(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173040
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】画像処理装置、および、コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/00 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
H04N1/00 838
H04N1/00 127B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091155
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001058
【氏名又は名称】鳳国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】柳 哲
【テーマコード(参考)】
5C062
【Fターム(参考)】
5C062AA02
5C062AA05
5C062AA12
5C062AA14
5C062AA35
5C062AB02
5C062AB20
5C062AB23
5C062AB30
5C062AB38
5C062AB40
5C062AB42
5C062AC04
5C062AC05
5C062AC22
5C062AC34
5C062AE15
5C062AF12
(57)【要約】
【課題】載置された原稿を示すスキャンデータがネットワークを介して不正に取得されることを抑制する。
【解決手段】画像処理装置は、ネットワークに接続される端末装置から送信される読取指示に応じて、読取実行部に前記スキャンデータを生成させ、生成されるスキャンデータを端末装置に送信する。画像処理装置は、特定の設定が有効でなく、かつ、読取実行部に原稿が載置されている場合に、端末送信部から送信される要求に応じて原稿が載置されていることを示す特定のステータス情報を端末装置に送信し、特定の設定が有効であり、かつ、読取実行部に前記原稿が載置されている場合に、特定のステータス情報を端末装置に送信しない。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理装置であって、
ネットワークに接続される通信インタフェースと、
載置される原稿を光学的に読み取ることによってスキャンデータを生成する読取実行部と、
前記読取実行部に原稿が載置されていることを検出する載置検出部と、
前記ネットワークに接続される端末装置から送信される読取指示に応じて、前記読取実行部に前記スキャンデータを生成させ、生成される前記スキャンデータを前記端末装置に送信する読取制御部と、
前記読取実行部に関する特定の設定が有効であるか否かを判断する設定判断部と、
前記特定の設定が有効でなく、かつ、前記読取実行部に前記原稿が載置されている場合に、前記端末送信部から送信される第1ステータス要求に応じて前記原稿が載置されていることを示す特定のステータス情報を前記端末装置に送信するステータス送信部であって、
前記特定の設定が有効であり、かつ、前記読取実行部に前記原稿が載置されている場合に、前記特定のステータス情報を前記端末装置に送信しない、前記ステータス送信部と、
を備える画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置であって、さらに、
情報を表示する表示部と、
ユーザによる操作を受け取る操作部と、
前記操作部を介して入力される第2ステータス要求を取得する場合に、前記ステータス情報を前記表示部に表示するステータス表示部と、
を備え、
前記ステータス表示部は、前記読取実行部に前記原稿が載置されている状況で前記第2ステータス要求を取得する場合に、前記特定の設定が有効であるか否かに拘わらずに、前記特定のステータス情報を前記表示部に表示する、画像処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像処理装置であって、さらに、
前記ステータス送信部は、特定の端末装置から送信される第3ステータス要求を受信する場合に、前記第3ステータス要求に応じて前記特定の端末装置に対して前記ステータス情報を送信し、
前記ステータス送信部は、前記読取実行部に前記原稿が載置されている状況で前記第3ステータス要求を受信する場合に、前記特定の設定が有効であるか否かに拘わらずに、前記特定のステータス情報を前記特定の端末装置に送信する、画像処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記ステータス送信部は、前記第1ステータス要求を受信する場合に、前記特定の設定が有効であるか否かに拘わらずに、前記原稿の載置に関連しない前記ステータス情報を前記端末装置に送信する、画像処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記画像処理装置は、Hypertext Transfer Protocol(HTTP)リクエストを受信する場合に、前記HTTPリクエストに応じてHTTPレスポンスを前記HTTPリクエストの送信元の装置に送信するウェブサーバとして機能し、
前記第1ステータス要求は、前記HTTPリクエストとして受信され、
前記特定のステータス情報は、前記HTTPレスポンスとして送信される、画像処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載の画像処理装置であって、さらに、
前記読取実行部に原稿が載置されていることが検出されない原稿未検出状態で、前記端末装置から前記読取指示を受信する場合に、セキュリティに関連する特定処理を実行する特定処理部を備える、画像処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像処理装置であって、
前記特定処理は、前記原稿未検出状態で前記読取指示を受信したことに関する情報を特定の通知先に通知する処理を含む、画像処理装置。
【請求項8】
請求項6に記載の画像処理装置であって、
前記特定処理は、前記原稿未検出状態で受信された前記読取指示の送信元の情報を記録する記録処理を含み、
前記スキャン制御部は、前記記録処理の後に新たな読取指示を受信したことに応じて、記録済みの前記送信元の前記端末装置に前記スキャンデータを送信しない、画像処理装置。
【請求項9】
請求項6に記載の画像処理装置であって、
前記特定処理は、ユーザに対して特定の入力を要求する入力要求処理を含み、
前記スキャン制御部は、前記入力要求処理が実行される場合に、前記特定の入力が取得されることを条件に、前記端末装置に前記スキャンデータを送信する、画像処理装置。
【請求項10】
請求項9に記載の画像処理装置であって、
前記特定の入力は、前記画像処理装置が備える操作部に対する入力と、前記操作部または前記端末装置への認証情報の入力と、前記操作部または前記端末装置への前記スキャンデータの送信先を確認するための入力と、の少なくとも1つを含む、画像処理装置。
【請求項11】
請求項6に記載の画像処理装置であって、
前記特定処理は、前記端末装置に前記スキャンデータを送信することを禁止する処理を含む、画像処理装置。
【請求項12】
請求項1に記載の画像処理装置であって、さらに、
前記読取実行部に前記原稿が載置されているか否かを含む前記画像処理装置のステータスを示す前記ステータス情報を管理するステータス管理部を備え、
前記ステータス送信部は、
前記特定の設定が有効でなく、かつ、前記ステータス管理部によって管理される前記ステータス情報が前記特定のステータス情報である場合に、前記特定のステータス情報を前記端末装置に送信し、
前記特定の設定が有効であり、かつ、前記ステータス管理部によって管理される前記ステータス情報が前記特定のステータス情報である場合に、前記特定のステータス情報とは異なる情報を前記端末装置に送信する、画像処理装置。
【請求項13】
請求項12に記載の画像処理装置であって、さらに、
前記特定のステータス情報とは異なる情報は、前記読取実行部に前記原稿が載置される直前の前記画像処理装置のステータスを示す情報である、画像処理装置。
【請求項14】
ネットワークに接続される通信インタフェースと、載置される原稿を光学的に読み取ることによってスキャンデータを生成する読取実行部と、前記読取実行部に原稿が載置されていることを検出する載置検出部と、を備える装置のためのコンピュータプログラムであって、
前記ネットワークに接続される端末装置から送信される読取指示に応じて、前記読取実行部に前記スキャンデータを生成させ、生成される前記スキャンデータを前記端末装置に送信するスキャン制御機能と、
前記読取実行部に関する特定の設定が有効であるか否かを判断する設定判断機能と、
前記特定の設定が有効でなく、かつ、前記読取実行部に前記原稿が載置されている場合に、前記原稿が載置されていることを示す特定のステータス情報を前記端末装置に送信するステータス送信機能であって、
前記特定の設定が有効であり、かつ、前記読取実行部に前記原稿が載置されている場合に、前記特定のステータス情報を前記端末装置に送信しない、前記ステータス送信機能と、
をコンピュータに実現させる、コンピュータプログラム。
【請求項15】
原稿を光学的に読み取ることによってスキャンデータを生成する読取実行部に関する方法であって、
ネットワークに接続される端末装置から送信される読取指示に応じて、前記読取実行部に前記スキャンデータを生成させ、生成される前記スキャンデータを前記端末装置に送信するスキャン制御工程と、
前記特定の設定が有効でなく、かつ、前記読取実行部に前記原稿が載置されている場合に、前記端末送信部から送信される第1ステータス要求に応じて前記原稿が載置されていることを示す特定のステータス情報を前記端末装置に送信するステータス送信工程であって、
前記特定の設定が有効であり、かつ、前記読取実行部に前記原稿が載置されている場合に、前記特定のステータス情報を前記端末装置に送信しない、前記ステータス送信工程と、
を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、スキャンデータを生成するスキャナと、ネットワークに接続される通信インタフェースと、を備える装置を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるMulti Function Peripheral(MFP)は、スキャナ機能を備えており、スマートフォンからのスキャン命令を受信すると、スキャンを行って画像ファイルを生成し、該画像ファイルをスマートフォンに送信する。また、このMFPは、スマートフォンから送信されるステータス確認を受信すると、ステータス通知をスマートフォンに送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術では、スキャンを行って生成される画像ファイルがMFPのユーザとは異なる者の端末装置(例えば、スマートフォン)によって不正に取得される可能性について、考慮されていなかった。
【0005】
本明細書は、載置された原稿を示すスキャンデータがネットワークを介して不正に取得されることを抑制できる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示された技術は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]画像処理装置であって、ネットワークに接続される通信インタフェースと、載置される原稿を光学的に読み取ることによってスキャンデータを生成する読取実行部と、前記読取実行部に原稿が載置されていることを検出する載置検出部と、前記ネットワークに接続される端末装置から送信される読取指示に応じて、前記読取実行部に前記スキャンデータを生成させ、生成される前記スキャンデータを前記端末装置に送信する読取制御部と、前記読取実行部に関する特定の設定が有効であるか否かを判断する設定判断部と、前記特定の設定が有効でなく、かつ、前記読取実行部に前記原稿が載置されている場合に、前記端末送信部から送信される第1ステータス要求に応じて前記原稿が載置されていることを示す特定のステータス情報を前記端末装置に送信するステータス送信部であって、前記特定の設定が有効であり、かつ、前記読取実行部に前記原稿が載置されている場合に、前記特定のステータス情報を前記端末装置に送信しない、前記ステータス送信部と、を備える画像処理装置。
【0008】
上記構成によれば、特定の設定が有効である場合には、読取実行部に原稿が載置されていたとしても、読取実行部に原稿が載置されていることを示す特定のステータス情報を端末装置に送信しない。この結果、端末装置に送信されるステータス情報に基づいて原稿が載置されていることが認識されることを抑制できる。したがって、読取実行部に載置された原稿を示すスキャンデータがネットワークを介して不正に取得されることを抑制できる。
【0009】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、複合機、スキャナ、画像処理方法、これら装置の機能または上記方法を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】複合機100の読取実行部170の概略構成を示す図。
【
図3】複合機100の情報データベースIDBの一例を示す図。
【
図7】第1実施例のプルスキャン関連処理のフローチャート。
【
図8】第1実施例の通知メールMLの文面の一例を示す図。
【
図9】第2実施例のステータス関連処理のフローチャート。
【
図10】第2実施例のステータス関連処理のフローチャート。
【
図11】第2実施例の通知メールML2の文面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
A.第1実施例
A1.システムの構成
図1は、一実施例としてのシステムを示す説明図である。このシステム1000は、複合機100と、第1端末装置200Aと、第2端末装置200Bと、を含む。
【0012】
複合機100は、画像の印刷と文書の読み取りとを実行可能である。端末装置200A、200Bは、例えば、パーソナルコンピュータである。端末装置200A、200Bは、スマートフォン、タブレットコンピュータなどの携帯型の端末装置であっても良い。
【0013】
複合機100と、端末装置200A、200Bとは、ローカルエリアネットワークLNに接続されている。このために、複合機100と、端末装置200A、200Bとは、ローカルエリアネットワークLNを介して、互いに通信可能である。
【0014】
複合機100は、CPU110と、記憶装置115と、表示部140と、操作部150と、印刷実行部160と、読取実行部170と、通信インタフェース180とを、有している。これらの要素は、図示しないバスを介して互いに接続されている。
【0015】
表示部140は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどの、画像を表示するように構成された装置である。操作部150は、ボタン、レバー、表示部140上に重ねて配置されたタッチパネルなどの、ユーザによる操作を受け取るように構成された装置である。通信インタフェース180は、他の装置と通信するためのインタフェースである(例えば、有線LAN、IEEE802.11の無線LAN、のうちの1種以上のインタフェースを含む)。複合機100の通信インタフェース180は、ローカルエリアネットワークLNに接続されている。
【0016】
印刷実行部160は、画像を印刷する装置である。本実施例では、印刷実行部160は、いわゆるインクジェットプリンタである。印刷実行部160は、1種類以上の印刷材(例えば、シアンとマゼンタとイエローとブラックの4色のインク)を使用して、画像を印刷するように構成されている。なお、印刷実行部160は、他の方式で画像を印刷する装置であってよい(例えば、レーザープリンタ)。
【0017】
読取実行部170は、原稿を光学的に読み取る装置である。本実施例では、読取実行部170は、読取実行部170に載置される原稿を光学的に読み取ることによって、読み取った原稿を表すスキャンデータを生成する。
【0018】
図2は、複合機100の読取実行部170の概略構成を示す図である。読取実行部170は、筐体70の内部に配置されたイメージセンサ60(例えば、Contact Image Sensor(CIS))と、イメージセンサ60からの信号を使用してスキャンデータを生成する信号処理部90と、筐体70の上方に配置された搬送装置50と、を備えている。搬送装置50は、いわゆるAuto Document Feeder(ADF)である。搬送装置50は、用紙検出センサ55と給紙トレイ56と排紙トレイ57とを備えている。
【0019】
用紙検出センサ55は、給紙トレイ56に原稿Sが載置されているか否かを検出するセンサである。用紙検出センサ55は、例えば、原稿Sの接触により変位するアクチュエータを備え、該アクチュエータの変位を検出することによって、給紙トレイ56に原稿Sが載置されているか否かを検出する。用紙検出センサ55は、他の方式、例えば、フォトインタラプタを用いたセンサであっても良い。
【0020】
搬送装置50は、給紙トレイ56から排紙トレイ57に至る搬送経路TRに沿って、原稿を搬送する。搬送経路TRは、イメージセンサ60の近傍の所定の読取位置RPを通る経路である。イメージセンサ60は、
図2の奥行き方向に並ぶ複数の読取素子を備えており、読取位置RPを通過する原稿の画像を1ラインずつ読み取る。信号処理部90は、イメージセンサ60からの信号を使用してスキャンデータを生成する。
【0021】
CPU110は、データ処理を行う演算装置(プロセッサ)である。記憶装置115は、揮発性記憶装置120と、不揮発性記憶装置130と、を含む。揮発性記憶装置120は、例えば、DRAMであり、不揮発性記憶装置130は、例えば、フラッシュメモリである。
【0022】
不揮発性記憶装置130は、コンピュータプログラムPG1と情報データベースIDBとを格納している。コンピュータプログラムPG1に従ってCPU110によって実行される処理は、印刷実行部160や読取実行部170を制御する処理を含む。また、CPU110は、コンピュータプログラムPG1を実行することによって、端末装置200A、200Bと協働して、後述するステータス確認処理やプルスキャン処理を実行する。コンピュータプログラムPG1は、複合機100の製造時に、不揮発性記憶装置130に格納される。なお、コンピュータプログラムPG1は、ネットワークを通じて図示しないサーバから、または、複合機100に接続された図示しない携帯記憶装置(例えば、USBフラッシュドライブ)から、複合機100の不揮発性記憶装置130に格納されてよい。
【0023】
情報データベースIDBは、後述するように、複合機100のステータスに関する情報や設定情報などの各種の情報を格納するデータベースである。
図3は、複合機100の情報データベースIDBの一例を示す図である。情報データベースIDBは、管理者情報テーブルATと、ステータステーブルSTと、設定情報テーブルDTと、拒否リストRLと、を含んでいる。
【0024】
管理者情報テーブルATは、複合機100の管理ユーザ(後述)の情報が記録されるテーブルである。管理者情報テーブルATには、管理ユーザのアカウントID「AC_b」とパスワード「PW_b」とメールアドレス「ad_b」とが記録されている。
【0025】
ステータステーブルSTは、複合機100のステータスを記録するためのテーブルである。本実施例のステータステーブルSTには、現在のステータスを示すステータス情報と、現在のステータスに遷移する直前のステータスを示すステータス情報と、の2種類のステータス情報が記録されている。CPU110は、用紙検出センサ55や、図示しないその他のセンサからの出力に従って、複合機100のステータスを検出し、複合機100のステータスが遷移する度に、ステータステーブルSTを更新する。複合機100が取り得るステータスは、搬送装置50の給紙トレイ56に原稿が載置された原稿セット状態を含む複数の状態を含む。本実施例では、複合機100が取り得るステータスは、原稿セット状態、アイドリング状態、エラー状態、印刷中状態と、を含む。アイドリング状態は、印刷指示や後述するプルスキャン指示を受信する前の状態である。エラー状態は、複合機100に何らかのエラーが発生している状態である。印刷中状態は、複合機100の印刷実行部160が印刷を行っている状態である。原稿セット状態とは異なる状態、すなわち、アイドリング状態、エラー状態、印刷中状態は、搬送装置50の給紙トレイ56に原稿が載置されていない状態でもある。すなわち、現在のステータス情報が原稿セット状態を示す場合には、直前のステータス情報は原稿セット状態とは異なる状態を示す。
【0026】
設定情報テーブルDTは、複合機100に関する様々な設定が記録されるテーブルである。本実施例の設定情報テーブルDTは、セキュアスキャン設定が有効であるか無効であるかを示す情報が記録されている。セキュアスキャンの設定は、ユーザが操作部150を介して入力する指示に基づいて、有効と無効とのいずれかに設定される。セキュアスキャンの設定は、読取実行部170にて生成されるスキャンデータに関するセキュリティを向上させるための設定であり、後述するステータス関連処理にて参照される。
【0027】
図3に示す「プルスキャンのセキュリティレベル」の情報は、第2実施例にて用いられる情報であり、第1実施例の設定情報テーブルDTには含まれない。このために、該情報については第2実施例にて説明する。
【0028】
設定情報テーブルDTは、複合機100に関する他の設定、例えば、印刷実行部160、読取実行部170、ローカルエリアネットワークLNに関連する各種の設定を含んでいるが、本願の実施例との関連性が薄いために、その図示および説明は省略する。
【0029】
拒否リストRLは、後述するプルスキャン処理において、プルスキャン指示を拒否すべき端末装置(拒否対象の端末装置とも呼ぶ)を特定するための識別情報を記録するリストである。識別情報としては、本実施例では、拒否対象の端末装置のIPアドレスが用いられる。これに限らず、識別情報としては、拒否対象の端末装置のMACアドレスや、該端末装置にインストールされたアプリケーションプログラムのID(アプリID)などの他の情報が用いられても良い。
【0030】
第1端末装置200Aは、CPU210と、記憶装置215と、表示部240と、操作部250と、通信インタフェース280とを、有している。これらの要素は、図示しないバスを介して互いに接続されている。
【0031】
表示部240は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどの、画像を表示するように構成された装置である。操作部250は、マウス、キーボード、表示部240上に重ねて配置されたタッチパネルなどの、ユーザによる操作を受け取るように構成された装置である。通信インタフェース280は、他の装置と通信するためのインタフェースである(例えば、有線LAN、IEEE802.11の無線LAN、携帯電話ネットワークのインタフェースのうちの1種以上のインタフェースを含む)。本実施例では、通信インタフェース280は、ローカルエリアネットワークLNに接続可能である。
【0032】
CPU210は、データ処理を行う演算装置(プロセッサ)である。記憶装置215は、揮発性記憶装置220と、不揮発性記憶装置230と、を含む。揮発性記憶装置220は、例えば、DRAMであり、不揮発性記憶装置230は、例えば、フラッシュメモリである。
【0033】
不揮発性記憶装置230は、アプリケーションプログラムPG2とブラウザプログラムPG3とを格納している。CPU210は、アプリケーションプログラムPG2を実行することによって、複合機100を利用するためのアプリケーションとして機能する。アプリケーションは、例えば、複合機100の印刷実行部160や読取実行部170を制御して、印刷や読取を実行させる。アプリケーションプログラムPG2は、例えば、複合機100の製造や販売を行う事業者によって提供される。アプリケーションプログラムPG2は、例えば、ネットワークを通じて図示しないサーバから第1端末装置200Aの不揮発性記憶装置230に格納される。
【0034】
CPU210は、ブラウザプログラムPG3を実行することによって、WEBブラウザとして機能する。WEBブラウザは、例えば、後述するように、WEBサーバとして機能する複合機100にアクセスするために用いられる。ブラウザプログラムPG3は、例えば、第1端末装置200Aのオペレーティングシステム(OS)を提供する事業者によって提供される。ブラウザプログラムPG3は、例えば、第1端末装置200Aの製造時に、不揮発性記憶装置230に格納される。
【0035】
第2端末装置200Bは、第1端末装置200Aと同様の計算機であり、第1端末装置200Aと同様の構成210~280(図示省略)を備えている。第2端末装置200Bの構成の説明は省略する。
【0036】
第1端末装置200Aは、一般ユーザが所有する計算機であり、第2端末装置200Bは、管理ユーザが所有する計算機である。一般ユーザは、複合機100のユーザのうち、管理ユーザとは異なるユーザである。管理ユーザは、複合機100のユーザのうち、複合機100の管理を担当するユーザである。管理ユーザは、管理アカウントを所有しており、管理アカウントの情報(アカウントIDやパスワード)は、上述したように、複合機100の情報データベースIDBの管理者情報テーブルATに記録されている。
【0037】
A2.ステータス確認処理
ユーザは、自身の端末装置200A、200BのWEBブラウザの機能を用いて、複合機100のステータスを確認することができる。
図4は、ステータス確認処理のフローチャートである。
【0038】
先ず、一般ユーザが第1端末装置200Aを用いて、複合機100のステータスを確認する場合について説明する。一般ユーザは、第1端末装置200AにおいてブラウザプログラムPG3を起動し、WEBブラウザとして機能する第1端末装置200Aに対して、所定の操作を行う。所定の操作は、例えば、WEBサーバとして機能する複合機100を示すUniform Resource Locator(URL)を指定して所定のWEBページ(図示省略)にアクセスすることと、該WEBページにステータスの確認指示を入力することと、を含む。
【0039】
第1端末装置200A(CPU210)は、該所定の操作を受け付けると、S12において、ステータス要求を複合機100に送信する。なお、ステータス確認処理は、WEBブラウザとして機能する端末装置200A、200Bと、WEBサーバとして機能する複合機100と、の間で実行される。このために、ステータス確認処理において、端末装置200A、200Bと、複合機100と、の間の通信は、Hypertext Transfer Protocol(HTTP)を用いて実行される。すなわち、端末装置200A、200Bから複合機100へ送信されるデータ(例えば、ステータス要求)は、HTTPリクエストとして送信され、複合機100から端末装置200A、200Bへ送信されるデータ(例えば、後述するステータス応答)は、直前に受信されたHTTPリクエストに対するHTTPレスポンスとして送信される。
【0040】
複合機100(CPU110)は、ステータス要求を受信すると、S14にて、ステータス関連処理を実行する。ステータス関連処理は、詳細は後述するが、ステータス要求に応じて送信すべきステータス情報を決定する処理である。
【0041】
S16では、複合機100は、ステータス関連処理にて決定された送信すべきステータス情報を含むステータス応答を第1端末装置200Aに送信する。第1端末装置200Aは、ステータス応答を受信すると、S18にて、ステータス応答に含まれるステータス情報を第1端末装置200Aの表示部240に表示する。これによって、一般ユーザは、複合機100のステータスを認識できる。
【0042】
次に、管理ユーザが第2端末装置200Bを用いて、複合機100のステータスを確認する場合について説明する。管理ユーザは、第2端末装置200BにおいてブラウザプログラムPG3を起動し、WEBブラウザとして機能する第2端末装置200Bに対して、ログイン操作を行う。ログイン操作は、例えば、WEBサーバとして機能する複合機100を示すURLを指定して所定のWEBページ(図示省略)にアクセスすることと、該WEBページにログインのための認証情報(例えば、アカウントIDとパスワード)を入力することと、を含む。
【0043】
第2端末装置200B(CPU210)は、該ログイン操作を受け付けると、S20において、複合機100との間で管理者認証処理を実行する。具体的には、第2端末装置200Bは、認証情報を含む認証要求を複合機100に送信する。複合機100は、該認証情報を用いて認証処理を実行する。認証処理は、例えば、送信された認証情報(アカウントIDとパスワード)が、情報データベースIDBの管理者情報テーブルATに記録するみの認証情報(
図3)と一致するか否かを確認する処理である。これらの認証情報が一致する場合には認証処理は成功し、これらの認証情報が一致しない場合には認証処理は失敗する。認証処理が成功した場合には、複合機100は端末装置200Bに認証応答を送信する。これにより、端末装置200BはS22を実行する。認証処理が失敗した場合には、S22以降の処理は実行されない。
【0044】
S22では、第2端末装置200Bは、管理ユーザの操作に基づいてステータス要求を複合機100に送信する。複合機100(CPU110)は、ステータス要求を受信すると、S24にて、ステータス関連処理を実行する。
【0045】
S26では、複合機100は、ステータス関連処理にて決定された送信すべきステータス情報を含むステータス応答を第2端末装置200Bに送信する。第2端末装置200Bは、ステータス応答を受信すると、S28にて、ステータス応答に含まれるステータス情報を第2端末装置200Bの表示部240に表示する。これによって、管理ユーザは、複合機100のステータスを認識できる。
【0046】
次に、S14、S24のステータス関連処理について説明する。
図5は、ステータス関連処理のフローチャートである。ステータス関連処理は、上述のように、複合機100がステータス要求を受信したときに、複合機100(CPU110)によって実行される。
【0047】
S100では、複合機100は、現在のステータス情報を情報データベースIDB(
図1)のステータステーブルST(
図3)から取得する。S110では、複合機100は、取得したステータス情報に基づいて、現在の複合機100のステータスが原稿セット状態であるか否かを判断する。
【0048】
複合機100のステータスが原稿セット状態でない場合には(S110:NO)、複合機100は、S160にて、S100にて取得済みの現在のステータス情報を送信すべきステータス情報(送信ステータス情報とも呼ぶ)に決定する。
【0049】
複合機100のステータスが原稿セット状態である場合には(S110:YES)、複合機100は、S120にて、「セキュアスキャン設定」が有効であるか否かを判断する。本実施例では、複合機100は、上述した情報データベースIDB(
図1)の設定情報テーブルDT(
図3)に記録されたセキュアスキャンの設定を参照することによって、該設定が有効であるか否かを判断する。
【0050】
セキュアスキャンの設定が無効である場合には(S120:NO)、複合機100は、S160にて、S100にて取得済みの現在のステータス情報を送信ステータス情報に決定する。
【0051】
セキュアスキャンの設定が有効である場合には(S120:YES)、複合機100は、S130にて、ステータス関連処理の開始の契機となったステータス要求の送信元のユーザは、一般ユーザであるか管理ユーザであるかを判断する。具体的には、ステータス要求が管理者認証処理(
図4のS20)を経て送信された場合には、複合機100は、ステータス要求の送信元のユーザが管理ユーザであると判断する。ステータス要求が管理者認証処理(
図4のS20)を経ることなく送信された場合には、複合機100は、ステータス要求の送信元のユーザが一般ユーザであると判断する。
【0052】
ステータス要求の送信元のユーザが管理ユーザである場合には(S130:NO)、複合機100は、S160にて、S100にて取得済みの現在のステータス情報を送信ステータス情報に決定する。
【0053】
ステータス要求の送信元のユーザが一般ユーザである場合には(S130:YES)、複合機100は、S140にて、現在のステータスの直前のステータスを示す情報(直前のステータス情報と呼ぶ)を不揮発性記憶装置130のステータステーブルSTから取得する。S150では、複合機100は、S140にて取得済みの直前のステータス情報を送信ステータス情報に決定する。
【0054】
さらに、ユーザは、端末装置を用いることなく、複合機100の操作部150を操作することで、複合機100のステータスを確認することができる。この場合について
図4を参照して説明する。
【0055】
例えば、ユーザは、操作部150を操作して、ステータス表示要求を複合機100に入力する。複合機100は、ステータス表示要求を取得すると、
図4のS32にて、現在のステータス情報を情報データベースIDB(
図1)のステータステーブルST(
図3)から取得する。S34では、複合機100は、取得したステータス情報、すなわち、現在の複合機100のステータス情報を表示部140に表示する。これによって、ユーザは、複合機100のステータスを認識できる。このように、操作部150を介して入力されるステータス表示要求に応じて、表示部140にステータス情報を表示する場合には、セキュアスキャンの設定を確認することなく、常に、現在のステータス情報を表示する。
【0056】
A3.プルスキャン処理
次にプルスキャン処理について説明する。プルスキャン処理によって端末装置200A、200Bのユーザは、読取実行部170に載置された原稿を示すスキャンデータを第1端末装置200Aに保存することができる。
図6は、プルスキャン処理のシーケンス図である。
図6には、第1端末装置200Aと複合機100との間で処理が行われる例が示されているが、第2端末装置200Bと複合機100との間でも同様の処理が実行可能である。
【0057】
一般ユーザは、複合機100に読み取らせるべき原稿を読取実行部170に載置する。一般ユーザは、第1端末装置200AにおいてアプリケーションプログラムPG2を起動し、アプリケーションとして機能する第1端末装置200Aに対してスキャンの指示を入力する。
【0058】
第1端末装置200A(アプリケーションとして機能するCPU210)は、スキャンの指示を取得すると、S42において、プルスキャン指示を複合機100に送信する。なお、このアプリケーションと複合機100との間の通信は、HTTPを用いて実行される。このために、ステータス確認処理と同様に、端末装置200A、200Bから複合機100へ送信されるデータ(例えば、プルスキャン指示)は、HTTPリクエストとして送信され、複合機100から端末装置200A、200Bへ送信されるデータ(例えば、後述するプルスキャン応答)は、直前に受信されたHTTPリクエストに対するHTTPレスポンスとして送信される。
【0059】
複合機100(CPU110)は、プルスキャン指示を受信すると、S44にて、プルスキャン関連処理を実行する。プルスキャン関連処理は、詳細は後述するが、プルスキャン指示に応じてスキャンデータを送信すべきか否かを判断し、送信すべきと判断される場合には、スキャンデータの生成を行う処理である。
【0060】
S46では、複合機100は、プルスキャン関連処理にて生成されたスキャンデータを含むプルスキャン応答を第1端末装置200Aに送信する。第1端末装置200Aは、プルスキャン応答を受信すると、S48にて、プルスキャン応答に含まれるスキャンデータを第1端末装置200Aの不揮発性記憶装置130に格納する。これによって、一般ユーザは、原稿を示すスキャンデータを取得できる。なお、詳細は後述するプルスキャン関連処理では、スキャンデータが生成されない場合がある。この場合には、
図5のS46、S48は実行されず、プルスキャン指示の送信元の装置は、スキャンデータを取得できない。
【0061】
次に、S44のプルスキャン関連処理について説明する。
図7は、第1実施例のプルスキャン関連処理のフローチャートである。プルスキャン関連処理は、上述のように、複合機100がプルスキャン指示を受信したときに、複合機100(CPU110)によって実行される。
【0062】
S200では、複合機100は、プルスキャン指示の送信元のIPアドレスは、情報データベースIDBの拒否リストRL(
図3)にあるか否かを判断する。送信元のIPアドレスは、例えば、プルスキャン指示のヘッダに含まれている。
【0063】
送信元のIPアドレスが拒否リストRLにある場合には(S200:YES)、複合機100は、スキャンを実行することなく、プルスキャン関連処理を終了する。この場合には、スキャンデータが生成されないので、スキャンデータを含むプルスキャン応答の送信(
図6のS46)は実行されない。
【0064】
送信元のIPアドレスが拒否リストRLにない場合には(S200:NO)、複合機100は、S210にて、現在のステータス情報を情報データベースIDB(
図1)のステータステーブルST(
図3)から取得する。S220では、複合機100は、取得したステータス情報に基づいて、現在の複合機100のステータスが原稿セット状態であるか否かを判断する。
【0065】
複合機100のステータスが原稿セット状態である場合には(S220:YES)、複合機100は、S230にて、スキャンを実行する。すなわち、複合機100は、読取実行部170を制御して、読取実行部170に載置された原稿を読み取ることによって、スキャンデータを生成する。スキャンデータを生成すると、複合機100は、プルスキャン関連処理を終了する。この場合には、スキャンデータが生成されるので、スキャンデータを含むプルスキャン応答の送信(
図6のS46)が実行される。
【0066】
複合機100のステータスが原稿セット状態でない場合には(S220:NO)、換言すれば、複合機100の読取実行部170に原稿が載置されていることが検出されていない原稿未検出状態である場合には、複合機100は、S250にて、管理ユーザへの通知処理を実行する。具体的には、複合機100は、情報データベースIDBの管理者情報テーブルAT(
図3)に記録された管理ユーザのメールアドレス宛に、通知メールMLを送信する。
【0067】
図8は、第1実施例の通知メールMLの文面の一例を示す図である。
図8に示すように、通知メールMLは、例えば、原稿セット状態でないにも拘わらずに、複合機100がプルスキャン指示を受信したことを通知するメッセージMS1と、該プルスキャン指示が不正な者から送信された可能性を示唆するメッセージMS2と、セキュリティを見直すことを促すメッセージMS3と、を含む。該通知メールMLは、例えば、管理ユーザの第2端末装置200Bに受信されて、第2端末装置200Bの表示部240に表示される。
【0068】
S260では、複合機100は、プルスキャン指示の送信元のIPアドレスを拒否リストRLに記録して、プルスキャン処理を終了する。この場合には、スキャンデータが生成されないので、スキャンデータを含むプルスキャン応答の送信(
図6のS46)は実行されない。
【0069】
以上説明した本実施例によれば、複合機100は、第1端末装置200Aから送信されるプルスキャン指示(
図6のS42)に応じて、読取実行部170にスキャンデータを生成させ(
図7のS230)、該スキャンデータを第1端末装置200Aに送信する(
図6のS46)。すなわち、複合機100は、いわゆるプルスキャンの機能を備えている。複合機100は、セキュアスキャンの設定が有効であるか否かを判断する(
図5のS120)。複合機100は、セキュアスキャンの設定が有効でなく(
図5のS120にてNO)、かつ、読取実行部170に原稿が載置されている場合に(
図5のS110にてYES)、一般ユーザの端末装置(例えば、第1端末装置200A)から送信されるステータス要求に応じて原稿セット状態を示すステータス情報を端末装置に送信する(
図5のS160、
図4のS16)。複合機100は、セキュアスキャンの設定が有効であり(
図5のS120にてYES)、かつ、読取実行部170に原稿が載置されている場合に(
図5のS110にてYES)、ステータス情報を一般ユーザの端末装置に原稿セット状態を示すステータス情報を送信しない(
図5のS140、S150)。
【0070】
プルスキャン処理では、複合機100を直接操作することなく、端末装置を用いて複合機100からスキャンデータを取得することができる。特に、複合機100と無線通信が可能な端末装置は、複合機100から物理的に離れた場所から容易にプルスキャン指示を複合機100に送信可能である。このために、例えば、読取実行部170にユーザが原稿を載置した状態で、当該ユーザとは異なる者がプルスキャン指示を複合機100に送信すれば、ユーザとは異なる者がユーザの原稿を示すスキャンデータを不正に取得し得る。
【0071】
また、ステータス確認処理では、複合機100を直接操作することなく、端末装置を用いて複合機100のステータスを確認することができる。このために、仮に、複合機100が原稿セット状態であるか否かを、端末装置を用いて遠隔で容易に確認可能であるとする。この場合には、ユーザとは異なる者は、端末装置を用いて複合機100が原稿セット状態であるか否かを確認した後に、該端末装置からプルスキャン指示を複合機100に送信することでスキャンデータを不正に取得できる。
【0072】
本実施例によれば、セキュアスキャンの設定が有効である場合には、原稿セット状態であっても、原稿セット状態であることを示すステータス情報を端末装置に送信しない。この結果、読取実行部170に原稿が載置されていたとしても、端末装置や端末装置の利用者に、原稿が載置されていることを認識されることを抑制できる。したがって、読取実行部170に載置された原稿を示すスキャンデータがネットワークを介して不正に取得されることを抑制できる。
【0073】
さらに、複合機100は、操作部150を介して入力されるステータス表示要求を取得する場合に、ステータス情報を表示部140に表示する(
図4のS32、S34)。この場合には、原稿セット状態でステータス表示要求を取得する場合に、セキュアスキャンの設定が有効であるか否かに拘わらずに、原稿セット状態であることを示すステータス情報を表示部140に表示する。操作部150を介して入力される表示要求は、複合機100の側で操作部150を直接操作する必要があるので、不正な者によって入力される可能性は低い。本実施例によれば、セキュアスキャンの設定が有効であるか否かに拘わらずに、操作部150を介して入力されるステータス表示要求に応じてスキャナに原稿が載置されていることを示すステータス情報が表示部140に表示される。この結果、正当なユーザに対しては、原稿セット状態であるか否かを含むステータス情報を正しく提供できる。
【0074】
さらに、本実施例によれば、複合機100は、管理ユーザの第2端末装置200Bから送信されるステータス要求(
図4のS22)を受信する場合に、該ステータス要求に応じてステータス情報を第2端末装置200Bに対して送信する(
図4のS26)。この場合には、原稿セット状態で管理ユーザの端末装置200Aからステータス要求を受信する場合に、セキュアスキャンの設定が有効であるか否かに拘わらずに、原稿セット状態であることを示すステータス情報を第2端末装置200Bに送信する(
図5のS130にてNO、S160)。この結果、第2端末装置200Bのユーザである管理ユーザには、セキュアスキャンの設定が有効であるか否かに拘わらずに、原稿セット状態であることを示すステータス情報が送信されるので、管理ユーザに対する利便性を向上できる。管理ユーザの第2端末装置200Bとの間では、管理者認証処理(
図4のS20)が行われるので、セキュリティ上の問題は生じ難い。
【0075】
さらに、本実施例によれば、複合機100は、一般ユーザの第1端末装置200Aから送信されるステータス要求を受信する場合に、セキュアスキャンの設定が有効であるか否かに拘わらずに、原稿セット状態とは関連しないステータス情報(例えば、アイドリング状態や印刷中状態等を示す情報)を第1端末装置200Aに送信する(
図5のS110にてNO、S160)。原稿セット状態とは関連しないステータス情報は、スキャンデータの不正取得のために利用される可能性は低い。このために、セキュリティの問題が生じにくいステータス情報は、セキュアスキャンの設定が有効であるか否かに拘わらずに、一般ユーザの第1端末装置200Aにも送信されるので、一般ユーザに対する利便性を向上できる。
【0076】
本実施例では、複合機100は、WEBサーバとして機能し、第1端末装置200AからHTTPリクエストとして送信されるステータス要求に応じて、ステータス情報をHTTPレスポンスとして送信する。この結果、第1端末装置200Aは、WEBブラウザを利用して容易に複合機100のステータスを確認できる。このために、スキャンデータを不正に取得しようとする者も容易にステータス要求を複合機100に送信できるが、本実施例では、原稿セット状態であることを示すステータス情報の送信を制限する工夫がなされているので、スキャンデータを不正に取得されることを抑制できる。
【0077】
さらに、本実施例によれば、読取実行部170に原稿が載置されていることが検出されない原稿未検出状態で、端末装置からプルスキャン指示を受信する場合に(
図7のS220にてNO)、複合機100は、セキュリティに関連する特定処理(
図7のS250、S260)を実行する。
【0078】
正当なユーザが端末装置を用いてプルスキャンを行う場合には、原稿を読取実行部170に載置した後に、端末装置からプルスキャン指示を送信する。原稿を読取実行部170に載置した後でなければ、読取実行部170がユーザの原稿を読み取れないためである。これに対して不正な者が端末装置を用いてプルスキャンを行う場合には、原稿未検出状態で端末装置からプルスキャン指示を送信する場合がある。不正な者は、複合機100から離れた場所にいる可能性が高いので、複合機100に原稿が載置されているか否かを目視で確認することができない場合がある。さらに、本実施例では、上述のようにスタータス確認処理にて原稿セット状態を示すステータス情報が不正な者の端末装置に送信されないように工夫されている。このために、不正な者は、ステータス確認処理を利用して遠隔で複合機100に原稿が載置されているか否かを確認することも困難である。この場合には、不正な者は、原稿が載置されているか否かに拘わらずに定期的にプルスキャン指示を送信し、偶然に原稿が載置されているタイミングで送信されたプルスキャン指示に応じて、不正にスキャンデータを取得できることを期待する可能性があるためである。このために、複合機100は、原稿未検出状態で端末装置からプルスキャン指示を受信する場合には、セキュリティに関する対応を取ることが好ましいと考えられる。本実施例では、原稿未検出状態で端末装置からプルスキャン指示を受信する場合に、複合機100は、セキュリティに関連する特定処理を実行するので、不正な元からプルスキャン指示が受信された可能性がある場合に、セキュリティに関する対策を講じ得る。
【0079】
具体的には、セキュリティに関連する特定処理は、原稿未検出状態でプルスキャン指示記読取指示を受信したことに関する情報(
図8のメッセージMS1~MS3)を管理ユーザに通知する処理を含む(
図7のS250)。この結果、管理ユーザは、原稿未検出状態でプルスキャン指示を受信したことに関する情報を得ることができるので、例えば、セキュリティに関する対応を取ることができる。例えば、管理ユーザは、一般ユーザにプルスキャン指示を控えるように通達を出す等の注意喚起を行っても良いし、セキュアスキャンの設定が無効である場合には該設定を有効に設定しても良い。
【0080】
さらに、セキュリティに関連する特定処理、原稿未検出状態で受信された読取指示の送信元の情報(本実施例ではIPアドレス)を記録する記録処理を含む(
図7のS260)。複合機100は、記録済みの送信元の端末装置、本実施例では、記録済みのIPアドレスを有する端末装置にスキャンデータを送信しない(
図7のS200にてYES)。この結果、原稿未検出状態で受信されたプルスキャン指示の送信元の端末装置には、その後に新たにプルスキャン指示を受信したとしてもスキャンデータを送信しないので、スキャンデータが不正に取得されることを効果的に抑制できる。
【0081】
さらに、本実施例によれば、複合機100は、原稿が載置されているか否かを含む複合機100のステータスを示すステータス情報を、ステータステーブルSTを用いて管理している(
図3)。複合機100は、セキュアスキャンの設定が有効でなく(
図5のS120にてNO)、かつ、現在のステータス情報が原稿セット状態を示す情報である場合に(
図5のS110にてYES)、原稿セット状態を示す情報(すなわち、現在のステータス情報)を端末装置に送信する(
図5のS160)。そして、複合機100は、特定の設定が有効であり(
図5のS110にてYES)、かつ、現在のステータス情報が原稿セット状態を示す情報である場合に(
図5のS110にてYES)、原稿セット状態を示す情報(すなわち、現在のステータス情報)とは異なる情報(本実施例では直前のステータス情報)を端末装置に送信する(
図5のS150)。この結果、複合機100のステータスを管理しつつ、スキャンデータがネットワークを介して不正に取得されることを抑制できる。
【0082】
さらに、本実施例では、複合機100は、原稿セット状態を示す情報(すなわち、現在のステータス情報)とは異なる情報(本実施例では直前のステータス情報)として、直前のステータス情報、すなわち、原稿が載置される直前のステータスを示す情報を、端末装置に送信する(
図5のS150)。この結果、例えば、読取実行部170に原稿が載置されたことを不正な者に察知されることを抑制できる。例えば、読取実行部170に原稿が載置されたタイミングで、端末装置に送信されるステータス情報が変化すれば、端末装置の利用者(例えば、不正な者)は、複合機100のステータスが変化したことを認識できるので、読取実行部170に原稿が載置されたことを察知する可能性がある。例えば、不正な者は、複合機100のステータスが変化する度に、端末装置からプルスキャン指示を複合機100に送信して、スキャンデータの取得を試みる可能性がある。上記構成によれば、複合機100が原稿セット状態に遷移しても、直前のステータス情報が端末装置に送信されるので、スキャンデータが不正に取得されることをより効果的に抑制できる。
【0083】
以上の説明から解るように、本実施例において、一般ユーザの第1端末装置200Aから送信されるステータス要求は、第1ステータス要求の例であり、管理ユーザの第2端末装置200Bから送信されるステータス要求は、第3ステータス要求の例であり、操作部150を介して入力されるステータス表示要求は、第2ステータス要求の例である。
【0084】
B.第2実施例
第2実施例では、複合機100において、プルスキャンのセキュリティレベルが設定される。具体的には、情報データベースIDBの設定情報テーブルDT(
図3)に、プルスキャンのセキュリティレベルが設定情報として記録される。
【0085】
本実施例のセキュリティレベルは、レベル0~レベル4の5段階に設定される。レベル0~レベル4に応じてプルスキャンを実行するための認証処理等が異なっている。レベル0では、認証処理は不要である。レベル1では、認証処理として操作部150を介した入力を必要とする。レベル2では、認証処理として端末装置へのパスワードの入力を必要とする。レベル3では、認証処理として端末装置へのパスワードの入力とスキャンデータの送信先の確認とを必要とする。レベル4では、プルスキャンの実行が禁止される。
【0086】
セキュリティレベルの初期値は、レベル0である。セキュリティレベルは、ユーザが操作部150を介して入力する指示に基づいて、設定される。また、セキュリティレベルは、後述する第2実施例のステータス関連処理にて自動的に設定される場合がある。
【0087】
第2実施例では、セキュリティレベルの導入に関連して、第1実施例とは異なるステータス関連処理が実行される。第2実施例の他の処理は第1実施例と同一である。
図9は、第2実施例のステータス関連処理のフローチャートである。
図10は、第2実施例にて複合機100に表示される画面の一例を示す図である。
【0088】
第2実施例のプルスキャン関連処理は、第1実施例と同様に、複合機100がプルスキャン指示を受信したときに、複合機100(CPU110)によって実行される。
【0089】
S300では、複合機100は、プルスキャンが禁止されているか否かを判断する。換言すれば、複合機100は、設定情報テーブルDT(
図3)を参照して、プルスキャンのセキュリティレベルが、プルスキャンを禁止するレベル4に設定されているか否かを判断する。
【0090】
プルスキャンが禁止されている場合には(S300:YES)、複合機100は、スキャンを実行することなく、プルスキャン関連処理を終了する。この場合には、スキャンデータが生成されないので、スキャンデータを含むプルスキャン応答の送信(
図6のS46)は実行されない。
【0091】
プルスキャンが禁止されていない場合には(S300:NO)、複合機100は、S310にて、現在のステータス情報を情報データベースIDB(
図1)のステータステーブルST(
図3)から取得する。S320では、複合機100は、取得したステータス情報に基づいて、現在の複合機100のステータスが原稿セット状態であるか否かを判断する。
【0092】
複合機100のステータスが原稿セット状態である場合には(S320:YES)、複合機100は、S330にて、情報データベースIDBの設定情報テーブルDT(
図3)からプルスキャンの現在のセキュリティレベルを取得する。
【0093】
S340では、複合機100は、現在のセキュリティレベルに応じて認証処理を実行する。セキュリティレベルがレベル0である場合には、認証処理は不要であるので、なにも実行されない。セキュリティレベルがレベル1である場合には、複合機100は、認証処理として操作部150(例えば、表示部140に重畳されたタッチパネル)を介した入力をユーザに要求する。具体的には、複合機100は、
図10(A)の表示画面DW1を表示部140に表示する。表示画面DW1は、プルスキャン指示を受信した旨を示すメッセージMS4と、送信元にスキャンデータを送信するか否かの確認を促すメッセージMS5と、OKボタンBT1と、NGボタンBT2と、を含む。ユーザによってOKボタンBT1とNGボタンBT2とのいずれかが押下されると、複合機100は、表示画面DW1の表示を終了してS350に処理を進める。
【0094】
セキュリティレベルがレベル2である場合には、複合機100は、認証処理として端末装置(例えば、第1端末装置200A)へのパスワードの入力をユーザに要求する。具体的には、複合機100は、
図10(B)の表示画面DW2を表示部140に表示する。表示画面DW2は、端末装置へのパスワードの入力を促すメッセージMS6と、パスワードPWと、含む。さらに、複合機100は、図示しないパスワード入力画面のデータをプルスキャン指示の送信元の端末装置に送信する。端末装置は、パスワード入力画面を表示し、該入力画面を介してユーザから取得したパスワードを複合機100に送信する。複合機100は、端末装置から受信したパスワードと、表示画面DW2に表示したパスワードPWと、が一致するか否かを判断して、S350に処理を進める。
【0095】
セキュリティレベルがレベル3である場合には、複合機100は、認証処理として端末装置(例えば、第1端末装置200A)へのパスワードの入力とスキャンデータの送信先の確認とをユーザに要求する。具体的には、複合機100は、セキュリティレベルがレベル2である場合と同様の認証処理を実行する。複合機100は、レベル2と同様の認証処理の後に、さらに、
図10(C)の表示画面DW3を表示部140に表示する。表示画面DW3は、プルスキャン指示の送信元のIPアドレスの確認を促すメッセージMS7と、プルスキャン指示の送信元のIPアドレスIAと、OKボタンBT1と、NGボタンBT2と、を含む。ユーザによってOKボタンBT1とNGボタンBT2とのいずれかが押下されると複合機100は、表示画面DW3の表示を終了してS350に処理を進める。
【0096】
S350では、複合機100は、S340にて実行した認証処理において認証が成功したか否かを判断する。セキュリティレベルがレベル0であれば、認証処理は不要であるので、常に認証が成功したと判断される。セキュリティレベルがレベル1であれば、
図10(A)の表示画面DW1にてOKボタンBT1が押下された場合に認証が成功したと判断され、NGボタンBT2が押下された場合に認証が失敗したと判断される。
【0097】
セキュリティレベルがレベル2であれば、端末装置から受信したパスワードと、
図10(B)の表示画面DW2に表示したパスワードPWと、が一致する場合に認証が成功したと判断される。また、端末装置から受信したパスワードと、
図10(B)の表示画面DW2に表示したパスワードPWと、が一致しない場合に認証が失敗したと判断される。
【0098】
セキュリティレベルがレベル3であれば、端末装置から受信したパスワードと
図10(B)の表示画面DW2に表示したパスワードPWと、が一致し、かつ、
図10(C)の表示画面DW3にてOKボタンBT1が押下された場合に認証が成功したと判断される。また、端末装置から受信したパスワードと
図10(B)の表示画面DW2に表示したパスワードPWと、が一致しない、あるいは、
図10(C)の表示画面DW3にてNGボタンBT2が押下された場合に認証が失敗したと判断される。
【0099】
認証が成功した場合には(S350:YES)、複合機100は、S360にて、スキャンを実行する。すなわち、複合機100は、読取実行部170を制御して、読取実行部170に載置された原稿を読み取ることによって、スキャンデータを生成する。スキャンデータを生成すると、複合機100は、プルスキャン関連処理を終了する。この場合には、スキャンデータが生成されるので、スキャンデータを含むプルスキャン応答の送信(
図6のS46)が実行される。
【0100】
認証が失敗した場合には(S350:NO)、複合機100は、スキャンを実行することなく、プルスキャン関連処理を終了する。この場合には、スキャンデータが生成されないので、スキャンデータを含むプルスキャン応答の送信(
図6のS46)は実行されない。
【0101】
複合機100のステータスが原稿セット状態でない場合には(S320:NO)、複合機100は、S380にて、管理ユーザへの通知処理を実行する。すなわち、複合機100は、情報データベースIDBの管理者情報テーブルAT(
図3)に記録された管理ユーザのメールアドレス宛に、通知メールML2を送信する。
【0102】
図11は、第2実施例の通知メールML2の文面の一例を示す図である。
図11に示すように、通知メールML2は、例えば、原稿セット状態でないにも拘わらずに、複合機100がプルスキャン指示を受信したために、プルスキャンを禁止したことを通知するメッセージMS8と、該プルスキャン指示が不正な者から送信された可能性を示唆するメッセージMS9と、プルスキャンを再開する場合には認証処理を要するセキュリティレベル(レベル0-3)に設定することを促すメッセージMS10と、を含む。該通知メールML2は、例えば、管理ユーザの第2端末装置200Bに受信されて、第2端末装置200Bの表示部240に表示される。
【0103】
S390では、複合機100は、プルスキャンを禁止する設定を行って、プルスキャン関連処理を終了する。すなわち、複合機100は、情報データベースIDBの設定情報テーブルDT(
図3)において、プルスキャンのセキュリティレベルをレベル4に設定する。この場合には、スキャンデータが生成されないので、スキャンデータを含むプルスキャン応答の送信(
図6のS46)は実行されない。また、この場合には、通知メールMLを受信した管理ユーザがプルスキャンのセキュリティレベルをレベル4からレベル0-3に変更するまでは、プルスキャンは禁止される。
【0104】
以上説明した本実施例によれば、読取実行部170に原稿が載置されていることが検出されない原稿未検出状態で、端末装置からプルスキャン指示を受信する場合に(
図9のS320にてNO)、管理ユーザにその旨が通知され(
図9のS380)、プルスキャンは、禁止される(
図9のS390)。すなわち、プルスキャン指示に応じて、スキャンデータを端末装置に送信することが禁止される。この結果、スキャンデータが不正に取得されることを抑制できる。
【0105】
さらに、その後は、管理ユーザによってセキュリティレベルが1-3に設定されることによって、複合機100は、プルスキャンが再開される際に、ユーザに対して特定の入力を要求する認証処理を実行する(
図9のS340)。複合機100は、認証処理が実行される場合に、特定の入力が取得されることを条件に、端末装置にスキャンデータを送信する(
図9のS350、S360)。このように、認証処理にて特定の入力が取得されることを条件に、端末装置にスキャンデータを送信するので、スキャンデータがネットワークを介して不正に取得されることを効果的に抑制できる。
【0106】
さらに、本実施例では、認証処理にて要求される特定の入力は、複合機100の操作部150に対する入力(例えば、
図10(A)の表示画面DW1のOKボタンBT1の押下)を含む。不正な者は、複合機100から離れた場所から端末装置を用いてプルスキャン指示を送信する可能性が高い。このために、操作部150に対する入力を要求することで、複合機100から離れた場所にいる不正な者が、スキャンデータを取得することを抑制できる。
【0107】
さらに、本実施例では、認証処理にて要求される特定の入力は、端末装置への認証情報(本実施例ではパスワードPW)の入力を含む。このように、パスワードPWなどの認証情報の入力を要求することで、認証情報を知らない者は、スキャンデータを取得できないので、スキャンデータが不正に取得されることを抑制できる。本実施例では、該認証情報は、複合機100の表示部140に表示される(
図10(B))ので、複合機100から離れた場所にいる不正な者は、パスワードPWを知ることができないので、複合機100から離れた場所にいる不正な者が、スキャンデータを取得することを抑制できる。
【0108】
さらに、本実施例では、認証処理にて要求される特定の入力は、スキャンデータの送信先(換言すれば、プルスキャン指示の送信元)を確認するための入力(例えば、
図10(C)の表示画面DW3のOKボタンBT1の押下)を含む。これによって、誤って不正な者の端末装置宛にスキャンデータが送信される不都合を抑制することができる。
【0109】
C.変形例:
(1)上記実施例では、複合機100が取り得るステータスは、原稿セット状態、アイドリング状態、エラー状態、印刷中状態と、を含む。これに限らず、複合機100が取り得るステータスは、スリープ状態などの他の状態を含んでも良いし、例えば、実施例が取り得る状態を組み合わせた状態、具体的には、原稿がセットされ、かつ、印刷中である状態などを含んでも良い。
【0110】
(2)上記実施例では、複合機100は、操作部を介して入力されるステータス表示要求に応じて表示部140にステータス情報を表示する際には、セキュアスキャン設定が有効であるか否かに拘わらずに、原稿セット状態であることが表示され得る。これに代えて、セキュアスキャン設定が有効である場合には、原稿セット状態であることを表示しなくても良い。
【0111】
(3)上記実施例では、複合機100は、ステータステーブルSTにおいて、現在のステータス情報と、直前のステータス情報と、の両方を記録している。これに代えて、複合機100は、ステータステーブルSTにおいて現在のステータス情報だけを記録しても良い。この場合には、例えば、複合機100は、セキュアスキャン設定の有効である場合には、読取実行部170に原稿が載置されたことが検出されたとしても、現在のステータス情報を、原稿セット状態を示す情報に更新しないこととしても良い。そして、複合機100は、端末装置から送信されるステータス要求に応じて、現在のステータス情報を端末装置に送信することとしても良い。
【0112】
(4)なお、上記実施例では、特定の設定として、セキュアスキャンの設定が採用されているが、これに限らず、他の設定が採用されても良い。例えば、スキャンのセキュリティに関連する他の設定、具体的には、プルスキャン処理においてスキャンデータを端末装置に送信する際に該スキャンデータを暗号化する暗号化設定、あるいは、スキャン画像に「CONFIDENCIAL」等の機密保持を示す画像を付加する設定が採用されても良い。例えば、暗号化設定が採用される場合には、複合機100は、暗号化設定が有効でなく、かつ、読取実行部170に原稿が載置されている場合に、一般ユーザの端末装置200Aから送信されるステータス要求に応じて原稿セット状態を示すステータス情報を端末装置に送信し、暗号化設定が有効であり、かつ、読取実行部170に原稿が載置されている場合に、端末装置200Aに原稿セット状態を示すステータス情報を送信しない。
【0113】
(5)上記実施例では、複合機100は、管理ユーザの第2端末装置200Bから送信されるステータス要求に応じてステータス情報を第2端末装置200Bに送信する際には、セキュアスキャン設定が有効であるか否かに拘わらずに、原稿セット状態であることを示すステータス情報が送信される。これに代えて、セキュアスキャン設定が有効である場合には、第2端末装置200Bから送信されるステータス要求に対しても、原稿セット状態であることを示すステータス情報を送信しなくても良い。例えば、管理ユーザの第2端末装置200Bに対しても、一般ユーザの第1端末装置200Aと同様のステータス情報を送信しても良い。
【0114】
(6)端末装置200A、200Bと、複合機100と、の間の通信は、HTTPに限らず、他のプロトコル、例えば、複合機100の製造社が策定した独自のプロトコルを用いて行われても良い。また、ステータス確認処理とプルスキャン処理とは、互いに異なるプロトコルを用いて実行されても良い。例えば、ステータス確認処理は、Simple Network Management Protocol(SNMP)を用いて実行され、プルスキャン処理は、HTTPを用いて実行されても良い。
【0115】
(7)上記実施例の読取実行部170は、搬送装置50を備えるADF方式の読取実行部である。読取実行部170は、ADF方式に代えて、あるいは、ADF方式とともに、フラットベッド方式で原稿を読み取る読取実行部であっても良い。この場合には、フラットベッド方式の原稿台に載置された原稿を検出する検出センサによって、読取実行部170に原稿が載置されているか否かが判断される。
【0116】
(8)上記各実施例のステータス関連処理(
図5)は一例であり、適宜に変更され得る。例えば、
図5のS150では、直前のステータス情報が、送信ステータス情報に決定される。これに代えて、S150では、予め定められたステータス情報、例えば、アイドリング状態を示すステータス情報が送信ステータス情報に決定されても良い。
【0117】
同様に、
図7のプルスキャン関連処理は一例であり、適宜に変更され得る。例えば、
図7のS200、S260は省略されても良い。この場合には、情報データベースIDBに拒否リストRLを格納する必要はない。
【0118】
同様に、
図9のプルスキャン関連処理は一例であり、適宜に変更され得る。例えば、設定されるセキュリティレベルは、レベル0~レベル4の5段階に限らず、5未満の段階であっても良いし、6以上の段階であっても良い。セキュリティレベルに応じた認証処理(S340)は、適宜に変更されて良い。例えば、パスワードPW(
図10(C))は、端末装置200A、200Bに表示され、ユーザによって複合機100に入力されても良い。また、スキャンデータの送信先の確認(
図10(C))は、複合機100にて行われることに代えて、管理ユーザの第2端末装置200Bにて行われても良い。
【0119】
(9)上記各実施例の複合機100に代えて、印刷実行部160を備えず、読取実行部170を備える単機能のスキャナが採用されても良い。この場合には、上記各実施例の複合機100が実行する処理は、単機能のスキャナが実行する。また、複合機100と通信可能に接続されたサーバ(プリントサーバなど)がローカルエリアネットワークLN内に設けられている場合には、各実施例の複合機100が実行する処理は、複合機100とサーバとで分担して実行しても良い。
【0120】
上記各実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部あるいは全部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【0121】
また、本開示の機能の一部または全部がコンピュータプログラムで実現される場合には、そのプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体(例えば、一時的ではない記録媒体)に格納された形で提供することができる。プログラムは、提供時と同一または異なる記録媒体(コンピュータ読み取り可能な記録媒体)に格納された状態で、使用され得る。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」は、メモリーカードやCD-ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種ROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスクドライブ等のコンピュータに接続されている外部記憶装置も含み得る。
【0122】
上記の実施例と変形例とは、適宜に組み合わせることができる。また、上記の実施例と変形例とは、本開示の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。
【符号の説明】
【0123】
1000…システム,100…複合機,110…CPU,115…記憶装置,120…揮発性記憶装置,130…不揮発性記憶装置,140…表示部,150…操作部,160…印刷実行部,170…読取実行部,180…通信インタフェース,200A,200B…端末装置,210…CPU,215…記憶装置,220…揮発性記憶装置,230…不揮発性記憶装置,240…表示部,250…操作部,280…通信インタフェース,50…搬送装置,55…用紙検出センサ,56…給紙トレイ,57…排紙トレイ,60…イメージセンサ,70…筐体,90…信号処理部,AT…管理者情報テーブル,DT…設定情報テーブル,DW1,DW2,DW3…表示画面,IDB…情報データベース,LN…ローカルエリアネットワーク,PG1…コンピュータプログラム,PG2…アプリケーションプログラム,PG3…ブラウザプログラム,RL…拒否リスト,ST…ステータステーブル