(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173031
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】クリーンルームシステム及びクリーンルームシステム搭載車両
(51)【国際特許分類】
F24F 7/06 20060101AFI20241205BHJP
B01L 1/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F24F7/06 C
B01L1/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091146
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】523208659
【氏名又は名称】株式会社Gaudi Clinical
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅教
【テーマコード(参考)】
3L058
4G057
【Fターム(参考)】
3L058BF01
3L058BF03
3L058BG04
4G057AA08
4G057AA11
4G057AA13
(57)【要約】
【課題】設置コストまたは維持コストを低減可能なクリーンルームシステムを実現する。
【解決手段】クリーンルームシステム10は、気密性を有するクリーンルーム20と、クリーンルームの外部90から内部22に給気を行う給気ユニット30、安全キャビネット40を備える。安全キャビネット40は、作業空間42と、内部22から作業空間42に給気を行う作業空間給気路と、作業空間42から外部90に排気を行う作業空間排気路と、作業空間排気路に設けられ排気を駆動する排気ファン60と、作業空間排気路に設けられ排気を清浄化するフィルタ62とを備える。排気ファン60が、内部22から外部90への全排気を駆動し、かつ、内部22を陰圧に維持する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密性を有するクリーンルームと、
前記クリーンルームの外部から内部に給気を行うルーム給気路と、
作業空間と、前記クリーンルームの内部から前記作業空間に給気を行う作業空間給気路と、前記作業空間から前記クリーンルームの外部に排気を行う作業空間排気路と、前記作業空間排気路に設けられ前記排気を駆動する排気ファンと、前記作業空間排気路に設けられ前記排気を清浄化するフィルタとを備え、前記クリーンルームの内部に設置されるハザード対策用キャビネットと、
を備え、
前記排気ファンが、前記クリーンルームの内部から外部への全排気を駆動し、かつ、前記クリーンルームの内部を陰圧に維持する、ことを特徴とするクリーンルームシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のクリーンルームシステムにおいて、
前記クリーンルームの内部から、前記作業空間を通過せずに、前記作業空間排気路に連通する迂回路を備え、
前記排気ファンは、迂回路を流れる空気の駆動も行う、ことを特徴とするクリーンルームシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のクリーンルームシステムにおいて、
前記ハザード対策用キャビネットは安全キャビネットであり、
前記作業空間はバイオ系対象物に対する作業が行われる空間である、ことを特徴とするクリーンルームシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のクリーンルームシステムにおいて、
前記ルーム給気路は、前記排気ファンによって形成される前記クリーンルームの内部の陰圧を駆動力として給気を行う自然給気路である、ことを特徴とするクリーンルームシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のクリーンルームシステムにおいて、
前記作業空間は、細胞培養加工施設で製造された再生医療製品に対する作業が行われる空間であり、
当該クリーンルームシステムは、前記再生医療製品を使用する治療場所の近傍に設置される、ことを特徴とするクリーンルームシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のクリーンルームシステムにおいて、
前記治療場所は2以上の建築物に分散して存在しており、
当該クリーンルームシステムは、少なくとも2以上の建築物における前記治療場所にとって近傍となる位置に設置される、ことを特徴とするクリーンルームシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のクリーンルームシステムと、
前記クリーンルームを搭載する車両と、
を備え、
前記作業空間は、細胞培養加工施設で製造された再生医療製品に対する作業が行われる空間であり、
前記車両は、再生医療製品を使用する治療場所の近傍への移動が可能である、ことを特徴とするクリーンルームシステム搭載車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルームシステム及びクリーンルームシステム搭載車両に関する。
【背景技術】
【0002】
内部の圧力を外部よりも低く維持する陰圧型のクリーンルームでは、外部との連通部において、クリーンルームの外部から内部へと空気が流れる。このため、陰圧型のクリーンルームでは、クリーンルームの内部に存在する感染性物質等の浮遊微粒子を含む空気がクリーンルームの外部に漏れ出すことを低減または防止することができる。
【0003】
クリーンルームには、感染性物質等の作業対象物に操作等を行うための作業空間を備えた安全キャビネット等の装置を設けることがある。安全キャビネットは、多くの場合、それ単体で作業空間における給排気を制御する。
【0004】
非特許文献1は、安全キャビネット及び類似する装置についての日本産業規格JISである。装置は、バイオハザード対策用キャビネットの名称で呼ばれ、基本構造によってクラスI、クラスII、クラスIIIにクラス分けされている。クラスIとクラスIIは、作業空間の前面の壁に開口(前面開口部)を設けた開放型であり、クラスIIIは開口がない閉鎖型である。
【0005】
クラスIの装置は、一般的にはドラフトチャンバと呼ばれ、前面開口部から取り入れた空気を清浄化せずに作業空間に給気し、作業空間からの排気をフィルタにより清浄化して排気する。クラスIIの装置は、一般的には安全キャビネットと呼ばれる。このうち、循環路を備えるタイプでは、前面開口部から取り入れた空気を循環路に取り込む。循環する空気は、フィルタにより清浄化されて作業空間に給気され、作業空間から排気される過程を繰り返す。この過程で、一部の空気は、フィルタにより清浄化された後に外部に排気される。循環路を備えないタイプでは、外部から別途取り入れた空気をフィルタで清浄化して作業空間に給気し、作業空間に給気された空気と前面開口部から給気された空気を合わせてフィルタで清浄化して外部に排気する。クラスIIIは、一般的にはアイソレータと呼ばれる装置クラスであり、外部から取り入れた空気をフィルタで清浄化して作業空間に給気し、作業空間からの排気をフィルタで清浄化して外部に排気する。この規格は、バイオの名称が付与されているが、バイオ分野の用途に限るものではなく、揮発性物質などの他の物質を取り扱う用途も考慮して策定されている。
【0006】
下記特許文献1には、パーティションを組み合わせて形成される陰圧型のクリーンルームについて記載されている。このクリーンルームは、バイオ系の用途に用いられるものであり、内部には安全キャビネットが設置されている。このクリーンルームでは、クリーンルーム自体と安全キャビネットの給排気システムが統合した形態で作られている。具体的には、クリーンルームへの給気は給気ファンによって行われ、クリーンルームから外部への排気は排気ファンによって行われる。また、安全キャビネットからクリーンルームの外部へ排気を行う局所排気ファンも別途設けられている。これらのファンは、制御部によって制御され、クリーンルームの内部を陰圧に保っている。
【0007】
下記特許文献2は、安全キャビネット等を備えた気流バリア方式による微陽圧型の開放型クリーンルーム(この文献ではクリーンブースと呼んでいる)に関する文献である。クリーンルームの壁にはドアの無い常時開放された出入口が設けられ、天井には給気ファンが設けられている。空気は、給気ファンによってクリーンルームの内部に給気される。安全キャビネットでは、安全キャビネットに設けられたファンが、クリーンルームの内部の空気を給気し、作業空間に流した後、クリーンルームの内部に安全キャビネットから空気を排気する。そして、クリーンルームの内部の空気は、出入口に向かって一方向に流れて、クリーンルームの外部に排気されている。
【0008】
下記特許文献3には、患者から採取した細胞を加工した後、患者に移植する技術が記載されている。アカデミアで採取された細胞は、細胞培養加工施設(文献ではCPFと呼ばれている)で加工されてアカデミアに返され、アカデミアでの患者への移植に使われる。移植される細胞は医薬品として扱われ、製造業者は、米国の法令に従いCGMPグレードで一連の工程管理をすることが求められている(0012段落から0018段落など)。そこで、この文献では、患者が治療を受ける場所の近くにCGMPグレードを満たす施設を設け、必要な管理等を行うことを提案している(0019段落、0089~0118段落など)。
【0009】
再生医療を行う場合には、実施される国や地域における法令等を遵守する必要がある。日本国においては、非特許文献2の法律において「再生医療等製品」が次のように規定されている:「次に掲げる物(医薬部外品及び化粧品を除く。)であつて、政令で定めるものをいう 一 次に掲げる医療又は獣医療に使用されることが目的とされている物のうち、人又は動物の細胞に培養その他の加工を施したもの イ 人又は動物の身体の構造又は機能の再建、修復又は形成 ロ 人又は動物の疾病の治療又は予防 二 人又は動物の疾病の治療に使用されることが目的とされている物のうち、人又は動物の細胞に導入され、これらの体内で発現する遺伝子を含有させたもの」。また、非特許文献3の法律では、再生医療等製品を含む再生医療の安全確保などが規定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005-326093号公報
【特許文献2】特開2019-100594号公報
【特許文献3】米国特許公開第2003-0175242A1号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】JIS K3800 バイオハザード対策用クラスIIキャビネット 2021年7月20日改正
【非特許文献2】日本国「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」
【非特許文献3】日本国「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
陰圧型のクリーンルームを簡易に構成したいというニーズがある。しかし、上記特許文献1のクリーンルームでは、クリーンルームの内部から外部への排気を行う排気ファンと、安全キャビネットの内部からクリーンルームの外部への排気を行う局所排気ファンとが設けられており、クリーンルームの主排気系統と安全キャビネットを介した局所排気系統が一体型に制御されており排気構造に冗長性がある。上記特許文献2では、簡易な排気構造が記されているが、陽圧型のクリーンルームゆえの構成にすぎない。
【0013】
本発明の目的は、製造コストまたは維持コストを低減する陰圧型のクリーンルームシステムを実現することにある。
【0014】
また、再生医療を円滑に進めるために、患者が治療を受ける病院等またはその近傍に、細胞を取り扱うためのクリーンルームを設けたいというニーズがある。しかし、上記特許文献3では、施設の設置あるいは維持におけるコストが考慮されていない。
【0015】
本発明の別の目的は、再生医療を行う病院等あるはその近傍において、クリーンルームの設置または維持を容易化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係るクリーンルームシステムは、気密性を有するクリーンルームと、前記クリーンルームの外部から内部に給気を行うルーム給気路と、作業空間と、前記クリーンルームの内部から前記作業空間に給気を行う作業空間給気路と、前記作業空間から前記クリーンルームの外部に排気を行う作業空間排気路と、前記作業空間排気路に設けられ前記排気を駆動する排気ファンと、前記作業空間排気路に設けられ前記排気を清浄化するフィルタとを備え、前記クリーンルームの内部に設置されるハザード対策用キャビネットと、を備え、前記排気ファンが、前記クリーンルームの内部から外部への全排気を駆動し、かつ、前記クリーンルームの内部を陰圧に維持する。
【0017】
作業空間は、作業者または機器によって作業対象物に対する作業が行われる空間である。ハザード対策用キャビネットは、給排気が制御された作業空間を備え、作業空間に生じる微粒子によるハザード対策がなされる装置である。ハザード対策とは、作業者または周囲環境への危険性を低減または除去する対処策をいう。ハザード対策用キャビネットは、上記非特許文献1に記載されたクラスI、II、IIIの基本構造をもつバイオハザード対策用キャビネットを含むが、これに限られるものではない。ハザード対策用キャビネットには、上記非特許文献1が定める数値、構成、材質などの条件を満たさないが、全体としてユーザが必要とするレベルのハザード対策を実施できるものが含まれる。
【0018】
クリーンルームの内部を陰圧に維持するとは、クリーンルームの内部の気圧が、外部の気圧よりも、時間平均値でみて小さい状態に制御されることをいうもの、あるいは、時間平均値でみて気流がクリーンルーム外部から内部へ向かうものの一方または両方を満たすものとする。気圧は、ファンの動作や流れの乱れなどに起因して時間的にも空間的にも変動するため、時間平均をとることで、この変動を平滑化した状態を評価することができる。時間平均をとる期間は、気圧センサの応答速度にもよるが、例えば、60秒、30秒または10秒程度とすることが考えられる。また、気流の方向は、スモークテストで確認することができる。内部と外部の気圧差はさまざまに設定可能であり、具体値として30Pa、20Pa、10Pa、5Pa、3Pa,1Paなどを例示することができる。気圧差は、クリーンルームの内部から外部への空気の微粒子の漏れ出しを低減または防止したいレベルに応じて設定することが考えられる。また、出入口ドアの開閉操作の容易性、風きり音の抑制、ファンの消費電力、または、フィルタの通風性を考慮して、気圧差を設定することも考えられる。気圧差を小さくした場合、ある短時間では、クリーンルームの内部の気圧が外部の気圧よりも高くなる(陽圧になる)状況も考えられる。しかし、陽圧になった結果生じる空気の外部への漏れ出しが少量に留まり、クリーンルームシステムがハザード対策可能なレベルを維持できる場合には、この短時間の陽圧化を容認することができる。
【0019】
なお、本クリーンルームシステムでは、ハザード対策用キャビネットが作業空間給気路、作業空間排気路、排気ファン及びフィルタを備えるが、これらの構成品はクリーンルーム自体における給排気とも密接に関係した不可分な部品である。この点で、クリーンルームとハザード対策用キャビネットは、一体的に構成されていると言える。したがって、これらの構成品の一部または全部は、ハザード対策用キャビネットに属する構成品ではなく、クリーンルームに備えられた部品、あるいは、別途設けられた部品として、製品カタログ等で取り扱われる場合もありえる。その場合であっても、これらの構成品が、バイオハザード対策用キャビネットを実現するために必要な要素となっているならば、本ハザード対策用キャビネットの構成品をなすものであり、本発明の構成要件を充足するものといえる。
【0020】
本発明の一態様においては、前記クリーンルームの内部から、前記作業空間を通過せずに、前記作業空間排気路に連通する迂回路を備え、前記排気ファンは、迂回路を流れる空気の駆動も行う。なお、別の態様においては、迂回路を設けず、作業空間を通過した空気のみを排気する構成をとる。
【0021】
本発明の一態様においては、前記ハザード対策用キャビネットは安全キャビネットであり、前記作業空間はバイオ系対象物に対する作業が行われる空間である。安全キャビネットは、上記非特許文献1におけるバイオハザード対策用キャビネットクラスIIを充足するものを含むが、これに限られるものではない。上記非特許文献1が定める数値、構成、材質などの条件を満たさないものであっても、全体としてユーザが必要とするレベルのバイオハザード対策を実施できればよいものとする。
【0022】
本発明の一態様においては、前記ルーム給気路は、前記排気ファンによって形成される前記クリーンルームの内部の陰圧を駆動力として給気を行う自然給気路である。
【0023】
本発明の一態様においては、前記作業空間は、細胞培養加工施設で製造された再生医療製品に対する作業が行われる空間であり、当該クリーンルームシステムは、前記再生医療製品を使用する治療場所の近傍に設置される。
【0024】
再生医療製品は、上記非特許文献2に定義された再生医療等製品を含むが、これに限定されるものではない。再生医療製品には、動物の細胞に培養その他の加工を施した一般的な細胞加工物も含まれるものとする。また、再生医療製品には、法令等により医薬品、医薬部外品、化粧品、動物用医薬品などに分類される製品も含まれるものとする。同様に、治療場所は、患者への治療場所を表す他、法令等により医療としては扱われない場合における施術対象の人または動物への施術場所を含むものとする。
【0025】
再生医療製品には、有償で提供されるものが含まれる他、無償で提供されるものも含まれるものとする。
【0026】
本発明の一態様においては、前記治療場所は2以上の建築物に分散して存在しており、当該クリーンルームシステムは、少なくとも2以上の建築物における前記治療場所にとって近傍となる位置に設置される。
【0027】
本発明に係るクリーンルームシステム搭載車両は、前記クリーンルームシステムと、前記クリーンルームを搭載する車両と、を備え、前記作業空間は、細胞培養加工施設で製造された再生医療製品に対する作業が行われる空間であり、前記車両は、再生医療製品を使用する治療場所の近傍への移動が可能である。
【発明の効果】
【0028】
製造コストまたは維持コストを低減可能なクリーンルームシステムが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】第1実施形態に係るクリーンルームシステムの斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係るクリーンルームシステムの上面図である。
【
図3】第1実施形態に係るクリーンルームシステムの側面図である。
【
図4】第1実施形態に係るクリーンルームシステムの制御態様を示す図である。
【
図5】第2実施形態に係るクリーンルームシステムの側面図である。
【
図6】第3実施形態に係るクリーンルームシステムの側面図である。
【
図7】第4実施形態に係るクリーンルームシステムの側面図である。
【
図8】第5実施形態に係るクリーンルームシステムの側面図である。
【
図9】第6実施形態に係るクリーンルームシステムの利用例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に本発明の実施形態について図面を用いて説明する。各実施形態は例示であり、本発明はさらに多様な形態で実施可能であることに留意されたい。また、各図は実施形態の特徴を簡易に示す概略図であり、構造や縮尺は必ずしも正確ではないことに留意されたい。
【0031】
(1)第1実施形態
図1、
図2及び
図3は、それぞれ、第1実施形態に係るクリーンルームシステム10の斜視図、上面図及び側面図である。
図4は、第1実施形態に係るクリーンルームシステム10の制御態様を示すブロック図である。
【0032】
まず、
図1~
図3を参照して、クリーンルームシステム10の全体構成について説明する。クリーンルームシステム10は、清浄度が管理されたクリーンルーム20と、それに付随する装置等によって形成されるシステムである。
【0033】
クリーンルーム20は、床、壁及び天井を備えており、内部22の空間を気密に保つ閉鎖的な構造物である。気密とは、内部22と外部90との空気の流れを低減または遮断した状態を指し、気密性とは空間を気密に保つ特性をいう。クリーンルーム20が気密性を有することで、クリーンルーム20の内部22における清浄度を管理することが可能となる。清浄度は例えば空気中の微粒子量で定量化される。クリーンルーム20の床、壁及び天井は、例えば、品質管理された工場で生産されたパネル部材を密に組み合わせて形成される。クリーンルーム20の壁、床及び天井の一部又は全部を、既存の建築物の構造を利用して形成することも可能である。クリーンルーム20を建築物内に設置する場合、クリーンルーム20の外部90は、清浄度が管理されていない一般的な室内空間であってもよいし、清浄度が管理された別のクリーンルームであってもよい。また、クリーンルーム20を、その外面が屋外に曝される形態で、屋外に設置することも可能である。なお、
図1~
図3においては、クリーンルーム20は、水平2方向が各3m程度、高さが2m程度であることを想定して図示している。しかし、大きさは様々に設定可能であり、それより小さいもの(例えば水平2方向の一方または両方が2m程度)としてもよいし、大きいももの(例えば水平2方向の一方もしくは両方が4m、6mもしくは10m程度、または、高さが3mもしくは4m程度)としてもよい。
【0034】
第1実施形態に係るクリーンルームシステム10は、クリーンルーム20に加えて、クリーンルーム20に隣接する緩衝ルーム24を備えている。緩衝ルーム24は、クリーンルーム20の内部22と外部90との間にあって、作業者の入退室時あるいは作業対象物の出し入れ時に緩衝空間となる部屋である。緩衝ルーム24は、外側ドア26と内側ドア28を備えている。外側ドア26は外部90と緩衝ルーム24との間の出入りに用いられ、内側ドア28は緩衝ルーム24とクリーンルーム20の内部22との間の出入りに用いられる。外側ドア26と内側ドア28は同時に開くことができないように制御されており、クリーンルーム20の内部22と外部90との間で直接的に換気が行われることが防止されている。また、緩衝ルーム24を設けることで、入退出時におけるクリーンルーム20の内部22における気圧の変化を小さくし、空気の乱れを抑制することができる。
【0035】
クリーンルーム20には、クリーンルームシステム10を構成する装置として、給気ユニット30と安全キャビネット40が設けられている。
【0036】
給気ユニット30は、クリーンルーム20の給気を制御する装置である。給気ユニット30は、クリーンルーム20の外部90から内部22に給気を行う流路(「ルーム給気路」と呼ぶ)に設置されている。クリーンルームシステム10では、ルーム給気路は、クリーンルーム20の天井における緩衝ルーム24に比較的近い位置に設けられている。給気ユニット30は、HEPAフィルタ32と給気ファン34を重ね合わせてユニット化した装置であり、ルーム給気路に着脱可能に装着される。HEPAフィルタ32は、HEPA(High Efficiency Particulate Air)の規格で空気中の微粒子を除去するフィルタである。HEPAフィルタ32は、給気ファン34に着脱可能に装着されている。このため、HEPAフィルタ32の清掃及び交換は、給気ユニット30を取り外し、さらにHEPAフィルタ32を取り外すことで簡単に行うことができる。
【0037】
給気ファン34は、給気用のファンを備えた装置である。「ファン」という用語は、空気を駆動する装置を広く指しており、プロペラファン、シロッコファン、遠心ファン、これらを組み合わせた複合ファンなど、様々な構造のものを含むものとする。給気ファン34は、図示を省略した電力線から電力供給を受けて動作し、空気をクリーンルーム20の外部90から内部22へと駆動する。このとき、空気は、HEPAフィルタ32を通って流れるため、外部90の空気に含まれる微粒子が除去される。
【0038】
安全キャビネット40は、前面開口部44を備えた開放型のハザード対策用キャビネットである。安全キャビネット40は、クリーンルーム20の内部22における緩衝ルーム24から遠い壁面付近に設けられている。安全キャビネット40は、作業空間42、前面開口部44、HEPAフィルタ46、流路50a~50f、排気ファン60及びHEPAフィルタ62を備えている。
【0039】
作業空間42は、作業対象物に対する作業を行うために設けられる空間であり、作業フード、作業チャンバなどと呼ばれることもある。作業空間42は、安全キャビネット40の内部にほぼ直方体の形状に設けられている。作業空間42の上面にはHEPAフィルタ46が設けられている。作業空間42の前面(図においては室内の中心に近い側であり、作業者が位置する側である)の壁は、透明なガラス板で形成されているが、その下部は樹脂板が無い前面開口部44となっている。作業空間42の底面またはその周囲には、後述する流路50aに通じる孔が設けられている。
【0040】
前面開口部44は、クリーンルーム20の内部22と連通した部位であり、作業者が腕や作業対象物を出し入れするために使われる他、クリーンルーム20の内部22の空気を装置へ給気する流路としても使われる。
【0041】
HEPAフィルタ46は、作業空間42の上面に設置されている。HEPAフィルタ46は、作業空間42に給気する空気を清浄化するフィルタであり、その上面から下面へと空気が流される。HEPAフィルタ46を通過した空気は、作業空間42において無菌操作と呼ばれる操作が可能なレベルにまで清浄化される。
【0042】
作業空間42の周囲には、
図3に示す通り、連通した空気の流路50a~50fが設置されている。流路50aは、作業空間42の下方に設けられ、作業空間42の底面に設けられた孔と連通する流路である。流路50aは、安全キャビネット40の前後方向にほぼ水平に延びている。流路50bは、作業空間42の後方に設けられ、上下方向(鉛直方向)に延びる流路である。流路50bの下端は、流路50aの後端と連通している。流路50cは、流路50bの延長線上に位置する流路であり、上下方向に延びている。流路50cの下端は、排気ファン60を介して、流路50bの上端と連通している。流路50dは、流路50cの延長線上に位置する流路であり、ほぼ上下方向に延びている。流路50dの下端はHEPAフィルタ62を介して流路50cの上端と連通しており、流路50dの上端はクリーンルーム20の外部90に連通している。
【0043】
流路50eは、作業空間42の上方に位置する流路であり、安全キャビネット40の前後方向にほぼ水平に延びている。流路50eの後端は排気ファン60を介して、流路50bの上端と連通しており、流路50eの前端はHEPAフィルタ46の上面に繋がっている。流路50fは作業空間42における空気の流路であり、作業空間42をほぼ一様に下向きに流れる。流路50fの上端は、HEPAフィルタ46の下面に繋がっており、HEPAフィルタ46を介して流路50eの前端と連結している。流路50fの下端は、作業空間42の底面に設けられた孔を介して、流路50aと連通している。また、流路50f内の前下部は、前面開口部44を介して、クリーンルーム20の内部22(かつ安全キャビネット40の外部)に連通している。流路50a~50eの一部または全部は、例えば、管状のダクトを用いて形成することが可能であり、また、板状の部材を用いて形成することも可能である。本実施形態では、流路50a~50eは、安全キャビネット40を構成するフレームに取り付けられ、さらに、その周囲を安全キャビネット40のカバーで覆われており、安全キャビネット40と一体的に形成された状態にある。
【0044】
排気ファン60は、流路50b、50c、50dが連通する部位に設けられている。排気ファン60は、空気を駆動するファンを備えており、電力によって動作する。排気ファン60は、流路50bから空気を吸引し、流路50cと流路50dに分配して排出する。分配の比率は、一定であってもよいし、例えば、例えば電動の可動弁を用いて、可変制御されてもよい。
【0045】
HEPAフィルタ62は、流路50cと流路50dの間に着脱可能に設けられている。HEPAフィルタ62は、クリーンルーム20の内部22から外部90へ行われる排気を、ハザードが防止または低減できるレベルにまで清浄化するフィルタである。
【0046】
HEPAフィルタ62は、典型的には、流路50c、50dの中の1箇所に1つ設けられるが、複数個所に設けることも可能であり、また、1箇所に複数設けることも可能である。
【0047】
次に、クリーンルームシステム10の動作について説明する。クリーンルームシステム10では、作業者は、外部90から緩衝ルーム24を経由して、クリーンルーム20の内部22に入室する。このとき、作業者は、まず、外側ドア26を開けて緩衝ルーム24に入室し、外側ドア26を閉じる。緩衝ルーム24を更衣室とする場合には、作業者は、所定の衣服等を身に着ける。続いて作業者は、内側ドア28を開けてクリーンルーム20の内部22に入室に内側ドア28を閉じる。外側ドア26と内側ドア28は、インターロックで制御されており、両方を同時に開くことはできないよう設定されている。
【0048】
クリーンルーム20の内部22では、作業者は、安全キャビネット40の前方に、立った状態あるいは椅子に座った状態で位置する。そして、作業者は、前面開口部44を通じて、作業空間42に作業対象物や腕を出し入れしつつ、作業対象物の操作などを行う。
【0049】
クリーンルーム20では、ルーム給気路に設けられた給気ユニット30を通じて、空気70aが外部90から内部22に給気される。給気を駆動するのは給気ファン34である。空気70aは、HEPAフィルタ32により清浄化された後にクリーンルーム20の内部22に流れ込む。
【0050】
クリーンルーム20の内部22では、空気70bが、給気ユニット30から安全キャビネット40の前面開口部44に向けて流れる。空気70bは、乱れが比較的少なくなるように制御されており、近似的に見て一方向に流れる。そして、空気70cが、前面開口部44から安全キャビネット40の内部に取り込まれ、流路50aに入る。
【0051】
安全キャビネット40の内部では、空気は、排気ファン60によって駆動される(もちろん、間接的には、給気ファン34による給気も空気を駆動している)。排気ファン60の機能は、次の3つに分類して考えることができる。1つ目は、クリーンルーム20の内部22にある空気を作業空間42に給気する機能である。2つ目は、安全キャビネット40の内部において空気を循環させる機能である。3つ目は、空気を外部90へ排気する機能である。以下に、それぞれの詳細を説明する。
【0052】
1つ目の給気では、空気は、内部22を起点に、前面開口部44、作業空間42内の前下部(流路50fの前下部でもある)、流路50a及び流路50b、流路50eを経て、作業空間42に給気される。この流路は、クリーンルーム20の内部22の空気を作業空間42に給気するものであり、「作業空間給気路」と呼ぶことにする。排気ファン60は、作業空間給気路の途中に設けられ、作業空間42への給気を駆動している。また、HEPAフィルタ46は、作業空間給気路に設けられて、作業空間42に給気される空気を清浄化している。
【0053】
2つ目の循環では、空気は、流路50e、流路50f(作業空間42)、流路50a、流路50bからなる循環路を流れる。排気ファン60は、この循環路に設けられ、循環する空気を駆動している。また、循環路に設けられたHEPAフィルタ46が、通過する空気を清浄化している。
【0054】
この循環路においては、HEPAフィルタ46を通して作業空間42に給気される空気量よりも、作業空間42の底面に設けられた孔からから流路50aに流れ込む空気の方が多い。これは、排気ファン60が循環する空気の一部を継続的に排気していることによる。結果的に作業空間42は空気不足となり陰圧化するため、作業空間42の前下部では、前面開口部44を通じて、継続的に空気が吸引される。前面開口部44に形成される継続的な吸引の流れは、作業空間42の内部に飛散する微粒子がクリーンルーム20の内部22に漏れ出すことを低減または防止する。
【0055】
3つ目の排気は、2つの観点から捉えられる。1つは、作業空間42から外部90への排気の観点である。この観点では、空気は、作業空間42を起点に、流路50a、50b、50c、50dを経て外部90へ至る排気路(「作業空間排気路」と呼ぶ)を流される。もう1つは、クリーンルーム20の内部22から外部90への排気の観点である。この観点では、空気は、内部22を起点に、前面開口部44、作業空間42内の前下部(流路50fの前下部)、流路50a、50b、50c、50dを経て外部90へ至る排気路(「ルーム排気路」と呼ぶ)を流される。作業空間排気路とルーム排気路に共通する流路(「共通排気路」と呼ぶ)は、流路50a、50b、50c、50dである。排気ファン60とHEPAフィルタ62は、ともにこの共通排気路に設けられており、それぞれ、排気の駆動と排気の清浄化を行っている。
【0056】
排気ファン60は、流路50bから吸引した空気の一部を流路50cに排出することで排気を行う。流路50bを流れる空気には、作業空間42を流れた空気と、前面開口部44から流れ込んできて未だ作業空間42を流れていない空気とが含まれる。後者の空気は、クリーンルーム20の内部22を起点に、前面開口部44および作業空間42内の前下部からなる「迂回路」を通って作業空間排気路に合流することで、作業空間42を迂回して外部90に直接排気されるといえる。また、迂回路と共通排気路を合わせたものが、ルーム排気路となる。迂回路の流れは、排気ファン60が駆動している。
【0057】
HEPAフィルタ62は、流路50cから流れ込む空気中の微粒子を基準値以下にまで低減する浄化を行って流路50dに流す。このため作業空間42で混入したハザード対策の対象となる微粒子(例えば、感染性のある微生物、ウイルスなどを含む。微粒子には、その物質そのものの他、その物質がエアロゾルとなったものも含まれる)が外部90へ漏れだすことが低減または防止される。
【0058】
排気ファン60を経て外部90へ行われる排気は、クリーンルーム20の内部22から外部90へ排気される全排気である。ここで、全排気とは、クリーンルームシステム10の運転時に制御されてクリーンルーム20から排気される排気量の全てをいい、クリーンルーム20の壁などにおける微細な隙間から漏れ出す空気、給気ユニット30から乱流的に逆流する空気、作業者の入退室時に緩衝ルーム24から漏れ出す空気などは含めない。クリーンルームシステム10では、全排気を排気ファン60が駆動するために、排気の構造が簡素であり、製造コストまたは維持コストを低減できる。また、クリーンルームシステム10では、共通排気路に設置するHEPAフィルタ62の設置個所あるいは設置個数を減らして、製造コストまたは維持コストを低減できる可能性がある。
【0059】
クリーンルームシステム10では、クリーンルーム20の内部22を陰圧に維持する。内部22が陰圧維持された陰圧式のクリーンルーム20では、クリーンルーム20の壁などからの空気の漏れ出し、給気ユニット30からの空気の漏れ出し、または、入退室時における緩衝ルーム24からの空気の漏れ出しなどを低減または防止することが可能である。このため、作業空間42における作業で生じた微粒子が外部90へ漏れ出すことを防止または低減することができる。
【0060】
排気ファン60は、クリーンルーム20を陰圧に維持可能な動力で運転される。排気ファン60の運転に要求される動力は、給気ファン34の動力の大きさにも依存する。そこで、クリーンルームシステム10では、各種の状態をモニタリングして、排気ファン60及び給気ファン34を制御している。
【0061】
ここで、
図4を参照して、クリーンルームシステム10における排気ファン60及び給気ファン34の制御の例について説明する。
【0062】
UI100はタッチパネルディスプレイなどによって形成された入力部及び表示部を備えるユーザインタフェースである。UI100は、例えば、クリーンルーム20の入口付近に設置されてもよいし、作業者が携帯可能な端末に実装されてもよい。UI100の表示部ではクリーンルームシステム10の運転状況などが表示され、入力部ではユーザの各種入力が受け付けられる。入力の例としては、クリーンルームシステム10の始動、停止の指示入力の他、作業空間42の利用時、非利用時における運転動力の切り替え設定入力、清浄度の設定入力などを挙げることができる。
【0063】
室外圧力センサ102と室内圧力センサ104は、それぞれクリーンルーム20の外部90と内部22に設置された圧力センサである。室内温度センサ106はクリーンルーム20の内部22に設置された温度センサである。室内粒子センサ107と作業空間粒子センサ108は、それぞれ、クリーンルーム20の内部22と作業空間42に設置され、設置された空間における空気中の浮遊微粒子を測定するセンサである。これらの各種センサはリアルタイムで測定を行っている。
【0064】
制御装置110は、中央演算装置及びメモリなどを備えたコンピュータハードウエアを、組み込みソフトウエアで制御して動作する装置である。制御装置110には、組み込みソフトウエアの制御の下で記録部112、演算部114、運転モードテーブル116が構築されている。記録部112は、クリーンルームシステム10の運転状況を記録する。記録対象のデータには、各種センサから制御装置110に送信されるセンシングデータ、及び、給気ファン34及び排気ファン60から制御装置110に送信される運転データなどが含まれる。また、UI100から送信される指示データや設定データ、及び、制御装置110における制御状況データなども、記録部112が記録する。演算部114は、UI100から送信された指示データに従って、給気ファン34や排気ファン60の運転モードを切り替える。そして、演算部114は、運転モードテーブル116を参照した上で、対応する運転モードでの運転を給気ファン34及び排気ファン60に指示する。また、演算部114では、各種センサから制御装置110に送信されるセンシングデータをモニタして、給気ファン34及び排気ファン60の動力を微調整するフィードバック制御を行っている。
【0065】
運転モードテーブル116は、各種の運転モードにおける給気ファン34と排気ファン60の動力を設定したデータである。運転モードは、給気ファン34及び排気ファン60の運転態様である。運転モードには、停止モード、通常運転モード、高動力モード、低動力モードなどが含まれる。また、運転モードには、安全キャビネット40を利用していない場合において、給気ファン34及び排気ファン60を省電力で運転する省電力モードを設けることもできる。運転モードテーブル116には、各運転モードにおいて、給気ファン34と排気ファン60を運転すべき動力の数値が設定されている。
【0066】
給気ファン34と排気ファン60は、制御装置110の制御の下で動力を調整して運転を行っている。また、給気ファン34と排気ファン60の実際の動力データが、制御装置110に送信され、演算部114によってモニタされる。
【0067】
なお、クリーンルームシステム10では、給気ファン34の動力を相対的に高める制御を行うことで、クリーンルーム20を陽圧(内部22の圧力が外部90の圧力よりも時間平均的に高い状態をいう)に維持することができる。陽圧のクリーンルーム20は、外部90から内部22に流れ込む微粒子を低減または防止する用途に適している。陽圧での運転のニーズがある場合には、UI100からの入力に基づいて、制御装置110がクリーンルームシステム10を陰圧と陽圧との間で切り替えるように構成してもよい。
【0068】
以上の説明では、給気ファン34と排気ファン60を、各種データをモニタしながら、制御するものとした。しかし、必要な陰圧を確保できるように動作するならば、給気ファン34と排気ファン60は、モニタに基づいて制御しない態様をとることもできる。
【0069】
また、以上の説明では、給排気を天井部分から行うものとした。しかし、給排気の一方または両方を天井以外の部分(壁あるいは床)から行うようにしてもよい。
【0070】
以上の説明においては、クリーンルームシステム10では、空気を清浄化するフィルタとして、HEPAフィルタ32、46、62を用いるものとした。HEPAはJIS規格、ISO規格、EN規格などによって具体的な性能が定められている高精度な微粒子フィルタである。クリーンルームシステム10は、適当な規格に従ってHEPAフィルタ32、46、62を設置する。HEPAを用いることで、クリーンルームシステム10を利用する多くの場合において、必要な清浄度を確保することが期待できる。しかし、クリーンルームシステム10では、HEPAフィルタ32、46、62の一部または全てを、要求される清浄度に応じて、他のフィルタに変更することが可能である。例えば、HEPAに代えて、それよりも高性能なフィルタ(例えばULPA)あるいは低性能なフィルタを用いることもできる。なお、HEPAの微粒子捕捉は、フィルタの細かさを利用するものの他に、静電気を利用するものも存在する。静電気を利用するタイプでは、一般に、微粒子を吸着しつづけるために、連続運転を行って静電気を常時発生する必要がある。静電気を利用するタイプでは、上述した省電力モードを実現する場合、例えば、微粒子の落下を防止または所定レベルに留めることができるレベルで、給排気量を制御すればよい。
【0071】
以上の説明においては、クリーンルームシステム10には、緩衝ルーム24を設けるものとした。しかし、緩衝ルーム24を設けず、クリーンルームシステム10をコンパクトに形成してもよい。また、別の形態では、緩衝ルーム24を入室専用とし、別途退出専用の緩衝ルームを設けることもできる。
【0072】
以上の説明においては、開放式のハザード対策用キャビネットである安全キャビネット40を例に挙げた。しかし、上記実施形態は、ドラフトチャンバなど、安全キャビネット40以外の開放式ハザード対策用キャビネットに、容易に適用することができる。
【0073】
ドラフトチャンバでは、前面開口部(作業空間給気路に相当する)から取り入れられた空気がそのまま作業空間に給気される。また、作業空間の空気をクリーンルームの外部に排気する作業空間排気路を設け、作業空間排気路に排気ファン及びフィルタを設置する。前面開口部、作業空間及び作業空間排気路からなる流路はルーム排気路に相当し、作業空間排気路は共通排気路と一致する。これ以外に、クリーンルーム外に通じる排気路は設けないことで、排気ファンが全排気を駆動し、フィルタが全排気を清浄化する陰圧型のクリーンルームシステムを形成することができる。
【0074】
(2)第2実施形態
図5を参照して、第2実施形態に係るクリーンルームシステム210について説明する。
図5は第2実施形態に係る側面図である。
図5では、
図3(第1実施形態に係る側面図)と同一またはほぼ同様の部位には同じ符号を付しており、説明を簡略化または省略する。
【0075】
クリーンルームシステム210では、クリーンルーム220は、給気ユニット30と、安全キャビネット240を備える。安全キャビネット240は、作業空間42、前面開口部44、HEPAフィルタ46、流路250a~250f、排気ユニット261及び作業空間給気ファン264を備える。流路250a~250fは、それぞれ第1実施形態の流路50a~50fとほぼ同位置に同形状で形成されている。
【0076】
ただし、流路250bは上端において、流路250cの下端、及び、流路250eの後端と連通している。そして、流路250c、250dの連結点付近には、排気ユニット261が、着脱可能に装着されている。排気ユニット261は、排気ファン260とその直上にあるHEPAフィルタ262を重ねてユニット化したものである。HEPAフィルタ262は、排気を清浄化するフィルタであり、排気ユニット261に着脱可能に装着されている。したがって、HEPAフィルタ262の清掃や交換の際には、まず、排気ユニット261を取り外し、次に排気ユニット261からHEPAフィルタ262を取り外して行うことが可能である。流路250eの前端付近には、作業空間給気ファン264が設けられている。作業空間給気ファン264は、作業空間42への給気を駆動するファンである。
【0077】
第2実施形態では、作業空間給気路は、内部22を起点に、前面開口部44、作業空間42内の前下部(流路250fの前下部)、流路250a、流路250b及び流路250eを経て、作業空間42に至る流路である。作業空間排気路は、作業空間42を起点に、流路250a、250b、250c、250dを通って外部90へ至る流路である。ルーム排気路は、内部22を起点に、前面開口部44、作業空間42内の前下部、流路250a、250b、250c、250dを通って外部90に至る流路である。そして、共通排気路は、流路250a、250b、250c、250dからなる流路である。また、循環路は、作業空間42(流路250f)、流路250a、250b、250eからなる。
【0078】
排気ファン260は、内部22の空気を、前面開口部44、作業空間内の前下部、流路250a、250b、250c、250dを通って外部90に排気する駆動を行う。他方、排気ファン260は、流路250eと作業空間42の流れは駆動しない。このことは、排気ファン260のみを動作させ、作業空間給気ファン264を停止させた状態を考察することで理解できる。また、作業空間給気ファン264は、作業空間42、流路250a、流路250b、流路250eからなる循環路の流れのみを駆動する循環駆動用のファンである。このことは、排気ファン260を停止させ、作業空間給気ファン264のみを動作させた状態を考察することで理解できる。もちろん、排気ファン260と作業空間給気ファン264とを同時に動作させた場合には、線形的な重ね合わせに加えて、非線形効果が生じる。しかし、この非線形効果は限定的であり、作業空間給気ファン264が排気に作用する効果は考慮しないものとすれば、共通排気路に設けられた排気ファン260が、全排気を駆動しているとみなすことができる。また、共通排気路に設けられたHEPAフィルタ262が、全排気の浄化を行っているとみなすことができる。第2実施形態では、第1実施形態と比べた場合に作業空間給気ファン264を備えるという冗長性はあるが、排気構造が簡易に実現されている。
【0079】
以上の説明においては、クリーンルーム220の内部には、安全キャビネット240が一つだけ設置される例を挙げた。しかし、クリーンルーム220には、同じまたは異なる種類の複数のハザード対策用キャビネットを設置することができる。複数のハザード対策用キャビネットを設ける態様では、それぞれの作業空間からクリーンルーム220の外部90に排気を行う作業空間排気路を設ける必要がある。各作業空間排気路は、合流させずに別々に外部90に連通させ、それぞれに排気ファン及びフィルタを設ける構造としてもよい。また、各作業空間排気路を合流させて合流路が外部90に連通するようにしてもよい。合流させる場合には、合流路にのみ排気ファン及びフィルタを設けてもよい。合流路のみに排気ファンを設ける場合には、各ハザード対策用キャビネット内に循環駆動用のファンを設けて、各ハザード対策用キャビネット内における空気の循環を駆動させてもよい。
【0080】
(3)第3実施形態
図6を参照して、第3実施形態に係るクリーンルームシステム310について説明する。
図6は第3実施形態に係る側面図である。
図6では、
図3(第1実施形態に係る側面図)と同一またはほぼ同様の部位には同じ符号を付しており、説明を簡略化または省略する。
【0081】
クリーンルームシステム310では、クリーンルーム320は、給気ユニット30と、アイソレータ340を備えている。アイソレータ340は、閉鎖型のハザード対策用キャビネットであり、開口部の無い作業空間342を備えている。アイソレータ340の前面には、前面開口部に代えて、グローブボックス344が設けられている。グローブボックス344には、柔軟性を有するグルーブが、作業空間342の側に突出配置されている。グローブは気密性を有しており、グローブに手をいれる作業者は、作業空間342の外側から、作業空間342の内部にある作業対象物を操作することができる。
【0082】
作業空間342の周囲には、流路350a~流路350fが設けられている。流路350aは、クリーンルーム320の内部22においてアイソレータ340に空気を給気する流路である。流路350aは、作業空間342の上方にあり、前後方向にほぼ水平に延びている。流路350aの前端はクリーンルーム320の内部22に開放されている。流路350bは、作業空間342をほぼ一様に下向きに流れる空気の流路である。流路350bの上端は、HEPAフィルタ46を介して流路350aの後端と連通している。HEPAフィルタ46は、作業空間342に流れ込む空気を清浄化するフィルタである。流路350cは、作業空間342の下方に設けられた流路であり、アイソレータ340の前後方向にほぼ水平に延びている。流路350cは、作業空間342の底面に設けられた孔を介して、流路350bと連通している。流路350dは、作業空間342の後方に設けられた流路であり、上下方向に延びており、その上端は作業空間342の上面よりも高い位置に達している。流路350dの下端は流路350cの後端と連通している。流路350eは流路350dの延長線上に設けられた流路であり、上下方向に延びている。流路350eの下端は、排気ファン360を介して流路350dの上端と連通している。流路350fは流路350eの延長線上に設けられた流路であり、上下方向に延びている。流路350fの下端はHEPAフィルタ362を介して流路350eの上端と連通している。流路350fの上端はクリーンルーム320の外部90に開放されている。
【0083】
排気ファン360は、排気を駆動するファンである。排気ファン360は、流路350dと流路350eとの間に設けられている。HEPAフィルタ362は、排気を清浄化するフィルタである。HEPAフィルタ362は、流路350eと流路350fとの間に設けられている。
【0084】
クリーンルームシステム310では、給気ユニット30を通じて、クリーンルーム320の内部22に空気70aが給気される。内部22では、空気370bは、近似的には一方向に流れ、流路350aの前端に達する。流路350aを流れた空気は、HEPAフィルタ46で清浄化された後、作業空間342の内部の流路350bを流れ、作業空間342の底面に設けられた孔を通って流路350cに入る。流路350cに入った空気は、流路350dに移動した後、排気ファン360に吸引されて、流路350eに排出される。そして、空気は、HEPAフィルタ362で清浄化され、流路350fを通った後に外部90に排気される。
【0085】
アイソレータ340の作業空間342では、HEPAフィルタ46で清浄化された空気のみが流れこむため、高い清浄度を実現することができる。また、作業空間342からの排気は、HEPAフィルタ362によって清浄化されるため、作業空間342で生じた微粒子が外部90に漏れ出すこともない。もちろん、アイソレータ340では、作業空間342の微粒子がクリーンルーム320の内部22に漏れ出すこともない。
【0086】
クリーンルームシステム310において、作業空間給気路は流路350aであり、作業空間排気路は、流路350c、350d、350e、350fである。また、ルーム排気路は、流路350a、350b、350c、350d、350e、350fであり、共通排気路は作業空間排気路と一致する。
【0087】
排気ファン360は、共通排気路に設けられている。そして、作業空間給気路における給気の駆動と、作業空間排気路及びルーム排気路における排気の駆動を行っている。クリーンルームシステム310では、流路350fからの排気の他は、外部90への排気は行われていない。したがって、排気ファン360は、クリーンルームシステム310の全排気を駆動している。また、HEPAフィルタ362は、共通排気路に設けられて、全排気の清浄化を行っている。第3実施形態でも簡易な排気の構造が実現している。
【0088】
(4)第4実施形態
図7を参照して、第4実施形態に係るクリーンルームシステム410について説明する。
図7は第4実施形態に係る側面図である。
図7では、
図6(第3実施形態に係る側面図)と同一またはほぼ同様の部位には同じ符号を付しており、説明を簡略化または省略する。
【0089】
クリーンルームシステム410では、クリーンルーム420は、給気ユニット30と、アイソレータ340を備える。アイソレータ440は、
図6に示した第3実施形態におけるアイソレータとほぼ同様に構成されている。
【0090】
第4実施形態と第3実施形態との相違点は、流路450gの存在である。流路450gは、作業空間342の上方に位置する流路であり、アイソレータ440の前後方向にほぼ水平に延びている。流路450gの前端は、クリーンルーム420の内部22に開放されている。流路450gの後端は、流路450d1の上端及び流路450d2の下端に連通されている。
【0091】
アイソレータ440では、第3実施形態のアイソレータ340と同様にして空気が流される。すなわち、クリーンルーム420の内部22の空気が流路350aを通って作業空間342に給気される。そして、作業空間342の空気が流路350c、450d1、450d2、350e、350fを通って外部90に排気される。この排気は、排気ファン360によって駆動され、HEPAフィルタ362によって清浄化される。
【0092】
また、クリーンルーム420の内部22からは、作業空間342を通らずに、流路450g、450d2、350e、350fを排気路として通り、外部90に排気される流れも生じている。これは、流路450gが、作業空間342を通ることなく、流路450d1、450d2の連通点に合流する迂回路を形成しているためである。流路450gを経由する排気も、排気ファン360によって駆動され、HEPAフィルタ362によって清浄化されている。流路450gを通る排気量は、例えば、流路450gの断面積によって調整可能であるし、流路450gに可動弁を設けるなどして可変制御することも可能である。
【0093】
第4実施形態では、作業空間給気路は流路350aであり、作業空間排気路は流路350c、450d1、450d2、350e、350fである。ルーム排気路は2つあり、一つは流路350a、350b、350c、450d1、450d2、350e、350fであり、もう一つは流路450g、450d2、350e、350fである。全てのルーム排気路と作業空間排気路に共通する共通排気路は、流路450d2、350e、350fである。この他に排気路は設けられていない。排気ファン360とHEPAフィルタ362は、共通排気路に設けられており、それぞれ、全排気の駆動と清浄化を行っている。
【0094】
(5)第5実施形態
図8を参照して、第5実施形態に係るクリーンルームシステム510について説明する。
図8は第5実施形態に係る側面図である。
図8では、
図3(第1実施形態に係る側面図)と同一またはほぼ同様の部位には同じ符号を付しており、説明を簡略化または省略する。
【0095】
第5実施形態に係るクリーンルームシステム510では、第1実施形態に係るクリーンルームシステム10とは異なり、給気ユニット530に給気ファンが設けられていない。給気ユニット530には、HEPAフィルタ532が設けられているにすぎない。
【0096】
クリーンルームシステム510では、クリーンルーム520の内部22は、排気ファン60による排気によって空気量が減り陰圧となる。排気ファン60は、動力を高めて運転することで、内部22の陰圧の度合いを高めている。このため、ルーム給気路に設けられたHEPAフィルタ532における空気抵抗に打ち勝って、外部90から内部22に必要な量の空気570が流れ込む。すなわち、クリーンルームシステム510における給気は、クリーンルーム520の内部22と外部90との圧力差によって駆動されている。この給気部分に限れば、動力が使われておらず、自然給気と呼ぶことができる。
【0097】
第5実施形態では、第1実施形態と同様に排気構造を簡易に構成していることに加え、ルーム給気路を自然給気路としている。このため、クリーンルームシステム510では、製造コストまたは維持コストを低減できる可能性がある。
【0098】
(6)第6実施形態
上述したように、陰圧型のクリーンルームシステムは、作業空間で生じる微粒子の漏れ出しを防止または低減するバイオハザード対策機能をもつ。このため、陰圧型クリーンルームシステムは、人体または環境に負の影響を及ぼす物質を作業対象物として取り扱う場合に用いられることが多い。作業対象物の取り扱いには、採取、試験、検査、加工、製造などが含まれる。
【0099】
バイオハザード対策が求められる作業対象物としては、放射性物質を挙げることができる。放射性医薬品は放射性物質を用いた医薬品である。また、毒性または高生理活性をもつ化学物質も、ハザード対策が求められる作業対象物である。抗がん剤は高生理活性をもつ化学物質の例である。さらに、バイオ系対象物をバイオハザード対策が求められる作業対象物である。ここで、バイオ系対象物とは、生物(ウイルスを含む)の一部もしくは全部、または、加工等を行った生物由来の対象物をいうものとする。バイオ系対象物の例としては、ヒト、動物もしくは微生物の組織、細胞もしくは核酸またはこれらの加工物が挙げられる。血液等の検体もバイオ系対象物の例である。公衆衛生に与える影響の大きい伝播性の高い感染症にかかる検体は、ハザード対策の必要性が高い。また、抗体医薬品、核酸医薬品、再生医療製品もバイオ系対象物の例である。バイオ系対象物は、感染性物質または病原性物質が含むおそれがあることなどの理由により、バイオハザード対策が求められている。
【0100】
第6実施形態では、バイオハザード対策が求められる事例として、自家細胞移植に係る再生医療分野におけるクリーンルームシステムの利用形態について説明する。
【0101】
図9は、第6実施形態に係るネットワーク600について説明する図である。
図9に示したネットワーク600は、再生医療製品602の輸送関連施設を繋いだものである。ネットワーク600には、CPC604、細胞調製施設606、細胞調製車608及び病院610a、610b、610c、610d(これらの一部または全部を病院610という場合がある)が含まれる。
【0102】
CPC604は、Cell Processing Center(細胞培養加工施設)であり、CPF(Cell Processing Facility)と呼ばれることもある。CPC604は、クリーンルームを備えており、患者から採取された細胞を加工して再生医療製品602を製造する。CPC604には、第1実施形態から第5実施形態で例示したようなクリーンルームシステムを導入することができる。ただし、CPC604は比較的規模が大きな施設であり、面積の広いクリーンルームを複数室備える場合や、クリーンルーム内に複数のバイオハザード対策用キャビネットを備える場合もある。このため、CPC604のクリーンルームでは、バイオハザード対策用キャビネットの他に、クリーンルーム自体に排気機構を設けることも考えられる。
【0103】
細胞調製施設606は、CPC604と病院610との間に設けられる施設である。細胞調製施設606では、患者から採取された細胞あるいは製造された再生医療製品602に対して、細胞調製及び輸送を行っている。細胞調製施設606は、建築物の内部に設置されており、第1実施形態から第5実施形態に例示したようなクリーンルームシステム606aを備えている。細胞調製は、クリーンルームシステム606aに設置されているハザード対策用キャビネットの作業空間などを利用して実施する。なお、細胞調製とは、細胞の状態に変化をもたらす処理、または、細胞の状態を試験もしくは検査する処理を広く指すものとする。
【0104】
細胞調製車608は、CPC604と病院610との間あって、患者から採取した細胞あるいは製造された再生医療製品に対し、細胞調製及び輸送を行うために利用される車両である。細胞調製車608は、電気モータや内燃機関などを備える自走可能な車両に、第1実施形態から第5実施形態で例示したようなクリーンルームシステム608aを搭載して形成されている。
【0105】
病院610は、医師、歯科医師、獣医師などの再生医療を行う者が、患者の診断および治療を行う施設である。病院610a~610dは、異なる組織によって設立され、異なる場所にある建築物内に設置されていることを想定している。病院610では自家移植に係る再生医療を行っている。医師や歯科医師は、患者からの組織または細胞の採取、及び、患者への再生医療製品602の移植を担当する。
【0106】
第6実施形態では、病院610の設置数が最も多く、次に細胞調製施設606または細胞調製車608の設置数が多く、CPC604の設置数は最も少ないことを想定している。そして、CPC604は、複数の細胞調製施設606または細胞調製車608を媒介して複数の病院610を対象にサービスを行っている。また、細胞調製施設606または細胞調製車608は、それぞれ複数の病院610を対象にサービスを行っている。もちろん、ある病院610が複数の細胞調製施設606または細胞調製車608を利用することは可能であり、ある細胞調製施設606または細胞調製車608が複数のCPC604を利用することも可能である。
【0107】
自家移植に係る再生医療が行われる場合には、まず、病院610において、対象となる一人または複数の患者から細胞の採取が行われる。採取にあたっては、細胞調製施設606または細胞調製車608のスタッフが病院610に出かけて採取の補助をする。採取の補助の例としては、患者情報、細胞情報などをコンピュータに入力する処理、採取した細胞を温度や清浄度を管理した容器に保存する処理、移植日時の調整処理などが挙げられる。
【0108】
スタッフは、採取した細胞を細胞調製施設606または細胞調製車608に持ち帰る。そして、クリーンルームシステム606a、608aを利用して、必要な細胞調製を行う。細胞調製の例としては、細胞の洗浄、薬剤添加、冷蔵、冷凍、容器収納、無菌試験を含む感染性検体の検査などから選ばれる一又は複数の処理が挙げられる。
【0109】
スタッフは、容器に収納した細胞をCPC604に輸送する。輸送は、輸送業者またはCPC604のスタッフに依頼してもよいし、自ら行ってもよい。輸送は、一人分ずつ個別に行われてもよいし、複数人分をまとめて行ってもよい。
【0110】
CPC604では、受領した細胞から再生医療製品602を製造する。製造工程では、例えば、クリーンルームに設置された製造装置を用いた細胞培養が行われる。製造された再生医療製品602は、冷凍された状態で細胞調製施設606または細胞調製車608に輸送される。
【0111】
細胞調製施設606では、受領した再生医療製品602を清浄度及び温度が管理された保管庫で保管する。保管庫は、クリーンルームシステム606a、608aの中に設けられてもよいし、外部に設けられてもよい。
【0112】
再生医療製品602は、病院610で移植が行われる日時から逆算されるタイミングで、保管庫から取り出される。そして、クリーンルームシステム606a、608aにおいて細胞調製が行われる。細胞調製の例としては、解凍、加温、活性化、薬剤添加、容器収納、無菌試験を含む検査などから選ばれる一または複数の処理が挙げられる。
【0113】
細胞調製施設606または細胞調製車608のスタッフは、細胞調製を行った再生医療製品602を病院610に届ける。スタッフは、必要に応じて、再生医療製品602を移植する際の補助も行う。補助業務としては、コンピュータに登録された患者情報、細胞情報などと、患者及び再生医療製品602との照合の例を挙げることができる。
【0114】
このように、細胞調製施設606及び細胞調製車608のスタッフは、複数の病院610に出かけて再生医療の支援を行う。したがって、細胞調製施設606は、顧客である病院610が2以上、3以上、4以上または5以上存在する近傍に設置されると便利である。ここで、「近傍」の範囲は、病院610における患者の治療場所と細胞調製施設606のクリーンルームシステム606aとの間における片道の移動時間で定義することができる。具体的には、移動時間が、90分以内、60分以内、40分以内、30分以内、20分以内、10分以内または5分以内の範囲を例示できる。移動時間は、徒歩、自転車、バイク、自動車、バス、電車などから選択される通常利用される移動手段での所要時間として測定される。信号待ちの時間や公共交通機関の運転間隔などによるバラツキを平準化するため、移動時間は、輸送を行う曜日及び時間帯において複数回移動した場合の平均所要時間によって計測される。また、「近傍」の範囲を、病院610における患者の治療場所と細胞調製施設606のクリーンルームシステム606aとの間における上述の移動手段に沿った移動距離または直線距離に基づいて定めることもできる。具体的には、移動距離または直線距離が20km以内、15km以内、10km以内、8km以内、6km以内、2km以内、1以内または500m以内となる範囲を例示することができる。
【0115】
細胞調製車608は、自走して病院610に移動することが可能である。ただし、細胞調製車608では、車両に搭載できるクリーンルームシステム608aの大きさに限りがある。車両の搭載スペースが広い場合には、クリーンルームシステム608aに緩衝ルームを設けることも可能であるが、省スペース化を図るため、緩衝ルームを設けずにクリーンルームのみを設けてもよい。クリーンルームシステム608aは、一般的には細胞調製車608の停車時に使用されるが、走行時にも使用できるように作られている。
【0116】
細胞調製施設606及び細胞調製車608が備えるクリーンルームシステム606a、608aは、上述した簡易な排気機構を備えている。このため、CPC604等に設置される一般的なクリーンルームに比べて、排気機構に要する製造コストまたは維持コストを低減できる。細胞調製施設606及び細胞調製車608は、CPC604に比べて設置数を多くする必要があることから、低コスト性を有するクリーンルームシステム606a、608aを導入する価値は高い。
【0117】
以上の説明では、自家移植に係る再生医療製品602を例に挙げた。CPC604から細胞調製施設606または細胞調製車608を経て病院610に提供するネットワーク形態は、他家移植に係る再生医療製品についても広く適用可能である。他家移植にかかる再生医療製品は、移植対象患者以外に由来する細胞等を利用してCPCで製造され、必要に応じて保管施設に保管されている。
【0118】
以上の説明では、細胞調製施設606及び細胞調製車608は、複数の病院610を支援する施設であるとした。これに代えて、細胞調製施設606あるいは細胞調製車608を、個々の病院610に専属する施設とすることも可能である。専属施設とする場合、細胞調製施設606は、病院610を上述の例よりもさらに近傍に設けることが考えられる。具体的には、近傍の範囲として、細胞調製施設606から治療場所への移動時間が10分以内、5分以内、3分以内または1分以内とする場所を挙げることができる。また、近傍の場所として、細胞調製施設606を治療場所と繋がった同じ敷地、同じ建築物、または同じ建築物内の同じフロアレベルを例示することができる。個々の病院610に細胞調製施設606または細胞調製車608を設ける場合には、クリーンルームシステム606a、608aの設置数も多くなるため、低コストで設置または維持可能な排気構造を採用する利点は大きい。
【符号の説明】
【0119】
10 クリーンルームシステム、20 クリーンルーム、22 内部、24 緩衝ルーム、26 外側ドア、28 内側ドア、30 給気ユニット、32 HEPAフィルタ、34 給気ファン、40 安全キャビネット、42 作業空間、44 前面開口部、46 HEPAフィルタ、50a,50b,50c,50d,50e,50f 流路、60 排気ファン、62 HEPAフィルタ、70a,70b,70c 空気、90 外部、100 UI、102 室外圧力センサ、104 室内圧力センサ、106 室内温度センサ、107 室内粒子センサ、108 作業空間粒子センサ、110 制御装置、112 記録部、114 演算部、116 運転モードテーブル、210 クリーンルームシステム、220 クリーンルーム、240 安全キャビネット、250a,250b,250c,250d,250e,250f 流路、260 排気ファン、261 排気ユニット、262 HEPAフィルタ、264 作業空間給気ファン、310 クリーンルームシステム、320 クリーンルーム、340 アイソレータ、342 作業空間、344 グローブボックス、350a,350b,350c,350d,350e,350f 流路、360 排気ファン、362 HEPAフィルタ、370b 空気、410 クリーンルームシステム、420 クリーンルーム、440 アイソレータ、450d1,450d2,450g 流路、470b 空気、510 クリーンルームシステム、520 クリーンルーム、530 給気ユニット、532 HEPAフィルタ、570 空気、600 ネットワーク、602 再生医療製品、604 CPC、606 細胞調製施設、606a クリーンルームシステム、608 細胞調製車、608a クリーンルームシステム、610,610a,610b,610c,610d 病院。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密性を有するクリーンルームと、
前記クリーンルームの外部から内部に給気を行うルーム給気路と、
作業空間と、前記クリーンルームの内部から前記作業空間に給気を行う作業空間給気路と、前記作業空間の空気を取り込んで再び前記作業空間に給気する循環路と、前記作業空間から前記クリーンルームの外部に排気を行う作業空間排気路と、前記循環路における循環及び前記排気路における排気を駆動する排気ファンと、前記作業空間排気路に設けられ前記排気を清浄化するフィルタとを備え、前記クリーンルームの内部に設置されるハザード対策用キャビネットと、
を備え、
前記排気ファンが、前記クリーンルームの内部から外部への全排気を駆動し、かつ、前記クリーンルームの内部を陰圧に維持する、ことを特徴とするクリーンルームシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のクリーンルームシステムにおいて、
前記クリーンルームの内部から、前記作業空間を通過せずに、前記作業空間排気路に連通する迂回路を備え、
前記排気ファンは、迂回路を流れる空気の駆動も行う、ことを特徴とするクリーンルームシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のクリーンルームシステムにおいて、
前記ハザード対策用キャビネットは安全キャビネットであり、
前記作業空間はバイオ系対象物に対する作業が行われる空間である、ことを特徴とするクリーンルームシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のクリーンルームシステムにおいて、
前記ルーム給気路は、前記排気ファンによって形成される前記クリーンルームの内部の陰圧を駆動力として給気を行う自然給気路である、ことを特徴とするクリーンルームシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のクリーンルームシステムにおいて、
前記作業空間は、細胞培養加工施設で製造された再生医療製品に対する作業が行われる空間であり、
当該クリーンルームシステムは、前記再生医療製品を使用する治療場所の近傍に設置される、ことを特徴とするクリーンルームシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のクリーンルームシステムにおいて、
前記治療場所は2以上の建築物に分散して存在しており、
当該クリーンルームシステムは、少なくとも2以上の建築物における前記治療場所にとって近傍となる位置に設置される、ことを特徴とするクリーンルームシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のクリーンルームシステムと、
前記クリーンルームを搭載する車両と、
を備え、
前記作業空間は、細胞培養加工施設で製造された再生医療製品に対する作業が行われる空間であり、
前記車両は、再生医療製品を使用する治療場所の近傍への移動が可能である、ことを特徴とするクリーンルームシステム搭載車両。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
本発明に係るクリーンルームシステムは、気密性を有するクリーンルームと、前記クリーンルームの外部から内部に給気を行うルーム給気路と、作業空間と、前記クリーンルームの内部から前記作業空間に給気を行う作業空間給気路と、前記作業空間の空気を取り込んで再び前記作業空間に給気する循環路と、前記作業空間から前記クリーンルームの外部に排気を行う作業空間排気路と、前記循環路における循環及び前記排気路における排気を駆動する排気ファンと、前記作業空間排気路に設けられ前記排気を清浄化するフィルタとを備え、前記クリーンルームの内部に設置されるハザード対策用キャビネットと、を備え、前記排気ファンが、前記クリーンルームの内部から外部への全排気を駆動し、かつ、前記クリーンルームの内部を陰圧に維持する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
排気ファン60は、流路50b、50c、50eが連通する部位に設けられている。排
気ファン60は、空気を駆動するファンを備えており、電力によって動作する。排気ファ
ン60は、流路50bから空気を吸引し、流路50cと流路50eに分配して排出する。
分配の比率は、一定であってもよいし、例えば、例えば電動の可動弁を用いて、可変制御
されてもよい。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密性を有するクリーンルームと、
前記クリーンルームの外部から内部に給気を行うルーム給気路と、
作業空間と、前記クリーンルームの内部から前記作業空間に給気を行う作業空間給気路と、前記作業空間の空気を取り込んで再び前記作業空間に給気する循環路と、前記作業空間から前記クリーンルームの外部に排気を行う作業空間排気路と、前記循環路における循環及び前記排気路における排気を駆動する排気ファンと、前記作業空間排気路に設けられ前記排気を清浄化するフィルタとを備え、前記クリーンルームの内部に設置されるハザード対策用キャビネットと、
を備え、
前記循環路における循環及び前記排気路における排気を駆動する前記排気ファンが、前記クリーンルームの内部から外部への全排気を駆動し、かつ、前記クリーンルームの内部を陰圧に維持する、ことを特徴とするクリーンルームシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のクリーンルームシステムにおいて、
前記クリーンルームの内部から、前記作業空間を通過せずに、前記作業空間排気路に連通する迂回路を備え、
前記排気ファンは、迂回路を流れる空気の駆動も行う、ことを特徴とするクリーンルームシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のクリーンルームシステムにおいて、
前記ハザード対策用キャビネットは安全キャビネットであり、
前記作業空間はバイオ系対象物に対する作業が行われる空間である、ことを特徴とするクリーンルームシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のクリーンルームシステムにおいて、
前記ルーム給気路は、前記排気ファンによって形成される前記クリーンルームの内部の陰圧を駆動力として給気を行う自然給気路である、ことを特徴とするクリーンルームシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のクリーンルームシステムにおいて、
前記作業空間は、細胞培養加工施設で製造された再生医療製品に対する作業が行われる空間であり、
当該クリーンルームシステムは、前記再生医療製品を使用する治療場所の近傍に設置される、ことを特徴とするクリーンルームシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のクリーンルームシステムにおいて、
前記治療場所は2以上の建築物に分散して存在しており、
当該クリーンルームシステムは、少なくとも2以上の建築物における前記治療場所にとって近傍となる位置に設置される、ことを特徴とするクリーンルームシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のクリーンルームシステムと、
前記クリーンルームを搭載する車両と、
を備え、
前記作業空間は、細胞培養加工施設で製造された再生医療製品に対する作業が行われる空間であり、
前記車両は、再生医療製品を使用する治療場所の近傍への移動が可能である、ことを特徴とするクリーンルームシステム搭載車両。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
本発明に係るクリーンルームシステムは、気密性を有するクリーンルームと、前記クリーンルームの外部から内部に給気を行うルーム給気路と、作業空間と、前記クリーンルームの内部から前記作業空間に給気を行う作業空間給気路と、前記作業空間の空気を取り込んで再び前記作業空間に給気する循環路と、前記作業空間から前記クリーンルームの外部に排気を行う作業空間排気路と、前記循環路における循環及び前記排気路における排気を駆動する排気ファンと、前記作業空間排気路に設けられ前記排気を清浄化するフィルタとを備え、前記クリーンルームの内部に設置されるハザード対策用キャビネットと、を備え、前記循環路における循環及び前記排気路における排気を駆動する前記排気ファンが、前記クリーンルームの内部から外部への全排気を駆動し、かつ、前記クリーンルームの内部を陰圧に維持する。
【手続補正書】
【提出日】2024-11-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密性を有するクリーンルームと、
前記クリーンルームの外部から内部に給気を行うルーム給気路と、
作業空間と、前記クリーンルームの内部から前記作業空間に給気を行う作業空間給気路と、前記作業空間の空気を取り込んで再び前記作業空間に給気する循環路と、前記循環路との共通部分を有し当該循環路の途中から分かれて外部へ至る流路であって前記作業空間から前記クリーンルームの外部に排気を行う作業空間排気路と、前記循環路と前記作業空間排気路の前記共通部分または両者が分かれる箇所に設けられ前記循環路における循環及び前記作業空間排気路における排気を駆動する排気ファンと、前記作業空間排気路に設けられ前記排気を清浄化するフィルタとを備え、前記クリーンルームの内部に設置されるハザード対策用キャビネットと、
を備え、
前記循環路には、前記排気ファンが設けられた箇所から前記作業空間までの間には他のファンが設けられておらず、
前記循環路における循環及び前記作業空間排気路における排気を駆動する前記排気ファンが、前記クリーンルームの内部から外部への全排気を駆動し、かつ、前記クリーンルームの内部を陰圧に維持する、ことを特徴とするクリーンルームシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のクリーンルームシステムにおいて、
前記クリーンルームの内部から、前記作業空間を通過せずに、前記作業空間排気路に連通する迂回路を備え、
前記排気ファンは、迂回路を流れる空気の駆動も行う、ことを特徴とするクリーンルームシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のクリーンルームシステムにおいて、
前記ハザード対策用キャビネットは安全キャビネットであり、
前記作業空間はバイオ系対象物に対する作業が行われる空間である、ことを特徴とするクリーンルームシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のクリーンルームシステムにおいて、
前記ルーム給気路は、前記排気ファンによって形成される前記クリーンルームの内部の陰圧を駆動力として給気を行う自然給気路である、ことを特徴とするクリーンルームシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のクリーンルームシステムにおいて、
前記作業空間は、細胞培養加工施設で製造された再生医療製品に対する作業が行われる空間であり、
当該クリーンルームシステムは、前記再生医療製品を使用する治療場所の近傍に設置される、ことを特徴とするクリーンルームシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のクリーンルームシステムにおいて、
前記治療場所は2以上の建築物に分散して存在しており、
当該クリーンルームシステムは、少なくとも2以上の建築物における前記治療場所にとって近傍となる位置に設置される、ことを特徴とするクリーンルームシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のクリーンルームシステムと、
前記クリーンルームを搭載する車両と、
を備え、
前記作業空間は、細胞培養加工施設で製造された再生医療製品に対する作業が行われる空間であり、
前記車両は、再生医療製品を使用する治療場所の近傍への移動が可能である、ことを特徴とするクリーンルームシステム搭載車両。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
本発明に係るクリーンルームシステムは、気密性を有するクリーンルームと、前記クリーンルームの外部から内部に給気を行うルーム給気路と、作業空間と、前記クリーンルームの内部から前記作業空間に給気を行う作業空間給気路と、前記作業空間の空気を取り込んで再び前記作業空間に給気する循環路と、前記循環路との共通部分を有し当該循環路の途中から分かれて外部へ至る流路であって前記作業空間から前記クリーンルームの外部に排気を行う作業空間排気路と、前記循環路と前記作業空間排気路の前記共通部分または両者が分かれる箇所に設けられ前記循環路における循環及び前記作業空間排気路における排気を駆動する排気ファンと、前記作業空間排気路に設けられ前記排気を清浄化するフィルタとを備え、前記クリーンルームの内部に設置されるハザード対策用キャビネットと、を備え、前記循環路には、前記排気ファンが設けられた箇所から前記作業空間までの間には他のファンが設けられておらず、前記循環路における循環及び前記作業空間排気路における排気を駆動する前記排気ファンが、前記クリーンルームの内部から外部への全排気を駆動し、かつ、前記クリーンルームの内部を陰圧に維持する。