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特開2024-173022硝酸水溶液の製造装置および硝酸水溶液の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173022
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】硝酸水溶液の製造装置および硝酸水溶液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/40 20060101AFI20241205BHJP
   C01B 13/11 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
C01B21/40 Z
C01B13/11 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091132
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100182718
【弁理士】
【氏名又は名称】木崎 誠司
(72)【発明者】
【氏名】竹川 秀人
【テーマコード(参考)】
4G042
【Fターム(参考)】
4G042CA01
4G042CE04
(57)【要約】
【課題】大きなエネルギーを必要とせず、かつ、空気から不純物の少ない硝酸を生成する。
【解決手段】硝酸水溶液を製造する製造装置は、空気に無声放電を行うことにより、窒素酸化物および亜硝酸の少なくとも一方と、オゾンと、を含む生成物を生成する放電部と、生成物に紫外線を照射することにより、生成物に含まれる窒素酸化物および亜硝酸の少なくとも一方を酸化させて硝酸を生成する第1紫外線照射部と、生成された硝酸を含む生成物を水に通過させて硝酸水溶液を生成する生成部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硝酸水溶液を製造する製造装置であって、
空気に無声放電を行うことにより、窒素酸化物および亜硝酸の少なくとも一方と、オゾンと、を含む生成物を生成する放電部と、
前記生成物に紫外線を照射することにより、前記生成物に含まれる窒素酸化物および亜硝酸の少なくとも一方を酸化させて硝酸を生成する第1紫外線照射部と、
生成された硝酸を含む前記生成物を水に通過させて硝酸水溶液を生成する生成部と、
を備える、製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の製造装置であって、さらに、
前記生成部において、水に溶解しなかったオゾンを含む前記生成物に対して、紫外線を照射する第2紫外線照射部を備える、製造装置。
【請求項3】
請求項1に記載の製造装置であって、さらに、
前記生成部において水に通過させる前の硝酸を含む前記生成物に対して、少なくとも1秒間光が遮られた状態にする暗反応部を備え、
前記生成部は、前記暗反応部によって光が遮られた後の硝酸を含む前記生成物を水に通過させて硝酸水溶液を生成する、製造装置。
【請求項4】
請求項1に記載の製造装置であって、さらに、
前記放電部の空気の湿度を80%以上に加湿する加湿部を備える、製造装置。
【請求項5】
硝酸水溶液を製造する製造方法であって、
空気に無声放電を行うことにより、窒素酸化物および亜硝酸の少なくとも一方と、オゾンと、を含む生成物を生成する工程と、
前記生成物に紫外線を照射することにより、前記生成物に含まれる窒素酸化物および亜硝酸の少なくとも一方を酸化させて硝酸を生成する工程と、
生成された硝酸を含む前記生成物を水に通過させて硝酸水溶液を生成する生成部と、
を備える、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硝酸水溶液の製造装置および硝酸水溶液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硝酸を生成する方法が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。特許文献1に記載された方法では、下記反応式(1),(2)を生じさせることにより、硝酸(HNO3
)の共存下において、一酸化窒素(NO)を連鎖的にHNO3に酸化させている。
【0003】
【数1】
【数2】
【0004】
特許文献2に記載された方法では、アンモニア(NH3)を酸素(O2)の共存下で高温(例えば、摂氏800度(℃))に晒すことにより、NH3を酸化してNOを生成する。
生成されたNOが、高温下(例えば140℃)において、凝縮水に反応・吸収されることで希硝酸(低濃度のHNO3水溶液)に変化する。
【0005】
非特許文献1には、酸素中の放電の代わりに、加湿された空気中での放電により、オゾン(O3)に加えて窒素酸化物(NOX)、亜硝酸(HNO2)、およびHNO3が生成されることについて記載されている。非特許文献2には、O3、NOX、HNO2およびHNO3などを含む空気に紫外線を照射した場合の、各成分の気相反応モデルが記載されている。非特許文献3には、過硝酸(HNO4)が水に溶解した際に、O2とHNO3とに分解され
て半分に減少するまでに要する時間である半減期について記載されている。非特許文献4には、水に溶解した微量のH22が、植物の育成を促進する技術について記載されている。非特許文献5には、水道水に溶解したO3の半減期について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平11-500707号公報
【特許文献2】特表2013-545960号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】I A Soloshenko, V V Tsiolko, S S Pogulay, A G Kalyuzhnaya, V Yu Bazhenov and A I Shchedrin, "Effect of water adding on kinetics of barrier discharge in air", Plasma Sources Science and Technology Volume 18, 045019, 2009
【非特許文献2】R. Atkinson, D. L. Baulch, R. A. Cox, J. N. Crowley, R. F. Hampson, R. G. Hynes, M. E. Jenkin, M. J. Rossi, and J. Troe, "Evaluated kinetic and photochemical data for atmospheric chemistry: Volume I - gas phase reactions of Ox, HOx, NOx and SOx species", Atmospheric Chemistry and Physics, Volume 4, 1641-1738, 2004
【非特許文献3】大阪大学大学院工学研究科 北野研究室、過硝酸応用研究開発コンソーシアム、[online]、[令和5年5月16日検索]、インターネット<http://www.ppl.eng.osaka-u.ac.jp/pna/pna.html>
【非特許文献4】公益社団法人 日本農芸化学会、「化学と生物 40 (11)」, 752-756, 2002
【非特許文献5】一般社団法人 静電気学会、「静電気学会誌 31」,107-112. 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に記載されたHNO3を生成する方法では、NH3を供給する必要がある。NH3からNOの生成、および、NOからHNO3への酸化は高温下で行われるため、HNO3の生成に非常に大きなエネルギーを必要とする。また、特許文献1に記載された方法で
は、NOの供給方法として、NH3の酸化反応が挙げられている。そのため、特許文献1
の方法によるHNO3の生成も大きなエネルギーを必要とする。
【0009】
非特許文献1に記載された技術では、常温でHNO3を生成できるが、HNO3の生成量よりもはるかに多くの有害なO3やその他の物質(NOX,HNO2)が生成される。その
ため、非特許文献1の技術を用いて、HNO3を得るためには、O3および不純物の除去が行われる必要がある。非特許文献2~5には、硝酸水溶液を製造する方法について記載されていない。
【0010】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためのものであり、大きなエネルギーを必要とせず、かつ、空気から不純物の少ない硝酸(HNO3)を生成することを目
的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためのものであり、以下の形態として実現できる。
【0012】
(1)本発明の一形態によれば、硝酸水溶液を製造する製造装置が提供される。この製造装置は、空気に無声放電を行うことにより、窒素酸化物および亜硝酸の少なくとも一方と、オゾンと、を含む生成物を生成する放電部と、前記生成物に紫外線を照射することにより、前記生成物に含まれる窒素酸化物および亜硝酸の少なくとも一方を酸化させて硝酸を生成する第1紫外線照射部と、生成された硝酸を含む前記生成物を水に通過させて硝酸水溶液を生成する生成部と、を備える。
【0013】
この構成によれば、空気の無声放電により、オゾンに加えて、窒素酸化物および亜硝酸の少なくとも一方と、硝酸と、を含む生成物が生成される。生成物に紫外線が照射されると、生成物に含まれる亜硝酸は、ヒドロキシルラジカル(OH)と一酸化窒素に変化する。一酸化窒素は、オゾンと反応することにより二酸化窒素と酸素とに変化する。また、二酸化窒素は、ヒドロキシルラジカルと反応することにより硝酸に変化する、又は、オゾンと反応することにより三酸化窒素と酸素とに変化する。二酸化窒素と三酸化窒素とが反応することにより、五酸化二窒素が生成される。五酸化二窒素は、空気中の水蒸気と反応することにより硝酸に変化する。一方で、オゾンは、紫外線が照射されることにより、励起酸素原子(O*)と、酸素とに変化する。励起酸素原子は、空気中の水蒸気と反応するこ
とにより、硝酸の生成に必要なヒドロキシルラジカルを生成する。すなわち、無声放電が行われた生成物に紫外線が照射されることにより、オゾンの除去と、硝酸の生成とが行われる。生成された硝酸を含む生成物が水を通過することにより、水に溶けやすい硝酸が水中に取り込まれ、難溶性のオゾンは水中にはほとんど取り込まれない。本構成では、空気より硝酸が生成され、アンモニアや窒素酸化物などの用意が不要となる。この結果、大きなエネルギーを必要とせずに、不純物の少ない硝酸水溶液を得ることができる。また、本構成によれば、不純物の少ない硝酸水溶液を得つつ、無声放電により主成分として発生す
る有害なオゾンを低減できる。
【0014】
(2)上記態様の製造装置において、さらに、前記生成部において、水に溶解しなかったオゾンを含む前記生成物に対して、紫外線を照射する第2紫外線照射部を備えてもよい。
この構成によれば、硝酸が水に溶けた後の生成物に残存しているオゾンに紫外線が照射されることにより、オゾンが除去される。この結果、オゾンを除去した生成物を外気へと排出できる。
【0015】
(3)上記態様の製造装置において、さらに、前記生成部において水に通過させる前の硝酸を含む前記生成物に対して、少なくとも1秒間光が遮られた状態にする暗反応部を備え、前記生成部は、前記暗反応部によって光が遮られた後の硝酸を含む前記生成物を水に通過させて硝酸水溶液を生成してもよい。
この構成によれば、紫外線が照射された生成物に対して1秒間光が遮られることにより、生成部で水に溶けて亜硝酸を生成する元となる二酸化窒素を減らすことができる。これにより、生成部により生成される硝酸水溶液の不純物をより低減できる。
【0016】
(4)上記態様の製造装置において、さらに、前記放電部の空気の湿度を80%以上に加湿する加湿部を備えてもよい。
この構成によれば、第1紫外線照射部により紫外線が照射されて生成される硝酸の元となる水蒸気が空気に多く含まれる。そのため、より効率よく硝酸水溶液を得ることができる。
【0017】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、硝酸水溶液の製造装置、硝酸の製造装置、及びこれらの装置を備えるシステム、硝酸水溶液の製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態としての硝酸生成装置の概略ブロック図である。
図2】本実施形態の硝酸水溶液の製造方法のフローチャートである。
図3】第1紫外線照射部が生成物に紫外線を照射した場合の各成分における濃度の時間変化の一例の説明図である。
図4】第1紫外線照射部が生成物に紫外線を照射した場合の各成分における濃度の時間変化の一例の説明図である。
図5】第1紫外線照射部が生成物に紫外線を照射した場合の各成分における濃度の時間変化の一例の説明図である。
図6】第1紫外線照射部が生成物に紫外線を照射した場合の各成分における濃度の時間変化の一例の説明図である。
図7】第1紫外線照射部が生成物に紫外線を照射した場合の各成分における濃度の時間変化の一例の説明図である。
図8】第1紫外線照射部が生成物に紫外線を照射した場合の各成分における濃度の時間変化の一例の説明図である。
図9】第1紫外線照射部が生成物に紫外線を照射した場合の各成分における濃度の時間変化の一例の説明図である。
図10】第1紫外線照射部が生成物に紫外線を照射した場合の各成分における濃度の時間変化の一例の説明図である。
図11】暗反応部におけるNO2の濃度の時間変化の説明図である。
図12】第2紫外線照射部が生成物に紫外線を照射した場合のO3の濃度の時間変化の説明図である。
図13】第2紫外線照射部が生成物に紫外線を照射した場合のH22の濃度の時間変化の説明図である。
図14】第2実施形態の硝酸生成装置の概略ブロック図である。
図15】変形例の硝酸水溶液の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
図1は、本発明の一実施形態としての硝酸生成装置(硝酸水溶液の製造装置)10の概略ブロック図である。硝酸生成装置10は、空気から硝酸(HNO3)が溶解した硝酸水
溶液を製造する。硝酸生成装置10は、加湿された加湿空気に対して無声放電を行うことにより、オゾン(O3)、HNO3、亜硝酸(HNO2)、および窒素酸化物(NOX)を含む生成物を生成する。生成物に対して紫外線が照射されることにより、生成物中のHNO2と、NOXと、O3とが反応することによりHNO3が生成される。生成されたHNO3
、生成部5において水に溶解して、不純物の少ない硝酸水溶液が、高いエネルギーを必要とせずに生成される。
【0020】
図1に示されるように、硝酸生成装置10は、加湿部1と、放電部2と、第1紫外線照射部3と、暗反応部4と、生成部5と、第2紫外線照射部6とを備えている。加湿部1は、供給された空気を加湿する。本実施形態の加湿部1は、空気の相対湿度が80%以上になるように加湿する。放電部2は、加湿部1により加湿された空気に対して無声放電を行う。放電部2としては、周知のオゾン発生器を使用できる。オゾン発生器である放電部2に、酸素(O2)の代わりに加湿された空気を供給すると、O3に加えて、HNO3および
HNO2を含んでいる生成物が生成される。例えば、非特許文献2に記載されているよう
に、温度425K、相対湿度85%の加湿空気に1.5W/cm3の出力で0.3秒間放
電すると、O3が2.7×1016個/cm3(1570ppm)に加えて、HNO3が1.
5×1015個/cm3(88ppm)、HNO2が3.6×1015個/cm3(210pp
m)が生成される。
【0021】
第1紫外線照射部3は、放電部2により生成された生成物に紫外線を照射する。第1紫外線照射部3は、生成物に含まれるNOXおよびHNO2の少なくとも一方を酸化させてHNO3を生成する。本実施形態の第1紫外線照射部3は、生成物としてのガスが通気する
管内に、波長λが305ナノメートル(nm)未満の紫外線を照射する低圧水銀ランプなどの光源を有している。そのため、放電部2を通過した生成物は、紫外線を照射されながら管内を通気する。生成物に紫外線が照射されることにより、下記反応式(3)~(8)が起こることにより、HNO2がHNO3に酸化される。
【0022】
【数3】
hν:紫外線(λ<400nm)
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
【0023】
また、生成物に紫外線が照射されると、下記反応式(9),(10)が起こることによりO3が光分解されてOHが生成される。また、O3は、上記反応式(4),(5)の反応物としてHNO3の生成に寄与し、かつ、下記反応式(11)、(12)のようにOHと
も連鎖反応して分解する。
【0024】
【数9】
(λ<305nm)
*:励起酸素原子
【数10】
【数11】
HO2:パーオキシラジカル
【数12】
【0025】
図1に示される暗反応部4は、第1紫外線照射部3により紫外線が照射された生成物に対して、少なくとも1秒間光を遮られた状態にする。なお、暗反応部4は、後述の生成部5において水に通過させる前のHNO3を含む生成物に対して少なくとも1秒間光が遮ら
れた状態にするとも換言できる。本実施形態では、暗反応部4は、通気管のみで構成されている。紫外線が照射された生成物に対して光が遮られることにより、上記反応式(5),(6)が主に起こり、NO2の濃度が低下する。
【0026】
生成部5は、暗反応部4によって光が遮られた後のHNO3を含む生成物を水に通過さ
せて、HNO3が吸収された硝酸水溶液を生成する。本実施形態の生成部5は、水が入っ
た容器(例えば、インピンジャー)に、暗反応部4からの配管が水中まで伸びた構造を有している。そのため、暗反応部4を通過した生成物は、水中をバブリングすることにより、HNO3が主として水に吸収される。
【0027】
HNO3以外の生成物に含まれるN25は、上記反応式(7)のように、水と反応して
HNO3に変化する。下記反応式(13)に示されるHO2から生成されるH22(過酸化
水素)は、水に溶解する。非特許文献4に記載されているように、水に溶解した微量のH22は、植物の育成を促進するため、生成部5により生成された水溶液を植物に使用可能である。
【数13】
【0028】
過硝酸(HNO4)は、水中でO2とHNO3とに分解する。この分解の半減期は、非特
許文献3に記載されているように、常温の20℃、かつ、pH=2.9の条件下で、7分程度である。NO2は、水に溶解後に下記反応式(14)のように反応して、HNO3とHNO2とを1:1で生成する。NO2は水中でHNO2を生成するため、暗反応部4の処理
によって生成物中のNO2の濃度を下げておくことが好ましい。
【0029】
【数14】
【0030】
生成物に含まれるO3は難溶性であり、水に吸収されるO3の量は不明ではある。しかし、非特許文献5に記載されているように、水道水中のO3の半減期は10分程度であるた
め、数十分放置した後に生成部5により生成された硝酸水溶液を利用すればよい。
【0031】
図1に示される第2紫外線照射部6は、生成部5において、水に溶解しなかった生成物としてのガスに対して、紫外線を照射する。第2紫外線照射部6は、第1紫外線照射部3と同じ構造を有している。第2紫外線照射部6による紫外線の照射により、生成物中のO3は、上記反応式(9)~(12)の反応により分解される。
【0032】
図2は、本実施形態の硝酸水溶液の製造方法のフローチャートである。図2に示される製造フローでは、初めに、加湿部1が供給される空気を加湿する(ステップS1)。放電部2は、加湿された空気に無声放電を行うことにより、NOXおよびHNO2の少なくとも一方と、O3と、を含む生成物を生成する放電工程を行う(ステップS2)。第1紫外線
照射部3は、生成物に紫外線を照射することにより、NOXおよびHNO2の少なくとも一方を酸化させてHNO3を生成する紫外線照射工程を行う(ステップS3)。暗反応部4
は、生成された生成物に対して、少なくとも1秒間光を遮られた状態にする(ステップS4)。生成部5は、暗反応部4を通過したHNO3を含む生成物を水に通過させて硝酸水
溶液を生成する生成工程を行う(ステップS5)。第2紫外線照射部6は、水を通過した生成物としてのガスに対して紫外線を照射し(ステップS6)、製造フローが終了する。製造フロー終了後の生成物としてのO3をほとんど含まないガスは、外気に排出される。
【0033】
以下では、シミュレーションによる具体的な数値結果について説明する。図3から図6までの各図は、第1紫外線照射部3が生成物に紫外線を照射した場合の各成分における濃度の時間変化の一例の説明図である。図3~6には、下記条件で第1紫外線照射部3が無声放電後の生成物に紫外線を照射した場合のO3などの各成分の濃度の時間変化が示され
ている。なお、放電部2による放電される加湿空気の条件は、非特許文献1に記載された条件と同一とした。具体的には、温度425K、相対湿度85%の加湿空気に、1.5W/cm3の出力で0.3秒間無声放電が行われた。この無声放電後の生成物に含まれる主
成分のO3は、2.7×1016個/cm3(1570ppm)である。また、O3以外の成
分として、HNO3が1.5×1015個/cm3(88ppm)、HNO2が3.6×1015個/cm3(210ppm)が生成物に含まれる。これらの各成分の濃度は、紫外線が照射される前の生成物の初期値を表している。
【0034】
<紫外線の照射の条件>
・反応計算プログラム:CHEMKIN 2(ソルバ:LSODE)
・反応モデル:Atkinsonら(非特許文献2)
・反応容器:底辺2.5cmの正方形、長さ40cmの直方体(容積は250cm3
・光照射:反応容器の側面(2.5cm×40cmの面)より照射
・光強度:4.9W(消費電力15Wの殺菌ランプ)
・紫外線:波長254nm(光子発生数:6.26×1018個/s)
・温度:300K
・湿度:85%RH
【0035】
図3~6では、紫外線が3秒間照射され続けた場合の成分の時間変化が示されている。図3では、HNO3の濃度の時間変化が実線のC1HNO3で示され、HNO2の濃度の時間変化が破線のC1HNO2で示されている。HNO2の濃度C1HNO2は、紫外線が照射され始め
てから3秒以内にほぼゼロになる。一方で、HNO3の濃度C1HNO3は、HNO2の濃度C1HNO2の低下に伴って増加し、3秒後に165ppmになる。
【0036】
図4では、O3の濃度の時間変化が実線のC1O3で示されている。O3の濃度C1O3は、3秒間の紫外線照射により、1570ppmから736ppmまで減少する。おもに上記反応式(3)~(13)および下記反応式(15)~(16)が発生することにより、3秒間の紫外線照射後に発生する主な成分は、N25と、H22と、HNO4と、NO2とである。図5では、N25の濃度の時間変化が実線のC1N2O5で示されている。N25の濃度C1N2O5は、3秒間の紫外線照射により、63ppmまで増加する。図6では、HNO4の濃度の時間変化が実線のC1HNO4で示され、H22の濃度の時間変化が破線のC1H2O2で示され、NO2の濃度の時間変化が一点鎖線のC1NO2で示されている。紫外線が照射
されると、おもに上記反応式(13)および下記反応式(15)で示されるH22の生成・消失反応、および下記反応式(16)で示されるHNO4の生成・消失反応が起こる。
【数15】
(λ<350nm)
【数16】
【0037】
22の濃度C1H2O2は、3秒間の紫外線照射により、4.9ppmまで増加する。HNO4の濃度C1HNO4は、紫外線照射開始からおよそ1.4秒後にピークとなってから、
3秒後に1.7ppmになる。NO2の濃度C1NO2は、紫外線照射開始からおよそ0.4秒後にピークとなってから、3秒後に1.3ppmになる。
【0038】
なお、放電部2が無声放電を行う空気は、必ずしも加湿部1により加湿された空気でなくてもよい。第1紫外線照射部3が紫外線を照射する生成物は、NOXおよびHNO2の少なくとも一方と、O3とを含むガスであればよい。例えば、図3~6に示される初期値に
おいて、O3の濃度の1570ppmを変更せず、HNO2の代わりにNOの初期濃度を210ppmとして、HNO3の初期濃度がゼロの場合のシミュレーション結果を以下に示
す。
【0039】
図7から図10までの各図は、第1紫外線照射部3が生成物に紫外線を照射した場合の各成分における濃度の時間変化の一例の説明図である。図7~10には、図3~6に示されるシミュレーション結果と同じ上記条件で第1紫外線照射部3がHNO2の代わりにN
Oを含み、HNO3を含まない生成物に紫外線を照射した場合の各成分の濃度の時間変化
が示されている。
【0040】
図7では、HNO3の濃度の時間変化が実線のC2HNO3で示され、NOの濃度の時間変
化が破線のC2NOで示されている。図8では、O3の濃度の時間変化が実線のC2O3で示
されている。図9では、N25の濃度の時間変化が実線のC2N2O5で示されている。図10では、HNO4の濃度の時間変化が実線のC2HNO4で示され、H22の濃度の時間変化
が破線のC2H2O2で示され、NO2の濃度の時間変化が一点鎖線のC2NO2で示されている。図7に示されるNOの濃度C2NOは、紫外線が照射され始めてからごく短時間(0.01秒以内)でほぼゼロになる。一方で、NOの酸化により発生するNO2の濃度C2NO2図10)は、上記反応式(4)が発生することで、ごく短時間で増加する。その後、上記反応式(5),(6),(8)が発生することにより、NO2の濃度C2NO2は減少する。一方で、図9に示されるN25の濃度C2N2O5が増加し、図7に示されるHNO3の濃度
C2HNO3も増加する。なお、図10に示されるNO2の濃度C2NO2は、1/10に縮小されて表されている。
【0041】
図11は、暗反応部4におけるNO2の濃度のC3NO2の時間変化の説明図である。図11には、暗反応部4において紫外線照射後の生成物に対して1秒間光が遮られた場合に、NO2の濃度C3NO2の時間変化のシミュレーション結果が実線で示されている。図11に示されるように、NO2の濃度C3NO2は、1秒間で1.3ppmから0.48ppmまで低下する。このように、暗反応部4によりNO2の濃度C3NO2を低下させることができる。なお、第1紫外線照射部3におけるNO2の濃度C2NO2がHNO3の濃度よりも大幅に
低い場合には、生成部5において、NO2が水に吸収されてHNO2を生成する量がHNO3よりも大幅に少ないため、暗反応部4による処理が行われなくてもよい。
【0042】
上述したように、第1紫外線照射部3による3秒間の紫外線照射と、暗反応部4による1秒間の光の遮断とを行ったシミュレーション結果では、165ppmのHNO3以外に
、63ppmのN25と、1.7ppmのNHO4と、0.48ppmのNO2と、0.27ppmのNO3と、5.0ppmのH22とが生成物に含まれている。これらの成分が
水に溶解する場合に、HNO3となる濃度(ppm)は、下記計算式(17)で算出され
る。なお、計算式(17)では、NO3の全てが水に溶けてHNO3になるとの前提で行われている。
【0043】
【数17】
【0044】
HNO3の濃度が294ppmであるのに対して、HNO2の濃度は、0.24ppm(上記反応式(14)からNO2の1/2)であり、HNO3の濃度よりも3桁小さい。また、H22の濃度は、5.0ppmであり、HNO3の濃度よりも2桁小さく、上述したよ
うに非特許文献4の記載から問題のない濃度と考えられる。また、濃度が736ppmのO3は、難溶性であるため、水への吸収量は不明である。しかしながら、非特許文献5に
記載されているように、O3の半減期が10分程度であるため、生成部5に用いた水を数
十分放置すれば、水を利用できると考えられる。
【0045】
図12は、第2紫外線照射部6が生成物に紫外線を照射した場合のO3の濃度の時間変
化の説明図である。図13は、第2紫外線照射部6が生成物に紫外線を照射した場合のH22の濃度の時間変化の説明図である。図12,13には、生成部5において水に溶けな
かったガスとしての生成物に対して、第2紫外線照射部6により紫外線が照射された場合の、O3の濃度C4O3およびH22の濃度C4H2O2の時間変化のシミュレーション結果が
示されている。このシミュレーション結果は、第2紫外線照射部6により波長254nmの紫外線が60秒間照射された結果である。なお、図12では、照射開始から35秒後に、O3の濃度を1000倍にした時間変化が併記されている。図13では、照射開始から
30秒後に、H22の濃度を10倍にした時間変化が併記されている。
【0046】
生成部5の水に溶けずに残存していると仮定された736ppmのO3の濃度C4O3
、第2紫外線照射部6によって紫外線が照射されることにより、図12に示されるように低下する。具体的には、O3の濃度C4O3は、20秒後に6ppm以下に低下し、50秒
後には0.06ppm(大気環境基準値)以下まで低下する。また、紫外線照射による副生成物のH22の濃度C4H2O2は、図13に示されるように、紫外線照射直後に4ppm以上まで増加した後、60秒後には0.01ppm以下まで低下する。60秒間の紫外線照射により、O3の濃度C4O3およびH22の濃度C4H2O2が十分に低下する。その結果
、第2紫外線照射部6により紫外線が照射された生成物を外気へと排出できる。
【0047】
以上のように、本実施形態の硝酸生成装置10では、放電部2は、空気に対して無声放電を行うことにより、O3に加えて、HNO3およびHNO2を含んでいる生成物を生成す
る。第1紫外線照射部3は、放電部2により生成された生成物に紫外線を照射する。第1紫外線照射部3は、生成物に含まれるNOXおよびHNO2の少なくとも一方を酸化させてHNO3を生成する。生成部5は、HNO3を含む生成物を水に通過させて、HNO3が吸
収された硝酸水溶液を生成する。本実施形態では、無声放電後の生成物に紫外線が照射されると、生成物に含まれるHNO2は、上記反応式(3)に示されるように、OHとNO
に変化する。NOは、上記反応式(4)に示されるように、O3と反応することによりN
2とO2とに変化する。また、NO2は、上記反応式(8)に示されるように、OHと反
応することによりHNO3に変化する。又は、NO2は、上記反応式(5)に示されるように、O3と反応することによりNO3とO2とに変化する。NO2とNO3とが上記反応式(
6)のように反応することにより、N25が生成される。N25は、上記反応式(7)に示されるように、空気中のH2O(水蒸気)と反応することによりHNO3に変化する。一方で、O3は、紫外線が照射されることにより、上記反応式(9)に示されるように、O*と、O2とに変化する。O*は、上記反応式(10)に示されるように、空気中の水蒸気と反応することにより、HNO3の生成に必要なOHを生成する。すなわち、無声放電が行
われた生成物に紫外線が照射されることにより、O3の除去と、HNO3の生成とが行われる。生成されたHNO3を含む生成物が水を通過することにより、水に溶けやすいHNO3が水中に取り込まれ、難溶性のO3は水中にはほとんど取り込まれない。本実施形態では
、空気よりHNO3が生成され、NH3やNOXなどの用意が不要となる。この結果、大き
なエネルギーを必要とせずに、空気より不純物の少ない硝酸水溶液を得ることができる。また、本実施形態によれば、不純物の少ない硝酸水溶液を得つつ、無声放電により主成分として発生する有害なO3を低減できる。
【0048】
また、本実施形態の第2紫外線照射部6は、生成部5において、水に溶解しなかった生成物としてのガスに対して、紫外線を照射する。本実施形態では、HNO3が水に溶けた
後の生成物としてのガスに残存しているO3に紫外線が照射されることにより、図12
示されるように、O3が除去される。この結果、O3を除去した生成物を外気へと排出できる。
【0049】
また、本実施形態の暗反応部4は、生成部5において水に通過させる前のHNO3を含
む生成物に対して少なくとも1秒間光が遮られた状態にする。本実施形態では、第1紫外線照射部3により紫外線が照射された生成物に対して1秒間光が遮られることにより、生成部5で水に溶けてHNO2を生成する元となるNO2を減らすことができる。これにより
、生成部5により生成される硝酸水溶液の不純物をより低減できる。
【0050】
また、本実施形態の加湿部1は、空気の相対湿度が80%以上になるように加湿する。そのため、第1紫外線照射部3により紫外線が照射されて生成されるHNO3の元となる
水蒸気が空気に多く含まれる。そのため、より効率よく硝酸水溶液を得ることができる。
【0051】
<第2実施形態>
図14は、第2実施形態の硝酸生成装置10aの概略ブロック図である。第2実施形態の硝酸生成装置10aは、六方バルブ(六方切替バルブ)8を用いて、生成部5から排出されたガスとしての生成物を、再度第1紫外線照射部3に循環させる循環型の硝酸生成装置である。第2実施形態では、第1実施形態と異なる構成および制御について説明し、第1実施形態と同じ構成等についての説明を省略する。
【0052】
第2実施形態の硝酸生成装置10aは、放電部2と、第1紫外線照射部3と、暗反応部4と、生成部5と、第2紫外線照射部6と、六方バルブ8と、ポンプ7とを備えている。図14に示されるように、六方バルブ8は、6個のポートを備えている。6個のポートのうちの2個は、放電部2と、第1紫外線照射部3と、暗反応部4と、生成部5と、ポンプ7とが直列で接続された1つの系を構成する。ポンプ7は、2個のポート間で構成された系内のガスとしての生成物を送気する。
【0053】
6個のポートのうち別の2個のポートでは、第2紫外線照射部6で紫外線が照射された生成物がループする1つの系が構成されている。6個のポートのうち、残りの2個のポートの一方は外気から吸気し、他方は外気へと排気する。なお、図14に示される六方バルブ8の実線は接続している状態を示し、破線は接続していない状態を示している。図14に示される状態は、放電部2等とポンプ7とが生成物が循環可能であり、かつ、第2紫外線照射部6が含まれる閉じられた系で生成物が循環可能である。
【0054】
図14に示される状態では、生成部5から排出されるガスとしての生成物は、ポンプ7により送気されて複数回生成部5の水中をバブリングする。生成物が複数回バブリングしても、水に溶けるO3の量は、上限値(溶解度、20℃で570mg/l)を超えて吸収
されない利点がある。そのため、例えば、O3の水への溶解度に対して、1000倍以上
の濃度のHNO3を水に吸収させれば、水のO3の濃度はHNO3の濃度よりも3桁以上低
くできる。また、バブリングには、ガスとしての生成物を加湿する効果があるため、第2実施形態では、第1実施形態の加湿部1の構成が不要になる。なお、図14に示される硝酸生成装置10aでは、放電部2から暗反応部4までの循環1周目の処理では生成部5のバブリングにより吸気された空気が加湿されないが、循環2周目以降では、バブリングにより空気が加湿される。循環1周目から加湿させるため、生成部5を放電部2の上流側に配置しても良い。なお、バブリングにより水を気化させると、気化熱により水や生成物の温度が低下するため、硝酸水溶液の生成に対する温度低下の影響が大きい場合には、ヒータにより水温が一定に維持されてもよい。
【0055】
図14に示される状態から、ポートの接続が変化すると(図14の破線が接続状態になると)、放電部2等と吸気ポートとが接続され、放電部2等に空気が供給される。ポート接続変化前に、放電部2とポンプ7とを循環していた生成物は、ポート接続変化後に、第2紫外線照射部6へと送られる。ポート接続変化前に、第2紫外線照射部6によりO3
低下した生成物は、ポート接続変化後に外気へと排出される。以上のように、第2実施形態では、図14に実線で示されるポート接続の循環時と、図14に破線で示されるポート接続の掃気時とによって硝酸水溶液の生成が制御されている。なお、第2実施形態では、循環時のポート接続の時間は、掃気時のポート接続の時間よりも長い。
【0056】
<実施形態の変形例>
本発明は上記実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。また、上記実施形態において、ハードウェアによって実現されるとした構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されるとした構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【0057】
<変形例1>
上記第1実施形態および第2実施形態では、硝酸水溶液を製造する硝酸製造装置の一例について説明した。しかし、硝酸生成装置については、放電部2と、第1紫外線照射部3と、生成部5とを備える範囲で変形可能である。例えば、第1実施形態の硝酸生成装置10は、加湿部1と、暗反応部4と、第2紫外線照射部6とを備えていなくてもよい。例えば、加湿部1が、空気を加湿する場合には、相対湿度80%以上に加湿しなくてもよく、相対湿度80%未満に加湿してもよい。加湿部1により加湿された空気が放電部2に供給されたが、加湿部は、放電部2に供給された後の空気を加湿してもよい。硝酸生成装置10,10aは、第2紫外線照射部6の代わりに、活性炭によりO3を吸着して除去しても
よい。また、O3の除去として、O3を含まない気体で十分に希釈して大気環境基準値以下の濃度に低下した後に、O3を含む生成物が外気に排出されてもよい。
【0058】
上記第1実施形態では、第1紫外線照射部3と、第2紫外線照射部6とが同じ構造を有していたが、異なる構造を有していてもよく、生成物に対して紫外線を照射できる範囲で変形できる。また、上記実施形態では、シミュレーション結果としての一例について説明したが、シミュレーションに用いた数値は変形可能である。例えば、第1紫外線照射部3が照射する紫外線の波長λは305nm未満の範囲で変形可能である。
【0059】
図15は、変形例の硝酸水溶液の製造方法のフローチャートである。図15に示される製造フローは、図2に示される第1実施形態の製造フローに対して、ステップS1,S4,S6の処理を備えていない。すなわち、変形例の製造フローのステップS1a,S2a,S3aの各処理は、図2の製造フローのステップS2,S3,S5の処理と同じである。なお、図15の製造フローでは、加湿部1によって空気が加湿されていない。この場合に、放電工程(S1a)において、HNO3およびHNO2の生成が抑制され、代わりにNOXの生成が促進されるが、紫外線照射工程(S2a)および生成工程(S3a)におい
てHNO3は生成される。
【0060】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0061】
本発明は、以下の形態としても実現することが可能である。
[適用例1]
硝酸水溶液を製造する製造装置であって、
空気に無声放電を行うことにより、窒素酸化物および亜硝酸の少なくとも一方と、オゾンと、を含む生成物を生成する放電部と、
前記生成物に紫外線を照射することにより、前記生成物に含まれる窒素酸化物および亜硝酸の少なくとも一方を酸化させて硝酸を生成する第1紫外線照射部と、
生成された硝酸を含む前記生成物を水に通過させて硝酸水溶液を生成する生成部と、
を備える、製造装置。
[適用例2]
適用例1に記載の製造装置であって、さらに、
前記生成部において、水に溶解しなかったオゾンを含む前記生成物に対して、紫外線を照射する第2紫外線照射部を備える、製造装置。
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載の製造装置であって、さらに、
前記生成部において水に通過させる前の硝酸を含む前記生成物に対して、少なくとも1秒間光が遮られた状態にする暗反応部を備え、
前記生成部は、前記暗反応部によって光が遮られた後の硝酸を含む前記生成物を水に通過させて硝酸水溶液を生成する、製造装置。
[適用例4]
適用例1から適用例3までのいずれか一項に記載の製造装置であって、さらに、
前記放電部の空気の湿度を80%以上に加湿する加湿部を備える、製造装置。
[適用例5]
硝酸水溶液を製造する製造方法であって、
空気に無声放電を行うことにより、窒素酸化物および亜硝酸の少なくとも一方と、オゾンと、を含む生成物を生成する工程と、
前記生成物に紫外線を照射することにより、前記生成物に含まれる窒素酸化物および亜硝酸の少なくとも一方を酸化させて硝酸を生成する工程と、
生成された硝酸を含む前記生成物を水に通過させて硝酸水溶液を生成する生成部と、
を備える、製造方法。
【符号の説明】
【0062】
1…加湿部
2…放電部
3…第1紫外線照射部
4…暗反応部
5…生成部
6…第2紫外線照射部
7…ポンプ
8…六方バルブ
10,10a…硝酸生成装置
C1H2O2…H22の濃度
C1HNO2…HNO2の濃度
C1HNO3…HNO3の濃度
C1HNO4…HNO4の濃度
C1N2O5…N25の濃度
C1NO2…NO2の濃度
C1O3…O3の濃度
C2H2O2…H22の濃度
C2N2O5…N25の濃度
C2HNO3…HNO3の濃度
C2HNO4…HNO4の濃度
C2NO…NOの濃度
C2NO2…NO2の濃度
C2O3…O3の濃度
C3NO2…NO2の濃度
C4H2O2…H22の濃度
C4O3…O3の濃度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15