(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172994
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】画像読取装置、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/00 20060101AFI20241205BHJP
B41J 29/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H04N1/00 519
B41J29/00 B
H04N1/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091096
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】謝 建勲
【テーマコード(参考)】
2C061
5C062
【Fターム(参考)】
2C061AP01
2C061AQ05
2C061AR01
2C061AR03
2C061AS02
2C061BB11
2C061CD03
2C061CF01
5C062AA05
5C062AB17
5C062AB22
5C062AD01
5C062AD06
(57)【要約】
【課題】作業者が読取ユニットのガラス清掃を行う際の操作性を向上した画像読取装置の提供。
【解決手段】ユーザ操作に応じてスキャナユニット300を筐体外へ引き出し可能な引き出しユニット500と、ユーザが透過ガラス303を清掃しやすい所定角度にスキャナユニット300を回動可能な回動ユニット600とを備える。スキャナユニット300は引き出しユニット500により、透過ガラス303が鉛直方向下方を向いた状態で幅方向にスライド移動される。引き出されたスキャナユニット300は回動ユニット600により、透過ガラス303が所定角度に傾く位置まで回動され、透過ガラス303が傾いた状態でロックされる。これにより、ユーザは透過ガラス303を清掃したい場合に、透過ガラス303を清掃しやすく視認性の良い位置へ移動する操作を容易に行い得る。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送する搬送経路において、シートの第一面に画像が形成されたシートの第二面を支持する支持部と、
前記搬送経路の前記支持部と対向する側に配置され、前記搬送経路を搬送されるシートの前記第一面に読取面を対向させて、該シートに形成された画像を読み取る読取ユニットと、
前記搬送経路においてシートが搬送される搬送方向及び搬送されるシートの前記第一面と交差する第一方向にそれぞれ直交する第二方向に関し、前記読取面が前記支持部と対向する対向位置と、前記読取面が前記支持部と対向しない非対向位置との間で、前記読取ユニットを移動可能な移動部と、
回動軸と、前記回動軸を中心に、前記非対向位置と、前記非対向位置に対して前記読取面が所定の角度傾斜した傾斜位置との間で、前記読取ユニットを回動可能である回動部と、を備える、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記第一方向に関し、前記読取面が前記支持部と対向しシートの画像を読取可能な位置となる読取位置と、前記読取面が前記支持部と対向し前記読取位置よりも前記支持部から離間した離間位置との間で前記読取ユニットを移動可能な接離部を備え、
前記移動部は、前記接離部により前記離間位置に移動された前記読取ユニットを前記対向位置と前記非対向位置との間で移動する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記回動部は、前記接離部に設けられ前記読取ユニットを前記第二方向の両端部で保持する一対の保持部を有し、
前記読取ユニットは、前記第二方向の両側面に係合突起を有し、
前記保持部は、前記係合突起が挿入されて前記読取ユニットの移動方向を規制する円弧状のスリットと、前記読取ユニットが前記傾斜位置にあるときに、前記スリットから飛び出している前記係合突起に係合して前記読取ユニットを前記傾斜位置でロックするロック部を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記読取ユニットは、ユーザが把持して前記読取ユニットを前記スリットに沿って回動するためのユニット把持部が設けられている、
ことを特徴とする請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記移動部は、
前記搬送方向に間隔を空けて前記第二方向に延設された一対のスライドレールと、
前記接離部を保持し、前記対向位置と前記非対向位置との間で移動可能に前記スライドレールに沿ってスライド移動自在に設けられた移動フレームと、を有する、
ことを特徴とする請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記移動フレームは、ユーザが把持して前記移動フレームを前記スライドレールに沿ってスライド移動するためのフレーム把持部が設けられている、
ことを特徴とする請求項5に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記接離部は、前記第二方向に延設された回転軸と、前記回転軸の前記第二方向の一端部に設けられユーザが把持して前記回転軸を回転するためのハンドルと、前記回転軸の前記第二方向の両端部に配置され、前記回転軸の回転に応じて前記保持部を前記第一方向に昇降させる一対の昇降部とを有し、
前記昇降部は、前記回転軸に固定されたウォームギアと、前記ウォームギアに噛み合うウォームホイールと、前記ウォームホイールとギア軸を介して連結されるピニオンギアと、前記移動フレームに設けられ、前記ピニオンギアと噛み合うギア列が前記第一方向に並ぶラックギアと、を有する、
ことを特徴とする請求項5に記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記回動軸の回動軸線の方向は、前記第二方向に沿った方向である、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項9】
前記支持部は、シートを搬送する無端状の搬送ベルトである、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項10】
前記読取ユニットは、搬送されるシートに光を照射しシートからの反射光を受光することによりシートの画像を読み取る読取部と、前記読取部を収容する収容体と、前記収容体において前記読取面に設けられ前記読取部から照射される光及びシートからの反射光を透過可能な透過部とを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項11】
シートの第一面に画像を形成する画像形成部と、
シートの搬送方向に関し前記画像形成部の下流に配置された、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の画像読取装置と、を備える、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
前記画像形成部は、インクを吐出してシートに画像を形成する記録ヘッドであり、
前記読取ユニットは、前記搬送方向に関し前記記録ヘッドの下流に配設される、
ことを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記画像形成装置は、前記読取ユニットにより読み取られたシートの画像に基づいて、シートに形成する画像の形成位置を変更するように前記記録ヘッドを調整可能である、
ことを特徴とする請求項12に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに形成された画像を読み取る画像読取装置、及び画像読取装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置には、シートに形成された画像を読み取るために画像読取装置が設けられる。画像読取装置は、搬送されるシートに対向する位置に配置されるガラスと、ガラスを介してシートの画像を読み取るイメージセンサとを有する読取ユニットを備えている(特許文献1)。特許文献1に記載の装置では、読取ユニットを筐体から取り外せるようにするために、シートの搬送方向に交差する幅方向に関し、シートを搬送するバッキングユニットの一端側を回動中心として、読取ユニットとバッキングユニットとが回動可能に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、読取ユニットのガラスには、画像形成に用いられるインク、トナー、紙粉等がガラスに付着しやすい。特許文献1に記載の装置の場合、読取ユニットとバッキングユニットとの開く角度が制限され、読取ユニットとバッキングユニットとの間隔は開放された他端側に比べ一端側が狭くなっている。それ故、作業者がガラスを清掃するのに必要な作業空間を十分に確保できておらず、またガラスの視認性が限られ、作業者はガラスの清掃を行い難かった。即ち、作業者がガラスを清掃する際の操作性が良くなかった。
【0005】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、作業者が読取ユニットのガラス清掃を行う際の操作性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る画像読取装置は、シートを搬送する搬送経路において、シートの第一面に画像が形成されたシートの第二面を支持する支持部と、前記搬送経路の前記支持部と対向する側に配置され、前記搬送経路を搬送されるシートの前記第一面に読取面を対向させて、該シートに形成された画像を読み取る読取ユニットと、前記搬送経路においてシートが搬送される搬送方向及び搬送されるシートの前記第一面と交差する第一方向にそれぞれ直交する第二方向に関し、前記読取面が前記支持部と対向する対向位置と、前記読取面が前記支持部と対向しない非対向位置との間で、前記読取ユニットを移動可能な移動部と、回動軸と、前記回動軸を中心に、前記非対向位置と、前記非対向位置に対して前記読取面が所定の角度傾斜した傾斜位置との間で、前記読取ユニットを回動可能である回動部と、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、作業者が読取ユニットのガラス清掃を行う際の操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】スキャナユニットが読取位置にある場合を示す斜視図。
【
図5】スキャナユニットが離間位置にある場合を示す斜視図。
【
図6】昇降ユニット及び回動ユニットを示す斜視図。
【
図8】スキャナユニットが非対向位置にある場合を示す斜視図。
【
図10】スキャナユニットが傾斜位置にある場合を示す斜視図。
【
図11】回動ユニットについて説明するための側面図であり、(a)スキャナユニットが非対向位置にある場合、(b)スキャナユニットが傾斜位置にある場合。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。まず、本実施形態の画像形成装置としてインクジェット記録装置を例に挙げ、
図1を用いて説明する。
図1に示すインクジェット記録装置100は、インクを用いてシートに画像を形成する所謂枚葉式のインクジェット記録方式である。シートは、例えば普通紙や厚紙等の紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート等のプラスチックフィルム、封筒やインデックス紙等の特殊形状のシート、並びに布など、インクを受容可能な記録材であればよい。
【0010】
<インクジェット記録装置>
図1に示すように、インクジェット記録装置100は、給紙モジュール1000、プリントモジュール2000、乾燥モジュール3000、定着モジュール4000、冷却モジュール5000、反転モジュール6000、積載モジュール7000を備える。給紙モジュール1000から供給されるシートSは、各モジュール内を搬送経路に沿って搬送される際に各種処理が行われ、最終的に積載モジュール7000に排出される。
【0011】
なお、給紙モジュール1000、プリントモジュール2000、乾燥モジュール3000、定着モジュール4000、冷却モジュール5000、反転モジュール6000、積載モジュール7000はそれぞれが別々の筐体を有し、それら筐体が連結されてインクジェット記録装置100を構成してよい。あるいは、1つの筐体に給紙モジュール1000、プリントモジュール2000、乾燥モジュール3000、定着モジュール4000、冷却モジュール5000、反転モジュール6000、積載モジュール7000が配置されていてもよい。
【0012】
給紙モジュール1000は、シートSを収容する収納庫1500a、1500b、1500cを有し、収納庫1500a~1500cはシートSを収容するために装置正面側へ引き出し可能に設けられている。シートSは、各収納庫1500a~1500cにおいて分離ベルト及び搬送ローラにより1枚ずつ給送されて、プリントモジュール2000へ搬送される。なお、収納庫1500a~1500cは3つであることに限定されず、1つや2つあるいは4つ以上を有していてよい。プリントモジュール2000については、後述する(
図2参照)。
【0013】
乾燥モジュール3000は、デカップリング部3200、乾燥ベルトユニット3300、温風吹付部3400を有する。乾燥モジュール3000は、後続の定着モジュール4000によるシートSへのインクの定着性を高めるために、シートSに塗布されたインクの液体分を減少させる。画像形成されたシートSは、乾燥モジュール3000内に配置されたデカップリング部3200に搬送される。デカップリング部3200では、上方から吹き付けられる風の風圧によりシートSとベルトとの間に摩擦力を生じさせ、ベルトによりシートSを搬送させている。
【0014】
デカップリング部3200から搬送されたシートSは、乾燥ベルトユニット3300にて吸着搬送されて、ベルト上方に配置された温風吹付部3400から温風が吹き付けられることにより、シートSに塗布されたインクが乾燥される。乾燥モジュール3000によりシートSに塗布されたインクが加熱され水分の蒸発が促進されることで、シートSにインクが飛び散って周囲に縁取りのような線ができる所謂コックリングが生じるのを抑制できる。なお、乾燥モジュール3000は加熱乾燥できる装置であればどのような装置を用いてもよいが、例えば温風乾燥機やヒータが好ましい。ヒータとしては、例えば電熱線、赤外線ヒータによる加熱が安全性やエネルギー効率の点から好ましい。
【0015】
定着モジュール4000は、定着ベルトユニット4100を有する。定着ベルトユニット4100は、乾燥モジュール3000から搬送されたシートSを、加熱した上ベルトユニットと下ベルトユニットの間を通過させることによりインクをシートSに定着させる。
【0016】
冷却モジュール5000は冷却部5100を複数有し、冷却部5100により定着モジュール4000から搬送された高温のシートSを冷却する。冷却部5100は、例えば外気をファンで冷却ボックス内に取り込んで冷却ボックス内の圧力を高め、冷却ボックスから圧力によりノズルを介して噴き出す風をシートSに当ててシートSを冷却する。冷却部5100は、シートSの搬送経路に対し両側に配置され、シートSの両面を冷却する。
【0017】
冷却モジュール5000には、搬送経路切換え部5002が設けられている。搬送経路切換え部5002は、反転モジュール6000にシートSを搬送する場合と、シートSの両面に画像形成する両面印刷のために両面搬送経路にシートSを搬送する場合とに応じて、シートSの搬送経路を切り換える。
【0018】
反転モジュール6000は、反転部6400を有する。反転部6400は搬送されるシートSの表裏を反転させて、積載モジュール7000に排出する際のシートSの表裏向きを変更する。積載モジュール7000は、トップトレイ7200と積載部7500を有し、反転モジュール6000から搬送されたシートSを積載する。
【0019】
両面印刷時、シートSは搬送経路切換え部5002により冷却モジュール5000の下方の搬送経路に搬送される。その後、シートSは定着モジュール4000、乾燥モジュール3000、プリントモジュール2000、給紙モジュール1000の両面搬送経路を通って、プリントモジュール2000へ戻される。定着モジュール4000の両面搬送部には、シートSの表裏を反転させる反転部4200が設けられている。プリントモジュール2000へ戻されたシートSは、画像形成されていない他方の面にもインクにより画像が形成され、乾燥モジュール3000、定着モジュール4000、冷却モジュール5000、反転モジュール6000を経て積載モジュール7000に排出される。
【0020】
<プリントモジュール>
次に、プリントモジュール2000について、
図2を用いて説明する。
図2に示すように、プリントモジュール2000は、作像前レジ補正部(不図示)、プリントベルトユニット2200、記録部2300を有する。給紙モジュール1000から搬送されたシートSは、作像前レジ補正部により用紙の傾きや位置が補正されてプリントベルトユニット2200へ搬送される。
【0021】
シートSの搬送経路に対し、プリントベルトユニット2200と対向する位置には記録部2300が配置されている。記録部2300は、搬送されるシートSの表面(第一面)に対し上方から画像形成部としての記録ヘッド1Y、1M、1C、1K、1Hがインクを吐出することにより画像を形成する。
【0022】
本実施形態では、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Bk(ブラック)の4色と反応液に対応した計5つのライン型の記録ヘッド1Y、1M、1C、1K、1HがシートSの搬送方向(矢印X方向)に沿って並べられている。ただし、インクの色数及び記録ヘッドの数は5つに限定されない。また、インクを吐出させるインクジェット方式は、発熱素子を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式等を採用することができる。各色のインクは、不図示のインクタンクからそれぞれインクチューブを介して記録ヘッドに供給される。
【0023】
シートSは、プリントベルトユニット2200により吸着搬送される。また、シートSが記録ヘッド1Y~1H及び後述のスキャナユニット300との間で一定のクリアランスを保って搬送されるように、プリントベルトユニット2200には記録ヘッド1Y~1H及びスキャナユニット300と対向する対向領域3aの高さを調整する機構(不図示)が設けられている。プリントベルトユニット2200は、無端状の搬送ベルト3、搬送ベルト3を回転自在に張架する複数の張架ローラ51、52、53、54、プラテンユニット2、吸引ファン4を有する。
【0024】
支持部としての搬送ベルト3は記録ヘッド1Y~1Hの鉛直方向下方に配置され、シートSを搬送する搬送経路において記録ヘッド1Y~1Hにより表面に画像形成されたシートSの裏面(第二面)を支持して回転することによりシートSを搬送する。本実施形態の場合、搬送ベルト3は回転方向に関して記録ヘッド1Y~1Hと対向する対向領域3aの両側が一対の張架ローラ51、52により張架されている。なお、張架ローラ51、52、53、54のうち少なくとも1つは、搬送ベルト3を回転駆動する駆動ローラである。
【0025】
シートSは、記録ヘッド1Y~1H(詳しくは各ノズルの吐出口)とのクリアランスを所定距離に確保すべく、回転する搬送ベルト3の外周面に吸着されて搬送される。そうするために、搬送ベルト3には全周に亘って空気が通過可能な微細な孔が多数形成され、搬送ベルト3及び後述するプラテンユニット2の鉛直方向下方には吸引ファン4が配置されている。吸引ファン4は、空気を下方(矢印Z方向)に向かって吸引して搬送ベルト3の外周面にシートSを吸着させる。なお、ここでは2台の吸引ファン4自体を図示の位置に配置した場合を示したが、これに限らず、不図示であるが別の位置に配置した吸引ファンに接続されているダクトの吸引口が図示した吸引ファン4の位置に配置されてもよい。
【0026】
記録部2300の搬送方向下流側には、読取ユニットとしてのスキャナユニット300が配置されている。記録部2300で画像形成されたシートSは、プリントベルトユニット2200によりスキャナユニット300へ搬送され、スキャナユニット300によりシートS上の画像が読み取られる。
【0027】
<スキャナユニット>
スキャナユニット300について、
図3を用いて説明する。
図3に示すように、スキャナユニット300は、搬送ベルト3と対向する側に配置され、搬送経路320を搬送されるシートSの表面に読取面310を対向させて、シートSに形成された画像を読み取る。スキャナユニット300は、搬送されるシートSに光を照射しシートSからの反射光を受光することによりシートの画像を読み取る読取部302と、読取部302を収容する収容体301とを有している。そして、収容体301の読取面310には、読取部302から照射される光及びシートSからの反射光を透過可能な透過部としての透過ガラス303と、光量ムラなどを軽減するシェーディング補正を行うためのシェーディングシート304が配設されている。
【0028】
プリントモジュール2000は、読取部302により取得される画像情報に基づいて画像形成動作の実行条件を調整する。例えば、シートSに対する画像の位置合わせを行う場合、シートSの四隅に矩形のパッチ画像を出力し、読取部302で読み取ったパッチ画像の画像情報からシートSの四辺に対するパッチ画像の位置を求める。予め決められた所定の画像位置と、実際のパッチ画像の位置との誤差を補正するように、プリントモジュール2000はシートSに形成する画像の主走査方向及び副走査方向の位置及び倍率、回転角度等を表すパラメータを調整可能である。その後、プリントモジュール2000は調整されたパラメータを用いて記録ヘッド1Y~1Hを制御し、画像形成位置が調整された成果物を得るための画像形成動作を実行する。
【0029】
<昇降ユニット>
本実施形態の場合、スキャナユニット300は、搬送経路320において搬送されるシートSの表面と交差する第一方向(ここでは鉛直方向)に関し、読取部302によりシートSの画像を読取可能な読取位置と、読取位置よりも搬送ベルト3(シートの搬送路)から離間した離間位置との間で移動可能に設けられている。スキャナユニット300が読取位置にある場合を
図4に示し、スキャナユニット300が離間位置にある場合を
図5に示す。
図4及び
図5に示すように、スキャナユニット300は、接離部としての昇降ユニット400により、透過ガラス303が鉛直方向下方を向いて搬送ベルト3に対面した状態(
図3参照)のまま、鉛直方向において読取位置と離間位置との間を移動される。本実施形態の場合、スキャナユニット300は読取位置と離間位置にあるとき、読取面310が搬送ベルト3と対向する対向位置にある。
【0030】
昇降ユニット400について、
図2、
図3を参照しながら
図6及び
図7を用いて説明する。
図6に示すように、昇降ユニット400は、回転軸401と、ハンドル402と、一対の昇降部403を有している。回転軸401は、搬送経路320においてシートSが搬送される搬送方向(矢印X方向)及び鉛直方向(矢印Z方向)にそれぞれ直交する第二方向(矢印Y方向、幅方向と呼ぶ)に延設されている。ハンドル402はユーザ(作業者)が把持して回転軸401を回転可能に、回転軸401の幅方向の一端部に固定されている。
【0031】
一対の昇降部403は回転軸401の幅方向両端部に対向配置され、回転軸401を回転可能に軸支している。昇降部403は、回転軸401の回転に応じてスキャナユニット300を鉛直方向に昇降させる。ただし、それぞれの昇降部403には保持板601が鉛直方向下方に設けられており、後述するように、保持板601はスキャナユニット300を回動自在に保持している。本実施形態では、ユーザがハンドル402を回転すると、昇降部403及び回転軸401と共に保持板601が鉛直方向に移動され、それに従って保持板601に保持されているスキャナユニット300が昇降する。
【0032】
昇降部403は、
図7に示すように、回転軸401に固定されたウォームギア410と、ウォームギア410に噛み合うウォームホイール411と、ウォームホイール411とギア軸412を介して連結されるピニオンギア413と、ピニオンギア413と噛み合うラックギア414を有する。ウォームギア410、ウォームホイール411、ピニオンギア413は、
図6に示すようなケースに収容されている。これに対し、ラックギア414は、ピニオンギア413に噛み合わせるギア列が鉛直方向に並ぶように、後述する移動フレーム502(
図9参照)に固定されている。
【0033】
なお、本実施形態の場合、ハンドル402を設けた幅方向一端側の昇降部403では、ウォームホイール411がウォームギア410の下方側に配置され、幅方向他端側の昇降部403では、ウォームホイール411がウォームギア410の上方側に配置されている。このように、幅方向の両端部に配置された一対の昇降部403において、ウォームホイール411とウォームギア410とを鉛直方向の上方と下方の正反対の位置で噛み合わせることで、ピニオンギア413はラックギア414に対し重力によって鉛直方向下方へ移動しない。つまり、回転軸401を回転させない限りウォームホイール411とウォームギア410とによりブレーキがかかって、スキャナユニット300は自重により鉛直方向下方に移動することなく停止した状態に維持される。
【0034】
上記した昇降ユニット400によれば、ユーザはハンドル402を操作してスキャナユニット300を鉛直方向に昇降させることができる。本実施形態において、ユーザはスキャナユニット300の透過ガラス303を清掃したい場合、まずスキャナユニット300を読取位置(
図4参照)から離間位置(
図5参照)へ移動する必要がある。その場合、ユーザはハンドル402を把持して回転軸401を時計方向に回転させるように操作する。そうすると、回転軸401と一緒にウォームギア410が回転し、ウォームギア410によりウォームホイール411が駆動され、ウォームホイール411とギア軸412を介して連結されるピニオンギア413が回転される。ピニオンギア413は回転することに伴い、ギア列が鉛直方向に配置されたラックギア414に沿って鉛直方向上方へ移動する。これにより、昇降部403が鉛直方向上方へ移動するので、保持板601に保持されているスキャナユニット300が離間位置へ移動する。
【0035】
<引き出しユニット>
また、スキャナユニット300は、上記した読取位置よりも搬送ベルト3から離間した離間位置にある状態で(
図5参照)、幅方向に関し、読取面310が搬送ベルト3と対向する対向位置と、読取面310が搬送ベルト3と対向しない非対向位置との間で移動可能に設けられている。スキャナユニット300が非対向位置にある場合を
図8に示す。
図8に示すように、スキャナユニット300は、移動部としての引き出しユニット500により、透過ガラス303が鉛直方向下方を向いた状態(
図3参照)で、幅方向において離間位置(対向位置)と非対向位置との間をスライド移動する。
【0036】
引き出しユニット500について、
図7、
図8を参照しながら
図9を用いて説明する。なお、
図9では、スキャナユニット300が離間位置にある状態つまりスキャナユニット300を非対向位置に引き出す前の状態を示している。
図9に示すように、引き出しユニット500は、搬送方向に間隔を空けて幅方向に延設された一対のスライドレール501と、上記した昇降ユニット400(
図6参照)を保持し、離間位置と非対向位置との間で移動可能にスライドレール501に沿ってスライド移動自在に設けられた移動フレーム502とを有する。スライドレール501は、プリントモジュール2000の筐体に固定されている。
【0037】
移動フレーム502は、搬送方向両端に一対のレール部502aを有し、これらレール部502aがスライドレール501に嵌合することでスライド移動可能に支持されている。また、移動フレーム502の幅方向一端側には、ユーザが把持して移動フレーム502をスライド移動するためのフレーム把持部503が設けられている。
【0038】
移動フレーム502は、幅方向両端に対向配置された一対の昇降ユニット保持板502bを有している。昇降ユニット保持板502bは、内側に上記した昇降ユニット400のラックギア414(
図7参照)が配設されている。また、昇降ユニット保持板502bには、昇降ユニット400の回転軸401を支持する貫通孔502cが形成されている。貫通孔502cは、ラックギア414に沿う昇降ユニット400の鉛直方向の移動を妨げず且つ搬送方向の移動を規制するために、鉛直方向長さが搬送方向長さよりも長い長尺状に形成されている。なお、
図8に示すように、昇降ユニット400のハンドル402はユーザが操作しやすいように、フレーム把持部503を設けた側の昇降ユニット保持板502bの外側で回転軸401に固定されている。
【0039】
ユーザはスキャナユニット300の透過ガラス303を清掃したい場合、スキャナユニット300を読取位置(
図4参照)から離間位置(
図5参照)へ移動した後に、離間位置(対向位置)から非対向位置(
図8参照)へ移動する必要がある。その場合、ユーザはフレーム把持部503を把持して移動フレーム502を手前側(
図9において矢印Y方向の反対側)へ引っ張る。そうすると、移動フレーム502は、スライドレール501に沿って非対向位置へスライド移動する。これにより、昇降ユニット400も非対向位置へ移動するので、保持板601に保持されているスキャナユニット300が非対向位置へ移動する。本実施形態の場合、スキャナユニット300は非対向位置にあるとき、プリントモジュール2000の筐体内から筐体外へ筐体よりも手前側へ引き出された状態であり、透過ガラス303がプリントモジュール2000の筐体外に露出している。
【0040】
<回動ユニット>
さらに、スキャナユニット300は、上記した読取面310が搬送ベルト3と対向しない非対向位置にある状態で(
図8参照)、非対向位置と、非対向位置に対して読取面310が所定の角度傾斜した傾斜位置との間で回動可能に設けられている。スキャナユニット300が傾斜位置にある場合を
図10に示す。スキャナユニット300は、読取面310の透過ガラス303が鉛直方向下方を向いた状態の非対向位置(
図8参照)と、
図10に示すように、読取面310が所定の角度傾斜した傾斜位置との間を、回動部としての回動ユニット600により回動する。
【0041】
回動ユニット600について、
図6を参照しながら
図10乃至
図11(b)を用いて説明する。
図11(a)はスキャナユニット300が非対向位置にある場合を示し、
図11(b)はスキャナユニット300が傾斜位置にある場合を示す。
図10に示すように、回動ユニット600は、搬送方向に間隔を空けて幅方向に延設された一対の保持板601を有している。上述したように、保持板601は昇降ユニット400の昇降部403の下方に設けられ(
図6参照)、スキャナユニット300を回動自在に保持する。
【0042】
図10乃至
図11(a)に示すように、保持部としての保持板601には円弧状に形成されたスリット602と、ロック部603と、回動孔604が形成されている。これに対し、スキャナユニット300の収容体301には、幅方向の両側面から突出するように回動軸330と係合突起331が形成されている。回動軸330の回動軸線の方向は、第二方向に沿った方向である。回動軸330は保持板601の回動孔604に通されており、収容体301は保持板601に対し回動軸330を回動中心として回動する。また、係合突起331は保持板601のスリット602に挿入されており、収容体301が回動軸330を回動中心として回動する際に、収容体301の移動方向をスリット602と共に規制する。
【0043】
ロック部603は、
図11(b)に示すように、スキャナユニット300が傾斜位置にあるときに、スリット602から突出した係合突起331に係合し、スキャナユニット300(詳しくは収容体301)を傾斜位置でロックする。ロック部603は、係合突起331を係合するための係合爪が先端部に設けられており、回動部605を中心に回動可能に不図示のバネによって係合爪側が下方に向け付勢されている。スキャナユニット300が
図11(a)に示す非対向位置から
図11(b)に示す傾斜位置に回動される際に、係合突起331がロック部603の先端縁部に接触すると、ロック部603は係合突起331に押し上げられるようにしてバネの付勢力に逆らって上方へ退避する。それからさらに、スキャナユニット300を傾斜位置へと回動させると、上方へ退避していたロック部603がバネの付勢力により下方へと動き退避前の元の位置に戻る。こうしてロック部603が退避前の元の位置に戻ることにより、係合爪が係合突起331を係合する。
【0044】
なお、スキャナユニット300の収容体301の幅方向一端側には、ユーザが把持してスキャナユニット300を回動するためのユニット把持部332が設けられている。
【0045】
ユーザはスキャナユニット300の透過ガラス303を清掃したい場合、スキャナユニット300を離間位置(
図5参照)から非対向位置(
図8参照)へ移動した後に、非対向位置から傾斜位置(
図10参照)へ移動する必要がある。即ち、透過ガラス303を清掃する場合、ユーザはスキャナユニット300を引き出した状態で回動ユニット600を操作して、透過ガラス303を清掃しやすい所定角度へスキャナユニット300を回動させる。
【0046】
具体的に、ユーザはユニット把持部332を把持してスキャナユニット300を回動する。そうすると、スキャナユニット300は、保持板601のスリット602に沿って傾斜位置へ移動する。スキャナユニット300が傾斜位置へ到達すると、ロック部603が係合突起331を係合するので、透過ガラス303が清掃しやすい所定角度となる傾斜位置で、スキャナユニット300は回動しないようにロックされる。これにより、ユーザは、スキャナユニット300がロックされた状態で、傾いている透過ガラス303を清掃し得る。また、スキャナユニット300がロックされた状態で、ユーザは透過ガラス303を視認しやすい。透過ガラス303が清掃しやすい所定角度としては、スキャナユニット300が非対向位置にあるときの透過ガラス303の角度を「0°」とした場合に、「60°以上70°以下」の角度である。
【0047】
以上のように、本実施形態によれば、ユーザがスキャナユニット300の透過ガラス303を清掃する際のユーザ操作性を向上できる。即ち、ユーザは引き出しユニット500によりスキャナユニット300をプリントモジュール2000の筐体から引き出した後に、引き出したスキャナユニット300を回動ユニット600により回動させることができる。そして、透過ガラス303が清掃しやすい所定角度に傾いた状態で、スキャナユニット300はロックされる。スキャナユニット300が筐体外へ引き出されることで、透過ガラス303の清掃を行うのに必要な作業空間を十分に確保できる。また、スキャナユニット300を回動させることで、透過ガラス303の視認性が向上する。このようにして、ユーザは透過ガラス303を清掃したい場合に、透過ガラス303を清掃しやすく視認性の良い位置へ移動する操作を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0048】
1Y、1M、1C、1K、1H…画像形成部(記録ヘッド)、3…支持部(搬送ベルト)、100…画像形成装置(インクジェット記録装置)、300…読取ユニット(スキャナユニット)、301…収容体、302…読取部、303…透過部(透過ガラス)、310…読取面、320…搬送経路、330…回動軸、331…係合突起、332…ユニット把持部、400…接離部(昇降ユニット)、401…回転軸、402…ハンドル、403…昇降部、410…ウォームギア、411…ウォームホイール、413…ピニオンギア、414…ラックギア、500…移動部(引き出しユニット)、501…スライドレール、502…移動フレーム、503…フレーム把持部、600…回動部(回動ユニット)、601…保持部(保持板)、602…スリット、603…ロック部、S…シート