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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173007
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】膨張弁
(51)【国際特許分類】
   F25B 41/335 20210101AFI20241205BHJP
   F16K 1/42 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F25B41/335 C
F16K1/42 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091111
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨塚 真弘
(72)【発明者】
【氏名】伊坂 充晶
【テーマコード(参考)】
3H052
【Fターム(参考)】
3H052AA01
3H052BA26
3H052CB03
3H052CB35
3H052DA02
3H052EA11
(57)【要約】
【課題】工具を弁座に押し付けることで弁座に凹部を形成することなく、閉弁した状態でも、少量の流体が弁孔を流れる構成を得ることである。
【解決手段】膨張弁は、入口部と、入口部を介して流体が流入する弁室と、弁室から流出する流体が流れる弁孔とを有する弁本体と、弁室に配置され、弁孔に対して近接離隔することで弁孔を流れる流体の流量を調整する弁体と、弁本体または弁体と一体化されて弁体が弁孔に近接すると弁体及び弁室の内面間に挟持され、この挟持された状態において、弁体及び弁室の内面間に、弁室の入口部側と弁孔とを連通する流路の一部を構成する隙間を形成する間隙形成部材とを備える
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口部と、前記入口部を介して流体が流入する弁室と、前記弁室から流出する前記流体が流れる弁孔とを有する弁本体と、
前記弁室に配置され、前記弁孔に対して近接離隔することで前記弁孔を流れる前記流体の流量を調整する弁体と、
前記弁本体または前記弁体と一体化されて前記弁体が前記弁孔に近接すると前記弁体及び前記弁室の内面間に挟持され、この挟持された状態において、前記弁体及び前記弁室の内面間に、前記弁室の前記入口部側と前記弁孔とを連通する流路の一部を構成する隙間を形成する間隙形成部材と、
を備える膨張弁。
【請求項2】
前記間隙形成部材は、前記弁室の内面及び前記弁体の間に挟持される被挟持部を、前記弁孔の周方向に隙間をあけて複数有する、
請求項1に記載の膨張弁。
【請求項3】
前記弁孔は、前記弁体が前記弁孔に対して近接離隔する接離方向に延びる円柱状とされ、
前記間隙形成部材は、前記弁孔の周方向に間隔をあけて配置されると共に前記接離方向から見て前記弁孔の径方向に延びて前記被挟持部を含む複数の延設部を有する、
請求項2に記載の膨張弁。
【請求項4】
前記間隙形成部材は、前記弁孔に装着される装着部を有する、
請求項1に記載の膨張弁。
【請求項5】
前記装着部は、前記弁孔の出口から前記流体の流れ方向の下流側に突出した突出部分を有し、前記突出部分は、前記弁孔の軸線回りに一周連続する筒状、または、前記軸線の周方向で両端を有し当該両端が互いに離隔する形状に形成される、
請求項4に記載の膨張弁。
【請求項6】
前記弁体を前記弁室の内面に向けて付勢する付勢部材と、
前記弁孔に挿入されると共に前記弁体を間において前記付勢部材の反対側に配置された棒状で、前記付勢部材の付勢力に抗して前記弁体を移動することで前記弁体を前記弁孔に対して離隔させる弁棒と、を備え、
前記間隙形成部材は、前記弁体と前記弁棒との間に挟まれる基部を有する、
請求項1乃至請求項3のうちのいずれか1項に記載の膨張弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、膨張弁に関する。
【背景技術】
【0002】
冷媒循環システムには、膨張弁が用いられている。膨張弁は、高圧の冷媒が流入する弁室及び弁座を有する弁本体と、弁室に配置され、弁座に対して近接離隔することで冷媒の流量を調整する弁体と、等を備えている(例えば特許文献1参照)。
また、閉弁した状態においても少量の冷媒を冷媒循環システムに流すことが可能な膨張弁も知られている。この種の膨張弁として、凸部が形成された工具を弁座に押し付けることで弁座に凹部が形成された膨張弁がある。弁体が弁座に着座した状態でも、凹部を通して少量の冷媒が弁孔に流れることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-71号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、凸部が形成された工具を弁座に押し付けることで弁座に凹部が形成される膨張弁では、工具が押し付けられることで弁本体に荷重が加わる。荷重が加わることで弁本体において弁座とは異なる部分で変形が生じることがある。この変形を、膨張弁に対して不具合とならない程度に抑える為に、凹部の深さや幅等に制限が生じていた。
【0005】
本開示の課題は、工具を弁座に押し付けることで弁座に凹部を形成することなく、弁体が弁孔を閉弁した状態でも、少量の流体が弁孔を流れる構成を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に記載の膨張弁は、入口部と、前記入口部を介して流体が流入する弁室と、前記弁室から流出する前記流体が流れる弁孔とを有する弁本体と、前記弁室に配置され、前記弁孔に対して近接離隔することで前記弁孔を流れる前記流体の流量を調整する弁体と、前記弁本体または前記弁体と一体化されて前記弁体が前記弁孔に近接すると前記弁体及び前記弁室の内面間に挟持され、この挟持された状態において、前記弁体及び前記弁室の内面間に、前記弁室の前記入口部側と前記弁孔とを連通する流路の一部を構成する隙間を形成する間隙形成部材と、を備えることを特徴とする。
【0007】
以上の構成においては、高圧の流体は、弁本体の入口部から弁室に流入し、弁室に流入した流体は弁室から流出して弁孔を流れる。そして、弁体が、弁孔に対して近接離隔することで弁孔を流れる流体の流量を調整する。
【0008】
ここで、間隙形成部材が、弁体及び弁室の内面間に挟持され、この挟持された状態において、弁体及び弁室の内面間に、弁室の入口部側と弁孔とを連通する流路の一部を構成する隙間を形成する。これにより、弁体が弁孔を閉弁した状態で、少量の流体がこの隙間を通過することで、少量の流体が弁孔を流れる。
【0009】
このように、工具を弁座に押し付けることで弁座に凹部を形成することなく、弁体が弁孔を閉弁した状態でも、少量の流体が弁孔を流れる構成を得ることができる。
【0010】
第2態様に記載の膨張弁は、第1態様に記載の膨張弁において、前記間隙形成部材は、前記弁室の内面及び前記弁体の間に挟持される被挟持部を、前記弁孔の周方向に隙間をあけて複数有することを特徴とする。
【0011】
以上の構成においては、間隙形成部材は、弁室の内面及び弁体の間に挟持される被挟持部を、弁孔の周方向に隙間をあけて複数有する。このように、弁体が弁孔を閉弁した状態でも、弁孔の周方向に間隔をあけて複数形成された隙間を流体が通過する。
【0012】
第3態様に記載の膨張弁は、第2態様に記載の膨張弁において、前記弁孔は、前記弁体が前記弁孔に対して近接離隔する接離方向に延びる円柱状とされ、前記間隙形成部材は、前記弁孔の周方向に間隔をあけて配置されると共に前記接離方向から見て前記弁孔の径方向に延びて前記被挟持部を含む複数の延設部を有することを特徴とする。
【0013】
以上の構成においては、間隙形成部材は、弁孔の周方向に間隔をあけて配置されると共に接離方向から見て弁孔の径方向に延びて被挟持部を含む複数の延設部を有する。これにより、隙間は、隣接する一対の延設部と弁室の内面とによって規定される部分が、接離方向から見ると弁孔の径方向に延びている。このため、隙間が、上方から見て弁孔の周りを螺旋状に延びる場合と比して、隙間に生じる流路抵抗を小さくすることができる。
【0014】
第4態様に記載の膨張弁は、第1態様に記載の膨張弁において、前記間隙形成部材は、前記弁孔に装着される装着部を有することを特徴とする。
【0015】
以上の構成においては、間隙形成部材の装着部が弁孔に装着されることで、間隙形成部材は、弁本体に取り付けられている。このように、専用の取付部材を設けることなく、隙間形成部材を弁本体に取り付けることができる。
【0016】
第5態様に記載の膨張弁は、第4態様に記載の膨張弁において、前記装着部は、前記弁孔の出口から前記流体の流れ方向の下流側に突出した突出部分を有し、前記突出部分は、前記弁孔の軸線回りに一周連続する筒状、または、前記軸線の周方向で両端を有し当該両端が互いに離隔する形状に形成されることを特徴とする。
【0017】
以上の構成においては、装着部の突出部分が、弁孔の出口から突出している。これにより、弁孔を流れる流体は、突出部分に沿って流れて放出される。このため、装着部の全体が弁孔に収まっている場合と比して、弁孔を流れる冷媒に対する整流作用を向上させることができる。
【0018】
第6態様に記載の膨張弁は、第1~第3態様の何れか1態様に記載の膨張弁において、前記弁体を前記弁室の内面に向けて付勢する付勢部材と、前記弁孔に挿入されると共に前記弁体を間において前記付勢部材の反対側に配置された棒状で、前記付勢部材の付勢力に抗して前記弁体を移動することで前記弁体を前記弁孔に対して離隔させる弁棒と、を備え、前記間隙形成部材は、前記弁体と前記弁棒との間に挟まれる基部を有することを特徴とする。
【0019】
以上の構成においては、隙間形成部材の基部が、弁体と弁棒とに挟まれている。このため、専用の取付部材を設けることなく、隙間形成部材を弁体に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、工具を弁座に押し付けることで弁座に凹部を形成することなく、弁体が弁孔を閉弁した状態でも、少量の流体が弁孔を流れる構成を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示の第1実施形態に係る膨張弁の概略構成を示した断面図である。
図2】本開示の第1実施形態に係る膨張弁を示した斜視図である。
図3】本開示の第1実施形態に係る膨張弁に用いたれたスペーサ及び弁体を示した分解斜視図である。
図4】(A)(B)本開示の第1実施形態に係る膨張弁において、弁体が弁孔を閉弁した状態、及び弁体が弁孔を開放した状態を示した断面図である。
図5】(A)(B)本開示の第1実施形態に係る膨張弁であって、弁体が弁孔を閉弁した状態において、冷媒が通過可能な部分と、冷媒が通過不可能な部分を示した拡大断面図である。
図6】(A)(B)本開示の第1実施形態に対する比較形態に係る膨張弁において、面部等を示した斜視図である。
図7】(A)(B)本開示の第1実施形態に対する比較形態に係る膨張弁において、面部等に凹部を形成させる工程を示した工程図である。
図8】本開示の第2実施形態に係る膨張弁に用いたれたスペーサ及び弁体を示した分解斜視図である。
図9】(A)(B)本開示の第2実施形態に係る膨張弁において、弁体が弁孔を閉弁した状態、及び弁体が弁孔を開放した状態を示した断面図である。
図10】(A)(B)本開示の第2実施形態に係る膨張弁であって、弁体が弁孔を閉弁した状態において、冷媒が通過可能な部分と、冷媒が通過不可能な部分を示した拡大断面図である。
図11】本開示の第3実施形態に係る膨張弁に用いたれたスペーサ及び弁体を示した分解斜視図である。
図12】(A)(B)本開示の第3実施形態に係る膨張弁において、弁体が弁孔を閉弁した状態、及び弁体が弁孔を開放した状態を示した断面図である。
図13】(A)(B)本開示の第3実施形態に係る膨張弁であって、弁体が弁孔を閉弁した状態において、冷媒が通過可能な部分と、冷媒が通過不可能な部分を示した拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1実施形態>
本開示の第1実施形態に係る膨張弁の一例について図1図7に従って説明する。なお、図中に示す矢印Hは装置上下方向を示し、矢印Wは装置幅方向を示し、矢印Dは装置奥行き方向を示す。
また、本第1実施形態では、装置上下方向とは、図1に示すと共に後述する弁本体12とパワーエレメント70とが並ぶ方向であって、パワーエレメント70が配置される側を上方としている。装置幅方向とは、装置上下方向に対して直交する方向で、かつ、戻り流路30に沿う方向としている。装置奥行き方向とは、装置上下方向及び装置幅方向の双方と直交する方向である。
【0023】
本実施形態に係る膨張弁10は、図1に示されるように、例えば、冷媒循環システム200に用いられており、コンプレッサ201と、コンデンサ202と、エバポレータ204とに接続されている。
【0024】
(膨張弁10の構成)
膨張弁10は、図1に示されるように、弁本体12と、パワーエレメント70と、弁体40と、スペーサ50と、弁棒60と、支持部材100と、コイルバネ44と、調整ねじ120とを備えている。
【0025】
〔弁本体12〕
弁本体12は、例えば金属製であって、さらにその一例としてアルミ合金製であり、図1に示す装置幅方向を押出方向として、アルミ合金を押出成形し、押し出した部材に機械加工を施すことによって形成されている(図2参照)。なお、押出成形は一例であって、この成形方法に限定されず、他の成形方法によって弁本体12を成形してもよい。
【0026】
この弁本体12は、図1に示されるように、弁本体12の上端部分に形成されたパワーエレメント取付部14と、弁本体12の下端部分に形成された雌ねじ12aとを有している。
【0027】
さらに、弁本体12は、弁本体12の下方部分に形成されると共に装置幅方向の一方側(図中右側)が開口して高圧の液体冷媒が流入する入口ポート20と、入口ポート20に対して装置幅方向の他方側で、かつ、弁本体12の装置幅方向の中央部分に形成された弁室24とを有している。また、弁本体12は、弁室24から装置上下方向に延びる断面円状の弁孔26と、弁孔26の上方に形成されると共に装置幅方向の他方側(図中左側)が開口して入口ポート20より流入した液体冷媒が弁孔26を流れて断熱膨張して気体冷媒となって流出する出口ポート28とを有している。冷媒は流体の一例である。
【0028】
さらに、弁本体12は、出口ポート28に対して上方に形成されると共に装置幅方向の両側が開口した気体冷媒の戻り流路30と、出口ポート28から戻り流路30まで装置上下方向に延びる断面円状の貫通孔34とを有している。この貫通孔34は、弁本体12の装置幅方向の中央部分に形成されており、貫通孔34の上方部分は、大径化された大径部34aとされている。
【0029】
また、弁本体12は、入口ポート20の上方で、かつ、戻り流路30の下方に配置され、図示せぬ蒸発器や他の部品等に膨張弁10を取り付けるための取付穴80を有している。
【0030】
-パワーエレメント取付部14-
パワーエレメント取付部14は、図1に示されるように、弁本体12の上端部分に形成さている。具体的には、パワーエレメント取付部14は、上方に向けて円状に開口し、その内周面に雌ねじ14aを有し、底面が形成された円穴である。この底部中央には戻り流路30に連通する円状の連通口32が形成されている。そして、連通口32は、弁本体12の装置幅方向の中央部分に形成されており、連通口32の中心軸は、パワーエレメント取付部14の中心軸と重なっている。
【0031】
-雌ねじ12a、弁室24-
雌ねじ12aは、図1に示されるように、弁本体12の下面に開口するように形成された円状の開口部の内周面に形成されている。そして、雄ねじ12aの上方に弁室24が形成されている。さらに、雄ねじ12aに調整ねじ120がねじ込まれることで、弁本体12の下面の開口が閉塞されるようになっている。
【0032】
また、弁室24は、上下方向に延びる断面円状とされており、弁室24の上下方向に延びる中心軸は、連通口32の上下方向に延びる中心軸に重なっている。
【0033】
-入口ポート20、出口ポート28、弁孔26-
入口ポート20は、図1に示されるように、装置幅方向の一方側に開口しており、入口ポート20の装置幅方向の他方側の部分には、弁室24に連通するための小径化された入口部20aが形成されている。
【0034】
出口ポート28は、入口ポート20の上方に設けられ、装置幅方向の他方側に開口しており、出口ポート28の装置幅方向の一方側の部分には、小径化された小径部28aが形成されている。この小径部28aの下方に弁室24が形成されており、小径部28aと弁室24は、弁孔26によって連通している。
【0035】
弁孔26は、装置上下方向に延びる断面円状とされており、弁孔26の上下方向に延びる中心軸は、弁室24の上下方向に延びる中心軸と重なっている。さらに、弁室24において弁孔26側の天面には、錐形状の面部24aが形成されている。面部24aは、内面の一例である。
【0036】
-戻り流路30、貫通孔34-
戻り流路30は、図1に示されるように、出口ポート28の上方に形成されており、装置幅方向の両側が開口している。そして、戻り流路30は、上下方向に延びる貫通孔34を介して出口ポート28の小径部28aと連通している。
【0037】
貫通孔34は、上下方向に延びる断面円状とされており、貫通孔34の上下方向に延びる中心軸は、弁室24の上下方向に延びる中心軸と重なっている。また、貫通孔34の上方部分は、大径化された大径部34aとされている。
【0038】
〔パワーエレメント70〕
パワーエレメント70は、図1に示されるように、例えば金属製であって、さらにその一例としてステンレス鋼で形成された上蓋部材72を備えている。さらに、パワーエレメント70は、中央部が下方に向けて開口した受け部材74と、上蓋部材72と受け部材74との間に挟み込まれるダイアフラム76とを備えている。さらに、パワーエレメント70は、ダイアフラム76の下面に上面が接触するように配置されたストッパ部材90を備えている。
【0039】
また、上蓋部材72とダイアフラム76との間には、圧力作動室78が形成され、この圧力作動室78には、上蓋部材72に形成された孔を介して作動ガスが充填されている。そして、圧力作動室78を密封するための封止栓66が、上蓋部材72の孔に取り付けられている。
【0040】
また、受け部材74の下方部分は上下方向に延びる円筒状とされており、円筒状とされた外周面には雄ねじ74aが形成されている。この雄ねじ74aが、弁本体12のパワーエレメント取付部14に形成された雌ねじ14aにねじ込まれることで、パワーエレメント70が弁本体12に取付けられている。
【0041】
〔弁体40、スペーサ50、弁棒60〕
弁体40は、図1に示されるように、球状とされ、弁室24に配置されており、弁孔26に対して装置上下方向で対向している。
【0042】
スペーサ50は、例えば金属製であって、さらにその一例としてステンレス鋼製とされており、図4(A)に示されるように、弁体40と弁室24の面部24aとの間に配置されている。スペーサ50は、間隙形成部材の一例である。なお、スペーサ50については詳細を後述する。
【0043】
また、弁棒60は、図1に示されるように、装置上下方向に延びた円柱形の棒状で、弁本体12の弁孔26、貫通孔34、及び連通口32に挿入されている。そして、弁棒60の上端部は、ストッパ部材90の下面に形成された凹状の受け部90aに挿入されており、弁棒60の下端部は、弁体40の上面に接触している。さらに、貫通孔34の大径部34aには、円環状の密封部材36が、弁棒60と大径部34aの周面とに接触して配置されている。
【0044】
〔支持部材100〕
支持部材100は、図1に示されるように、弁室24に配置され、弁体40を下方から支持している。具体的には、支持部材100は、上下方向に延びる円柱状の本体部100aと、本体部100aの上方部分から径方向に突出するフランジ部100bと、本体部100aの上面に形成された凹部100cとを有している。そして、凹部100cに弁体40が載せされている。
【0045】
〔調整ねじ120〕
調整ねじ120は、図1に示されるように、弁本体12の下端部に配置されており、本体部120aと、六角穴120bと、挿入部120cと、先端部120dと、凹部120eとを備えている。
【0046】
本体部120a、挿入部120c、及び先端部120dの外形は、上方から見て円状とされている。そして、挿入部120cは本体部120aの上部に本体部120aよりも小径化されて設けられており、先端部120dは挿入部120cの上部に挿入部120cよりも小径化されて設けられている。また、本体部120aの外周には、弁本体12に形成された雌ねじ12aにねじ込まれる雄ねじ122が形成されている。
【0047】
凹部120eは、上方が開口した断面円状とされている。六角穴120bは、調整ねじ120の下面に形成されており、六角レンチを六角穴120bに挿入して六角レンチを操作して調整ねじ120を回すことで雄ねじ122が弁本体12の雌ねじ12aにねじ込まれるようになっている。
【0048】
また、先端部120dの外周面と弁室24の内周面との間には、Oリング118が配置されている。
【0049】
〔コイルばね44〕
コイルばね44は、図1に示されるように、弁体40を間において弁棒60の反対側で、かつ、支持部材100に形成されたフランジ部100bの下面と調整ねじ120に形成された凹部120eの内部空間の底面との間に、装置上下方向に延びるように配置されている。コイルばね44は、圧縮状態とされている。コイルバネ44の弾性力により、弁体40は、支持部材100を介して弁孔26に向けて付勢されている。コイルばね44は、付勢部材の一例である。
【0050】
(膨張弁10の作用)
次に、膨張弁10の作用について説明する。
コンプレッサ201で冷媒を加圧すると、この冷媒は、コンデンサ202で液化され、膨張弁10に送り出される。コンデンサ202から送り出された液体冷媒は、膨張弁10の入口ポート20の入口部20aを通って弁室24に流れ込む。そして、開弁状態では、弁室24に流れ込んだ液体冷媒は、弁孔26を流れ、断熱膨張して出口ポート28に流れ込む。膨張されることで液体冷媒は、気体冷媒となり、エバポレータ204に送り出される。なお、本実施形態における開弁状態とは、弁体40がスペーサ50から離れた状態である。
【0051】
エバポレータ204に送り出された気体冷媒は、エバポレータ204で、周囲を流れる空気と熱交換される。エバポレータ204で熱交換された気体冷媒は、膨張弁10の戻り流路30を流れてコンプレッサ201に戻される。
【0052】
ここで、戻り流路30を流れる気体冷媒の熱が、弁棒60、ストッパ部材90、及びダイアフラム76を介して圧力作動室78に充填された作動ガスに伝達される。そして、作動ガスの体積は、伝達された熱量によって変化しようすることで、作動ガスのガス圧が、ダイアフラム76の上面に作用する。
【0053】
ダイアフラム76は、その上面に作用するガス圧力とダイアフラム76の下面に作用する力との差に応じて上下方向に移動する。
【0054】
ダイアフラム76の上下移動は、ストッパ部材90及び弁棒60を介して弁体40に伝達される。弁体40が上下方向に移動することで、弁体40が、弁孔26に対して近接離隔する。このようにして、膨張弁10からエバポレータ204に送り出される冷媒の流量が調整される。
【0055】
(要部構成)
次に、本実施形態の要部であるスペーサ50について、比較形態の膨張弁510と比較しつつ説明する。なお、比較形態の膨張弁510については、本実施形態の膨張弁10と異なる部分を主に説明する。
【0056】
〔比較形態の膨張弁510〕
膨張弁510には、スペーサ50は設けられておらず、図6(A)に示されるように、膨張弁510の面部524aには、断面V字状のVノッチである凹部526が、弁孔26から放射状に広がるように複数形成されている。なお、面部524aは、弁座を含む。凹部526の一部は、弁座に形成されている。
【0057】
この複数の凹部526については、図7(A)(B)に示されるように、V字状の凸部530aが複数形成されたノッチ形成治具530を、錐形状の面部524aに押し込むことで形成される。そして、ノッチ形成治具530の押込み量によって、凹部526の深さが変えられる。ノッチ形成治具530は、押圧治具の一例である。
【0058】
ここで、弁孔26の入口にノッチ形成治具530を押し込むことで、図6(B)に示されるように、出口ポート28の小径部28a(図1参照)の周面に凸状の変形部550が生じてしまう。
【0059】
以上の構成において、膨張弁510では、弁体40が弁孔26を閉弁した状態であっても、少量の冷媒が凹部526を通過することで、少量の冷媒が冷媒循環システムの流路を循環する。例えば、潤滑剤を冷媒に含ませることで、弁体40が弁孔26を閉弁した状態であっても、潤滑剤が流路を循環する。これにより、各装置に潤滑剤が供給される。
【0060】
〔本実施形態の面部24a、スペーサ50〕
本実施形態の弁室24の面部24aは、錐形状とされており、凹部は形成されていない。つまり、弁本体12には、凹部を形成させることに起因して生じる変形が生じていない。
【0061】
スペーサ50は、本実施形態では、例えば金属製であって、さらにその一例としてステンレス鋼製であり、一例として、厚さ0.05〔mm〕とされている。なお、スペーサ50の厚さは、一例であって他の厚さであってもよい。
【0062】
図3には、弁体40とスペーサ50との分解斜視図が示されている。スペーサ50は、図3に示されるように、円環状の円環部52と、円環部52の縁部から上方へ立ち上がって延びている延設部54とを有している。円環部52は、錐形状とされた面部24aの錐面に沿うように形成されている。
【0063】
延設部54は、弁孔26(図1参照)の周方向に同様の間隔をあけて3個設けられている。そして、延設部54は、上下方向から見て、弁孔26の径方向に延びている。ここで、間隔とは、ピッチであって、弁孔26の周方向における延設部54の中心から隣なりの延設部54の中心までの弁孔26の周方向における距離である。また、同様とは、一の間隔が他の間隔の±10〔%〕以内のことである。なお、延設部54については、3個に限定されず、3個以外の他の個数であってもよい。
【0064】
そして、延設部54は、錐形状とされた面部24aの錐面に沿った基部54aと、弁孔26の内周面26a(図4(A)参照)に沿った断面円弧状の先端部54bとから構成されている。そして、スペーサ50が弾性変形することで生じる付勢力によって、延設部54の先端部54bが弁孔26の内周面26aに押し付けられて装着される。このようにして、スペーサ50は、膨張弁10に取り付けられている。先端部54bは、装着部の一例である。
【0065】
以上の構成において、図4(A)(B)に示されるように、弁体40が上方に移動することでスペーサ50に当接し、スペーサ50の延設部54が弁室24の面部24a及び弁体40との間に挟持され(図4(A)参照)、弁体40が下方に移動することで、弁体40がスペーサ50から離隔する(図4(B)参照)。装置上下方向は、接離方向の一例である。ここで、本実施形態では、延設部54において、面部24a及び弁体40の間に挟持される部位を被挟持部と称する。
【0066】
具体的には、弁体40が弁孔26を閉弁した状態では、スペーサ50の延設部54の基部54aが、図5(B)に示されるように、弁体40と弁室24の面部24aとの間に挟まれる。換言すれば、弁体40と弁室24の面部24aとは、非接触状態となっている。これにより、隣り合う延設部54の間では、図5(A)に示されるように、閉弁状態において、弁体40と面部24aとの間に冷媒が通過可能な隙間56が形成される。換言すれば、面部24a側へ移動した弁体40が移動不能となった閉弁状態で、スペーサ50の延設部54の基部54aが、弁体40と弁室24の面部24aとの間に挟まれることで弁体40と面部24aとの間に隙間56が形成される。隙間56は、弁室24内と弁孔26内とに連通している。
【0067】
これにより、弁体40が弁孔26を閉弁した状態、すなわち、スペーサ50が弁体40及び弁室24の面部24aの間に挟持された状態であっても、少量の冷媒が隙間56を流れることで、少量の冷媒が冷媒循環システムの流路を循環する。例えば、冷媒に潤滑剤が含まれる場合には、弁体40が弁孔26を閉弁した状態であっても、潤滑剤が流路を循環する。これにより、各装置に潤滑剤が供給される。
【0068】
ここで、弁体40が弁孔26を閉弁した状態とは、弁孔26側へ移動した弁体40がスペーサ50に当接して移動不能となった状態である。
【0069】
(まとめ)
以上説明したように、膨張弁10においては、閉弁時に、スペーサ50の延設部54の基部54aが弁体40と弁室24の面部24aとのに挟まれることで、弁体40と弁室24の面部24aとの間に隙間56が形成される。これにより、膨張弁10では、膨張弁510のようにノッチ形成治具530を弁孔26の入口に押し付けることで面部524aに凹部526を形成することなく、弁体40が弁孔26を閉弁した状態でも、少量の冷媒が弁孔26を通過する構成を得ることができる。
【0070】
また、膨張弁10においては、膨張弁510のようにノッチ形成治具530を弁孔26の入口に押し付けることがないため、ノッチ形成治具530を弁孔26の入口に押し付けることに起因して生じる弁本体12の変形を抑制することができる。
【0071】
また、膨張弁10においては、スペーサ50の延設部54は、弁孔26の周方向に間隔をあけて配置され、上方から見ると弁孔26の径方向に延びている。そして、隙間56は、隣接する一対の延設部54と弁室24の面部24aとによって規定される溝の一部である。この溝は上方から見ると弁孔26の径方向に延びている。このため、この溝が、上方から見て弁孔の周りを螺旋状に延びる場合と比して、隙間56に生じる流路抵抗を小さくすることができる。
【0072】
また、膨張弁10においては、円弧状の先端部54bが弁孔26の内周面に装着されることで、スペーサ50が弁本体12に取り付けられている。これにより、専用の取付部材を設けることなく、スペーサ50を弁本体12に取り付けることができる。
【0073】
<第2実施形態>
本開示の第2実施形態に係る膨張弁の一例について図8図10に従って説明する。なお、第2実施形態については、第1実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0074】
(構成)
図8には、第2実施形態の膨張弁210における弁体40とスペーサ250との分解斜視図が示されている。スペーサ250は、本実施形態では、例えば金属製であって、さらにその一例としてステンレス鋼製であり、一例として、厚さ0.05〔mm〕とされている。なお、スペーサ250の厚さは、一例であって他の厚さであってもよい。スペーサ250は、隙間形成部材の一例である。
【0075】
スペーサ250は、図8に示されるように、円筒状の円筒部252と、円筒部252の下縁から下方へ延びている延設部254とを有している。円筒部252は、断面円状とされ、図9(A)(B)に示されるように、弁孔26に嵌め込まれており、円筒部252の上方部分は、弁孔26の出口から上方へ突出している突出部分252aを有している。具体的には、円筒部252が、弁孔26に嵌め込まれることで弁孔26の内周面26aに装着される。これによって、スペーサ250は、弁本体12に取り付けられている。円筒部252は、装着部の一例である。なお、突出部分252aは、円筒状に限定されることなく、弁孔26の周方向において一部が離間する形状等であってもよい。
【0076】
延設部254は、図8に示されるように、弁孔26の周方向に同様の間隔をあけて3個設けられている。そして、延設部254は、上下方向から見て、弁孔26の径方向に延びており、錐形状とされた面部24aの錐面に沿うように形成されている。なお、延設部254については、3個に限定されず、3個以外の他の個数であってもよい。
【0077】
以上の構成において、図9(A)(B)に示されるように、弁体40が上方に移動することでスペーサ250に当接し、スペーサ250が弁室24の面部24a及び弁体40との間に挟持され(図9(A)参照)、弁体40が下方に移動することで、弁体40がスペーサ250から離隔する(図9(B)参照)。
【0078】
具体的には、弁体40が弁孔26を閉弁した状態では、スペーサ250の延設部254が、図10(B)に示されるように、弁体40と弁室24の面部24aとの間に挟まれる。換言すれば、弁体40と弁室24の面部24aとは、非接触状態となっている。これにより、隣り合う延設部254の間では、図10(A)に示されるように、閉弁状態において、弁体40と面部24aとの間に冷媒が通過可能な隙間256が形成される。換言すれば、面部24a側へ移動した弁体40が移動不能となった閉弁状態で、スペーサ250の延設部254が、弁体40と弁室24の面部24aとの間に挟まれることで弁体40と面部24aとの間に隙間256が形成される。隙間256は、弁室24内と弁孔26内とに連通している。例えば、冷媒に潤滑剤が含まれる場合には、弁体40が弁孔26を閉弁した状態であっても、潤滑剤が流路を循環する。これにより、各装置に潤滑剤が供給される。
【0079】
(まとめ)
以上説明したように、膨張弁210においては、スペーサ250の円筒部252の上方部分は、弁孔26の出口から上方(冷媒の流れ方向の下流側)へ突出する突出部分252aを有している。これにより、弁孔26を流れる冷媒は、突出部分252aに沿って流れて放出される。このため、円筒部が弁孔に収まっている場合と比して、弁孔26を通過する冷媒に対する整流作用を向上させることができる。
【0080】
<第3実施形態>
本開示の第3実施形態に係る膨張弁の一例について図11図13に従って説明する。なお、第3実施形態については、第1実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0081】
(構成)
図11には、第3実施形態の膨張弁310における弁体40とスペーサ350との分解斜視図が示されている。スペーサ350は、本実施形態では、例えば金属製であって、さらにその一例としてステンレス鋼製であり、一例として、厚さ0.05〔mm〕とされている。なお、スペーサ350の厚さは、一例であって他の厚さであってもよい。スペーサ350は、隙間形成部材の一例である。
【0082】
スペーサ350は、図11に示されるように、上方から見て円状の円部352と、上方から見て円部352の周縁から弁孔26の径方向に延びている延設部354とを有している。
【0083】
円部352及び延設部354は、弁体40の球面に沿うように形成されている。また、上方から見て、円部352は、例えば弁棒60(図1参照)の外周面よりもわずかに小径となっている。そして、上方から見て、円部352の縁は、弁棒60の外周面より内方に配置されている。なお、他の例では、円部352及び弁棒60は同径に形成され、上方から見て、円部352の縁は弁棒60の外周面と重なっていてもよい。
そして、円部352は、図12(A)(B)に示されるように、弁体40と弁棒60との間に挟まれている。円部352は、基部の一例である。
【0084】
延設部354は、図11に示されるように、弁孔26の周方向に同様の間隔をあけて3個設けられている。そして、延設部354は、円部352から離隔するに従って幅寸法が広がる扇状とされている。さらに、延設部354が、弁体40の上下方向中心より下方まで延びる球状とされている。なお、延設部354については、3個に限定されず、3個以外の他の個数であってもよい。
【0085】
以上の構成において、図12(A)(B)に示されるように、弁体40が上方向に移動することで、弁体40が、スペーサ350を介して、弁室24の面部24aに当接する。本実施形態では、弁室24の面部24aにおいて、スペーサ350を介して弁体40が当接する部分を弁座24bとする。本実施形態では、弁座24bは、面部24aに含まれる。すなわち、弁体40は、スペーサ350を介して弁座24bに着座(図12(A)参照)する。図12(B)は、閉弁した状態から弁体40が移動した状態を示している。
なお、本実施形態では、弁体40が弁孔26側に移動してスペーサ350を介して弁座24bに着座した状態を閉弁した状態とする。換言すると、本実施形態では、閉弁した状態は、弁体40が弁座24bに着座した状態である。
【0086】
具体的には、弁体40が弁座24bに着座した状態では、スペーサ350の延設部354が、図13(B)に示されるように、弁体40と弁座24bとの間に挟まれる。換言すれば、弁体40と弁座24bとは、非接触状態となっている。これにより、隣り合う延設部354の間では、図13(A)に示されるように、弁体40と弁座24bとの間に冷媒が通過可能な隙間356が形成される。換言すれば、弁座24b側へ移動した弁体40が移動不能となった状態で、スペーサ350の延設部354が、弁体40と弁座24bとのに挟まれて弁体40と弁座24bとの間に隙間356が形成される。
【0087】
これにより、弁体40が弁座24bに着座した状態であっても、少量の冷媒が隙間356を流れることで、少量の冷媒が冷媒循環システムの流路を循環する。例えば、冷媒に潤滑剤が含まれる場合には、弁体40が弁座24bに着座した状態であっても、潤滑剤が流路を循環する。これにより、各装置に潤滑剤が供給される。
【0088】
(まとめ)
以上説明したように、膨張弁310においては、スペーサ350の円部352が、弁体40と弁棒60とに挟まれている。また、延設部354が、弁体40の上下方向中心より下方まで延びる球状とされていることで、弁体40を外側から球面で覆っている。このため、専用の取付部材を設けることなく、スペーサ350を弁体40に取り付けることができる。さらに、スペーサ350の円部352が、弁体40と弁棒60とに挟まれていることで、弁体40に対するスペーサ350のずれを抑制することができる。すなわち、スペーサ350の円部352の中心が最も上方の位置となるように、スペーサ350の姿勢を維持することができる。
【0089】
なお、本開示を特定の実施形態について詳細に説明したが、本開示は係る実施形態に限定されるものではなく、本開示の範囲内にて他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、冷媒が流れる隙間56、256、356は、隣接する一対の延設部54、254、354と弁室24の面部24aとによって規定される溝の一部である。この溝は上方から見ると弁孔26の径方向に延びたが、この溝が上方から見て弁孔の周りを螺旋状に延びてもよい。しかし、この場合には、この溝が弁孔26の径方向に延びることで奏する作用は奏しない。
【0090】
また、上記実施形態では、スペーサ50、250、350の延設部54、254、354は、上方から見て、弁孔26の周方向に同様の間隔で配置されたが、異なる間隔で配置されてもよい。しかし、この場合には、同様の間隔で配置されることで奏する作用は奏しない。
【0091】
また、上記第2実施形態では、スペーサ250の円筒部252は、一例として、円筒状とされた。円筒部252は、弁孔26に対して装着可能な筒状であればよく、円筒状に限定されない。なお、上記第2実施形態のように、弁孔26の断面形状と同形状(円筒)であると好ましい。
また、円筒部252は、一例として一周連続する筒状に形成された。他の例では、円筒部252は、周方向で両端を有し、この両端間に隙間を有する筒状であってもよい。換言すると、突出部分252aは、一周連続する筒状ではなく、周方向の一部に隙間を有する筒状であってもよい。この一例としは、円筒部252は、その軸線に直交する断面形状が円弧状となる筒状であってもよい。このように、円筒部252が筒状に形成されるとは、一周連続する筒状に形成されること、及び、周方向で両端を有し、これら両端間に隙間を有する筒状に形成されることを含む。突出部分252aが周方向で両端を有する形状の場合、この両端間の隙間は、弁孔26の軸線回りに180度未満の隙間であることが好ましく、さらには小さいほど好ましい。
【0092】
また、上記第2実施形態では、スペーサ250の円筒部252は、弁孔26の出口から上方へ突出した突出部分252aを有したが、円筒部の全体が弁孔に収まっていてもよい。しかし、この場合には、突出部分を有することで奏する作用は奏しない。
【符号の説明】
【0093】
10 膨張弁
12 弁本体
20a 入口部
24 弁室
24a 面部(内面の一例)
24b 弁座
26 弁孔
40 弁体
44 コイルバネ(付勢部材の一例)
50 スペーサ(隙間形成部材の一例)
54 延設部
54b 先端部(装着部の一例)
56 隙間
60 弁棒
210 膨張弁
250 スペーサ(隙間形成部材の一例)
252 円筒部(装着部の一例)
252a 突出部分
254 延設部
256 隙間
310 膨張弁
350 スペーサ(隙間形成部材の一例)
352 円部(基部の一例)
354 延設部
356 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13