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特開2024-173094識別装置、識別システム及び識別方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173094
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】識別装置、識別システム及び識別方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 5/02 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
G01N5/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091233
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】592028846
【氏名又は名称】I-PEX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【弁理士】
【氏名又は名称】榊原 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【弁理士】
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】緒方 健治
(72)【発明者】
【氏名】坂本 尚敏
(57)【要約】
【課題】発生源を識別する精度を安定させることができる識別装置、識別システム及び識別方法を提供する。
【解決手段】識別装置2は、複数の検出素子5(D[1]~D[M](Mは2以上の自然数))と、識別部11と、を備える。複数の検出素子5(D[1]~D[M])は、発生源Tから発せられる複数種類の物質のうち、互いに異なる種類の物質にそれぞれ反応し、反応した物質の量に応じた大きさの検出値を出力する。識別部11は、種別が既知である発生源Tから発せられる物質を複数の検出素子5で検出したときのそれぞれの検出値の大きさで順序付けられる複数の検出素子5の順番と、既知の発生源Tの種別との関係を示す情報を参照して、複数の検出素子5で物質を検出したときの複数の検出素子5の順番を示す情報に基づいて、その物質の発生源Tにおける種別を識別する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発生源から発せられる複数種類の物質のうち、互いに異なる種類の物質にそれぞれ反応し、反応した物質の成分の量に応じた大きさの検出値を出力する複数の検出素子と、
種別又は状態を示す特性情報が既知である発生源から発せられる物質を前記複数の検出素子で検出したときのそれぞれの検出値の大きさで順序付けられる前記複数の検出素子の順番と、前記既知である発生源の前記特性情報との関係を示す情報を参照して、前記複数の検出素子で物質を検出したときの前記複数の検出素子の順番を示す情報に基づいて、その物質の発生源における前記特性情報を識別する識別部と、
を備える識別装置。
【請求項2】
前記物質には、匂いを感知させる物質が含まれる、
請求項1に記載の識別装置。
【請求項3】
発生源から発せられる複数種類の物質のうち、互いに異なる種類の物質にそれぞれ反応し、反応した物質の成分の量に応じた大きさの検出値を出力する複数の検出素子と、
種別又は状態を示す特性情報が互いに異なる複数の既知の発生源について、それぞれ前記複数の検出素子で検出を行ったときの検出値の大きさで順番付けられる前記複数の検出素子の順番を示す情報を、前記既知の発生源における前記特性情報に関連付けて生成する生成部と、
前記生成部で生成された、前記複数の検出素子の順番と前記既知の発生源における前記特性情報との関係を示す情報を参照して、前記複数の検出素子で物質を検出したときの前記複数の検出素子の順番を示す情報に基づいて、その物質の発生源における前記特性情報を識別する識別部と、
を備える識別システム。
【請求項4】
前記生成部は、前記複数の検出素子での検出を、前記特性情報が同じ既知の発生源について複数回行ったときに、検出値の大きさの順番が変化する検出素子があり、その検出素子を除外しても、残りの検出素子の順番が発生源間で重複しない場合、前記残りの検出素子に絞りこんで、前記検出素子の順番を示す情報を生成し、
前記識別部は、前記生成部によって絞りこまれた前記検出素子で物質を検出したときの前記検出素子の順番を示す情報に基づいて、その物質の発生源における前記特性情報を識別する、
請求項3に記載の識別システム。
【請求項5】
前記生成部は、前記複数の検出素子での検出を、前記特性情報が同じ既知の発生源について複数回行ったときに、検出値の大きさの順番が変化する検出素子があり、その検出素子をグループ化しても順番が発生源間で重複しない場合、順番が変化する検出素子のうち、順番が連続する検出素子をグループ化して、前記検出素子のグループの順番を示す情報を生成し、
前記識別部は、前記生成部によって生成された各グループの前記検出素子で物質を検出したときの前記検出素子の順番を示す情報に基づいて、その物質の発生源における前記特性情報を識別する、
請求項3に記載の識別システム。
【請求項6】
前記生成部は、前記複数の検出素子での検出を、前記特性情報が互いに異なる複数の既知の発生源について行ったときに、前記検出素子の順番が同じとなる発生源をグループ化し、前記検出素子の順番を示す情報をグループに関連付けて生成し、
前記識別部は、前記生成部で生成された、前記複数の検出素子の順番と前記既知の発生源のグループにおける前記特性情報との関係を示す情報を参照して、前記複数の検出素子で物質を検出したときの前記複数の検出素子の順番を示す情報に基づいて、その物質の発生源のグループにおける前記特性情報を識別する、
請求項3に記載の識別システム。
【請求項7】
前記生成部は、前記特性情報が互いに異なる複数の既知の発生源について、それぞれ前記複数の検出素子で検出したときの検出値を示す情報を、前記既知の発生源における前記特性情報に関連付けて生成し、
前記識別部は、前記生成部で生成された、前記検出素子の順番と前記既知の発生源における前記特性情報との関係を示す情報とともに、前記検出素子の検出値と前記既知の発生源における前記特性情報との関係を示す情報と、を参照し、前記複数の検出素子で物質を検出したときの前記検出素子の順番を示す情報とともに、前記複数の検出素子で物質を検出したときの前記検出素子の検出値に基づいて、その物質の発生源における前記特性情報を識別する、
請求項3に記載の識別システム。
【請求項8】
発生源から発せられる複数種類の物質のうち、互いに異なる種類の物質にそれぞれ反応し、反応した物質の成分の量に応じた大きさの検出値を出力する複数の検出素子を用いて発生源を識別する識別装置によって実行される識別方法であって、
種別又は状態を示す特性情報が互いに異なる既知の発生源から発せられる物質を前記複数の検出素子で検出したときのそれぞれの検出値の大きさで順序付けられる前記複数の検出素子の順番と、前記既知の発生源における前記特性情報との関係を示す情報を参照して、前記複数の検出素子で物質を検出したときの前記複数の検出素子の順番を示す情報に基づいて、その物質の発生源における前記特性情報を識別する、
識別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、識別装置、識別システム及び識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、物質が吸着又は脱離した時に生じる振動子の共振周波数の変化量に基づいて、発生源を識別する化学センサデバイスが開示されている。この化学センサデバイスは、互いに異なる物質に応じて異なる脱吸着特性を示す複数の振動子を備える。それぞれの振動子は、交流電圧が印加されると加振される。所定の物質が吸着又は脱離した際の複数の振動子における共振周波数をマップ化して得られるマップデータと、予め検出した共振周波数をマップ化したマップデータとを比較することにより、物質が識別される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-204584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の化学センサデバイスは、機器のノイズや、検出時の温度や湿度の変化の影響を受けやすい。検出時の周囲の温湿度の違いにより、同じ発生源であってもマップデータにずれが生じることから、化学センサデバイスは、発生源を識別する精度が安定し難いという問題があった。
【0005】
本発明は、上記実情の下になされたものであり、発生源を識別する精度を安定させることができる識別装置、識別システム及び識別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る識別装置は、
発生源から発せられる複数種類の物質のうち、互いに異なる種類の物質にそれぞれ反応し、反応した物質の成分の量に応じた大きさの検出値を出力する複数の検出素子と、
種別又は状態を示す特性情報が既知である発生源から発せられる物質を前記複数の検出素子で検出したときのそれぞれの検出値の大きさで順序付けられる前記複数の検出素子の順番と、前記既知である発生源の前記特性情報との関係を示す情報を参照して、前記複数の検出素子で物質を検出したときの前記複数の検出素子の順番を示す情報に基づいて、その物質の発生源における前記特性情報を識別する識別部と、
を備える。
【0007】
前記物質には、匂いを感知させる物質が含まれる、
こととしてもよい。
【0008】
本発明の第2の観点に係る識別システムは、
発生源から発せられる複数種類の物質のうち、互いに異なる種類の物質にそれぞれ反応し、反応した物質の成分の量に応じた大きさの検出値を出力する複数の検出素子と、
種別又は状態を示す特性情報が互いに異なる複数の既知の発生源について、それぞれ前記複数の検出素子で検出を行ったときの検出値の大きさで順番付けられる前記複数の検出素子の順番を示す情報を、前記既知の発生源における前記特性情報に関連付けて生成する生成部と、
前記生成部で生成された、前記複数の検出素子の順番と前記既知の発生源における前記特性情報との関係を示す情報を参照して、前記複数の検出素子で物質を検出したときの前記複数の検出素子の順番を示す情報に基づいて、その物質の発生源における前記特性情報を識別する識別部と、
を備える。
【0009】
前記生成部は、前記複数の検出素子での検出を、前記特性情報が同じ既知の発生源について複数回行ったときに、検出値の大きさの順番が変化する検出素子があり、その検出素子を除外しても、残りの検出素子の順番が発生源間で重複しない場合、前記残りの検出素子に絞りこんで、前記検出素子の順番を示す情報を生成し、
前記識別部は、前記生成部によって絞りこまれた前記検出素子で物質を検出したときの前記検出素子の順番を示す情報に基づいて、その物質の発生源における前記特性情報を識別する、
こととしてもよい。
【0010】
前記生成部は、前記複数の検出素子での検出を、前記特性情報が同じ既知の発生源について複数回行ったときに、検出値の大きさの順番が変化する検出素子があり、その検出素子をグループ化しても順番が発生源間で重複しない場合、順番が変化する検出素子のうち、順番が連続する検出素子をグループ化して、前記検出素子のグループの順番を示す情報を生成し、
前記識別部は、前記生成部によって生成された各グループの前記検出素子で物質を検出したときの前記検出素子の順番を示す情報に基づいて、その物質の発生源における前記特性情報を識別する、
こととしてもよい。
【0011】
前記生成部は、前記複数の検出素子での検出を、前記特性情報が互いに異なる複数の既知の発生源について行ったときに、前記検出素子の順番が同じとなる発生源をグループ化し、前記検出素子の順番を示す情報をグループに関連付けて生成し、
前記識別部は、前記生成部で生成された、前記複数の検出素子の順番と前記既知の発生源のグループにおける前記特性情報との関係を示す情報を参照して、前記複数の検出素子で物質を検出したときの前記複数の検出素子の順番を示す情報に基づいて、その物質の発生源のグループにおける前記特性情報を識別する、
こととしてもよい。
【0012】
前記生成部は、前記特性情報が互いに異なる複数の既知の発生源について、それぞれ前記複数の検出素子で検出したときの検出値を示す情報を、前記既知の発生源における前記特性情報に関連付けて生成し、
前記識別部は、前記生成部で生成された、前記検出素子の順番と前記既知の発生源における前記特性情報との関係を示す情報とともに、前記検出素子の検出値と前記既知の発生源における前記特性情報との関係を示す情報と、を参照し、前記複数の検出素子で物質を検出したときの前記検出素子の順番を示す情報とともに、前記複数の検出素子で物質を検出したときの前記検出素子の検出値に基づいて、その物質の発生源における前記特性情報を識別する、
こととしてもよい。
【0013】
本発明の第3の観点に係る識別方法は、
発生源から発せられる複数種類の物質のうち、互いに異なる種類の物質にそれぞれ反応し、反応した物質の成分の量に応じた大きさの検出値を出力する複数の検出素子を用いて発生源を識別する識別装置によって実行される識別方法であって、
種別又は状態を示す特性情報が互いに異なる既知の発生源から発せられる物質を前記複数の検出素子で検出したときのそれぞれの検出値の大きさで順序付けられる前記複数の検出素子の順番と、前記既知の発生源における前記特性情報との関係を示す情報を参照して、前記複数の検出素子で物質を検出したときの前記複数の検出素子の順番を示す情報に基づいて、その物質の発生源における前記特性情報を識別する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、発生源を識別する精度を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態1に係る識別システムの構成を示すブロック図である。
図2】(A)は、複数の検出素子の検出値のマップデータの一例を示すグラフである。(B)は、複数の検出素子の検出値の大きい順番を示す表である。
図3図1の識別システムにおいて識別を行う構成を示すブロック図である。
図4図1の識別システムにおいて順番の登録を行う構成を示すブロック図である。
図5図1の識別部のハードウエア構成を示すブロック図である。
図6】登録モード処理のフローチャートである。
図7】識別モード処理のフローチャートである。
図8】本発明の実施の形態2に係る識別システムの登録モード処理のフローチャートである。
図9】(A)及び(B)は、検出素子の順位が変化する場合の一例を示す図である。
図10】本発明の実施の形態3に係る識別システムの登録モード処理のフローチャートである。
図11】(A)及び(B)は、検出素子のグループ化の一例を示す図である。
図12】本発明の実施の形態4に係る識別システムの登録モード処理のフローチャートである。
図13】(A)及び(B)は、発生源のグループ化の一例を示す図である。
図14】本発明の実施の形態5に係る識別システムの構成を示すブロック図である。
図15図14の識別システムにおける登録モード処理のフローチャートである。
図16図14の識別システムにおける識別モード処理のフローチャートである。
図17】本発明の実施の形態6に係る識別システムの構成を示すブロック図である。
図18】(A)は、種別が異なる2つの発生源における複数の検出素子の検出値の大きい順番を示す表である。(B)は、種別が異なる2つの発生源における複数の検出素子の検出値のマップデータを示すグラフである。
図19】(A)は、検出部の一例を示す模式図である。(B)は、検出部を一部破砕して検出素子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。各図面においては、同一又は同等の部分に同一の符号を付す。本実施の形態に係る識別装置、識別システム及び識別方法は、物質の発生源を識別する。
【0017】
実施の形態1
本発明の実施の形態1について説明する。図1に示すように、本実施の形態に係る識別システム1は、物質の発生源Tにおける特性情報として、その種別を識別する。識別システム1は、識別装置2と、記憶装置3と、を備える。識別装置2は、検出部10と、識別部11と、を備える。
【0018】
[検出部]
検出部10は、複数の検出素子5を備える。複数の検出素子5は、発生源Tから発せられる複数種類の物質のうち、互いに異なる種類の物質にそれぞれ反応する。個々の検出素子5は、反応した物質の成分の量に応じた大きさの検出値を出力する。例えば、検出素子5は、物質を吸着する物質吸着膜が形成された振動子を備えるものとすることができる。物質吸着膜に物質が吸着すると、振動子全体の重量が増えて振動レベルが変化する。振動レベルの変化の大きさは、物質吸着膜への物質の吸着量に応じたものとなる。検出素子5は、振動レベルの変化の大きさを、物質の吸着量、すなわち反応した物質の成分の量に応じた大きさを示す反応レベル(検出値)として出力する。
【0019】
検出素子5には、それぞれ固有の識別番号が与えられている。以下では、個々の検出素子5に割り当てられる識別番号を、D[1]~D[M](Mは2以上の自然数)とする。本実施の形態では、Mは6以上の自然数とする。検出素子5は、それぞれの検出値に識別番号が関連付けられたデータを出力する。このデータによれば、データに含まれる検出値がどの検出素子5で検出されたものなのかを把握することができる。
【0020】
[識別部]
識別部11は、検出部10における複数の検出素子5から出力される検出値及び識別番号を含むデータを入力し、入力したデータに対して情報処理を行う。識別部11は、変換部20と、特定部21と、生成部22と、を備える。
【0021】
[変換部]
変換部20は、複数の検出素子5から出力される検出値及び識別番号を含むデータに基づいて、複数の検出素子5(D[1]~D[M])で物質を検出したときの複数の検出素子5(D[1]~D[M])の順番を示す情報を生成する。言い換えると、変換部20は、複数の検出素子5から出力される検出値のマップデータを、その大きさの順番を示す情報に変換する。例えば、検出素子5(D[1]~D[M])の検出値の大きさをマップデータとして示したときに図2(A)の白い棒グラフのようになる場合、変換部20は、図2(B)に示すような複数の検出素子5(D[1]~D[M])の順番を示す情報を生成する。なお、検出値が閾値より低い検出素子5については、順番から除外しても良い。この順番は、各検出素子5の検出値の最大値等の基準値で正規化された検出値に基づいて順序付けられたものとしてもよいし、各検出素子5の検出値自体で順番付けられたものであってもよい。
【0022】
図2(A)では、同じ発生源Tで検出された検出素子5の検出値が、白及び斜線の棒グラフにより、2通り示されている。図2(A)に示すように、同じ発生源Tであっても、その測定条件等によって、個々の検出素子5の検出値の大きさは変わる一方、検出値の大きさによる複数の検出素子5(D[1]~D[M])の順番は不変である。
【0023】
[特定部]
特定部21は、変換部20で生成された、物質を検出したときの検出値の大きさで順序付けられる複数の検出素子5の順番を示す情報に基づいて、発生源Tの特性情報(種別)を識別する。記憶装置3には、複数の検出素子5の検出値の大きさの順番と既知の発生源Tの種別との関係を示す情報が記憶されている。特定部21は、記憶装置3に記憶された、複数の検出素子5の順番と既知の発生源Tの種別との関係を示す情報を参照して、その物質の発生源Tの種別を識別する。
【0024】
図1では、記憶装置3に、種別が既知である発生源T(G[1]~G[N];Nは2以上の自然数)について、検出素子5(D[1]~D[M])の順番が、既知である発生源Tの種別(G[1]~G[N])に関連付けられた状態で記憶されている。本実施の形態では、Nは、4以上の自然数である。G[1]~G[N]となる発生源に特に制限はなく、例えば、リンゴ、バナナ、みかん等の果物、野菜、空気中に物質を発する様々なものを指定することができる。例えば、記憶装置3には、種別が既知である発生源Tとして、G[1]、G[2]、G[3]、・・・、G[N]それぞれについて、複数の検出素子5の順番が関連付けて記憶されている。例えば、G[1]に関連付けられた検出素子5の順番は、(D[1]、D[2]、D[3]、D[4]、D[5])=(1、3、2、4、5)となっている。
【0025】
ここで、新たに、種別が不明の発生源Tに対して、複数の検出素子5による検出が行われ、変換部20で複数の検出素子5の検出値の大きさの順番を示す情報が生成されたとする。特定部21は、記憶装置3に記憶された複数の検出素子5の順番と未知の発生源Tでの複数の検出素子5の順番とを照合し、未知の発生源Tを、順番が同じとなる発生源Tに特定する。例えば、図3に示すように、未知の発生源Tの検出素子5の順番が、(D[1]、D[2]、D[3]、D[4]、D[5])=(1、3、2、4、5)である場合、未知の発生源Tは、G[1]であると特定される。
【0026】
[生成部]
特定部21による特定を行うには、記憶装置3に、複数の検出素子5の順番と既知の発生源Tにおける種別との関係を示す情報を予め記憶しておく必要がある。生成部22は、記憶装置3が記憶する情報を生成する。
【0027】
生成部22は、複数の検出素子5で検出される発生源Tの種別を示す情報を入力する。この入力は、ユーザの操作入力により行われる。例えば、複数の検出素子5で発生源T(G[1])から発せられる物質が検出されるのに先だって、発生源Tの種別がG[1]であることが入力される。
【0028】
生成部22は、種別が入力された発生源Tに対して複数の検出素子5で検出され、変換部20で生成された複数の検出素子5の検出値の大きさの順番を示す情報と、入力された発生源Tの種別とを関連付けて、記憶装置3に記憶する。
【0029】
例えば、図4に示すように、発生源Tの種別G[1]が入力され、複数の検出素子5が発生源T(種別G[1])から発せられる物質を検出すると、変換部20は、発生源T(G[1])から発せられる物質を検出したときのそれぞれの検出値の大きさで順序付けられる複数の検出素子5の順番を示す情報を、生成する。生成部22は、複数の検出素子の順番を示す情報を、既知の発生源G[1]に関連付けて生成し、記憶装置3に記憶する。
【0030】
同様に、種別が既知である発生源Tとして、G[2]、G[3]、G[4]、・・・、G[N]についても、複数の検出素子5による物質検出、変換部20における順番の生成、生成部22による登録が行われる。これにより、記憶装置3には、種別が既知である発生源Tとして、G[1]、G[2]、G[3]、G[4]、・・・、G[N]それぞれに関連付けられた複数の検出素子5の順番を示す情報が記憶される。
【0031】
[識別部のハードウエア構成]
図1に示す識別部11は、例えば、図5に示すハードウエア構成を有するコンピュータがソフトウエアプログラムを実現することにより実現される。具体的には、識別部11は、装置全体の制御を司るCPU(Central Processing Unit)31と、CPU31の作業領域等として動作するメインメモリ32と、CPU31の動作プログラム等を記憶する外部メモリ33と、操作部34と、表示部35と、入出力部36と、通信部37と、これらを接続する内部バス38と、を備える。
【0032】
メインメモリ32は、RAM(Random Access Memory)等から構成されている。メインメモリ32には、CPU31によって実行されるプログラム39が外部メモリ33からロードされる。また、メインメモリ32は、CPU31の作業領域(データの一時記憶領域)としても用いられる。
【0033】
外部メモリ33は、フラッシュメモリ、ハードディスク等の不揮発性メモリから構成される。外部メモリ33には、CPU31に実行させるためのプログラム39が予め記憶されている。
【0034】
操作部34は、キーボード及びマウス等のデバイスと、これらのデバイスを内部バス38に接続するインターフェイス装置から構成されている。
【0035】
表示部35は、CRT(Cathode Ray Tube)、液晶モニタ等の表示用デバイスから構成される。
【0036】
入出力部36は、外部機器とのデータ送受信を行うインターフェイスである。入出力部36は、CPU31からの指令に従って、検出素子5に検出指令信号を出力するとともに、検出素子5から検出信号を入力する。入力された検出信号は、メインメモリ32又は外部メモリ33に記憶されるか、表示部35に表示される。
【0037】
通信部37は、データ通信のインターフェイスである。通信部37を介して、外部機器とのデータ通信が可能となる。例えば、記憶装置3が外部機器で構成されている場合には、通信部37を介したデータ通信により、記憶装置3へのデータの書き込み及び読み出しが行われる。
【0038】
識別部11の機能は、1以上のプロセッサ及び一時的でない記憶媒体を含む1以上の記憶装置を含む1以上のコンピュータからなる計算機システムに実装することができる。複数のコンピュータは、相互に接続された通信ネットワークを介して通信を行いつつ、識別部11の機能を実現する。例えば、識別部11の複数の機能の一部が1つのコンピュータに実装され、他の一部が他のコンピュータに実装されてもよい。
【0039】
次に、本実施の形態に係る識別システム1の動作について説明する。この動作により、識別方法が実行される。識別システム1は、2つの動作モードのいずれかで動作する。1つ目の動作モードは、発生源Tの種別を識別するためのデータを生成して記憶装置3に記憶する登録モードである。2つめの動作モードは、記憶装置3に記憶されたデータを参照して、複数の検出素子5で検出された検出結果に基づいて、発生源Tの種別を識別する識別モードである。
【0040】
[登録モード処理]
まず、登録モードの処理(登録モード処理)について説明する。登録モードでは、変数としてmが用いられる。変数mは、1~M(Mは、2以上の自然数)のいずれかの値をとる。この値は、現時点で識別対象となる種別が既知である発生源Tを示すものである。
【0041】
登録モード処理において、図6に示すように、まず、識別部11は、変数mを0に初期化し(ステップS1)、変数mを1インクリメントする(ステップS2)。
【0042】
続いて、識別部11を構成する生成部22は、発生源Tの種別の情報を入力する(ステップS3)。ここでは、例えば、発生源Tの種別がG[1]であることが入力され、G[1]として例えば「りんご」が登録される。
【0043】
続いて、識別部11は、種別が既知である発生源Tを検出可能な状態となるまで、すなわち検出準備が完了するまで待つ(ステップS4;No)。具体的には、検出部10における複数の検出素子5を、それぞれの識別対象の物質と反応していない状態、すなわち初期化された状態とした後、ステップS3で入力された種別の発生源T(m=1の場合G[1])が検出部10の近傍に置かれ、その発生源Tから発せられた物質が複数の検出素子5で検出可能となった時点で、検出準備が完了したこととする。ここでは、生成部22へのユーザの操作入力待ちとなっており、完了を示す操作入力が行われた場合、検出準備が完了したものと判定される。
【0044】
検出準備が完了すると(ステップS4;Yes)、識別部11は、複数の検出素子5に、種別が既知である発生源Tから発せられる物質を検出させる(ステップS5)。これにより、検出素子5から、識別部11の変換部20に対して、種別が既知である発生源Tから発せられる物質の検出値と識別情報とを含むデータが送られる。
【0045】
検出素子5からデータを入力すると、識別部11の変換部20は、複数の検出素子5から出力される検出値の大きさに基づいて、複数の検出素子5を示す順番を示す情報を生成する(ステップS6)。これにより、例えば、図4に示すように、発生源T(種別G[1])について、検出値が大きい順に、D[1]、D[3]、D[2]、D[4]、D[5]という複数の検出素子5の順番を示す情報が生成される。
【0046】
続いて、識別部11の生成部22は、変換部20で生成された順番と、入力された発生源Tの種別を示す情報とを関連付けて、記憶装置3に登録する(ステップS7)。
【0047】
続いて、識別部11は、変数mがMであるか否かを判定する(ステップS8)。変数mがMでない場合(ステップS8;No)、識別部11は、ステップS2に戻る。以降、変数mのインクリメント(ステップS2;m=2)、発生源G[2]の情報入力(ステップS3)、検出素子5の初期化を含む検出準備完了待ち(ステップS4)、複数の検出素子5による発生源G[2]から発せられる物質の検出(ステップS5)、順番情報生成(ステップS6)、登録(ステップS7)、変数mの判定(ステップS8)が行われる。さらに、m=3~Mについて、ステップS2~S8が行われ、複数の検出素子5の順番が生成され、その順番を示す情報が発生源Tの種別G[3]~G[M]に関連付けて記憶装置3に記憶される。変数mがMであると判定されると(ステップS8;Yes)、識別部11は、登録モード処理を終了する。
【0048】
[識別モード]
次に、識別モードの処理(識別モード処理)について説明する。識別モード処理において、図7に示すように、まず、識別部11は、複数の検出素子5の初期化を行った後、検出準備を行う(ステップS21)。ここで、種別が不明な識別対象となる発生源Tに検出部10が近づけられる。続いて、識別部11は、複数の検出素子5に、識別対象となる発生源Tから発せられる物質を検出させる(ステップS22)。複数の検出素子5は、それぞれの検出値と識別番号とを含むデータを、識別部11に送る。
【0049】
続いて、識別部11の変換部20は、複数の検出素子5から出力される検出値の大きさに基づいて、複数の検出素子5を示す順番を示す情報を生成する(ステップS23)。これにより、例えば、図3に示すように、検出値が大きい順に、D[1]、D[3]、D[2]、D[4]、D[5]という複数の検出素子5の順番を示す情報が生成される。
【0050】
続いて、特定部21は、変換部20で生成された順番と、記憶装置3に記憶された順番とを照合して、順番が一致する発生源Tの種別を、記憶装置3から読み出し、発生源Tを特定する(ステップS24)。例えば、図3に示すように、検出値が大きい順に、D[1]、D[3]、D[2]、D[4]、D[5]となっている発生源TとしてG[1]が、特定される。その後、識別部11は、識別モード処理を終了する。
【0051】
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係る識別システム1によれば、誤差を含みやすい複数の検出素子5の検出値(反応レベル)の大きさでなく、検出値の大きさの順番で物質の発生源Tの種別を特定する。このようにすれば、誤差を含みにくい情報で発生源Tの種別を識別することができるので、発生源Tの種別を識別する精度を安定させることができる。
【0052】
複数の検出素子5の検出値の大きさのマップデータを照合して、発生源Tを識別することも可能である。しかしながら、検出素子5の検出値の大きさのマップデータは、例えば、図2(A)に示すように、検出する度に異なっているうえ、温度、湿度による影響や誤差を含んでいる。本実施の形態に係る識別システム1では、特定に用いられる情報の情報量を削減し、順序を尺度として発生源Tを識別するので、その識別の精度を向上することができる。
【0053】
なお、複数の検出素子5の順位は、検出値の大きさが同じ、すなわち順位が同じものが含まれていても構わない。
【0054】
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態に係る識別システム1の構成は、図1に示す、上記実施の形態1に係る識別システム1と同じである。本実施の形態に係る識別システム1は、図8に示すように、識別部11の動作、特に登録モード処理が、上記実施の形態1に係る識別システム1(図6参照)と異なる。本実施の形態に係る登録モード処理では、検出素子5の絞り込みが行われる。
【0055】
[登録モード処理]
本実施の形態に係る識別装置2を構成する識別部11によって実行される登録モード処理について説明する。この登録モード処理では、変数mに加え、変数kが用いられる。変数mは、1~Mのうち、いずれかの値をとり、既知の発生源Tの種別を示す値となっているのは、上記実施の形態1と同じである。変数kは、1~K(Kは、2以上の自然数)のうち、いずれかの値をとる。この値は、種別が同じ発生源Tでの検出回数を示す値である。変数kの最大数Kとしては、統計的に見て十分なサンプルが得られるサンプル数に応じた値を設定することができる。
【0056】
登録モード処理において、図8に示すように、まず、識別部11は、変数mを0に初期化し(ステップS1)、変数mを1インクリメントし、変数kを1に初期化する(ステップS9)。
【0057】
続いて、識別部11を構成する生成部22は、発生源Tの種別の情報を入力する(ステップS3)。ここでは、例えば、発生源TがG[1]であることが入力される。続いて、識別部11は、種別が既知の発生源Tを検出可能な状態となるまで、すなわち検出準備が完了するまで待つ(ステップS4;No)。ユーザは、複数の検出素子5を初期化した後、識別対象となる発生源Tの近傍に検出部10を近づけて、検出準備を完了させる。
【0058】
検出準備が完了すると(ステップS4;Yes)、識別部11は、複数の検出素子5に、種別が既知の発生源Tから発せられる物質を検出させる(ステップS5)。これにより、検出素子5から、識別部11の変換部20に対して、種別が既知の発生源Tから発せられる物質の検出値と識別情報とを含むデータが送られる。
【0059】
検出素子5からデータを入力すると、識別部11の変換部20は、複数の検出素子5から出力される検出値の大きさに基づいて、複数の検出素子5を示す順番を示す情報を生成する(ステップS6)。
【0060】
続いて、識別部11の生成部22は、変換部20で生成された順番と、入力された発生源Tの種別を示す情報とを関連付けて、記憶装置3に登録する(ステップS7)。
【0061】
続いて、識別部11は、変数kがKであるか否かを判定する(ステップS10)。ここでは、まだ、k=1であるので、判定は否定され、識別部11は、変数kを1だけインクリメントする(ステップS11)。識別部11は、再び、検出(ステップS5)、順番生成(ステップS6)、登録(ステップS7)を行い、変数kについてk=Kの判定を行い(ステップS10)、判定が否定されれば(ステップS10;No)、変数kのインクリメント(ステップS11)を行う。これにより、同じ発生源T(G[1])について、複数の検出素子5のK回の反応レベルの検出が行われる。
【0062】
なお、各回の検出の都度、ステップS4において、複数の検出素子5では、物質の脱離動作が行われ、その初期化が行われる。検出素子5が振動子を有する場合、その振動子を振動させて、物質の脱離が行われる。
【0063】
変数kについてk=Kとなると(ステップS10;Yes)、識別部11は、変数mがMとなっているか否かを判定する(ステップS8)。変数mがMでない場合(ステップS8;No)、識別部11は、ステップS9に戻る。以降、変数mのインクリメント及び変数kの1への初期化(ステップS9)、発生源T(種別:G[2])の情報入力(ステップS3)、検出準備完了待ち(ステップS4)、検出(ステップS5)、順番情報生成(ステップS6)、登録(ステップS7)、変数kの判定(ステップS10)、変数kのインクリメント(ステップS11)が繰り返され、発生源G[2]についてK回の物質検出が行われる。k=Kになると(ステップS10;Yes)、変数mの判定(ステップS8)が行われ、さらに、m=3~Mについて、K回の物質検出が行われ、その都度、複数の検出素子5の順番が生成され、その順番を示す情報が発生源Tの種別G[3]~G[M]に関連付けられて記憶装置3に記憶(登録)される。
【0064】
その後、変数mがMであると判定されると(ステップS8;Yes)、識別部11の生成部22は、種別が同じ発生源Tで順番が異なる検出素子5が有るか否かを判定する(ステップS12)。例えば、図9(A)に示すように、同じ発生源T(G[1])について、複数の検出素子5の順番が異なっているものがある場合、ステップS12での判定は肯定される。なお、複数の検出素子5で、異なる順位から同じ順位に変化する場合もこれに含まれる。
【0065】
同じ発生源T(G[1])について、複数の検出素子5の順番が異なっているものがない場合(ステップS12;No)、識別部11は、登録モード処理を終了する。
【0066】
一方、同じ発生源T(G[1])について、複数の検出素子5の順番が異なっているものがある場合(ステップS12;Yes)、生成部22は、検出素子5の絞り込みを行う(ステップS13)。ここでは、生成部22は、順番が異なる検出素子5を除外する。
【0067】
識別部11の生成部22は、複数の検出素子5の順番から、順番が異なっている素子を除外した場合でも、発生源T(G[1]~G[M])に対応する順番が異なり、他の発生源Tからの識別が可能であるか否か、すなわち発生源Tの間で複数の検出素子5の順番が同じとなるものがないか否かを判定する(ステップS14)。発生源T(G[1]~G[M])について順番が同じとなるものがなく、絞り込んでも発生源Tを識別可能である場合(ステップS14;Yes)、生成部22は、絞り込みを行った検出素子5について順番を示す情報を更新し(ステップS15)、変換部20で生成された順番と、入力された発生源Tの種別を示す情報とを関連付けて、記憶装置3に登録する(ステップS16)。例えば、図9(A)に示すように、検出素子5(D[2])と検出素子5(D[3])とで、順番が異なっている場合、生成部22は、検出素子5(D[2])と検出素子(D[3])とを順番から除外する。その後、識別部11は、登録モード処理を終了する。
【0068】
一方、発生源T(G[1]~G[M])について順番が同じとなるものがある場合(ステップS14;No)、生成部22は、検出素子5の絞り込みを行う(ステップS13)。例えば、G[1]、G[2]、G[3]について絞り込まれた検出素子5の順番が同じとなっている場合、生成部22は、絞り込まれた検出素子5の中から、G[1]とG[2]との正答率が閾値以上となる検出素子5の組み合わせを個別に抽出する。さらに、生成部22は、G[2]とG[3]との正答率が閾値以上となる検出素子5の組み合わせを個別に抽出する。これにより、例えば、G[1]とG[2]とを識別するための検出素子5の組み合わせとして例えばD[1]、D[4]、D[5]が抽出され、これらが最終的に順位付けされる。また、例えば、G[2]とG[3]とを識別するための検出素子5の組み合わせとして例えばD[1]、D[7]、D[8]が抽出され、これらが最終的に順位付けされる。
【0069】
ステップS14終了後、生成部22は、ステップS13、S14、S15、S16を行い、識別部11は、登録モード処理を終了する。
【0070】
このように、異なる発生源Tについて順番が同じとなるものがある場合(ステップS14;No)、生成部22は、検出素子5の絞り込みを行う(ステップS13)が、検出素子5の絞り込みを行う正答率の閾値を変更して、順番が同じとなるものが無くなる(ステップS14;Yes)まで、絞り込みを繰り返す。
【0071】
このように、本実施の形態では、生成部22は、複数の検出素子5での検出を、種別が同じ既知の発生源Tについて複数回行ったときに、検出値の大きさの順番が変化する検出素子5があり、その検出素子5を除外しても残りの検出素子5の順番が互いに種別が異なる発生源Tの間で重複しない場合、残りの検出素子5に絞りこんで、検出素子5の順番を示す情報を生成する。
【0072】
識別部11の特定部21は、生成部22によって絞りこまれた検出素子5で物質を検出したときの検出素子5の順番を示す情報に基づいて、その物質の発生源Tの種別を識別する。識別部11によって実行される識別モード処理は、上記実施の形態1に係る識別システム1の識別モード処理(図7参照)と同じである。すなわち、種別が不明な発生源Tに対して検出準備が行われ(ステップS21)、複数の検出素子5による物質の検出が行われ(ステップS22)、順番情報が生成され(ステップS23)、その順番情報が照合されて、発生源Tが特定される(ステップS24)。
【0073】
以上説明したように、本実施の形態に係る識別システム1によれば、種別が同じ発生源Tについて複数回検出を行って、その中に順番が異なるものがあり、順番が異なる検出素子5を除外しても、全ての発生源Tについて素子の順番が異なり、残りの検出素子5の順番と他の既知の発生源Tとから識別が可能である場合、その素子を識別に用いる素子から除外する。これにより、実際に識別に用いる検出素子5の数を削減することが可能となる。この結果、識別部11は、生成部22によって絞りこまれた検出素子5で物質を検出したときの検出素子5の順番を示す情報に基づいて、その物質の発生源Tの種別を識別するので、検出素子5の数を削減することができる。
【0074】
実施の形態3
次に、本発明の実施の形態3について説明する。本実施の形態に係る識別システム1の構成は、図1に示す、上記実施の形態1、2に係る識別システム1と同じである。本実施の形態に係る識別システム1は、識別部11の動作、特に登録モード処理が、上記実施の形態2に係る識別システム1(図8参照)と異なる。本実施の形態に係る識別部11によって実行される登録モード処理では、複数の検出素子5のグループ化が行われる。
【0075】
[登録モード処理]
図10に示すように、登録モード処理において、ステップS1、S9、S3~S7、S10、S11、S8までの処理の流れは、上記実施の形態2に係る識別システム1の登録モード処理と同じであるため、説明を省略する。
【0076】
その後、変数mがMであると判定されると(ステップS8;Yes)、識別部11の生成部22は、種別が同じ発生源Tで、検出値の大きさの順番が変化する検出素子5が有るか否かを判定する(ステップS12)。例えば、図11(A)に示すように、同じ発生源T(G[1])について、複数の検出素子5において、連続する順番が変化するものがある場合、ステップS12での判定は肯定される。
【0077】
同じ発生源T(G[1])について、種別が同じ発生源Tで、複数の検出素子5の検出値の大きさの順番が入れ替わるか同じものがない場合(ステップS12;No)、識別部11は、登録モード処理を終了する。
【0078】
一方、同じ発生源T(G[1])について、種別が同じ発生源Tで、複数の検出素子5において、検出値の大きさの順番が変化するものがある場合(ステップS12;Yes)、生成部22は、順番が変化する検出素子のうち、順番が連続する検出素子5のグループ化を行う(ステップS17)。
【0079】
例えば、図11(A)に示すように、同じ発生源T(種別G[1])で、検出素子5の検出値の大きさの順番が異なる場合、識別部11の生成部22は、順番が変化する検出素子5のうち、その順番が連続する検出素子5を、図11(B)に示すように、グループ[アイウ]として1つにまとめる。なお、グループを識別する情報[アイウ]については、ユーザの操作入力で設定可能である。[ア、イ、ウ]は、単に[1、2、3]としてもよい。
【0080】
ステップS17終了後、生成部22は、検出素子5をグループ化しても発生源Tの間で順番が異なり、他の発生源Tから識別可能であるか否かを判定する(ステップS18)。グループ化しても発生源Tの間で順番が異なる場合(ステップS18;Yes)、生成部22は、グループ化された検出素子5の順番情報を更新し(ステップS15)、登録する(ステップS16)。その後、識別部11は、登録モード処理を終了する。
【0081】
なお、グループ化すると順番が重複して他の発生源Tから識別ができない場合(ステップS18;No)、生成部22は、再度グループ化を行う(ステップS17)が、検出素子5のグループ化を行う閾値(上記正答率の閾値と同じ)を変更して、順番が同じとなるものが無くなる(ステップS18;Yes)まで繰り返す。
【0082】
このように、本実施の形態では、生成部22は、複数の検出素子5での検出を、種別が同じ既知の発生源Tについて複数回行ったときに、検出値の大きさの順番が変化する検出素子5があり、その検出素子5をグループ化しても発生源Tの間で順番が異なり他の既知の発生源Tから識別可能な場合、順番が変化する検出素子5のうち、順番が連続する検出素子5をグループ化して、検出素子5のグループの順番を示す情報を生成する。
【0083】
識別部11の特定部21は、生成部22によって生成された各グループに1つの検出素子5で物質を検出したときの検出素子5のグループの順番を示す情報に基づいて、その物質の発生源Tの種別を識別する。識別部11によって実行される識別モード処理は、上記実施の形態1に係る識別システム1の識別モード処理(図7参照)と同じである。すなわち、種別が不明な発生源Tに対して検出準備が行われ(ステップS21)、複数の検出素子5による物質の検出が行われ(ステップS22)、順番情報が生成され(ステップS23)、その順番情報が照合されて、発生源Tの種別が特定される(ステップS24)。
【0084】
以上説明したように、本実施の形態に係る識別システム1によれば、種別が同じ発生源Tについて複数回検出を行って、その中に順番が変化するものがあり、順番が変化する検出素子5のうち、順番が連続する検出素子5をグループ化しても、種別が異なる発生源Tについて検出素子5のグループの順番が同じとなるものがない場合、検出素子5をグループ化する。これにより、実際に識別に用いる検出素子5の数を削減することが可能となる。同じグループの検出素子5は1つで良いためである。識別部11は、生成部22によってグループ化された検出素子5で物質を検出したときの検出素子5のグループを示す情報に基づいて、その物質の発生源Tの種別を識別する。
【0085】
実施の形態4
次に、本発明の実施の形態4について説明する。本実施の形態に係る識別システム1の構成は、図1に示す、上記実施の形態1、2、3に係る識別システム1と同じである。本実施の形態に係る識別システム1は、識別部11の動作、特に登録モード処理が、上記実施の形態2に係る識別システム1(図8参照)と異なる。本実施の形態の登録モード処理では、発生源Tのグループ化が行われる。
【0086】
[登録モード処理]
図12に示すように、登録モード処理において、ステップS1、S9、S3~S7、S10、S11、S8までの処理の流れは、上記実施の形態2に係る識別システムの登録モード処理と同じであるため、説明を省略する。
【0087】
その後、変数mがMであると判定されると(ステップS8;Yes)、識別部11の生成部22は、複数の検出素子5の検出値の大きさの順番が同じで、種別が異なる発生源Tが有るか否かを判定する(ステップS30)。例えば、図13(A)に示すように、発生源T(種別G[1])と、発生源T(種別G[2])とについて、複数の検出素子5の検出値の大きさの順番が同じものがある場合、ステップS30での判定は肯定される。
【0088】
検出素子5の順番が同じで、異なる発生源Tがない場合(ステップS30;No)、識別部11は、登録モード処理を終了する。
【0089】
一方、検出素子5の検出値の大きさの順番が同じで、種別が異なる発生源Tがある場合(ステップS30;Yes)、生成部22は、発生源Tのグループ化を行うか否かを判定する(ステップS31)。グループ化を行うか否かについては、予め設定しておくことができる。
【0090】
グループ化を行わない場合(ステップS31;No)、識別部11は、登録モード処理を終了する。一方、グループ化を行う場合(ステップS31;Yes)、識別部11の生成部22は、グループ化を行う(ステップS32)。例えば、図13(A)に示すように、発生源T(種別G[1])と、発生源T(G[2])とで、検出素子5の検出値の大きさの順番が同じである場合、生成部22は、両者をグループIG[1]として1つのレコードにまとめる。
【0091】
グループIG[1]については、ユーザの操作入力で設定可能である。例えば、G[1]が「みかん」であり、G[2]が「グレープフルーツ」である場合、グループIG[1]を、「柑橘系」と設定することができる。G[1]、G[2]の登録については削除される。
【0092】
ステップS32終了後、識別部11は、登録モード処理を終了する。このように、生成部22は、複数の検出素子5での検出を、種別が互いに異なる複数の既知の発生源について行ったときに、検出素子5の順番が同じとなる発生源Tをグループ化し、検出素子5の順番を示す情報をグループに関連付けて生成する。
【0093】
識別部11の特定部21は、生成部22で生成された、複数の検出素子5の順番と既知の発生源Tのグループの種別との関係を示す情報を参照して、複数の検出素子5で物質を検出したときの複数の検出素子5の順番を示す情報に基づいて、その物質の発生源Tにおける種別を識別する。識別部11によって実行される識別モード処理は、上記実施の形態1に係る識別システム1の識別モード処理(図7参照)と同じである。すなわち、種別が不明な発生源Tに対して検出準備が行われ(ステップS21)、複数の検出素子5による物質の検出が行われ(ステップS22)、順番情報が生成され(ステップS23)、その順番情報が照合されて、発生源Tの種別が特定される(ステップS24)。
【0094】
以上説明したように、本実施の形態に係る識別システム1によれば、種別が異なる発生源Tについて検出素子5の順番が同じになるものがある場合、種別が異なる発生源Tを1つのグループにまとめることができる。これにより、例えば、新種のみかんを未知の発生源Tとして識別するときに、みかんとして識別できなくても、柑橘系としては、識別できる可能性がある。
【0095】
実施の形態5
次に、本発明の実施の形態5について説明する。本実施の形態に係る識別システム1の構成は、記憶装置3に記憶される情報の他は、図1に示す、上記実施の形態1に係る識別システム1と同じである。また、本実施の形態に係る識別システム1は、識別部11の動作、特に登録モード処理が、上記実施の形態1に係る識別システム1(図6参照)と異なる。
【0096】
本実施の形態に係る識別システム1は、特定情報として、発生源Tの種別の代わりに、発生源Tの状態を識別する。例えば、発生源Tが果実である場合、果実は、早熟状態から、完熟状態を経て、腐食状態へと至る。本実施の形態に係る識別システム1は、このような発生源Tの状態、例えば時間変化を識別する。
【0097】
ここで、発生源Tの各状態をC[1]、C[2]、C[3]、…、C[J]とする。図14に示すように、記憶装置3では、発生源Tの状態C[1]、C[2]、C[3]、…、C[J]それぞれについて、複数の検出素子5の検出値の大きさによる順番を示す情報が記憶される。記憶装置3には、識別部11の生成部22で実行される登録モード処理によって、それらの情報が記憶される。
【0098】
[登録モード処理]
識別部11によって実行される登録モード処理について説明する。登録モードでは、変数としてjが用いられる。変数jは、1~Jのいずれかの値をとる。この値は、現時点で対象となる発生源Tの状態を示す値である。登録モード処理において、図15に示すように、まず、識別部11において、変換部20は、変数jを0に初期化し(ステップS41)、変数jを1だけインクリメントする(ステップS42)。
【0099】
識別部11を構成する生成部22は、発生源Tの状態を示す情報、すなわち発生源状態情報を入力する(ステップS43)。ここでは、例えば、発生源Tの状態がC[1]であることが入力される。続いて、識別部11は、状態が既知である発生源Tを検出可能な状態となるまで、すなわち検出準備が完了するまで待つ(ステップS44;No)。ここでは、発生源Tの状態としてC[1]の検出準備が完了するまで待つ。
【0100】
検出準備が完了すると(ステップS44;Yes)、識別部11は、複数の検出素子5に、発生源T(状態C[1])から発せられる物質を検出させる(ステップS45)。これにより、検出素子5から、識別部11の変換部20に対して、各検出素子5の検出値と識別情報とを含むデータが送られる。
【0101】
検出素子5からデータを入力すると、変換部20は、複数の検出素子5から出力される検出値の大きさに基づいて、複数の検出素子5を示す順番を示す情報を生成する(ステップS46)。これにより、例えば、発生源T(状態C[1])について、検出値が大きい順に、D[1]、D[3]、D[2]、D[4]、D[5]という複数の検出素子5の順番を示す情報が生成される。
【0102】
続いて、生成部22は、変換部20で生成された順番と、入力された発生源Tの状態を示す情報とを関連付けて、記憶装置3に登録する(ステップS47)。
【0103】
ここで、生成部22は、変数jがJとなっているか否かを判定する(ステップS48)。変数jがJでない場合(ステップS48;No)、識別部11は、ステップS42に戻る。以降、j=2の設定(ステップS42)、発生源T(状態C[2])の情報入力(ステップS43)、検出準備完了待ち(ステップS44)、検出(ステップS45)、順番情報生成(ステップS46)、登録(ステップS47)、変数jの判定(ステップS48)が行われる。さらに、発生源Tの状態C[j](j=3~J)について、複数の検出素子5の順番が生成され、その順番を示す情報が発生源Tの状態C[3]~C[J]に関連付けて記憶装置3に記憶される。変数jがJであると判定されると(ステップS48;Yes)、識別部11は、登録モード処理を終了する。
【0104】
図16に示すように、本実施の形態に係る識別モード処理において、すなわち、状態が不明な発生源Tに対して検出準備が行われ(ステップS21)、複数の検出素子5による物質の検出が行われ(ステップS22)、順番情報が生成される(ステップS23)点は、上記実施の形態1に係る識別システム1の識別モード処理と同じである。ステップS23を実行後、識別部11の生成部22は、その順番情報を、記憶装置3に記憶された順番情報と照合して、発生源Tの状態を特定する(ステップS25)。
【0105】
以上説明したように、本実施の形態に係る識別システム1によれば、誤差を含みやすい複数の検出素子5の検出値、すなわち検出値の大きさでなく、検出値の大きさの順番で物質の発生源Tの状態を特定する。このようにすれば、誤差を含みにくい情報で発生源Tを識別することができるので、発生源Tの状態を識別する精度を安定させることができる。
【0106】
なお、本実施の形態に係る識別システム1においても、上記実施の形態2~4と同様に、検出素子5の絞り込み又はグループ化と、発生源Tのグループ化が可能である。
【0107】
実施の形態6
次に、本発明の実施の形態6について説明する。本実施の形態に係る識別システム1は、複数の検出素子5の順番だけでなく、正規化された検出値のマップデータをも考慮して発生源の種別又は状態を識別する。
【0108】
図17に示すように、本実施の形態に係る識別システム1の構成は、上記実施の形態1に係る識別システム1の構成(図1参照)と同じである。この識別システム1では、識別部11の生成部12は、種別が異なる複数の既知の発生源T(G[1]~G[N])について、それぞれ複数の検出素子5で検出したときの正規化された検出値を示す正規化マップデータを、既知の発生源における種別に関連付けて生成し、記憶装置3に記憶させる。なお、この正規化は、検出値の最大値、最小値と最大値との差等の基準となる値を1として行われる。
【0109】
識別部11の特定部21は、生成部22で生成された、検出素子5の順番と種別が既知である発生源Tとの関係を示す情報とともに、検出素子5の正規化された検出値と既知である発生源Tとの関係を示す情報と、を参照し、複数の検出素子5で物質を検出したときの検出素子5の順番を示す情報とともに、複数の検出素子5で物質を検出したときの検出素子5の正規化された検出値に基づいて、その物質の発生源Tの種別を識別する。例えば、図18(A)に示すように、発生源T(種別G[1])と、発生源T(種別G[2])とで、複数の検出素子5の検出値の大きさの順番が同じ場合でも、特定部21は、図18(B)に示すような、正規化マップデータの違いを、種別が不明な発生源Tのマップデータと照合し、マップデータの形状が最も近い(パターンマッチングによる類似度が高い)発生源Tを特定することが可能となる。
【0110】
なお、複数の検出素子5の検出値の大きさの順番だけでなく、正規化マップデータをも考慮した処理は、発生源Tの状態の識別にも適用することができる。また、正規化されていない検出値に基づくマップデータを用いることも可能である。
【0111】
実施の形態7
次に、本発明の実施の形態7について説明する。本実施の形態では、識別システム1を構成する検出部10に対応する検出器50の詳細な構成について説明する。
【0112】
図19(A)に示すように、検出器50は、検出器本体6と、センサモジュール7と、センサカバー8と、を備える。識別部11と入出力可能に構成された検出器本体6には、センサモジュール7が装着され、センサカバー8は、検出器本体6に装着されたセンサモジュール7を保護する。
【0113】
図19(B)に示すように、センサモジュール7には、合計20個の検出素子5が形成されている。この検出素子5は、貫通孔の一部を塞ぐように形成された振動子を有しており、その振動子上に物質吸着膜が形成されている。センサモジュール7上に形成された複数の検出素子5は、検出可能な物質が互いに異なっている。検出素子5では、それぞれの物質が検出され、その検出値が検出素子5の識別番号とともに、検出器本体6に出力される。検出器本体6は、検出値と識別番号とを含むデータを識別部11に出力する。
【0114】
このように、検出部10では、検出器本体6に対してセンサモジュール7を交換可能である。交換により、検出に用いられる検出素子5の種類を大幅に増やすことが可能となる。また、識別対象となる発生源Tに含まれる複数の物質を検出可能な検出素子5が搭載されたセンサモジュール7を選択して、検出器本体6に装着し、使用することができる。これにより、例えば、上記実施の形態2のように、識別対象を識別するのに必要な検出素子5を除外し、識別対象を識別するのに必要な検出素子5だけを有する識別装置2を構築することが可能となる。また、上記実施の形態3において、各グループ化された検出素子5だけを有する識別装置2を構築することが可能となる。
【0115】
なお、識別部11は、検出部10と通信ネットワークを介して通信可能なコンピュータ上に構築することができる。記憶装置3も同様である。記憶装置3は、このコンピュータと通信可能な他のサーバコンピュータに構築することも可能である。逆に、図19(A)に示されるデバイス内に識別部11を組み込むようにしてもよいし、さらに記憶装置3を組み込むようにしてもよい。
【0116】
また、識別部11は、特定部21又は生成部22のいずれかを備えていればよい。識別システム1の開発者が、生成部22を備える識別装置2を用いて、記憶装置3に記憶する情報を生成し、ユーザが、特定部21を備える識別装置2を用いて、種別又は状態が不明な発生源Tの種別又は状態の識別を行うようにしてもよい。すなわち、生成部22は、識別部11に含まれている必要はない。
【0117】
発生源Tの種別と状態とを、両方識別することも可能である。記憶装置3に、発生源Tの種別及び状態毎に検出素子5の検出値の大きさによる順番を示す情報を記憶すればよい。
【0118】
また、特性情報が同じ発生源Tで検出素子5の順位が異なっていたものがある場合でも、それらをそのまま記憶装置3に記憶しておくだけでもよい。また、特性情報が異なる発生源Tで検出素子5の順位が同じものをそのまま記憶装置3に記憶しておいてもよい。この場合、該当する発生源Tを識別結果とすればよい。
【0119】
識別対象となる発生源Tに対して反応のなかった検出素子5については、未知の発生源Tを識別する際に、検出部10から除去しておくことができる。
【0120】
識別部11のハードウエア構成やソフトウエア構成は一例であり、任意に変更および修正が可能である。
【0121】
CPU31、メインメモリ32、外部メモリ33、操作部34、表示部35、入出力部36、通信部37及び内部バス38などから構成される識別部11の処理を行う中心となる部分は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、前記の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM等)に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、前記の処理を実行する識別部11を構成してもよい。また、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に当該コンピュータプログラムを格納しておき、通常のコンピュータシステムがダウンロード等することで識別部11を構成してもよい。
【0122】
識別部11の機能を、OS(オペレーティングシステム)とアプリケーションプログラムの分担、またはOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合などには、アプリケーションプログラム部分のみを記録媒体や記憶装置に格納してもよい。
【0123】
搬送波にコンピュータプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して配信することも可能である。たとえば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS, Bulletin Board System)にコンピュータプログラムを掲示し、ネットワークを介してコンピュータプログラムを配信してもよい。そして、このコンピュータプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、前記の処理を実行できるように構成してもよい。
【0124】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、発生源から発せられる物質により発生源を識別するのに適用することができる。
【符号の説明】
【0126】
1 識別システム、2 識別装置、3 記憶装置、5 検出素子、6 検出器本体、7 センサモジュール、8 センサカバー、10 検出部、11 識別部、20 変換部、21 特定部、22 生成部、31 CPU、32 メインメモリ、33 外部メモリ、34 操作部、35 表示部、36 入出力部、37 通信部、38 内部バス、39 プログラム、50 検出器、T 発生源
図1
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