(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172993
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】非水系電解液及び該非水系電解液を含む非水系電解液電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20241205BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20241205BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20241205BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20241205BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/052
H01M4/505
H01M4/525
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091094
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】320011605
【氏名又は名称】MUアイオニックソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 藍子
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ06
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ02
5H050AA12
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050HA01
5H050HA02
(57)【要約】
【課題】内部抵抗特性に優れる非水系電解液電池を与えることができる非水系電解液、及び内部抵抗特性に優れる非水系電解液電池を提供する。
【解決手段】特定の一般式(1)で表される双性イオン構造を有する化合物(1)と、SO3骨格を有するリチウム塩である化合物(2)と、非水系溶媒とを含む非水系電解液であって、前記化合物(1)の非水系電解液全量に対する含有量をx1質量%、前記化合物(2)の非水系電解液全量に対する含有量をx2質量%としたとき、x1/x2が0.004以上5以下である非水系電解液を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される双性イオン構造を有する化合物(1)と、SO
3骨格を有するリチウム塩である化合物(2)と、非水系溶媒とを含む非水系電解液であって、前記化合物(1)の非水系電解液全量に対する含有量をx
1質量%、前記化合物(2)の非水系電解液全量に対する含有量をx
2質量%としたとき、x
1/x
2が0.004以上5以下である非水系電解液。
【化14】
一般式(1)において、R
1~R
3はそれぞれ独立して、ハロゲン原子を含んでもよい炭素数1以上6以下の炭化水素基であり、nは0以上6以下の整数であり、R
4は下記式(1-1)又は下記式(1-2)で表される構造を有するアニオン性基である。
【化15】
式(1-1)及び式(1-2)において、*は結合手を示す。
【請求項2】
x1/x2 が0.004以上0.7以下である請求項1に記載の非水系電解液。
【請求項3】
前記化合物(1)の含有量が、非水系電解液全量に対して、0.001質量%以上0.5質量%以下である、請求項1又は2に記載の非水系電解液。
【請求項4】
金属イオンを吸蔵及び放出可能な負極並びに正極と、請求項1又は2に記載の非水系電解液とを備える非水系電解液電池。
【請求項5】
前記負極が活物質として炭素系材料を含み、かつ前記正極が活物質としてNi、Co、及びMnを含有する遷移金属酸化物を含む、請求項4に記載の非水系電解液電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系電解液及び該非水系電解液を含む非水系電解液電池に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ノートパソコン等のいわゆる民生用の電源から自動車用等の駆動用車載電源まで広範な用途に、リチウム二次電池等の非水系電解液電池が実用化されつつある。しかしながら、近年の非水系電解液電池に対する高性能化の要求はますます高くなっており、特に、高容量、低温使用特性、高温保存特性、サイクル特性、過充電時安全性等の種々の電池特性の改善が要望されている。
【0003】
これまで、非水系電解液電池のエネルギー密度や内部抵抗特性を改善するための手段として、正極や負極の活物質や、非水系電解液を始めとする様々な電池の構成要素について、数多くの技術が検討されている。
【0004】
特許文献1には、非水系電解液において、分子内にカチオンとアニオンを有する化合物を特定量用いることにより、高温保存特性及び、サイクル特性を向上させる技術が記載されている。しかしながら、特許文献1においては、内部抵抗特性に関しては十分に検討されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明は、かかる背景技術に鑑みてなされたものであり、内部抵抗特性に優れる非水系電解液電池を与えることができる非水系電解液、及び内部抵抗特性に優れる非水系電解液電池を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は上記実情に鑑み、鋭意検討した結果、水系電解液電池に用いられる非水系電解液が、特定の化合物(1)と化合物(2)とを特定比率で含有することにより、上記の目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明の要旨は、以下に存する。
[1] 一般式(1)で表される双性イオン構造を有する化合物(1)と、SO
3骨格を有するリチウム塩である化合物(2)と、非水系溶媒とを含む非水系電解液であって、前記化合物(1)の非水系電解液全量に対する含有量をx
1質量%、前記化合物(2)の非水系電解液全量に対する含有量をx
2質量%としたとき、x
1/x
2が0.004以上5以下である非水系電解液。
【化1】
一般式(1)において、R
1~R
3はそれぞれ独立して、ハロゲン原子を含んでもよい炭素数1以上6以下の炭化水素基であり、nは0以上6以下の整数であり、R
4は下記式(1-1)又は下記式(1-2)で表される構造を有するアニオン性基である。
【化2】
式(1-1)及び式(1-2)において、*は結合手を示す。
[2] x
1/x
2 が0.004以上0.7以下である請求項1に記載の非水系電解液。
[3] 前記化合物(1)の含有量が、非水系電解液全量に対して、0.001質量%以上0.5質量%以下である、[1]に記載の非水系電解液。
[4] 金属イオンを吸蔵及び放出可能な負極並びに正極と、[1]~[3]のいずれかに記載の非水系電解液とを備える非水系電解液電池。
[5] 前記負極が活物質として炭素系材料を含み、かつ前記正極が活物質としてNi、Co、及びMnを含有する遷移金属酸化物を含む、[4]に記載の非水系電解液電池。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、内部抵抗特性に優れる非水系電解液電池を与えることができる非水系電解液を提供できる。また、当該非水系電解液を備えた非水系電解液電池を提供できる。
【0010】
本発明の構成を有する非水系電解液が、このような優れた効果を奏する理由について、本発明者は以下のように推測する。即ち、一般式(1)で表される双性イオン構造を有する化合物(1)は、金属酸化物を含む正極表面との静電的相互作用により、正極表面に吸着したうえで酸化分解することで、電解液の塩や溶媒分子の接近を物理的に防ぐ保護被膜を形成すると考えられる。電解液の塩や溶媒分子の酸化分解反応による堆積物の増加や正極表面の構造変化が、充放電試験での容量低下や内部抵抗の増加等の電池特性悪化の原因であると考えられ、化合物(1)によって電池特性が向上すると考えられる。一方で、保護被膜は充放電試験での特性悪化を抑制するものの、被膜が過剰生成した際にリチウムイオンの伝導性の悪化を招き、内部抵抗を増大させることが一般的に知られている。そこで、正極の劣化を抑制しながらもリチウムイオンの伝導を妨げないような適切な量の保護被膜を形成させることが重要であり、つまりは化合物(1)の正極上での酸化分解反応性をコントロールすることが必要である。酸素原子と金属原子で分極した正極に対して、化合物(1)は分子内の特定のカチオン及びアニオンが静電的に相互作用し、正極表面に化合物(1)が吸着することで酸化分解反応性が高まると考えられる。ここで、非水系電解液中で、化合物(1)とSO3骨格を有するリチウム塩である化合物(2)を共存させることで、化合物(1)の吸着性をコントロールすることができると考えられる。SO3骨格を有するリチウム塩は、Sが電子不足の求電子性を有し、Oが電子豊富の求核性を有するため、それぞれ化合物(1)のアニオン部位とカチオン部位と相互作用し、電子移動が起こるため、化合物(1)のカチオン性とアニオン性が弱まると考えられる。そして、その度合いは、化合物(1)と化合物(2)の相対量で決まると考えられる。つまり、吸着のドライビングフォースである化合物(1)のカチオンとアニオンの電荷を、化合物(2)の相対量比によりコントロールすることができる。正極表面への吸着力が適切で、適度な量の被膜を形成するとき、リチウムイオンの伝導性悪化を抑制することができ、優れた内部抵抗特性を有するため、化合物(1)と化合物(2)を特定比率で用いることにより、内部抵抗特性に優れる非水系電解液電池を与えることができる非水系電解液を提供できるものと考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。ただし、以下に記載する説明は本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。
【0012】
[1.非水系電解液]
[1-1-1.化合物(1)]
本発明の実施形態に係る非水系電解液電池に用いる非水系電解液は、一般的な非水系電解液と同様に、電解質及びこれを溶解する非水系溶媒を含有し、さらに下記一般式(1)で表される双性イオン構造を有する化合物(1)を含有する。
【化3】
【0013】
一般式(1)において、R
1~R
3はそれぞれ独立して、ハロゲン原子を含んでもよい炭素数1以上6以下の炭化水素基であり、nは0以上6以下の整数であり、R
4は下記式(1-1)又は下記式(1-2)で表される構造を有するアニオン性基である。なお、下記式において、*は結合手を示す。
【化4】
【0014】
R1~R3は、それぞれ独立してハロゲン原子を含んでもよい炭素数1以上4以下の炭化水素基であることが好ましく、ハロゲン原子を含んでもよい炭素数1以上4以下のアルキル基であることがより好ましく、立体障害の観点から、メチル基やエチル基であることがさらに好ましい。また、入手性の観点からR1~R3は同一構造であることが好ましい。
nは0以上4以下であることが好ましく、溶解性の観点から0以上2以下であることがより好ましい。
R4が有する炭素数は通常0以上、また通常50以下であり、溶解性の観点から好ましくは20以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは6以下である。
また、溶解性の観点から、R4はC=O結合を含む部分構造を有することが好ましい。C=O結合を含む部分構造としては、アルデヒド基、ケトン基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ハロゲン化アシル基、イミド結合、ウレタン結合、ウレア結合が挙げられ、入手性の観点からケトン基、エステル基、アミド基がより好ましく、エステル基が最も好ましい。
【0015】
R4が式(1-1)で表される構造を有する場合、R1~R3はエチル基であることが特に好ましく、nは0又は1であることが特に好ましく、0であることが最も好ましい。
また、R4が式(1-1)で表される構造を有する場合、R4は、下記一般式(1a)~(1c)のいずれかで表される基であることが好ましい。なお、下記式において、-SO2
-N-は、式(1-1)で表される構造であり、R5は、炭素数1~6の炭化水素基、炭素数1~6のハロゲン化炭化水素基であり、R6は、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のハロゲン化アルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数1~4のハロゲン化アルコキシ基、炭素数1~4のアルケニルオキシ基、炭素数1~4のハロゲン化アルケニルオキシ基、炭素数1~4のアルキニルオキシ基、又は炭素数1~4のハロゲン化アルキニルオキシ基であり、R7及びR8は、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のハロゲン化アルキル基である。なお、本明細書において、ハロゲン化アルキル基は、部分ハロゲン化アルキル基であってよく、完全ハロゲン化アルキル基であってよく、他のハロゲン化基についても同様である。
-SO2
-N-R5 ・・・(1a)
-SO2
-N-C(=O)-R6 ・・・(1b)
-SO2
-N-C(=O)-N(-R7)(-R8) ・・・(1c)
【0016】
R5~R8が有し得るハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
R5としては、-CH3、-CH2-CH3及び-CF3、が好ましく、-CH3及び-CH2-CH3がより好ましい。
R6としては、-CH3、-CH2-CH3、-CF3、-O-CF3、-F、-O-CH3、-O-CH2-CH3、及び-O-CH2-CF3が好ましく、-O-CH3、-CH3、-O-CH2-CH3、-O-CH2-CF3、及び-Fがより好ましく、-O-CH3がさらに好ましい。
R7及びR8としては、-CH3及び-CH2-CH3が好ましく、-CH3がより好ましい。
なお、式(1c)において、R7及びR8は、同一であってよく、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0017】
R4が式(1-2)で表される構造を有する場合、R1~R3はメチル基であることが特に好ましく、nは2であることがさらに好ましい。
また、R4が式(1-2)で表される構造を有する場合、R4は、下記一般式(2a)~(2c)のいずれかで表される基であることが好ましい。なお、下記式において、-OPO2
-O-は、式(1-2)で表される構造であり、R9は炭素数1~6の炭化水素基、又は炭素数1~6のハロゲン化炭化水素基であり、R10は炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のハロゲン化アルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、又は炭素数1~4のハロゲン化アルコキシ基であり、R11は炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のハロゲン化アルキル基、炭素数1~4のアルケニル基、炭素数1~4のハロゲン化アルケニル基、炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数1~4のハロゲン化アルコキシ基、、炭素数1~4のアルケニルオキシ基、炭素数1~4のハロゲン化アルケニルオキシ基、炭素数1~4のアルキニルオキシ基、又は炭素数1~4のハロゲン化アルキニルオキシ基である。ここで、アルケニル基とは、アルケンの任意の炭素原子から一個の水素原子を除去した一価の基である。また、lは0~2であり、mは1または2である。
-OPO2
-O-R9 ・・・(2a)
-OPO2
-O-(CH2)l-C(=O)-R10 ・・・(2b)
-OPO2
-O-(CH2)m-O-C(=O)-R11 ・・・(2c)
【0018】
R9としては、-CH3、-CH2-CH3が好ましい。
R10としては、-CH3、-CH2-CH3、及び-O-CH3が好ましく、-CH3及び-O-CH3がより好ましい。
R11としては、-CH3、-CH=CH2、-C(=CH2)-CH3、-O-CH3、-O-CH2-CH3、-O-CH2-CF3、及び-O-CH2-CH2-CF3が好ましく、-CH3、-CH=CH2、-C(=CH2)-CH3、-O-CH3、-O-CH2-CH3、及び-O-CH2-CF3がより好ましく、-CH3、-CH=CH2、-C(=CH2)-CH3、及び-O-CH3がさらに好ましく、-C(=CH2)-CH3が特に好ましい。
【0019】
R4としては、一般式(1b)、及び(2a)~(2c)で表される基が好ましく、一般式(1b)及び(2c)で表される基がより好ましい。
【0020】
化合物(1)の具体的構造として、以下が挙げられる。
【化5】
【化6】
【0021】
化合物(1)の好ましい構造として、以下が挙げられる。
【化7】
【0022】
化合物(1)のより好ましい構造として、以下が挙げられる。
【化8】
【0023】
化合物(1)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
化合物(1)の非水系電解液中の含有量は、[1-1-3]項記載の、化合物(2)との相対量比の範囲内であれば特に限定されない。具体的には、非水系電解液中の化合物(1)の下限値としては、0.001質量%以上であることが好ましく、0.005質量%以上であることがより好ましく、0.01質量%以上であることがさらに好ましい。また、上限値としては、通常3質量%以下であり、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。化合物(1)の含有量が上記の範囲内であると、他の電池性能を損なうことなく、抵抗抑制効果がさらに発現し易くなる。非水系電解液が化合物(1)を2種以上含む場合は、それらの合計量を化合物(1)の含有量とする。
非水系電解液中の上記化合物(1)の同定、及び含有量の測定方法は磁気共鳴(NMR)分光法を用いて行う。
【0025】
[1-1-2.化合物(2)]
本発明の実施形態に係る非水系電解液電池に用いる非水系電解液は、一般的な非水系電解液と同様に、電解質及びこれを溶解する非水系溶媒を含有し、SO3骨格を有するリチウム塩である化合物(2)を含有する。
化合物(2)が有する炭素数は通常0以上、また通常20以下であり、10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、2以下であることが最も好ましい。化合物(2)はハロゲン原子を含んでもよく、フッ素原子を含むことが好ましい。
【0026】
化合物(2)としては、下記一般式(2-1)で表される化合物(2-1)及び下記一般式(2-2)で表される化合物が好ましい。ここで、R12及びR13は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のハロゲン化アルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数1~4のハロゲン化アルコキシ基、炭素数1~4のアルケニル基、炭素数1~4のハロゲン化アルケニル基、炭素数1~4のアルキニル基、又は炭素数1~4のハロゲン化アルキニル基であり、R14は、炭素数1~4のアルキレン基、炭素数1~4のハロゲン化アルキレン基、炭素数1~4のアルケニルオキシ基、炭素数1~4のハロゲン化アルケニルオキシ基、炭素数1~4のアルキニルオキシ基、又は炭素数1~4のハロゲン化アルキニルオキシ基である。ここで、アルキニル基とは、アルキンの任意の炭素原子から一個の水素原子を除去した一価の基である。アルキレン基とは、アルキル基の任意の炭素原子から一個の水素原子を除去した二価の基である。
R12-S(=O)2-O-Li ・・・(2-1)
R13-S(=O)2-O-R14-O-Li ・・・(2-2)
【0027】
R12及びR13としては、それぞれ独立して、-F、-CH3、-CF3、-CH2-CH3、-O-CH3、-O-CH2-CH3、-O-CH2-CF3、-CH=CH2、-CH2-CH=CH2、-C≡CH、-O-CH=CH2、-O-CH2-CH=CH2及び-O-C≡CHが好ましく、-F、-CF3、-O-CH3、-O-CH2-CH3、-O-CH2-CF3、-O-CH=CH2、-O-CH2-CH=CH2及び-O-C≡CHがより好ましく、-F、-O-CH3及び-O-CH2-CH3がさらに好ましく、-F及び-O-CH3が特に好ましい。
R14としては、-CH2-CH2-が好ましい。
【0028】
化合物(2)の具体的構造として、以下が挙げられる。
【化9】
【0029】
化合物(2)の好ましい構造として、以下が挙げられる。
【化10】
【0030】
化合物(2)のより好ましい構造として、以下が挙げられる。
【化11】
【0031】
化合物(2)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
化合物(2)の非水系電解液中の含有量は、[1-1-3]項記載の、化合物(1)との相対量比の範囲内であれば特に限定されない。具体的には、非水系電解液中の化合物(2)の含有量の下限値としては、0.2質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、0.7質量%以上であることがさらに好ましく、1質量%以上であることが特に好ましい。また、上限値としては、通常9質量%以下であり、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。化合物(2)の含有量が上記の範囲内であると、他の電池性能を損なうことなく、抵抗抑制効果がさらに発現し易くなる。非水系電解液が化合物(2)を2種以上含む場合は、それらの合計量を化合物(2)の含有量とする。
非水系電解液中の上記化合物(2)の同定、及び含有量の測定は磁気共鳴(NMR)分光法を用いて行う。
【0033】
[1-1-3.化合物(1)と化合物(2)の相対量比]
本発明の実施形態に係る非水系電解液は、化合物(1)の非水系電解液全量に対する含有量をx1質量%、化合物(2)の非水系電解液全量に対する含有量をx2質量%としたとき、0.004≦x1/x2≦5の関係式を満たす。好ましくは0.004≦x1/x2≦3であり、より好ましくは0.004≦x1/x2≦1であり、さらに好ましくは0.004≦x1/x2≦0.7である。上記の範囲内であると、化合物(1)の正極上での反応性が適度になり、抵抗抑制効果の高い被膜を形成する。
【0034】
[1-2.電解質]
<リチウム塩>
非水系電解液における電解質としては、通常、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、この用途に用いられることが知られているものであれば特に制限がなく、任意のものを用いることができる。リチウム塩としては、SO3骨格を有さないリチウム塩が好ましく、具体的には以下のものが挙げられる。
【0035】
例えば、フルオロリン酸リチウム塩、タングステン酸リチウム塩、カルボン酸リチウム塩、リチウムイミド塩、リチウムメチド塩、リチウムオキサラート塩、及び含フッ素有機リチウム塩等が挙げられる。
中でも、フルオロホウ酸リチウム塩としてLiBF4;フルオロリン酸リチウム塩としてLiPF6、Li2PO3F、LiPO2F2;リチウムイミド塩としてLiN(FSO2)2、LiN(FSO2)(CF3SO2)、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、リチウム環状1,2-パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3-パーフルオロプロパンジスルホニルイミド;リチウムメチド塩として、LiC(FSO2)3、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3;リチウムオキサラート塩として、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムテトラフルオロオキサラトフォスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)フォスフェート、リチウムトリス(オキサラト)フォスフェート等が、低温出力特性やハイレート充放電特性、インピーダンス特性、高温保存特性、サイクル特性等を向上させる効果がある点からより好ましい。さらに好ましくは、LiPF6、LiN(FSO2)2及びリチウムビス(オキサラト)ボレートであり、特に好ましくはLiPF6である。また、上記電解質は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種類以上の電解質を用い、かつ、LiPF6を用いる場合には、2種類以上の電解質のうち、LiPF6の含有量が最も多いことが好ましい。
2種類以上の電解質の組み合わせとして、特段の制限はないが、LiPF6及びLiN(FSO2)2;LiPF6及びLiBF4;LiPF6及びLiN(CF3SO2)2;LiBF4及びLiN(FSO2)2;LiBF4及びLiPF6及びLiN(FSO2)2が挙げられる。なかでも、LiPF6及びLiN(FSO2)2;LiPF6及びLiBF4;LiBF4、LiPF6及びLiN(FSO2)2が好ましい。
【0036】
非水系電解液中の電解質の含有量(2種以上の場合は合計含有量)は、特に制限はないが、非水系電解液の全量に対して、通常8質量%以上、好ましくは8.5質量%以上、より好ましくは9質量%以上であり、また、通常18質量%以下、好ましくは17質量%以下、より好ましくは16質量%以下である。電解質の含有量が上記範囲内であると、電気伝導率が電池動作に適正となるため、十分な出力特性が得られる傾向にある。
【0037】
[1-3.非水系溶媒]
発明の一実施形態に係る非水系電解液は、一般的な非水系電解液と同様、通常はその主成分として、上述した電解質を溶解する非水系溶媒を含有する。用いられる非水系溶媒は上述した電解質を溶解すれば特に制限はなく、公知の有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、飽和環状カーボネート、鎖状カーボネート、鎖状カルボン酸エステル、環状カルボン酸エステル、エーテル系化合物、及びスルホン系化合物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。有機溶媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
2種以上の有機溶媒の組み合わせとして、特段の制限はないが、飽和環状カーボネート及び鎖状カーボネート、飽和環状カーボネート及び鎖状カルボン酸エステル、環状カルボン酸エステル又は鎖状カーボネート、並びに飽和環状カーボネート、鎖状カーボネート及び鎖状カルボン酸エステルが挙げられる。なかでも、飽和環状カーボネート及び鎖状カーボネート、並びに飽和環状カーボネート、鎖状カーボネート及び鎖状カルボン酸エステルが好ましい。
【0039】
[1-3-1.飽和環状カーボネート]
飽和環状カーボネートとしては、例えば、炭素数2~4のアルキレン基を有するものが挙げられ、リチウムイオン解離度の向上に由来する電池特性向上の点から炭素数2~3の飽和環状カーボネートが好ましく用いられる。
飽和環状カーボネートとしては、具体的には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等が挙げられる。中でも、エチレンカーボネート又はプロピレンカーボネートが好ましく、酸化・還元されにくいエチレンカーボネートがより好ましい。飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0040】
飽和環状カーボネートの含有量は、特に制限されず、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液の非水系溶媒全量に対して、通常3体積%以上、好ましくは5体積%以上であり、一方、通常90体積%以下、好ましくは85体積%以下、より好ましくは80体積%以下である。飽和環状カーボネートの含有量をこの範囲とすることで、非水系電解液の誘電率の低下に由来する電気伝導率の低下を回避し、非水系電解液電池の大電流放電特性、サイクル特性を良好な範囲としやすくなり、非水系電解液の酸化・還元耐性が向上し、負極に対する安定性、高温保存時の安定性が向上する傾向にある。
なお、本実施形態における体積%とは25℃、1気圧における体積を意味する。
【0041】
[1-3-2.鎖状カーボネート]
鎖状カーボネートとしては、例えば、炭素数3~7のものが用いられ、電解液の粘度を適切な範囲に調整するために、炭素数3~5の鎖状カーボネートが好ましく用いられる。
鎖状カーボネートとしては、具体的には、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n-プロピルイソプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル-n-プロピルカーボネートが挙げられる。特に好ましくはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート又はエチルメチルカーボネートである。
また、フッ素原子を有する鎖状カーボネート類(以下、「フッ素化鎖状カーボネート」と略記する場合がある。)も好適に用いることができる。フッ素化鎖状カーボネートが有するフッ素原子の数は、1以上であれば特に制限されないが、通常6以下であり、好ましくは4以下である。フッ素化鎖状カーボネートが複数のフッ素原子を有する場合、当該複数のフッ素原子は同一の炭素に結合していてもよく、異なる炭素に結合していてもよい。
フッ素化鎖状カーボネートとしては、フルオロメチルメチルカーボネート等のフッ素化ジメチルカーボネート誘導体;2-フルオロエチルメチルカーボネート等のフッ素化エチルメチルカーボネート誘導体;エチル-(2-フルオロエチル)カーボネート等のフッ素化ジエチルカーボネート誘導体;等が挙げられる。
鎖状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0042】
鎖状カーボネートの含有量は特に限定されないが、非水系電解液の非水系溶媒全量に対して、通常15体積%以上であり、好ましくは20体積%以上、より好ましくは25体積%以上であり、また、通常90体積%以下、好ましくは85体積%以下、より好ましくは80体積%以下である。鎖状カーボネートの含有量を上記範囲とすることによって、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、イオン伝導度の低下を抑制し、ひいては非水系電解液電池の出力特性を良好な範囲としやすくなる。
【0043】
さらに、特定の鎖状カーボネートに対して、エチレンカーボネートを特定の含有量で組み合わせることにより、電池性能を著しく向上させることができる。
例えば、特定の鎖状カーボネートとしてジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートを選択した場合、エチレンカーボネートの含有量は、特に制限されず、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液の非水系溶媒全量に対して、通常15体積%以上、好ましくは20体積%以上、また、通常45体積%以下、好ましくは40体積%以下であり、ジメチルカーボネートの含有量は、非水系電解液の非水系溶媒全量に対して、通常20体積%以上、好ましくは30体積%以上、また、通常50体積%以下、好ましくは45体積%以下であり、エチルメチルカーボネートの含有量は、非水系電解液の非水系溶媒全量に対して、通常20体積%以上、好ましくは30体積%以上、また、通常50体積%以下、好ましくは45体積%以下である。含有量を上記範囲内とすることで、高温安定性に優れ、ガス発生が抑制される傾向がある。
【0044】
[1-3-3.鎖状カルボン酸エステル]
鎖状カルボン酸エステルとしては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、吉草酸メチル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、及びピバル酸メチルが挙げられる。なかでも、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル又は酢酸ブチルが電池特性向上の点から好ましい。上述の化合物の水素の一部をフッ素で置換した鎖状カルボン酸エステル(例えば、トリフルオロ酢酸メチル、トリフルオロ酢酸エチル等)も好適に使える。
【0045】
鎖状カルボン酸エステルの含有量は、非水系電解液の非水系溶媒全量に対して、通常1体積%以上、好ましくは5体積%以上、より好ましくは15体積%以上である。この範囲であれば、非水系電解液の電気伝導率を改善し、非水系電解液電池の大電流放電特性を向上させやすくなる。また、鎖状カルボン酸エステルの含有量は、通常70体積%以下、好ましくは50体積%以下、より好ましくは40体積%以下である。このように上限を設定することにより、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、電気伝導率の低下を回避し、負極抵抗の増大を抑制し、非水系電解液電池の大電流放電特性を良好な範囲としやすくなる。
【0046】
[1-3-4.環状カルボン酸エステル]
環状カルボン酸エステルとしては、γ-ブチロラクトン、及びγ-バレロラクトンが挙げられる。これらの中でも、γ-ブチロラクトンがより好ましい。上述の化合物の水素の一部をフッ素で置換した環状カルボン酸エステルも好適に使える。
環状カルボン酸エステルの含有量は、非水系電解液の非水系溶媒全量に対して、通常1体積%以上、好ましくは5体積%以上、より好ましくは15体積%以上である。この範囲であれば、非水系電解液の電気伝導率を改善し、非水系電解液電池の大電流放電特性を向上させやすくなる。また、環状カルボン酸エステルの含有量は、通常70体積%以下、好ましくは50体積%以下、より好ましくは40体積%以下である。このように上限を設定することにより、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、電気伝導率の低下を回避し、負極抵抗の増大を抑制し、非水系電解液電池の大電流放電特性を良好な範囲としやすくなる。
【0047】
[1-3-5.エーテル系化合物]
エーテル系化合物としては、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタン、エチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等の炭素数3~10の鎖状エーテル、及びテトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、2-メチル-1,3-ジオキサン、4-メチル-1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン等炭素数3~6の環状エーテルが好ましい。なお、上述のエーテル系化合物の一部の水素がフッ素にて置換されていてもよい。
なかでも、炭素数3~10の鎖状エーテルとしては、リチウムイオンへの溶媒和能力が高く、イオン解離性を向上させ、粘性が低く、高いイオン伝導度を与えることから、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタンが好ましく、炭素数3~6の環状エーテルとしては、高いイオン電導度を与えることから、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン等が好ましい。
【0048】
エーテル系化合物の含有量は、特に制限されず、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液の非水系溶媒全量に対して、通常1体積%以上、好ましくは2体積%以上、より好ましくは3体積%以上、また、通常30体積%以下、好ましくは25体積%以下、より好ましくは20体積%以下である。エーテル系化合物の含有量が上記の範囲内であれば、エーテル系化合物によるリチウムイオン解離度の向上と非水系電解液の粘度低下に由来するイオン伝導度の向上効果を確保しやすい。また、負極活物質が炭素系材料の場合、鎖状エーテルがリチウムイオンと共に共挿入される現象を抑制できることから、入出力特性や充放電レート特性を適正な範囲とすることができる。
【0049】
[1-3-6.スルホン系化合物]
スルホン系化合物としては、特に制限されず、環状スルホンであってもよく、鎖状スルホンであってもよい。環状スルホンの場合、炭素数が通常3~6、好ましくは3~5であり、鎖状スルホンの場合、炭素数が通常2~6、好ましくは2~5である。また、スルホン系化合物1分子中のスルホニル基の数は、特に制限されないが、通常1又は2である。
環状スルホンとしては、モノスルホン化合物であるトリメチレンスルホン類、テトラメチレンスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類等;ジスルホン化合物であるトリメチレンジスルホン類、テトラメチレンジスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類等が挙げられる。中でも誘電率と粘性の観点から、テトラメチレンスルホン類、テトラメチレンジスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類がより好ましく、テトラメチレンスルホン類(スルホラン類)が特に好ましい。
スルホラン類としては、スルホラン及びスルホラン誘導体が好ましい。スルホラン誘導体としては、スルホラン環を構成する炭素原子上に結合した水素原子の1以上がフッ素原子、アルキル基又はフッ素置換アルキル基で置換されたものが好ましい。
中でも、2-メチルスルホラン、3-メチルスルホラン、2-フルオロスルホラン、3-フルオロスルホラン、2,3-ジフルオロスルホラン、2-トリフルオロメチルスルホラン又は3-トリフルオロメチルスルホラン等が、イオン伝導度が高く入出力が高い点で好ましい。
また、鎖状スルホンとしては、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメチルメチルスルホン、トリフルオロメチルメチルスルホン、ペンタフルオロエチルメチルスルホン等が挙げられる。なかでも、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン又はモノフルオロメチルメチルスルホンが電解液の高温保存安定性が向上する点で好ましい。
【0050】
スルホン系化合物の含有量は、特に制限されず、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液の非水系溶媒全量に対して、通常0.3体積%以上、好ましくは0.5体積%以上、より好ましくは1体積%以上であり、また、通常40体積%以下、好ましくは35体積%以下、より好ましくは30体積%以下である。スルホン系化合物の含有量が上記範囲内であれば、高温保存安定性に優れた電解液が得られる傾向にある。
【0051】
[1-4.助剤]
本発明に係る非水系電解液には、本発明の効果を損なわない範囲において、各種の助剤を含有していてもよい。助剤としては、従来公知のものを任意に用いることができる。なお、助剤は、1種単独で又は2種以上を任意の比率で組み合わせて用いることができる。
助剤としては、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素含有環状カーボネート、イソシアネート基を有する化合物、イソシアヌル酸骨格を有する化合物、硫黄含有有機化合物(ただし、化合物(1)および(2)を除く)、リン含有有機化合物(ただし、化合物(1)を除く)、ケイ素含有化合物、芳香族化合物、シアノ基を有する有機化合物、フッ素非含有カルボン酸エステル、環状エーテル化合物、カルボン酸無水物、ホウ酸アニオン含有化合物、P-F結合及びP=O結合を有するリン酸アニオン含有化合物、S=O結合を有するアニオン含有化合物(ただし、化合物(1)および(2)を除く)、オキサラート錯体アニオン含有化合物等が例示できる。例えば、国際公開第2015/111676号に記載の化合物等が挙げられる。
【0052】
これらの中でも、P-F結合及びP=O結合を有するリン酸アニオン含有化合物、S=O結合を有するアニオン含有化合物(ただし、化合物(1)および(2)を除く)、及びオキサラート錯体アニオン含有化合物から選ばれる少なくとも1種のアニオン含有化合物(以下、「特定のアニオン含有化合物」ともいう)、及び/又は炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素含有環状カーボネートから選ばれる少なくとも1種のカーボネート化合物(以下、「特定のカーボネート化合物」ともいう)が好ましい。
【0053】
助剤の含有量は特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液全量に対して、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、特に好ましくは1質量%未満である。そして、助剤の含有量は、非水系電解液全量に対して、通常0.001質量%以上10質量%以下、好ましくは0.01質量%以上5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上3質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以上1質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以上1質量%未満である。
【0054】
環状エーテル化合物は、非水系電解液において助剤として用いることもできるし、[1-3.非水系溶媒]の欄で示したとおり非水系溶媒としても用いることができるものも含まれる。
環状エーテル化合物を助剤として用いる場合は、非水系電解液全量に対して、4質量%未満の量で用いることが好ましい。ホウ酸アニオン含有化合物、オキサラート錯体アニオン含有化合物、モノフルオロリン酸アニオン含有化合物、及びジフルオロリン酸アニオン含有化合物は、非水系電解液において助剤として用いることもできるし、[1-2.電解質]の欄で示したとおり電解質として用いることができるものも含まれる。これら化合物を助剤として用いる場合は、非水系電解液全量に対して、3質量%未満で用いることが好ましい。
【0055】
[1-4-1.特定のアニオン含有化合物]
前記特定のアニオン含有化合物は、通常、酸又は塩である。前記特定のアニオン含有化合物は、塩であることが好ましく、カウンターカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属カチオンが好ましく、リチウムカチオンがより好ましい。非水系電解液中に特定のアニオン含有化合物を加える方法に特に制限はないが、特定のアニオン含有化合物の塩を加える方法が挙げられ、特定のアニオン含有化合物のリチウム塩、ナトリウム塩、及びカリウム塩から選ばれる1種以上を加える方法が好ましく、特定のアニオン含有化合物のリチウム塩を加える方法がより好ましい。また、特定のアニオン含有化合物の原料を電解液中に添加し、電解液中で特定のアニオン含有化合物を発生させる方法も好ましい。
【0056】
P-F結合及びP=O結合を有するリン酸アニオン含有化合物、S=O結合を有するアニオン含有化合物(ただし、化合物(1)および(2)を除く)及びオキサラート錯体アニオン含有化合物から選ばれる少なくとも1種のアニオン含有化合物は、1種単独で又は2種以上を任意の比率で組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、高温保存後のガス発生量を抑制する観点から、P-F結合及びP=O結合を有するリン酸アニオン含有化合物及びS=O結合を有するアニオン含有化合物(ただし、化合物(1)および(2)を除く)が好ましく、P-F結合及びP=O結合を有するリン酸アニオン含有化合物が特に好ましい。
【0057】
[1-4-1-1.P-F結合及びP=O結合を有するリン酸アニオン含有化合物]
P-F結合及びP=O結合を有するリン酸アニオン含有化合物としては、例えば、PO3F2
-等のモノフルオロリン酸アニオン、PO2F2
-等のジフルオロリン酸アニオンを含有する化合物が挙げられる。
これらの中では、電池の出力特性と電極界面保護のバランスの観点から、ジフルオロリン酸アニオンを含有する化合物が好ましい。
P-F結合及びP=O結合を有するリン酸アニオン含有化合物を電解液中に加える方法に特に制限はないが、P-F結合及びP=O結合を有するリン酸アニオン含有化合物の塩を加える方法が挙げられ、モノフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、ジフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム、及びジフルオロリン酸カリウムから選ばれる1種以上を加える方法が好ましく、モノフルオロリン酸リチウム及びジフルオロリン酸リチウムから選ばれる1種以上を加える方法がより好ましい。また、P-F結合及びP=O結合を有するリン酸アニオン含有化合物の原料を電解液中に添加し、電解液中でP-F結合及びP=O結合を有するリン酸アニオン含有化合物を発生させる方法も好ましい。
【0058】
[1-4-1-2.S=O結合を有するアニオン含有化合物]
S=O結合を有するアニオン含有化合物(ただし、化合物(1)および(2)を除く)は、S=O結合を有するアニオンを含有し、SO3骨格を有するリチウム塩を含まない化合物である。そのような化合物としては、例えば、(FSO2)2N-、(FSO2)(CF3SO2)N-、等のフルオロスルホニルイミドアニオン;(FSO2)3C-等のフルオロスルホニルメチドアニオンを含有する化合物挙げられる。
これらの中では、電池の出力特性と電極界面保護のバランスの観点から、フルオロスルホニルイミドアニオンが好ましい。
S=O結合を有するアニオン含有化合物(ただし、化合物(1)および(2)を除く)を電解液中に加える方法に特に制限はないが、S=O結合を有するアニオン含有化合物(ただし、化合物(1)および(2)を除く)の塩を加える方法が挙げられ、フルオロスルホニルイミドリチウム、フルオロスルホン酸ナトリウム、フルオロスルホニルイミドナトリウム、メチル硫酸ナトリウム、エチル硫酸ナトリウム、フルオロスルホン酸カリウム、フルオロスルホニルイミドカリウム、メチル硫酸カリウム、及びエチル硫酸カリウムから選ばれる1種以上を加える方法が好ましく、フルオロスルホニルイミドリチウムを加える方法がより好ましい。また、S=O結合を有するアニオン含有化合物(ただし、化合物(1)および(2)を除く)の原料を電解液中に添加し、電解液中でS=O結合を有するアニオン含有化合物(ただし、化合物(1)および(2)を除く)を発生させる方法も好ましい。
【0059】
[1-4-1-3.オキサラート錯体アニオン含有化合物]
オキサラート錯体アニオン含有化合物は、分子内にオキサラート錯体を有するアニオンを含有する化合物であれば特に制限されない。オキサラート錯体アニオン含有化合物とは、中心原子にシュウ酸が配位又は結合することにより錯体を形成している酸のアニオンを含有する化合物であり、例えば、ホウ素原子にシュウ酸が配位又は結合したホウ素オキサラート錯体アニオン、リン原子にシュウ酸が配位又は結合したリンオキサラート錯体アニオンを含有する化合物が挙げられる。
ホウ素オキサラート錯体アニオンとしては、ビス(オキサラート)ボレートアニオン、ジフルオロオキサラートボレートアニオン等が挙げられ、リンオキサラート錯体アニオンとしては、テトラフルオロオキサラートホスフェートアニオン、ジフルオロビス(オキサラート)ホスフェートアニオン、トリス(オキサラート)ホスフェートアニオン等が挙げられる。
これらの中では、電極の表面に安定な複合被膜を形成させる観点から、ホウ素オキサラート錯体アニオンを含有する化合物が好ましく、ビス(オキサラート)ボレートアニオンを含有する化合物がより好ましい。
オキサラート錯体アニオン含有化合物を電解液中に加える方法に特に制限はないが、オキサラート錯体アニオン含有化合物の塩を加える方法が挙げられ、リチウムビス(オキサラート)ボレート、リチウムジフルオロオキサラートボレート、リチウムテトラフルオロオキサラートホスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラート)ホスフェート、リチウムトリス(オキサラート)ホスフェート、ナトリウムビス(オキサラート)ボレート、ナトリウムジフルオロオキサラートボレート、ナトリウムテトラフルオロオキサラートホスフェート、ナトリウムジフルオロビス(オキサラート)ホスフェート、ナトリウムトリス(オキサラート)ホスフェート、カリウムビス(オキサラート)ボレート、カリウムジフルオロオキサラートボレート、カリウムテトラフルオロオキサラートホスフェート、カリウムジフルオロビス(オキサラート)ホスフェート、及びカリウムトリス(オキサラート)ホスフェートから選ばれる1種以上を加える方法が好ましく、リチウムビス(オキサラート)ボレート、リチウムジフルオロオキサラートボレート、リチウムテトラフルオロオキサラートホスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラート)ホスフェート、及びリチウムトリス(オキサラート)ホスフェートから選ばれる1種以上を加える方法がより好ましい。また、オキサラート錯体アニオン含有化合物の原料を電解液中に添加し、電解液中でオキサラート錯体アニオン含有化合物を発生させる方法も好ましい。
【0060】
(特定のアニオン含有化合物の含有量)
非水系電解液が、特定のアニオン含有化合物を含有する場合、非水系電解液全量中の、特定のアニオン含有化合物の含有量(2種以上の場合は合計量)は、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。そして、非水系電解液全量中の、特定のアニオン含有化合物の含有量は、好ましくは0.001質量%以上5質量%以下、より好ましくは0.01質量%以上4質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以上3質量%以下である。
特定のアニオン含有化合物の含有量が上記範囲内であれば、電池特性、特に高温保存後のDCR維持率を著しく向上し、高温保存後のガス発生量を著しく抑制することができる。この理由は定かではないが、特定のアニオン含有化合物の含有量が上記質量比の範囲内で、電極表面上での非水系電解液の成分の副反応を最小限に抑えられるためと考えられる。
特定のアニオン含有化合物の同定及び含有量の測定は、核磁気共鳴(NMR)分光法により行う。
【0061】
(一般式(1)で表される化合物に対する特定のアニオン含有化合物の質量比)
一般式(1)で表される化合物の含有量に対する特定のアニオン含有化合物(2種以上の場合は合計量)の含有量との質量比(特定のアニオン含有化合物[g]/一般式(1)で表される化合物[g])は、高温充電保存時のガス発生を抑制する観点で、通常0.1以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは3以上であり、また、通常2000以下であり、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下、更に好ましくは300以下である。そして、前記質量比は、通常0.1以上2000以下、好ましくは1以上500以下である。
前記質量比が上記範囲内であれば、電池特性、特に高温保存後の内部抵抗維持率を著しく向上し、高温保存後のガス発生量を著しく抑制することができる。この理由は定かではないが、上記質量比の範囲内で、一般式(1)で表される化合物及び特定のアニオン含有化合物を含有することで、電極表面上での非水系電解液の成分の副反応を最小限に抑えられるためと考えられる。
【0062】
(電解質に対する特定のアニオン含有化合物の質量比)
非水系電解液が特定のアニオン含有化合物を含有する場合において、電解質の含有量に対する特定のアニオン含有化合物(2種以上の場合は合計量)の含有量の質量比(特定のアニオン含有化合物[g]/電解質[g])は、通常0.00005以上、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.015以上であり、また、通常0.5以下、好ましくは0.45以下、より好ましくは0.4以下、更に好ましくは0.35以下である。そして、前記質量比は、通常0.00005以上0.5以下、好ましくは0.001以上0.45以下、より好ましくは0.005以上0.4以下、更に好ましくは0.01以上0.35以下、更に好ましくは0.015以上0.35以下である。
前記質量比が上記範囲内であれば、電池特性、特に高温保存後のDCR維持率を著しく向上し、高温保存後のガス発生量を著しく抑制することができる。この理由は定かではないが、上記質量比の範囲内で、特定のアニオン含有化合物及び電解質を含有することで、電池系内での電解質の副反応が最小限に抑えられるためと考えられる。
【0063】
[1-4-2.特定のカーボネート化合物]
非水系電解液は、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート及びフッ素原子を有する環状カーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のカーボネート化合物を含むことが好ましい。これらの中でも、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネートを含むことが好ましく、ビニレンカーボネートを含むことがより好ましい。これらは、1種単独で又は2種以上を任意の比率で組み合わせて用いることができ、不飽和環状カーボネート及びフッ素化環状カーボネートを組み合わせることが好ましく、ビニレンカーボネート及びフッ素化環状カーボネートを組み合わせること並びに不飽和環状カーボネート及びモノフルオロエチレンカーボネートを組み合わせることがより好ましく、ビニレンカーボネート及びモノフルオロエチレンカーボネートを組み合わせることが更に好ましい。
【0064】
(特定のカーボネート化合物の含有量)
非水系電解液全量中の、特定のカーボネート化合物の含有量(2種以上の場合は合計量)は通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、また、通常10質量%以下、好ましくは6質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは4質量%以下である。そして、非水系電解液全量中の、特定のカーボネート化合物の含有量は通常0.001質量%以上10質量%以下、好ましくは0.01質量%以上6質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上5質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以上4質量%以下である。
特定のカーボネート化合物の含有量が上記範囲内であれば、電池特性、特に耐久性を向上させることができる。この理由は定かではないが、この比率でカーボネート化合物を含有することで、電極上で被膜を形成し、非水系電解液の成分の副反応を最小限に抑えられるためと考えられる。
特定のカーボネート化合物の同定及び含有量測定は、核磁気共鳴(NMR)分光法により行う。
【0065】
(一般式(1)で表される化合物に対する特定のカーボネート化合物の質量比)
一般式(1)で表される化合物の含有量に対する特定のカーボネート化合物(2種以上の場合は合計量)の含有量との質量比(特定のカーボネート化合物[g]/一般式(1)で表される化合物[g])は、通常0.1以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは3以上であり、また、通常2000以下であり、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下、更に好ましくは300以下である。そして、前記質量比は、通常0.1以上2000以下、好ましくは1以上1000以下である。前記質量比が上記範囲内であれば、電池特性、特に耐久性を向上させることができる。この理由は定かではないが、上記質量比の範囲内で、特定のカーボネート化合物を含有することで、電極上で被膜を形成し、非水系電解液の成分の副反応を最小限に抑えられるためと考えられる。
【0066】
(電解質に対する特定のカーボネート化合物の質量比)
非水系電解液において、電解質の含有量に対する特定のカーボネート化合物(2種以上の場合は合計量)の含有量の質量比(特定のカーボネート化合物[g]/電解質[g])は、通常0.00005以上、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.02以上、更に好ましくは0.025以上であり、また、通常0.5以下、好ましくは0.45以下、より好ましくは0.4以下、更に好ましくは0.35以下である。そして、前記質量比は、通常0.00005以上0.5以下、好ましくは0.001以上0.45以下、より好ましくは0.01以上0.4以下、更に好ましくは0.02以上0.35以下、更に好ましくは0.025以上0.35以下である。前記質量比が上記範囲内であれば、電池特性、特に耐久性を向上させることができる。この理由は定かではないが、上記質量比の範囲内で、カーボネート化合物及び電解質を含有することで、電極上に被膜を形成し、電池系内での電解質の副反応が最小限に抑えられるためと考えられる。
【0067】
[1-4-2-1.炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート]
炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート(以下、「不飽和環状カーボネート」ともいう)としては、炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する環状カーボネートであれば、特に制限はない。芳香環を有する環状カーボネートも、不飽和環状カーボネートに包含されることとする。
【0068】
不飽和環状カーボネートとしては、ビニレンカーボネート類、芳香環、炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類、フェニルカーボネート類、ビニルカーボネート類、アリルカーボネート類、カテコールカーボネート類等が挙げられる。これらの中でもビニレンカーボネート類、芳香環又は炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類が好ましい。
【0069】
ビニレンカーボネート類としては、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、4,5-ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、4,5-ジフェニルビニレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、4,5-ビニルビニレンカーボネート、アリルビニレンカーボネート、4,5-ジアリルビニレンカーボネート等が挙げられる。
芳香環又は炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類としては、ビニルエチレンカーボネート、4,5-ジビニルエチレンカーボネート、4-メチル-5-ビニルエチレンカーボネート、4-アリル-5-ビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、4,5-ジエチニルエチレンカーボネート、4-メチル-5-エチニルエチレンカーボネート、4-ビニル-5-エチニルエチレンカーボネート、4-アリル-5-エチニルエチレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート、4,5-ジフェニルエチレンカーボネート、4-フェニル-5-ビニルエチレンカーボネート、4-アリル-5-フェニルエチレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、4,5-ジアリルエチレンカーボネート、4-メチル-5-アリルエチレンカーボネート等が挙げられる。
これらの中でも、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネートは更に安定な複合被膜を電極上に形成するので好ましく、ビニレンカーボネート及びビニルエチレンカーボネートから選ばれる1種以上がより好ましく、ビニレンカーボネートが更に好ましい。
不飽和環状カーボネートは、1種単独で又は2種以上を任意の比率で組み合わせて用いることができる。
【0070】
[1-4-2-2.フッ素原子を有する環状カーボネート]
フッ素原子を有する環状カーボネートは、環状のカーボネート構造を有し、かつフッ素原子を含有するものであれば特に制限されない。
フッ素原子を有する環状カーボネートとしては、炭素数2以上6以下のアルキレン基を有する環状カーボネートのフッ素化物、及びその誘導体が挙げられ、例えばエチレンカーボネートのフッ素化物(フルオロエチレンカーボネート)及びその誘導体、並びに含フッ素基を有するエチレンカーボネートが挙げられる。エチレンカーボネートのフッ素化物の誘導体としては、アルキル基(例えば、炭素数1以上4以下のアルキル基)で置換されたエチレンカーボネートのフッ素化物が挙げられる。これらの中でも、フッ素原子数1以上8以下のフルオロエチレンカーボネート、及びその誘導体が好ましい。
フッ素原子数1以上8以下のフルオロエチレンカーボネート及びその誘導体、並びに含フッ素基を有するエチレンカーボネートとしては、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネート、4-フルオロ-4-メチルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4-メチルエチレンカーボネート、4-フルオロ-5-メチルエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロ-5-メチルエチレンカーボネート、4-(フルオロメチル)-エチレンカーボネート、4-(ジフルオロメチル)-エチレンカーボネート、4-(トリフルオロメチル)-エチレンカーボネート、4-(フルオロメチル)-4-フルオロエチレンカーボネート、4-(フルオロメチル)-5-フルオロエチレンカーボネート、4-フルオロ-4,5-ジメチルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4,5-ジメチルエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロ-5,5-ジメチルエチレンカーボネート等が挙げられる。
これらの中でも、電解液に高イオン伝導性を与え、かつ安定な界面保護被膜を形成し易くする観点から、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、及び4,5-ジフルオロエチレンカーボネートから選ばれる1種以上が好ましい。
フッ素原子を有する環状カーボネートは、1種単独で又は2種以上を任意の比率で組み合わせて用いることができる。
【0071】
[1-4-3.イソシアネート基を有する有機化合物]
イソシアネート基を有する有機化合物としては、分子内に少なくとも1つのイソシアネート基を有する有機化合物であれば、特に制限されない。イソシアネート基の数は、一分子中、好ましくは1以上4以下であり、より好ましくは2又は3であり、さらに好ましくは2である。
イソシアネート基を有する有機化合物としては、例えば、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ビニルイソシアネート、プロパルギルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、2-イソシアナトエチル アクリレート、2-イソシアナトエチル メタクリレート、等のモノイソシアネート化合物;モノメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジイソシアナトプロパン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、カルボニルジイソシアネート、1,4-ジイソシアナト-2-フルオロブタン等のジイソシアネート化合物;等が挙げられる。
特に、安定な界面保護被膜形成の観点から少なくとも2つのイソシアネート基を有する有機化合物が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンがより好ましく、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンがさらに好ましい。
【0072】
[1-4-4.イソシアヌル酸骨格を有する有機化合物]
イソシアヌル酸骨格を有する有機化合物(以下、「イソシアヌレート化合物」ともいう。)としては、分子内に少なくとも1つイソシアヌル酸骨格を有する有機化合物であれば、特に制限されない。イソシアヌル酸骨格を有する有機化合物としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
【0073】
【0074】
特に、安定な界面保護被膜形成の観点から、ハロゲン原子を有してもよい、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基を有するイソシアヌレート化合物が好ましく、末端に炭素-炭素不飽和結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を有するイソシアヌレート化合物がより好ましく、イソシアヌル酸トリアリルがさらに好ましい。
【0075】
[1-4-5.硫黄含有有機化合物]
硫黄含有有機化合物としては、分子内に硫黄原子(S)を少なくとも1つ有している有機化合物であれば、特に制限されない。好ましくはS=O結合を少なくとも1つ有する有機化合物であり、より好ましくは鎖状スルホン酸エステル、環状スルホン酸エステル、鎖状硫酸エステル、環状硫酸エステル、鎖状亜硫酸エステル及び環状亜硫酸エステル等のS=O結合を有するエステル化合物が挙げられる。ただし、S=O結合を有するアニオン含有化合物に該当するもの(ただし、化合物(1)および(2)を除く)は、「硫黄含有有機化合物」ではなく、上記の「S=O結合を有するアニオン含有化合物」に包含されるものとする。
硫黄含有有機化合物としては、例えば、
フルオロスルホン酸メチル、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、ブスルファン、メタンスルホニルオキシ酢酸メチル、ビニルスルホン酸メチル、ビニルスルホン酸アリル、アリルスルホン酸プロパルギル、メタンジスルホン酸メトキシカルボニルメチル、メタンジスルホン酸エトキシカルボニルメチル、1,3-ブタンジスルホン酸メトキシカルボニルメチル、1,3-ブタンジスルホン酸エトキシカルボニルメチル、1,3-ブタンジスルホン酸1-メトキシカルボニルエチル、1,3-ブタンジスルホン酸1-エトキシカルボニルエチル等のアルキルジスルホン酸エステル等の鎖状スルホン酸エステル;
1,3-プロパンスルトン、1-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、1-メチル-1,3-プロパンスルトン、1-プロペン-1,3-スルトン、2-プロペン-1,3-スルトン、1-フルオロ-1-プロペン-1,3-スルトン、1-メチル-1-プロペン-1,3-スルトン、1,3-ブタンスルトン、2,4-ブタンスルトン、1,4-ブタンスルトン、1,5-ペンタンスルトン、メチレンメタンジスルホネート、エチレンメタンジスルホネート、2,2-ジオキシド-1,2-オキサチオラン-4-イル アセテート等の環状スルホン酸エステル; ジメチルスルフェート、エチルメチルスルフェート、ジエチルスルフェート等の鎖状硫酸エステル;
1,2-エチレンスルフェート、1,2-プロピレンスルフェート、1,3-プロピレンスルフェート、1,2-ブチレンスルフェート、等の環状硫酸エステル;
ジメチルスルファイト、エチルメチルスルファイト、ジエチルスルファイト等の鎖状亜硫酸エステル;
1,2-エチレンスルファイト、1,2-プロピレンスルファイト、1,3-プロピレンスルファイト、1,2-ブチレンスルファイト、等の環状亜硫酸エステル;1,1-ジオキシドテトラヒドロチオフェン-3-イル メタンスルホネート、1,1-ジオキシド-2,3-ジヒドロチオフェン-3-イル メタンスルホネート等の環状スルホン;ブタン-2,3-ジイル ジメタンスルホネート、ブタン-1,4-ジイル ジメタンスルホネートもしくはメチレン メタンジスルホネート等のスルホン酸エステルおよびジビニルスルホン、1,2-ビス(ビニルスルホニル)エタンもしくはビス(2-ビニルスルホニルエチル)エーテル等のビニルスルホン化合物;等が挙げられる。
特に、安定な界面保護被膜形成の観点から、鎖状または環状スルホン酸エステル、環状硫酸エステル、もしくは環状亜硫酸エステルがさらに好ましく、環状スルホン酸エステルまたは環状硫酸エステルが特に好ましく、1,3-プロパンスルトン、メチレンメタンジスルホネート、1,2-エチレンスルフェートが最も好ましい。
【0076】
[1-4-6.リン含有有機化合物]
リン含有有機化合物(ただし、化合物(1)を除く)としては、分子内に少なくとも一つ以上のリン原子を有し、化合物(1)に該当しない化合物であれば特に制限されない。ただし、P-F結合及びP=O結合を有するアニオン含有化合物に該当するものは、「リン含有有機化合物」ではなく、上記の「P-F結合及びP=O結合を有するアニオン含有化合物」に包含されるものとする。
リン含有有機化合物としては、例えば、リン酸トリメチル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)、エチル 2-(ジエトキシホスホリル)アセテートおよび2-プロピニル 2-(ジエトキシホスホリル)アセテート等が挙げられる。
特に、エチル 2-(ジエトキシホスホリル)アセテートまたは2-プロピニル 2-(ジエトキシホスホリル)アセテートが好ましく、2-プロピニル 2-(ジエトキシホスホリル)アセテートが更に好ましい。
【0077】
[1-4-7.ケイ素含有化合物]
ケイ素含有化合物としては、分子内に少なくとも1つのケイ素原子を有する化合物であれば、特に制限されない。
ケイ素含有化合物としては、例えば、
ホウ酸トリス(トリメチルシリル)、ホウ酸トリス(トリメトキシシリル)、ホウ酸トリス(トリエチルシリル)、ホウ酸トリス(ジメチルビニルシリル)等のホウ酸化合物;
リン酸トリス(トリメチルシリル)、リン酸トリス(トリエチルシリル)、リン酸トリス(トリフェニルシリル)、リン酸トリス(トリメトキシシリル)、リン酸トリス(ジメチルビニルシリル)等のリン酸化合物;
亜リン酸トリス(トリメチルシリル)、亜リン酸トリス(トリエチルシリル)、亜リン酸トリス(トリフェニルシリル)、亜リン酸トリス(トリメトキシシリル)、亜リン酸トリス(ジメチルビニルシリル)等の亜リン酸化合物;
メタンスルホン酸トリメチルシリル、テトラフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル等のスルホン酸化合物;
テトラメチルシラン、トリメチルビニルシラン、ジメチルジビニルシラン、メチルトリビニルシラン、テトラビニルシラン等のシラン化合物;
ヘキサメチルジシラン、ヘキサエチルジシラン、1,1,2,2-テトラメチルジシラン、1,2-ジフェニルテトラメチルジシラン等のジシラン化合物;
ヘキサメチルジシロキサン、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジフェニルジシロキサン等のジシロキサン化合物;
等が挙げられる。
特に、安定な界面保護被膜形成の観点から、ジシラン化合物、ジシロキサン化合物が好ましく、ジシロキサン化合物がより好ましく、ヘキサメチルジシロキサン、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサンがさらに好ましく、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサンが特に好ましい。
【0078】
[1-4-8.芳香族化合物]
芳香族化合物としては、分子内に芳香族を有する化合物であれば特に制限されない。芳香族化合物としては、例えば、シクロヘキシルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、tert-アミルベンゼンもしくは1-フルオロ-4-tert-ブチルベンゼン等の分枝アルキル基を有する芳香族化合物またはビフェニル、ターフェニル(o-、m-、p-体)、フルオロベンゼン、メチルフェニルカーボネート、エチルフェニルカーボネートもしくはジフェニルカーボネート等の芳香族化合物が挙げられる。
特に、ビフェニル、ターフェニル(o-、m-、p-体)、フルオロベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、及びtert-アミルベンゼンがより好ましく、ビフェニル、o-ターフェニル、フルオロベンゼン、シクヘキシルベンゼンおよびtert-アミルベンゼンがより好ましい。
【0079】
[1-4-9.シアノ基を有する有機化合物]
シアノ基を有する有機化合物としては、分子内にシアノ基を少なくとも1つ有する有機化合物であれば、特に制限されない。
シアノ基を有する有機化合物としては、例えば、
アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ペンタンニトリル、ヘキサンニトリル、デカンニトリル、ウンデカンニトリル、ドデカンニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、クロトノニトリル等の分子内にシアノ基を1有する有機化合物;
スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、セバコニトリル、メチルマロノニトリル、
エチルマロノニトリル、ビシクロヘキシル-1,1-ジカルボニトリル、1,4-ジシアノペンタン、1,2-ジジアノベンゼン等の分子内にシアノ基を2有する有機化合物;
1,2,3-プロパントリカルボニトリル、1,2,3-トリス(2-シアノエトキシ)プロパン、1,3,5-シクロヘキサントリカルボニトリル、1,3,5-ベンゼントリカルボニトリル等の分子内にシアノ基を3有する有機化合物;
等が挙げられる。
特に安定な界面保護被膜形成の観点からシアノ基を2個有する有機化合物が好ましく、スクシノニトリル、アジポニトリルがより好ましく、アジポニトリルがさらに好ましい。
【0080】
[1-4-10.フッ素非含有カルボン酸エステル]
フッ素非含有カルボン酸エステルは、分子内にフッ素原子を有さないカルボン酸エステルであれば、特に制限されない。好ましくはフッ素非含有の鎖状カルボン酸エステルであり、より好ましくはフッ素非含有の飽和鎖状カルボン酸エステルである。フッ素非含有の鎖状カルボン酸エステルの総炭素数は、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、好ましくは7以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは5以下である。
鎖状カルボン酸エステルとしは、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n-ブチル、ピバル酸メチル、ピバル酸エチル、ピバル酸n-プロピル、ピバル酸イソプロピル、ピバル酸n-ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、2-プロピン酸メチル等が挙げられる。
特に、電池の出力特性向上の観点から酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-プロピルが好ましく、プロピオン酸メチルがより好ましい。
【0081】
[1-4-11.エーテル結合を有する環状化合物]
エーテル結合を有する環状化合物としては、分子内に一つ以上のエーテル結合を有する化合物であれば特に制限されない。エーテル結合を有する環状化合物としては、例えば、1,3-ジオキソラン、1,3-ジオキサンまたは1,3,5-トリオキサン等の環状アセタール化合物;が挙げられる。
特に、環状アセタール化合物が好ましく、1,3-ジオキソランまたは1,3-ジオキサンが好ましく、1,3-ジオキサンが更に好ましい。
【0082】
[1-4-12.酸無水物]
酸無粋物としては、分子内に「C(=O)-O-C(=O)基」、「C(=O)-O-S(=O)2基」または「S(=O)2-O-S(=O)2基」を有する酸無水物であれば、特に制限されない。 酸無水物としては、例えば、無水酢酸、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、シクロヘキサンカルボン酸無水物、プロピン酸無水物、安息香酸無水物、フルオロ酢酸無水物、4-フルオロ安息香酸無水物、酢酸プロピオン酸無水物等の鎖状のカルボン酸無水物、無水琥珀酸、無水マレイン酸、シトラコン酸無水物、無水グルタル酸、無水イタコン酸、フルオロ琥珀酸無水物、アリル琥珀酸無水物、1,2-オキサチオラン-5-オン 2,2-ジオキシド、1,2,6-オキサジチアン 2,2,6,6-テトラオキシド等が挙げられる。
特に、安定な界面保護被膜形成の観点から、メタクリル酸無水物、無水琥珀酸、無水マレイン酸、アリル琥珀酸無水物が好ましく、無水琥珀酸またはアリル琥珀酸無水物がより好ましい。
【0083】
[1-4-13.三重結合含有化合物]
三重結合含有化合物としては、分子内に少なくとも一つの三重結合を有する化合物であれば特に制限されない。三重結合含有化合物としては、例えば、2-プロピニル メチル カーボネート、酢酸 2-プロピニル、ギ酸 2-プロピニル、メタクリル酸 2-プロピニル、メタンスルホン酸 2-プロピニル、ビニルスルホン酸 2-プロピニル、2-(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸2-プロピニル、ジ(2-プロピニル)オギザレート、2-ブチン-1,4-ジイル ジメタンスルホネートおよび2-ブチン-1,4-ジイル ジホルメート等が挙げられる。
特に、2-プロピニル メチル カーボネート、メタクリル酸 2-プロピニル、メタンスルホン酸 2-プロピニル、ビニルスルホン酸 2-プロピニル、ジ(2-プロピニル)オギザレートおよび2-ブチン-1,4-ジイル ジメタンスルホネートが好ましく、メタンスルホン酸 2-プロピニル、ビニルスルホン酸 2-プロピニル、ジ(2-プロピニル)オギザレートおよび2-ブチン-1,4-ジイル ジメタンスルホネートがより好ましい。
【0084】
[1-4-14.ホスファゼン化合物]
ホスファゼン化合物としては、分子内に「N=P-N基」を有する化合物であれば、特に制限されない。ホスファゼン化合物としては、例えば、メトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、エトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、フェノキシペンタフルオロシクロトリホスファゼンまたはエトキシヘプタフルオロシクロテトラホスファゼン等の環状ホスファゼン化合物が挙げられる。
特に、メトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、エトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼンまたはフェノキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン等の環状ホスファゼン化合物が好ましく、メトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼンまたはエトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼンが更に好ましい。
【0085】
(電解質と助剤との質量比)
非水系電解液が助剤として特定のカーボネート化合物以外の助剤を含む場合、非水系電解液における電解質の含有量に対する助剤(2種以上の場合は合計量)の含有量の質量比(助剤[g]/電解質[g])は、通常0.00005以上、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.02以上、更に好ましくは0.025以上であり、また、通常0.5以下、好ましくは0.45以下、より好ましくは0.4以下、更に好ましくは0.35以下である。前記質量比が上記範囲内であれば、電池特性、特に内部抵抗の増加を抑制することができる。この理由は定かではないが、上記質量比の範囲内で、助剤及び電解質を含有することで、電極上に被膜を形成し、電池系内での電解質の副反応が最小限に抑えられるためと考えられる。
【0086】
[2.非水系電解液電池]
本発明の一実施態様である非水系電解液電池は、金属イオンを吸蔵及び放出しうる正極活物質を有する正極と、金属イオンを吸蔵及び放出しうる負極活物質を有する負極とを備える非水系電解液電池であって、非水系電解液を備える。非水系電解液電池は、好ましくは二次電池であり、より好ましくはリチウムイオン二次電池である。
【0087】
[2-1.非水系電解液]
非水系電解液としては、上述の非水系電解液を用いる。なお、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において上述の非水系電解液に対し、その他の非水系電解液を混合して用いることも可能である。
【0088】
[2-2.正極]
非水系電解液電池は、金属イオンを吸蔵及び放出可能な正極を備える。正極は、正極活物質を集電体表面の少なくとも一部に有する。
【0089】
[2-2-1.正極活物質]
以下に正極に使用される正極活物質(リチウム遷移金属系化合物)について述べる。
【0090】
[2-2-1-1.リチウム遷移金属系化合物]
リチウム遷移金属系化合物とは、リチウムイオンを脱離、挿入することが可能な構造を有する化合物であり、例えば、硫化物やリン酸塩化合物、ケイ酸化合物、ホウ酸化合物、リチウム遷移金属複合酸化物などが挙げられる。なかでも、リン酸塩化合物、リチウム遷移金属複合酸化物が好ましく、リチウム遷移金属複合酸化物がより好ましい。ここで、遷移金属としては、Ni、Co、Mn、Al、Mg、Zr、Fe、Ti及びErが挙げられる。リチウム遷移金属系化合物は、遷移金属として、Niを含有することが好ましく、Ni及びCoを含有することがより好ましく、Ni、Co及びMnを含有することがさらに好ましい。
リチウム遷移金属複合酸化物としては、三次元的拡散が可能なスピネル構造や、リチウムイオンの二次元的拡散を可能にする層状構造に属するものが挙げられる。なかでも、電池容量を向上させる観点から、層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物が好ましい。
【0091】
スピネル構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物は、一般的に下記組成式(1)で表される。
Lix’M’2O4・・・(1)
(組成式(1)中、x’は1≦x’≦1.5であり、M’は少なくとも1種の遷移金属元素を含む。)
具体的にはLiMn2O4、LiCoMnO4、LiNi0.5Mn1.5O4、LiCoVO4などが挙げられる。
【0092】
層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物は、一般的に下記組成式(2)で表される。
Li1+xMO2・・・(2)
(組成式(2)中、xは-0.1≦x≦0.5であり、Mは少なくとも1種の遷移金属元素を含む。)
具体的には、Li(Ni1/3Mn1/3Co1/3)O2、LiCoO2、LiNiO2、LiNi0.85Co0.10Al0.05O2、LiNi0.80Co0.15Al0.05O2、LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2、Li1.05Ni0.33Co0.33Mn0.33O2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2、Li1.05Ni0.5Co0.2Mn0.3O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2などが挙げられる。
【0093】
なかでも、下記組成式(3)で表される層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物であることがより好ましい。
Lia1Nib1Mc1O2・・・(3)
(組成式(3)中、a1、b1、及びc1はそれぞれ、0.90≦a1≦1.10、0.30≦b1≦0.98、0.01≦c1≦0.5を満たす数値を示し、0.50≦b1+c1≦1を満たす。MはCo、Mn、Al、Mg、Zr、Fe、Ti及びErからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。)
b1、及びc1は、b1+c1=1を満たすことが好ましい。
【0094】
特に、リチウム遷移金属複合酸化物の構造安定性の観点から、下記組成式(4)で示される遷移金属酸化物であることが好ましい。
Lia2Nib2Coc2Md2O2・・・(4)
(組成式(4)中、a2、b2、及びc2はそれぞれ、0.90≦a2≦1.10、0.20≦b2≦0.98、0.01≦c2<0.50、0.01≦d2<0.50を満たす数値を示し、b2+c2+d2=1を満たす。MはMn、Al、Mg、Zr、Fe、Ti及びErからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。)
組成式(4)中、MはMn又はAlを含むことが好ましく、Mnを含むことがより好ましく、Mn又はAlであることがさらに好ましい。リチウム遷移金属酸化物の構造安定性が高まり、繰り返し充放電した際の構造劣化が抑制されるためである。
組成式(4)で表されるリチウム遷移金属酸化物の好適な具体例としては、例えば、Li(Ni1/3Mn1/3Co1/3)O2、LiNi0.85Co0.10Al0.05O2、LiNi0.80Co0.15Al0.05O2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2、Li1.05Ni0.50Co0.20Mn0.30O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2等が挙げられる。
【0095】
[2-2-1-2.異元素導入]
また、リチウム遷移金属複合酸化物は、上述の組成式に含まれる元素以外の元素(異元素)が導入されてもよい。
【0096】
[2-2-1-3.表面被覆]
上記正極活物質の表面に、正極活物質とは異なる組成の物質(表面付着物質)が付着したものを用いてもよい。表面付着物質としては酸化アルミニウム等の酸化物、硫酸リチウム等の硫酸塩、炭酸リチウム等の炭酸塩等が挙げられる。
これら表面付着物質は、例えば、溶媒に溶解又は懸濁させて該正極活物質に含浸添加、乾燥する方法等により該正極活物質表面に付着させることができる。
表面付着物質の量としては、該正極活物質に対して、好ましくは1μmol/g以上であり、また、10μmol/g以上が好ましく、通常1mmol/g以下で用いられる。
本明細書においては、正極活物質の表面に、上記表面付着物質が付着したものも「正極活物質」という。
【0097】
[2-2-1-4.ブレンド]
なお、これらの正極活物質は一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0098】
[2-2-2.正極の構成と製造方法]
以下に、正極の構成と製造方法について述べる。本実施形態において、正極活物質を用いる正極の製造は、常法により行うことができる。即ち、正極活物質と結着剤、並びに必要に応じて導電材及び増粘剤等を乾式で混合してシート状にしたものを正極集電体に圧着するか、又はこれらの材料を、水系溶媒又は有機系溶媒等の液体媒体に溶解又は分散させてスラリーとして、これを正極集電体に塗布し、乾燥することにより、正極活物質層を集電体上に形成する塗布法により正極を得ることができる。また、例えば、上述の正極活物質をロール成形してシート電極としてもよいし、圧縮成形によりペレット電極としてもよい。
以下、正極集電体に順次スラリーの塗布及び乾燥する場合について説明する。
【0099】
[2-2-2-1.活物質含有量]
正極活物質層中、正極活物質の含有量は、通常80質量%以上、99.5質量%以下である。
【0100】
[2-2-2-2.導電材]
導電材としては、公知の導電材を任意に用いることができる。具体例としては、銅、ニッケル等の金属材料;天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト);アセチレンブラック等のカーボンブラック;ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素系材料;等が挙げられる。導電材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。導電材は、正極活物質層中に、通常0.01質量%以上50質量%以下含有するように用いられる。
【0101】
[2-2-2-3.結着剤]
正極活物質層の製造に用いる結着剤としては、例えば、塗布法により正極活物質層を形成する場合は、スラリー用の液体媒体に対して溶解又は分散される材料であれば、その種類は特に制限されないが、耐候性、耐薬品性、耐熱性、難燃性等からポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンシアニド等のCN基含有ポリマーなどが好ましい。
また、上記のポリマーなどの混合物、変成体、誘導体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体なども使用できる。なお、結着剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、結着剤として樹脂を用いる場合、その樹脂の重量平均分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1万以上、好ましくは5万以上、特に好ましくは10万以上であり、一方、通常300万以下、好ましくは95万以下、特に好ましくは90万以下である。分子量がこの範囲であると電極の強度が向上し、電極の形成を好適に行うことができる。
正極活物質層中の結着剤の割合は、通常0.1質量%以上80質量%以下である。
【0102】
[2-2-2-4.集電体]
正極集電体の材質としては特に制限されず、公知のものを任意に用いることができる。具体例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料が挙げられる。中でもアルミニウムが好ましい。
集電体の形状としては、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられる。これらのうち、金属箔又は金属薄膜が好ましい。なお、金属薄膜は適宜メッシュ状に形成してもよい。
正極の集電体の形状が板状や膜状等である場合、該集電体の厚さは任意であるが、通常
1μm以上、1mm以下である。
【0103】
[2-2-2-5.正極板の厚さ]
正極板の厚さは特に限定されないが、高容量かつ高出力の観点から、正極板の厚さから集電体の厚さを差し引いた正極活物質層の厚さは、集電体の片面に対して通常10μm以上、
500μm以下である。
【0104】
[2-2-2-6.電極密度]
塗布、乾燥によって得られた正極活物質層は、正極活物質の充填密度を上げるために、ハンドプレス、ローラープレス等により圧密化することが好ましい。集電体上に存在している正極活物質層の密度は、通常1.5g/cm3以上4.5g/cm3以下である。
【0105】
[2-2-2-7.正極板の表面被覆]
また、上記正極板は、その表面に、正極板とは異なる組成の物質が付着したものを用いてもよく、当該物質としては、正極活物質の表面に付着していてもよい表面付着物質と同じ物質が用いられる。
【0106】
[2-3.負極]
非水系電解液電池は、金属イオンを吸蔵及び放出可能な負極を備える。負極は、負極活物質を集電体表面の少なくとも一部に有する。
【0107】
[2-3-1.負極活物質]
負極に使用される負極活物質としては、電気化学的に金属イオンを吸蔵・放出可能なものであれば、特に制限はない。具体例としては、炭素系材料、Liと合金化可能な金属元素及び/又は半金属元素を含有する材料、リチウム含有金属複合酸化物材料、及びこれらの混合物等が挙げられる。これらの中でもサイクル特性及び安全性が良好でさらに連続充電特性も優れている点で、炭素系材料、Liと合金化可能な金属元素及び/又は半金属元素を含有する材料及びLiと合金化可能な金属元素及び/又は半金属元素を含有する材料と炭素系材料との混合物を使用するのが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意に組み合わせて併用してもよい。
【0108】
[2-3-1-1.炭素系材料]
炭素系材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、非晶質炭素、炭素被覆黒鉛、黒鉛被覆黒鉛及び樹脂被覆黒鉛等が挙げられる。なかでも、天然黒鉛が好ましい。炭素系材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
天然黒鉛としては、鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛及び/又はこれらの黒鉛に球形化や緻密化等の処理を施した黒鉛粒子等が挙げられる。これらの中でも、粒子の充填性又は充放電レート特性の観点から、球形化処理を施した球状もしくは楕円体状の黒鉛粒子が特に好ましい。
黒鉛粒子の平均粒子径(d50)は、通常1μm以上、100μm以下である。
【0109】
[2-3-1-2.炭素系材料の物性]
負極活物質としての炭素系材料は、以下の(1)~(4)に示した物性及び形状等の特徴の内、少なくとも1つを満たしていることが好ましく、複数を同時に満たすことが特に好ましい。
(1)X線回折パラメータ
炭素系材料の学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)は、通常0.335nm以上0.360nm以下である。また、学振法によるX線回折で求めた炭素系材料の結晶子サイズ(Lc)は、通常1.0nm以上である。
(2)体積基準平均粒径
炭素系材料の体積基準平均粒径は、レーザー回折・散乱法により求めた体積基準の平均粒径(メジアン径)であり、通常1μm以上、100μm以下である。
(3)ラマンR値、ラマン半値幅
炭素系材料のラマンR値は、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトル法を用いて測定した値であり、通常0.01以上、1.5以下である。
また、炭素系材料の1580cm-1付近のラマン半値幅は特に制限されないが、通常10cm-1以上、100cm-1以下である。
(4)BET比表面積
炭素系材料のBET比表面積は、BET法を用いて測定した比表面積の値であり、通常0.1m2・g-1以上100m2・g-1以下である。
負極活物質中に性質の異なる炭素系材料が2種以上含有していてもよい。ここでいう性質とは、X線回折パラメータ、体積基準平均粒径、ラマンR値、ラマン半値幅及びBET比表面積を意味する。
好ましい例としては、体積基準粒度分布がメジアン径を中心としたときに左右対称とならないこと、ラマンR値が異なる炭素系材料を2種以上含有すること、及びX線パラメータが異なる炭素系材料を2種以上含有すること等が挙げられる。
【0110】
[2-3-1-3.Liと合金化可能な金属元素及び/又は半金属元素を含有する材料]
Liと合金化可能な金属元素及び/又は半金属元素を含有する材料は、従来公知のいずれのものも使用可能であるが、容量とサイクル寿命の点から、例えば、Sb、Si、Sn、Al、As、及びZnからなる群より選ばれる、炭素で被覆されていてもよい金属及び/又は半金属元素の単体又はその化合物であることが好ましい。また、Liと合金化可能な金属元素及び/又は半金属元素を含有する材料が2種類以上の元素を含有する場合、当該材料は、これらの金属の合金からなる合金材料であってもよい。
また、Liと合金化可能な金属元素及び/又は半金属元素の材料としては、酸化物、窒化物、炭化物等が挙げられる。これらは、Liと合金化可能な金属元素及び/又は半金属元素を2種以上含有していてもよい。
なかでも、金属Si(以下、Siと記載する場合がある)又はSi含有無機化合物が高容量化の点で、好ましい。
また、Liと合金化可能な金属元素及び/又は半金属元素の材料は、後述する負極の製造時で既にLiと合金化されていてもよい。
【0111】
本明細書では、Si又はSi含有無機化合物を総称してSi化合物と呼ぶ。Si化合物としては、具体的には、SiOx(0≦x≦2)等が挙げられる。Liと合金化された金属化合物としては、具体的には、LiySi(0<y≦4.4)、Li2SiO2+z(0<z≦2)等が挙げられる。Si化合物としてSi酸化物(SiOx1、0<x1≦2)が、黒鉛と比較して理論容量が大きい点で好ましく、又は非晶質SiもしくはナノサイズのSi結晶が、リチウムイオン等のアルカリイオンの出入りがしやすく、高容量を得ることが可能である点で好ましい。
Liと合金化可能な金属元素及び/又は半金属元素を含有する材料が粒子である場合、その平均粒子径(d50)は、サイクル寿命の観点から、通常0.01μm以上、10μm以下である。
【0112】
[2-3-1-4.Liと合金化可能な金属元素及び/又は半金属元素を含有する材料の粒子と黒鉛粒子との混合物]
負極活物質として用いられるLiと合金化可能な金属元素及び/又は半金属元素を含有する材料の粒子と黒鉛粒子との混合物は、前述のLiと合金化可能な金属元素及び/又は半金属元素を含有する材料の粒子と前述の黒鉛粒子が互いに独立した材料の粒子の状態で混合されている混合体でもよいし、Liと合金化可能な金属元素及び/又は半金属元素を含有する材料の粒子が黒鉛粒子の表面又は内部に存在している複合体でもよい。
Liと合金化可能な金属元素及び/又は半金属元素を含有する材料の粒子と黒鉛粒子の合計に対するLiと合金化可能な金属元素及び/又は半金属元素を含有する材料の粒子の含有割合は、通常1質量%以上、99質量%以下である。
【0113】
[2-3-1-5.リチウム含有金属複合酸化物材料]
負極活物質として用いられるリチウム含有金属複合酸化物材料としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能であれば、特に制限されないが、高電流密度充放電特性の点からチタンを含むリチウム含有金属複合酸化物材料が好ましく、リチウムとチタンの複合酸化物(以下、「リチウムチタン複合酸化物」と略記する場合がある)がより好ましく、スピネル構造を有するリチウムチタン複合酸化物が出力抵抗を大きく低減するので特に好ましい。
また、リチウムチタン複合酸化物のリチウム及び/又はチタンが、他の金属元素、例えば、Al、Ga、Cu及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素で置換されていてもよい。
リチウムチタン複合酸化物として、Li4/3Ti5/3O4、Li1Ti2O4及びLi4/5Ti11/5O4が好ましい。また、リチウム及び/又はチタンの一部が他の元素で置換されたリチウムチタン複合酸化物として、例えば、Li4/3Ti4/3Al1/3O4が好ましい。
【0114】
[2-3-2.負極の構成と製造方法]
負極の製造は、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のいずれの方法を用いてもよい。例えば、負極活物質に、結着剤、水系溶媒又は有機系溶媒等の液体媒体、必要に応じて、増粘剤、導電材、充填材等を加えてスラリーとし、これを集電体に塗布、乾燥した後にプレスして負極活物質層を形成することによって作製することができる。
【0115】
[2-3-2-1.活物質含有量]
負極活物質の、負極活物質層中の含有量は、通常80質量%以上、99.5質量%以下である。
【0116】
[2-3-2-2.電極密度]
塗布、乾燥によって得られた負極活物質層は、負極活物質の充填密度を上げるために、ハンドプレス、ローラープレス等により圧密化することが好ましい。 負極活物質を電極化した際の電極構造は特に制限されないが、集電体上に存在している負極活物質層の密度は、通常1g・cm-3以上、2.2g・cm-3以下である。
【0117】
[2-3-2-3.増粘剤]
増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調整するために使用される。増粘剤としては、特に制限されないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、及びこれらのナトリウム塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
増粘剤を用いる場合には、負極活物質に対する増粘剤の割合は、通常0.1質量%以上、5質量%以下である。
【0118】
[2-3-2-4.結着剤]
負極活物質を結着する結着剤としては、非水系電解液や電極製造時に用いる液体媒体に対して安定な材料であれば、特に制限されない。
具体例としては、SBR(スチレン-ブタジエンゴム)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)、エチレン-プロピレンゴム等のゴム状高分子;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体等のフッ素系高分子等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0119】
負極活物質に対する結着剤の割合は、通常0.1質量%以上20質量%以下である。
特に、結着剤がSBRに代表されるゴム状高分子を主要成分に含有する場合には、負極活物質に対する結着剤の割合は、好ましくは0.1質量%以上5質量%以下である。また、結着剤がポリフッ化ビニリデンに代表されるフッ素系高分子を主要成分に含有する場合には負極活物質に対する結着剤の割合は、好ましくは1質量%以上、15質量%以下である。
【0120】
[2-3-2-5.集電体]
負極活物質を保持させる集電体としては、公知のものを任意に用いることができる。負極の集電体としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられるが、加工し易さとコストの点から特に銅が好ましい。
集電体の形状としては、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられる。これらのうち、金属箔又は金属薄膜が好ましい。なお、金属箔及び金属薄膜は適宜メッシュ状に形成してもよい。
負極の集電体の形状が板状や膜状等である場合、該集電体の厚さは任意であるが、通常1μm以上、1mm以下である。
【0121】
[2-3-2-6.負極板の厚さ]
負極(「負極板」ともいう。)の厚さは用いられる正極に合わせて設計されるものであり、特に制限されないが、負極材の厚さから集電体厚さを差し引いた負極活物質層の厚さは通常15μm以上、300μm以下である。
【0122】
[2-3-2-7.負極板の表面被覆]
また、負極板は、その表面に、負極活物質とは異なる組成の物質が付着したもの(表面付着物質)を用いてもよい。表面付着物質としては酸化アルミニウム等の酸化物、硫酸リチウム等の硫酸塩、炭酸リチウム等の炭酸塩等が挙げられる。
【0123】
[2-4.セパレータ]
正極と負極との間には、短絡を防止するために、通常はセパレータを介在させる。この場合、非水系電解液は、通常はこのセパレータに含浸させて用いる。
セパレータの材料や形状については特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のものを任意に採用することができる。
【0124】
[2-5.電池設計]
[2-5-1.電極群]
電極群は、上記の正極板と負極板とを上記のセパレータを介してなる積層構造のもの、及び上記の正極板と負極板とを上記のセパレータを介して渦巻き状に捲回した構造のもののいずれでもよい。電極群の体積が電池内容積に占める割合は、通常40%以上、90%以下である。
【0125】
[2-5-2.集電構造]
電極群が前述の積層構造のものでは、各電極層の金属芯部分を束ねて端子に溶接して形成される構造が好適に用いられる。電極内に複数の端子を設けて抵抗を低減する構造も好適に用いられる。電極群が前述の捲回構造のものでは、正極及び負極にそれぞれ複数のリード構造を設け、端子に束ねることにより、内部抵抗を低くすることができる。
【0126】
[2-5-3.保護素子]
保護素子として、過大電流等による発熱とともに抵抗が増大するPTC(Positive Temperature Coefficient)素子、温度ヒューズ、サーミスター、異常発熱時に電池内部圧力や内部温度の急激な上昇により回路に流れる電流を遮断する弁(電流遮断弁)等を使用することができる。上記保護素子は高電流の通常使用で作動しない条件のものを選択することが好ましく、保護素子がなくても異常発熱や熱暴走に至らない設計にすることがより好ましい。
【0127】
[2-5-4.外装体]
非水系電解液電池は、通常、上記の非水系電解液、負極、正極、セパレータ等を外装体(外装ケース)内に収納して構成される。この外装体に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り公知のものを任意に採用することができる。
外装ケースの材質は用いられる非水系電解液に対して安定な物質であれば特に限定されるものではないが、軽量化の観点から、アルミニウム若しくはアルミニウム合金の金属又はラミネートフィルムが好適に用いられる。
上記金属類を用いる外装ケースでは、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接により金属同士を溶着して封止密閉構造とするもの、又は、樹脂製ガスケットを介して上記金属類を用いてかしめ構造とするものが挙げられる。
【0128】
[2-5-5.形状]
また、外装ケースの形状も任意であり、例えば円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等の何れであってもよい。
【実施例0129】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0130】
本実施例に使用した化合物を以下に示す。
化合物 a (メトキシカルボニルスルファモイル)トリエチルアンモニウムヒドロキシド分子内塩
化合物 b リン酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル2-(トリメチルアンモニオ)エチル
化合物 c フルオロスルホン酸リチウム
化合物 d メチル硫酸リチウム
【化13】
【0131】
<実施例1~6、比較例1~3>
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネートの混合物(体積比3:4:3)に、十分に乾燥させたLiPF6を非水系電解液中の濃度として1.0mol/L(非水系電解液全量に対して12質量%)となるように溶解させた(以下、これを基準電解液1と呼ぶ)。基準電解液1に対して、下記表1に記載の含有量(得られる非水系電解液全量に対する含有量)となるように化合物a~dをそれぞれ加えた。
【0132】
[正極の作製]
正極活物質としてLi(Ni1/3Mn1/3Co1/3)O2 85質量部と、導電材としてのカーボンブラック 10質量部と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF) 5質量部とを、N-メチルピロリドン溶媒中で混合して、スラリー化した。これを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして正極とした。
【0133】
[負極の作製]
炭素系材料98質量部に、増粘剤及び結着剤として、カルボキシメチルセルロースナトリウムが1質量部となるように水性ディスパージョンを加え、さらにスチレン-ブタジエンゴムが1質量部となるように水性ディスパージョンを加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。得られたスラリーを厚さ10μmの銅箔の片面に塗布して乾燥した後、プレスして負極とした。
【0134】
[非水系電解液電池の製造]
上記の正極、負極、及びポリオレフィン製セパレータを、負極、セパレータ、正極の順に積層した。こうして得られた電池要素をアルミニウムラミネートフィルムで包み込み、前述の非水系電解液を注入した後で真空封止し、シート状の非水系電解液電池を作製した。
【0135】
<非水系電解液電池の評価>
[コンディショニング]
25℃の恒温槽中、0.025Cに相当する電流で3.6Vまで充電した後、1/6Cで4.2Vまで充電し、1/6Cで2.5Vまで放電した。1/6Cで4.1Vまで充電を行った後、60℃、12時間の条件でエージングを実施した。その後、25℃で1/6Cで2.5Vまで放電し、ラミネート型電池を安定させた。さらに、1/6Cで4.2Vまで充電を行った後、1/6Cで2.5Vまで放電し、コンディショニングを行った。
【0136】
[抵抗の測定]
25℃の恒温槽中、上記の方法でコンディショニングを行った非水系電解液電池の抵抗を次のように測定した。コンディショニング後の非水系電解液電池に対して、3.72Vまで1/6Cで充電した。これを25℃において各々0.5C、1.0C、1.5C、2.0C、2.5Cで放電させ、各放電過程開始から2秒経過時点での電圧を測定した。
【表1】
【0137】
上記の表1から、実施例1~6で示されるように、化合物(1)と化合物(2)を特定比率で含有する非水系電解液を用いた非水系電解液電池は、これら化合物を特定比率の範囲外で含む場合(比較例1~3)と比較して、抵抗が低下したことがわかる。