(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173049
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】魚釣用リールのハンドルノブ
(51)【国際特許分類】
A01K 89/01 20060101AFI20241205BHJP
A01K 89/015 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
A01K89/01 D
A01K89/015 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091170
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】落合 浩士
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108BD01
2B108EH06
2B108EH07
(57)【要約】
【課題】止水性能を向上させて軸受の潮ガミや固着を防止することができ、しかも回転抵抗を小さく抑えることができる。
【解決手段】外周面23aを有し、ハンドルアーム21に固定された支軸23と、外周面23aに設けられた軸受25A、25Bと、軸受25A、25Bを介して支軸23に回転可能に設けられたハンドルツマミ26と、支軸23とハンドルツマミ26との間に設けられるシール部50と、を備える魚釣用リールのハンドルノブを提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周部を有し、ハンドルアームに固定された支軸と、
前記外周部に設けられた軸受と、
前記軸受を介して前記支軸に回転可能に設けられたハンドルツマミと、
前記支軸と前記ハンドルツマミとの間に設けられるシール部と、
を備える、魚釣用リールのハンドルノブ。
【請求項2】
前記シール部は、
前記外周部に沿った固定部と、
前記固定部の前記ハンドルツマミ側に一体的に設けられるリップ部と、を有し、
前記外周部は、前記固定部を保持する保持部を有する、請求項1に記載の魚釣用リールのハンドルノブ。
【請求項3】
前記保持部は、
前記固定部の内周面を支持する支持部と、
前記外周部の全周にわたって外周側に突出する凸部と、を有し、
前記固定部は、前記凸部と前記軸受との間で挟持されて保持される、請求項2に記載の魚釣用リールのハンドルノブ。
【請求項4】
前記固定部と前記軸受との間に座金が設けられている、請求項3に記載の魚釣用リールのハンドルノブ。
【請求項5】
前記固定部と、前記リップ部とは、
前記支軸の軸方向にずらした位置に設けられている、請求項2に記載の魚釣用リールのハンドルノブ。
【請求項6】
前記固定部は、少なくとも前記軸受を向く面が弾性部材により形成される、請求項2に記載の魚釣用リールのハンドルノブ。
【請求項7】
前記固定部は、芯材を備える、請求項2に記載の魚釣用リールのハンドルノブ。
【請求項8】
前記芯材は、円環状部を備える、請求項7に記載の魚釣用リールのハンドルノブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用リールのハンドルノブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚釣用リールでは、ハンドルノブ内のハンドルアーム側の軸受部分の止水構造として、ワッシャを挿入したり、Oリングを装着したりしたものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5-015769号公報
【特許文献2】特許第7198901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2に記載される魚釣用リールのハンドルノブ内でワッシャを挿入したり、Oリングを装着する止水構造では、十分なシール性能が得られるものではない。そのため、ハンドルノブ内に設けられる軸受が潮ガミしたり、固着したりすることから、その点で改善の余地があった。
また、従来の止水構造であるワッシャやOリングを装着する場合には、これらワッシャやOリング自体がハンドルノブの回転抵抗になるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、止水性能を向上させて軸受の潮ガミや固着を防止することができ、しかも回転抵抗を小さく抑えることができる魚釣用リールのハンドルノブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る魚釣用リールのハンドルノブの態様1は、外周部を有し、ハンドルアームに固定された支軸と、前記外周部に設けられた軸受と、前記軸受を介して前記支軸に回転可能に設けられたハンドルツマミと、前記支軸と前記ハンドルツマミとの間に設けられるシール部と、を備えることを特徴としている。
【0007】
本発明に係る魚釣用リールのハンドルノブの態様1によれば、支軸とハンドルツマミとの間にシール部を設けることで、その支軸とハンドルツマミとの間のシール性能を向上できる。これにより、ハンドルノブ内の軸受が潮ガミしたり、固着したりすることを抑制することができる。
さらに、本発明では、従来のようなOリングやワッシャを挿入する止水構造に比べて、回転抵抗を小さく抑えることができ、支軸に対するハンドルツマミをスムーズに回転させることができる。
【0008】
(2)本発明の態様2は、態様1の魚釣用リールのハンドルノブにおいて、前記シール部は、前記外周部に沿った固定部と、前記固定部の前記ハンドルツマミ側に一体的に設けられるリップ部と、を有し、前記外周部は、前記固定部を保持する保持部を有することが好ましい。
【0009】
この場合には、シール部の固定部が支軸の外周部に設けられる保持部によって保持されるため、シール部が支軸に対して強固に固定される。そのため、固定部に一体的に設けられるリップ部とハンドルツマミとの接触状態が保持され、外周部とハンドルツマミとの間のシール性能を向上させることができる。
また、本発明では、シール部の固定部が支軸寄りの位置、すなわち径方向内側に配置されるので、ハンドルツマミにおける低トルクとなる回転性能を維持できる。
【0010】
(3)本発明の態様3は、態様2の魚釣用リールのハンドルノブにおいて、前記保持部は、前記固定部の内周面を支持する支持部と、前記外周部の全周にわたって外周側に突出する凸部と、を有し、前記固定部は、前記凸部と前記軸受との間で挟持されて保持されることが好ましい。
【0011】
この場合には、保持部の支持部によってシール部の固定部が径方向に保持され、さらに保持部の凸部と軸受との間でシール部の固定部を挟持して設けることで、シール部が支軸に対してより強固に固定される。そのため、固定部に一体的に設けられるリップ部とハンドルツマミとの接触状態が保持され、外周部とハンドルツマミとの間のシール性能を向上させることができる。
【0012】
(4)本発明の態様4は、態様3の魚釣用リールのハンドルノブにおいて、前記固定部と前記軸受との間に座金が設けられていることを特徴としてもよい。
【0013】
この場合には、シール部の固定部と軸受との間に座金を挟持させることで、シール部の軸方向の隙間をなくすことができる。そのため、シール部のガタを調整することができ、シール部の固定状態を安定させることができる。
【0014】
(5)本発明の態様5は、態様2から態様4のいずれか一つの魚釣用リールのハンドルノブにおいて、固定部とリップ部とは、支軸の軸方向にずらした位置に設けられている。
【0015】
この場合には、固定部の肉厚を薄くすることができ、低トルクとなる回転性能を維持でき、支軸とハンドルツマミとが狭い隙間であっても所望の止水性能を有するシール部を配置することができる。
【0016】
(6)本発明の態様6は、態様2から態様5のいずれか一つの魚釣用リールのハンドルノブにおいて、前記固定部は、少なくとも前記軸受を向く面が弾性部材により形成されることを特徴としてもよい。
【0017】
この場合には、シール部の固定部における軸受を向く面に形成される弾性部材の弾性力によって、軸受とシール部との軸方向の隙間をなくすことができる。そのため、シール部の軸方向のガタを調整することができ、シール部の固定状態を安定させることができる。
また、本発明では、軸受と固定部との軸方向の密着性を高めることができるので、さらに止水性能も向上できる。
【0018】
(7)本発明の態様7は、態様2から態様6のいずれか一つの魚釣用リールのハンドルノブにおいて、前記固定部は、芯材を備えることを特徴としてもよい。
【0019】
この場合には、固定部の形状が芯材によって安定するので、支軸に対するハンドルツマミの回転によってシール部の位置ずれや変形を抑制でき、シール部を安定した固定状態で維持できる。
【0020】
(8)本発明の態様8は、態様7の魚釣用リールのハンドルノブにおいて、前記芯材は、円環状部を備えることを特徴としてもよい。
【0021】
この場合には、固定部内の芯材が円環状部であるので、固定部が環状を維持した状態で支軸の外周部に保持されることになる。そのため、支軸に対するハンドルツマミの回転によってシール部の位置ずれや変形をより効果的に抑制でき、シール部を安定した固定状態で維持できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る魚釣用リールのハンドルノブによれば、止水性能を向上させて軸受の潮ガミや固着を防止することができ、しかも回転抵抗を小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1実施形態による魚釣用スピニングリールの全体構成を示す斜視図である。
【
図3】
図2に示すハンドルノブの要部を示す断面図である。
【
図4】第2実施形態によるハンドルノブの要部を示す断面図である。
【
図5】第3実施形態によるハンドルノブの要部を示す断面図である。
【
図6】第4実施形態によるハンドルノブの要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る魚釣用リールのハンドルノブの実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において、各構成部材を視認可能な大きさとするために必要に応じて各構成部材の縮尺を適宜変更している場合がある。
【0025】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態の魚釣用リールのハンドルノブ20は、魚釣用スピニングリール1(魚釣用リール)のハンドル2に適用されている。
魚釣用スピニングリール1は、リール本体10と、リール本体10に回転自在に支持されたハンドル2と、ロータ3と、スプール4と、を備えている。
【0026】
ロータ3は、リール本体10の前部に回転自在に支持されている。スプール4は、釣り糸を外周面に巻き取るものであり、ロータ3の前部において前後移動自在に配置されている。なお、
図1では、ハンドル2は、使用時の状態でリール本体10の左側に装着されている。ハンドル2はリール本体10の左右いずれにも装着可能である。
【0027】
ハンドル2は、ハンドルノブ20と、先端にハンドルノブ20が回転自在に装着されたハンドルアーム21と、を有している。ハンドルアーム21の基端部は、ハンドルアーム21と交差する方向に延びるハンドル軸22に対して回転不能に装着されている。ハンドル軸22は、不図示のギア軸に一体回転可能かつ着脱可能に連結される。
【0028】
リール本体10は、内部に空間を有するリールボディ11と、リールボディ11の空間を塞ぐためにリールボディ11に着脱自在に装着される蓋部材12と、を有している。
【0029】
リールボディ11には、上部に延びる脚部110と、脚部110の上端から前後に延びるT字形の竿取付部111と、が一体成形されている。リールボディ11は、各機構部を装着するための装着空間を内部に有している。蓋部材12は、例えばアルミニウム合金製の部材であり、リールボディ11の後部を覆い、複数の箇所でリールボディ11に対してビス止めされている。
【0030】
リールボディ11には、スプール4のスプール軸が貫通し、回転可能に支持されている。また、リールボディ11及び蓋部材12には、ハンドル軸22が挿通可能な図示しない円形の貫通孔がそれぞれ形成されている。リールボディ11及び蓋部材12の内側面の貫通孔の周囲には、ハンドル軸22を回転自在に支持する転がり軸受(図示省略)が収納されている。
【0031】
スプール4は、ロータ3の対向するベールアーム32同士の間に配置されている。スプール4は、スプール軸の先端にドラグ機構(図示省略)を介して装着されている。スプール4は、外周に釣り糸が巻かれる糸巻胴部を有する。
【0032】
次に、ハンドルノブ20の構成について、図面を用いてさらに具体的に説明する。
図2に示すように、ハンドルノブ20は、外周面23a(外周部)を有し、ハンドルアーム21に固定された支軸23と、外周面23aに設けられた一対の軸受25A、25Bと、軸受25A、25Bを介して支軸23に回転可能に設けられたハンドルツマミ26と、支軸23とハンドルツマミ26との間に設けられるシール部50と、を備える。
【0033】
ここで、ハンドルノブ20において、支軸23の中心を回転軸Oとし、回転軸Oに沿う方向を軸方向Xと定義し、軸方向Xでハンドルアーム21側を基端側X1、その反対側を先端側X2と定義する。
また、軸方向Xから見た平面視において、回転軸Oに直交する方向を径方向と定義し、回転軸O回りに周回する方向を周方向と定義する。
【0034】
魚釣用スピニングリール1のハンドル2が回転される際、ハンドルノブ20を手で握ってハンドルアーム21を回転させることで、ハンドルツマミ26は支軸23に対して軸受25A、25Bを介して回転する。ハンドルアーム21の回転によりスプール4(
図1参照)が回転される。
【0035】
ハンドルツマミ26は、外形が略球体形状に形成されている。ハンドルツマミ26の中心部には、支軸23に対して回転自在に支持される筒状の中空軸24を備える。ハンドルツマミ26は、軸方向Xに二分割されている。ハンドルツマミ26は、ハンドルアーム21側に位置するツマミ本体26Aと、ツマミ本体26Aの開口を覆うツマミ蓋体26Bと、を有する。
【0036】
ツマミ本体26Aには、支軸23と同軸に形成され、中空軸24が挿入される第1挿通孔261が設けられている。ツマミ蓋体26Bには、支軸23及び第1挿通孔261と同軸に形成され、中空軸24を固定するための第2挿通孔262が設けられている。第2挿通孔262の開口部には、パッキン264を介して開口を液密に塞ぐ栓体263が装着されている。また、第2挿通孔262の内面には、周方向に延在する雄ねじ265が設けられている。中空軸24は、雄ねじ265に中空軸24の先端部(雌ねじ241)が係止されることでハンドルツマミ26に固定される。
【0037】
支軸23は、ハンドルアーム21の先端部21aにおける側面21bに垂直に突設されている。ハンドルアーム21の先端部21aには、厚み方向に貫通する軸孔211が設けられている。軸孔211には、支軸23の一端の固定軸部23Bが挿入または圧入された状態で固定されている。
【0038】
支軸23は、中空軸24に一対の軸受25A、25Bを介して回転可能に支持されている。支軸23は、軸本体23Aと、軸本体23Aのハンドルアーム21側(基端側X1)に位置する固定軸部23Bと、を有する。固定軸部23Bは、中空軸24から基端側X1に突出している。支軸23の固定軸部23Bと反対側の先端側X2の軸先端部23bは、ハンドルツマミ26の中心付近に位置している。
【0039】
一対の軸受25A、25Bは、それぞれボ-ルベアリングである。一対の軸受25A、25Bのうち基端側X1の第1軸受25Aは、中空軸24のハンドルアーム21側の基端内面24aに配置される。第1軸受25Aは、支軸23の軸本体23Aの外周面23aと中空軸24の基端内面24aとの間に設けられている。第2軸受25Bは、支軸23の外周面23aと中空軸24の先端側X2の先端内面24bとの間に設けられている。
【0040】
図3に示すように、第1軸受25Aは、軸方向Xでハンドルアーム21を向く外側面25aが後述する座金28、シール部50を介してシール保持部27(保持部)に接触している。また、第1軸受25Aの外側面25aと反対側の内側面25bが中空軸24の基端内面24aに形成される段部24cに係止している。すなわち、第1軸受25Aは、軸方向Xに中空軸24とシール部50との間に配置される。なお、本実施形態では、第1軸受25Aの外側面25aは、座金28との間に配置されるワッシャ251に固定されている。
【0041】
図2に示すように、中空軸24は、軸方向Xの先端側X2に位置する大径部24Aと、大径部24Aより基端側X1で大径部24Aより内径が小さく一部がハンドルツマミ26から基端側X1に突出する小径部24Bと、を有する。大径部24Aは、全体がハンドルツマミ26の挿通孔261、262内に位置する。小径部24Bは、先端側X2が第1挿通孔261内に位置し、基端側X1がハンドルツマミ26からハンドルアーム21側に向けて突出している。
【0042】
大径部24Aの先端側X2には、雌ねじ241が形成されている。雌ねじ241は、ツマミ蓋体26Bの雄ねじ265に係止可能である。中空軸24は、雌ねじ241が雄ねじ265に螺合した状態で第1挿通孔261及び第2挿通孔262に対して液密に固定される。すなわち、中空軸24の内部は、シール部50も有することにより、ハンドル外部に対して水密性が保たれた空間になっている。
【0043】
図3に示すように、シール部50は、支軸23の外周面23aに沿ったシール固定部51と、ハンドルツマミ26の中空軸24側のリップ部52と、を有する。
シール固定部51は、後述するシール保持部27の凸部272と第1軸受25Aとの間で挟持されて保持される。
【0044】
リップ部52は、シール固定部51の外周側に位置し、シール固定部51とリップ部52とは一体成形されている。リップ部52は、リップ先端52aが中空軸24の基端内面24aを向くように設けられ、基端内面24aに液密に接触している。リップ部52は、支軸23の径方向の内側から外側に向けて漸次、軸方向Xでハンドルアーム21に近接する方向(基端側X1)に延びている。
【0045】
支軸23の外周面23aには、シール部50を保持するシール保持部27を有する。シール保持部27は、支軸23の外周面23aのうち軸本体23Aの固定軸部23Bに隣接する部分において、全周にわたって設けられる。シール保持部27は、シール固定部51を支持する支持部271と、支持部271の基端側X1の位置で外周側に突出する凸部272と、を有する。
【0046】
支持部271は、支軸23の外周面23aと凸部272との間で段状に形成される。支持部271の内側面271bは、シール固定部51の内側面51bと面一となるように設けられる。そして、シール固定部51の内周面51a全体が支持部271の外面271aに接触している。このように、シール固定部51の内周面51aが支持部271の外面271aに接触することにより、シール部50はシール保持部27に対して径方向に保持されている。
【0047】
凸部272は、支持部271よりもさらに径方向外側に鍔形状に突出している。凸部272は、凸部272の内側面272aにシール固定部51の外側面51cを接触させることで軸方向に保持する。シール部50は、凸部272と第1軸受25Aとの間で軸方向Xに挟持された状態で保持されている。
【0048】
シール固定部51と第1軸受25Aとの間には、シール固定部51と第1軸受25Aとの間の軸方向Xのガタを調整するための座金28が介在されている。そのため、シール固定部51の内側面51bは、座金28が接触されることよって軸方向Xに保持されている。
【0049】
次に、このように構成される魚釣用リールのハンドルノブ20の作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0050】
本実施形態によるハンドルノブ20は、
図2及び
図3に示すように、外周面23aを有し、ハンドルアーム21に固定された支軸23と、外周面23aに設けられた軸受25A、25Bと、軸受25A、25Bを介して支軸23に回転可能に設けられたハンドルツマミ26と、支軸23とハンドルツマミ26との間に設けられるシール部50と、を備える。
【0051】
本実施形態のハンドルノブ20では、支軸23とハンドルツマミ26との間にシール部50を設けることで、その支軸23とハンドルツマミ26との間のシール性能を向上できる。これにより、ハンドルノブ20内の軸受25A、25Bが潮ガミしたり、固着したりすることを抑制することができる。
【0052】
さらに、本実施形態では、従来のようなOリングやワッシャを挿入する止水構造に比べて、回転抵抗を小さく抑えることができ、支軸23に対するハンドルツマミ26をスムーズに回転させることができる。
【0053】
また、本実施形態では、シール部50は、支軸23の外周面23aに沿ったシール固定部51と、シール固定部51のハンドルツマミ26側に一体的に設けられるリップ部52と、を有する。外周面23aは、シール固定部51を保持するシール保持部27を有する。
【0054】
そのため、シール部50のシール固定部51が支軸23の外周面23aに設けられるシール保持部27によって保持されるため、シール部50が支軸23に対して強固に固定される。そのため、シール固定部51に一体的に設けられるリップ部52とハンドルツマミ26との接触状態が保持され、外周面23aとハンドルツマミ26との間のシール性能を向上させることができる。
また、このような構成とすることで、シール部50のシール固定部51が支軸23寄りの位置、すなわち径方向内側に配置されるので、ハンドルツマミ26における低トルクとなる回転性能を維持できる。
【0055】
また、本実施形態では、シール保持部27は、シール固定部51の内周面を支持する支持部271と、外周面23aの全周にわたって外周側に突出する凸部272と、を有する。シール固定部51は、凸部272と第1軸受25Aとの間で挟持されて保持される。
【0056】
これにより、シール保持部27の支持部271によってシール部50のシール固定部51が径方向に保持され、さらにシール保持部27の凸部272と第1軸受25Aとの間でシール部50のシール固定部51を挟持して設けることで、シール部50が支軸23に対してより強固に固定される。そのため、シール固定部51に一体的に設けられるリップ部52とハンドルツマミ26との接触状態が保持され、外周面23aとハンドルツマミ26との間のシール性能を向上させることができる。
【0057】
また、本実施形態では、シール部50のシール固定部51と第1軸受25Aとの間に座金28を挟持させることで、シール部50の軸方向Xの隙間をなくすことができる。そのため、シール部50のガタを調整することができ、シール部50の固定状態を安定させることができる。
【0058】
上述のように構成された本実施形態による魚釣用リールのハンドルノブ20では、止水性能を向上させて軸受25A、25Bの潮ガミや固着を防止することができ、しかも回転抵抗を小さく抑えることができる。
【0059】
次に、本発明による魚釣用リールのハンドルノブの他の実施形態について説明する。なお、上述した第1実施形態の構成要素と同一機能を有する構成要素には同一符号を付し、これらについては、説明が重複するので詳しい説明は省略する。
【0060】
(第2実施形態)
図4に示す第2実施形態による魚釣用リールのハンドルノブ20Aは、シール部50Aにおいてシール固定部51が少なくとも第1軸受25Aを向く内側面51bが弾性部材511により形成される。
【0061】
また、シール固定部51の弾性部材511は、シール保持部27の支持部271の内側面271bよりも軸方向Xで先端側X2に突出している。そして、シール固定部51の弾性部材511と第1軸受25Aとの間には座金28が介在されている。
【0062】
第2実施形態では、シール部50Aのシール固定部51における第1軸受25Aを向く面に形成される弾性部材511の弾性力によって、第1軸受25Aとシール部50Aとの軸方向Xの隙間Sをなくすことができる。例えば、前記隙間Sの大きさに合わせて厚めの座金28を配置することで、弾性部材511が弾性変形し、第1軸受25A、座金28及びシール部50Aのそれぞれが軸方向Xに密着した状態で配置される。このようにシール部50Aの軸方向Xに挟むように配置することで、ハンドルノブ自体のガタを抑えることができる。また、シール部50Aの固定状態を安定させることができる。
また、第2実施形態では、第1軸受25Aとシール固定部51との軸方向Xの密着性を高めることができるので、さらに止水性能も向上できる。
【0063】
(第3実施形態)
図5に示すように、第3実施形態による魚釣用リールのハンドルノブ20Bは、シール部50Bのシール固定部51において円環状の芯材53(円環状部)を備えた構成である。第3実施形態では、第1軸受25Aとシール部50Bとの間に軸方向Xの隙間Sが設けられている。シール部50Bは、単独で支軸23の外周面23aに固定されている。すなわち、第3実施形態では、第1実施形態の座金28(
図3参照)が省略されている。
【0064】
シール部50Bのシール固定部51の内面51aは、シール保持部27における支持部271の外面271aに接触している。芯材53は、シール固定部51内に埋設されている。芯材53は、薄厚の筒状をなし、例えば金属製で所望の強度を有する非弾性部材である。つまり、シール固定部51は、芯材53によって形状が保持されるとともに、支軸23の外周面23a側(径方向内側)に向けて締め付けるように配置される。
【0065】
また、第3実施形態では、シール固定部51とリップ部52の位置が軸方向Xにずらした位置に設けられている。これにより、シール部50Bの根元(シール固定部51)の肉厚を薄くすることができ、低トルクとなる回転性能を維持でき、支軸23と中空軸24とが狭い隙間であっても所望の止水性能を有するシール部50Bを配置することができる。
【0066】
このように第3実施形態では、シール固定部51の形状が芯材53によって安定する。とくに、シール固定部51内の芯材53が円環状部であるので、シール固定部51が環状を維持した状態で支軸23の外周面23aに保持されることになる。そのため、支軸23に対するハンドルツマミ26の回転によってシール部50Bの位置ずれや変形をより効果的に抑制でき、シール部50Bを安定した固定状態で維持できる。
【0067】
(第4実施形態)
図6に示すように、第4実施形態による魚釣用リールのハンドルノブ20Cは、シール部50Cとして樹脂製のブッシュシール部54を備え、ブッシュシール部54とシール保持部27の凸部272との間でラビリンス構造を構成している。
【0068】
ブッシュシール部54は、環状で設けられ、中空軸24の基端内面24aから径方向内側に向けて突出して設けられる。ブッシュシール部54は、板状に形成され、シール保持部27の凸部272と面接触し、基端側X1を向く面で軸方向Xに直交するシール面54aを有する。シール面54aは、凸部272の内側面272aに対して面接触する。ブッシュシール部54は、第1軸受25Aと凸部272とによって軸方向Xに挟持されている。ブッシュシール部54の突出先端面54bは、シール保持部27の支持部271の外面271aに接触している。
【0069】
第4実施形態では、ブッシュシール部54で、支軸23と中空軸24との間で第1軸受25A側への浸水を抑えつつ、第1軸受25Aに塗布されたグリスの流出も防止できる。
【0070】
このように第4実施形態では、支軸23と中空軸24との間にブッシュシール部54を設けることで、支軸23と中空軸24との間のシール性能を向上できる。これにより、ハンドルノブ20C内の軸受25Aが潮ガミしたり、固着したりすることを抑制することができる。
【0071】
さらに、第4実施形態では、従来のようなOリングやワッシャを挿入する止水構造に比べて、回転抵抗を小さく抑えることができ、支軸23に対するハンドルツマミ26をスムーズに回転させることができる。
【0072】
以上、本発明による魚釣用リールのハンドルノブの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。そして、実施形態には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0073】
例えば、本実施形態のハンドルノブ20、20A~20Cが魚釣用スピニングリール1に適用されているが、スピニングリールであることに限定されず、両軸リール等のハンドルノブを備えた魚釣用リールに適用することができる。
【0074】
また、本実施形態のシール部50、50A、50Bでは、シール固定部51とリップ部52を備えたリップシールを対象としているが、これに限定されることはなく、上記第4実施形態のようなブッシュシール部54によるシール部50Cであってもよい。
また、本実施形態のシール部50、50A、50Bでは、シール固定部51とリップ部52を備えたリップシール、及び、ブッシュシール部54によるシール部50Cに撥水処理(撥水コーティング、撥水グリスの塗布など)を行ってもよい。
【0075】
また、シール保持部27の構成も、上記実施形態のように支持部271と凸部272からなる構成であることに限定されることはない。
【0076】
その他、リールボディ11、ハンドル2、ロータ3、スプール4の形状や大きさ等の構成については、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 魚釣用スピニングリール(魚釣用リール)
2 ハンドル
3 ロータ
4 スプール
10 リール本体
11 リールボディ
20、20A、20B、20C ハンドルノブ
21 ハンドルアーム
22 ハンドル軸
23 支軸
23a 外周面(外周部)
24 中空軸
24a 基端内面
24b 先端内面
25A 第1軸受
25B 第2軸受
26 ハンドルツマミ
27 シール保持部(保持部)
271 支持部
272 凸部
28 座金
50、50A、50B、50C シール部
51 シール固定部(固定部)
511 弾性部材
52 リップ部
53 芯材(円環状部)
54 ブッシュシール部