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  • 特開-車両 図1
  • 特開-車両 図2
  • 特開-車両 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172982
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/12 20120101AFI20241205BHJP
【FI】
B60W40/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091075
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川口 峻征
(72)【発明者】
【氏名】綾部 篤志
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA00
3D241BA50
3D241BB00
3D241DA13Z
3D241DA23Z
3D241DA39Z
3D241DB02Z
3D241DD12Z
(57)【要約】
【課題】サーキット走行モードであと何回に亘って所定サイクル走行を行なうことができるかをユーザに知らせる。
【解決手段】車両は、走行用のエネルギを蓄えるエネルギ貯蔵装置と、エネルギ貯蔵装置から供給されるエネルギを用いて走行用の駆動力を出力する駆動装置と、駆動装置を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、サーキット走行モードが選択されているときには、所定サイクル走行に消費したエネルギに基づいてエネルギ貯蔵装置に残存しているエネルギにより所定サイクル走行を何回行なうことができるかのサイクル走行可能数を演算し、サイクル走行可能数を報知する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用のエネルギを蓄えるエネルギ貯蔵装置と、前記エネルギ貯蔵装置から供給されるエネルギを用いて走行用の駆動力を出力する駆動装置と、前記駆動装置を制御する制御装置と、を備える車両であって、
前記制御装置は、サーキット走行モードが選択されているときには、所定サイクル走行に消費したエネルギに基づいて前記エネルギ貯蔵装置に残存しているエネルギにより前記所定サイクル走行を何回行なうことができるかのサイクル走行可能数を演算し、前記サイクル走行可能数を報知する、
ことを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に関し、詳しくは、サーキット走行モードを選択可能な車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両としては、車両がサーキット場に所定距離内に近づいた場合、表示モニタに表示されている表示画面が、地図画面からサーキット用画面に切り替わるナビゲーションシステムを搭載するものが提案されている(例えば特許文献1参照)。この車両では、車両がサーキット場に埋め込まれている磁気バーを通過した時間を計測してサーキット場走行中のラップタイムを計測し計測したラップタイムをサーキット用画面に表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-038622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の車両では、サーキット場でのラップタイムをユーザに知らせることはできるが、車両に搭載した燃料タンクの残量やバッテリの残容量あと何周に亘ってサーキット走行を行なうことができるかを知ることはできない。
【0005】
本開示の車両は、サーキット走行モードであと何回に亘って所定サイクル走行を行なうことができるかをユーザに知らせることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の車両は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示の車両は、
走行用のエネルギを蓄えるエネルギ貯蔵装置と、前記エネルギ貯蔵装置から供給されるエネルギを用いて走行用の駆動力を出力する駆動装置と、前記駆動装置を制御する制御装置と、を備える車両であって、
前記制御装置は、サーキット走行モードが選択されているときには、所定サイクル走行に消費したエネルギに基づいて前記エネルギ貯蔵装置に残存しているエネルギにより前記所定サイクル走行を何回行なうことができるかのサイクル走行可能数を演算し、前記サイクル走行可能数を報知する、
ことを特徴とする。
【0008】
本開示の車両では、サーキット走行モードが選択されているときには、所定サイクル走行に消費したエネルギに基づいて前記エネルギ貯蔵装置に残存しているエネルギにより所定サイクル走行を何回行なうことができるかのサイクル走行可能数を演算し、サイクル走行可能数を報知する。これにより、サーキット走行モードであと何回に亘って所定サイクル走行を行なうことができるかをユーザに知らせることができる。
【0009】
本開示の車両では、炭化水素系の燃料を用いて駆動力を出力する内燃機関を搭載する場合には、燃料タンクが「エネルギ貯蔵装置」に相当し、内燃機関が「駆動装置」に相当する。車両が電機自動車の場合には、バッテリなどの蓄電装置が「エネルギ貯蔵装置」に相当し、走行用のモータなどが「駆動装置」に相当する。車両が燃料電池車の場合には、水素タンクや水素発生用の燃料タンクが「エネルギ貯蔵装置」に相当し、走行用のモータなどが「駆動装置」に相当する。車両がハイブリッド車の場合には、燃料タンクとバッテリとが「エネルギ貯蔵装置」に相当し、内燃機関とモータなどが「駆動装置」に相当する。
【0010】
本開示の車両では、「所定サイクル走行」としては、周回のサーキット場では1周分の走行を意味するものとしてもよい。「所定サイクル走行」としては、直線走行場では直線走行部分の走行とその後スタート地点に戻るまでの走行との和を意味するものとしてもよい。この場合、他の車両によってスタート地点に戻すものでは直線走行部分の走行を意味するものとなる。
【0011】
本開示の車両では、サイクル走行可能数を演算するときに用いるエネルギ貯蔵装置に残存しているエネルギとしては、全残量から所定距離だけ走行するのに必要なエネルギを減じたものを用いてもよい。所定距離としては、所定サイクル走行の場所から自宅までの距離や所定サイクル走行の場所から最寄りのガソリンスタンドや充電スタンドなどのエネルギ補給所までの距離を用いたり、予め定めた距離(例えば20kmや30km)を用いたりすることができる。
【0012】
本開示の車両において、前記制御装置は、前記サーキット走行モードによる前記所定サイクル走行が完了していないときには、前記所定サイクル走行を開始してから完了するまでに消費したエネルギを演算するものとしてよい。
【0013】
本発明の車両において、前記所定サイクル走行を行なう走行路を地図データに有するナビゲーションシステムを搭載し、前記ナビゲーションシステムにより前記所定サイクル走行のスタート地点をゴール地点とを判定するものとしてもよい。所定サイクル走行が周回のサーキット場ではスタート地点とゴール地点は同一地点となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の実施形態としての自動車20の構成の概略を示す構成図である。
図2】電子制御ユニット50により実行されるサーキット走行処理の一例を示すフローチャートである。
図3】表示装置70に表示される走行可能ラップ数Clapの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本開示を実施するための形態(実施形態)について説明する。図1は、本開示の実施形態としての自動車20の構成の概略を示す構成図である。図示するように、実施形態の自動車20は、エンジン22と、変速機24と、燃料タンク30と、電子制御ユニット50と、モード選択スイッチ69と、ナビゲーションシステム72と、を備える。
【0016】
エンジン22は、例えばガソリンや軽油などの炭化水素系の燃料を用いて駆動する内燃機関として構成されており、その出力軸23は変速機24に接続されている。
【0017】
変速機24は、例えば周知の手動の前進6段で後進1段の変速機として構成されている。変速機24の出力軸はデファレンシャルギヤ26を介して駆動輪28a,28bに連結されている駆動軸25に接続されている。
【0018】
電子制御ユニット50は、CPU51を中心として構成されたマイクロコンピュータであり、CPU51の他に、プログラムなどを記憶するROM52や、データを一時的に記憶するRAM53、データなど記憶するフラッシュメモリ54、図示しない入出力ポートを備える。
【0019】
電子制御ユニット50には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。入力ポートを介して電子制御ユニット50に入力される信号としては、イグニッションスイッチ60からのイグニッション信号、シフトレバー61のポジションを検出するシフトポジションセンサ62からのシフトポジションSP、アクセルペダル63の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ64からのアクセル開度Acc、ブレーキペダル65の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ66からのブレーキポジションBPなどを挙げることができる。また、車速センサ68からの車速Vや、モード選択スイッチ69からのスイッチ信号SW、燃料タンク30に設置された残燃料計32からの残燃料量Qfなども挙げることができる。モード選択スイッチ69は、実施形態では、通常走行モードとサーキット走行モードとの選択を行なうものとして構成されている。サーキット走行モードは、アクセルペダル63の踏み込み量としてのアクセル開度Accの変動を通常走行モードに比して鋭敏なものとしたり、エンジン22の制御をパワー重視の制御としたり、過給機を有するエンジンの場合にはアクセルオフの後のアクセルペダル63の踏み込み時に過給機能が遅れるタイムラグを抑制するアンチラグ制御を実行するものとしたりすることができる。
【0020】
電子制御ユニット50からは各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。出力ポートを介して電子制御ユニット50から出力される制御信号としては、エンジン22を運転制御するためのスロットル制御信号や燃料噴射制御、点火制御信号などの制御信号、変速機24への駆動制御信号などを挙げることができる。また、運転席近傍に取り付けられた表示装置70への表示制御信号なども挙げることができる。
【0021】
ナビゲーションシステム72は、設定した目的地に自車両を誘導するシステムであり、地図情報データベースを備える。地図情報データベースには、地図情報として、各区間における道路の距離情報や幅員情報、種別情報(一般道路、高速道路)、法定速度情報などが記憶されている。また、地図情報データベースには、各地のサーキット場のコース情報が記憶されている。ナビゲーションシステム72は、目的地が設定されると、目的地の情報とGPSにより取得した現在地(現在の自車両の位置)の情報と地図情報データベースに記憶されている情報とに基づいて走行ルートを設定し、設定した走行ルートを表示装置70に表示してルート案内を行なう。
【0022】
次に、こうして構成された実施形態の自動車20の動作、特にサーキット走行モードによりサーキットコースを走行しているときの動作について説明する。図2は、電子制御ユニット50により実行されるサーキット走行処理の一例を示すフローチャートである。この処理は所定時間毎に繰り返し実行される。
【0023】
サーキット走行処理が実行されると、電子制御ユニット50は、まず、走行モードがサーキット走行モードであるか否かを判定する(ステップS100)。この判定は、モード選択スイッチ69からのスイッチ信号SWを調べることにより実行することができる。走行モードがサーキット走行モードではないと判定したときには、本処理は不要と判断し、本処理を終了する。
【0024】
ステップS100で走行モードがサーキット走行モードであると判定したときには、サーキットの周回履歴があるか否かを判定する(ステップS110)。周回履歴は、1周当たりの燃料消費量の算出を完了したときに本処理により履歴を登録するから、その履歴が登録されているか否かにより判定することができる。
【0025】
ステップS110で周回履歴がないと判定したときには、サーキットコースを1周する際に1周当たりの燃料消費量Qlapを算出すると共に(ステップS120)、算出した1周当たりの燃料消費量Qlapを記憶し(ステップS130)、周回履歴を登録して(ステップS140)、本処理を終了する。
【0026】
ステップS110で周回履歴があると判定したときには、燃料タンク30に設置された残燃料計32からの残燃料量Qfと1周当たりの燃料消費量Qlapからサーキットコースの周回可能な数(走行可能ラップ数)Clapを算出する(ステップS150)。走行可能ラップ数Clapの計算としては、残燃料量Qfを1周当たりの燃料消費量Qlapで除したときの整数部分としたり、残燃料量Qfからサーキット場から自宅までの距離を走行するのに必要な燃料量を減じたものを1周当たりの燃料消費量Qlapで除したときの整数部分としたり、残燃料量Qfからサーキット場から最寄りのガソリンスタンドまでの距離を走行するのに必要な燃料量を減じたものを1周当たりの燃料消費量Qlapで除したときの整数部分としたり、残燃料量Qfから予め定めた距離(例えば20kmや30km)を走行するのに必要な燃料量を減じたものを1周当たりの燃料消費量Qlapで除したときの整数部分としたりすることができる。
【0027】
そして、走行可能ラップ数Clapを表示装置70に表示して(ステップS160)、本処理を終了する。図3は、表示装置70に表示される走行可能ラップ数Clapの一例を示す説明図である。図示するように、走行可能ラップ数とサーキットコース図と共にコース内の自車位置が表示される。
【0028】
以上説明した実施形態の自動車20では、走行モードがサーキット走行モードであるときには、燃料タンク30に設置された残燃料計32からの残燃料量Qfと1周当たりの燃料消費量Qlapから走行可能ラップ数Clapを算出し、算出した走行可能ラップ数Clapを表示装置70に表示する。これにより、サーキット走行モードであと何回に亘ってサーキットコースを走行することができるかを運転者(ユーザ)に知らせることができる。
【0029】
実施形態の自動車20では、1周当たりの燃料消費量Qlapとして、サーキットコースを1周するのに消費した燃料量とした。しかし、サーキットコースが直線コースの場合には、直線コースを走行し、その後、スタート地点に戻るまでに消費した燃料量を1サイクル当たりの燃料消費量Qcyclを1周当たりの燃料消費量Qlapとして用いるものとしてもよい。この場合、直線コースを走行した後に他の車両によってスタート地点に戻す場合には、直線コースの走行で消費した燃料量を1サイクル当たりの燃料消費量Qcyclとすればよい。
【0030】
実施形態の自動車20では、モード選択スイッチ69によりサーキット走行モードを選択するものとしたが、車両がサーキットコースに入場したときにナビゲーションシステム72により自動的にサーキット走行モードを選択するものとしてもよい。
【0031】
実施形態の自動車20では、燃料タンク30とエンジン22と手動の変速機24とを搭載する自動車としたが、燃料タンク30とエンジン22と自動変速装置とを搭載する自動車としたり、燃料タンクとバッテリとエンジンと走行用のモータとを搭載するハイブリッド自動車としたり、バッテリと走行用のモータとを搭載する電気自動車としたり、水素タンクと燃料電池と走行用のモータとを搭載する燃料電池車としたりしてもよい。これらの場合、残燃料量Qfとしては、ハイブリッド自動車では燃料タンクの残燃料量とバッテリの残容量が相当し、電機自動車ではバッテリの残容量が相当し、燃料電池車では水素タンクの残水素量が相当する。
【0032】
実施形態の自動車20では、電子制御ユニット50により走行可能ラップ数Clapを計算すると共に計算した走行可能ラップ数Clapを表示装置70に表示するものとした。しかし、電子制御ユニット50により走行可能ラップ数Clapを計算すると共に計算した走行可能ラップ数Clapを携帯端末に送信して携帯端末に走行可能Lap数を表示するものとしてもよい。また、走行可能ラップ数Clapは、表示出力だけでなく、音声による出力としてもよい。
【0033】
実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施形態では、燃料タンク30が「エネルギ貯蔵装置」に相当し、エンジン22と変速機24とが駆動装置に相当し、電子制御ユニット50が「制御装置」に相当する。
【0034】
なお、実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0035】
以上、本開示を実施形態を用いて説明したが、本開示はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本開示は、自動車の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0037】
20 自動車、22 エンジン、23 出力軸、24 変速機、25 駆動軸、26 デファレンシャルギヤ、28a,28b 駆動輪、30 燃料タンク、32 残燃料計、50 電子制御ユニット、51 CPU、52 ROM、53 RAM、54 フラッシュメモリ、60 イグニッションスイッチ、61 シフトレバー、62 シフトポジションセンサ、63 アクセルペダル、64 アクセルペダルポジションセンサ、65 ブレーキペダル、66 ブレーキペダルポジションセンサ、68 車速センサ、69 モード選択スイッチ、70 表示装置、72 ナビゲーションシステム。
図1
図2
図3