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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173000
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】押圧装置、及び押圧方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
H01L21/60 311T
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091103
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【弁理士】
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳
【テーマコード(参考)】
5F044
【Fターム(参考)】
5F044PP16
5F044PP17
(57)【要約】
【課題】絶縁層の上に配置された電子部品をより適切に押圧できる押圧装置、及び押圧方法を提供すること。
【解決手段】本開示の押圧装置は、絶縁層の上に形成された金属配線上の電子部品を絶縁層に対して押圧可能な面を有する押圧部材と、押圧部材及び低摩擦シートをクランプして、押圧部材の面側に低摩擦シートを保持するクランプ機構と、押圧部材及び低摩擦シートと絶縁層との少なくとも一方を移動させて、低摩擦シートを間に挟んで押圧部材により電子部品を絶縁層に対して押圧する移動機構と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層の上に形成された金属配線上の電子部品を前記絶縁層に対して押圧可能な面を有する押圧部材と、
前記押圧部材及び低摩擦シートをクランプして、前記押圧部材の前記面側に前記低摩擦シートを保持するクランプ機構と、
前記押圧部材及び前記低摩擦シートと前記絶縁層との少なくとも一方を移動させて、前記低摩擦シートを間に挟んで前記押圧部材により前記電子部品を前記絶縁層に対して押圧する移動機構と、
を備える押圧装置。
【請求項2】
前記クランプ機構は、
所定方向に可動する操作部と、
前記所定方向の一方側へ前記操作部を可動させることで前記押圧部材及び前記低摩擦シートをクランプするクランプ状態となり、前記所定方向の他方側へ前記操作部を可動させることで前記押圧部材及び前記低摩擦シートのクランプを解除したアンクランプ状態となるクランパと、
を備える、請求項1に記載の押圧装置。
【請求項3】
前記所定方向の前記一方側へ前記操作部を付勢する付勢部材と、
前記所定方向における前記クランパが前記アンクランプ状態となる位置で前記付勢部材に抗して前記操作部の位置をロックするロック機構と、
を、更に備える、請求項2に記載の押圧装置。
【請求項4】
前記所定方向における前記操作部の位置を検出する位置検出機構と、
前記位置検出機構の検出結果に基づいて、前記押圧部材及び前記低摩擦シートのうち、少なくとも一方が前記クランパによりクランプできていないか否かを判断する判断装置と、
を、更に備える、請求項2に記載の押圧装置。
【請求項5】
前記判断装置は、
前記位置検出機構の検出結果に基づいて、前記押圧部材及び前記低摩擦シートのうち、少なくとも一方が前記クランパによりクランプできていないと判断した場合、押圧の実行を制限する、請求項4に記載の押圧装置。
【請求項6】
前記位置検出機構は、
前記操作部に取り付けられ、前記操作部とともに前記所定方向に移動する被検出部材と、
前記被検出部材の位置を検出するセンサと、
を備える、請求項4に記載の押圧装置。
【請求項7】
前記センサは、
第1センサと、
前記所定方向において前記第1センサとは異なる位置に配置された第2センサと、
を備え、
前記被検出部材は、
第1被検出部と、
前記所定方向において前記第1被検出部とは異なる位置に配置された第2被検出部と、
を備え、
前記押圧部材及び前記低摩擦シートを前記クランプ機構でクランプしたクランプ状態では、前記第1被検出部が前記第1センサに検出され、且つ前記第2被検出部が前記第2センサに検出され、
前記クランプ機構による前記押圧部材及び前記低摩擦シートのクランプを解除したアンクランプ状態では、前記第1被検出部が前記第1センサに検出されず、且つ前記第2被検出部が前記第2センサに検出されず、
前記押圧部材を前記クランプ機構でクランプし、前記低摩擦シートを前記クランプ機構でクランプできていない状態では、前記第1被検出部が前記第1センサに検出されず、且つ前記第2被検出部が前記第2センサに検出される、請求項6に記載の押圧装置。
【請求項8】
前記押圧部材を取り付ける部品取付部材を、更に備え、
前記押圧部材は、
前記面を有する弾性部材と、
前記弾性部材を支持する支持部材と、
を備え、
前記部品取付部材は、
挿入部を備え、
前記支持部材は、
前記部品取付部材の前記挿入部を挿入可能な被挿入部を備え、
前記支持部材の前記被挿入部に前記部品取付部材の前記挿入部が挿入され前記クランプ機構により前記押圧部材及び前記低摩擦シートがクランプされた状態では、前記センサにより前記被検出部材が検出され、
前記支持部材の前記被挿入部に前記部品取付部材の前記挿入部が挿入されずに前記クランプ機構により前記押圧部材及び前記低摩擦シートがクランプされた状態では、前記センサにより前記被検出部材が検出されない、請求項6に記載の押圧装置。
【請求項9】
前記押圧部材は、
前記面を有する弾性部材と、
前記弾性部材を支持する支持部材と、
を備え、
前記クランプ機構は、
前記支持部材の端部と、前記低摩擦シートの端部とをクランプして前記低摩擦シートを保持する、請求項1に記載の押圧装置。
【請求項10】
前記押圧部材を取り付ける部品取付部材を、更に備え、
前記支持部材及び前記弾性部材は、
前記部品取付部材に対して着脱可能であり、前記クランプ機構により前記低摩擦シートとともに前記部品取付部材に対して保持される、請求項9に記載の押圧装置。
【請求項11】
前記低摩擦シートは、
前記弾性部材における前記電子部品と対向する前記面よりも摩擦係数が低いシートである、請求項9に記載の押圧装置。
【請求項12】
前記低摩擦シートは、
複数枚であり、
複数の前記低摩擦シートの端部を保持するブラケットを、更に備え、
前記クランプ機構は、
前記押圧部材の端部と、前記ブラケットをクランプして前記低摩擦シートを保持する、請求項1に記載の押圧装置。
【請求項13】
前記絶縁層及び前記金属配線のうち、少なくとも一方は、三次元積層造形法により造形される、請求項1に記載の押圧装置。
【請求項14】
絶縁層の上に形成された金属配線上の電子部品を前記絶縁層に対して押圧する押圧方法であって、
前記絶縁層に対して押圧可能な面を有する押圧部材及び低摩擦シートをクランプ機構によりクランプして、前記押圧部材の前記面側に前記低摩擦シートを保持させた状態で、前記押圧部材及び前記低摩擦シートと前記絶縁層との少なくとも一方を移動させて、前記低摩擦シートを間に挟んで前記押圧部材により前記電子部品を前記絶縁層に対して押圧する工程、
を含む押圧方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子部品を絶縁層に対して押圧する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子デバイスを製造する技術として種々の技術が開発されている。例えば、下記特許文献1には、インクジェット法によって絶縁層や金属配線を形成し、形成した金属配線と電気的に接続される電子部品を実装する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/102522号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属配線に電子部品を接続する際、電子部品の端子と金属配線の接続部分を電気的に接続する必要がある。電子部品を絶縁層に接着等により取り付けるために、電子部品をより適切に押圧できることが望ましい。
【0005】
本開示は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、絶縁層の上に配置された電子部品をより適切に押圧できる押圧装置、及び押圧方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、絶縁層の上に形成された金属配線上の電子部品を前記絶縁層に対して押圧可能な面を有する押圧部材と、前記押圧部材及び低摩擦シートをクランプして、前記押圧部材の前記面側に前記低摩擦シートを保持するクランプ機構と、前記押圧部材及び前記低摩擦シートと前記絶縁層との少なくとも一方を移動させて、前記低摩擦シートを間に挟んで前記押圧部材により前記電子部品を前記絶縁層に対して押圧する移動機構と、を備える押圧装置を開示する。
尚、本開示の内容は、押圧装置としての実施に限らず、種々の形態により実施することができる。例えば、本開示の内容は、押圧方法として実施しても有益である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、金属配線上に電子部品を配置した絶縁層と押圧部材との間に低摩擦シートを挟んだ状態で押圧部材により電子部品を押圧する。押圧部材が電子部品を押し付ける際に、押圧部材が電子部品を絶縁層側へ押し付ける力の他に、電子部品の位置をずらす方向の力が発生する可能性がある。このような電子部品の位置をずらす方向へ働く力が発生した場合に、低摩擦シートを挟むことによって電子部品に対して押圧部材を滑らせ、電子部品に対して働くずらす方向の力を低減できる。即ち、低摩擦シートによって押圧部材と電子部品を相対的に滑らせることで、押圧する方向とは異なる方向に働く力を低減でき、絶縁層の上に配置された電子部品をより適切に押圧できる。これにより、例えば、押圧による電子部品の位置ずれを抑制できる。また、押圧装置は、押圧部材と、低摩擦シートをクランプするクランプ機構を備えている。これにより、クランプ機構を操作することで、低摩擦シートの交換を比較的容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施例の基板形成装置の概略図である。
図2】本実施例の制御装置を示すブロック図である。
図3】本実施例の制御装置を示すブロック図である。
図4】押圧ユニットの斜視図である。
図5】部品取付部材の拡大図である。
図6】押圧部材の斜視図である。
図7】押圧部材の分解斜視図である。
図8】ブラケットの分解斜視図である。
図9】左側のクランプ部の拡大図である。
図10】筒部材を透過的に示す図であって、クランパによって押圧部材をクランプするクランプ状態を示す図である。
図11】筒部材を透過的に示す図であって、クランパによる押圧部材のクランプを解除したアンクランプ状態を示す図である。
図12】押圧部材を取り付けた状態であって、クランパを透過的に示す図である。
図13】樹脂積層体が形成された状態の回路基板の一例を示す断面図である。
図14】樹脂積層体の上に配線が形成された状態の回路基板の一例を示す断面図である。
図15】樹脂積層体の上に更に樹脂積層体が形成された状態の回路基板の一例を示す断面図である。
図16】配線の上に導電性ペーストが塗布された状態の回路基板の一例を示す断面図である。
図17】樹脂層の上に熱硬化性樹脂が塗布された状態の回路基板の一例を示す断面図である。
図18】電子部品が装着された状態の回路基板の一例を示す断面図である。
図19】電子部品と対向する位置に押圧部材を配置した状態の一例を示す断面図である。
図20】押圧部材により押圧を行う状態の回路基板の一例を示す断面図である。
図21】電子部品の周囲に熱硬化性樹脂が塗布された状態の回路基板の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の押圧装置を具体化した一実施例について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施例の基板形成装置10の概略図である。図2図3は、本実施例の制御装置28を示すブロック図である。図1図3に示すように、基板形成装置10は、搬送装置20と、第1造形ユニット22と、第2造形ユニット23と、第3造形ユニット24と、第4造形ユニット25と、押圧ユニット26と、装着ユニット27と、制御装置28(図2図3参照)とを備えている。それら搬送装置20と第1造形ユニット22と第2造形ユニット23と第3造形ユニット24と第4造形ユニット25と押圧ユニット26と装着ユニット27とは、基板形成装置10のベース29の上に配置されている。ベース29は、概して長方形状をなしており、以下の説明では、図1に示すように、ベース29の長手方向をX軸方向、ベース29の短手方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向の両方に直交する方向をZ軸方向と称して説明する。
【0010】
搬送装置20は、X軸スライド機構30と、Y軸スライド機構32とを備えている。そのX軸スライド機構30は、X軸スライドレール34とX軸スライダ36とを有している。X軸スライドレール34は、X軸方向に延びるように、ベース29の上に配設されている。X軸スライダ36は、X軸スライドレール34によって、X軸方向にスライド可能に保持されている。更に、X軸スライド機構30は、電磁モータ38(図2参照)を有しており、電磁モータ38の駆動により、X軸スライダ36をX軸方向の任意の位置に移動させる。また、Y軸スライド機構32は、Y軸スライドレール50とステージ52とを有している。Y軸スライドレール50は、Y軸方向に延びるように、ベース29の上に配設されている。Y軸方向におけるY軸スライドレール50の一端部は、X軸スライダ36に連結されている。このため、Y軸スライドレール50は、X軸スライダ36とともにX軸方向に移動可能とされている。そのY軸スライドレール50には、ステージ52が、Y軸方向にスライド可能に保持されている。更に、Y軸スライド機構32は、電磁モータ56(図2参照)を有しており、電磁モータ56の駆動により、ステージ52をY軸方向の任意の位置に移動させる。これにより、ステージ52は、X軸スライド機構30及びY軸スライド機構32の駆動により、ベース29上の任意の位置に移動する。
【0011】
ステージ52は、基台60と、保持装置62と、昇降装置64(図2参照)と、ヒータ66(図2参照)とを有している。基台60は、平板状に形成され、上面にパレット61が載置される。パレット61は、例えば、平板状の金属部材である。パレット61の上には、回路基板が造形される。保持装置62は、基台60のX軸方向の両側部に設けられている。そして、基台60に載置されたパレット61のX軸方向の両縁部が、保持装置62によって挟まれることで、回路基板が固定的に保持される。また、昇降装置64は、基台60の下方に配設されており、基台60を昇降させる。また、ヒータ66は、基台60に内蔵されており、基台60に載置された回路基板を任意の温度に加熱する。
【0012】
第1造形ユニット22は、回路基板の配線を造形するユニットであり、第1印刷部72と、焼成部74とを有している。第1印刷部72は、インクジェットヘッド76(図2参照)を有しており、インクジェットヘッド76が金属インクを線状に吐出する。金属インクは、ナノメートルサイズの金属、例えば銀の微粒子が溶剤中に分散されたものである。尚、金属微粒子の表面は分散剤によりコーティングされており、溶剤中での凝集が防止されている。また、インクジェットヘッド76は、例えば、圧電素子を用いたピエゾ方式によって複数のノズルから金属インクを吐出する。
【0013】
焼成部74は、赤外線照射装置78(図2参照)を有している。赤外線照射装置78は、吐出された金属インクに赤外線を照射する装置である。赤外線が照射された金属インクは焼成し、配線を形成する。尚、金属インクの焼成とは、エネルギーを付与することによって、溶媒の気化や金属微粒子の保護膜、つまり、分散剤の分解等が行われ、金属微粒子が接触または融着をすることで、導電率が高くなる現象である。そして、金属インクが焼成することで、金属製の配線が形成される。
【0014】
また、第2造形ユニット23は、回路基板の樹脂層を造形するユニットであり、第2印刷部84と、硬化部86とを有している。第2印刷部84は、インクジェットヘッド88(図2参照)を有しており、インクジェットヘッド88は紫外線硬化樹脂を吐出する。紫外線硬化樹脂は、紫外線の照射により硬化する樹脂である。尚、インクジェットヘッド88が紫外線硬化樹脂を吐出する方式は、例えば、圧電素子を用いたピエゾ方式でも良く、樹脂を加熱して気泡を発生させ複数のノズルから吐出するサーマル方式でも良い。
【0015】
硬化部86は、平坦化装置90(図2参照)と照射装置92(図2参照)とを有している。平坦化装置90は、インクジェットヘッド88によって吐出された紫外線硬化樹脂の上面を平坦化するものであり、例えば、紫外線硬化樹脂の表面を均しながら余剰分の樹脂を、ローラもしくはブレードによって掻き取ることで、紫外線硬化樹脂の厚みを均一にする。また、照射装置92は、光源として水銀ランプもしくはLEDを備えており、吐出された紫外線硬化樹脂に紫外線を照射する。これにより、吐出された紫外線硬化樹脂が硬化し、樹脂層が形成される。
【0016】
第3造形ユニット24は、電子部品の電極と配線との接続部を造形するユニットであり、第3印刷部100を有している。第3印刷部100は、ディスペンサ106(図2参照)を有しており、ディスペンサ106は導電性ペーストを吐出する。導電性ペーストは、比較的低温の加熱により硬化する樹脂に、マイクロメートルサイズの金属粒子が分散されたものである。尚、金属粒子は、フレーク状とされており、導電性ペーストの粘度は、金属インクと比較して比較的高い。
【0017】
そして、ディスペンサ106により吐出された導電性ペーストは、基台60に内蔵されているヒータ66により加熱される。加熱された導電性ペーストでは、樹脂が硬化する。この際、導電性ペーストでは、樹脂が硬化して収縮し、その樹脂に分散されたフレーク状の金属粒子が接触する。これにより、導電性ペーストが導電性を発揮する。また、導電性ペーストの樹脂は、有機系の接着剤であり、加熱により硬化することで接着力を発揮する。尚、導電性ペーストは、例えば、約80℃で硬化する。
【0018】
第4造形ユニット25は、電子部品を回路基板に固定するための樹脂を造形するユニットであり、第4印刷部110を有している。第4印刷部110は、ディスペンサ116(図2参照)を有しており、ディスペンサ116は熱硬化性樹脂を吐出する。熱硬化性樹脂は、加熱により硬化する樹脂であり、所謂アンダーフィル樹脂である。尚、ディスペンサ116が熱硬化性樹脂を吐出する方式は、例えば、圧縮エアを用いたエアパルス方式である。そして、ディスペンサ116により吐出された熱硬化性樹脂は、基台60に内蔵されているヒータ66により加熱され、硬化する。熱硬化性樹脂は、例えば、約80℃で硬化する。
【0019】
また、押圧ユニット26は、回路基板に配置された電子部品を押圧するためのユニットであり、駆動部120、ヒータ121(図2参照)、第1センサ122A,122B(図2参照)、第2センサ123A,123B(図2参照)を有している。押圧ユニット26の詳細については、後述するが、押圧ユニット26は、駆動部120を駆動し、回路基板上の電子部品を回路基板に向って押し付ける。
【0020】
また、装着ユニット27は、回路基板に電子部品を装着するユニットであり、供給部130と、装着部132とを有している。供給部130は、テーピング化された電子部品を1つずつ送り出すテープフィーダ134(図3参照)を複数有しており、供給位置において、電子部品を供給する。尚、供給部130は、テープフィーダ134に限らず、トレイから電子部品をピックアップして供給するトレイ型の供給装置でも良い。また、供給部130は、テープ型とトレイ型との両方、あるいはそれ以外の供給装置を備えた構成でも良い。
【0021】
装着部132は、装着ヘッド136(図3参照)と、移動装置138(図3参照)とを有している。装着ヘッド136は、電子部品を吸着保持するための吸着ノズル(図示省略)を有する。吸着ノズルは、正負圧供給装置(図示省略)から負圧が供給されることで、エアの吸引により電子部品を吸着保持する。そして、正負圧供給装置から僅かな正圧が供給されることで、電子部品を離脱する。また、移動装置138は、テープフィーダ134による電子部品の供給位置と、基台60に載置された回路基板との間で、装着ヘッド136を移動させる。これにより、装着部132では、テープフィーダ134から供給された電子部品が、吸着ノズルにより保持され、その吸着ノズルによって保持された電子部品が、回路基板に装着される。
【0022】
また、図3に示すように、基板形成装置10は、ユーザインタフェースとして、例えば、タッチパネル139を備えている。タッチパネル139は、制御装置28の制御に基づいて表示内容を変更する。また、タッチパネル139は、ユーザによる操作入力に応じた信号を制御装置28に出力する。特に、本実施例では、制御装置28は、第1センサ122A,122B及び第2センサ123A,123Bの検出信号に基づく判断結果をタッチパネル139に表示する。
【0023】
また、制御装置28は、図2及び図3に示すように、コントローラ140と、複数の駆動回路142とを備えている。複数の駆動回路142の各々は、上記電磁モータ38,56、保持装置62、昇降装置64、ヒータ66、インクジェットヘッド76、赤外線照射装置78、インクジェットヘッド88、平坦化装置90、照射装置92、ディスペンサ106、ディスペンサ116、駆動部120、ヒータ121、第1センサ122A,122B、第2センサ123A,123B、テープフィーダ134、装着ヘッド136、移動装置138、タッチパネル139に接続されている。コントローラ140は、CPU,ROM,RAM等を備え、コンピュータを主体とするものであり、複数の駆動回路142に接続されている。これにより、搬送装置20、第1造形ユニット22、第2造形ユニット23、第3造形ユニット24、第4造形ユニット25、押圧ユニット26、装着ユニット27、タッチパネル139の作動が、コントローラ140によって制御される。
【0024】
基板形成装置10は、上述した構成によって、基台60の上に樹脂積層体を形成し、その樹脂積層体の上面に配線を形成する。基板形成装置10は、導電性ペーストを介して、電子部品の電極を配線に電気的に接続し、その電子部品を樹脂により固定することで、回路基板を形成する。基板形成装置10は、電子部品を固定する際に、押圧ユニット26による押圧を実行する。
【0025】
(押圧ユニット26について)
次に、押圧ユニット26について説明する。図4は、押圧ユニット26の斜視図を示している。以下の説明では、図4に示すように、押圧ユニット26を正面から見た方向を基準として、前後方向、左右方向、上下方向と称して説明する。前後方向は、後述するように、パレット61を押圧ユニット26へ搬入する方向であり、例えば、X軸方向又はY軸方向に平行な方向である。図4に示すように、押圧ユニット26は、基台151、可動部152、保持部153を備えている。基台151は、例えば、押圧ユニット26を設置する設置面に対して固定されており、移動機構155を備えている。移動機構155は、押圧ユニット26の下部に設けられ、駆動部120を駆動して可動部152を可動させる機構である。可動部152は、平板状の可動板152Aの上に、上下方向に厚い略直方体形状のパレット載置部152Bが取り付けられている。可動板152Aは、上下方向に延びる複数の支柱157,158を挿入されており、パレット載置部152Bを載置した状態で上下方向へスライド移動可能となっている。可動板152Aは、パレット61を搬入する際は、図4に示す位置、即ち、押圧ユニット26における上下方向の中央部に配置され、押圧を実行する際に、図4に示す位置から上方へ移動する。
【0026】
駆動部120は、例えば、サーボモータであり、基台151の前端に設けられている。移動機構155は、例えば、駆動部120の駆動力を伝達する複数のギア155Aやボールねじ機構(図示略)を備え、可動板152Aを下方から支持している。移動機構155は、駆動部120の駆動に基づいて可動部152を上下方向へ可動させる。尚、可動部152を可動させる方向は、上下方向に限らず、上下方向と所定の角度をなす方向でも良い。また、可動部152を可動させる駆動源は、サーボモータに限らず、例えば、エアシリンダや油圧シリンダなどの流体圧シリンダでも良い。
【0027】
パレット載置部152Bの上部には、パレット61を配置する凹部152Cが形成されている。制御装置28は、パレット61の上に造形物である回路基板159を造形し電子部品を装着した後、搬送装置20を制御してパレット61を押圧ユニット26まで搬送する。制御装置28は、保持装置62によるパレット61の保持を解除し、押圧ユニット26の近くに配置された搬入装置(図示略)を制御して回路基板159を載せたパレット61を基台60からパレット載置部152Bの凹部152Cに搬入する。図4の矢印161に示すように、制御装置28は、搬入装置によってパレット61を前方へ移動させてパレット載置部152Bの凹部152Cに搬入する。凹部152Cには、矢印161に沿って、即ち、前後方向と平行な方向に沿って溝が形成されている。パレット61は、凹部152Cの溝に沿って搬入される。また、制御装置28は、押圧が終了すると、搬入装置によってパレット61を後方へ移動させてパレット載置部152Bから基台60へ搬出する。パレット61は、例えば、パレット61の平面が前後方向及び左右方向に平行な状態にされたまま搬入又は搬出される。
【0028】
支柱157,158は、例えば、それぞれ4本ずつ設けられている。支柱158は、支柱157の外側に配置され、且つ、支柱157よりも太い円柱形状をなしている。4つの支柱158は、概して基台151の底板の4つの角(左右方向及び前後方向の角)に配置されている。4つの支柱158の上端には、保持部153が取り付けられている。保持部153は、平板状の上板162を備えている。上板162は、4つの支柱158の上端に固定され、部品取付部材163及びクランプ機構164が取り付けられている。
【0029】
図5は、部品取付部材163の拡大図を示している。尚、図5以降の各図において、図面が煩雑となるのを避けるため、図4に示す部材の一部を省略して図示している。図4及び図5に示すように、部品取付部材163は、上板162の下面に固定され、略直方体形状をなし、下面163Aに平面が形成されている。下面163Aには、押圧部材165が着脱可能に取り付け可能となっており、後述するクランプ機構164の一対のクランパ167によって押圧部材165が装着される。部品取付部材163は、上下方向において可動部152と対向する位置に配置されている。部品取付部材163に取り付けられた押圧部材165は、可動部152に載置された回路基板159と上下方向で対向する位置に配置される。
【0030】
ヒータ121は、部品取付部材163に取り付けられた第1ヒータ121Aと、可動部152のパレット載置部152Bに取り付けられた第2ヒータ121Bを有する。第1ヒータ121Aは、例えば、電熱線であり、電源線(図示略)を介して駆動回路142(図2参照)に接続され、押圧部材165を取り付ける下面163Aを加熱する。同様に、第2ヒータ121Bは、駆動回路142に接続され、パレット載置部152Bの凹部152Cを加熱する。第1及び第2ヒータ121A,121Bは、押圧部材165によって電子部品を押圧する際に、電力を供給され回路基板159や電子部品を加熱する。これにより、後述するように、導電性ペースト266及び熱硬化性樹脂270を加熱し、電子部品を回路基板159に電気的に接続して固定する。
【0031】
図6及び図7に示すように、押圧部材165は、支持部材168、弾性部材169、複数の低摩擦シート170を備えている。支持部材168は、例えば、鋼材等の金属で形成された板状をなす部材である。支持部材168は、クランパ167によってクランプされることで上面を下面163Aに面接触させた状態で部品取付部材163に対して装着される。支持部材168の前方側の縁部には、把持部168Aが形成されている。把持部168Aは、支持部材168の前方側の縁部から前方側に突出した板状をなし、上下方向に貫通する円形の貫通孔168Bが形成されている。ユーザは、クランパ167によるクランプを解除したアンクランプ状態で貫通孔168Bに手を掛けながら前方へ支持部材168を引き出すことで、弾性部材169や低摩擦シート170を含む押圧部材165を引き出すことができる。
【0032】
支持部材168の下面168Cには、弾性部材169が取り付けられている。弾性部材169は、例えば、シリコン製のゴムにより形成された板状のゴムシートを上下方向に複数枚(本実施例では3枚)重ねて構成され、上下方向に厚い板状をなしている。尚、弾性部材169は、ゴムに限らず、ウレタンなどの他の弾性変形可能な部材でも良い。また、弾性部材169は、1枚の部材でも良い。
【0033】
弾性部材169は、例えば、3枚のゴムシートのうち、最も上のゴムシートが下面168Cに接着剤により固定されている。また、弾性部材169は、3枚のゴムシートのうち、下側の2枚のゴムシートが、例えば、両面テープによって最も上のゴムシートの下面に張り付けられている。尚、弾性部材169を支持部材168に取り付ける方法は、接着剤や両面テープに限らず、ボルト、磁石や結束バンドなどの他の方法でも良い。弾性部材169は、下面168Cのうち、パレット61や回路基板159と対向する部分の全域に亘って設けられている。弾性部材169の下面169A(図7参照)は、電子部品を押圧する平面となっている。従って、金属製の支持部材168は、弾性部材169を介して電子部品を回路基板159側へ押圧する。
【0034】
左右方向における支持部材168の両端には、低摩擦シート170を取り付けるための取付部168Dがそれぞれ設けられている。複数の低摩擦シート170は、本実施例では例えば2枚で構成されている(図8参照)。尚、図4図7図10図12は、2枚の低摩擦シート170のうち、外側の低摩擦シート170のみを図示している。2枚の低摩擦シート170は、左右方向を長手方向として設けられており、互いに同一形状をなし、上下方向で重なる位置に配置されている。左右方向における各低摩擦シート170の両端には、ブラケット173がそれぞれ設けられている。一対のブラケット173の各々は、2枚の低摩擦シート170の両端をそれぞれ保持した状態で、支持部材168の一対の取付部168Dにそれぞれ取り付けられる。尚、低摩擦シート170の枚数は、滑りの効果や耐久性に応じて適宜変更可能であり、1枚でも良く、3枚以上の複数枚でも良い。
【0035】
一対の取付部168D、一対のブラケット173、後述するクランプ機構164が備える一対のクランプ部183A,183Bは、それぞれ互いに同一の構成となっている。このため、以下の説明では、一対の取付部168D等のうち、左右方向の一方側の構成についてのみ説明し、他方側の構成の説明を省略する。尚、押圧部材165は、左右方向の両側に設けられた各部材(取付部168D等)の構成が互いに異なる構成でも良い。また、押圧部材165をクランプする位置は、左右方向の両側に限らず、前後方向の両側、前側と右側、四方の端部の全てなど適宜変更可能である。
【0036】
図8は、ブラケット173の分解斜視図を示している。図7及び図8に示すように、ブラケット173は、第1部材175、第2部材176、及び第3部材177を有している。第1~第3部材175~177は、この順番に左右方向の外側から内側へ並んで配置されている。第1部材175は、板状の金属部材であり、下側板部175A、上側板部175Cを有し、前後方向の一方側から見た場合に略L字形状をなしている。下側板部175Aは、前後方向及び上下方向に平行な平面を有し、前後方向に長い薄い板状をなしている。第2部材176は、前後方向及び上下方向に平行な平面を有し、前後方向に長く、左右方向の幅が下側板部175Aよりも厚い板状をなす金属部材である。第3部材177は、前後方向及び上下方向に平行な平面を有し、前後方向に長い薄い板状をなす金属部材である。
【0037】
第1~第3部材175~177の上下方向の幅は、略同一となっている。第2部材176には、前後方向において所定の間隔で並ぶ複数の磁石179(図7参照)が設けられている。例えば、第2部材176には、4つの磁石179が設けられている。4つの磁石179の各々は、左右方向(第2部材176の厚さ方向)に第2部材176を貫通し、第2部材176に埋め込まれた状態で固定されている。左右方向の磁石179の両面は、第2部材176から露出している。このため、例えば、図8に示す左側の第2部材176の場合、第2部材176は、左側の面に第1部材175の下側板部175Aを吸着し、右側の面に第3部材177を吸着して保持可能である。換言すれば、第2部材176は、磁石179で吸着した第1及び第3部材175,177により左右方向の両側から挟まれる。
【0038】
前後方向における第2部材176の両端には、左右方向の両側に突出する突出部176Aがそれぞれ形成されている。突出部176Aは、例えば、円柱形状をなし、第2部材176の左側面から左側へ突出する部分と、第2部材176の右側面から右側へ突出する部分とを有する。第1部材175の下側板部175Aには、突出部176Aの位置に合わせて一対の貫通孔175Bが形成されている。一対の貫通孔175Bは、左右方向に沿って下側板部175Aを貫通し、突出部176Aの形状に合わせて形成された円形の穴である。第1部材175は、一対の貫通孔175Bの各々に突出部176Aを挿入し、第2部材176に対して磁石179により装着される。
【0039】
第1及び第2部材175,176は、左右方向の間に1枚(外側)の低摩擦シート170の端部を挟んで互いに固定される。例えば、図8に示す左側の第2部材176の場合、第2部材176は、左側(外側)に1枚の低摩擦シート170を配置した状態で左側から下側板部175Aが張り付けられることで、外側の1枚の低摩擦シート170の左端部を保持する。また、前後方向における第3部材177の両端には、下側板部175Aの貫通孔175Bと同様に、貫通孔177Aがそれぞれ形成されている。第3部材177は、一対の貫通孔177Aの各々に、第2部材176の突出部176Aを挿入し、第2部材176に対して内側から磁石179により装着される。図8に示す左側の第2部材176の場合、第2部材176は、右側(内側)にもう1枚の低摩擦シート170の端部を配置した状態で右側から第3部材177が張り付けられることで、内側のもう1枚の低摩擦シート170の左端部を保持する。ユーザは、2枚の低摩擦シート170をブラケット173に取り付ける場合、例えば、まず、第2部材176と第3部材177の間に内側の低摩擦シート170を配置した状態で、内側に突出した突出部176Aと貫通孔177Aの位置を合わせながら、第2部材176に第3部材177を張り付けることで取り付ける。次に、第2部材176と下側板部175Aの間に外側の低摩擦シート170を配置した状態で、外側に突出した突出部176Aと貫通孔175Bの位置を合わせながら、第2部材176に第1部材175を張り付けることで取り付ける。この際、突出部176Aと、貫通孔175B,177Aの位置を合わせて取り付けることで、第1~第3部材175~177の位置ずれを抑制でき、取り換え作業における位置調整の作業負担を軽減できる。
【0040】
尚、上記した取付手順や取付方法は、一例である。例えば、第1部材175と第2部材176に挟まれる外側の低摩擦シート170を内側の低摩擦シート170よりも先に取り付けても良い。また、第1部材175と第2部材176の間に2枚の低摩擦シート170をまとめて挟んでも良い。この場合、ブラケット173は、第3部材177を備えなくとも良い。
【0041】
また、上側板部175Cは、下側板部175Aに接続され、前後方向における下側板部175Aの中央部分、且つ、上端から左右方向の外側に90度だけ折り曲がって形成されている。前後方向における上側板部175Cの長さは、前後方向における下側板部175Aの長さに比べて短くなっている。図7に示すように、取付部168Dには、複数の磁石181が設けられている。複数の磁石181は、本実施例では2つ設けられ、前後方向に並んで設けられ、取付部168Dの下面168Cにおいて露出した状態で取付部168Dに固定されている。上側板部175Cは、上面を取付部168Dの下面に面接触させた状態で磁石181によって取付部168Dに吸着される。
【0042】
また、左右方向における上側板部175Cの内側には、複数の凸部175Dが形成されている。凸部175Dは、本実施例では2つ設けられ、上側板部175Cから上方に向かって突出した板状をなしている。取付部168Dには、凸部175Dの位置に合わせて凹部168Eが形成されている。凹部168Eは、下方に開口しており、下方から凸部175Dを挿入可能となっている。ユーザは、低摩擦シート170を取り付けたブラケット173を取付部168Dに取り付ける際、2つの凸部175Dの各々を、2つの凹部168Eに挿入することで、取付部168Dに対してブラケット173を正しい位置に、即ち、低摩擦シート170を正しい位置に取り付けることができる。また、仮に、ユーザが、誤って凸部175Dを凹部168Eに挿入できていない状態でクランプした場合、後述するように、第1センサ122A,122B、第2センサ123A,123Bによって取り付けミスを検出できる。尚、上記した押圧部材165の構成は、一例である。例えば、第2部材176に突出部176Aを設けなくとも良い。また、第1部材175に凸部175Dを設けなくとも良い。また、磁石179,181の数や位置を変更しても良い。
【0043】
ここで、電子部品を押圧する際に、弾性部材169は、例えば、電子部品の形状に応じて変形する。また、電子部品を押圧する際に、上記したようにヒータ121による加熱が行われ、この加熱に伴う熱膨張により弾性部材169が変形する虞がある。そして、変形した弾性部材169により回路基板159上の電子部品が下方に向って押し付けられる際に、弾性部材169の押付力が真下に向わずに、斜め下方に向う場合がある。このような場合には、電子部品が下方だけでなく、左右方向や前後方向に向って押されることで、電子部品の位置がずれてしまい電気的な接続不良を招く虞がある。このようなことに鑑みて、電子部品の押圧作業時において、弾性部材169と電子部品との間に2枚の低摩擦シート170を重ねて挟んだ状態で、電子部品が弾性部材169により押し付けられる。具体的には、2枚の低摩擦シート170は、例えば、略同じ寸法であり、低摩擦シート170の外寸は弾性部材169の外寸より大きくなっている。そして、2枚の低摩擦シート170は、弾性部材169の下方において所定のたわみを持たせたて吊下げられた状態となり、弾性部材169の下面169Aの全体を覆っている。つまり、2枚の低摩擦シート170は、張力の無い状態で下面169Aの下方に配設されている。
【0044】
この所定のたわみは、上記した位置ずれの抑制機能を効果的に発揮させるためのものである。具体的には、たわみのない状態で低摩擦シート170を張り詰めて使用した場合、電子部品に対する低摩擦シート170の滑りの効果が低下し、電子部品の位置ずれが発生する虞がある。逆に、過剰にたわみを持たせると低摩擦シート170が押圧時に折れ曲がり、滑りの効果が低下する可能性がある。このため、たわみとして必要な低摩擦シート170の余剰分は、弾性部材169で電子部品を押圧した場合に、電子部品による弾性部材169の変形に追従できる程度に長く、且つ、低摩擦シート170にしわが発生しない程度に短い余剰である。所定のたわみは、例えば、予め押圧の試験を実行し、電子部品の位置ずれを効果的に抑制できる長さを設定することができる。
【0045】
2枚の低摩擦シート170は、例えば、同じ素材により形成されており、例えば、PTFE(polytetrafluoroethylene)、フッ素樹脂、超高分子量ポリエチレン、MCナイロン(登録商標)等の摩擦係数の低い素材、つまり、滑り性の良い素材により形成されている。このため、低摩擦シート170の両面は、摩擦係数の低い面となっており、低摩擦シート170の両面の各々の摩擦係数は、例えば、弾性部材169の下面169A(本開示の面の一例)の摩擦係数に比べて低くなっている。これにより、良好な滑りの効果を発揮させることができる。また、電子部品の押圧作業時において加熱が行われるため、低摩擦シート170の素材として、回路基板159を加熱する加熱温度(例えば、85℃)以上の耐熱性の素材を採用することが好ましい。また、電子部品の押圧作業時において、後述する電子部品と樹脂積層体252との間に挿入されている熱硬化性樹脂270(図18参照)が低摩擦シート170に付着する可能性を考慮すると、熱硬化性樹脂270との剥離性の高い素材を、低摩擦シート170の素材として採用することが好ましい。更に、低摩擦シート170の厚さ寸法は、数十μm~数百μm(具体的には、例えば、50μm)であることが好ましい。
【0046】
(クランプ機構164について)
ここで、電子部品を押圧する際に弾性部材169が変形すると、弾性部材169と電子部品との間に挟まれる低摩擦シート170は、電子部品の形状に沿って押し付けられる状態となる。低摩擦シート170は、押圧によって電子部品の跡が残ると滑りの効果が低下する。このため、低摩擦シート170は、例えば、1回又は数回ごとに交換が必要となる。また、弾性部材169についても、使用回数が増加すると劣化するため、交換が必要となる。低摩擦シート170や弾性部材169の交換の頻度は、材料の種類・耐久性に応じて異なる。そして、低摩擦シート170や弾性部材169の交換作業は、できるだけ簡易に実行できることが好ましい。本実施例では、低摩擦シート170や弾性部材169の交換をより簡易に実行できるようにクランプ機構164を備えている。クランプ機構164は、図4に示すように、一対のクランプ部183A,183Bを備えている。一対のクランプ部183A,183Bは、左右方向における押圧部材165の端部(取付部168Dなど)の位置にそれぞれ設けられている。クランプ部183Bは、クランプ部183Aと同様の構成となっている。このため、以下の説明では、クランプ部183Aについて主に説明し、クランプ部183Bについての説明を省略する。
【0047】
図9は、左側に配置されたクランプ部183Aの拡大図を示している。尚、図9は、クランプ状態のクランパ167を模式的に図示している。図9に示すように、クランプ部183Aは、クランパ167の他に、操作部185、一対の付勢部187を有している。操作部185は、略円柱形状をなし、筒部材188に挿入されている。筒部材188は、上下方向と平行な方向に沿った略円筒形状をなし、上板162に対して固定されている。操作部185は、筒部材188に挿入されて、上下方向と平行な方向に沿ってスライド移動可能に保持されている。また、操作部185は、上下方向と平行な方向を回転軸として回転可能に筒部材188によって保持されている。この操作部185が可動する上下方向や回転方向は、本開示の所定方向の一例である。操作部185は、筒部材188及び上板162を上下方向に貫通しており、下部を上板162から下方へ突出させている。操作部185の下端185Aは、上板162の下方に配置されたクランパ167の上面に接触している。操作部185は、下端185Aをクランパ167に接触させた状態で、上下方向や回転方向に可動する。また、クランパ167は、操作部185を下方へ移動させることで下端185Aによって押されて下方へ移動する。
【0048】
一対の付勢部187は、互いに同一構成となっている。一対の付勢部187は、前後方向において、操作部185及び筒部材188を間に挟む位置に配置されている。一対の付勢部187の各々は、収容部187A、スライド部材187B、ばね187Cを有している。一対の収容部187Aの各々は、略円筒形状をなし、スライド部材187Bの上部を収容している。一対の収容部187Aの各々は、上側部分を上板162から上方に突出させた状態で、上板162に挿入され、上下方向へ移動可能となっている。
【0049】
スライド部材187Bは、例えば、円柱形状をなし、上下方向と平行な方向に沿って配置され、上板162を貫通している。スライド部材187Bの下端187Dは、クランパ167に固定されている。このため、クランパ167は、一対のスライド部材187Bを上下方向へ移動させると、一対のスライド部材187Bのスライド移動に合わせて上下方向へ移動する。
【0050】
図5及び図9に示すように、クランパ167は、金属製の略板形状の部材であり、下端に係合部167Aを有している。クランパ167は、一対のスライド部材187Bの下端187Dの各々に、ボルト191により固定されている。係合部167Aは、クランパ167の下端を左右方向の内側に向かって90度だけ折り曲げて形成されている。例えば、左側のクランパ167であれは、前後方向から見た場合に、下端の係合部167Aを右側に折り曲げたL字形状をなしている。左右方向の両側に形成された部品取付部材163の側面の下部には、左右方向の内側に凹んだ段差部163Bが形成されている。クランパ167は、上下方向及び前後方向と平行な内周面を、段差部163Bの側面と互いに平行な状態で配置され、段差部163Bと近接して配置されている。係合部167Aは、段差部163Bの下面163Aに外側から入り回り込むように配置されており、上下方向において下面163Aと互いに平行な状態で対向して配置されている。この下面163Aにおける係合部167Aと対向する部分は、取付部168D及び上側板部175Cをクランプする挟持部として機能する。前後方向における係合部167A及びクランパ167の長さは、前後方向における取付部168Dや上側板部175Cの長さと略同一となっている。
【0051】
スライド部材187Bは、上部を収容部187Aに収容され、収容部187Aによって保持されている。ばね187Cは、収容部187Aに収納され、スライド部材187Bを上方(本開示の所定方向の一方向の一例)へ付勢する。換言すれば、ばね187Cは、押圧部材165をクランプする方向へスライド部材187B(クランパ167)を付勢している。ばね187Cは、例えば、コイルばねであり、上端を収容部187Aの上面に固定され、下端を上板162に固定されている。収容部187Aは、例えば、スライド部材187Bと固定されており、スライド部材187Bの上下動に合わせて上下方向に移動する。このため、ばね187Cは、収容部187A及びスライド部材187Bが下方へ移動するに従って収縮する。ばね187Cは、操作部185を下方へ押し下げてクランパ167を下方へ移動させると、収縮して操作部185及びクランパ167を上方へ付勢する。尚、上記した収容部187Aの構成は一例である。例えば、スライド部材187Bを収容部187Aに対し移動可能に設け、収容部187Aを上板162に対し固定して、ばね187Cの上端を収容部187Aに固定し、下端をスライド部材187Bに固定しても良い。
【0052】
図10は、筒部材188を透過的に示す図であって、クランパ167によって押圧部材165をクランプするクランプ状態を示している。図11は、筒部材188を透過的に示す図であって、クランパ167による押圧部材165のクランプを解除したアンクランプ状態を示している。尚、図10及び図11は、後述するクランプ確認用ドッグ202、プレート確認用ドッグ203の図示を省略し、ドッグ取付部201の一部を破線で図示している。図10に示すように、操作部185には、上下方向の略中央部に、第1溝185Bと第2溝185Cが形成されている。第1及び第2溝185B,185Cの各々は、操作部185の外周面を内側に凹ませるようにして形成され、周方向の幅を一定とし、上方から下方へ向かって形成される溝である。第1及び第2溝185B,185Cは、操作部185の周方向において互いにずれた位置に形成されている。操作部185には、第1及び第2溝185B,185Cの上端と連通する環状溝185Dが形成されている。環状溝185Dは、例えば、第1及び第2溝185B,185Cよりも内側に凹んで形成され、周方向に沿って操作部185の外周面に形成された円環形状の溝である。第1及び第2溝185B,185Cの上端の開口は、環状溝185Dと連通している。
【0053】
第1溝185Bは、クランプ状態にするための溝であり、第2溝185Cは、アンクランプ状態にするための溝である。上下方向における第1溝185Bの長さ(溝に沿った長さ)は、第2溝185Cに比べて長くなっている。第1溝185Bは、上下方向において第2溝185Cと同じ上端の位置(環状溝185Dの位置)から第2溝185Cの下端よりも下方となる位置まで形成されている。筒部材188には、第1及び第2溝185B,185Cに挿入可能な係合部材189が取り付けられている。係合部材189は、例えば、ボルトであり、筒部材188に対して外側から内側に向かって螺合されている。尚、係合部材189は、ボルトに限らず、第1及び第2溝185B,185Cに係合可能な金属の棒などの他の部材でも良い。
【0054】
図10に示すように、クランプ状態では、係合部材189の先端は、第1溝185Bに挿入された状態となる。クランパ167は、付勢部187のばね187C(図9参照)によって上方へ付勢され、部品取付部材163との間に押圧部材165をクランプする。より具体的には、クランパ167は、上下方向において、係合部167Aの上面と、部品取付部材163(段差部163B)の下面163Aとの間に、上から順番に、支持部材168の取付部168D、ブラケット173の上側板部175Cの順番にクランプする。一対のクランプ部183A,183Bは、一対のクランパ167の両方で取付部168D及び上側板部175Cをクランプする。これにより、押圧部材165は、部品取付部材163に対して固定される。
【0055】
また、取付部168D及び上側板部175Cの両方が適切にクランプさている場合、即ち、必要な部材が正しくセットされている場合、係合部材189の先端は、上下方向において、第1溝185Bの下端との間に隙間194(図10参照)を設けた状態で配置される。この隙間194の幅は、上下方向における上側板部175Cの厚み(幅)、より具体的には上側板部175Cのうち、係合部167Aによってクランプされる部分の上下方向の厚み以上の大きさとなっている。従って、仮に、上側板部175C(低摩擦シート170)のセットを忘れて取付部168Dだけがクランパ167でクランプされた場合、クランパ167は、ばね187Cの付勢力により、図10に示す正しくセットした位置から上側板部175Cの厚み分だけ上方へ移動した位置となる。操作部185は、クランパ167と同様に、上側板部175Cの分だけ上方へずれた位置となる。
【0056】
また、図11の矢印192で示すように、図10のクランプ状態からアンクランプ状態に切り替える場合、ユーザは、まず、操作部185を下方へ押し込んで係合部材189の先端を第1溝185Bから環状溝185Dへ出す。次に、ユーザは、矢印193に示すように、例えば上方から見て反時計回りに操作部185を回転させ、係合部材189の先端を環状溝185Dに挿入したまま移動させる。ユーザは、係合部材189の先端が第2溝185Cの上方となる位置まで操作部185を回転させた後、操作部185を押し下げる力を開放する。操作部185は、付勢部187のばね187C(図9参照)の付勢力によって上方へ移動し、第2溝185Cに係合部材189の先端を挿入される。係合部材189は、第2溝185Cと係合することで、クランパ167がアンクランプ状態となる位置でばね187Cの付勢力に抗して操作部185の位置をロックするロック機構として機能する。
【0057】
クランパ167をアンクランプ状態にすると、押圧部材165は、例えば、クランパ167の下方への移動に追従して下方へ移動する。取付部168D及び上側板部175Cは、図10に示す状態からクランパ167の移動にともなってクランパ167とともに下方へ移動する。尚、図11は、クランプ状態からアンクランプ状態へのクランパ167の変位を分かり易くするため、係合部167Aと上側板部175C(取付部168D)を上下方向において離間して図示している。図11に示す幅195は、図10に示すクランプ状態から図11に示すアンクランプ状態へ遷移させる間にクランパ167が移動した距離である。この幅195は、図10に示すクランプ状態における第1溝185Bに挿入された係合部材189の先端の下端と、第2溝185Cの下端との上下方向における距離196と同一の長さとなる。
【0058】
ユーザは、一対のクランプ部183A,183Bの両方をアンクランプ状態にすることで、押圧部材165を部品取付部材163から下方へ離間させることができる。ユーザは、例えば、把持部168A(図4参照)を手で掴み前方へ引き出すことで押圧部材165を取り出すことができる。そして、例えば、磁石181(図7参照)によって取付部168Dに取り付けられた上側板部175Cを取り外すことで、低摩擦シート170を支持部材168(弾性部材169)から分離できる。また、既に、ブラケット173が取り付けられた交換用の低摩擦シート170を準備しておけば、その交換用の低摩擦シート170のブラケット173を取付部168Dに吸着させることで低摩擦シート170を交換できる。この際、凸部175Dを凹部168Eに挿入することで、ブラケット173を取付部168Dの正しい位置に容易に取り付けることができる。また、ブラケット173を使い回す場合は、第2部材176から第1部材175を取り外して外側の低摩擦シート170を交換し、第2部材176から第3部材177を取り外して内側の低摩擦シート170を交換できる。尚、弾性部材169についても、支持部材168から取り外して、新しい弾性部材169を支持部材168に張り付けることで交換を行うことができる。
【0059】
そして、ユーザは、新し低摩擦シート170を取り付けた押圧部材165を、取り出した時と逆に、一対のクランパ167に挿入することで正しい位置にセットすることができる。この際、押圧部材165が、正しい位置にセットされる必要がある。ここでいう正しい位置とは、押圧する電子部品(回路基板159)の上方に低摩擦シート170や弾性部材169が配置される位置であり、取付部168D及び上側板部175Cがクランパ167によって良好に挟まれる位置である。
【0060】
そこで、本実施例の部品取付部材163及び押圧部材165は、取り付け時の位置ずれの発生を抑制するための形状等が設けられている。図12は、押圧部材165を取り付けた状態であって、クランパ167を透過的に図示している。図12に示すように、部品取付部材163の段差部163Bには、挿入部197が取り付けられている。挿入部197は、例えば、段差部163Bに形成された凹部198にボルト等により固定された金属部材である。挿入部197は、例えば、板状をなし、凹部198に取り付けられた状態において、下方へ突出する凸部197Aを有している。凸部197Aは、例えば、上方から下方に向かに従って、前後方向の幅が徐々に短くなる略三角形状をなしている。
【0061】
支持部材168の取付部168Dには、凸部197Aの位置に合わせて被挿入部168Fが形成されている。被挿入部168Fは、例えば、取付部168Dを上下方向に貫通し、左右方向の外側を開口した溝である。被挿入部168Fの上側部分は、凸部197Aの形状に合わせて、下側から上側に行くに従って前後方向の幅を徐々に大きくする三角形の溝が形成されている。そして、凸部197Aが被挿入部168Fに挿入されることで、部品取付部材163に対して支持部材168(押圧部材165)が正しい位置にセットされるように、挿入部197及び被挿入部168Fの位置が設定されている。これにより、ユーザは、押圧部材165をクランパ167にセットする際、被挿入部168Fと凸部197Aの位置を確認し、正しい位置に押圧部材165を容易に配置することができる。また、仮に、ユーザが、誤って挿入部197が被挿入部168Fに挿入されない位置に押圧部材165を配置しクランプした場合、後述するように、第1センサ122A,122B、第2センサ123A,123Bによって取付ミスを検出できる。
【0062】
(第1センサ122A,122B、第2センサ123A,123Bについて)
次に、第1センサ122A,122B、第2センサ123A,123Bについて説明する。図1に示すように、一対のクランプ部183A,183Bには、第1及び第2センサ122A,123A、第1及び第2センサ122B,123Bがそれぞれ設けられている。第1及び第2センサ122B,123Bは、第1及び第2センサ122A,123Aと同一構成となっている。このため、以下の説明では、第1及び第2センサ122A,123Aについて主に説明し、第1及び第2センサ122B,123Bについての説明を省略する。
【0063】
図9に示すように、上板162の上面には、センサ取付部材199が固定されている。センサ取付部材199には、第1及び第2センサ122A,123Aが取り付けられている。第1及び第2センサ122A,123Aは、例えば、近接センサであり、上下方向において高さの異なる位置でセンサ取付部材199に取り付けられている。第1センサ122Aは、第2センサ123Aよりも上方に配置されている。第1及び第2センサ122A,123Aは、検出方向を操作部185側に向けた状態でセンサ取付部材199に対して固定されている。操作部185には、第1及び第2センサ122A,123Aの各々に検出される被検出部材として、クランプ確認用ドッグ202、プレート確認用ドッグ203が取り付けられている。操作部185は、クランプ確認用ドッグ202及びプレート確認用ドッグ203を取り付けるためのドッグ取付部201が設けられている。ドッグ取付部201は、操作部185の外周面に取り付けられ、操作部185の周方向(図11に示す矢印193の方向)における所定の位置に固定されている。
【0064】
クランプ確認用ドッグ202は、第2センサ123Aによって検出され、クランプ状態であるか否かを判断するためのものである。クランプ確認用ドッグ202は、例えば、上下方向に長い金属板であり、操作部185の半径方向においてドッグ取付部201の外側に固定され、平面を外側に向けた状態でドッグ取付部201に取り付けられいる。図9及び図10に示すように、クランパ167をクランプ状態にした場合、クランプ確認用ドッグ202の下端202Aは、第2センサ123Aの検出範囲に配置される。また、図11に示すように、クランパ167をアンクランプ状態にした場合、操作部185が回転することで、クランプ確認用ドッグ202の全体が、第2センサ123Aの検出範囲外となる。例えば、第2センサ123Aは、検出範囲に下端202Aが配置されている場合、ハイレベルの信号を制御装置28へ出力し、検出範囲に下端202Aが配置されていない場合、ローレベルの信号を制御装置28に出力する。尚、ハイレベルとローレベルの信号レベルの関係は逆でも良い。また、以下の説明では、各センサがハイレベルの信号を出力することを、そのセンサがオンすると称し、各センサがローレベルの信号を出すことを、そのセンサがオフすると称して説明する。
【0065】
プレート確認用ドッグ203は、第1センサ122Aによって検出され、押圧部材165が正しくセットされているか判断するためのものである。プレート確認用ドッグ203は、操作部185の半径方向においてクランプ確認用ドッグ202の外側に固定されている。プレート確認用ドッグ203は、略L字形状をなす板状の金属部材であり、一辺をクランプ確認用ドッグ202に固定され、もう一方の辺を外側に向けて延ばした状態で配置されている。プレート確認用ドッグ203の外側に延ばした先端203Aは、クランプ確認用ドッグ202の下端202Aよりも上方に配置されている。図9及び図10に示すように、クランパ167をクランプ状態とした場合、先端203Aは、第1センサ122Aの検出範囲に配置される。また、図11に示すように、クランパ167をアンクランプ状態とした場合、プレート確認用ドッグ203は、第1センサ122Aの検出範囲外となる。第1センサ122Aは、検出範囲に先端203Aが配置されている場合、ハイレベルの信号を制御装置28へ出力し、検出範囲に先端203Aが配置されていない場合、ローレベルの信号を制御装置28に出力する。従って、本実施例では、押圧部材165が正しくセットされ、クランプ状態となった場合、第1及び第2センサ122A,123Aは、共にオンする。同様に、もう一方の第1及び第2センサ122B,123Bは、押圧部材165が正しくセットされ、クランプ状態となった場合、共にオンする。また、図11に示すように、操作部185をアンクランプ状態の位置まで回転させた場合、第1及び第2センサ122A,123Aは、共にオフする。第1及び第2センサ122B,123Bも同様である。
【0066】
また、押圧部材165が正しくセットされずにクランプ状態とされた場合、プレート確認用ドッグ203及びクランプ確認用ドッグ202は、上下方向において図9に実線で示す正しくセットしたクランプ状態の位置からずれた位置となる。詳述すると、図9の破線で示す第1位置P1は、低摩擦シート170を取り付けずにクランプ状態とした場合の先端203Aの位置を示している。図10の隙間194に示すように、仮に、上側板部175C(低摩擦シート170)のセットを忘れて取付部168Dだけがクランパ167でクランプされた場合、クランパ167は、正しくセットした場合の位置から上側板部175Cの厚み分だけ上方へ移動した位置となる。その結果、先端203Aは、図9に示す第1位置P1となる。一方、クランプ確認用ドッグ202は、先端203Aが第1位置P1となった状態、即ち、低摩擦シート170を付け忘れて操作部185が上昇した状態でも第2センサ123Aの検出範囲に下端202Aが配置される。換言すれば、上下方向におけるクランプ確認用ドッグ202の長さは、低摩擦シート170のクランプの有無に関わらず、クランプ状態であれば第2センサ123Aがオンするように調整されている。このため、ユーザが、低摩擦シート170をセットし忘れてクランプ状態とした場合、第1センサ122Aはオフし、第2センサ123Aはオンする。
【0067】
また、図9の破線で示す第2位置P2は、押圧部材165や低摩擦シート170の取り付け状態に異常がある場合の先端203Aの位置を示している。取り付け状態に異常がある場合とは、例えば、挿入部197の凸部197Aが被挿入部168Fの位置からずれており、正しく挿入されていない、あるいは全く挿入されていない場合である。この場合、凸部197Aが、例えば、支持部材168の上面と接触した状態、換言すれば、上下方向において部品取付部材163と支持部材168の間に、凸部197Aの高さ分だけ隙間が形成された状態となる。あるいは、取り付け状態に異常がある場合とは、例えば、ブラケット173の凸部175Dが取付部168Dの凹部168Eの位置からずれており、正しく挿入されていない、あるいは全く挿入されていない場合である。この場合にも、凸部175Dが、例えば、取付部168Dの下面168Cと接触した状態となり、第1部材175と取付部168Dの間に隙間が形成される。従って、このような取り付け状態の異常が発生すると、クランパ167は、正しくセットした場合の位置から、取り付け異常で発生した隙間分だけ下がった位置、即ち、第2位置P2となる。クランプ確認用ドッグ202は、第2センサ123Aに下端202Aを対向させたまま下がった位置となる。このため、ユーザが正しい取り付け位置に取り付けずにクランプ状態とした場合、第1センサ122Aはオフし、第2センサ123Aはオンする。また、もう一方の第1及び第2センサ122B,123Bは、第1及び第2センサ122A,123Aと同様に、取り付け忘れや取り付け位置の異常に応じてオン・オフする。
【0068】
制御装置28は、上記した第1センサ122A,122B、第2センサ123A,123Bのオン・オフに基づいて、押圧部材165や低摩擦シート170が正しくセットされたか否かを判断し、異常の報知や製造開始の停止などを実行する。例えば、制御装置28は、タッチパネル139(図3参照)に対する操作入力に基づいて回路基板159の造形を開始する指示を受け付けると、第1センサ122A,122B、第2センサ123A,123Bの信号を取得する。制御装置28は、第1センサ122A,122B、第2センサ123A,123Bの全てがオンである場合、造形を開始する。
【0069】
一方で、制御装置28は、第1センサ122A,122B、第2センサ123A,123Bの全てがオンでない場合、異常を報知して、造形を開始しない。例えば、制御装置28は、第1及び第2センサ122A,123Aが共にオフであった場合、「装置左側のクランパがクランプ状態となっていない可能性があります」というメッセージをタッチパネル139に表示する。これにより、ユーザがクランプ状態にする操作を忘れていた場合に、メッセージを表示してクランプ状態を確認させることができる。
【0070】
また、例えば、制御装置28は、第1センサ122Aがオフで、第2センサ123Aがオンであった場合、「装置左側のクランパで低摩擦シートが正しくセットされていない、あるいは、低摩擦シートや弾性部材が正しい位置にセットされていない可能性があります」というメッセージをタッチパネル139に表示する。これにより、ユーザが低摩擦シート170のセットを忘れていた場合や、正しい取り付け位置に取り付けていなかった場合に、メッセージを表示して取り付け状態を確認させることができる。尚、仮に、押圧部材165を取り付けずに低摩擦シート170だけをクランプした場合に、本実施例では、第1センサ122A及び第2センサ123Aが共にオフとなる。このため、制御装置28は、このような異常が発生した場合も、異常を報知することができる。
【0071】
上記したように、本実施例のクランプ機構164は、操作部185を上方(本開示の所定方向の一方の一例)へ可動させることでクランプ状態となり、下方(本開示の所定方向の他方の一例)へ可動させることでアンクランプ状態となるクランパ167を備えている。これによれば、ユーザは、操作部185を上下方向に操作することで、クランパ167のクランプ・アンクランプ状態を切り替え、押圧部材165の交換を行うことができる。
【0072】
また、クランプ機構164は、操作部185をクランプ状態となる方向へ付勢するばね187Cを備えている。また、操作部185に形成された第2溝185Cと、係合部材189は、クランパ167がアンクランプ状態となる位置でばね187Cに抗して操作部185の位置をロックするロック機構として機能する。これによれば、操作部185をばね187Cによってクランプ側へ付勢し、押圧部材165の脱落を抑制できる。また、係合部材189を第2溝185Cに係合させることでアンクランプ状態を維持でき、押圧部材165の交換をスムーズに行うことができる。
【0073】
また、押圧ユニット26は、第1及び第2センサ122A,123A等によって操作部185の位置を検出する位置検出機構を備えている。制御装置28は、第1及び第2センサ122A,123A等の検出結果に基づいて、押圧部材165及び低摩擦シート170のうち、少なくとも一方がクランパ167によりクランプできていないか否かを判断する。これにより、交換後の押圧部材165や低摩擦シート170の付け忘れが発生した場合に、ユーザへの報知などを実行できる。
【0074】
また、制御装置28は、第1及び第2センサ122A,123A等の検出結果に基づいて、押圧部材165及び低摩擦シート170のうち、少なくとも一方がクランプできていないと判断した場合、造形の開始を停止し押圧の実行を制限する。これにより、押圧部材165が正しくセットされていない状態で押圧が実行されることを抑制できる。特に、三次元積層造形による回路基板159の造形では、長い時間を掛けて造形物を造形する場合があり、最終工程に近い押圧工程で失敗すると、それまでの造形時間が無駄となる。このため、このような押圧工程で使用する部材のセット状態を、造形を開始する前に確認できることは、極めて有効である。
【0075】
また、クランプ確認用ドッグ202及びプレート確認用ドッグ203は、操作部185に取り付けられ、操作部185とともに移動する。第1及び第2センサ122A,123A等は、クランプ確認用ドッグ202及びプレート確認用ドッグ203の位置を検出する。これによれば、操作部185に取り付けたクランプ確認用ドッグ202等を、第1及び第2センサ122A,123A等により検出することで、クランプ状態や部材の取付状態を検出する機構を構成できる。
【0076】
また、第1及び第2センサ122A,123Aは、押圧部材165及び低摩擦シート170をクランプした状態では、共にオンし、アンクランプ状態では、共にオフし、押圧部材165をクランプし低摩擦シート170をクランプできていない状態では、第1センサ122Aがオフし、第2センサ123Aがオンする。これによれば、制御装置28は、第1及び第2センサ122A,123Aのオン・オフを判断することで、アンクランプ状態や低摩擦シート170の付け忘れを検できる。
【0077】
また、支持部材168は、部品取付部材163の挿入部197を挿入可能な被挿入部168Fを備えている。第1センサ122Aは、被挿入部168Fに挿入部197が挿入され且つクランプ状態ではオンし、未挿入且つクランプ状態ではオフする。これにより、部品取付部材163に対し支持部材168が正しい位置や向きで取り付けられているか否かを、第1センサ122Aの検出結果により判断できる。
【0078】
また、クランプ機構164は、支持部材168の端部である取付部168Dと、低摩擦シート170の端部を保持するブラケット173とをクランプする。これによれば、2つの部材の端部をクランプ機構164で保持することで、クランパ167によりクランプすることでクランパ167と重なって押圧に使用できなくなる部分を、左右方向の両端の最小の範囲に限定できる。低摩擦シート170をより有効に活用できる。
【0079】
また、支持部材168及び弾性部材169は、部品取付部材163に対して着脱可能であり、クランプ機構164により低摩擦シート170とともに保持される。これにより、クランプ機構164により、支持部材168、弾性部材169、低摩擦シート170をまとめて部品取付部材163に対して保持できる。
【0080】
(回路基板159の形成)
次に、回路基板159を形成する処理の例を説明する。以下の説明では、制御装置28によって制御される装置を、単に装置名で記載する場合がある。例えば、「ステージ52は第2造形ユニット23の下方に移動する」との記載は、「ステージ52は、制御装置28の制御に基づいてX軸スライド機構30の電磁モータ38やY軸スライド機構32の電磁モータ56が制御されることによって、第2造形ユニット23の下方に移動する」ことを意味している。
【0081】
形成作業が開始されると、まず、ステージ52は第2造形ユニット23の下方に移動する。例えば、ステージ52のパレット61の上には、剥離フィルム211が張り付けられている。造形物である回路基板159は、この剥離フィルム211の上に造形される。剥離フィルム211は、所定の温度以上で粘着性が低下し、パレット61から剥離し易くなるフィルムである。この粘着性が低下する所定温度は、例えば、押圧ユニット26で押圧する際の温度よりも高い温度である。例えば、ユーザは、押圧を含む製造工程の全てが完了すると、パレット61を基板形成装置10の機外に取り出し、剥離フィルム211を加熱することで、パレット61から回路基板159を容易に取り外すことができる。尚、剥離フィルム211を用いずに、パレット61の上に回路基板159を直接造形しても良い。
【0082】
第2造形ユニット23は、図13に示すように、パレット61の剥離フィルム211の上に樹脂積層体252を形成する。第2造形ユニット23は、インクジェットヘッド88からの紫外線硬化樹脂の吐出と、吐出された紫外線硬化樹脂への照射装置92による紫外線の照射とを繰り返し実行することにより樹脂積層体252を形成する。詳しくは、第2造形ユニット23の第2印刷部84において、インクジェットヘッド88が、剥離フィルム211の上面に紫外線硬化樹脂を薄膜状に吐出する。続いて、紫外線硬化樹脂が薄膜状に吐出されると、硬化部86の平坦化装置90は、紫外線硬化樹脂の膜厚が均一となるように、紫外線硬化樹脂を平坦化する。そして、照射装置92が、その薄膜状の紫外線硬化樹脂に紫外線を照射する。これにより、剥離フィルム211の上に薄膜状の樹脂層253が形成される。
【0083】
続いて、インクジェットヘッド88が、その薄膜状の樹脂層253の上に紫外線硬化樹脂を薄膜状に吐出する。そして、平坦化装置90が薄膜状の紫外線硬化樹脂を平坦化し、照射装置92が、その薄膜状に吐出された紫外線硬化樹脂に紫外線を照射することで、薄膜状の樹脂層253の上に薄膜状の樹脂層253を積層する。このように、薄膜状の樹脂層253の上への紫外線硬化樹脂の吐出と、紫外線の照射とが繰り返され、複数の樹脂層253が積層されることで、樹脂積層体252が形成される。
【0084】
次に、樹脂積層体252が形成されると、ステージ52は第1造形ユニット22の下方に移動する。そして、第1造形ユニット22の第1印刷部72において、インクジェットヘッド76が、図14に示すように、樹脂積層体252の上面に金属インク260を、回路パターンに応じて線状に吐出する。続いて、第1造形ユニット22の焼成部74において、赤外線照射装置78が、回路パターンに応じて吐出された金属インク260に赤外線を照射する。これにより、金属インク260が焼成され、樹脂積層体252の上面に配線262が形成される。尚、図14では、3本の配線262が形成されるが、それら3本の配線262を区別する場合に、図14での左側の配線を配線262Aと記載し、中央の配線を配線262Bと記載し、右側の配線を配線262Cと記載する。
【0085】
続いて、樹脂積層体252の上に配線262が形成されると、ステージ52は第2造形ユニット23の下方に移動する。そして、第2造形ユニット23において、インクジェットヘッド88は、3本の配線262の端部が露出するように、紫外線硬化樹脂を薄膜状に吐出する。続いて、紫外線硬化樹脂が薄膜状に吐出されると、硬化部86において、紫外線硬化樹脂の膜厚が均一となるように、紫外線硬化樹脂が平坦化される。そして、照射装置92が、その薄膜状の紫外線硬化樹脂に紫外線を照射する。これにより、図15に示すように、樹脂積層体252の上に樹脂層256が形成される。
【0086】
続いて、インクジェットヘッド88が、その樹脂層256の上の部分にのみ紫外線硬化樹脂を薄膜状に吐出する。つまり、インクジェットヘッド88は、3本の配線262の端部が露出するように、樹脂層256の上に紫外線硬化樹脂を薄膜状に吐出する。そして、平坦化装置90によって薄膜状の紫外線硬化樹脂が平坦化され、照射装置92が、その薄膜状に吐出された紫外線硬化樹脂に紫外線を照射することで、樹脂層256の上に樹脂層256を積層する。このように、樹脂層256の上への紫外線硬化樹脂の吐出と、紫外線の照射とが繰り返され、複数の樹脂層256が積層されることで、樹脂積層体257が形成される。これにより、樹脂積層体252の上に樹脂積層体257が形成され、樹脂積層体252と樹脂積層体257との段差部がキャビティ254として機能する。
【0087】
このように、樹脂積層体252の上に樹脂積層体257が形成されると、ステージ52は第3造形ユニット24の下方に移動する。そして、第3造形ユニット24の第3印刷部100において、ディスペンサ106が、図16に示すように、配線262Bの両端部の上と、その配線262Bの両端部と対向する配線262A及び配線262Cの端部の上に導電性ペースト266を吐出する。
【0088】
このように、導電性ペースト266が配線262の端部に吐出されると、ステージ52は第4造形ユニット25の下方に移動する。そして、第4造形ユニット25の第4印刷部110において、ディスペンサ116が、図17に示すように、互いに対向する2本の配線262A,Bの端部の間において樹脂積層体252の上面に熱硬化性樹脂270を吐出し、互いに対向する2本の配線262B,Cの端部の間において樹脂積層体252の上面に熱硬化性樹脂270を吐出する。
【0089】
そして、熱硬化性樹脂270が吐出されると、ステージ52は装着ユニット27の下方に移動する。装着ユニット27は、テープフィーダ134により電子部品272(図18参照)を供給し、装着ヘッド136の吸着ノズルによって電子部品272を保持する。電子部品272は、部品本体276と、部品本体276の下面に配設された2個の電極278とにより構成されている。装着ヘッド136は、移動装置138によって移動され、吸着ノズルにより保持した電子部品272を、図18に示すように、配線262と電気的に接続されるように装着する。尚、図18では、2個の電子部品272が装着されており、それら2個の電子部品272のサイズは異なっている。このため、小さなサイズの電子部品を電子部品272Aと記載し、大きなサイズの電子部品を電子部品272Bと記載する。そして、電子部品272Aが2本の配線262A,Bと電気的に接続され、電子部品272Bが2本の配線262B,Cと電気的に接続されるように装着される。
【0090】
具体的には、電子部品272Aは、電極278が配線262A,Bの上に吐出された未硬化の導電性ペースト266に接触するように装着される。この際、電子部品272Aの部品本体276は、配線262A,Bの間に吐出された未硬化の熱硬化性樹脂270に接触する。また、電子部品272Bは、電極278が配線262B,Cの上に吐出された未硬化の導電性ペースト266に接触するように装着される。この際、電子部品272Bの部品本体276は、配線262B,C間に吐出された未硬化の熱硬化性樹脂270に接触する。つまり、導電性ペースト266は配線262への電極278の装着予定位置に吐出されており、熱硬化性樹脂270は部品本体276の装着予定位置に吐出されている。また、部品本体276に接触する熱硬化性樹脂270は、その部品本体276と樹脂積層体252との間に封じ込められる。つまり、樹脂積層体252の上面と部品本体276の下面との間に、熱硬化性樹脂270が封入される。
【0091】
このように、電子部品272が装着されると、ステージ52は、押圧ユニット26の下方に移動する。樹脂積層体252を載せたパレット61は、図4に矢印161で示すように、前後方向の前方に向かって搬送され、押圧ユニット26の凹部152Cへ搬入される。図19に示すように、押圧部材165は、樹脂積層体252の上に配置された電子部品272と、上下方向で対向する位置に配置される。この際、2枚の低摩擦シート170は、所定のゆとりを持った状態で配置され、例えば、上下方向において弾性部材169から若干だけ下方となる位置に配置されて、弾性部材169と離間している。
【0092】
制御装置28は、駆動部120を駆動して可動部152を上昇させ、パレット61を押圧部材165に向かって移動させる。図20に示すように、樹脂積層体252に装着された電子部品272は、上方に配置された支持部材168に、弾性部材169及び2枚の低摩擦シート170を介して押し付けられる。電子部品272は、支持部材168によって樹脂積層体252側へ押圧される。尚、樹脂積層体252に2個の電子部品272A,Bが装着されており、それら2個の電子部品272のサイズは異なっている。例えば、2個の電子部品272A,Bの高さ寸法は異なる。しかし、支持部材168の下面に弾性部材169が設けられているため、2個の電子部品272A,Bが押圧される際に弾性部材169が弾性変形することで、高さ寸法の異なる2個の電子部品272A,Bを適切に押し付けることができる。
【0093】
また、電子部品272が押圧されている際に、部品取付部材163の第1ヒータ121Aと、パレット載置部152Bの第2ヒータ121Bにより加熱が行われる。これにより、導電性ペースト266及び熱硬化性樹脂270が加熱されて硬化する。つまり、導電性ペースト266が配線262と電極278との間で圧縮されながら加熱され、熱硬化性樹脂270が樹脂積層体252と部品本体276との間で圧縮されながら加熱されることで、導電性ペースト266及び熱硬化性樹脂270が硬化する。ここでの加熱温度は、導電性ペースト266及び熱硬化性樹脂270が硬化する温度(例えば、80℃)である。尚、加熱温度は、導電性ペースト266及び熱硬化性樹脂270を完全に硬化させるための加熱温度であり、導電性ペースト266と熱硬化性樹脂270との各々の製造元のメーカにより設定されている。また、加熱温度は、ユーザにより実験的に実施された導電性ペースト266と熱硬化性樹脂270との各々の加熱結果に応じて設定されても良い。このように、導電性ペースト266が硬化することで、導電性を発揮する。導電性ペースト266が圧縮された状態で加熱されることで、導電性ペースト266に含まれる金属粒子が密着して導電性が高くなる。これにより、電子部品272が硬化した導電性ペースト266を介して配線262と電気的に接続される。尚、硬化した導電性ペースト266は、バンプとして機能するため、硬化した導電性ペースト266をバンプ268と記載する。また、押圧部材165により押圧されることで、部品本体276と熱硬化性樹脂270とが密着するとともに、電極278と導電性ペースト266とが密着する。これにより、熱硬化性樹脂270の密着力により、電子部品272は部品本体276において樹脂積層体252の上面に固定され、導電性ペースト266の密着力により、電子部品272と配線262との電気的な接続が担保される。
【0094】
押圧ユニット26での押圧が完了すると、ステージ52は第4造形ユニット25の下方に移動する。第4造形ユニット25の第4印刷部110において、ディスペンサ116が、図21に示すように、電子部品272の部品本体276の側面を覆うように電子部品272の周囲に熱硬化性樹脂280を吐出する。そして、基台60に内蔵されているヒータ66により樹脂積層体252が加熱される。これにより、樹脂積層体252を介して熱硬化性樹脂280が加熱されて硬化する。ここで、加熱温度は、例えば、熱硬化性樹脂280が硬化する温度(例えば、80℃)である。これにより、熱硬化性樹脂280が部品本体276の側面を覆った状態で硬化する。つまり、樹脂積層体252に装着された電子部品272において、熱硬化性樹脂270,280が、樹脂積層体252の上面と部品本体276の下面との間に封入されるとともに、部品本体276の側面を覆った状態で硬化する。樹脂積層体252の上面に装着された電子部品272が硬化した樹脂により固定される。このように、電極278が未硬化の導電性ペースト266に接触するように、電子部品272が装着されて、その電子部品272が押圧部材165により押圧された状態で加熱されることで、電子部品272と配線262とがバンプ268により電気的に接続され、回路基板159が製造される。
【0095】
尚、上記した製造工程で使用する材料、工程の内容や順番は一例であり、製造対象の造形物に応じて適宜変更される。例えば、上記製造工程では特に言及していないが、電子部品272と配線262とを電気的に接続するバンプ268として弾性率が低い導電性ペースト266を用いても良い。例えば、導電性ペースト266の硬化時の弾性率は0.2GPa以下であることが好ましい。比較的変形し易いバンプ268により配線262と電子部品272の電極278とを接続することで、回路基板159を製造する際の加熱や冷却による変形により発生する応力をバンプ268により緩和し、配線262と電子部品272の導通を担保できる。
【0096】
また、上記製造工程では、電極278が未硬化の導電性ペースト266に接触するように、電子部品272が装着され、その電子部品272が押圧部材165により押圧された状態で加熱されることで、電子部品272と配線262とがバンプ268により電気的に接続される。このため、押圧時に未硬化の導電性ペースト266が潰れて、バンプ268の厚さが薄くなり、配線262と電極278との導通を適切に担保できなくなる虞がある。そこで、例えば、電子部品272の装着前に、導電性ペースト266を硬化させてバンプ268を先に形成し、硬化させた後に電子部品272を配置して押圧しても良い。これにより、押圧時にバンプ268は潰されすぎることなく、バンプ268の厚さが薄くなり過ぎず、所定の厚さを確保できる。あるいは、電子部品272の装着前に、導電性ペースト266を加熱して硬化させてバンプ268を形成し、更に、そのバンプ268の上に導電性ペーストを再度吐出した後に、電子部品272を装着しても良い。これにより、先に、硬化した下側のバンプ268により厚さを確保しつつ、バンプ268の上に吐出した導電性ペーストにより導通性を確保することができる。2段構造のバンプを採用することで、1段目のバンプが、配線262と電極278との間に生じる応力に追従して変形し、2段目のバンプが、電極278と密着する。これにより、電極278と2段構造のバンプとの導通を適切に担保できる。
【0097】
因みに、上記実施例において、押圧ユニット26は、押圧装置の一例である。制御装置28は、判断装置の一例である。第1センサ122A,122B、第2センサ123A,123Bは、位置検出機構、センサ、第1センサ、第2センサの一例である。下面169Aは、面の一例である。第1溝185B、第2溝185C、係合部材189は、ロック機構の一例である。ばね187Cは、付勢部材の一例である。クランプ確認用ドッグ202は、位置検出機構、被検出部材、第2被検出部の一例である。プレート確認用ドッグ203は、位置検出機構、被検出部材、第1被検出部の一例である。樹脂積層体252は、絶縁層の一例である。配線262は、金属配線の一例である。
【0098】
以上、上記実施例によれば以下の効果を奏する。
本実施例の一態様のクランプ機構164は、押圧部材165及び低摩擦シート170をクランプして、押圧部材165の下面169Aに低摩擦シート170を保持する。移動機構155は、制御装置28の制御に基づいて、樹脂積層体252(パレット61)を上昇させ、低摩擦シート170を間に挟んで押圧部材165により電子部品272を樹脂積層体252に対して押圧する。これによれば、配線262上に電子部品272を配置した樹脂積層体252と押圧部材165との間に低摩擦シート170を挟んだ状態で押圧部材165により電子部品272を押圧する。低摩擦シート170によって押圧部材165と電子部品272を相対的に滑らせることで、押圧する方向(上下方向)とは異なる方向に働く力を低減でき、樹脂積層体252の上に配置された電子部品272をより適切に押圧できる。これにより、例えば、押圧による電子部品272の位置ずれを抑制できる。また、クランプ機構164を操作することで、低摩擦シート170の交換を比較的容易に行うことができる。例えば、低摩擦シート170をボルトで部品取付部材163や支持部材168に固定する場合に比べて、交換の作業負担を軽減できる。
【0099】
尚、本開示の内容は、上記実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。
例えば、上記実施例では、移動機構155により、可動部152(絶縁層)を移動させて押圧を実行したが、これに限らない。例えば、押圧部材165を下降させる移動機構を設けて、回路基板159に対して押圧部材165を上から押し付けても良い。あるいは、部品取付部材163と可動部152の両方を移動させて押圧を実行しても良い。従って、押圧部材165、及び回路基板159の少なくとも一方を移動させ、低摩擦シート170を間に挟んで押圧を実行しても良い。
また、上記実施例における各部材の形状は、同一機能を発揮する別の形態に変更することができる。例えば、上記実施例では、第1部材175の凸部175Dを、支持部材168の凹部168Eに挿入する構成であったが、これに限らない。第1部材175に凹部を設けて支持部材168に凸部を設けても良い。あるいは、凹部に限らず、貫通孔でも良い。同様に、上記実施例では、挿入部197の凸部197Aを支持部材168の被挿入部168Fに挿入する構成であったが、これに限らない。支持部材168に凸部を設け、部品取付部材163に被挿入部を設けても良い。また、支持部材168の被挿入部168Fを切欠き形状ではなく、凹部で構成しても良い。
【0100】
また、本開示の絶縁層として、樹脂積層体252を採用したが、これに限らない。本開示の絶縁層は、樹脂以外、あるいは樹脂を含む他の絶縁性の部材で形成される層でも良い。
また、上記実施例では、部品取付部材163と可動部152の両方にヒータ121を設けたが、どちらか一方にのみヒータ121を設けても良い。また、部品取付部材163や可動部152とは別の位置に、ハロゲンヒータや熱風装置を設置して加熱を実行しても良い。
また、低摩擦シート170をブラケット173に取り付ける方法や、ブラケット173を支持部材168に取り付ける方法として、磁石179,181を用いたがこれに限らない。例えば、粘着テープや結束バンドを用いる方法でも良い。あるいは、例えば、低摩擦シート170に穴を形成してブラケット173に設けた棒を係合させる方法でも良い。
また、低摩擦シート170の枚数は、2枚に限らず、1枚、又は3枚以上でも良い。また、押圧部材165は、ブラケット173を備えず、取付部168Dと低摩擦シート170の端部とをクランパ167によって挟む構成でも良い。
また、本開示の付勢部材として、コイルばねであるばね187Cを採用したが、これに限らない。本開示の付勢部材は、板ばねでも良く、磁石、ゴムなど、操作部185を付勢できる他の部材でも良い。
また、クランプ機構164は、ばね187Cを備えなくとも良い。
また、ばね187Cが付勢する方向は、上方に向かう方向、即ち、クランプさせる方向であったが、これに限らない。ばね187Cは、下方に向かう方向、即ち、アンクランプさせる方向に付勢する構成でも良い。この場合、第1及び第2溝185B,185Cを逆方向に形成、即ち、開口を下端、溝の底部を上端とする構成にしても良い。
また、上記実施例では、回路基板159を三次元積層造形法により造形したが、これに限らない。例えば、スピンコート法、スプレー法、フィルムを積層する方法などを用いて絶縁層を製造しても良い。また、例えば、エッチング、めっき処理を用いて金属配線を製造しても良い。
【0101】
上記実施例では、電子部品272が装着される前に熱硬化性樹脂270が樹脂積層体252の上に吐出され、電子部品272が装着された後に熱硬化性樹脂280が樹脂積層体252の上に吐出されている。しかしながら、電子部品272が装着された後に熱硬化性樹脂270及び熱硬化性樹脂280を樹脂積層体252の上に吐出しても良い。
また、上記実施例では、熱硬化性樹脂270が吐出された後に、未硬化の熱硬化性樹脂270に部品本体276が接触するように電子部品272が装着されている。しかしながら、熱硬化性樹脂270が吐出された後に、熱硬化性樹脂270がヒータ66により半硬化されて、半硬化された熱硬化性樹脂270に部品本体276が接触するように電子部品272が装着されても良い。この際、電子部品272が装着された後に、押圧部材165により電子部品272が圧縮されながら加熱されることで、熱硬化性樹脂270が完全に硬化する。
また、上記実施例では、導電性ペースト若しくは熱硬化性樹脂を硬化させる際に80℃で加熱されているが、80℃以上の温度で導電性ペースト若しくは熱硬化性樹脂を加熱して導電性ペースト若しくは熱硬化性樹脂を硬化させても良い。
【0102】
また、上記実施例では、配線262と電子部品272の電極278とを電気的に接続する導電性流体として導電性ペースト266が採用されているが、導電性を発揮するものであれば、種々の流体を採用することが可能である。
また、上記実施例では、電子部品272を固定するための硬化性樹脂として、熱硬化性樹脂が採用されているが、紫外線硬化樹脂、2液混合型硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などを形成することが可能である。また、上記実施例では、樹脂積層体252を形成する樹脂として紫外線硬化樹脂が採用され、電子部品272を固定する樹脂として熱硬化性樹脂が採用されている。つまり、樹脂積層体252を形成する樹脂と、電子部品272を固定する樹脂とが異なる硬化性樹脂とされているが、樹脂積層体252を形成する樹脂と、電子部品272を固定する樹脂とが同じ硬化性樹脂とされても良い。
また、上記実施例では、導電性ペースト266は、ディスペンサ106により吐出されているが、転写装置等により転写されても良い。また、スクリーン印刷により、導電性ペーストが印刷されても良い。
【0103】
尚、本開示の内容は、請求項に記載の従属関係に限定されない。例えば、請求項4において「請求項2に記載の押圧装置」を「請求項2又は請求項3に記載の押圧装置」に変更した技術思想についても、本明細書は開示している。例えば、請求項6において「請求項4に記載の押圧装置」を「請求項4又は請求項5に記載の押圧装置」に変更した技術思想についても、本明細書は開示している。例えば、請求項8において「請求項6に記載の押圧装置」を「請求項6又は請求項7に記載の押圧装置」に変更した技術思想についても、本明細書は開示している。例えば、請求項9において「請求項1に記載の押圧装置」を「請求項1から請求項8の何れか1項に記載の押圧装置」に変更した技術思想についても、本明細書は開示している。例えば、請求項11において「請求項9に記載の押圧装置」を「請求項9又は請求項10に記載の押圧装置」に変更した技術思想についても、本明細書は開示している。例えば、請求項12において「請求項1に記載の押圧装置」を「請求項1から請求項11の何れか1項に記載の押圧装置」に変更した技術思想についても、本明細書は開示している。
【符号の説明】
【0104】
26 押圧ユニット(押圧装置)、28 制御装置(判断装置)、122A,122B 第1センサ(センサ、位置検出機構)、123A,123B 第2センサ(センサ、位置検出機構)、155 移動機構、163 部品取付部材、164 クランプ機構、165 押圧部材、167 クランパ、168 支持部材、168F 被挿入部、169 弾性部材、169A 下面(面)、170 低摩擦シート、173 ブラケット、185 操作部、185B 第1溝(ロック機構)、185C 第2溝(ロック機構)、187C ばね(付勢部材)、189 係合部材(ロック機構)、197 挿入部、202 クランプ確認用ドッグ(位置検出機構、被検出部材、第2被検出部)、203 プレート確認用ドッグ(位置検出機構、被検出部材、第1被検出部)、252 樹脂積層体(絶縁層)、262 配線(金属配線)、272 電子部品。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
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