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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173043
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】開閉部材制御装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/695 20150101AFI20241205BHJP
   E05F 15/659 20150101ALI20241205BHJP
   B60J 1/17 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
E05F15/695
E05F15/659
B60J1/17 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091162
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】近藤 史弥
(72)【発明者】
【氏名】松浦 快
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 啓太郎
【テーマコード(参考)】
2E052
3D127
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052CA06
2E052DA02
2E052DB02
2E052EA14
2E052EB01
2E052EC01
2E052GA08
2E052GB15
2E052GD07
3D127FF03
3D127FF09
(57)【要約】
【課題】起動制御の種類によらず安定した速度一定制御を実現する技術を提供する。
【解決手段】ドアECUの制御部は、S410~S440では、車両に設けられたウィンドウガラスを自動開閉するモータの回転を検出するセンサからの検出信号に基づいて、ウィンドウガラスの位置及び移動速度を検出する。制御部は、S480~S510では、ウィンドウガラスの位置が速度一定制御を実行する区間にあることが検出され、且つ、ウィンドウガラスの移動速度が目標速度に収束していることが検出された場合に、検出される移動速度と目標速度とのずれに基づいて算出される電圧マップの学習値を更新する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた開閉体を自動開閉するモータの回転を検出するセンサからの検出信号に基づいて、前記開閉体の位置及び移動速度を検出するように構成された状態検出部(25:S410~S440)と、
前記開閉体の位置と対応づけて、前記開閉体を一定の目標速度で動作させるのに必要な前記モータの印加電圧の学習値を示した電圧マップを記憶するように構成されたマップ記憶部(252)と、
起動制御及び速度一定制御を少なくとも実行することで、指定された速度パターンで前記開閉体が移動するように、前記状態検出部で検出される前記開閉体の位置及び移動速度、並びに前記電圧マップを用いて、前記モータの印加電圧を制御する駆動信号を生成するように構成された信号生成部(25:S210~S380)と、
前記速度一定制御を行っているときに、前記状態検出部で検出される前記移動速度と前記目標速度とのずれを検出して、前記電圧マップの前記学習値を更新するように構成された更新部(25:S480~S510)と、
を備え、
前記更新部は、前記開閉体の位置が前記速度一定制御を実行する区間にあることが検出され、且つ、前記開閉体の移動速度が前記目標速度に収束していることが検出された場合に、前記学習値の更新を開始するように構成され、
前記起動制御は、前記開閉体の移動開始時に実施される制御であり、
前記速度一定制御は、前記起動制御の後に実施され、前記電圧マップに従って前記開閉体を前記目標速度で移動させる制御である、
開閉部材制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の開閉部材制御装置であって、
前記起動制御は、前記起動制御が実施される区間の長さ、及び前記起動制御の終了時における前記開閉体の移動速度のうち少なくとも一つが互いに異なる複数種類が存在する
開閉部材制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の開閉部材制御装置であって、
前記起動制御は、前記開閉体の移動速度を一定の割合で増大させるスロースタート制御と、前記開閉体を、最大駆動力で駆動する最大駆動制御とを含む
開閉部材制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、開閉部材をモータによって駆動制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、パワーウィンドウシステムにおいて、作動開始時にスロースタート制御、作動終了時にスローストップ制御、スロースタート制御とスローストップ制御との間では速度一定制御を実施することが記載されている。
【0003】
スロースタート制御では、モータを駆動する駆動信号のデューティを、一定の割合で増大させることで、モータの印加電圧、ひいてはモータによって駆動されるウィンドウガラス(以下、開閉体)の移動速度を目標速度まで一定の割合で増大させる。同様に、スローストップ制御では、モータを駆動する駆動信号のデューティを、一定の割合で減少させることで、モータの印加電圧、ひいてはモータによって駆動される開閉体の移動速度を一定の割合で減少させる。
【0004】
速度一定制御では、開閉体の移動速度を一定にするのに必要な制御値(すなわち、モータの印加電圧)を、開閉体の位置に対応づけて学習した電圧マップを使用して制御を行う。なお、電圧マップの学習値は、速度一定制御が行われる毎に更新される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-41648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
パワーウィンドウシステムにおける作動開始時の制御(以下、起動制御)は、スロースタート制御だけでなく、開閉体を全閉状態から速やかに下降させるために最大駆動力で駆動する最大駆動制御を行うことがある。最大駆動制御は、例えば、ハードトップ車のドア開時に、窓干渉を避けるために行われる。
【0007】
そして、発明者らの検討の結果、起動制御が複数種類存在する場合、電圧マップが誤学習されてしまうという課題が見いだされた。
すなわち、スロースタート制御では、スロースタート区間の終了時に一定制御区間での目標速度と一致するように制御される。これに対して最大駆動制御では、目標速度より高い速度となるように制御される。従って、最大駆動制御が行われる区間である最大駆動区間における開閉体の移動速度は目標速度とは乖離しており、最大駆動区間の終了後も、開閉体の移動速度が目標速度に収束するまでに時間を要する。
【0008】
つまり、図10に示すように、最大駆動区間及び収束に要する区間が、一定制御区間にはみ出している場合、このはみだし区間では、目標速度から乖離した実速度が、速やかに目標速度と一致するように、減速を強化する方向で学習値の更新が行われる。
【0009】
このため、最大駆動制御による学習値の更新が行われた後に、スロースタート制御が実行され、その後、速度一定制御が開始されると、目標速度より低い速度となるように制御されてしまう。
【0010】
なお、はみだし区間が生じないように、スロースタート区間及び最大駆動区間を設定することも考えられるが、この場合、スロースタート区間が必要以上に長くなったり、最大駆動区間を十分に確保できなかったりする可能性があった。
【0011】
本開示の1つの局面は、起動制御の種類によらず安定した速度一定制御を実現する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の一態様は、開閉部材制御装置であって、状態検出部(25:S410~S440)と、マップ記憶部(252)と、信号生成部(25:S210~S380)と、更新部(25:S480~S510)と、を備える。状態検出部は、車両に設けられた開閉体を自動開閉するモータの回転を検出するセンサからの検出信号に基づいて、開閉体の位置及び移動速度を検出するように構成される。マップ記憶部は、開閉体の位置と対応づけて、開閉体を一定の目標速度で動作させるのに必要なモータの印加電圧の学習値を示した電圧マップを記憶するように構成される。信号生成部は、起動制御及び速度一定制御を少なくとも実行することで、指定された速度パターンで開閉体が移動するように、状態検出部で検出される開閉体の位置及び移動速度、並びに電圧マップを用いて、前記モータの印加電圧を制御する駆動信号を生成するように構成される。なお、起動制御は、開閉体の移動開始時に実施される制御であり、速度一定制御は、起動制御の後に実施され、電圧マップに従って開閉体を目標速度で移動させる制御である。更新部は、速度一定制御を行っているときに、状態検出部で検出される移動速度と目標速度とのずれを検出して、電圧マップの学習値を更新するように構成される。また、更新部は、開閉体の位置が速度一定制御を実行する区間にあることが検出され、且つ、開閉体の移動速度が目標速度に収束していることが検出された場合に、学習値の更新を開始するように構成される。
【0013】
このような構成によれば、どのような起動制御が実施されたとしても、目標速度から乖離した移動速度によって電圧マップの学習値が更新されること、すなわち、電圧マップの誤学習が抑制される。従って、起動制御の種類によらず安定した速度一定制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態のパワーウィンドウシステムの構成を示すブロック図である。
図2】マップ設定処理のフローチャートである。
図3】学習電圧マップ及び設定電圧マップの説明図である。
図4】駆動処理のフローチャートである。
図5】デューティ100%制御及び電圧マップを使用した制御の概要を示す説明図である。
図6】一定制御区間の制御に用いる電圧補正値の説明図である。
図7】学習処理のフローチャートである。
図8】学習電圧マップに記憶する印加電圧の学習値の算出方法を示す説明図である。
図9】はみだし区間にて学習値の更新を実施しない場合の動作を示す説明図である。
図10】はみだし区間にて学習値の更新が実施される場合の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[1.構成]
図1に示すパワーウィンドウシステム1は、例えば、ハードトップ車に搭載される。
【0016】
パワーウィンドウシステム1は、ドアECU2と、他ECU3と、モータ4と、回転検出センサ5と、ウィンドウ操作部6と、ドア操作部7と、バッテリ8とを備える。
モータ4は、車両ドアのウィンドウガラスの自動開閉を行うために、各ドアに取り付けられる。図1では、1つのドアに対する構成を示す。
【0017】
回転検出センサ5は、モータ4の回転を検出する。回転検出センサ5は、例えば、モータ4のロータと一体に回転する磁石、及び磁気検出用のホールIC等を用いて構成され、ロータの回転に同期した検出信号として、所定の回転角毎にパルス信号を発生する。
【0018】
ウィンドウ操作部6は、車両の乗員が操作可能な場所に設けられる。ウィンドウ操作部6は、UPスイッチ、DNスイッチ、AUTOスイッチを備える。UPスイッチは、オン状態に操作されている間、ウィンドウガラスを全閉位置に向けて作動させるためのスイッチである。DNスイッチは、オン状態に操作されている間、ウィンドウガラスを全開位置に向けて作動させるためのスイッチである。AUTOスイッチは、オン状態に操作されると、オフ状態に戻った後でも、ウィンドウガラスを全閉位置又は全開位置に到達するまで作動させ続けるためのスイッチである。
【0019】
ドア操作部7は、ODスイッチを備える。ODスイッチは、車両のドアノブに連動し、車両ドアを開放する操作を検出するスイッチである。
バッテリ8は、直流のバッテリ電圧VB(例えば、12V)で、車両各部に電力を供給する。
【0020】
他ECU3は、バッテリ8から電力供給を受けて動作し、ウィンドウ操作部6及びドア操作部7を構成する各スイッチの操作状態を取得して、車内通信網を介してドアECU2に通知する機能を少なくとも備える。
【0021】
ドアECU2は、バッテリ8から電力供給を受けて作動し、回転検出センサ5からの信号及び他ECU3を介して取得するウィンドウ操作部6及ドア操作部7を構成する各スイッチの操作状態に応じてモータ4を駆動することでウィンドウガラスを開閉する。
【0022】
[1-2.他ECU]
他ECU3は、電源回路31と、通信回路32と、入力回路33と、制御部35とを備える。
【0023】
電源回路31は、バッテリ8から供給されるバッテリ電圧VBで電力を、制御電圧VC(例えば、5V)に降圧して、他ECU3を構成する通信回路32及び制御部35等に電力を供給する。
【0024】
通信回路32は、車内通信網(例えば、CAN)を介してドアECU2を含む他のECUとの通信を実現する。CANは登録商標である。
入力回路33は、ウィンドウ操作部6を構成する各スイッチの出力を、各スイッチの操作状態をオンオフで表す2値信号に整形して制御部35に入力する。
【0025】
制御部35は、CPUと、例えば、ROM又はRAM等の半導体メモリ(以下、メモリ)と、を有するマイクロコンピュータを備える。制御部35は、入力回路33を介して取得したウィンドウ操作部6を構成する各スイッチの操作状態をドアECU2に送信する情報収集処理を少なくとも実施する。メモリには、情報収集処理を実現するプログラムが少なくとも記憶される。
【0026】
本実施形態では、ウィンドウ操作部6及びドア操作部7を構成する各スイッチの操作状態を、他ECU3が取得して、ドアECU2に送信するように構成されているが、ドアECU2が他ECU3を介することなく直接取得するように構成されてもよい。また、ウィンドウ操作部6を構成する各スイッチの操作状態と、ドア操作部7を構成するスイッチの操作状態とが、それぞれ異なるECUを介してドアECU2に送信されるように構成されてもよい。
【0027】
[1-3.ドアECU]
ドアECU2は、電源回路21と、通信回路22と、モータ駆動回路23と、アンプ24と、制御部25とを備える。電源回路21及び通信回路22は、他ECU3で説明した電源回路31及び通信回路32と同様であるため、説明を省略する。但し、電源回路31は、アンプ24にも制御電圧VCで電力を供給する。
【0028】
モータ駆動回路23は、例えば、Hブリッジ回路により構成され、制御部25から供給される駆動信号であるPWM信号に従って、正極性又は逆極性のバッテリ電圧VBをモータ4に印加する。つまり、モータ4の回転方向、ひいてはウィンドウガラスの移動方向(すなわち、開方向又は閉方向)は、モータ4に印加するバッテリ電圧VBの極性によって制御される。また、モータ4の回転速度、ひいてはウィンドウカラスの移動速度は、PWM信号のデューティによって決まるモータ4の印加電圧によって制御される。モータ4の印加電圧は、デューティ100%のPWM信号で駆動した場合はVBであり、ディーティ50%のPWM信号で駆動した場合はVB/2である。
【0029】
アンプ24は、回転検出センサ5から出力されるパルス信号を増幅し整形して制御部25に入力する。
制御部25は、制御部35と同様に、CPU251と、例えば、ROM又はRAM等の半導体メモリ(以下、メモリ)252と、を有するマイクロコンピュータを備える。制御部25は、マップ設定処理、駆動処理、学習処理を少なくとも実行する。
【0030】
メモリ252には、制御部25に割り当てられた機能を実現するためのプログラム等が記憶される。メモリ252を構成するRAMには、電源がオフになっても記憶内容が保持される不揮発性領域と、電源がオンの間だけ記憶内容が保持される揮発性領域とが存在する。RAMの不揮発性領域には、学習電圧マップが記憶される。RAMの揮発性領域には、不揮発性領域から学習電圧マップを読み出して一時的に記憶するための領域(以下、マップ設定領域)が確保される。
【0031】
学習電圧マップは、図3の2段目に示すように、モータ4を目標回転速度で回転させるのに必要なモータ4の印加電圧を、モータ4により駆動されるウィンドウガラスの開閉位置(以下、窓位置)に対応づけて記憶したテーブル情報である。窓位置は、回転検出センサ5から入力されるパルス信号をカウントしたカウント値cによって表される。窓位置を表すカウント値cは、ウィンドウガラスの全閉位置から全開位置に向けて値が増加するように設定されてもよい。
【0032】
マップ設定領域は、学習電圧マップに示される窓位置の範囲(すなわち、ウィンドウガラスの可動範囲)より広い範囲が確保される。例えば、学習電圧マップが、約190地点の窓位置のそれぞれについて印加電圧が記憶される場合、マップ設定領域は、256地点の窓位置について印加電圧を記憶できるように確保される。
【0033】
また、マップ設定領域は、リングバッファとして使用され、末尾アドレスと先頭アドレスとが連続しているように取り扱われる。学習電圧マップは、マップ設定領域の任意の地点を先頭(すなわち、全閉位置)にして設定される。これは、車種、ウィンドウガラスの個体、及びドアへの取り付け状態等によってウィンドウガラスの可動範囲が相違する場合があるため、これらの相違に柔軟に対応するためである。
【0034】
[2.処理]
[2-1.マップ設定処理]
制御部25が実行するマップ設定処理について、図2のフローチャートを用いて説明する。マップ設定処理は、制御部25の起動時に実行される初期化処理の一つとして実行される。
【0035】
S110では、制御部25は、図3の3段目に示すように、メモリ252を構成するRAMの揮発性領域に用意されたマップ設定領域の全体にわたって、デフォルト値を設定する。
【0036】
デフォルト値は、例えば、メモリ252に記憶された学習電圧マップに示された印加電圧(すなわち、学習値)の平均値を用いてもよい。また、デフォルト値は、モータ4及びモータ駆動回路23の特性から論理的に算出される目標回転速度を実現するのに必要な印加電圧(すなわち、設計値)を用いてもよい。
【0037】
続くS120では、制御部25は、メモリ252に記憶された学習電圧マップを読み出して、図3の4段目に示すように、デフォルト値が設定されたマップ設定領域に上書きする。
【0038】
続くS130では、制御部25は、学習電圧マップの読み出しに成功したか否かを判定し、成功していれば処理を終了し、読み出しに失敗していれば処理をS140に移行する。
学習電圧マップの読み出しに失敗したと判定されるのは、単純に読み出しに失敗した場合の他、マップ設定領域に書き込まれたデータが、メモリ252から読み出したデータと不一致である場合がある。この場合、例えば、CRC演算や認証等の改ざん防止のために付加されるデータが不一致となる。データの不一致が生じる原因としては、例えば、他のソフトウェアコンポーネントによって書き込まれたデータを読み出してしまう場合、書き込み時に電圧が不足したり、読み出し時にノイズが乗ったりする等して、ビット化けが生じた場合が考えられる。
【0039】
S140では、制御部25は、S110と同様に、再度、マップ設定領域の全体にわたって、デフォルト値を設定して処理を終了する。なお、デフォルト値を再設定する理由は、S130にて学習電圧マップの読み出し失敗したと判定された場合、マップ設定領域から読み出されるデータが信用できないためである。
【0040】
学習電圧マップは、あらかじめ設定されたカウント値Ccに、学習電圧マップにおける全閉位置での印加電圧の学習値が書き込まれるように設定する。全閉位置に対応づけられるカウント値Ccは任意であり、例えば、Cc=0であってもよい。
【0041】
マップ設定処理により、学習電圧マップが値を持つ領域である学習領域の幅によらず、学習領域以外のすべてのマップ設定領域が、デフォルト値で埋め尽くされる。以下では、マップ設定処理によりマップ設定領域に設定されたデフォルト値を含む学習電圧マップを、設定電圧マップという。
【0042】
[2-2.駆動処理]
制御部25が実行する駆動処理について、図4のフローチャートを用いて説明する。
駆動処理は、マップ設定処理の実行後、繰り返し実行される。
【0043】
なお、駆動処理では、指定された速度パターンに従った制御を実現するために、起動制御区間、一定制御区間、停止制御区間のそれぞれで異なる制御を実行する。起動制御区間では、スロースタート制御又は最大駆動制御のいずれかが実行される。スロースタート制御は、目標速度に達するまで、ウィンドウガラスの移動速度を徐々に増大させる制御である。最大駆動制御は、ドアを開放する際に、ルーフとの間で窓干渉が生じることがないように、ウィンドウガラスを速やかに開放するために、最大駆動力で駆動する制御である。
【0044】
一定制御区間では、速度一定制御が実行される。速度一定制御は、マップ設定領域に設定された設定電圧マップに従って、ウィンドウガラスの移動速度を一定の目標速度に維持する制御である。停止制御区間ではスローストップ制御が実行される。スローストップ制御は、停止位置に至るまで、ウィンドウガラスの移動速度を目標速度から徐々に減少させる制御である。
【0045】
以下の説明では、図5に示すように、起動制御区間の開始位置を表すカウント値をC0とする。スロースタート制御を行った場合における起動制御区間(以下、スロースタート区間)の終了位置(すなわち、一定制御区間の開始位置)を表すカウント値をC1とする。停止制御区間の開始位置(すなわち、一定制御区間の終了位置)を表すカウント値をC2とする。停止制御区間の終了位置を表すカウント値をC3とする。なお、スロースタート区間の区間幅WS及び停止制御区間の区間幅WEは予め設定される。CO及びC3は、駆動開始時のウィンドウガラスの窓位置とその移動方向によって決まり、C1及びC2は、C1=C0+WS、C2=C3-WEによって決まる。図5では、ウィンドウガラスが全閉状態から全開状態に移動する場合、又は全開状態から全閉状態に移動する場合を示す。なお、最大駆動制御を行った場合における起動制御区間(以下、最大駆動区間)の終了位置を表すカウント値C1m及び区間幅WSmは、スロースタート区間のカウント値C1及び区間幅WSと異なっていてもよい。ここでは、C1~C2の区間を一定制御区間と定義しているため、速度一定制御が実行される区間と、一定制御区間とは必ずしも一致しない。すなわち、C1m≠C1、WSm≠WSの場合、速度一定制御は、カウント値C1で表される一定制御区間の開始位置ではなく、カウント値C1mで表される最大駆動制御の終了位置から実行される。
【0046】
図4に示すように、駆動処理が起動すると、まずS210では、制御部25は、通信回路22を介して他ECU3から取得するウィンドウ操作部6及びドア操作部7を構成する各スイッチの操作状態から、作動要求があるか否かを判定する。制御部25は、作動要求があると判定した場合、処理をS220に移行し、作動要求がないと判定した場合、処理を終了する。
【0047】
S220では、制御部25は、電圧マップの学習が完了しているか否かを判定し、学習が完了していれば処理をS230に移行し、学習が完了していなければ処理をS360に移行する。学習が完了しているか否かの判定は、例えば、メモリ252に用意された学習電圧マップの記憶領域に値が書き込まれていれば、学習電圧マップが生成されていると判定してもよい。
【0048】
S230では、制御部25は、起動種別がスロースタートであるか最大駆動であるかを判定する。具体的には、制御部25は、作動要求の要求元がウィンドウ操作部6であればスロースタートであると判定して、処理をS240に移行する。また、制御部25は、作動要求の要求元がドア操作部7であれば最大駆動であると判定して、処理をS280に移行する。
【0049】
S240では、制御部25は、スロースタート制御に使用するスタート変化量ΔVrtを算出する。スタート変化量ΔVrtは、ウィンドウガラスの移動速度を増大させる割合を表す。具体的には、制御部25は、マップ設定処理によって設定された設定電圧マップから、スロースタート区間の終了位置C1での印加電圧の学習値V(C1)を取得する。そして、制御部25は、取得した学習値V(C1)と、予め設定された初期速度に対応する印加電圧である初期電圧VSと、スロースタート区間の区間長WS(=C1-C0)とに基づき、(1)式を用いて、スタート変化量ΔVrtを算出する。
【0050】
ΔVrt=(V(C1)-VS)/WS (1)
続くS250では、制御部25は、スロースタート制御を実行する。具体的には、制御部25は、初期電圧VSとスタート傾きΔVrtとに従って、現在の窓位置を表すカウント値cに応じた印加電圧Vap(c)を(2)式を用いて算出する。更に、制御部25は、算出した印加電圧Vap(c)に対応したデューティ比DTを(3)式に従って算出し、算出したデューティ比DTを有するPWM信号をモータ4に供給することで、モータ4を駆動する。これにより、ウィンドウガラスの移動速度が、スタート変化量ΔVrtの割合で増加するように制御される。
【0051】
Vap(c)=VS+ΔVrt×(c-C0) (2)
DT=Vap(c)/VB (3)
但し、制御開始時は、短期間だけデューティ100%(すなわち、DT=1)のPWM信号でモータ4を駆動する。これは、ウィンドウガラスの静止時における静的摩擦は、移動時における動的摩擦より大きく、移動開始時には移動時より大きなトルクが必要なためである。
【0052】
続くS260では、制御部25は、スロースタート区間の終了位置C1に到達したか否かを判定し、到達していれば処理をS290に移行し、到達していなければ、処理をS250に戻す。スロースタート区間の終了位置C1に到達したか否かの判定は、具体的には、窓位置を表すカウント値cがスロースタート区間の終了位置を表す値C1になったか否かによって判定する。
【0053】
S270では、制御部25は、速度一定制御で使用する電圧補正値ΔVHを算出して、処理をS310に進める。具体的には、制御部25は、回転検出センサ5からアンプ24を介して入力されるパルス信号の間隔からスロースタート区間の終了位置での回転速度ω1(すなわち、ウィンドウガラスの移動速度)を算出し、(4)式を用いて電圧補正値ΔVHを算出する。Ωは、一定制御区間でのウィンドウガラスの目標速度に対応するモータ4の目標回転速度Ωである。KVはKV値である。KV値は、モータ4の特性であり、印加電圧1V当たりのモータ4の回転数[rpm/V]である。つまり、図6に示すように、目標回転速度Ωと、スロースタート区間の終了位置(すなわち、一定制御区間の開始位置)で測定された回転速度ω1との差分を、KV値を用いて電圧値に変換した値が電圧補正値ΔVHとなる。
【0054】
ΔVH=(Ω-ω1)/KV (4)
S280では、制御部25は、最大駆動制御を実行する。具体的には、制御部25は、デューティ100%(すなわち、DT=1)のPWM信号でモータ4を駆動する。
【0055】
続くS290では、制御部25は、最大駆動区間の終了位置C1mに到達したか否かを判定し、到達していれば処理をS300に移行し、到達していなければ、処理をS280に戻す。最大駆動区間の終了位置C1mに到達したか否かの判定は、具体的には、窓位置を表すカウント値cが最大駆動区間の終了位置を表す値C1mになったか否かによって判定する。
【0056】
S300では、制御部25は、速度一定制御で使用する電圧補正値ΔVHを設定して、処理をS310に進める。具体的には、制御部25は、設定する電圧補正値ΔVHは、前回の速度一定制御で算出された値であってもよいし、予め設定された固定値であってもよい。
【0057】
続くS310では、制御部25は、速度一定制御を実行する。具体的には、制御部25は、設定電圧マップから窓位置cでの印加電圧の学習値V(c)を取得し、(5)式に示すように、取得した学習値V(c)に、電圧補正値ΔVHを加算することで、印加電圧Vap(c)を算出する。更に、制御部25は、算出した印加電圧Vap(c)に対応したデューティ比DTを(3)式を用いて算出し、算出したデューティ比DTを有するPWM信号をモータ4に供給することで、モータ4を駆動する。これにより、ウィンドウガラスの移動速度が一定の目標速度となるように制御される。
【0058】
Vap(c)=V(c)+ΔVH (5)
なお、電圧補正値ΔVHは、新たに算出されたデューティ比DTでの駆動が反映された回転速度ωに従い、(4)式においてω1をωに置き換えた式を用いて算出される値によって逐次更新される。
【0059】
続くS320では、制御部25は、停止制御区間の開始位置に到達したか否かを判定し、到達していれば処理をS320に移行し、到達していなければ処理をS300に戻す。停止制御区間の開始位置に到達したか否かの判定は、具体的には、窓位置を表すカウント値cが停止制御区間の終了位置を表す値C2になっているか否かによって判定する。
【0060】
S330では、制御部25は、ストップ変化量ΔVopを算出する。ストップ変化量ΔVopは、スローストップ制御において速度を減少させる割合を表す。具体的には、制御部25は、ストップ開始電圧Vap(C2)と、予め設定された終了速度に対応する印加電圧VEと、スローストップ区間の区間長WE(=C3-C2)とに基づき、(6)式を用いて算出する。なお、ストップ開始電圧Vap(C2)は、(5)式を用いて算出されるスローストップ区間の開始位置C2での印加電圧である。
【0061】
ΔVop=(VE-Vap(C2))/WE (6)
続くS340では、制御部25は、スローストップ制御を実行する。具体的には、制御部25は、ストップ開始電圧Vap(C2)とストップ変化量ΔVopとに従って、窓位置を表すカウント値cに応じた印加電圧Vap(c)を(7)式を用いて算出する。更に、制御部25は、算出した印加電圧Vap(c)に対応したデューティ比DTを(3)式を用いて算出し、算出したデューティ比DTを有するPWM信号をモータ4に供給することで、モータ4を駆動する。これにより、ウィンドウガラスの移動速度が、ストップ変化量ΔVrtの割合で減少するように制御される。
【0062】
Vap(c)=Vap(C2)+ΔVop×(c-C2) (7)
続くS350では、制御部25は、通電停止位置、すなわち停止制御区間の終了位置C3に到達したか否かを判定し、到達していれば処理をS380に移行し、到達していなければ、処理をS340に戻す。
【0063】
S380では、制御部25は、モータ4への通電を停止して、処理を終了する。
S360では、制御部25は、デューティ100%制御を実行する。具体的には、制御部25は、起動制御区間、一定制御区間、及び停止制御区間を含む全期間をデューティ100%(すなわち、DT=1)のPWM信号でモータ4を駆動する制御を実行する。
【0064】
続くS370では、制御部25は、通電停止位置、すなわちスローストップ区間の終了位置C3に到達したか否かを判定し、到達していれば処理をS380に移行し、到達していなければ、処理をS360に戻す。
【0065】
つまり、学習電圧マップの学習が完了していない場合は、図5の上段に示すように、すべての区間をデューティ比100%のPWM信号で駆動する制御が実行される。
学習電圧マップの学習が完了している場合は、図5の下段に示すように、区間毎に異なる制御が実行され、特に、一定制御区間では、学習電圧マップに従って設定される設定電圧マップを使用した制御が実行される。
【0066】
[2-3.学習処理]
制御部25が駆動処理と並行して実行する学習処理について、図7のフローチャートを用いて説明する。
【0067】
学習処理では、駆動処理においてデューティ100%制御を実行中である場合は、学習電圧マップの学習を行い、電圧マップを使用した制御を実行中である場合は、設定学習マップの値を逐次更新する。
【0068】
学習処理は、パルス信号が入力される毎に実行される。
学習処理が開始されると、S410では、制御部25は、ウィンドウガラスが開動作中であるか否かを判定する。制御部25は、開動作中であると判定した場合は、処理をS420に移行し、開動作中ではなく、閉動作中であると判定した場合は処理S430に移行する。
【0069】
S420では、制御部25は、窓位置を表すカウント値cをカウントアップして処理をS440に進める。
S430では、制御部25は、窓位置を表すカウント値cをカウントダウンして処理をS440に進める。
【0070】
S440では、制御部25は、学習処理が前回起動してから今回起動するまでの時間間隔、すなわち、パルス信号の間隔からモータ4の回転速度ω(c)を算出する。
続くS450では、制御部25は、デューティ100%制御を実行中、すなわち、学習電圧マップの学習中であるか否かを判定する。制御部25は、学習電圧マップの学習中であると判定した場合は、処理をS460に移行し、学習電圧マップの学習中ではないと判定した場合は、処理をS480に移行する。
【0071】
S460では、制御部25は、S440で算出された回転速度ω(c)と目標回転速度Ωと、KV値とを用い、窓位置cにおける印加電圧の学習値V(c)を、(8)式に従って算出する。
【0072】
V(c)=VB-(ω(c)-Ω)/KV (8)
つまり、印加電圧の学習値V(c)は、窓位置c毎に算出され、図8に示すように、モータ4にバッテリ電圧VBを印加したときに測定された回転速度と目標回転速度Ωとの差をKV値で電圧に換算した補正量を、バッテリ電圧VBから減じることで算出される。
【0073】
続くS470では、制御部25は、メモリ252を構成するRAMの不揮発性領域に設けられた学習電圧マップを記憶する領域に、S460で算出された学習値V(c)を書き込んで、処理を終了する。
【0074】
S480では、制御部25は、窓位置が一定制御区間にあるか否かを判定し、一定制御区間にあれば、処理をS490に移行し、一定制御区間になければ、処理を終了する。具体的には、制御部25は、窓位置を表すカウント値cがC1~C2の間にあれば一定制御区間にあると判定する。
【0075】
S490では、制御部25は、モータ4の回転速度が目標回転速度に収束しているか否かを判定し、収束していれば処理をS500に移行し、収束していなければ処理を終了する。なお、制御部25は、モータ4の回転速度が目標回転速度を中心とした許容範囲内の速度である場合に収束していると判定してもよい。
【0076】
S500では、制御部25は、先のS310で算出された印加電圧Vap(c)と、S440で算出された回転速度ω(c)と、目標回転速度Ωと、KV値とに基づき、(9)式に従って、窓位置cにおける新たな印加電圧V(c)を算出する。
【0077】
V(c)=Vap(c)-(ω(c)-Ω)/KV (9)
続くS510では、制御部25は、設定電圧マップにおける窓位置cの設定値V(c)を、S500で算出された印加電圧V(c)に書き換えることで設定電圧マップを更新して、処理を終了する。
【0078】
なお、設定電圧マップの全閉位置から全開位置までの値は、例えば、イグニッションオフ時に、学習電圧マップとして、RAMの不揮発性領域に格納されてもよい。
[3.動作]
起動制御として、スロースタート制御と最大駆動制御とがいずれも実行される場合の設定電圧マップの学習値の更新について説明する。
【0079】
ここでは、図9及び図10の3段目に示すように、最大駆動区間と収束区間との合計である合計区間が、スロースタート制御が実行されるスロースタート区間より長い場合について説明する。最大駆動区間は、最大駆動制御が実行される区間をいう。収束区間は、最大駆動制御の終了後、速度一定制御によってモータ4の回転速度が目標回転速度に収束するまでに要する区間をいう。合計区間がスロースタート区間を越えて、一定制御区間にはみだしている部分をはみだし区間という。
【0080】
図10は、一定制御区間では無条件に設定学習マップの学習値の更新を開始する場合を示す。この場合、はみだし区間では、図10の3段目に示すように、モータ4の転速度が目標回転速度から乖離しているため、図10の4段目に示すように、モータ4の回転速度をより減速する方向の学習が行われてしまう。このような誤学習された設定学習マップを用いて、スロースタート制御後の速度一定制御が行われると、図10の5段目に示すように、はみだし区間では、モータ4の回転速度が目標回転速度より低くなる。
【0081】
図9は、一定制御区間、且つ、モータ4の回転速度が目標回転速度に収束している場合に、設定学習マップの学習値を更新する、本実施形態の場合を示す。この場合、図9の4段目に示すように、モータ4の回転速度が目標回転速度に収束していないはみだし区間は、設定学習マップの学習値の更新を行わない非学習区間となる。つまり、目標回転速度から乖離したモータ4の回転速度に基づく設定学習マップの更新、すなわち誤学習が防止される。その結果、スロースタート制御後のはみだし区間での速度一定制御にて、モータ4の回転速度が目標速度より低くなることを抑制できる。
【0082】
[4.用語の対応]
本実施形態において、ドアECU2の制御部25が本開示の開閉部材制御装置に相当する。メモリ252が本開示のマップ記憶部に相当する。設定電圧マップが本開示の電圧マップに相当する。S410~S440の処理を実行する制御部25が本開示の状態検出部に相当する。S210~S380の処理を実行する制御部25が本開示の信号生成部に相当する。S480~S510の処理を実行する制御部25が本開示の更新部に相当する。
【0083】
[5.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(5a)パワーウィンドウシステム1では、窓位置が一定制御区間にあり、かつ、モータ4の回転速度が速度一定制御での目標回転速度に収束している場合に、設定学習マップの学習値の更新を実行する。従って、目標回転速度から乖離したモータ4の回転速度に従って、設定電圧マップが誤学習されてしまうことを抑制できる。その結果、設定電圧マップを使用した速度一定制御の精度が、はみだし区間にて劣化することを抑制できる。
【0084】
[6.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0085】
(6a)実施形態では、スロースタート区間及びスローストップ区間における速度の変化量ΔVrt,ΔVopを、設定電圧マップの値を用いて算出しているが、予め設定された固定値を用いてもよい。
【0086】
(6b)実施形態では、ウィンドウガラスの開動作及び閉動作の制御に、同じ電圧マップを用いているが、開動作と閉動作とで異なる電圧マップを用いてもよい。
(6c)実施形態では、モータ4によって駆動される開閉体が、ハードトップ車のウィンドウガラスである場合について説明したが、開閉体は、ウィンドウガラスに限定されず、モータ4の駆動によって変位する物体であればよい。
【0087】
(6d)実施形態では、学習電圧マップ、及び設定電圧マップには、印加電圧がそのまま記憶されているが、開動作及び閉動作の動作方向毎に電圧マップを設ける場合、隣接する窓位置での印加電圧との差分値が記憶されてもよい。この場合、電圧マップに記憶するデータサイズを削減できる。
【0088】
(6e)窓位置を表すカウント値cは、ウィンドウガラスが全閉位置に停止する毎に、設定電圧マップの全閉位置を表すカウント値と一致するように再設定されてもよい。
(6f)実施形態では、起動制御が、スロースタート制御及び最大駆動制御の2種類ある場合について説明したが、起動制御の種類は、3種類以上あってもよいし、1種類であってもよい。また、起動制御の種類に、スロースタート制御及び最大駆動制御が必ずしも含まれている必要はない。起動制御の種類が複数ある場合、起動制御が実施される区間の長さ、及び起動制御の終了時における開閉体の移動速度のうち少なくとも一つが互いに異なっていればよい。また、起動制御の種類が1種類である場合、例えば、起動制御として最大駆動制御のみを行う場合、起動制御区間の区間幅を適宜調整できるという効果が得られる。すなわち、起動制御区間の区間幅を調整すると、はみだし区間の区間幅が変化するが、はみだし区間の区間幅によらずモータ4の回転速度が目標回転速度に収束してから設定電圧マップの更新が行われるため、起動制御区間の区間幅をどのように設定したとしても、誤学習を抑制できる。
【0089】
(6g)実施形態に記載の制御部25及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部25及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部25及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されてもよい。制御部25に含まれる各部の機能を実現する手法には、必ずしもソフトウェアが含まれている必要はなく、その全部の機能が、一つあるいは複数のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0090】
(6h)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0091】
(6i)上述したドアECU2の制御部25によって実現される開閉部材制御装置の他、当該開閉部材制御装置を構成要素とするシステム、当該開閉部材制御装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実体的記録媒体、開閉部材制御方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0092】
1…パワーウィンドウシステム、2…ドアECU、3…他ECU、4…モータ、5…回転検出センサ、6…ウィンドウ操作部、7…ドア操作部、8…バッテリ、21,31…電源回路、22,32…通信回路、23…モータ駆動回路、24…アンプ、25,35…制御部、33…入力回路、251…CPU、252…メモリ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10