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  • 特開-不思議歯車機構及び減速機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173083
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】不思議歯車機構及び減速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/46 20060101AFI20241205BHJP
   F16H 55/06 20060101ALI20241205BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20241205BHJP
   C08K 7/06 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F16H1/46
F16H55/06
C08L77/00
C08K7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091209
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】堀 有加里
【テーマコード(参考)】
3J027
3J030
4J002
【Fターム(参考)】
3J027FA36
3J027FA37
3J027FB32
3J027GC14
3J027GC24
3J027GD04
3J027GD07
3J027GD12
3J027GE01
3J027GE05
3J027GE11
3J027GE14
3J027GE21
3J030BC01
3J030CA10
4J002BN032
4J002CB001
4J002CL011
4J002CL031
4J002DA016
4J002FA046
4J002FD016
4J002GM00
4J002GM02
(57)【要約】
【課題】軽量化が図られ、耐久性にも優れた、不思議歯車機構及び減速機を提供することを目的とする。
【解決手段】上記目的を達成するべく、本発明は、外周面に歯を持ち、動力を入力する太陽歯車10と、前記太陽歯車と外接して噛み合う歯を外周面に持ち、前記太陽歯車の周りを回りながら、動力を可道内歯車へと伝達する2つ以上(図1では3つ)の遊星歯車20と、前記遊星歯車20を支持するキャリア21と、前記遊星歯車20と外接して噛み合う歯を内周面に持ち、前記遊星歯車から伝達された動力を外部へと伝達する筒状の可動内歯車30と、前記遊星歯車と外接して噛み合う歯を内周面に持ち、回転しない筒状の固定内歯車40と、を備え、前記遊星歯車20と、前記太陽歯車10、前記可動内歯車30及び前記固定内歯車40とが、それぞれ異なる材料から構成されることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に歯を持ち、動力を入力する太陽歯車と、
前記太陽歯車と外接して噛み合う歯を外周面に持ち、前記太陽歯車の周りを回りながら、動力を可道内歯車へと伝達する2つ以上の遊星歯車と、
前記遊星歯車を支持するキャリアと、
前記遊星歯車と外接して噛み合う歯を内周面に持ち、前記遊星歯車から伝達された動力を外部へと伝達する筒状の可動内歯車と、
前記遊星歯車と外接して噛み合う歯を内周面に持ち、回転しない筒状の固定内歯車と、
を備えた不思議歯車機構であって、
前記遊星歯車と、前記太陽歯車、前記可動内歯車及び前記固定内歯車とが、それぞれ異なる材料から構成されることを特徴とする、不思議歯車機構。
【請求項2】
前記太陽歯車、前記遊星歯車、前記可動内歯車及び前記固定内歯車のうちの少なくとも1つが、ポリアミド樹脂組成物から構成されることを特徴とする、請求項1に記載の不思議歯車機構。
【請求項3】
前記ポリアミド樹脂組成物が、ポリアミド66及び炭素繊維を含むことを特徴とする、請求項2に記載の不思議歯車機構。
【請求項4】
前記ポリアミド樹脂組成物が、摺動化剤を含むことを特徴とする、請求項3に記載の不思議歯車機構。
【請求項5】
前記ポリアミド樹脂組成物が、半芳香族ポリアミドを含むことを特徴とする、請求項2に記載の不思議歯車機構。
【請求項6】
前記ポリアミド樹脂組成物が、炭素繊維及び摺動化剤のうちの少なくとも一種を含むことを特徴とする、請求項5に記載の不思議歯車機構。
【請求項7】
前記太陽歯車、前記遊星歯車、前記可動内歯車及び前記固定内歯車のうちの少なくとも1つが、ポリアセタール樹脂組成物から構成されることを特徴とする、請求項1に記載の不思議歯車機構。
【請求項8】
少なくとも前記太陽歯車が、前記ポリアミド樹脂組成物から構成されることを特徴とする、請求項2に記載の不思議歯車機構。
【請求項9】
前記太陽歯車、前記遊星歯車、前記可動内歯車及び前記固定内歯車が、いずれも樹脂組成物から構成されることを特徴とする、請求項1に記載の不思議歯車機構。
【請求項10】
前記太陽歯車、前記可動内歯車及び前記固定内歯車が、いずれもポリアミド樹脂組成物から構成され、前記遊星歯車が、ポリアセタール樹脂組成物から構成されることを特徴とする、請求項1に記載の不思議歯車機構。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の不思議歯車機構を含むことを特徴とする、減速機。
【請求項12】
ロボットに使用されることを特徴とする、請求項11に記載の減速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量化が図られ、耐久性にも優れた、不思議歯車機構及び減速機に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽歯車を入力とし、遊星歯車を介して歯数の異なる内歯を有する固定歯車と可動歯車とに噛合わせ、その可動歯車軸の回転を出力とする減速機構は、不思議歯車機構として知られている。
【0003】
近年、協働ロボット分野の発展に伴い、減速機の小型化軽量化需要が高まっており、減速機部品についても、小型化及び軽量化が求められている。その中で、上述した不思議歯車機構は高い減速率を有することから、減速機の小型化に適した機構であるといえる。
また、減速機の構成材料を樹脂とすることにより、従来の金属製部品から成る減速機よりも高精度且つ軽量化させる技術も知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2020/116370号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の中で挙げられているような樹脂化された歯車部品は、樹脂の種類によっては、強度や耐摩耗等の耐久性の面で金属部品に劣り、歯車機構の強度と摺動性とは、トレードオフ関係にあった。
特に、不思議歯車機構については、高トルク下で長時間運転に供されることも多く、軽量化だけでなく、高い耐久性についても実現できる技術の開発が望まれている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、軽量化が図られ、耐久性にも優れた、不思議歯車機構及び減速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、外周面に歯を持ち、動力を入力する太陽歯車と、前記太陽歯車と外接して噛み合う歯を外周面に持ち、前記太陽歯車の周りを回りながら、動力を可道内歯車へと伝達する2つ以上の遊星歯車と、前記遊星歯車を支持するキャリアと、前記遊星歯車と外接して噛み合う歯を内周面に持ち、前記遊星歯車から伝達された動力を外部へと伝達する筒状の可動内歯車と、前記遊星歯車と外接して噛み合う歯を内周面に持ち、回転しない筒状の固定内歯車と、を備えた不思議歯車機構について、上記課題を解決するべく検討を行った結果、接触する歯車同士、より具体的には、前記遊星歯車と、前記太陽歯車、前記可動内歯車及び前記固定内歯車とを、それぞれ異なる材料から構成することによって、小型化及び軽量化だけでなく、優れた強度や耐摩耗性を実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、以上の知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下の通りである。
1.外周面に歯を持ち、動力を入力する太陽歯車と、
前記太陽歯車と外接して噛み合う歯を外周面に持ち、前記太陽歯車の周りを回りながら、動力を可道内歯車へと伝達する2つ以上の遊星歯車と、
前記遊星歯車を支持するキャリアと、
前記遊星歯車と外接して噛み合う歯を内周面に持ち、前記遊星歯車から伝達された動力を外部へと伝達する筒状の可動内歯車と、
前記遊星歯車と外接して噛み合う歯を内周面に持ち、回転しない筒状の固定内歯車と、
を備えた不思議歯車機構であって、
前記遊星歯車と、前記太陽歯車、前記可動内歯車及び前記固定内歯車とが、それぞれ異なる材料から構成されることを特徴とする、不思議歯車機構。
2.前記太陽歯車、前記遊星歯車、前記可動内歯車及び前記固定内歯車のうちの少なくとも1つが、ポリアミド樹脂組成物から構成されることを特徴とする、上記1に記載の不思議歯車機構。
3.前記ポリアミド樹脂組成物が、ポリアミド66及び炭素繊維を含むことを特徴とする、上記2に記載の不思議歯車機構。
4.前記ポリアミド樹脂組成物が、摺動化剤を含むことを特徴とする、上記3に記載の不思議歯車機構。
5.前記ポリアミド樹脂組成物が、半芳香族ポリアミドを含むことを特徴とする、上記2に記載の不思議歯車機構。
6.前記ポリアミド樹脂組成物が、炭素繊維及び摺動化剤のうちの少なくとも一種を含むことを特徴とする、上記5に記載の不思議歯車機構。
7.前記太陽歯車、前記遊星歯車、前記可動内歯車及び前記固定内歯車のうちの少なくとも1つが、ポリアセタール樹脂組成物から構成されることを特徴とする、上記1~6のいずれかに記載の不思議歯車機構。
8.少なくとも前記太陽歯車が、前記ポリアミド樹脂組成物から構成されることを特徴とする、上記2~7のいずれかに記載の不思議歯車機構。
9.前記太陽歯車、前記遊星歯車、前記可動内歯車及び前記固定内歯車が、いずれも樹脂組成物から構成されることを特徴とする、上記1~8のいずれかに記載の不思議歯車機構。
10.前記太陽歯車、前記可動内歯車及び前記固定内歯車が、いずれもポリアミド樹脂組成物から構成され、前記遊星歯車が、ポリアセタール樹脂組成物から構成されることを特徴とする、上記1に記載の不思議歯車機構。
11.上記1~10のいずれか1項に記載の不思議歯車機構を含むことを特徴とする、減速機。
12.ロボットに使用されることを特徴とする、上記11に記載の減速機。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、軽量化が図られ、耐久性にも優れた、不思議歯車機構及び減速機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の不思議歯車機構の一実施形態について、模式的に示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、詳細に説明する。
なお、本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されるものではない。すなわち、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
図1は、本実施形態の不思議歯車機構の断面を模式的に示したものである。
【0012】
<不思議歯車機構>
図1に示すように、本実施形態の不思議歯車機構は、外周面に歯を持ち、動力を入力する太陽歯車10と、
前記太陽歯車と外接して噛み合う歯を外周面に持ち、前記太陽歯車の周りを回りながら、動力を可道内歯車へと伝達する2つ以上(図1では3つ)の遊星歯車20と、
前記遊星歯車20を支持するキャリア21と、
前記遊星歯車20と外接して噛み合う歯を内周面に持ち、前記遊星歯車から伝達された動力を外部へと伝達する筒状の可動内歯車30と、
前記遊星歯車と外接して噛み合う歯を内周面に持ち、回転しない筒状の固定内歯車40と、
を備えた不思議歯車機構100である。
【0013】
そして、本実施形態では、前記遊星歯車20と、前記太陽歯車10、前記可動内歯車30及び前記固定内歯車40とが、それぞれ異なる材料から構成されることを要する。
前記遊星歯車20と、前記太陽歯車10、前記可動内歯車30及び前記固定内歯車40とを、異なる材料から構成することで、接触する各歯車を構成する材料が異なることとなり、同材料からなる歯車同士が接触した際に発生する凝着摩耗等を抑制することができ、耐久性の向上が可能となる。
【0014】
なお、前記遊星歯車20と、前記太陽歯車10、前記可動内歯車30及び前記固定内歯車40とは、材料が異なっていれば、一方の歯車が金属で他方の歯車が樹脂のような場合だけでなく、歯車が、樹脂同士又は金属同士で構成されることもできる。
また、前記太陽歯車10、前記可動内歯車30及び前記固定内歯車40の材料のそれぞれは、少なくとも、前記遊星歯車20の材料と異なっていればよく、前記太陽歯車10、前記可動内歯車30及び前記固定内歯車40の各材料は、同じ材料であっても、異なる材料であってもよい。
【0015】
ここで、上述の異なる材料とは、樹脂材料の場合、樹脂成分の種類が異なることを意味し、充填剤の有無や、樹脂成分の変性、含有量等が異なる場合であっても、同種の樹脂成分(例えば、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂等)を含む場合には、同じと判断される。また、金属材料の場合、金属の種類が異なることを意味し、金属上に形成されためっき種や、合金の場合の構成元素の比率等が異なる場合であっても、同種の樹脂成分(例えば、ステンレス、鋼、鉄、合金等)を含む場合には、同じと判断される。
【0016】
また、本実施形態の不思議歯車機構100は、前記太陽歯車10、前記遊星歯車20、前記可動内歯車30及び前記固定内歯車40が、いずれも樹脂組成物から構成されることが好ましい。より優れた軽量化を実現できるためである。
【0017】
(樹脂組成物)
以下、本実施形態の不思議歯車機構を構成する各歯車の材料となる樹脂組成物について説明する。
【0018】
前記樹脂組成物に含まれる樹脂成分の種類については、特に限定はされない。例えば、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、成形性、強度、製造コスト等の観点から、前記太陽歯車、前記遊星歯車、前記可動内歯車及び前記固定内歯車のうちの少なくとも1つに、ポリアミド樹脂及び/又はポリアセタール樹脂を用いることが好ましい。
【0019】
前記ポリアミド樹脂としては、脂肪族ポリアミドや反芳香族ポリアミドが挙げられ、ジアミン化合物とジカルボン酸化合物を重縮合したものや、環状ラクタムを開環重合したもののような、アミド結合により重合したポリマーを用いることもできる。
前記ジアミン化合物としては、特に限定されないが、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナンジアミン、メチルペンタンジアミン、p-フェニレンジアミンなどが挙げられる。
前記ジカルボン酸化合物としては、特に限定されないが、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などが挙げられる。
前記環状ラクタムとしては、特に限定されないが、ε-カプロラクタム、ウンデカンラクタム、ラウリルラクタムなどが挙げられる。
前記ジアミン化合物、前記ジカルボン酸化合物及び前記環状ラクタム化合物の組み合わせについては、特に限定されず、それぞれの種類についても複数の種類の化合物を併用しても構わない。ポリヘキサメチレンアジパミド(例えば、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸からなるポリヘキサメチレンアジパミド)は溶解性が高く、本実施形態のポリアミドの製造方法に適している。
【0020】
また、前記ポリアミドとしては、例えば、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリテトラメチレンセバカミド(ナイロン410)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56)、ポリペンタメチレンセバカミド(ナイロン510)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン106)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ナイロン1012)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリウンデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/11)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリキシリレンセバカミド(ナイロンXD10)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ-2-メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド/ポリデカメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン5T/10T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン10T)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン12T)等が挙げられる。なお、ここでいう「/」とは共重合体を示す。これらポリアミドを1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、前記ポリアミドとして、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド610及びポリアミド612からなる群から選ばれる1種を用いることが好ましく、ポリアミド66を用いることが特に好ましい。ポリアミド66自体は、既に一般的に知られているポリアミド樹脂であり、通常は、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との重縮合により製造する。或いは、ポリアミド66は、ラクタム、アミノカルボン酸、及び他のジアミンとジカルボン酸との組み合わせからなる群より選ばれる少なくとも1種以上のモノマー単位を全モノマー単位の総質量に対して30質量%未満含む共重合体であってもよい。
【0021】
また、これらのポリアミドは、市販のものを用いてもよく、公知の方法を用いて製造してもよい。ポリアミドの製造方法として具体的には、特に制限されないが、例えば、ラクタムの開環重合する方法、ω-アミノカルボン酸の自己縮合する方法、ジアミン及びジカルボン酸を縮合する方法等が挙げられる。
【0022】
前記ポリアセタール樹脂については、オキシメチレン基を主鎖に有するポリマーをいう。例えば、ホルムアルデヒド単量体、又は、その3量体(トリオキサン)若しくは4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマー、を単独重合して得られる、実質上オキシメチレン単位のみからなるポリアセタールホモポリマー;ホルムアルデヒド単量体、又は、その3量体(トリオキサン)若しくは4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン、1,3-ジオキソラン、1,4-ブタンジオールホルマール等のグリコール若しくはジグリコールの環状ホルマール等の、環状エーテル又は環状ホルマールと、を共重合させて得られるポリアセタールコポリマー、単官能グリシジルエーテルを共重合させて得られる分岐を有するポリアセタールコポリマー;多官能グリシジルエーテルを共重合させて得られる架橋構造を有するポリアセタールコポリマー;等が挙げられる。
【0023】
さらに、前記ポリアセタール樹脂としては、両末端又は片末端に水酸基等の官能基を有する化合物、例えば、ポリアルキレングリコールの存在下、ホルムアルデヒド単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーを重合して得られるブロック成分を有するポリアセタールホモポリマー;同じく両末端又は片末端に水酸基等の官能基を有する化合物、例えば水素添加ポリブタジエングリコールの存在下、ホルムアルデヒド単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、環状エーテル又は環状ホルマールとを共重合させて得られるブロック成分を有するポリアセタールコポリマー;等も用いることができる。
なお、上述したポリアセタール樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
上述したように、前記ポリアセタール樹脂は、ポリアセタールホモポリマー及びポリアセタールコポリマーいずれも用いることが可能であるが、これらの中でも、機械物性の観点から、ポリアセタールホモポリマーを含むことが好ましい。
なお、前記ポリアセタール樹脂の、重合度や、コモノマー含量については、特に制限されない。
【0025】
前記ポリアセタールホモポリマーについては、例えば、モノマーであるホルムアルデヒド、連鎖移動剤(分子量調節剤)及び重合触媒を、炭化水素系重合溶媒を導入した重合反応器にフィードし、スラリー重合法により重合することにより製造することができる。
この際、原料モノマー、連鎖移動剤、重合触媒には、連鎖移動可能な成分(不安定末端基を生成する成分)、例えば、水、メタノール及び蟻酸等が含まれ得るため、まずこれら連鎖移動可能な成分の含有量を調整することが好ましい。これら連鎖移動可能な成分の含有量は、モノマーであるホルムアルデヒドの合計質量に対して、好ましくは1~1000質量ppmの範囲であり、より好ましくは1~500質量ppm、さらに好ましくは1~300質量ppmである。連鎖移動可能な成分の含有量を上記範囲に調整することにより、熱安定性に優れるポリアセタールホモポリマーを得ることができる。
【0026】
また、前記ポリアセタールホモポリマーの分子量は、無水カルボン酸又はカルボン酸等の分子量調節剤を用いて連鎖移動させることにより、調整することができる。分子量調節剤としては、特に無水プロピオン酸、無水酢酸が好ましく、より好ましくは無水酢酸である。
前記分子量調節剤の導入量は、目的とするポリアセタールホモポリマーの特性(特にメルトフローレート)に応じて調節し決定する。
【0027】
また、前記樹脂組成物は、上述した樹脂成分に加えて、例えば、無機充填剤、結晶核剤、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、顔料、摺動化剤等の添加剤を含むこともできる。前記樹脂組成物がこれらの充填剤を含むことで、各種物性や特性を高めることができるためである。
【0028】
なお、前記無機充填剤としては、繊維状、粉粒子状、板状及び中空状の無機充填剤が挙げられる。 繊維状無機充填剤としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、シリコーン繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維、硼素繊維、チタン酸カ リウム繊維、ステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属繊維等の無機質繊維が挙げられる。また、繊維長の短いチタン酸カリウムウイスカー、酸化亜鉛ウイスカー等のウイスカー類も繊維状無機充填剤として例示される。粉粒子状無機充填剤としては、例えば、カーボンブラック、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、クレー、珪藻土、ウォラストナイトのような珪酸塩、酸化鉄、酸化チタン、アルミナのような金属酸化物、硫酸カルシウム、硫酸バリウムのような金属硫酸塩、炭酸マグネシウム、ドロマイト等の炭酸塩、その他炭化珪素、窒化硅素、窒化硼素、各種金属粉末が挙げられる。板状無機充填剤としては、例えば、マイカ、ガラスフレーク、各種金属箔が挙げられる。中空状無機充填剤としては、例えば、ガラスバルーン、シリカバルーン、シラスバルー ン、金属バルーンが挙げられる。これらの無機充填剤は、一種のみを単独で用いてもよく二種以上を併用してもよい。
また、前記無機充填剤は表面処理を施されていても施されていなくてもよいが、成形表面の平滑性、機械的特性の観点から表面処理を施されたものが好ましい場合がある。無機充填剤の表面処理に用いられる表面処理剤としては、従来公知のものが使用可能である。例えば、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコニウム系等の各種カップリング処理剤が挙げられる。具体的には、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリスステアロイルチタネート、ジイソプロポキシアンモニウムエチルアセテート、n-ブチルジルコネートが挙げられる。なお、上記無機充填剤とともに、又は上記無機充填剤に代えて、芳香族ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等の高融点有機繊維状物質を添加してもよい。
【0029】
さらに、上述した無機充填剤の中でも、前記樹脂組成物がポリアミド樹脂組成物である場合には、補強性の観点から、前記炭素繊維を少なくとも含むことが好ましい。
なお、前記炭素繊維の種類や形状、含有量については、特に限定はされず、歯車に要求される性能に応じて適宜変更することができる。
また、前記炭素繊維以外の充填剤の種類や形状、含有量についても同様に、特に限定はされず、歯車に要求される性能に応じて適宜変更することができる。
【0030】
また、前記樹脂組成物は、前記無機充填剤として、結晶核剤を含むことができる。前記結晶核剤は、樹脂の種類に応じて適宜選択することができるが、例えば、タルク、シリカ、石英粉末、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、葉ロウ石、クレー、珪藻土、ウォラストナイト等の珪酸塩、金属酸化物(酸化鉄、酸化チタン、アルミナ等)、金属硫酸塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウム等)、炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト等)、その他炭化珪素、窒化硅素、窒化ホウ素、各種金属粉末等、通常知られている結晶核剤の細分された固体であればよい。樹脂としてポリアセタールを用いる場合には、これらの結晶核剤の中では、窒化ホウ素及び/又はタルクが好ましく、窒化ホウ素が特に好ましい。
【0031】
前記結晶核剤には、樹脂との親和性・分散性を向上させるために公知の表面処理剤を用いることができる。表面処理剤としては、例えば、アミノシラン、エポキシシラン等のシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、更には脂肪酸(飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸)、脂環族カルボン酸、樹脂酸、金属石鹸を挙げることができる。表面処理剤の添加量としては、結晶核剤の質量を基準として、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下であり、最も好ましくは実質的に添加されていないことである。
【0032】
一実施形態において、前記結晶核剤は、平均粒径が0.1~10μmであり、好ましくは0.1~5μmである。また、一実施形態において、結晶核剤は、窒化ホウ素であって、平均粒径が0.1~10μmであり、好ましくは0.1~5μmである。平均粒径が10μm以下であれば、歯車の作動耐久性の低下を十分に抑制できる。平均粒径は、公知の方法により測定を行う。例えば、歯車を切り出して樹脂成分を分解させ、残った無機分を顕微鏡(光学顕微鏡、SEM、SEM-EDX)で観察し、任意の粒子の粒径を測定することにより、平均粒径を導出する方法等が挙げられる。
【0033】
樹脂組成物中の結晶核剤の含有量は、樹脂100質量部に対して0.0001~1質量部が好ましく、0.001~0.1質量部がより好ましく、0.002~0.05質量部がより一層好ましい。樹脂としてポリアセタールを用いる場合には、結晶核剤の含有量が、ポリアセタール100質量部に対して1質量部以下であれば、ポリアセタールの熱安定性への影響を十分に抑制できる。また、結晶核剤の含有量が、ポリアセタール100質量部に対して0.0001質量部以上であれば、十分な長寿命化効果が得られる。結晶核剤の含有量を定量するには、例えば、歯車を塩酸等で加水分解し定量する方法や、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により金属成分を定量する方法が挙げられる。
【0034】
さらに、前記樹脂組成物がポリアミド樹脂組成物である場合には、上述した添加剤の中でも、摺動化剤を含むことも好ましい。前記歯車の摺動性を高め、より優れた耐摩耗性を得ることができるためである。
【0035】
前記摺動化剤としては、特に限定はされないが、より安定した摺動特性が得られる観点から、側鎖に含芳香環ポリマーを有するポリオレフィン系グラフト共重合体を含むことが好ましい。
【0036】
前記側鎖に含芳香環ポリマーを有するポリオレフィン系グラフト共重合体は、側鎖に芳香環を有するポリマーが結合したポリオレフィン系グラフト共重合体であれば、特に限定されない。前記側鎖に含芳香環ポリマーを有するポリオレフィン系グラフト共重合体として、好ましくは(b-1)上記含芳香環ポリマーがポリスチレンであるオレフィン系グラフト重合体であって、さらに好ましくは(b-2)主鎖にポリエチレンを有する(b-1)のオレフィン系グラフト重合体である。側鎖はポリスチレンに限定されず、ビニル系共重合体等であってもよい。
主鎖のオレフィン系重合体を構成するオレフィンモノマーとしては、エチレン、プロピレン、ブタジエン等の炭素数1~10のオレフィンが挙げられ、摺動性に優れる観点からエチレンが好ましい。すなわち、前記側鎖に含芳香環ポリマーを有するポリオレフィン系グラフト共重合体は、主鎖にエチレンに由来する構造単位を有することが好ましく、主鎖にポリエチレン骨格を有すること(例えば、主鎖100質量%に対してポリエチレン骨格の質量割合が70質量%以上、好ましくは90質量%以上)がより好ましく、主鎖がポリエチレン骨格のみからなることがさらに好ましい。上記オレフィン系重合体は、単独重合体であってもよいし、複数種のオレフィンの共重合体又はオレフィンと共重合可能な他のモノマーとの共重合体であってもよい。
側鎖の含芳香環ポリマーとしては、ポリスチレン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル等が挙げられ、摺動性に優れる観点からポリスチレンが好ましい。
前記側鎖に含芳香環ポリマーを有するポリオレフィン系グラフト共重合体100質量%に対するポリエチレン骨格の質量割合は、摺動性、機械特性、長期耐熱性に一層優れる観点から、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
なお、本明細書においてポリエチレン骨格とは、ポリエチレン骨格100質量%に対してエチレンに由来する構造単位の質量割合が50質量%超(好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上)である構造としてよい。
【0037】
さらにまた、前記樹脂組成物は、樹脂成分としてポリアミド樹脂用いる場合、前記炭素繊維及び前記摺動化剤のうちの少なくとも一種を含むことが好ましい。より優れた耐摩耗性を実現できるためである。同様の観点から、前記樹脂組成物は、前記炭素繊維及び前記摺動化剤の両方を含むことがより好ましい。
【0038】
(歯車)
本実施形態の不思議歯車機構は、図1に示すように、太陽歯車10と、遊星歯車20と、キャリア21と、可動内歯車30と、固定内歯車40と、備える。
それによって、本実施形態の不思議歯車機構100は、小型でありながらも、高い減速率を発揮できる。
【0039】
前記太陽歯車10については、図1に示すように、外周面に歯を有し、動力を入力するものである。
前記太陽歯車10の歯数、サイズ等については、特に限定はされず、要求される性能に応じて適宜選択することが可能である。また、前記太陽歯車10を構成する材料についても、前記遊星歯車20を構成する材料と異なるものであれば、特に限定はされない。
【0040】
ただし、成形性や強度、製造コスト等の観点からは、少なくとも前記太陽歯車が、前記ポリアミド樹脂組成物から構成されることが好ましい。
なお、前記ポリアミド樹脂組成物の構成については、上述した通りである。
【0041】
また、前記遊星歯車20は、図1に示すように、前記太陽歯車10と外接して噛み合う歯を外周面に持ち、前記太陽歯車の周りを回りながら、動力を可道内歯車30へと伝達するための歯車である。
【0042】
なお、図1では、前記遊星歯車20の数は3つであるが、2つ以上あれば特に限定はされず、要求される性能や不思議歯車機構100のサイズに応じて適宜選択することができる。
【0043】
前記遊星歯車を構成する材料については、特に限定はされないが、軽量化の観点からは、樹脂材料であることが好ましく、前記太陽歯車と異なる材料とする観点からは、ポリアセタール樹脂組成物であるがより好ましい。
なお、前記ポリアセタール樹脂組成物の構成については、上述した通りである。
【0044】
さらにまた、本実施形態の不思議歯車機構100は、図1に示すように、前記遊星歯車20を支持するキャリア21をさらに備える。
【0045】
なお、前記キャリア21については、前記遊星歯車20を支持することができるものであれば特に限定はされず、要求される性能に応じて適宜選択することができる。
また、前記キャリア21を構成する材料については、特に限定はされないが、軽量化の観点からは、樹脂材料であることが好ましい。なお、前記キャリア21は、いずれの歯車とも噛み合うことがないため、いずれかの歯車と同じ材料から構成することができる。
【0046】
また、本実施形態の不思議歯車機構100は、図1に示すように、前記遊星歯車20と外接して噛み合う歯を内周面に持ち、前記遊星歯車20から伝達された動力を外部へと伝達する筒状の可動内歯車30をさらに備える。
【0047】
なお、図1では、前記可動内歯車30が前記固定内歯車40の上に設けられているが、前記固定内歯車40の下に設けられることも可能である。また、前記可動内歯車30の数は複数あってもよく、要求される性能や不思議歯車機構100のサイズに応じて適宜選択することができる。
【0048】
前記可動内歯車を構成する材料については、特に限定はされないが、軽量化の観点からは、樹脂材料であることが好ましく、成形性や強度、製造コスト等の観点からは、ポリアミド樹脂組成物又はポリアセタール樹脂組成物であることがより好ましく、前記遊星歯車と異なる材料とする観点からは、ポリアミド樹脂組成物であるがさらに好ましい。
【0049】
さらに、本実施形態の不思議歯車機構100は、図1に示すように、前記遊星歯車20と外接して噛み合う歯を内周面に持ち、回転しない筒状の固定内歯車40をさらに備える。
【0050】
なお、前記固定内歯車を構成する材料については、特に限定はされないが、軽量化の観点からは、樹脂材料であることが好ましく、成形性や強度、製造コスト等の観点からは、ポリアミド樹脂組成物又はポリアセタール樹脂組成物であることがより好ましく、前記遊星歯車と異なる材料とする観点からは、ポリアミド樹脂組成物であるがさらに好ましい。
【0051】
そして、本実施形態の不思議歯車機構では、前記太陽歯車、前記可動内歯車及び前記固定内歯車が、いずれもポリアミド樹脂組成物から構成され、前記遊星歯車が、ポリアセタール樹脂組成物から構成されることが特に好ましい。
【0052】
なお、本実施形態の不思議歯車機構では、上述した各歯車以外にも、必要に応じて他の部材を備えることも可能である。
例えば、不思議歯車機構を覆う筐体や、装飾部材等のような部材である。
【0053】
<減速機>
本実施形態の減速機は、上述した本実施形態の不思議歯車機構を含む。
これによって、本実施形態の減速機は、小型で且つ高い減速性能を有しつつ、軽量化及び耐久性にも優れる。
【0054】
本実施形態の減速機の用途については、特に限定はされない。
例えば、エレベーター、エスカレーター、工場のベルトコンベア等の移動設備、ロボットなどに用いることができる。
【0055】
上述した中でも、本実施形態の減速機は、ロボットに使用されることが好ましく、比較的小型の組立ロボットに使用されることがより好ましい。本発明による、小型化、軽量化及び耐久性をより効果的に享受できるためである。
【実施例0056】
以下、具体的な実施例、比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0057】
[実施例1]
以下の表1で示した条件を有する、太陽歯車、遊星歯車、可動内歯車及び固定内歯車からなる不思議歯車機構のサンプルを作製した。なお、遊星歯車の数は個であった。
そして、各歯車を構成する材料については、以下の通りとした。つまり、遊星歯車と、太陽歯車、可動内歯車及び固定内歯車とが、それぞれ異なる材料から構成されている(表2)。
太陽歯車:ポリアミド材料A(PA66/CF20%/ポリオレフィン系摺動剤5.0%)
遊星歯車…ポリアセタール材料(POM/窒化ホウ素0.01%)
固定内歯車…ポリアミド材料A
可動内歯車…ポリアミド材料A
【0058】
[比較例1]
以下の表1で示した条件を有する、太陽歯車、遊星歯車、可動内歯車及び固定内歯車からなる不思議歯車機構のサンプルを作製した。なお、遊星歯車の数は4個であった。
そして、各歯車を構成する材料については、以下の通りとした。つまり、遊星歯車、太陽歯車、可動内歯車及び固定内歯車が、いずれも同じ材料から構成されている(表2)。
太陽歯車:ポリアミド材料A
遊星歯車…ポリアミド材料A
固定内歯車…ポリアミド材料A
可動内歯車…ポリアミド材料A
【0059】
【表1】
【0060】
<評価>
作製した各サンプルの不思議歯車機構について、減速比1/99.67、アーム長さ30mm、減速機重量224g、可搬重量3000g、最大回転数40°/s、最大トルク10N・mであるアーム付き減速機に用いることで、連続運転回数を測定した。測定結果を表2に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
表2の結果から、実施例1で作製した不思議歯車機構を用いることで、連続運転回数の回数が大幅に向上しており、比較例1で作製した不思議歯車機構よりも大きく耐久性に優れることがわかる。また、実施例1及び比較例1で作製した不思議歯車機構は、いずれも樹脂材料から構成されており、いずれも軽量性に優れることもわかる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明によれば、軽量化が図られ、耐久性にも優れた、不思議歯車機構及び減速機を提供できる。
【符号の説明】
【0064】
10 太陽歯車
20 遊星歯車
21 キャリア
30 可動内歯車
40 固定内歯車
100 不思議歯車機構
図1