(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173008
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】識別部材
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
G06K19/077 160
G06K19/077 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091112
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】草野 一英
(57)【要約】
【課題】高温にさらされる環境であっても正常に機能する識別部材を提供する。
【解決手段】識別部材は、識別媒体と、識別媒体と空間を隔てて位置する支持部材と、識別媒体を保持する保持部材と、を備える。保持部材は、識別媒体から支持部材に向けて延びる線状部を有し、保持部材は、線状部を介して、支持部材に繋がっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
識別媒体と、
前記識別媒体と空間を隔てて位置する支持部材と、
前記識別媒体を保持する保持部材と、
を備え、
前記保持部材は、前記識別媒体から前記支持部材に向けて延びる線状部を有し、
前記保持部材は、前記線状部を介して、前記支持部材に繋がっている、
識別部材。
【請求項2】
前記保持部材は、複数の前記線状部を有する
請求項1に記載の識別部材。
【請求項3】
前記支持部材は、底部と、前記底部に立設する支持部と、を有し、
前記線状部は、前記支持部に固定される
請求項1または2に記載の識別部材。
【請求項4】
前記支持部は、凹部または孔部を有し、
前記線状部は、前記凹部または前記孔部で前記支持部に固定される
請求項3に記載の識別部材。
【請求項5】
前記支持部材は、筒状の前記支持部と、前記支持部の一方の端部を塞ぐ前記底部と、前記支持部の他方の端部を塞ぐ蓋部とを有し、
前記支持部材で封止された内部空間を有し、
前記識別媒体は、前記内部空間に位置する
請求項3に記載の識別部材。
【請求項6】
前記保持部材は、前記識別媒体を収容する収容部を有し、
前記収容部の少なくとも一部は、網状である
請求項1または2に記載の識別部材。
【請求項7】
前記保持部材は、前記識別媒体を収容する収容部を有し、
前記収容部は、前記識別媒体を外部から読み取り可能に配置される
請求項1または2に記載の識別部材。
【請求項8】
前記支持部材は、底部を有し、
前記線状部は、前記底部に立設する
請求項1に記載の識別部材。
【請求項9】
前記識別媒体は、非接触通信を行う電子部品である
請求項1または2に記載の識別部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、識別部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、物品の識別を目的として、RFID(Radio Frequency IDentifier)タグなどを備えた識別部材が用いられている。特に、生産プロセスのように高温にさらされる環境では、耐熱性のある識別部材が用いられる(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、上記の従来技術では、高熱を有する、たとえば1000℃程度の高温部材を識別する場合に、かかる高温部材から識別部材内のRFIDタグに熱が伝わりやすいため、RFIDタグが正しく機能しなくなる恐れがあった。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、高温にさらされる環境であっても正常に機能する識別部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の識別部材は、識別媒体と、前記識別媒体と空間を隔てて位置する支持部材と、前記識別媒体を保持する保持部材と、を備える。前記保持部材は、前記識別媒体から前記支持部材に向けて延びる線状部を有し、前記保持部材は、前記線状部を介して、前記支持部材に繋がっている。
【発明の効果】
【0007】
実施形態の一態様によれば、高温にさらされる環境であっても正常に機能する識別部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る識別部材の構成の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る保持部材の構成の別の例を示す拡大上面図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態に係る識別部材の構成の一例を示す断面図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係る保持部材の構成の別の例を示す拡大上面図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係る保持部材の構成の別の例を示す拡大上面図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る識別部材の構成の別の一例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、第3実施形態に係る識別部材の構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する識別部材の各実施形態について説明する。なお、以下に示す各実施形態によりこの本開示が限定されるものではない。また、各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。また、以下の各実施形態において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略される。
【0010】
また、以下に示す各実施形態では、「垂直」あるいは「平行」といった表現が用いられる場合があるが、これらの表現は、厳密に「垂直」あるいは「平行」であることを要しない。すなわち、上記した各表現は、例えば製造精度、設置精度などのずれを許容するものとする。
【0011】
<第1実施形態>
最初に、第1実施形態に係る識別部材1の構成について、
図1および
図2を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態に係る識別部材1の構成の一例を示す斜視図である。
【0012】
図1に示すように、第1実施形態に係る識別部材1は、識別媒体10と、支持部材20と、保持部材30とを備える。識別媒体10は、たとえばRFIDタグである。
【0013】
RFIDタグとしての識別媒体10は、たとえば、アルミナや、LTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)などからなる基板上に、非接触通信用のアンテナと、このアンテナを介して非接触通信を行うICチップと、識別情報を記憶したメモリとを有する。RFIDタグとしての識別媒体10は、電磁誘導、電波などを用いた非接触通信により、メモリに記憶された識別情報を外部機器、たとえばRFIDリーダーに送信することができる。
【0014】
支持部材20は、識別媒体10と空間S1を隔てて位置する。第1実施形態に係る支持部材20は、底部21と、一対の支持部22とを有する。
【0015】
底部21は、板状、たとえば円板状であり、セラミックなどの高い耐熱性を有する材料で構成されてもよい。底部21の裏面21bは、高温部材Hと対向する。高温部材Hは、たとえば、鉄鋼のスラグなどであってもよい。本開示の識別部材1は、たとえば、この高温部材Hと1対1に対応させることで、高温部材Hを識別するために用いられてもよい。1対1に対応させるとは、高温部材Hと識別部材1との組み合わせが変わらないように同時に移動等させることをいう。
【0016】
一対の支持部22は、底部21のおもて面21aに立設していてもよい。一対の支持部22は、たとえば、互いに平行に向かい合いながら、底部21のおもて面21aに対して垂直に立った状態で設けられてもよい。支持部22は、板状、たとえば角板状であり、セラミックまたは金属などで構成されてもよい。
【0017】
保持部材30は、識別媒体10を保持する。保持部材30は、収容部31と、複数の線状部32とを有していてもよい。
【0018】
収容部31は、識別媒体10を収容する。収容部31は、たとえば凹形状であり、凹部31aに識別媒体10を収容する。収容部31は、たとえば、セラミック、ガラスウールまたは樹脂などの熱伝導率が低い材料で構成されてもよい。
【0019】
複数の線状部32は、識別媒体10からそれぞれ支持部材20の支持部22に向けて延び、かかる支持部22にそれぞれ固定される。線状部32は線状であり、たとえば断面積が1cm2以下であってもよい。
【0020】
ここで、第1実施形態では、支持部材20が識別媒体10に対して空間S1を隔てて位置するとともに、識別媒体10が線状部32を介して支持部材20に支持されてもよい。さらに、第1実施形態では、保持部材30が、線状部32を介して、支持部材20に繋がっていてもよい。
【0021】
このように、支持部材20と識別媒体10とが離間して位置するとともに、支持部材20と識別媒体10との間の熱伝導経路が線状の部材、すなわち線状部32であることで、高温部材Hから底部21に伝わった熱が、識別媒体10まで伝わることを低減できる。
【0022】
したがって、第1実施形態によれば、識別媒体10が過剰に昇温することを低減できるため、高温にさらされる環境であっても正常に識別媒体10を機能させることができる。
【0023】
また、第1実施形態では、線状部32の断面積が1cm2以下であってもよく、0.5cm2以下であるのがより好ましい。これにより、高温部材Hから底部21に伝わった熱が、識別媒体10まで伝わることをさらに低減できる。
【0024】
したがって、第1実施形態によれば、識別媒体10が過剰に昇温することをさらに低減できるため、高温にさらされる環境であってもさらに正常に識別媒体10を機能させることができる。
【0025】
また、第1実施形態では、保持部材30が複数、たとえば4つの線状部32を有しており、かかる複数の線状部32で識別媒体10が支持されてもよい。これにより、識別媒体10がより安定して支持されるため、高温部材Hをより安定して識別することができる。
【0026】
なお、第1実施形態に係る識別部材1では、保持部材30が4つの線状部32を有する場合に限られず、2つ、3つまたは5つ以上の線状部32を有してもよい。
【0027】
また、第1実施形態では、支持部材20が底部21および支持部22を有し、線状部32は、支持部22に固定されてもよい。
【0028】
このように、高温部材Hからの高熱に直接さらされる底部21ではなく、かかる底部21から高温部材Hとは離れる方向に延びる支持部22に線状部32が固定されることで、高温部材Hから底部21に伝わった熱が、識別媒体10まで伝わることをさらに低減できる。
【0029】
したがって、第1実施形態によれば、識別媒体10が過剰に昇温することをさらに低減できるため、高温にさらされる環境であってもさらに正常に識別媒体10を機能させることができる。
【0030】
また、第1実施形態では、支持部22が孔部22aを有し、線状部32は、かかる孔部22aで支持部22に固定されてもよい。この場合、たとえば、孔部22aに挿通された線状部32の先端部が屈曲することで、線状部32が支持部22に固定されてもよい。なお、固定とは接着や接合された状態だけでなく、摩擦力や重力等を利用して接触により固定されていることを含むものとする。
【0031】
これにより、線状部32を支持部22に簡便に固定できるため、識別部材1の製造工程を簡素化することができる。また、熱による部材の膨張、変形によるひずみの発生を低減でき、耐熱性に優れる識別部材1を提供できる。
【0032】
なお、第1実施形態では、線状部32が孔部22aで支持部22に固定される場合に限られない。たとえば、支持部22の上端部に図示しない溝状の凹部が設けられ、線状部32は、かかる凹部で支持部22に固定されてもよい。この場合、たとえば、屈曲した線状部32の先端部が溝状の凹部に係り止められることで、線状部32が支持部22に固定されてもよい。
【0033】
これによっても、線状部32を支持部22に簡便に固定できるため、識別部材1の製造工程を簡素化することができる。
【0034】
また、第1実施形態では、識別媒体10が、非接触通信を行う電子部品、たとえばRFIDタグであってもよい。これにより、RFIDリーダーの通信距離内に位置する複数の識別媒体10を一括で識別することができるため、複数の高温部材Hを効率よく識別することができる。
【0035】
なお、第1実施形態に係る識別媒体10は、RFIDタグに限られず、たとえば基板上に各種の情報コードが印されたものであってもよい。かかる情報コードは、たとえば、QRコード(登録商標)のような二次元コード、またはバーコードのような一次元コードなどであってもよい。
【0036】
またこの場合、収容部31は、識別媒体10を外部、たとえば上方から読み取り可能に配置されてもよい。このように、各種の情報コードが印された識別媒体10を用いることで、識別媒体10をより安価にできるため、低コストで高温部材Hを識別することができる。
【0037】
第1実施形態に係る識別部材1において、識別媒体10を保持する保持部材30の構成は
図1の例に限られない。
図2は、第1実施形態に係る保持部材30の構成の別の例を示す拡大上面図である。
【0038】
図2に示すように、保持部材30の収容部31が、網状の線状部材31bを有する籠状の容器であってもよい。かかる収容部31は、上部が開放している。
【0039】
これにより、高温部材Hから底部21に伝わった熱が、識別媒体10まで伝わることをさらに低減できる。したがって、
図2の例によれば、識別媒体10が過剰に昇温することをさらに低減できるため、高温にさらされる環境であってもさらに正常に識別媒体10を機能させることができる。
【0040】
また、
図2の例では、収容部31の上部が開放していることから、基板上に各種の情報コードが印された識別媒体10であっても、かかる情報コードを問題無く読み取ることができる。
【0041】
なお、収容部31を構成する線状部材31bの材質は、線状部32と同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。
【0042】
<第2実施形態>
つづいて、第2実施形態に係る識別部材1の構成について、
図3~
図6を参照しながら説明する。
図3は、第2実施形態に係る識別部材1の構成の一例を示す断面図である。
【0043】
図3に示すように、第2実施形態に係る識別部材1は、識別媒体10と、支持部材20と、保持部材30とを備える。識別媒体10は、たとえばRFIDタグである。
【0044】
支持部材20は、識別媒体10と空間S1を隔てて位置する。第2実施形態に係る支持部材20は、底部21と、支持部22と、蓋部23とを有していてもよい。
【0045】
底部21は、板状、たとえば円板状であり、セラミックなどの高い耐熱性を有する材料で構成されてもよい。底部21の裏面21bは、高温部材Hと対向する。
【0046】
支持部22は、底部21のおもて面21aに立設する。第2実施形態の支持部22は、筒状、たとえば円筒状であり、セラミックまたは金属などで構成されてもよい。筒状の支持部22における一方の端部、たとえば下端部は底部21で塞がれる。
【0047】
また、筒状の支持部22における他方の端部、たとえば上端部は蓋部23で塞がれる。蓋部23は、板状、たとえば円板状であり、セラミックまたは金属などで構成されてもよい。
【0048】
保持部材30は、識別媒体10を保持する。保持部材30は、収容部31と、複数の線状部32とを有する。収容部31は、識別媒体10を収容する。収容部31は、たとえば凹形状であり、凹部31aに識別媒体10を収容する。
【0049】
複数の線状部32は、識別媒体10からそれぞれ支持部材20の支持部22に向けて延び、かかる支持部22にそれぞれ固定される。線状部32は線状であり、たとえば断面積が1cm2以下であってもよい。
【0050】
ここで、第2実施形態では、支持部材20が識別媒体10に対して空間S1を隔てて位置するとともに、識別媒体10が線状部32を介して支持部材20に支持されてもよい。さらに、第2実施形態では、保持部材30が、線状部32を介して、支持部材20に繋がっていてもよい。
【0051】
このように、支持部材20と識別媒体10とが離間して位置するとともに、支持部材20と識別媒体10との間の熱伝導経路が線状の部材、すなわち線状部32であることで、高温部材Hから底部21に伝わった熱が、識別媒体10まで伝わることを低減できる。
【0052】
したがって、第2実施形態によれば、識別媒体10が過剰に昇温することを低減できるため、高温にさらされる環境であっても正常に識別媒体10を機能させることができる。
【0053】
また、第2実施形態では、識別部材1が底部21、支持部22および蓋部23によって封止された内部空間S2を有し、かかる内部空間S2に識別媒体10が位置してもよい。
【0054】
これにより、第2実施形態に係る識別部材1は、たとえば、識別媒体10の耐熱温度を超える高温環境下においても使用することができる。たとえば、第2実施形態に係る識別部材1は、めっき処理される部品に取り付けられ、この部品とともにめっき処理されてもよい。めっき処理の温度は、たとえば、300℃~500℃である。
【0055】
また、第2実施形態に係る識別部材1は、部品とともに酸性の薬品やアルカリ性の薬品によって処理されてもよい。すなわち、第2実施形態に係る識別部材1は、識別媒体10の耐薬品性を超える酸・アルカリ環境下においても使用することができる。
【0056】
また、第2実施形態では、保持部材30が複数の線状部32を有しており、かかる複数の線状部32で識別媒体10が支持されてもよい。これにより、識別媒体10がより安定して支持されるため、高温部材Hをより安定して識別することができる。
【0057】
また、第2実施形態では、識別媒体10が、非接触通信を行う電子部品、たとえばRFIDタグであってもよい。これにより、RFIDリーダーの通信距離内に位置する複数の識別媒体10を一括で識別することができるため、複数の高温部材Hを効率よく識別することができる。
【0058】
また、第2実施形態では、支持部材20を構成する底部21、支持部22および蓋部23の少なくとも1つが、光や電磁波を透過させる材質で構成されてもよく、例えば、セラミックス、ガラス、樹脂などを用いてもよい。これにより、密閉された内部空間S2に位置するRFIDタグとしての識別媒体10を、外部から良好に読み取ることができる。なお、光や電磁波を透過する材質でないものとしては、例えば、耐熱性を有する金属などがあげられる。
【0059】
なお、第2実施形態に係る識別媒体10は、RFIDタグに限られず、たとえば基板上に各種の情報コードが印されたものであってもよい。またこの場合、蓋部23は、透明な材料、たとえばサファイアの単結晶などで構成されてもよい。また、透明なガラスであってもよい。また、蓋部23以外の部材を透明な部材としてもよい。また、ポリイミドなどの高耐熱性樹脂や、セラミックスを用いてもよい。
【0060】
これにより、密閉された内部空間S2に位置する識別媒体10を、外部から良好に読み取ることができる。また、蓋部23に限らず、必要に応じて、支持部材20を構成する底部21、支持部22などにもポリイミドなどの高耐熱性樹脂や、セラミックスを用いてもよい。
【0061】
第2実施形態に係る識別部材1において、識別媒体10を保持する保持部材30の構成は
図3の例に限られない。
図4および
図5は、第2実施形態に係る保持部材30の構成の別の例を示す拡大上面図である。
【0062】
図4に示すように、保持部材30の収容部31が、網状の線状部材31bを有する籠状の容器であってもよい。かかる収容部31は、上述した
図2の例と異なり、底部および上部に網状の線状部材31bが位置している。すなわち、
図4の例では、網状の線状部材31bなどによって識別媒体10の周囲が覆われている。
【0063】
これにより、高温部材Hから底部21に伝わった熱が、識別媒体10まで伝わることをさらに低減できる。したがって、
図4の例によれば、識別媒体10が過剰に昇温することをさらに低減できるため、高温にさらされる環境であってもさらに正常に識別媒体10を機能させることができる。
【0064】
また、
図4の例では、識別媒体10の周囲が網状の線状部材31bで覆われることから、めっき液などの液体の内部に識別部材1が位置し、識別部材1の上下が逆転したとしても、識別媒体10が内部空間S2内で動き回ることを低減できる。また、識別媒体10の周囲を網状の線状部材31bで覆う構造は、
図1、2の形態に適用してもよい。
【0065】
また、
図5に示すように、保持部材30の収容部31に、RFIDタグとしての識別媒体10が埋め込まれたものであってもよい。この場合、収容部31には貫通孔31cが形成され、かかる貫通孔31cに同じ方向から複数回線状部32を挿通させることで、線状部32に沿って収容部31が動かないように固定されてもよい。
【0066】
これにより、めっき液などの液体の内部に識別部材1が位置し、識別部材1の上下が逆転したとしても、識別媒体10が内部空間S2内で動き回ることを低減できる。
【0067】
また、
図6に示すように、第2実施形態に係る識別部材1において、複数の線状部32は、識別媒体10からそれぞれ支持部材20の蓋部23に向けて延び、かかる蓋部23にそれぞれ固定されてもよい。
図6は、第2実施形態に係る識別部材1の構成の別の一例を示す断面図である。
【0068】
この構成であっても、支持部材20と識別媒体10とが離間して位置するとともに、支持部材20と識別媒体10との間の熱伝導経路が線状の部材、すなわち線状部32であることから、高温部材Hから底部21に伝わった熱が、識別媒体10まで伝わることを低減できる。このような構成を有すると、例えば、高温部材Hから底部21に伝わった熱が、識別媒体10まで伝わる伝熱距離が長くなり、熱が、識別媒体10まで伝わることをさらに低減できる。
【0069】
したがって、
図6の例によれば、識別媒体10が過剰に昇温することを低減できるため、高温にさらされる環境であっても正常に識別媒体10を機能させることができる。
【0070】
<第3実施形態>
つづいて、第3実施形態に係る識別部材1の構成について、
図7を参照しながら説明する。
図7は、第3実施形態に係る識別部材1の構成の一例を示す断面図である。
【0071】
図7に示すように、第3実施形態に係る識別部材1は、識別媒体10と、支持部材20と、保持部材30とを備える。識別媒体10は、たとえばRFIDタグである。
【0072】
支持部材20は、識別媒体10と空間S1を隔てて位置する。第3実施形態に係る支持部材20は、底部21を有する。底部21は、板状、たとえば円板状であり、セラミックなどの高い耐熱性を有する材料で構成されてもよい。底部21の裏面21bは、高温部材Hと対向する。
【0073】
保持部材30は、識別媒体10を保持する。保持部材30は、収容部31と、線状部32とを有する。収容部31は、識別媒体10を収容する。収容部31は、たとえば凹形状であり、凹部31aに識別媒体10を収容する。線状部32は、底部21のおもて面21aに立設する。
【0074】
ここで、第3実施形態では、支持部材20が識別媒体10に対して空間S1を隔てて位置するとともに、識別媒体10が線状部32を介して支持部材20に支持されてもよい。さらに、第3実施形態では、保持部材30が、線状部32を介して、支持部材20に繋がっていてもよい。これにより、高温部材Hから底部21に伝わった熱が、識別媒体10まで伝わることを低減できる。
【0075】
したがって、第3実施形態によれば、識別媒体10が過剰に昇温することを低減できるため、高温にさらされる環境であっても正常に識別媒体10を機能させることができる。
【0076】
また、第3実施形態では、識別媒体10が、非接触通信を行う電子部品、たとえばRFIDタグであってもよい。これにより、RFIDリーダーの通信距離内に位置する複数の識別媒体10を一括で識別することができるため、複数の高温部材Hを効率よく識別することができる。
【0077】
なお、第3実施形態に係る識別媒体10は、RFIDタグに限られず、たとえば基板上に各種の情報コードが印されたものであってもよい。またこの場合、収容部31は、識別媒体10を外部、たとえば上方から読み取り可能に配置されてもよい。
【0078】
このように、各種の情報コードが印された識別媒体10を用いることで、識別媒体10をより安価にできるため、低コストで高温部材Hを識別することができる。
【0079】
以上、本開示の各実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0080】
さらなる効果や他の態様は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本開示のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【0081】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)
識別媒体と、
前記識別媒体と空間を隔てて位置する支持部材と、
前記識別媒体を保持する保持部材と、
を備え、
前記保持部材は、前記識別媒体から前記支持部材に向けて延びる線状部を有し、
前記保持部材は、前記線状部を介して、前記支持部材に繋がっている、
識別部材。
(2)
前記保持部材は、複数の前記線状部を有する
前記(1)に記載の識別部材。
(3)
前記支持部材は、底部と、前記底部に立設する支持部と、を有し、
前記線状部は、前記支持部に固定される
前記(1)または(2)に記載の識別部材。
(4)
前記支持部は、凹部または孔部を有し、
前記線状部は、前記凹部または前記孔部で前記支持部に固定される
前記(3)に記載の識別部材。
(5)
前記支持部材は、筒状の前記支持部と、前記支持部の一方の端部を塞ぐ前記底部と、前記支持部の他方の端部を塞ぐ蓋部とを有し、
前記支持部材で封止された内部空間を有し、
前記識別媒体は、前記内部空間に位置する
前記(3)に記載の識別部材。
(6)
前記保持部材は、前記識別媒体を収容する収容部を有し、
前記収容部の少なくとも一部は、網状である
前記(1)~(5)のいずれか一つに記載の識別部材。
(7)
前記保持部材は、前記識別媒体を収容する収容部を有し、
前記収容部は、前記識別媒体を外部から読み取り可能に配置される
前記(1)~(6)のいずれか一つに記載の識別部材。
(8)
前記支持部材は、底部を有し、
前記線状部は、前記底部に立設する
前記(1)に記載の識別部材。
(9)
前記識別媒体は、非接触通信を行う電子部品である
前記(1)~(8)のいずれか一つに記載の識別部材。
【符号の説明】
【0082】
1 識別部材
10 識別媒体
20 支持部材
21 底部
22 支持部
22a 孔部
23 蓋部
30 保持部材
31 収容部
32 線状部
H 高温部材
S1 空間
S2 内部空間