(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173086
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】電子情報記憶媒体、ICチップ、ICカード、通信パラメータ送信方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06K 19/07 20060101AFI20241205BHJP
G06K 7/10 20060101ALI20241205BHJP
G06F 13/38 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G06K19/07 230
G06K7/10 176
G06F13/38 320A
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091213
(22)【出願日】2023-06-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120189
【弁理士】
【氏名又は名称】奥 和幸
(72)【発明者】
【氏名】山石 豊
(57)【要約】
【課題】2種類の待機状態に応じた2種類の通信パラメータを外部装置に提示することが可能な電子情報記憶媒体、ICチップ、ICカード、通信パラメータ送信方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】ICチップ1は、IDLE状態から通信を開始する場合に通信パラメータCPIを示す情報を応答信号により外部装置2へ送信する一方、HALT状態から通信を開始する場合に通信パラメータCPHを示す情報を応答信号により外部装置2へ送信する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部装置との間で通信可能な電子情報記憶媒体であって、
前記外部装置との間の通信を待機する第1待機状態から当該通信を開始する場合の第1通信パラメータを示す情報と、前記外部装置との間の通信を待機する第2待機状態であって前記第1待機状態とは異なる第2待機状態から当該通信を開始する場合の第2通信パラメータを示す情報とを記憶する記憶手段と、
前記第1待機状態から前記通信を開始する場合に前記第1通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信する一方、前記第2待機状態から前記通信を開始する場合に前記第2通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信する送信手段と、
を備えることを特徴とする電子情報記憶媒体。
【請求項2】
前記通信パラメータを示す情報は、最大フレームサイズ、最大待ち時間、及び通信速度とのうち少なくとも何れか一つの要素を示す情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の電子情報記憶媒体。
【請求項3】
前記第1通信パラメータを示す情報は、前記第1待機状態を示す情報を含み、前記第2通信パラメータを示す情報は、前記第2待機状態を示す情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の電子情報記憶媒体。
【請求項4】
前記通信は非接触通信であり、前記第1待機状態はIDLE状態であり、前記第2待機状態はHALT状態であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の電子情報記憶媒体。
【請求項5】
外部装置との間で通信可能なICチップであって、
前記外部装置との間の通信を待機する第1待機状態から当該通信を開始する場合の第1通信パラメータを示す情報と、前記外部装置との間の通信を待機する第2待機状態であって前記第1待機状態とは異なる第2待機状態から当該通信を開始する場合の第2通信パラメータを示す情報とを記憶する記憶手段と、
前記第1待機状態から前記通信を開始する場合に前記第1通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信する一方、前記第2待機状態から前記通信を開始する場合に前記第2通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信する送信手段と、
を備えることを特徴とするICチップ。
【請求項6】
外部装置との間で通信可能なICカードであって、
前記外部装置との間の通信を待機する第1待機状態から当該通信を開始する場合の第1通信パラメータを示す情報と、前記外部装置との間の通信を待機する第2待機状態であって前記第1待機状態とは異なる第2待機状態から当該通信を開始する場合の第2通信パラメータを示す情報とを記憶する記憶手段と、
前記第1待機状態から前記通信を開始する場合に前記第1通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信する一方、前記第2待機状態から前記通信を開始する場合に前記第2通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信する送信手段と、
を備えることを特徴とするICカード。
【請求項7】
外部装置との間で通信可能な電子情報記憶媒体により実行される通信パラメータ送信方法であって、
前記外部装置との間の通信を待機する第1待機状態から当該通信を開始する場合の第1通信パラメータを示す情報と、前記外部装置との間の通信を待機する第2待機状態であって前記第1待機状態とは異なる第2待機状態から当該通信を開始する場合の第2通信パラメータを示す情報とを記憶するステップと、
前記第1待機状態から前記通信を開始する場合に前記第1通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信する一方、前記第2待機状態から前記通信を開始する場合に前記第2通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信するステップと、
を含むことを特徴とする通信パラメータ送信方法。
【請求項8】
外部装置との間で通信可能な電子情報記憶媒体に含まれるコンピュータに、
前記外部装置との間の通信を待機する第1待機状態から当該通信を開始する場合の第1通信パラメータを示す情報と、前記外部装置との間の通信を待機する第2待機状態であって前記第1待機状態とは異なる第2待機状態から当該通信を開始する場合の第2通信パラメータを示す情報とを記憶するステップと、
前記第1待機状態から前記通信を開始する場合に前記第1通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信する一方、前記第2待機状態から前記通信を開始する場合に前記第2通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信するステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項9】
外部装置との間で通信可能な電子情報記憶媒体であって、当該外部装置との間の通信で用いられるデフォルトの通信パラメータを示す情報を少なくとも記憶するメモリを備える電子情報記憶媒体であって、
前記電子情報記憶媒体の現在の状態が、前記外部装置との間の通信を待機する第1待機状態であるか、または、前記外部装置との間の通信を待機する第2待機状態であって前記第1待機状態とは異なる第2待機状態とであるかを判定する第1判定手段と、
前記現在の状態が前記第1待機状態であると判定された場合、前記第1待機状態から前記通信を開始する場合の第1通信パラメータを示す情報が前記メモリに記憶されているか否かを判定する一方、前記現在の状態が前記第2待機状態であると判定された場合、前記第2待機状態から前記通信を開始する場合の第2通信パラメータを示す情報が前記メモリに記憶されているか否かを判定する第2判定手段と、
前記第1通信パラメータを示す情報が前記メモリに記憶されていないと判定された場合、前記デフォルトの通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信する一方、前記第1通信パラメータを示す情報が前記メモリに記憶されていると判定された場合、当該第1通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信する第1送信手段と、
前記第2通信パラメータを示す情報が前記メモリに記憶されていないと判定された場合、前記デフォルトの通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信する一方、前記第2通信パラメータを示す情報が前記メモリに記憶されていると判定された場合、当該第2通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信する第2送信手段と、
を含むことを特徴とする電子情報記憶媒体。
【請求項10】
外部装置との間で通信可能な電子情報記憶媒体であって、当該外部装置との間の通信で用いられるデフォルトの通信パラメータを示す情報を少なくとも記憶するメモリを備える電子情報記憶媒体により実行される通信パラメータ送信方法であって、
前記電子情報記憶媒体の現在の状態が、前記外部装置との間の通信を待機する第1待機状態であるか、または、前記外部装置との間の通信を待機する第2待機状態であって前記第1待機状態とは異なる第2待機状態とであるかを判定するステップと、
前記現在の状態が前記第1待機状態であると判定された場合、前記第1待機状態から前記通信を開始する場合の第1通信パラメータを示す情報が前記メモリに記憶されているか否かを判定する一方、前記現在の状態が前記第2待機状態であると判定された場合、前記第2待機状態から前記通信を開始する場合の第2通信パラメータを示す情報が前記メモリに記憶されているか否かを判定するステップと、
前記第1通信パラメータを示す情報が前記メモリに記憶されていないと判定された場合、前記デフォルトの通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信する一方、前記第1通信パラメータを示す情報が前記メモリに記憶されていると判定された場合、当該第1通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信するステップと、
前記第2通信パラメータを示す情報が前記メモリに記憶されていないと判定された場合、前記デフォルトの通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信する一方、前記第2通信パラメータを示す情報が前記メモリに記憶されていると判定された場合、当該第2通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信するステップと、
を含むことを特徴とする通信パラメータ送信方法。
【請求項11】
外部装置との間で通信可能な電子情報記憶媒体であって、当該外部装置との間の通信で用いられるデフォルトの通信パラメータを示す情報を少なくとも記憶するメモリを備える電子情報記憶媒体に含まれるコンピュータに、
前記電子情報記憶媒体の現在の状態が、前記外部装置との間の通信を待機する第1待機状態であるか、または、前記外部装置との間の通信を待機する第2待機状態であって前記第1待機状態とは異なる第2待機状態とであるかを判定するステップと、
前記現在の状態が前記第1待機状態であると判定された場合、前記第1待機状態から前記通信を開始する場合の第1通信パラメータを示す情報が前記メモリに記憶されているか否かを判定する一方、前記現在の状態が前記第2待機状態であると判定された場合、前記第2待機状態から前記通信を開始する場合の第2通信パラメータを示す情報が前記メモリに記憶されているか否かを判定するステップと、
前記第1通信パラメータを示す情報が前記メモリに記憶されていないと判定された場合、前記デフォルトの通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信する一方、前記第1通信パラメータを示す情報が前記メモリに記憶されていると判定された場合、当該第1通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信するステップと、
前記第2通信パラメータを示す情報が前記メモリに記憶されていないと判定された場合、前記デフォルトの通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信する一方、前記第2通信パラメータを示す情報が前記メモリに記憶されていると判定された場合、当該第2通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信するステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部装置との間で非接触通信を行うことが可能な非接触式IC(Integrated Circuit)カード等の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ISO/IEC14443-3に準拠する非接触式ICカードが外部装置との間の通信を待機する状態としてIDLE状態とHALT状態との2種類の待機状態が知られている。例えばType-Bの非接触式ICカードは、IDLE状態またはHALT状態において外部装置と通信を開始する場合、外部装置からのWUPB(Wake UP command Type B)に応じて、予め記憶された通信パラメータをATQB(Answer To reQuest for PICC B)により外部装置へ送信するようになっている。例えば、特許文献1に開示された非接触式ICカードは、初期通信条件を含む複数の通信条件を記憶しておき、非接触式ICカード側でこれら複数の通信条件を切り替えることにより、通信方式の異なる複数の通信端末との通信が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1を含む従来の技術では、外部装置は非接触式ICカードとIDLE状態から通信を開始する場合とHALT状態から通信を開始する場合とで通信パラメータ(例えば、最大フレームサイズなど)を切り替えることができない。
【0005】
そこで、本発明は、このような点を課題の一例として鑑みてなされたものであり、2種類の待機状態に応じた2種類の通信パラメータを外部装置に提示することが可能な電子情報記憶媒体、ICチップ、ICカード、通信パラメータ送信方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、外部装置との間で通信可能な電子情報記憶媒体であって、前記外部装置との間の通信を待機する第1待機状態から当該通信を開始する場合の第1通信パラメータを示す情報と、前記外部装置との間の通信を待機する第2待機状態であって前記第1待機状態とは異なる第2待機状態から当該通信を開始する場合の第2通信パラメータを示す情報とを記憶する記憶手段と、前記第1待機状態から前記通信を開始する場合に前記第1通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信する一方、前記第2待機状態から前記通信を開始する場合に前記第2通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信する送信手段と、を備えることを特徴とする電子情報記憶媒体。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子情報記憶媒体において、前記通信パラメータを示す情報は、最大フレームサイズ、最大待ち時間、及び通信速度とのうち少なくとも何れか一つの要素を示す情報を含むことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の電子情報記憶媒体において、前記第1通信パラメータを示す情報は、前記第1待機状態を示す情報を含み、前記第2通信パラメータを示す情報は、前記第2待機状態を示す情報を含むことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の電子情報記憶媒体において、前記通信は非接触通信であり、前記第1待機状態はIDLE状態であり、前記第2待機状態はHALT状態であることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、外部装置との間で通信可能なICチップであって、前記外部装置との間の通信を待機する第1待機状態から当該通信を開始する場合の第1通信パラメータを示す情報と、前記外部装置との間の通信を待機する第2待機状態であって前記第1待機状態とは異なる第2待機状態から当該通信を開始する場合の第2通信パラメータを示す情報とを記憶する記憶手段と、前記第1待機状態から前記通信を開始する場合に前記第1通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信する一方、前記第2待機状態から前記通信を開始する場合に前記第2通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信する送信手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、外部装置との間で通信可能なICカードであって、前記外部装置との間の通信を待機する第1待機状態から当該通信を開始する場合の第1通信パラメータを示す情報と、前記外部装置との間の通信を待機する第2待機状態であって前記第1待機状態とは異なる第2待機状態から当該通信を開始する場合の第2通信パラメータを示す情報とを記憶する記憶手段と、前記第1待機状態から前記通信を開始する場合に前記第1通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信する一方、前記第2待機状態から前記通信を開始する場合に前記第2通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信する送信手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、外部装置との間で通信可能な電子情報記憶媒体により実行される通信パラメータ送信方法であって、前記外部装置との間の通信を待機する第1待機状態から当該通信を開始する場合の第1通信パラメータを示す情報と、前記外部装置との間の通信を待機する第2待機状態であって前記第1待機状態とは異なる第2待機状態から当該通信を開始する場合の第2通信パラメータを示す情報とを記憶するステップと、前記第1待機状態から前記通信を開始する場合に前記第1通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信する一方、前記第2待機状態から前記通信を開始する場合に前記第2通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信するステップと、を含むことを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、外部装置との間で通信可能な電子情報記憶媒体に含まれるコンピュータに、前記外部装置との間の通信を待機する第1待機状態から当該通信を開始する場合の第1通信パラメータを示す情報と、前記外部装置との間の通信を待機する第2待機状態であって前記第1待機状態とは異なる第2待機状態から当該通信を開始する場合の第2通信パラメータを示す情報とを記憶するステップと、前記第1待機状態から前記通信を開始する場合に前記第1通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信する一方、前記第2待機状態から前記通信を開始する場合に前記第2通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信するステップと、を実行させることを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、外部装置との間で通信可能な電子情報記憶媒体であって、当該外部装置との間の通信で用いられるデフォルトの通信パラメータを示す情報を少なくとも記憶するメモリを備える電子情報記憶媒体であって、前記電子情報記憶媒体の現在の状態が、前記外部装置との間の通信を待機する第1待機状態であるか、または、前記外部装置との間の通信を待機する第2待機状態であって前記第1待機状態とは異なる第2待機状態とであるかを判定する第1判定手段と、前記現在の状態が前記第1待機状態であると判定された場合、前記第1待機状態から前記通信を開始する場合の第1通信パラメータを示す情報が前記メモリに記憶されているか否かを判定する一方、前記現在の状態が前記第2待機状態であると判定された場合、前記第2待機状態から前記通信を開始する場合の第2通信パラメータを示す情報が前記メモリに記憶されているか否かを判定する第2判定手段と、前記第1通信パラメータを示す情報が前記メモリに記憶されていないと判定された場合、前記デフォルトの通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信する一方、前記第1通信パラメータを示す情報が前記メモリに記憶されていると判定された場合、当該第1通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信する第1送信手段と、前記第2通信パラメータを示す情報が前記メモリに記憶されていないと判定された場合、前記デフォルトの通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信する一方、前記第2通信パラメータを示す情報が前記メモリに記憶されていると判定された場合、当該第2通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信する第2送信手段と、を含むことを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の発明は、外部装置との間で通信可能な電子情報記憶媒体であって、当該外部装置との間の通信で用いられるデフォルトの通信パラメータを示す情報を少なくとも記憶するメモリを備える電子情報記憶媒体により実行される通信パラメータ送信方法であって、前記電子情報記憶媒体の現在の状態が、前記外部装置との間の通信を待機する第1待機状態であるか、または、前記外部装置との間の通信を待機する第2待機状態であって前記第1待機状態とは異なる第2待機状態とであるかを判定するステップと、前記現在の状態が前記第1待機状態であると判定された場合、前記第1待機状態から前記通信を開始する場合の第1通信パラメータを示す情報が前記メモリに記憶されているか否かを判定する一方、前記現在の状態が前記第2待機状態であると判定された場合、前記第2待機状態から前記通信を開始する場合の第2通信パラメータを示す情報が前記メモリに記憶されているか否かを判定するステップと、前記第1通信パラメータを示す情報が前記メモリに記憶されていないと判定された場合、前記デフォルトの通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信する一方、前記第1通信パラメータを示す情報が前記メモリに記憶されていると判定された場合、当該第1通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信するステップと、前記第2通信パラメータを示す情報が前記メモリに記憶されていないと判定された場合、前記デフォルトの通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信する一方、前記第2通信パラメータを示す情報が前記メモリに記憶されていると判定された場合、当該第2通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信するステップと、を含むことを特徴とする。
【0016】
請求項11に記載の発明は、外部装置との間で通信可能な電子情報記憶媒体であって、当該外部装置との間の通信で用いられるデフォルトの通信パラメータを示す情報を少なくとも記憶するメモリを備える電子情報記憶媒体に含まれるコンピュータに、前記電子情報記憶媒体の現在の状態が、前記外部装置との間の通信を待機する第1待機状態であるか、または、前記外部装置との間の通信を待機する第2待機状態であって前記第1待機状態とは異なる第2待機状態とであるかを判定するステップと、前記現在の状態が前記第1待機状態であると判定された場合、前記第1待機状態から前記通信を開始する場合の第1通信パラメータを示す情報が前記メモリに記憶されているか否かを判定する一方、前記現在の状態が前記第2待機状態であると判定された場合、前記第2待機状態から前記通信を開始する場合の第2通信パラメータを示す情報が前記メモリに記憶されているか否かを判定するステップと、前記第1通信パラメータを示す情報が前記メモリに記憶されていないと判定された場合、前記デフォルトの通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信する一方、前記第1通信パラメータを示す情報が前記メモリに記憶されていると判定された場合、当該第1通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信するステップと、前記第2通信パラメータを示す情報が前記メモリに記憶されていないと判定された場合、前記デフォルトの通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信する一方、前記第2通信パラメータを示す情報が前記メモリに記憶されていると判定された場合、当該第2通信パラメータを示す情報を前記外部装置へ送信するステップと、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、2種類の待機状態に応じた2種類の通信パラメータを外部装置に提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】ICチップ1のハードウェア構成例を示す図である。
【
図2】(A)は、通信方式としてType Aを採用するICチップ1のNVM13において通信パラメータを示す情報を記憶するレコード領域のメモリマップの一例を示す図であり、(B)は、通信方式としてType Bを採用するICチップ1のNVM13において通信パラメータを示す情報を記憶するレコード領域のメモリマップの一例を示す図である。
【
図3】ATQAの符号化構成の一例を示す図である。
【
図5】ATQBの符号化構成の一例を示す図である。
【
図6】通信方式としてType Aを採用するICチップ1の状態遷移を示す図である。
【
図7】通信方式としてType Bを採用するICチップ1の状態遷移を示す図である。
【
図8】ICチップ1のCPU15により実行される通信パラメータ送信処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0020】
[1.ICチップ1の構成及び機能]
先ず、
図1を参照して、本実施形態に係るICチップ1の構成及び機能について説明する。ICチップ1は、外部装置2との間で通信可能な電子情報記憶媒体の一例である。ICチップ1は、例えば、クレジットカード、キャッシュカード、またはマイナンバーカードなどのICカード、または、スマートフォンなどのモバイルデバイスに搭載される。スマートフォンなどのモバイルデバイスの場合、ICチップ1は、モバイルデバイスに着脱可能な小型ICカードに搭載されてもよいし、eUICC(Embedded Universal Integrated Circuit Card)としてモバイルデバイスから容易に取り外しや取り換えができないように組み込み基板上に搭載されてもよい。なお、ICカードやモバイルデバイスには非接触通信で用いられるアンテナが備えられる。
【0021】
図1は、ICチップ1のハードウェア構成例を示す図である。ICチップ1は、
図1に示すように、I/O回路11、RAM(Random Access Memory)12、NVM(Nonvolatile Memory)13(記憶手段の一例)、ROM(Read Only Memory)14、及びCPU(Central Processing Unit)15(コンピュータの一例)等を備え、非接触通信に関する国際標準規格であるISO/IEC 14443に準拠する。なお、ICチップ1には、固有のUID(Unique IDentifier)が記憶されている。I/O回路11は、外部装置2との間のインターフェースを担う。ICチップ1は、I/O回路11及びアンテナ(図示せず)を介して外部装置2との間で非接触通信を行う。かかる非接触通信に係る通信方式として、ISO/IEC 14443で標準化されているType AとType Bとを例にとるものとする。I/O回路11は、アンテナに接続され、電力(電源)供給回路11a、クロック生成回路11b、及び変復調回路11c等を含んで構成されている。アンテナは、アンテナコイルを備え、外部装置2(リーダライタ)から発せられた搬送波(電磁波)を受信し、また、変復調回路11cから出力された変調信号を電磁波として発信する。
【0022】
電力供給回路11aは、アンテナで受信された搬送波により誘起された電力(誘導起電力)に係る誘導電流を整流及び平滑化してCPU15等へ電力を供給する。クロック生成回路11bは、アンテナで受信された搬送波により誘起された電力に係る誘導電流から内部クロックを生成してCPU15等へ出力する。変復調回路11cは、アンテナで受信された搬送波からデータを復調しCPU15へ出力する。また、変復調回路11cは、CPU15からのデータを変調し変調信号としてアンテナへ出力する。なお、外部装置2の例として、リーダライタを備える取引装置やデータ書き込み装置などが挙げられる。
【0023】
NVM13には、例えばフラッシュメモリが適用される。なお、NVM13は、「Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory」であってもよい。NVM13またはROM14には、OS(Operating System)、及び1または複数のアプリケーション(本発明のプログラムを含む)等が記憶される。本発明のプログラムは、データ書き込み装置からダウンロードすることが可能になっている。CPU15は、NVM13に記憶されたOS及びアプリケーション(本発明のプログラムを含む)を実行することで、本発明における第1判定手段、第2判定手段、送信手段、第1送信手段、及び第2送信手段等として機能する。
【0024】
また、NVM13は、外部装置2との間の通信で用いられるデフォルトの通信パラメータを示す情報を少なくとも記憶する。ここで、デフォルトの通信パラメータを、他の通信パラメータと区別する場合、以下、「通信パラメータCPD」という。通信パラメータCPDは、従来の非接触式ICカードにも記憶されている標準的な通信パラメータである。なお、通信パラメータを示す情報とは、通信パラメータ自体を表す値であってもよいし、通信パラメータを識別可能なビット列であってもよい(以下同様)。
【0025】
さらに、NVM13には、外部装置2との間の通信を待機するIDLE状態(第1待機状態の一例)から通信を開始する場合の通信パラメータを示す情報と、外部装置2との間の通信を待機するHALT状態(第2待機状態の一例)から当該通信を開始する場合の通信パラメータを示す情報とが、例えば、外部からの設定コマンドに応じた設定により記憶される。ここで、IDLE状態から通信を開始する場合の通信パラメータ(IDLE状態に対応する通信パラメータ)を、他の通信パラメータと区別する場合、以下、「通信パラメータCPI」という。また、HALT状態から通信を開始する場合の通信パラメータ(HALT状態に対応する通信パラメータ)を、他の通信パラメータと区別する場合、以下、「通信パラメータCPH」という。このように、IDLE状態とHALT状態との2種類の待機状態に応じた2種類の通信パラメータを外部装置2へ提示(つまり、異なるタイミングで提示)することが可能となる。そのため、外部装置2は、異なるタイミングで提示された2種類の通信パラメータのうち、外部装置2にとって(例えば、外部装置2の通信性能を考慮して)、より適した通信パラメータを適宜選択してICチップ1との間で通信を行うことができる。
【0026】
図2(A)は、通信方式としてType Aを採用するICチップ1のNVM13において通信パラメータを示す情報を記憶するレコード領域のメモリマップの一例を示す図である。
図2(B)は、通信方式としてType Bを採用するICチップ1のNVM13において通信パラメータを示す情報を記憶するレコード領域のメモリマップの一例を示す図である。なお、レコード領域は、複数に区分されており、それぞれのレコード領域の物理アドレスは異なる。レコード領域に記憶される情報(データ)をレコードという。それぞれのレコードには、レコード番号が付与され、物理アドレスに関連付けられる。そして、それぞれのレコードは、1または複数のファイル(例えば、EF(Elementary File))に論理的に格納(例えば、レコード番号が格納)され、例えばアプリケーションにより管理される。各ファイルには、固有のSFI(Short File Identifier)が付与される。なお、
図2(A),(B)中、“1”と“0”からなる情報(つまり、通信パラメータを示す情報)はあくまで例示にすぎない。
【0027】
先ず、Type Aでは、
図2(A)に示すように、NVM13には、通信パラメータCPD,CPI,CPHとして、最大フレームサイズ(FSC:Frame Size for proximity Card)、通信速度(DS:Divisor Send)、通信速度(DR:Divisor Receive)、最大待ち時間(FWT:Frame Waiting Time)、開始フレームのガードタイム(SFGT:Start-up Frame Guard Time)、及びICチップ1のUIDのサイズのそれぞれを示す情報がそれぞれのレコードとして記憶されている。なお、通信パラメータCPDを示す情報と、通信パラメータCPIを示す情報と、通信パラメータCPHを示す情報とは、互いに異なるファイルにより管理されるとよい。例えば、通信パラメータCPDを示す情報は、SFI“001”のファイルにより管理され、通信パラメータCPIを示す情報は、SFI“002”のファイルにより管理され、通信パラメータCPHを示す情報は、SFI“003”のファイルにより管理されるとよい。
【0028】
ここで、最大フレームサイズ(FSC)、通信速度(DS)、通信速度(DR)、最大待ち時間(FWT)、開始フレームのガードタイム(SFGT)、及びICチップ1のUIDのサイズのそれぞれを通信パラメータの要素という。なお、通信速度(DS)は、ICチップ1から外部装置2への通信速度であり、通信速度(DR)は、外部装置2からICチップ1への通信速度である。
図2(A)の例では、通信パラメータCPD,CPI,CPH間で各要素(つまり、最大フレームサイズ(FSC)、通信速度(DS)、通信速度(DR)、最大待ち時間(FWT)、・・・)を示す情報は互いに異なっている。ただし、通信パラメータCPD,CPI,CPH間で一部の要素(例えば、通信速度(DS))を示す情報が同一(例えば、いずれも“001”とする)であってもよく、この場合、かかる情報は、NVM13の同一のレコード領域(つまり、同一アドレス)に記憶されてもよい。さらに、
図2(A)に示すNVM13には、通信パラメータCPI,CPHの一要素としての待機状態種別(つまり、IDLE状態であるか、HALT状態であるかの別)を示す情報がそれぞれのレコードとして記憶されている。
【0029】
次に、Type Bでは、
図2(B)に示すように、NVM13には、通信パラメータCPD,CPI,CPHとして、通信速度能力(通信速度の一例、BRC:Bit Rate Capacity)、最大フレームサイズ(FSC)、最大待ち時間(FWT)、及び開始フレームのガードタイム(SFGT)のそれぞれを示す情報がそれぞれのレコードとして記憶されている。この場合も、通信パラメータCPDを示す情報と、通信パラメータCPIを示す情報と、通信パラメータCPHを示す情報とは、互いに異なるファイルにより管理されるとよい。また、
図2(B)の例でも、通信パラメータCPD,CPI,CPH間で各要素を示す情報は互いに異なっている。ただし、通信パラメータCPD,CPI,CPH間で一部の要素を示す情報が同一であってもよく、この場合、かかる情報は、NVM13の同一のレコード領域に記憶されてもよい。なお、本実施形態では、通信パラメータCPIと通信パラメータCPHとの少なくとも何れか一方を示す情報がNVM13に記憶されていないICチップ1にも対応することができる。通信パラメータCPIと通信パラメータCPHとの少なくとも何れか一方を示す情報がNVM13に記憶されていない場合、その代わりに、通信パラメータCPDを示す情報が利用される。一方、通信パラメータCPIと通信パラメータCPHとの双方を示す情報がNVM13に記憶されている場合、通信パラメータCPDを示す情報は利用されないので、通信パラメータCPDを示す情報は削除されてもよい。
【0030】
以上説明した通信パラメータを示す情報は、外部装置2との間で通信が開始される際にICチップ1から外部装置2へ送信される。例えば、通信方式としてType Aを採用するICチップ1の場合、通信パラメータを示す情報は、ATQA(Answer To reQuest for PICC A)やATS(Answer To Select)に含まれて送信されることになる。一方、通信方式としてType Bを採用するICチップ1の場合、通信パラメータを示す情報は、ATQB(Answer To reQuest for PICC B)に含まれて送信される。ATQA、ATS及びATQBは、それぞれ、外部装置2への応答信号(レスポンス)である。
図3は、ATQAの符号化構成(ISO/IEC14443-3で規定される標準フォーマット)の一例を示す図である。例えば、ICチップ1がIDLE状態から通信を開始する場合、通信パラメータCPIに含まれる要素のうちICチップ1のUIDのサイズを示す情報(例えば、“01”)が
図3に示すATQAにおけるビットb7,b8にセットされる。一方、ICチップ1がHALT状態から通信を開始する場合、通信パラメータCPHに含まれる要素のうちICチップ1のUIDのサイズを示す情報(例えば、“10”)が
図3に示すATQAにおけるビットb8,b7にセットされる。
【0031】
図4は、ATSの符号化構成(ISO/IEC14443-3で規定される標準フォーマット)の一例を示す図である。例えば、ICチップ1がIDLE状態から通信を開始する場合、通信パラメータCPIに含まれる要素のうち最大フレームサイズ(FSC)を示す情報(例えば、“1100”)が、
図4に示すATSにおけるT0(フォーマットバイト)内のFSCI(ビットb4~b1)にセットされる。また、IDLE状態から通信を開始する場合、通信パラメータCPIに含まれる要素のうち通信速度(DS)及び通信速度(DR)を示す情報が、
図4に示すATSにおけるTA(1)(インターフェースバイト)内のDS(ビットb7~b5)及びDR(ビットb3~b1)にセットされる。また、IDLE状態から通信を開始する場合、通信パラメータCPIに含まれる要素のうち最大待ち時間(FWT)及び開始フレームのガードタイム(SFGT)を示す情報が、
図4に示すATSにおけるTB(1)(インターフェースバイト)内のFWI(ビットb8~b5)及びSFGI(ビットb4~b1)にセットされる。また、IDLE状態から通信を開始する場合、通信パラメータCPIに含まれる要素のうち待機状態種別(IDLE状態)を示す情報が、
図4に示すATSにおけるT1~Tk(ヒストリカルバイト)内の何れかのビットにセットされる。
【0032】
一方、例えば、ICチップ1がHALT状態から通信を開始する場合、通信パラメータCPHに含まれる要素のうち最大フレームサイズ(FSC)を示す情報(例えば、“1111”)が、
図4に示すATSにおけるT0内のFSCI(ビットb4~b1)にセットされる。また、HALT状態から通信を開始する場合、通信パラメータCPHに含まれる要素のうち通信速度(DS)及び通信速度(DR)を示す情報が、
図4に示すATSにおけるTA(1)内のDS(ビットb7~b5)及びDR(ビットb3~b1)にセットされる。また、HALT状態から通信を開始する場合、通信パラメータCPHに含まれる要素のうち最大待ち時間(FWT)及び開始フレームのガードタイム(SFGT)を示す情報が、
図4に示すATSにおけるTB(1)内のFWI(ビットb8~b5)及びSFGI(ビットb4~b1)にセットされる。また、HALT状態から通信を開始する場合、通信パラメータCPHに含まれる要素のうち待機状態種別(HALT状態)を示す情報が、
図4に示すATSにおけるT1~Tk内の何れかのビットにセットされる。
【0033】
図5は、ATQBの符号化構成(ISO/IEC14443-3で規定される拡張フォーマット)の一例を示す図である。例えば、ICチップ1がIDLE状態から通信を開始する場合、通信パラメータCPIに含まれる要素のうち通信速度能力(BRC)を示す情報(例えば、“00000010”)が、
図5に示すATQBにおけるプロトコル情報内の第10バイト内のBRC(ビットb8~b1)にセットされる。また、IDLE状態から通信を開始する場合、通信パラメータCPIに含まれる要素のうち最大フレームサイズ(FSC)を示す情報が、
図5に示すATQBにおけるプロトコル情報内の第11バイト内のFSCI(ビットb8~b5)にセットされる。また、IDLE状態から通信を開始する場合、通信パラメータCPIに含まれる要素のうち最大待ち時間(FWT)を示す情報が、
図5に示すATQBにおけるプロトコル情報内の第12バイト内のFWI(ビットb8~b5)にセットされる。また、IDLE状態から通信を開始する場合、通信パラメータCPIに含まれる要素のうち開始フレームのガードタイム(SFGT)を示す情報が、
図5に示すATQBにおけるプロトコル情報内の第13バイト内のSFGI(ビットb8~b5)にセットされる。
【0034】
一方、例えば、ICチップ1がHALT状態から通信を開始する場合、通信パラメータCPHに含まれる要素のうち通信速度能力(BRC)を示す情報(例えば、“00000100”)が、
図5に示すATQBにおけるプロトコル情報内の第10バイト内のBRC(ビットb8~b1)にセットされる。また、HALT状態から通信を開始する場合、通信パラメータCPHに含まれる要素のうち最大フレームサイズ(FSC)を示す情報が、
図5に示すATQBにおけるプロトコル情報内の第11バイト内のFSCI(ビットb8~b5)にセットされる。また、HALT状態から通信を開始する場合、通信パラメータCPHに含まれる要素のうち最大待ち時間(FWT)を示す情報が、
図5に示すATQBにおけるプロトコル情報内の第12バイト内のFWI(ビットb8~b5)にセットされる。また、HALT状態から通信を開始する場合、通信パラメータCPHに含まれる要素のうち開始フレームのガードタイム(SFGT)を示す情報が、
図5に示すATQBにおけるプロトコル情報内の第13バイト内のSFGI(ビットb8~b5)にセットされる。
【0035】
以上のように、ICチップ1のCPU15は、IDLE状態から通信を開始する場合に通信パラメータCPIを示す情報を応答信号により外部装置2へ送信する一方、HALT状態から通信を開始する場合に通信パラメータCPHを示す情報を応答信号により外部装置2へ送信するようになっている。ここで、
図6及び
図7を参照して、IDLE状態から通信を開始する場合とHALT状態から通信を開始する場合について、ICチップ1の状態遷移に関連付けて説明する。
図6は、通信方式としてType Aを採用するICチップ1の状態遷移を示す図である。
図7は、通信方式としてType Bを採用するICチップ1の状態遷移を示す図である。なお、ICチップ1の状態遷移のための具体的な条件等については、ISO/IEC14443-3で公知であるため、説明を省略する。
【0036】
先ず、Type Aでは、
図6に示すように、ICチップ1は、外部装置2の放射する動作磁界フィールド外にあるときにはPOWER-OFF状態にあり電力が供給されていないが、動作磁界フィールドに進入したときには電力が供給されてIDLE状態に遷移する。IDLE状態において、ICチップ1は、外部装置2からREQA(Request Command Type A)またはWUPA(Wake UP command Type A)を正常に受信した場合(つまり、IDLE状態から通信を開始する場合)、上述したように、通信パラメータCPIに含まれる要素のうちICチップ1のUIDのサイズを示す情報を含むATQAを外部装置2へ送信し、READY状態に遷移する。READY状態において、ICチップ1は、外部装置2によりICチップ1のUIDが選択されると、ACTIVE状態に遷移する。ACTIVE状態において、ICチップ1は、外部装置2からRATS(Request for Answer To Select)を受信した場合(この場合も、ACTIVE状態を介するがIDLE状態から通信を開始する場合に該当)、上述したように、通信パラメータCPIに含まれる要素のうち最大フレームサイズ(FSC)、通信速度(DS)及び通信速度(DR)等を示す情報を含むATSを外部装置2へ送信し、PROTOCOL状態に遷移する。
【0037】
一方、ACTIVE状態において、ICチップ1は、外部装置2からHLTA(HaLT command, Type A)を正常に受信した場合、HALT状態に遷移する。かかるHALT状態は、WUPAのみ受信可能な状態である。HALT状態において、ICチップ1は、外部装置2からWUPAを正常に受信した場合(つまり、HALT状態から通信を開始する場合)、上述したように、通信パラメータCPHに含まれる要素のうちICチップ1のUIDのサイズを示す情報を含むATQAを外部装置2へ送信し、READY*状態に遷移する。READY*状態において、ICチップ1は、外部装置2によりICチップ1のUIDが選択されると、ACTIVE*状態に遷移する。ACTIVE*状態において、ICチップ1は、外部装置2からRATSを受信した場合(この場合も、ACTIVE*状態を介するがHALT状態から通信を開始する場合に該当)、上述したように、通信パラメータCPHに含まれる要素のうち最大フレームサイズ(FSC)、通信速度(DS)及び通信速度(DR)等を示す情報を含むATSを外部装置2へ送信し、PROTOCOL状態に遷移する。
【0038】
次に、Type Bでは、
図7に示すように、ICチップ1は、Type Aと同様、動作磁界フィールドに進入したときには電力が供給されてIDLE状態に遷移する。IDLE状態において、ICチップ1は、外部装置2からREQB(Request Command Type B)またはWUPBを正常に受信した場合(つまり、IDLE状態から通信を開始する場合)、上述したように、通信パラメータCPIに含まれる要素のうち通信速度能力(BRC)及び最大フレームサイズ(FSC)等を示す情報を含むATQBを外部装置2へ送信し、READY-REQUESTED状態またはREADY-DECLARED状態に遷移する。READY-DECLARED状態において、ICチップ1は、外部装置2からATTRIB(PICC selection command, Type B)を正常に受信した場合、PROTOCOL状態に遷移する。他方、READY-DECLARED状態において、ICチップ1は、外部装置2からHLTB(HaLT command, Type B)を正常に受信した場合、HALT状態に遷移する。かかるHALT状態は、WUPBのみ受信可能な状態である。HALT状態において、ICチップ1は、外部装置2からWUPBを正常に受信した場合(つまり、HALT状態から通信を開始する場合)、上述したように、通信パラメータCPHに含まれる要素のうち通信速度能力(BRC)及び最大フレームサイズ(FSC)等を示す情報を含むATQBを外部装置2へ送信し、READY-REQUESTED状態またはREADY-DECLARED状態に遷移する。
【0039】
。
[2.ICチップ1の動作]
次に、
図8を参照して、ICチップ1の動作について説明する。
図8は、ICチップ1のCPU15により実行される通信パラメータ送信処理の一例を示すフローチャートである。
図8に示す処理は、ICチップ1がIDLE状態またはHALT状態にある場合において、外部装置2からコマンド(REQA、WUPA、REQB、またはWUPB)が受信された場合に開始される。
図8に示す処理が開始されると、CPU15は、ICチップ1の現在の状態が、IDLE状態であるか、またはHALT状態とであるかを判定する(ステップS1)。ICチップ1の現在の状態がIDLE状態であると判定された場合(ステップS1:IDLE状態)、処理はステップS2へ進む。一方、ICチップ1の現在の状態がHALT状態であると判定された場合(ステップS1:HALT状態)、処理はステップS6へ進む。
【0040】
ステップS2では、CPU15は、IDLE状態に対応する通信パラメータCPIを検索する。例えば、通信パラメータCPIを示す情報を管理するファイル有無が検索される。次いで、CPU15は、ステップS2の検索結果に基づいて、IDLE状態に対応する通信パラメータCPIが設定されているか(つまり、NVM13に記憶されているか)否かを判定する(ステップS3)。IDLE状態に対応する通信パラメータCPIが設定されていると判定された場合(ステップS3:YES)、例えば、通信パラメータCPIを示す情報を管理するファイルが発見された場合、処理はステップS4へ進む。一方、IDLE状態に対応する通信パラメータCPIが設定されていないと判定された場合(ステップS3:NO)、処理はステップS5へ進む。
【0041】
ステップS4では、CPU15は、通信パラメータCPIを示す情報をNVM13から読み出し、これを上述した応答信号にセット(必要に応じてデータ形式を調整)し、処理をステップS9へ進める。一方、ステップS5では、CPU15は、デフォルトの通信パラメータCPDを示す情報をNVM13から読み出し、これを上述した応答信号にセットし、処理をステップS9へ進める。
【0042】
一方、ステップS6では、CPU15は、HALT状態に対応する通信パラメータCPHを検索する。例えば、通信パラメータCPHを示す情報を管理するファイルの有無が検索される。次いで、CPU15は、ステップS6の検索結果に基づいて、HALT状態に対応する通信パラメータCPHが設定されているか(つまり、NVM13に記憶されているか)否かを判定する(ステップS7)。HALT状態に対応する通信パラメータCPHが設定されていると判定された場合(ステップS7:YES)、例えば、通信パラメータCPHを示す情報を管理するファイルが発見された場合、処理はステップS8へ進む。一方、HALT状態に対応する通信パラメータCPHが設定されていないと判定された場合(ステップS7:NO)、処理はステップS5へ移行する。
【0043】
ステップS8では、CPU15は、通信パラメータCPHを示す情報をNVM13から読み出し、これを上述した応答信号にセット(必要に応じてデータ形式を調整)し、処理をステップS9へ進める。ステップS9では、CPU15は、ステップS4,S5,またはS8で通信パラメータを示す情報がセットされた応答信号をI/O回路11及びアンテナを介して外部装置2へ送信し、処理を終了する。以上説明した
図8に示す処理は、本発明を実施するために、既存のICチップ1にも汎用的に適用することができる。
【0044】
以上説明したように、上記実施形態によれば、ICチップ1は、IDLE状態から通信を開始する場合に通信パラメータCPIを示す情報を応答信号により外部装置2へ送信する一方、HALT状態から通信を開始する場合に通信パラメータCPHを示す情報を応答信号により外部装置2へ送信するように構成したので、IDLE状態とHALT状態との2種類の待機状態に応じた2種類の通信パラメータを外部装置2に提示することができる。したがって、外部装置2は、異なるタイミングで提示された2種類の通信パラメータのうち、外部装置2にとって、より適した通信パラメータを切り替えてICチップ1との間で通信を行うことができるので、通信性能を向上させることができる。さらに、上記実施形態によれば、ICチップ1は、IDLE状態から通信を開始する場合にIDLE状態を示す情報を、通信パラメータCPIを示す情報に含めて外部装置2へ送信する一方、HALT状態から通信を開始する場合にHALT状態を示す情報を、通信パラメータCPHを示す情報に含めて外部装置2へ送信するように構成したので、外部装置2はICチップ1からの応答信号を受信するとただちにICチップ1の現在の状態を認識できるので、より迅速に通信パラメータを切り替えることができる。
【0045】
なお、上記実施形態においては、ICチップ1と外部装置2とが非接触通信を行う場合について説明したが、本発明はICチップ1と外部装置2とが接触通信を行う場合にも適用可能である。この場合、ICチップ1は、コールドリセット(つまり、ICチップ1が活性化された直後に実行されるリセット)の受信待機状態(第1待機状態の一例)から接触通信を開始する場合の第1通信パラメータを示す情報と、ウォームリセット(つまり、電圧及びクロックが安定状態にあるときに実行されるリセット)の受信待機状態(第2待機状態の一例)から接触通信を開始する場合の第2通信パラメータを示す情報とを記憶しておく。そして、ICチップ1は、コールドリセットの受信待機状態から当該コールドリセットを受信して接触通信を開始する場合に第1通信パラメータを示す情報を外部装置2へ送信する一方、ウォームリセットの受信待機状態から当該ウォームリセットを受信して接触通信を開始する場合に第2通信パラメータを示す情報を外部装置2へ送信する。
【符号の説明】
【0046】
1 ICチップ
11 I/O回路
11a 電力供給回路
11b クロック生成回路
11c 変復調回路
12 RAM
13 NVM
14 ROM
15 CPU