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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173050
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】廃水処理システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20230101AFI20241205BHJP
   C02F 3/06 20230101ALI20241205BHJP
【FI】
C02F1/44 F
C02F3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091171
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002451
【氏名又は名称】積水アクアシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼井 啓司
(72)【発明者】
【氏名】松島 加奈
(72)【発明者】
【氏名】奥野 健太
(72)【発明者】
【氏名】金澤 正晃
(72)【発明者】
【氏名】豊島 有人
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 光行
【テーマコード(参考)】
4D003
4D006
【Fターム(参考)】
4D003AA01
4D003AB09
4D003BA02
4D003CA02
4D003EA15
4D003EA22
4D003EA24
4D003FA01
4D006GA06
4D006GA07
4D006HA01
4D006HA41
4D006HA93
4D006KA01
4D006KA72
4D006KB25
4D006KB30
4D006MA01
4D006MA03
4D006MC18
4D006MC30
4D006MC39
4D006MC62
4D006MC63
4D006PA01
4D006PB08
4D006PC62
4D006PC67
(57)【要約】
【課題】特定の複数の廃水処理装置を組み合わせることにより懸濁物質の発生及び流出が少ない廃水処理システムを構築する。
【解決手段】廃水処理システム(500)は、一方による処理を経た廃水を、他方が更に処理するように接続された、第1の廃水処理装置(100)及び第2の廃水処理装置(201,202)を備える。第1の廃水処理装置(100)は、廃水を貯留する第1の処理槽(51)と、廃水に浸漬して配置され、酸素を含む気体を内側から廃水に供給し、且つ、廃水に接する外側表面に微生物を担持する気体供給体(10)とを備える。第2の廃水処理装置(201,202)は、第2の処理槽(211)と微生物を担持する基板(212)とを備える、或いは、ろ過膜(221)を備える。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃水を処理する第1の廃水処理装置及び第2の廃水処理装置を備える廃水処理システムであって、
前記第1の廃水処理装置及び前記第2の廃水処理装置は、一方による処理を経た前記廃水を、他方が更に処理するように接続されており、
前記第1の廃水処理装置は、
前記廃水を貯留する第1の処理槽と、
前記第1の処理槽に貯留された前記廃水に浸漬して配置される気体供給体であって、酸素を含む気体を内側から前記廃水に供給し、且つ、前記廃水に接する外側表面に微生物を担持する前記気体供給体と、
を備え、
前記第2の廃水処理装置は、
前記廃水を貯留する第2の処理槽と、
前記第2の処理槽に貯留された前記廃水の液面に交差し、一部が前記廃水に浸漬し、別の一部が前記液面上の気相に露出して配置される基板であって、前記基板に交差する軸線の周りに回転し、且つ、微生物を表面に担持する前記基板と、
を備える、或いは、
前記第2の廃水処理装置は、
前記廃水をろ過するためのろ過膜、
を備える、
ことを特徴とする廃水処理システム。
【請求項2】
前記第2の廃水処理装置は、
前記第2の処理槽と、
前記基板と、
を備える、
請求項1に記載の廃水処理システム。
【請求項3】
前記第1の廃水処理装置及び前記第2の廃水処理装置は、前記第1の廃水処理装置による処理を経た前記廃水を、前記第2の廃水処理装置が更に処理するように接続されている、
請求項1又は2に記載の廃水処理システム。
【請求項4】
前記第1の廃水処理装置及び前記第2の廃水処理装置は、前記第2の廃水処理装置による処理を経た前記廃水を、前記第1の廃水処理装置が更に処理するように接続されており、
前記第1の廃水処理装置による処理を経た前記廃水を更に処理する、第3の廃水処理装置を更に備える、
請求項1又は2に記載の廃水処理システム。
【請求項5】
前記廃水を貯留し、前記廃水中の沈降性成分を沈殿させる沈殿槽を更に備える、
請求項1又は2に記載の廃水処理システム。
【請求項6】
前記廃水を貯留し、消毒用薬剤により消毒する消毒槽を更に備える、
請求項1又は2に記載の廃水処理システム。
【請求項7】
前記第1の廃水処理装置において、
前記気体供給体は、前記第1の処理槽に貯留された前記廃水に浸漬される防水透気性のシート積層体と、前記シート積層体が取り囲む内部空間とを備え、
前記気体供給体は、前記内部空間に供給された前記気体を、前記シート積層体を透過させて前記廃水に供給し、
前記シート積層体は、前記廃水と接する側に、前記微生物を担持する微生物支持層を備える、
請求項1又は2に記載の廃水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、廃水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃水に含まれる微生物の活動を利用して廃水を浄化する装置が提案されており、その一種として、酸素透過膜(酸素溶解膜、防水透気性シート、防水酸素透過性フィルム、透気シート、防水透気シート等とも称される)を用いて反応槽内の廃水や、酸素透過膜表面に存在する微生物又はバイオフィルムに酸素を含む気体(例えば空気)を供給することにより、廃水に含まれる微生物を活動させて廃水を浄化する、MABR(メンブレンエアレーションバイオフィルムリアクター)と呼ばれる廃水処理装置が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、直列に接続された第1ないし第n(nは2以上)の反応槽を備え、各反応槽内で好気性生物処理を行う好気性生物処理装置において、少なくとも第1反応槽は、反応槽内に配置された酸素溶解膜によって酸素を被処理水に溶解させるMABR反応槽であり、少なくとも最終反応槽はMABR以外の反応槽であることを特徴とする好気性生物処理装置が記載されている。特許文献1によれば、前記好気性生物処理装置は、MABRが、反応槽から揮発性物質が排気中に気散することが無いという点で有利である一方で、極低濃度のBOD除去には不向きであるため、多段反応槽の最終槽にMABRを設置すると大きな反応槽が必要となり場所、コストの点で不利になるという課題を解決するものである。特許文献1によれば、前記好気性生物処理装置は、臭気発生及び揮発性物質の揮発のない効率的な生物処理を可能にする。特許文献1では、前記好気性生物処理装置における最終反応槽として用いる、MABR以外の反応槽の例として、汚泥浮遊反応槽又は担体流動反応槽が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2018/168022号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
省エネルギーかつ処理効率が良く、汚泥発生量が少ない廃水処理システムが求められている。
【0006】
特許文献1において、MABRと組み合わせて用いられる汚泥浮遊反応槽又は担体流動反応槽による廃水処理は、いずれも、槽内でブロアによる曝気を行うことにより、廃水を撹拌しつつ酸素を供給して微生物を活性化させ槽内の廃水を浄化する。ブロアによる曝気を行う廃水処理では、供給された酸素により微生物が過剰に増殖するため、並びに、曝気により廃水が撹拌されるため、排出される処理水中に流出する懸濁物質(SS)の濃度が高くなる傾向がある。
【0007】
そこで本発明は、特定の複数の廃水処理装置を組み合わせることにより、SSの発生及び流出が少ない廃水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1観点は、廃水を処理する第1の廃水処理装置及び第2の廃水処理装置を備える廃水処理システムであって、
前記第1の廃水処理装置及び前記第2の廃水処理装置は、一方による処理を経た前記廃水を、他方が更に処理するように接続されており、
前記第1の廃水処理装置は、
前記廃水を貯留する第1の処理槽と、
前記第1の処理槽に貯留された前記廃水に浸漬して配置される気体供給体であって、酸素を含む気体を内側から前記廃水に供給し、且つ、前記廃水に接する外側表面に微生物を担持する前記気体供給体と、
を備え、
前記第2の廃水処理装置は、
前記廃水を貯留する第2の処理槽と、
前記第2の処理槽に貯留された前記廃水の液面に交差し、一部が前記廃水に浸漬し、別の一部が前記液面上の気相に露出して配置される基板であって、前記基板に交差する軸線の周りに回転し、且つ、微生物を表面に担持する前記基板と、
を備える、或いは、
前記第2の廃水処理装置は、
前記廃水をろ過するためのろ過膜、
を備える、
ことを特徴とする。
【0009】
第2観点の廃水処理システムは、第1観点の廃水処理システムであって、
前記第2の廃水処理装置は、
前記第2の処理槽と、
前記基板と、
を備える。
【0010】
第3観点の廃水処理システムは、第1観点又は第2観点の廃水処理システムであって、
前記第1の廃水処理装置及び前記第2の廃水処理装置は、前記第1の廃水処理装置による処理を経た前記廃水を、前記第2の廃水処理装置が更に処理するように接続されている。
【0011】
第4観点の廃水処理システムは、第1観点又は第2観点の廃水処理システムであって、
前記第1の廃水処理装置及び前記第2の廃水処理装置は、前記第2の廃水処理装置による処理を経た前記廃水を、前記第1の廃水処理装置が更に処理するように接続されており、
前記第1の廃水処理装置による処理を経た前記廃水を更に処理する、第3の廃水処理装置を更に備える。
【0012】
第5観点の廃水処理システムは、第1観点又は第2観点の廃水処理システムであって、
前記廃水を貯留し、前記廃水中の沈降性成分を沈殿させる沈殿槽を更に備える。
【0013】
第6観点の廃水処理システムは、第1観点又は第2観点の廃水処理システムであって、
前記廃水を貯留し、消毒用薬剤により消毒する消毒槽を更に備える。
【0014】
第7観点の廃水処理システムは、第1観点又は第2観点の廃水処理システムであって、
前記第1の廃水処理装置において、
前記気体供給体は、前記第1の処理槽に貯留された前記廃水に浸漬される防水透気性のシート積層体と、前記シート積層体が取り囲む内部空間とを備え、
前記気体供給体は、前記内部空間に供給された前記気体を、前記シート積層体を透過させて前記廃水に供給し、
前記シート積層体は、前記廃水と接する側に、前記微生物を担持する微生物支持層を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、SSの発生及び流出が少ない廃水処理システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の廃水処理装置100を示す鉛直断面図である。
図2】第1の廃水処理装置100を示す水平断面図である。
図3】第1の廃水処理装置100の図1と直交する断面における概略図である。
図4A】気体供給体10の鉛直断面図である。
図4B】気体供給体10の図4Aと直交する方向の鉛直断面図である。
図4C】気体供給体10の外観斜視図である。
図5】気体送出層12の外観斜視図である。
図6】気体供給体10の排気口15および外部水侵入防止部16の模式図である。
図7】第1の処理槽内の廃水中に浸漬された気体供給体のシート積層体の表面に形成される微生物集合体、および微生物による少なくとも1つの有機物質または窒素源の分解について説明する模式図である。
図8】気体供給体10の製造方法の流れを示すフローチャートである。
図9A】シート積層体21,21を袋状に形成する工程を示す模式図である。
図9B図9Aの工程における、シート積層体21,21の断面図である。
図10図9Aの工程で作成した袋状のシート積層体の開口21bから内部空間Bに気体送出層12を挿入する工程を示す模式図である。
図11】第2の廃水処理装置201の斜視図である。
図12】第1の廃水処理装置100と第2の廃水処理装置201とを備え、第1の廃水処理装置100での処理を経た廃水を、第2の廃水処理装置201が更に処理するように、第1の廃水処理装置100と第2の廃水処理装置201が接続された廃水処理システム500のブロック構成図である。
図13】第1の廃水処理装置100と第2の廃水処理装置201とを備え、第2の廃水処理装置201での処理を経た廃水を、第1の廃水処理装置100が更に処理するように、第1の廃水処理装置100と第2の廃水処理装置201が接続された廃水処理システム500のブロック構成図である。
図14】第1の廃水処理装置100と第2の廃水処理装置202とを備え、第1の廃水処理装置100での処理を経た廃水を、第2の廃水処理装置202が更に処理するように、第1の廃水処理装置100と第2の廃水処理装置202が接続された廃水処理システム500のブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る廃水処理システムは、有機物質を含む廃水(有機性廃水)を処理する目的で好適に使用することができる。有機性廃水としては、例えば生活廃水、産業廃水等の易分解性の有機性廃水が例示できる。本発明の実施形態に係る廃水処理システムによる処理に適した有機性廃水としては、臭気を発生する物質を含む有機性廃水が例示でき、例えば、ゴミ処理場、下水処理場、パルプ製造工場から排出される揮発性悪臭物質、塩化ビニル樹脂製造工場から排出される揮発性毒物(ビニルクロライド、トリクロロエチレン等)、半導体工場から排出される、DMSO分解工程で発生する硫化メチル、メチルメルカプタン等の悪臭物質を含む有機性廃水が例示できる。
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る廃水処理システム及びその構成要素について、図面を参照しながら説明する。説明の都合上、第1の廃水処理装置及び第2の廃水処理装置の実施形態について先に説明し、その後にそれらを含む廃水処理システムの実施形態について説明する。
【0019】
<第1の廃水処理装置100>
図1は、本発明の一実施形態の廃水処理システムに用いる第1の廃水処理装置100を示す鉛直断面図である。図2は、第1の廃水処理装置100を示す水平断面図である。図3は、第1の廃水処理装置100を示す鉛直断面図であり、図1と直交する断面を示す。
【0020】
(第1の廃水処理装置100)
本実施形態の第1の廃水処理装置100は、廃水Wに含まれる微生物の働きを利用して、廃水W中の少なくとも1つの有機物または窒素源を分解して廃水Wの浄化処理を行う。図1図3に示すように、第1の廃水処理装置100は、第1の処理槽51と、供給体ユニット52と、気体供給源53(図1参照)と、を備えている。
【0021】
(第1の処理槽51)
図1図3に示すように、第1の処理槽51は、廃水Wが貯留される有底の容器であって、互いに対向する側面に流入口51aと流出口51bとが設けられている。本実施形態では、流入口51aと流出口51bとが常時開放されている。廃水Wは、流入口51aから、流入口51aに対向する位置に配置された流出口51bに向かって、連続的、もしくは、断続的に供給される(図3の矢印は、廃水Wの流れを示している)。第1の処理槽51の容積については、特に限定されないが、例えば、1m以上10,000m以下の容積であればよい。
【0022】
図1に示すように、供給体ユニット52は、気体供給体10がユニット化されたものであり、第1の処理槽51の内部に配置される。図示例では、供給体ユニット52は、平行に配列された複数の気体供給体10によって構成されている。供給体ユニット52は、使用時において、各気体供給体10の上端部分を除いた部分が廃水W中に浸漬されるように配置される。
【0023】
図1図3には図示しないが、第1の廃水処理装置100は、第1の処理槽51に貯留した廃水Wを撹拌するための撹拌部を更に備えることができる。前記撹拌部としては、ブロワ(散気管)が挙げられる。図12,13には、ブロア60を備えた第1の廃水処理装置100を含む廃水処理システム500の例を示す。第1の廃水処理装置100が備えるブロア60は曝気を目的とするものではなく、撹拌を目的とするものであるため、気体供給体10の外側表面Aに担持された微生物が剥がれない程度に穏やかに廃水Wを撹拌することが好ましい。例えば、第1の廃水処理装置100が備えるブロア60による撹拌を目的とする曝気強度は0.1m/m/h以上、3.0m/m/h以下であることが好ましく、また、曝気を実施するサイクル数は1回/日以上、1回/分以下でることが好ましく、1回あたりの曝気時間は1分以上、60分以下程度であることが好ましい。また前記ブロア60による吐出風圧は水圧以下のもので十分である。
【0024】
(気体供給体10)
供給体ユニット52を構成する各気体供給体10は、第1の処理槽51の廃水W中に浸漬された状態で、送気部14から供給された酸素を含む気体を、その内側から廃水W中に供給する構造体である。各気体供給体10の廃水Wと接する外側表面Aに、微生物を担持する。気体供給体10を介して廃水W中に酸素を含む気体が供給され、廃水W中の微生物が活性化される。酸素を含む気体の供給により活性化され、外側表面Aに担持される微生物としては、好気性微生物及び嫌気性微生物から選択される1以上が挙げられ、例えば好気性微生物であることができる。前記微生物としては、細菌、菌類、微細藻類、原生動物、微小後生動物などが挙げられる。また、原生動物としては、鞭毛虫類、肉質虫類および繊毛虫類などが挙げられ。微小後生動物としては、輪虫類、線虫類、貧毛類などが挙げられる。酸素を含む気体は、具体的には、空気であってもよいし、純酸素であってもよい。図示の例では、気体供給源53からの気体が送気部14に供給されるようになっており、気体供給源53として送気装置等を用いることができる。なお製造コストを安価に抑える観点から、気体供給源53を使用せずに、送気部14から大気中の空気をそのまま気体供給体10に取り入れてもよい。
【0025】
図2図3に示すように、各気体供給体10は、平板状の部材であって、上下方向(深さ方向)と横方向(水平方向)とに沿って面が展開されるように配置されている。これにより、廃水Wとの接触面積が効率的に確保される。また、流入口51aと流出口51bとを結ぶ直線に対して、各気体供給体10の側面が平行になるように各気体供給体10が配置されることで、流入口51aから第1の処理槽51内に供給される廃水Wは、流出口51bに向けて円滑に流れる。なお、供給体ユニット52を構成する気体供給体10の数は、必ずしも複数である必要はなく、単数であってもよい。
【0026】
気体供給体10の間隔を、「気体供給体10の厚みを含まない、隣り合う2つの気体供給体10の外面の間の間隔」と定義すると、気体供給体10の間隔は、5mm以上200mm以下であることが好ましい。気体供給体10の間隔が5mm未満である場合には、シート積層体21上に増殖する微生物によって目詰まりを起こすおそれがある。気体供給体10の間隔が200mmを超える場合には、廃水との接触効率が悪くなり、廃水処理性能が向上しにくくなる可能性がある。なお上記問題を確実に回避するために、気体供給体10の間隔を15mm以上50mm以下とすることがより好ましい。
【0027】
図4A、4B、4Cは、気体供給体10の鉛直断面図、別の方向の鉛直断面図、斜視図である。図4A~4Cに示すように、気体供給体10は、シート積層体21と、シート積層体21が取り囲む内部空間Bとを備え、更に、内部空間Bに配置された気体送出層12と、内部空間Bに気体を供給する送気部14と、排気口15と、外部水侵入防止部16を備えている。シート積層体21は袋を構成し、その内部に内部空間Bが形成される。前記袋は、2枚のシート積層体21,21を重ね合わせて、これらシート積層体21,21の4方の端部を接着封止したものである。上端部(気体送出層12における気体供給側の端部)には、気体供給源53から気体供給体10内へ空気を供給するための送気部14を有している。気体供給体10の内部空間Bには、気体送出層12が挿入されており、気体送出層12の外周はシート積層体21によって覆われている。なお、気体供給体10の内部空間Bは、気体供給体10の外部に対して、送気部14を除いて塞がれる。また、内部空間Bは、気体送出層12によって複数の気体流路Sに区画される。
【0028】
気体供給体10では、送気部14が配管(一般的なチューブ、ホース、パイプ等)を介して気体供給源53に接続されること、或いは、送気部14が直接気体供給源53に接続されることで、送気部14を介して空気が気体供給体10の内部空間Bに供給される。気体供給体10の内部空間Bに供給された空気は、気体送出層12が画成する複数の気体流路Sに沿って流れて、シート積層体21を透過して外部の廃水Wへ供給される。また、シート積層体21を透過しきれなかった余剰空気に関しては、排気口15から外部へ排出される。
【0029】
(気体送出層12)
図5は、気体送出層12を示す斜視図である。気体送出層12は、中空板状部材であり、紙、樹脂、金属のいずれかから形成される。気体送出層12は、第1端側から供給された気体を第1方向に沿って送出する複数の気体流路Sを画成する構造体である。気体供給源53(図1)からの気体は送気部14を介して気体送出層12の下端部(気体送出層12における気体供給側の端部)に供給される。気体送出層12は、下端部に供給された気体を、気体流路Sを通じて第1方向(図5中の2点差線参照)に送出し、側面の気体通過孔13から放出する。また、気体通過孔13から放出しきれなかった余剰空気は、排気口15から外部へ排出される。
【0030】
より具体的には図5に示すように、気体送出層12は、複数の芯材12aと、表ライナ12bと、裏ライナ12cと、を有している。気体送出層12の表裏面は、板状の部材である表ライナ12bや裏ライナ12cによって構成される。
【0031】
複数の芯材12aは、それぞれ第1方向に延びるものであって、第1方向と直交する方向に所定の間隔をあけて配列される。これら複数の芯材12aが表ライナ12bと裏ライナ12cとの間に挟み込まれることで、表ライナ12bと裏ライナ12cとの間の空間に、芯材12aによって区画された複数の気体流路Sが画成される。
【0032】
また各芯材12aは、表ライナ12bおよび裏ライナ12c側から押圧された際に、表ライナ12bと裏ライナ12cとの間の空間が縮小しないように支持する支持部として機能する。図1図3に示すように気体供給体10が廃水W中に浸漬された状態では、芯材12aは、気体流路Sの断面積が水圧によって縮小しないように、表ライナ12bと裏ライナ12cとの間の空間を保持する。これにより、気体送出層12(気体流路S)における気体送出量を十分に確保できる。
【0033】
表ライナ12bおよび裏ライナ12cには、それぞれ複数の気体通過孔13が形成されている。気体通過孔13は、表ライナ12bおよび裏ライナ12cに形成された貫通孔であり、当該気体通過孔13が気体流路Sとシート積層体21とを連通させることで、気体流路Sを流れる気体は、シート積層体21を介して廃水中に供給される。
【0034】
例えば、気体通過孔13は、気体送出層12の成形時に形成される。或いは気体送出層12の成形後に表ライナ12bや裏ライナ12cの加工が行われることで、気体通過孔13が形成されてもよい。表ライナ12bや裏ライナ12cには多孔性シートが用いられてもよい。また、十分な気体供給性能が得られれば、気体送出層12に多孔性シートを用いてもよい。
【0035】
気体送出層12を構成する各部材の素材としては、紙、セラミック、アルミニウム、鉄、プラスチック(ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、メチルセルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂及びポリビニルブチラール樹脂)等が挙げられる。
【0036】
なお強度面が優れることから、気体送出層12の素材は、紙、アルミニウム、鉄、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、塩ビ樹脂、ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0037】
また材料コストを安価に抑える観点では、気体送出層12の素材として、例えば、紙、ポリオレフィン、ポリスチレン、塩ビ、ポリエステル等の樹脂、アルミニウム等の金属等を使用することが好ましい。また、気体流路Sが第1方向(図5中の2点差線参照)に延びるように形成された段ボールを気体送出層12として使用することでも、気体送出層12の材料コストを安価に抑えることができる。
【0038】
当該気体送出層12の気体通過孔13を形成する孔形状は、円形状、多角形状(ハニカム構造を含む)など様々な形状の孔形状とすることができる。孔形状は特に限定は無いが、多角形状が好ましく、具体的には長方形もしくは正方形が好ましい。
【0039】
微生物の活性を維持するために、内部空間B及び内部空間Bが気体送出層12により区画された気体流路Sにおける酸素濃度を維持することが好ましく、この方法として、内部空間Bに純酸素を所定量供給することで、酸素濃度を一定に維持することが挙げられる。当該純酸素を供給する方法としては、例えば、動力を用いた送気等が考えられる。
【0040】
ここで、シート積層体21が取り囲む内部空間B及び気体送出層12内に形成される気体流路Sの上下方向(浸漬時の深さ方向)における長さは、例えば、0.2m以上、好ましくは0.8m以上であってよいし、3.7m以上であってもよい。また、当該長さは、例えば、6m以下、好ましくは4m以下であってよい。内部空間B及び気体流路Sの上下方向に直交する横方向の長さは、例えば、0.2m以上、好ましくは0.4m以上であってよく、例えば、3.6m以下、好ましくは1.8m以下であってよい。
【0041】
ここで、内部空間B及び気体流路Sの上下方向の長さが上記下限値以上であることは、内部空間B及び気体流路Sの維持を容易にし且つ内部空間B及び気体流路Sの換気を容易にして廃水処理能を向上させる点で好ましい。上記上限値以下であることは、内部空間B及び気体流路Sの換気による廃水処理能向上効果をより良好に得る点、および設置容易性の点などで好ましい。
【0042】
また、内部空間B及び気体流路Sの横方向の長さが上記下限値以上であることは、廃水Wとの接触面積を効率的に確保して廃水処理効率を向上させる点で好ましい。上記上限値以下であることは、気体供給体10全体の強度維持容易性および供給体ユニット52の設置容易性の点などで好ましい。
【0043】
気体供給体10の長さLsに対する廃水Wへの接水長さLwの割合は、例えば、80%以上、95%以下であればよい(長さLs,Lwについては図1参照)。上記長さLsに対する接水長さLwの割合が上記下限値以上であることは、内部空間B及び気体流路Sから廃水Wに供給される酸素量を良好に確保し廃水処理効率を向上させる点で好ましい。上記長さLsに対する接水長さLwの割合が上記上限値以下であることは、内部空間B及び気体流路Sへの廃水Wの侵入を防ぐ点で好ましい。
【0044】
あるいは、内部空間B及び気体流路Sへの廃水Wの侵入を防ぐ点では、廃水Wの水面が気体供給体10(シート積層体21)の開口21bから2cm以上離間するように接水長さLwが設定されてもよい。
【0045】
(送気部14)
気体供給体10の内部空間Bへ酸素を含む気体を供給するための送気部14の断面形状は、円形が好ましいが、四角形や六角形などの多角形でもよい。当該送気部14は、図示しない配管(一般的なチューブ、ホース、パイプ等)を介して気体供給源53に接続されること、或いは直接気体供給源53に接続されることで、送気部14を介して酸素を含む気体が気体供給体10の内部空間Bに供給される。
【0046】
なお、送気部14の外周面とシート積層体21との接合は、接着剤等を用いる方法、熱融着、高周波ウェルダー、及び超音波ウェルダー等を用いる方法、或いは、機械的に挟み込む方法によって実現され得る。例えば、送気部14の外周面とシート積層体21とを接合する方法は、パウチ袋や、水処理用膜モジュールに用いられる、融着、接着や螺着、嵌着等の方法を適用できる。
【0047】
送気部14もしくは送気部14に接続される配管部材が、気体送出層12に接続されていてもよい。この場合、気体を効率よく廃水W中へ供給するために、送気部14もしくは送気部14に接続される配管部材は、気体供給体10の内部空間Bの最下部に気体を供給可能なものが好ましい。
【0048】
送気部14は、配管と接続するための配管接続形状を有していてもよい。配管接続形状の具体例としては、ねじ込み、溶接、LAカップリング、フランジ、接着、融着、Wフェルールジョイント、ワンタッチ継手形状、ワンタッチカップリング、レバー式カップリング、ワンタッチカプラー、パロット、ホースニップル、ユニオン、SO型ジョイントやスイベルジョイント等のジョイント、ブレードロック、ホースジョイント等が挙げられる。
【0049】
送気部14の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。また、送気部14として2連管等の多連管を用いてもよい。なお、空気の流入口が複数構成される場合には、例えばマニホールドやヘッダなどの分岐形状を有する部材を用いて、気体供給源53から複数の流入口に空気を供給することが好ましい。
【0050】
また、送気部14の素材は、軟質で可撓性を有するものであってもよいし、硬質で可撓性を有しないものであってもよい。素材の具体例としては、セラミック、アルミニウム、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅やそれらを含む合金、プラスチック(ポリオレフィン、ポリスチレン、AS、ABS、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアミド、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂、ポリアミドイミド、ポリイミド、シリコーン系樹脂、熱可塑性エラストマー、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂(ユリア、メラミン樹脂)、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、AXS樹脂、EVA樹脂、EVOH樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリウレタン)からなる群より選択される1種以上を挙げることができる。
【0051】
(排気口15)
排気口15は、送気部14を介して気体供給体10へ供給された空気のうち、シート積層体21を通じ透過しきれなかった余剰空気を気体供給体10の外部へ排出する経路である。排気口15は、剪断加工や打ち抜き加工などによりシート積層体21の表面上部に形成される。この際、供給体ユニット52の構築を目的として、気体供給体10をユニット化するための固定箇所として、排気口15を利用しても良い。例えば、重ね合わせられた2枚のシート積層体21,21において、鏡像の関係になるよう同様の位置に排気口15を設ける。1または複数の気体供給体10の排気口15に棒状の固定用治具を挿入して供給体ユニット52を構成してもよい。
【0052】
排気口15は、図6に示すように、シート積層体21の上辺の接着封止部から排気口15の上端までの距離15aが0mm~100mmとなる位置に形成される。5mm以上20mm以下であってもよい。排気口15の位置が高いほど、第1の処理槽51に浸漬された気体供給体10の総表面積(有効膜面積)を増加させられるため、廃水W中への気体供給効率の観点から好ましい。
【0053】
排気口15の形状は、円形が好ましいが、四角形や六角形などの多角形でもよい。排気口15の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。排気口15の形状が円形の場合、直径が10mm以上50mm以下の円形排気口が2個以上5個以下であってもよい。排気口の開口部の総面積として、十分な排気量確保と有効膜面積確保との観点から、500~5000mmが好ましい。500~3000mmであってもよい。
【0054】
(外部水侵入防止部16)
外部水侵入防止部16は、雨水や結露水などの外部水が気体供給体10内部に流入することを防ぐ目的で設けられる。外部水侵入防止部16は、図4A図4C図6に示すように、下部接着部16aおよび下部接着部16aと連続する側部接着部16bを有している。2枚のシート積層体21,21を重ね合わせて、排気口15の下部および側部を接着して、接着部16a、16bを形成する。排気口15の下部および側部の一部は、下部接着部16aおよび側部接着部16bによって囲われる。下部接着部16aおよび側部接着部16bは、シート積層体21の上辺接着部21eおよび側部接着部21cには連結しない形状で構築される。言い換えると、2枚のシート積層体21,21の間には、外部水侵入防止部16と、シート積層体21の上辺接着部21eおよび側部接着部21cとの間に、液体または気体の通過可能な内部空間Bが設けられている。
【0055】
図6に示すように、気体供給体10において、排気口15の下端から、外部水侵入防止部16の下部接着部16aまでの、鉛直方向の距離15bは、0mm以上500mm以下である。0mm以上200mm以下であってもよい。排気口15の端部から、外部水侵入防止部16の接着部16bまでの水平方向の距離15cは、0mm以上500mm以下である。0mm以上50mm以下であってもよい。側部接着部16bにおいて、排気口15の最下端から融着最上部までの鉛直方向の距離15dが、10mm以上50mm以下である。外部水侵入防止部16において、下部接着部16aの両端部は、側部接着部16bの下端と連続するように形成されている。排気口15より流入した外部水17は、外部水侵入防止部16において一時的にトラップされ、一定量を超えると再び排気口15から外部へ排出される。
【0056】
外部水侵入防止部16の構築に際する、2枚のシート積層体21,21の接着方法としては、接着剤等を用いる方法、熱融着、高周波ウェルダー、及び超音波ウェルダー等を用いる方法が用いられる。
【0057】
(シート積層体21)
シート積層体21は、最外側層が液体(廃水)に接触するように液体中(廃水中)に浸漬された状態で、気体送出層12が設置された内部空間Bに供給される酸素を含む気体を外側へ透過させることで、前記気体を液体中(廃水中)に供給する。当該シート積層体21は、気体供給体10が第1の処理槽51内に浸漬された状態において、内部空間B(気体送出層12)から外側(廃水W)へ前記気体を透過させ、かつ外側(廃水W)から内部空間B(気体送出層12)へ廃水を透過させない特性、すなわち防水透気性、を有する。これにより、廃水W中の微生物は、図7に示すように、酸素を含む気体が継続的に供給されるシート積層体21の表面21a(気体供給体10の外側表面A)に集まってくる。よって、シート積層体21の表面21a(気体供給体10の外側表面A)に微生物が付着して、バイオフィルムが形成される。そして、廃水Wに含まれるか、もしくはシート積層体21の表面21a(気体供給体10の外側表面A)に保持されている微生物の働きによって、水中に溶解、もしくは分散している微小個体状の有機物、もしくは窒素化合物が分解されて、廃水が浄化される。
【0058】
具体的には図4Aに示すように、シート積層体21は、基材21-1と、気体透過性無孔層21-2と、微生物支持層21-3とを含む。図示の例では、シート積層体21は、内側から外側に向けて、基材21-1、気体透過性無孔層21-2、微生物支持層21-3の順に積層され、廃水Wに接触する最外側層が微生物支持層21-3によって構成されている。なお図示の例とは異なり、シート積層体21は、内側から外側に向けて、気体透過性無孔層21-2、基材21-1、微生物支持層21-3の順に積層されたものであってもよい(この場合、図示の例とは逆に、気体透過性無孔層21-2が、基材21-1の内側に位置する)。このようにしても、基材21-1を気体透過性無孔層21-2で覆い、廃水Wに接触する最外側層を微生物支持層21-3によって構成できる。
【0059】
(基材21-1)
基材21-1は、熱可塑性樹脂から形成される微多孔膜である。前記微多孔膜とは、微細な貫通孔を多数設けた膜である。基材21-1の素材として、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールスルホン、ポリメチルペンテン、ポリテトラフルオロエチレン、及びポリフッ化ビニリデンを含めたフッ素樹脂、ポリブタジエン、ポリ(ジメチルシロキサン)を含めたシリコーンベースのポリマー、およびこれらの材料のコポリマーから選ばれるポリマー材料を含む等を含んでもよい。
【0060】
微多孔膜である基材21-1の製造方法は、特に限定されないが、例えば、相分離法、延伸開孔法、溶解再結晶法、粉末焼結法、発泡法、溶剤抽出のいずれかによって、基材21-1を製造できる。また基材21-1は、自己組織化ハニカム微多孔膜であってもよい。
【0061】
基材21-1の厚みは、10μm~500μmであることが好ましく、50μm~200μmであることがより好ましい。基材21-1の厚さは、JIS L1913:2010一般不織布試験方法6.1厚さの測定方法で測定される値である。
【0062】
基材21-1の細孔径は、気体透過性無孔層の欠陥を防止する観点から、0.01μm~50μmであることが好ましく、高い強度と気体透過性を保持する観点から、0.1μm~30μmであることがより好ましい。前記細孔径は、表面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、その観察像から以下に示す方法により求めた細孔径である。観察倍率は、観察する対象物の細孔径が適切に算出できる倍率であれば、任意の倍率で観察することができる。
【0063】
(細孔径を求める方法)
SEM観察で得られた像について、2値化処理を行い、画像解析的に、細孔径を算出する。算出の際には、細孔径は楕円近似を行い、楕円の長軸の長さを細孔径として、その平均値を評価する。
【0064】
或いは、基材21-1の細孔径は、毛管凝縮法による細孔径分布測定(パームポロシメトリ)から求められる平均細孔径であると定義される。パームポロシメトリでは、試料にかける気体の測定圧力を徐々に増加させていく際に測定される気体の透過流量から、大気圧と測定圧力との差圧と、気体透過流量との関係を求める、細孔径を求めるには、試料を表面張力が既知の湿潤液に浸漬した後の湿潤サンプルにて測定されるウェットカーブと、乾燥した試料で測定されるドライカーブを求める。それぞれ、所定の圧力範囲で徐々に圧力を増加させていくことにより、試料内の貫通細孔径に関する情報を得ることができる。平均細孔径はウェットカーブと、ドライカーブの1/2の傾きの曲線(ハーフドライカーブ)が交わる点Xを求め、これを方程式、d=2860×γ/DPに代入して求める。前記方程式において、dは平均細孔径(mm)、γは湿潤液の表面張力(dynes/cm)、DPは点Xにおける大気圧と気体圧力との差圧(Pa)である。測定は、Porous Materials社製、パームポロメーター(CFP-1500-AEC)を用いることができる。試験条件としては例えば、試験温度は室温(20℃±5℃)、湿潤液はGalwick(表面張力15.7dynes/cm)、加圧気体は圧縮空気、用いる試料の直径は33mm、供給圧力最大値は250psi、差圧の上昇速度は4psi/分で測定することができる。湿潤サンプル作成の際には、サンプルが浸漬されている湿潤液をデシケータに入れ、脱気することでサンプルを十分に湿潤させることができる。
【0065】
(気体透過性無孔層21-2)
気体透過性無孔層21-2とは、前記基材の孔より径の小さい細孔径の孔を有するか、もしくは、孔の径を検出できず、かつ、気体を透過可能な層である。気体透過性無孔層21-2の細孔径は、基材21-1の細孔径と同様の方法で測定できる。
【0066】
気体透過性無孔層21-2は、酸素を含む気体を少なくとも透過できるものであればよい。気体透過性無孔層21-2を透過する気体としてはまた、酸素、二酸化炭素、窒素、水素、メタノール、エタノール等のアルコール類や有機溶剤、もしくはそれらの混合ガスが挙げられる。微生物を効果的に生育、活動させる観点から、前記気体は、純酸素、空気等の、酸素を含む気体であることが好ましい。気体透過性はJIS K 7126に定めた方法で測定できる。
【0067】
気体透過性無孔層21-2は、熱可塑性樹脂でもよく、熱硬化性樹脂でもよい。当該熱硬化性樹脂は、熱硬化する樹脂であってもよく、紫外線の照射で硬化する樹脂であってもよい。また、有機過酸化物架橋、付加反応架橋、縮合架橋により硬化する樹脂であってもよい。
【0068】
気体透過性無孔層21-2の素材としては、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンポリテトラフルオロエチレン、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂および、これらの材料のコポリマーから選ばれる熱硬化性ポリマーを含んでもよい。また、(Si-O-Si)n(n=整数)のシロキサン骨格を有するポリ(ジメチルシロキサン)などのシリコーンベースのシリコーン樹脂を用いることができる。これらの中でも、特に、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂を用いることが好ましい。
【0069】
上記のポリウレタン樹脂としては、「アサフレックス 825」(旭化成社製)、「ペレセン 2363-80A」、「ペレセン 2363-80AE」、「ペレセン 2363-90A」、「ペレセン 2363-90AE」、(以上、ダウ・ケミカル社製)、「ハイムレンY-237NS」(大日精化工業社製)を用いることができる。
【0070】
シリコーン系樹脂やシリコーンポリマー、またはそれらを得るためのシリコーン系樹脂組成物の配合、組成は特に限定されない。シリコーン系樹脂組成物に用いられるモノマーは1官能基、2官能基、3官能基、4官能基のいずれでもよく、単独で用いても、2種類以上を用いてもよい。モノマーとしてハロゲン化アルキルシラン、不飽和基含有シラン、アミノシラン、メルカプトシラン、エポキシシラン等を用いてもよい。用いられるモノマーとしては、例えば次の化学式で表されるモノマーが挙げられる。HSiCl、SiCl、MeSiHCl、MeSiCl、MeSiCl、MeSiCl、MeHSiCl、PhSiCl、PhSiCl、MePhSiCl、PhMeSiCl、CH=CHSiCl、Me(CH=CH)SiCl、Me(CH=CH)SiCl、(CFCHCH)MeSiCl、(CFCHCH)SiCl、CH1837SiCl(化学式中で「=」は二重結合を、「Me」はメチル基を、「Ph」はフェニル基を表す)。前記モノマーは単独で用いても、2種類以上を用いてもよい。他の有機基としては、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ベンジル基、2-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基等のアラルキル基等を用いてもよい。これらの中でも、メチル基、フェニル基またはこれら両者の組み合わせが好ましい。メチル基、フェニル基またはこれら両者の組み合わせである成分は、合成が容易であり、化学的安定性が良好であるからである。また、特に耐溶剤性が良好なポリオルガノシロキサンを用いようとする場合には、更にメチル基、フェニル基またはこれら両者の組み合わせと3,3,3-トリフルオロプロピル基との組み合わせであることが好ましい。また、前記シリコーン系樹脂組成物には、オルガノアルコキシシランが含まれていてもよい。オルガノアルコキシシランとしては、例えば次の化学式で表される化合物が挙げられ、単独で用いても2種類以上を用いてもよい。MeSiOCH、MeSi(OCH、MeSi(OCH、Si(OCH、Me(C)Si(OCH、CSi(OCH、C1021Si(OCH、PhSi(OCH、PhSi(OCH、MeSiOC、MeSi(OC、Si(OC、CSi(OC、PhSi(OC、PhSi(OC
【0071】
さらに、前記シリコーン系樹脂組成物には、オルガノシラノールが含まれていてもよい。オルガノシラノールとしては、例えば次の化学式で表される化合物が挙げられ、単独で用いても2種類以上を用いてもよい。MeSiOH、MeSi(OH)、MePhSi(OH)、(CSiOH、PhSi(OH)、PhSiOH。
【0072】
シリコーン系樹脂に用いられるシリコーンポリマーを得るための反応方法としては例えば、クロロシランの加水分解、環状ジメチルシロキサンオリゴマーの開環重合等の過程を経てもよい。用いるポリマーとしては例えば、ジメチル系ポリマー、メチルビニル系ポリマー、メチルフェニルビニル系ポリマー、メチルフロロアルキル系ポリマー等が挙げられる。
【0073】
シリコーンポリマーを硬化させる方法、すなわち反応(加硫)させてシリコーン系樹脂を得る方法は特に限定されない。加熱加硫、室温加硫でもよい。反応前の状態として、ミラブル型シリコーン系樹脂組成物、液状ゴム型シリコーン系樹脂組成物のどちらを用いてもよい。ミラブル型シリコーン系樹脂組成物に使用されるポリマーは重合度が4000~10000程度のポリマーが好適に使用される。また、1液型でも2液型でもよい。反応方法としては例えば、シラノール基(Si-OH)間の脱水縮合反応、シラノール基と加水分解性基間の縮合反応、メチルシリル基(Si-CH)、ビニルシリル基(Si-CH=CH)の有機過酸化物による反応、ビニルシリル基とヒドロシリル基(Si-H)との付加反応、紫外線による反応、電子線による反応等を用いてもよい。
【0074】
(シラノール基間の脱水縮合反応)
触媒としてはオクチル酸亜鉛、オクチル酸鉄、またはコバルト、スズなどの有機酸塩、あるいはアミン系の触媒を使用してもよく、加熱によって反応を進行させてもよい。
【0075】
(シラノール基と加水分解性基間の縮合反応)
触媒として、酸、アルカリ、有機スズ化合物や有機チタン化合物などを添加してもよい。加水分解性基としては、アルコキシ基、アセトキシ基、オキシム基、アミノキシ基、プロペノキシ基等を用いてもよい。
【0076】
(メチルシリル基、ビニルシリル基の有機過酸化物による反応)
反応を促進する過酸化物硬化剤として、有機過酸化物やアシル系有機過酸化物、アルキル系有機過酸化物等を添加してもよい。アシル系有機過酸化物としては例えば、p-メチルベンゾイルパーオキサイド等を用いてもよい。アルキル系有機過酸化物としては例えば、2,5ジメチル-2,5ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンやジクミルパーオキサイド等を用いてもよい。反応温度は例えば120℃以上であり、また、2次加硫(ポストキュア)を行ってもよい。添加する過酸化物硬化剤の添加量は樹脂の固形分に対して0.1~10質量%が好適である。
【0077】
(アルケニル基とヒドロシリル基との付加反応)
アルケニル基は例えばビニル基が好適に用いられる。反応温度は常温でもよく、加温してもよい。また、反応は開放系で実施してもよく、密閉系で実施してもよい。アルケニル基とヒドロシリル基との付加反応に用いる組成物を得る過程では、窒素、リン、硫黄などを含む有機化合物、スズ、鉛などの金属のイオン性化合物、アセチレン等不飽和基を有する化合物、アルコール、水、カルボン酸を除去する添加剤を加えてもよいし、除去する工程を用いてもよい。
【0078】
アルケニル基とヒドロシリル基との付加反応を用いる場合、ビニル基を有するポリシロキサンやハイドロジェンポリシロキサンが好適に用いられる。
【0079】
ビニル基を有するポリシロキサンは、粘度が23℃において1~100000mPa・sの直鎖状のポリシロキサンが好適に用いられる。前記ポリシロキサンは1分子中にビニル基を1個以上含む。ビニル基を有するポリシロキサンの具体例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン等が挙げられる。これらのポリシロキサンは、一種単独で使用しても、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0080】
ハイドロジェンポリシロキサンは粘度が23℃において1~100000mPa・sの直鎖状ポリシロキサンが好適に用いられる。ハイドロジェンポリシロキサンは1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を1個以上含む。ハイドロジェンポリシロキサンの具体例としては、23℃における粘度が1~100000mPa・sである限り、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジフェニルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェン
シロキシ基封鎖メチルフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0081】
アルケニル基とヒドロシリル基との付加反応に用いる樹脂組成物は、アルケニル基に対するケイ素原子に結合した水素原子のモル比は0.01~20モルが好適であり1~2モルがさらに好適である。
【0082】
反応触媒としては例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の白金族金属を用いて、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィン類、ビニルシロキサンまたはアセチレン化合物との配位化合物等の白金化合物、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の白金族金属化合物等を用いることができる。また、シリコーンオイルとの相溶性が必要であることから、塩化白金酸をシリコーン変性した白金化合物が好適に用いられる。触媒を用いる場合、固形分質量から求められる添加量は0.01ppm~10000ppmが好適であり、0.1ppmから1000ppmがさらに好適である。
【0083】
ヒドロシリル基の合計量は、全シリコーン系樹脂組成物中のケイ素原子に結合したアルケニル基1モル当たり、通常、0.01~20モルであり、好ましくは0.1~10モルである。該合計量が、前記範囲の下限未満であると、得られるシリコーン系樹脂組成物が十分に硬化しにくくなる傾向があり、前記範囲の上限を超えると、得られるシリコーン系樹脂組成物の硬化物の機械的特性および耐熱特性が低下しやすくなる傾向がある。
【0084】
反応制御剤はシリコーン系樹脂を調合ないし基材に塗工などの加工を施す際に、硬化前に増粘やゲル化をおこさないようにするために添加するものである。反応制御剤としては、アルケニル基を複数個有する低分子量のポリシロキサンや、アセチレンアルコール系の化合物等が用いられる。
【0085】
(紫外線による反応)
紫外線硬化型シリコーン系樹脂としては、ラジカル反応タイプ(アクリル型、メルカプト型)、ラジカル反応/縮合反応併用タイプ(メルカプト/イソプロペノキシ型、アクリル/アルコキシ型)、紫外線活性の白金触媒を使用した付加反応タイプを用いてよい。
【0086】
アクリル型ラジカル反応タイプではシロキサンに結合したアクリル基を有する有機基を光増感剤の存在下でラジカル重合反応させる。
【0087】
メルカプト型ラジカル反応タイプでは、シロキサンに結合したメルカプト基を有する有機基とビニル基を有するポリシロキサンを光増感剤の存在下でラジカル付加反応させる。
【0088】
紫外線活性な白金触媒を使用した付加反応タイプに用いられる触媒としては、(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金錯体やビスアセチルアセトナト白金(II)錯体等が用いられ、365nmを中心とした光源で硬化させることが好適である。
【0089】
光硬化反応に用いられる主な官能基として、アクリル基、エポキシ基を用いてもよい。紫外線による反応に用いる組成物には光開始剤を用いてもよい。
【0090】
(シリコーン系樹脂に粘着性(接着性)を付与する方法)
シリコーン系樹脂に粘着性(接着性)を付与する方法としては例えば、粘着性を付与するシリコーンポリマーを添加する方法が好適に用いられる。粘着性を付与するシリコーンポリマーとしては例えば、MQレジンが好適に用いられる。MQレジンとは1官能基のモノマー(M単位)と4官能基のモノマー(Q単位)から合成された3次元構造をもつポリマーである。前記3次元構造を持つポリマーの分子量は好ましくは10~100000であり、より好ましくは100~10000である。各官能基のモノマーの有機基としては、メチル基を用いるのが好適であるが、付加反応型のシリコーン系樹脂の場合、アルケニル基を用いることが好適である。シリコーン系樹脂に対するMQレジンの含有量はシリコーン系樹脂の強度と粘着性を両立する観点から、好ましくは固形分換算で10~99質量%であり、より好ましくは20~80質量%である。本発明においては、粘着性を付与するシリコーンポリマーを得る際に、適宜、2官能基のモノマー(D単位)、3官能基のモノマー(T単位)を添加してもよく、他の官能基を有するモノマーやオリゴマーを添加してもよい。
【0091】
MQレジンはQ単位の縮合物の末端をM単位で封止した構造が好適に用いられる。Q単位に対するM単位のモル比は粘着性とシリコーン系樹脂の強度を両立する観点から0.4~1.2が好適であり、0.6~0.9がさらに好適である。
【0092】
シリコーンモノマーからシリコーンポリマー、シリコーン系樹脂を得る過程で添加剤を加えてもよい。添加剤としては例えば、補強剤(乾式シリカ、湿式シリカ等シリカ充填剤等)、分散剤、接着助剤(シランカップリング剤等)、接着促進剤(有機金属化合物等)、反応制御剤、増量剤(結晶性シリカ、炭酸カルシウム、タルク等)、耐熱向上剤(酸化鉄、酸化セリウム、酸化チタン等)、難燃剤(酸化チタン、カーボン等)、熱伝導性充填剤、導電剤、表面処理剤、顔料、染料、または希土類、チタン、ジルコン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル等の金属酸化物、水酸化物、炭酸塩、脂肪酸塩が挙げられる。
【0093】
シリカ充填剤としては例えば、公知の微粉末シリカを用いることができる。親水性の微粉末シリカであっても疎水性の微粉末シリカであってもよい。親水性の微粉末シリカとしては、例えば、沈降シリカ等の湿式シリカ、シリカキセロゲル、ヒュームドシリカ等の乾式シリカが挙げられる。疎水性の微粉末シリカとしては、例えば、親水性の微粉末シリカの表面を疎水化処理して得られる微粉末シリカが挙げられる。疎水化処理剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン等のオルガノシラザン;メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン等のハロゲン化シラン;該ハロゲン化シランのハロゲン原子がメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基で置換されたオルガノアルコ
キシシラン等が挙げられる。疎水化処理方法としては、例えば、親水性の微粉末シリカを疎水化処理剤により150~200℃、特に150~180℃で2~4時間程度加熱処理する方法が挙げられる。このようにして親水性の微粉末シリカの表面を予め疎水化処理して得た疎水性の微粉末シリカを本発明接着剤に配合してもよいし、また、本発明接着剤中に親水性の微粉末シリカとともに疎水化処理剤を配合することにより、本発明接着剤を調製する段階で該親水性の微粉末シリカの表面が疎水化処理されるようにしてもよい。
【0094】
シリカ充填剤の具体例としては、アエロジル(登録商標)50、130、200および300(商品名、日本アエロジル社製)、キャボシル(登録商標)MS-5およびMS-7(商品名、キャボット社製)、レオロジルQS-102および103(商品名、トクヤマ社製)、ニプシルLP(商品名、日本シリカ社製)等の親水性の微粉末シリカ;アエロジル(登録商標)R-812,R-812S、R-972およびR-974(商品名、デグッサ社製)、レオロジルMT-10(商品名、トクヤマ社製)、ニプシルSSシリーズ(商品名、日本シリカ社製)等の疎水性の微粉末シリカが挙げられる。
【0095】
微粉末シリカを用いる場合、配合量は、通常、固形分換算で1~50質量%である。前記配合量が、1質量%未満ではシリカ充填剤による強度付与効果が不充分となりやすく、50質量%を超えると、得られるシリコーン樹脂組成物は、著しく流動性に欠けたものとなりやすく、作業性が劣ったものとなりやすい。
【0096】
接着促進剤としては例えばチタンの有機酸塩で代表される有機チタン化合物を用いることができる。接着促進剤はシリコーン系樹脂組成物の硬化を更に促進し、その接着性を更に向上させるための触媒として用いることができる。接着促進剤は、一種単独で使用しても、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0097】
接着促進剤としては、例えば、チタンキレート化合物、アルコキシチタンまたはこれらの組み合わせが挙げられる。チタンキレート化合物の具体例としては、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセタト)チタン、ジブトキシビス(メチルアセトアセタト)チタン等が挙げられる。アルコキシチタンの具体例としては、テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等が挙げられる。アルコキシチタン中のアルコキシ基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
【0098】
接着促進剤の配合量は、固形分換算で0.01~10質量%が好適であり、0.1~5質量%がさらに好適である。該配合量が、前記範囲の下限未満であると、接着性向上効果が現れにくい場合があり、前記範囲の上限を超えると、得られる接着剤の表面硬化が速すぎる場合がある。
【0099】
シランカップリング剤は、ケイ素原子に結合したアルコキシ基と、金属や各種合成樹脂などの被着体と化学結合する反応基を1つの分子内に有する化合物であり、前記ケイ素原子に結合したアルコキシ基の代わりにアルケニル基や水素原子を有する化合物を用いてもよい。前記被着体と化学結合する反応基としては、エポキシ基やアクリル基を用いてもよい。
【0100】
シリコーン系樹脂を塗布する際には、塗布前の被塗布材にプライマーを塗布してもよい。前記プライマーとしては、縮合硬化型、付加硬化型等のシリコーン系樹脂を用いることができる。プライマーの塗工量としては0.1~1.2g/mが好適である。
【0101】
シリコーン系樹脂としては例えば、「SYLGRAD186」、「DOWSIL3-6512」、「SYLGRAD527」、「DOWSILX3-6211」、「SYLGRAD3-6636」、「DOWSIL SE1880」、「DOWSIL SE960」、「DOWSIL781 Acetoxy Silicone」、「DOW CORNING SE9187」、「DOWSIL Q1-4010」、「SYLGRAD 1-4128」、「DOWSIL 3140 RTV Coating」、「DOWSIL HC2100」、「SIL-OFF Q2-7785」、「シラシール3FW」、「シラシールDC738RTV」、「DC3145」、及び「DC3140」(以上、ダウコーニング社製)、「ELASTOSIL RT707W」、「ELASTOSIL EL4300」「ELASTOSIL M4400」、「ELASTOSIL M8012」、「SILRES BS CREME C」、「SILRES BS 1001」、「SILRES BS 290」、「ELASTSIL 912」、「ELASTSIL E43N」、「ELASTOSIL N9111」、「ELASTOSIL N199」、「SEMICOSIL 987GR」、「ELASTOSIL RT772」、「ELASTOSIL RT745」、「ELASTOSIL LR3003/05」、「ELASTOSIL LR3343/40」、「ELASTOSIL LR3370/40」、「ELASTOSIL LR3374/50BR」、「ELASTOSIL EL1301」、「ELASTOSIL EL 4406」、「ELASTOSIL EL3530」、「ELASTOSIL EL 7152」、「ELASTOSIL R401/10OH」「SILPUREN 21XXシリーズ」(旭化成ワッカーシリコーン社製)、「KE-3423」、「KE-347」、「KE-3479」、「KE―1830」、「KE-1820」、「KE-1056」、「KE-1800T」、「KE-66」、「KE-1031」、「KE-12」、「KE-1300T」、「SD4584PSA」、「KS-847T」、「KF-2005」、「KNS-3002」、「KR-100」、「KR-101-10」、「KR-130」、「KR-3600」、「KR-3704」、「KR-3700」、「KR―3701」、「X-40-3237」、「X-40-3291-1」、「X-40-3240」、「シーラント45」、「シーラントマスター300」、「シーラント72」、「KE-42」、「シーラント70」、「KE-931-U」、「KE-9511-U」、「KE-541-U」、「KE-153-U」、「KE-361-U」、「KE-1950-10」、「KEG-2000-40」、「KE-2019-40」、「KE-2090-50」、「KE-2096-60」(信越化学工業社製)等を用いることができる。シリコーン系樹脂にはさらに、触媒を添加してもよい。触媒としては、オクチル酸亜鉛、オクチル酸鉄、コバルト、錫などの有機酸塩、アミン系の触媒を用いることができる。また、有機錫化合物、有機チタン化合物、白金化合物も用いることができる。触媒としては、例えば、「CAT-PL-50T」(信越化学工業社製)、「NC-25」(東レ・ダウコーニング社製)を用いることができる。また、塗布の際には、トルエンやキシレン、もしくは、アルコール類等の溶剤を添加してもよい。プライマーとしては「プライマーAQ-1」「プライマーC」、「プライマーMT」、「プライマーT」、「プライマーD」、「プライマーA-10」、「プライマーR-3」、「プライマーA-20」(信越化学工業社製)等を用いることができる。
【0102】
気体透過性無孔層を形成する方法は、特に限定されず、リバースロールコーター、正回転ロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、ロッドコーター、スロットオリフィスコーター、エアドクタコーター、キスコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スプレーコーター、スピンコーター、押出コーター、ホットメルトコーター等を用いて基材に積層させることにより、気体透過性無孔層を製造できる。また、粉体コーティング、電着コーティング等の方法でも気体透過性無孔層を製造できる。基材を気体透過性無孔層の原料液に浸漬することでコーティングしてもよい。基材はシート状でも中空糸状でもよい。塗布の前工程において、プライマー塗布、コロナ処理等の前処理を行ってもよい。
【0103】
気体透過性無孔層21-2の目付量は、10g/m以上、500g/m以下であることが好ましく、20g/m以上200g/m以下であることがより好ましい。気体透過性無孔層21-2の目付量は、気体透過性無孔層21-2が積層される前の基材の目付量E(g/m)と、気体透過性無孔層が積層された後の気体透過性無孔層21-2と基材の目付量F(g/m)の差、D(g/m)として以下の関係式(式1)により求められる。
【0104】
[式1]
D=F-E
気体透過性無孔層21-2や基材の目付量はJIS L1913:2010一般不織布試験方法6.2単位面積当たりの質量で測定される値である。
【0105】
気体透過性無孔層21-2の厚みは、10μm以上、500μm以下であることが好ましく、20μm以上200μm以下であることがより好ましい。上記の気体透過性無孔層21-2の厚さはJIS L1913:2010一般不織布試験方法6.1厚さの測定方法で測定される値である。
【0106】
(微生物支持層21-3)
微生物支持層21-3は、その表面もしくは内部に微生物を担持する層であり、内部に微生物が生育可能な空間を有し、水中の有機物が通過可能である。微生物支持層21-3の素材としては、例えば、メッシュ、織布、不織布、発泡体、又は微多孔膜等の多孔性シートが挙げられる。多孔性シートの素材は、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、メチルセルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、パラ系及びメタ系アラミド、ポリアリレート、炭素繊維、ガラス繊維、アルミニウム繊維、スチール繊維、セラミック等が挙げられる。微生物付着性と加工性を考慮すると、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、炭素繊維が好ましい。
【0107】
微生物支持層21-3の目付量は2g/m以上、500g/m以下であることが好ましく、10g/m以上200g/m以下であることがより好ましい。微生物支持層21-3の目付量はJIS L1913:2010一般不織布試験方法6.2単位面積当たりの質量で測定される値である。微生物支持層21-3の目付量が2g/m以上であることにより、表面に凹凸が生じるため微生物支持層21-3に微生物が保持しやすくなるという効果を得ることができる。また、微生物支持層21-3の目付量が500g/m以下であることにより、微生物支持層21-3の内部に微生物が生育可能な空間が生じるため微生物が保持しやすくなり、前記空間により酸素を微生物に供給しやすくなるという効果を得ることができる。
【0108】
微生物支持層21-3の厚みは、5μm以上、2000μm以下であることが好ましく、20μm以上500μm以下であることがより好ましい。微生物支持層21-3の厚さはJIS L1913:2010一般不織布試験方法6.1厚さの測定方法で測定される値である。
【0109】
なお、基材21-1の表面処理によって微生物支持層21-3が形成されてもよい。このようにすれば、上記の表面処理で基材21-1表面の粗さと膜電位を上げられるので、微生物付着性が向上する。例えば上記の表面処理として、グリシジルメタクリレートをグラフト重合し、さらに、ジエチルアミン、もしくは、亜硫酸ナトリウムを反応させることが行われ得る。或いは上記の表面処理として、グリシジルメタクリレートをグラフト重合した後に、アンモニア、もしくは、エチルアミンを反応させることが行われてもよい。
【0110】
(気体供給体10の製造方法)
本実施形態の気体供給体10の製造方法は、図8に示すフローチャートに従って行われる。以下、図8を参照して、気体供給体10の製造方法を説明する。
【0111】
まず図8のステップS11において、気体送出層12を構成する段ボール等の部材が所定の位置へ配置される(配置ステップ)。
【0112】
次に図8のステップS12では、気体送出層12の表ライナ12bや裏ライナ12cに、それぞれ針材を用いて気体通過孔13としての貫通孔を複数形成する(孔形成ステップ)。
【0113】
上記の針材としては、例えば、複数の針が表面に取り付けられたロール(針材)や、1本の針が取り付けられて手動で気体通過孔13を形成可能な針材等を用いることができる。これらの針材を用いることで、気体送出層12が板材等によって覆われている場合でも、容易に必要な気体通過孔13を形成できる。なお上記のロールが使用される場合には、ロールと平面との間に気体送出層12を通すことで、気体送出層12に気体通過孔13を形成できる。上記の平面は、例えば、平板の表面や、針が取り付けられていない他のロールの表面である。
【0114】
なお、表面に針が並べられた板を気体送出層12の表面に押し付けることで気体通過孔13が形成されてもよく、また、カッターナイフ等の刃物を用いて気体通過孔13が形成されてもよい。
【0115】
次に図8のステップS13では、2枚の略四角形のシート積層体21,21を重ね合わせて、シート積層体21,21の周縁同士を熱融着で接合することで、シート積層体21,21からなる袋を形成する。形成された袋の内部が内部空間Bである。
【0116】
具体的には図9A、9Bに示すように、2つのロールR1,R2から繰り出されるシート積層体21,21を重ね合わせた状態で、シート積層体21,21の周縁の3辺同士が熱融着で接合されることで、熱融着された側部接着部21cが形成される。そして、側部接着部21cによって3方が封止された状態で、開口21bとなる部分においてシート積層体21,21が切断される(図9Aは、シート積層体21,21の斜視図であり、図9Bはシート積層体21,21の断面図である)。
【0117】
なお、シート積層体21から袋を形成する方法は、上記に限定されるものではなく、例えば、筒状に成形されたシート積層体21の一方の開口部のみを接着することで袋を形成してもよい。あるいは、1枚のシート積層体21を半分に折りたたんで、左右の端部を熱融着して袋状に形成してもよい。もしくは、インフレーション成形などで、シート積層体21からなる袋を成形してもよい。あるいは、中空糸状のシート積層体21を連続成形によって得ることもできる。例えば、基材21-1を連続的に気体透過性無孔層21-2の原料液に浸漬し、必要に応じて熱処理や冷却等で固定しシート積層体21を得てもよいし、中空形状の基材21-1上に連続的に気体透過性無孔層21-2の原料液を金型を利用して配置し、必要に応じて熱処理や冷却等で固定しシート積層体21を得てもよい。
【0118】
熱融着の温度としては、熱可塑性樹脂から形成される基材21-1の融点以上、熱分解温度以下が好ましい。
【0119】
また、シート積層体21を接着する方法は、上記の熱融着に限定されるものではなく、例えば、両面テープ、接着剤等を用いてシート積層体21が接着されてもよい。接着剤の材料としては、耐水性、防水性、耐薬品性、耐微生物分解性のうち少なくともひとつを有するものが好ましい。
【0120】
次に図8のステップS14では、図10に示すように、シート積層体21からなる袋の開口21bから、気体通過孔13が形成された気体送出層12を袋内部21dに挿入する。
【0121】
(被覆ステップ)。
なお、気体送出層12を開口21bから挿入する方向としては、図10の矢印の向きに沿って挿入される。
【0122】
送気部14を袋内部21dに挿入する。なお、送気部14もしくは送気部14に接続される配管部材を気体送出層12に接続する場合、気体通過孔13形成後に、あらかじめ送気部14もしくは送気部14に接続される配管部材を接続した気体送出層12を、袋内部21dに挿入する。
【0123】
次に図8のステップS15では、開口21bを接着し、気体供給体10の内部が、気体供給体10の外部に対して、送気部14を除いて塞がれた状態とする。(封止ステップ)
【0124】
具体的には、開口21bにおいて2枚の重なっているシート積層体21,21熱融着で接合する。送気部14の外周面とシート積層体21との接合は、接着剤等を用いる方法、熱融着、高周波ウェルダー、及び超音波ウェルダー等を用いる方法、或いは、機械的に挟み込む方法によって実現され得る。例えば、送気部14の外周面とシート積層体21とを接合する方法は、パウチ袋や、水処理用膜モジュールに用いられる、融着、接着や螺着、嵌着等の方法を適用できる。
【0125】
次に図8のステップS16では、剪断加工や打ち抜き加工などにより、図4Cに示すようにシート積層体21の上部に排気口を形成する。この際、排気口15の形状は、円形が好ましいが、四角形や六角形などの多角形でもよく、排気口15の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。(排気口形成ステップ)
【0126】
次に図8のステップS17では、重ね合わせられた2枚のシート積層体21,21を接着する方法で、外部水侵入防止部16を形成する。図4A~4C、6に示すように排気口15の下部および側部を囲い、かつシート積層体21の上辺接着部21eおよび側部接着部21cには連結しない形状で構築する。
【0127】
外部水侵入防止部16を形成するための、2枚のシート積層体21,21の接着方法としては、接着剤等を用いる方法、熱融着、高周波ウェルダー、及び超音波ウェルダー等を用いる方法が用いられる。
【0128】
また、図8のステップS11~S17は適宜に順番の変更が可能である。たとえば、ステップS16の排気口15を形成する前に、ステップS17の外部水侵入防止部16の形成を行ってもよい。
【0129】
<第2の廃水処理装置>
本発明の一実施形態の廃水処理システムは、第2の廃水処理装置を更に備え、
前記第2の廃水処理装置は、
廃水を貯留する第2の処理槽と、
前記第2の処理槽に貯留された前記廃水の液面に交差し、一部が前記廃水に浸漬し、別の一部が前記液面上の気相に露出して配置される基板であって、前記基板に交差する軸線の周りに回転し、且つ、微生物を表面に担持する前記基板と、
を備える、或いは、
前記第2の廃水処理装置は、
前記廃水をろ過するためのろ過膜、
を備える。
【0130】
前記第2の廃水処理装置は、ブロアによる曝気を必要とせずに廃水を浄化する。前記第2の廃水処理装置は、ブロアによる曝気を必要としないため、活性汚泥反応槽等のブロアによる曝気を行う廃水処理装置と異なり、懸濁物質(SS)(すなわち汚泥)の発生が少なく、かつ、排出される処理水中のSS濃度が低いため好ましい。
【0131】
第2の廃水処理装置の具体的な実施形態として、第2の廃水処理装置201及び202を以下に説明する。
【0132】
(第2の廃水処理装置201)
図11に外観の斜視図を示す第2の廃水処理装置201は、本発明の一実施形態の廃水処理システムに用いることができる、ブロアによる曝気を必要とせずに廃水を浄化する第2の廃水処理装置の一実施形態である。図12及び図13に、本発明の一実施形態の廃水処理システム500に含まれる第2の廃水処理装置201の鉛直断面模式図を示す。
【0133】
第2の廃水処理装置201は、廃水Wを貯留する第2の処理槽211と、第2の処理槽211に貯留された廃水Wの液面W1に交差し、一部が廃水Wに浸漬し、別の一部が液面W1上の気相Gに露出して配置される基板212とを備える。基板212は、基板212に交差する軸線Lの周りに回転し、微生物を表面212aに担持する。第2の廃水処理装置201は、微生物を担持する基板212の回転に伴い、廃水Wを撹拌するとともに、気相Gに含まれる空気中の酸素を廃水に供給する。また、基板212上の微生物は、基板212の回転に伴い、気相Gに含まれる空気及び廃水Wに交互に接触することで活性化され、廃水W中の汚物を吸収して分解を行う。このため第2の廃水処理装置201は、廃水の撹拌と酸素供給を目的としたブロアによる曝気を必要としない。
【0134】
第2の処理槽211は、廃水Wを貯留できるものであればよく、コンクリート、金属、樹脂等の素材で構成することができる。第2の処理槽211及び基板212の上部を覆うように、第2の処理槽211に着脱可能に設けられた蓋体213が設けられていてもよい。蓋体213もまた、コンクリート、金属、樹脂等の素材で構成することができる。
【0135】
基板212は、図示するように円形基板、すなわち円板体、であることが好ましいが、正方形、五角形以上の多角形等の任意の形状であってもよい。軸線Lは、好ましくは、基板212の平面視形状における重心位置(基板212が円板体である場合は円の中心)に垂直に交差する。第2の廃水処理装置201は、図示するように複数の基板212を備えることが好ましい。
【0136】
基板212は、高密度ポリエチレン、ポリスチレン等の樹脂材料、化学繊維、スチールウール等の繊維材料等の任意の材料から構成することができる。これらの材料を板状に成形して基板212とすることができる。図示する例では、複数の基板212は、軸線Lが一致し且つ水平方向に向くように配置され、その中心に、軸線Lに沿って回転軸214が嵌入固定されて連結されている。回転軸214により連結された複数の基板212は、第2の処理槽211の長手方向に沿って配置されている。回転軸214の両端部は、第2の処理槽211の両端部で軸支され、一端側が電磁モータ215の出力軸と連結されている。
【0137】
第2の処理槽211の一側面に廃水(原水又は他の廃水処理装置による処理を経た廃水)の送水管と接続されるインレットが設けられ、他側面には処理された廃水を排出するアウトレットが設けられている。第2の処理槽211には、廃水Wが、第2の処理槽211の深さの半分程度まで貯留される。
【0138】
第2の処理槽211内では、基板212は、基板212の下端から、基板212の鉛直方向の幅の30%~70%、好ましくは約40%、の高さの位置までが、廃水Wに浸漬され、前記位置より上部が気相G中に露出して配置される。基板212の表面212aやその内部には、汚物、苔、藻または泥が付着するとともに、複数種類の微生物が付着し生息している。これにより基板212は微生物を担持する。第2の処理槽211に貯留された廃水W中にも微生物は生息している。基板212に担持される微生物としては、好気性微生物及び嫌気性微生物から選択される1以上が挙げられる。前記微生物としては、細菌、菌類、微細藻類、原生動物、微小後生動物などが挙げられる。また、原生動物としては、鞭毛虫類、肉質虫類および繊毛虫類などが挙げられ。微小後生動物としては、輪虫類、線虫類、貧毛類などが挙げられる。
【0139】
回転軸214により連結された複数の基板212が、電磁モータ215により低速度で回転駆動されると、個々の基板212に付着繁殖した微生物が汚水と接触して、廃水に含まれる有機物などの汚物が生化学的に分解される。これらの微生物は、基板212の回転に伴って、気相Gに含まれる空気中から酸素を吸収するとともに、廃水中から汚物などの汚濁物質を吸収して分解する。これによって廃水Wが浄化される。
【0140】
(第2の廃水処理装置201)
本発明の一実施形態の廃水処理システムに用いることができる、ブロアによる曝気を必要とせずに廃水を浄化する第2の廃水処理装置の別の一実施形態として、第2の廃水処理装置202が例示できる。図14には、本発明の一実施形態の廃水処理システム500に含まれる第2の廃水処理装置202の鉛直断面模式図を示す。
【0141】
第2の廃水処理装置202は、廃水をろ過するためのろ過膜221を備える膜ろ過装置である。第2の廃水処理装置202において、ろ過膜221は必要に応じて筐体222に収容される。
【0142】
ろ過膜221は、廃水処理に用いられるろ過膜を利用することができ、例えば多孔質膜が好ましい。ろ過膜221の形状は限定されず、中空糸膜、平膜等の各種形状のろ過膜を適宜使用することができる。ろ過膜221が中空糸膜である場合、第2の廃水処理装置202は膜モジュールとも呼ばれる。
【0143】
ろ過膜221を備える第2の廃水処理装置202において、ろ過の駆動力は、一次側からの加圧であっても、二次側からの吸引であっても、加圧と吸引の組み合わせであってもよいし、重力、水頭差又はサイフォン現象を利用したものであってもよい。図14に示す例では、送水ポンプ530による一次側からの加圧と、送水ポンプ531による二次側からの吸引によりろ過を駆動する。
【0144】
ろ過膜221としては、限外ろ過膜、精密ろ過膜等の水処理膜として用いられる分画能を有するものが使用できる。ろ過膜221は1nm~0.1μmの孔を有する樹脂膜であることが好ましい。このような微細な孔によって、水処理膜としての機能を果たすとともに、その密度等によって、例えば、限外ろ過膜又は精密ろ過膜の分画性を調整することができる。一般に、限外ろ過膜は孔の大きさが2~200nm程度の膜であり、精密ろ過膜は50nm~10μm程度の膜である。
【0145】
ろ過膜221を構成する樹脂としては、塩化ビニル系樹脂、塩素化塩化ビニル系樹脂、ポリスルホン(PS)系樹脂、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)系樹脂、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン系樹脂、酢酸セルロース(CA)系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂、ポリイミド(PI)系樹脂等の各種樹脂が例示できる。
【0146】
第2の廃水処理装置202では、供給される廃水を、ろ過膜221を通過した処理水と、ろ過膜221を通過しないろ過残さとに分画する。ろ過残さは必要に応じて更に処理することができる。
【0147】
<第3の廃水処理装置>
本発明の一実施形態の廃水処理システムは、第1の廃水処理装置及び第2の廃水処理装置に加えて他の1以上の第3の廃水処理装置を更に備えてもよい。第3の廃水処理装置は、第1の廃水処理装置及び第2の廃水処理装置に直列接続することができる。
【0148】
第3の廃水処理装置としては、沈殿槽及び消毒槽が例示できる。
【0149】
図12及び図13には、第1の廃水処理装置100及び第2の廃水処理装置201に直列に接続された沈殿槽310及び消毒槽320を備える、本発明の一実施形態の廃水処理システム500の例を示す。
【0150】
沈殿槽310は、廃水Wを貯留し、廃水W中の沈降性成分を沈殿させる。沈殿槽310には、好ましくは、沈降性成分を凝集させて沈殿を促進する凝集剤を供給するための、凝集剤供給ユニット311が接続されている。凝集剤としてはポリ塩化アルミニウム等の無機凝集剤、ポリアクリルアミド系の高分子凝集剤等が使用できる。図示しないが、沈殿槽310には撹拌部や温度調節部が更に付加されていてもよい。
【0151】
消毒槽320は、廃水Wを貯留し消毒用薬剤により消毒する。消毒槽320には、好ましくは、消毒用薬剤を供給するための、消毒用薬剤ユニット321が接続されている。消毒用薬剤としては次亜塩素酸カルシウム等の塩素剤が使用できる。図示しないが、消毒槽320には撹拌部や温度調節部が更に付加されていてもよい。
【0152】
<廃水処理システム>
本発明の一実施形態の廃水処理システムは、第1の廃水処理装置及び第2の廃水処理装置を備える。前記第1の廃水処理装置及び前記第2の廃水処理装置は、一方による処理を経た前記廃水を、他方が更に処理するように接続されている。前記第1の廃水処理装置は、いわゆるMABRであり、懸濁物質(SS)の発生及び流出が少ない。前記第2の廃水処理装置もまた、ブロアによる曝気が必要ないため、SSの流出及び発生が少ない。このため、本実施形態の廃水処理システムによれば、廃水処理時のSSの流出及び発生を抑制することができる。また、本実施形態の廃水処理システムでは沈殿槽を必ずしも必要としないため、既存のシステムに比べて設置スペースを小さくすることが可能である。
【0153】
本発明の一実施形態の廃水処理システムは、第1の廃水処理装置及び第2の廃水処理装置をそれぞれ少なくとも1つ備えていればよく、第1の廃水処理装置及び第2の廃水処理装置の一方又は両方を複数備えていてもよい。
【0154】
本実施形態の廃水処理システムの好ましい態様について図12図14を参照して説明する。
【0155】
図12に示す廃水処理システム500)
図12に示す廃水処理システム500は、上述の第1の廃水処理装置100と、上述の第2の廃水処理装置201とを備え、第1の廃水処理装置100による処理を経た廃水を、第2の廃水処理装置201が更に処理するように直列に接続されている。
【0156】
第1の廃水処理装置100(MABR)は、ブロアによる曝気が不要であるためSSの発生及び流出が少ない。また、気体供給体10の外側表面A上で微生物の増殖が効率的に生じるため処理効率が高く、懸濁物質の発生が少ない。ただし第1の廃水処理装置100(MABR)のみでは、極低濃度の生物化学的酸素消費量(BOD)の十分な除去には適さない場合がある。
【0157】
第2の廃水処理装置201では、基板212の表面212aに担持された微生物が、基板212の回転により気相Gに露出して酸素を直接取り込むことができるため、BODが低い廃水であっても効率的にBODを下げることができる。また第2の廃水処理装置201は、ブロアによる曝気を行わないためSSの発生と流出が少ないうえ、発生したSSが回転する基板212の表面212aの微生物に取り込まれることでSSがさらに抑制される。
【0158】
このため、図12に示す廃水処理システム500は、SSの発生と流出が少ないことに加えて、前段の第1の廃水処理装置100(MABR)によりBODが低減した廃水を、後段の第2の廃水処理装置201により処理してBODを更に低減することが可能である。すなわち図12に示す廃水処理システム500は、SSの発生と流出の抑制と、高いBOD除去効率を両立することが可能である。
【0159】
図12に示す廃水処理システム500は更に、第3の廃水処理装置として、沈殿槽310及び消毒槽320を備える。
【0160】
図12に示す廃水処理システム500による廃水の処理の流れの概略は次の通りである。
【0161】
廃水の原水が送水管501を介して送水ポンプ509により第1の廃水処理装置100の第1の処理槽51に、流入口51aから連続的に供給され貯留される。第1の廃水処理装置100の気体供給体10の内部に気体供給源53から酸素を含む気体が供給され、気体供給体10のシート積層体21を透過して廃水Wに供給される。気体供給体10の外側に微生物が担持され、前記微生物が廃水W中の有機物を分解する。このとき必要に応じて、第1の処理槽51の廃水Wは、ブロア60による空気により撹拌される。第1の処理槽51内の廃水Wの滞留時間は10時間以内とすることが好ましく、1.5時間以上、8時間以内とすることが更に好ましい。
【0162】
第1の廃水処理装置100で処理された廃水Wは、流出口51bから、好ましくは越水により、送水管502を介して第2の廃水処理装置201の第2の処理槽211に連続的に供給され貯留される。第2の廃水処理装置201において、回転軸214により連結された複数の基板212が、電磁モータ215により低速度で回転駆動されることで、個々の基板212に付着繁殖した微生物が汚水と接触して、廃水に含まれる有機物などの汚物が生化学的に分解される。第2の処理槽211内の廃水Wの滞留時間は10時間以内とすることが好ましく、1.5時間以上、8時間以内とすることが更に好ましい。
【0163】
第2の廃水処理装置201で処理された廃水Wは、送水管503を介して送水ポンプ510により沈殿槽310に供給され貯留される。沈殿槽310では、廃水Wに凝集剤供給ユニット311から凝集剤が供給され、槽内で沈殿が生成する。
【0164】
沈殿槽310の上清液は、送水管504を介して消毒槽320に供給され貯留される。消毒槽320では、消毒用薬剤ユニット321から消毒用薬剤が供給され前記上清液と混合されて消毒される。消毒された処理水は送水管505を通じて排出される。
【0165】
図13に示す廃水処理システム500)
図13に示す廃水処理システム500は、上述の第1の廃水処理装置100と、上述の第2の廃水処理装置201とを備え、第2の廃水処理装置201による処理を経た廃水を、第1の廃水処理装置100が更に処理するように直列に接続されている。
【0166】
第2の廃水処理装置201では、基板212の表面212aに担持された微生物が、基板212の回転により気相Gに露出して酸素を直接取り込むことができるため、BODが高い廃水も効率的にBODを下げることができる。また第2の廃水処理装置201は、ブロアによる曝気を行わないため懸濁物質(SS)の発生と流出が少ないうえ、発生したSSが回転する基板212の表面212aの微生物に取り込まれることでSSがさらに抑制される。
【0167】
第1の廃水処理装置100(MABR)は、SSの発生及び流出が少なく、処理効率が高い。また、第2の廃水処理装置201の後に第1の廃水処理装置100による処理を行うことで、得られる処理水の水質を高めることができる。さらに、第2の廃水処理装置201による処理を経た廃水中に含まれる微生物が、第1の廃水処理装置100での微生物膜としても活用できるため、馴養期間を短くすることが可能である。
【0168】
すなわち、図13に示す廃水処理システム500によれば、SSの発生と流出が少なく、効率的に水質の高い処理水を生成することができる。
【0169】
図13に示す廃水処理システム500は更に、第3の廃水処理装置として、沈殿槽310及び消毒槽320を備える。
【0170】
図13に示す廃水処理システム500による廃水の処理の流れの概略は次の通りである。
【0171】
廃水の原水が、送水管513を介して送水ポンプ521により第2の廃水処理装置201の第2の処理槽211に連続的に供給され貯留される。第2の廃水処理装置201において、回転軸214により連結された複数の基板212が、電磁モータ215により低速度で回転駆動されることで、個々の基板212に付着繁殖した微生物が汚水と接触して、廃水に含まれる有機物などの汚物が生化学的に分解される。第2の処理槽211内の廃水Wの滞留時間は10時間以内とすることが好ましく、1.5時間以上、8時間以内とすることが更に好ましい。
第2の廃水処理装置201で処理された廃水Wは、送水管514を介して送水ポンプ522により第1の廃水処理装置100の第1の処理槽51に、流入口51aから連続的に供給され貯留される。第1の廃水処理装置100の気体供給体10の内部に気体供給源53から酸素を含む気体が供給され、気体供給体10のシート積層体21を透過して廃水Wに供給される。気体供給体10の外側に微生物が担持され、当該微生物が廃水W中の有機物を分解する。このとき必要に応じて、第1の処理槽51の廃水Wは、ブロア60による空気により撹拌される。第1の処理槽51内の廃水Wの滞留時間は10時間以内とすることが好ましく、1.5時間以上、8時間以内とすることが更に好ましい。
【0172】
第1の廃水処理装置100で処理された廃水Wは、流出口51bから送水管515を通じて、好ましくは越水により、沈殿槽310に供給され貯留される。沈殿槽310では、廃水Wに凝集剤供給ユニット311から凝集剤が供給され、槽内で沈殿が生成する。
【0173】
沈殿槽310の上清液は、送水管516を介して消毒槽320に供給され貯留される。消毒槽320では、消毒用薬剤ユニット321から消毒用薬剤が供給され前記上清液と混合されて消毒される。消毒された処理水は送水管517を通じて排出される。
【0174】
図14に示す廃水処理システム500)
図14に示す廃水処理システム500は、上述の第1の廃水処理装置100(MABR)と、上述の第2の廃水処理装置202(膜ろ過装置)とを備え、第1の廃水処理装置100による処理を経た廃水を、第2の廃水処理装置202が更に処理するように直列に接続されている。
【0175】
第1の廃水処理装置100(MABR)は、ブロアによる曝気が不要であるため懸濁物質(SS)の発生及び流出が少ない。また、気体供給体10の外側表面A上で微生物の増殖が効率的に生じるため処理効率が高く、SSの発生が少ない。
【0176】
第2の廃水処理装置202(膜ろ過装置)は、ブロアによる曝気が不要であり、かつ、固形分が除去されるため、SS濃度の低い処理水を排出することができる。
【0177】
このため図14に示す廃水処理システム500によれば、廃水を処理して、有機物が分解されSS濃度が低減された処理水を排出することができる。
【0178】
図14に示す廃水処理システム500による廃水の処理の流れの概略は次の通りである。
【0179】
廃水の原水が送水管525を介して送水ポンプ529により第1の廃水処理装置100の第1の処理槽51に、流入口51aから連続的に供給され貯留される。第1の廃水処理装置100の気体供給体10の内部に気体供給源53から酸素を含む気体が供給され、気体供給体10のシート積層体21を透過して廃水Wに供給される。気体供給体10の外側に微生物が担持され、当該微生物が廃水W中の有機物を分解する。このとき必要に応じて、第1の処理槽51の廃水Wは、ブロア60による空気により撹拌される。第1の処理槽51内の廃水Wの滞留時間は10時間以内とすることが好ましく、1.5時間以上、8時間以内とすることが更に好ましい。
【0180】
第1の廃水処理装置100で処理された廃水Wは、流出口51bから送水管526を通じて、送水ポンプ530により第2の廃水処理装置202に供給され、ろ過膜221に向けて加圧される。同時に廃水Wは送水管527の側から送水ポンプ531により吸引される。これにより廃水Wのうち、ろ過膜221を通過できる成分が、処理水として送水管527を通じて排出される。一方で、廃水Wのうち、ろ過膜221を通過できない成分はろ過残さとして送水管528を通じて回収される。
【実施例0181】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例により限定されるものではない。
【0182】
(実施例1)
図1~3に示す、第1の処理槽51及び複数の気体供給体10を備える第1の廃水処理装置100(MABR)と、図11に示す、第2の処理槽211及び複数の円形基板212とを備える第2の廃水処理装置201(回転円板)とを、廃水が先に第1の廃水処理装置100により処理され、次に第2の廃水処理装置201により処理されるように直列接続した、実施例1の廃水処理システムを構築した。
【0183】
第1の処理槽51として、積水アクアシステム株式会社製の容積4.5mのパネルタンクを用いた。複数の気体供給体10の、廃水に浸漬された部分の膜表面積は138mであった。第2の廃水処理装置201として、積水アクアシステム株式会社製の装置を用いた。第1の処理槽51の下部には図12~13に示すようにブロア60が設置され、槽内を均一に保つため曝気強度1m/mにて間欠的に空気を供給した。
【0184】
廃水として、純水中の80%以上の界面活性剤が含有されるものを用いた。廃水中のBOD負荷は10kg-BOD/日と安定していた。廃水を、ポンプを用いて一日当たりの水量が一定量なるように、30日間連続的に実施例1の廃水処理システムに供給し処理した。
【0185】
(実施例2)
廃水が先に第2の廃水処理装置201(回転円板)により処理され、次に第1の廃水処理装置100(MABR)により処理されるように、第1の廃水処理装置100と第2の廃水処理装置201とを直列接続したことを除いて、実施例1の廃水処理システムと同様に、実施例2の廃水処理システムを構築した。実施例2の廃水処理システムを用いて、実施例1と同じ条件で、30日間、廃水を処理した。
【0186】
(比較例1)
活性汚泥法による廃水処理を行う2つの処理水槽を直列接続して比較例1の廃水処理システムを構築した。この比較例1の廃水処理システムを用い、その前段側の処理水槽に、廃水を、BOD負荷が10kg-BOD/日となるように連続的にポンプにより供給したこと以外は、実施例1と同じ条件で、30日間、廃水を処理した。
【0187】
(比較例2)
第1の処理槽51として、容積45Lのアクリル製水槽を用い、複数の気体供給体10の、廃水に浸漬された部分の膜表面積を13.8mとした、図1~3に示す第1の廃水処理装置100(MABR)を2台用意し、それらを直列接続して、比較例2の廃水処理システムを構築した。この比較例2の廃水処理システムに、実施例1と同じ廃水を、BOD負荷が10kg-BOD/日となるように、30日間、連続的にポンプにより供給したこと以外は、実施例1と同じ条件で廃水を処理した。
【0188】
(比較例3)
実施例1で用いた第2の廃水処理装置201(積水アクアシステム株式会社製)(回転円板)を2台用意し、それらを直列接続して、比較例3の廃水処理システムを構築した。この比較例3の廃水処理システムに、実施例1と同じ廃水を、実施例1と同じ水量となるように、30日間、連続的にポンプにより供給し処理した。
【0189】
(発生汚泥測定方法)
JIS K0102(工場排水試験方法)に規定される懸濁物質の測定方法に従い、各実施例比較例の廃水処理システムに供給する廃水の原水、1段目の装置による処理(「前段」と称する)終了時の処理水、及び、2段目の装置による処理(「後段」と称する)終了時の処理水の懸濁物質濃度(SS濃度)をそれぞれ測定した。各段階の試料のSS濃度の測定は、通水開始から終了まで、7日間に1回行い、平均値を求めた。前段終了時の処理水のSS濃度及び後段終了時の処理水のSS濃度を、それぞれ、前段発生汚泥量及び後段発生汚泥量とした。
【0190】
比較例1の廃水処理システムでの前段発生汚泥量及び後段発生汚泥量をそれぞれ100%とした場合の、実施例1及び2、比較例2及び3の廃水処理システムでの前段発生汚泥量及び後段発生汚泥量の割合をそれぞれ、前段及び後段の「発生汚泥量(%)」とした。
【0191】
(BOD測定濃度)
JIS K0102(工場排水試験方法)に規定される生物化学的酸素消費量(BOD)の測定方法に従い、各実施例比較例の廃水処理システムに供給する廃水の原水、前段終了時の処理水、及び、後段終了時の処理水のBODをそれぞれ測定した。各段階の試料のBODの測定は、通水開始から終了まで、7日間に1回行い、平均値を求めた。各実施例比較例の廃水処理システムを用いた廃水処理において、前段終了時の処理水のBOD及び後段終了時の処理水のBODの、原水のBODに対する割合を、それぞれ処理水BOD濃度(%)として求めた。
【0192】
【表1】
【0193】
活性汚泥法による処理を2段階行う比較例1の廃水処理システムでは、BODを十分に低減できたが、多量の汚泥(SS)を発生した。
【0194】
これに対し、第1の処理槽51及び複数の気体供給体10を備える第1の廃水処理装置100(MABR)と、第2の処理槽211及び複数の円形基板212とを備える第2の廃水処理装置201(回転円板)とを直列接続した実施例1及び2の廃水処理システムは、BODを比較例1の廃水処理システムと同程度又はそれ以上に効率的に低減することが可能であった。しかも、汚泥(SS)の発生を比較例1の廃水処理システムでの汚泥発生量の10%にまで抑制することができた。特に、第1の廃水処理装置100(MABR)による処理を先に行い、第2の廃水処理装置201(回転円板)による処理を後に行う実施例1の廃水処理システムは、比較例1の廃水処理システムよりもBODを低減することができた。
【0195】
第1の廃水処理装置100(MABR)による処理を2段階で行う比較例2の廃水処理システムは、BODを低減することができるが、実施例1及び2の廃水処理システムほど顕著に汚泥(SS)の発生を抑制することはできなかった。
【0196】
第2の廃水処理装置201(回転円板)による処理を2段階で行う比較例3の廃水処理システムは、BODを実施例1と同程度に低減することはできるが、汚泥(SS)の発生を抑制する性能は、実施例1、実施例2及び比較例2の廃水処理システムと比べて劣っていた。
【0197】
以上、本開示の複数の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
【符号の説明】
【0198】
10 :気体供給体
21 :シート積層体
21-1 :基材
21-2 :気体透過性無孔層
21-3 :微生物支持層
51 :第1の処理槽
100 :第1の廃水処理装置
201,202 :第2の廃水処理装置
211 :第2の処理槽
212 :基板
212a :基板の表面
221 :ろ過膜
310 :沈殿槽
320 :消毒槽
500 :廃水処理システム
A :外側表面
B :内部空間
G :気相
L :軸線
W :廃水
W1 :液面
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14