(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172990
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】差動増幅器、測定器、及びゲイン調整方法
(51)【国際特許分類】
H03F 3/45 20060101AFI20241205BHJP
H03F 3/68 20060101ALI20241205BHJP
H03G 3/10 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H03F3/45
H03F3/68
H03G3/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091089
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596157780
【氏名又は名称】横河計測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】100176728
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】阿部 哲也
(72)【発明者】
【氏名】吉原 智朗
(72)【発明者】
【氏名】坂本 和輝
(72)【発明者】
【氏名】飯島 拓海
【テーマコード(参考)】
5J100
5J500
【Fターム(参考)】
5J100AA01
5J100BA05
5J100BB08
5J500AA01
5J500AA12
5J500AC16
5J500AC53
5J500AC62
5J500AC72
5J500AF20
5J500AH25
5J500AH26
5J500AK01
5J500AK03
5J500AM05
5J500AT07
5J500DP01
(57)【要約】
【課題】バッファと差動増幅回路との間のパターンインダクタンスの影響を低減させつつ、差動増幅回路のゲインを調整しやすくする。
【解決手段】差動増幅器110は、別々の信号が入力される1対のバッファと、1対のバッファからの出力信号の差分を増幅する第1差動増幅回路101と、1対のバッファからの出力信号の差分を第1差動増幅回路101とは反対の極性で増幅する第2差動増幅回路102と、第1差動増幅回路101及び第2差動増幅回路102からの出力信号の差分を増幅する第3差動増幅回路103と、1対のバッファからの出力信号の各々が分岐する分岐点と第1差動増幅回路101及び第2差動増幅回路102の各々との間に接続されたダンピング抵抗とを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
別々の信号が入力される1対のバッファと、
前記1対のバッファからの出力信号の差分を増幅する第1差動増幅回路と、
前記1対のバッファからの出力信号の差分を前記第1差動増幅回路とは反対の極性で増幅する第2差動増幅回路と、
前記第1差動増幅回路及び前記第2差動増幅回路からの出力信号の差分を増幅する第3差動増幅回路と、
前記1対のバッファからの出力信号の各々が分岐する分岐点と前記第1差動増幅回路及び前記第2差動増幅回路の各々との間に接続されたダンピング抵抗と
を備える差動増幅器。
【請求項2】
前記分岐点として、第1分岐点を含み、前記1対のバッファに含まれる第1バッファからの出力信号を前記第1分岐点で分岐させて前記第1差動増幅回路及び前記第2差動増幅回路の各々に伝送する第1パターンと、
前記分岐点として、第2分岐点を含み、前記1対のバッファに含まれる第2バッファからの出力信号を前記第2分岐点で分岐させて前記第1差動増幅回路及び前記第2差動増幅回路の各々に伝送する第2パターンと
を更に備え、
前記ダンピング抵抗は、前記第1パターンの前記第1分岐点と前記第1差動増幅回路との間、前記第1パターンの前記第1分岐点と前記第2差動増幅回路との間、前記第2パターンの前記第2分岐点と前記第1差動増幅回路との間、及び前記第2パターンの前記第2分岐点と前記第2差動増幅回路との間に1つずつ挿入されている請求項1に記載の差動増幅器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の差動増幅器を備える測定器。
【請求項4】
別々の信号が入力される1対のバッファと、前記1対のバッファからの出力信号の差分を増幅する第1差動増幅回路と、前記1対のバッファからの出力信号の差分を前記第1差動増幅回路とは反対の極性で増幅する第2差動増幅回路と、前記第1差動増幅回路及び前記第2差動増幅回路からの出力信号の差分を増幅する第3差動増幅回路と、前記1対のバッファからの出力信号の各々が分岐する分岐点と前記第1差動増幅回路及び前記第2差動増幅回路の各々との間に接続されたダンピング抵抗とを備える差動増幅器の前記第1差動増幅回路のゲインを調整することと、
前記差動増幅器の前記第2差動増幅回路のゲインを前記第1差動増幅回路のゲインとは独立して調整することと
を含むゲイン調整方法。
【請求項5】
前記差動増幅器は、
前記分岐点として、第1分岐点を含み、前記1対のバッファに含まれる第1バッファからの出力信号を前記第1分岐点で分岐させて前記第1差動増幅回路及び前記第2差動増幅回路の各々に伝送する第1パターンと、
前記分岐点として、第2分岐点を含み、前記1対のバッファに含まれる第2バッファからの出力信号を前記第2分岐点で分岐させて前記第1差動増幅回路及び前記第2差動増幅回路の各々に伝送する第2パターンと
を更に備え、
前記ダンピング抵抗は、前記第1パターンの前記第1分岐点と前記第1差動増幅回路との間、前記第1パターンの前記第1分岐点と前記第2差動増幅回路との間、前記第2パターンの前記第2分岐点と前記第1差動増幅回路との間、及び前記第2パターンの前記第2分岐点と前記第2差動増幅回路との間に1つずつ挿入されている請求項4に記載のゲイン調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、差動増幅器、測定器、及びゲイン調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、高いCMRR、高い入力インピーダンス、及び広い周波数帯域を有する差動増幅器が開示されている。「CMRR」は、common mode rejection ratio(同相除去比)の略語である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
入力バッファと差動増幅回路との間の銅箔パターンは10MHz以上の高周波領域においてインダクタンスとして振る舞う。このインダクタンス成分は時にオーバーシュート又はリンギングの原因となり得る。
【0005】
本開示の目的は、バッファと差動増幅回路との間のパターンインダクタンスの影響を低減させつつ、差動増幅回路のゲインを調整しやすくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
幾つかの実施形態に係る差動増幅器、測定器、及びゲイン調整方法について以下に記載する。
【0007】
[1]
別々の信号が入力される1対のバッファと、
前記1対のバッファからの出力信号の差分を増幅する第1差動増幅回路と、
前記1対のバッファからの出力信号の差分を前記第1差動増幅回路とは反対の極性で増幅する第2差動増幅回路と、
前記第1差動増幅回路及び前記第2差動増幅回路からの出力信号の差分を増幅する第3差動増幅回路と、
前記1対のバッファからの出力信号の各々が分岐する分岐点と前記第1差動増幅回路及び前記第2差動増幅回路の各々との間に接続されたダンピング抵抗と
を備える差動増幅器。
【0008】
このような差動増幅器においては、バッファと差動増幅回路との間のパターンインダクタンスの影響を低減させつつ、差動増幅回路のゲインを調整しやすくすることができる。
【0009】
[2]
前記分岐点として、第1分岐点を含み、前記1対のバッファに含まれる第1バッファからの出力信号を前記第1分岐点で分岐させて前記第1差動増幅回路及び前記第2差動増幅回路の各々に伝送する第1パターンと、
前記分岐点として、第2分岐点を含み、前記1対のバッファに含まれる第2バッファからの出力信号を前記第2分岐点で分岐させて前記第1差動増幅回路及び前記第2差動増幅回路の各々に伝送する第2パターンと
を更に備え、
前記ダンピング抵抗は、前記第1パターンの前記第1分岐点と前記第1差動増幅回路との間、前記第1パターンの前記第1分岐点と前記第2差動増幅回路との間、前記第2パターンの前記第2分岐点と前記第1差動増幅回路との間、及び前記第2パターンの前記第2分岐点と前記第2差動増幅回路との間に1つずつ挿入されている[1]に記載の差動増幅器。
【0010】
このような差動増幅器においては、第1差動増幅回路のゲインと第2差動増幅回路のゲインとを互いに独立して調整することができるため、差動増幅回路のゲインの調整がシンプルになる。
【0011】
[3]
[1]又は[2]に記載の差動増幅器を備える測定器。
【0012】
このような測定器においては、高いCMRR、高い入力インピーダンス、広い周波数帯域、及び高いレイアウト自由度を有する差動増幅器を組み込むことができる。
【0013】
[4]
別々の信号が入力される1対のバッファと、前記1対のバッファからの出力信号の差分を増幅する第1差動増幅回路と、前記1対のバッファからの出力信号の差分を前記第1差動増幅回路とは反対の極性で増幅する第2差動増幅回路と、前記第1差動増幅回路及び前記第2差動増幅回路からの出力信号の差分を増幅する第3差動増幅回路と、前記1対のバッファからの出力信号の各々が分岐する分岐点と前記第1差動増幅回路及び前記第2差動増幅回路の各々との間に接続されたダンピング抵抗とを備える差動増幅器の前記第1差動増幅回路のゲインを調整することと、
前記差動増幅器の前記第2差動増幅回路のゲインを前記第1差動増幅回路のゲインとは独立して調整することと
を含むゲイン調整方法。
【0014】
このようなゲイン調整方法においては、バッファと差動増幅回路との間のパターンインダクタンスの影響を低減させつつ、差動増幅回路のゲインを調整しやすくすることができる。
【0015】
[5]
前記差動増幅器は、
前記分岐点として、第1分岐点を含み、前記1対のバッファに含まれる第1バッファからの出力信号を前記第1分岐点で分岐させて前記第1差動増幅回路及び前記第2差動増幅回路の各々に伝送する第1パターンと、
前記分岐点として、第2分岐点を含み、前記1対のバッファに含まれる第2バッファからの出力信号を前記第2分岐点で分岐させて前記第1差動増幅回路及び前記第2差動増幅回路の各々に伝送する第2パターンと
を更に備え、
前記ダンピング抵抗は、前記第1パターンの前記第1分岐点と前記第1差動増幅回路との間、前記第1パターンの前記第1分岐点と前記第2差動増幅回路との間、前記第2パターンの前記第2分岐点と前記第1差動増幅回路との間、及び前記第2パターンの前記第2分岐点と前記第2差動増幅回路との間に1つずつ挿入されている[4]に記載のゲイン調整方法。
【0016】
このようなゲイン調整方法においては、差動増幅回路のゲインの調整がシンプルになる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、バッファと差動増幅回路との間のパターンインダクタンスの影響を低減させつつ、差動増幅回路のゲインを調整しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る差動増幅器の構成を示す回路図である。
【
図2】本開示の第1実施形態に係る差動増幅器のシミュレーション例を示す回路図である。
【
図3】
図2に対応するシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図4】
図2に対応するシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図5】本開示の第2実施形態に係る差動増幅器の構成を示す回路図である。
【
図6】本開示の第2実施形態に係る差動増幅器のシミュレーション例を示す回路図である。
【
図7】
図6に対応するシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図8】
図6に対応するシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図9】本開示の第2実施形態に係るゲイン調整方法を示すフローチャートである。
【
図10】本開示の第2実施形態に係る差動増幅器とアッテネータを組み合わせた例を示す図である。
【
図11】本開示の第2実施形態に係る差動増幅器とセンサを組み合わせた例を示す図である。
【
図12】比較例に係る差動増幅器の構成を示す概略図である。
【
図13】比較例に係る差動増幅器の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、比較例について、図を参照して説明する。
【0020】
図12を参照して、比較例に係る差動増幅器900の構成を説明する。
【0021】
差動増幅器900は、第1差動増幅回路901と、第2差動増幅回路902と、第3差動増幅回路903とを備えるとともに、第1バッファ904及び第2バッファ905を含む1対のバッファを備える。差動増幅器900は、第1入力端子IN1及び第2入力端子IN2を含む1対の入力端子と、出力端子OUTとを更に備える。
【0022】
第1バッファ904には、第1入力端子IN1を介して信号が入力される。第2バッファ905には、第2入力端子IN2を介して信号が入力される。すなわち、第1バッファ904及び第2バッファ905には、別々の信号が入力される。第1差動増幅回路901は、第1バッファ904及び第2バッファ905からの出力信号の差分を増幅する。第2差動増幅回路902は、第1バッファ904及び第2バッファ905からの出力信号の差分を第1差動増幅回路901とは反対の極性で増幅する。第3差動増幅回路903は、第1差動増幅回路901及び第2差動増幅回路902からの出力信号の差分を増幅する。第3差動増幅回路903は、増幅した信号を、出力端子OUTを介して出力する。
【0023】
差動増幅器900は、差動増幅回路を2段で接続した構成である。1段目の差動増幅回路である第1差動増幅回路901は、第1差動増幅回路901が有する固有のCMRR特性により同相信号を抑圧する。同様に、1段目の差動増幅回路である第2差動増幅回路902も、第2差動増幅回路902が有する固有のCMRR特性により同相信号を抑圧する。よって、2段目の差動増幅回路である第3差動増幅回路903に入力される信号は、1段目の差動増幅回路である第1差動増幅回路901及び第2差動増幅回路902によって同相信号が抑制された信号である。第3差動増幅回路903は、このような同相信号が抑制された入力信号に対し、第3差動増幅回路903が有する固有のCMRR特性により同相信号を更に抑圧する。そのため、差動増幅器900は、高いCMRRを有する。
【0024】
差動増幅器900は、第1パターンP1と、第2パターンP2とを更に備える。第1パターンP1は、第1分岐点B1を含む。第2パターンP2は、第2分岐点B2を含む。
【0025】
第1パターンP1は、第1バッファ904からの出力信号を第1分岐点B1で分岐させて第1差動増幅回路901及び第2差動増幅回路902の各々に伝送する。第2パターンP2は、第2バッファ905からの出力信号を第2分岐点B2で分岐させて第1差動増幅回路901及び第2差動増幅回路902の各々に伝送する。
【0026】
図13を参照して、比較例に係る差動増幅器900の構成を更に説明する。
【0027】
第1バッファ904及び第2バッファ905は、ボルテージフォロワ回路である。第1バッファ904は、オペアンプU1を備える。第2バッファ905は、オペアンプU2を備える。
【0028】
オペアンプU1の非反転入力端子は、第1入力端子IN1と接続されている。オペアンプU1の反転入力端子は、オペアンプU1の出力端子と、第1パターンP1とに接続されている。すなわち、第1バッファ904は、オペアンプU1の出力をオペアンプU2の反転入力端子に戻す負帰還の構成となっている。
【0029】
オペアンプU2の非反転入力端子は、第2入力端子IN2と接続されている。オペアンプU2の反転入力端子は、オペアンプU2の出力端子と、第2パターンP2とに接続されている。すなわち、第2バッファ905は、オペアンプU2の出力をオペアンプU2の反転入力端子に戻す負帰還の構成となっている。
【0030】
第1差動増幅回路901は、オペアンプAMP1と、4つの抵抗R1,R2,R3,R4とを備える。第2差動増幅回路902は、オペアンプAMP2と、4つの抵抗R5,R6,R7,R8とを備える。第2差動増幅回路903は、オペアンプAMP3と、4つの抵抗R9,R10,R11,R12とを備える。
【0031】
抵抗R1の一端は、第1パターンP1に接続されている。抵抗R1の他端は、抵抗R2の一端と、オペアンプAMP1の反転入力端子とに接続されている。抵抗R2の一端は、抵抗R1の他端と、オペアンプAMP1の反転入力端子とに接続されている。抵抗R2の他端は、オペアンプAMP1の出力端子と、抵抗R9の一端とに接続されている。抵抗R3の一端は、第2パターンP2に接続されている。抵抗R3の他端は、抵抗R4の一端と、オペアンプAMP1の非反転入力端子とに接続されている。抵抗R4の一端は、抵抗R3の他端と、オペアンプAMP1の非反転入力端子とに接続されている。抵抗R4の他端は、グランドに接続されている。すなわち、第1差動増幅回路901は、オペアンプAMP1の出力を抵抗R2によってオペアンプAMP1の反転入力端子に戻す負帰還の構成となっている。
【0032】
抵抗R5の一端は、第2パターンP2に接続されている。抵抗R5の他端は、抵抗R6の一端と、オペアンプAMP2の反転入力端子とに接続されている。抵抗R6の一端は、抵抗R5の他端と、オペアンプAMP2の反転入力端子とに接続されている。抵抗R6の他端は、オペアンプAMP2の出力端子と、抵抗R11の一端とに接続されている。抵抗R7の一端は、第1パターンP1に接続されている。抵抗R7の他端は、抵抗R8の一端と、オペアンプAMP2の非反転入力端子とに接続されている。抵抗R8の一端は、抵抗R7の他端と、オペアンプAMP2の非反転入力端子とに接続されている。抵抗R8の他端は、グランドに接続されている。すなわち、第2差動増幅回路902は、オペアンプAMP2の出力を抵抗R6によってオペアンプAMP2の反転入力端子に戻す負帰還の構成となっている。
【0033】
抵抗R9の一端は、抵抗R2の他端と、オペアンプAMP1の出力端子とに接続されている。抵抗R9の他端は、抵抗R10の一端と、オペアンプAMP3の反転入力端子とに接続されている。抵抗R10の一端は、抵抗R9の他端と、オペアンプAMP3の反転入力端子とに接続されている。抵抗R10の他端は、オペアンプAMP3の出力端子と、出力端子OUTとに接続されている。抵抗R11の一端は、抵抗R6の他端と、オペアンプAMP2の出力端子とに接続されている。抵抗R11の他端は、抵抗R12の一端と、オペアンプAMP3の非反転入力端子とに接続されている。抵抗R12の一端は、抵抗R11の他端と、オペアンプAMP3の非反転入力端子とに接続されている。抵抗R12の他端は、グランドに接続されている。すなわち、第3差動増幅回路903は、オペアンプAMP3の出力を抵抗R10によってオペアンプAMP3の反転入力端子に戻す負帰還の構成となっている。
【0034】
第1差動増幅回路901の周波数帯域を広くする場合、抵抗R2を小さくする必要があり、それに伴って抵抗R1,R3,R4も小さくする必要がある。そうすると、第1差動増幅回路901の入力インピーダンスは小さくなる。第2差動増幅回路902は第1差動増幅回路901と同様の構成であるため、第2差動増幅回路902の入力インピーダンスについても同様である。しかし、差動増幅器900は、第1差動増幅回路901及び第2差動増幅回路902の前段に第1バッファ904及び第2バッファ905を備えているため、第1差動増幅回路901及び第2差動増幅回路902の入力インピーダンスが小さくても、差動増幅器900の入力インピーダンスは大きい。したがって、差動増幅器900は、高い入力インピーダンスと広い周波数帯域とを両立することができる。
【0035】
上述のように、差動増幅器900は、入力部に高インピーダンスのバッファを備えており、プローブなどの測定器に適用される場合の被測定対象への影響を抑えている。差動増幅器900は、増幅部に関しては差動増幅回路を2段重ねた構造を持ち、初段のオペアンプAMP1,AMP2の同相利得が等しい場合には同相信号入力時出力が0となる。このとき得られる全体のCMRRはオペアンプAMP1のCMRRとオペアンプAMP3のCMRRとの和、又はオペアンプAMP2のCMRRとオペアンプAMP3のCMRRとの和となり、良好な値が得られる。
【0036】
図13に示した構成において、抵抗R1,R3,R5,R7を抵抗値の調整可能な抵抗素子とすれば、初段の差動増幅回路でゲインの設定が可能となる。オペアンプAMP1のゲイン特性とオペアンプAMP2のゲイン特性とを互いに合わせ込むことで高CMRR特性が得られる。ただし、初段の差動増幅回路で厳密なゲイン調整をしなくてもよく、高CMRR特性のみ必要な場合、例えば、抵抗R1を固定抵抗とし、抵抗R3,R5,R7を可変抵抗としてもよい。すなわち、1つの固定抵抗と3つの可変抵抗との組合せを採用し、オペアンプAMP1のゲイン特性にオペアンプAMP2のゲイン特性を合わせ込むようにしてもよい。
【0037】
第1パターンP1及び第2パターンP2は10MHz以上の高周波領域においてインダクタンスとして振る舞う。このインダクタンス成分は時にオーバーシュート又はリンギングの原因となり得る。オーバーシュート及びリンギングへの対策としては、信号ラインへダンピング抵抗の挿入が有効である。
【0038】
以下、本開示の幾つかの実施形態について、図を参照して説明する。
【0039】
各図中、同一又は相当する部分には、同一符号を付している。各実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
【0040】
図1を参照して、第1実施形態に係る差動増幅器100の構成に関し、主に比較例に係る差動増幅器900の構成との差異を説明する。
【0041】
差動増幅器100は、第1差動増幅回路101と、第2差動増幅回路102と、第3差動増幅回路103とを備えるとともに、第1バッファ104及び第2バッファ105を含む1対のバッファを備える。第1差動増幅回路101、第2差動増幅回路102、第3差動増幅回路103、第1バッファ104、及び第2バッファ105の構成及び機能については、
図13に示した第1差動増幅回路901、第2差動増幅回路902、第3差動増幅回路903、第1バッファ904、及び第2バッファ905の構成及び機能と同様である。
【0042】
差動増幅器100は、ダンピング抵抗RD1,RD2を更に備える。
【0043】
ダンピング抵抗RD1,RD2は、第1バッファ104及び第2バッファ105の各々と第1差動増幅回路101及び第2差動増幅回路102の各々との間に接続されている。具体的には、ダンピング抵抗RD1は、第1バッファ104と第1パターンP1の第1分岐点B1との間に挿入されている。ダンピング抵抗RD2は、第2バッファ105と第2パターンP2の第2分岐点B2との間に挿入されている。
【0044】
上述のように、本実施形態では、バッファと初段差動アンプとの間にダンピング抵抗が挿入される。よって、バッファと差動増幅回路との間のパターンインダクタンスの影響を低減させることができる。その結果、オーバーシュート及びリンギングを防止することが可能となる。
【0045】
しかし、
図1に示した回路において、オペアンプU1より出力される電流に着目すると、ダンピング抵抗RD1に流れる電流は分流され、ダンピング抵抗RD1とオペアンプAMP1の反転入力端子とをつなぐ抵抗R1、及びダンピング抵抗RD1とオペアンプAMP2の非反転入力端子とをつなぐ抵抗R7にそれぞれ流れ込む。ここでオペアンプAMP1のゲイン調整のために抵抗R1の抵抗値を変動させると、抵抗R7に流れ込む電流値が同時に変動し、意図しないオペアンプAMP2のゲイン変動が生じる。例としてシミュレーション回路を
図2に示し、対応するシミュレーション結果を
図3及び
図4に示す。抵抗R3,R5,R7の抵抗値を固定した状態で、オペアンプAMP1のゲインを調整するために抵抗R1の抵抗値を20Ω変動させると、オペアンプAMP2の出力が10mV程度ずれる。回路の対称性より、オペアンプAMP2のゲイン調整時も同様にオペアンプAMP1のずれが生じる。このオペアンプAMP1のゲイン調整時とオペアンプAMP2のゲイン調整時との相互影響のために、何度もオペアンプAMP1,AMP2間を往復しながらゲイン特性を合わせ込む必要がある。よって、差動増幅回路のゲインの調整が複雑になる。
【0046】
図5を参照して、第2実施形態に係る差動増幅器110の構成に関し、主に第1実施形態に係る差動増幅器100の構成との差異を説明する。
【0047】
差動増幅器100は、ダンピング抵抗RD1,RD2の代わりに、ダンピング抵抗RD11,RD12,RD21,RD22を備える。
【0048】
ダンピング抵抗RD11,RD12,RD21,RD22は、第1バッファ104及び第2バッファ105からの出力信号の各々が分岐する分岐点と第1差動増幅回路101及び第2差動増幅回路102の各々との間に接続されている。具体的には、ダンピング抵抗RD11は、第1パターンP1の第1分岐点B1と第1差動増幅回路101との間に挿入されている。ダンピング抵抗RD12は、第1パターンP1の第1分岐点B1と第2差動増幅回路102との間に挿入されている。ダンピング抵抗RD21は、第2パターンP2の第2分岐点B2と第1差動増幅回路101との間に挿入されている。ダンピング抵抗RD22は、第2パターンP2の第2分岐点B2と第2差動増幅回路102との間に挿入されている。
【0049】
上述のように、本実施形態では、第1実施形態のようにバッファ直後、すなわち、パターン分岐前にダンピング抵抗が1つだけ挿入される代わりに、パターン分岐後にダンピング抵抗が分岐別に1つずつ挿入される。第1実施形態では、ダンピング抵抗RD1,RD2がオペアンプAMP1,AMP2それぞれのゲインを決定する共通インピーダンスとなっている。そして、これが原因で一方の差動増幅回路のゲイン調整が他方の差動増幅回路のゲインに影響してしまっている。これに対し、本実施形態では、ダンピング抵抗RD11,RD12を第1パターンP1の各分岐、ダンピング抵抗RD21,RD22を第2パターンP2の各分岐に入れることで、ダンピング抵抗RD11,RD12,RD21,RD22がオペアンプAMP1,AMP2それぞれのゲインを決定する共通インピーダンスになることを防いでいる。すなわち、オペアンプAMP1とオペアンプAMP2とを回路的に分離することが可能となっている。
【0050】
したがって、本実施形態によれば、高入力インピーダンスバッファを備えた高CMRRの差動増幅器110において、バッファと差動増幅回路との間のパターンインダクタンスの影響を低減させつつ、初段の2つの差動増幅回路のゲインをそれぞれ独立に調整可能にすることで、差動増幅器110のCMRRを調整しやすくすることができる。例としてシミュレーション回路を
図6に示し、対応するシミュレーション結果を
図7及び
図8に示す。抵抗R3,R5,R7の抵抗値を固定した状態で、オペアンプAMP1のゲインを調整するために抵抗R1の抵抗値を20Ω変動させても、オペアンプAMP2の出力には変動が見られない。
図2から
図4に示した例では、オペアンプAMP2の出力の変動が10mV程度であるのに対して、
図6から
図8に示した例では、オペアンプAMP2の出力の変動は1uV以下という非常に小さい値である。本実施形態では、オペアンプAMP1,AMP2のゲインを独立して調整できるため、例えば、オペアンプAMP1のゲインを調整するステップと、その後の、オペアンプAMP2のゲインを調整するステップとの2ステップで初段の差動増幅回路の調整が完了する。第1実施形態のように何度もオペアンプAMP1,AMP2間を往復しながらゲイン特性を合わせ込む必要はなくなる。よって、差動増幅回路のゲインの調整がシンプルになる。
【0051】
図9を参照して、本実施形態に係るゲイン調整方法を説明する。
【0052】
ステップS1では、第1差動増幅回路101のゲインが調整される。その後、ステップS2では、第2差動増幅回路102のゲインが第1差動増幅回路101のゲインとは独立して調整される。ステップS1及びステップS2は逆の順序で実行されてもよい。
【0053】
差動増幅器110は、プローブ又はセンサなどの測定器の増幅部に適用することができる。特に、差動増幅器110は、差動プローブ若しくはボルテージディバイダなどの高CMRRが要求される測定器、又はホール素子磁気センサ、電流センサ、若しくは歪みセンサなどの差動出力型センサの差動入力・シングル出力回路として利用できる。
【0054】
一適用例として、差動増幅器110とアッテネータ200を組み合わせた回路を
図10に示す。この例によれば、任意の減衰比を持つ高CMRR差動増幅器が実現できる。ここで、バッファの出力後、それぞれのバッファ出力を分岐させたのちダンピング抵抗を挿入することで、バッファと差動アンプとの間のパターンインダクタンスに起因するオーバーシュート及びリンギングを抑制することができ、広帯域にわたって平坦な周波数特性を得ながら、増幅部の調整もしやすいプローブなどの測定器を提供できる。バッファと差動増幅回路との間のパターン長に合わせてダンピング抵抗の値を選択すれば、パターン長を延長することができ、基板のレイアウトを行う際の制約も緩和させられる。例えば、パターン長を延長するほど、ダンピング抵抗の値を大きくすることが考えられる。
【0055】
別の適用例として、差動増幅器110と差動出力型のセンサ300を組み合わせた回路を
図11に示す。この例によれば、
図10に示した例と同様に、バッファと差動アンプとの間のパターンインダクタンスに起因する共振の発生を抑制することができ、増幅部の調整もしやすくなり、フラットな周波数帯域の拡大、及び基板レイアウト時の自由度増も見込める。
【0056】
本開示は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、ブロック図に記載の2つ以上のブロックを統合してもよいし、1つのブロックを分割してもよい。フローチャートに記載の2つ以上のステップを記述に従って時系列に実行する代わりに、各ステップを実行する装置の処理能力に応じて、又は必要に応じて、並列的に又は異なる順序で実行してもよい。その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲での変更が可能である。
【符号の説明】
【0057】
100,110,900 差動増幅器
101,901 第1差動増幅回路
102,902 第2差動増幅回路
103,903 第3差動増幅回路
104,904 第1バッファ
105,905 第2バッファ
200 アッテネータ
300 センサ