアクセスポイント装置の数、1つのMLDステーション装置に含まれるサブステーション装置の数は、各MLD無線通信装置のグレード、クラス、能力等に応じて変わってよい。ハイグレード、ハイクラス、高能力のMLD無線通信装置であるほど、搭載するサブ無線通信装置(サブアクセスポイント装置、サブステーション装置)の数は多い可能性がある。つまり、1つの無線通信システム内に位置する各MLD無線通信装置を構成するサブ無線通信装置(サブアクセスポイント装置、サブステーション装置)は、グレード、クラス、能力に応じて変わり、それらの数は一致しなくてもよい。
【0061】
サブステーション装置30000-2はサブアクセスポイント装置20000-2に接続(Association)し、リンク1を確立する。サブステーション装置30000-3はサブアクセスポイント装置20000-3に接続(Association)し、リンク2を確立する。サブステーション装置30000-4はサブアクセスポイント装置20000-4に接続(Association)し、リンク3を確立する。本実施形態の説明ではマルチリンクを構成するリンク数は3つとするが、これには限られず任意の数である。各リンクが使用する周波数帯は、2.4GHz帯、5GHz帯、6GHz帯、60GHz帯、140GHz帯、300GHz帯等、無線通信システムがサポートする周波数バンド、チャネル、サブチャネルの中から任意に設定可能であり、各国の法規制に応じて変化することもある。
【0062】
図7は、無線通信装置10000-1の装置構成の一例を示した図である。無線通信装置10000-1は、上位層処理部(上位層処理ステップ)10001-1と、自律分散制御部(自律分散制御ステップ)10002-1と、送信部(送信ステップ)10003-1と、受信部(受信ステップ)10004-1と、アンテナ部10005-1と、を含んだ構成である。
【0063】
上位層処理部10001-1は、自無線通信装置内で扱う情報(送信するフレームに関わる情報やMIB(Management Information Base)など)及び他無線通信装置から受信したフレームについて、物理層よりも上位の層、例えばMAC層やLLC層の情報処理を行う。マルチリンク制御部10001a-1は、上位層処理部10001-1に含まれる構成であってもよいが、独立していてもよい。
【0064】
上位層処理部10001-1は、自律分散制御部10002-1に、無線媒体に送信されているフレームやトラフィックに関する情報を通知することができる。前記情報とは、例えば、ビーコンなどのマネジメントフレームに含まれる制御情報であってもよいし、自無線通信装置宛てに他の無線通信装置が報告する測定情報であってもよい。さらには、宛先を限定せず(自装置宛てであってもよいし、他装置宛てであってもよいし、ブロードキャストあるいはマルチキャストでもよい)、マネジメントフレームやコントロールフレームに含まれる制御情報であってもよい。
【0065】
送信部10003-1は、物理層フレーム生成部(物理層フレーム生成ステップ)10003a-1と、無線送信部(無線送信ステップ)10003b-1を含んだ構成である。物理層フレーム生成部10003a-1は、MACレイヤから転送されてきた情報ビットに対して、誤り訂正符号化を施すが、誤り訂正符号化を施す単位(符号化ブロック長)は何かに限定されるものではない。例えば、物理層フレーム生成部10003a-1は、MACレイヤから転送されてきた情報ビット系列を所定の長さの情報ビット系列に分割し、それぞれに誤り訂正符号化を施し、複数の符号化ブロックとすることができる。なお、符号化ブロックを構成する際に、MACレイヤから転送されてきた情報ビット系列にダミービットを挿入することもできる。
【0066】
物理層フレーム生成部10003a-1が生成するフレームには、制御情報が含まれる。該制御情報には、各無線通信装置宛てのデータが、どのRU(ここでのRUには周波数リソースと空間リソースの両方を含む)に配置されているかを示す情報が含まれる。また、物理層フレーム生成部10003a-1が生成するフレームには、宛先端末である無線通信装置にフレーム送信を指示するトリガーフレームが含まれる。該トリガーフレームには、フレーム送信を指示された無線通信装置がフレームを送信する際に用いるRUを示す情報が含まれている。
【0067】
無線送信部10003b-1は、物理層フレーム生成部10003a-1が生成する物理層フレームを、無線周波数(RF: Radio Frequency)帯の信号に変換し、無線周波数信号を生成する。無線送信部10003b-1が行う処理には、デジタル・アナログ変換、フィルタリング、ベースバンド帯からRF帯への周波数変換等が含まれる。
【0068】
受信部10004-1は、無線受信部(無線受信ステップ)10004a-1と、信号復調部(信号復調ステップ)10004b-1と、受信品質測定部(受信品質測定ステップ)10004c-1を含んだ構成である。
【0069】
受信品質測定部10004c-1は、アンテナ部10005-1が受信するRF帯の信号から受信品質に関する情報を生成する。前記信号品質に関する情報とは、受信電力レベル、SNR(Signal to Noise Ratio)などがある。無線受信部10004-1は、受信品質に関する情報と、受信信号に関する情報を自律分散制御部10002-1(特に、CCA部10002a-1)と、上位層処理部10001-1(特に、マルチリンク制御部10001a-1)とに通知してもよい。受信部10004-1は、その他の情報についても、自律分散制御部10002-1及び上位層処理部10001-1に通知してよい。
【0070】
無線受信部10004a-1は、アンテナ部10005-1が受信するRF帯の信号をベースバンド信号に変換し、物理層信号(例えば、物理層フレーム)を生成する機能を有する。無線受信部10004a-1が行う処理には、RF帯からベースバンド帯への周波数変換処理、フィルタリング、アナログ・デジタル変換が含まれる。
【0071】
信号復調部10004b-1は、無線受信部10004a-1が生成する物理層信号を復調する機能を有する。信号復調部10004b-1が行う処理には、チャネル等化、デマッピング、誤り訂正復号化等が含まれる。信号復調部10004b-1は、物理層信号から、例えば、PHYヘッダが含む情報と、MACヘッダが含む情報と、受信したフレームが含む情報とを取り出すことができる。信号復調部10004b-1は、取り出した情報を上位層処理部10001-1に通知することができる。なお、信号復調部10004b-1は、PHYヘッダが含む情報、MACヘッダが含む情報、受信フレームが含む情報のいずれか、あるいは全てを取り出すことができる。
【0072】
アンテナ部10005-1は、無線送信部10003b-1が生成する無線周波数信号を無線空間に送信する機能を有する。また、アンテナ部10005-1は、無線周波数信号を受信し、無線受信部10004a-1に渡す機能を有する。
【0073】
マルチリンク制御部10001a-1は、受信品質測定部10004c-1から各リンク(各周波数バンド、各チャネル、各サブチャネル)の受信品質に関する情報を受信し、各リンクの良し悪しを判断し、どのリンクを選択、使用してマルチリンクを構成するかを決定する。前記受信品質に関する情報とは、受信電力レベル、SNR(Signal to Noise Ratio)などがあるが、それらには限られない。
【0074】
図8は、自律分散制御部10002-1の構成の一例を示した図である。自律分散制御部10002-1は、CCA部(CCAステップ)10002a-1、バックオフ部(バックオフステップ)10002b-1、送信判断部(送信判断ステップ)10002c-1及び受信判断部(受信判断ステップ)10002d-1を含んだ構成である。
【0075】
CCA部10002a-1は、受信部10004-1から通知される、無線リソースを介して受信する受信電力に関する情報と、受信信号に関する情報(復号後の情報を含む)のいずれか一方、または両方を用いて、当該無線リソースの状態判断(busyまたはidleの判断を含む)を行うことができる。CCA部10002a-1は、当該無線リソースの状態判断情報を、バックオフ部10002b-1及び送信判断部10002c-1に通知することができる。
【0076】
バックオフ部10002b-1は、無線リソースの状態判断情報を用いて、バックオフを行うことができる。バックオフ部10002b-1は、CWの生成及びカウントダウン機能を有する。例えば、無線リソースの状態判断情報がidleを示す場合に、CWのカウントダウンを実行し、無線リソースの状態判断情報がbusyを示す場合に、CWのカウントダウンを停止することができる。バックオフ部10002b-1は、CWの値を送信判断部10002c-1に通知することができる。
【0077】
送信判断部10002c-1は、無線リソースの状態判断情報、またはCWの値のいずれか一方、あるいは両方を用いて送信判断を行う。例えば、無線リソースの状態判断情報がidleを示し、CWの値が0の時に送信判断情報を送信部10003-1に通知することができる。また、無線リソースの状態判断情報がidleを示す場合に送信判断情報を送信部10003-1に通知することができる。
【0078】
物理層フレーム生成部10003a-1は、送信判断部10002c-1から通知される送信判断情報に基づき、物理層フレーム(PPDU)を生成する機能を有する。物理層フレーム生成部10003a-1は、上位層から送られてくる送信フレームに対して誤り訂正符号化、変調、プレコーディングフィルタ乗算等を施す。物理層フレーム生成部10003a-1は、生成した物理層フレームを無線送信部10003b-1に通知する。
【0079】
受信判断部10002d-1は、受信部10004-1に対して受信の指示を行うことができる。Power Managementモード(Sleepモード、Power Saveモード)に入っているステーション装置は、通常はビーコンなどのマネジメントフレームを間欠受信している。受信部10004-1が自律分散制御部10002-1に通知するビーコンに含まれる情報から、自ステーション装置宛てのフレームをアクセスポイント装置がバッファしているか否かを判断できる。自ステーション装置宛てのフレームをアクセスポイント装置がバッファしている場合、受信判断部10002d-1は、受信部10004-1に対して受信の指示を行う。
【0080】
無線通信装置10000-1は、送信するフレームのPHYヘッダやMACヘッダに、自無線通信装置が無線媒体を利用する期間を示す情報を記載することにより、自無線通信装置周辺の無線通信装置に当該期間だけNAVを設定させることができる。例えば、無線通信装置10000-1は送信するフレームのDuration/IDフィールドまたはLENGTHフィールドに当該期間を示す情報を記載することができる。自無線通信装置周辺の無線通信装置に設定されたNAV期間を、無線通信装置10000-1が獲得したTXOP期間(もしくは単にTXOP)と呼ぶこととする。そして、該TXOPを獲得した無線通信装置10000-1を、TXOP獲得者(TXOP holder、TXOPホルダー)と呼ぶ。無線通信装置10000-1がTXOPを獲得するために送信するフレームのフレームタイプは何かに限定されるものではなく、コントロールフレーム(例えばRTSフレームやCTS-to-selfフレーム)でも良いし、データフレームでも良い。
【0081】
TXOPホルダーである無線通信装置10000-1は、該TXOPの間で、自無線通信装置以外の無線通信装置に対して、フレームを送信することができる。無線通信装置1-1がTXOPホルダーであった場合、無線通信装置1-1は、該TXOPの期間内で無線通信装置2Aに対してフレームを送信することができる。また、無線通信装置1-1は、該TXOP期間内で、無線通信装置2Aに対して無線通信装置1-1宛てのフレーム送信を指示することができる。無線通信装置1-1は、該TXOP期間内で、無線通信装置2Aに対して無線通信装置1-1宛てのフレーム送信を指示する情報を含むトリガーフレームを送信することができる。
【0082】
無線通信装置1-1は、フレーム送信を行なう可能性のある全通信帯域(例えばOperation bandwidth)に対してTXOPを確保してもよいし、実際にフレームを送信する通信帯域(例えばTransmission bandwidth)等の特定の通信帯域(Band)に対してTXOPを確保してもよい。
【0083】
無線通信装置1-1が、獲得したTXOPの期間内でフレーム送信の指示を行なう無線通信装置は、必ずしも自無線通信装置に接続されている無線通信装置には限定されない。例えば、無線通信装置1-1は、自無線通信装置の周辺にいる無線通信装置にReassociationフレームなどのマネジメントフレームや、RTS/CTSフレーム等のコントロールフレームを送信させるために、自無線通信装置に接続されていない無線通信装置に、フレームの送信を指示することができる。
【0084】
さらに、DCFを拡張したデータ伝送方法であるEDCAにおけるTXOPについて説明する。IEEE802.11e規格はEDCAに関わるもので、映像伝送やVoIP(Voice over Internet Protocol)などの各種サービスのためのQoS(Quality of Service)保証の観点からTXOPについて規定されている。サービスは、大きくはVO(VOice)、VI(VIdeo)、BE(Best Effort)及びBK(BacK ground)の4つのアクセスカテゴリに分類されている。一般的には、優先度の高い方からVO、VI、BE、BKの順番である。それぞれのアクセスカテゴリには、CWの最小値CWmin、最大値CWmax、IFSの一種であるAIFS(Arbitration IFS)、送信機会の上限値であるTXOP limitのパラメータがあり、優先度の高低差をつけるように値が設定される。例えば、音声伝送を目的とした優先度の一番高いVOのCWmin、CWmax、AIFSは、他のアクセスカテゴリに比較して相対的に小さい値を設定することで、他のアクセスカテゴリに優先したデータ伝送が可能となる。例えば、映像伝送のため送信データ量が比較的大きくなるVIでは、TXOP limitを大きく設定することで、他のアクセスカテゴリよりも送信機会を長くとることが可能となる。このように、各種サービスに応じたQoS保証を目的として、各アクセスカテゴリの4つのパラメータの値が調整される。
【0085】
本実施形態において、無線通信装置10000-1の信号復調部10004b-1は、受信した信号に対して、物理レイヤにおいて復号処理を行い、誤り検出を行うことができる。ここで復号処理は、受信した信号に適用されている誤り訂正符号に対する復号処理を含む。ここで、誤り検出は、受信した信号に予め付与されている誤り検出符号(例えば巡回冗長検査(CRC)符号)を用いた誤り検出や、もともと誤り検出機能を備える誤り訂正符号(例えば低密度パリティ検査符号(LDPC))による誤り検出を含む。物理レイヤにおける復号処理は、符号化ブロック毎に適用されることが可能である。
【0086】
上位層処理部10001-1は、信号復調部10004b-1における物理レイヤの復号の結果をMACレイヤに転送する。MACレイヤでは、転送されてきた物理レイヤの復号結果から、MACレイヤの信号を復元する。そして、MACレイヤにおいて誤り検出を行い、受信フレームの送信元の無線通信装置が送信したMACレイヤの信号が正しく復元できたか否かを判断する。
【0087】
基本マルチリンクエレメント(Basic Multi-Link Element;BMLE)は、MLDに関する情報またはMLDに含まれるステーション装置(サブアクセスポイント装置、またはサブステーション装置)に関する情報を伝達する。BMLEの送信には、ビーコンフレーム、プローブ応答フレーム、(Re)Association Requestフレーム、または(Re)Association Responseフレームが用いられる。なお、(Re)Association Requestフレームは、アソシエーション要求フレームまたはリアソシエーション要求フレームを示す。また(Re)Association Responseフレームは、アソシエーション応答フレームまたはリアソシエーション応答フレームを示す。つまりBMLEはアクセスポイント装置またはステーション装置が送信する。BMLEは、MLD MACアドレス、リンクID、MLDケーパビリティを示す情報及びセクタスイープ(SSW)フィールドが存在するか否かを示す情報の、一部または全部が含まれる。MLD MACアドレスはBMLEを送信しているステーション装置またはアクセスポイント装置が所属するMLDのMACアドレスを特定する情報である。リンクIDは、マルチリンク内のリンクを特定するための識別子である。SSWフィールドが存在するか否かを示す情報は、マイクロ波帯より周波数が高い60GHz帯を含むミリ波帯やテラヘルツ波帯などセクタレベルスイープ(SLS)が必要な周波数帯において、SSWフィールドが存在するか否かを示す。マイクロ波帯は3~30GHz、ミリ波帯は30~300GHz、テラヘルツ波帯は300GHz~3THzと定義されることがあるが、本実施形態において、テラヘルツ波帯は100GHz~300GHzのサブテラヘルツ波帯も含んでもよい。そのため、SLSが不要な周波数帯で通信する場合、SSWフィールドが存在するか否かを示す情報はBLMEに含まれない。SSWフィールドは、Direction、CDOWN(カウントダウン)、セクタID及びビームアンテナIDの、一部または全部を含む。なお、SSWフィールドのことをセクタスイープ信号とも呼ぶ。Directionは、SSWフィールドが、イニシエータまたはレスポンダのいずれの装置によって送信されたかを示す。ここで、イニシエータはSLSを開始する装置であり、レスポンダはイニシエータが開始したSLSの通信相手の装置である。SLSは、イニシエータ及び/またはレスポンダにおける好適なセクタを探索するプロセスである。好適なセクタは最適なセクタである必要はなく、例えばある閾値以上の品質を満たすセクタのいずれかを選択してもよい。また、セクタは1つのみではなく、複数のセクタを選択してもよい。セクタIDはセクタ(例えばビーム方向のインデックス)を特定するために用いられる。セクタIDはビームフォーミングを行うビームアンテナ毎に設定され、ビームアンテナIDはビームアンテナを特定するために用いられる。なお、ビームアンテナをアンテナパネル、アンテナアレー、サブアレーとも呼ぶ。MLDケーパビリティを示す情報は、最大の同時リンク数及び/または最大のセクタ数と、同時に接続可能な最大セクタ(ビーム)数の、一部または全部を含む。最大の同時リンク数は、MLDが同時にフレームを送受信可能なアクセスポイント装置またはステーション装置の最大数であり、上限値はMLDに属するアクセスポイント装置数またはステーション装置数となる。同時に接続可能な最大セクタ数は、MLDが同時にフレームを送受信可能なセクタ数であり、上限値はセクタ数とビームアンテナ数の積となる。
【0088】
60GHz帯やそれよりも高い周波数帯でデータ伝送を行う場合、高いパスロスを補償するためにビームフォーミングが有効である。しかしながら、初期セットアップのとき、アクセスポイント装置とステーション装置は好適な送受信セクタを知らない。そこで、好適なセクタを調べるため、SLSを行う。SLSはイニシエータセクタスイープ(ISS)期間とレスポンダセクタスイープ(RSS)期間で行われる。SLSの精度を改善するために、SLSの後にBRP(Beam Refinement Protocol)を行うことも可能である。
【0089】
図10にSLSの一例を示す。図10の例では、イニシエータが送信セクタスイープ(TXSS)した後、レスポンダがTXSSを行う。TXSSでは、好適な送信セクタの探索が行われる。図10の401-0~401-15はイニシエータが送信するISSWフィールド(第1のSSWフィールドとも呼ぶ)である。ISSWフィールドは、例えば、ビーコンフレームで送信される。ISSWフレームはそれぞれ異なるセクタで1または複数個送信され、レスポンダは、これら異なるセクタで送信されたISSWフレームの中で、レスポンダにとって適したセクタを求める。なお、レスポンダにとって適したセクタは、ISSWフレームの受信電力が最大となるセクタ、あるいはSNRが最大となるセクタなどを選択してよいが、これに限定されるものではない。図10は、送信セクタ数が16の例であるが、送信セクタ数は1以上のどのような整数も取りうる。ISSWフレームはCDOWN、セクタIDを含み、CDOWNは残りの送信SSWフィールド数(セクタ数)を示す。なお、CDOWNの初期値は送信セクタ数-1となり、CDOWN=0は残りのISSWフィールドはないことを示す。セクタIDはSSWフィールドの送信に用いているセクタを示す。
【0090】
イニシエータのTXSS(ITXSSとも呼ぶ)の後、レスポンダのTXSS(RTXSSとも呼ぶ)が行われる。図10の402-0~402-15はレスポンダが送信するRSSWフィールド(第2のSSWフィールドとも呼ぶ)である。レスポンダが送信するRSSWフィールドの数は、セクタ数とビームアンテナ数の積である。RSSWフィールドは、CDOWN、セクタID及びビームアンテナIDを含む。レスポンダは、レスポンダのRTXSSの後、RSSWフィードバックフィールドをイニシエータに送信する。RSSWフィードバックフィールドは、レスポンダが選択したイニシエータの送信セクタに関する情報を含む。また、イニシエータはISSWフィードバックフィールドをレスポンダに送信する。イニシエータのISSWフィードバックフィールドは、イニシエータが選択したレスポンダの送信セクタに関する情報を含む。
【0091】
テラヘルツ波帯やミリ波帯のような高周波数帯では、ハードウェアのコスト削減や軽量化のため、上りリンク(アップリンク、リバースリンク、UL)伝送のみをサポートし、下りリンク(ダウンリンク、フォワードリンク、DL)伝送をサポートしない、あるいは消費電力の制限、低消費電力モードへの移行、上りリンクの非アクティベート化、TID-to-Link mappingなどで一時的、半永続的または永続的に上りリンク伝送が使用できないことが考えられる。図6の例において、リンク1は2.4GHz帯、リンク2は60GHz帯で送信または受信するものとする。このとき、サブステーション装置30000-3は送信のみをサポートしているものとする。この場合、サブアクセスポイント装置20000-3がイニシエータとなってTXSSしても、サブステーション装置30000-3はサブアクセスポイント装置20000-3が送信するISSWフィールド信号を受信することができない。その代替として、リンク1を用いて、サブアクセスポイント装置20000-2がサブステーション装置30000-2に、サブステーション装置30000-3からISSWフィールド信号を送信するように通知するとともに、サブステーション装置30000-2の受信に適した送信セクタを示す情報を送信することができる。なお、以降では、特に断りがない限り、リンク1で送信または受信するサブアクセスポイント装置、サブステーション装置を各々第1のサブアクセスポイント装置、第1のサブステーション装置とも呼ぶ。また、リンク2で送信または受信するサブアクセスポイント装置、サブステーション装置を各々第2のサブアクセスポイント装置、第2のサブステーション装置とも呼ぶ。
【0092】
サブアクセスポイント装置とサブステーション装置がリンクをセットアップする際に、サブステーション装置はサブアクセスポイント装置にアソシエーション要求フレームを送信する。アソシエーション要求フレームは、BMLE、ケーパビリティ情報及びTID-to-Link Mapping情報の、一部または全部を含む。ケーパビリティ情報はサブステーション装置がサポートまたは実装している機能を示す情報である。TID-to-Link Mapping情報は各リンクにマッピングされるTID(Traffic Identifier)を示す。TIDはサポートしているQoSでパケット(例えばMSDU)を区別するために用いられる。TID-to-Link Mappingで、あるリンクのULにTIDがマッピングされない場合、そのリンクのULは無効(disable)になる。なお、再セットアップを要求する場合、サブステーション装置はサブアクセスポイント装置にリアソシエーション要求フレームを送信する。リアソシエーション要求フレームは、BMLE、ケーパビリティ情報及びTID-to-Link Mapping情報の、一部または全部を含む。アソシエーション要求フレーム、リアソシエーション要求フレーム以外の制御情報、例えば電力制御のための制御情報や通信に用いる周波数を制御するための制御情報が、BMLE、ケーパビリティ情報及びTID-to-Link Mapping情報の、一部または全部を含んでもよい。
【0093】
第2のサブステーション装置が下りリンク伝送を受信できない場合、第2のサブステーション装置は、アソシエーション要求フレーム、リアソシエーション要求フレーム、TID-to-Link Mapping情報などの休止中のリンクを回復する制御情報を含むフレーム、電力制御により使用するリンクを制限する制御情報フレームなどの、リンクを制御するリンク制御情報を第2のリンクを使用して送信することができない。そこで、第1のサブステーション装置は、第2のサブステーション装置のアソシエーション要求フレームまたはリアソシエーション要求フレームなどのリンク制御情報を第1のリンクを使用して送信する。なお、アソシエーション要求フレームやリアソシエーション要求フレームのようなリンクを制御する情報で、その制御対象リンクを使用して送信するものを第1のリンク制御情報とも呼ぶ。また、アソシエーション要求フレームやリアソシエーション要求フレームなどのリンクを制御する情報で、その制御対象リンクとは異なるリンクを使用して送信するものを第2のリンク制御情報とも呼ぶ。第1のサブステーション装置が、第2のサブステーション装置に関する第2のリンク制御情報を送信する場合、ケーパビリティ情報は第2のサブステーション装置のケーパビリティ情報を含む。第2のサブステーション装置のケーパビリティ情報は、第2のサブステーション装置が下りリンク伝送が可能か否かを示す情報を含む。第2のサブステーション装置が下りリンク伝送が可能か否かを示す情報が可能を示す場合、第2のサブステーション装置がリンク2で下りリンク伝送と上りリンク伝送の両方をサポートまたは実装していることを示してよい。また、第2のサブステーション装置が下りリンク伝送が可能か否かを示す情報が不可を示す場合、第2のサブステーション装置は上りリンク伝送のみをサポートまたは実装しており、下りリンク伝送はサポートまたは実装していないことを示す。また、第2のサブステーション装置が下りリンク伝送が可能か否かを示す情報が不可を示す場合、BMLEで送信される内容が変わってもよい。例えば、BMLEは、リンク1のリンクID、リンク2のリンクID、第1のサブステーション装置のMACアドレス、第2のサブステーション装置のMACアドレス、第2のサブアクセスポイント装置のMACアドレス及び第2のサブアクセスポイント装置が選択した送信セクタを示す情報の、一部または全部を含む。また、第2のサブステーション装置のケーパビリティ情報に上りリンクのみ伝送できるかどうかを示す情報を含むことで、第2のサブステーション装置が下りリンク伝送が可能か否かを示してよい。一例として、第2のサブステーション装置のケーパビリティ情報に上りリンクのみ伝送できることを示す情報を含む場合は、下りリンク伝送が不可で上りリンク伝送のみが可能としてもよい。
【0094】
第1のサブステーション装置は、データフレーム送信前のタイミング、あるいはRTS送信前のタイミングなどで、SLS要求フレームを第1のサブアクセスポイント装置に送信することでSLSを要求する。なお、SLS要求フレームはSLSに限らず、より高精度なビーム方向を特定するためのビームスイープ(Beam refinement)を指示するものであってもよい。SLS要求フレームは、第2のサブステーション装置が行うTXSSの開始(送信)タイミング、SLSの送信セクタ数、ビームサーチ(ビームスイープ、セクタスイープ)応答信号の送信タイミング、ビームサーチ(ビームスイープ、セクタスイープ)応答信号の送信期限及びSLSを行う周波数帯の、一部または全部を含む。また、アクセスポイントの指示により、第2のサブステーション装置がビーコン送信(ブロードキャスト信号、マルチキャスト信号)を行うとしてもよい。ここで第2のサブステーション装置が送信するビーコンは、アクセスポイント装置が送信するビーコンと同様、タイムスタンプや機能情報が含まれてもよいが、必ずしもアクセスポイント装置が送信するビーコンフレームと同様の信号をすべて含む必要はなく、アクセスポイント装置が送信するビーコンフレームとは別物の第2のビーコンフレームであってもよい。また、第2のサブステーション装置が送信するビーコンフレームはブロードキャストされてもよいし、指示を行ったアクセスポイント装置のSSIDがビーコンフレームのフィールドに含まれてもよい。指示を行ったアクセスポイント装置のSSIDがビーコンフレームのフィールドに含まれる場合、当該アクセスポイント装置のみが第1のサブステーション宛てにビームサーチ応答信号を送信する。ビームサーチ応答信号には、第2のサブステーション装置からの送信時に使用が期待される送信セクタ(ビームインデックス)を示す情報の他、受信強度、第2のサブステーション装置を示す情報等が含まれてもよい。第2のサブステーション装置が行うセクタスイープはTXSSでのみならず別のセクタスイープと解釈してもよい。第2のサブアクセスポイント装置は、TXSSの開始タイミングからSLSの送信セクタ数だけのTXSSレスポンダとしての受信動作を行い、好適な送信セクタ(セクタID、ビームインデックス)を選択する。そして、第1のサブアクセスポイント装置は、第2のサブアクセスポイント装置が選択した好適な送信セクタ(セクタID、ビームインデックス)を示す情報を含むビームサーチ応答信号を、ビームサーチ応答信号の送信タイミングで送信する。好適な送信セクタは第2のサブアクセスポイント装置が受信した全て、または一部の信号を用いて計算式により第1のサブアクセスポイント装置または第2のサブアクセスポイント装置が求めてもよく、また、第1のサブアクセスポイント装置または第2のサブアクセスポイント装置が受信した能力情報やその他情報によりあらかじめ決められた複数の数値の中から1以上の数値を選択する方法により求めてもよい。また、受信電力などの基準値(閾値)を満足する送信セクタを選択してもよい。なお、第1のサブアクセスポイント装置がビームサーチ応答信号の送信期限までにビームサーチ応答信号を送信できなければ、第2のサブステーション装置は、再度SLS要求フレームを送信してもよいし、以前のSLSの結果を用いて、データフレームを送信してもよい。なお、ビームサーチ応答信号は、第2のサブアクセスポイント装置が選択した好適な送信セクタを示す情報を含む第2のリンク制御情報であってもよい。また、ビームサーチ応答信号に接続先のサブステーション装置またはリンクを特定するための情報、例えば、送信側(例えば第2のサブステーション装置)のMACアドレス、受信側(例えば第2のサブアクセスポイント装置)のMACアドレス、該当するリンクID(例えばリンク2のリンクID)の少なくとも1つを含んでもよい。さらに当該好適な送信セクタにおける受信品質(受信信号強度(RSSI)、参照信号受信電力(RSRP)、あるいは所定の品質を満たすかどうかの情報)がビームサーチ応答信号に含まれてもよい。さらにはビームサーチにおいてサブステーション装置から通知される所定の品質を満たさない場合、ビームサーチ応答信号を送信しないとしてもよい。所定の品質は、ビーコン等に含まれていてもよい。送信セクタの品質をサブアクセスポイント装置が認識できることで、他のステーション装置との接続を優先させたり、端末が他のアクセスポイント装置と接続させたりすることが可能となるため、システム全体の性能を向上させることができる。
【0095】
第1のサブアクセスポイント装置は、第1のサブステーション装置から受信したSLS要求フレームへの応答として、SLS応答フレームを送信することができる。SLS応答フレームは、第2のサブステーション装置が行うTXSSの開始(送信)タイミング、SLSの送信セクタ数、ビームサーチ(ビームスイープ、セクタスイープ)応答信号の送信タイミングの一部または全部を含む。第2のサブアクセスポイント装置は、キャリアセンスによりTXOPを獲得し、当該TXOPの期間内にセクタスイープを行う。すなわち、SLS応答フレームで指示するTXSSの開始タイミングからSLSの送信セクタ数だけのセクタスイープ信号の送信が終了するまでの期間は、第2のサブアクセスポイント装置が獲得したTXOPの期間内である。なお、第2の周波数帯での通信にキャリアセンスが不要の場合、SLS応答フレームを送信しなくてもよく、SLS要求フレームに含まれるTXSSの開始タイミングからセクタスイープ信号が送信される。
【0096】
これらの手続きの一例を、図12を用いて説明する。第1のサブステーション装置は第1のサブアクセスポイント装置に対し、SLS要求フレーム1201をリンク1で送信する。第1のサブアクセスポイント装置がSLS要求フレーム1201を受信したあと、第2のサブアクセスポイント装置はリンク2で第2のサブステーション装置がSLSを実行するためのTXOP1211を確保する。このTXOP1211の確保の方法は特段限定されるものではなく、第2のサブアクセスポイント装置がリンク2でキャリアセンスを実行後にCTStoSelfフレームを送信する、RTSフレームを送信するなどの方法でNAVを含むフレームを送信することでTXOPを確保してもよく、またほかの方法として第2のサブアクセスポイント装置がキャリアセンスに成功した場合にNAVを含むフレームを送信することなしに所定の時間TXOPを確保できたとみなしてもよい。第2のサブアクセスポイント装置がリンク2でTXOP1211を確保したあと、第1のサブアクセスポイント装置は第1のサブステーション装置に対してSLSの実行を指示するフレーム1202を送信する。このSLSの実行を指示するフレームに含めるTXSSの開始タイミング、SLSの送信セクタ数などの情報は、第2のサブアクセスポイント装置が確保したTXOP1211の期間に基づいて決めてもよく、またTXOP1211の期間に関わらず予めアクセスポイント装置とステーション装置の間で取り交わした値などの所定の値に基づいて決めてもよい。第1のサブステーション装置がSLSの実行を指示するフレーム1202を受信したあと、第2のサブステーション装置はリンク2でTXSS1212を実行する。SLSの実行を指示するフレーム1202を送信したあと、第1のサブアクセスポイント装置はビームサーチ応答信号を含むフレーム1204を送信するために、リンク1でTXOP1203を確保する。TXOP1203の確保方法は特に限定されず、SLSの実行を指示するフレーム1202の送信後に改めてリンク1でキャリアセンスを実行してTXOP1203を確保してもよく、また、SLSの実行を指示するフレーム1202の送信時にTXOP1203を予め確保し、SLSの実行を指示するフレーム1202を送信する際にTXOP1203を含むNAVを送信してもよい。第2のサブステーション装置がTXSS1212を実行したあと、第1のサブアクセスポイント装置はTXOP1203の範囲でビームサーチ応答信号を含むフレーム1204を送信する。このような処理でビームサーチ応答を期限内に送信することが可能となる。この手続きに関する処理は図12の順に限定されず、一部の処理の順番を入れ替えたり、複数の処理をまとめて実行したりしてもよい。
【0097】
第1のサブアクセスポイント装置であるサブアクセスポイント装置20000-2がキャリアセンス後にビームサーチ応答信号を送信すると、ビームサーチ応答信号の送信期限に間に合わない可能性がある。そこで、ビームサーチ応答信号をより確実に送信するために、予め送信期間を確保することが考えられる。図11に一例を示す。図11の例では、リンク2でのTXSS期間501の後に、リンク1にビームサーチ応答期間502が設定される。ビームサーチ応答期間502のTXOPはサブステーション装置30000-2が獲得してもよいし、サブアクセスポイント装置20000-2が獲得してもよい。サブステーション装置30000-2がTXOPを獲得する場合、TXOPを保護または予約するために、RTSフレーム、またはCTS-to-Selfフレームを送信する。サブステーション装置30000-2がTXOPを獲得する場合、サブステーション装置30000-2はリンク1でキャリアセンスを行ってよい。RTSフレームを使用する場合、サブアクセスポイント装置20000-2を示すMACアドレスを、RAフィールドに含めてよい。また、サブステーション装置30000-2はTXOPを保護、予約する方法としてトリガーフレームを用いてよい。使用するトリガーフレームはビームサーチ応答を送信させるために新たに定義してもよく、また、IEEE802.11ax以前に使用されていたトリガーフレームを流用してよい。また、トリガーベースのサウンディングプロトコルの一部を変更してビームサーチ応答用のTXOPを保護、予約してよい。このとき、NDP announcementフレームで使用するAIDフィールド用にビームサーチ応答を要求する値、一例として2047などを設定し、そのNDP announcementフレームがビームサーチ応答を要求していることを示すようにしてもよい。これ以外にも他のフィールドを用い、例えばSounding Dialog Tokenフィールドの特定の値がビームサーチ応答を要求することを示すようにしてもよい。また、NDP announcementフレームに続くトリガーフレームによってビームサーチ応答のTXOPを保護、予約していることを示してもよい。なお、Trigger Typeサブフィールドの特定の値が、そのトリガーフレームがビームサーチ応答のTXOPを保護、予約していることを意味してよい。また、そのトリガーフレームの前に送信されたNDP announcementフレームがビームサーチ応答を要求することを示している場合、Trigger typeサブフィールドの値にNDP Feedback Report Pollを意味する値を使用してよい。ほかの変形例として、MU cascading sequenceを流用してもよい。例えばサブステーション装置30000-2がリンク1でTXOPを確保し、MU cascading sequenceを実行中に、サブステーション装置30000-2がACKまたはBlock ACKの送信に引き続いてトリガーフレームを送信するときに、ビームサーチ応答の送信を要求するためにサブアクセスポイント装置20000-2の送信を指示する情報を含めてよい。このときトリガーフレームにビームサーチ応答の送信を要求する情報を含めてもよい。
【0098】
サブアクセスポイント装置20000-2が、サブアクセスポイント装置20000-2を示すMACアドレスを含むRTSフレームまたはCTS-to-Selfフレーム、その他のTXOPを確保してあることを示す情報を受信した場合、サブアクセスポイント装置20000-2は、RTSフレームまたはCTS-to-Selfフレームなどで指示されるTXOP期間にキャリアセンスを行わずにビームサーチ応答信号を送信する。RTSフレームまたはCTS-to-Selfフレームを受信しなかった場合、第1のサブアクセスポイント装置であるサブアクセスポイント装置20000-2は、キャリアセンスを行ってTXOPを獲得して、ビームサーチ応答信号を送信してもよい。また、第1のサブステーション装置はTXOP期間内に第1のサブアクセスポイント装置であるサブアクセスポイント装置20000-2にビームサーチ応答信号送信を要求するトリガーフレームを送信することができる。第1のサブアクセスポイント装置であるサブアクセスポイント装置20000-2は、サブアクセスポイント装置20000-2のビームサーチ応答信号送信を要求するトリガーフレームを受信した場合、トリガーフレームへの応答としてビームサーチ応答信号を送信する。なお、トリガーフレームは第2のサブステーション装置であるサブステーション装置30000-3が送信してもよく、サブステーション装置30000-4が送信してもよい。なお、第1のサブステーション装置または第2のサブステーション装置は、サブアクセスポイント装置20000-2のビームサーチ応答信号送信を要求するトリガーフレームを送信するか否かを予め制御フレームで第1のサブアクセスポイント装置または第2のサブアクセスポイント装置に通知してもよい。また、第1のサブアクセスポイント装置は、第1のサブステーション装置がISSWフィールド信号を送信することが可能な応答期間を周期的に設定することも可能である。例えば、ビーコンフレームなどの制御フレームで、ビーコンフレームが示すTXOP期間中にサブステーション装置1がISSWフィールド信号を送信ことが可能な応答期間を設定することができる。この場合、第1のサブステーション装置は、ISSWフィールド信号を、第1のサブステーション装置のISSWフィールド信号を送信することが可能な応答期間が設定された期間中に送信する。なお、応答期間に他の通信装置が通信する可能性があるため、ISSWフィールド信号以外の送信を制限してもよい。また、第1のサブアクセスポイント装置は、応答期間とオーバーラップするQuiet intervalを設定し、他の通信装置からのアクセスを制限してもよい。Quiet intervalは許可された通信装置以外はアクセスできない期間である。また、上記ISSWフィールド信号は、RSSWフィールド信号、もしくは別の信号と解釈されてもよい。
【0099】
また、サブステーション装置は、複数のリンクで下りリンク伝送をサポートしないことも考えられる。図6の例で、リンク1は2.4GHz帯、リンク2は60GHz帯、リンク3は140GHz帯で送信または受信するものとする。このとき、サブステーション装置30000-3及びサブステーション装置30000-4は送信のみをサポートしているものとする。なお、サブアクセスポイント装置20000-4を第3のサブアクセスポイント装置、サブステーション装置30000-4を第4のサブステーション装置とも呼ぶ。このとき第1のサブアクセスポイント装置は、第2のサブステーション装置に関する第2のリンク制御情報、及び、第3のサブステーション装置に関する第3のリンク制御情報を第1のサブステーション装置に送信する。第2のサブステーション装置に対してビームサーチ応答信号を送信する応答期間と第3のサブステーション装置に対してビームサーチ応答信号を送信する応答期間は異なっても良いし、同じでもよい。2つのサブアクセスポイント装置がビームサーチ応答信号を送信するための各々の応答期間が異なる場合、各々の応答期間でリンク制御情報を送信する。2つのサブアクセスポイント装置の応答期間が重なっている場合または1つの応答期間が設定されている場合、各リンクの第2リンク制御情報を含むビームサーチ応答信号を送信する。
【0100】
複数のリンクで下りリンクをサポートせず、上りリンクをサポートする通信リンクが複数ある場合、DL/ULリンクコンビネーションを設定してもよい。例えば、第1のリンク(第1のサブステーション装置)及び第2のリンク(第2のサブステーション装置)は下りリンクをサポートしておらず、第3のリンク(第3のサブステーション装置)及び第4のリンク(第4のサブステーション装置)は下りリンクをサポートするものとする。この場合、第1のリンク及び第2のリンクに対して、下りリンク伝送を行うリンクを設定することができる。例えば、DL/ULコンビネーションは第1のリンクに対して第3のリンクを設定し、第2のリンクに対して第4のリンクを設定することができる。なお、DL/ULリンクコンビネーションに設定可能なペアは制限されてもよい。マルチリンクのうち1つのリンクのみの通信に制限される方式(機能)に対してはDL/ULリンクコンビネーションが設定されない。例えば非同時送受信(Non Simultaneous Transmission and Reception; NSTR)、EMLSR(Enhanced Multi Link Single Radio)、またはEMLMR(Enhanced Multi Link Multi Radio)に設定されているリンクコンビネーションはDL/ULリンクコンビネーションに設定されない。なお、NSTRリンクペアはあるリンクが送信中に別のリンクで受信できないものである。EMLSR及びEMLMRは、マルチリンクで通信状況の観測は可能であるが、データ通信時は1リンクのみを用いる方式である。ビームサーチ応答を送信する際に、DL/ULコンビネーションに含まれるリンクにおける選択した好適な送信セクタを示す情報を含めてよい。また、ビームサーチ応答を送信するリンクを、DL/ULコンビネーションに含まれるリンクから選択してよい。
【0101】
本発明に係る通信装置は、国や地域からの使用許可を必要としない、いわゆるアンライセンスバンド(unlicensed band)と呼ばれる周波数バンド(周波数スペクトラム)において通信を行うことができるが、使用可能な周波数バンドはこれに限定されない。本発明に係る通信装置は、例えば、国や地域から特定サービスへの使用許可が与えられているにも関わらず、周波数間の混信を防ぐ等の目的により、実際には使われていないホワイトバンドと呼ばれる周波数バンド(例えば、テレビ放送用として割り当てられたものの、地域によっては使われていない周波数バンド)や、複数の事業者で共用することが見込まれる共用スペクトラム(共用周波数バンド)においても、その効果を発揮することが可能である。
【0102】
本発明に係る無線通信装置で動作するプログラムは、本発明に関わる上記実施形態の機能を実現するように、CPU等を制御するプログラム(コンピュータを機能させるプログラム)である。そして、これら装置で取り扱われる情報は、その処理時に一時的にRAMに蓄積され、その後、各種ROMやHDDに格納され、必要に応じてCPUによ
って読み出し、修正・書き込みが行なわれる。プログラムを格納する記録媒体としては、半導体媒体(例えば、ROM、不揮発性メモリカード等)、光記録媒体(例えば、DVD、MO、MD、CD、BD等)、磁気記録媒体(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスク等)等のいずれであってもよい。また、ロードしたプログラムを実行することにより、上述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムの指示に基づき、オペレーティングシステムあるいは他のアプリケーションプログラム等と共同して処理することにより、本発明の機能が実現される場合もある。
【0103】
また市場に流通させる場合には、可搬型の記録媒体にプログラムを格納して流通させたり、インターネット等のネットワークを介して接続されたサーバコンピュータに転送したりすることができる。この場合、サーバコンピュータの記憶装置も本発明に含まれる。また、上述した実施形態における通信装置の一部、または全部を典型的には集積回路であるLSIとして実現してもよい。通信装置の各機能ブロックは個別にチップ化してもよいし、一部、または全部を集積してチップ化してもよい。各機能ブロックを集積回路化した場合に、それらを制御する集積回路制御部が付加される。
【0104】
また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現しても良い。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いることも可能である。
【0105】
なお、本願発明は上述の実施形態に限定されるものではない。本願発明の無線通信装置は、移動局装置への適用に限定されるものではなく、屋内外に設置される据え置き型、または非可動型の電子機器、たとえば、AV機器、キッチン機器、掃除・洗濯機器、空調機器、オフィス機器、自動販売機、その他生活機器などに適用出来ることは言うまでもない。
【0106】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も特許請求の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、通信装置及び通信方法に用いて好適である。
【符号の説明】
【0108】
1-1、1-2 無線通信装置
2-1~2-6 無線通信装置
3-1、3-2 無線通信システム
10000-1 無線通信装置
10001-1 上位層処理部
10001a-1 マルチリンク制御部
10002-1 制御部
10002a-1 CCA部
10002b-1 バックオフ部
10002c-1 送信判断部
10003-1 送信部
10003a-1 物理層フレーム生成部
10003b-1 無線送信部
10004-1 受信部
10004a-1 無線受信部
10004b-1 信号復調部
10004c-1 受信品質測定部
10005-1 アンテナ部
20000-1 MLDアクセスポイント装置
20000-2、20000-3、20000-4 サブ無線通信装置(サブアクセスポイント装置)
30000-1 MLDステーション装置
30000-2、30000-3、30000-4 サブ無線通信装置(サブステーション装置)
401-1、401―2、401―15、402-1、402―2、402―15 SSWフィールド
501 TXSS期間
502 応答期間
図1
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図12