(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173093
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/12 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
C08J9/12 CET
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091232
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】奥田 彰
(72)【発明者】
【氏名】星野 悠河
(72)【発明者】
【氏名】小暮 直親
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA13
4F074AA32
4F074AA64
4F074AC02
4F074AC17
4F074AD05
4F074AD11
4F074AD13
4F074AG04
4F074AG10
4F074AG11
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4F074BA34
4F074BA38
4F074BA53
4F074BA73
4F074BA75
4F074BC12
4F074CA22
4F074DA02
4F074DA07
4F074DA12
4F074DA18
4F074DA23
4F074DA32
4F074DA58
(57)【要約】
【課題】押出発泡板の連続生産性に優れ、かつ、高い難燃性および優れた表面性を有する押出発泡板を得ることが可能な、押出発泡板の製造方法を提供すること。
【解決手段】
ポリスチレン系樹脂を主成分とする基材樹脂、臭素系難燃剤、物理発泡剤および無機輻射抑制粉体を混練してなる発泡性溶融樹脂組成物を押出発泡させる工程を含む、ポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法であって、前記基材樹脂100質量部に対する前記無機輻射抑制粉体の添加量が0.1質量部以上10質量部以下であり、前記基材樹脂100質量部に対する前記臭素系難燃剤の添加量が1質量部以上10質量部以下であり、前記発泡性溶融樹脂組成物は、エチレンビスステアリン酸アミドを含み、前記基材樹脂100質量部に対する前記エチレンビスステアリン酸アミドの添加量が0.15質量部以上8質量部以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂を主成分とする基材樹脂、臭素系難燃剤、物理発泡剤および無機輻射抑制粉体を混練してなる発泡性溶融樹脂組成物を押出発泡させる工程を含む、ポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法であって、
前記基材樹脂100質量部に対する前記無機輻射抑制粉体の添加量が0.1質量部以上10質量部以下であり、前記基材樹脂100質量部に対する前記臭素系難燃剤の添加量が1質量部以上10質量部以下であり、前記発泡性溶融樹脂組成物は、エチレンビスステアリン酸アミドを含み、前記基材樹脂100質量部に対する前記エチレンビスステアリン酸アミドの添加量が0.15質量部以上8質量部以下であることを特徴とするポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法。
【請求項2】
前記臭素系難燃剤は、ブタジエン-スチレン共重合体の臭素化物、2,3-ジブロモ-2-アルキルプロピル基を有する化合物および2,3-ジブロモプロピル基を有する化合物から選択される1種以上を含み、前記ブタジエン-スチレン共重合体の臭素化物、前記2,3-ジブロモ-2-アルキルプロピル基を有する化合物および前記2,3-ジブロモプロピル基を有する化合物の総添加量に対する前記エチレンビスステアリン酸アミドの添加量の比が0.1以上2以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法。
【請求項3】
前記臭素系難燃剤が前記ブタジエン-スチレン共重合体の臭素化物を50質量%以上含むことを特徴とする請求項1または2に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法。
【請求項4】
前記無機輻射抑制粉体がグラファイトを含み、前記基材樹脂100質量部に対する前記グラファイトの添加量が0.2質量部以上5質量部以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法に関し、詳しくは、建築物の壁、床、屋根等の断熱材として好適に使用可能なポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のポリスチレン系樹脂押出発泡体(以下、「押出発泡体」ともいう。)の製造方法では、ポリスチレン系樹脂材料に気泡調整剤を加え、押出機で加熱溶融混練し、次いで物理発泡剤を押出機中に圧入して更に混練し、これらの発泡性溶融樹脂組成物を高圧域から低圧域(通常は大気中)に押し出すことで、連続的に押出発泡体が製造されている。
【0003】
そして、押出発泡体を建築用の断熱材として使用するためには、例えば、JIS A9521: 2022記載の押出法ポリスチレンフォーム断熱材の燃焼性規格を満足することが要求される。
【0004】
そこで、押出発泡体に難燃性を付与するために、難燃剤として臭素系難燃剤を使用することが提案されている。具体的には、例えば、特許文献1には、難燃剤として、(a)2,3-ジブロモプロピル基を有する含臭素有機化合物と、(b)2,3-ジブロモ-2-アルキルプロピル基を有する含臭素有機化合物との混合物を用いることが記載されている。また、特許文献2には、難燃剤として、臭素化ブタジエン共重合体を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-275528号公報
【特許文献2】特表2009-516019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、臭素系難燃剤を使用してポリスチレン系樹脂押出発泡板を製造する場合、長時間連続して成形すると、押出発泡板の表面にスジ割れが発生したり(表面性の低下)、押出機のダイリップに汚れが蓄積し、これが原因で、押出発泡板の側端部に樹脂詰まりが発生したりする(連続生産性の低下)。したがって、臭素系難燃剤を使用して押出発泡板を製造する場合は、定期的にダイリップ表面の汚れを除去する必要があるが、ダイリップ表面の汚れを除去するには、連続成形を中断し、ダイリップ周辺の温度が下がった後で汚れを除去する必要がある。このため、製造効率が低下し、また、再加熱するための熱エネルギーロスも生じるといった問題があった。したがって、臭素系難燃剤を使用してポリスチレン系樹脂押出発泡板を製造する場合は、押出発泡板の表面性と連続生産性を向上させるための技術が望まれていた。
【0007】
また、特に、押出発泡板の断熱性を向上させるために、発泡性溶融樹脂組成物に、グラファイトなどの無機輻射抑制粉体を添加した場合には、さらに押出機のダイリップに汚れが蓄積しやすくなるため、前記の問題が顕著になる傾向があった。
【0008】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、押出発泡板の連続生産性に優れ、かつ、高い難燃性および優れた表面性を有する押出発泡板を得ることが可能な、押出発泡板の製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するため、以下のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法が提供される。
【0010】
[1]ポリスチレン系樹脂を主成分とする基材樹脂、臭素系難燃剤、物理発泡剤および無機輻射抑制粉体を混練してなる発泡性溶融樹脂組成物を押出発泡させる工程を含む、ポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法であって、
前記基材樹脂100質量部に対する前記無機輻射抑制粉体の添加量が0.1質量部以上10質量部以下であり、前記基材樹脂100質量部に対する前記臭素系難燃剤の添加量が1質量部以上10質量部以下であり、前記発泡性溶融樹脂組成物は、エチレンビスステアリン酸アミドを含み、前記基材樹脂100質量部に対する前記エチレンビスステアリン酸アミドの添加量が0.15質量部以上8質量部以下であることを特徴とするポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法。
[2]前記臭素系難燃剤は、ブタジエン-スチレン共重合体の臭素化物、2,3-ジブロモ-2-アルキルプロピル基を有する化合物および2,3-ジブロモプロピル基を有する化合物から選択される1種以上を含み、前記ブタジエン-スチレン共重合体の臭素化物、前記2,3-ジブロモ-2-アルキルプロピル基を有する化合物および前記2,3-ジブロモプロピル基を有する化合物の総添加量に対する前記エチレンビスステアリン酸アミドの添加量の比が0.1以上2以下であることを特徴とする前記[1]に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法。
[3]前記臭素系難燃剤が前記ブタジエン-スチレン共重合体の臭素化物を50質量%以上含むことを特徴とする前記[1]または[2]に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法。
[4]前記無機輻射抑制粉体がグラファイトを含み、前記基材樹脂100質量部に対する前記グラファイトの添加量が0.2質量部以上5質量部以下であることを特徴とする前記[1]から[3]に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法によれば、押出発泡板の高い難燃性を維持しつつ、押出発泡板の連続生産性に優れ、かつ、優れた表面性を有する押出発泡板を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法の一実施形態について説明する。
【0013】
本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法は、ポリスチレン系樹脂を主成分とする基材樹脂、臭素系難燃剤、物理発泡剤および無機輻射抑制粉体などを含む材料を混練してなる発泡性溶融樹脂組成物を押出発泡させる工程を含む方法により、ポリスチレン系樹脂押出発泡板(以下、単に「押出発泡板」と記載する場合がある)を製造する方法である。
【0014】
具体的には、例えば、基材樹脂に、臭素系難燃剤、無機輻射抑制粉体、添加剤を加えて押出機に供給し、加熱混練し、次いで物理発泡剤を押出機中に圧入し、さらに混練して発泡性樹脂組成物とする。この発泡性樹脂組成物を高圧域から低圧域(通常は大気中)に押し出して発泡させ、得られた発泡体を押出機のダイ出口に連結された賦形装置(ガイダー等)を用いて板状に賦形した後、長さ方向に対して垂直方向に切断することにより、表面スキンを有するポリスチレン系樹脂押出発泡板が製造される。賦形装置としては、例えば、上下一対のポリテトラフルオロエチレン製の板で構成される装置を用いることができる。なお、得られた押出発泡板の幅方向と厚み方向の表面を切削加工して表面スキンを切除することもできる。
【0015】
本発明の製造方法によって製造されるポリスチレン系樹脂押出発泡板は、見掛け密度が20kg/m3以上50kg/m3以下、幅が300mm以上、押出方向垂直断面積が100cm2以上であることが好ましい。
【0016】
ポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造において、臭素系難燃剤を使用して長時間連続して成形すると、押出発泡板の表面にスジ割れが発生したり(表面性の低下)、押出機のダイリップに汚れが蓄積し、押出発泡板の側端部に樹脂詰まりが発生したりする(連続生産性の低下)。したがって、臭素系難燃剤を使用して押出発泡板を製造する場合は、定期的にダイリップ表面の汚れを除去する必要があるため、製造効率が低下し、また、ダイリップ表面の汚れを除去した後に再加熱するため熱エネルギーロスも生じるといった問題があった。これらの問題は、臭素系難燃剤を使用することが主な原因と考えられる。また、特に、押出発泡板の断熱性を向上させるために、発泡性溶融樹脂組成物にグラファイトなどの無機輻射抑制粉体を添加した場合には、さらに押出機のダイリップに汚れが蓄積しやすくなるため前記の問題が顕著になる傾向があった。本発明の製造方法では、臭素系難燃剤及び無機輻射抑制粉体を含んでいてもエチレンビスステアリン酸アミドを特定量含むことにより、長時間連続成形した際のダイリップ表面の汚れの発生を抑制することができるため、押出発泡板の連続生産性に優れ、かつ、優れた表面性を有する押出発泡板を得ることができる。
【0017】
<基材樹脂>
基材樹脂は、ポリスチレン系樹脂を主成分とするものである。ここで、「主成分とする」とは、基材樹脂中のポリスチレン系樹脂の含有量が50質量%以上であることを言う。基材樹脂中のポリスチレン系樹脂の含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
【0018】
(ポリスチレン系樹脂)
ポリスチレン系樹脂は、スチレンを主体とする重合体であり、スチレン単独重合体や、ビニル系単量体とスチレンとの共重合体を用いることができる。
【0019】
具体的には、ポリスチレン系樹脂は、例えば、ポリスチレン、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-ポリフェニレンエーテル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-メチルスチレン共重合体、スチレン-ジメチルスチレン共重合体、スチレン-エチルスチレン共重合体、スチレン-ジエチルスチレン共重合体等から選択される1種または2種以上を例示することができる。なお、後述するブタジエン-スチレン共重合体の臭素化物は、ビニル系単量体とスチレンとの共重合体に含まれないものとする。
【0020】
前記共重合体中のスチレン成分の含有量は、好ましくは60mol%以上、より好ましくは80mol%以上、さらに好ましくは90mol%以上である。また、ポリスチレン系樹脂には、ジビニルベンゼンや多分岐状マクロモノマー等の多官能性モノマー単位成分が含まれていてもよい。
【0021】
また、ポリスチレン系樹脂の溶融粘度は、発泡性や成形性の観点から、200℃、剪断速度100sec-1の条件下で、500~3000Pa・sであることが好ましく、より好ましくは700~2500Pa・s、さらに好ましくは800~2000Pa・sである。
【0022】
(その他の重合体)
基材樹脂は、押出発泡板の断熱性を高めるために非晶性ポリエチレンテレフタレート系共重合体を含むことができる。この場合、非晶性ポリエチレンテレフタレート系共重合体は、基材樹脂中に5質量%以上50質量%未満となるように配合することが好ましく、より好ましくは10質量%以上40質量%以下、更に好ましくは15質量%以上30質量%以下である。なお、非晶性ポリエチレンテレフタレート系共重合体は、JIS K7122に基づく樹脂の融解に伴う融解熱量が5J/g未満である。融解熱量は、JIS K7122(1987)に記載の「一定の熱処理を行った後、融解熱を測定する場合」(試験片の状態調節における加熱速度と冷却速度は、いずれも10℃/分とする。)を採用し、熱流束示差走査熱量測定装置を使用して得られるDSC曲線に基づいて測定されるものである。
【0023】
また、本発明の目的を阻害しない範囲内で、基材樹脂中に、非晶性ポリエチレンテレフタレート系共重合体以外のポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン系エラストマーやポリフェニレンエーテル樹脂のような他の重合体を、配合目的に応じて混合して使用することもできる。そのような他の重合体の使用量は、基材樹脂中(基材樹脂を100質量%として)に、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。
【0024】
<臭素系難燃剤>
本発明の製造方法により得られる押出発泡板は、主として建材用の断熱材として使用されるものであるため、本発明の製造方法では、臭素系難燃剤を基材樹脂に配合することで難燃性を付与する。臭素系難燃剤としては押出発泡板に難燃性を付与するために用いられる従来公知の臭素系難燃剤を使用することができる。
【0025】
臭素系難燃剤は、ブタジエン-スチレン共重合体の臭素化物、2,3-ジブロモ-2-アルキルプロピル基を有する化合物および2,3-ジブロモプロピル基を有する化合物から選択される1種以上を含むことが好ましい。なかでも、臭素系難燃剤は、臭素系難燃剤中にブタジエン-スチレン共重合体の臭素化物を50質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むことがより好ましく、80質量%以上含むことがさらに好ましい。特に、臭素系難燃剤がブタジエン-スチレン共重合体の臭素化物であること(ブタジエン-スチレン共重合体の含有量が100質量%であること)が好ましい。
【0026】
ブタジエン-スチレン共重合体の臭素化物は、ブタジエン-スチレンブロック共重合体の臭素化物、ブタジエン-スチレンランダム共重合体の臭素化物、ブタジエン-スチレングラフト共重合体の臭素化物等のうちの1種または2種以上を例示することができる。
【0027】
また、ブタジエン-スチレン共重合体の臭素化物は、重量平均分子量が少なくとも1000以上であることが好ましく、臭素含有率が50~80重量%であることが好ましい。
なお、一般に、ブタジエン-スチレン共重合体の臭素化物を用いて押出発泡する場合、得られる押出発泡板の難燃性が優れるものの、発泡性溶融樹脂組成物の粘度が高くなるため押出発泡板の表面性が特に悪化しやすく、また、連続生産した際に押出発泡板の側端部の樹脂詰まりが特に発生しやすくなる傾向がある。一方、本発明においては、押出発泡板の表面性及び連続生産性が悪化しやすいブタジエン-スチレン共重合体の臭素化物を用いた場合であっても優れた表面性及び連続生産性を有し、かつ優れた難燃性を有する押出発泡板とすることができる。
【0028】
2,3-ジブロモ-2-アルキルプロピル基を有する化合物は、例えば、テトラブロモビスフェノール-A-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノール-S-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノール-F-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル)などが挙げられる。難燃性能に優れるという観点からは、2,3-ジブロモ-2-アルキルプロピル基を有する化合物は、テトラブロモビスフェノール-A-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル)であることが好ましい。
【0029】
2,3-ジブロモプロピル基を有する化合物は、例えば、テトラブロモビスフェノール-A-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノール-S-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノール-F-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレートおよびトリス(2,3-ジブロモプロピル)シアヌレートなどが挙げられる。熱安定性に優れるという観点からは、2,3-ジブロモプロピル基を有する化合物は、テトラブロモビスフェノール-A-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)であることが好ましい。
【0030】
2,3-ジブロモ-2-アルキルプロピル基を有する化合物および2,3-ジブロモプロピル基を有する化合物は、両者を含む複合難燃剤の形態であることが好ましい。ここで、複合難燃剤は、2種以上の難燃剤の混合物の形態であってもよいし、2種以上の難燃剤を含み、各難燃剤が別々に基材樹脂に添加される形態であってもよい。複合難燃剤を使用することで、押出発泡板に高い難燃性が付与でき、かつ押出時にポリスチレン系樹脂を分解させにくく、また、低見掛け密度(高発泡倍率)で、安定して押出発泡板を得ることが容易となる。
【0031】
2,3-ジブロモ-2-アルキルプロピル基を有する化合物の添加量(S1)と、2,3-ジブロモプロピル基を有する化合物の添加量(S2)の比(S1:S2)は、質量基準で50:50~80:20であることが好ましく、55:45~70:30であることがより好ましい。前記の比をこの範囲内とすることにより、より高い熱安定性を付与することができる。
【0032】
その他の臭素系難燃剤としては、例えば、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノール-A-ビス(2-ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノール-A-ビス(アリルエーテル)、テトラブロモビスフェノールS、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモシクロオクタン、トリブロモフェノール、デカブロモジフェニルオキサイド、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、臭素化ポリスチレンなどのうちの1種または2種以上を例示することができる。その他の臭素系難燃剤の添加量は、臭素系難燃剤の添加量全体に対して20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0033】
本発明の製造方法においては、基材樹脂100質量部に対する臭素系難燃剤の添加量が1質量部以上10質量部以下である。臭素系難燃剤の添加量がこの範囲であると、押出発泡板に高度な難燃性を付与できる。さらに、発泡性を阻害することなく、高度な難燃性を有する押出発泡板を得る観点から、基材樹脂100質量部に対する臭素系難燃剤の添加量は、1質量部以上8質量部以下であることが好ましく、1質量部以上6質量部以下であることがより好ましい。
【0034】
<その他の難燃剤>
本発明の製造方法においては、本発明の目的、効果を阻害しない範囲において、前記の臭素系難燃剤以外の難燃剤を含んでいても良い。
【0035】
難燃剤を基材樹脂へ配合する方法としては、所定割合の難燃剤を基材樹脂と共に押出機の上流部に設けられている原料供給部に供給し、押出機中にて基材樹脂と共に混練する方法を例示することができる。その他、押出機中に設けられた難燃剤供給部より樹脂溶融物中に難燃剤を供給することもできる。なお、難燃剤を押出機に供給する場合、難燃剤と基材樹脂とをドライブレンドしたものを押出機に供給する方法、予め加熱溶融させた液状の難燃剤を押出機内に供給する方法や、難燃剤およびベースレジンとしての基材樹脂を含むマスターバッチを作製して基材樹脂と共に押出機に供給する方法を採用することができる。特に、分散性の観点から難燃剤を含むマスターバッチを作製して押出機に基材樹脂と共に供給する方法を採用することが好ましい。
【0036】
<難燃助剤>
本発明の製造方法では、難燃剤に加え、難燃助剤を添加することができる。難燃助剤としては、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、2,3-ジエチル-2,3-ジフェニルブタン、3,4-ジメチル-3,4-ジフェニルヘキサン、3,4-ジエチル-3,4-ジフェニルヘキサン、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、2,4-ジフェニル-4-エチル-1-ペンテン等のジフェニルアルカンやジフェニルアルケン、三酸化アンチモン、五酸化二アンチモン、硫酸アンモニウム、すず酸亜鉛、シアヌル酸、イソシアヌル酸、トリアリルイソシアヌレート、メラミンシアヌレート、メラミン、メラム、メレム等の窒素含有環状化合物、シリコーン系化合物、酸化ホウ素、ホウ酸亜鉛、硫化亜鉛などの無機化合物、赤リン系、ポリリン酸アンモニウム、フォスファゼン等のリン系化合物等のうちの1種または2種以上を例示することができる。なお、難燃助剤の配合方法についても難燃剤と同様である。
【0037】
<エチレンビスステアリン酸アミド>
本発明の製造方法では、発泡性溶融樹脂組成物がエチレンビスステアリン酸アミド(以下、「EBSA」と記載する場合がある)を含む。
【0038】
エチレンビスステアリン酸アミドを添加する方法としては、所定割合のエチレンビスステアリン酸アミドを基材樹脂と共に押出機の上流部に設けられている原料供給部に供給し、押出機中にて基材樹脂と共に混練する方法を例示することができる。また、押出機中に設けられた供給部より樹脂溶融物中にエチレンビスステアリン酸アミドを供給することもできる。その他、例えば、臭素系難燃剤または気泡調整剤などと、エチレンビスステアリン酸アミドとを含むマスターバッチ(ポリスチレン系樹脂などの樹脂を含む)として添加する形態を例示することができる。また、別の形態としては、例えば、エチレンビスステアリン酸アミドと難燃剤からなる溶融混練物(ポリスチレン系樹脂などの樹脂を含まない)として添加する形態を例示することができる。長時間連続成形した際のダイリップ表面の汚れの発生を抑制する観点からは、エチレンビスステアリン酸アミドと臭素系難燃剤とポリスチレン系樹脂などの樹脂を含むマスターバッチとしてエチレンビスステアリン酸アミドを添加することが好ましい。同様の観点から、エチレンビスステアリン酸アミドと臭素系難燃剤からなる溶融混練物としてエチレンビスステアリン酸アミドを添加することが好ましい。
【0039】
基材樹脂100質量部に対するエチレンビスステアリン酸アミドの添加量は、0.15質量部以上8質量部以下である。エチレンビスステアリン酸アミドの添加量がこの範囲であると、長時間連続成形した際のダイリップ表面の汚れの発生を抑制することができるため、押出発泡板の連続生産性に優れ、かつ、優れた表面性を有する押出発泡板を得ることができる。この観点から、基材樹脂100質量部に対するエチレンビスステアリン酸アミドの添加量は、0.2質量部以上4質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以上2.5質量部以下であることがより好ましい。
【0040】
そして、発泡性溶融樹脂組成物がエチレンビスステアリン酸アミドを含むことによって以下の効果が得られると推測される。エチレンビスステアリン酸アミドは、金型内部での摩擦を低減することにより連続生産性および表面性の改善の効果がある。一方、エチレンビスステアリン酸アミドは、一般に滑剤として使用されるステアリン酸モノグリセリドと比較してポリスチレン系樹脂との相溶性が低いため発泡性溶融樹脂組成物の粘度が低下しにくく、発泡時に必要な圧力を保持しやすいため押出発泡板の製造安定性の改善に効果的であると考えられる。
【0041】
ブタジエン-スチレン共重合体の臭素化物、2,3-ジブロモ-2-アルキルプロピル基を有する化合物および2,3-ジブロモプロピル基を有する化合物の総添加量と、エチレンビスステアリン酸アミドの添加量との合計添加量は、基材樹脂100質量部に対して、1.5質量部以上10質量部以下であることが好ましく、2質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。前記の合計添加量がこの範囲であると、長時間連続成形した際のダイリップ表面の汚れの発生を抑制することができるため、押出発泡板の連続生産性に優れ、かつ、優れた表面性を有する押出発泡板を得ることができるという効果がより得られ易くなる。
【0042】
ブタジエン-スチレン共重合体の臭素化物、2,3-ジブロモ-2-アルキルプロピル基を有する化合物および2,3-ジブロモプロピル基を有する化合物の総添加量(臭素系難燃剤)に対するエチレンビスステアリン酸アミド(EBSA)の添加量の比(EBSA/臭素系難燃剤)は、0.1以上2以下であることが好ましく、0.2以上1以下であることがより好ましい。前記の添加量の比(EBSA/臭素系難燃剤)が、この範囲であると長時間連続成形した際のダイリップ表面の汚れの発生を抑制することができるため押出発泡板の連続生産性に優れるという効果を維持しつつ、かつ、特に優れた表面性を有する押出発泡板とすることができる。
【0043】
後述する無機輻射抑制粉体の添加量と、エチレンビスステアリン酸アミド(EBSA)の添加量との比(無機輻射抑制粉体/EBSA)は、0.1以上10以下であることが好ましく、0.3以上8以下であることがより好ましく、0.5以上7以下であることがさらに好ましい。前記の添加量の比(無機輻射抑制粉体/EBSA)が、この範囲であると、より長時間連続成形した際のダイリップ表面の汚れの発生を抑制することができるため、押出発泡板の連続生産性に優れ、かつ、高い断熱性とより優れた表面性とを有する押出発泡板をさらに得られ易くすることができる。
【0044】
<物理発泡剤>
本発明の製造方法で用いられる物理発泡剤は、有機物理発泡剤や無機物理発泡剤である。有機物理発泡剤としては、例えば、炭素数3~5の脂肪族飽和炭化水素、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、炭素数1~5の脂肪族アルコール、エーテル類、塩化アルキル類が挙げられる。無機物理発泡剤としては、例えば、水、二酸化炭素、窒素などが挙げられる。これらの発泡剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0045】
本発明の製造方法で用いられる物理発泡剤としては、環境への負荷が小さく、ガス透過速度が比較的遅い物理発泡剤であることから、炭素数3~5の飽和脂肪族炭化水素及びハイドロフルオロオレフィン(HFO)から選択される1種以上を使用することが好ましい。
【0046】
炭素数3~5の飽和脂肪族炭化水素としては、プロパン、n-ブタン、i-ブタン、n-ペンタン、i-ペンタン、シクロペンタン、ネオペンタンなどが挙げられる。また、これらを2種以上併用することもできる。これらの中でもイソブタンを好適に用いることができる。
【0047】
炭素数3~5の飽和脂肪族炭化水素の添加量は、基材樹脂1kg当たり0.1mol以上0.8mol以下であることが好ましく、より好ましくは0.2mol以上0.7mol以下である。炭素数3~5の脂肪族飽和炭化水素の添加量が以上の範囲内にあることで、長期断熱性に優れると共に見掛け密度が低く、優れた難燃性を維持することができる。
【0048】
ハイドロフルオロオレフィンとしては、具体的には、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(以下、HFO1234zeともいう)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(以下、HFO1233zdともいう)、1-クロロ-2,3,3,3-テロラフルオロプロペン(以下、HFO1224ydともいう)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO1234yf)、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO1336mzz)等を例示することができる。これらの発泡剤は単独でまたは2種以上を併用することもできる。なお、ハイドロフルオロオレフィンは、オゾン破壊係数がゼロであり、地球温暖化係数が非常に小さい他、気体状態の熱伝導率が低く、不燃性である。
【0049】
ハイドロフルオロオレフィンの中でも、HFO1234ze、HFO1233zd、HFO1224yd及びHFO1336mzzから選択される1種以上を用いることが好ましい。さらに、前記ハイドロフルオロオレフィンの中でも、発泡性に優れ、押出方向垂直断面積が大きな押出発泡板が得られ易いという観点からはHFO1233zdが好ましい。
【0050】
ハイドロフルオロオレフィンの添加量は、基材樹脂1kg当たり0.05mol以上0.7mol以下であることが好ましい。ハイドロフルオロオレフィンの添加量がこの範囲であると、見掛け密度が低く、押出発泡板の連続生産性(連続成形性)が良好であり、また、押出発泡後の発泡断熱板中にハイドロフルオロオレフィンが有効量残存して、長期断熱性に優れる押出発泡板となる。この観点から、ハイドロフルオロオレフィンの添加量は、基材樹脂1kg当たり0.1mol以上0.6mol以下であることがより好ましい。
【0051】
また、物理発泡剤として、前記ガス透過速度が比較的遅い物理発泡剤以外にガス透過速度が比較的速い物理発泡剤も使用することができ、さらに、ガス透過速度が比較的遅い物理発泡剤とガス透過速度が比較的速い物理発泡剤とを併用することもできる。ガス透過速度が比較的速い物理発泡剤を使用すると、得られる押出発泡板の見掛け密度を低下させる効果があると共に、押出発泡板から早期に逸散して発泡板の断熱性能及び難燃性能を早期に安定化させることができる。ガス透過速度が比較的速い物理発泡剤として、炭素数1~5の脂肪族アルコール、エーテル類、水及び二酸化炭素を例示することができる。これらの発泡剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0052】
得られる押出発泡板の製造時の安全性や押出発泡体の難燃性の点から、物理発泡剤として、前記ガス透過速度が比較的遅い物理発泡剤と、前記ガス透過速度が比較的速い物理発泡剤とを併用することが好ましい。
【0053】
炭素数1~5の脂肪族アルコールとしては、例えばメチルアルコール(メタノール)、エチルアルコール(エタノール)、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール(イソブチルアルコール)、tert-ブチルアルコール、アリールアルコール、クロチルアルコール、プロパギルアルコール、n-アミルアルコール,sec-アミルアルコール,イソアミルアルコール、tert-アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール等が挙げられる。これらの中では、エタノールが環境および人体への安全性に優れるため好ましい。
【0054】
炭素数1~5の脂肪族アルコールの添加量は、基材樹脂1kg当たり、0.01mol以上0.5mol以下であることが好ましく、より好ましくは0.03mol以上0.4mol以下であり、さらに好ましくは0.05mol以上0.25mol以下である。
【0055】
エーテル類としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどが挙げられる。
【0056】
エーテル類の添加量は、基材樹脂1kg当たり、0.1mol以上0.6mol以下であることが好ましく、より好ましくは0.15mol以上0.5mol以下であり、さらに好ましくは0.2mol以上0.45mol以下である。
【0057】
塩化アルキル類としては、例えば、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチルなどの蟻酸エステル類、塩化メチル、塩化エチル等が挙げられる。
【0058】
水の添加量は、基材樹脂1kg当たり、好ましくは0.05mol以上0.4mol以下であり、より好ましくは0.1mol以上0.25mol以下である。
【0059】
<無機輻射抑制粉体>
本発明の製造方法においては、赤外線の輻射による伝熱を抑制することにより断熱性を向上させるために、発泡性樹脂溶融組成物に無機輻射抑制粉体を添加する。
【0060】
押出発泡板の製造安定性に影響を与えることなく、断熱性を良好にする観点から、無機輻射抑制粉体の添加量は、基材樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下であり、好ましくは、0.5質量部以上8質量部以下であり、より好ましくは1質量部以上7質量部以下である。
【0061】
無機輻射抑制粉体とは、赤外線吸収効果を有するものや、赤外線反射効果を有するものをいう。無機輻射抑制粉体としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物、アルミニウム等の金属、カーボンブラック、黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ、活性炭等のカーボン等を例示することができる。これらは、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。無機輻射抑制粉体は、グラファイトまたは酸化チタンのうちの少なくともいずれかを含むことが好ましい。なお、本発明において、粉体とは多数の微小な固体粒子の集合体のことをいう。
【0062】
グラファイトとしては、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛、人造黒鉛、土状黒鉛等が挙げられ、主成分が鱗片状黒鉛であるものを用いることが好ましい。グラファイトは、赤外線を吸収する機能を有することから、押出発泡板を構成する樹脂中にグラファイトを添加すると、グラファイトが気泡膜間の赤外線の輻射を減少させ、押出発泡板の熱伝導率を下げることができるものと考えられる。グラファイトは、ポリスチレン系樹脂に高濃度で配合されたマスターバッチとして用いることが好ましい。マスターバッチを製造する際の作業性が良好であるとともに、得られる押出発泡板の断熱性向上効果が優れていることから、グラファイトの固定炭素分80%以上であることが好ましい。押出発泡板の断熱性を更に高めるために、グラファイトとしては固定炭素分90%以上のものがより好ましく、95%以上のものが更に好ましい。なお、グラファイトの固定炭素分は、JIS M8511:2014記載の方法で測定した値をいう。
【0063】
グラファイトの添加量は、基材樹脂100質量部に対して、0.2質量部以上5質量部以下であることが好ましい。グラファイトの添加量が前記の範囲内であると、断熱性が向上し、低熱伝導率の押出発泡板を得ることができる。この観点から、グラファイトの添加量は、基材樹脂100質量部に対して0.3質量部以上2質量部以下であることがより好ましく、0.4質量部以上1質量部未満であることがさらに好ましい。
【0064】
また、酸化チタンの添加量は、基材樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上5質量部以下であることが好ましい。酸化チタンの添加量が前記の範囲内であると、断熱性が向上し、所望する低熱伝導率の押出発泡板を得ることができる。この観点から、酸化チタンの添加量は、押出発泡板の基材樹脂100質量部に対して、0.8質量部以上3質量部以下であることがより好ましく、1質量部以上2質量部以下であることがさらに好ましい。
【0065】
グラファイトおよび酸化チタンを添加する場合におけるグラファイトおよび酸化チタンの添加量の合計は、基材樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上5質量部以下であることが好ましい。グラファイトと共に赤外線反射効果を有する酸化チタンを組み合わせることにより、押出発泡板の熱伝導率を効果的に下げることができる。これは、一般的に赤外線の反射率が高いことが知られている酸化チタンを添加することで、酸化チタンが赤外線を反射し、グラファイトの赤外線吸収効率を向上させることができ、グラファイトの添加量が少量であっても押出発泡板の熱伝導率を効果的に下げることができるものと考えられる。また、グラファイトおよび酸化チタンを添加する場合は、添加量の比(グラファイトの質量部/酸化チタンの質量部)が、0.1以上0.8以下が好ましく、0.2以上0.6以下がより好ましい。グラファイトおよび酸化チタンの添加量の合計と添加量の比が前記範囲を満足することにより、押出発泡板の製造安定性への影響を抑えつつ、より断熱性が良好な押出発泡板を製造することができる。
【0066】
(その他の添加剤)
また、本発明においては基材樹脂に、必要に応じて、気泡調整剤、顔料、染料等の着色剤、熱安定剤、充填剤等の各種の添加剤を適宜配合することができる。
【0067】
気泡調整剤として、例えば、タルク、カオリン、マイカ、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、ベントナイト、ケイソウ土等の無機物粉末、アゾジカルボジアミド等の従来公知の化学発泡剤などを用いることができる。気泡調整剤の添加量は、気泡調整剤の種類、目的とする気泡径等によって異なるが、基材樹脂100質量部に対し、概ね、0.01~8質量部、更に0.01~5質量部、特に0.05~3質量部が好ましい。
【0068】
また、基材樹脂には、本発明の目的、効果を阻害しない範囲において、ステアリン酸モノグリセリドなどの多価アルコール脂肪酸エステル、エチレングリコール、流動パラフィン等の添加剤を添加しても良い。
【0069】
以下、押出発泡板の諸物性について詳述する。
【0070】
<押出発泡板の物性>
【0071】
[押出方向垂直断面積]
押出発泡板は板状である。押出発泡板は、その押出方向に垂直な断面の面積(押出方向垂直断面積)が100cm2以上であることが好ましく、200cm2以上であることがより好ましく、300cm2以上であることがさらに好ましい。押出発泡板の押出方向垂直断面積の上限は概ね1500cm2である。本明細書において、押出方向垂直断面積とは、発泡板の押出方向と直交する断面の面積をいう。押出方向垂直断面積は、押出発泡板の押出方向と直交する断面における厚みと幅方向長さとを掛けることにより求められる。一般に、押出発泡板の押出方向垂直断面積が大きいほど押出発泡させることが難しくなり、押出発泡板の表面性が悪化しやすいが、本発明の押出発泡板の製造方法においては、押出発泡板の押出方向垂直断面積が大きい場合であっても押出発泡板の表面性に優れる押出発泡板とすることができる。
【0072】
[見掛け密度]
押出発泡板の見掛け密度は、20~50kg/m3であることが好ましく、30~45kg/m3であることがより好ましい。見掛け密度がこの範囲であると、十分な断熱性と製造安定性を有するとともに、軽量性に優れ、例えば断熱材として好適に使用することができる。
【0073】
[厚み]
押出発泡板の厚みは、その使用目的に応じて適宜設定されるものであり、特に限定されるものではないが、断熱材として使用する観点から25mm以上であることが好ましく、35mm以上であることがより好ましく、45mm以上であることがさらに好ましい。厚みの上限は概ね150mmである。押出発泡板の厚みは、無作為に選択した押出発泡板の押出方向垂直断面において、押出発泡板の厚み方向に等間隔な5点以上の箇所について幅を測定し、それらの測定値を算術平均して求めることができる。
【0074】
[幅]
押出発泡板の幅は、300mm以上であることが好ましく、500mm以上であることがより好ましく、800mm以上であることがさらに好ましい。押出発泡板の幅の上限は特に限定されないが、例えば2000mm以下である。一般に、押出発泡板の幅が広い場合、押出発泡板の幅方向の端部の成形性が悪化しやすいが、本発明の押出発泡板の製造方法では、押出発泡板の幅が広い場合でも押出発泡板の幅方向の端部の成形性が良好である。押出発泡板の幅は、押出発泡板の幅方向に等間隔な10点以上の箇所について厚みを測定し、それらの測定値を算術平均して求めることができる。
【0075】
[独立気泡率]
押出発泡板の独立気泡率は、長期断熱性の観点から、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、92%以上であることがさらに好ましい。
【0076】
押出発泡板の独立気泡率は、押出発泡板の無作為に選択した計5箇所からカットサンプルを切り出して測定試料とし、各々の測定試料について独立気泡率を求め、5箇所の独立気泡率の算術平均値を採用する。なお、カットサンプルは、押出発泡板から縦45mm×横20mm×厚み25mmの大きさに切断された、表皮を有しないサンプルとし、厚みが薄く厚み方向に25mmのサンプルが切り出せない場合には、例えば、縦45mm×横20mm×厚み12.5mmの大きさに切断された試料(カットサンプル)を2枚重ねて測定する。また、独立気泡率S(%)は、ASTM-D2856-70の手順Cに従って、空気比較式比重計(例えば、東芝ベックマン(株)製、空気比較式比重計、型式:930型)を使用して測定された押出発泡板の真の体積Vxを用い、下記式(1)により算出される。
S(%)=(Vx-W/ρ)×100/(VA-W/ρ)・・・(1)
Vx:空気比較式比重計による測定により求められるカットサンプルの真の体積(cm3)(発泡体のカットサンプルを構成する樹脂の容積と、カットサンプル内の独立気泡部分の気泡全容積との和に相当する。)
VA:測定に使用されたカットサンプルの外寸法から算出されたカットサンプルの見掛け上の体積(cm3)
W:測定に使用されたカットサンプル全重量(g)
ρ:押出発泡板を構成する基材樹脂の密度(g/cm3)
【0077】
[熱伝導率]
熱伝導率は、製造直後の押出発泡板の中央部から成形表皮が存在しない試験片を切り出し、該試験片を温度23℃、相対湿度50%の恒温恒湿室内に保管し、製造7日後に、JIS A1412-2(1999年)記載の平板熱流計法(熱流計2枚方式、高温側38℃、低温側8℃、平均温度23℃)に基づいて熱伝導率を測定することができる。
【0078】
本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法は、以上の実施形態に限定されるものではない。
【実施例0079】
以下、本発明について実施例とともに説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0080】
実施例および比較例において、以下に示す装置および原料を用いた。
【0081】
内径115mmの第1押出機と内径180mmの高混練タイプのスクリューを備えた第2押出機を直列に連結し、第1押出機の終端付近に物理発泡剤注入口を設け、間隙2mm×幅440mmの横断面が長方形の樹脂排出口(ダイリップ)を備えたフラットダイを第2押出機の出口に連結した押出装置を用いた。また、第2押出機の樹脂出口には上下一対のポリテトラフルオロエチレン樹脂からなる板が、略一定の間隔を隔てて水平に設置された成形装置(ガイダー)を付設した。
【0082】
(1)基材樹脂
ポリスチレン系樹脂:DIC(株)製ポリスチレン「HP600ANJ」、溶融粘度1400Pa・s
【0083】
(2)物理発泡剤
ハイドロフルオロオレフィン(HFO):1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO1233zd)、ハネウェル製、製品名「ソルスティス1233zd」
イソブタン(i-Bu)、三井化学社製
ジメチルエーテル(DME)、三菱ガス化学社製
エタノール(EtOH)、山一化学工業社製
水
【0084】
(3)臭素系難燃剤
難燃剤A:ブタジエン-スチレン共重合体の臭素化物(ランクセス(株)製「Emerald innovation 3000」)
難燃剤B:[テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル)第一工業製薬「SR-130」]/[テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)第一工業製薬「SR-720」]=60質量%/40質量%の混合難燃剤
難燃剤A、難燃剤Bはそれぞれ以下のマスターバッチの形態で添加した。
<難燃剤Aのマスターバッチ>
ポリスチレン樹脂(PSジャパン(株)製ポリスチレン「680」、溶融粘度930Pa・s)をベースレジンとして60質量%含有し、以下の(A)~(E)を、(A)80質量%、(B)4質量%、(C)8質量%、(D)4質量%、(E)4質量%の割合で混合した混合物を40質量%含有する難燃剤マスターバッチを用い、ブタジエン-スチレン共重合体の臭素化物を表1および表2中の難燃剤A量となるように難燃剤マスターバッチを添加した。
(A)ブタジエン-スチレン共重合体の臭素化物:ランクセス(株)製「Emerald innovation 3000」)、
(B)難燃助剤:ポリ-1,4-ジイソプロピルベンゼン:United initiators社製、製品名「CCPIB」)
(C)熱安定剤: ノボラック型エポキシ系安定剤:DIC製、商品名「EPICLON N680」
(D)熱安定剤:リン系安定剤:ADEKA製、商品名「PEP36」(ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジホスファイト)
(E)熱安定剤:ヒンダードフェノール系安定剤:BASF製、商品名「Irganox1010」(ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート])
<難燃剤Bのマスターバッチ>
ポリスチレン樹脂(PSジャパン(株)製ポリスチレン「680」、溶融粘度930Pa・s)をベースレジンとして60質量%含有し、以下の(F)と(G)を、(F)60質量%、(G)40質量%の割合で混合した混合物を40質量%含有する難燃剤マスターバッチを用い、(F)と(G)の合計量を表1および表2中の難燃剤B量となるように難燃剤マスターバッチを添加した。
(F)テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル):第一工業製薬製、商品名「SR-130」
(G)[テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル):第一工業製薬製、商品名「SR-720」
【0085】
(4)無機輻射抑制粉体
グラファイト:日本黒鉛工業(株)製、製品名:CP-N(鱗片状黒鉛)、一次粒径(d50)=10μm
酸化チタン:テイカ(株)製、製品名:JR-405、一次粒径(d50)=0.2μm
グラファイト及び酸化チタンはそれぞれ以下のマスターバッチの形態で添加した。
<グラファイトのマスターバッチ>
ポリスチレン樹脂(PSジャパン(株)製ポリスチレン「680」、溶融粘度930Pa・s)をベースレジンとして60質量%含有し、グラファイト(日本黒鉛工業(株)製、製品名:CP-N)40質量%含有するグラファイトマスターバッチを用い、表1および表2中のグラファイト量となるようにグラファイトマスターバッチを添加した。
<酸化チタンのマスターバッチ>
ポリスチレン樹脂(PSジャパン(株)製ポリスチレン「680」、溶融粘度930Pa・s)をベースレジンとして30質量%含有し、酸化チタン(テイカ(株)製、製品名:JR-405)70質量%含有する酸化チタンマスターバッチを用い、表1および表2中の酸化チタン量となるように酸化チタンマスターバッチを添加した。
【0086】
(5)添加剤
エチレンビスステアリン酸アミド(EBSA):日油株式会社製 アルフローH-50S、融点142℃
ステアリン酸モノグリセリド(GMS):理研ビタミン株式会社製 リケマールS-100A、融点67℃
ステアリン酸アミド(SA):花王株式会社製 脂肪酸アマイドS、融点102℃
【0087】
さらに、押出発泡板の各種物性の測定方法および評価方法は下記の通りである。
【0088】
基材樹脂、物理発泡剤、臭素系難燃剤、無機輻射抑制粉体、気泡調整剤、添加剤の各々を下記表1、表2に示す配合割合で押出機に供給し、さらに物理発泡剤を物理発泡剤供給口より供給し、溶融混練して、溶融混練物を押出機の先端のダイリップから大気圧下に押出した後、成形具である賦形装置(ガイダー)により所定の形状(板状)に成形し、押出方向に対して垂直に切断して表面スキンを有する実施例1~9および比較例1~8の押出発泡板(幅:1000mm、長さ:1820mm、厚み55mm、押出方向垂直断面積550cm2)を製造した。なお、基材樹脂は、マスターバッチ中に含まれるポリスチレン系樹脂を含めて100質量部とした。
【0089】
製造した押出発泡板について、見掛け密度、独立気泡率、熱伝導率、連続生産性、表面性、難燃性、LOI(酸素指数)を以下の方法で測定、評価した。
【0090】
<見掛け密度>
見掛け密度の測定は、以下の方法で求めた。各押出発泡板の幅方向中央部および幅方向両端部付近の計3箇所から縦50mm×横50mm×厚み50mmの直方体のサンプル(表面スキンを含まない)を切り出して質量を測定し、質量を体積で割ることにより各々のサンプルの見掛け密度を求め、3箇所の測定値の相加平均値を見掛け密度とした。
【0091】
<幅>
無作為に選択した押出発泡板の押出方向垂直断面において、押出発泡板の厚み方向に対して等間隔となるように10mm間隔で5点について幅を測定し、それらの測定値の算術平均値を押出発泡板の厚み(mm)とした。
【0092】
<厚み>
押出発泡板の幅方向に対して等間隔となるように90mm間隔で10点について厚みを測定し、それらの測定値の算術平均値を押出発泡板の厚み(mm)とした。
【0093】
<独立気泡率>
押出発泡板の幅方向の中央部および幅方向両端部付近の計5箇所からカットサンプルを切り出して測定試料とし、各々の測定試料について独立気泡率を測定し、5箇所の独立気泡率の算術平均値を採用した。なお、カットサンプルは押出発泡板から縦25mm×横25mm×厚み25mmの大きさに切断されたものを用いた。サンプルの独立気泡率を、ASTM-D2856-70の手順Cにより空気比較式比重計(東芝ベックマン(株)製 型式:930型)を使用して測定して前記式(1)から求め、5箇所の算術平均値を独立気泡率とした。
【0094】
<熱伝導率>
熱伝導率は、製造直後の押出発泡板の中央部から200mm×200mm×50mmの成形表皮が存在しない試験片を切り出し、該試験片を温度23℃、相対湿度50%の恒温恒湿室内に保管し、製造7日後に、JIS A1412-2(1999年)記載の平板熱流計法(熱流計2枚方式、高温側38℃、低温側8℃、平均温度23℃)に基づいて熱伝導率を測定した。
【0095】
<連続生産性>
製造した押出発泡板の発泡状態を以下の基準で観察し、連続生産性を評価した。
◎:成形開始後、48時間経過しても押出発泡板の側端部の樹脂詰まりがみられなかった。
○:成形開始後、24時間経過しても押出発泡板の表面の側端部の樹脂詰まりがみられないが、48時間経過までに樹脂詰まりがみられた。
△:成形開始後、12時間経過しても押出発泡板の表面の側端部の樹脂詰まりがみられないが、24時間経過までに樹脂詰まりがみられた。
×:成形開始後、12時間経過までに押出発泡板の表面の側端部の樹脂詰まりがみられた。
【0096】
<表面性>
製造開始から12時間経過後の押出発泡板の表面平滑性について目視にて以下の基準により評価した。
◎:押出発泡板の表面が極めて良好であった。
○:押出発泡板の表面が良好であった。
△:押出発泡板の表面にスジ割れが稀に発生した。
×:押出発泡板の表面にスジ割れが多数発生した。
なお、スジ割れとは、樹脂溶融物の流れ痕で、樹脂自体が硬く伸びが悪い場合などに、厚み方向と垂直な平面の表面に発生するスジ状の模様である。
【0097】
<難燃性(ろうそく試験)>
製造直後の押出発泡板を気温23℃、相対湿度50%の恒温恒湿室内に保管し、製造4週間後に、発泡板から試験片を無作為に5個切り出して(N=5)、JIS A9521:2022の燃焼性試験方法に規定される「試験方法A」に基づいて燃焼性を測定し、5個の試験片の平均燃焼時間を採用した。
【0098】
<LOI(酸素指数)>
製造直後の押出発泡板を気温23℃、相対湿度50%の部屋に移し、その部屋で4週間放置した後、押出発泡板から試験片を切り出し、JIS K7201-2:2021に準拠して測定し、難燃性を評価した。点火器の熱源の種類は、液化石油ガス(LPG)を使用し、点火手順はA法を使用し、試験片を試験機内の所定の位置に自立させて行った。試験場所の温度は23℃、湿度50%で行った。
【0099】
実施例1~9、比較例1~8の押出発泡板の各種物性の測定結果および評価を表1および表2に示す。
【0100】
【0101】
【0102】
表1に示したように、実施例1~9の押出発泡板は、押出発泡板の連続生産性に優れ、かつ、高い難燃性および良好な表面性を有していることが確認された。
【0103】
一方、表2に示したように、比較例1~7の押出発泡板は、押出発泡板の連続生産性と表面性どちらか一方又は両方が十分でないことが確認された。具体的には、エチレンビスステアリン酸アミド(EBSA)の添加量が5質量部以上(10質量部)である比較例1は、押出発泡板を成形することができなかった。エチレンビスステアリン酸アミド(EBSA)の添加量が0.15質量部未満である比較例2は、EBSAによるダイリップ表面の汚れを抑制する効果が不足し、連続生産性が十分でなかった。エチレンビスステアリン酸アミド(EBSA)に代えてステアリン酸モノグリセリド(GMS)またはステアリン酸アミド(SA)を添加した比較例3~6は、連続生産性および表面性のうちの少なくともいずれかが十分でなかった。無機輻射抑制粉体の添加量が10質量部を超える比較例7は、連続生産性および表面性が十分でなかった。