(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173020
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/533 20210101AFI20241205BHJP
H01M 50/176 20210101ALI20241205BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20241205BHJP
H01M 50/557 20210101ALI20241205BHJP
【FI】
H01M50/533
H01M50/176
H01M50/55 101
H01M50/557
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091130
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】長野 愛子
(72)【発明者】
【氏名】米川 裕菜
【テーマコード(参考)】
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011BB04
5H011EE04
5H011KK01
5H043AA03
5H043AA05
5H043AA13
5H043AA19
5H043BA19
5H043CA04
5H043CA13
5H043DA02
5H043EA08
5H043LA02E
(57)【要約】
【課題】セル抵抗の増加を低減することができる二次電池を提供する。
【解決手段】本開示の二次電池は、正極集電箔13、電極体11、及び負極集電箔12が順に積層された電池セルと、正極集電箔13から延出し、電池セルの一側面から突出した正極用タブリード3と、電池セルの主面視において正極用タブリード3から所定の長さだけ離間しており、負極集電箔12から延出し、電池セルの一側面から突出した負極用タブリード2とを備える。正極用タブリード3及び正極集電箔13の正極用タブリード3の近傍の厚みαは、正極集電箔13の他の領域の厚さよりも厚く、負極用タブリード2及び負極集電箔12の負極用タブリード2の近傍の厚さβは、負極集電箔12の他の領域の厚さよりも厚い。そして、αとβは、2β/α≦1の関係を満たす。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電箔、電極体、及び負極集電箔が順に積層された電池セルと、
前記正極集電箔から延出し、前記電池セルの一側面から突出した正極用タブリードと、
前記電池セルの主面視において前記正極用タブリードから所定の長さだけ離間しており、前記負極集電箔から延出し、前記電池セルの前記一側面から突出した負極用タブリードと、
を備え、
前記正極用タブリード及び前記正極集電箔の前記正極用タブリードの近傍の厚みαは、前記正極集電箔の他の領域の厚さよりも厚く、
前記負極用タブリード及び前記負極集電箔の前記負極用タブリードの近傍の厚さβは、前記負極集電箔の他の領域の厚さよりも厚く、
前記αと前記βは、
2β/α≦1
の関係を満たす、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次電池に関し、より詳細には、正極及び負極用のタブリードを備えた二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車や燃料電池車等への車載用途として、扁平形状を有する電極体が角形ケースの内部に収容されたリチウムイオン電池等の二次電池が広く用いられている。
【0003】
このような二次電池は、角型ケースから外部に突出した正極用及び負極用の2つのタブリードを備えている。リチウムイオン電池では、正極用タブリードが正極集電箔(アルミニウム箔)から延出し、負極用タブリードが負極集電箔(銅箔)から延出している。そして、車載用途としては、通常、正極用タブリードと負極用タブリードは、角型ケースの同一の側面から突出している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車載用の二次電池は、搭載車両の走行距離を延ばすことを目的として、二次電池の小型軽量化が望まれている。しかしながら、特に、二次電池を小型化すると、二次電池のセル抵抗が増加してしまうという問題がある。
【0006】
この問題を解決するために、正極集電箔と負極集電箔の厚さを調整することも考えられる。しかしながら、セル抵抗の低減という指標で見た場合、正極集電箔と負極集電箔のそれぞれの厚さがセル抵抗に対してどの程度影響を及ぼすかを実際にシミュレーションや計測して検討する必要があり、これにより、各集電箔の薄膜化の制御が困難となってしまうおそれがある。
【0007】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、セル抵抗を低減することができるとともに、セルの薄膜化の制御を容易に行うことができる二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の二次電池は、
正極集電箔、電極体、及び負極集電箔が順に積層された電池セルと、
前記正極集電箔から延出し、前記電池セルの一側面から突出した正極用タブリードと、
前記電池セルの主面視において前記正極用タブリードから所定の長さだけ離間しており、前記負極集電箔から延出し、前記電池セルの前記一側面から突出した負極用タブリードと、
を備え、
前記正極用タブリード及び前記正極集電箔の前記正極用タブリードの近傍の厚みαは、前記正極集電箔の他の領域の厚さよりも厚く、
前記負極用タブリード及び前記負極集電箔の前記負極用タブリードの近傍の厚さβは、前記負極集電箔の他の領域の厚さよりも厚く、
前記αと前記βは、
2β/α≦1
の関係を満たす、二次電池である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、各タブリード近傍のセル抵抗を低減することができるとともに、セルの薄膜化の制御を容易に行うことができる二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態にかかる二次電池のセルの全体構成を示す概略図である。
【
図2】
図1のII-II断面によるセルの断面図である。
【
図3】タブ近傍の各集電箔の厚みを変えた場合の電流密度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態)
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。しかしながら、特許請求の範囲にかかる発明を以下の実施の形態に限定するものではない。また、実施の形態で説明する構成のすべてが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0012】
<課題の検討>
車載用のリチウムイオン電池は、車内の居住スペースを確保するために、電池パックの小型化が検討・要望されている。この要望に対応するために、リチウムイオン電池の各電極の集電箔を薄膜化することにより、電池パックを小型化することが考えられる。
【0013】
しかしながら、正極集電箔及び負極集電箔の各膜厚の最適値は不明であり、2つの集電箔の膜厚をマトリクス的に検証することは、膨大な量のシミュレーションや実験を必要とし、現実的ではない。
【0014】
一方、セル抵抗が悪化(増加)する要因は、正極用タブリード付近の電極抵抗が律速となっていることが考えられる。そのため、本発明者は、2つのタブリード付近の各集電箔の膜厚を最適化して、両集電箔のタブリード付近の抵抗比を調整することにより、全体的にセル抵抗を低減することができると考えた。そして、本発明者は、後述のように、2つの集電箔のタブリード付近における最適膜厚(膜厚比)を導き出す関係式を見出した。
【0015】
<二次電池の全体構成>
まず、本実施の形態にかかる二次電池のセルの全体構成を説明する。
図1は、本実施の形態にかかる二次電池のセルの全体構成を示す概略図である。
図2は、
図1のII-II断面によるセルの断面図である。
図1及び
図2を参照しながら、本実施の形態にかかる二次電池100の構成を説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態の二次電池100は、電池セル1と、負極用タブリード2と、正極用タブリード3とを備える。
図2に示すように、電池セル1は、正極集電箔13、電極体11、及び負極集電箔12がこの順に積層されたものである。
【0017】
負極用タブリード2及び正極用タブリード3は、電池セル1の一側面(
図1では、右側側面)から突出するように構成される。負極用タブリード2は、電池セル1の主面視において正極用タブリード3から所定の長さだけ離間するように配置される。この所定の長さは、各タブリード2、3の電池セル1の主面視における幅及び突出長さの2倍程度であればよい。
【0018】
図1及び
図2において、領域Xは、各タブリード2、3を含むタブリード近傍領域を示し、
図2に示すように、各集電箔12、13の膜厚を厚くした部分である。正極用タブリード3の厚みと、正極集電箔13の正極用タブリード3近傍の厚みとをαとし、負極用タブリード2の厚みと、負極集電箔12の負極用タブリード2近傍の厚みとをβとする。本例では、αは、正極集電箔13の他の領域の厚さの1.5倍程度の厚さとし、βは、負極集電箔12の他の領域の厚さの2倍程度の厚さとする。
【0019】
本実施の形態の二次電池100において、各タブリード2、3近傍における抵抗比は、以下のようになる。
抵抗比=2β/α
そして、この抵抗比が1以下になるように厚みを調整することにより、セル抵抗を低減することができる。すなわち、αとβは、以下の関係を有するように設定する。
2β/α≦1
【0020】
なお、
図1では示していないが、電池セル1の主面視において、領域Xの電池セル1側の長さと、各タブリード2、3の電池セル1からの突出方向への長さとの比は、概ね1:1である。ただし、タブリード近傍のセル抵抗を低減させるために、領域Xの電池セル1側の長さを多少長めにしてもよい。
【0021】
次に、本実施形態の二次電池100の効果について、グラフに基づいて説明する。
図3は、タブ近傍の各集電箔の厚みを変えた場合の電流密度の関係を示すグラフである。
図3において、左側の棒グラフは、正極集電箔13及び負極集電箔12の厚さを均一に薄膜化した場合の電流密度である。本例では、正極集電箔13(アルミニウム箔)の厚さを20μm、負極集電箔(銅箔)の厚さを7.8μmとした場合のシミュレーション結果であり、電流密度は27.1A/m
2となった。一方、中央の棒グラフでは、各集電箔13、12を厚膜化して、各厚さを31μm、15μmとした場合には、セル抵抗が低減したため、電流密度は14.8A/m
2に低下した。
【0022】
これに対して、本実施の形態の二次電池100では、右側の棒グラフのように、各集電箔13、12のタブ近傍(概ね全体の10%程度の範囲)のみを中央の棒グラフと同様に厚膜化したことにより、電流密度は20.6A/m2となった。したがって、左側の薄膜化の場合に対して、各タブリード3、2近傍の各集電箔13、12への電流集中を緩和することができた。本実施の形態の二次電池100では、電流密度を約24%低減することができ、セル抵抗も約11%低減することができた。
【0023】
以上説明したように、本実施の形態による二次電池100は、正極集電箔13、電極体11、及び負極集電箔12が順に積層された電池セル1と、正極集電箔13から延出し、電池セル1の一側面から突出した正極用タブリード3と、電池セル1の主面視において正極用タブリード3から所定の長さだけ離間しており、負極集電箔12から延出し、電池セル1の一側面から突出した負極用タブリード2とを備える。そして、正極用タブリード3及び正極集電箔13の正極用タブリード3の近傍の厚みαは、正極集電箔13の他の領域の厚さよりも厚く、負極用タブリード2及び負極集電箔12の負極用タブリード2の近傍の厚さβは、負極集電箔12の他の領域の厚さよりも厚い。さらに、αとβは、2β/α≦1の関係を満たすように構成される。本実施の形態による二次電池100をこのように構成することにより、各タブリード2、3近傍のセル抵抗を低減することができるとともに、セルの薄膜化の制御を容易に行うことができる。
【0024】
なお、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本開示による二次電池は、小型化によるセル抵抗の増加を低減させることができる車両用の二次電池等に適用可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 電池セル
2 負極用タブリード
3 正極用タブリード
11 電極体
12 負極集電箔
13 正極集電箔
100 二次電池